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特許異議申立

2023-700676

搬送装置

審判番号
2023-700676
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-565190
登録番号
7197730
請求日
2023年06月27日
審決日
2024年09月27日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ヤマハ発動機株式会社
  • 【権利者代理人】宮園 博一
  • 【異議申立人】日置 綾子
審判長/審判官
  • 審判長 平城 俊雅
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 内田 博之
分類
P1652.113-YAA(B65G) / P1652.121-YAA(B65G) / P1652.537-YAA(B65G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7197730号発明「搬送装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7197730号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 特許第7197730号の請求項1、3、7、9~12に係る特許を維持する。 特許第7197730号の請求項2、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7197730号の請求項1~12に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)12月17日を国際出願日として出願され、令和4年12月19日にその特許権の設定登録がされ、令和4年12月27日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年6月27日 :特許異議申立人 日置綾子(以下、「特許異 議申立人」という。)による請求項1~3、 7~12に係る特許に対する特許異議の申立 て 令和5年9月25日付け :取消理由通知書 令和5年11月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年3月28日 :特許異議申立人による意見書の提出 令和6年7月1日付け :取消理由通知書(決定の予告) 令和6年8月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 (令和5年11月22日の訂正請求書による 訂正の請求は、特許法第120条の5第7項 の規定により取り下げられたものとみなされ る。) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年8月19日に提出された訂正請求書での訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「スライダと、前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備える、搬送装置。」と記載されているのを、「スライダと、前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され、前記接続部材は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている、搬送装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3の「前記接続部材に設けられ、前記各々の搬送モジュールの状態を表示する第2表示器をさらに備え、前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている、請求項2に記載の搬送装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「スライダと、前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され、前記接続部材に設けられ、前記各々の搬送モジュールの状態を表示する第2表示器をさらに備え、前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている、搬送装置。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~7及び12も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に「前記搬送モジュールは、前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む、請求項8に記載の搬送装置。」と記載されているのを、「スライダと、前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと、前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵され、前記搬送モジュールは、前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む、搬送装置。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項12に「前記接続部材は、信号を伝達する電線または信号を伝達する電気経路を有する基板を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の搬送装置。」と記載されているのを、「前記接続部材は、信号を伝達する電線または信号を伝達する電気経路を有する基板を含む、請求項1、3~7および9~11のいずれか1項に記載の搬送装置。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1~12に対応する請求項1~12は一群の請求項であるといえ、訂正事項1~6は、一群の請求項について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第1表示器」について、「前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され」という限定を付加し、また、訂正前の請求項1の「接続部材」について、「前記接続部材は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 訂正事項1における、「前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され」との限定、及び「前記接続部材は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている」の限定は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2、及び願書に添付された明細書の段落【0047】の「接続部材50は、各々の搬送モジュール10a、10bの状態を表示する第2表示器51が設けられている。第2表示器51は、各々の搬送モジュール10a、10bのスライダ30の搬送方向(X方向)に沿って延びる側面における他方側(Y1方向側)の側面部に配置されている。つまり、第2表示器51は、Y方向において、第1表示器60とは反対側の搬送モジュール10a、10bの側面部に配置されている。」との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 訂正事項1は、訂正後の請求項1について、第1表示器、及び接続部材を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する引用形式であったのを、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものといえる。 訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものといえるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項9が請求項1~7いずれか1項の記載を引用する請求項8引用形式であったものを、請求項1の記載を引用する請求項8を引用するものに限定し、さらに、独立形式とするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項12が請求項1~11の記載を引用するものであったのを、訂正事項2及び訂正事項4によって請求項2及び請求項8が削除されたこととの整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 3 独立特許要件について 本件特許異議の申立てにおいては、請求項1~3及び7~12が特許異議の申立ての対象とされている。 したがって、訂正事項1によって訂正される請求項1及び請求項1の記載を引用する請求項12、訂正事項3によって訂正される3及び請求項3の記載を引用する請求項4~7、12のうち請求項3、訂正事項5によって訂正される請求項9及び請求項9の記載を引用する請求項10~12、及び、訂正事項6によって訂正される請求項12に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 しかしながら、訂正事項3によって訂正される請求項3及び請求項3の記載を引用する請求項4~7、12のうち請求項4~6は、本件特許異議の申立ての対象とされていないから、これらの請求項に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることとなる。 後記「第5」1で述べるように、本件訂正後の請求項3に係る発明は、下記「第4」1の甲第1~4号証及び下記「第5」1の参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4~6に係る発明も、甲第1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、訂正後の請求項4~6に係る発明の特許性を否定すべき新たな事由も存在しない。 したがって、訂正後の請求項4~6に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件を満たすといえる。 4 小括 以上のとおりであるから、令和6年8月19日に提出された訂正請求書での訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲の記載を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 令和6年8月19日に提出された訂正請求書による訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、請求項2(本件発明2)及び請求項8(本件発明8)は訂正により削除されている。)。 [本件発明1] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され、 前記接続部材は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている、搬送装置。」 [本件発明3] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置され、 前記接続部材に設けられ、前記各々の搬送モジュールの状態を表示する第2表示器をさらに備え、 前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている、搬送装置。」 [本件発明4] 「前記接続部材は、前記搬送モジュールから外側に向けて下方に傾斜する傾斜面を含み、 前記第2表示器は、前記傾斜面に配置されている、請求項3に記載の搬送装置。」 [本件発明5] 「前記第2表示器は、前記接続部材が接続する隣接する前記搬送モジュールの両方に各々対応するように、前記接続部材に一対設けられている、請求項3または4に記載の搬送装置。」 [本件発明6] 「一対の前記第2表示器のうち一方は、隣接する前記搬送モジュールの一方の状態を表示するとともに、前記接続部材の一方の前記搬送モジュール側の部分に配置され、 一対の前記第2表示器のうち他方は、隣接する前記搬送モジュールの他方の状態を表示するとともに、前記接続部材の他方の前記搬送モジュール側の部分に配置されている、請求項5に記載の搬送装置。」 [本件発明7] 「前記第1表示器および前記第2表示器は、光の点灯、点滅または色により前記搬送モジュールの状態を表示するインジケータを各々含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の搬送装置。」 [本件発明9] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと、前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、 前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵され、 前記搬送モジュールは、前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む、搬送装置。」 [本件発明10] 「前記第2配線は、前記搬送モジュールに互いに独立して複数設けられており、 前記搬送モジュールは、前記第2配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第2端子をさらに含む、請求項9に記載の搬送装置。」 [本件発明11] 「隣接する前記搬送モジュールを各々位置決めして連結する連結部材をさらに備え、 前記第1端子に接続されて前記制御基板に電力を供給する第1電線と、前記第2端子に接続されて前記モータ電源基板に電力を供給する第2電線と、前記接続部材と、前記連結部材とは、互いに独立して前記搬送モジュールから着脱することが可能に構成されている、請求項10に記載の搬送装置。」 [本件発明12] 「前記接続部材は、信号を伝達する電線または信号を伝達する電気経路を有する基板を含む、請求項1、3~7および9~11のいずれか1項に記載の搬送装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 (1)令和5年9月25日付けの取消理由通知 本件訂正前の請求項1、2及び12に係る特許に対して、当審が令和5年9月25日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は次のとおりである。 ●本件の請求項1、2及び12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項1、2及び12に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消されるべきものである。 ●本件の請求項1、2及び12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、または、甲第2号証甲第3号証に記載された発明又は電気通信貝瀬員を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び12に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 甲第1号証:https://www.rockwellautomation.com/search/ra-ja-JP;keyword=TriMax%25E3%2583%2599%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25AA%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B0%25E3%2582%2592%25E4%25BD%25BF%25E7%2594%25A8%25E3%2581%2597%25E3%2581%259FiTRAK%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25B9%25E3%2583%2586%25E3%2583%25AO;startlndex=O;activeTab=Literature;spellingCorrect=true;facets=product_category_ss%253A%2528%2522Motion%2520Control%252C%2520Integrated%2520%2528Al1en-Bradley%2529%2522%2529;languages=ja,en;locales=ja-JP,ja_GLOBAL,en_GLOBAL,en-US;sort=bma;isPLS=false;sessionID=56fa9427-e773-33df-0829-a99c475f2319;deepLinking=false「TriMaxベアリングを使用したiTRAKシステムユーザーズマニュアル(2198T-UM002C-JA-P) 甲第2号証:Documentation「eXtendedTranport System Start-Up」 甲第3号証:https://vimeo.com/216679570Vimeo動画「ENjHoudiikHolland:FlexSkipper stackfeedingmachineforbiscuits」 甲第4号証:https://www.rockwellautomation.com/search/ra-en-US;keyword=MOTION-BR002A;startindex=O:activeTab=Literature:spellingCorrect=true:facets=;languages=en;locales=en_GLOBAL,en-US;sort=bma:isPLS=false;sessionID=85b25388-d2e7-77da-e6fO-25f9b652f710:deepLinking=false「独立式移動カート技術」パンフレット5、14ページ 甲第1号証~甲第4号証は、特許異議申立人が提出した甲第1号証~甲第4号証である。 (2)令和6年7月1日付けの取消理由通知 本件訂正前の各請求項に係る特許(令和5年11月22日の訂正請求書による訂正を認めたもの)に対して、当審が令和6年7月1日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は次のとおりである。 ●本件の請求項8及び12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された上記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項8及び12に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消されるべきものである。 2 甲各号証の記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証には次の記載がある。 第10頁 「 [図:0001418203000001.jpg] 」 第11頁 「 [図:0001418203000002.jpg] 」 第12頁 「 [図:0001418203000003.jpg] 」 第13頁 「 [図:0001418203000004.jpg] 」 第46頁 「 [図:0001418203000005.jpg] 」 第48頁 「 [図:0001418203000006.jpg] 」 第49頁 「 [図:0001418203000007.jpg] 」 第70頁 「 [図:0001418203000008.jpg] 」 第71頁 「 [図:0001418203000009.jpg] 」 第102頁 「 [図:0001418203000010.jpg] 」 ア 甲1発明 甲第1号証の第10頁の図1及び第11頁の表1より、トラックは、複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールを含んで形成されていると認められる。 甲第1号証の第12頁の図2及び図3並びに第13頁の図4及び5、表4及び5より、ストレート・モータ・モジュールとカーブ・モータ・モジュールの各々の上面には、夫々のモータ・モジュールのステータスを表示するステータスインジケータが備えられていると認められる。 甲第1号証の第46頁の下の表のアイテム番号16の説明「モータモジュールへの通信ケーブル(モータモジュール当たり1本のケーブル)」の記載から、各モータモジュールとゲートウェイとはモータモジュール当たり1本の通信ケーブル によって接続されていると認められる。 上記認定事項及び甲第1号証の第10、11、及び46頁の記載内容より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールを含んで形成されるトラックと、 トラックに沿って移動するムーバと、 コントローラと全てのモータ・モジュール間の通信インターフェースを提供するゲートウェイであって、各モータモジュールとゲートウェイとはモータモジュール当たり1本の通信ケーブルによって接続されており、 複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールの各々の上面には、夫々のモータ・モジュールのステータスを表示するステータスインジケータが備えられている、 iTRAKシステム。」 イ 甲1’発明 さらに、甲第1号証の記載から、次の事項も認定できる。 甲第1号証の第12頁図2-2からは、ストレート・モータ・モジュールは、ストレート・モータ・モジュール筐体とストレート・モータ・モジュール筐体に配置されたモータ・コイル・アセンブリ2を含んでいると認められる。 また、甲第1号証の第12頁3-2からは、カーブ・モータ・モジュールは、カーブ・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体に配置されたモータ・コイル・アセンブリ2を含んでいると認められる。 甲第1号証の第102頁の表24-iTRAKシステムのエラーコードのiTRAK_Control.Status.GatewayFaultCodeが3でiTRAK_Control.Status.SectionFaultCodeが20の欄の説明と解決法の欄には、「・・・当該モータモジュールのPWMボードに電流が流れていません。」と記載されているから、ストレート・モータ・モジュールとカーブ・モータ・モジュール筐体は、PWMボードを内蔵していると認められる。 甲第1号証の第12頁の図2及び3並びに表3から、ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体には、出力バスコネクタ4と入力バスコネクタ5が設けられており、第13頁の図4及び表4並びに第46頁の図19(Kinetix5700iTRAK電源3からモータ・モジュールに、モータモジュール電源バスと制御電源ケーブル13が接続されていることが看取できる)から、ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体には、制御電源とモータ電源の2系統の電源が接続されていると認めら れる。 上記認定事項及び上記アから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1’発明」という。)も記載されているといえる。 [甲1’発明] 「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールを含んで形成されるトラックと、 トラックに沿って移動するムーバと、 コントローラと全てのモータ・モジュール間の通信インターフェースを提供するゲートウェイであって、各モータモジュールとゲートウェイとはモータモジュール当たり1本の通信ケーブルによって接続されており、 複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールの各々の上面には、夫々のモータ・モジュールのステータスを表示するステータスインジケータが備えられており、 トラックを形成する複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールは、筐体と筐体に配置されたモータ・コイル・アセンブリと、筐体に内蔵されたPWMボードと、を含み、 ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体には、制御電源とモータ電源の2系統の電源が接続されている、 iTRAKシステム。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には次の記載がある。 第15頁 「 [図:0001418203000011.jpg] 」 第16頁 「 [図:0001418203000012.jpg] 」 第20頁 「 [図:0001418203000013.jpg] 」 第22頁 「 [図:0001418203000014.jpg] 」 第23頁 「 [図:0001418203000015.jpg] 」 第24頁 「 [図:0001418203000016.jpg] 」 第26頁 「 [図:0001418203000017.jpg] 」 第27頁 「 [図:0001418203000018.jpg] 」 第33頁 「 [図:0001418203000019.jpg] 」 第29頁 「 [図:0001418203000020.jpg] 」 第34頁 「 [図:0001418203000021.jpg] 」 ア 甲2発明 甲第2号証の第22~24、26、27、33、及び34頁の記載内容から、XTSシステムでは、複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17とでムーバの搬送部を形成していると認められる。 甲第2号証の第26及び27頁の記載内容から、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間を接続するモジュール間接続カード10が、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置されている。 甲第2号証の第26頁右図のストレートモータモジュールの図と第29頁左図のストレートモータモジュールの図とにおけるモジュール間接続カードの有無(前者にはモジュール間接続カードが装備され、後者にはモジュール間接続カード10が装備されていないことが見て取れる)、及び第26頁右図のストレートモータモジュールにはモジュール間接続カード10が配置され、第27頁左図のカーブモータモジュールには、モジュール間接続カード10用スロット12、14が設けられていることから、モジュール間接続カード10はストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールとは別部材であると認められる。 甲第2号証の第15頁の5.2に示されるタイプラベルには、ステータスLEDが備えられており、当該タイプラベルには、コンポーネント番号が記載され、当該コンポーネント番号は、甲第2号証の第16頁の5.3に示されるタイプキーの記載内容に基づけば、各々のモータモジュール毎に設定されていると認めら れ、かつ、甲第2号証の第20頁の最上図(モータモジュールの正面図)から、タイプラベルは、モータモジュールの正面部に配置されていると認められるから、タイプラベルは各々のモータモジュールの正面部に設けられていると認められる。 上記認定事項より、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「ムーバと、 複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17によって形成されるムーバの搬送部と、 ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールとは別部材のモジュール間接続カード10が、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され、 複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部には、ステータスLEDが備えられたタイプラベルが設けられている、 XTSシステム。」 イ 甲2’発明 さらに、甲第2号証の記載から、次の事項も認定できる。 甲第2号証の第26頁右図と表より、ストレートモータモジュールには、ストレートモータモジュール本体と、このストレートモータモジュール本体に設けられたモータコイル8が含まれると認められる。 甲第2号証の第27頁左図と表より、カーブモータモジュールには、カーブモータモジュール本体と、このカーブモータモジュール本体に設けられたモータコイル13が含まれると認められる。 上記認定事項及び上記アを踏まえると、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2’発明」という。」も記載されているといえる。 [甲2’発明] 「ムーバと、 複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17によって形成されるムーバの搬送部と、 ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールとは別部材のモジュール間接続カード10が、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され、 複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部には、ステータスLEDが備えられたタイプラベルが設けられており、 複数のストレートモータモジュールストレートモータモジュールには、ストレートモータモジュール本体と、このストレートモータモジュール本体に設けられたモータコイル8が含まれ、 複数のカーブモータモジュールには、カーブモータモジュール本体と、このカーブモジュール本体に設けられたモータコイル13が含まれる、 XTSシステム。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には次の事項が開示されている。 動画開始時刻から1分19秒後のキャプチャ画面 「 [図:0001418203000022.jpg] 」 動画開始時刻から1分20秒後のキャプチャ画面 「 [図:0001418203000023.jpg] 」 動画開始時刻から1分30秒後のキャプチャ画面 「 [図:0001418203000024.jpg] 」 (4)甲第4号証 甲第4号証には次の記載がある。 第5頁(頁数は表紙を含む) 「 [図:0001418203000025.jpg] 」 第14頁 「 [図:0001418203000026.jpg] 」 3 当審の判断(1)甲第1号証を主たる証拠として ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「トラックに沿って移動するムーバ」は、本件発明1の「スライダ」に相当する。 b 甲1発明の「トラック」は、本件発明1の「搬送部」に相当する。 c 甲1発明の「ストレート・モータ・モジュール」及び「カーブ・モータ・モジュール」は、ムーバをトラックに沿って搬送するものといえ、本件発明1の「搬送モジュール」に相当する。 したがって、甲1発明の「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールを含んで形成されるトラック」は、本件発明1の「前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部」に相当する。 d 甲1発明の「ゲートウェイ」は、「コントローラと全てのモータ・モジュール間の通信インターフェースを提供する」ものであり、これによって、トラックを形成する複数のモータ・モジュールの隣接するモータ・モジュール間でムーバを移動するようにコントローラを介して信号の伝達をしているものと解することができるから、本件発明1の「接続部材」に相当する。また、甲1発明の「ゲートウェイ」は、トラックに含まれるストレート・モータ・モジュール及びカーブ・モータ・モジュールとは別個に設けられているものであるといえる。 したがって、甲1発明の「コントローラと全てのモータ・モジュール間の通信インターフェースを提供するゲートウェイ」は、本件発明1の「前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材」に相当する。 e 甲1発明の「モータ・モジュールのステータスを表示する」ことは、本件発明1の「搬送モジュールの状態を表示する」ことに相当し、甲1発明の「ステータスインジケータ」は、本件発明1の「第1表示器」に相当する。 したがって、甲1発明の「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールの各々の上面に」備えられている「夫々のモータ・モジュールのステータスを表示するステータスインジケータ」は、本件発明1の「前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器」の構成に相当する。 f 甲1発明の「iTRAKシステム」は、搬送装置であるといえるから、本件発明1の「搬送装置」に相当する。 g 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点1] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備えている、搬送装置。」 [相違点1] 本件発明1の「第1表示器」は、「各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置されている」ものであるのに対し、甲1発明の「ステータスインジケータ」は、「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールの各々の上面に」「備えられている」ものである点。 [相違点2] 本件発明1の「接続部材」は、「各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置され」ているものであるのに対し、甲1発明の「ゲートウェイ」は、「各モータモジュールと」「モータモジュール当たり1本の通信ケーブルによって接続されて」いるものである点。 (イ)判断 a 相違点1及び2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明とはいえない。 b 事案に鑑み相違点2について検討する。 上記(ア)で述べたように、甲1発明の「ゲートウェイ」は、機能上本件発明1の「接続部材」に相当する構成であるが、「各モータモジュールと」「モータモジュール当たり1本の通信ケーブルによって接続されて」いるものである。そうしてみると、甲1発明の「ゲートウェイ」は、複数のモータモジュールで構成される「トラック」(本件発明1の「搬送部」に相当する。)とは別個独立の構成であるといえることから(甲第1号証の第46頁図19を参照すれば、トラックとは別個独立の1つの筐体として記載されている。)、甲1発明の「ゲートウェイ」を、複数とした上で、トラックを構成する複数の各モータモジュールのムーバの搬送方向に沿って延びる(ステータスインジケータが備えられた面とは違う他方側の)側面部に配置するよう構成することは甲1発明においては全く想定されていないといえる。 また、甲第4号証の第5頁及び第14頁には、甲1発明を、垂直配置した使用態様でみた場合、「ステータスインジケータ」が、「ストレート・モータ・モジュール」及び「カーブ・モータ・モジュール」の「ムーバ」の移動方向に沿って延びる側面の一方側の側面に配置されることが記載されているといえるものの、甲1発明の「ゲートウェイ」を、複数とした上で、トラックを構成する複数の各モータモジュールのムーバの搬送方向に沿って延びる(ステータスインジケータが備えられた面とは違う他方側の)側面部に配置するよう構成することについては、甲第4号証には記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において相違点1にかかる本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明又は甲1発明及び甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 c 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明とはいえないし、甲1発明又は甲1発明及び甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明12について 本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。 上記アで述べたように、本件発明1は、甲1発明とはいえないし、甲1発明又は甲1発明及び甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明12も同じ理由により、甲1発明とはいえないし、甲1発明又は甲1発明及び甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、後記「第5」3及び5にあるように、本件発明11は甲1’発明とはいえないから、本件発明11の発明特定事項を全て含み更に限定したものである本件発明12は甲1’発明とはいえない。 (2)甲第2号証を主たる証拠として ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「ムーバ」は、本件発明1の「スライダ」に相当する。 甲2発明の「ストレートモータモジュール」及び「カーブモータモジュール」は、ムーバをトラック17に沿って搬送するものといえ、本件発明1の「搬送モジュール」に相当する。 したがって、甲2発明の「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17によって形成されるムーバの搬送部」は、本件発明1の「前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部」に相当する。 甲2発明の「モジュール間接続カード10」は、「ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され」るものであり、これによって、隣接ずるモータモジュール間の信号の伝達をするものと理解することができるから、本件発明1の「接続部材」に相当する。 したがって、甲2発明の「ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールとは別部材のモジュール間接続カード10が、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され」ることは、本件発明1の「隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材」を「前記搬送モジュールとは別個に設け」ることに相当する。 甲2発明の「ステータスLED」は、ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールのステータス、すなわち、状態を表示するものであり、本件発明1の「第1表示器」に相当する。そして、甲2発明の「ステータスLED」は、「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部」に設けられた「タイプラベル」に備えられているものである。 したがって、甲2発明の「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部には、ステータスLEDが備えられたタイプラベルが設けられている」ことは、本件発明1の「前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器」が「前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ」ていることに相当する。 また、甲2発明の「モータモジュールの正面部」は、ムーバの搬送面である正面を側面とみれば、モータモジュールのムーバ搬送方向に沿って延びる一方側の側面部ということができるので、甲2発明の「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部には、ステータスLEDが備えられたタイプラベルが設けられている」ことは、本件発明1の「前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置されている」ことに相当する。 甲2発明の「XTSシステム」は、搬送装置であるといえるから、本件発明1の「搬送装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点2] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置されている、搬送装置。」 [相違点3] 本件発明1の「接続部材」は、「各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置され」ているものであるのに対し、甲2発明の「モジュール間接続カード10」は、「ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され」ているものである点。 (イ)判断 a 相違点3は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明とはいえない。 b 甲第2号証の第26頁の右図のストレートモータモジュールの図におけるモジュール間接続カード10の配置、及び、第27頁左図におけるカーブモータモジュールの図におけるモジュール間接続カード用スロット12、14の配置関係からすれば、甲2発明の「モジュール間接続カード10」は、ストレートモータモジュール、及び、カーブモータモジュールの端面に設けられたモータモジュール接続カード用スロット12、14に配置されるということができる。 甲2発明においては、モジュール間接続カード10をストレートモータモジュールまたはカーブモータモジュールの端面に設けたスロット12、14に配置することによって、ストレートモータモジュール間同士、または、ストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間同士での信号の伝達を可能にするという機能を充分に発揮させているといえるのであるから、このモジュール間接続カード10の配置を、わざわざストレートモータモジュール、及び、カーブモータモジュールの端面に設けられたモータモジュール接続カード用スロット12、14から、例えば、ストレートモータモジュールまたはカーブモータモジュールの裏面(ムーバの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部)に移動させる技術的な必要性はないし、甲第2号証には、モジュール間接続カード10を、ストレートモータモジュールまたはカーブモータモジュールの裏面(ムーバの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部)に移動させることについては記載されていないし示唆がない。 また、甲第3号証には、XTSシステムの動画が示されているところ、動画開始時刻から1分19秒~1分30秒には、ステータスLEDがムーバの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置される点が示されているといえるものの、甲第3号証は、モジュール間接続カード10を、ストレートモータモジュールまたはカーブモータモジュールの裏面(ムーバの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部)に移動させることについて示唆をするものではない。 したがって、甲2発明において相違点3にかかる本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲2発明又は甲2発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 c 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明とはいえないし、甲2発明又は甲2発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明12について 本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。 上記アで述べたように、本件発明1は、甲2発明とはいえないし、甲2発明又は甲2発明及び甲第3号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明12も同じ理由により、甲2発明とはいえないし、甲2発明又は甲2発明及び甲第3号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 本件発明3について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明3は甲第1号証~甲第4号証及び下記の参考資料1~3に記載された事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨主張しているので、以下この点について検討する。 参考資料1:米国特許出願公開第2020/0153315号 参考資料2:米国特許第11190086号明細書 参考資料3:欧州特許公開第3653552号明細書 (1)甲第1号証を主たる証拠とする進歩性否定の主張について ア 対比 本件発明3と甲1発明とを対比する。 上記「第4」3(1)ア(ア)を踏まえると、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点3] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備えている、搬送装置。」 [相違点4] 本件発明3の「第1表示器」は、「各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置されている」ものであるのに対し、甲1発明の「ステータスインジケータ」は、「複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールの各々の上面に」「備えられている」ものである点。 [相違点5] 本件発明3の「接続部材」は、「前記各々の搬送モジュールの状態を表示する第2表示器をさらに備え、前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている」であるのに対し、甲1発明の「ゲートウェイ」は、このような特定がなされていない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点5について検討する。 甲1発明の「ゲートウェイ」に、ストレート・モータ・モジュール及びカーブ・モータ・モジュールの各々の状態を表示する表示器を備える点にいては、甲第1号証には記載もないし、示唆もされていない。また、甲1発明の「ゲートウェイ」は、「各モータモジュールと」「モータモジュール当たり1本の通信ケーブルによって接続されて」いるもの(すなわち、1つの筐体)であるから、仮に、甲1発明の「ゲートウェイ」に、ストレート・モータ・モジュール及びカーブ・モータ・モジュールの各々の状態を表示する表示器を備えたとしても、「前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている」に相当する構成に至ることはできない。 また、甲第2~4号証のいずれにも、接続部材が、各々の搬送モジュールの状態を表示する表示器を備え、前記表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されていることは記載も示唆もされていない。 なお、特許異議申立人は、上記参考資料1~3を進歩性否定のための従たる証拠として提出しているが、参考資料1~3のいずれも、本件特許の国際出願日である2019年(令和元年)12月17日以降に発行されたものであるから、進歩性を否定するための証拠とはならない。 したがって、甲1発明において、甲第1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて相違点5にかかる本件発明3の構成となすことは、当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1~4及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲第2号証を主たる証拠とする進歩性否定の主張について ア 対比 本件発明3と甲2発明とを対比する。 上記「第4」3(2)ア(ア)を踏まえると、本件発明3と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点4] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、 前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記第1表示器は、各々の前記搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における一方側の側面部に配置されている、搬送装置。」 [相違点6] 本件発明3の「接続部材」は、「前記各々の搬送モジュールの状態を表示する第2表示器をさらに備え、前記第2表示器は、前記各々の搬送モジュールの前記スライダの搬送方向に沿って延びる側面における他方側の側面部に配置されている」であるのに対し、甲2発明の「モジュール間接続カード10」は、このような特定がなされていない点。 イ 判断 甲第2号証の第26頁の右図のストレートモータモジュールの図におけるモジュール間接続カード10の配置、及び、第27頁左図におけるカーブモータモジュールの図におけるモジュール間接続カード用スロット12、14の配置関係からすれば、甲2発明の「モジュール間接続カード10」は、ストレートモータモジュール、及び、カーブモータモジュールの端面に設けられたモータモジュール接続カード用スロット12、14に配置されるということができる。 したがって、2つのモータモジュールをモジュール間接続カード10を介して接続した場合、モジュール間接続カード10は、複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17によって形成されるムーバの搬送部の表面に配置はされず(内部に配置され)、外部からモジュール間接続カード10を視認することはできないといえる。 してみると、外部から視認することができないモジュール間接続カード10に、外部から視認できることに意義があるストレートモータモジュールまたはカードモータモジュール各々の状態を表示する表示器を設けることには阻害要因があるといえる。 よって、甲2発明において、相違点6にかかる本件発明3の構成となすことは当業者容易になし得るものではない。 また、甲第1号証、甲第3、4号証にも相違点6にかかる本件発明3の構成に至ることが容易であることを示す記載はない。 なお、参考資料1~3が進歩性を否定するための証拠とはならないことはすでに述べたとおりである。 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲第1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明7について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明7は甲第1号証~甲第4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨主張している。 しかしながら、本件発明7は、本件発明3の発明特定事項を全て含み更に限定したものであり、上記1で述べたように、本件発明3は、甲1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明7も同じ理由により、甲1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明9について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明9は甲第1号証~甲第4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨主張しているので、以下検討する。 (1)甲第1号証を主たる証拠とした進歩性否定の主張について ア 対比 本件発明9と甲1’発明とを対比する。 a 甲1’発明の「筐体」及び「モータ・コイル・アセンブリ」は、それぞれ本件発明9の「モジュール本体」及び「リニアモータ」に相当する。 b 甲1’発明の「PWMボード」は、当業者の技術常識からすると、モータ・コイル・アセンブリに供給されるモータ駆動電力のパルス幅をスイッチング回路によって変化させることでモータの駆動制御を行うものであり、しかも、甲1’発明の「ストレート・モータ・モジュールとカーブ・モータ・モジュールには、制御電力とモータ電源の2系統の電源が接続されている」ことからすると、モータに供給される電力を司る回路と、スイッチングを司る回路の2系統を含んでいる基板であるといえる。 したがって、甲1’発明の「PWMボード」は、本件発明9の「リニアモータの駆動を制御する制御基板」又は「制御基板」と、「リニアモータに電力を供給するモータ電源基板」又は「電源基板」とが合わさったものに相当する(なお、本件特許の明細書の段落【0087】には、「本発明では、制御基板およびモータ電源基板は、共通の基板に制御回路とモータ電源回路とが形成された基板であってもよい。」と記載されている。)。 c 甲1’発明は、「ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体には、制御電源とモータ電源の2系統の電源が接続されている」から、上記bを踏まえると、ストレート・モータ・モジュール筐体と、カーブ・モータ・モジュール筐体には、筐体に接続された2系統の電源から、筐体に内蔵されたPWMボードへ2系統の電力を供給するための2系統の配線が内蔵されていることは明らかであるといえる。 d 上記a~cより、甲1’発明の「トラックを形成する複数のストレート・モータ・モジュールと複数のカーブ・モータ・モジュールは、筐体と筐体に配置されたモータ・コイル・アセンブリと、筐体に内蔵されたPWMボードと、を含み、ストレート・モータ・モジュールとカーブ・モータ・モジュール筐体には、制御電源とモータ電源の2系統の電源が接続されている」ことは、本件発明9の「前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと、前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵されている」ことに相当する。 さらに、上記「第4」3(1)ア(ア)を踏まえると、本件発明9と甲1’発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点5] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと、前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、 前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵されている、搬送装置。」 [相違点7] 本件発明9の「搬送モジュール」は、「前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む」ものであるのに対し、甲1’発明の「ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体」には、「制御電源とモータ電源の2系統の電源が接続されている」とされている点。 イ 判断 甲第1号証の第12頁の図2及び3並びに表3から、ストレート・モータ・モジュール筐体とカーブ・モータ・モジュール筐体には、出力バスコネクタ4と入力バスコネクタ5が設けられていると認められるから、甲第1号証には、本件発明9の「前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む」構成の内、「前記第1配線が接続され、前記モジュール本体の異なる位置に配置された複数の第1端子をさらに含む」に相当する構成が記載されているといえる。 しかしながら、甲第1号証の「出力バスコネクタ4」と「入力バスコネクタ5」は、それぞれ「出力・・・」、「入力・・・」とあるように、入力用と出力用のコネクタとしてそれぞれ定まっており、本件発明9の「電気的に並列な」ものとはいえない。また、甲第1号証には、「出力バスコネクタ4」と「入力バスコネクタ5」を電気的に並列なものとすることの記載も示唆もない。さらに、甲第1号証の「出力バスコネクタ4」と「入力バスコネクタ5」を電気的に並列なものとすることが当業者にとって容易であったとするその他の証拠もない。 したがって、甲1’発明において、相違点7にかかる本件発明9の構成となすことは、当業者が容易になしえたことではない。 よって、本件発明9は、甲1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 相違点7に関し、特許異議申立人は、令和6年3月28日に提出した意見書において、「前述のとおり甲1発明70頁の4. 図および71頁の3. 図で、甲1発明48頁のアイテム1のケーブルA、ケーブルBおよびアイテム2、3のケーブルが各モータ・モジュール裏面の2つの電源バスコネクタからモータ・モジュールに接続される様子が図示されている。各電源バスコネクタは、ケープルAまたはケーブルBおよびアイテム2、3のケーブルに内包される制御配線Aまたは制御配線Bが接続されるコネクタでありモータ・モジュール本体の異なる位置に設置された電気的に並列なA、Bいずれかのコネクタである。また、任意の電源バスコネクタを入力端子にして、他の電源コネクタを出力端子にすることが可能である。以降、電源バスコネクタの制御配線A端子または制御配線B端子を制御配線端子と称する。甲1発明49ページ図21は、トラックの一部で高い電力需要があり高い電流ドローが必要なシステムに対して複数のiTRAK電源が接続される図が開示されている。iTRAK電源1が10台のモータ・モジュールの1番目のグループに電力を提供し、iTRAK電源2が残りの6台のモータ・モジュールに電力を提供する。この2つのグループのDCバスは互いに電気的に絶縁される。ケーブルA、ケーブルBにケーブルCを追加することで、電気的に並列な制御配線A端子、制御配線B端子に追加して制御配線C端子が増設されることで配線配置の自由度がより向上することが開示されている。また、甲4発明16頁のiTRAK動作構成図でiTRAKシステムが垂直、水平、90°直立の3パターンで稼働することが記載されているが、ムーバの長辺を含む面に搬送物が搭載されるいずれの場合も甲1発明に図示されている電源バスコネクタは、ムーバの搬送方向に沿ったモータ・モジュール本体の側面部の異なる位置に配置されていることが明白である。甲1発明、甲4発明に記載の「ムーバの搬送方向に沿ったモータ・モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な2つの制御配線端子をさらに含む、」は、本件発明9の「前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む、」に相当する。よって本件発明9は、甲1発明であるか、または甲1発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、新規性または進歩性を有さず、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項に該当し、取り消されるべきものである。」と主張する(第12頁第6行~第13頁第11行)。 しかしながら、甲第1号証の70頁の4. 図および71頁の3. 図に示されているモータ・モジュール裏面の2つの電源バスコネクタは、甲第1号証の第12頁に記載されているように、一方を、出力バスコネクタ4とし、他方を入力バスコネクタ5とすることにより、甲第1号証の第48頁図20及び第49頁図21で示されるようなiTRAKの出力A及びBを電源としてモータ・モジュールを電源ケーブル2及び3を使用してデイジーチェーン接続する際における、入力用と出力用のコネクタとしてそれぞれ定まっており、電気的に並列なものとはいえない。また、甲第1号証には、出力バスコネクタ4と入力バスコネクタ5を電気的に並列なものとすることの記載も示唆もない。さらに、甲第1号証の出力バスコネクタ4と入力バスコネクタ5を電気的に並列なものとすることが当業者にとって容易であったとするその他の証拠もない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (2)甲第2号証を主たる証拠とした進歩性否定の主張について ア 対比 本件発明9と甲2’発明とを対比する。 甲2’発明の「ムーバ」は、本件発明9の「スライダ」に相当する。 甲2’発明の「ストレートモータモジュール」及び「カーブモータモジュール」は、ムーバをトラック17に沿って搬送するものといえ、本件発明9の「搬送モジュール」に相当する。 したがって、甲2’発明の「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールとトラック17によって形成されるムーバの搬送部」は、本件発明9の「前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部」に相当する。 甲2’発明の「モジュール間接続カード10」は、「ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され」るものであり、これによって、隣接ずるモータモジュール間の信号の伝達をするものと理解することができるから、本件発明9の「接続部材」に相当する。 したがって、甲2’発明の「ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールとは別部材のモジュール間接続カード10が、ストレートモータモジュール間またはストレートモータモジュールとカーブモータモジュール間に配置され」ることは、本件発明9の「隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材」を「前記搬送モジュールとは別個に設け」ることに相当する。 甲2’発明の「ステータスLED」は、ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールのステータス、すなわち、状態を表示するものであり、本件発明9の「第1表示器」に相当する。そして、甲2’発明の「ステータスLED」は、「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部」に設けられた「タイプラベル」に備えられているものである。 したがって、甲2’発明の「複数のストレートモータモジュールと複数のカーブモータモジュールの各々のモータモジュールの正面部には、ステータスLEDが備えられたタイプラベルが設けられている」ことは、本件発明9の「前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器」が「前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ」ていることに相当する。 甲2’発明の「ストレートモータモジュール本体」、及び「カーブモータモジュール本体」は、本件発明9の「モジュール本体」に相当し、甲2’発明の「モータコイル8、13」は、本件発明9の「リニアモータ」に相当する。 したがって、甲2’発明の「複数のストレートモータモジュールストレートモータモジュールには、ストレートモータモジュール本体と、このストレートモータモジュール本体に設けられたモータコイル8が含まれ、複数のカーブモータモジュールには、カーブモータモジュール本体と、このカーブモジュール本体に設けられたモータコイル13が含まれる」ことは、本件発明9の「前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと、前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵されている」こととの対比において、「前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータと」「を含む」との限度で一致する。 甲2’発明の「XTSシステム」は、搬送装置であるといえるから、本件発明9の「搬送装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明9と甲2’発明との間の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点6] 「スライダと、 前記スライダを搬送する複数の搬送モジュールを含む搬送部と、 前記搬送モジュールとは別個に設けられ、隣接する前記搬送モジュールを信号の伝達を可能に接続する接続部材と、前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え、 前記搬送モジュールは、モジュール本体と、前記モジュール本体に設けられたリニアモータとを含んでいる、 搬送装置。」 [相違点8] 本件発明9の「搬送モジュール」は、「前記モジュール本体に設けられ前記リニアモータの駆動を制御する制御基板と、前記リニアモータに電力を供給するモータ電源基板と、前記制御基板に電力を供給する第1配線と、前記モータ電源基板に電力を供給する第2配線と、を含み、前記制御基板、前記モータ電源基板、前記第1配線および前記第2配線は、前記モジュール本体に内蔵されている」とされているのに対し、甲2’発明の「ストレートモータモジュール」及び「カー ブモータモジュール」は、このような特定がされていない点。 [相違点9] 本件発明9の「搬送モジュール」は、「前記第1配線が接続され、前記スライダの搬送方向に沿った前記モジュール本体の異なる位置の側面部に配置された電気的に並列な複数の第1端子をさらに含む」とされているのに対し、甲2’発明の「ストレートモータモジュール」及び「カーブモータモジュール」は、このような特定がされていない点。 イ 判断 事案に鑑み相違点9について検討する。 甲第2号証には、ストレートモータモジュール及びカーブモータモジュールのムーバの搬送方向に沿ったストレートモジュール本体またはカーブモータモジュール本体の異なる位置の側面部に電気的に並列な複数の端子を配置することについては、記載も示唆もされていない。 また、複数の搬送モジュールから構成される搬送装置において、搬送モジュールに電源を供給する配線を接続する端子を、電気的に並列な複数の端子として複数配置することは、甲第1、3及び4並びに参考資料1~3には、記載も示唆もされていないし、当業者において周知・慣用の技術であるとの証拠もない。 したがって、甲2’発明において、相違点9にかかる本件発明9の構成となすことは、甲第1、3及び4並びに参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たことではない。 よって、相違点8について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1~4及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本件発明10について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明10は甲第1号証~甲第4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨主張している。 しかしながら、本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を全て含み更に限定したものであり、上記3で述べたように、本件発明9は、甲1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明10も同じ理由により、甲1~4号証及び参考資料1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 本件発明11について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明11は甲第1号証に記載された発明と実質的な相違点はないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明11に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものである旨主張している。 本件発明11は、本件発明9を引用する本件発明10を引用するものであるから、本件発明9の発明特定事項を全て含み更に限定したものであるといえる。 したがって、上記3(1)で述べたように、本件発明9と甲1’発明との間には実質的な相違点が存在するから、本件発明11は甲第1号証に記載された発明とはいえない。 6 特許法第36条第6項第1号について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項8~12に関し、請求項8~12には、本件特許が解決しようとする課題をどのように解決するのか記載がないから、本件特許の請求項8~12の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることという要件を満たさない旨主張する。 しかしながら、請求項8は本件訂正により削除されており、本件訂正後の請求項9~12には、「前記複数の搬送モジュールの各々に対応して設けられ、前記搬送モジュールの状態を表示する第1表示器と、を備え」という発明特定事項が記載され、かかる発明特定事項により、本件特許が解決しようとする課題である、「複数の搬送モジュールを備える搬送装置において、異常等が発生した場合に、異常等の発生個所を容易に特定することが可能な搬送装置を提供すること」(段落【0006】)が解決できるといえる。 したがって、本件特許の請求項9~12の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることという要件(特許法第36条第6項第1号の規定)を満たすものである。 第6 むすび 以上のとおりであるので、請求項1、3、7、9~12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に、請求項1、3、7、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2及び8は、上記「第2」のとおり訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700676

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