審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-700353

自動着脱機構付吊上げ昇降装置

審判番号
2022-700353
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-042490
登録番号
6986847
請求日
2022年04月26日
審決日
2023年03月06日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】トーヨーカネツ株式会社
  • 【権利者代理人】友野 英三
  • 【異議申立人】寺元 恵正
審判長/審判官
  • 審判長 平田 信勝
  • 審判官 内田 博之
  • 審判官 尾崎 和寛
分類
P1652.113-YAA(B65G) / P1652.121-YAA(B65G) / P1652.537-YAA(B65G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6986847号発明「自動着脱機構付吊上げ昇降装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6986847号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第6986847号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6986847号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年3月7日に出願され、令和3年12月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、特許異議申立人寺元恵正(以下「異議申立人」という。)により、請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 4月26日 :異議申立人による特許異議の申立て 令和4年 9月28日付け:取消理由通知書 令和4年12月 5日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和5年 1月13日 :異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年12月5日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 [訂正事項] 特許請求の範囲の請求項1に、 「移動・固定機構」 と記載されているものを、 「移動・固定機構であって、前記コンベアの低所端部の上部両サイド側において前記作業空間に係る天井から吊下げられる金具に掛かり止めされる移動・固定機構」 に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 上記訂正事項に係る訂正前の請求項1について、訂正前の請求項2~6は、訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、上記訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して記載が訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6は一群の請求項であるから、訂正前の請求項1に係る訂正である上記訂正事項は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。 3 訂正の要件 (1)訂正の目的の適否 上記訂正事項は、訂正前の請求項1における「移動・固定機構」を、 「移動・固定機構であって、前記コンベアの低所端部の上部両サイド側において前記作業空間に係る天井から吊下げられる金具に掛かり止めされる移動・固定機構」に限定するものである。 よって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項は、上記(1)のとおり、訂正前の請求項1に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)新規事項の有無(下線は当審で付した。以下同様。) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の段落【0021】には、「傾斜型コンベヤの低所側端部の近傍には吊り上げるためのフック構造を具備した吊上げ機構部を有し、吊上げ機構部の上部に連結した鎖(鎖又はローラーチェーンやワイヤー等)を介して天井部にクレーンのような吊上げる装置によって吊り上げられる。」と記載され、段落【0039】には「図2に示すように、吊上げ機構部20は略門状形態をしており、その両足部18は傾斜型コンベヤ11の両サイド側に連結されている。(省略)」と記載され、段落【0040】には「図2に示したように天井部14のクレーン15の両側には、天井部から天井吊下げ金具24が強固に設置されている。天井吊下げ金具24の下側先端部は略棒状の金具パイプであり、傾斜型コンベヤの重量に十分耐えうる強度を具備することは言うまでもない。一方、吊上げ機構部21の上部両側には、掛かり止めフック機構部22が敷設されており、この掛り止めフック機構部22のフックが、天井吊下げ金具24の下部先端の棒状金具パイプに掛かり止めされる。」と記載され、段落【0041】には「大きな重量を有する傾斜型コンベヤ11を片支持の態様で天井クレーン15によって吊り上げて固定させるのは、天井クレーン15からの鎖16による固定のみではなく、吊上げ機構部21の両側に敷設した掛り止めフック機構部22を天井吊下げ金具24に掛かり止めすることにより、より安全な固定を確実なものとしている。また、掛り止めフック機構部22による掛り止めは、中空状態にある傾斜型コンベヤ11の振動・揺れ防止にも寄与している。」と記載されており、これらの記載に加えて【図2】の記載内容を併せれば、作業空間に係る天井から吊下げられる金具である「天井吊下げ金具24」に、傾斜型コンベヤ11・12の低所端部の上部両サイド側において、移動・固定機構の一部である「掛かり止めフック機構部22」が、掛かり止めされる構成が把握できるから、上記訂正事項は明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 請求項5及び6に係る特許には、特許異議申立がされていないところ、上記訂正事項にともなって特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされていることから、訂正後の請求項5及び6に係る発明について、独立特許要件について検討することとする。 請求項5及び6に係る発明は、下記「第3」に示すとおり、請求項1の記載を間接的に引用してさらに限定するものであるところ、下記「第5」に示すとおり、請求項1に係る発明は、異議申立理由として示された証拠に照らしても、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項並びに同法第36条第6項第2号に規定された特許要件を満たさないものとはいえず、さらに、他に取り消すべき理由も見いだせないことから、請求項1に係る発明をさらに限定した請求項5及び6に係る発明が、独立特許要件を満たさないとする理由はない。 (5)小括 上述のとおり、上記訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 物品搬送コンベヤラインにおいて単独に設置又は連結された傾斜型コンベヤと、 前記傾斜型コンベヤの下部方向に作業空間を設けるために前記コンベヤの低所端部近傍を片支持で上部方向に移動可能とする移動手段と、 前記傾斜型コンベヤを前記移動手段によって前記上部方向に移動させて固定するための移動・固定機構であって、前記コンベアの低所端部の上部両サイド側において前記作業空間に係る天井から吊下げられる金具に掛かり止めされる移動・固定機構と を具備し、 任意に前記傾斜型コンベヤを移動吊上げ固定による撤去及び再設置ができることによりフロアー活用の多様性を確保することができることに特徴を有する自動着脱機構付吊上げ昇降装置。 【請求項2】 物品搬送コンベヤラインにおいて単独に設置又は連結された傾斜型コンベヤと、 前記傾斜型コンベヤに敷設された吊上げ機構部と、 前記吊上げ機構部の上部に敷設される掛り止めフック機構部と、 前記傾斜型コンベヤの下部と前記吊上げ機構部とを回転・回動可能に連結するヒンジ機構連結部と、 天井部に設置されて前記吊上げ機構部に連結して天井方向より前記傾斜型コンベヤを片支持形態で吊上げる装置と、 前記掛り止めフック機構部を前記天井部から吊下げ固定する天井吊下げ金具機構部と を具備し、 任意に傾斜型コンベヤを片支持吊上げによる撤去及び再設置できることによりフロアー活用の多様性を確保することができることに特徴を有する請求項1に記載の自動着脱機構付吊上げ昇降装置。 【請求項3】 前記吊上げ機構部と前記傾斜型コンベヤとの連結部が回動可能なヒンジ構造であることに特徴を有する請求項2に記載の自動着脱機構付吊上げ昇降装置。 【請求項4】 前記吊上げ機構部の略上部には前記天井吊下げ金具との掛かり止めフック機構を具備することに特徴を有する請求項2または3に記載の自動着脱機構付吊上げ昇降装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 当審が令和4年9月28日付けで特許権者に訂正前の請求項1に係る発明について通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (新規性)請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消すべきものである。 (進歩性)請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許は取り消すべきものである。 引用文献1:特許第4635646号公報(異議申立人の甲第1号証) 引用文献2:実公昭46-23225号公報(異議申立人の甲第4号証) 第5 当審の判断 1 引用文献に記載の事項等 (1)引用文献1に記載された事項及び引用発明 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付したもの。以下同様。)。 ア「【0001】 本発明は、収穫した人参や大根等を洗浄する洗浄装置に関するものである。」 イ「【0007】 本発明は、上記課題を解決するために次の技術的手段を用いる。 すなわち、請求項1記載の発明においては、作物と水とを収容可能な収容タンク(A)を設け、該収容タンク(A)内に作物を持ち上げ搬送する搬送コンベア(B)を設け、該搬送コンベア(B)で持ち上げ搬送した作物を収容して洗浄する洗浄装置(C)を設けた作物洗浄装置において、前記搬送コンベア(B)の搬送始端部を略平坦に形成すると共に、搬送途中から搬送終端側にかけて斜め上方向に向かって形成し、前記搬送コンベア(B)を搬送終端側を支点にして搬送始端側が回動する構成とし、該搬送コンベア(B)の搬送途中から搬送終端側に沿って収容タンク(A)の底部に斜め上方向の傾斜部(3)を形成し、前記洗浄装置(C)内に作物を洗浄する複数の洗浄ロール(15)を略U字状に配置して洗浄列(K1,K2)を形成し、該洗浄ロール(15)の洗浄始端側と収容タンク(A)の傾斜部(3)とを隣接させて空間部(T)を形成し、該洗浄ロール(15)を駆動させる駆動モータ(29)を洗浄ロール(15)よりも下方で且つ空間部(T)に突出させて配置し、前記搬送コンベア(B)の搬送始端側に軸(15)を支点に回動する回動傾斜板(16)を設け、該回動傾斜板(16)に吊りフック(18)を設けたことを特徴とする作物洗浄装置とする。」 ウ「【0019】 …支持フレーム12の搬送始端側には軸15を支点に回動する回動傾斜板16と、搬送コンベアBを下側から支持する支持脚17を取り付け、回動傾斜板16には吊りフック18を取り付けている。なお、19は作業者が吊りフック18に引っ掛けて持ち上げる吊り具である。…」 エ「【0020】 21は搬送コンベアBを回動させる回動支点で、搬送コンベアBの搬送始端側を上下方向に回動可能に構成している。回動方法について詳述すると、作業者が回動傾斜板16を回動させ、吊り具19等をフックに18引っ掛けて持ち上げる。すると、図3に示すように回動支点21を支点に搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がる構成としている。」 オ「【0030】 水を張った収容タンクAに、作業者は収穫したニンジン等の作物を投入する。収容タンクA内に投入された作物は、傾斜部4及び回動傾斜板2により収容タンクAの左右中央部にある搬送コンベアBの搬送始端側に集められ、搬送コンベアBで搬送される。…」 カ「【0031】 作物を持ち上げ搬送したコンベア10が作物を放出した後、傾斜部3と対向しながら移動するときにコンベア10から落下した泥は傾斜部3により泥溜まり部5に堆積されていく。」 キ「【0034】 収容タンクAの泥溜まり部5に堆積した泥を作業者が掻きだす時には、…作業者は回動傾斜板16を回動させ、吊り具19等をフックに18引っ掛けて持ち上げ、回動支点21を支点に搬送コンベアBの搬送始端側を持ち上げる。そして、たとえば持ち上げた搬送コンベアBと収容タンクAとの間を角棒等をかちこみ搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定するようにする。…」 上記記載事項ア~キ及び図1~3等の記載からみて、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「作物と水とを収容可能な収容タンクAを設け、前記収容タンクA内に作物を持ち上げ搬送する搬送コンベアBを設け、前記搬送コンベアBで持ち上げ搬送した作物を収容して洗浄する洗浄装置Cを設けた作物洗浄装置において、 前記搬送コンベアBの搬送始端部を略平坦に形成すると共に、搬送途中から搬送終端側にかけて斜め上方向に向かって形成し、前記搬送コンベアBを搬送終端側の回動支点21を支点にして搬送始端側が回動する構成とし、前記搬送コンベアBの搬送始端側に軸15を支点に回動する回動傾斜板16を設け、前記回動傾斜板16に吊りフック18を設けるように構成し、 作業者が前記回動傾斜板16を回動させ、吊り具19を前記吊りフック18に引っ掛けて持ち上げると、前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がり、持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定することにより、前記収容タンクAに堆積した泥を作業者が掻きだすことができる、作物洗浄装置。」 (2)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア「この考案は船舶内の吊甲板等の格納体を垂直の方向に格納する場合の自動的に嵌装、離脱のできるストツパーに関するものである。」(第1欄第16~18行) イ「船体の甲板1の裏面に取り付けたピン接手2に吊着したフツク体4の両側にボルト5とナツト6で取り付けた爪杆7,7の先端を押板8で連結した爪体の先端がフツク体の先端部分9に接するようになし、格納体10に関着した連結杆11の左右の側杆12,12の先端を連結する横杆13をフツク体の鉤部14に、格納体10の上下動による側杆12,12の昇降によつて嵌装と離脱を自動的に操作させるようになした自動嵌脱式ストツパー。」(第2欄第24~33行、実用新案登録請求の範囲) 2 取消理由通知で通知した取消理由について (1)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 ア 後者の「搬送コンベアB」は、「前記搬送コンベアBの搬送始端部を略平坦に形成すると共に、搬送途中から搬送終端側にかけて斜め上方向に向かって形成」するものであるから、前者の「傾斜型コンベヤ」に相当する。また、後者の「作物」は、前者の「物品」に相当する。 イ 後者の「作物洗浄装置」は、「作物を持ち上げ搬送する搬送コンベアB」を設け、「収容タンクA」から「洗浄装置C」に向けて作物を搬送するものであるから、前者の「物品搬送コンベヤライン」に相当する。 ウ 後者の「作物洗浄装置」の「前記収容タンクA内に作物を持ち上げ搬送する搬送コンベアBを設け」ることは、前者の「物品搬送コンベヤラインにおいて」「傾斜型コンベヤ」を「単独に設置」することに相当する。また、後者の「前記搬送コンベアBを搬送終端側の回動支点21を支点にして搬送始端側が回動する構成とし」は、「作物洗浄装置」において「搬送コンベアB」が機械的に「連結」されている態様を示しているから、前者の「物品搬送コンベヤラインにおいて」「傾斜型コンベヤ」を「単独に」「連結」することに相当する。 エ 後者の「前記搬送コンベアBの搬送始端部」又は「前記搬送コンベアB」の「搬送始端側」は、前者の「前記コンベヤの低所端部近傍」に相当する。 オ 後者の「前記搬送コンベアBを搬送終端側の回動支点21を支点にして搬送始端側が回動する構成と」することは、前者の「前記コンベヤの低所端部近傍を片支持で」「移動可能とする」ことに相当する。 カ 後者の「前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がり」は、前者の「前記コンベヤの低所端部近傍を」「上部方向に移動」することに相当する。 キ 後者の「回動傾斜板16」、「吊りフック18」及び「吊り具19」は、「作業者が前記回動傾斜板16を回動させ、吊り具19を前記吊りフック18に引っ掛けて持ち上げる」ことにより、「前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上が」る作用を奏するものであるから、前者の「前記コンベヤの低所端部近傍を片支持で上部方向に移動可能とする移動手段」に相当する。 ク 後者においては、「前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上が」ると「前記収容タンクAに堆積した泥を作業者が掻きだすことができる」のであるから、後者の「回動傾斜板16」、「吊りフック18」及び「吊り具19」の作用により、「持ち上げた前記搬送コンベアB」の下に「収容タンクAに堆積した泥を作業者が掻きだす」空間が設けられるといえる。 そうすると、上記エ~キを踏まえると、後者の「回動傾斜板16」、「吊りフック18」及び「吊り具19」は、前者の「前記傾斜型コンベヤの下部方向に作業空間を設けるために前記コンベヤの低所端部近傍を片支持で上部方向に移動可能とする移動手段」に相当する。 ケ 後者の「持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定する」構成は、前者の「前記傾斜型コンベヤを前記移動手段によって前記上部方向に移動させて固定するための移動・固定機構」に相当する。 コ 後者の「前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定する」態様は、前者の「前記傾斜型コンベヤを移動吊上げ固定」する態様に相当する。また、後者の「前記搬送コンベアBを持ち上げた状態」は前者の「撤去」に、後者の「前記搬送コンベアBを持ち上げた状態」を「持ち上げ」前の状態に戻すことは、前者の「再設置」にそれぞれ相当する。さらに、後者の「搬送コンベアB」の「持ち上げ」が「作業者」により行われることは、前者の「任意に」「撤去及び再設置ができること」に相当する。 サ 上記コによれば、後者の「作業者が前記回動傾斜板16を回動させ、吊り具19を前記吊りフック18に引っ掛けて持ち上げると、前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がり、持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定すること」は、前者の「任意に前記傾斜型コンベヤを移動吊上げ固定による撤去及び再設置ができること」に相当する。 シ 後者の「前記収容タンクAに堆積した泥を作業者が掻きだすことができる」ことは、上記クによれば、作物を洗浄する空間たる「収容タンクA」に「収容タンクAに堆積した泥を作業者が掻きだす」空間が設けられることを示しているから、前者の「フロアー活用の多様性を確保することができること」に相当する。 ス 後者の「作物洗浄装置」は、「搬送コンベアBを設け」「前記搬送コンベアBの搬送始端側に軸15を支点に回動する回動傾斜板16を設け、前記回動傾斜板16に吊りフック18を設けるように構成し」「作業者が前記回動傾斜板16を回動させ、吊り具19を前記吊りフック18に引っ掛けて持ち上げると、前記回動支点21を支点に前記搬送コンベアBの搬送始端側が持ち上がり、持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定する」ものであるから、上記ア~シに照らして、前者の「傾斜型コンベヤ」と「移動手段」と「移動・固定機構」とを「具備」する「吊上げ昇降装置」に相当するといえる。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりといえる。 [一致点] 「物品搬送コンベヤラインにおいて単独に設置又は連結された傾斜型コンベヤと、 前記傾斜型コンベヤの下部方向に作業空間を設けるために前記コンベヤの低所端部近傍を片支持で上部方向に移動可能とする移動手段と、 前記傾斜型コンベヤを前記移動手段によって前記上部方向に移動させて固定するための移動・固定機構と を具備し、 任意に前記傾斜型コンベヤを移動吊上げ固定による撤去及び再設置ができることによりフロアー活用の多様性を確保することができる吊上げ昇降装置。」 [相違点1] 「移動・固定機構」によって固定される構成が、本件発明1は「前記コンベアの低所端部の上部両サイド側において前記作業空間に係る天井から吊下げられる金具に掛かり止めされる」ものであるのに対し、引用発明は、「持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定する」ものである点。 [相違点2] 本件発明1は、「自動着脱機構付吊上げ昇降装置」であるのに対して、引用発明は、「自動着脱機構付」であることが特定されていない点。 (2)検討 上記相違点1について検討する。 引用発明は、「持ち上げた前記搬送コンベアBと前記収容タンクAとの間に角棒をかちこみ前記搬送コンベアBを持ち上げた状態で固定する」ものであって、引用文献1には、搬送コンベアBを、その上部両サイド側で天井から吊下げられる金具に掛かり止めする構成は、記載も示唆もされていない。 また、引用文献2には、「吊甲板等の格納体」を掛かり止めする構成は記載されているものの、コンベアを、コンベアの低所端部の上部両サイド側で天井から吊下げられる金具に掛かり止めする構成は、記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得たこととはいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明ではなく、また、本件発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由及び異議申立人の主張について (1)特許法第29条第1項第3号及び第2項について 異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証(引用文献1)及び甲第4号証(引用文献2)に加えて、甲第2号証として実公昭62-40981号公報を、甲第3号証として実願昭50-133870号(実開昭52-46489号)のマイクロフィルムを提示し、 ア 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用発明及び甲第2~3号証に記載された技術的事項に基いて、また、請求項2~4に係る発明は、引用発明及び甲第2~4号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、 旨主張し、また、令和5年1月13日付け意見書において、 イ 本件発明1は、引用発明、引用文献2(甲第4号証)に記載された技術的事項及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、 旨主張する。 しかしながら、甲第2号証にはレール16に吊り下げ案内されるホイスト17で後半シュート6Bの終端側部に係脱可能なワイヤー18で吊る構成(第4欄29~34行、第2図等参照。)が記載されており、また、甲第3号証には、コンベア装置6の各被係合具10に、縦杆29の係合片30を90°回転させて係合する構成(明細書第3ページ末行~第4ページ8行等参照。)が記載されており、甲第4号証(引用文献2)には、「吊甲板等の格納体」を掛かり止めする構成が記載されているものの、コンベアの低所端部の上部両サイド側で天井から吊下げられる金具に掛かり止めする構成で自動着脱機構付き吊り上げ昇降装置としたものは、甲第2~4号証のいずれにも記載されていない。 よって、本件発明1は、引用発明及び甲第2~4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1の全ての発明特定事項を備えた本件発明2~4も同様の理由で、引用発明及び甲第2~4号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、異議申立人の上記の主張は採用しない。 (2)特許法第36条第6項第2号について ア「フロアー活用の多様性を確保」について 異議申立人は、特許異議申立書において、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された「任意に傾斜型コンベヤを片支持吊上げによる撤去及び再設置できることによりフロアー活用の多様性を確保することができる」との事項について、具体的にどのような作業を何種類できれば「フロアー活用の多様性を確保」できたことになるのかを理解することができず、当業者であっても請求項1及び2に係る発明の範囲を特定することは不可能であり、請求項1及び2に係る発明は明確でない旨主張する。 しかしながら、請求項1及び2に係る発明においては、傾斜型コンベヤを、片支持吊上げにより撤去した際に、片支持吊上げによる撤去をしない場合より、少しでもフロアー活用の多様性が確保できれば充分であることは明らかであり、請求項1及び2に係る発明は明確であるといえるので、異議申立人の上記の主張は採用しない。 イ「掛かり止めされる」について 異議申立人は、令和5年1月13日付け意見書において、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された「掛かり止めされる」との記載は不明確であり、「左右両側から規制する」との効果が奏されるように「掛かり止めされる」構成が特定されるべきであるとし、請求項1に係る発明は明確でない旨主張する。 しかしながら、「掛かり止めされる」構成は、ひっかけて止める構成全般を指すもものであって、意味は明確であるし、「コンベアの低所端部の上部両サイド側において前記作業空間に係る天井から吊下げられる金具に掛かり止めされる」ことで、両サイド、つまり左右両側から規制する構成となることは明らかであるから、異議申立人の上記の主張は採用しない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700353

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決35件(トーヨーカネツ株式会社、寺元 恵正)
  • 2023-701025異議申立 / 2024-11-15 / 訂正認容物流システム
    同じ当事者: トーヨーカネツ株式会社
  • 2022-700228異議申立 / 2023-09-25 / 請求成立(取消)コンベヤ装置
    同じ当事者: トーヨーカネツ株式会社
  • 2017-700003異議申立 / 2018-07-27 / 請求成立(取消)貯槽構造および貯槽の施工法
    同じ当事者: トーヨーカネツ株式会社
  • 2024-701055異議申立
    同じ当事者: トーヨーカネツ株式会社
  • 2024-018761拒絶査定不服審判 / 2026-02-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)GTP原則に従って物品をピッキングするための方法およびステーション
    同じ当事者: トーヨーカネツ株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)219件(113・B65G、121・B65G、537・B65G)
  • 2023-700676異議申立 / 2024-09-27 / 訂正認容搬送装置
    共通の審決分類: 113・B65G、121・B65G、537・B65G
  • 2018-700487異議申立 / 2019-09-04 / 訂正認容AR/VRを利用した物品収納補助装置及びシステム
    共通の審決分類: 113・B65G、121・B65G、537・B65G
  • 2024-016987拒絶査定不服審判 / 2026-03-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)搬送装置、倉庫物流システム及びパレット搬送方法
    共通の審決分類: 113・B65G、121・B65G、537・B65G
  • 2024-018761拒絶査定不服審判 / 2026-02-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)GTP原則に従って物品をピッキングするための方法およびステーション
    共通の審決分類: 113・B65G、121・B65G、537・B65G
  • 2024-007909拒絶査定不服審判 / 2025-07-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)一時保管層板、棚、制御方法、装置、デバイス及びシステム
    共通の審決分類: 113・B65G、121・B65G、537・B65G

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存