特許異議申立
2023-701025
物流システム
- 審判番号
- 2023-701025
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-063992
- 登録番号
- 7247436
- 請求日
- 2023年09月26日
- 審決日
- 2024年11月15日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】トーヨーカネツ株式会社
- 【権利者代理人】友野 英三
- 【異議申立人】上西 敏文
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-YAA(B65G) / P1651.537-YAA(B65G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7247436号発明「物流システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7247436号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
特許第7247436号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7247436号の請求項1~2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
平成30年 3月29日 出願
令和 5年 3月20日 特許権の設定登録
令和 5年 3月29日 特許掲載公報
令和 5年 9月26日 特許異議申立人 上西敏文(以下「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 5年11月27日付け 取消理由通知書
令和 6年 3月 4日 特許権者による意見書の提出
令和 6年 4月 3日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和 6年 6月 7日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 9月24日 特許異議申立人による意見書の提出
以下、令和6年6月7日に提出された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第7247436号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に、
「水平長手及び垂直方向に碁盤目状に配列してなる格納棚から構成される格納部と、
前記格納棚の物品又は物品収納容器を出し入れ可能な格納面の水平長手方向に走行し、前記物品又は物品収納容器を自在に出し入れすることができる走行台車と、
前記走行台車が走行するための走行レールと、
前記走行台車が、前記格納面において往復移動できる走行空間と、
前記物品又は物品収納容器を垂直方向に往復移動するための物品又は物品収納容器載置搬送手段が付設された昇降手段と、
前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する仮置き搬送手段と、
前記物品又は物品収納容器の前記格納部の入出庫部と、
前記格納部から所定の前記物品又は物品収納容器を出庫させる出庫搬送手段と、
前記格納部へ所定の前記物品又は物品収納容器を入庫させる入庫搬送手段と、
前記出庫搬送手段と前記入庫搬送手段との間に介設される物品又は物品収納容器提示機構と、
前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設される、所定の前記物品又は物品収納容器が移載される出荷容器を最終出荷工程まで搬送する搬送機能と、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能とを兼備する出荷容器搬送機構と、
を配備していることを特徴とする物流システム。」と記載されているものを、
「水平長手及び垂直方向に碁盤目状に配列してなる格納棚から構成される格納部と、
前記格納棚の物品又は物品収納容器を出し入れ可能な格納面の水平長手方向に走行し、前記物品又は物品収納容器を自在に出し入れすることができる走行台車と、
前記走行台車が走行するための走行レールと、
前記走行台車が、前記格納面において往復移動できる走行空間と、
前記物品又は物品収納容器を垂直方向に往復移動するための物品又は物品収納容器載置搬送手段が付設された昇降手段と、
前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する仮置き搬送手段と、
前記物品又は物品収納容器の前記格納部の入出庫部と、
前記格納部から所定の前記物品又は物品収納容器を出庫させる出庫搬送手段と、
前記格納部へ所定の前記物品又は物品収納容器を入庫させる入庫搬送手段と、
前記出庫搬送手段と前記入庫搬送手段との間に介設される物品又は物品収納容器提示機構と、
前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設される、所定の前記物品又は物品収納容器が移載される出荷容器を最終出荷工程まで搬送する搬送機能と、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能とを兼備する出荷容器搬送機構と、
を配備していることを特徴とする物流システム。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(訂正事項2)
明細書の段落【0016】に、
「このような物流システムにより、立体自動倉庫において、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分けを伴う出庫作業、更には、格納部内の物品等の再配置、整理・整頓、処分等の処理作業を効率的に行うことが可能となるが、新たな問題を内在している。それは、図6に示すように、収納容器提示コンベヤ23及び集品空容器提示部9とからなるピッキングステーションGTPから出庫された物品等は、品種別、送付先方面別、顧客別等の分類を全て同時に出庫処理作業として行うことができないため、荷合せという仕分け作業を行った後、梱包・出荷されなければならず、格納部1からの出庫が滞りなく行われるに従い、集品容器7が荷合せ部13に集中し、滞留するため、物流の律速段階となる場合が生じることである。」と記載されているのを、
「このような物流システムにより、立体自動倉庫において、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分けを伴う出庫作業、更には、格納部内の物品等の再配置、整理・整頓、処分等の処理作業を効率的に行うことが可能となるが、新たな問題を内在している。それは、図6に示すように、収納容器提示コンベヤ23及び集品空容器提示部9とからなるピッキングステーションGTPから出庫された物品等は、品種別、送付先方面別、顧客別等の分類を全て同時に出庫処理作業として行うことができないため、荷合せという作業を行った後、梱包・出荷されなければならず、格納部1からの出庫が滞りなく行われるに従い、集品容器7が荷合せ部13に集中し、滞留するため、物流の律速段階となる場合が生じることである。」に訂正する。
2 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
本件訂正前の請求項1には「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能」と記載されているが、明細書には「荷分け」という用語に関する説明がないため、何を同時に行う機能であるのか不明瞭な記載であった。訂正事項1に係る本件訂正は、上記記載を、明細書の【0031】、【0036】等に記載された「荷合せ」を用いて「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か
明細書では「荷分け」という用語が使用されていないため、訂正前の請求項1における「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能」の実質的な意味について検討する。
明細書には、従来の物流システムについて【0015】に「作業者11n+1によって、収納容器61n+1の物品Eが集品空容器7n+1に移載される。」と記載され、【0016】には「品種別、送付先方面別、顧客別等の分類を全て同時に出庫処理作業として行うことができないため、荷合せという仕分け作業を行った後、梱包・出荷されなければならず、格納部1からの出庫が滞りなく行われるに従い、集品容器7が荷合せ部13に集中し、滞留するため、物流の律速段階となる場合が生じることである。」と記載され、【0017】には「この荷合せで生じる問題は、例えば、図7に示すように、出荷空容器搬送コンベヤ131から送付先方面ごとの出荷空容器12が出荷空容器提示部133に供給されると共に、立体自動倉庫から集品容器搬送コンベヤ102を経由して、品種別に分類された物品A~Jが入っている集品容器71が出荷容器提示部133に順出しされ、送付先方面ごとに物品が集約される作業で、自動化することが困難な工程であることに起因している。」と記載されており、発明が解決しようとする課題について【0022】には「本発明は、立体自動倉庫において、出庫から出荷までを含めた効率的で自動化された物流システムを簡便な機構で提供することを目的としている。」と記載されている。これらの記載から、従来の物流システムでは、収納容器から集品容器に移載して品種別に出庫した後、送付先方面ごとに出荷容器に集約する荷合せを行い、梱包・出荷していたところ、図7に示される荷合せ部13の作業を自動化することが困難であったことから、品種別に順出しされる出庫から、送付先方面ごと等に集約する荷合せを行って梱包・出荷するまでを含めた効率的で自動化された物流システムを提供することが本件発明の課題であると理解される。
そして、当該課題の解決手段について【0026】には「つまり、本発明の物流システムの技術思想は、仕分け、出庫、及び、荷合せの各作業を一体化することが可能な機構を立体自動倉庫に付設させたことである。」と記載され、【0031】には「このような物品等収納容器提示機構及び第一の出荷容器搬送機構を、入出庫物品等搬送手段から入庫された物品等が、予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫に付設することによって、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分け、出庫、及び、荷合せを一体化することが可能となる。」と記載され、【0045】には「図10の平面図は、図2の立体自動倉庫の入出庫部2に、収納容器提示コンベヤ23、並びに、出荷空容器搬送コンベヤ131、及び、出荷空容器提示部133、及び、出荷容器搬送コンベヤ142から成る第一の出荷容器搬送機構を付設した物流システムの平面模式図である。」と記載され、【0050】には「作業員11nが移動することなく、その場で、物品Dの収納容器61nから出荷容器12nへの移載が完了し、出荷容器121nとして出荷容器搬送コンベヤ142で搬送される。」と記載されている。これらの記載から、収納容器提示コンベヤ23と出荷空容器提示部133とを並設し、予め決められた順番どおりに収納容器を出庫させることで、集品容器への移載を介さなくても物品の収納容器から出荷容器へ移載すれば、出荷のための仕分けが完結する、すなわち、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化することを可能にしたことが、課題解決手段であると理解される。
そうすると、訂正前の請求項1における「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能」とは、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化する機能であると理解される。また、訂正後の請求項1における「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」も物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化する機能であると理解される。
したがって、訂正前の「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能」と訂正後の「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」とは同じ意味であるから、訂正事項1に係る本件訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の追加の有無
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、【0026】に「つまり、本発明の物流システムの技術思想は、仕分け、出庫、及び、荷合せの各作業を一体化することが可能な機構を立体自動倉庫に付設させたことである。」と記載され、【0031】には「このような物品等収納容器提示機構及び第一の出荷容器搬送機構を、入出庫物品等搬送手段から入庫された物品等が、予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫に付設することによって、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分け、出庫、及び、荷合せを一体化することが可能となる。」と記載され、【0036】には「予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫に付設されることによって、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分け、出庫、及び、荷合せを一体化することが可能となり、簡便な機構で、最終的な出荷作業までを含めた効率的で自動化された物流システムが構築される。」と記載されているから、本件特許明細書等には、「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」が記載されていると認められる。
そうすると、訂正事項1に係る本件訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る本件訂正は、【0016】における「図6に示すように、収納容器提示コンベヤ23及び集品空容器提示部9とからなるピッキングステーションGTPから出庫された物品等は、品種別、送付先方面別、顧客別等の分類を全て同時に出庫処理作業として行うことができないため、荷合せという仕分け作業を行った後、梱包・出荷されなければならず、」との記載を、「図6に示すように、収納容器提示コンベヤ23及び集品空容器提示部9とからなるピッキングステーションGTPから出庫された物品等は、品種別、送付先方面別、顧客別等の分類を全て同時に出庫処理作業として行うことができないため、荷合せという作業を行った後、梱包・出荷されなければならず、」と訂正することで、梱包・出荷前の作業内容について誤解のないように釈明するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものか否か
本件特許明細書には、「仕分け」について次のように記載されている。
・「物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分けを伴う出庫作業」(【0016】【0020】【0022】)
・「物品等を品種別、送付先方面別、顧客別等に分ける仕分け、」(【0028】【0034】)
・「品種別、送付先方面別、顧客別等に分ける仕分け」(【0030】)
また、本件特許明細書には、「荷合せ」について次のように記載されている。
・「この荷合せで生じる問題は、例えば、図7に示すように、出荷空容器搬送コンベヤ131から送付先方面ごとの出荷空容器12が出荷空容器提示部133に供給されると共に、立体自動倉庫から集品容器搬送コンベヤ102を経由して、品種別に分類された物品A~Jが入っている集品容器71が出荷容器提示部133に順出しされ、送付先方面ごとに物品が集約される作業で、自動化することが困難な工程であることに起因している。」(【0017】)
・「出荷容器提示機構が荷合せの機能を有している。」(【0033】)
・「予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫から供給される仕分けされた物品等の更なる仕分けによって、出庫及び荷合せをも一体化することが可能となり」(【0038】)
・「GTP-1において、収納容器から必要な数量だけ、例えば、ある送付先方面の出荷空容器に移載される。そして、この出荷容器は、出荷空容器と出荷容器の搬送を兼ねたコンベヤで搬送され、この送付先方面の出荷容器に仕分けされるべき物品等をGTP-3で更に移載した後、直ちに出荷容器搬送コンベヤで梱包・出荷部14に移動され、出荷される。すなわち、本発明の、物品等収納容器提示コンベヤ、出荷空容器提示部、出荷空容器搬送コンベヤ、及び、出荷容器搬送コンベヤから構成されるシステムは、従来の荷合せに相当する機能を有している。従って、本発明によれば、格納棚への入庫から送付先への出荷までがほぼ完全に自動化された物流が提供される。」(【0043】)
・「収納容器提示コンベヤ23と出荷空容器提示部133の位置関係は、作業者11が移動することなく、収納容器提示コンベヤ23に供給された収納容器61から出荷空容器提示部133に供給された出荷空容器12への物品等の移載が可能である距離にあることである。そして、出荷空容器搬送コンベヤ131、出荷容器搬送コンベヤ、及び、142出荷空容器提示部133が、従来の荷合せ部13に相当する機能を発揮する。」(【0048】)
これらの記載から、「仕分け」とは、物品等を品種別、送付先方面別、顧客別等に分ける作業であることがわかる。
また、出荷容器は送付先方面ごとの容器であることがわかるとともに、この送付先方面ごとの出荷容器に物品を移載する作業が「荷合せ」であることがわかる。
さらに、送付先方面ごとの出荷容器に物品を移載する作業は送付先方面別や顧客別等に分ける作業であると解されること、送付先方面の出荷容器に物品を移載する作業は仕分けとも称されている(【0038】参照)ことから、「荷合せ」とは「仕分け」のうち送付先方面別、顧客別等に分ける作業であることがわかる。
そうすると、梱包・出荷の前に行われる作業について、「荷合せという仕分け作業」を「荷合せという作業」に訂正しても、その作業内容は実質的に同じであるから、訂正事項2に係る本件訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項2に係る本件訂正は、【0016】に記載されている梱包・出荷の前に行われる作業について、「荷合せという仕分け作業」を「荷合せという作業」に訂正するものであるところ、本件訂正前の「荷合せという仕分け作業」と本件訂正後の「荷合せという作業」とは、上記イで検討した通り実質的に同じ作業内容であるから、訂正事項2に係る本件訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2は請求項1を引用する関係であるから、請求項1~2は一群の請求項である。そして、本件訂正は、請求項1~2について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~2に係る発明(以下「本件発明1」「本件発明2」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
水平長手及び垂直方向に碁盤目状に配列してなる格納棚から構成される格納部と、
前記格納棚の物品又は物品収納容器を出し入れ可能な格納面の水平長手方向に走行し、前記物品又は物品収納容器を自在に出し入れすることができる走行台車と、
前記走行台車が走行するための走行レールと、
前記走行台車が、前記格納面において往復移動できる走行空間と、
前記物品又は物品収納容器を垂直方向に往復移動するための物品又は物品収納容器載置搬送手段が付設された昇降手段と、
前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する仮置き搬送手段と、
前記物品又は物品収納容器の前記格納部の入出庫部と、
前記格納部から所定の前記物品又は物品収納容器を出庫させる出庫搬送手段と、
前記格納部へ所定の前記物品又は物品収納容器を入庫させる入庫搬送手段と、
前記出庫搬送手段と前記入庫搬送手段との間に介設される物品又は物品収納容器提示機構と、
前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設される、所定の前記物品又は物品収納容器が移載される出荷容器を最終出荷工程まで搬送する搬送機能と、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能とを兼備する出荷容器搬送機構と、
を配備していることを特徴とする物流システム。
【請求項2】
出荷容器提示機構が、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに前記出荷容器搬送機構に連接される出荷容器搬入手段と出荷容器搬出手段との間であって、前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設されていることを特徴とする請求項1に記載の物流システム。
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由(決定の予告)は、概ね、次のとおりである。
請求項1に記載されている「仕分けと荷分けを同時に行う」とは、何を同時の行うのか不明瞭であって、本件特許の請求項1~2に係る発明は明確でないから、請求項1~2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由(明確性)について
1 当審の判断
本件訂正前の請求項1には「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能」と記載されており、明細書を参酌しても「荷分け」とはどのような作業であるのか不明瞭であったため、請求項1に係る発明は、出荷容器提示機能としてどのような作業を同時に行う機能であるのか不明瞭であった。
しかし、本件訂正により上記記載は「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」と訂正された。
そして、上記「第2 2(1)」において検討したとおり、従来の物流システムでは、収納容器から集品容器に移載して品種別に出庫した後(品種別の分類作業をした後)、送付先方面ごとに出荷容器に集約する荷合せ(送付先方面別、顧客別等の分類作業)を行い、梱包・出荷していたが、荷合せ部の作業(集品容器から送付先方面別、顧客別等の分類作業)を自動化することが困難であったところ、本願発明では収納容器提示コンベヤと出荷空容器提示部とを並設し、予め決められた順番どおりに収納容器を出庫させることで、集品容器への移載を介さなくても物品の収納容器から出荷容器へ移載すれば、出荷のための仕分けができる、すなわち、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化することを可能にしたものであり、請求項1における「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」は、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化する機能であると理解できる。
そして、上記請求項1の記載が、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。
よって、請求項1に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項2に係る発明は明確であるから、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
2 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和6年9月24日に提出した意見書において、「上記の各記載から「荷合せ」は「仕分け」に包含される作業の一つと解される。したがって、本件訂正後も「仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」は何を同時に行うか不明瞭なままであり、訂正発明1は明確でない。」(7頁19行~23行)と主張している。
しかし、上記「第2 2(2)イ」で検討した「仕分け」及び「荷合せ」の定義のとおり、「荷合せ」が「仕分け」に包含される作業の一つであっても、上記「第2 2(1)イ」において検討したとおり、本件訂正後の請求項1における「所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷合せを同時に行う出荷容器提示機能」は、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった作業を一体化する機能であると理解されるから、請求項1に係る発明は明確である。
よって、異議申立人の上記主張を採用することはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。
(1)本件発明1~2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証~甲第5号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件の請求項1に記載されている「最終出荷工程」が具体的に如何なる工程を意味するか明らかでなく、出荷容器搬送機構が搬送機能としてどのような機能を有するかが明確ではないから、本件発明1~2は、特許を受けようとする発明が明確でない。したがって、本件発明1~2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
特許異議申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証の1:欧州特許出願公開第1452462号明細書
甲第1号証の2:甲第1号証の1の翻訳文
甲第2号証:特開2013-79141号公報
甲第3号証:特開2015-168573号公報
甲第4号証:特開2015-40129号公報
甲第5号証:特開2018-8775号公報
以下、証拠番号に従い「甲1の1」「甲2」などという。
3 各証拠について
(1)甲1の1について
ア 甲1の1の記載事項
・「
[図:0001419322000001.jpg]
」
(甲1の2による翻訳文(以下「翻訳文」という。))
【0019】
図2は、本発明によるオーダーピッキングシステムを備えた棚倉庫の実施形態例の上面図を示す。棚倉庫は、多数の平行な棚列51を備えた高層棚倉庫50として形成されている。棚車両は、棚を充填し、空にするために、棚列51間の棚通路55、56内を移動可能である。棚倉庫50内で、保管されるべき物品は保管コンテナに保管され、保管コンテナは、パレット、トレイ、小型積載キャリア、プラスチックコンテナなどでありうる。本発明は、棚の特定の配置や特定の種類の保管コンテナに限定されない。
【0020】
本発明によれば、棚倉庫50は、図2に示される実施形態例で棚倉庫50の延長として形成されるオーダーピッキングバッファ領域60に接続している。但し、棚倉庫50およびオーダーピッキングバッファ領域60は、例えば、オーダーピッキングバッファ領域60が棚倉庫50の下部に形成されるように、上下に配置されうる。適合した荷役装置を備えた棚車両20は、保管コンテナを棚倉庫50からオーダーピッキングバッファ領域60まで搬送し、必要に応じて再び逆搬送する。これにより、棚倉庫の棚車両20によりオーダーピッキングバッファ領域60を移送することが可能となる。オーダーピッキングバッファ領域では、多数のバッファスペース10が、上下ならびに棚前面に沿って隣り合った複数のレベルに設けられ、それらの上に1倍の深さ、または2倍の深さ、または3倍の深さの保管コンテナが提供される。いわゆる動きの速い物品は静的に保管されることが好ましく、すなわち少なくとも2倍の深さで提供されて、前の保管コンテナが空になると、新しい充填されたコンテナが棚車両20によって常に後方から追加配送される。動きの遅い物品は動的に保管されることが好ましく、すなわち、オーダーピッキング注文の完了後、棚車両20を使って、オーダーピッキング領域60から再び棚倉庫50に逆搬送される。
「
[図:0001419322000002.jpg]
」
(翻訳文)
【0022】
注文のために提供された空のオーダーコンテナ22は、別個の搬送システム70によって、保管コンテナーオーダーピッキング位置31と同様に、ピッキング作業者スペース4にいるピッキング人員100の手の届く範囲にあるオーダーコンテナーオーダーピッキング位置71に供給される。続いてピッキング作業者100は、指示に応じて、必要な物品を保管コンテナ21からオーダーコンテナ22に積み替える。次に保管コンテナは、戻りコンベアベルト30によって再びピック車両40に移送され(図4参照)、オーダーピッキング領域60のバッファスペース10に再び返送され、保管される。動きの速い物品の場合、保管コンテナはオーダーピッキングバッファ領域に留まり、動きの遅い物品の場合、棚車両20を使用して保管棚へのさらなる返送保管が行われうる。オーダーコンテナ22は、完全に充填されるか、または注文が処理されるまで、オーダーコンテナーオーダーピッキング位置71に留まる。続いてオーダーコンテナは、逆搬送装置70bを介して(完全に処理された注文の場合)注文が完了するために、梱包ポイントまたはさらなるオーダーピッキングユニットに供給される。本発明によるオーダーピッキングシステムにより、オーダービッキングプロセスは大部分が自動化されるため、ピッキング作業者に残された唯一の(人間工学的に最適化された)作業は、保管コンテナからオーダーコンテナに1つまたは複数の物品を積み替えることだけであり、ピッキング作業者は画面によってシステム制御から積み替えるべき物品に関する指示を受け取ることが好ましい。
「
[図:0001419322000003.jpg]
[図:0001419322000004.jpg]
」
(翻訳文)
【0024】
図5は、本発明によるオーダーピッキングシステムの代替的な実施形態例のオーダーピッキングユニットの上面図を示す。棚倉庫50、オーダーピッキング領域60およびピック車両40は、図4に示される実施形態例と同様に形成される。図4の実施形態例のように、棚通路55内を移動可能な棚車両20を使用して、バッファスペース10を後面から充填する。但し図5に示す実施形態では、保管コンテナ21はコンベアベルト30を使って2つの側からピッキング作業者100に供給される。それぞれのオーダーコンテナ22は、コンベアベルト30の下の別個の搬送技術(図示せず)によって中央の下方に配置された保管スペースに搬送される。ピッキング作業者スペース4でのピッキング作業者100は、提供された保管コンテナのどれから物品を中央のオーダーコンテナに積み替えるべきかについての指示を画面上で受け取る。オーダーコンテナのさらなる輸送、ならびに部分的に充填された保管コンテナ(残りのコンテナ)のオーダーピッキング領域への返送は、上述の実施形態例と似た方法で行われる。両方の実施形態例において、例えばオーダーコンテナ用の搬送システムを介して、必要がなくなった空の保管コンテナがさらなる使用のために搬出されることが好ましい。
【0025】
本発明によるピック車両40を、図6および図7に示す実施形態例を参照して以下に詳細に説明する。ピック車両40は、管状フレームならびに車輪が配置されたシャーシ41を有する。実施形態例は、レールと連結するピック車両に関するが、レールと連結しない変形例も可能である。管状フレームには(図示しない)昇降装置によって垂直に移動できる2つの縦梁42が取り付けられ、それらの上にまたも荷役手段43が設けられ、車両の動きの方向に前後して収容されるべき2つの保管コンテナ21が設けられる。好ましくは、荷役手段43は(図示しない)長手方向変位手段を使ってピック車両40の長手方向(移動方向)に変位可能である。また、荷役手段は、例えば保管コンテナを収容するための、および車両40から保管コンテナを受け渡すための、ベルトコンベアとして形成された横断搬送手段を有することが好ましい。さらに、2つの荷役手段43(図示せず)のために別個の昇降装置を設けることが可能であるため、異なるレベルからの2つのコンテナを同時に取り扱うことができ、それによってシステムの柔軟性とオーダーピッキング性能がさらに高まる。ピック車両40は、全体としてコンパクトかつ軽量な構造を有するため、高い加速度値および短い移動時間ならびにそれによって高いピック性能およびオーダーピッキング性能が可能となる。
【0026】
ここでは本発明によるオーダーピッキングシステムのピッキング作業者スペース4の実施形態例について、図9~図11を参照して説明する。保管コンテナ21は、(図示しない)横断搬送装置を使ってピック車両40から供給コンベア30a上に到着し、そこでコンテナは、オーダーピッキング注文を処理するために企図された順序で、つまり順次に、保管コンテナーオーダーピッキング位置31の待機列を形成する。横断搬送技術80はその下方にあるレベルで、オーダーコンテナ22をリフト装置81に供給し、リフト装置81はオーダーコンテナを別のコンベアベルト70上に持ち上げ、コンベアベルト70がオーダーコンテナをオーダーコンテナーオーダーピッキング位置71に供給する。着席作業場のピッキング作業者スペース4にいるピッキング作業者100に、保管コンテナ21およびオーダーコンテナ22は、互いに対して直角に、容易に手の届く範囲で提供される。人間工学およびコンテナの中を目視する可能性をさらに改善するために、コンテナを傾けるための(図示されない)傾斜装置が設けられる。ピッキング作業者は、中央に配置された画面75上で、例えば2つの物体を保管コンテナ21からオーダーコンテナ22に積み替えるという作業指示を受け取る。指示の実行は、ピッキング作業者の手が保管コンテナ21またはオーダーコンテナ22を掴んだとき、それを検出する光グリッドーセンサ装置72によって検査される。付加的に画面の下にあるキーボードで手動承認を行うこともできる。その他、光グリッドーセンサ装置72は、自動システム手順制御にも使用することができる。保管コンテナ21上の光グリッドーセンサ装置により、ピッキング作業者が物品を保管コンテナから取り出すとき、それが検出され、オーダーコンテナ上の光グリッドーセンサ装置により、ピッキング作業者が物品をオーダーコンテナに投入するとき、それが検出される。後者のプロセス(オーダーコンテナ22への物品の投入)が完了すると、倉庫管理コンピュータは、保管コンテナを保管コンテナーオーダーピッキング位置31からさらに搬送することを指示し、待機列に待機している次の保管コンテナを供給させる。続いて、光グリッドーセンサ装置が、ピッキング作業者が次の保管コンテナを把握したことを検出すると、次の物品が新しいオーダーコンテ11ナに積み込まれるべき場合に、倉庫管理コンピュータはオーダーコンテナ22の搬出を指示する。それは、注文が完了したか、オーダーコンテナが一杯になったためである。これにより、オーダーピッキングプロセスの自動化された機能的に信頼性の高い手順制御が保証される。
【0027】
続いて、部分的に空になったオーダーコンテナ21は、オーダーピッキング領域60に返送保管するために、返送ベルト30bを使って再びピック車両40に供給される。完全に空になった保管コンテナ21は、ピッキング作業者によって手動でオーダーコンテナ用の戻りコンベアベルト70b上に賊置されるため、これらの保管コンテナは、処理済みのオーダーコンテナと同様に、さらなる処理のために昇降装置81を介して横断搬送技術80に供給される。オーダーコンテナ22が注文のために完全に充填されると、それは横断搬送技術80を使って梱包あるいは出荷ポイント(図示せず)に供給される。オーダーコンテナがまだ完全に処理されていない場合、オーダーピッキングをさらに処理するために、オーダーコンテナは、横断搬送技術80を使用して、図9の左上に示すようなさらなるオーダーピッキングユニットに供給される。本発明によるピッキング作業者スペース4は、同時に作業手順が人間工学的に最適化される場合、高いオーダーピッキング性能とオーダービッキング安全性とを可能にする。
・「 図4 図5 図7
[図:0001419322000005.jpg]
」
イ 図5から、棚車両20が走行する棚通路56内の走行路が看取される。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1の1には、次の発明が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「多数の平行な棚列51を備えた高層棚倉庫50と、
保管コンテナ21で前記棚列51を充填し、または空にするために、前記棚列51間の棚通路56内を移動可能な棚車両20と、
棚車両20が走行する棚通路56内の走行路と、
棚車両20が、棚列51間を移動する棚通路56と、
前記保管コンテナ21を垂直に移動できる、荷役手段43が付設され昇降装置が設けられたピック車両40と、
横断搬送手段を有する前記荷役手段43が付設されたピック車両40と前記棚車両20とを媒介するバッファスペース10と、
ピック車両40が受け取った保管コンテナ21をピッキング作業者スペース4へ移送し、又はピッキング作業者スペース4から保管コンテナ21をピック車両40まで移送するコンベアベルト30と、
ピック車両40が搬送した保管コンテナ21をピッキング作業者スペース4内の保管コンテナーオーダーピッキング位置31へ搬送する供給コンベア30aと、
保管コンテナ21をピック車両40、バッファスペース10及び棚車両20を介して保管棚へ返送保管する返送ベルト30bと、
前記供給コンベア30aと前記返送ベルト30bの間において、ピッキング作業者が保管コンテナ21の中を目視するための傾斜装置と、
傾斜装置とともにピッキング作業者の手が容易に届く範囲に提供される、指示を受けた物体を積み替えるオーダーコンテナ22を出荷ポイントに供給するとともに、オーダーピッキング注文を処理するために企図された順序で待機列を形成した保管コンテナ21からオーダーコンテナ22に積み替える作業指示を実行し、オーダーコンテナ22が完全に処理されていない場合には、オーダーピッキングをさらに処理するためにオーダーコンテナ22をさらなるオーダーピッキングユニットに供給する横断搬送技術80及びこれにリフト装置81を介して接続され、ピッキング作業者にオーダーコンテナ22を提示するため、オーダーコンテナーオーダーピッキング位置71にオーダーコンテナ22を供給するコンベアベルト70と、
を配備するオーダーピッキングシステム。」
(2)甲2について
甲2には次のように記載されている。
「【0028】
水平搬送手段131は、保管棚101と鉛直搬送手段132との間で任意の箱体200を移送する設備である。水平搬送手段131は、保管棚101の保管棚板111に対応する高さにそれぞれX軸方向に沿ってレールが敷設され、当該レール上を往復動し、鉛直搬送手段132との間で箱体200を移載することができる走行車135を備えたいわゆるシャトル式の装置である。」
(3)甲3について
ア 甲1の記載事項
「【0029】
なお、仮置き棚20と昇降移載部32との間の物品Wの移載は、例えば、それらに設けられたローラをモータ等の回転駆動部によって正逆両方向に回転駆動させることによって行うことができる。」
「 図2
[図:0001419322000006.jpg]
」
イ 図2から、仮置き棚20のローラは、仮置き棚20の長手方向と垂直に設けられており、ローラが回転した場合に物品Wは仮置き棚20の長手方向へ移動することが看取される。
(4)甲4について
ア 甲4の記載事項
「【0024】
出庫側コンベヤ8は、図1に矢印で示すように、第1X方向に向けてのみ容器Cを載置搬送するように構成されており、出庫箇所E1に位置する容器Cを第1X方向に向けて載置搬送して、容器Cを出庫側昇降装置10に受け渡すように構成されている。
入庫側コンベヤ9は、図1に矢印で示すように、第2X方向に向けてのみ容器Cを載置搬送するようになっており、入庫側昇降装置11から受け取った容器Cを第2X方向に向けて載置搬送して、容器Cを入庫箇所E3に載置搬送するように構成されている。」
「 図1 図2
[図:0001419322000007.jpg]
」
イ 図1から、出庫側コンベヤ8が容器Cを載置搬送する第1X方向は、出庫コンベヤ8の長手方向であり、入庫側コンベヤ9が容器Cを載置搬送する第2X方向も、入庫コンベヤ8の長手方向であることが看取される。
(5)甲5について
甲5には次のように記載されている。
「【0005】
一方、後者に相当する立体自動倉庫の一例として、物品等の出し入れ可能な格納面で対峙する格納棚の空間にX軸方向に往復移動する走行台車とその空間にY軸方向に往復移動する昇降機(リフター)とを備えた立体自動倉庫IIの概要を図2に示す(非特許文献1)。XY軸方向に碁盤目状に区画されてなる物品等を格納するLn-1列の格納棚とこの格納棚の物品等を出し入れ可能な格納面で対峙するLn列の格納棚とが、所定の空間8を隔てて対峙しており、その空間8に、格納棚のX軸方向の物品等の往復移動が可能となる走行台車10及びそのレール14が各段に設けられている。この走行台車10には、走行台車10とLn-1列及びLn列の格納棚との物品等の受渡しを行う、例えば、伸縮アーム(図示されていない)が備えられている。それと共に、Y軸方向に物品等の往復移動が可能となる物品等載置搬送台12を備えた昇降機11-1が空間8に配設されている。更に、X軸方向とY軸方向との物品等の自在な往復移動を媒介するため、走行台車10と物品等載置搬送台12との物品等の受け渡しを行う仮置き搬送台13が各段の格納棚に設けられている。通常、これらの設備を有する立体自動倉庫が一つの単位となり、Ln+1列及びLn+2列の格納棚を含む格納設備のように、複数配列されている。従って、走行台車10、物品等載置搬送台12を有する昇降機11-1、及び、物品等載置台12を備えた立体自動倉庫IIでは、これらの移動手段によるXY軸方向の物品等の自在な往復移動と、伸縮アーム7による空間8を隔てて対峙する格納棚間のZ軸方向の物品等Pの往復移動とが可能である。そして、物品等の格納棚への搬出入は、搬入装置9-1及び搬出装置9-2によって行われる。」
「 図2
[図:0001419322000008.jpg]
」
4 上記「1(1)」(進歩性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、甲1発明の「多数の平行な棚列51を備えた高層棚倉庫50」は本件発明1の「水平長手及び垂直方向に碁盤目状に配列してなる格納棚から構成される格納部」に相当し、以下同様に、「保管コンテナ21」は「物品又は物品収納容器」に、「棚車両20」は「走行台車」に、「保管コンテナ21で前記棚列51を充填し、または空にするために、前記棚列51間の棚通路56内を移動可能な棚車両20」は「前記格納棚の物品又は物品収納容器を出し入れ可能な格納面の水平長手方向に走行し、前記物品又は物品収納容器を自在に出し入れすることができる走行台車」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「棚車両20が走行する棚通路56内の走行路」と本件発明1の「前記走行台車が走行するための走行レール」とは、「前記走行台車が走行するための走行領域」という点で共通する。
甲1発明の「棚列51間を移動する」という事項は本件発明1の「前記格納面において往復移動できる」という事項に相当し、以下同様に、「棚通路56」は「走行空間」に、「垂直に移動できる」という事項は「垂直方向に往復移動するための」という事項に、「荷役手段43」は「物品又は物品収納容器載置搬送手段」に、「昇降装置が設けられたピック車両40」は「昇降手段」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「横断搬送手段を有する前記荷役手段43が付設されたピック車両40と前記棚車両20とを媒介するバッファスペース10」と本件発明1の「前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する仮置き搬送手段」とは、「前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する領域」という点で共通する。
甲1発明の「ピック車両40が受け取った保管コンテナ21をピッキング作業者スペース4へ移送し、又はピッキング作業者スペース4から保管コンテナ21をピック車両40まで移送するコンベアベルト30」は本件発明1の「前記物品又は物品収納容器の前記格納部の入出庫部」に相当し、以下同様に、「ピック車両40が搬送した保管コンテナ21をピッキング作業者スペース4内の保管コンテナーオーダーピッキング位置31へ搬送する供給コンベア30a」は「前記格納部から所定の前記物品又は物品収納容器を出庫させる出庫搬送手段」に、「保管コンテナ21をピック車両40、バッファスペース10及び棚車両20を介して保管棚へ返送保管する返送ベルト30b」は「前記格納部へ所定の前記物品又は物品収納容器を入庫させる入庫搬送手段」に、「間において」という事項は「間に介設される」という事項に、「ピッキング作業者が保管コンテナ21の中を目視するための傾斜装置」は「物品又は物品収納容器提示機構」に、「傾斜装置とともにピッキング作業者の手が容易に届く範囲に提供される」という事項は「前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設される」という事項に、「指示を受けた物体を積み替える」という事項は「所定の前記物品又は物品収納容器が移載される」という事項に、「オーダーコンテナ22」は「出荷容器」に、それぞれ相当する。
甲1発明における、オーダーコンテナ22を「出荷ポイントに供給するとともに、オーダーピッキング注文を処理するために企図された順序で待機列を形成した保管コンテナ21からオーダーコンテナ22に積み替える作業指示を実行し、オーダーコンテナ22が完全に処理されていない場合には、オーダーピッキングをさらに処理するためにオーダーコンテナ22をさらなるオーダーピッキングユニットに供給する横断搬送技術80及びこれにリフト装置81を介して接続され、ピッキング作業者にオーダーコンテナ22を提示するため、オーダーコンテナーオーダーピッキング位置71にオーダーコンテナ22を供給するコンベアベルト70」において実施されていることは、企図された順序で保管コンテナ21の待機列を形成し、オーダーコンテナ22を出荷ポイントに供給できる状態になるまで、保管コンテナ21からオーダーコンテナ22に積み替える作業指示を実行することであり、オーダーコンテナ22が出荷ポイントに供給される時には、品種別、送付先方面別、顧客別等の仕分けが完了して出荷可能な状態となっていると理解されるから、本件発明1の「最終出荷工程まで搬送する搬送機能と、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能とを兼備する出荷容器搬送機構」に相当する。
甲1発明の「オーダーピッキングシステム」は本件発明1の「物流システム」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有すると認められる。
<一致点>
「水平長手及び垂直方向に碁盤目状に配列してなる格納棚から構成される格納部と、
前記格納棚の物品又は物品収納容器を出し入れ可能な格納面の水平長手方向に走行し、前記物品又は物品収納容器を自在に出し入れすることができる走行台車と、
前記走行台車が走行するための走行領域と、
前記走行台車が、前記格納面において往復移動できる走行空間と、
前記物品又は物品収納容器を垂直方向に往復移動するための物品又は物品収納容器載置搬送手段が付設された昇降手段と、
前記物品又は物品収納容器載置搬送手段と前記走行台車とを媒介する領域と、
前記物品又は物品収納容器の前記格納部の入出庫部と、
前記格納部から所定の前記物品又は物品収納容器を出庫させる出庫搬送手段と、
前記格納部へ所定の前記物品又は物品収納容器を入庫させる入庫搬送手段と、
前記出庫搬送手段と前記入庫搬送手段との間に介設される物品又は物品収納容器提示機構と、
前記物品又は物品収納容器提示機構に隣接して並設される、所定の前記物品又は物品収納容器が移載される出荷容器を最終出荷工程まで搬送する搬送機能と、前記物品又は物品収納容器提示機構ごとに所定の前記物品又は物品収納容器の前記出荷容器への仕分けと荷分けを同時に行う出荷容器提示機能とを兼備する出荷容器搬送機構と、
を配備していることを特徴とする物流システム。」
<相違点1>
走行領域に関し、本件発明1は「走行レール」であるのに対し、甲1発明の走行路はレールであるか否か明らかではない点。
<相違点2>
物品又は物品収納容器載置搬送手段と走行台車とを媒介する「領域」に関し、本件発明1は「仮置き搬送手段」であるのに対し、甲1発明は「バッファスペース10」であって搬送手段を備えておらず、荷役手段43が横断搬送手段を有している点。
事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
上記「3(3)」及び「3(4)」から、昇降装置への物品の移載を可能とするために、仮置き部に、仮置き部の長手方向へ物品を搬送する搬送手段を設けることは周知技術といえる。ここで、甲3は仮置き棚20の長手方向と垂直に設けたローラを回転させることで搬送しており、甲4は第1X方向又は第2X方向に向けてのみ容器Cを載置搬送するように構成されているコンベヤであることから、仮置き部における搬送方向は長手方向のみである。このような周知技術を、仮に甲1発明のバッファスペース10に適用しても、甲1の保管コンテナ21はバッファスペース10の長手方向に搬送されることになるため、昇降装置が設けられたピック車両40又は棚車両20とバッファスペース10とを媒介する搬送手段にはなり得ない。
なお、上記「3(5)」から、甲5の仮置き搬送台13は搬送手段を備えているか明らかではないし、上記「3(2)」から、甲2には仮置き部の搬送手段に関する記載はないと認められる。
また、甲1発明では、ピック車両40と棚車両20との間で、バッファスペース10を介して保管コンテナ21の受け渡しを行っているが、ピック車両40の荷役手段43は、保管コンテナを受け渡すための、ベルトコンベアとして形成された横断搬送手段を有しているから(【0025】参照)、保管コンテナ21の受け渡しを行うための搬送手段をバッファスペース10に設ける必要がない。したがって、甲1発明において、バッファスペース10に搬送手段を付加する動機付けはない。
よって、本件発明1は、相違点1を検討するまでもなく、当業者であっても甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2)本件発明2について
本件発明1を引用する本件発明2も、上記(1)と同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
5 上記「1(2)」(明確性)について
本件の請求項1に記載されている「最終出荷工程」について検討する。
明細書の【0030】には「上述したように、立体自動倉庫において、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分けを伴う出庫作業、更には、格納部内の物品等の再配置、整理・整頓、処分等の処理作業を効率的に行うことが可能となったが、簡便な機構で、最終的な出荷作業までを含めた効率的で自動化された物流システムの完成には至っていない。そこで、本発明は、立体自動倉庫において、出庫から出荷までを含めた効率的で自動化された物流システムを簡便な機構で提供することを目的としている。」と記載され、【0036】には「このように、物品等収納容器提示機構、出荷容器提示機構、第二の出荷容器搬送機構を入出庫物品等搬送手段から入庫された物品等が、予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫に付設されることによって、物品等の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類といった仕分け、出庫、及び、荷合せを一体化することが可能となり、簡便な機構で、最終的な出荷作業までを含めた効率的で自動化された物流システムが構築される。」と記載され、【0038】には「本発明により、予め決められた順番どおりに出庫する順立て出庫できるように格納部の格納棚に整理された立体自動倉庫から供給される仕分けされた物品等の更なる仕分けによって、出庫及び荷合せをも一体化することが可能となり、最終的な出荷作業までを含めた効率的で自動化された物流システムを簡便な機構で構築することができると同時に、格納部内の物品等の再配置、整理・整頓、処分等の処理作業も効率的に行うこともできる。」と記載されている。
また、本件発明の物流システムの特徴を説明するために描かれた入庫から出庫及び出荷までの物品等の流れを示す工程概要図である図9からは、図9に示されている工程の中で梱包・出荷が最終工程であることが看取される。
これらのことから、本件発明の物流システムが担う工程には複数の工程があり、その最終的な工程が、出荷作業や図9における梱包・出荷の工程であることがわかる。
したがって、請求項1に記載されている「最終出荷工程」とは、明細書における最終的な出荷作業や、図9の最終工程である梱包・出荷の工程を意味することは明らかである。
よって、請求項1に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項2に係る発明は明確であるから、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701025