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特許異議申立

2023-701327

フッ化物イオンとリン酸イオンの選択除去性を持つ無機系凝集剤によるヨウ素成分含有水溶液の製造方法

審判番号
2023-701327
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-191318
登録番号
7295324
請求日
2023年12月18日
審決日
2024年09月24日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社合同資源
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【権利者代理人】水長 雄大
  • 【権利者代理人】執行 敬宏
  • 【権利者】株式会社日本海水
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【権利者代理人】水長 雄大
  • 【権利者代理人】執行 敬宏
  • 【異議申立人】端 雅彦
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1652.113-YAA(C02F) / P1652.121-YAA(C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7295324号発明「フッ化物イオンとリン酸イオンの選択除去性を持つ無機系凝集剤によるヨウ素成分含有水溶液の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7295324号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第7295324号の請求項1ないし4、7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7295324号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和4年11月30日に出願され、令和5年6月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年12月18日 :特許異議申立人端雅彦(以下「申立人」という。)による請求項1~4、7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 4月 9日付け:取消理由通知書 同年 6月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 7月26日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。 特許請求の範囲の請求項1に「ジルコニウム系凝集剤」と記載されているのを、「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 本件明細書の【0036】に「セリウム系凝集剤は、例えば、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム等」、「アルミニウム系凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、塩化アルミニウム等」、「カルシウム系凝集剤は、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム(消石灰)等」、「鉄系凝集剤は、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等」(下線は当審において付与した。以下同様。)と記載されていることからも理解できるように、「系」とはそれらの金属の化合物のことを表していることから、ジルコニウム「系」とは、ジルコニウム化合物のことを表すものである。なお、このことは、本件特許出願に対して令和5年3月31日に提出された意見書に添付された(資料1)実験成績証明書において、ジルコニウム系凝集剤として、ジルコニウム化合物である「オキシ塩化ジルコニウム」を用いていることからも明らかである。 ここで、「ジルコンサンド」とは化学式がZrSiO4で表されるジルコニウム化合物のことであるから、「ジルコニウム系凝集剤」を「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」に訂正することは、「ジルコニウム化合物」から「ジルコンサンド」を除いて凝集剤を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、「ジルコニウム系凝集剤」を「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」に訂正すること、すなわち「ジルコニウム化合物」から「ジルコンサンド」を除いて凝集剤を限定することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでもないことから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項2~7は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~7は一群の請求項であり、上記訂正事項は、当該一群の請求項に請求されているものである。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合するものである。 4 独立特許要件について 上記訂正事項は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7についても同様に訂正するものであるが、そのうちの請求項5及び6については、特許異議の申し立てがされていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討しなければならない。 下記第7で述べるように、訂正された請求項1に係る発明(下記の「本件発明1」)は、特許法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができないものではないことから、本件発明1を直接的又は間接的に引用する請求項5及び6に係る発明(下記の「本件発明5」及び「本件発明6」)についても、同様に特許法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとする理由もない。 よって、請求項5及び6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 5 訂正についてのまとめ 上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 (1)本件発明について 本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、本件発明5及び6は、上記第2の4で述べたように、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか検討しなければならないことから、ここで合わせて記載することとする。 「【請求項1】 ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと前記無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、 前記非処理水中から前記凝集物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含み、 前記無機系凝集剤が、セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)、アルミニウム系凝集剤、カルシウム系凝集剤、および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項2】 請求項1に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、 前記凝集工程において、前記無機系凝集剤を含む前記非処理水のpHが、3.0以上11.5以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、 レーザー回折散乱法を用いて体積頻度粒度分布を測定し、前記体積頻度粒度分布における粒子径が小さい側から50%累積したときの粒子径をD50としたとき、前記凝集物のD50が、1μm以上80μm以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項4】 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、 前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIa(mg/L)とし、前記処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIb(mg/L)としたとき、 (CIb/CIa)×100により算出されるヨウ化物イオンの回収率が90%以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項5】 請求項4に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、 前記非処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFa(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPa(mg/L)とし、前記処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFb(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPb(mg/L)としたとき、 式[100-〔(CFa-CFb)/CFa〕×100]により算出されるフッ化物イオンの残存率が5%以下であるか、 または、式[100-〔(CPa-CPb)/CPa〕×100]により算出されるリン酸イオンの残存率が5%以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項6】 請求項5に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、 [前記ヨウ化物イオンの回収率/前記フッ化物イオンの残存率]または[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記リン酸イオンの残存率]により算出される、前記無機系凝集剤のヨウ化物イオン非選択指数が、1.5以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。 【請求項7】 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。」 なお、明細書及び図面には訂正がなかったことから、本件特許明細書を以下「本件明細書」といい、さらに図面を含めて「本件明細書等」という。 第4 特許異議申立書における申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として以下の甲第1号証及び甲第2号証を提示して、以下の理由で、本件訂正前の請求項1~4及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであることを主張している。 (新規性)本件訂正前の請求項1及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (進歩性)本件訂正前の請求項1~4及び7係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:T.Wajima, S.Asakura, T.Sato,“Selective Removal of Fluoride Ion from Iodine-containing Solution using Zirconium Silicate(ZrSiO4)”,ISXB5 5th INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON HALOGEN BONDING, 2022年11月6-10日,BOOK of ABSTRACTS,p.65 甲第2号証:手束聡子、高松宏行、“水資源管理のための環境材料”、セラミックス、日本セラミックス協会、2016年、第51巻第12号、pp.806-810 (以下、甲第○号証は「甲○」という。) 第5 取消理由の概要 令和6年4月9日付け取消理由通知書は、次の取消理由を通知したものである。 (新規性)本件訂正前の請求項1、4及び7に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、4及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (進歩性)本件訂正前の請求項1、4及び7係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 甲号証の記載 1 甲1について (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、原文の次に当審訳を記載し、甲1に記載されている発明の認定に関与する箇所に下線を付した。 「 [図:0001417636000001.jpg] 」(65頁)(ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO4)を用いたヨウ素含有溶液からのフッ化物イオンの選択的除去 著者名等(略) ヨウ素は産業上重要な元素であり、医薬品、防腐剤、栄養補助食品、染料、触媒、ハロゲンランプ、写真フィルムの製造に使用されている。また、生物学的にも重要な元素であり、ヒトや高等動物は必須微量元素としてヨウ素を必要とするからである[1]。世界的に需要があるにもかかわらず、ヨウ素分子(I2)の生産はチリや日本など限られた地域の資源に依存している。日本では、分子状ヨウ素は千葉県房総半島の地下に貯留された地下塩水に含まれるヨウ素イオンからほぼ独占的に生産されているが、地盤沈下防止のため生産量は限られている。日本におけるもう一つの技術進歩はヨウ素のリサイクルである。 ヨウ素は、水や油をはじくコーティング剤(撥水撥油剤)であるフッ素ポリマーの製造触媒として使用されてきた。最終製品にはヨウ素が残留しないため、触媒反応後の排水にはヨウ素が多く含まれ、フッ化物イオンは少ない。排水中にヨウ素を残留させながらフッ化物イオンを選択的に除去することにより、ヨウ素を回収する新たな方法が考えられる。 本研究では、フッ素選択吸着能力の高いジルコンサンドを用いて、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去することを試みた[2]。改質ヨウ素含有排水は、硫酸によりpH2に調整され、フッ化物イオン(50mg/L)とヨウ素(80g/L)を含んでいる。 日本のフッ化物排水基準(8.0mg/L)を下回り、ヨウ素(80g/L)が残存するように、改質ヨウ素含有排水からフッ化物を選択的に吸着することができ、そして、アルカリ溶液を用いたフッ化物の脱着においてNaOHとNa2CO3はNH3よりも効果的である。吸着剤のサイクル安定性は高い。) (2)甲1発明 甲1のタイトルに「ヨウ素含有溶液」と記載されており、甲1の下線部には、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去してヨウ素を残存させる溶液を得る方法が記載されていることから、甲1には「ヨウ素含有溶液の製造方法」が記載されているといえる。 また、甲1の下線部の「フッ素選択吸着能力の高いジルコンサンドを用いて、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去する」、「改質ヨウ素含有排水からフッ化物を選択的に吸着する」及び「吸着剤」との記載から、甲1において「フッ素選択吸着能力の高いジルコンサンド」は「吸着剤」であるといえる。 そうすると、甲1(特に下線部参照)には、以下の発明が記載されていると認められる。 「硫酸によりpH2に調整され、フッ化物イオン(50mg/L)とヨウ素(80g/L)を含んでいる改質ヨウ素含有排水に対し、フッ素選択吸着能力の高い吸着剤であるジルコンサンドを用いて、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去して、 日本のフッ化物排水基準(8.0mg/L)を下回り、ヨウ素(80g/L)が残存するヨウ素含有溶液の製造方法。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。 「4.2 フッ素 フッ素は反応性が高いため単独では天然に産出せず,蛍石や氷水晶として産出する.フッ素の人為的な排出源には半導体製造,ガラスの表面加工,石炭焼却灰処分施設などがあり,排水中のフッ素濃度は数10mg/L以上の極めて高いレベルにある.そのため,カルシウム系やアルミニウム系凝集剤を用いた凝集沈殿法により10mg/L程度まで濃度を低下した後吸着剤を併用してフッ素濃度を基準値まで下げる方法がとられている.フッ素除去ができる吸着剤は多く存在し,含水酸化セリウム系やジルコニウムフェライト系などの含水酸化物(表1) のイオン交換体が実用化されている8).」(809頁左欄13~25行) 第7 当審の判断 上記第5で記載した取消理由通知書で通知した取消理由は、「本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明」であること以外は、実質的に、上記第4で記載した特許異議申立書における申立理由に含まれるものであるから、ここで取消理由と申立理由とを同時に検討することとする。 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「フッ化物イオン(50mg/L)とヨウ素(80g/L)を含んでいる改質ヨウ素含有排水」は、「改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去」する処理前のものであり、「非処理水」といえることから、本件発明1の「ヨウ化物イオンと、フッ化物イオン」「と、を含む非処理水」に相当する。 イ 甲1発明の「フッ素選択吸着能力の高い吸着剤であるジルコンサンド」は、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンと反応するものといえることから、本件発明1の「ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤」とは、「ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンと反応する剤」の点で共通する。 ウ 甲1発明の「改質ヨウ素含有排水に対し、フッ素選択吸着能力の高い吸着剤であるジルコンサンドを用いて、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去して」「ヨウ素(80g/L)が残存するヨウ素含有溶液の製造方法」は、改質ヨウ素含有排水にフッ素選択吸着能力の高い吸着剤であるジルコンサンドを接触させて、フッ化物イオンと前記吸着剤とが反応してなる物を得る工程と、改質ヨウ素含有排水中からフッ素イオンを選択的に除去し、改質ヨウ素含有排水中にヨウ素(80g/L)を残存させるヨウ素含有溶液を得る分離工程があるといえる。 そうすると、甲1発明の「改質ヨウ素含有排水に対し、フッ素選択吸着能力の高い吸着剤であるジルコンサンドを用いて、改質ヨウ素含有排水からフッ素イオンを選択的に除去して」「ヨウ素(80g/L)が残存するヨウ素含有溶液の製造方法」と、 本件発明1の「非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと前記無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、前記非処理水中から前記凝集物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含」む「ヨウ素成分含有水溶液の製造方法」とは、 「非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンと反応する無機系剤を接触させて、フッ化物イオンと前記剤とが反応してなる物を得る工程と、前記非処理水中から前記物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含」む「ヨウ素成分含有水溶液の製造方法」の点で共通する。 エ 上記ア~ウを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンと反応する無機系剤を接触させて、フッ化物イオンと前記剤とが反応してなる物を得る工程と、 前記非処理水中から前記物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含む、 ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 「無機系剤」、フッ化物イオンと前記剤とが反応してなる「物を得る工程」、及び非処理水中から前記「物」を除去することについて、 本件発明1では、「無機系剤」が「セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)、アルミニウム系凝集剤、カルシウム系凝集剤、および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む」「凝集剤」であり、「物を得る工程」が「凝集物を得る凝集工程」であり、除去される「物」が「凝集物」であるのに対し、 甲1発明では、「吸着剤」であり、フッ化物イオンと吸着剤とを反応させた「物」は得ているものの、「凝集物を得る凝集工程」があるとはいえず、除去される「物」が「凝集物」とはいえない点。 (2)相違点の判断 ア 甲1発明において用いられているのは「吸着剤」(原文「adsorbent」)であり、「凝集剤」とは異なるものである。一般に、吸着剤は、「吸着剤[英adsorbent]多量の正吸着を起こさせるような界面を提供する物質をいう.・・・またイオン交換樹脂もイオン交換吸着の目的で利用される.」(化学大事典2(1997年9月20日、共立出版(株)発行)821頁)というものであり、凝集剤は、「凝集剤[英coagulant, coagulant agent]=凝結剤」(同847頁)、「凝結剤[英coagulant, coagulant agent]コロイド溶液中の粒子を凝結させるために加える物質.・・・(2)沈降分離によって清澄水を得るために原水に加えてフロックを生じせしめ,懸濁物質の沈降を容易にするために用いられる.」(同841頁)というものであるから、両者は、明らかに化学的機能が異なる「剤」である。 ここで、本件発明1の「凝集剤」も、本件明細書において「凝集工程において、無機系凝集剤の種類を適切に選択することにより、凝集物の大きさ(フロックサイズ)を制御できるので、固液分離時における濾過性を向上できる。」(【0015】)、「反応槽10内の混合液中において、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと無機系凝集剤2とが反応して、凝集物が生じる。そして、凝集物を含む非処理水1(混合液)を、固液分離槽20に導入する。固液分離槽20において、非処理水1(混合液)から凝集物を汚泥4として分離し、凝集物を含まない処理水5を回収する。」(【0044】~【0045】)、「分離された沈殿物(汚泥4)は、ヨウ素回収システム100系外に排出される。排出された汚泥4は、乾燥させた後、汚泥処理が施される。汚泥4の発生量が少ないほど、汚泥処理に必要な設備費や処理コストを低減できる。」【0051】と説明されるものであり、自身に対してフッ化物等を吸着する吸着剤とは明らかに異なる化学的機能を有するものである。 一方、甲1発明の「吸着剤」は、甲1に「アルカリ溶液を用いたフッ化物の脱着においてNaOHとNa2CO3はNH3よりも効果的である。吸着剤のサイクル安定性は高い。」と記載されているように、吸着されたフッ化物を脱着させるものであり、沈殿物(汚泥)として排出するようなものではないことに鑑みても、「凝集剤」としての機能を要しないものである。 そうすると、甲1発明において用いられている「吸着剤」を「凝集剤」とする動機付けがあるとはいえない。 イ さらに、甲2には、上記第6の2で摘記したように、排水中のフッ素濃度を低下させるために、カルシウム系やアルミニウム系凝集剤を用いた凝集沈殿法によりフッ素濃度を低下させた後に、吸着剤を用いて、さらにフッ素濃度を下げる技術が記載されており、その吸着剤として「ジルコニウムフェライト系などの含水酸化物のイオン交換体」が記載されている。 ここで、凝集剤を用いた凝集沈殿法の後に用いる吸着剤としての「ジルコニウムフェライト系などの含水酸化物のイオン交換体」は、「凝集剤」として用いられるものではなく、「ジルコニウムフェライト系などの含水酸化物のイオン交換体」が「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とはいえない。 そもそも、甲2に記載の技術は、排水中のフッ素濃度を低下させるための技術であり、ヨウ化物イオンを含む排水に対して当該技術を用いたときに、ヨウ化物イオンを残存させることができることが記載されていない。 そうすると、甲2の記載を参照しても、甲1発明の「吸着剤であるジルコンサンド」を「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ したがって、本件発明1の「セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)、アルミニウム系凝集剤、カルシウム系凝集剤、および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む」「凝集剤」であり、「凝集物を得る凝集工程」及び「凝集物」を除去することとの上記相違点1に係る構成は、甲1発明に対して実質的な相違点であり、当該相違点は、甲1発明に基づいて、さらには、甲2に記載されている周知技術を参照しても、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、さらには甲2に記載されている周知技術を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2~4、7について 上記第3で記載されているように、本件発明2~4及び7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同様に、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、さらには甲2に記載されている周知技術を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明5、6について 本件発明5及び6は、特許異議の申し立てがされていない請求項に係る発明であり、そして、上記第2の4で記載したように独立特許要件について判断しなければならないものである。 そこで、本件発明5及び6についても言及するに、本件発明5及び6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であり、本件発明1と同様に、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、さらには甲2に記載されている周知技術を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 小括 以上のことから、本件発明1~4及び7は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、さらには甲2に記載されている周知技術を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明1~4及び7に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由及び取消理由によって取り消すことはできない。 第8 申立人の主張 1 申立人は、令和6年7月26日に提出の意見書で、以下の主張をしている。 (1)「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とはどのような凝集剤を指しているのか、つまり、本件特許明細書に例示のない「ジルコンサンド」が除かれた「ジルコニウム系凝集剤」が何を指しているのか、全く不明である。」(2頁20~23行) (2)「本件訂正発明1ではフッ化物イオンを選択的に反応して凝集物を生成させる凝集剤の例示として具体例を挙げることができない概念的な表現の「ジルコニウム系凝集剤」が含められているに過ぎず、甲1発明の「ジルコンサンド」も上位概念的にとらえれば「ジルコニウム系凝集剤」といえることから、本件訂正発明1は甲1発明にもとづいて容易に想到し得たものである。 ちなみに、本件特許異議申立書に添付した甲第2号証(・・・) には、フッ素除去吸着剤として「ジルコニウムフェライト」が記載されており(p.809左欄)、「ジルコンサンド」以外の「ジルコニウム系凝集剤」は周知であり、甲1発明において「ジルコンサンド」以外の「ジルコニウム系凝集剤」を用いることに格別の困難性はないといえる。」(2頁26行~3頁7行) (3)「拡大先願の取消理由に用いる甲第3号証(特願2023-188354号(特開2024-68179号公報))は、本件特許異議申立の後に公開となったものであり、本件特許異議申立時に提示することができなかった証拠である。 本意見書で甲第3号証を提示する趣旨は、本件特許が甲第3号証の願書に最初に添付した明細書等に記載されたものと同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は、同法第113条第1項第2号に該当し、本来取り消すべきものであるとの主張を追加することにある。」(3頁14~20行) と記載し、本件発明1~7は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであることを主張している。 2 申立人の主張に対する当審の判断 事案に鑑み、上記(3)の主張から検討する。 (1)「(3)の主張」について 本件発明1~7が、甲3の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明と同一であるどうかについて以下検討する。 ア 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。なお、甲3として添付されているのは特開2024-68179号公報であるところ、甲3の願書に最初に添付した明細書等の記載は、その特開2024-68179号公報の記載と同じである。 (甲3ア)「【請求項1】 フッ化物イオン、及び他のハロゲンで構成されたイオン成分を含有する被処理液に対して、ジルコニウムを含む酸化物から構成され表面を水酸基により改質した吸着剤により前記フッ化物イオンを吸着処理して処理液を作製する第1工程を有することを特徴とするハロゲン化物イオン含有水溶液の製造方法。 【請求項2】 前記イオン成分が、ヨウ化物イオンを含むことを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化物イオン含有水溶液の製造方法。」 (甲3イ)「【0004】 また、一般的なフッ化カルシウム法に加えて、ポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を用いて更にフッ素イオン濃度を下げる二段沈殿法が提案されている。しかしながら、二段沈殿法ではフッ化物イオン濃度を十分に下げるために、カルシウム化合物以外に多種類の薬品の添加が必要となり、フッ化カルシウム法と異なり複数の元素を含む塩を生成するため、回収したフッ化カルシウムをリサイクル原料として用いることができず、フッ素を含む多量の産業廃棄物が発生してしまう。 【0005】 これらの問題を解決する方法として、近年、吸着剤を用いてフッ化物イオンを吸着分離する技術が提案されている。例えば、特許文献1の吸着剤は、酸化カルシウムとカルシウムアルミネートとからなり、粒子形状の吸着剤と被処理液を接触させることにより、常温において広い濃度範囲で有害アニオン、例えばフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸等のフッ素とホウ素化合物のイオンを吸着することができる。」 (甲3ウ)「【0009】 上記課題を解決する本発明のハロゲン化物イオン含有水溶液の製造方法は、フッ化物イオン、及び他のハロゲンで構成されたイオン成分を含有する被処理液に対して、ジルコニウムを含む酸化物から構成され表面を水酸基により改質した吸着剤により前記フッ化物イオンを吸着処理して処理液を作製する第1工程を有することを特徴としている。 この特徴によれば、被処理液中において、ジルコニウムを含む酸化物から構成される吸着剤の表面における水酸基とフッ化物イオンとのイオン交換反応が起こりやすく、他のハロゲン化物イオンとのイオン交換反応が起こりにくいことにより、フッ化物イオン濃度が低い被処理液に対しても吸着剤によりフッ化物イオンが選択的に吸着処理されるため、処理液としてフッ化物イオン濃度が他のハロゲン化物イオン濃度に比べて極めて低いハロゲン化物イオン含有水溶液を得ることができる。」 (甲3エ)「【0039】 本吸着剤によるフッ化物イオンの吸着メカニズムとしては、改質処理によって吸着剤最表面に配置された水酸基とフッ化物イオンとのイオン交換反応により、フッ化物イオンの選択的吸着が起こるものと推測される。フッ化物イオンの選択的吸着が起こる理由としては、水酸基の有効イオン半径(145pm)に比べてフッ化物イオンの有効イオン半径(133pm)が小さく、イオン交換反応が起こりやすいためであると推測される。また、ハロゲン化物イオンである塩化物イオン(181pm)、臭化物イオン(196pm)、ヨウ化物イオン(220pm)は、水酸基よりも有効イオン半径が大きいため、吸着剤最表面に形成されたイオン交換サイトに入らず、ヨウ化物イオンとのイオン交換反応が起こりにくいものと推測される。」 (甲3オ)「【0017】 前記吸着処理後の吸着剤からpH6.0以上の水溶液を用いて前記フッ化物イオンを脱離させた脱離液を作製する第2工程を有することを特徴としている。 この特徴によれば、吸着剤に吸着されたフッ化物イオンを脱離液中に脱離させ、回収することができる。また、フッ化物イオンの脱離に伴い、吸着剤の表面に水酸基が戻り再生されるため、吸着剤をフッ化物イオンの吸着処理に繰り返し使用することができる。」 イ 当審の検討 (ア)甲3において、「凝集剤」と「吸着剤」とは異なる「剤」として使い分けて用いられており、前者は、(甲3イ)に記載されているとおり、沈殿させてフッ化物イオンを除去しているのに対し、後者は、(甲3イ)及び(甲3ウ)に記載されているとおり、フッ化物イオンとのイオン交換反応によりフッ化物イオンを選択的吸着させて除去している。 (イ)上記(ア)を踏まえると、(甲3ア)に、フッ化物イオン、及びヨウ素イオン成分を含有する被処理液に対して、ジルコニウムを含む酸化物から構成され表面を水酸基により改質した吸着剤によりフッ化物イオンを吸着処理して、ヨウ化物イオン含有水溶液を製造することが記載されているが、ここで「ジルコニウムを含む酸化物から構成され表面を水酸基により改質した吸着剤」は「ジルコニウム系凝集剤」ではない。 (ウ)そうすると、甲3には、本件発明1の「セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)、アルミニウム系凝集剤、カルシウム系凝集剤、および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む」「凝集剤」、「凝集物を得る凝集工程」及び「凝集物」を除去することが記載されておらず、本件発明1は、甲3の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明と同一ではない。また、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~7も、甲3の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明と同一ではない。 よって、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではないから、新たな取消理由とはならない。 (2)「(2)の主張」について 上記第6の1(2)で記載したとおり、甲1発明における「ジルコンサンド」は「吸着剤」であり、申立人の主張する「上位概念的にとらえれば「ジルコニウム系凝集剤」といえる」とまではいえない。 また、申立人は、甲2について「フッ素除去吸着剤として「ジルコニウムフェライト」が記載されており、「ジルコンサンド」以外の「ジルコニウム系凝集剤」は周知」であることを主張しているが、甲2において、フッ素除去吸着剤として記載されているのは、「ジルコニウムフェライト系などの含水酸化物のイオン交換体」であり、「ジルコニウムフェライト」そのものではない。さらに、フッ素除去吸着剤として「ジルコニウムフェライト系などの含水酸化物のイオン交換体」が記載されていることに基づいて、「「ジルコンサンド」以外の「ジルコニウム系凝集剤」は周知」であるとはいえない。 (3)「(1)の主張」について 本件発明の「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」における「ジルコニウム系」とは、上記第2の2で述べたように、ジルコニウム化合物のことを表すものであり、「ジルコンサンド」とは化学式がZrSiO4で表されるジルコニウム化合物のことであるから、「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とは、「ジルコニウム化合物」から「ジルコンサンド」を除いた凝集剤ということになる。また、本願発明における「凝集剤」とは、上記第7の1(2)アで述べたように、フッ化物イオン及び/又はリン酸イオンと反応して凝集物が生じ、沈殿、分離できるものである。 したがって、本件発明における「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とは、フッ化物イオン及び/又はリン酸イオンと反応して凝集物が生じ、沈殿、分離できる、ジルコンサンド以外のジルコニウム化合物のことを意味しているものである。また、ジルコニウム系凝集剤として、ジルコンサンド以外のジルコニウム化合物である「オキシ塩化ジルコニウム」を用いた実験成績証明書が令和5年3月31日に提出された意見書に添付されている。 そうすると、本件明細書には、「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」として具体的な例示はないものの、申立人の「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」とはどのような凝集剤を指しているのか、・・・「ジルコンサンド」が除かれた「ジルコニウム系凝集剤」が何を指しているのか、全く不明である。」との主張は受け入れられない。 さらに、申立人の上記主張が、「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」の点で明確性要件を満たしていないとの主張であるとしても、明確性要件の判断は、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものであるから、当該観点において「ジルコニウム系凝集剤(ただし、ジルコンサンドを除く)」が不明確とまではいえない。 (4)小括 よって、申立人の主張により、上記第7で述べた当審の判断が覆るものではなく、そして、新たな取消理由を生じるものでもない。 第9 むすび 以上のとおり、本件発明1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701327

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