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特許異議申立

2023-701319

再生資源由来ポリエステルフィルム及びその製造方法

審判番号
2023-701319
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-165254
登録番号
7290090
請求日
2023年12月12日
審決日
2024年03月28日
公報発行日
2024年05月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】早川 いづみ
審判長/審判官
  • 審判長 淺野 美奈
  • 審判官 天野 宏樹
  • 審判官 中村 和正
分類
P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7290090号発明「再生資源由来ポリエステルフィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7290090号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7290090号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和元年9月11日の出願であって、令和5年6月5日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年12月12日に特許異議申立人早川いづみ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)がなされたものである。 第2 本件発明について 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 以下の工程(1)~(4)を有する再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 (1)ポリエステルフィルムから回収された、再生資源由来原料を準備する工程 (2)前記再生資源由来原料に含有されるポリエステルを固相重合し、該ポリエステルの固有粘度(IV)を0.80dl/g以上とすることで、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステルを含有する再生資源由来原料(a)を作製する工程 (3)ポリエステルフィルムから回収された、固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルを含有する再生資源由来原料(b)を作製する工程 (4)前記(a)及び(b)の混合原料を溶融混練した後、フィルム状に成型する工程 [請求項2] 前記工程(1)は、回収したポリエステルフィルムを粉砕機により粉砕してポリエステルフレークを作製し、該ポリエステルフレークを押出機により押し出した後、急冷固化することで再生資源由来原料を得る、請求項1に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項3] 前記工程(3)は、回収した、固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルフィルムを粉砕機により粉砕してポリエステルフレークを作製し、該ポリエステルフレークを押出機により押し出した後、急冷固化することで再生資源由来原料(b)を得る、請求項1又は2に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項4] 前記工程(4)では、前記工程(1)~(2)により得られた再生資源由来原料(a)を含有する表裏層の原料と、前記工程(1)~(3)により得られた再生資源由来原料(a)及び再生資源由来原料(b)の混合原料を含有する中間層の原料を、それぞれ別の押出機に投入し、Tダイからシート状に溶融押出する工程を含む共押出法により、中間層及び表裏層を有する再生資源由来ポリエステルフィルムを作製する、請求項1~3の何れか一項に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項5] 前記工程(4)は、前記混合原料を溶融混練した後、溶融押出し、冷却してフィルム状に成型する成型工程である、請求項1~3の何れか一項に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項6] 前記工程(4)の後に、以下の工程(5)を有する請求項1~5の何れか一項に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 (5)長手方向及び/又は幅方向に延伸する延伸工程 [請求項7] 前記工程(5)は、延伸温度70~120℃で、2.0~7.0倍に長手方向に延伸した後、延伸温度70~170℃で3.0~7.0倍に幅方向に延伸する、請求項6に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項8] 前記工程(5)において、180~270℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行う、請求項6又は7に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項9] 前記工程(5)において、一方向の延伸を2段階以上で行う、請求項6~8の何れか一項に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。 [請求項10] 99%質量%以上の再生資源由来原料から製造する、請求項1~9の何れか一項に記載の再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として下記(3)に示す甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。まとめて「甲号証」ということもある。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。 (1)理由1(甲1~甲3に基づく進歩性欠如) 本件発明1~10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1~甲3に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)理由2(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られることについて 本件発明の課題について、「ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られ、且つ、高い強度を有する、再生資源由来ポリエステルフィルムを提供すること」及び「ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られ、且つ、色調が改善された、再生資源由来ポリエステルフィルムを提供すること」([0013])が課題として記載されている。しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明において、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られたポリエステルフィルムを製造することについて記載されておらず、再生資源由来原料を少量で含むポリエステルフィルムを製造する方法をも包含するものであり、すなわち課題を解決しない範囲を包含するものであり、本願請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。請求項1を引用する本件発明2~10についても同様である。 イ 色調について 本件発明の課題について、「ポリエステル製品から回収された再生資源由来原料の比率を高めていくと、色調が黄色くなり、製品として利用できないという問題がある。」([0011])と記載されており、本件特許発明を産業上利用可能とする点において、ポリエステルフィルムの色調改善は必須の課題であると解されるところ、「本発明の再生資源由来ポリエステルフィルムは、蛍光増白剤を含有することで、ポリエステルフィルムから回収された、実質的に100%再生資源由来原料から形成されるものでありながら、従来の再生品と比べ色調が改善されているという利点を有する。」([0019])と記載されており、ポリエステルフィルム中に蛍光増白剤を含有することが前記色調改善の課題を達成するための必須手段であると解される。しかしながら、該手段は本件特許の請求項1に係る発明において記載されておらず、ポリエステルフィルム中に蛍光増白剤を含有しない本願請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。請求項1を引用する本件発明2~10についても同様である。 ウ 層構成について 本件発明の特に好ましい形態として、「(1)本フィルムが、少なくともA/B/Aの3層を備えた多層構造であって、前記A層は、最表面を構成する層であり、且つ、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料から形成され、該A層形成用の再生資源由来原料(A-1)は、固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルを含み、前記B層は、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料から形成され、該B層形成用の再生資源由来原料(B-1)は、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステルを含む形態。」([0054])が記載されており、本件特許実施例には上記形態の例のみが記載されており他の形態は記載されておらず、また、比較例は記載されていない。本件特許の請求項1に係る発明において、上記形態として記載された、A/B/Aの3層を備えた多層構造以外の構造のフィルムを含む発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。請求項1を引用する本件発明2、3、5~10についても同様である。 (3)証拠方法 甲1:特開2004-156041号公報 甲2:特開2012-126763号公報 甲3:特開2019-66841号公報 第4 当審の判断 当審は、申立人が申し立てたいずれの申立理由によっても、本件発明1~10についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。 1.理由1(甲1~甲3に基づく進歩性欠如)について (1)甲号証に記載された事項 ア 甲1に記載された事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (1-1)「[請求項1] 押出または共押出工程、二軸延伸工程および熱固定工程から成る単層または積層結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、結晶性熱可塑性樹脂として、押出または共押出に先だって主成分である第1の熱可塑性樹脂と50重量%未満の含有量の第2の熱可塑性樹脂とが混合された樹脂を使用し、第1の熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が600~1000であって、第2の熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が900を超え1500未満であって、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とのジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度の差が100以上であることを特徴とする単層または積層フィルムの製造方法。 ・・・ [請求項5] 結晶性熱可塑性樹脂がポリエステルまたは共重合ポリエステルである請求項1~4の何れかに記載の単層または積層フィルムの製造方法。 ・・・ [請求項10] 結晶性熱可塑性樹脂として、単層または積層フィルムの製造工程で生じるフィルム端材を再利用する請求項1~9の何れかに記載の単層または積層フィルムの製造方法。 [請求項11] 再利用するフィルム端材に他の熱可塑性樹脂を添加する請求項10に記載の単層または積層フィルムの製造方法。 [請求項12] 再利用するフィルム端材に他の熱可塑性樹脂を添加して成る再生品の計算上のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が、第1の熱可塑性樹脂の標準粘度と実質的に同一である請求項11に記載の単層または積層フィルムの製造方法。」 (1-2)「[背景技術] [0002] 結晶性熱可塑性樹脂から成る二軸延伸フィルムは公知である。中でも、ポリエステルから成るフィルムは再生原料を添加でき、種々の添加剤を含有させることにより種々の機能を付与することが出来る。ポリエステルの原料コストは他の汎用樹脂の原料コストと比較して高い。そのため、ポリエステルフィルムの原料コストを低くすることが望まれている。 [0003] ポリエステルフィルムの原料コストを低くする方法として、ポリエステルフィルムの製造工程に於けるトリミング工程で生じるフィルム端材を原料として再利用する方法は知られている(例えば特許文献1~5)。しかしながら、ポリエステル原料は押出および延伸工程を経る際に粘度が低下するため、上記のフィルム端材の粘度は原料ポリエステル純品と比較して低く、ポリエステルの製造安定性に影響を及ぼす。さらに、ポリエステルフィルムの製造工程から生じる再生原料だけでなく、回収PETボトル等のリサイクル品もポリエステルフィルムの原料として利用されることが望まれている。 ・・・ [発明が解決しようとする課題] [0004] 本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、公知のフィルムと比較して、原料樹脂の粘度が高い等の優れた特性を有し、原料コストが安価である単層または多層熱可塑性樹脂フィルムを提供することである。 [課題を解決するための手段] [0005] 本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、粘度の高い樹脂から成るリサイクル原料(特に回収ボトル)を添加することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。」 (1-3)「[0010] 本発明に於ける結晶性熱可塑性樹脂は、主成分である第1の熱可塑性樹脂と50重量%未満の含有量の第2の熱可塑性樹脂とから成る。第1の熱可塑性樹脂に於ては結晶性熱可塑性樹脂の純原料を使用し、好ましくは結晶性ポリエステル、より好ましくは結晶性PET及び/又はPENを使用する。純原料の熱分解は、安定剤としての機能を有する化合物を重縮合体の主鎖中に共重合させることにより最適化することが出来る。第1の熱可塑性樹脂の配合量は、好ましくは55~95重量%、より好ましくは60~90重量%である。 [0011] 本発明に於て、結晶性ポリエステルとは、結晶性ポリエステルのホモポリマー及び共重合体、結晶性ポリエステルの混合物、結晶性ポリエステルの再生品、変性結晶性ポリエステル等を意味する。第1の熱可塑性樹脂に於ける結晶性熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度は600~1000、好ましくは700~980である。」 (1-4)「[0014] 第2の熱可塑性樹脂に於ては、ボトルのリサイクル品、廃品回収されたもの、フィルム製造工程に於て生じる端剤などから得られる再生品などが使用できる。これらの再生品は安価であり、大量に得ることが出来る。これらの再生品は、二軸延伸フィルムを製造するために使用されてなく、本発明に於て新しい使用方法を見出したものである。 [0015] 第2の熱可塑性樹脂は、好ましくは結晶性ポリエステルであり、その定義は上記で説明した通りである。第2の熱可塑性樹脂に於ける結晶性熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度は、900を超え1500以下、好ましくは1000~1400、より好ましくは1050~1300である。標準粘度が1500を超えると、フィルム製造に於てゲルや小粒子が発生し、ポリマーの異物除去のためのフィルターの寿命を短くする。また、第2の熱可塑性樹脂の標準粘度が900以下の場合、原料コストが僅かに低くなる以外にほとんど効果が無い。 [0016] 第2の熱可塑性樹脂に使用する再生品は種々の形態のものが使用でき、例えば、粉砕されたものや、未使用のボトルの粉砕品またはその原料の残余ペレットや、リサイクル品の粉砕品が使用できる。本発明の製造方法に於て、洗浄されている使用済プラスチックボトルの粉砕を使用することが好ましい。上記の再生品は、ポリエステルの純正品と比較して低いコストであり、製造されるフィルムも低コストになる。 [0017] また、フィルムの製造において生じる端材(トリミングに於て切取られた再利用部分)を再生循環ラインを介し、第2の熱可塑性樹脂の原料として再生供給することが好ましい。通常フィルムの製造において生じる端材の標準粘度は、純原料の標準粘度よりも低いため、純原料の標準粘度と一致する程度に高い粘度の原料を添加することが好ましい。 ・・・ [0019] ポリマーの乾燥および押出を行なうことにより、ポリマーの粘度は低下する。フィルム製造工程に於て、押出工程以降のトリミング工程に於て生じるフィルム端材から成る再生品ポリマーの粘度は、押出工程を経ているために、純原料のポリマーと比較して低い。そのため、基材ポリマー原料に再生品を使用すると、粘度の変動により製造安定性が悪くなる。本発明の製造方法に於て、トリミング工程に於て生じるフィルム端材を再利用する際、粘度のより高い第2の熱可塑性樹脂を添加することにより、粘度を初期段階(すなわち純原料ポリマーの粘度)まで高め、上記問題点を解決することが出来る。第2の熱可塑性樹脂の最適な添加量は以下の式により算出できる。 [0020] [数1] 第2の熱可塑性樹脂の最適な添加量= ((SVVR+ΔR―SVTR)/(SVFL-SVTR))×100 [0021] 上記式中、SVVRは全原料(純原料も含む)の平均標準粘度(SV)、ΔRは押出による粘度の減少量、SVTRはトリミングで生じたフィルム端材または製造されたフィルムのSV、SVFLは第2の熱可塑性樹脂のSVを表す。」 (1-5)「[0049] フィルムの製造における好ましい押出し方法は、溶融ポリマーをスロットダイから押出し、押出されたシートを冷却ロール上で冷却し、このアモルファスフィルムを再度加熱して延伸する。延伸は、長手方向および横方向、横方向および長手方向、長手方向および横方向の延伸後、再度長手方向および/または横方向に延伸する何れの方法であってもよい。一般的に、延伸温度はポリマーのガラス転移温度をTgとした場合、Tg+10~Tg+60℃で行い、長手方向には通常2~6倍、好ましくは3~4.5倍に、横方向には通常2~5倍、好ましくは3~4.5倍に延伸する。必要であれば、再度1.1~5倍に長手方向または横方向に延伸する。最初の長手方向の延伸において同時に横方向の延伸を行う2軸延伸法で延伸を行ってもよい。延伸後、通常180~260℃、好ましくは220~250℃で熱固定を行い、冷却後巻取る。」 (1-6)「[実施例] [0057] 以下本発明を実施例により更に詳細に説明する。以下の各成分の使用量について、特に断らない限り単位は重量基準である。以下にポリマー及びフィルムの評価方法について示す。 ・・・ [0064] (7)標準粘度SV: ポリエステルの標準粘度SV(DCA)は、ジクロロ酢酸1%溶液中25℃でDIN 53726に従って測定した。ポリエステルの固有粘度IVは、標準粘度SV値を使用して以下の式より算出した。 [0065] [数2] SV(DCA)=(ηrel-1)×1000 IV(DCA)=6.67・10-4SV(DCA)+0.118」 (1-7)「[0066] 実施例1: 以下の表に示す組成を有する厚さ190μmの白色単層フィルムを製造した。 [0067] [表1] ・M04(PET純品、KoSa社製、ドイツ、SV=980) 34重量% ・4重量%の二酸化チタン及び3重量%の炭酸カルシウムを含有 6重量% するPET(SV=810)マスターバッチ ・フィルム製造工程のトリミングで生じた端材(SV=850) 60重量% 60重量%とリサイクルボトル(PET-A、Texplas ts社製、ドイツ、SV=1200)40重量%とから成る 再生用再粉砕品 [0068] フィルム製造工程のトリミングで生じた端材のSVは850で、リサイクルボトルのSVは1200であるため、再粉砕前の再生品のSVは990と計算される。再生品は再粉砕工程において粘度が約40低下し、SV=950となり、純品PETとほぼ同じSVとなる。得られたフィルムのSVは850であった。本実施例で得られたフィルムはシール性フィルムとして使用したが、製造したフィルムの64%が製品となり、残りの36%はトリミング工程で得られたフィルム端材であった。上記の表に示す組成からも明らかなように、フィルム原料に対する再生用粉砕品の配合量が60重量%であり、その60重量%がトリミング工程で得られたフィルム端材であることから、製造工程に於て生じるフィルム端材を効率よく再利用できることがわかる。」 イ 甲2に記載された事項 甲2には以下の事項が記載されている。 (2-1)「[請求項1] 固形状のポリエステル樹脂をエチレングリコール存在下で、ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理した後、固相重合することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。 [請求項2] 固相重合後のポリエステル樹脂の極限粘度(IV)を0.60dl/g以上、酸価(AV)を10eq/t以下とする請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。 [請求項3] 固形状のポリエステル樹脂として回収ポリエステル樹脂を用い、当該回収ポリエステルからリサイクルポリエステル樹脂を再生する請求項1または2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。 ・・・ [請求項5] ヴァージンポリエステル樹脂と、請求項3に記載の製造方法により得られたリサイクルポリエステル樹脂からなるポリエステル樹脂混合物を用いて成形した成形品であり、前記リサイクルポリエステル樹脂を15質量%以上含有し、その成形品の物性が、前記ヴァージンポリエステル樹脂のみを用いて成形した成形品に対して、以下を同時に満たすことを特徴とする成形品。 ΔIV≦0.03 ΔAV≦2 (ここで、ΔIVはヴァージンポリエステル樹脂のみを用いて成形した成形品のIV(dl/g)と、リサイクルポリエステル樹脂を15質量%以上含有したポリエステル樹脂混合物を成形した成形品のIV(dl/g)との差の絶対値を示す。ΔAVはヴァージンポリエステル樹脂のみを用いて成形した成形品のAV(eq/t)と、リサイクルポリエステル樹脂を15質量%以上含有したポリエステル樹脂混合物を成形した成形品のAV(eq/t)との差の絶対値を示す。) ・・・ [請求項8] 成形品がフィルムであることを特徴とする、請求項5記載の成形品。」 (2-2)「[0065] (フィルムの製膜方法) IVが0.73dl/g、AVが0eq/tであるヴァージンのフィルム用PETペレットと、製造例の方法により得られたリサイクルペレットとを、リサイクルペレットが30質量%となるよう混合し、135℃で10時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出し機に供給した。押出し機溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂最高温度は290℃、その後のポリマー管では285℃とし、ダイスよりシート状にして押出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度20μm粒子95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が285℃になるようにした。なお、押出し機入り口で抜き出したペレットの水分率を測定した結果、水分率は20ppmであった。押し出した樹脂を静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。 [0066] 次に、この未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.3倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。引き続いて、テンターで、130℃で幅方向に4.0倍に延伸を行った後、熱固定を235℃で行い、さらに200℃で幅方向に6%弛緩処理を行い、厚さ50μmの二軸配向PETフィルムを得た。」 (2-3)「[0081] (回収ペレットC-1) フィルム製膜工程における不良品、屑を集め、粉砕後、押出機により溶融押出しし、3.2mm×2.8mm×1.8mm程度の大きさの円柱状の回収ペレット(C-1)を得た。この時点で、回収ペレット(C-1)の品質は、IVが0.66dl/g、AVが15eq/tonであった。 [0082] (リサイクルペレットC-2) 回転型乾燥機内で、上記で得られた回収ペレット(C-1)を、ペレット1kgに対して単位時間あたり0.086g/(hr・ペレットkg)(=86ppm)のエチレングリコール蒸気含有の窒素気流条件下に曝し、回収ペレットとエチレングリコールを6時間接触させた。処理温度は220℃で行った。この時点で、リサイクルペレットの品質は、IVが0.60dl/g、AVが6eq/tであった。 [0083] さらに、0.5mmHg、230℃にて固相重合を行った。固相重合は、IVがヴァージンペレットと同等(0.73dl/g)となる時点で停止とした。固相重合に要した時間は10時間であった。得られたリサイクルペレット(C-2)の品質は、IVが0.73dl/g、AVが2eq/tであった。 [0084] (リサイクルペレットC-3) リサイクルペレットC-2の製造において、エチレングリコール存在下での加熱処理において、エチレングリコール添加量を、単位時間あたり、ペレット1kgに対し、13.88g/(hr・ペレットkg)(=13,880ppm)とした以外は同様にし、回収ペレットの処理および固相重合を実施した。固相重合に要した時間は14時間であった。得られたリサイクルペレット(C-3)の品質は、IVが0.73dl/g、AVが1eq/tであった。 [0085] (リサイクルペレットC-4) 上記で得られた回収ペレット(C-1)を用いて、エチレングリコール処理を行わずに、0.5mmHg、230℃にて固相重合のみを行った。固相重合は、IVがヴァージンペレットと同等(0.73dl/g)となる時点で停止とした。固相重合に要した時間は8時間であった。得られたリサイクルペレット(B-4)の品質は、IVが0.73dl/g、AVが13eq/tであった。」 (2-4)「[0112] (リサイクルペレットを使用したフィルム) (実施例5) IVが0.73dl/g、AVが1eq/tであるフィルム用PETヴァージンペレットと、リサイクルペレット(B-2)とを、リサイクルペレット(B-2)が30質量%となるように計量混合し、その混合物を前述の方法にて製膜し、厚さ50μmの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性(IV、AV)を表4に示す。また、上記で得られたフィルムについて加水分解試験を行った結果を表4に示す。 [0113] (実施例6) 実施例5において、用いるリサイクルペレットとして、リサイクルペレット(B-3)30質量%となるように計量混合した混合レジンを用いて製膜した以外は、実施例5と同様な方法で二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性(IV、AV)を表4に示す。また、上記で得られたフィルムについて加水分解試験を行った結果を表4に示す。 [0114] (実施例7) 実施例5において、用いるリサイクルペレットとして、リサイクルペレット(C-2)30質量%となるように計量混合した混合レジンを用いて製膜した以外は、実施例5と同様な方法で二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性(IV、AV)を表4に示す。また、上記で得られたフィルムについて加水分解試験を行った結果を表4に示す。 [0115] (実施例8) 実施例5において、用いるリサイクルペレットとして、リサイクルペレット(C-3)30質量%となるように計量混合した混合レジンを用いて製膜した以外は、実施例5と同様な方法で二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性(IV、AV)を表4に示す。また、上記で得られたフィルムについて加水分解試験を行った結果を表4に示す。」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には以下の事項が記載されている。 (3-1)「[請求項1] フィルム製造時の機械流れ方向に沿ってスリットされたフィルムの端面に、5μm以上突出する髭状物の存在本数が、フィルム長さ100μmあたり1本以内であるポリエステルフィルム。 [請求項2] 固有粘度が0.55dl/g以上0.65dl/g以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。 ・・・ [請求項5] ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの一部に、ポリエステルフィルムを製造する工程で生じた自己回収ポリマーを含む請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。」 (3-2)「[0115] (製造例1 : ポリエチレンテレフタレート樹脂A) エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸86.4質量部およびエチレングリコール64.4質量部を仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム四水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて、260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。ついで15分後に、高圧分散器で、分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下、重縮合反応を行った。撹拌トルクを目安に、重縮合反応を終了させた後、ストランド状態で冷却水において、冷却、固化したものをペレット状に切断し、さらに、減圧乾燥を行って、固有粘度0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂A(以下、樹脂A)を得た。 [0116] (製造例2 : ポリエチレンテレフタレート樹脂B) 乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部、粒子を含有しない製造例1にて作製したポリエチレンテレフタレート樹脂A90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有する固有粘度0.58dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂B(以下、樹脂B)を得た。 [0117] (製造例3 : 自己回収ポリエチレンテレフタレート樹脂C) 製品から切断除去したフィルム端部の屑フィルムを粉砕し、水分を除去するために150℃で乾燥させた。乾燥した粉砕フィルムを押出機にて溶融し、ダイからストランド状に吐出せしめて冷水で急冷固化させる。固化したストランドはストランドカッターにてペレット形状に切断した後、融着を防止するために表面を乾燥させて、固有粘度が0.50dl/gの自己回収ポリエチレンテレフタレート樹脂C(以下、樹脂C)を得た。 [0118] (製造例4 : 自己回収ポリエチレンテレフタレート樹脂D) スリット工程にて生じた耳ロールおよび規格外製品を、外部にて、洗浄剥離加工を実施した。得られた両表面の塗布層が剥離されたフィルムを粉砕し、水分を除去するために150℃で乾燥させた。乾燥した粉砕フィルムを押出機にて溶融し、ダイからストランド状に吐出せしめて冷水で急冷固化させる。固化したストランドはストランドカッターにてペレット形状に切断した後、融着を防止するために表面を乾燥させて、固有粘度が0.60dl/gの自己回収ポリエチレンテレフタレート樹脂D(以下、樹脂D)を得た。」 (3-3)「[0128] (実施例1) 基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しない樹脂A81質量部と樹脂C9質量部、紫外線吸収剤を含有した樹脂B10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また樹脂Aを常法により乾燥して押出機1(表面層I層および表面層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2層のポリマーを、それぞれステンレスの焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。この時、I層、II層、III層の厚さの比は8:84:8となるように各押し出し機の吐出量を調整した。また、据え付けたオンライン粘度計から、I層およびIII層を形成する樹脂の固有粘度は0.65dl/gとなり、II層を形成する樹脂の固有粘度は0.60dl/gとなった。」 (2)甲1に記載された発明 甲1の特許請求の範囲(摘記1-1)の請求項1には「押出または共押出工程、二軸延伸工程および熱固定工程から成る単層または積層結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、結晶性熱可塑性樹脂として、押出または共押出に先だって主成分である第1の熱可塑性樹脂と50重量%未満の含有量の第2の熱可塑性樹脂とが混合された樹脂を使用し、第1の熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が600~1000であって、第2の熱可塑性樹脂のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が900を超え1500未満であって、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とのジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度の差が100以上であることを特徴とする単層または積層フィルムの製造方法。」が記載されており、請求項5には「結晶性熱可塑性樹脂がポリエステルまたは共重合ポリエステルである」こと、請求項10には「結晶性熱可塑性樹脂として、単層または積層フィルムの製造工程で生じるフィルム端材を再利用する」こと、請求項11には「再利用するフィルム端材に他の熱可塑性樹脂を添加する」こと、請求項12には「再利用するフィルム端材に他の熱可塑性樹脂を添加して成る再生品の計算上のジクロロエタン中25℃に於ける標準粘度が、第1の熱可塑性樹脂の標準粘度と実質的に同一である」ことが記載されている。 また、[0010](摘記1-3)には「第1の熱可塑性樹脂に於ては結晶性熱可塑性樹脂の純原料を使用」することが記載され、[0014]~[0021](摘記1-4)には、「第2の熱可塑性樹脂に於ては、ボトルのリサイクル品、廃品回収されたもの、フィルム製造工程に於て生じる端剤などから得られる再生品などが使用できる」こと、「フィルムの製造において生じる端材(トリミングに於て切取られた再利用部分)を再生循環ラインを介し、第2の熱可塑性樹脂の原料として再生供給することが好ましい」が、「フィルム端材から成る再生品ポリマーの粘度は、押出工程を経ているために、純原料のポリマーと比較して低い。そのため、・・・粘度のより高い第2の熱可塑性樹脂を添加することにより、粘度を初期段階(すなわち純原料ポリマーの粘度)まで高め、上記問題点を解決することが出来る」ことが記載されている。 さらに、[0049](摘記1-5)には、「フィルムの製造における好ましい押出し方法は、溶融ポリマーをスロットダイから押出し、押出されたシートを冷却ロール上で冷却し、このアモルファスフィルムを再度加熱して延伸する」方法であることが記載されている。 そして、上記好ましいものとされる樹脂の組合せを用いてなる、特許請求の範囲の請求項12に係る発明の具体例として、[0066]~[0068](摘記1-7)には、 「・M04(PET純品、KoSa社製、ドイツ、SV=980)34重量%、 ・4重量%の二酸化チタン及び3重量%の炭酸カルシウムを含有するPET(SV=810)マスターバッチ 6重量%、 ・フィルム製造工程のトリミングで生じた端材(SV=850)60重量%とリサイクルボトル(PET-A、Texplasts社製、ドイツ、SV=1200)40重量%とから成る再生用再粉砕品 60重量%」 の組成を有する厚さ190μmの白色単層フィルムを製造したことが記載されており、再生用再粉砕品については、「再粉砕前の再生品のSVは990と計算される。再生品は再粉砕工程において粘度が約40低下し、SV=950となり、純品PETとほぼ同じSVとなる。」と記載されている。 加えて、[0064]~[0065](摘記1-6)には、ポリエステルの標準粘度SV(DCA)を使用して、以下の式 IV(DCA)=6.67・10-4SV(DCA)+0.118 によりポリエステルの固有粘度IVを算出することが記載されているから、上記M04のSV=980はIV=0.772、上記マスターバッチのPETのSV=810はIV=0.658、上記端材のSV=850はIV=0.685、上記リサイクルボトルのSV=1200はIV=0.918、再粉砕前の再生品のSV=990はIV=0.778、再生用再粉砕品のSV=950はIV=0.752と算出される。 そうすると、甲1には以下の発明が記載されている。 「溶融ポリマーをスロットダイから押出し、押出されたシートを冷却ロール上で冷却する押出工程、二軸延伸工程および熱固定工程から成る単層ポリエステルフィルムの製造方法であって、ポリエステルとして、押出または共押出に先だって主成分である34重量%の第1の熱可塑性樹脂(M04(PET純品、KoSa社製、ドイツ、SV=980(当審注:IV=0.772))と、60重量%の再生用再粉砕品(フィルム製造工程のトリミングで生じた端材(SV=850(当審注:IV=0.685))60重量%とリサイクルボトル(第2の熱可塑性樹脂、PET-A、Texp1ats社製、ドイツ、SV=1200(当審注:IV=0.918))40重量%とからなり、SV=950(当審注:IV=0.752)であるもの)とが混合され、さらに6重量%のマスターバッチ(4重量%の二酸化チタン及び3重量%の炭酸カルシウムを含有するPET(SV=810(当審注:IV=0.658)))が混合された樹脂を使用した、単層フィルムの製造方法。」 (以下、「甲1発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「溶融ポリマーをスロットダイから押出し、押出されたシートを冷却ロール上で冷却する押出工程」、「単層ポリエステルフィルムの製造方法」及び「フィルム製造工程のトリミングで生じた端材」は、それぞれ本件発明1における「混合原料を溶融混練した後、フィルム状に成型する工程」、「ポリエステルフィルムの製造方法」及び「ポリエステルフィルムから回収された、再生資源由来原料」に相当するから、両者は、 「以下の工程を有するポリエステルフィルムの製造方法。 (1)ポリエステルフィルムから回収された、再生資源由来原料を準備する工程 (4)混合原料を溶融混練した後、フィルム状に成型する工程」 の点で一致し、 相違点1:本件発明1は「再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法」と特定するのに対し、甲1発明は「単層ポリエステルフィルムの製造方法」である点 相違点2:本件発明1は「(2)前記再生資源由来原料に含有されるポリエステルを固相重合し、該ポリエステルの固有粘度(IV)を0.80dl/g以上とすることで、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステルを含有する再生資源由来原料(a)を作製する工程」を有するのに対し、甲1発明は「リサイクルボトル(第2の熱可塑性樹脂、PET-A、Texp1ats社製、ドイツ、SV=1200(当審注:IV=0.918))40重量%」を含む、SV=950(当審注:IV=0.752)である再生用再粉砕品を混合する点 相違点3:本件発明1は「(3)ポリエステルフィルムから回収された、固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルを含有する再生資源由来原料(b)を作製する工程」を有するのに対し、甲1発明は「フィルム製造工程のトリミングで生じた端材(SV=850(当審注:IV=0.685))60重量%」を含む、SV=950(当審注:IV=0.752)である再生用再粉砕品を混合する点 相違点4:本件発明1は工程(4)において「前記(a)及び(b)の混合原料」と特定するのに対し、甲1発明は「60重量%の再生用再粉砕品」と、「34重量%の第1の熱可塑性樹脂(M04(PET純品、KoSa社製、ドイツ、SV=980(当審注:IV=0.772)))」と、「6重量%のマスターバッチ(4重量%の二酸化チタン及び3重量%の炭酸カルシウムを含有するPET(SV=810(当審注:IV=0.658)))」が混合された樹脂を使用する点 で相違する。そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点1及び4について 事案に鑑み相違点1及び4について検討する。 (ア)本件発明における「再生資源由来」の用語について 本件発明1の(1)~(4)の工程は、いずれもポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を使用することが特定された工程であり、PET純品を使用することは特定されていない。 また、本件発明1における「再生資源由来ポリエステルフィルム」という用語について、本件明細書の[0020]には「本発明の再生資源由来ポリエステルフィルム(以下、「本フィルム」ともいう。)は、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料、より具体的には、使用後のポリエステルフィルム製品及び/又はポリエステルフィルム(以下、両者を併せて又は個々に「本再資源フィルム」という。)を製造する工程等から回収された再生資源由来原料により形成されるものである。」と記載され、「再生資源由来原料」という用語について、[0023]~[0025]には「「再生資源由来原料」とは、本資源フィルムを構成するポリエステル等の原料生産後に一度以上溶融されたものをいう。・・・本フィルムは、実質的に100%再生資源由来原料から形成されるものであることが好ましく、「実質的に」とは、意図的にポリエステルのバージン原料を使用しないことを意味し、製造工程等において、不可避的に混入することを許容する意味である。また、より具体的には、本発明において、「実質的に100%再生資源由来原料」とは、99%以上、好ましくは99.5%以上が再生資源由来原料であることを意味する。したがって、本フィルムは、厳密に100%再生資源由来原料から形成されるものであることを要さず、再生資源由来原料を99%質量%以上、好ましくは99.5%質量%以上含む材料から形成されるものである。」と記載されている。 さらに、[0013]には、「本発明は、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られ、且つ、高い強度を有する、再生資源由来ポリエステルフィルムを提供することを目的の1つとするものである。」と記載されている。 よって、本件発明1の発明特定事項と、本件明細書における用語の定義及び発明の課題についての記載を参酌すると、本件発明1の「再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法」は、意図的にポリエステルのバージン原料を使用しないポリエステルフィルムの製造方法の発明であると解される。 (イ)甲1発明の主成分について これに対し、甲1発明は「主成分である34重量%の第1の熱可塑性樹脂(M04(PET純品、KoSa社製、ドイツ、SV=980(当審注:IV=0.772)))」を原料として使用する発明であり、また、甲1の[0010](摘記1-3)には、「本発明に於ける結晶性熱可塑性樹脂は、主成分である第1の熱可塑性樹脂と50重量%未満の含有量の第2の熱可塑性樹脂とから成る。第1の熱可塑性樹脂に於ては結晶性熱可塑性樹脂の純原料を使用し、好ましくは結晶性ポリエステル、より好ましくは結晶性PET及び/又はPENを使用する。」と記載されているから、甲1発明において主成分とされている第1の熱可塑性樹脂(PET純品)はフィルムの原料として意図的に添加されるものである。また、甲1発明における第1の熱可塑性樹脂として、純原料以外の、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を用いることを動機付ける記載は甲1には見いだせない。 さらに、甲2(摘記2-1~2-4)及び甲3(摘記3-1~3-3)にも、甲1発明における第1の熱可塑性樹脂(PET純品)をポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料に置き換える動機付けとなる記載は見いだせない。 (ウ)相違点1及び4についての判断 そうすると、甲1発明における第1の熱可塑性樹脂(PET純品)をフィルムの原料として使用しないことにより、又は、PET純品に代えてポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を使用することにより、相違点1及び4を解消し本件発明1の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、本件発明1は相違点1及び4に係る発明特定事項を備えた再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法により、「ポリエステルフィルムから回収された、実質的に100%再生資源由来原料から形成されるものでありながら、従来のバージン原料を使用して得られるポリエステルフィルムと同等の強度を備えると言う利点を有する」再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法を提供することができるという顕著な効果を発揮するものである。 ウ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明及び甲2、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~10について 本件発明2~10は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。 (5)理由1(甲1~甲3に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~10は、いずれも甲1発明及び甲2、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1(甲1~甲3に基づく進歩性欠如)により本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。 2.理由2(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件発明の課題について 本件明細書の[0013]等の記載から見て、本件発明1~10の課題は「ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用し、且つ、高い強度を有する、再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法を提供すること」にあるものと認められる。 (3)サポート要件についての判断 本件発明1の工程(1)に関し、本件明細書の[0020]には、「本発明の再生資源由来ポリエステルフィルム・・・は、ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料、より具体的には、使用後のポリエステルフィルム製品及び/又はポリエステルフィルム・・・を製造する工程等から回収された再生資源由来原料により形成されるものである」ことが記載され、[0023]には、「「再生資源由来原料」とは、本資源フィルムを構成するポリエステル等の原料生産後に一度以上溶融されたものをいう。また、本資源フィルムは、ポリエステルフィルムを製造する工程で生じた、自己回収型の再生資源由来原料により形成されるものであることが好ましい」ことが記載されている。 また、本件発明1の工程(2)に関し、本件明細書の[0027]には、「再生資源由来原料は、本資源フィルムが製造工程等において熱履歴を受けていることから、再利用すると固有粘度(IV)が低く、強度を確保し難い」こと、そこで、「前記再生資源由来原料は、固有粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを含有し、当該ポリエステルの少なくとも1つは、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上であることが好ましい」ことが記載され、[0028]には、「本資源フィルムから回収・再利用された原料から固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステルを得るためには、再利用された原料であるポリエステルを固相重合することが好ましい」こと、及び「固相重合方法としては、公知の方法を利用することができ、連続或いはバッチのいずれの方法であってもよい」ことが記載されている。 また、本件発明1の工程(3)及び(4)に関し、[0029]には、「前記再資源由来原料は、固有粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを含有し、当該ポリエステルの少なくとも1つは、固有粘度(IV)が0.60dl/g以下であることが好ましい」こと、及び「固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルを含む再生資源由来原料を使用することにより、該フィルムの生産性やコストを維持できる等の効果を奏することができる」ことが記載され、[0030]には、「本資源フィルムから回収・再利用された原料から、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステル及び固有粘度(IV)が0.60dl/g以下の少なくとも2種のポリエステルを使用することで、回収・再利用された原料を使用した際に懸念される、ポリエステルフィルム強度低下による生産時におけるフィルムの破断を抑制することができ、従来のバージン原料を使用して得られるポリエステルフィルムと同等の強度を具備させることができる」ことが記載されている。 さらに、本件明細書の[0067]~[0077]には、本件発明1の工程(1)~(4)の原料及び押出、フィルム成型工程並びにそれに続く延伸工程の好ましい条件が記載されており、[0081]~[0090]にはその裏付けとなる実施例として、回収ポリエステルフィルムを粉砕、処理して得た固有粘度(IV)が0.54~0.60dl/gの再生ポリエステルペレット(a)、(b1)、(c)及び(d)と、(b1)の固相重合により得た固有粘度(IV)が0.85dl/gの再生ポリエステルペレット(b2)とを使用し、シリカ粒子及び蛍光増白剤以外のバージン原料を使用せず、全体としてリサイクル率99.93%の原料を用いて溶融混練、押出フィルム成型及び延伸を行うことにより、引張強さが長手方向で210~203MPa、幅方向で231~216MPaの再生資源由来ポリエステルフィルムを製造したことが記載されている。 そうすると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らして、本件発明1の工程(1)~(4)を備えるフィルムの製造方法により、「ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用し、且つ、高い強度を有する、再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法を提供する」という課題が解決されるものと理解することができる。請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~10も、本件発明1と同様の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (4)申立人の主張について 申立人は申立書第26~28頁において、概略、上記第3(2)ア~ウのように主張しているが、以下のとおり、いずれの主張も採用することはできない。 ア 「再生資源由来原料を実質的に100%使用し」について 上記1.(3)イ(ア)「本件発明における「再生資源由来」の用語について」に記載したとおり、本件発明1の発明特定事項と、本件明細書における用語の定義及び発明の課題に関する記載を参酌すると、本件発明1の「再生資源由来ポリエステルフィルムの製造方法」は、意図的にポリエステルのバージン原料を使用しないポリエステルフィルムの製造方法の発明であると解される。そして、上記(3)に記載したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に照らして、当業者は本件発明1~10の製造方法により、意図的にポリエステルのバージン原料を使用しないで、高い強度を有する再生資源由来ポリエステルフィルムを製造することができると認識することができる。 よって、本件発明1~10が上記課題を解決しない範囲を包含するとはいえない。 イ 色調の改善について 本件明細書の[0019]には「本発明の再生資源由来ポリエステルフィルムは、蛍光増白剤を含有することで、ポリエステルフィルムから回収された、実質的に100%再生資源由来原料から形成されるものでありながら、従来の再生品と比べ色調が改善されているという利点を有する。」と記載され、[0033]には「蛍光増白剤を添加することにより、フィルムの黄色味を改善することができる。」と記載されている。また、[0054]には、特に好ましい実施形態1の一形態(5)として「前記(1)~(4)の何れかにおいて、前記B層は、さらに、蛍光増白剤を含有する形態。」が記載され、[0069]には、特に好ましい実施形態2の一形態として「フィルム中に蛍光増白剤を含有させることで、本フィルムの色調を改善でき、且つ、本フィルムが再生品から得られたものであることの識別も可能となる。」と記載されている。 これらの記載に基づいて、当業者は、[0013]に記載された「色調が改善された」という作用効果がフィルム中に蛍光増白剤を含有させることによって得られること、及びフィルム中に蛍光増白剤を含有させる工程は任意選択的に行うことができる実施態様の一つにすぎないと合理的に理解することができるから、フィルム中に蛍光増白剤を含有させる工程を発明特定事項として含まない本件発明1~10については、色調改善を必須の課題とするものではなく、「ポリエステルフィルムから回収された再生資源由来原料を実質的に100%使用して得られ、且つ、高い強度を有する、再生資源由来ポリエステルフィルムを提供すること」を課題とするものと理解することができる。 そして、本件発明1~10が上記課題を解決し得ることは上記(3)に記載したとおりであるから、申立人の主張は妥当ではなく、採用することができない。 ウ 層構造について 上記(3)に記載したとおり、本件明細書の[0029]~[0030]等には、「固有粘度(IV)が0.60dl/g以下のポリエステルを含む再生資源由来原料を使用することにより、該フィルムの生産性やコストを維持できる等の効果を奏することができる」こと、及び「本資源フィルムから回収・再利用された原料から、固有粘度(IV)が0.80dl/g以上のポリエステル及び固有粘度(IV)が0.60dl/g以下の少なくとも2種のポリエステルを使用することで、回収・再利用された原料を使用した際に懸念される、ポリエステルフィルム強度低下による生産時におけるフィルムの破断を抑制することができ、従来のバージン原料を使用して得られるポリエステルフィルムと同等の強度を具備させることができる」ことが記載されており、また、[0063]等に記載されるとおり、溶融押出によるフィルム成型は本件特許の出願当時において周知の技術的事項である。 そうすると、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に照らして、原料の配合や溶融押出の条件を適宜に調整することにより、実施例のA/B/Aとは異なる層構成のフィルムを包含する本件発明1~10の範囲で上記課題を解決することができると認識することができるから、申立人の主張を採用することはできない。 (5)理由2(サポート要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~10は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、理由2(サポート要件違反)により本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~10についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701319

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