特許拒絶査定不服審判
2024-006355
ヘッダー装置及び配管システム
- 審判番号
- 2024-006355
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-102266
- 請求日
- 2024年04月15日
- 審決日
- 2024年07月01日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社トヨックス
- 【請求人代理人】弁理士法人英知国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 小河 了一
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P18 .121-WZ (A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-102266「ヘッダー装置及び配管システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月27日出願公開、特開2021-194220〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和 2年) 6月12日の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和 5年10月17日付け: 拒絶理由通知書
令和 5年11月24日提出: 意見書、手続補正書
令和 6年 2月13日付け: 拒絶査定
令和 6年 4月15日提出: 審判請求書
第2 本願発明
本願の請求項1~4にかかる発明は、令和 5年11月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
供給源から複数の供給先に向かう管路中に配備されるヘッダー装置であって、
前記供給源に通じる入口を有する流入用ヘッダー部品と、
前記複数の供給先のいずれかに通じる奇数の第一分岐口を有する第一ヘッダー部品と、
前記複数の供給先のいくつかに通じる偶数の第二分岐口を有する第二ヘッダー部品と、を備え、
前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品は、相互に接合して且つ着脱自在に連結する構造(但し、止水栓を把持する保持リングと、保持リングに隣接して位置し、押し込まれることにより保持リングの内径をヘッダー本体の径方向に拡げる解放リングと、止水栓とヘッダー本体との間に介在する止水部材と、を内蔵し、止水栓の脱着が可能な構造を除く)に形成され、前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品の内部に、それぞれの接合連結状態で直線状に連通される流路を有することを特徴とするヘッダー装置。」
第3 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由1.本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2010-223309号公報
第4 引用文献の記載、引用発明
1 引用文献1
引用文献1には、図面と共に、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(1)「【0001】
本発明は、例えば、給水管や給湯管を複数の配管に分岐するヘッダーに関するものである。」
(2)「【0017】
以下、図面を参照して、本発明のヘッダーについて詳しく説明する。
図1は、本発明によるヘッダーの一実施形態を示す半断面図である。図1に示すヘッダー1は、内部に流体通路4が形成される筒状のヘッダー本体2に、該流体通路4からヘッダー本体2の径方向に開口する1以上(図示例では1つ)の分岐口5をそなえ、前記ヘッダー本体2の両端部のいずれか一方に、ヘッダー増設時にヘッダー相互の連結部となる継手部3を有する。該継手部3は、止水栓9の他、ここに挿入される連結側ヘッダーの管状接続部(後述)或いは、ヘッダー相互間に介在させる管(以下、挿入管と総称する)を脱着可能に保持する構造を有する。継手部3は、ここに挿し込む止水栓9を把持する保持リング7および、止水栓9とヘッダー本体2との間に介在する止水部材8を内蔵し、止水栓9の脱着を可能とした継手部3をそなえる。なお、図示例では、ヘッダー本体2の他端部に、前記継手部3と係合する管状接続部11をそなえ、ヘッダー相互の連結が図られる構造となっている。
【0018】
即ち、継手部3は、ヘッダー増設時に、増設するヘッダー1の前記管状接続部11を挿入して、ヘッダー相互を連結し、また、ヘッダーとの連結に供しない場合は、止水栓9を装着させることにより水密性を確保する役目を持つ。この構造では、特定の冶具を使用することにより、管状接続部11または止水栓9を取り外すことが可能である。本発明によるヘッダー1は、このヘッダー相互の連結を繰り返すことにより、増設自在である。」
(3)「【0027】
図3は、図1に示したヘッダー1の複数を相互に連結した状態を示す半断面図である。図3に示すように、ヘッダー1は、隣接する他のヘッダー1の継手部3に、管状接続部11を挿入して、他のヘッダー1と接続している。このとき、他のヘッダー1の止水部材8が、ヘッダー1の管状接続部11の内周面に密着することにより、漏水を防止している。また、他のヘッダー1の保持リング7が、ヘッダー1の管状接続部11の周溝16に係合しており、水圧によるヘッダー1相互間の離脱を防いでいる。また、ヘッダー1に挿入された枝管となる挿入管6は、保持リング7により把持され、固定されている。」
(4)「【0029】
さらに、本発明によるヘッダーは、複数の分岐口5を設けることが可能である。図5に示すヘッダー1Bは、ヘッダー本体2端部の一方を継手部3とし、また、他方を管状接続部11とし、2つの分岐口5aおよび5bを有する。ヘッダー1Bは、分岐口5aおよび5bに夫々一本の挿入管6を挿入することが可能である。従って、ヘッダー1Bのように、複数の分岐口5を有するヘッダー1を使用することにより、ヘッダー1相互間の連結部を減らして多くの枝管を得ることができ、漏水の可能性を軽減させることが可能である。
【0030】
尚、上記ヘッダー1Bは、分岐口5を2つ有するヘッダー1の一例に過ぎず、本発明によるヘッダー1は、3つ以上の分岐口5を有していてもよい。分岐口5の数を増やせば、それだけヘッダー1相互間の連結部を減らして多くの枝管を得ることができるので、漏水可能性を低減できる。
【0031】
上記に列挙したヘッダー1、1Aおよび1Bは、いずれも相互に連結可能である。図6は、本発明のヘッダー1を複数個連結した配管の一例を示す線図である。図示例では、給水本管となるパイプ6aの先端から、パイプ6aの軸方向に、順番に、本発明のヘッダー1A、ヘッダー1Bおよびヘッダー1が接続されており、ヘッダー1Aおよびヘッダー1B間、並びに、ヘッダー1Bおよびヘッダー1間は相互に結合している。また、最も下流側にあるヘッダー1の継手部3には、止水栓9が装着され、流体の漏出を防止している。各ヘッダー1の分岐口5には、それぞれ、枝管となるパイプ6bが挿入されており、給水本管6aからの流体は、ヘッダー1の内部で分岐して各パイプ6bに流れる。図示例では、既に4本の枝管6bをそなえたヘッダーを構成しており、さらに枝管6bを増設する場合は、連結したヘッダーの最下流にあるヘッダー1に装着された止水栓9を取り外して、新たに本発明のヘッダー1を連結させることが可能である。」
(5)図3
「
[図:0001414131000001.jpg]
」
(点線囲み、「位置A」、「位置B」の記載は、当審が付した。)
(6)図6
「
[図:0001414131000002.jpg]
」
(7)上記(4)の特に下線部の記載を参照すると、上記(6)の図面から、ヘッダー1、1A、1Bについて、給水本管となるパイプ6aと接続されるヘッダー1Aと、枝管となる2つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1Bと、枝管となる1つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1が、直線状に接続されている構造が看取される。
(8)上記(2)~(4)の特に下線部の記載を参照すると、上記(5)及び(6)の図面から、以下2つの位置の構造が看取される。
・位置Aとして図示される、挿入される連結側ヘッダーの管状接続部11を
脱着可能に保持する、継手部3の構造(以下、「位置Aのヘッダー接続構
造」という。)
・位置Bとして図示される、挿し込む止水栓9を把持する保持リング7およ
び、止水栓9とヘッダー本体2との間に介在する止水部材8を内蔵し、止
水栓9の脱着を可能とした、継手部3の構造(以下、「位置Bの止水栓構
造」という。)
そして、その構造から、ヘッダー1、1Aおよび1Bはいずれも相互に連結可能であることは明らかである。
2 引用発明
上記(1)、(4)、(6)~(8)の記載からすれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「給水管や給湯管を複数の配管に分岐するヘッダー1、1A、1Bであって、
給水本管となるパイプ6aと接続されるヘッダー1Aと、
枝管となる2つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1Bと、
枝管となる1つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1と、を備え、
ヘッダー1、1Aおよび1Bはいずれも相互に連結可能であり、順番に、ヘッダー1A、ヘッダー1Bおよびヘッダー1が接続されており、ヘッダー1Aおよびヘッダー1B間、並びに、ヘッダー1Bおよびヘッダー1間は相互に結合しており、上記ヘッダー1Aと、上記ヘッダー1Bと、上記ヘッダー1は、直線状に接続されている構造であり、流体がヘッダー1、1A、1Bの内部で分岐して各パイプ6bに流れる態様であるヘッダー1、1A、1B。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)
ア 引用発明の「給水管や給湯管を複数の配管に分岐するヘッダー1、1A、1B」は、その機能からみて、本願発明の「供給源から複数の供給先に向かう管路中に配備されるヘッダー装置」に相当する。
イ 引用発明の「給水本管となるパイプ6aと接続されるヘッダー1A」は、給水本管が水や湯の供給源に通じており、ヘッダー1Aがパイプ6aと接続する入口を有することは技術常識であるから、本願発明の「前記供給源に通じる入口を有する流入用ヘッダー部品」に相当する。
ウ 引用発明の「枝管となる2つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1B」は、パイプ6bから水や湯が供給先に供給されることが明らかであり、パイプ6bが複数ある中の2つであるから、本願発明の「前記複数の供給先のいくつかに通じる偶数の第二分岐口を有する第二ヘッダー部品」に相当する。
エ 引用発明の「枝管となる1つのパイプ6bが挿入されるヘッダー1」は、本願発明の「前記複数の供給先のいずれかに通じる奇数の第一分岐口を有する第一ヘッダー部品」に相当する。
(2)
ア 引用発明の「ヘッダー1、1Aおよび1Bはいずれも相互に連結可能であり、順番に、ヘッダー1A、ヘッダー1Bおよびヘッダー1が接続されており、ヘッダー1Aおよびヘッダー1B間、並びに、ヘッダー1Bおよびヘッダー1間は相互に結合して」いることは、上記第4の1(2)で示唆されるようにヘッダー増設をするものであることを鑑みれば、ヘッダー1A、ヘッダー1B、ヘッダー1は、その順番以外でも各ヘッダーが相互に連結することができる構造であることは明らかであるので、本願発明の「前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品は、相互に接合して」いる「構造」「に形成され」ることに相当する。
イ 引用発明の「上記ヘッダー1Aと、上記ヘッダー1Bと、上記ヘッダー1は、直線状に接続されている構造であり、流体がヘッダー1、1A、1Bの内部で分岐して各パイプ6bに流れる態様である」ことは、流体が流れる各ヘッダー(ヘッダー1A、ヘッダー1B、ヘッダー1)の内部に、直線状に連結された状態で直線状に連通される流路を有していることは自明であるから、本願発明の「前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品の内部に、それぞれの接合連結状態で直線状に連通される流路を有する」ことに相当する。
2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明は次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「供給源から複数の供給先に向かう管路中に配備されるヘッダー装置であって、
前記供給源に通じる入口を有する流入用ヘッダー部品と、
前記複数の供給先のいずれかに通じる奇数の第一分岐口を有する第一ヘッダー部品と、
前記複数の供給先のいくつかに通じる偶数の第二分岐口を有する第二ヘッダー部品と、を備え、
前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品は、相互に接合している構造に形成され、前記流入用ヘッダー部品、前記第一ヘッダー部品及び前記第二ヘッダー部品の内部に、それぞれの接合連結状態で直線状に連通される流路を有するヘッダー装置。」
【相違点】
ヘッダー部品を相互に接合している構造が、本願発明では、「着脱自在に連結する構造」であり、「(但し、止水栓を把持する保持リングと、保持リングに隣接して位置し、押し込まれることにより保持リングの内径をヘッダー本体の径方向に拡げる解放リングと、止水栓とヘッダー本体との間に介在する止水部材と、を内蔵し、止水栓の脱着が可能な構造を除く)」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
3 判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
上記第4の1(2)、(3)、(8)の記載から、引用文献1には、継手部3が連結側ヘッダーを脱着可能に保持する事項が記載されている。
そして、引用発明のヘッダー部品を相互に接合している構造に、当該事項を適用し、着脱自在に連結する構造とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、但し書きで除かれた構造は、上記第4の1(8)の記載の「位置Bの止水栓構造」のことと解されるが、当該構造自体は、ヘッダー部品を相互に接合している構造(すなわち、「位置Aのヘッダー接続構造」)と直接関連するものではない。そのため、但し書きで、ヘッダー部品を相互に接合している構造から、止水栓の脱着が可能な構造を除いたとしても、進歩性の判断に影響しない。
なお、仮に、但し書きは、ヘッダー部品を相互に接合している構造から、但し書きに記載の構造を除くことを意味するものではなく、本願発明に係るヘッダー装置から、但し書きに記載の構造を除くことを特定しているものと解したとしても、引用文献1に記載の「位置Bの止水栓構造」以外の様々な態様の止水栓の構造が存在することは技術常識であるし、また、止水栓を用いないヘッダー装置も周知であるので(例示が必要であれば、登録実用新案第3066281号公報の図4を参照。)、引用発明において上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
本願発明が奏する効果は、引用発明、引用文献1に記載の事項に基づいて、当業者が予測し得た範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献1に記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
(2)小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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