特許異議申立
2023-701295
配線基板および配線基板の製造方法
- 審判番号
- 2023-701295
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-085056
- 登録番号
- 7288339
- 請求日
- 2023年12月06日
- 審決日
- 2024年09月06日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】イビデン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 稲葉 崇
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7288339号発明「配線基板および配線基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7288339号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。
特許第7288339号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯及び証拠方法
1 手続の経緯
特許第7288339号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年4月26日に出願され、令和5年5月30日にその請求項1~8に係る発明について特許権の設定登録がされ、令和5年6月7日に特許掲載公報が発行された。その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年12月 6日 :特許異議申立人 赤松 智信(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議申立書
令和6年 1月24日付け:取消理由通知書
3月26日 :特許権者による訂正請求書及び意見書
5月 7日 :申立人による意見書
6月19日付け:取消理由通知書(決定の予告)
8月20日 :特許権者による意見書(2)
以下、令和6年3月26日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、令和6年6月19日付け取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告」という。
2 証拠方法
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2016-82115号公報
甲第2号証:特開2003-258430号公報
甲第3号証:特開2005-146328号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第3号証」を、「甲1」~「甲3」ということがある。)
第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「複数の接続パッドを含んでいる。」とあるのを、
「複数の接続パッドを含み、
前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい。」(下線は訂正部分)に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に
「を含む配線基板の製造方法であって、
前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、」とあるのを、
「を含む配線基板の製造方法であって、
前記コア基板を設けることは、前記第1面側導体層および前記第2面側導体層を、略同じ厚みを有するように形成することを含み、
前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、」(下線は訂正部分)に訂正する。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6に対応する本件訂正後の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項7及び8について、請求項8は請求項7を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項7及び8に対応する本件訂正後の請求項7及び8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 本件訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第1面側導体層」及び「第2面側導体層」について、「第1面側導体層の導体層の厚み」と「第2面側導体層の導体層の厚み」が「略等しい」という関係にあることを特定することにより、「第1面側導体層」及び「第2面側導体層」の構成を限定するものといえる。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書き1号)を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記アで示したとおり、訂正事項1は「第1面側導体層」及び「第2面側導体層」の構成を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1により追加された「前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい」との事項は、明細書等の【0019】の「第1面側導体層3の導体厚さと第2面側導体層4の導体厚さとは略等しい」との記載に基づくものであると認められる。
したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正事項1に係る請求項1~6は、いずれも、本件特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。
オ 小括
前記ア~エのとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、適法なものと認められる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項7の「配線基板の製造方法」は、「コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板を設けること」という工程を含むところ、訂正事項2は、当該「コア基板を設けること」という工程について、「前記第1面側導体層および前記第2面側導体層を、略同じ厚みを有するように形成することを含」むことを特定することで、「コア基板を設けること」という工程の構成を限定するものといえる。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書き1号)を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記アで示したとおり、訂正事項2は「コア基板を設けること」という工程の構成を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1と同様に、訂正事項2は、明細書等の【0019】の「第1面側導体層3の導体厚さと第2面側導体層4の導体厚さとは略等しい」との記載に基づくものであると認められ、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。
エ 独立特許要件
訂正事項2に係る請求項7及び8は、いずれも、本件特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。
オ 小括
前記ア~エのとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、適法なものと認められる。
3 本件訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は適法なものと認められる。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2、3のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~8に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件訂正後の請求項1~8に係る発明を、それぞれ「本件発明1~8」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)
「【請求項1】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層と、
を備える配線基板であって、
前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きく、
前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含み、前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含み、
前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2面側導体層および前記第2導体層の面積の総和は、前記第1面側導体層および前記第1導体層の面積の総和よりも大きい。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の前記厚みが、前記第1ビルドアップ層内の導体層の前記厚みの1.25倍以上であって、2.0倍以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する全ての導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1層間絶縁層を貫通し前記第1層間絶縁層の両面の導体層同士を接続する第1ビア導体と、
前記第2層間絶縁層を貫通し前記第2層間絶縁層の両面の導体層同士を接続する第2ビア導体とを有し、
前記第1導体層の前記コア基板と反対側を向く表面の前記第1ビア導体上は、前記コア基板と反対側に向かって前記第1導体層の前記表面から凸状に湾曲し、
前記第2導体層の前記コア基板と反対側を向く表面の前記第2ビア導体上は、前記コア基板と反対側に向かって前記第2導体層の前記表面から凸状に湾曲している。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板であって、前記第2導体層の前記凸状の部分の、前記第2導体層の前記表面からの高さは、前記第1導体層の前記凸状の部分の、前記第1導体層の前記表面からの高さと等しいかまたは大きい。
【請求項7】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板を設けることと、
前記コア基板の第1面上および第2面上に、第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層、および、第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層をそれぞれ設けることと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記コア基板を設けることは、前記第1面側導体層および前記第2面側導体層を、略同じ厚みを有するように形成することを含み、
前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、
前記第2面側の導体層を、前記第1面側における前記コア基板から同順位の導体層よりも厚く、かつ、大きな面積を有するように形成することと、
前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層に半導体素子を実装するための複数の接続パッドを形成することと、
前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層にマザーボードと接続するための複数の接続パッドを形成することと、
を含んでいる。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、前記第1ビルドアップ層および前記第2ビルドアップ層を設けることは、前記コア基板の前記第2面側の電流密度が前記第1面側の電流密度よりも高くなるように電圧を印加して電解めっきを行うことを含んでいる。」
第4 決定の予告の概要
当審にて令和6年6月19日付けで特許権者に通知した決定の予告における取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件訂正後の請求項1~4、7及び8に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。また、本件訂正後の請求項5及び6に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件訂正後の請求項1~8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 決定の予告についての当審の判断
1 甲1、甲2及び甲3の記載事項
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
(ア)「【0001】
本発明は、コア材とコア材の両面に形成されているビルドアップ層とを有するプリント配線板に関する。」
(イ)「【0008】
[実施形態]
図1(A)は実施形態のプリント配線板10の断面図である。プリント配線板10は、第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sとを有するコア材(絶縁基板)20zとコア材20zの両面に形成されているビルドアップ層55F、55Sを有する。ビルドアップ層55Fは、上側のビルドアップ層であり、コア材の第1面上に形成されている。ビルドアップ層55Sは下側のビルドアップ層であり、コア材の第2面下に形成されている。
【0009】
図1(A)に示されている上側のビルドアップ層55Fは、コア材の第1面Fの直上に形成されている第1の上側の導体層58Fとコア材の第1面Fと第1の上側の導体層58F上に形成されている第1の上側の樹脂絶縁層50Fと第1の上側の樹脂絶縁層50Fの直上に形成されている第2の上側の導体層158Fと第2の上側の導体層158Fと第1の上側の樹脂絶縁層50F上に形成されている第2の上側の樹脂絶縁層150Fと第2の上側の樹脂絶縁層150Fの直上に形成されている第3の上側の導体層258Fとで形成される。そして、上側の樹脂絶縁層の内、最上に位置する上側の樹脂絶縁層150Fは最上の上側の樹脂絶縁層150Fである。上側の導体層の内、最上に位置する上側の導体層258Fは最上の上側の導体層258Fである。最上の上側の導体層258Fは、ICチップ等の電子部品を搭載するための上側のパッド73Fを有する。
図1に示されるように、第1の上側の導体層58Fは厚みf1を有し、第2の上側の導体層158Fは厚みf2を有し、最上の上側の導体層258Fは厚みf3を有する。
【0010】
図1に示されている下側のビルドアップ層55Sは、コア材の第2面Sの直下に形成されている第1の下側の導体層58Sとコア材の第2面Sと第1の下側の導体層58S下に形成されている第1の下側の樹脂絶縁層50Sと第1の下側の樹脂絶縁層50Sの直下に形成されている第2の下側の導体層158Sと第2の下側の導体層158Sと第1の下側の樹脂絶縁層50S下に形成されている第2の下側の樹脂絶縁層150Sと第2の下側の樹脂絶縁層150Sの直下に形成されている第3の下側の導体層258Sとで形成される。そして、下側の樹脂絶縁層の内、最下に位置する下側の樹脂絶縁層150Sは最下の下側の樹脂絶縁層150Sである。下側の導体層の内、最下に位置する下側の導体層258Sは最下の下側の導体層258Sである。最下の下側の導体層258Sは、マザーボード等の回路基板と接続するための下側のパッド73Sを有する。
図1に示されるように、第1の下側の導体層58Sは厚みs1を有し、第2の下側の導体層158Sは厚みs2を有し、最下の下側の導体層258Sは厚みs3を有する。
【0011】
図1に直線SLが描かれている。直線SLは、コア材20zの厚み方向の中心を通り、第1面Fに平行な直線である。直線SLと第1面Fとの間の距離と直線SLと第2面Sとの間の距離は等しい。そして、第1の上側の導体層58Fと第1の下側の導体層58Sは直線SLに対し、略対称に形成されている。第2の上側の導体層158Fと第2の下側の導体層158Sは直線SLに対し、略対称に形成されている。第3の上側の導体層258Fと第3の下側の導体層258Sは直線SLに対し、略対称に形成されている。
【0012】
第1の上側の導体層58Fと第1の下側の導体層58Sはコア材20zを貫通する貫通孔28に形成されているスルーホール導体36で接続される。貫通孔28は、第1面側に形成されている第1開口部28Fと第2面側に形成されている第2開口部28Sで形成されている。貫通孔の形状は、砂時計形状である。
【0013】
第1の上側の導体層58Fと第1の下側の導体層58Sとスルーホール導体36は、例えば、US7786390に開示されている方法で製造される。US7786390の内容は本明細書に取り込まれる。」
(ウ)図1
[図:0001417633000001.jpg]
図1によれば、最上の上側の導体層258Fには、上側のパッド73Fが複数設けられ、最下の下側の導体層258Sには、下側のパッド73Sが複数設けられている。また、第1の上側の樹脂絶縁層50Fにはビア導体60F、第2の上側の樹脂絶縁層150Fにはビア導体160F、第1の下側の樹脂絶縁層50Sにはビア導体60S、第2の下側の樹脂絶縁層150Sにはビア導体160Sが設けられ、各ビア導体は絶縁層を貫通して絶縁層の両面の導体層を接続している。
また、20zは絶縁基材、30はコア基板を示し(【0054】)、55F及び55Sはビルドアップ層を示す(【0008】)から、図1によれば、コア基板30が絶縁基材20zにより構成され、コア基板30の一方の面の上にビルドアップ層55Fが設けられ、他方の面の上にビルドアップ層55Sが設けられていることが見て取れる。
(エ)「【0018】
下側のビルドアップ層に属する下側の導体層の厚みの和SAは上側のビルドアップ層に属する上側の導体層の厚みの和SFより厚い。図1のプリント配線板では、和SAは厚みs1と厚みs2と厚みs3の和SA3であり、和SFは厚みf1と厚みf2と厚みf3の和SF3である。和SAと和SFの差は1μmより大きい。実施形態のプリント配線板は、直線SLに対し非対称な構造である。和SAが和SFより大きいので、プリント配線板の温度が上昇すると、下側のビルドアップ層に属する導体の伸びが上側のビルドアップ層に属する導体の伸びより大きい。そのため、図6(B2)に示されるように、リフロー温度でプリント配線板は凹の反りを有しやすい。プリント配線板が凹の反りを有すると、図6(B3)に示されるように、電子部品90の外周の電極と半田バンプ間の接続面積やプリント配線板の上側のパッドと半田バンプ間の接続面積が大きくなる。外周の接続箇所は大きな応力を受ける。しかしながら、実施形態のプリント配線板では、接続面積が大きいので、プリント配線板と電子部品間の接続信頼性が高い。
和SAと和SFの差は30μm以下である。差が大きいと、凹の反りの量が大きくなる。電子部品の中央の電極とプリント配線板の上側のパッドが繋がらない。電子部品の外周の電極とプリント配線板の外周の上側のパッド間の距離が短くなる。隣接する外周の上側のパッドが半田バンプを介し短絡する。
【0019】
第1の上側の導体層58Fの厚みf1は15μmである。第1の下側の導体層58Sの厚みs1は21μmである。第1の下側の導体層58Sの厚みs1が第1の上側の導体層58Fの厚みf1より厚い。厚みs1と厚みf1の差は2~8μmある。プリント配線板に電子部品90が実装される時、プリント配線板は凹の反りを有する。厚みs1と厚みf1の差は、4~6μmあることがより好ましい。電子部品がプリント配線板に実装される時、プリント配線板は凹の反りを有し、プリント配線板と電子部品間の距離が適切である。プリント配線板に電子部品を実装する歩留まりが高い。半田バンプを介する電子部品とプリント配線板間の接合強度が高いので、ヒートサイクルでプリント配線板と電子部品間の接続信頼性が高い。
【0020】
第2の上側の導体層158Fの厚みf2は14μmである。第2の下側の導体層158Sの厚みs2は18μmである。第2の下側の導体層158Sの厚みs2が第2の上側の導体層158Fの厚みf2より厚い。厚みs2と厚みf2の差は2~8μmある。厚みs2と厚みf2の差は、4~6μmあることがより好ましい。電子部品がプリント配線板に実装される時、プリント配線板は凹の反りを有し、プリント配線板と電子部品間の距離が適切である。プリント配線板に電子部品を実装する歩留まりが高い。半田バンプを介する電子部品とプリント配線板間の接合強度が高いので、ヒートサイクルでプリント配線板と電子部品間の接続信頼性が高い。
【0021】
最上の上側の導体層258Fの厚みf3は16μmである。最下の下側の導体層258Sの厚みs3は21μmである。最下の下側の導体層258Sの厚みs3が最上の導体層258Fの厚みf3より厚い。厚みs3と厚みf3の差は2~8μmある。厚みs3と厚みf3の差は、4~6μmあることがより好ましい。電子部品がプリント配線板に実装される時、プリント配線板は凹の反りを有し、プリント配線板と電子部品間の距離が適切である。プリント配線板に電子部品を実装する歩留まりが高い。半田バンプを介する電子部品とプリント配線板間の接合強度が高いので、ヒートサイクルでプリント配線板と電子部品間の接続信頼性が高い。」
(オ)「【0023】
第1の上側の導体層58Fの面積の占有率OF1(第1の上側の導体層58Fの面積/コア材20zの第1面Fの面積×100)は67.53%である。第1の下側の導体層58Sの面積の占有率OS1(第1の下側の導体層58Sの面積/コア材20zの第2面Sの面積×100)は83.30%である。占有率OS1は占有率OF1より大きい。第1面Fの面積と第2面Sの面積はほぼ等しいので、第1の下側の導体層58Sの面積が、第1の上側の導体層58Fの面積より大きい。
第2の上側の導体層158Fの面積の占有率OF2(第2の上側の導体層158Fの面積/第1の上側の樹脂絶縁層50Fの面積×100)は52.55%である。第2の下側の導体層158Sの面積の占有率OS2(第2の下側の導体層158Sの面積/第1の下側の樹脂絶縁層50Sの面積×100)は79.46%である。占有率OS2は占有率OF2より大きい。第1の上側の樹脂絶縁層の面積と第1の下側の樹脂絶縁層の面積はほぼ等しいので、第2の下側の導体層158Sの面積が、第2の上側の導体層158Fの面積より大きい。
最上の上側の導体層258Fの面積の占有率OF3(最上の上側の導体層258Fの面積/最上の上側の樹脂絶縁層150Fの面積×100)は67.66%である。最下の下側の導体層258Sの面積の占有率OS3(最下の下側の導体層258Sの面積/最下の下側の樹脂絶縁層250Sの面積×100)は80.58%である。占有率OS3は占有率OF3より大きい。最上の上側の樹脂絶縁層の面積と最下の下側の樹脂絶縁層の面積はほぼ等しいので、最下の下側の導体層258Sの面積が、最上の上側の導体層258Fの面積より大きい。
プリント配線板10では、直線SLに対し対称な位置に形成されている導体層の占有率が制御されている。そして、下側のビルドアップ層に属する導体層の占有率が上側のビルドアップ層に属する導体層の占有率より大きい。そのため、電子部品が実装される時、プリント配線板10は凹の反りを有しやすい。
占有率OS1と占有率OF1の差と占有率OS2と占有率OF2の差と占有率OS3と占有率OF3の差は10%から30%の間である。リフロー温度でのプリント配線板の反りの方向と反りの量を容易に制御することができる。従って、ヒートサイクルでプリント配線板と電子部品間の接続信頼性が高い。また、半導体装置の反りの方向や反りの量が制御される。
各上側の樹脂絶縁層50F、150Fの面積と各下側の樹脂絶縁層50S、150Sの面積と第1面Fの面積と第2面Sの面積はほぼ等しい。」
(カ)「【0025】
図6は、プリント配線板の温度が変化する時、予想される実施形態のプリント配線板10の反りと参考例のプリント配線板110の反りを示している。図6(A)は参考例のプリント配線板110の反りを示し、図6(B)は実施形態のプリント配線板10の反りを示す。図6に示される参考例と実施形態のプリント配線板10,110は、コア材20zと、上側のビルドアップ層55Fと下側のビルドアップ層55Sと上側のソルダーレジスト層70Fと下側のソルダーレジスト層70Sを有する。上側のビルドアップ層55Fは、3つの導体層58F、158F、258Fと2つの樹脂絶縁層50F、150Fを有し、下側のビルドアップ層55Sは、3つの導体層58S、158S、258Sと2つの樹脂絶縁層50S、150Sを有する。
図6(A)に示される参考例のプリント配線板110は、以下の関係1を満たす。
関係1:和SAと和SFが等しい。厚みf1と厚みs1は等しく、厚みf2と厚みs2は等しく、厚みf3と厚みs3は等しい。
図6(B)に示される実施形態のプリント配線板10は、以下の関係2を満たす。
関係2:和SAは和SFより大きく、和SAと和SFの差は15μmである。厚みs1は厚みf1より厚く、厚みs1と厚みf1の差は5μmである。厚みs2は厚みf2より厚く、厚みs2と厚みf2の差は5μmである。厚みs3は厚みf3より厚く、厚みs3と厚みf3の差は5μmである。プリント配線板10では、各差は等しい。
和SA、SFと厚みf1、f2、f3、s1、s2、s3に関わる構成以外、実施形態のプリント配線板10と参考例のプリント配線板110は同様である。
【0026】
図6(A1)は、常温での参考例のプリント配線板110の反りの状態を示す。続いて、プリント配線板110は電子部品を実装する温度(約240℃)下に置かれる。その時のプリント配線板110の反りの状態が図6(A2)に示される。参考例は関係1を満足するので、直線SLより上に位置する部分のプリント配線板(上側のプリント配線板)10Uの伸びと直線SLより下に位置する部分のプリント配線板(下側のプリント配線板)10Bの伸びがほぼ等しい。そのため、図6(A2)に示されるように、プリント配線板110は電子部品の実装温度でほぼ平坦である。尚、符号10U、10Bは図1に示されている。そして、図6(A3)に示されるように、プリント配線板110に電子部品が実装される。電子部品90とプリント配線板110とからなる参考例の半導体装置110Sが完成する。その後、半導体装置110Sは常温に戻る。その時の半導体装置110Sの反りの状態が図6(A4)に示されている。電子部品90の熱膨張係数はプリント配線板110の熱膨張係数より小さい。そのため、電子部品は半導体装置の伸縮に影響を与える。電子部品の近くに位置するプリント配線板の伸縮量は小さい。それに対し、電子部品から離れている部分では、プリント配線板の伸縮量は大きい。従って、半導体装置110Sが実装温度から常温に戻るとき、上側のプリント配線板10Uの縮み量は小さく、下側のプリント配線板10Uの縮み量は大きい。そのため、図6(A4)に示されるように、半導体装置110Sは凸の反りを有する。反りの量t1が図6(A4)に示されている。
【0027】
図6(B1)は、常温での実施形態のプリント配線板10の反りの状態を示す。続いて、プリント配線板10は電子部品を実装する温度(約240℃)下に置かれる。その時のプリント配線板110の反りの状態が図6(B2)に示される。実施形態は関係2を満足するので、下側のプリント配線板10Bの伸びが上側のプリント配線板10Uの伸びより大きい。そのため、図6(B2)に示されるように、プリント配線板10は電子部品の実装温度で凹の反りを有する。尚、符号10U、10Bは図1に示されている。そして、図6(B3)に示されるように、プリント配線板10に電子部品が実装される。電子部品90とプリント配線板10とからなる実施形態の半導体装置10Sが完成する。その後、半導体装置10Sは常温に戻る。その時の半導体装置10Sの反りの状態が図6(B4)に示されている。電子部品90の熱膨張係数はプリント配線板10の熱膨張係数より小さい。実施形態では、半導体装置10Sが実装温度から常温に戻るとき、上側のプリント配線板10Uの縮み量は小さく、下側のプリント配線板10Uの縮み量は大きい。そのため、図6(B4)に示されるように、半導体装置110Sは凸の反りを有する。反りの量t3が図6(B4)に示されている。しかしながら、半導体装置10S、110Sが実装温度から常温に戻るとき、参考例では、反りの方向が平坦から凸の反りに変化する。それに対し、実施形態では、反りの方向が凹の反りから凸の反りに変化する。そのため、参考例の反りの量t1と実施形態の反りの量t3が比較されると、反りの量t3は反りの量t1より小さい。」
(キ)図6
[図:0001417633000002.jpg]
(ク)「【0035】
CO2ガスレーザで第1の上側の樹脂絶縁層50Fにビア導体用の開口51Fが形成される。第1の下側の樹脂絶縁層50Sにビア導体用の開口51Sが形成される。開口51Fは導体層58Fに至り、開口51Sは導体層58Sに至る。上側の樹脂絶縁層50F上と開口51Fの内壁に無電解銅めっき膜52Fが形成される。下側の樹脂絶縁層50S上と開口51Sの内壁に無電解銅めっき膜52Sが形成される。無電解銅めっき膜52F、52S上にめっきレジストが形成される。電解めっき処理により、めっきレジストから露出する無電解銅めっき膜52Fに電解銅めっき膜56Fが形成される。めっきレジストから露出する無電解銅めっき膜52S上に電解銅めっき膜56Sが形成される。この際、電解銅めっき膜56Sを形成するための電流密度は電解銅めっき膜56Fを形成するための電流密度より大きい。そのため、電解銅めっき膜56Sの厚みは電解銅めっき膜56Fの厚みより厚い。
【0036】
めっきレジストが除去される、電解銅めっき膜56F、56Sから露出する無電解銅めっき膜52F、52Sが除去される。第2の上側の導体層158Fと第2の下側の導体層158Sが形成される。同時に第1の上側のビア導体60Fと第1の下側のビア導体60Sが形成される(図3(D))。第2の上側の導体層158Fの厚みf2は14μmであって、第2の下側の導体層158Sの厚みs2は18μmである。厚みs2は厚みf2より大きい。厚みs2と厚みf2の差は4μmである。第2の上側の導体層158Fの占有率OF2は52.55%である。第2の下側の導体層158Sの占有率OS2は79.46%である。占有率OS2は占有率OF2より大きい。占有率OS2と占有率OF2の差は26.91%である。
【0037】
上側の樹脂絶縁層50Fと上側の導体層158F上に第2の上側の樹脂絶縁層150Fが形成され、下側の樹脂絶縁層50Sと下側の導体層158S下に第2の下側の樹脂絶縁層150Sが形成される。第2の上側の樹脂絶縁層150Fに第2の上側のビア導体用の開口151Fが形成され、第2の下側の樹脂絶縁層150Sに第2の下側のビア導体用の開口151Sが形成される。第2の上側の樹脂絶縁層150F上に最上の上側の導体層258Fが形成され、第2の下側の樹脂絶縁層150S下に最下の下側の導体層258Sが形成される。最上の上側の導体層258Fの形成方法は、第2の上側の導体層158Fの形成方法と同様である。最下の下側の導体層258Sの形成方法は、第2の下側の導体層158Sの形成方法と同様である。第2の上側のビア導体用の開口151Fに第2の上側のビア導体160Fが形成され、第2の下側のビア導体用の開口151Sに第2の下側のビア導体160Sが形成される。ビア導体160F、160Sの形成方法は、ビア導体60F、60Sの形成方法と同様である(図4(A))。最上の上側の導体層258Fの厚みf3は16μmであって、最下の下側の導体層158Sの厚みs3は21μmである。厚みs3は厚みf3より大きい。厚みs3と厚みf3の差は5μmである。
最上の上側の導体層258Fの占有率OF3は67.66%である。最下の下側の導体層258Sの占有率OS3は80.58%である。占有率OS3は占有率OF3より大きい。占有率OS3と占有率OF3の差は12.92%である。」
(ケ)「【0042】
[実施形態の第1改変例]
図5(A)は実施形態の第1改変例に係るプリント配線板10M1の断面図である。第1改変例では、図1に示されるプリント配線板10の第3の上側の導体層258Fと第2の上側の樹脂絶縁層150F上に第3の上側の樹脂絶縁層250Fが形成されている。さらに、第3の上側の樹脂絶縁層250F上に第4の上側の導体層358Fが形成されている。第3の上側の樹脂絶縁層250Fを貫通する第3の上側のビア導体260Fが形成されている。そして、第4の上側の導体層358Fと第3の上側の樹脂絶縁層250F上に上側のソルダーレジスト層70Fが形成されている。第3の上側の樹脂絶縁層250Fは第1改変例の最上の上側の樹脂絶縁層250Fであり、第4の上側の導体層358Fは第1改変例の最上の上側の導体層358Fである。最上の上側の導体層358Fは上側のソルダーレジスト層の開口71Fにより露出される上側のパッド73Fを有する。上側の導体層358Fは厚みf4を有する。
【0043】
第1改変例では、図1に示されるプリント配線板10の第3の下側の導体層258Sと第2の下側の樹脂絶縁層150S下に第3の下側の樹脂絶縁層250Sが形成されている。さらに、第3の下側の樹脂絶縁層250S下に第4の下側の導体層358Sが形成されている。第3の下側の樹脂絶縁層250Sを貫通する第3の下側のビア導体260Sが形成されている。そして、第4の下側の導体層358Sと第3の下側の樹脂絶縁層250S下に下側のソルダーレジスト層70Sが形成されている。第3の下側の樹脂絶縁層250Sは第1改変例の最下の下側の樹脂絶縁層250Sであり、第4の下側の導体層358Sは第1改変例の最下の下側の導体層358Sである。最下の下側の導体層358Sは下側のソルダーレジスト層の開口71Sにより露出される下側のパッド73Sを有する。下側の導体層358Sは厚みs4を有する。
【0044】
厚みf4は16μmであって、厚みs4は21μmである。厚みs4は厚みf4より大きい。厚みs4と厚みf4の差は5μmである。最上の上側の導体層の厚みと最下の下側の導体層の厚みとの差は2~8μmある。厚みの差は4~6μmあることがより好ましい。
【0045】
下側のビルドアップ層55Sに属する下側の導体層58S、158S、258S、358Sの和SA(SA4)は、上側のビルドアップ層55Fに属する上側の導体層58F、158F、258F、358Fの和SF(SF4)より大きい。和SA4と和SF4の差は、図1のプリント配線板と同様に1μmより大きい。和SA4と和SF4の差は、図1のプリント配線板と同様に30μm以下である。
【0046】
第1改変例の最上の上側の導体層358Sの占有率OF4は67.66%である。第1改変例の最下の下側の導体層358Sの占有率OS4は80.58%である。占有率OS4は占有率OF4より大きい。占有率OS4と占有率OF4の差は10%から30%の間である。
【0047】
実施形態の第1改変例に係るプリント配線板10M1は、図1に示される実施形態のプリント配線板10と同様な効果を有する。
【0048】
[実施形態の第2改変例]
図5(B)は実施形態の第2改変例に係るプリント配線板10M2の断面図である。第2改変例のプリント配線板10M2は、図1に示されるプリント配線板10の第2の上側の樹脂絶縁層150Fと第2の上側のビア導体160Fと第3の上側の導体層258Fと第2の下側の樹脂絶縁層150Sと第2の下側のビア導体160Sと第3の下側の導体層258Sを有していない。それ以外、第2の改変例のプリント配線板10M2は実施形態のプリント配線板10と同じである。第2の上側の導体層158Fが最上の上側の導体層であり、第1の上側の樹脂絶縁層50Fが最上の上側の樹脂絶縁層である。また、第2の下側の導体層158Sが最下の下側の導体層であり、第1の下側の樹脂絶縁層50Sが最下の下側の樹脂絶縁層である。
【0049】
第1の上側の導体層58Fの厚みf1は15μmであって、第1の下側の導体層58Sの厚みs1は21μmである。厚みs1は厚みf1より厚い。厚みs1と厚みf1の差は6μmである。厚みs1と厚みf1の差は2~8μmある。厚みの差は4~6μmあることがより好ましい。
【0050】
最上の上側の導体層158Fの厚みf2は14μmであって、最下の下側の導体層158Sの厚みs2は18μmである。厚みs2は厚みf2より厚い。厚みs2と厚みf2の差は4μmである。厚みs2と厚みf2の差は2~8μmあるの。厚みの差は4~6μmあることがより好ましい。
【0051】
厚みs1と厚みs2の和SA(SA2)は厚みf1と厚みf2の和SF(SF2)より大きい。和SA2と和SF2の差は1μmより大きい。和SA2と和SF2の差は30μm以下である。
【0052】
第1の上側の導体層58Fの占有率OF1は67.53%である。第1の下側の導体層58Sの占有率OS1は83.30%である。占有率OS1は占有率OF1より大きい。占有率OS1と占有率OF1の差は10%から30%であり、図5(B)のプリント配線板では、差は15.77%である。
最上の上側の導体層158Fの占有率OF2は52.55%である。最下の下側の導体層158Sの占有率OS2は79.46%である。占有率OS2は占有率OF2より大きい。占有率OS2と占有率OF2の差は10%から30%であり、図5(B)のプリント配線板では、差は26.91%である。
【0053】
実施形態の第2改変例に係るプリント配線板10M2は、図1に示される実施形態のプリント配線板10と同様な効果を有する。
【符号の説明】
【0054】
10 プリント配線板
20z 絶縁基板
28 貫通孔
30 コア基板
58F 第1の上側の導体層
58S 第1の下側の導体層
36 スルーホール導体
50F 第1の上側の樹脂絶縁層
50S 第1の下側の樹脂絶縁層
158F 第2の上側の導体層
158S 第2の下側の導体層
258F 最上の上側の導体層
258S 最下の下側の導体層」
イ 甲1発明
前記アによれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~pに分説し、「分説a」などのようにして参照する。
<甲1発明>
「a プリント配線板であって、(【0001】)
b 第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sとを有するコア材(絶縁基板)20zとコア材20zの両面に形成されているビルドアップ層55F、55Sを有し、(【0008】)
c1 ビルドアップ層55Fは、
c1a コア材の第1面Fの直上に形成されている第1の上側の導体層58Fと
c1b コア材の第1面Fと第1の上側の導体層58F上に形成されている第1の上側の樹脂絶縁層50Fと
c1c 第1の上側の樹脂絶縁層50Fの直上に形成されている第2の上側の導体層158Fと
c1d 第2の上側の導体層158Fと第1の上側の樹脂絶縁層50F上に形成されている第2の上側の樹脂絶縁層150Fと
c1e 第2の上側の樹脂絶縁層150Fの直上に形成されている第3の上側の導体層258Fと
c1 で形成され、(【0009】)
c2 最上の上側の導体層258Fは、ICチップ等の電子部品を搭載するための上側のパッド73Fを有し、(【0009】)
c3 第1の上側の導体層58Fは厚みf1を有し、第2の上側の導体層158Fは厚みf2を有し、最上の上側の導体層258Fは厚みf3を有し、(【0009】)
d1 ビルドアップ層55Sは、
d1a コア材の第2面Sの直下に形成されている第1の下側の導体層58Sと
d1b コア材の第2面Sと第1の下側の導体層58S下に形成されている第1の下側の樹脂絶縁層50Sと
d1c 第1の下側の樹脂絶縁層50Sの直下に形成されている第2の下側の導体層158Sと
d1d 第2の下側の導体層158Sと第1の下側の樹脂絶縁層50S下に形成されている第2の下側の樹脂絶縁層150Sと
d1e 第2の下側の樹脂絶縁層150Sの直下に形成されている第3の下側の導体層258Sと
d1 で形成され、(【0010】)
d2 最下の下側の導体層258Sは、マザーボード等の回路基板と接続するための下側のパッド73Sを有し、(【0010】)
d3 第1の下側の導体層58Sは厚みs1を有し、第2の下側の導体層158Sは厚みs2を有し、最下の下側の導体層258Sは厚みs3を有し、(【0010】)
e1 最上の上側の導体層258Fには、上側のパッド73Fが複数設けられ、最下の下側の導体層258Sには、下側のパッド73Sが複数設けられ、(図1)
e2 第1の上側の樹脂絶縁層50Fにはビア導体60F、第2の上側の樹脂絶縁層150Fにはビア導体160F、第1の下側の樹脂絶縁層50Sにはビア導体60S、第2の下側の樹脂絶縁層150Sにはビア導体160Sが設けられ、各ビア導体は絶縁層を貫通して絶縁層の両面の導体層を接続し、(図1)
e3 コア基板30が絶縁基材20zにより構成され、コア基板30の一方の面の上にビルドアップ層55Fが設けられ、他方の面の上にビルドアップ層55Sが設けられており、(図1)
f1 下側のビルドアップ層に属する下側の導体層の厚みの和SAは上側のビルドアップ層に属する上側の導体層の厚みの和SFより厚く、和SAは厚みs1と厚みs2と厚みs3の和SA3であり、和SFは厚みf1と厚みf2と厚みf3の和SF3であり、和SAと和SFの差は1μmより大きく、和SAが和SFより大きいので、プリント配線板の温度が上昇すると、下側のビルドアップ層に属する導体の伸びが上側のビルドアップ層に属する導体の伸びより大きく、そのため、リフロー温度でプリント配線板は凹の反りを有しやすく、(【0018】)
f2 和SAと和SFの差は30μm以下であり、差が大きいと、凹の反りの量が大きくなり、電子部品の中央の電極とプリント配線板の上側のパッドが繋がらず、(【0018】)
g 第1の上側の導体層58Fの厚みf1は15μmであり、第1の下側の導体層58Sの厚みs1は21μmであり、第1の下側の導体層58Sの厚みs1が第1の上側の導体層58Fの厚みf1より厚く、(【0019】)
h 第2の上側の導体層158Fの厚みf2は14μmであり、第2の下側の導体層158Sの厚みs2は18μmであり、第2の下側の導体層158Sの厚みs2が第2の上側の導体層158Fの厚みf2より厚く、(【0020】)
i 最上の上側の導体層258Fの厚みf3は16μmであり、最下の下側の導体層258Sの厚みs3は21μmであり、最下の下側の導体層258Sの厚みs3が最上の導体層258Fの厚みf3より厚く、(【0021】)
j1 第1の上側の導体層58Fの面積の占有率OF1(第1の上側の導体層58Fの面積/コア材20zの第1面Fの面積×100)は67.53%であり、第1の下側の導体層58Sの面積の占有率OS1(第1の下側の導体層58Sの面積/コア材20zの第2面Sの面積×100)は83.30%であり、第1の下側の導体層58Sの面積が、第1の上側の導体層58Fの面積より大きく、(【0023】)
j2 第2の上側の導体層158Fの面積の占有率OF2(第2の上側の導体層158Fの面積/第1の上側の樹脂絶縁層50Fの面積×100)は52.55%であり、第2の下側の導体層158Sの面積の占有率OS2(第2の下側の導体層158Sの面積/第1の下側の樹脂絶縁層50Sの面積×100)は79.46%であり、第2の下側の導体層158Sの面積が、第2の上側の導体層158Fの面積より大きく、(【0023】)
j3 最上の上側の導体層258Fの面積の占有率OF3(最上の上側の導体層258Fの面積/最上の上側の樹脂絶縁層150Fの面積×100)は67.66%であり、最下の下側の導体層258Sの面積の占有率OS3(最下の下側の導体層258Sの面積/最下の下側の樹脂絶縁層250Sの面積×100)は80.58%であり、最下の下側の導体層258Sの面積が、最上の上側の導体層258Fの面積より大きく、(【0023】)
k プリント配線板10は電子部品の実装温度で凹の反りを有し、プリント配線板10に電子部品が実装され、電子部品90とプリント配線板10とからなる半導体装置10Sが完成し、半導体装置10Sが実装温度から常温に戻るとき、上側のプリント配線板10Uの縮み量は小さく、下側のプリント配線板10Uの縮み量は大きく、半導体装置10Sが実装温度から常温に戻るとき、反りの方向が凹の反りから凸の反りに変化し、反りの量t3は参考例の反りの量t1より小さく、(【0027】)
l 上側の樹脂絶縁層50F上と開口51Fの内壁に無電解銅めっき膜52Fが形成され、下側の樹脂絶縁層50S上と開口51Sの内壁に無電解銅めっき膜52Sが形成され、電解めっき処理により、めっきレジストから露出する無電解銅めっき膜52Fに電解銅めっき膜56Fが形成され、めっきレジストから露出する無電解銅めっき膜52S上に電解銅めっき膜56Sが形成され、この際、電解銅めっき膜56Sを形成するための電流密度は電解銅めっき膜56Fを形成するための電流密度より大きく、そのため、電解銅めっき膜56Sの厚みは電解銅めっき膜56Fの厚みより厚く、(【0035】)
m 電解銅めっき膜56F、56Sから露出する無電解銅めっき膜52F、52Sが除去され、第2の上側の導体層158Fと第2の下側の導体層158Sが形成され、同時に第1の上側のビア導体60Fと第1の下側のビア導体60Sが形成され、(【0036】)
n 最上の上側の導体層258Fの形成方法は、第2の上側の導体層158Fの形成方法と同様であり、ビア導体160F、160Sの形成方法は、ビア導体60F、60Sの形成方法と同様であり、(【0037】)
o 第1の上側の導体層58Fと第1の下側の導体層58Sはコア材20zを貫通する貫通孔28に形成されているスルーホール導体36で接続される、(【0012】)
p プリント配線板。」
(2)甲2の記載事項
ア 甲2の記載
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0022】この配線基板101は、図1中に破線で示すICチップICが搭載される基板主面102と、図示しないマザーボードに接続される基板裏面103とを有する略矩形の略板形状である。配線基板101は、その中心にガラス-エポキシ樹脂からなる厚さ約800μmのコア基板111を備える。このコア基板111のコア主面112上には、エポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの主面側第1絶縁層121が積層され、その上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの主面側第2絶縁層124が積層され、さらにその上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約25μmの主面側第3絶縁層(主面側ソルダーレジスト層)127が積層されている。また同様に、コア基板111のコア裏面113上には、エポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの裏面側第1絶縁層141が積層され、その上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約35μmの裏面側第2絶縁層144が積層され、さらにその上には、同じくエポキシ樹脂等からなる厚さ約25μmの裏面側第3絶縁層(裏面側ソルダーレジスト層)147が積層されている。」
(イ)「【0025】主面側第1絶縁層121には、図1及び図2に示すように、これを貫通する開口径約65μmの多数のビアホール122が所定の位置に形成され、その内部及びその上には、Cuからなるフィルドビア導体123がそれぞれ形成されている。具体的には、各々のフィルドビア導体123は、ビアホール122内に形成された略円錐台状の円錐台部123Pと、その上に形成された直径約125μm、厚さ約14.5μmの円盤状の円盤部123Qとを有する。さらに、円盤部123Qの中央上には、凸状に膨らみ、底面の直径が約55μm、高さが約5μmの膨出部123Rを有する。つまり、このフィルドビア導体123は、表面が凸状に膨らんだ膨出部123Rを有する形状とされている。また、フィルドビア導体123の表面全面は、主面側第2絶縁層124との密着性を向上させるため、表面粗さRa=約0.5μmの粗化面とされている。これらのフィルドビア導体123には、その表面全体が主面側第2絶縁層124で覆われたもの(図2参照)と、その表面に後述するフィルドビア導体126が接続されたものとがある。表面全体が主面側第2絶縁層124で覆われたフィルドビア導体123について見ると、その膨出部123R上に積層された主面側第2絶縁層124の厚さは、約15.5μmと十分に厚くなっている。」
(ウ)「【0033】このような配線基板101は、その製造にあたり、主面側第1絶縁層121のフィルドビア導体123上に主面側第2絶縁層124を形成するときに、フィルドビア導体123の表面が凸状に膨らんでいるため、フィルドビア導体123上にボイドが生じにくい。従って、フィルドビア導体123と主面側第2絶縁層124との密着強度を高くすることができ、配線基板101の信頼性を向上させることができる。また、主面側第2絶縁層124のフィルドビア導体126上に主面側第3絶縁層127を形成するときに、フィルドビア導体126の表面が凸状に膨らんでいるため、フィルドビア導体126上にボイドが生じにくい。従って、フィルドビア導体126と主面側第3絶縁層127との密着強度を高くすることができ、配線基板101の信頼性を向上させることができる。」
(エ)「【0044】次に、第1フィルドビア形成工程において、図5に示すように、Cuメッキにより、主面側第1絶縁層121のビアホール122にフィルドビア導体123を形成すると共に、裏面側第1絶縁層141のビアホール142にフィルドビア導体143を形成する。また、主面側第1絶縁層121上に主面側第2導体層163を形成し、裏面側第1絶縁層141上に裏面側第2導体層173を形成する。具体的には、Cu無電解メッキを施し、主面側第1絶縁層121上及びそのビアホール122内、裏面側第1絶縁層141上及びそのビアホール142内に、無電解メッキ層を形成する。その後、主面側第1絶縁層121上の無電解メッキ層上と裏面側第1絶縁層141上の無電解メッキ層上に、公知のフォトリソグラフィ法により所定パターンのメッキレジスト層を形成する。次に、Cu電解メッキを施し、各々のメッキレジスト層から露出する無電解メッキ層上に、フィルドビア導体123,143を含む所定パターンの電解メッキを形成する。その際、フィルドビア導体123,143の表面が膨らみ、高さ約5μmの膨出部123R等がそれぞれできるまでCu電解メッキを施す。その後、メッキレジスト層をそれぞれ剥離して、露出した無電解メッキ層をエッチングにより除去し、所定パターンの主面側第2導体層163と裏面側第2導体層173を形成する。なお、Cu電解メッキの際は、フィルドビア導体形成用のメッキ液を使用する。」
イ 甲2記載事項の認定
前記アの記載によれば、甲2には、次の甲2記載事項が記載されていると認められる。
<甲2記載事項>
「配線基板101は、コア基板111を備え、コア基板111のコア主面112上には、主面側第1絶縁層121が積層され、(【0022】)
主面側第1絶縁層121には、多数のビアホール122が所定の位置に形成され、その内部及びその上には、フィルドビア導体123がそれぞれ形成されており、フィルドビア導体123は、表面が凸状に膨らんだ膨出部123Rを有する形状とされており、(【0025】)
製造にあたり、主面側第1絶縁層121のフィルドビア導体123上に主面側第2絶縁層124を形成するときに、フィルドビア導体123の表面が凸状に膨らんでいるため、フィルドビア導体123上にボイドが生じにくく、従って、フィルドビア導体123と主面側第2絶縁層124との密着強度を高くすることができ、配線基板101の信頼性を向上させることができ、(【0033】)
第1フィルドビア形成工程において、Cu電解メッキを施し、フィルドビア導体123、143を含む所定パターンの電解メッキを形成し、その際、フィルドビア導体123、143の表面が膨らみ、高さ約5μmの膨出部123R等がそれぞれできるまでCu電解メッキを施すこと。(【0044】)」
(3)甲3の記載事項
ア 甲3の記載
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0002】
近年は、電子部品等の配線の形成方法として、ビルドアップ工法が採用されることが多い。ビルドアップ工法は、複数の配線回路板をスルーホールやビアホールを用いて導通させるものであり、その作製手法としては、サブトラクティブ法とセミアデティブ法が知られている。
【0003】
従来、サブトラクティブ法が採用されることが多かったが、最近では、高精細パターンが形成できることから、セミアデティブ法が注目されている。
【0004】
このセミアデティブ法には幾つかのバリエーションが存在する。一般的に、両面銅張り基板や多層板を用い、まず所定の位置に貫通スルーホールを開ける。次に、その基板表面及びスルーホール内壁に導電化処理を行った後にスルーホールめっきを行う。その後、所望の配線回路パターンが残るよう、エッチングレジストを用いて銅エッチングを行い、エッチングレジストを除去したものをコア基板とする。
【0005】
次いで、このコア基板に対し、樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成後、コア基板の銅回路部分にまで届くブラインドビアを開け、絶縁樹脂層全面に導電化処理を行った後、その上にめっきレジストを塗布し、配線回路の形状に露光した後、めっきレジストを部分的に除去し、その部分に酸性銅めっきを行い、配線回路を形成するというものである。
【0006】
そして、絶縁樹脂の塗布から、酸性銅めっきによる配線回路の形成までの工程を繰り返すことにより、何重にも重なった回路基板が得られるのである。
【0007】
ところで、セミアデティブ法に用いられる酸性銅ビアフィリングめっきプロセスの多くは、直流電源を用いるものであり、ブラインドビアホールや、めっきレジストにより形成された溝を充填でき、ビアランドパッドや配線回路が形成できる反面、得られたビアランドパットや銅回路の上部稜線部が丸まる傾向を有するという問題点があった。
【0008】
このような、銅回路等が丸まる傾向の主原因は、めっき液の添加剤に起因しているものとされている。すなわち、ビアフィリングを行うためには、電流の高い部分の析出を抑え、電流の低い部分の析出を優先させる必要があるが、そうすると、高電流部となるビアランドパッドや回路配線の上部稜線部の析出も同時に抑制され、低電流部である配線中央部に金属が優先的に析出される結果、丸みを帯びた形状となってしまうことになる。
【0009】
一方、丸み傾向を有しない銅回路を形成する添加剤を使用した場合では、ビアフィリングができなかったり(コンフォーマル析出)、ビアフィリングできても丸み傾向とは反対に、すり鉢状に反りあがってしまうなどの不都合が生じやすかった。」
イ 甲3記載事項の認定
前記アの記載によれば、甲3には、次の甲3記載事項が記載されていると認められる。
<甲3記載事項>
「電子部品等の配線の形成方法として、ビルドアップ工法が採用されることが多く、ビルドアップ工法は、複数の配線回路板をスルーホールやビアホールを用いて導通させるものであり、その作製手法としては、サブトラクティブ法とセミアデティブ法が知られており、(【0002】)
セミアデティブ法に用いられる酸性銅ビアフィリングめっきプロセスの多くは、直流電源を用いるものであり、ブラインドビアホールや、めっきレジストにより形成された溝を充填でき、ビアランドパッドや配線回路が形成できる反面、得られたビアランドパットや銅回路の上部稜線部が丸まる傾向を有し、(【0007】)
このような、銅回路等が丸まる傾向の主原因は、めっき液の添加剤に起因しているものとされていること。(【0008】)」
(4)周知技術の認定
前記(2)イ及び(3)イにおいて認定した事項から、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる。
[周知技術]
「配線基板において用いられるビア導体について、表面が凸状に膨らんだ形状のものが用いられること。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)「第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層と第1面側導体層および第2面側導体層とを含むコア基板と、」について
a 甲1発明の「コア基板30」(分説e3)は、本件発明1の「コア基板」に相当する。
また、甲1発明の「コア基板30」が有する「一方の面」、「他方の面」(分説e3)は、本件発明1の「コア基板」が有する「第1面」、「前記第1面とは反対側の第2面」にそれぞれ相当する。
b 甲1発明の「コア材(絶縁基板)20z」(分説b)は、絶縁性の基板であり、プリント配線板において1つの層をなしていると認められるから、本件発明1の「コア絶縁層」に相当する。
また、甲1発明では、「コア基板30が絶縁基材20zにより構成され」る(分説e3)から、「コア基板30」は、「絶縁基材20z」(「コア材(絶縁基板)20z」と同じものを指すと認める。)を含んでいると認められる。
c 甲1発明では、「第1の上側の導体層58F」が「コア材の第1面Fの直上に形成され」(分説c1a)、「第1の下側の導体層58S」が「コア材の第2面Sの直下に形成されている」(分説d1a)。
しかしながら、甲1発明では、「第1の上側の導体層58F」は、「ビルドアップ層55F」に含まれ(分説c1及びc1a)、「第1の下側の導体層58S」は、「ビルドアップ層55S」に含まれる(分説d1及びd1a)ものであり、「第1の上側の導体層58F」、「第1の下側の導体層58S」のいずれについても、「コア基板30」に含まれるものではない。
d 前記a~cによれば、本件発明1と甲1発明とは、「第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し」、「コア絶縁層」「を含むコア基板」を備える点で共通する。
他方、本件発明1では、「コア基板」が、「コア絶縁層」に加えて、「第1面側導体層および第2面側導体層」を含むのに対して、甲1発明では、「コア材20z」の両面に「第1の上側の導体層58F」及び「第1の下側の導体層58S」が形成されるが、「第1の上側の導体層58F」は「ビルドアップ層55F」に、「第1の下側の導体層58S」は「ビルドアップ層55S」にそれぞれ含まれるものであり、いずれについても、「コア基板30」に含まれるものではない。
(イ)「前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層と、」について
a 甲1発明は、「ビルドアップ層55F」を有しており(分説b)、これを第1ビルドアップ層と称することは任意であるから、甲1発明の「ビルドアップ層55F」は、本件発明1の「第1ビルドアップ層」に相当する。
また、甲1発明では、「ビルドアップ層55F」は、「コア基板30の一方の面の上に」「設けられ」ている(分説e3)。
b 甲1発明では、「ビルドアップ層55F」(分説c1)は、「第1の上側の樹脂絶縁層50F」(分説c1b)、その上に形成される「第2の上側の導体層158F」(分説c1c)、その上に形成される「第2の上側の樹脂絶縁層150F」(分説c1d)、及び、その上に形成される「第3の上側の導体層258F」(分説c1e)を含むから、「ビルドアップ層55F」では、「第1の上側の樹脂絶縁層50F」、「第2の上側の導体層158F」、「第2の上側の樹脂絶縁層150F」及び「第3の上側の導体層258F」がこの順に積層されていると認められる。
したがって、甲1発明の「第1の上側の樹脂絶縁層50F」及び「第2の上側の樹脂絶縁層150F」は、本件発明1の「第1層間絶縁層」に相当し、甲1発明の「第2の上側の導体層158F」及び「第3の上側の導体層258F」は、本件発明1の「第1層間絶縁層上の第1導体層」に相当し、甲1発明の「ビルドアップ層55F」では、第1層間絶縁層と第1導体層とが交互に積層されているといえる。
c 前記a及びbによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層」を備える点で一致する。
(ウ)「前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層と、」について
a 甲1発明は、「ビルドアップ層55S」を有しており(分説b)、これを第2ビルドアップ層と称することは任意であるから、甲1発明の「ビルドアップ層55S」は、本件発明1の「第2ビルドアップ層」に相当する。
また、甲1発明では、「ビルドアップ層55S」は、「コア基板30の」「他方の面の上に」「設けられ」ている(分説e3)。
b 甲1発明では、「ビルドアップ層55S」(分説d1)は、「第1の下側の樹脂絶縁層50S」(分説d1b)、その下に形成される「第2の下側の導体層158S」(分説d1c)、その下に形成される「第2の下側の樹脂絶縁層150S」(分説d1d)、及び、その下に形成される「第3の下側の導体層258S」(分説d1e)を含むから、「ビルドアップ層55S」では、「第1の下側の樹脂絶縁層50S」、「第2の下側の導体層158S」、「第2の下側の樹脂絶縁層150S」及び「第3の下側の導体層258S」がこの順に積層されていると認められる。
したがって、甲1発明の「第1の下側の樹脂絶縁層50S」及び「第2の下側の樹脂絶縁層150S」は、本件発明1の「第2層間絶縁層」に相当し、甲1発明の「第2の下側の導体層158S」及び「第3の下側の導体層258S」は、本件発明1の「第2層間絶縁層上の第2導体層」に相当し、甲1発明の「ビルドアップ層55S」では、第2層間絶縁層と第2導体層とが交互に積層されているといえる。
c 前記a及びbによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層」を備える点で一致する。
(エ)「を備える配線基板であって、」について
甲1発明は、「プリント配線板」である(分説a)。
また、甲1発明が、「コア基板30」、「ビルドアップ層55F」及び「ビルドアップ層55S」を備えることは、前記(ア)~(ウ)のとおりである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、コア基板、第1ビルドアップ層及び第2ビルドアップ層「を備える配線基板」である点で一致する。
(オ)「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きく、」について
a 甲1発明の「ビルドアップ層55F」(分説c1)は、「コア材」の「直上」の「第1の上側の導体層58F」(分説c1a)、その上に形成される「第1の上側の樹脂絶縁層50F」(分説c1b)、その上に形成される「第2の上側の導体層158F」(分説c1c)、その上に形成される「第2の上側の樹脂絶縁層150F」(分説c1d)、及び、その上に形成される「第3の上側の導体層258F」(分説c1e)からなるから、「ビルドアップ層55F」内の導体層に「コア基板」から外側(上側)に向かって順序を付けた場合に、「第2の上側の導体層158F」は2番目の導体層であり、「第3の上側の導体層258F」は3番目の導体層であるといえる。
b 甲1発明の「ビルドアップ層55S」についても同様に、「コア基板」から外側(下側)に向かって順序を付けた場合に、「第2の下側の導体層158S」は2番目の導体層であり、「第3の下側の導体層258S」は3番目の導体層であるといえる。
c 前記a及びbより、「第2の上側の導体層158F」と「第2の下側の導体層158S」はコア基板から同順位(2番目)に位置する導体層であり、また、「第3の上側の導体層258F」と「第3の下側の導体層258S」も、コア基板から同順位(3番目)に位置する導体層である。
したがって、甲1発明の、「第2の上側の導体層158F及び第2の下側の導体層158S」と、「第3の上側の導体層258F及び第3の下側の導体層258S」とは、本件発明1の「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層」に相当する。
d 甲1発明では、「第2の下側の導体層158Sの面積が、第2の上側の導体層158Fの面積より大き」い(分説j2)、から、「第2の上側の導体層158F」及び「第2の下側の導体層158S」について、「ビルドアップ層55S」内の導体層の面積が「ビルドアップ層55F」内の導体層の面積より大きくなっていると認められる。
e 甲1発明では、「最下の下側の導体層258Sの面積が、最上の上側の導体層258Fの面積より大き」い(分説j3)から、「第3の上側の導体層258F」及び「第3の下側の導体層258S」について、「ビルドアップ層55S」内の導体層の面積が「ビルドアップ層55F」内の導体層の面積より大きくなっていると認められる。
f 前記d及びeのとおり、甲1発明では、「第2の上側の導体層158F」及び「第2の下側の導体層158S」と、「第3の上側の導体層258F」及び「第3の下側の導体層258S」とのいずれについても、「ビルドアップ層55S」内の導体層の面積が「ビルドアップ層55F」内の導体層の面積より大きくなっている。
g 前記c及びfによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく」なっている点で一致する。
h 甲1発明では、「第2の上側の導体層158Fの厚みf2は14μmであり、第2の下側の導体層158Sの厚みs2は18μmであり、第2の下側の導体層158Sの厚みs2が第2の上側の導体層158Fの厚みf2より厚」い(分説h)から、「第2の上側の導体層158F」及び「第2の下側の導体層158S」について、「ビルドアップ層55S」内の導体層の厚みが「ビルドアップ層55F」内の導体層の厚みより大きくなっていると認められる。
i 甲1発明では、「最上の上側の導体層258Fの厚みf3は16μmであり、最下の下側の導体層258Sの厚みs3は21μmであり、最下の下側の導体層258Sの厚みs3が最上の導体層258Fの厚みf3より厚」い(分説i)から、「第3の上側の導体層258F」及び「第3の下側の導体層258S」について、「ビルドアップ層55S」内の導体層の厚みが「ビルドアップ層55F」内の導体層の厚みより大きくなっていると認められる。
j 前記h及びiのとおり、甲1発明では、「第2の上側の導体層158F」及び「第2の下側の導体層158S」と、「第3の上側の導体層258F」及び「第3の下側の導体層258S」とのいずれについても、「ビルドアップ層55S内」の導体層の厚みが「ビルドアップ層55F」内の導体層の厚みより大きくなっている。
k 前記c及びjによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において」、「前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きく」なっている点で一致する。
l 前記g及びkによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大き」い点で一致する。
(カ)「前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含み、前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含み、」について
a 甲1発明の「ビルドアップ層55F」に含まれる「最上の上側の導体層258F」(分説c2)は、本件発明1の「第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層」に相当する。
b 甲1発明では、「最上の上側の導体層258Fは、ICチップ等の電子部品を搭載するための上側のパッド73Fを有し」ており(分説c2)、「上側のパッド73Fが複数設けられ」る(分説e1)から、甲1発明の「最上の上側の導電層258F」は、複数の「上側のパッド73F」を有している。
ICチップは、当然、半導体素子により構成されると認められるから、甲2発明の「上側のパッド73F」は、「最上の上側の導体層258F」に半導体素子を実装するための接続パッドであるといえる。
c 前記a及びbによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含」んでいる点で一致する。
d 甲1発明の「ビルドアップ層55S」に含まれる「最下の下側の導体層258S」(分説d2)は、本件発明1の「第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層」に相当する。
e 甲1発明では、「最下の下側の導体層258Sは、マザーボード等の回路基板と接続するための下側のパッド73Sを有し」ており(分説d2)、「下側のパッド73Sが複数設けられ」る(分説e1)から、甲1発明の「最下の下側の導体層258S」は、複数の「マザーボード等の回路基板と接続するための下側のパッド73S」を含んでいる。
f 前記d及びeによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含」む点で一致する。
g 前記c及びfによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含み、前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含」む点で一致する。
(キ)「前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい。」について
前記(ア)dのとおり、甲1発明では、「第1の上側の導体層58F」及び「第1の下側の導体層58S」は、「コア基板30」に含まれるものではない。
さらに、甲1発明では、「第1の上側の導体層58Fの厚みf1は15μmであり、第1の下側の導体層58Sの厚みs1は21μmであり、第1の下側の導体層58Sの厚みs1が第1の上側の導体層58Fの厚みf1より厚」い(分説g)から、「第1の下側の導体層58S」の厚みが、「第1の上側の導体層58F」の厚みより大きくなっており、「第1の上側の導体層58F」の厚み及び「第1の下側の導体層58S」の厚みが略等しいものとはなっていない。
(ク)一致点及び相違点
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、コア絶縁層を含むコア基板と、
前記コア基板の第1面上に設けられて第1層間絶縁層と前記第1層間絶縁層上の第1導体層とが交互に積層されてなる第1ビルドアップ層と、
前記コア基板の第2面上に設けられて第2層間絶縁層と前記第2層間絶縁層上の第2導体層とが交互に積層されてなる第2ビルドアップ層と、
を備える配線基板であって、
前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、前記第2ビルドアップ層内の導体層の面積が前記第1ビルドアップ層内の導体層の面積より大きく、かつ、前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きく、
前記第1ビルドアップ層の最も外側の第1導体層は半導体素子を実装するための複数の接続パッドを含み、前記第2ビルドアップ層の最も外側の第2導体層はマザーボードと接続するための複数の接続パッドを含」む点。
<相違点1>
本件発明1では、「コア基板」が、「コア絶縁層」に加えて、「第1面側導体層および第2面側導体層」を含むのに対して、甲1発明では、「コア材20z」の両面に「第1の上側の導体層58F」及び「第1の下側の導体層58S」が形成されるが、「第1の上側の導体層58F」は「ビルドアップ層55F」に、「第1の下側の導体層58S」は「ビルドアップ層55S」にそれぞれ含まれ、いずれについても「コア基板30」に含まれるものではない点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい」のに対して、甲1発明では、「第1の下側の導体層58S」の厚みは、「第1の上側の導体層58F」の厚みより大きくなっており、「第1の上側の導体層58F」の厚み及び「第1の下側の導体層58S」の厚みが略等しいものとはなっていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)甲1発明は、「下側のビルドアップ層に属する下側の導体層の厚みの和SAは上側のビルドアップ層に属する上側の導体層の厚みの和SFより厚く」し、「リフロー温度でプリント配線板は凹の反りを有しやすく」したものであり(分説f1)、「プリント配線板」が「電子部品の実装温度で凹の反りを有」することにより、「プリント配線板」に「電子部品が実装」された「半導体装置」が「実装温度から常温に戻るとき、反りの方向が凹の反りから凸の反りに変化し」、「反りの量」が「参考例」と比べて「小さく」なる(分説k)ものである。
すなわち、甲1発明は、電子部品の実装温度でプリント配線板が凹の反りを有することで、プリント配線板に電子部品を実装した半導体装置が常温に戻るときに、最終的な反りの量が小さくなるという好適な効果を奏するものであり、当該効果は、下側の導体層の厚みの和SAを上側の導体層の厚みの和SFより大きくすることにより、もたらされるものと認められる。
(イ)甲1に記載された実施形態や改変例はいずれも、同順位の層の全てについて、下側の導体層を、対応する上側の導体層よりも厚みを大きくしたものとなっており(【0019】~【0021】、【0025】、【0044】、【0049】及び【0050】を参照。)、下側の導体層の厚みの和SAを上側の導体層の厚みの和SFより大きくするにあたり、ある順位の層のみにおいては上側と下側の導体層に厚みの差を設けないことについて、甲1には記載も示唆もない。
さらに、甲1の「例えば、厚みs1と厚みf1の差と厚みs2と厚みf2の差と厚みs3と厚みf3の差がほぼ等しい。そのため、プリント配線板10によれば、リフロー温度でのプリント配線板の反りの方向と反りの量を容易に制御することができる」(【0022】)との記載によれば、全ての順位の層について、上側と下側の導体層の厚みの差を等しくすることが望ましいことが示唆されているから、ある順位の層における上側と下側の導体層の厚みの差を、他の順位の層における上側と下側の導体層の厚みの差と異ならせることは望ましくないと解される。よって、甲1発明においては、ある順位の層のみについて上側と下側の導体層に厚みの差を設けないことは、望ましいこととは解されない。
したがって、甲1発明において、ある順位の層(例えば、「第1の上側の導体層58F」及び「第1の下側の導体層58S」)については上側と下側の導体層に厚みの差を設けず、他の順位については下側の導体層の厚みを上側の導体層の厚みよりも大きくする動機付けは存在しない。
(ウ)また、仮に、ある順位の層のみについて上側と下側の導体層に厚みの差を設けないことを当業者が想到し得たとしても、その際に、「第1の上側の導体層58F」と「第1の下側の導体層58S」をその対象とすべき特段の理由を見出すことができず、「第1の上側の導体層58F」と「第1の下側の導体層58S」については厚みの差を設けず、他の順位については下側の導体層の厚みを上側の導体層の厚みよりも大きくする構成に想到し得たとはいえない。
(エ)甲2及び甲3に示される周知技術は、導体層の厚みに関するものではないから、以上の点は、甲2及び甲3に示される周知技術を参照しても左右されない。
(オ)したがって、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、甲1発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和6年5月7日に提出された意見書(以下「申立人意見書」という。)において、以下のa及びbを主張している。
a 「甲1に記載の上記「参考例のプリント配線板110」は、互いに対応する上側と下側の導体層の各厚みが「等しい」という「和SA、SFと厚みf1、f2、f3、s1、s2、s3に関わる構成以外、実施形態のプリント配線板10と参考例のプリント配線板110は同様である」。出願人は前述のように、「甲第1号証には、直線SLに対し対称な位置に形成されている導体層同士を同じ厚みにするなどという技術的思想は存在しません」と述べるが(「直線SL」につき、甲1の図1参照)、上記「参考例のプリント配線板110」が記載されているのであるから、事実に反する。
そして本願の「発明が解決しようとする課題」では、「プリント配線板の中心線よりICチップに近い側に形成されている導体層の厚みの和が、遠い側に形成されている導体層の厚みの和よりも大きい」(本願【0004】)こと(甲1でいえば、「厚みf1と厚みf2と厚みf3の和」である「SF」が、「厚みs1と厚みs2と厚みs3の和」である「SA」よりも大きいこと)が課題を生じさせていることが知られていた旨述べられている。
よって、甲1に接した当業者は、当該課題を解決するように各側の「導体層の厚みの和」を設定すればよい(「SA」を「SF」よりも大きくすればよい)ことになる。その際、各側にある、個々の「導体層」の「厚み」を、甲1に接した当業者がどのように設定するかは、適宜設計可能な事項である。
したがって、例えば、「厚みs1」と「厚みf1」は、「参考例のプリント配線板110」同様、「等しい」厚みとし、一方、「実施形態のプリント配線板10」同様「厚みs2」は「厚みf2」よりも大きくし、かつ、「厚みs3」は「厚みf3」よりも大きくすることにより、本件訂正発明1の「前記第1導体層および前記第2導体層のうちの前記コア基板から同順位に位置する導体層において、・・・前記第2ビルドアップ層内の導体層の厚みが前記第1ビルドアップ層内の導体層の厚みより大きく」(構成要件Bの一部)、「前記第1面側導体層の導体層の厚みおよび前記第2面側導体層の導体層の厚みは略等しい」(構成要件D)構成とすることも、適宜設計可能な事項である。
以上より、構成要件Dの構成は甲1に基づき適宜設計可能な事項である。」(申立人意見書5頁)
b 「本願明細書には、「第1面側導体層および前記第2面側導体層」(構成要件D)に関して、以下の記載がある。」
「【0019】
コア基板10の第1面側導体層3および第2面側導体層4それぞれの厚さは、たとえば、5μm以上であって、30μm以下である。図1の例では、第1面側導体層3の導体厚さと第2面側導体層4の導体厚さとは略等しい。しかしながら、第1面側導体層3と第2面側導体層4との導体厚さは、異なる厚さで形成されてもよい。この場合も、好ましくは、配線基板1におけるコア絶縁層5の第2面10B側の導体層の面積の和、すなわち第2面側導体層4の面積および第2導体層41の面積の総和(第2面10B側の残銅率)は、コア絶縁層5の第1面10F側の導体層の面積の和、すなわち第1面側導体層3の面積および第1導体層31の面積の総和(第1面10F側の残銅率)よりも大きい。例えば、第2面10B側の残銅率は、第1面10F側の残銅率の1.1~1.3倍程度である。第2面10B側での電源強化が良好に図られると考えられる。」
「当該記載によれば、出願人が主張する、「配線基板の電源強化が図れる」との効果は、「第1面側導体層3の導体厚さと第2面側導体層4の導体厚さ」が、「略等しい」厚さで形成されるか(構成要件Dに相当)、「異なる厚さ」で形成されるかとは関係なく、「第2面10B側の残銅率」が「第1面10F側の残銅率」「よりも大きい」構成によってもたらされるのである。
以上より、構成要件Dの構成は、そもそも引用発明と比較した有利な効果を有していない。構成要件D’の構成についても同様である。」(申立人意見書6~7頁)
(イ)前記(ア)aの主張についての検討
a 申立人は、本件特許の明細書等の「発明が解決しようとする課題」では、「プリント配線板の中心線よりICチップに近い側に形成されている導体層の厚みの和が、遠い側に形成されている導体層の厚みの和よりも大きい」(【0004】)ことが課題を生じさせていることが知られていた旨述べられていると主張している。
しかしながら、本件特許の明細書等の【0004】には、「特許文献1のプリント配線基板では、プリント配線板の中心線よりICチップに近い側に形成されている導体層の厚みの和が、遠い側に形成されている導体層の厚みの和よりも大きい。ICチップに近い側の導体層をファインピッチで形成することが困難となるおそれがある。また、電力供給が十分でないおそれがある。」との記載があるものの、ここでの「ICチップに近い側の導体層をファインピッチで形成することが困難となるおそれがある。また、電力供給が十分でないおそれがある。」との記載は、本件特許において解決しようとする課題として見出した事項を記載したものと認められ、特許文献1のプリント配線基板の構成が、そのような課題を生じさせていることが、従前から当業者に「知られていた」ことを意味するものとは認められない。
b そして、申立人は、当該課題が知られていたことを前提として、甲1に接した当業者は、当該課題を解決するように各側の「導体層の厚みの和」を設定すればよいと主張しているが、前記aのとおり、本件特許の明細書等には、当該課題が従前から当業者に知られていたことが述べられているとは認められないから、申立人の主張はその前提に誤りがあり、採用できない。
c 甲1発明は、下側の導体層の厚みの和SAを上側の導体層の厚みの和SFより大きくすることにより好適な効果を奏するものであり(前記イ(ア))、下側の導体層の厚みの和SAを上側の導体層の厚みの和SFより大きくするという条件は、全ての順位の層について下側の導体層の厚みを上側の導体層の厚みよりも大きくする場合だけでなく、ある順位の層については上側と下側の導体層に厚みの差を設けず、他の順位の層については下側の導体層の厚みを上側の導体層の厚みよりも大きくする場合にも満たされ得ると解される。
しかしながら、下側の導体層の厚みの和SAを上側の導体層の厚みの和SFより大きくするにあたり、ある順位の層のみは上側と下側の導体層に厚みの差を設けないことについて、甲1には記載も示唆もない(前記イ(イ))。
加えて、上側と下側の導体層の厚みが等しいものとしての参考例が甲1に示されているが、該参考例は、全ての順位の層について、上側と下側の導体層の厚みが等しいため、実施形態のような好適な効果が得られるものではない(【0025】及び【0026】を参照。)。
また、甲1発明では、「和SAと和SFの差は1μmより大きく」(分説f1)、「30μm以下」(分説f2)であるから、例えば、和SAと和SFの差を数μm程度とする場合も想定されるが、そのような場合にも、各順位の層について均等に差を割り振れば、全ての順の層について上側と下側の導体層の厚みの差を等しくしつつ、和SAと和SFの差を所望の値とすることは可能であり、甲1には、全ての順位についての上側と下側の導体層の厚みの差を等しくすることが望ましいことが示唆されているのは、前記イ(イ)のとおりである。
したがって、甲1発明において、ある順位の層については上側と下側の導体層に厚みの差を設けず、他の順位の層については下側の導体層の厚みを上側の導体層の厚みよりも大きくする動機付けが存在しない。
加えて、前記イ(ウ)のとおり、仮に、ある順位の層のみは上側と下側の導体層に厚みの差を設けないことを当業者が想到し得たとしても、その際に、「第1の上側の導体層58F」と「第1の下側の導体層58S」をその対象とすべき特段の理由を見出すことができない。
d したがって、申立人の主張は採用できない。
(ウ)前記(ア)bの主張についての検討
前記イ(イ)のとおり、前記相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。そして、この点は、当該構成の効果の有無により左右されるものではない。
したがって、申立人の前記(ア)bの主張を考慮しても、本件発明1と甲1発明との間に存在する前記相違点2に係る構成が甲1発明から容易に想到し得るとは認められないから、申立人の主張は結論を左右しない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである(前記第3)。
したがって、本件発明2~6と甲1発明とは、少なくとも、前記(1)アに示した相違点2において相違する。
そして、前記(1)イに示したとおり、前記相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明2~6は、甲1発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7及び8について
本件発明7は、配線基板の発明である本件発明1を、配線基板の製造方法のカテゴリーで表現したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである本件発明8についても同様であり、本件発明8は、甲1発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 小括
前記2(1)~(3)のとおり、本件発明1~8は、甲1発明、並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、決定の予告に記載した取消理由により、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
第6 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由について
1 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~4、7及び8に係る特許発明は、甲1に記載された発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。
2 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
(1)本件訂正前の請求項1~4、7及び8は、本件訂正により、本件訂正後の請求項1~4、7及び8とされた。
(2)そして、本件発明1と甲1発明とは前記第5、2(1)アに示した相違点1及び2において相違するから、本件発明1は甲1発明と同一ではない。
(3)本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明2~4と甲1発明とは、少なくとも、前記第5、2(1)アに示した相違点1及び2において相違し、本件発明2~4は甲1発明と同一ではない。
(4)本件発明7は、本件発明1を異なるカテゴリーで表現したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明と同一ではない。本件発明7の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである本件発明8についても同様であり、本件発明8は、甲1発明と同一ではない。
(5)以上のとおり、本件発明1~4、7及び8は、甲1発明と同一ではない。
したがって、申立理由1により、請求項1~4、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701295