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特許異議申立

2025-700597

雑味が低減された非アルコールビールテイスト飲料

審判番号
2025-700597
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-519900
登録番号
7595225
請求日
2025年06月05日
審決日
2025年11月26日
公報発行日
2025年12月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】キリンホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
  • 【異議申立人】清水 将博
  • 【異議申立人】赤松 善弘
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 水野 明梨
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.161-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7595225号発明「雑味が低減された非アルコールビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7595225号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7595225号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)9月4日(優先権主張 令和5年8月1日)を国際出願日とする出願であって、令和6年11月27日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和7年6月5日に特許異議申立人清水将博(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされ、同日に特許異議申立人赤松善弘(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。 その他の手続の経緯は以下のとおりである。 令和7年8月 7日:特許異議申立書の手続補正書(方式)(申立人B) 同年8月28日:特許異議申立書の手続補正書(方式)(申立人B) 同年9月 2日:特許異議申立書の手続補正書(方式)(申立人A) 以下において、令和7年9月2日に提出された手続補正書(方式)により補正された申立人Aが提出した特許異議申立書を「申立書A」といい、令和7年8月7日及び同年同月28日に提出された手続補正書(方式)により補正された申立人Bが提出した特許異議申立書を「申立書B」という。 第2 本件発明について 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程とを含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。 [請求項2] 前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項1に記載の方法。 [請求項3] メチオニンの含有量を4.5ppm以上500ppm以下に調整する、請求項1または2に記載の方法。 [請求項4] リナロールの含有量を0.1ppb以上200ppb以下に調整する、請求項1または2に記載の方法。 [請求項5] カプリン酸の含有量を0.01ppm以上1ppm以下に調整する、請求項1または2に記載の方法。 [請求項6] 非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなり、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程、および、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程をさらに含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。 [請求項7] 前記非アルコールビールテイスト飲料のアルコール(エタノール)濃度が0.01v/v%未満である、請求項6に記載の方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1.申立人A 申立人Aは、証拠方法として下記(9)に示す甲第1号証~甲第25「号証(以下、申立人Aが提出した甲第1号証~甲第25号証を、それぞれ「甲1A」~「甲25A」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。 (1)理由1A-1~理由1A-6(甲1A~甲6Aに基づく新規性欠如) 本件発明1~7は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1A~甲6Aそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由2A-1~理由2A-6(甲1A~甲6Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1~7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1A~甲6Aそれぞれに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)理由2A-7(甲16Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1~7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲16Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)理由2A-8(甲17Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1~7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲17Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5)理由2A-9(甲24Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲24Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (6)理由3A(甲18Aに基づく拡大先願) 本件発明1~7は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願(甲18Aに係る特許出願)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (7)理由4A(実施可能要件違反) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~7についての特許は同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (8)理由5A(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~7についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (実施可能要件違反及びサポート要件違反の内容) ・試験区27と同様の官能評価結果が得られないこと 本件特許の実施例において、本件特許発明1に該当するものは、試験4の試験区27(メチオニンの含有量は4.5ppmであり、リナロールの含有量は0.1ppbであり、カプリン酸の含有量は0.010ppmである)のみである。ここで、試験1、2及び3の評価結果から、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の各含有量が上限に近づくほど官能評価結果は試験区27の結果よりも悪くなることがわかるから、三成分の含有量を上限値とした場合、試験区27と同様の官能評価結果は得られないものと考えられる。 したがって、本件特許発明1に該当する飲料すべてについて、どうして上記課題を解決できるのか、技術常識を参酌しても当業者は理解することができないから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~ 7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 また、技術常識を参酌しても、本件特許発明1に該当する飲料すべてについて、上記課題を解決できるものではないから、本件特許発明1~ 7は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (9)証拠方法 甲1A:株式会社パナバック,"ヴェリタスブロイ",商品説明ホームページ,[online],株式会社パナバック,2023年3月28日,インターネット<URL:https://www.panavac.com/veritasbrau.php> 甲1A-1:Wayback Machine,甲1Aの電子アーカイブ情報,[online],[2025年9月2日提出],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/202302328060155/https://www.panavac.com/veritasbrau.php> 甲2A:株式会社パナバック,"世界で"いちばん"ビールに近いノンアルコールビールヴェリタスブロイ",商品説明ホームページ,[online],株式会社パナバック,2023年3月16日,インターネット<URL:https://veritasbrau.com> 甲2A-1:Wayback Machine,甲2Aの電子アーカイブ情報,[online],[2025年9月2日提出],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230316025404/https://veritasbrau.com> 甲3A:Wayback Machine,カルディコーヒーファーム,"プライムセレクト ヴェリタスブロイ アルコール0.0% 330ml",商品販売ホームページの電子アーカイブ情報,[online],株式会社キャメル珈琲,Wayback Machine ,2022年7月29日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20220729032836/https://www.kaldi.co.jp/ec/pro/disp/1/4519723004630> 甲4A:"カテゴリーフォーカス 輸入ビール",ダイヤモンド・チェーンストア 売場活性化のためのMDエディション,株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア,2022年1月1日,2022年1月1日号,p.116-117 甲5A:"カテゴリーフォーカス ノンアルコールビールテイスト飲料",ダイヤモンド・チェーンストア 売場活性化のためのMDエディション,株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア,2022年7月15日,2022年7月15日号,p.84-85 甲6A:"カテゴリーフォーカス 輸入ビール",ダイヤモンド・チェーンストア 売場活性化のためのMDエディション,株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア,2023年1月1日,2023年1月1日号,p.110-112 甲7A:蛸井潔,"ホップ由来香気成分の発酵挙動・香気相互作用の解析とそのビール醸造への応用 ビールのホップ香をデザインする",化学と生物,公益社団法人日本農芸化学会,2018年6月20日,vol.56,No.7,p.508-512 甲8A:財団法人日本醸造協会編集発行,"醸造物の成分",平成11年12月10日,p.236-241,250-272,第XI章 有機酸,第XIV章 ホップに由来する成分 甲9A:国際公開第2022/210104号 甲10A:国際公開第2022/163521号 甲11A:特開2018-183126号公報 甲12A:特開2018-191537号公報 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Schad,"Fast and Simple Determination of Free Amino Acids in Beer",The Column,[online],LCGC international,MJH Life Sciences,2015年4月9日,インターネット<URL:https://www.chromatographyonline.com/view/fast-and-simple-determination-free-amino-acids-beer> 甲3B:Bethany Degg,"Analyzing POPs in 50 μL of Blood Samples",The Column,[online],LCGC international,MJH Life Sciences,2015年4月10日,インターネット<URL:https://www.chromatographyonline.com/journals/column/column-04-10-2015> 甲4B:甲2BのTable 1の拡大図,[online],LCGC international,MJH Life Sciences,2015年4月9日,インターネット<URL:https://www.chromatographyonline.com/view/fast-and-simple-determination-free-amino-acids-beer> 甲5B:M. Riu-Aumatell,P. Miro,A. Serra-Cayuela,S. Buxaderas,E. Lopez-Tamames,"Assessment of the aroma profiles of low-alcohol beers using HS-SPME-GC-MS",Food research International,Elsevier Ltd.,2014年3月,vol.57,p.196-202 甲6B:C. Zufall,K. Wackerbauer,"Die Entalkoholisierung von Bier durch Dialyse - Verfahrenstechnische Beeinflussung der Bierqualitat",Monatsschrift fur Brauwissenshaft,Fachverlag Hans Carl,2000年10月,No.9/10,p.164-179 甲6B-2:甲6Bの奥付 甲7B:財団法人日本醸造協会編集発行,"醸造物の成分",平成11年12月10日,p.236-241,第XI章 有機酸 甲8B:特表2022-508429号公報 甲9B:中国特許第1314794号明細書 甲10B:Jeroen Bauwens,Filip Van Opstaele,Lore Eggermont,Florian Weiland,Barbara Jaskula-Goiris,Gert De Rouck,Jos De Brabanter,Guido Aerts,Luc De Cooman," Comprehensive analytical and sensory profiling of non-alcoholic beers and their pale lager beer counterparts",Journal of the Institute of Brewing,[online],The Institute of Brewing & Distilling,2021年7月19日,vol.127,No.4,p.385-405,インターネット<URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jib.664> 甲10B-2:Jeroen Bauwens, Filip Van Opstaele, Lore Eggermont, Florian Weiland, Barbara Jaskula-Goiris, Gert De Rouck, Jos De Brabanter, Guido Aerts, Luc De Cooman," Comprehensive analytical and sensory profiling of non-alcoholic beers and their pale lager beer counterparts",Journal of the Institute of Brewing,Wiley Online Library,2021年7月19日,vol.127,No.4,p.385-405,インターネット<URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jib.664> 甲11B:二宮恒彦,"アミノ酸の呈味に関する研究",調理科学,調理科学研究会,昭和43年12月10日,第1巻,第4号,p.185-197 第4 当審の判断 当審は、申立人A及び申立人Bが申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~7についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。 なお、甲1A~甲6Aに基づく申立て(理由1A-1~理由1A-6及び理由2A-1~理由2A-6)並びに甲1Bに基づく申立て(理由1B-1及び理由2B-1)は、後記するとおり、同一商品について記載された証拠に基づく申立てと解されるため、まとめて判断を示した(下記1.を参照)。 また、申立人A及びBが実質的に同じ証拠に基づいて申し立てている他の申立て(理由2A-7、理由1B-3及び理由2B-3)並びにサポート要件違反の申立て(理由5A及び理由3B)についても、まとめて当審の判断を示した(それぞれ下記2.及び9.を参照)。 1.理由1A-1(甲1Aに基づく新規性欠如)~理由1A-6(甲6Aに基づく新規性欠如)、理由2A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)~理由2A-6(甲6Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-1(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)について (1)理由1A-1(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)について ア 甲1Aに記載された事項 甲1Aには以下の事項が記載されている。なお、引用の都合上、写真、図は省略し、文字の大きさ、改行位置等も原文とは異なることがある。 (1A-1)「輸入脱アルコールビール シェアNo.1 世界でいちばんビールに近いノンアルコールビール ヴェリタスブロイ 2022 ビール純粋令(※)ドイツ直輸入 アルコール0.0%⇒0.00% 熱量12kcal⇒11kcal ヴェリタスブロイが進化して、一層おいしく、一層からだにやさしくなりました。 原料はモルト、ホップ、ビール酵母、天然水だけ 本格醸造で添加物不使用だから雑味がなくおいしくて安全・安心」(2/7頁1~9行) (1A-2)「ヴェリタスブロイは、人工的な添加物はひとつもなく、アルコールを0.00%(*)まで抜いてありますから安全・安心。 しかも、おいしいだけではなく、モルト、ホップ、ビール酵母と醗酵によってもたらされる 天然の栄養素をたくさん含んでいます。厚生労働省登録分析機関による分析で実証されました。(*)実測値平均 含有量グラフ(当審注:グラフを省略。グラフ上部には、「1缶当り含有量(mg)」及び「1缶による充足率(%)」という注釈が記載されており、「メチオニン+システイン」の含有量(棒グラフ)及び充足率(折れ線グラフ)はそれぞれ40mgを超え50mg未満、6%台であることが読み取れる。) ・・・栄養素 充足率 *-1 ・・・ ・・・メチオニン+システイン 6%・・・ ・・・ *出典 分析データ:(財)日本食品分析センター 機能性説明:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」「栄養機能食品基準」 *-1 充足率:体重50kgの人が1日に摂取することを推奨されている量に対する割合」(3/7頁4行~5/7頁1行) (1A-3)「[内容量]330ml [アルコール度数]0.00% [入り数]24缶 [原産国]ドイツ [栄養成分表示/100ml] ●熱量11kcal ●たんぱく質0.4g ●脂質0.0g ●コレステロール0mg ●炭水化物2.5g ●食塩相当量0.008g」(5/7頁7~11行) イ 甲1Aに記載された発明 甲1Aは、株式会社パナバックの商品説明ホームページであり、2/7頁(摘記1A-1)には、「ヴェリタスブロイ」という商品名の「ノンアルコールビール」が記載されており、「アルコール」が「0.00%」であること、「輸入脱アルコールビール」であり、「2022」年の「ドイツ直輸入」の商品であること、「原料はモルト、ホップ、ビール酵母、天然水だけ」であり、「本格醸造で添加物不使用だから雑味がなくおいしくて安全・安心」であることが記載されている。また、甲1Aの3/7頁~5/7頁(摘記1A-2)には、「アルコールを0.00%(*)まで抜いて」あること、「メチオニン+システイン」の「1缶による充足率(%)」が「6%」であること、「充足率」は「体重50kgの人が1日に摂取することを推奨されている量に対する割合」であることが記載されており、3/7頁左下の必須アミノ酸含有量のグラフからは、「メチオニン+システイン」の含有量(棒グラフ)は40mgを超え50mg未満であることが読み取れる。さらに、甲1Aの5/7頁(摘記1A-3)には、「[内容量]330ml [アルコール度数]0.00% [入り数]24缶 」と記載されているから、缶に充填された形態の商品は、1缶の内容量が330mlであることがわかる。 ここで、甲1Aには「メチオニン+システイン」の正確な含有量は記載されていないが、甲3Aは、甲1Aと同じ商品名の缶ビールの販売ページであり、缶の表面の写真は甲1Aと同じで「Alc.0.00%」と記載されていることが読み取れ、缶の裏面の写真からは、「原材料名 モルト、ホップ、ビール酵母、天然水」、「内容量 330ml」、「原産国名 ドイツ」、「輸入者 (株)パナバック」「その他の栄養成分表示(1缶330ml当り)・・・メチオニン+システイン 42.9mg」と記載されていることが読み取れる。また、甲3Aの掲載日は2022年7月29日であるから、甲3Aの商品は2022年に販売された商品であるといえる。さらに、甲1Bは、株式会社パナバックの「ヴェリタスブロイがバージョンアップ!!」と題する2022年3月30日のニュース記事のページであり、「4月より順次切り替わります!」、「進化-2 仕様:アルコール表示0.00%(実測値平均0.008%)技術の高さを示す数値です。」と記載され、缶の表面の写真は甲1A及び甲3Aと同じで「Alc.0.00%」と記載されていることが読み取れ、缶の裏面の写真及び「新裏面表示」と題する裏面の記載内容は甲3Aと同じであることが読み取れる。 そうすると、甲3A及び甲1Bに記載された商品と甲1Aに記載された商品とは、販売時期及び商品の説明の多くが一致し、甲3A及び甲1Bにおける「メチオニン+システイン 42.9mg」の記載は甲1Aにおける「メチオニン+システイン」の含有量(棒グラフ)の記載と整合するから、甲3A及び甲1Bに記載された商品と甲1Aに記載された商品とは同一の商品であるといえ、したがって、甲1Aに記載された商品における「メチオニン+システイン」の含有量は42.9mg(1缶330ml当り)」といえる。 なお、厚生労働省HPに掲載されている「日本人の食事摂取基準(2020年版)」、令和元年12月公開、の「II 各論」、「1 エネルギー・栄養素」、「1-2 たんぱく質」の参考表(119頁)(もし必要であれば、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html)の「たんぱく質」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf)を参照。)には、18歳以上の男女の含硫アミノ酸の必要量が15mg/kg体重/日であることが記載されているから、甲3A及び甲1Bに記載された「メチオニン+システイン」の含有量42.9mgは、体重50kgの成人の1日当たり必要量に対する割合にすると、42.9/(15×50)×100=5.72%と計算され、したがって、甲1Aにおける「メチオニン+システイン」の「1缶による充足率(%)」が「6%」であるという記載とも整合する。 以上まとめると、甲1Aには以下の発明が記載されている。 「アルコール度数が0.00%であるノンアルコールビールを製造する方法であって、メチオニン+システインの含有量を42.9mg/330mlに調整する工程を含んでなり、かつ、原料はモルト、ホップ、ビール酵母及び天然水だけであり、それらを本格醸造し、アルコールを0.00%まで抜く工程を含んでなる、方法「(以下、「甲1A製法発明」という。) 「アルコール度数が0.00%であるノンアルコールビールを雑味がなくおいしいものとする方法であって、メチオニン+システインの含有量を42.9mg/330mlに調整する工程を含んでなり、かつ、原料はモルト、ホップ、ビール酵母及び天然水だけであり、それらを本格醸造し、アルコールを0.00%まで抜く工程を含んでなる、方法「(以下、「甲1A方法発明」という。) ウ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1A製法発明との対比 本件発明1と甲1A製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲1A製法発明における「アルコール度数が0.00%であるノンアルコールビールを製造する方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲1A製法発明における「原料はモルト、ホップ、ビール酵母及び天然水だけであり、それらを本格醸造し、アルコールを0.00%まで抜く工程を含んでなる、」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、」を満たす。さらに、甲1A製法発明は、プロリンを原料としないから、「プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法」には該当せず、したがって、本件発明1における「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を満たすものである。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲1A-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A製法発明は、「メチオニン+システインの含有量を42.9mg/330mlに調整する工程を含」む点 相違点甲1A-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲1A-3:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A製法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲1A-3について検討する。 (イ)相違点甲1A-3について 甲1Aには、商品におけるカプリン酸の含有量は記載されていない。また、甲1A掲載の商品と同じ商品名の商品について記載された甲2A~甲6A及び甲1Bにも、カプリン酸の含有量は記載されていない。さらに他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A製法発明で製造される非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を特定することはできない。よって、相違点甲1A-3は実質的な相違点である。 また、甲1Aには、商品におけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1A製法発明において、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲1A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲1A-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1A製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)申立人A及びBの主張について a.申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aの89~90頁において、以下のように主張している。 (a)カプリン酸は通常のビールに含まれる香気成分であり、通常のビール中には0.4~1.4ppm程度含まれており、高濃度ではオフフレーバーの原因になることも知られている(甲8A)。甲1A製法発明は、ピルスナービールからアルコール分だけを抜いた製法であるため(甲4A~甲6A)、甲1A製法発明において、カプリン酸の含有量は0.01ppm以上5ppm以下に調整されている蓋然性が高い。 (b)脱アルコール工程で揮発した香気成分を脱アルコールビールに戻す方法は脱アルコールビールの製造において一般的に行われている方法であり、当該方法で製造された脱アルコールビール中のカプリン酸の含有量は、元のビールと同程度であり(甲13A)、甲14Aには、蒸留法でアルコールを除いたノンアルコールビールに、アルコールと一緒に失われた香気成分を補うことが記載され、甲15Aには、カプリン酸を含有するビールフレーバーをノンアルコールビール飲料に添加することが記載されているから、当業者は相違点甲1A-3に係る構成を容易に想到でき、本件明細書に記載された効果は当業者が予測できない顕著な効果ではない。 (a)の主張について 甲8Aに記載された「市販ビール」は、甲1A製法発明における「非アルコールビールテイスト飲料」とは異なる商品であるから、甲1A製法発明におけるカプリン酸の含有量が甲8Aに記載された「市販ビール」における含有量と同じであるとはいえない。 また、甲2Aの2/14頁には、「高品質な原料を用いたドイツのプレミアムピルスナービールから高い脱アルコール技術でアルコールのみを抜くことにより、ピルスナー本来のスッキリしたキレのある味わいを実現しました。」と記載され、甲3Aの1頁には「老舗ブルーワリーが作るプレミアム・ピルスナービールから、最先端の脱アルコール技術でアルコールだけを抜き、ノン・アルコールながらドイツビールそのままのコクと風味を創り上げました。」と記載され、甲4A~甲6Aには、「「ヴェリタスブロイ」はプレミアムモルト、ファインホップ、天然水のみを使用したピルスナービールから、アルコール分だけを抜いたこだわりの製法が特徴となっている。」と記載されているが、いずれにも具体的な脱アルコールの方法は記載されていないから、甲1A製法発明におけるカプリン酸の含有量が、脱アルコール工程の前後で全く変わらないことが技術的に裏付けられているとはいえないし、上記したとおり、そもそも、甲1A製法発明の脱アルコール前の醸造物におけるカプリン酸の含有量が甲8Aに記載された「市販ビール」と同じであるとはいえないから、甲1A製法発明における脱アルコール工程後のカプリン酸の含有量を特定することはできない。 さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲1A製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲1A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 (b)の主張について 仮に、当業者が、甲1A製法発明における脱アルコール工程において、「脱アルコール工程で揮発した香気成分を脱アルコールビールに戻す方法」を採用することに想到し得たとしても、甲13Aの27頁左欄の「四.製品中の風味物資分析」を参照すると、脱アルコール工程を経たノンアルコールビールにおける香り物質の含有量は対照品より少なくなると解され、さらに、甲1A及び他の全ての証拠の記載を参照しても、多数の香気成分のうち戻すべき成分として特にカプリン酸の含有量に着目し、その含有量を特定の範囲に調整する動機があるとはいえず、加えて、上記(a)で検討したとおり、甲1A製法発明における脱アルコール前の醸造物におけるカプリン酸の含有量を特定することもできないから、甲1A製法発明における脱アルコール後のカプリン酸の含有量を相違点甲1A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 b.申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bの32~33頁において、以下のように主張している。 (a)甲6Bには、脱アルコールで製造したノンアルコールビール中のカプリン酸の含有量が0.21ppmであること、及び脱アルコールで変化が少ないことが記載されており、甲7Bには、一般的なビールのカプリン酸含有量が0.1~3.0ppmと記載されており、オフフレーバーの原因となり得ることも記載されているから、甲1Bに記載の商品の製造においては、カプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高い。 (b)カプリン酸が一般的なビールに0.1~3.0ppm含まれることは周知であり(甲6B、甲7B)、カプリン酸が多いとオフフレーバーの原因となり得ることも知られていたから(甲7B)、当業者であれば非アルコールビールテイスト飲料の雑味を低減する目的でカプリン酸量を調整してみることは容易であり、非アルコールビールテイスト飲料中のメチオニン、リナロール、カプリン酸の含有量を本件発明1の範囲に調整することで、顕著な効果が得られるとは認められない。 (a)の主張について 甲6Bは「透析によるビールの脱アルコールビール品質に対する工程技術的な影響」と題する論文であり、p.164の要約には、「ビールの脱アルコール化のためのすべての膜システムは、熱による製品ストレスが全くないことを特徴としています。しかし、これは必ずしも膜技術がアルコール蒸発法よりも根本的に優れたプロセスであり、より高品質の低アルコールビールやノンアルコールビールを製造できることを意味するものではありません。本研究では、透析を用いたビールの脱アルコール化における様々な方法の利点と欠点を体系的に分析します。」と記載されているところ、申立人Bが引用する脱アルコール前後のカプリン酸含有量についての記載は、甲6Bの表7左欄に記載された成分を含有するビールを、透析を用いて脱アルコール化したときのものであり、脱アルコールの対象となるビールが異なったり、蒸発法等の他の方法で脱アルコールしたときには同じことはいえないと理解できる。そして、上記a.(a)に記載したとおり、甲1Aの記載及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A製法発明の脱アルコール前の醸造物におけるカプリン酸の含有量も、「アルコールを0.00%まで抜く工程」でどのような方法が用いられたのかも特定できないから、甲6Bの記載を根拠として甲1A製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 また、甲7Bのp.236左欄11~13行には、「ビールの有機酸組成は原料の使用比率,酵母菌株,発酵条件によって変動し,その数はおよそ110種1)に及ぶとされ,国武の報告2)に詳しい。分析値の例を第1表3)に示した。」と記載され、p.236右欄下から6行~p.237右欄1行には、「ビール中の脂肪酸含有量は麦汁組成,麦汁の清澄度,酵母菌株,発酵条件により大きく左右される。・・・酵母中にはC2~C18の脂肪酸が含まれ,中鎖の脂肪酸(C6~C10)は長鎖脂肪酸合成の中間体として合成され,さまざまな酵母脂質へ取り込まれる。これらの成分は酵母の増殖法によっても影響を受け,発酵度と逆の相間(ママ)を示す。発酵温度を上げたり,ピッチング量やエアレーションの増加,撹拌のように,発酵を促進するような条件では脂肪酸の蓄積量が低下する。」と記載されているから、申立人Bが引用する第1表に記載されたカプリン酸の含有量は、麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等が異なる方法で製造された複数のビールについての分析値と解される。そして、上記a.(a)に記載したとおり、甲1Aの記載及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A製法発明における「原料はモルト、ホップ、ビール酵母及び天然水だけであり、それらを本格醸造」する工程が、甲7Bの表1に記載されたいずれかのビールの製造工程(麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等)と一致するとはいえないから、甲7Bの記載を根拠として甲1A製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲1A製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲1A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 (b)の主張について 上記「(a)の主張について」の項で検討したとおり、甲6B及び甲7Bに記載されたカプリン酸の含有量は、甲1A製法発明において同じ含有量を採用する動機となるものとはいえず、また、甲6B及び甲7Bのいずれも、非アルコールビールテイスト飲料一般において採用することが好ましいカプリン酸の含有量を開示するものではないから、甲1A製法発明におけるカプリン酸の含有量を「0.01ppb以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機となるものではない。さらに、甲7Bにはカプリン酸がオフフレーバーの原因物質であることが記載されているところ、あえて「0.01ppb以上5ppm以下」という特定の量含有させる動機は見いだせない。よって、甲1A製法発明における脱アルコール後のカプリン酸の含有量を相違点甲1A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 (エ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A製法発明ではなく、かつ、甲1A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記ウで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲1A製法発明ではなく、かつ、甲1A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明6について (ア)本件発明6と甲1A方法発明との対比 本件発明1と甲1A製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲1A方法発明とを対比する。甲1A方法発明における「アルコール度数が0.00%であるノンアルコールビールを雑味がなくおいしいものとする方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲1A’-1:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A方法発明は、「メチオニン+システインの含有量を42.9mg/330mlに調整する工程を含」む点 相違点甲1A’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A方法発明はそのように特定されない点 相違点甲1A’-3:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲1A方法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲1A’-3について検討する。 (イ)相違点甲1A’-3について 相違点甲1A’-3は、実質的に相違点甲1A-3と同じ内容の相違点であるから、上記ウ(イ)と同様に判断される。よって、相違点甲1A’-3は実質的な相違点であり、かつ、相違点甲1A’-3に係る本件発明6の発明特定事項は、甲1A方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲1A方法発明ではなく、かつ、甲1A方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記オで検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲1A方法発明ではなく、かつ、甲1A方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ 理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7は、いずれも甲1Aに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 (2)理由1A-2(甲2Aに基づく新規性欠如)~理由1A-6(甲6Aに基づく新規性欠如)、理由2A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)~理由2A-6(甲6Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-1(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)について ア 甲2A~甲6A及び甲1Bに記載された事項並びにそれらに記載された発明 上記(1)イにおいて検討したとおり、甲3A及び甲1Bには、甲1Aに記載された商品と同一の商品が記載されているといえる。 また、甲2A、甲4A及び甲6Aには、株式会社パナバックが販売する甲1A、甲3A及び甲1Bと同じ商品名のノンアルコールビールが記載されており、缶ビールの表面の写真はいずれも甲1A、甲3A及び甲1Bと同じで「Alc.0.00%」と記載されていることが読み取れ、記載されている内容は甲1A、甲3A及び甲1Bと共通しており、甲2Aの掲載日は2023年3月16日、甲4Aの発行日は2022年1月1日、甲6Aの発行日は2023年1月1日であるから、甲2A、甲4A及び甲6Aに記載された缶ビールタイプの商品と甲1A、甲3A及び甲1Bに記載された商品とは同一の商品であるといえる。 さらに、甲5Aには、株式会社パナバックが販売する甲1A、甲3A及び甲1Bと同じ商品名のノンアルコールビールが記載されており、「22年3月のヴァージョン・アップでは脱アルコールでありながらアルコール度数を0.00%まで除去し、よりビール感がアップした。」及び「7月25日には新商品として330mlのグラスボトルタイプを発売。」と記載されており、ノンアルコールビールについて記載されている内容は甲1A、甲3A及び甲1Bと共通しており、甲5Aの発行日は2022年7月15日であるから、甲5Aに記載されたノンアルコールビールは、包装形態がグラスボトルであるか缶であるかは異なるが、甲1A、甲3A及び甲1Bに記載された商品のノンアルコールビールと同一のものであるといえる。 そうすると、甲2A~甲6A及び甲1Bのいずれにも、上記(1)イに記載した「甲1A製法発明」及び「甲1A方法発明」と同じ発明が記載されているといえる。 イ 甲2A~甲6A又は甲1Bに記載された発明と本件発明1~7との対比、判断 上記アを踏まえると、甲2A~甲6A又は甲1Bに記載された発明と本件発明1~7との対比、判断においては、上記(1)ウ~カと同じことがいえる。 ウ 理由1A-2(甲2Aに基づく新規性欠如)~理由1A-6(甲6Aに基づく新規性欠如)、理由2A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)~理由2A-6(甲6Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-1(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7は、いずれも甲2A~甲6A又は甲1Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲2A~甲6A又は甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1A-2(甲2Aに基づく新規性欠如)~理由1A-6(甲6Aに基づく新規性欠如)、理由2A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)~理由2A-6(甲6Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-1(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 (3)小括 以上のとおりであるから、理由1A-1(甲1Aに基づく新規性欠如)~理由1A-6(甲6Aに基づく新規性欠如)、理由2A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)~理由2A-6(甲6Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-1(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)のいずれによっても、本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 2.理由2A-7(甲16Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-3(甲8Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-3(甲8Bに基づく進歩性欠如)について 甲8Bは、甲16Aの翻訳文として提出された甲16A-1と同じ文献であり、甲16Aの日本語パテントファミリーに当たる文献である。そこで、以下の検討においては、証拠番号を甲8Bに統一することとした。 (1)甲8Bに記載された事項 甲8Bには以下の事項が記載されている。 (8B-1)「[請求項1] アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、 穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、 前記マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、 前記麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、 前記加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、 前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、 前記非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、 前記発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、 前記加熱された麦汁、前記非アルコール性発酵麦汁及び/又は前記非アルコール性ビールを、SiO2とAl2O3のモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる、方法。」 (8B-2)「[技術分野] [0001] 本発明は、改善された風味を有する非アルコール性発酵ビールの製造に関する。より詳細には、本発明は、疎水性シリケート系分子篩、例えば疎水性ゼオライトを用いて処理することにより、いわゆるかすかな「麦汁の」風味が低減された非アルコール性発酵ビールの製造方法を提供する。 [0002] また、本発明は望ましくないかすかな麦汁風味がなく、独特の快い風味を有する非アルコール性発酵ビールに関する。」 (8B-3)「[0006] 通常、非アルコール性ビールは、一般に「麦汁のような味」と呼ばれるかすかなオフフレーバーを有する。このかすかな麦汁風味は、麦汁の煮沸中に形成されるアルデヒド、特にメチオナール(3-メチルチオプロピオンアルデヒド)、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、2-メチルプロパナール及びフェニルアセトアルデヒドに起因する。 [0007] メチオナールは、ストレッカー分解反応によるα-ジカルボニル化合物(メイラード反応における中間生成物)とメチオニンとの相互作用によって形成される。同様に、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール及び2-メチルプロパナールは、α-ジカルボニル化合物とそれぞれロイシン、イソロイシン及びバリンとの相互作用によって形成される。 [0008] フルフラールは、麦汁の煮沸中に形成され、非アルコール性ビールの風味に悪影響を及ぼし得る別の風味化合物である。フルフラールは、熱誘導カラメル化反応によって生成される。 [0009] 非アルコール性ビールにおいて、上記麦汁風味物質及びフルフラールのビール全体の風味への寄与は甚だしい。これは、一部には、非アルコール性ビール、特に制限アルコール発酵によって製造された非アルコール性ビール中のこれらの風味物質の濃度が通常のビールよりも高いことによる。更に、非アルコール性ビール中にアルコールが存在しないことは、消費者がこれらの風味物質を知覚する程度を増加させる。 [0010] 非アルコール性ビールの麦汁風味の要素を低減させる試みがなされてきた。」 (8B-4)「[0020] 驚くべきことに、疎水性シリケート系分子篩は、相当量の他の重要なビール風味物質を除去することなく、麦汁風味物質を効果的に除去できることが見出された。従って、本方法は、残りのビール風味に多大な影響を及ぼすことなく、麦汁風味物質、例えばメチオナールを選択的に除去することを可能にする。」 (8B-5)「[0055] 本発明によれば、疎水性分子篩は発酵前に、加熱された麦汁に適用することができ、或いは発酵麦汁又はビールが非アルコール性であるならば、発酵後に適用することができる。 [0056] 一実施形態によれば、疎水性分子篩は発酵前に適用する。すなわち、加熱された麦汁を疎水性分子篩と接触させる。この実施形態は、発酵中に形成された望ましい風味物質が除去されることを回避するという利点をもたらす。」 (8B-6)「[0074] 本発明による非アルコール性ビールは、典型的には、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有する。」 (2)甲8Bに記載された発明 甲8Bの請求項1(摘記8B-1)には、 「アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、 穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、 前記マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、 前記麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、 前記加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、 前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、 前記非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、 前記発酵は非アルコール性発酵麦汁を生成するか、又は前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成するかのいずれかであり、 前記加熱された麦汁、前記非アルコール性発酵麦汁及び/又は前記非アルコール性ビールを、SiO2とAl2O3のモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる、方法。」の発明が記載されており、[0056](摘記8B-5)には、疎水性分子篩を発酵前に適用する方法が、「発酵中に形成された望ましい風味物質が除去されることを回避するという利点をもたらす」一実施形態として記載されている。また、[0001](摘記8B-2)には、甲8Bに記載された発明が「改善された風味を有する非アルコール性発酵ビールの製造に関する。より詳細には、本発明は、疎水性シリケート系分子篩、例えば疎水性ゼオライトを用いて処理することにより、いわゆるかすかな「麦汁の」風味が低減された非アルコール性発酵ビールの製造方法を提供する」ものであることが記載され、[0020](摘記8-4)には、「疎水性シリケート系分子篩は、相当量の他の重要なビール風味物質を除去することなく、麦汁風味物質を効果的に除去できることが見出された」ことが記載されている。さらに、[0074](摘記8B-5)には、「本発明による非アルコール性ビールは、典型的には、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有する」ことが記載されている。 そうすると、甲8Bには、請求項1及び[0074]等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。 「アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、 穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、 前記マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、 前記麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、 前記加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、 前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、 前記非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、 前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成する工程を含み、 非アルコール性ビールは、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有するものであり、 前記加熱された麦汁を、SiO2とAl2O3のモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる、方法。」(以下、「甲8B製法発明」という。) 「アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールのかすかな麦汁の風味を低減する方法であって、 穀物と水との混合物をマッシングしてマッシュを生成する工程、 前記マッシュを麦汁とビール粕とに分離する工程、 前記麦汁を少なくとも10分間、少なくとも80℃の温度まで加熱して、加熱された麦汁を生成する工程、 前記加熱された麦汁を生酵母を用いて発酵させて発酵麦汁を生成する工程、 前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、 前記非アルコール性ビールを密閉容器に充てんする工程、を含み、 前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成する工程を含み、 非アルコール性ビールは、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有するものであり、 前記加熱された麦汁を、SiO2とAl2O3のモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる、方法。」(以下、「甲8B方法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲8B製法発明との対比 本件発明1と甲8B製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲8B製法発明における「アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールの製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲8B製法発明における「非アルコール性ビールは、メチオニンを少なくとも2mg/L、より好ましくは少なくとも3mg/L、最も好ましくは5~15mg/Lの濃度で含有するものであり、」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を有することに相当するといえる。さらに、甲8B製法発明における「前記発酵はアルコール性発酵麦汁を生成し、続いてアルコールを除去して非アルコール性発酵麦汁又は非アルコール性ビールを生成する工程を含み、」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、」を満たす。加えて、甲8B製法発明は、プロリンを糖液に添加する工程を必須の工程とはしていないから、本件発明1における「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を満たすものといえる。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲8B-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲8B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲8B-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲8B製法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲8B-2について検討する。 イ 相違点甲8B-2について 甲8Bには、非アルコール性発酵ビールにおけるカプリン酸の含有量は記載されておらず、さらに他の全ての証拠の記載を参照しても、甲8B製法発明で製造される非アルコール性発酵ビールにおけるカプリン酸の含有量を特定することはできない。よって、相違点甲8B-2は実質的な相違点である。 また、甲8Bには、非アルコール性発酵ビールにおけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲8B製法発明において、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲8B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲8B-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲8B製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人A及びBの主張について (ア)申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aの99~100頁において、甲8Bの[0014]に背景技術として、脱アルコール工程で揮発した香気成分を脱アルコールビールに戻す方法が一般的に行われていることが記載されていること、及び、上記1.(1)ウ(ウ)a.に記載した甲8A、及び甲13A~甲15Aに基づく主張と同様のことがいえることから、甲8B製法発明において当業者がカプリン酸の含有量を0.01ppm以上10ppm以下に調整する工程を採用することに格別の困難性はなく、さらに、甲8B製法発明と甲13A~甲15Aとを組み合わせることで当業者は相違点甲8B-2に係る構成を容易になし得たものであると主張している。 しかし、仮に、当業者が、甲8B製法発明における脱アルコール工程において、「脱アルコール工程で揮発した香気成分を脱アルコールビールに戻す方法」を採用することに想到し得たとしても、上記1.(1)ウ(ウ)a.で検討したことと同様のことがいえるから、甲8B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸の含有量を相違点甲8B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 (イ)申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bの43~44頁において、以下のように主張している。 a.甲8B製法発明は、アルコール性発酵麦汁からアルコールを除去して非アルコール性ビールを製造するから、上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)に記載した甲6B及び甲7Bの記載と合わせると、カプリン酸含有量は0.01ppm以上5ppm以下に調整されている蓋然性が高い。 b.上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、当業者であれば非アルコールビールテイスト飲料の雑味を低減する目的でカプリン酸量を調整してみることは容易であり、非アルコールビールテイスト飲料中のメチオニン、リナロール、カプリン酸の含有量を本件発明1の範囲に調整することで、顕著な効果が得られるとは認められない。 a.の主張について 甲8Bの記載を参酌しても、甲8B製法発明における「前記発酵麦汁を1以上の更なる工程に供して非アルコール性ビールを生成する工程、」は、甲6Bの表7左欄に記載された成分を含有するビールを原料とするものとはいえず、甲6Bに記載された透析を用いる方法で脱アルコール化する工程であるともいえない。また、甲8B製法発明は「前記加熱された麦汁、前記非アルコール性発酵麦汁及び/又は前記非アルコール性ビールを、SiO2とAl2O3のモル比が少なくとも15の疎水性シリケート系分子篩と接触させる」工程を有する点でも、甲6Bに記載された脱アルコール方法と異なる。さらに、甲8B製法発明における「発酵麦汁を生成する工程」は、甲7Bの表1に記載されたいずれかのビールの製造工程(麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等)と一致するともいえない。 そうすると、上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)について検討したことと同様のことがいえるから、甲6B及び甲7Bの記載を根拠として甲8B製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲8B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲8B製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲8B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 b.の主張について 上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)について検討したことと同様のことがいえるから、甲8B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸の含有量を相違点甲8B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲8B製法発明ではなく、かつ、甲8B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明3~5はいずれも甲8B製法発明ではなく、かつ、本件発明2~5はいずれも甲8B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明6について ア 本件発明6と甲8B方法発明との対比 本件発明1と甲8B製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲8B方法発明とを対比する。甲8B方法発明における「アルコール含有量が1.0体積%未満の非アルコール性発酵ビールのかすかな麦汁の風味を低減する方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲8B’-1:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲8B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲8B’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲8B方法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲8B’-2について検討する。 イ 相違点甲8B’-2について 相違点甲8B’-2は、実質的に相違点甲8B-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。よって、相違点甲8B’-2は実質的な相違点であり、かつ、相違点甲8B’-2に係る本件発明6の発明特定事項は、甲8B方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲8B方法発明ではなく、かつ、甲8B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲8B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由2A-7(甲16Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-3(甲8Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-3(甲8Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1、3~6は、いずれも甲8Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲8Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由2A-7(甲16Aに基づく進歩性欠如)、理由1B-3(甲8Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-3(甲8Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 3.理由2A-8(甲17Aに基づく進歩性欠如)について (1)甲17Aに記載された事項 甲17Aには以下の事項が記載されている。 (17A-1)「[請求項1] 糖液を調製する工程、 糖液に含硫アミノ化合物を添加する工程、及び 含硫アミノ化合物が添加された糖液を煮沸する工程、を有する、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。 [請求項2] 含硫アミノ化合物が、含硫アミノ酸である、請求項1に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。 [請求項3] 含硫アミノ化合物が、シスチン及びメチオニンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。 [請求項4] 糖液中の含硫アミノ酸の含有量が、0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下である、請求項2又は3に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」 (17A-2)「[0002] 本明細書を通じて、「ビールテイスト飲料」とは、酒税法上の分類、使用原料やその使用量にとらわれず、炭酸ガスによる発泡性を有し、ビールと同様又は同類の香味を有するアルコール飲料及びノンアルコール飲料を意味する。また、「非発酵ビールテイスト飲料」とは、発酵を経ずに製造されるビールテイスト飲料を指し、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料及びこれに醸造アルコールを添加して得られるアルコール入り非発酵ビールテイスト飲料を意味する。」 (17A-3)「[発明が解決しようとする課題] [0005] ビールが有する風味の大部分は、酵母によるアルコール発酵の際に生成する香気成分に由来するものである。ここで、非発酵ビールテイスト飲料においては、突出して感じられる不快臭が存在したり、逆に発酵感に寄与する香気そのものが少なかったりするなど、ビールらしさに欠けるものであり、香料を付与したとしても不自然な香味となってビールテイスト飲料本来のバランスを損ないがちであった。このため、本発明は、ビールテイスト飲料に自然な香気を付与し、ビールテイスト飲料のビールらしさを向上させる、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法を提供することを目的とする。」 (17A-4)「[0018] <非発酵ビールテイスト飲料> 本発明は、0.3ppb以上2ppb以下の硫化水素、及び0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下の含硫アミノ化合物を含有する、非発酵ビールテイスト飲料にも関する。すなわち、本発明においては、糖液に含硫アミノ化合物を添加して煮沸することにより、含硫アミノ酸の一部が糖等の糖液中の各種成分と反応し、所定量の硫化水素を含有する非発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。硫化水素を所定量含有することにより、発酵工程を経ていなくても、良好な発酵感を有する非発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。 なお、硫化水素の含有量は、0.9ppb以上1.7ppb以下であることがより好ましい。」 (17A-5)「[0027] <実施例3;糖液へのメチオニンの添加> 糖類の混合液15g(固形分14.2g相当)及びダイズタンパク質物分解物5gを水1Lに投入してよく混合し、糖液を調製した(糖液調製工程)。なお、糖液中の単糖の含有率は30質量%、糖液のpHは6.4であった。この糖液に、糖液100mLあたり、メチオニンの含有量が0.2mg、0.5mg、1.0mg、2.0mg、5.0mgとなるようにメチオニンを添加した(含硫アミノ化合物添加工程)。また、これらとは別に、糖液100mLあたり、メチオニン2.0mgに加えて、シスチンが0.4mgとなるようにメチオニン及びシスチンを添加した糖液も調製した。これに、ホップエキス0.12gを投入した。得られた糖液は、100℃で60分煮沸し(煮沸工程)、煮沸後、ろ過した糖液に炭酸ガスを付与して、非発酵ビールテイスト飲料を得た。 得られた非発酵ビールテイスト飲料について、実施例1に準じて3名のパネリストによる官能評価を行った。 結果を表3に示す。 [0028] 表3 [図:0001430028000001.jpg] [0029] 表3に示されるように、糖液にメチオニンを添加することにより、穀物感、ビールらしさ、及び発酵感共に向上し、このような効果は、シスチンを添加することで更に向上した。発酵感の向上効果については、シスチンを添加した系で特に強く観察された。 よって、糖液に含硫アミノ化合物であるメチオニン及びシスチンを添加することにより、より好ましい効果が得られることが分かった。」 (2)甲17Aに記載された発明 甲17Aの請求項1~4(摘記17A-1)には、「糖液を調製する工程、糖液に含硫アミノ化合物を添加する工程、及び含硫アミノ化合物が添加された糖液を煮沸する工程、を有する、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」、「含硫アミノ化合物が、含硫アミノ酸である、請求項1に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」、「含硫アミノ化合物が、シスチン及びメチオニンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」及び「糖液中の含硫アミノ酸の含有量が、0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下である、請求項2又は3に記載の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法。」が記載されており、[0002](摘記17A-2)には、「「非発酵ビールテイスト飲料」とは、発酵を経ずに製造されるビールテイスト飲料を指し、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料及びこれに醸造アルコールを添加して得られるアルコール入り非発酵ビールテイスト飲料を意味する」と記載され、[0005](摘記17A-3)には、「本発明は、ビールテイスト飲料に自然な香気を付与し、ビールテイスト飲料のビールらしさを向上させる、非発酵ビールテイスト飲料の製造方法を提供することを目的とする」ことが記載されている。また、[0027]~[0029](摘記17A-5)には、「糖液に、糖液100mLあたり、メチオニンの含有量が0.2mg、0.5mg、1.0mg、2.0mg、5.0mgとなるようにメチオニンを添加」する工程を有し、アルコールを添加する工程を有さない、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法の実施例が記載されている。 そうすると、甲17Aには、請求項1~4及び[0005]等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。 「非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、糖液を調製する工程、糖液に、メチオニンの含有量が0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下となるようにメチオニンを添加する工程、及びメチオニンが添加された糖液を煮沸する工程、を有する、方法。」(以下、「甲17A製法発明」という。) 「非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料に自然な香気を付与し、ビールらしさを向上させる方法であって、糖液を調製する工程、糖液に、メチオニンの含有量が0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下となるようにメチオニンを添加する工程、及びメチオニンが添加された糖液を煮沸する工程、を有する、方法。」(以下、「甲17A方法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲17A製法発明との対比 本件発明1と甲17A製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲17A製法発明における「非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲17A製法発明における「糖液に、メチオニンの含有量が0.2mg/100mL以上5mg/100mL以下となるようにメチオニンを添加する工程、」は、[0018](摘記17A-4)に、「本発明においては、糖液に含硫アミノ化合物を添加して煮沸することにより、含硫アミノ酸の一部が糖等の糖液中の各種成分と反応し、所定量の硫化水素を含有する非発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。硫化水素を所定量含有することにより、発酵工程を経ていなくても、良好な発酵感を有する非発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。なお、硫化水素の含有量は、0.9ppb以上1.7ppb以下であることがより好ましい。」と記載されていることを参酌すると、糖液中の0.2mg/100mL(2ppm)以上5mg/100mL(50ppm)のメチオニンが、煮沸工程後にはわずかに減少し、2ppmを下回る可能性があることから、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」と、「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を750ppm以下に調整する工程」である限りにおいて一致する。さらに、甲17A製法発明は、プロリンを糖液に添加する工程を必須の工程とはしておらず、甲17Aに記載された実施例3([0027](摘記17A-5))もプロリンを糖液に添加する工程を有していないことを参酌すると、本件発明1における「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を満たすものといえる。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を750ppm以下に調整する工程を含んでなる、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲17A-1:本件発明1は非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を「2ppm以上」に調整する工程を含むと特定するのに対し、甲17A製法発明は下限がそのように特定されない点 相違点甲17A-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲17A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲17A-3:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲17A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲17A-4:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲17A製法発明は「非発酵」である点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲17A-3について検討する。 イ 相違点甲17A-3について 甲17Aには、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量は記載されておらず、さらに他の全ての証拠の記載を参照しても、甲17A製法発明で製造される非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を特定することはできない。 また、甲17Aには、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲17A製法発明において、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲17A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲17A-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲17A製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aの108~109頁において、甲17Aの[0018]に「香料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量については、これらの添加剤について、慣用されている量を採用すればよい」と記載されていること、脱アルコールビールの香味不足を補うため、元のビールに含まれている程度の香気成分を香料やビールからの回収香気で補うことは周知技術であり、その添加量も一般的な添加量にしか過ぎないこと(甲13A~甲16A)、及び、非発酵ビールテイスト飲料において発酵由来の香味が不足する点は「脱アルコールビール」と同じ課題であるから、香味不足を補うため通常のビールに含まれる香気成分を原料として添加することは格別困難ではないと主張している。 しかし、甲13Aに接した当業者は、出願時の技術常識(例えば、甲14Aのp.146-149「5.ビールの香気成分」等を参照。)からみて、甲13Aに記載されている方法は、ビール酵母によるアルコール発酵工程で生成した低沸点香気物質を含むビール原液を原料とし、脱アルコール後に低沸点香気物質をノンアルコールビールに戻すという方法であると理解するから、当業者が発酵原料を用いない甲17A製法発明に対して甲13Aに記載された方法を組み合わせることを動機付けられることはない。また、甲17Aの[0018](摘記17A-4)には、甲17A製法発明が「糖液に含硫アミノ化合物を添加して煮沸することにより、含硫アミノ酸の一部が糖等の糖液中の各種成分と反応し、所定量の硫化水素を含有する」ことにより「発酵工程を経ていなくても、良好な発酵感を有する非発酵ビールテイスト飲料を提供することができる」ものであることが記載されているところ、そのような製造方法を前提としない甲14Aに記載された40種類の「ビールの主要香気成分」や甲15Aに記載された44成分からなるビールフレーバーを、甲17A製法発明にそのまま適用することを当業者が動機付けられるとはいえず、まして、多数の化合物の中から特にカプリン酸に着目し「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の含有量になるよう添加することを当業者が動機付けられるとはいえない。さらに、甲16Aにはカプリン酸について何ら記載されていない。加えて、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲17A製法発明において、特にカプリン酸の含有量に着目し、その含有量を「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があるとはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲17A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲17A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明6について ア 本件発明6と甲17A方法発明との対比 本件発明1と甲17A製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲17A方法発明とを対比する。甲17A方法発明における「非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料に自然な香気を付与し、ビールらしさを向上させる方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を750ppm以下に調整する工程を含んでなる、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲17A’-1:本件発明6は非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を「2ppm以上」に調整する工程を含むと特定するのに対し、甲17A方法発明は下限がそのように特定されない点 相違点甲17A’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲17A方法発明はそのように特定されない点 相違点甲17A’-3:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲17A方法発明はそのように特定されない点 相違点甲17A’-4:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲17A方法発明は「非発酵」である点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲17A’-3について検討する。 イ 相違点甲17A’-3について 相違点甲17A’-3は、実質的に相違点甲17A-3と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。よって、相違点甲17A’-3に係る本件発明6の発明特定事項は、甲17A方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲17A方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲17A方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由2A-8(甲17Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7は、いずれも甲17Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由2A-8(甲17Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 4.理由2A-9(甲24Aに基づく進歩性欠如)について (1)甲24Aに記載された事項 甲24Aには以下の事項が記載されている。日本語訳にて示す。 (24A-1) p.2191の表1には、表題に「ドイツのアルコールフリー下面発酵シャンクビール及びアルコールフリー下面発酵ピルスナーフォルビールの成分」と記載され、「アルコールフリー下面発酵シャンクビール」の「アルコール(ml/100ml)」には、「ビールの数 30」及び「単一値又は平均値 0.41」と記載され、「アルコールフリー下面発酵ピルスナーフォルビール」の「アルコール(ml/100ml)」には、「ビールの数 26」及び「単一値又は平均値 0.46」と記載されている。 (24A-2) p.2192の表2には、表題に「ドイツのアルコールフリー下面発酵シャンクビール及びアルコールフリー下面発酵ピルスナーフォルビールの粗タンパク質、遊離アミノ態窒素及びアミノ酸」と記載され、「アルコールフリー下面発酵シャンクビール」の「メチオニン(mg/l)」には、「ビールの数 3」及び「単一値又は平均値 7」と記載され、「アルコールフリー下面発酵ピルスナーフォルビール」の「メチオニン(mg/l)」には、「ビールの数 1」及び「単一値又は平均値 12」と記載されている。 (24A-3)「化学添加物不使用、天然素材使用 アルコールフリービールもまた、ドイツのビール純粋令に厳格に従って醸造されていることは言うまでもない。 そのため、化学添加物は一切使用していない。原料として使用されるのは、醸造用麦芽、醸造用水、ビターホップとフレーバーホップ、下面発酵と上面発酵のビール酵母のみ。」(p.2203第3欄下から5行~第4欄12行) (2)甲24Aに記載された発明 甲24Aのp.2203(摘記24A-3)には、ドイツのアルコールフリービールが、ドイツのビール純粋令に厳格に従って醸造されており、原料として使用されるのは、醸造用麦芽、醸造用水、ビターホップとフレーバーホップ、下面発酵と上面発酵のビール酵母のみであることが記載されている。また、p.2191の表1(摘記24A-1)及びp.2192の表2(摘記24A-2)には、ドイツのアルコールフリー下面発酵シャンクビールは、アルコール含有量が0.41ml/100ml(ビールの数30の平均値)、メチオニン含有量が7mg/l(ビールの数3の平均値)であること、及びドイツのアルコールフリー下面発酵ピルスナーフォルビールは、アルコール含有量が0.46ml/100ml(ビールの数26の平均値)、メチオニン含有量が12mg/l(ビールの数1の単一値)であることが記載されている。 そうすると、甲24Aには以下の発明が記載されている。 「ドイツのアルコールフリー(アルコール含有量0.41ml/100ml(ビールの数30の平均値)下面発酵シャンクビール又はアルコールフリー(アルコール含有量0.46ml/100ml(ビールの数26の平均値))下面発酵ピルスナーフォルビールを製造する方法であって、メチオニン含有量を7mg/l(下面発酵シャンクビール、ビールの数3の平均値)又は12mg/l(下面発酵ピルスナーフォルビール、ビールの数1の単一値))に調整する工程を含み、原料として使用されるのは、醸造用麦芽、醸造用水、ビターホップとフレーバーホップ及び下面発酵のビール酵母のみである、方法。」(以下、「甲24A製法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲24A製法発明との対比 本件発明1と甲24A製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲24A製法発明における「ドイツのアルコールフリー(アルコール含有量0.41ml/100ml(ビールの数30の平均値)下面発酵シャンクビール又はアルコールフリー(アルコール含有量0.46ml/100ml(ビールの数26の平均値))下面発酵ピルスナーフォルビールを製造する方法であって、」は、ml/100mlの単位を%(v/v)に読み替えることができるから、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲24A製法発明における「メチオニン含有量を7mg/l(下面発酵シャンクビール、ビールの数3の平均値)又は12mg/l(下面発酵ピルスナーフォルビール、ビールの数1の単一値))に調整する工程」は、mg/l単位の値をおおよそppmに同じとみることができるから、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」に相当する。さらに、甲24A製法発明における「原料として使用されるのは、醸造用麦芽、醸造用水、ビターホップとフレーバーホップ及び下面発酵のビール酵母のみである」は、甲24A製法発明が発酵工程を有することを意味するから、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、」と、「前記非アルコールビールテイスト飲料が麦汁発酵液を原料とするものである、」限りにおいて一致する。加えて、甲24A製法発明における「原料として使用されるのは、醸造用麦芽、醸造用水、ビターホップとフレーバーホップ及び下面発酵のビール酵母のみである」は、甲24A製法発明がプロリンを原料としないことを意味するから、甲24A製法発明は「プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法」には該当せず、したがって、本件発明1における「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を満たすものである。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲24A-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲24A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲24A-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲24A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲24A-3:本件発明1は「脱アルコール麦汁発酵液」を原料とするものであると特定するのに対し、甲24A製法発明は脱アルコール工程を有するか明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲24A-2について検討する。 イ 相違点甲24A-2について 甲24Aには、ドイツのアルコールフリービールにおけるカプリン酸の含有量は記載されておらず、さらに他の全ての証拠の記載を参照しても、甲24Aに記載されたドイツのアルコールフリービールにおけるカプリン酸の含有量を特定することはできない。 また、甲24Aには、ドイツのアルコールフリービールにおけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲24Aに記載されたドイツのアルコールフリービールにおいて、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲24A-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲24A-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲24A製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aの127頁において、甲24A製法発明が、脱アルコール方法と、発酵を制限する方法のいずれの製造方法を用いる方法であるとしても、香味不足を補うため、元のビール又は通常のビールに含まれる香気成分を回収香気又は香料として添加することは格別困難ではなく、甲24A製法発明と甲13A~甲16Aとを組み合わせることで当業者は相違点甲24A-2に係る構成を容易になし得たと主張している。 しかし、甲24Aは、「スポーツマンのためのアルコールフリービール」と題する、ドイツのアルコールフリービールの成分分析結果(平均値)を報告する文献であり、個々のアルコールフリービールの成分含有量を変更する動機となる記載はない。また、p.2202の表5に有機酸の分析結果が記載されているが、カプリン酸の項目はなく、表5に関する記載としてはp.2203第3欄下から21行~下から17行に「その他の成分」と題して「ノンアルコールビールに含まれるその他の成分には、有機酸や醸造副産物などがある(表5)。」と記載されているにとどまるから、当業者が甲24A製法発明においてカプリン酸の含有量に着目する動機はなく、ましてカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する動機もない。さらに、甲13A~甲15Aについても、甲13Aに記載された13種類のビールの風味物質、甲14Aに記載された40種類の「ビールの主要香気成分」及び甲15Aに記載された44成分からなるビールフレーバーの中から特にカプリン酸に着目する動機となる記載はなく、甲16Aにはカプリン酸について何ら記載されていない。加えて、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲24A製法発明において、特にカプリン酸の含有量に着目し、その含有量を「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があるとはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲24A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲24A製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由2A-9(甲24Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~5は、いずれも甲24Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由2A-9(甲24Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~5についての特許を取り消すことはできない。 5.理由3A(甲18Aに基づく拡大先願)について (1)引用出願 甲18Aに係る特許出願:特願2022-109862号(特開2023-110821号公報) 甲18Aに係る特許出願(以下、「甲18A出願」という。)は、本件特許の優先日前である令和4年7月7日に出願され、その後、令和5年8月9日に出願公開されたものであり、しかも、本件特許に係る出願の発明者は甲18A出願の発明者と同一でなく、また、本件特許に係る出願の出願時において、その出願人は甲18A出願の出願人と同一でもない。 (2)甲18A出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「甲18A出願の当初明細書等」という。)に記載された事項 甲18A出願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 (18A-1)「[請求項1] 4~9w/w%の真性エキス濃度を有し、10~60mg/100mlの量で苦味系アミノ酸を含み、脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む、低アルコールビールテイスト飲料。 [請求項2] 前記苦味系アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の低アルコールビールテイスト飲料。 ・・・ [請求項9] 脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させる工程; 低アルコールビールテイスト飲料の苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程;及び 低アルコールビールテイスト飲料の真正エキスの濃度を4~9w/w%に調節する工程; を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。」 (18A-2)「[0006] ビールテイスト飲料に脱アルコール処理を施すことでアルコール分を除いて低アルコール化を図った場合、得られる低アルコールビールテイスト飲料には、コク感が不足して鉄味及び納豆臭味が目立ち、また、飲用後に苦味が残ってビールらしい香味バランスが損なわれる、という問題が明らかになった。 [0007] 本発明は上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、鉄味等が低減され、ビールらしい香味バランスに優れた、低アルコールビールテイスト飲料を提供することにある。」 (18A-3)「[発明の効果] [0017] 本発明によれば、コク感が増強されて鉄味等が低減され、苦味のキレ感が改善されてビールらしい香味バランスに優れた、低アルコールビールテイスト飲料を提供することができる。」 (18A-4)「[0019] <低アルコールビールテイスト飲料> 「低アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール濃度が通常のビールテイスト飲料よりも低いビールテイスト飲料をいう。低アルコールビールテイスト飲料は、3v/v%以下、好ましくは2v/v%以下、より好ましくは1v/v%未満のアルコール濃度を有する。「低アルコールビールテイスト飲料」の意味には、実質的にアルコールを含有しない、ノンアルコールビールテイスト飲料(例えば、アルコール濃度0.00v/v%)も含まれる。また、「アルコール」という文言はエタノールを意味する。」 (18A-5)「[0029] 苦味系アミノ酸の具体例としては、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンが挙げられる。ここで苦味系アミノ酸というときは、これらの中で、対象になる低アルコールビールテイスト飲料に存在するアミノ酸の全種類の混合物を意味する。ある一形態において、苦味系アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンの混合物である。 [0030] 苦味系アミノ酸が呈する苦味は、同様に原料分解物に由来する甘味、酸味、及びうま味と調和して、低アルコールビールテイスト飲料の味に厚み、コク感又は複雑感を与える要因である。苦味系アミノ酸が呈する苦味は後を引かず、低アルコールビールテイスト飲料の飲用後は、認識されにくい。 [0031] 本発明の低アルコールビールテイスト飲料において、苦味系アミノ酸の濃度は10~60mg/100mlである。苦味系アミノ酸の濃度が10mg/100ml未満になると、得られる低アルコールビールテイスト飲料の鉄味が十分に低減されず、60mg/100mlを超えると苦味が後を引いてビールらしい香味バランスが損なわれやすくなる。本発明の低アルコールビールテイスト飲料の苦味系アミノ酸の濃度は、好ましくは20~55mg/100mlであり、より好ましくは30~45mg/100mlである。」 (18A-6)「[実施例] [0048] <製造例1> 苦味系アミノ酸高含有脱アルコール麦汁発酵液の製造 (1)麦汁発酵液の製造 仕込槽に粉砕した麦芽500kg、湯及びトランスグルコシダーゼ2kgを入れ、50℃で30分保持した。その後、62℃で30分糖化させ、得られた麦汁をろ過した。これにホップを投入し、100℃で30分煮沸した。その後、沈殿物を取り除き、得られた麦汁をエキス14w/w%、2500Lに調製した。調製した麦汁を冷却し、冷麦汁を得た。この麦汁にビール酵母を加え、7日間10℃前後で発酵させた後、ビール酵母を除去した。タンクを移し替えて7日間熟成させた後、-1℃付近まで冷却し14日間安定化させた。その後脱気水を加えて希釈後、珪藻土を用いて濾過し、麦汁発酵液を得た。得られた麦汁発酵液を発酵液1とした。 [0049] (2)脱アルコール麦汁発酵液の製造 発酵液1を90mbar付近の減圧下で、脱ガスタンク内にスプレーし炭酸ガスを除去した後、プレートクーラーを用いて50℃付近まで加熱した。その後、90mbar付近の減圧カラム内で50℃付近に加熱した水蒸気と接触させ、揮発成分を水蒸気に吸着させ、アルコール及び揮発成分を取り除き、アルコール1%未満の脱アルコール麦汁発酵液を作製した。得られた脱アルコール麦汁発酵液を蒸留液1とした。 [0050] (3)脱アルコール麦汁発酵液の分析 [苦味系アミノ酸の定量] 苦味系アミノ酸の濃度は、日本電子社製アミノ酸自動分析装置JLC―500/V型を用いて、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンを定量し、それらの合計濃度として決定した。 [0051] 蒸留液1の苦味系アミノ酸濃度は、55.9mg/100mlであった。 [0052] [真正エキス濃度の測定] 真正エキスの濃度(w/w%)は、EBC法(ビール酒造組合:「ビール分析法」7 .2 1990年)に従って測定した。 [0053] 蒸留液1の真正エキス濃度は、9.0w/w%であった。 [0054] <製造例2> 苦味系アミノ酸低含有脱アルコール麦汁発酵液の製造 麦芽とコーンスターチ220kgを仕込釜に投入し、70℃に昇温しデンプンを液化させ、100℃で煮沸した。仕込槽に粉砕した麦芽240kgと湯を投入した後、たんぱく休止は行わずに、仕込槽のマイシェと仕込釜のマイシェとを合わせた。これにトランスグルコシダーゼ1.0kgを投入し、62℃で30分糖化させ、得られた麦汁をろ過した。これにホップを投入し、100℃で30分煮沸した。その後、沈殿物を取り除き、得られた麦汁をエキス14w/w%、2500Lに調製した。調製した麦汁を冷却し、冷麦汁を得た。この麦汁にビール酵母を加え、7日間10℃前後で発酵させた後、ビール酵母を除去した。タンクを移し替えて7日間熟成させた後、-1℃付近まで冷却し14日間安定化させた。その後脱気水を加えて希釈後、珪藻土を用いて濾過し、麦汁発酵液を得た。得られた麦汁発酵液を発酵液2とした。 [0055] 発酵液1の代わりに発酵液2を用いること以外は製造例1と同様にして、発酵液2に含まれているアルコール及び揮発成分を取り除き、アルコール1%未満の脱アルコール麦汁発酵液を作製した。得られた脱アルコール麦汁発酵液を蒸留液2とした。 [0056] 蒸留液1の代わりに蒸留液2を用いること以外は製造例1と同様にして、蒸留液2に含まれている苦味系アミノ酸、及び真正エキスを定量した。その結果、蒸留液2の苦味系アミノ酸濃度は10.5mg/100ml、真正エキス濃度は6.0w/w%であった。」 (18A-7)「[0057] <実施例1> 苦味系アミノ酸濃度、真正エキス濃度を変化させた低アルコールビールテイスト飲料 蒸留液1と蒸留液2とを所定の混合比率で混合することで、苦味系アミノ酸濃度及び真正エキス濃度を変化させた低アルコールビールテイスト飲料をそれぞれ1リットル、6種類製造した。これらを試料1~6とした。 [0058] その後、これら試料を訓練されたパネリスト6名による官能評価に供した。評価項目は、鉄味、納豆臭味、コクの強さ、苦味の強さ、苦味の後引きの強さ、醸造由来の複雑味とし、各項目5段階で評価した。評点は、試料1の評点を3として、やや強く感じられる場合は4、強く感じられる場合は5、やや弱く感じられる場合は2、弱く感じられる場合は1とし、最後に6名の評点の平均を算出した。 [0059] 鉄味、納豆臭味の評点の平均が2.5以下かつ苦味の後引きの強さの評点の平均が2.5以上から3.5未満かつコクの強さ、苦味の強度、醸造由来の複雑味の評点の平均が3.5以上の場合はビールらしい香味バランスを「B」、即ち可、鉄味、納豆臭味の評点の平均が2.0以下かつ苦味の後引きの強さの評点の平均が2.5以上から3.5未満かつコクの強さ、苦味の強度、醸造由来の複雑味の評点の平均が4.0以上の場合はビールらしい香味バランスを「A」、即ち良、とした。 [0060] [表1] [図:0001430028000002.jpg] [0061] 発酵後脱アルコール処理ビールテイスト飲料は、真性エキス濃度及び苦味系アミノ酸濃度を所定の範囲に調節することで、コク感が増強されて鉄味が低減され、苦味の後引きの強さは有意に増大せず、ビールらしい香味バランスが向上した。」 (3)甲18A出願の当初明細書等に記載された発明 甲18A出願の当初明細書等の請求項1、2及び9(摘記18A-1)には、「4~9w/w%の真性エキス濃度を有し、10~60mg/100mlの量で苦味系アミノ酸を含み、脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む、低アルコールビールテイスト飲料。」、「前記苦味系アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の低アルコールビールテイスト飲料。」及び 「脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させる工程; 低アルコールビールテイスト飲料の苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程;及び 低アルコールビールテイスト飲料の真正エキスの濃度を4~9w/w%に調節する工程; を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。」の発明が記載されており、[0019](摘記18A-4)には、「「低アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール濃度が通常のビールテイスト飲料よりも低いビールテイスト飲料をいう。・・・より好ましくは1v/v%未満のアルコール濃度を有する。」と記載されており、[0017](摘記18A-3)には、「本発明によれば、コク感が増強されて鉄味等が低減され、苦味のキレ感が改善されてビールらしい香味バランスに優れた、低アルコールビールテイスト飲料を提供することができる。」と記載されている。また、[0048]~[0056](摘記18A-6)には、「麦汁発酵液の製造」工程及び「脱アルコール麦汁発酵液の製造」工程を含む製造例1又は製造例2の方法により、「アルコール1%未満の脱アルコール麦汁発酵液を作成」し、得られたものを蒸留液1又は2とし、「フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンを定量し、それらの合計濃度として」「苦味系アミノ酸の濃度」を決定したことが記載されており、[0057]~[0061](摘記18A-7)には、「蒸留液1と蒸留液2とを所定の混合比率で混合することで、苦味系アミノ酸濃度及び真正エキス濃度を変化させた低アルコールビールテイスト飲料をそれぞれ1リットル、6種類製造した。」ことが記載されている。 そうすると、甲18A出願の当初明細書等には、請求項9等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。 「1v/v%未満のアルコール濃度を有する低アルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、 脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させる工程; フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンの合計濃度としての苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程;及び 低アルコールビールテイスト飲料の真正エキスの濃度を4~9w/w%に調節する工程; を包含する、方法。」(以下、「甲18A製法発明」という。) 「1v/v%未満のアルコール濃度を有する低アルコールビールテイスト飲料のコク感を増強し鉄味等を低減し、苦味のキレ感を改善してビールらしい香味バランスに優れたものとする方法であって、 脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させる工程; フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンの合計濃度としての苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程;及び 低アルコールビールテイスト飲料の真正エキスの濃度を4~9w/w%に調節する工程; を包含する、方法。」(以下、「甲18A方法発明」という。) (4)本件発明1について ア 本件発明1と甲18A製法発明との対比 本件発明1と甲18A製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲18A製法発明における「1v/v%未満のアルコール濃度を有する低アルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲18A製法発明における「脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させる工程;」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、」を満たす。さらに、甲18A製法発明は、プロリンを糖液に添加する工程を必須の工程とはしておらず、甲18Aに記載された製造例1及び2([0048]及び[0054](摘記18A-4))もプロリンを糖液に添加する工程を有していないことを参酌すると、本件発明1における「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を満たすものといえる。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲18A-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A製法発明は、「フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンの合計濃度としての苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程」を含む点 相違点甲18A-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A製法発明はそのように特定されない点 相違点甲18A-3:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A製法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲18A-3について検討する。 イ 相違点甲18A-3について 甲18Aには、低アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量は記載されておらず、また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲18A製法発明で製造される低アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を特定することはできない。さらに、本件特許に係る出願の優先日当時における技術常識を参酌しても、甲18A製法発明で製造される低アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量が相違点甲18A-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されていたとはいえない。よって、相違点甲18A-3は実質的な相違点である。 ウ 申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aの119頁において、カプリン酸は通常のビール中には0.4~1.4ppm程度含まれており、高濃度ではオフフレーバーの原因になることも知られていること(甲8A)、脱アルコール工程で揮発した香気成分を脱アルコールに戻す方法によりカプリン酸の含有量を調整することは一般的に行われており(甲13A、甲14A、甲16)、ノンアルコールビール等にカプリン酸を含むフレーバーを添加して香味改善を行うことが技術常識であり(甲15A)、カプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整することに困難性はないから、相違点甲18A-3は甲18A製法発明に周知技術を付加するものであり、また、本件明細書に記載された効果は、新たな効果を奏するものではないと主張している。 しかし、甲8Aに記載された「市販ビール」は、甲18A製法発明における「低アルコールビールテイスト飲料」とは異なる商品であるから、甲18A製法発明におけるカプリン酸の含有量が甲8Aに記載された「市販ビール」における含有量と同じ量に調整されているとはいえない。また、甲18Aの[0006]~[0007](摘記18A-2)及び[0030]~[0031](摘記18A-5)には、甲18A製法発明が「ビールテイスト飲料に脱アルコール処理を施すことでアルコール分を除いて低アルコール化を図った場合、得られる低アルコールビールテイスト飲料には、コク感が不足して鉄味及び納豆臭味が目立ち、また、飲用後に苦味が残ってビールらしい香味バランスが損なわれる、という問題」を解決しようとするものであり、その解決手段として、「苦味系アミノ酸が呈する苦味は、同様に原料分解物に由来する甘味、酸味、及びうま味と調和して、低アルコールビールテイスト飲料の味に厚み、コク感又は複雑感を与える要因である。苦味系アミノ酸が呈する苦味は後を引かず、低アルコールビールテイスト飲料の飲用後は、認識されにくい」ことに着目し、「苦味系アミノ酸の濃度」を「10~60mg/100ml」に調整したものであることが記載されているところ、そのような製造方法を前提としない甲13Aに記載された13種類のビールの風味物質、甲14Aに記載された40種類の「ビールの主要香気成分」、及び甲15Aに記載された44成分からなるビールフレーバーを、甲18A製法発明にそのまま適用することが、本件特許に係る出願の優先日当時における周知技術であったとは認められず、まして、多数の化合物の中から特にカプリン酸に着目し「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の含有量になるよう添加することが周知技術であったともいえない。さらに、甲16Aにはカプリン酸について何ら記載されていない。加えて、他の全ての証拠の記載及びを参照しても、甲18A製法発明において、特にカプリン酸の含有量に着目し、その含有量を「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することが、本件特許に係る出願の優先日当時における周知技術であったとは認められない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 そうすると、相違点甲18A-3は、単なる周知慣用技術の付加とはいえず、実質的な相違点である。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲18A製法発明と同一ではない。 (5)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(4)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲18A製法発明と同一ではない。 (6)本件発明6について ア 本件発明6と甲18A方法発明との対比 本件発明1と甲18A製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲18A方法発明とを対比する。甲18A方法発明における「1v/v%未満のアルコール濃度を有する低アルコールビールテイスト飲料のコク感を増強し鉄味等を低減し、苦味のキレ感を改善してビールらしい香味バランスに優れたものとする方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」 の点で一致し、 相違点甲18A’-1:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A方法発明は、「フェニルアラニン、チロシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンの合計濃度としての苦味系アミノ酸の含有量を10~60mg/100mlに調節する工程」を含む点 相違点甲18A’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A方法発明はそのように特定されない点 相違点甲18A’-3:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲18A方法発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲18A’-3について検討する。 イ 相違点甲18A’-3について 相違点甲18A’-3は、実質的に相違点甲18A-3と同じ内容の相違点であるから、上記(4)イと同様に判断される。よって、相違点甲18A’-3は実質的な相違点である。。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲18A方法発明と同一ではない。 (7)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(6)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲18A方法発明と同一ではない。 (8)理由3A(甲18Aに基づく拡大先願)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7は、いずれも甲18A出願の当初明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3A(甲18Aに基づく拡大先願)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 6.理由1B-2(甲2Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-2(甲2Bに基づく進歩性欠如)について (1)甲2Bに記載された事項 甲2Bには以下の事項が記載されている。本文は日本語訳で示す。 (2B-1)「ビール中の遊離アミノ酸の迅速で簡単な測定」(1/9頁表題) (2B-2)「ビールの醸造においてマッシング工程で抽出される液体であるビール麦汁の組成は、製造工程で使用される原材料と醸造スタイルに大きく依存する。 仕込み水、ホップや大麦の品質や特性はコントロールできても、環境的な影響によって構成成分の濃度がわずかに変化し、その結果品質も変化する。特定のアミノ酸がオフフレーバーの形成に寄与する一方で、他のアミノ酸がコクや飲みやすさに好影響を与えることは立証されている。さらに、発酵の窒素源としてのアミノ酸の重要性は議論の余地がない。」(2/9頁2~13行) (2B-3)「異なるメーカーの異なるタイプと種類のビール5種類をテストプローブとしてサンプリングした。これには、アルコールフリーのピルスと小麦ビール、アルコールを含むピルスと小麦ビール、ドイツ・デュッセルドルフ地方のアルトビールが含まれる。」(3/9頁3~6行) (2B-4)「5種類のビールサンプルのアミノ酸含有量を測定し、表1に示した。図4は、アミノ酸混合標準溶液の典型的な高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-MS)クロマトグラムである。ビールによってアミノ酸パターンが異なる。全アミノ酸含量が最も高いのはアルコールフリーのビールで(8074μmol/Lと7117.6μmol/L)、次いでピルス(6910μmol/L)であった。遊離アミノ酸量が最も少なかったのは小麦ビール(5238μmol/L)であった。測定された38種類の検査対象のうち、11種類のアミノ酸の濃度が、アルコールフリーの小麦ビールで、他のサンプルよりも有意に高かった。これらは、3つの独特な味のグループに分けられる:苦味アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、バリン、メチオニン)、甘味アミノ酸(セリン、スレオニン、アラニン)、酸味、うま味アミノ酸(アスパラギン酸とグルタミン酸)。5種のすべてのビールサンプルで最も多く含まれていたアミノ酸は、アラニン(242-744μmol/L)とプロリン(1943-3402μmol/L)であった。これは、プロリンは発酵の過程で酵母に吸収されないという知見と一致する。」(4/9頁2~21行) (2B-5)「 [図:0001430028000003.jpg] 表1:ビール試料中のアミノ酸測定結果(濃度 μmol/L)」(4/9頁表1及びその表題) (2)甲2Bに記載された発明 甲2Bは、「ビール中の遊離アミノ酸の迅速で簡単な測定」という表題(摘記2B-1)の論文であり、2/9頁6~12行(摘記2B-2)には、「特定のアミノ酸がオフフレーバーの形成に寄与する一方で、他のアミノ酸がコクや飲みやすさに好影響を与えることは立証されている。」ことが記載されている。また、3/9頁3~6行(摘記2B-3)には、「異なるメーカーの異なるタイプと種類のビール5種類をテストプローブとしてサンプリングした。これには、アルコールフリーのピルスと小麦ビール、アルコールを含むピルスと小麦ビール、ドイツ・デュッセルドルフ地方のアルトビールが含まれる。」と記載され、4/9頁10~17行には、「測定された38種類の検査対象のうち、11種類のアミノ酸の濃度が、アルコールフリーの小麦ビールで、他のサンプルよりも有意に高かった。これらは、3つの独特な味のグループに分けられる:苦味アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、バリン、メチオニン)、甘味アミノ酸(セリン、スレオニン、アラニン)、酸味、うま味アミノ酸(アスパラギン酸とグルタミン酸)。」と記載され、4/9頁の表1:ビール試料中のアミノ酸測定結果(濃度μmol/L)(摘記2B-5)を参照すると、「ノンアルコール小麦ビール」の列の「メチオニン」は「99.4」であることが読み取れる。 そうすると、甲2Bには「ノンアルコール小麦ビール」のアミノ酸測定結果等に基づいて以下の発明が記載されている。 「ノンアルコール小麦ビールの製造方法であって、メチオニンの含有量を99.4μmol/Lに調整する工程を含む方法。」(以下、「甲2B製法発明」という。) 「ノンアルコール小麦ビールの苦味アミノ酸、甘味アミノ酸及び酸味、うま味アミノ酸の濃度を高くする方法であって、メチオニンの含有量を99.4μmol/Lに調整する工程を含む方法。」(以下、「甲2B方法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲2B製法発明との対比 本件発明1と甲2B製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するところ、甲2Bには「ノンアルコール小麦ビール」のアルコール濃度が記載されていないから、甲2B製法発明における「ノンアルコール小麦ビールの製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」と、「ビールテイスト飲料を製造する方法であって、」である限りにおいて一致する。また、甲2B製法発明における「メチオニンの含有量を99.4μmol/Lに調整する工程」は、メチオニンの分子量を149.21として含有量をppm単位に換算すると、149.21×99.4×10-6g/L=約14.83ppmであるから、本件発明1における「メチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」に相当する。 そうすると、両者は、 「ビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含む、方法。」 の点で一致し、 相違点甲2B-1:本件発明1はアルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満の「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法」と特定するのに対し、甲2B製法発明はアルコール濃度不明の「ノンアルコール小麦ビールの製造方法」である点 相違点甲2B-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲2B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B-3:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲2B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B-4:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲2B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B-5:本件発明1は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」と特定するのに対し、甲2B製法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲2B-3について検討する。 イ 相違点甲2B-3について 甲2Bには、アミノ酸測定のためにサンプリングされた「異なるメーカーの異なるタイプと種類のビール5種類について、カプリン酸含有量を測定したことは記載されておらず、それらサンプルのメーカー名や銘柄名も記載されていないから、甲2B及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲2B製法発明におけるノンアルコール小麦ビール中のカプリン酸の含有量を特定することはできない。よって、相違点甲2B-3は実質的な相違点である。 また、甲2Bには、ノンアルコール小麦ビールにおけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲2Bに記載されたノンアルコール小麦ビールにおいて、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲2B-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲2B-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2B製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bの38~39頁において、以下のように主張している。 (ア)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、脱アルコールビールであるノンアルコール小麦ビールのカプリン酸含有量は0.01ppm以上5ppm以下に調整されている蓋然性が高い。 (イ)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、当業者であれば非アルコールビールテイスト飲料の雑味を低減する目的でカプリン酸量を調整してみることは容易であり、非アルコールビールテイスト飲料中のメチオニン、リナロール、カプリン酸の含有量を本件発明1の範囲に調整することで、顕著な効果が得られるとは認められない。 (ア)の主張について 甲2Bの記載を参酌しても、甲2B製法発明における「ノンアルコール小麦ビールの製造方法」は、甲6Bの表7左欄に記載された成分を含有するビールを原料とするものとはいえず、甲6Bに記載された透析を用いる方法で脱アルコール化する工程であるともいえない。また、甲2B製法発明における「ノンアルコール小麦ビールの製造方法」が、甲7Bの表1に記載されたいずれかのビールの製造工程(麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等)と一致する工程を含むものともいえない。 そうすると、上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)について検討したことと同様のことがいえるから、甲6B及び甲7Bの記載を根拠として甲2B製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲2B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲2B製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲2B-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 (イ)の主張について 上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)について検討したことと同様のことがいえるから、甲2B製法発明におけるカプリン酸の含有量を相違点甲2B-3に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2B製法発明ではなく、かつ、甲2B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5はいずれも甲2B製法発明ではなく、かつ、甲2B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明6について ア 本件発明6と甲2B方法発明との対比 本件発明1と甲2B製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲2B方法発明とを対比すると、両者は、 「ビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなる、方法。」 の点で一致し、 相違点甲2B’-1:本件発明6はアルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満の「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」と特定するのに対し、甲2B方法発明はアルコール濃度不明の「ノンアルコール小麦ビールの苦味アミノ酸、甘味アミノ酸及び酸味、うま味アミノ酸の濃度を高くする方法」である点 相違点甲2B’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲2B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B’-3:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲2B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B’-4:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲2B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲2B’-5:本件発明6は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」と特定するのに対し、甲2B方法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲2B’-3について検討する。 イ 相違点甲2B’-3について 相違点甲2B’-3は、実質的に相違点甲2B-3と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。よって、相違点甲2B’-3は実質的な相違点であり、かつ、相違点甲2B’-3に係る本件発明6の発明特定事項は、甲2B方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲2B方法発明ではなく、かつ、甲2B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲2B方法発明ではなく、かつ、甲2B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由1B-2(甲2Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-2(甲2Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~7は、いずれも甲2Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲2Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1B-2(甲2Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-2(甲2Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 7.理由1B-4(甲9Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-4(甲9Bに基づく進歩性欠如)について (1)甲9Bに記載された事項 甲9Bには以下の事項が記載されている。日本語訳で示す。 (9B-1)「本発明は、ノンアルコールビールを製造する逆浸透プロセスであり、ビール製造業界における逆浸透技術の応用に関する。・・・ 逆浸透法によるノンアルコールビールの製造は、アルコール度数を85%以上下げることができ、既存のビール製造工程を変更する必要がなく、ノンアルコールビールはビール本来の風味が維持され、美味しい味わいになる。」(フロント頁要約) (9B-2)「添付図に示すプロセスで、逆浸透膜によりノンアルコールビールを製造するパイロットテストを実施した。」(4頁24行) (9B-3)5頁の「表1 脱アルコール前後の物理的・化学的指標の分析」には、脱アルコール酒のアルコール度数が0.36%(v/v)であったことが記載されている。 (9B-4)5頁の「表2 脱アルコール前後の官能評価」には、脱アルコール酒の「香り」の評価が「ホップの香りがより顕著」であったこと、「味」の評価が「味は軽く、原酒本来の風味があり、新鮮さも良好。ホップの苦味、殺菌力は普通。」であったことが記載されている。 (9B-5)8頁の「表8 脱アルコール前後のアミノ酸分析(mg/L)」には、脱アルコール酒のメチオニン含有量が14.93mg/Lであったことが記載されている。 (2)甲9Bに記載された発明 甲9Bのフロント頁要約(摘記9B-1)には、「逆浸透法によるノンアルコールビールの製造は、アルコール度数を85%以上下げることができ、既存のビール製造工程を変更する必要がなく、ノンアルコールビールはビール本来の風味が維持され、美味しい味わいになる」ことが記載され、4頁24行(摘記9B-2)には、「添付図に示すプロセスで、逆浸透膜によりノンアルコールビールを製造するパイロットテストを実施した」ことが記載されている。そして、当該パイロットテストの結果に関し、5頁の「表1 脱アルコール前後の物理的・化学的指標の分析」(摘記9B-3)には、脱アルコール酒のアルコール度数が0.36%(v/v)であったことが記載され、5頁の「表2 脱アルコール前後の官能評価」(摘記9B-4)には、脱アルコール酒の「香り」の評価が「ホップの香りがより顕著」であったこと、「味」の評価が「味は軽く、原酒本来の風味があり、新鮮さも良好。ホップの苦味、殺菌力は普通。」であったことが記載され、8頁の「表8 脱アルコール前後のアミノ酸分析(mg/L)」(摘記9B-5)には、脱アルコール酒のメチオニン含有量が14.93mg/Lであったことが記載されている。 そうすると、甲9Bには、パイロットテストの結果等に基づいて以下の発明が記載されている。 「ホップの香りがより顕著で、味は軽く、原酒本来の風味があり、新鮮さも良好で、ホップの苦味、殺菌力は普通で、アルコール度数が0.36v/v%であるノンアルコールビールの製造方法であって、 既存のビール製造工程を変更する必要がなく、逆浸透膜による脱アルコール工程を有し、 メチオニンの含有量を14.93mg/Lに調整する工程を含む、方法。」(以下、「甲9B製法発明」という。) 「アルコール度数が0.36v/v%であるノンアルコールビールにおけるホップの香りをより顕著に、味は軽く、原酒本来の風味があり、新鮮さも良好で、ホップの苦味、殺菌力は普通にする方法であって、 既存のビール製造工程を変更する必要がなく、逆浸透膜による脱アルコール工程を有し、 メチオニンの含有量を14.93mg/Lに調整する工程を含む、方法。」(以下、「甲9B方法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲9B製法発明との対比 本件発明1と甲9B製法発明とを対比する。本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲9B製法発明における「アルコール度数が0.36v/v%であるノンアルコールビールの製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲9B製法発明における「メチオニンの含有量を14.93mg/Lに調整する工程を含む、」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」を有することに相当する。さらに、甲9B製法発明における「既存のビール製造工程を変更する必要がなく、逆浸透膜による脱アルコール工程を有し、」は、甲9B製法発明が、麦汁発酵工程を有する既存のビール製造工程と、逆浸透膜による脱アルコール工程とを有することを意味すると解されるから、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、」を満たすものといえる。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程を含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法。」 の点で一致し、 相違点甲9B-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲9B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲9B-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲9B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲9B-3:本件発明1は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」と特定するのに対し、甲9B製法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲9B-2について検討する。 イ 相違点甲9B-2について 甲9Bには、パイロットテストの結果得られたノンアルコールビールについて、カプリン酸含有量を測定したことは記載されておらず、また、甲9B及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲9B製法発明におけるノンアルコールビール中のカプリン酸の含有量を特定することはできない。よって、相違点甲9B-2は実質的な相違点である。 また、甲9Bには、ノンアルコールビールにおけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲9Bに記載されたノンアルコールビールにおいて、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲9B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲9B-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲9B製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bの49~50頁において、以下のように主張している。 (ア)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、脱アルコールビールにおけるカプリン酸含有量は0.01ppm以上5ppm以下に調整されている蓋然性が高い。 (イ)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、当業者であれば非アルコールビールテイスト飲料の雑味を低減する目的でカプリン酸量を調整してみることは容易であり、非アルコールビールテイスト飲料中のメチオニン、リナロール、カプリン酸の含有量を本件発明1の範囲に調整することで、顕著な効果が得られるとは認められない。 (ア)の主張について 甲9Bの記載を参酌しても、甲9B製法発明における「逆浸透膜による脱アルコール工程」は、甲6Bの表7左欄に記載された成分を含有するビールを原料とするものとはいえず、甲6Bに記載された透析を用いる方法と同じ条件で脱アルコール化する工程であるともいえない。また、甲9B製法発明における「逆浸透膜による脱アルコール工程」を受ける原料が、甲7Bの表1に記載されたいずれかのビールの製造工程(麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等)と一致する工程で製造されたものであるともいえない。 そうすると、上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)について検討したことと同様のことがいえるから、甲6B及び甲7Bの記載を根拠として甲9B製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲9B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲9B製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲9B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 (イ)の主張について 上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)について検討したことと同様のことがいえるから、甲9B製法発明におけるカプリン酸の含有量を相違点甲9B-2に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲9B製法発明ではなく、かつ、甲9B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明3~5はいずれも甲9B製法発明ではなく、かつ、本件発明2~5はいずれも甲9B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明6について ア 本件発明6と甲9B方法発明との対比 本件発明1と甲9B製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲9B方法発明とを対比する。甲9B方法発明における「アルコール度数が0.36v/v%であるノンアルコールビールにおけるホップの香りをより顕著に、味は軽く、原酒本来の風味があり、新鮮さも良好で、ホップの苦味、殺菌力は普通にする方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を750ppm以下に調整する工程を含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法。」 の点で一致し、 相違点甲9B’-1:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲9B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲9B’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲9B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲9B’-3:本件発明6は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法を除く)。」と特定するのに対し、甲9B方法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲9B’-2について検討する。 イ 相違点甲9B’-2について 相違点甲9B’-2は、実質的に相違点甲9B-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。よって、相違点甲9B’-2は実質的な相違点であり、かつ、相違点甲9B’-2に係る本件発明6の発明特定事項は、甲9B方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲9B方法発明ではなく、かつ、甲9B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲9B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由1B-4(甲9Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-4(甲9Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1及び3~6は、いずれも甲9Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲9Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1B-4(甲9Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-4(甲9Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 8.理由1B-5(甲10Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-5(甲10Bに基づく進歩性欠如)について (1)甲10Bに記載された事項 甲10Bには以下の事項が記載されている。日本語訳で示す。 (10B-1)「ノンアルコールビールとそのペールラガービールカウンターパートの包括的な分析及び官能プロファイリング」(p.385表題) (10B-2)「NABは、生物学的方法(エタノール生成を制限するために醸造工程を適合させる)、物理的方法(ビールからエタノールを除去する)、またはこの2つの組み合わせによって製造することができる。エタノール生成は、マッシングスキームの変更(6-8)、発酵パラメータの変更(9,10)、非サッカロミセス酵母株の使用(11-14)のいずれかによって制限することができる。エタノールの除去は通常、減圧蒸留/再蒸発(15,16)、落下/薄膜蒸発(17)、透析(18)、逆浸透(19,20)、浸透圧蒸留(21,22)、過蒸発などの熱または膜プロセスによって行われ、後者は主にアロマ回収に応用されている(2,23)。」(p.385左欄第2段落~右欄1行) (10B-3)「ビールサンプル ビールを以下の基準で選択した:1)ベルギー及びオランダ市場から入手しやすいビール、2)NABは0.0%(v/v)アルコールビールと表示されていること、3)NABと、従来のアルコール淡色ラガービールとは同じ醸造所で同じブランド名で製造されていること。これらの基準に基づいて7組の市販PLB(A-G)とNAB(A0-G0)を特定した。ガラス瓶入りのビールは、分析と官能評価まで0℃で保存した。」(p.386左欄下から9行~最終行) (10B-4)p.392の「表3 ノンアルコールビール(NAB)及びそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)中のアロマ化合物の濃度」には、脚注に「**A-Gは、市販の淡色ラガービール(PLA);A0-G0は、市販のノンアルコールビール(NAB)」、「***平均:二重測定(n=2)により得られた平均値;SD:標準偏差」と記載され、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のリナロールの濃度はそれぞれ15.7、17.1、20.4及び133mg/Lであったことが記載されている。 (10B-5)p.393の「表4 ノンアルコールビール(NAB)及びそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)中のアミノ酸濃度」には、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のメチオニンの濃度はそれぞれ10.0、17.7、10.0及び18.5mg/Lであったことが記載されている。 (10B-6)「NABとPLBの官能評価 NABとPLBをペアにした官能評価データを表8に示す。官能評価データセットにおける最大の変動を特定するために、主成分分析(PCA)を適用し、その結果を図3に示す。すべてのビールにおいて、「sulphury硫黄感」、「freshness/aged新鮮さ/熟成感」、「butterバター感」、「acid酸味」、「astringent渋み」の官能評価項目は平均0を示し、これらのパラメータは主成分分析には含めなかった(表8)。図3では、PLBとNABはPC1に沿って明確に分離されている。PLBは「fullness豊潤さ」、「bitterness intensity苦味の強さ」、「bitterness quality苦味の質」の属性で高いスコアを示している一方、NABはD0を除いて、「sweeterより甘い」、「worty麦芽のような」、「watery水っぽい」ことがわかった。NAB(A0、E0、F0、G0)は、分析的にPLB(図1)と最も大きく異なり、官能評価においても最も顕著な違いを示した(PC1軸に沿ってPLBから最も離れた位置にある)。官能評価項目「fruityフルーティー」、「hoppyホッピー」、「maltyモルティー」は、NABグループ内で識別力があり、PC2に沿って分離している。E0とF0はプロットの右上象限に位置し、PLBと比較して「maltyモルティー」属性のスコアが高くなっている。一方、リナロールの高濃度(表3)と一致して、NAB B0とG0(表3参照)は、より顕著なhoppy/fruityホッピー/フルーティーな特徴を示している。統計解析(対応のあるt検定)の結果、NABでは「watery水っぽさ」(p = 1.5×10-5)、「sweet甘み」(p = 1.2×10-3)、「worty麦汁の風味」(p = 1.9×10-3)、「fruityフルーティー」(p = 2.6×10-3)といった特性が有意に高く評価されているのに対し、PLBでは「fullnessコク」(p = 4.7×10-5)と「bitterness intensity苦味の強さ」(p = 5.8×10-5)といった特性が有意に高いことが示された(表8)。これらの結果は、図3で観察された主要な官能評価の違いと一致している。」(p.396左欄下から5行~右欄下から7行) (10B-7)p.397の「表7 ノンアルコールビール(NAB)とそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)の標準分析」には、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のエタノールの濃度はそれぞれ0.02未満、0.02、0.02未満及び0.07%v/vであったことが記載されている。 (2)甲10Bに記載された発明 甲10Bのp.385表題(摘記10B-1)には、「ノンアルコールビールとそのペールラガービールカウンターパートの包括的な分析及び官能プロファイリング」という表題が記載されており、p.386左欄下から9行~最終行)(摘記10B-3)には、所定の「基準に基づいて7組の市販PLB(A-G)とNAB(A0-G0)を特定した」ことが記載されている。また、p.392の「表3 ノンアルコールビール(NAB)及びそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)中のアロマ化合物の濃度」(摘記10B-4)には、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のリナロールの濃度がそれぞれ15.7、17.1、20.4及び133mg/Lであったことが記載され、p.393の「表4 ノンアルコールビール(NAB)及びそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)中のアミノ酸濃度」(摘記10B-5)には、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のメチオニンの濃度がそれぞれ10.0、17.7、10.0及び18.5mg/Lであったことが記載され、p.397の「表7 ノンアルコールビール(NAB)とそれらに対応する淡色ラガービール(PLB)の標準分析」(摘記10B-7)には、市販のノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0のエタノールの濃度はそれぞれ0.02未満、0.02、0.02未満及び0.07%v/vであったことが記載されている。さらに、p.396右欄下から13行~下から7行(摘記10B-6)には、「統計解析(対応のあるt検定)の結果、NABでは「watery水っぽさ」(p = 1.5×10-5)、「sweet甘み」(p = 1.2×10-3)、「worty麦汁の風味」(p = 1.9×10-3)、「fruityフルーティー」(p = 2.6×10-3)といった特性が有意に高く評価されているのに対し、PLBでは「fullnessコク」(p = 4.7×10-5)と「bitterness intensity苦味の強さ」(p = 5.8×10-5)といった特性が有意に高いことが示された(表8)」と記載されている。 そうすると、甲10Bには、ノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0の包括的な分析及び官能プロファイリングの結果等に基づいて以下の発明が記載されている。 「エタノール濃度が0.02v/v%未満又は0.07v/v%であるノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0の製造方法であって、メチオニン濃度を10.0、17.7、10.0又は18.5ppmに調整し、リナロール濃度を15.7、17.1、20.4又は133ppbに調整する工程を含む、方法。」(以下、「甲10B製法発明」という。) 「エタノール濃度が0.02v/v%未満又は0.07v/v%であるノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0のwatery、sweet、worty及びfruityの官能評価を対応する淡色ビールより高める方法であって、メチオニン濃度を10.0、17.7、10.0又は18.5ppmに調整し、リナロール濃度を15.7、17.1、20.4又は133ppbに調整する工程を含む、方法。」(以下、「甲10B方法発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲10B製法発明との対比 本件明細書の[0012]の記載を参酌すると、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料」は、「アルコール(エタノール)濃度が1%(v/v)未満のビールテイスト飲料を意味するから、甲10B製法発明における「エタノール濃度が0.02v/v%未満又は0.07v/v%であるノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0の製造方法であって、」は、本件発明1における「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、」に相当する。また、甲10B製法発明における「メチオニン濃度を10.0、17.7、10.0又は18.5ppmに調整し、」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程」に相当し、甲10B製法発明における「リナロール濃度を15.7、17.1、20.4又は133ppbに調整する工程」は、本件発明1における「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程」に相当する。 そうすると、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程とを含む、方法。」 の点で一致し、 相違点甲10B-1:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲10B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲10B-2:本件発明1は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲10B製法発明はそのように特定されない点 相違点甲10B-3:本件発明1は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」と特定するのに対し、甲10B製法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、相違点甲10B-1について検討する。 イ 相違点甲10B-1について 甲10Bには、ノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0について、カプリン酸含有量を測定したことは記載されておらず、また、甲10B及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲10B製法発明におけるノンアルコールビールC0、E0、F0及びG0中のカプリン酸の含有量を特定することはできない。よって、相違点甲10B-1は実質的な相違点である。 また、甲10Bには、ノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0におけるカプリン酸の含有量に着目する記載はなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲10Bに記載されたノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0において、カプリン酸の含有量に着目し、さらにその含有量を相違点甲10B-1に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲10B-1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲10B製法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bの54~55頁において、以下のように主張している。 (ア)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、脱アルコールビールにおけるカプリン酸含有量は0.01ppm以上5ppm以下である蓋然性が高い。 (イ)上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)に記載した甲6B及び甲7Bに基づく主張と同様のことがいえるから、当業者であれば非アルコールビールテイスト飲料の雑味を低減する目的でカプリン酸量を調整してみることは容易であり、非アルコールビールテイスト飲料中のメチオニン、リナロール、カプリン酸の含有量を本件発明1の範囲に調整することで、顕著な効果が得られるとは認められない。 (ア)の主張について 甲10Bの記載を参酌しても、甲10B製法発明における「メチオニン濃度を10.0、17.7、10.0又は18.5ppmに調整し、リナロール濃度を15.7、17.1、20.4又は133ppbに調整する工程」が、甲6Bの表7左欄に記載された成分を含有するビールを原料として行われるものとはいえず、甲6Bに記載された透析を用いる方法で脱アルコール化する工程と同じ工程であるともいえない。また、甲10B製法発明における「メチオニン濃度を10.0、17.7、10.0又は18.5ppmに調整し、リナロール濃度を15.7、17.1、20.4又は133ppbに調整する工程」を受ける原料が、甲7Bの表1に記載されたいずれかのビールの製造工程(麦汁組成、麦汁の清澄度、酵母菌株、発酵条件等)と一致する工程で製造されたものであるともいえない。 そうすると、上記1.(1)ウ(ウ)b.の(a)について検討したことと同様のことがいえるから、甲6B及び甲7Bの記載を根拠として甲10B製法発明においてカプリン酸含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整した蓋然性が高いとはいえない。 また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲10B製法発明における脱アルコール後のカプリン酸含有量を算出する根拠は見いだせないから、甲10B製法発明において、カプリン酸の含有量が相違点甲10B-1に係る「0.01ppm以上5ppm以下」に調整されている蓋然性が高いとはいえない。 (イ)の主張について 上記1.(1)ウ(ウ)b.の(b)について検討したことと同様のことがいえるから、甲10B製法発明におけるカプリン酸の含有量を相違点甲10B-1に係る「0.01ppm以上5ppm以下」という特定の範囲に調整することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。 そして、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量を特定の範囲に調整する工程を備える本件発明1が「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減することが可能となる」及び「後味の不調和を低減することも可能である」との効果を発揮することは、当業者が予測できたこととはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲10B製法発明ではなく、かつ、甲10B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~5について 本件発明2~5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明3~5はいずれも甲10B製法発明ではなく、かつ、本件発明2~5はいずれも甲10B製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明6について ア 本件発明6と甲10B方法発明との対比 本件発明1と甲10B製法発明との対比を踏まえ、本件発明6と甲10B方法発明とを対比する。甲10B方法発明における「エタノール濃度が0.02v/v%未満又は0.07v/v%であるノンアルコールビールC0、E0、F0又はG0のwatery、sweet、worty及びfruityの官能評価を対応する淡色ビールより高める方法」は、本件発明6における、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法」に相当するから、両者は、 「非アルコールビールテイスト飲料における雑味または後味の不調和を低減する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程とを含む、方法。」 の点で一致し、 相違点甲10B’-1:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程」を含むと特定するのに対し、甲10B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲10B’-2:本件発明6は「前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである」と特定するのに対し、甲10B方法発明はそのように特定されない点 相違点甲10B’-3:本件発明6は「方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」と特定するのに対し、甲10B方法発明はそのような方法か明らかでない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲10B’-1について検討する。 イ 相違点甲10B’-1について 相違点甲10B’-1は、実質的に相違点甲10B-1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。よって、相違点甲10B’-1は実質的な相違点であり、かつ、相違点甲10B’-1に係る本件発明6の発明特定事項は、甲10B方法発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明6についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲9B方法発明ではなく、かつ、甲9B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、請求項6を引用し、本件発明6の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)で検討した本件発明6と同様の理由により、本件発明7は甲10B方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)理由1B-5(甲10Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-5(甲10Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1及び3~6は、いずれも甲10Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~7は、いずれも甲10Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1B-5(甲10Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-5(甲10Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 9.理由5A及び理由3B(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件発明の課題について 本件明細書の[0002]~[0007]等の記載からみて、本件発明1~5の課題は「雑味が低減された非アルコールビールテイスト飲料の製造方法の提供にあり、本件発明6及び7の課題は「非アルコールビールテイスト飲料の雑味または後味の不調和を低減する方法」の提供にあるものと認められる。 (3)本件明細書の記載事項 本件明細書の[0002]~[0006]、[0009]及び[0010]には、「非アルコールビールテイスト飲料には、アルコール濃度が低いことに起因して、様々な香味バランス上の問題」があるところ、本件発明は、「非アルコールビールテイスト飲料において、雑味や後味の不調和がある」という問題に対し、「メチオニンの濃度を調整することにより、非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減できることを見出した」ものであり、「後味の不調和を低減することも可能」であり、「麦汁の発酵工程を経て得られたアルコール度数0.00v/v%の非アルコールビールテイスト飲料においても雑味や後味の不調和の低減を可能とする点で特に有利」なものであることが記載されている。 また、[0016]には、「本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、該非アルコールビールテイスト飲料の製造過程において、メチオニンの含有量を調整することにより製造することができる。また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料の製造過程において、リナロールおよび/またはカプリン酸の含有量も調整される」ことが記載されており、[0017]には、それら成分の含有量の具体的な調整方法が記載され、[0018]には、「本発明の非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニン含有量の下限値は2ppmとされ、・・・メチオニン含有量の上限値は1000ppm・・・とされる」ことが記載され、[0020]には、「本発明の好ましい実施態様における本発明の非アルコールビールテイスト飲料中のリナロールの含有量は、0.1ppb以上、より好ましくは0.2ppb以上、さらに好ましくは0.5ppb以上、さらに好ましくは1ppb以上・・・とされ、3000ppb以下、・・・とされる」ことが記載され、[0022]には、「本発明の好ましい実施態様における本発明の非アルコールビールテイスト飲料中のカプリン酸の含有量は、0.01ppm以上・・・とされ、10ppm以下・・・とされる」ことが記載されている。 さらに、[0029]~[0031]には、「本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、麦芽を原料とする非アルコールビールテイスト飲料」とされ、「本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、麦汁の発酵工程を経て得られた非アルコールビールテイスト飲料とされる」ことが記載され、その製造方法について[0031]には、「本発明の非アルコールビールテイスト飲料は、当技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階でメチオニンの含有量を調整することによって製造することができる」こと、及び「このような一般的な方法としては、ビール等の発酵麦芽飲料を製造した後、得られた発酵麦芽飲料からアルコールを除去する方法も挙げられる」ことが記載され、麦汁の調製工程及び濾過工程を含む具体的な製造工程及び発酵麦芽飲料からアルコールを除去する具体的な方法についても記載されている。 加えて、[0032]~[0034]には、「非アルコールビールテイスト飲料における雑味を低減する方法」及び「非アルコールビールテイスト飲料における後味の不調和を低減する方法」について、いずれも「前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上に調整する工程を含んでなる」ことが記載されている。 そして、[0034]~[0046]には実施例が記載されており、[0035]~[0043]には、「アルコール濃度0.0005v/v%、糖質濃度5.0g/100ml未満、エキス分3.4度の脱アルコール麦汁発酵液を得」て、「この脱アルコール麦汁発酵液を、ベース飲料サンプルとして用い」、「ベース飲料サンプルに対して、下記の表に記載の濃度となるよう、メチオニン、リナロールまたはカプリン酸を添加」し、「訓練された6名のパネルによる官能評価を行った」こと、「官能評価の評価項目は、「雑味」(飲料を飲んだ直後に感じるえぐみや渋み等の排除すべき味の強さの度合い)、「後味の不調和」(飲料を飲んだ後に不自然な後味が続く度合い)および「嗜好飲料としてのバランス」(雑味・後味の不調和に加え、五味や香気のバランスがとれていること)とし、「メチオニンを含有せず、リナロール0.01ppb、カプリン酸0.004ppmを含有する調合ベース飲料サンプルの評価スコアを1に固定し、メチオニン4.5ppm、リナロール0.1ppb、およびカプリン酸0.01ppmを含有する飲料サンプルの評価スコアを7に固定」し、官能評価を行ったことが記載されており、[0045]には、メチオニンの含有量を0.0~1500ppm、リナロールの含有量を0.10ppb、カプリン酸の含有量を0.004ppmとした試験1、メチオニンの含有量を4.5ppm又は1000ppm、リナロールの含有量を0.01~300ppb、カプリン酸の含有量を0.004ppmとした試験2、メチオニンの含有量を4.5ppm又は1000ppm、リナロールの含有量を0.01ppb、カプリン酸の含有量を0.004~10ppmとした試験3、及びメチオニンの含有量を4.5ppm、リナロールの含有量を0.10ppb、カプリン酸の含有量を0.010ppmとした試験4の官能評価結果が記載され、[0046]には、「試験1の結果から、メチオニンは雑味および後味の不調和を低減する効果を奏することが明らかとなり、特に、4.5ppm以上の濃度で効果が顕著となることがわかった。次に、試験2の結果から、メチオニンに加えて、リナロールの濃度を0.1ppb以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。また、試験3の結果から、メチオニンに加えて、カプリン酸の濃度を0.01ppm以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。さらに、試験4の結果から、メチオニン、リナロールおよびカプリン酸の組み合わせの濃度調整により、雑味および後味の不調和を低減することがさらに低減し、嗜好飲料としてバランスもさらに向上することがわかった。」と記載されている。 (4)サポート要件についての判断 本件明細書の一般記載から、当業者はメチオニンを所定の濃度範囲で含み、好ましい実施態様ではリナロール及びカプリン酸を所定の濃度でさらに含むように、麦汁の調製工程及び濾過工程を含む一般的な発酵麦芽飲料の製造方法、及び得られた発酵麦芽飲料からアルコールを除去する方法を用いて非アルコールビールテイスト飲料を製造することにより、非アルコールビールテイスト飲料における雑味及び後味の不調和を低減することができると理解する。 また、実施例の試験1の官能評価結果から、メチオニンの含有量が4.5~500ppmである試験区2~4は、メチオニンの含有量が0.0ppmである試験区1並びに1000及び1500ppmである試験区5及び6より雑味が弱く、後味の不調和が弱く、嗜好飲料としてのバランスが良いこと、試験2の官能評価結果から、メチオニンの含有量が4.5又は1000ppmであり、リナロールの含有量が0.10~300ppbである試験区7~11及び12~16は、リナロールの含有量が0.01ppbである試験区2及び5より雑味が弱く、後味の不調和が弱く(試験区11を除く)、嗜好飲料としてのバランスが良い(試験区11を除く)こと、試験3の官能評価結果から、メチオニンの含有量が4.5又は1000ppmであり、リナロールの含有量が0.01ppbであり、カプリン酸の含有量が0.010~5ppmである試験区17~20及び22~25は、カプリン酸の含有量が0.004ppmである試験区2及び5並びに10ppmである試験区21及び26より雑味が弱く、後味の不調和が弱く、嗜好飲料としてのバランスが良いことを確認できるから、[0046]に記載されているとおり、「試験1の結果から、メチオニンは雑味および後味の不調和を低減する効果を奏することが明らかとなり、特に、4.5ppm以上の濃度で効果が顕著となることがわかった。次に、試験2の結果から、メチオニンに加えて、リナロールの濃度を0.1ppb以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。また、試験3の結果から、メチオニンに加えて、カプリン酸の濃度を0.01ppm以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。さらに、試験4の結果から、メチオニン、リナロールおよびカプリン酸の組み合わせの濃度調整により、雑味および後味の不調和を低減することがさらに低減し、嗜好飲料としてバランスもさらに向上することがわかった。」といえると理解することができ、したがって、一般記載において好ましいとされる範囲にメチオニンの含有量を調整する工程を含む非アルコールビールテイスト飲料の製造方法により、雑味及び後味の不調和を低減することができること、さらに一般記載において好ましいとされる範囲にリナロール及びカプリン酸の含有量を調整する工程を加えることにより、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、いずれも発明の課題を解決できると理解することができる。 そうすると、当業者は、 「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上1000ppm以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程とを含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法。」 の範囲で本件発明の課題が解決されるものと理解することができる。そして、本件発明1は、上記課題を解決し得る発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~5も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。また、本件発明1と同様の工程を備える本件発明6、及び請求項6を引用する本件発明7についても同様のことがいえる。 (5)申立人A及びBの主張について 申立人Aは申立書Aにおいて上記第3 1.(8)のように、また、申立人Bは申立書Bにおいて上記第3 2.(11)のように主張しており、いずれも、試験区27と同様の官能評価結果が本件発明1~7の全範囲においては得られない旨を主張している。 しかし、本件明細書の実施例の記載に接した当業者は、試験区1を評価スコア1の基準とする試験1の官能評価結果から、メチオニンの含有量を0.0~1500ppmの間で変化させたときの官能評価の変化の傾向を読み取ることができ、試験2の官能評価結果から、リナロールの含有量を0.01~300ppbの間で変化させたときの官能評価の変化の傾向を読み取ることができ、試験3の官能評価結果から、カプリン酸の含有量を0.004~10ppmの間で変化させたときの官能評価の変化の傾向を読み取ることができるから、上記(4)に記載したとおり、本件明細書の[0046]に記載されているとおりの「試験1の結果から、メチオニンは雑味および後味の不調和を低減する効果を奏することが明らかとなり、特に、4.5ppm以上の濃度で効果が顕著となることがわかった。次に、試験2の結果から、メチオニンに加えて、リナロールの濃度を0.1ppb以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。また、試験3の結果から、メチオニンに加えて、カプリン酸の濃度を0.01ppm以上に調整すると、雑味および後味の不調和を低減する効果がより顕著になり、嗜好飲料としてのバランスも向上することがわかった。」という傾向を把握することができる。そして、「メチオニン、リナロールおよびカプリン酸の組み合わせ」の濃度調整がされた、本件発明1の実施例に相当する試験4(メチオニンの含有量は4.5ppm、リナロールの含有量は0.1ppb、カプリン酸の含有量は0.010ppm)の官能評価結果(スコア7)は、上記の傾向と矛盾することなく、さらなる雑味及び後味の不調和の低減が達成されているから、当業者は、メチオニン、リナロール及びカプリン酸の三成分の含有量を本件明細書の[0018]、[0020]及び[0022]に記載された好ましいとされる範囲に調整した場合には、試験4と同様、[0046]に記載されているとおり、試験区1(評価スコア1)に対して「雑味および後味の不調和を低減することがさらに低減し、嗜好飲料としてバランスもさらに向上」し、発明の課題を解決することができると認識することができる。 よって、申立人A及びBの主張を採用することはできない。 (6)理由5A及び理由3B(サポート要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~7は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、理由5A及び理由3B(サポート要件違反)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 10.理由4A(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断手法 物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 また、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 (2)本件明細書の記載について 本件明細書には、上記9.(3)に記載した事項が記載されている。 (3)実施可能要件についての判断 当業者は、本件明細書におけるメチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量の好ましい範囲の記載、[0017]におけるそれらの含有量の調整方法についての記載、[0029]~[0031]における発酵麦芽飲料の製造方法、及び発酵麦芽飲料からアルコールを除去し非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法についての記載、並びに実施例におけるベース飲料サンプルの製造とメチオニン、リナロール及びカプリン酸の含有量調整方法についての記載を参照することにより、「非アルコールビールテイスト飲料を製造する方法であって、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるメチオニンの含有量を2ppm以上750ppm以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるリナロールの含有量を0.1ppb以上300ppb以下に調整する工程と、前記非アルコールビールテイスト飲料におけるカプリン酸の含有量を0.01ppm以上5ppm以下に調整する工程とを含んでなり、かつ、前記非アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液を原料とするものである、方法(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)。」を使用して、非アルコールビールテイスト飲料を製造することができ、また、製造されたものを雑味が低減された非アルコールビールテイスト飲料として飲食に使用することができることを理解することができる。 そうすると、本件明細書には本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定される本件発明2~5についても同様の記載があるといえる。また、本件発明1と同様の工程を備える本件発明6、及び請求項6を引用する本件発明7についても同様に、当業者が本件発明6、7の方法を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。 (4)申立人Aの主張について 申立人Aは申立書Aにおいて上記第3 1.(7)のように主張している。 しかし、上記(3)に記載したとおり、本件明細書には、当業者が本件発明1~5に係る製造方法を使用できる程度の原料及び一般的な製造方法に関する記載があり、実施例も記載されている。そして、実施例の官能評価結果等も参酌すると、本件発明1~5に係る製造方法を使用して製造された非アルコールビールテイスト飲料を、雑味の改善されたされた非アルコールビールテイスト飲料として使用できるものと理解することができる。また、同様に、当業者は、本件発明6、7に係る工程を備えた方法を、非アルコールビールテイスト飲料における雑味又は後味の不調和を低減する方法として使用することができると理解することができる。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 (5)理由4A(実施可能要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は同号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、理由4A(実施可能要件違反)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 11.理由4B(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、 特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)本件発明1~7について 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は上記第2のとおりであり、請求項1~7の記載それ自体は明確といえる。また、後述するとおり、本件明細書における技術用語の定義又は説明によって、請求項1~7の記載が不明確になることもない。 よって、本件発明1~7については、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bにおいて上記第3 2.(12)のように主張している。 しかし、当業者は発泡性飲料の製造工程で用いられる糖液がどのようなものを意味するのか明確に理解できる。また、「プロリンを添加する」という記載は、添加するものが「プロリン」という化合物名で特定されているから、当業者はアミノ酸の一種であるプロリンを添加する意味であると明確に理解できる。よって、請求項1に記載された「プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法」がどのような製造方法であるかを当業者は明確に理解することができるから、「(但し、プロリンを糖液に添加する工程を有する、発泡性飲料の製造方法を除く)」との記載により本件発明1から除かれる範囲も明確であり、したがって、請求項1の記載は明確である。請求項1と同様の工程について記載する請求項6の記載も、請求項1と同様の理由により明確であり、請求項1又は6を直接又は間接的に引用して特定する請求項2~5及び7の記載も明確といえる。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 (4)理由4B(明確性要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~7は、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、その発明についての特許は同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、理由4B(明確性要件違反)により本件発明1~7についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~7についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700597

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