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特許異議申立

2023-701199

全固体二次電池

審判番号
2023-701199
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-028850
登録番号
7284773
請求日
2023年11月13日
審決日
2025年06月02日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三星エスディアイ株式会社
  • 【権利者代理人】松永 宣行
  • 【権利者代理人】辻 徹二
  • 【異議申立人】前田 洋志
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 岩間 直純
  • 審判官 篠原 功一
分類
P1651.537-YB (H01M) / P1651.536-YB (H01M) / P1651.121-YB (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7284773号発明「全固体二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7284773号の請求項1~17に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7284773号の請求項1~17に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)2月25日(パリ条約による優先権主張 2020年(令和2年)2月25日 (KR)韓国)の出願であって、令和5年5月23日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月31日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許1~17に対して、令和5年11月13日に特許異議申立人 前田 洋志(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議申立事件における以降の手続の経緯は、次のとおりである。 令和6年 2月28日付け:取消理由通知 令和6年 5月30日 :意見書の提出及び訂正の請求 令和6年 7月25日付け:訂正拒絶理由通知 令和6年11月20日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和7年 2月21日 :意見書の提出 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 請求の趣旨 令和6年5月30日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第7284773号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正の内容 本件訂正請求書に記載された訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「正極と、 負極と、 前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、を含み、 前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み、 前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含み、 前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である、全固体二次電池。」 と記載されているのを、 「正極と、 負極と、 前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、を含み、 前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み、 前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含み、 前記天然黒鉛は、400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度が1.9g/cm3以上である、全固体二次電池。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~17も同様に訂正する。) なお、前記訂正に係る訂正請求書では、前記訂正事項1の訂正前の記載に関し、 「特許請求の範囲の請求項1に 『正極と、 負極と、 前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、を含み、 前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛 を含み、 前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含み、 前記天然黒鉛は、400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度が1.9g/cm3以上である、全固体二次電池。』と記載されているのを、」 と記載されているが、前記摘記中の下線部は明らかな誤記であり、前記訂正事項1のとおりのものと認められる。 (2)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~17について、請求項2~17は訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項1を訂正するものである訂正事項1による訂正後の請求項1~17は一群の請求項を構成する。 3 訂正の適否 訂正事項1について、訂正の適否を検討する。 (1) 訂正事項1 訂正事項1は、「前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である」との記載を、「前記天然黒鉛は、400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度が1.9g/cm3以上である」とする訂正を含むものであるところ、この訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるかを検討する。 (2) 権利者の主張 権利者は令和6年5月30日に提出された意見書において、以下のとおり主張している。 「願書に添付した明細書の段落0078~0080には、全固体二次電池は、負極、正極、及び固体電解質の形成によって準備される積層体を加圧することで製造されること、この加圧は400ないし500MPaの範囲で行われることが記載される。積層体を加圧して固体二次電池を製造する際に、固体二次電池の負極に含まれる天然黒鉛にも同じ圧力が加圧される。この圧力により天然黒鉛のペレット密度を測定する際の加圧力の範囲が特定される。このことから、ペレット密度を測定する際の加圧力は、固体二次電池を製造する際の積層体への加圧力によって特定されることが明らかである。すなわち、ペレット密度の測定条件について「400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度」とする訂正は、新たな技術的事項を導入するものではない。 当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。」 (3) 当審の判断 ア 訂正前の請求項1は「前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である」との発明特定事項を含むものであるところ、訂正後の請求項1は「前記天然黒鉛は、400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度が1.9g/cm3以上である」とされ、当該発明特定事項に関し、ペレット密度が「400~500MPaの範囲で加圧した後に測定される」ことが特定された。 イ 一方、本件特許明細書等には以下の記載がある。 「【0078】 次に、一実施形態による全固体二次電池の製造方法について述べる。 【0079】 一実施形態による負極を形成する段階と、正極を形成する段階と、負極と正極との間に固体電解質を形成し、積層体を準備する段階と、積層体を加圧(press)する段階と、を含む。 【0080】 前述の加圧は、25ないし90℃の範囲で実施し、圧力は、550MPa以下、例えば、400ないし500MPa範囲で加圧し、全固体二次電池を完成する。加圧時間は、温度及び圧力などによっても異なり、例えば、30分未満である。そして該加圧は、例えば、静水圧(Isostatic press)、ロール加圧(roll press)または平板加圧(plate press)であってもよい。」 前記記載より、全固体二次電池の製造において、「負極を形成する段階」の後に、「積層体を準備する段階」と、「積層体を加圧(press)する段階」があり、当該加圧する段階において、「400ないし500MPa範囲で加圧し、全固体二次電池を完成する」ものであると認められる。 一方、天然黒鉛のペレット密度に関し、本件特許明細書等には、以下の記載がある 「【0020】 一実施形態において、天然黒鉛のペレット密度(pellet density)は、1.9g/cm3以上であってもよい。例えば、天然黒鉛のペレット密度は、1.9ないし2.5g/cm3であってもよい。 【0021】 前述の範囲を外れ、天然黒鉛のペレット密度が1.9g/cm3未満である場合、電池容量特性が良好ではない問題点があり、一方、天然黒鉛のペレット密度が2.5g/cm3を超える場合、リチウムイオンの吸蔵及び放出が不可能であるという問題点がある。」 「【0083】 <実施例1:天然黒鉛を使用したLi・Inトルクハーフセル製造> ペレット密度が1.93g/cm3であり、平均粒径(D50)が17μmである天然黒鉛60mg、カーボンブラック5mg、及び硫化物系固体電解質30mgを混合し、カーボンブラックがコーティングされた天然黒鉛を得た。 【0084】 硫化物系固体電解質100mgを用いて、電解質層をトルクセル中に製造し、電解質層上に、負極の合剤(10mg)を均一に広げておいた。 【0085】 反対側に、基準電極として、厚み70μmのリチウムインジウム合金(Li・In)を置き、40kNの圧力を印加した後、Liハーフセルを製造した。 (略) 【0096】 <実施例2:天然黒鉛を使用したLiハーフセル製造> ペレット密度が1.93g/cm3であり、平均粒径(D50)が17μmである天然黒鉛60mg、カーボンナノファイバ(CNF)5mg、及び硫化物系固体電解質30mgを混合し、カーボンナノファイバがコーテングされた天然黒鉛を得た。 【0097】 硫化物系固体電解質100mgを用いて、電解質層をトルクセル内に製造し、電解質層上に、負極の合剤(10mg)を均一に広げておいた。 【0098】 反対側に、基準電極として、厚み70μmのリチウムインジウム合金(Li・In)を置き、40kNの圧力を印加した後、Liハーフセルを製造した。 【0099】 <実施例3> ペレット密度が1.83g/cm3であり、平均粒径(D50)が16.2μmである天然黒鉛を使用したことを除いては、実施例2と同一方法でハーフセルを製造した。 【0100】 <実施例4> ペレット密度が1.87g/cm3であり、平均粒径(D50)が17μmである天然黒鉛を使用したことを除いては、実施例2と同一方法でハーフセルを製造した。 【0101】 <比較例7> ペレット密度が1.9g/cm3であり、平均粒径(D50)が7.7μmである天然黒鉛を使用したことを除いては、実施例2と同一方法でハーフセルを製造した。 (略) 【0106】 表2によると、同一の非晶質炭素コーティング層を含む天然黒鉛を使用しても、平均粒径(D50)や、ペレット密度の差により、容量特性と効率特性とが異なることを確認することができる。 【0107】 <実施例6:天然黒鉛/負極バインダを使用したフルセル製造> (負極の製造) CVD(chemical vapor deposition)方法を用いて、3%濃度のカーボンブラックがコーティングされたペレット密度が1.93g/cm3であり、平均粒径(D50)が17μmである天然黒鉛を得た。 【0108】 コーティングされた天然黒鉛、硫化物系固体電解質、及びガラス転移温度(Tg)が-35℃のバインダであるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を、80/20/2の重量比で混合し、負極スラリーを製造した。 【0109】 負極スラリーを、負極集電体である銅集電体(厚み:約10μm)上に、約120μm厚にコーティングして負極を製造した。 (略) 【0114】 (フルセルの製造) 負極、固体電解質(アルジロダイトシート、厚み(60~70μm))及び正極の順に積層し、それをポーチに真空包装し、400~550MPaの静水圧プレス(WIP:warm isostatic press)で加圧し、負極/固体電解質/正極のフルセルを製造した。」 ウ 前記摘記から理解されるように、本件特許明細書等には、天然黒鉛のペレット密度について、「1.9g/cm3以上」、「1.9ないし2.5g/cm3」、実施例の「1.93g/cm3」等と単にその値やその範囲が特定されるのみであり、当該ペレット密度の測定条件について何ら記載されていない。 一方、本件特許明細書等には、固体二次電池のフルセル又はハーフセルを製造する際の積層体の加圧力についての記載はあるものの、天然黒鉛のペレット密度測定の際の加圧力、特に、「400~500MPaの範囲で加圧した後に測定される」点については、記載されていない。 あくまでも、ここでいう「ペレット密度」は原料である天然黒鉛自体についての値である。第6の1(2)エで後述するように、本件特許明細書等において、負極の電極材料の主たる成分である天然黒鉛の負極の加圧圧力と同程度の圧力で加圧後のペレット密度は、負極の密度の近似となることは、当業者にとって明らかであるといえるものの、本件明細書にはペレット密度測定の加圧条件、特に具体的な圧力値と測定のタイミングについては直接の記載はない。してみれば、本件当初明細書等の記載から、天然黒鉛のペレット密度が「400~500MPaの範囲で加圧した後に測定される」ことまでは、自明とはいえない。 したがって、訂正事項1に係る請求項1の「前記天然黒鉛は、400~500MPaの範囲で加圧した後に測定されるペレット密度」との事項は、本件特許明細書等には記載した事項の範囲内ではない。 エ 権利者の主張について 権利者は前記(2)で摘記したとおり、「積層体を加圧して固体二次電池を製造する際に、固体二次電池の負極に含まれる天然黒鉛にも同じ圧力が加圧される。この圧力により天然黒鉛のペレット密度を測定する際の加圧力の範囲が特定される。」と主張しているが天然黒鉛のペレット密度が「400~500MPaの範囲で加圧した後に測定される」ことは、前記ウで述べたとおり自明とまではいえないから、請求人の主張は採用できない。 オ 小括 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項に適合するものではない。 4 まとめ 以上から、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正後の請求項1~17に係る一群の請求項に係る訂正は認められない。 第3 本件発明 前記第2のとおり、本件訂正請求は認められないから、本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明17」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 正極と、 負極と、 前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、を含み、 前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み、 前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含み、 前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である、全固体二次電池。 【請求項2】 前記天然黒鉛の縦横比は、0.5ないし2である、請求項1に記載の全固体二次電池。 【請求項3】 前記天然黒鉛の縦横比は、0.7ないし1.4である、請求項1または2に記載の全固体二次電池。 【請求項4】 前記天然黒鉛は、鱗片状黒鉛一次粒子が組み合わされた球形黒鉛二次粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項5】 前記天然黒鉛は、平均粒径(D50)が14ないし20μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項6】 前記負極は、ガラス転移温度(Tg)が-55℃超過であるバインダをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項7】 前記バインダは、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)を含む、請求項6に記載の全固体二次電池。 【請求項8】 前記負極は、固体電解質をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項9】 前記固体電解質は、平均粒径(D50)が0.1ないし3μmである、請求項8に記載の全固体二次電池。 【請求項10】 前記固体電解質は、硫化物系固体電解質である、請求項8または9に記載の全固体二次電池。 【請求項11】 前記硫化物系固体電解質が、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)からなる群から選択される1以上である、請求項10に記載の全固体二次電池。 【請求項12】 前記硫化物系固体電解質が、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iからなる群から選択される1以上を含むアルジロダイト型の固体電解質である、請求項10または11に記載の全固体二次電池。 【請求項13】 前記アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/cm3である、請求項12に記載の全固体二次電池。 【請求項14】 前記負極は、前記天然黒鉛を前記負極の総重量を基準に、50重量%以上含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項15】 前記負極は、導電剤を含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項16】 前記固体電解質層は、硫化物系固体電解質を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 【請求項17】 前記負極は、固体電解質を含み、 前記負極に含まれる固体電解質と、前記固体電解質層に含まれる固体電解質とは、互いに同一であるか、あるいは異なる、請求項1~16のいずれか1項に記載の全固体二次電池。 第4 異議申立理由の概要 1 証拠方法 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。(以下、甲第1号証~甲第10号証を「甲1」~「甲10」ということがある。) 甲第1号証:特開2018-125150号公報 甲第2号証:特開2014-232728号公報 甲第3号証:特開2001-135356号公報 甲第4号証:特開2014-107029号公報 甲第5号証:特開2016-100069号公報 甲第6号証:特開2020-27701号公報 甲第7号証:特開2019-114525号公報 甲第8号証:特開2016-91762号公報 甲第9号証:韓国公開特許第10-2019-0136382号公報 甲第10号証:韓国公開特許第10-2016-0047310号公報 2 申立人による特許異議申立理由の概要 (1) 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)(以下、「申立理由1」という。) ア 請求項1~3、5、8、10~11および14~17 甲第1号証に記載された発明、および、甲第2号証に記載された事項から容易想到である。 イ 請求項4 甲第1号証に記載された発明、ならびに、甲第2号証および甲第3号証に記載された事項から容易想到である。 ウ 請求項6~7 甲第1号証に記載された発明、ならびに、甲第2号証および甲第4号証に記載された事項から容易想到である。 エ 請求項9 甲第1号証に記載された発明、ならびに、甲第2号証および甲第5号証に記載された事項から容易想到である。 オ 請求項12~13 甲第1号証に記載された発明、ならびに、甲第2号証、甲第6号証および甲第7号証に記載された事項から容易想到である。 (2) 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)(以下、「申立理由2」という。) 「ペレット密度が1.9g/cm3以上」という発明特定事項に関して、当業者が本件特許発明1~17を実施しようとした場合、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要がある。 (3) 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第2号)(以下、「申立理由3」という。) 「ペレット密度が1.9g/cm3以上」という発明特定事項に関して、本件特許発明1~17は、明確ではない。 第5 取消理由の概要 当審が令和6年2月28日付け取消理由通知書で通知した取消理由1及び2は、概ね、次のとおりである。 1 取消理由1(申立理由3に対応。) (明確性)請求項1~17に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 特に、請求項1の「前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である」との記載が不明確である、というものである。 2 取消理由2(申立理由2に対応。) (実施可能要件)請求項1~17に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 特に、「本件明細書等の記載を参酌しても、「前記ペレット密度が1.9g/cm3以上」である天然黒鉛の範囲を特定できないため、本件の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~17に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。」というものである。 第6 当審の判断 1 取消理由1(申立理由3)(明確性)について (1)本件明細書の記載等 本件明細書には、前記第2の2(3)イに記載した事項が記載されている。 (2)乙号証 令和7年2月21日付け意見書と共に提出された乙第1号証~乙第4号証(以下「乙1」~「乙4」ということがある。)は以下のとおりである。 乙第1号証:特表2006一520525号公報 乙第2号証:特表2016ー504727号公報 乙第3号証:米国特許出願公開第2021/0013541号明細書 乙第4号証:宣誓書 ここで、乙1、2には以下の記載がある。 ア 乙第1号証 「【0028】 次いで、乾燥した沈殿物を、化学量論量のLi(OH)・H2O、並びに、LiFおよびB2O3の一方または両方の選択された量(理論上の酸化物質量の0、0.2、0.5、1、3、5重量%)(アルドリッチ・ケミカル社)とを(粉化することによって)混合して、最終的な酸化物中に所望のリチウム化学量論(遷移金属の合計モルあたり1モル)を保持した。粉末化した後、ペレットを製造し、900℃でいくつかは3時間、いくつかは6時間加熱し、次いで、銅のプレートの間で急冷した。ペレットは、時間を節約するために急冷した。ペレットは、空気でゆっくり冷却できて実質的に同じ結果を伴っていただろう。一旦ペレットが冷却されると、それらを壊し、粉末化した。 【0029】 X線回折(XRD)を使用して、試料にどの結晶相が存在するか、およびそれらの相の構造上の特性を決定した。1度の発散を有する固定された入射スリット、固定された0.2mmの受信スリット(0.06度)、黒鉛回析ビーム・モノクロメータ、および散乱輻射線のレジストリ用の比例検出器を取り付けたX線回折計を使用して、データを収集した。密封された銅の標的X線源は、40kVおよび30mAの発生装置設定で使用した。リートフェルト(Rietveld)プログラム・リーティカ(Rietica)のヒル/ハワード(Hill/Howard)バージョンを使用して、収集したデータの輪郭精密化を行った。通常使用した構造上のモデルは、3aサイトにLiを、3bサイトに不規則に配置されたNi、Co、およびMn、並びに、6cサイトに酸素原子を有するα-NaFeO2構造であった。LiとNiがサイトを交換した反サイト欠陥が仮定され、そのわずかな量がリートフェルト精密化の一部として算出された。 【0030】 それぞれの焼結した組のペレット密度(PD)は、48,000psi(30,096kPa)の高圧下で粉末化した粉末約500mgを用いて直径8mmのペレットを製造することによって得た。圧縮後のペレットの厚さおよび直径を測定し、次いで、密度を算出した。誤差は、±0.08g/cm3であると算定された。 【0031】 ペレット密度と電極密度の間の相関関係を明らかにするため、5個の異なるLiy[NixCo1-2xMnx]O2の試験電極を製造した。この場合、xおよびyは先に定義したものである。Liy[NixCo1-2xMnx]O2(90部)、スーパーS(SUPER S)カーボンブラック(5部)(MMMカーボン(MMM Carbon)、テルトレ(Tertre)、ベルギー)、およびポリビニリデン二フッ化物(PVDF)(5部)バインダを化合して、電極材料を製造した。n-メチルピロリジノン(NMP)を使用して電極材料をスラリーにし、次いで、このスラリーをアルミニウム箔に被覆した。アルミニウム箔に被覆した電極材料をマッフル・オーブン中で一晩乾燥させてNMPを蒸発させ、フィルムを形成した。このフィルムを48,000psi(330,096kPa)で押圧した。デジタル・マイクロメータでフィルムの厚さを測定し、フィルムの既知面積の質量を測定することによって、電極密度を得た。5個の異なる試料から、グラフで切片がゼロになるように拘束したとき0.89の傾斜が得られた。したがって、達成可能な電極密度は、ペレット密度の90%であると考えられた。」 イ 乙第2号証 「【0087】 例6:低空隙率電極 この例は、低空隙率電極を実証することになる。例5の大きな粒子のLiCoO2(50μmサイズ)と例4のHLMを使用する。被覆用のスラリをLCO及びHLMの混合物から調製する。伝導性添加剤Super-Pの使用に伴って、バインダ及び溶剤として、NMP溶液中における5%のPVDFを使用する。表6.1は、スラリの組成を要約したものである。 【0088】 スラリの一部分を厚膜としてA1フォイル上に被覆し、乾燥させ、剥ぎ取り、且つ、磨り潰すことにより、電極粉体を取得する。電極粉体の密度を加圧されたペレット上において計測する。一般に、電極粉体の密度は、粉体によって得られうる実際の電極密度の非常に良好な近似値である。加圧されたペレットの直径は、1.311cmであり、且つ、質量は、3.0gであり、印加される力は、207MPaである。取得されたペレット密度値は、4.153g/cm3(5%のHLM)、4.036g/cm3(10%のHLM)、及び4.123g/cm3(15%のHLM)である。LiCoO2(5.05g/cm3)、HLM(4.251g/cm3)、PVDF(1.7g/cm3)、及び炭素(2g/cm3)の真密度の使用により、空隙率の計算が可能となる。結果は、11.3%、11.6%、及び7.6%である。これらのデータは、非常に低い空隙率を有する電極が実現可能であることを示している。空隙率は、例8において後程算出される臨界空隙率を格段に下回っている。商用セルの場合の代表的な電極空隙率は、>12%であり、しばしば、15~20%である。 【0089】 残っているスラリを使用して高担持量の電極を被覆した後に、乾燥及び圧縮を実行する。活性カソードの担持量は、58、50、及び45mg/cm2である。これらの担持量は、非常に大きく、商用セルにおける通常の電極よりも、3~4倍も大きい。コインセル試験は、C/20レートで試験された際に、フル容量を予想値の1~2%内において示している。基準値が、C/10レート、1C=160mA/gにおいて、12mg/cm2電極により、3.0~4.3Vにおいて取得され、これは、理論的な予想値(LCO及びHLMの容量の平均)に類似している。厚い電極を有するセルの更なるサイクル動作の際に、電極の被覆が剥ぎ取られ、既知の電流被覆法は、非常に大きな担持量を伴う安定したサイクル動作が得られるように最適化されていない。但し、この例は、優れた安全性を約束しつつ、小さな空隙率を有する非常に厚い電極を可逆サイクル動作されることができることを実証している。」 エ 判断 乙1には、48,000psiの圧力で作成した電極フィルムの達成可能な電極密度は、電極材料から同じ圧力で作成したペレットの密度の90%であることが記載されている。これより、電極フィルムの電極密度は、電極材料の同じ圧力で作成したペレット密度の90%といった相関がみられることが認められる。 乙2には、「一般に、電極粉体の密度は、粉体によって得られうる実際の電極密度の非常に良好な近似値である」ことが記載されている。 そして、乙1及び乙2より、加圧後の電極の密度は、電極材料の同圧力での密度に近似できることが見て取れる。よって、本件発明1の負極の電極材料の主たる成分である天然黒鉛の、負極の加圧圧力と同程度の圧力で加圧後のペレット密度は、負極の密度の近似であって、負極の特性の制御のための主要なパラメータであることが、当業者にとって明らかである。 以上を踏まえると、負極の加圧圧力で天然黒鉛のペレット密度を計測することに強い蓋然性があるというべきであり、本件請求項1の「ペレット密度として1.9g/cm3」との記載は、負極の加圧圧力と同程度の圧力で加圧した場合のペレット密度と解するのが妥当であるといえる。 してみれば、本件発明1は、第三者に不測の不利益を与えるほど不明確なものとは言えない。 よって、本件請求項1に記載された発明は明確である。 本件請求項1に記載された発明を引用する請求項2~17に係る発明も、同様に明確である。 2 取消理由2(実施可能要件)について 前記したとおり、天然黒鉛のペレット密度は負極材料の加圧力と同程度の加圧力を加えて測定されると解されるから、本件の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~17に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 第7 申立人の主張する申立理由について 事案に鑑み、申立人の主張する申立理由3、申立理由2、申立理由1の順に検討する。 1 申立理由3について 申立理由3は、取消理由1と同様のものである。よって、前記第6の1で検討したとおりであって、本件発明1~17は特許法第36条第6項第2号の規定に反するものとは言えない。 申立人は、甲2、8、9、10より、ペレット密度を測定する際の加圧力により、測定されるペレット密度の値が変化することを示している。これより、ペレット密度により物を特定する際には、合わせて当該ペレット密度を測定した際の加圧力も特定する必要があると考えられる。 しかしながら、上述したとおり、本件発明1においては、天然黒鉛のペレット密度の測定の際の加圧力は、負極の加圧力と同等の圧力と把握されることから、実質的に前記天然黒鉛のペレット密度の測定の際の加圧力は特定されているものといえ、本件請求項1~17の記載は第三者に不測の不利益を与えるほど不明確なものとは言えない。 2 申立理由2について 申立理由2は、取消理由2と同様のものである。よって、前記第6の2で検討したとおり、本件の発明の詳細な説明の記載は、本件請求項1~17に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 申立人は、「加圧力が何ら特定されていない以上、当業者は、あらゆる加圧力においてペレット密度を測定して、「ペレット密度が1.9g/cm3以上」を満たすか否かを検証する必要がある。」と主張するが、前記のとおり、加圧力は実質的に特定されており、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤等が必要となるものではない。 3 申立理由1について (1)甲1号証の記載と甲1発明 甲1には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1 】 正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するイオン伝導性の固体電解質層とを含む単セルを少なくとも含み、 前記固体電解質層は、無機固体電解質を含み、 前記単セルの厚み方向に加わる圧力が100kPaのときの前記単セルの抵抗R1が75Ωcm2以下である、全固体電池。 (イ) 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、固体電解質層を備える全固体電池に関する。 【背景技術】 【0002】 様々な二次電池が開発されている中、高いエネルギー密度が得られ易いリチウムイオン二次電池(LIB)が最も有望視されている。一方、電池の用途拡大に伴って、自動車用電池や据え置き型電池などの大型電池が注目されている。大型電池では、小型電池に比べて安全性の確保がさらに重要になる。無機系の固体電解質を用いる全固体電池は、電解液を用いるLIBに比べて、大型化しても安全性を確保し易く、高容量化し易いと期待されている。」 (ウ) 【0054】 (電極群を加圧する工程) 形成された電極群には、全固体LIBにおいて単セルの厚み方向に加わる圧力が100kPaのときの単セルの抵抗R1が上述の範囲となるように圧力を加える。電極群は、電池ケースに収容されるが、電極群への加圧は、電池ケースに収容する前に行なってもよく、電池ケースに収容した後に行なってもよい。例えば、電池ケースがラミネートフィルムなどである場合には、電極群を電池ケースに収容した後に電池ケース(つまり、電池)ごと電極群を加圧すればよい。 【0055】 電極群を加圧する際の圧力は、固体電解質層に使用した上記の固体電解質が塑性変形する圧力よりも高い圧力であればよいが、500MPaを超える圧力(例えば、500MPaを超え1500MPa以下)であることが好ましく、800MPa~1500MPaまたは800MPa~1200MPaであることがさらに好ましい。このような圧力を電極群(または電池)に加えることで、固体電解質層に含まれる固体電解質粒子が塑性変形して粒子同士が密着し、界面抵抗を低減することができる。また、固体電解質粒子が塑性変形することで、固体電解質層と正極および/または負極との密着性を高めることができる。よって、従来のように拘束治具を用いなくても、電極群における界面抵抗を小さくすることができ、全固体電池の充放電を行なうことができる。 【0056】 [実施例] 以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0057】 実施例1 (1) 全固体電池の作製 下記の手順で図1 に示すような全固体電池(全固体LIB)を作製した。なお、平均粒子径D50とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布におけるメディアン径である。 【0058】 (a)正極2の作製 正極活物質であるLiNi0.8Co0.15Al0.05O2( 平均粒子径D50:6μm)と、リチウムイオン伝導性の固体電解質であるLi2S-P2S5を、7:3の質量比で混合することにより混合物を得た。なお、上記固体電解質の塑性変形圧力は、200MPaである。 【0059】 正極集電体2aとしての縦40mm×横40mm×厚み15μmのアルミニウム箔の片面に、縦20mm×横20mmの開口部を有するマスクを配した。乾式成膜により正極活物質層2bを形成した。具体的にはマスクの開口部を覆うように、上記の混合物を所定量堆積させ、単動式プレスにより、厚み方向に2MPaの圧力で加圧することにより正極活物質層2bを形成した。正極活物質層2bの厚みは150μmであった。なお、混合物の堆積量は、電池の容量が2mAh/cm2となるように調節した。 【0060】 (b)固体電解質層3の作製 正極活物質層2bの上面および絶縁層4aの内周側の上面が露出するような縦22mm×横22mmのサイズの開口部を有するマスクを、正極2の正極活物質層2b側に配し、乾式成膜により固体電解質層3を形成した。具体的にはマスクの開口部を覆うように、リチウムイオン伝導性の固体電解質であるLi2S-P2S5所定量堆積させ、単動式プレスにより、厚み方向に2MPaの圧力で加圧することにより固体電解質層3を形成した。このとき、固体電解質層3は、正極活物質層2bの上面および側面、ならびに絶縁層4aの内周側の上面および側面を覆うように形成した。固体電解質層3の厚みは360μmであった。なお、上記固体電解質の塑性変形圧力は、200MPaである。 【0061】 (c)負極1の作製 負極活物質と、リチウムイオン伝導性の固体電解質であるLi2S-P2S5とを、6:4の質量比で混合することにより混合物を得た。負極活物質としては、非晶質炭素の層で天然黒鉛粒子(平均粒子径D50:約15μm)を被覆した被覆粒子を用いた。なお、上記固体電解質の塑性変形圧力は、200MPaである。 【0062】 固体電解質層3の中央部分が露出するような縦20mm×横20mmのサイズの開口部を有するマスクを固体電解質層3上に配し、乾式成膜により負極活物質層1bを形成した。具体的にはマスクの開口部を覆うように、上記の混合物を所定量堆積させ、単動式プレスにより、厚み方向に2MPaの圧力で加圧することにより負極活物質層1bを形成した。負極活物質層1bの厚みは200μmであった。なお、混合物の堆積量は、電池の正極の容量に対する負極の容量の比(A/C比)が1.2となるように調節した。 (エ) 甲1発明 以上より、甲1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「正極と、 負極と、 前記正極および前記負極の間に介在するイオン伝導性の固体電解質層と、を含み、 負極活物質としては、非晶質炭素の層で天然黒鉛粒子(平均粒子径D50:約15μm)を被覆した被覆粒子を用いる、 全固体電池。」 (2)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「正極」、「負極」、「前記正極および前記負極の間に介在するイオン伝導性の個体電解質層」は、それぞれ、本件発明の「正極」、「負極」、「前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層」に相当する。 甲1発明の「負極活物質としては、非晶質炭素の層で天然黒鉛粒子(平均粒子径D50:約15μm)を被覆した被覆粒子を用いる」ことは、本件発明1の「前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み」、「前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含」むことに相当する。 甲1発明の「全固体電池」は【0002】等の記載を参酌すると二次電池と解されるから、本件発明1の「全固体二次電池」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明とでは、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 正極と、 負極と、 前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層と、を含み、 前記負極は、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み、 前記天然黒鉛は、非晶質炭素コーティング層を含む、 全固体二次電池。 [相違点] 本件発明1が、「前記天然黒鉛は、ペレット密度が1.9g/cm3以上である」のに対し、甲1発明では、ペレット密度については何ら特定がない点。 (3)判断 前記相違点について検討する。 甲2には 「【請求項1】 球状黒鉛を含むコア部と、 前記コア部の表面に被覆され、低結晶性炭素材を含むコーティング層とを含み、 直径2000nm以下の気孔の体積が0.08ml/g以下であり、 タップ密度が1.1g/cm3以上であることを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質。 【請求項2】 前記リチウム二次電池用負極活物質は、1000kgf/cm2の圧力下のペレット密度が1.6g/cm3以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。 【請求項3】 前記球状黒鉛は、天然黒鉛であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。」 「【0023】 前記球状黒鉛の平均粒径(D50)は、5~30μmであるとよい。前記範囲内の場合、電極の製造時、安定した負極スラリーを製造することができ、これから高密度電極の製造が可能である。また、これを用いた電池において、電池特性にも、特に、寿命および電池の安全性が改善できる。」 との記載が認められる。 しかしながら、甲2には、負極が、平均粒径(D50)が10μm超過20μm以下である天然黒鉛を含み、かつ、天然黒鉛のペレット密度が1.9g/cm3以上であることまでは記載されておらず、甲2に接した当業者が、甲1発明の天然黒鉛のペレット密度を1.9g/cm3以上であるものとすることを、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 (また、甲3~甲10のいずれの甲号証にも、甲1発明の天然黒鉛のペレット密度を1.9g/cm3以上であるものとすることは記載も示唆もされていない。) してみれば、本件発明1は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到できた発明であるとの申立人の主張は、採用できない。 (4) 小括 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 また、本件発明2~17は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、申立理由1の他の事項を検討するまでもなく、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 第8 むすび 以上のとおり、本件請求項1~17に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701199

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