特許異議申立
2023-701158
キャニスタ用成形吸着体
- 審判番号
- 2023-701158
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-502441
- 登録番号
- 7268261
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年07月03日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】寺崎 直
- 【異議申立人】杉浦 健文
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 倉橋 紀夫
- 審判官 青木 良憲
- 分類
- P1651.121-YAA(F02M) / P1651.536-YAA(F02M) / P1651.537-YAA(F02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7268261号発明「キャニスタ用成形吸着体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7268261号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7268261号の請求項1~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7268261号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、2022年2月22日(優先権主張 2021年2月24日)を国際出願日とする出願であって、令和5年4月24日に特許権の設定登録がされ、同年5月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年10月31日 :特許異議申立人杉浦健文(以下「申立人」 という。)による請求項1~13に係る特 許に対する特許異議の申立て
令和 5年12月21日付け:取消理由通知書
令和 6年 3月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出
令和 6年 3月26日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第1 20条の5第5項)
なお、上記のとおり、令和6年3月26日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項)を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは意見書の提出がなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
上記令和6年3月4日提出の訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、訂正自体を、「本件訂正」という。本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「キャニスタ用の成形吸着体であって、
前記成形吸着体は、下記式1:」
と記載されているのを、
「キャニスタ用の成形吸着体であって、
前記成形吸着体の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gであり、
前記成形吸着体の0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上であり、
前記成形吸着体は、下記式1:」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~14も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記P100/50が、115%以下である、請求項1又は2に記載の成形吸着体。」
と記載されているのを、
「前記P100/50が、115%以下である、請求項1に記載の成形吸着体。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~13も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記P100/50が、115%以下である、請求項1又は2に記載の成形吸着体。」
と記載されているのを、
「前記P100/50が、115%以下であり、
前記成形吸着体の0ppm維持時間が、40分以上である、請求項2に記載の成形吸着体。」
に訂正し、新たな請求項14とする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記成形吸着体の比表面積が、2500m2/g以下である」
と記載されているのを、
「前記成形吸着体の比表面積が、1200m2/g以上、2100m2/g以下である」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~13も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記成形吸着体の全細孔容積が、0.50~1.20cm3である、請求項1~5のいずれいか一項」
と記載されているのを、
「前記成形吸着体の全細孔容積が、0.70~1.00cm3/gである、請求項1~5のいずれか一項」
に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7~13も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記成形吸着体の平均細孔径が、1.50~2.00nm以下である」
と記載されているのを、
「前記成形吸着体の平均細孔径が、1.50~1.90nmである」
に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~13も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「前記成形吸着体の密度が、0.010~0.400g/cm3である」
と記載されているのを、
「前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.300g/cm3である」
に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9~13も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された成形吸着体を、「前記成形吸着体の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、前記成形吸着体の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gであり、前記成形吸着体の0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上であ」る構成に限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0035】、【0036】、【0055】、【0113】、【0128】~【0130】及び【0133】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたところ、請求項1のみを引用するものとする訂正であり、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたところ、請求項2のみを引用するものとして新たな請求項14としつつ、訂正前の成形吸着体を「0ppm維持時間が、40分以上である」構成に限定する訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書の【0057】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載された成形吸着体の比表面積を、「2500m2/g以下」から「1200m2/g以上、2100m2/g以下」に限定するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書の【0035】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項6に記載された成形吸着体の全細孔容積を、「0.50~1.20cm3」から「0.70~1.00cm3/g」に訂正するものである。
この訂正は、数値範囲を限定すると共に、単位の誤記を訂正するものである。
さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項6に記載された「いずれいかの」という誤記を「いずれかの」に訂正するものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、願書に添付した明細書の【0036】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮、及び、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項7に記載された成形吸着体の平均細孔径を、「1.50~2.00nm以下」から「1.50~1.90nm」に訂正するものである。
この訂正は、数値範囲を限定すると共に、「以下」という記載が何を意味するのか不明確であったところ、「以下」を削除することにより明確にするものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、願書に添付した明細書の【0037】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項8に記載された密度を、「乾燥密度」に限定するものであり、当該密度を「0.010~0.400g/cm3」から「0.010~0.300g/cm3」に限定するものである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、願書に添付した明細書の【0045】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。
4 小括
以上のとおり、本件訂正による訂正事項1~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定に適合すると共に、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明14」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
キャニスタ用の成形吸着体であって、
前記成形吸着体の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gであり、
前記成形吸着体の0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上であり、
前記成形吸着体は、下記式1:
P0.2/100=X÷Y×100 ・・・(式1)
で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ
下記式2:
P100/50=Y÷Z×100 ・・・(式2)
で表されるP100/50が、120%以下であり、
前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、
前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである、成形吸着体。
【請求項2】
前記P0.2/100が、21%以上である、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項3】
前記P100/50が、115%以下である、請求項1に記載の成形吸着体。
【請求項4】
前記P100/50が、110%以下である、請求項1又は2に記載の成形吸着体。
【請求項5】
前記成形吸着体の比表面積が、1200m2/g以上、2100m2/g以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項6】
前記成形吸着体の全細孔容積が、0.70~1.00cm3/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項7】
前記成形吸着体の平均細孔径が、1.50~1.90nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項8】
前記成形吸着体の乾燥密度が、0.010~0.300g/cm3である、請求項1~7のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項9】
前記成形吸着体が、活性炭およびバインダーを含み、
前記活性炭と前記バインダーとの含有割合は、活性炭100重量部に対してバインダー0.3~20重量部である、請求項1~8のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項10】
前記活性炭が、活性炭素繊維を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項11】
前記成形吸着体が、自動車に用いるキャニスタ用である、請求項1~10のいずれか一項に記載の成形吸着体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の成形吸着体を備えたキャニスタ。
【請求項13】
前記キャニスタは、自動車用のキャニスタである、請求項12に記載のキャニスタ。
【請求項14】
前記P100/50が、115%以下であり、
前記成形吸着体の0ppm維持時間が、40分以上である、請求項2に記載の成形吸着体。」
第4 取消理由の概要
当審が令和5年12月21日付けで通知した取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(特許法第36条第4項第1号)
本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 取消理由3(特許法第29条第2項)
以下の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項1~13
引用文献1~7
4 引用文献一覧
引用文献1:Christian Blaeker(当審注:「ae」は「aウムラウト」を表 す。), et al., "Investigation of load-dependent heat of adsorption of alkanes and alkens on zeolites and ac tivated carbon", Microporous and Mesoporous Materials 241 (2017) 1-10, 2017年1月3日, p.1-10(甲第1号証)
引用文献2:安彦泰進,「NIOSH MultiVaporTMを用いた有機ガス破過時 間の推算における活性炭平均粒径の効果と実用に向けた考察 」,産衛誌 2014;56(6),2014年9月9日,275-285頁( 甲第2号証)
引用文献3:特開2013-173137号公報(甲第3号証)
引用文献4:特許第4472636号公報(甲第4号証)
引用文献5:国際公開第2006/022329号(甲第5号証)
引用文献6:FREDERICK S. BAKER, et al., "CARBON, ACTIVATED", Kirk- Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 2013年8月1 5日, Vol. 4, p.741-761(甲第6号証の1)
引用文献7:国際公開第2019/131207号(甲第8号証)
第5 取消理由1(特許法第36条第4項第1号)について
1 判断
本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された成形吸着体は、P0.2/100が、18%以上であり、P100/50が、120%以下であるという、n-ブタンガスの吸着量の比で表される吸着能以外にも、比表面積が300m2/g以上、2500m2/g以下であり、全細孔容積が0.65~1.20cm3/gであり、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が6.00wt%以上であるという構成が特定された。
これにより、本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者に過度の試行錯誤を強いることなく本件発明1の実施をすることができるようになった。
また、請求項1を引用することで請求項1に記載された上記成形吸着体を含む本件発明2~14についても、同様に本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が実施をすることができるようになった。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~14の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
2 小括
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するものであるから、上記取消理由1(特許法第36条第4項第1号)によっては、本件発明1~14に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
1 判断
(1)上記した本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された成形吸着体は、P0.2/100が、18%以上であり、P100/50が、120%以下であるという、n-ブタンガスの吸着量の比で表される吸着能以外にも、比表面積が300m2/g以上、2500m2/g以下であり、全細孔容積が0.65~1.20cm3/gであり、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が6.00wt%以上であるという構成が特定された。
これにより、上記第5で判断したとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~14の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなり、その結果として、本件発明1は、発明の詳細な説明に実質的に記載されているに等しいといえる。
(2)また、本件発明1が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0010】に記載された
「高性能なキャニスタに適した新たな形態の吸着材を提供することにある。」
と認められるところ、発明の詳細な説明には、当該課題解決手段として、例えば、成形吸着体として活性炭を用いること(例えば、【0011】参照。)や表2-1に記載された実施例1のように、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下におけるn-ブタンガスの吸着量が、吸着材100gあたり10.8gであることのような、一定程度のn-ブタンガスの吸着量を有するものが記載されている。
これに対し、本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された成形吸着体は、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が6.00wt%以上であるという構成が特定され、n-ブタンガスの吸着量が限りなく0に近いものを含まないものとなった。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されたものとなった。
(3)したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、請求項1を引用する本件発明2~本件発明14も、同様に発明の詳細な説明に記載されたものである。
2 小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものであるから、上記取消理由2(特許法第36条第6項第1号)によっては、本件発明1~14に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由3(特許法第29条第2項)について
1 引用文献1
(1)記載事項
ア 「To investigate the load-dependent heat of adsorption a sensor gas calorimeter was developed whichallows the simultaneous measurement of adsorption capacity and heat of adsorption in porous materials. A commercially available volumetric measurement device was extended by a newly developed calorimetric measuring cell. Using this apparatus, the load-dependent heat of ad sorption of alkanes and alkenes on the zeolites 13X-APG and HiSiv 3000 as well as on the activated carbon Norit R1 Extra was investigated.」(1頁要約1~6行)
(吸着熱の吸着量依存性を調べるために、多孔質材料の吸着容量と吸着熱を同時に測定できるセンサー式ガス熱量計を開発した。市販の容積測定装置を、新たに開発した熱量測定セルにより拡張した。この装置を用いて、ゼオライト13X-APG及びHiSiv 3000並びに活性炭Norit R1 Extraにおけるアルカン及びアルケンの吸着熱の吸着量依存性を調べた。)
イ 「As adsorbents the zeolites 13X-APG and HiSiv 3000 from UOP as well as the activated carbon Norit Rl Extra from Cabot Corporation were selected.」(3頁右欄23~25行)
(吸着材として、UOP製のゼオライト13X-APG及びHiSiv 3000並びにCabot Corporation製の活性炭Norit R1 Extraを選択した。)
ウ 「
[図:0001415295000001.jpg]
」(4頁表1)
(
[図:0001415295000002.jpg]
)
エ 「
[図:0001415295000003.jpg]
」(8頁 図9のa)及び図9の説明文)
(
[図:0001415295000004.jpg]
)
オ 「Supplementary data related to this article can be found at http://dx.doi.org/10.1016/j.micromeso.2016.12.037.」(9頁右欄10~11行)
(この記事に関連する補足データは、http://dx.doi.org/10.1016/j.micromeso.2016.12.037.で見ることができる。)
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の3頁左欄6~16行、4頁右欄23~29行、7頁右欄24~27行の記載から、上記(1)エの図9や補足データ(サポート情報)15~19頁の表S5の「圧力」とは、各気体の圧力であると認められる。
よって、引用文献1(上記(1)の摘記箇所の他、特に、3頁左欄6~16行、4頁右欄23~29行、7頁右欄24~27行、補足データ(サポート情報)15~19頁の表S5参照。)には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「活性炭Norit R1 Extraであって、
前記活性炭Norit R1 ExtraのBET表面積が1300m2/gであり、
前記活性炭Norit R1 Extraの細孔容積が0.622cm3/gであり、
前記活性炭Norit R1 Extraは、25℃のn-ブタン吸着量が、n-ブタンの圧力が0.1929kPaで1.407mmol/gであり、以下同様に、0.2412kPaで1.663mmol/g、48.7030kPaで5.179mmol/g、53.9090kPaで5.212mmol/g、94.4840kPaで5.378mmol/g、99.5060kPaで5.394mmol/gである、活性炭Norit R1 Extra。」
2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の記載がある。
(1)「
[図:0001415295000005.jpg]
」(279頁表3)
(
[図:0001415295000006.jpg]
)
3 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の記載がある。
(1)「【背景技術】
【0002】
近年、大気環境改善及び地球温暖化防止に対する関心が世界的に高まる中、それらの一因であるガソリン内燃機関の燃料タンクからの燃料蒸散ガスの大気放出低減のため、蒸散燃料抑制装置(キャニスタ)が用いられている。この装置には、一般的に活性炭等の吸着剤が充填され、蒸散燃料が吸着、捕集されるとともに、エンジン稼動時にはキャニスタ内に、燃焼用の空気を導入して吸着された蒸散燃料を脱着し、エンジン内にて燃焼させるようになっている。
【0003】
しかしながら、活性炭をそのまま使用して蒸散燃料ガスの吸脱着を行うと、吸着時には発熱反応が起こって温度が上昇し、また脱着時には吸熱反応が起こって温度が低下するので吸脱着性能低下をおこすことが知られている。そこでこれらの問題を解決するため、蓄熱材を併用したり、活性炭の比熱を大きくしたりすることが知られている。例えば活性炭などの多孔質体の内部に蓄熱材を使用すること(特許文献1)、活性炭に比熱の大きい液体を含有させ比熱を大きくすること(特許文献2)が提案されている。」
(2)「【0009】
キャニスタの性能は、活性炭を充填したキャニスタにn-ブタンを特定量吸着させた増量と、空気で脱着させた減量の平均値であるブタン・ワーキング・キャパシティー(BWC)で示されるが、一般的に、炭素原料を常法により造粒し炭化賦活して活性炭とした場合、BWC性能を向上させるに従って見かけ密度が小さくなることにより比熱も小さくなる。」
(3)「【0043】
吸着材のn-ブタン脱着率(%)及びn-ブタン有効吸着量(BWC):
1)JIS K1474に準拠して造粒炭の充填密度を測定する。
2)内径17.5mmのガラスカラムに1)で測定した充填密度に基づき24ミリリットル(mL)の試料を充填し秤量した後(Ag)、25℃の恒温槽へセットする。
3)n-ブタン(純度99.9%以上)をアップフローでガラスカラムに300mL/分の流量で20分以上通気させた後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Cg)。
4)ガラスカラムを再度装置にセットし、ダウンフローで乾燥空気をガラスカラムに240mL/分の流量で20分間通気した後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Dg)。
5)上記操作を行い、次の式によりn-ブタン脱着率及び造粒炭1dL当りの脱離量をブタン有効吸着量(BWC)とする。n-ブタン脱着率=(Cg-Dg)/(Cg-Ag)×100(%)、BWC(g/dL)=(Cg-Dg)/0.24」
(4)「【0048】
実施例1~12、比較例1~6
クラレケミカル株式会社製クラレコール3GXをロータリーキルンに入れ920~950℃で水蒸気賦活し、賦活時間を変えることで中心細孔半径3.3、4.2、4.8、5.0nmの4種類の活性炭を得た。そのうち4.8nmのものはBWC法におけるn-ブタン吸着量50%、脱着率77%、BWC11.9g/dLであった。」
4 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の記載がある。
(1)「【背景技術】
【0002】
近年、環境への関心が高まっており、有機溶剤、ガソリンなどの液体燃料蒸気の蒸散防止にも注意が払われている。停車中の自動車からの燃料蒸散は、発生源によって燃料タンク系からの蒸散と吸気系からの蒸散とに大別される。以下、燃料タンク系から蒸散する燃料蒸気の蒸散防止装置をキャニスタ、吸気系から蒸散する燃料蒸気の蒸散防止装置に用いられるエレメントをエンジンエアーインテークエレメントという。
【0003】
通常、燃料タンク系から蒸散する燃料蒸気はキャニスタに収容された吸着材により吸着回収される。キャニスタは、燃料タンク系から発生するガソリンに代表される液体燃料蒸気の蒸散防止装置として開発されたものであり、これまで多くのキャニスタが開発され、自動車に搭載されて使用されている。キャニスタに使用される燃料蒸散防止材としては活性炭が多く用いられており、キャニスタにおいて、燃料タンクから発生するガソリンなどの液体燃料から蒸散する蒸気を活性炭に吸着させ、吸着されたガソリン蒸気は、エンジンの作動時に吸入される外気によって脱着され、脱着されたガソリンは吸気管であるエンジンインテークマニホールド(以下、インテークマニホールドと略記する)に導入されてエンジンで燃焼される。
【0004】
従来、キャニスタとしての性能を上げるために、液体燃料蒸気の吸脱着に優れる吸着材の面からの開発と、装置自体の面からの開発が行われて来た。吸着材としては、ヤシ殻炭、木質炭、石炭などの活性炭や、活性炭を成型した成型炭を使用するのが一般的であり、例えば、粒状活性炭に短繊維を加え、エマルジョンをバインダとして成型した成型炭が知られている(特許文献1)。また、酸化処理した改質活性炭も知られており、とくにガソリンとアルコールの混合蒸気に有効であることが記載されている(特許文献2)。さらに、平均充填密度の異なる2種類の活性炭を蒸発燃料捕集装置に使用することが提案されている(特許文献3)。」
(2)「【0042】
なお、参考のため、ガソリンワーキングキャパシティー(GWC)の値(g)も併せて示しているが、GWCとはBWCのブタンの代りにガソリンベーパーを使用する方法で、活性炭キャニスタにおけるガソリン吸脱着性能の目安となるものである。以下GWC値を求める手法を簡単に述べる。RVP(Reid Vapor Pressure)9.0PSI認証燃料を38℃に昇温した後、200mL/分で空気を導入し、バブリングさせてガソリン蒸気を発生させる(発生量約40g/時間)。発生したガソリン蒸気をキャニスタに通過させて出口濃度をFIDガスクロで測定し、5000ppmに達した時点を破過点とする。破過後、10分以内にパージを開始し、キャニスタの容積に対し400倍の乾燥空気を15L/分の流量で通過させ、ガソリンを脱着させる。このサイクルを10回繰返し、最後3回の吸着量と脱着量の平均からGWC値を求める。
(3)「
[図:0001415295000007.jpg]
」(【0058】【表1】)
5 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、以下の記載がある。
(1)「背景技術
[0002] 活性炭は吸着能に優れているため従来から悪臭の除去、液中の不純物除去、溶剤蒸気の回収、除去などの各種用途に広く使用されている。近年、自動車の排気ガス問題や燃費向上対策がクローズアップされており、地球環境保護の観点から車輌の運行に関しても各種の公害防止対策が運用されている。その一環として活性炭等の多孔質吸着材が蒸散燃料ガス吸着材として利用されており、具体的には一般の車輌には車輌の停止時及び走行中に燃料タンクや気化器のフロート室等の燃料貯留室から生じる蒸散燃料ガスを活性炭に吸着させ、車輌の走行時に吸入される外気によって、吸着された蒸散燃料ガスを脱着させエンジンの吸気管に送り込み燃焼処理するための蒸散燃料ガス処理装置が搭載されている。
[0003] このような蒸散燃料ガス処理装置はキャニスタと呼ばれており、キャニスタにおいて 、燃料タンクから蒸散するガソリン蒸気は吸着材に吸着され、吸着されたガソリン蒸気は、エンジンの作動時に吸入される外気によって脱着され、脱着されたガソリン蒸気は、吸気管であるエンジンインテークマニホールドに導入されてエンジンで燃焼される。」
(2)「[0006] また、酸化処理することによって改質した活性炭も知られており、該活性炭はとくにガソリンとアルコールの混合蒸気を使用した自動車のキャニスタ用として優れることが 記載されている(特許文献2)。さらに、蒸発燃料の吸着に優れ、かつコスト的にも優れる活性炭として、平均充填密度の異なる2種類の活性炭を使用することが知られている(特許文献3)。」
(3)「[0081] キャニスタを25℃のインキュベータに入れ内部温度が安定するまで放置し初期重量(1a)を測定した。次に純度99%以上のn―ブタンを1L/分の流量で上向きに流しn―ブタンを吸着させ、出口濃度が3000ppmに達した時点でn―ブタンの供給を止めてキャニスタの重量(W)を測定し初期重量(1a)からの増量(W-1a)を吸着量 とした。
[0082] キャニスタを再度25℃のインキュベータに入れ5分間放置後下向流で空気を15L/分で20分間、合計300Lを流してn―ブタンをパージした。パージ後の重量(1b)を測定し吸着後の重量(W)との差を脱着量(W-1b)とした。この吸着・パージの操作を6回繰り返し最後の5、6回の吸着量と脱着量の平均値をn―ブタンワーキングキャパシティ一(BWC)として次式によりBWCを求めたところ79g/Lであった。なお、 活性炭3GXのみを充填したキャニスタによるBWCは56.5g/Lであり、これと比較して40%向上していることがわかる。
BWC=[(W-5a)+(W-5b)+(W-6a)+(W-6b)]/4」
6 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、以下の記載がある(翻訳文は、当審で作成した。)。
(1)「
[図:0001415295000008.jpg]
」(755頁3~24行)
(11.2.ガソリン排出規制。 活性炭の主な用途は、自動車燃料システムの通気口から漏れ出るガソリン蒸気の捕捉にある(79)。EPAの規制に基づき、1970年代初頭以降に製造されたすべての米国の自動車には蒸発ガス制御システムが装備されている。現在、他のほとんどの自動車生産国でも同様の規制が行われている。燃料タンクまたはキャブレタが加熱されたときに排出される燃料蒸気は、0.5~2Lの活性炭が入ったキャニスターに捕捉される。カーボンの再生は、吸気マニホールドの真空を使用してキャニスタを通して空気を引き込むことによって行われる。空気は、脱離した蒸気をエンジンに運び、そこで通常の動作中に燃焼する。活性炭システムは車両の給油中に放出される蒸気を捕捉するためにも提案されており、活性炭は多くのガソリンターミナルでタンクローリーへの給油時に排出される蒸気を捕捉するために使用されている(80)。通常、吸着容器には約15m3の活性炭が含まれており、真空を適用することで再生される。ポンプで排出された蒸気は、液体ガソリンと接触して吸収装置内に回収される。バージ(81)からの燃料の移送にも同様の装置が使用される。これらの用途に必要な炭素細孔構造のタイプは、溶媒回収で使用されるものとは大幅に異なる。再生条件は、非常に穏やかであるため、より弱い吸着力しか克服できず、したがって最も効果的な細孔はメソ細孔サイズの範囲内になる(82)。蒸気濃度が通常10~60%と高いため、これらの細孔で大きな吸着容量が可能になる。)
7 引用文献7に記載された事項
引用文献7には、以下の記載がある
(1)「技術分野
[0001] 本発明は、活性炭成形体、活性炭成形体の製造方法、および活性炭成形体を備えるキャニスタに関する。
背景技術
[0002] 例えば自動車には、車両の燃料タンクからの蒸散燃料の外部への放出を防止するために、蒸散燃料の吸着および脱着が可能なキャニスタが用いられている。キャニスタには一般に吸着材として活性炭が使用されており、活性炭は、停車中には燃料タンクからの蒸散燃料を一時的に吸着または捕集し、運転中には吸着された蒸散燃料を吸気したフレッシュエアーにより置換することで脱着する。そして、脱着された蒸散燃料は、内燃機関にて燃焼される。」
8 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「活性炭Norit R1 Extra」は技術常識(必要に応じて、引用文献2(上記2(1)記載の279頁表3参照。)から成形体と認められるから本件発明1の「成形吸着体」に相当する。
イ 引用発明の「BET表面積が1300m2/g」は本件発明1の「比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下」に相当する。
ウ 引用発明において、n-ブタンの圧力が0.2kPaの25℃のn-ブタン吸着量は明らかではないが、上記1(1)エの図9のグラフから、25℃のn-ブタン吸着量は、圧力の増加に伴って連続的に増加していることが看て取れるから、「25℃のn-ブタン吸着量が、n-ブタンの圧力が0.1929kPaで1.407mmol/gであり」「0.2412kPaで1.663mmol/g」から、両者のデータを一次式で結ぶことによりn-ブタンの圧力が0.2kPaのn-ブタンの吸着量を近似的に求めることができるといえ、約1.445mmol/gとなる。以下同様に、「48.7030kPaで5.179mmol/g、53.9090kPaで5.212mmol/g」から、50kPaで約5.187、「94.4840kPaで5.378mmol/g、99.5060kPaで5.394mmol/g」から、100kPaで約5.396mmol/gとなる。これらの値を全て本件発明1の式1及び式2に代入すると、
P0.2/100=約26.774%
P100/50=約104.017%
となり、本件発明1のP0.2/100が18%以上であり、且つ、P100/50が120%以下であるという条件を満たしている。
よって、引用発明の「25℃のn-ブタン吸着量が、n-ブタンの圧力が0.1929kPaで1.407mmol/gであり、以下同様に、0.2412kPaで1.663mmol/g、48.7030kPaで5.179mmol/g、53.9090kPaで5.212mmol/g、94.4840kPaで5.378mmol/g、99.5060kPaで5.394mmol/gである」は本件発明1の「下記式1:P0.2/100=X÷Y×100・・・(式1)で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ下記式2:P100/50=Y÷Z×100・・・(式2)で表されるP100/50が、120%以下であり、前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである」に相当する。
エ したがって、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「成形吸着体であって、
前記成形吸着体の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、
前記成形吸着体は、下記式1:
P0.2/100=X÷Y×100 ・・・(式1)
で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ
下記式2:
P100/50=Y÷Z×100 ・・・(式2)
で表されるP100/50が、120%以下であり、
前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、
前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記成形吸着体100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである、成形吸着体。」
[相違点1]
成形吸着体に関し、本件発明1は、「キャニスタ用の成形吸着体」であるのに対し、引用発明は、用途が特定されていない点。
[相違点2]
成形吸着体に関し、本件発明1は、「全細孔容積が0.65~1.20cm3/g」であるのに対し、引用発明は、細孔容積が0.622cm3/gである点。
[相違点3]
成形吸着体に関し、本件発明1は、「0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上であ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。
ア 相違点3について
0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上である成形吸着体は、引用文献2~7のいずれにも記載されていない。
また、引用文献1には、吸着については記載されているものの、脱着については記載も示唆もされておらず、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率を特定することの動機付けがない。
さらにいえば、仮に、引用発明の活性炭Norit R1 Extraの0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率を6.00wt%以上とした場合、引用発明のBET表面積、細孔容積及び各吸着量が維持できるのか否かも不明である。
したがって、引用発明に引用文献2~7に記載された事項を適用して、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者にとって容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。
イ まとめ
上記アのとおりであるから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2~7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
9 本件発明2~14について
本件発明2~14は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、いずれも相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記8に示した理由と同様の理由により、本件発明2~14は、当業者が引用発明及び引用文献2~7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
10 小括
以上のとおり、本件発明1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記取消理由3(特許法第29条第2項)によっては、本件発明1~14に係る特許を取り消すことはできない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)理由1(特許法第29条第2項)
本件特許の本件発明9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2~7に記載された事項、さらに、甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)甲第7号証:T.WIGMANS, "INDUSTRIAL ASPECTS OF PRODUCTION AND U SE OF ACTIVATED CARBONS", Corbon, 1989年, Vol. 27, No. 1, pp.13-22
2 上記理由1について
上記第7の9にて説示したとおり、本件発明9は、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるところ、相違点3に係る、成形吸着体が「0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率が、6.00wt%以上であ」るという発明特定事項は、甲第7号証にも記載されていない。
また、仮に、甲第7号証に相違点3に係る上記発明特定事項が、記載又は示唆されていたとしても、上記第7の8(2)にて説示したとおり、引用文献1には、吸着については記載されているものの、脱着については記載も示唆もされておらず、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率を特定することの動機付けがなく、さらにいえば、引用発明の活性炭Norit R1 Extraの0.2%n-ブタンの有効吸脱着量率を6.00wt%以上とした場合、引用発明のBET表面積、細孔容積及び各吸着量が維持できるのか否かも不明である。
よって、上記第7の8に示した理由と同様の理由により、本件発明9は、当業者が引用発明及び引用文献2~7並びに甲第7号証に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由1(特許法第29条第2項)によっては、本件発明9に係る特許を取り消すことはできない。
第9 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由1~3及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の理由1によっては、本件発明1~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701158