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特許異議申立

2023-701031

キャニスタ用吸着材

審判番号
2023-701031
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-540982
登録番号
7250146
請求日
2023年09月27日
審決日
2024年07月10日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本製紙株式会社
  • 【権利者代理人】寺崎 直
  • 【異議申立人】杉浦 健文
審判長/審判官
  • 審判長 河端 賢
  • 審判官 青木 良憲
  • 審判官 倉橋 紀夫
分類
P1651.121-YAA(F02M) / P1651.536-YAA(F02M) / P1651.537-YAA(F02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7250146号発明「キャニスタ用吸着材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7250146号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第7250146号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7250146号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2020年8月20日(優先権主張 2019年8月21日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月23日に特許権の設定登録がされ、同年3月31日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 5年 9月27日 :特許異議申立人杉浦健文(以下「申立人」と いう。)による請求項1~11に係る特許に 対する特許異議の申立て 令和 5年12月26日付け:取消理由通知書 令和 6年 3月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 6年 3月27日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第12 0条の5第5項) なお、上記のとおり、令和6年3月27日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項)を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは意見書の提出がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 上記令和6年3月5日提出の訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、訂正自体を、「本件訂正」という。本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記吸着材は活性炭を含む吸着材であり、 下記式1:」 と記載されているのを、 「前記吸着材は活性炭を含む吸着材であり、 前記吸着材の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、 前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3/gであり、 前記吸着材の平均細孔径が、1.50~1.90nmであり、 前記吸着材の0.2%n-ブタン有効吸脱着量が、3.00wt%以上であり、 下記式1:」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~11も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記吸着材の比表面積が、2500m2/g以下である」 と記載されているのを、 「前記吸着材の比表面積が、1000m2/g以上、2400m2/g以下である」 に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~11も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3である、請求項1~4のいずれいか一項」 と記載されているのを、 「前記吸着材の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gである、請求項1~4のいずれか一項」 に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~11も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に、 「前記吸着材の平均細孔径が、1.50~2.00nm以下である」 と記載されているのを、 「前記吸着材の平均細孔径が、1.60~1.90nmである」 に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7~11も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~11について、請求項2~11はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「活性炭を含む吸着材」に関し、「比表面積」、「全細孔容積」、「平均細孔径」、及び「0.2%n-ブタン有効吸脱着量」について特定されていない。 これに対して、訂正事項1は、 「前記吸着材の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、 前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3/gであり、 前記吸着材の平均細孔径が、1.50~1.90nmであり、 前記吸着材の0.2%n-ブタン有効吸脱着量が、3.00wt%以上であり、」 との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における吸着材の「比表面積」、「全細孔容積」、「平均細孔径」、および「0.2%n-ブタン有効吸脱着量」のそれぞれについて具体的な数値によって特定し、「吸着材」をより具体的に特定し、更に限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0033】~【0035】、【0052】、【0114】~【0119】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「吸着材」の「比表面積」、「全細孔容積」、「平均細孔径」、および「0.2%n-ブタン有効吸脱着量」のそれぞれについて具体的な数値を示して特定し、「吸着材」について概念的により下位の「吸着材」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項4に係る発明では、吸着材の「比表面積が、2500m2/g以下」であることを特定している。 これに対して、訂正事項2は、吸着材の「比表面積が、1000m2/g以上、2400m2/g以下」であるとの記載により、比表面積の数値範囲を減縮して更に限定するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書の【0033】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、「吸着材」の「比表面積」に関し、訂正前の請求項4に記載の「比表面積」の数値範囲よりも概念的により下位の「比表面積」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項5に係る発明では、「前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3である、請求項1~4のいずれいか一項」に記載の吸着材であることを特定している。 これに対して、訂正事項3は、「前記吸着材の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gである、請求項1~4のいずれか一項」に訂正する。 訂正事項3のうち、訂正前の「0.50」との全細孔容積の下限値を「0.65」とする訂正は、全細孔容積の数値範囲を減縮して更に限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、訂正事項3のうち、訂正前の「cm3」との単位を「cm3/g」とする訂正は、全細孔容積の単位の誤記を訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正である。 また、訂正事項3のうち、訂正前の「いずれいか」との記載を「いずれか」とする訂正は、明らかな誤記を訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書の【0034】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、「吸着材」の「全細孔容積」に関し、訂正前の請求項5に記載の「全細孔容積」の数値範囲よりも概念的により下位の「全細孔容積」に限定すること、「全細孔容積」の単位に係る誤記を訂正すること、及び日本語表現の明らかな誤記を訂正することを行うものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項6に係る発明では、吸着材の「平均細孔径が、1.50~2.00nm以下である」であることを特定している。 これに対して、訂正事項4は、吸着材の「平均細孔径が、1.60~1.90nmである」との記載により、平均細孔径の数値範囲を減縮して更に限定するものである。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4のうち、訂正前の「平均細孔径が、1.50~2.00nm以下である」との記載から「以下」との文言を削除する訂正は、数値範囲について「以下」がどの部分についてであるか明瞭ではなかった記載又は誤記を訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明又は同第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、願書に添付した明細書の【0035】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、「吸着材」の「平均細孔径」に関し、訂正前の請求項6に記載の「平均細孔径」の数値範囲よりも概念的により下位の「平均細孔径」に更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 また、訂正事項4のうち、訂正前の「平均細孔径が、1.50~2.00nm以下である」との記載から「以下」との文言を削除する訂正は、数値範囲の表記に関し記載の整合を整え、記載を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 4 小括 上記のとおり、本件訂正による訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定に適合するとともに、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~11]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 キャニスタ用吸着材であって、 前記吸着材は活性炭を含む吸着材であり、 前記吸着材の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、 前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3/gであり、 前記吸着材の平均細孔径が、1.50~1.90nmであり、 前記吸着材の0.2%n-ブタン有効吸脱着量が、3.00wt%以上であり、 下記式1: P0.2/100=X÷Y×100 ・・・(式1) で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ 下記式2: P100/50=Y÷Z×100 ・・・(式2) で表されるP100/50が、120%以下であり、 前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである、 前記吸着材。 【請求項2】 前記P0.2/100が、21%以上である、請求項1に記載の吸着材。 【請求項3】 前記P100/50が、115%以下である、請求項1または2に記載の吸着材。 【請求項4】 前記吸着材の比表面積が、1000m2/g以上、2400m2/g以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項5】 前記吸着材の全細孔容積が、0.65~1.20cm3/gである、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項6】 前記吸着材の平均細孔径が、1.60~1.90nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項7】 前記吸着材の密度が、0.010~0.200g/cm3である、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項8】 前記吸着材が、活性炭素繊維の成形体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項9】 前記吸着材が、自動車に用いるキャニスタ用である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸着材。 【請求項10】 請求項1~9のいずれか一項に記載の吸着材を備えたキャニスタ。 【請求項11】 前記キャニスタは、自動車用のキャニスタであって、吸着材を収納する、主室および副室を備え、 前記副室は、前記主室よりも、前記吸着材を収納する容積が小さく、且つ、外気へ連通する開口部により近い位置に配置されており、 前記吸着材が、前記副室に収納されている、 請求項10に記載のキャニスタ。」 第4 取消理由の概要 当審が令和5年12月26日付けで通知した取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1(特許法第36条第4項第1号) 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由3(特許法第29条第2項) 以下の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1~6 ・引用文献1~4 ・請求項7~11 ・引用文献1~5 4 引用文献等一覧 引用文献1:Christian Blaeker(当審注:「ae」は「aウムラウト」を表す。),et al., "Investigation of load-dependent heat of adsorption of alkanes and alkenes on zeolites and activated carbon", Microporous and Mesoporous Materials 241 (2017) 1-10, 2017年1月3日,p.1-10(甲第1号証) 引用文献2:特開2013-173137号公報(甲第2号証) 引用文献3:特許第4472636号公報(甲第3号証) 引用文献4:特開2007-186403号公報(甲第4号証) 引用文献5:国際公開第2006/022329号(甲第5号証) 第5 取消理由1(特許法第36条第4項第1号)について 1 判断 上記した本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された吸着材は、P0,2/100が、18%以上であり、P100/50が、120%以下であるという、n-ブタンガスの吸着量の比で表される吸着能以外に、比表面積が300m2/g以上、2500m2/g以下であり、全細孔容積が0.50~1.20cm3/gであり、平均細孔径が1.50~1.90nmであり、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量が3.00wt%以上であるという構成が特定された。 これにより、本件発明1の吸着材の複数の物性値が具体化され、発明の詳細な説明の実施例1~4及び比較例1~3についての各種データを、当業者が詳細に1つ1つ対比していけば、どの値をどのように変えると上記物性値がどのように変化するのか推測することができるといえることから、本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者に過度の試行錯誤を強いることなく本件発明1の実施をすることができるようになったといえる。 また、請求項1を引用することで請求項1に記載された上記吸着材を含む本件発明2~11についても、同様に本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が実施をすることができるようになった。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 2 小括 以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するものであるから、上記取消理由1(特許法第36条第4項第1号)によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について 1 判断 (1)上記した本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された吸着材は、P0,2/100が、18%以上であり、P100/50が、120%以下であるという、n-ブタンガスの吸着量の比で表される吸着能以外に、比表面積が300m2/g以上、2500m2/g以下であり、全細孔容積が0.50~1.20cm3/gであり、平均細孔径が1.50~1.90nmであり、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量が3.00wt%以上であるという構成が特定された。 これにより、上記第5で判断したとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなり、その結果として、本件発明1は、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化しているとはいえず、発明の詳細な説明に記載されるに等しいものとなった。 (2)また、本件発明1が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0008】に記載された 「高性能なキャニスタに適した新たな形態の吸着材を提供することにある。」 と認められるところ、発明の詳細な説明には、当該課題解決手段として、例えば、表1-1に記載された実施例1~4のように、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下におけるn-ブタンガスの吸着量が、吸着材100gあたり13.0g、12.7g、12.6g、16.2gであるもののような、一定程度のn-ブタンガスの吸着量を有するものが記載されている。 これに対し、上記した本件訂正によって、本件特許の請求項1に記載された吸着材は、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量が3.00wt%以上であるという構成が特定され、n-ブタンガスの吸着量が限りなく0に近いものを含まないものとなった。 よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されたものとなった。 (3)したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 また、請求項1を引用する本件発明2~本件発明11も、同様に発明の詳細な説明に記載されたものである。 2 小括 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものであるから、上記取消理由2(特許法第36条第6項第1号)によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由3(特許法第29条第2項)について 1 引用文献1 (1)記載事項 ア 「To investigate the load-dependent heat of adsorption a sensor gas calorimeter was developed which allows the simultaneous measurement of adsorption capacity and heat of adsorption in porous materials. A commercially available volumetric measurement device was extended by a newly developed calorimetric measuring cell. Using this apparatus, the load-dependent heat of adsorption of alkanes and alkenes on the zeolites 13X-APG and HiSiv 3000 as well as on the activated carbon Norit RI Extra was investigated.」(1頁要約1~6行) (吸着熱の吸着量依存性を調べるために、多孔質材料の吸着容量と吸着熱を同時に測定できるセンサー式ガス熱量計を開発した。市販の容積測定装置を、新たに開発した熱量測定セルにより拡張した。この装置を用いて、ゼオライト13X-APG及びHiSiv 3000並びに活性炭Norit R1 Extraにおけるアルカン及びアルケンの吸着熱の吸着量依存性を調べた。) イ 「As adsorbents the zeolites 13X-APG and HiSiv 3000 from UOP as well as the activated carbon Norit Rl Extra from Cabot Corporation were selected.」(3頁右欄23~25行) (吸着材として、UOP製のゼオライト13X-APG及びHiSiv 3000並びにCabot Corporation製の活性炭Norit R1 Extraを選択した。) ウ 「 [図:0001415283000001.jpg] 」(4頁表1) ( [図:0001415283000002.jpg] ) エ 「 [図:0001415283000003.jpg] [図:0001415283000004.jpg] 」(8頁 図9のa)及び図9の説明文) ( [図:0001415283000005.jpg] ) オ 「Supplementary data related to this article can be found at http://dx.doi.org/10.1016/j.micromeso.2016.12.037.」(9頁右欄10~11行) (この記事に関連する補足データは、http://dx.doi.org/10.1016/j.micromeso.2016.12.037.で見ることができる。) (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の1頁要約欄、3頁右欄23~25行、4頁左欄表1、8頁右欄図9a、9頁右欄添付A、補足データ(サポート情報)のテーブルS5を参酌すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「吸着材であって、 前記吸着材は活性炭Norit R1 Extraであり、 BET表面積が1300m2/gであり、 細孔容積が0.622cm3/gであり、 平均細孔直径が1.91nmであり、 25℃での、n-ブタンの圧力が0.1929kPaの時にn-ブタンガスの吸着量が1.407mmol/gであり、以下同様に、48.7030kPaの時に5.179mmol/gであり、99.5060kPaの時に5.394mmol/gである、 前記吸着材。」 2 引用文献2 引用文献2には、以下の記載がある。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は吸着材及びその製造方法、並びにキャニスタ及びその使用方法に関する。さらに詳しくは、吸着・脱着性能(以下、吸着・脱着を単に吸脱着という)に優れ、自動車を長時間停車した場合でも燃料ガスの大気への蒸散が少ない燃料蒸散防止用として好適な吸着材とその製造方法、並びに該吸着材を用いたキャニスタとその使用方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、大気環境改善及び地球温暖化防止に対する関心が世界的に高まる中、それらの一因であるガソリン内燃機関の燃料タンクからの燃料蒸散ガスの大気放出低減のため、蒸散燃料抑制装置(キャニスタ)が用いられている。この装慨には、一般的に活性炭等の吸着剤が充填され、蒸散燃料が吸着、捕集されるとともに、エンジン稼動時にはキャニスタ内に、燃焼用の空気を導入して吸着された蒸散燃料を脱着し、エンジン内にて燃焼させるようになっている。」 (2)「【0009】 キャニスタの性能は、活性炭を充填したキャニスタにn-ブタンを特定量吸着させた増量と、空気で脱着させた減量の平均値であるブタン・ワーキング・キャパシティー(BWC)で示されるが、一般的に、炭素原料を常法により造粒し炭化賦活して活性炭とした場合、BWC性能を向上させるに従って見かけ密度が小さくなることにより比熱も小さくなる。」 (3)「【0043】 吸着材のn-ブタン脱着率(%)及びn-ブタン有効吸着量(BWC): 1)JIS K1474に準拠して造粒炭の充填密度を測定する。 2)内径17.5mmのガラスカラムに1)で測定した充填密度に基づき24ミリリットル(mL)の試料を充填し秤量した後(Ag)、25℃の恒温槽へセットする。 3)n-ブタン(純度99.9%以上)をアップフローでガラスカラムに300mL/分の流量で20分以上通気させた後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Cg)。 4)ガラスカラムを再度装置にセットし、ダウンフローで乾燥空気をガラスカラムに240mL/分の流量で20分間通気した後、ガラスカラムを取り外し秤量する(Dg)。 5)上記操作を行い、次の式によりn-ブタン脱着率及び造粒炭1dL当りの脱離量をブタン有効吸着量(BWC)とする。n-ブタン脱着率=(Cg-Dg)/(Cg-Ag)×100(%)、BWC(g/dL)=(Cg-Dg)/0.24」 (4)「【0048】 実施例1~12、比較例1~6 クラレケミカル株式会社製クラレコール3GXをロータリーキルンに入れ920~950℃で水蒸気賦活し、賦活時間を変えることで中心細孔半径3.3、4.2、4.8、5.0nmの4種類の活性炭を得た。そのうち4.8nmのものはBWC法におけるn-ブタン吸着量50%、脱着率77%、BWC11.9g/dLであった。」 3 引用文献3 引用文献3には、以下の記載がある。 (1)「【背景技術】 【0002】 近年、環境への関心が高まっており、有機溶剤、ガソリンなどの液体燃料蒸気の蒸散防止にも注意が払われている。停車中の自動車からの燃料蒸散は、発生源によって燃料タンク系からの蒸散と吸気系からの蒸散とに大別される。以下、燃料タンク系から蒸散する燃料蒸気の蒸散防止装置をキャニスタ、吸気系から蒸散する燃料蒸気の蒸散防止装置に用いられるエレメントをエンジンエアーインテークエレメントという。 【0003】 通常、燃料タンク系から蒸散する燃料蒸気はキャニスタに収容された吸着材により吸着回収される。キャニスタは、燃料タンク系から発生するガソリンに代表される液体燃料蒸気の蒸散防止装置として開発されたものであり、これまで多くのキャニスタが開発され、自動車に搭載されて使用されている。キャニスタに使用される燃料蒸散防止材としては活性炭が多く用いられており、キャニスタにおいて、燃料タンクから発生するガソリンなどの液体燃料から蒸散する蒸気を活性炭に吸着させ、吸着されたガソリン蒸気は、エンジンの作動時に吸入される外気によって脱着され、脱着されたガソリンは吸気管であるエンジンインテークマニホールド(以下、インテークマニホールドと略記する)に導入されてエンジンで燃焼される。 【0004】 従来、キャニスタとしての性能を上げるために、液体燃料蒸気の吸脱着に優れる吸着材の面からの開発と、装置自体の面からの開発が行われて来た。吸着材としては、ヤシ殻炭、木質炭、石炭などの活性炭や、活性炭を成型した成型炭を使用するのが一般的であり、例えば、粒状活性炭に短繊維を加え、エマルジョンをバインダとして成型した成型炭が知られている(特許文献1)。また、酸化処理した改質活性炭も知られており、とくにガソリンとアルコールの混合蒸気に有効であることが記載されている(特許文献2)。さらに、平均充填密度の異なる2種類の活性炭を蒸発燃料捕集装置に使用することが提案されている(特許文献3)。」 (2)「【0042】 なお、参考のため、ガソリンワーキングキャパシティー(GWC)の値(g)も併せて示しているが、GWCとはBWCのブタンの代りにガソリンベーパーを使用する方法で、活性炭キャニスタにおけるガソリン吸脱着性能の目安となるものである。以下GWC値を求める手法を簡単に述べる。RVP(Reid Vapor Pressure)9.0PSI認証燃料を38℃に昇温した後、200mL/分で空気を導入し、バブリングさせてガソリン蒸気を発生させる(発生量約40g/時間)。発生したガソリン蒸気をキャニスタに通過させて出口濃度をFIDガスクロで測定し、5000ppmに達した時点を破過点とする。破過後、10分以内にパージを開始し、キャニスタの容積に対し400倍の乾燥空気を15L/分の流量で通過させ、ガソリンを脱着させる。このサイクルを10回繰返し、最後3回の吸着量と脱着量の平均からGWC値を求める。」 (3)「 [図:0001415283000006.jpg] 」(【0058】【表1】) 4 引用文献4 引用文献4には、以下の記載がある。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、 細孔構造が制御された活性炭、この活性炭の製造方法、及び該活性炭からなる吸着剤等の用途に関する。更に詳しくは、低いBET比表面積でも低級炭化水素ガスなどのガス吸着量が大きく、ガス貯蔵特性に優れた活性炭、この活性炭の製造方法及び、車輌などからの燃料の蒸散を効率よく防止するためのキャニスター(ガソリン蒸発防止装置)、天然ガス燃料等を貯蔵するためのタンクなどの用途に好適な前記活性炭からなる吸着剤等の用途に関する。」 5 引用文献5 引用文献5には、以下の記載がある。 (1)「背景技術 [0002] 活性炭は吸着能に優れているため従来から悪臭の除去、液中の不純物除去、溶剤蒸気の回収、除去などの各種用途に広く使用されている。近年、自動車の排気ガス問題や燃費向上対策がクローズアップされており、地球環境保護の観点から車輌の運行に関しても各種の公害防止対策が運用されている。その一環として活性炭等の多孔質吸着材が蒸散燃料ガス吸着材として利用されており、具体的には一般の車輌には車輌の停止時及び走行中に燃料タンクや気化器のフロート室等の燃料貯留室から生じる蒸散燃料ガスを活性炭に吸着させ、車輌の走行時に吸入される外気によって、吸着された蒸散燃料ガスを脱着させエンジンの吸気管に送り込み燃焼処理するための蒸散燃料ガス処理装置が搭載されている。 [0003] このような蒸散燃料ガス処理装置はキャニスタと呼ばれており、キャニスタにおいて、燃料タンクから蒸散するガソリン蒸気は吸着材に吸着され、吸着されたガソリン蒸気は、エンジンの作動時に吸入される外気によって脱着され、脱着されたガソリン蒸気は、吸気管であるエンジンインテークマニホールドに導入されてエンジンで燃焼される。」 (2)「[0006] また、酸化処理することによって改質した活性炭も知られており、該活性炭はとくにガソリンとアルコールの混合蒸気を使用した自動車のキャニスタ用として優れることが記載されている(特許文献2)。さらに、蒸発燃料の吸着に優れ、かつコスト的にも優れる活性炭として、平均充填密度の異なる2種類の活性炭を使用することが知られている(特許文献3)。」 (3)「[0081] キャニスタを25℃のインキュベータに入れ内部温度が安定するまで放置し初期重量(1a)を測定した。次に純度99%以上のn-ブタンを1L/分の流量で上向きに流しn-ブタンを吸着させ、出口濃度が3000ppmに達した時点でn-ブタンの供給を止めてキャニスタの重量(W)を測定し初期重量(1a)からの増量(W-1a)を吸着量とした。 [0082] キャニスタを再度25℃のインキュベータに入れ5分間放置後下向流で空気を15L/分で20分間、合計300Lを流してn-ブタンをパージした。パージ後の重量(1b)を測定し吸着後の重量(W)との差を脱着量(W-1b)とした。この吸着・パージの操作を6回繰り返し最後の5、6回の吸着量と脱着量の平均値をn-ブタンワーキングキャパシティー(BWC)として次式によりBWCを求めたところ79g/Lであった。なお、活性炭3GXのみを充填したキャニスタによるBWCは56.5g/Lであり、これと比較して40%向上していることがわかる。 BWC=[(W-5a)+(W-5b)+(W-6a)+(W-6b)]/4」 6 本件発明1について (1)対比 ア 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「吸着材」と本件発明1の「キャニスタ用吸着材」とは、「吸着材」という限りにおいて共通する。 また、引用発明の「活性炭Norit R1 Extra」は、本件発明1の「活性炭を含む吸着材」に相当する。 また、引用発明の「BET表面積が1300m2/gであり」は、本件発明1の「前記吸着材の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり」に相当し、以下同様に「細孔容積が0.622cm3/gであり」は「前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3/gであり」に相当する。 また、引用発明において、25℃でのn-ブタンガスの吸着量は、図9aを参酌すると各圧力下で滑らかに変化していることが看てとれるから、0.2kPaの時には0.1929kPaの時と略同じ約1.407mmol/gであり、以下同様に、50kPaの時には48.7030kPaの時と略同じ約5.179mmol/gであり、100kPaの時には99.5060kPaの時と略同じ約5.394mmol/gであるといえる。 そうすると、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下におけるn-ブタンガスの吸着量(約1.407mmol/g)と、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、n-ブタンガスの吸着量(約5.394mmol/g)との比は、約1.407/約5.394=約26.08%であり18%以上であることは明らかである。また、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下におけるn-ブタンガスの吸着量(約5.394mmol/g)と、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、n-ブタンガスの吸着量(約5.179mmol/g)との比は、約5.394/約5.179=約104.15%であり120%以下であることは明らかである。 以上より、引用発明の「25℃での、n-ブタンの圧力が0.1929kPaの時にn-ブタンガスの吸着量が1.407mmol/gであり、以下同様に、48.7030kPaの時に5.179mmol/gであり、99.5060kPaの時に5.394mmol/gである」は、 本件発明1の「下記式1: P0.2/100=X÷Y×100 ・・・(式1) で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ 下記式2: P100/50=Y÷Z×100 ・・・(式2) で表されるP100/50が、120%以下であり、 前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである」に相当する。 よって、両者は、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。 [一致点] 「吸着材であって、 前記吸着材は活性炭を含む吸着材であり、 前記吸着材の比表面積が、300m2/g以上、2500m2/g以下であり、 前記吸着材の全細孔容積が、0.50~1.20cm3/gであり、 下記式1: P0.2/100=X÷Y×100 ・・・(式1) で表されるP0.2/100が、18%以上であり、且つ 下記式2: P100/50=Y÷Z×100 ・・・(式2) で表されるP100/50が、120%以下であり、 前記式1において、Xは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が0.2kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 Yは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が100kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、 前記式2において、Zは、25℃、n-ブタンガスのガス圧が50kPaの雰囲気下における、前記吸着材100重量部あたりのn-ブタンガスの吸着量(単位:重量部)を表し、Yは前記式1中のYと同じである、 前記吸着材。」 [相違点1] 吸着材に関し、本件発明1は、「キャニスタ用吸着材」であるのに対し、引用発明は用途が特定されていない点。 [相違点2] 吸着材に関し、本件発明1は、「吸着材の平均細孔径が、1.50~1.90nm」であるのに対し、引用発明は「平均細孔直径が1.91nm」である点。 [相違点3] 吸着材に関し、本件発明1は、「吸着材の0.2%n-ブタン有効吸脱着量が、3.00wt%以上」であるのに対し、引用発明は吸着材の0.2%n-ブタン有効吸脱着量が不明な点。 (2)判断 事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。 ア 相違点3について 0.2%n-ブタンの有効吸脱着量が、3.00wt%以上である吸着材は、引用文献2~5のいずれにも記載されていない。 また、引用文献1には、吸着については記載されているものの、脱着については記載も示唆もされておらず、0.2%n-ブタンの有効吸脱着量を特定することの動機付けがない。 さらにいえば、仮に、引用発明の活性炭Norit R1 Extraの0.2%n-ブタンの有効吸脱着量を3.00wt%以上とした場合、引用発明のBET表面積、細孔容積、平均細孔直径及び各吸着量が維持できるのか否かも不明である。 したがって、引用発明に引用文献2~5に記載された技術を適用して、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、当業者にとって容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。 イ まとめ 上記アのとおりであるから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献2~5に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 7 本件発明2~11について 本件発明2~11は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、いずれも相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記6に示した理由と同様の理由により、本件発明2~11は、当業者が引用発明及び引用文献2~5に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。 8 小括 以上のとおり、本件発明1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記取消理由3(特許法第29条第2項)によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由1~3によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701031

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