特許異議申立
2023-701148
粘着テープ
- 審判番号
- 2023-701148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-084199
- 登録番号
- 7271089
- 請求日
- 2023年10月27日
- 審決日
- 2024年10月30日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】西郷 新
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 関根 裕
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J) / P1651.536-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7271089号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7271089号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7271089号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年4月25日(優先権主張 平成29年5月1日(以下「優先日」という。) 日本国)の出願であって、令和5年4月28日にその特許権の設定登録がされ、同年5月11日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年10月27日に特許異議申立人である西郷 新(以下「申立人」という。)によって、その全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後、令和6年3月26日付けで取消理由を通知したところ、同年5月22日に意見書が提出されたものである。
第2 本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤と、重量平均分子量が1万以上である粘着付与樹脂会合体とを含有し、
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーは、検出波長254nmのUV検出器により検出したときにUV吸収を示さず、
前記粘着付与樹脂、前記架橋剤、及び、前記粘着付与樹脂会合体は、検出波長254nmのUV検出器により検出したときにUV吸収を示し、
検出波長254nmのUV検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて前記粘着剤層のゾル分を分析して得られた分子量分布曲線において、ポリスチレン換算分子量500~3000での最大吸収強度(B)に対するポリスチレン換算分子量1万での吸収強度(A)の比率(A/B)が15%以上であり、かつ、前記粘着付与樹脂及び前記架橋剤は、ポリスチレン換算分子量500~3000の範囲にUV吸収を示し、
前記粘着付与樹脂は、1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数が0.7個以上である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂は、ロジンエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーは、架橋性官能基として水酸基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーは、リビングラジカル重合により得られたアクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万以上、200万以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。」
第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、後記(1)~(4)の申立理由を主張し、その証拠方法として後記(5)の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等ともいう。)を提出した。甲1及び甲3は本件特許に係る出願の優先日よりも前に公開されたものであるが、甲2は、当該優先日後に公開されたものである。
(1)新規性
本件発明1~6は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)進歩性
本件発明1~6は、甲1に記載された発明、並びに甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)サポート要件
本件発明1~6に係る出願は、請求項1~6の記載が後記ア及びイの点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア アクリル系ポリマーの重合条件について
本件発明は、アクリル系ポリマーの重合条件について何ら特定しておらず、アクリル系ポリマーがリビングラジカル重合により得られたものであっても、フリーラジカル重合により得られたものであっても、本件発明の範囲に包含される。本件明細書の段落【0017】には、リビングラジカル重合によれば、例えばフリーラジカル重合等と比較して粘着テープの粘着力が向上し、定荷重がかかったときに剥がれにくくなると記載されており、当該記載からすると、本件発明が解決しようとする課題を解決するためには、少なくともリビングラジカル重合により得られるアクリル系ポリマーの使用が必要であると解され、実施例においても、フリーラジカル重合により得られたアクリル系ポリマーを使用することで前記課題を解決できることは記載されていないところ、本件発明は、前記課題を解決し得ない範囲を包含しており、当業者であってもその全範囲にわたって前記課題を解決できるものであると認識できるとはいえないから、本件の特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たしていない。
イ 粘着剤層のゲル分率について
本件発明は、粘着剤層のゲル分率を何ら特定しておらず、粘着剤層のゲル分率が如何なる値である場合でも、本件発明の範囲に包含される。本件明細書の段落【0045】には、ゲル分率が50重量%を超えると、粘着テープが剥がれやすくなることがあると記載されており、当該記載からすると、粘着剤層のゲル分率を何ら特定していない本件発明は、前記課題を解決し得ない範囲を包含しており、当業者であってもその全範囲にわたって前記課題を解決できるものであると認識できるとはいえないから、本件の特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たしていない。
(4)実施可能要件
本件発明1~6に係る出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が後記ア及びイの点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 粘着付与樹脂の1分子中に含まれるアルコール性水酸基数について
本件発明は、粘着付与樹脂の1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数が0.7個以上であることを規定しているが、本件明細書には、前記水酸基の数を特定する方法について具体的な記載はないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
イ 粘着付与樹脂会合体について
本件発明の「重量平均分子量が1万以上である粘着付与樹脂会合体」について、本件明細書の段落【0036】には、「粘着付与樹脂会合体」は、粘着剤層形成時に粘着剤層中で形成してもよいと記載されているが、実施例1および比較例3で形成された粘着剤層には「粘着付与樹脂会合体」は含まれておらず、当業者であっても本件明細書及び図面の記載に基づいて、粘着剤層形成時に粘着剤層中で粘着付与樹脂会合体を形成できるものとはいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
(5)証拠方法
甲1:国際公開第2016/067406号
甲2:特開2018-154832号公報
甲3:特開2003-13035号公報
2 取消理由の概要
令和6年3月26日付の取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1:甲1を主引例とした新規性違反
本件発明1~6は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)取消理由2:甲1を主引例とした進歩性違反
本件発明1~6は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲3及び後記(3)の参考文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)当審で追加した証拠
参考文献1:国際公開第2017/010422号
第4 当審の判断
1 取消理由1及び2(新規性違反及び進歩性違反)について
(1)甲号証等の記載
ア 甲1には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、薄い粘着テープであっても剥がれにくく、被着体に対して高い定荷重剥離性と粘着剤凝集力を発揮できる粘着テープに関する。」
「[0014] 図1にリビングラジカル重合を説明する模式図を示した。リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合では、生長末端ラジカルが失活することなく、また反応中に新しくラジカル種が発生することもなく、反応が進行する。その反応途中では、全てのポリマー鎖が均一にモノマーと反応しながら重合し、全てのポリマーの組成は均一に近づく。そのため、架橋性官能基含有モノマー12は、リビングラジカル重合架橋性アクリルポリマー1の全てのポリマーに含まれる。このようなリビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー1を、架橋剤を用いて架橋すると、ほとんど全てのポリマーがポリマー鎖間の架橋に関与することができる。とりわけ架橋性官能基含有モノマーを含まない低分子量成分が少ないため、ゲル分率15重量%以下の微架橋であっても、全てのポリマー鎖が架橋に関与する確率が向上する。図2に、リビングラジカル重合架橋性アクリルポリマーを架橋した場合を説明する模式図を示した。リビングラジカル重合架橋性アクリルポリマーでは、全てのポリマーの組成は均一であり、架橋性官能基含有モノマーを含むことから、すべてのポリマー鎖が架橋に関与している。なお、図2では架橋性官能基の例として水酸基を記載した。このように、ほとんど全てのポリマーがポリマー鎖間の架橋に関与することができることから、薄い粘着テープであっても剥がれにくく、被着体に対して高い定荷重剥離性と粘着剤凝集力を発揮できる粘着テープを得ることができる。」
「[0038] 上記粘着付与樹脂は、水酸基価の好ましい下限が25、好ましい上限が55である。上記水酸基価が上記範囲を外れると、粘着テープの被着体に対する定荷重剥離性が低下することがある。上記水酸基価のより好ましい下限は30、より好ましい上限は50である。
なお、水酸基価は、JIS K1557(無水フタル酸法)により測定できる。」
「[0041]・・・上記重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製ペンセルD135(水酸基価45、軟化温度135℃)、同社製ペンセルD125(水酸基価34、軟化温度125℃)、同社製ペンセルD160(水酸基価42、軟化温度160℃)等が挙げられる。・・・」
「[0053] (ラジカル重合ポリマー)
(合成1)
(合成1-1)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモーイソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを得た。
[0054] (合成1-2)
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、合成例1-1で製造した2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル38μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示すモノマー(BA:ブチルアクリレート、Aac:アクリル酸、HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液を得た。
得られたリビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
[0055] (合成2)
合成1-1で製造した2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを58μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)4.2mgを変えた以外は合成1-2と同様にしてリビングラジカル重合ポリマー含有溶液を得て、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
[0056] (合成3)
合成1-1で製造した2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを12μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.9mgを変えた以外は合成1-2と同様にしてリビングラジカル重合ポリマー含有溶液を得て、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。」
「[0058] (合成5)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル50gを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、表1に示すモノマーの合計100gを2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、フリーラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。
合成1と同様にして、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
[0059] [表1]
[図:0001416468000001.jpg]
[0060] (実施例1~5、比較例1~6)
上記で得られたラジカル重合架橋性ポリマー含有溶液に、その不揮発分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、架橋剤としてコロネートL(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン社製)又はTetrad-X(エポキシ系架橋剤、三菱ガス化学社製)を表2に示す所定量添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後に表2に示すテープ厚みとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。なお、粘着剤層の両側の表面には、粘着剤層を保護するための離型フィルムを積層した。
[0061] 得られた粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、離型フィルムを剥離除去した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
[0062] (実施例6~8、比較例7)
上記で得られたラジカル重合架橋性ポリマー含有溶液に、その不揮発分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、架橋剤としてコロネートL(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン社製)、粘着付与樹脂としてペンセルD135(重合ロジンエステル、荒川化学社製)を表2に示す所定量添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後に表2に示すテープ厚みとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。なお、粘着剤層の両側の表面には、粘着剤層を保護するための離型フィルムを積層した。得られた粘着テープの粘着剤層のゲル分率を、実施例1と同様の方法により測定した。
[0063] (評価)
実施例、比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表2に示した。」
「[0066]
[表2]
[図:0001416468000002.jpg]
」
「[図2]
[図:0001416468000003.jpg]
」
イ 甲2には、次の記載がある。
「【0042】
なお、上記粘着付与樹脂の1分子中に含まれるアルコール性水酸基数は、例えば、以下のようにして測定される。
まず、粘着付与樹脂をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍に希釈して得られた希釈液を、フィルター(例えば、ポリテトラフルオロエチレンからなるポア径0.2μmのフィルター)で濾過する。得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(GPC、例えばWaters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリスチレン換算分子量を測定して、数平均分子量を求める。更に、JIS K1557(無水フタル酸法)により水酸基価を測定し、下記式(1)を用いて粘着付与樹脂の1分子中に含まれるアルコール性水酸基数を算出する。
水酸基数=(Mn×OHV)/56110 (1)
(Mn:粘着付与樹脂の数平均分子量、OHV:粘着付与樹脂のアルコール性水酸基の水酸基価(mgKOH/g))」
ウ 甲3には、次の記載がある。
「【0099】配合例2~11
表2に示したように、感圧接着性ポリマーエマルションの番号と、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)および粘着付与剤水分散体(DE-1)の配合量を変更した以外は、配合例1と同様にして、化合物(C)の配合前のエマルションABDE-2~ABDE-11を調製した。なお、ABDE-6については、粘着付与剤として「ペンセルD160」の変わりに「ペンセル135」(酸価10~16;重合ロジンエステル;荒川化学社製;Mw=1450、Mn=1080)を用いて調製した粘着付与剤水分散体(DE-2)を配合した。」
エ 本件特許に係る出願の優先日前に公知となった参考文献1には、次の記載がある。
[0198] 平均水酸基数=水酸基価×数平均分子量/56100
水酸基価は、JIS K1557-1(2007)に準拠したA法(アセチル化法)により測定した。
(2)甲1に記載された発明
ア 甲1A発明
甲1(前記(1)ア参照。)の[0066]の[表2]に記載された「実施例7」に着目し、その組成や製造方法について、同[0053]、[0054]、[0059]及び[0062]の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1A発明)
「合成1のポリマー成分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤であるコロネートLを0.8重量部と、粘着付与樹脂であるペンセルD135(重合ロジンエステル)を10重量部とを添加して攪拌し、得られた不揮発分30重量%の粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに乾燥後のテープ厚みが5.0μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥して得られた、ゲル分率10.0重量%の粘着剤層の両側の表面に離型フィルムを積層した粘着テープであって、
合成1は、2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル38μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器内に、モノマー(BA:ブチルアクリレート96.7重量%、Aac:アクリル酸3重量%、HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート0.3重量%)の合計100gと、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行って得られた、リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液であって、
そのポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して求められた重量平均分子量(Mw)は60万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であり、Conv.(ポリマー重合率)は90%である、粘着テープ。」
イ 甲1B発明
同様に、甲1(前記(1)ア参照。)の[0066]の[表2]に記載された「実施例6」に着目し、その組成や製造方法について、同[0053]~[0055]、[0059]及び[0062]の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1B発明)
「合成2のポリマー成分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤であるコロネートLを1重量部と、粘着付与樹脂であるペンセルD135(重合ロジンエステル)を10重量部とを添加して攪拌し、得られた不揮発分30重量%の粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに乾燥後のテープ厚みが15.0μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥して得られた、ゲル分率10.0重量%の粘着剤層の両側の表面に離型フィルムを積層した粘着テープであって、
合成2は、2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル58μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)4.2mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器内に、モノマー(BA:ブチルアクリレート96.7重量%、Aac:アクリル酸3重量%、HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート0.3重量%)の合計100gと、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行って得られた、リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液であって、
そのポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して求められた重量平均分子量(Mw)は40万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であり、Conv.(ポリマー重合率)は91%である、粘着テープ。」
ウ 甲1C発明
同様に、甲1(前記(1)ア参照。)の[0066]の[表2]に記載された「実施例8」に着目し、その組成や製造方法について、同[0053]、[0054]、[0056]、[0059]及び[0062]の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1C発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1C発明)
「合成3のポリマー成分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤であるコロネートLを0.6重量部と、粘着付与樹脂であるペンセルD135(重合ロジンエステル)を20重量部とを添加して攪拌し、得られた不揮発分30重量%の粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに乾燥後のテープ厚みが5.0μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥して得られた、ゲル分率5.0重量%の粘着剤層の両側の表面に離型フィルムを積層した粘着テープであって、
合成3は、2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル12μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.9mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器内に、モノマー(BA:ブチルアクリレート96.7重量%、Aac:アクリル酸3重量%、HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート0.3重量%)の合計100gと、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行って得られた、リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液であって、
そのポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して求められた重量平均分子量(Mw)は200万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であり、Conv.(ポリマー重合率)は90%である、粘着テープ。」
エ 甲1発明
前記「甲1A発明」~「甲1C発明」を総称して「甲1発明」ともいう。
(3)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「粘着剤層の両側の表面に離型フィルムを積層した粘着テープ」は、本件発明1の「粘着剤層を有する粘着テープ」に相当する。
甲1発明の「(合成1~3の)リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液」は、モノマー成分として、カルボキシ基を有するアクリル酸と、ヒドロキシ基を有する2-ヒドロキシエチルアクリレートを含むものであるから、本件発明1の「架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー」に相当する。
甲1発明の「粘着付与樹脂であるペンセルD135(重合ロジンエステル)」は、本件発明1の「粘着付与樹脂」に相当する。
甲1発明の「イソシアネート系架橋剤であるコロネートL」は、本件発明1の「架橋剤」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含有することを特徴とする粘着テープ。」
<相違点1>
本件発明1は「重量平均分子量が1万以上である粘着付与樹脂会合体」を含むのに対し、甲1発明は、その明示がない点。
<相違点2>
本件発明1は「架橋性官能基を有するアクリル系ポリマーは、検出波長254nmのUV検出器により検出したときにUV吸収を示さず」と特定されるのに対し、甲1発明は、その明示がない点。
<相違点3>
本件発明1は「前記粘着付与樹脂、前記架橋剤、及び、前記粘着付与樹脂会合体は、検出波長254nmのUV検出器により検出したときにUV吸収を示」すと特定されるのに対し、甲1発明は、その明示がない点。
<相違点4>
本件発明1は「検出波長254nmのUV検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて前記粘着剤層のゾル分を分析して得られた分子量分布曲線において、ポリスチレン換算分子量500~3000での最大吸収強度(B)に対するポリスチレン換算分子量1万での吸収強度(A)の比率(A/B)が15%以上」であるのに対し、甲1発明は、その比率が定かでない点。
<相違点5>
本件発明1は「前記粘着付与樹脂及び前記架橋剤は、ポリスチレン換算分子量500~3000の範囲にUV吸収を示」すと特定されるのに対し、甲1発明は、その明示がない点。
<相違点6>
本件発明1は「粘着付与樹脂は、1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数が0.7個以上」であるのに対し、甲1発明は、その明示がない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
a 甲1発明と本件発明1の実施態様のポリマー、架橋剤及び粘着付与樹脂の種類は、ほぼ同じものであるといえる。
すなわち、ポリマーの種類について、甲1発明と本件発明1の実施態様のポリマー中の反応性官能基のカルボキシ基及びヒドロキシ基の割合について、甲1発明の「(合成1~3の)リビングラジカル重合架橋性アクリル系ポリマー含有溶液」は、反応性官能基を有するモノマー成分が、カルボキシ基を有するAac:アクリル酸3重量%と、ヒドロキシ基を有するHEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート0.3重量%であるのに対し、本件発明1の実施態様の「架橋性官能基を有するアクリル系ポリマー」の反応性官能基を有するモノマー成分は、本件明細書の【0056】に、カルボキシ基を有するアクリル酸(AAc)2.9重量部と、ヒドロキシ基を有するアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)0.1重量部であることが記載されているから、甲1発明と本件発明1とでは、ポリマー中の反応性官能基のカルボキシ基の割合及びヒドロキシ基の割合がほぼ同程度である。
また、架橋剤の種類について、甲1発明と本件発明1の実施態様の「架橋剤」はともに「コロネートL」である。
また、粘着付与樹脂の種類について、甲1発明の粘着付与樹脂である「ペンセルD135」は、甲1(前記(1)ア参照。)の【0041】に「重合ロジンエステル樹脂」及び「水酸基価45、軟化温度135℃」と記載され、甲3(前記(1)ウ参照。)の【0099】に「酸価10~16」及び「Mn=1080の重合ロジンエステル」と記載されており、これらの記載から、平均水酸基数を計算すると、45×1080/56100≒0.87であるから、本件発明1の粘着付与樹脂の実施例である本件明細書の【0058】の「ロジンエステル系樹脂1(OH基数0.8個)・・・1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数が0.8個・・・カルボキシル基の数が0.1個、軟化点が157℃であるロジンエステル系樹脂」と同様の粘着付与樹脂である。
b 次に、本件明細書の実施例1及び比較例1、並びに甲1A発明~甲1C発明のポリマー100重量部に対する、架橋剤及び粘着付与樹脂の配合量を比較すると、次のようになる。
・実施例1
アクリル系ポリマー 100重量部
粘着付与樹脂 9.5重量部
粘着付与樹脂会合体 0.5重量部
架橋剤 0.8重量部
比率(A/B) 17%
・比較例1
アクリル系ポリマー 100重量部
粘着付与樹脂 10重量部
粘着付与樹脂会合体 -重量部
架橋剤 0.8重量部
比率(A/B) 10%
・甲1A発明
アクリル系ポリマー 100重量部
粘着付与樹脂 10重量部
架橋剤 0.8重量部
・甲1B発明
アクリル系ポリマー 100重量部
粘着付与樹脂 10重量部
架橋剤 1重量部
・甲1C発明
アクリル系ポリマー 100重量部
粘着付与樹脂 20重量部
架橋剤 0.6重量部
これらのうち、甲1A発明は配合比が比較例1と同様であるものの、比較例1の比率(A/B)は10%であるから、甲1A発明が、本件発明1で特定される「比率(A/B)が15%以上」を充足する蓋然性は低い。
c また、甲1A発明~甲1C発明について、粘着付与樹脂のOH基数と、架橋剤のNCO基の比を計算すると、粘着付与樹脂であるペンセルD135の数平均分子量(Mn)は1080、1分子あたりのOH基数は0.87個であり、架橋剤であるコロネートLの数平均分子量(Mn)は692.67、1分子あたりのOH基は3個であるから、次のようになる。
[図:0001416468000004.jpg]
この計算結果によれば、甲1A発明~甲1C発明のいずれにおいても、コロネートLのNCO基数がペンセルD135のOH基数よりも少ない状況であるから、甲1A発明よりもペンセルD135の量を増やした甲1C発明においては、本件発明1で特定される「比率(A/B)が15%以上」を充足する蓋然性は低い。また、甲1B発明は、コロネートLのNCO基数を増やすものであるが、その増加割合は0.0043/0.0035=1.2に過ぎないから、本件発明1で特定される「比率(A/B)が15%以上」を充足する蓋然性は低い。
d そうすると、相違点4は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
e また、甲1~甲3及び参考文献1のいずれにも、粘着付与樹脂会合体に着目した記載はなく、その量を増やすことについては記載も示唆もない。
そうすると、本件発明1は、相違点1~3、5及び6について検討するまでもなく、甲1発明及び甲1~甲3及び参考文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の17頁6行~15行(相違4についての検討)において、概略、本件明細書の【0038】によれば、粘着付与樹脂の配合量に粘着付与樹脂会合体の生成量が左右されることが読み取れ、本件特許比較例1および比較例3の記載からも、粘着付与樹脂の配合量を増加することで、比率(A/B)も増加することが読み取れるから、本件特許比較例1よりも粘着付与樹脂の配合量が多い甲1実施例8等は、比率(A/B)が15%以上となる蓋然性が高い、との主張をしている。
しかしながら、前記(イ)cで検討したとおり、粘着付与樹脂のOH基と架橋剤のNCO基の数をみると、甲1A発明~甲1C発明のいずれにおいても、架橋剤のNCO基が不足しているから、粘着付与樹脂の配合量を増加させても、粘着付与樹脂会合体の量が増えることはない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(エ)小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に該当するところ、上記ア(エ)のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、同様の理由により、本件発明2~6も、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
2 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立ての理由について
(1)申立人は、特許異議申立書の19頁6行~21頁19行において、概略以下の主張をしている。
ア サポート要件違反について
(ア)本件発明が解決しようとする課題は「薄い粘着テープ又は線幅の狭い粘着テープであっても優れた粘着力を有し、定荷重がかかったときに剥がれにくい粘着テープを提供すること(本件明細書の【0005】)」であるが、本件明細書の【0017】等の記載によれば、前記課題を解決するためには、少なくともリビングラジカル重合により得られるアクリル系ポリマーの使用が必要であると解されるから、アクリル系ポリマーの重合条件について何ら特定されていない本件発明1は、前記課題を解決し得ない範囲を包含している。
(イ)本件明細書の【0045】には「粘着剤層は、ゲル分率が50重墓%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が50重量%を超えると、上記粘着剤層の架橋密度が高くなりすぎて、粘着テープが剥がれやすくなることがある。」と記載されているから、粘着剤層のゲル分率を何ら特定していない本件発明1は、前記課題を解決し得ない範囲を包含している。
イ 実施可能要件違反について
(ア)本件明細書には、水酸基数を測定する方法や、粘着付与樹脂1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数を計算する式について記載はないから、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
(イ)本件特許の比較例1および比較例3には、アクリル系ポリマー1と、OH基数0.8個のロジンエステル系樹脂1と、イソシアネート系架橋剤(コロネートL)を含む粘着剤溶液から形成される粘着剤層が記載されているが、当該粘着剤層には『粘着付与樹脂会合体』は含まれていない(本件明細書の段落【0067】、表1)から、当業者であっても、本件明細書及び図面の記載に基づいて、粘着剤層形成時に粘着剤層中で粘着付与樹脂会合体を形成できるものとは言えない。
(2)当審の判断
ア サポート要件違反について
前記(1)ア(ア)及び(イ)について、本件特許は「「粘着付与樹脂会合体」を粘着剤層中に敢えて一定量以上存在させること」「ポリスチレン換算分子量500~3000での最大吸収強度(B)に対するポリスチレン換算分子量1万での吸収強度(A)の比率(A/B)が15%以上とすること」により、前記課題を解決するものとされており、「「粘着付与樹脂会合体」を粘着剤層中に敢えて一定量以上存在させることにより、「粘着付与樹脂会合体」がブリードして被着体との界面との界面に偏析したりすることによって、粘着テープが特に剥がれにくくなる」との作用機作も示されているところ(本件明細書の段落【0009】)、アクリル系ポリマーの重合条件や、粘着剤層のゲル分率の値によらず、前記「比率(A/B)が15%以上」であれば課題を解決できるものと認められる。
イ 実施可能要件違反について
前記(1)イ(ア)について、粘着付与樹脂1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数を計算する式は、例えば、参考文献1に「平均水酸基数=水酸基価×数平均分子量/56100」(前記1(1)エ)と記載されるように慣用されているものであるから、当業者であれば、本件明細書及び図面の記載に基づいて、粘着付与樹脂1分子中に含まれるアルコール性水酸基の数を計算することができる。
また、前記(1)イ(イ)について、本件明細書の【0057】にはロジンエステル系樹脂とコロネートLを用いて重量平均分子量が30万の粘着付与樹脂会合体を得たことが記載されており、当業者であれば、本件明細書及び図面の記載に基づいて、粘着付与樹脂重合体を形成することができる。
加えて、本件明細書の【0067】の表1の「比較例1」及び「比較例2」は、「粘着付与樹脂会合体」を添加しなくても、「比率(A/B)」が10重量%及び5重量%となったこと、すなわち、重量平均分子量が1万程度の粘着付与樹脂会合体が生成したことが記載されているから、当業者であれば、本件明細書及び図面の記載に基づいて、粘着付与樹脂重合体を形成することができる。
したがって、特許異議の申立ての理由には、いずれも理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701148