特許異議申立
2023-701092
低分子量絹組成物および絹組成物の安定化
- 審判番号
- 2023-701092
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-143447
- 登録番号
- 7257112
- 請求日
- 2023年10月12日
- 審決日
- 2024年02月13日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
- 【権利者代理人】山本 秀策
- 【権利者代理人】森下 夏樹
- 【異議申立人】寺澤 佳奈美
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 藤井 美穂
- 審判官 飯室 里美
- 分類
- P1651.537-Y (C07K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第70条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7257112号発明「低分子量絹組成物および絹組成物の安定化」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7257112号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7257112号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成26年 3月14日(パリ条約による優先権主張 2013年 3月15日 (US)アメリカ合衆国 2013年 6月 4日 (US)アメリカ合衆国 2013年 9月27日 (US)アメリカ合衆国 2013年11月27日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2016-503176号の一部を、平成30年 7月31日に新たな特許出願としたものであって、令和 5年 4月 5日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年 4月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和 5年10月12日に寺澤 佳奈美は、特許異議の申立てを行った。
2 本件発明
特許第7257112号の請求項1~12の特許に係る発明(以下、「本件発明1~12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(a)ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物であって、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、前記指定範囲が、3.5kDa以上の下限と120kDa以下の上限との間であることを特徴とする低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物であって、
前記絹フィブロイン組成物は、少なくとも5%のベータシート結晶化度含量を含み、
前記組成物は、6カ月の長さの時間にわたる4℃での保存後に絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる固体形態であり、
前記組成物は、6カ月の長さの時間にわたる4℃での保存後に水中における同じ溶解性を維持する、
組成物。
【請求項2】
前記指定範囲が、(i)5~120kDaの間;(ii)10~120kDaの間;(iii)15~120kDaの間;(iv)20~120kDaの間;(v)20~110kDaの間;(vi)20~100kDaの間;(vii)20~90kDaの間;(viii)20~80kDaの間;(ix)30~120kDaの間;(x)30~100kDaの間;(xi)30~90kDaの間;(xii)30~80kDaの間;(xiii)40~100kDaの間;または(xiv)40~90kDaの間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
総絹フィブロイン断片集団の35%以下が、120kDa~200kDaの範囲内の分子量を有する、請求項1から2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%が、前記指定範囲の分子量を有する、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記低分子量絹フィブロイン組成物が室温で水溶液中に少なくとも95%可溶性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記低分子量絹フィブロイン組成物が1mg/s~100mg/sの溶解速度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を含む絹フィブロイン粒子を含む組成物。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物であって、フィルム、シート、ゲルまたはヒドロゲル、メッシュ、マット、不織マット、布地、スキャフォールド、チューブ、ブロック、繊維、粒子、粉末、3次元構築物、インプラント、発泡体、針、凍結乾燥物品、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される形態にある、組成物。
【請求項9】
請求項1から6および8のいずれか一項に記載の組成物、および基材を含む物品であって、前記絹フィブロイン断片が、前記基材中に分散しているか、前記基材上に沈着しているか、またはこれらの組合せである、物品。
【請求項10】
前記基材が、固体多孔質基材であるか、またはそれを含む、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記固体多孔質基材が紙を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
絹フィブロイン溶液を形成する方法であって、水中に非飽和濃度で請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物または請求項9から11のいずれか一項に記載の物品を溶解させ、それによって絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するステップを含む、方法。」
3 申立理由の概要
(1)申立理由1(明確性)
本件発明の請求項1、及び、請求項1の従属項に係る請求項2~12の記載は、以下のア~エの点で明確性要件に違反し、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア.本件特許の請求項1では、「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物」によって特定される事項が明確でなく、本件発明1の範囲が明確でない。
イ.本件発明1に係る組成物に含まれる低分子絹フィブロイン組成物は、「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」という構成を備え、「組成物」との語は、一般的に、複数の成分を組み合わせたものと理解されるが、本件発明1に係る「組成物」と「低分子量絹フィブロイン組成物」とを区別することができず、本件発明1に係る組成物の範囲が明確でない。
ウ.本件発明1は、絹フィブロイン断片の集団中の絹フィブロイン断片の総数のうち、15%以下に相当する絹フィブロイン断片が200kDaを超える分子量のものであることを特定しているが、「総数の15%以下」との特定において、下限値が特定されていないため、当該絹フィブロイン断片の集合が200kDaを超える分子量の絹フィブロイン断片を含まない(すなわち、0%) をも含むのか否かが明確でない。
エ.本件発明1に係る組成物は、6カ月の長さにわたる4℃での保存後に、「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」を形成するように水中に可溶化することができる固体形態のものであるが、本件発明1では、単に「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる」と記載しているのみであり、どの程度の温度で、どの程度の量の水に対して可溶化できるのかを特定していないから、本件発明1に係る組成物の範囲が明確でない。また、本件発明の請求項1では、「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」を規定するが、「絹フィブロイン凝集体」の範囲が明確でない。
4 当審の判断
当審は、申立人が主張する上記の申立理由1 ア~エは、いずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件発明1~12に係る特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものと判断する。
1.申立理由1(明確性要件)の検討
(1)明確性要件の考え方
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)本件発明1の判断
ア.「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物」の解釈について
本件発明1では、「(a)ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物であって、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、前記指定範囲が、3.5kDa以上の下限と120kDa以下の上限との間であることを特徴とする低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」と特定されている。
そして、本件明細書には、「別の言い方をすれば、本明細書に記載の低分子量絹フィブロイン組成物は、ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団であって、集団中の絹フィブロイン断片の総モル数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、集団中の絹フィブロイン断片の総モル数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、指定範囲は、約3.5kDaから約120kDaの間、または約5kDaから約125kDaの間であることを特徴とする、絹フィブロイン断片の集団を含み得る。」(【0006】段落)と記載されていることから、請求項1の「前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、前記指定範囲が、3.5kDa以上の下限と120kDa以下の上限との間である」との特定は、「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団」の分子量分布を特定する記載であると理解される。
さらに、請求項1の「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物」を字句とおりに解釈すると、請求項1に係る発明の「低分子量絹フィブロイン組成物」が「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団」以外の成分を含む場合と、含まない場合があることを、当業者は明確に理解できるといえる。
そうすると、請求項1の「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団を含む低分子量絹フィブロイン組成物」という記載が、本件明細書及び図面を考慮した場合に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
イ.「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」について
請求項1の「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」を字句とおりに解釈すると、請求項1に係る発明の「組成物」は、「分子量絹フィブロイン組成物を含む」組成物であるから、請求項1に規定される「低分子量絹フィブロイン組成物」以外の成分を含む場合と、含まない場合があることを、当業者は明確に理解できるといえる。
そうすると、請求項1の「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」という記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
ウ.「前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、」について
本件発明1は、絹フィブロイン断片の集団中の絹フィブロイン断片の総数のうち、15%以下に相当する絹フィブロイン断片が200kDaを超える分子量のものであることを特定しているが、「総数の15%以下」との特定において、下限値が特定されていない。
しかしながら、本件明細書の【0111】段落には、「一実施形態では、低分子量絹フィブロイン組成物は、200kDaを超える分子量を有する絹フィブロイン断片を実質的に含まない。」と記載され、【0074】段落には、「本明細書で互換的に使用されるように、用語「本質的に」および「実質的に」は、少なくとも約60%、もしくは好ましくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、もしくは少なくとも約99%、またはそれ超、あるいは70%から100%の間の任意の整数の比率を意味する。」と記載されている。そして、「200kDaを超える分子量を有する絹フィブロイン断片を実質的に含まない。」との記載において、「実質的に」が100%を意味する場合、「低分子量絹フィブロイン組成物は、200kDaを超える分子量を有する絹フィブロイン断片を実質的に」、すなわち、100%「含まない」と解されるから、本件発明1は、絹フィブロイン断片の集合が200kDaを超える分子量の絹フィブロイン断片を含まない、すなわち、絹フィブロイン断片が0%である場合を包含すると当業者が明確に理解することができる。
そうすると、請求項1の「前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、」という記載が、本件明細書及び図面を考慮した場合に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
エ.「前記組成物は、6カ月の長さにわたる4℃での保存後に、絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる固体形態である」について
請求項1の「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」の「フィブロイン凝集体」について、本件明細書(【0129】段落)には、「絹フィブロイン凝集体(例えば、肉眼で見える不溶性の絹フィブロイン断片、絹フィブロイン粒子、および/またはクラスター)」、「絹フィブロイン凝集体の例として、それだけに限らないが、全長絹フィブロイン分子、より大きい絹フィブロイン断片、より小さい絹フィブロイン断片のアセンブリーまたは凝集によって形成される絹フィブロイン粒子またはクラスター、およびこれらの任意の組合せを挙げることができる。」、「絹フィブロイン凝集体は、それだけに限らないが、沈殿、ゲル化、および/またはクランピングを含めたプロセスによって形成される絹フィブロイン粒子またはクラスターを含み得る。一部の実施形態では、絹フィブロイン凝集体は、約1mmまたはそれ超のサイズを有する絹フィブロイン粒子またはクラスターであり得る。一実施形態では、絹フィブロイン粒子またはクラスターは、溶液中に存在する絹フィブロイン断片のアセンブリーまたは凝集によって形成され得る。」と記載されているから、当業者が本件明細書を参照することで、「絹フィブロイン凝集体」の内容を理解することができ、そのような「絹フィブロイン凝集体」を含まないものである「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」の内容を理解することができる。
そして、請求項1の「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる固体形態である」との特定について、字句とおり、「固体形態」であるものを「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化」できるものを意味すると、当業者が明確に理解することができる。
そうすると、請求項1の「前記組成物は、6カ月の長さにわたる4℃での保存後に、絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる固体形態である」という記載が、本件明細書及び図面を考慮した場合に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人の主張
アについて
申立人は、「上記「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団」の解釈に伴って、「前記集団中の前記絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し」及び「前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、前記指定範囲が、3.5kDa以上の下限と120kDa以下の上限との間である」という事項の技術的意義も変動し得ることとなる。」と主張している。
しかしながら、(2)アにおいて述べたとおり、本件発明1に係る「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団」は、請求項1の「絹フィブロイン断片の総数の15%以下が、200kDaを超える分子量を有し、前記集団中の前記絹フィブロイン断片の前記総数の少なくとも50%が、指定範囲内の分子量を有し、前記指定範囲が、3.5kDa以上の下限と120kDa以上の上限との間」との文言により特定される分子量分布を有することを、当業者は明確に理解できるといえる。
そうすると、請求項1の「ある範囲の分子量を有する絹フィブロイン断片の集団」との記載は、当業者に多義的に解釈されるものではないから、上記の申立人の主張には理由がない。
イについて
申立人は、「「組成物」との語は、一般的に、複数の成分を組み合わせたものと理解されるが、本件発明1に係る「組成物」と「低分子量絹フィブロイン組成物」とを区別することができず、本件発明1に係る組成物とはいかなるものまで含むのか明確でない。」と主張している。
しかしながら、(2)イにおいて述べたとおり、本件発明1に係る「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」が「低分子量絹フィブロイン組成物」以外の成分を含む場合と、含まない場合があることを、当業者は明確に理解できるといえるから、本件発明1に係る「低分子量絹フィブロイン組成物を含む組成物」の範囲は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
よって、上記の申立人の主張には理由がない。
ウについて
申立人は、「実施例の記載や図3~5には、絹繭を精練した組成物の絹フィブロイン断片の分子量分布等が記載されているが、200kDaを超える分子量を有する絹フィブロイン断片を含まないものは記載されていない。
「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない」(特許法第70条第1項)のであるが、200kDaを超える分子量の絹フィブロイン断片を含まないものが本件発明の技術的範囲に属するのかは不明であり、特許権を回避しようとする第三者に対し、不測の不利益を与えることとなる。」と主張している。
しかしながら、(2)ウにおいて述べたとおり、本件発明1は、絹フィブロイン断片の集合が200kDaを超える分子量の絹フィブロイン断片を含まない、すなわち、絹フィブロイン断片が0%である場合を包含すると当業者が明確に理解することができるから、上記の申立人の主張には理由がない。
エについて
申立人は、「ここで、通常、ある物質の物理的性質として、当該物質が一定の温度及び量の溶媒に対してどの程度溶解するかの割合(溶解度)があることが知られている。すなわち、ある物質が溶媒に溶解するかどうかは、その溶媒の温度及び量によって変動し得ることは技術常識である。
例えば、溶解度が低い絹フィブロイン断片であっても、溶媒の量が多ければ、「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」となり得るし、溶媒の量が少なければ、絹フィブロイン凝集体を生じ得る。また、溶媒を加熱する等して温度を上昇させれば、溶解度を高くすることもできる。」、「本件発明1では、単に「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる」と記載しているのみであり、どの程度の温度で、どの程度の量の水に対して可溶化できるのかを特定していない。
仮に多量の水を用いる、少量の絹フィブロイン断片を使用する等して「絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液」を形成できる場合であっても、本件発明の技術的範囲に属するのかが理解できない。そうであれば、特許権を回避しようとする第三者に対し、不測の不利益を与えることとなる。」と主張している。
しかしながら、申立人は、絹フィブロイン断片を水中に可溶化する際の、溶媒の温度や、溶解量を変更することにより絹フィブロイン断片の溶解度や絹フィブロイン凝集体の生じやすさが変化することを裏付ける証拠を提示していないし、そのことが出願時の技術常識であるとも認められないから、上記の申立人の主張には理由がない。また、仮にそのような証拠や技術常識が存在したとしても、請求項1の「前記組成物は、6カ月の長さにわたる4℃での保存後に、絹フィブロイン凝集体を含まない絹フィブロイン溶液を形成するように水中に可溶化することができる固体形態である」という記載が、本件明細書及び図面を考慮した場合に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないことは、(2)エにおいて述べたとおりである。
よって、上記の申立人の主張には、理由がない。
5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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