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特許異議申立

2021-700742

環状ジペプチドの製造方法

審判番号
2021-700742
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-035334
登録番号
特許第6826359号(P6826359)
請求日
2021年07月28日
審決日
2021年11月10日
公報発行日
2021年12月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ニッピ
  • 【権利者代理人】木村 満
  • 【権利者代理人】齋藤 悦子
  • 【異議申立人】奥村 一正
審判長/審判官
  • 審判長 上條 肇
  • 審判官 田村 聖子
  • 審判官 吉森 晃
分類
P1651.113-Y (C07K) / P1651.121-Y (C07K) / P1651.537-Y (C07K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法114条4項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第1項第1号、特許法第114条第4項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6826359号発明「環状ジペプチドの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6826359号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6826359号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成27年 2月25日の出願であって、令和 3年 1月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年 2月 3日に特許掲載公報が発行され、同年 7月28日に、その特許について、特許異議申立人 奥村一正(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1~5に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等ということがある。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)。 「【請求項1】 X-Pro/Hyp-Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを水溶液中で40~140℃で、加熱することを特徴とする、シクロ(X-Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドの製造方法。 【請求項2】 前記水溶液のpHは2~10であり、前記加熱時間は、5分~5時間である、請求項1記載の環状ジペプチドの製造方法。 【請求項3】 加熱時の圧力は0.1~1MPaで行われる、請求項1または2に記載の環状ジペプチドの製造方法。 【請求項4】 前記水溶液は、前記直鎖トリペプチドを0.001~10g/Lの濃度で含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の環状ジペプチドの製造方法。 【請求項5】 前記直鎖トリペプチドは、タンパク質の加水分解物の一部であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状ジペプチドの製造方法。」 第3 申立理由の概要及び提出した証拠 1 申立理由の概要 申立人は、甲第1~5号証を提出し、本件特許は、以下の理由1~4により、取り消されるべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~3及び5は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 本件特許発明1~5は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 (2)申立理由2(甲第1号証及び甲第4号証に基づく進歩性) 本件特許発明1~5は、甲第1号証に記載された発明と甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 (3)申立理由3(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~5は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 本件特許発明1~5は、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許発明1~5は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。 2 証拠方法 (1)甲第1号証:特開2014-125427号公報 (2)甲第2号証:国際公開第2010/125910号 (3)甲第3号証:実験報告書(2021年7月1日作成、作成者不明) 甲第3号証の2:分析・試験報告書(2020年7月30日作成、株式会社住化分析センター 大阪ラボラトリー、試験責任者 池 佳代子) (4)甲第4号証:国際公開第2014/017474号 (5)甲第5号証:国際公開第2014/175001号 (以下、「甲第1号証」ないし「甲第5号証」をそれぞれ「甲1」ないし「甲5」という。) 第4 甲号証の記載事項 甲1~甲5には、それぞれ以下の記載がある。英語の文献は、日本語訳文を記載する。 1 甲1 (1-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分として含む、直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を含有する水溶液を加熱して、少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分として含む環状ジペプチドを得ることを含む、環状ジペプチドの製造方法。 【請求項2】 前記加熱の温度が50℃以上の温度である請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 前記加熱の温度が70℃以上、150℃以下の温度である請求項1に記載の製造方法。 【請求項4】 前記直鎖ジペプチドまたは直鎖トリペプチドを含有する水溶液は、pHが2以上、10未満の範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項5】 前記直鎖ジペプチドが、X-Pro、X-Hyp、Pro-Y、またはHyp-Yで表されるジペプチドであり、かつ前記環状ジペプチドが、それぞれシクロ(X-Pro)、シクロ(X-Hyp)、シクロ(Pro-Y)、またはシクロ(Hyp-Y)であり、前記XおよびYはアルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、トリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリシンから成る群から選ばれる1種のアミノ酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項6】 前記直鎖トリペプチドが、X-Y-Pro、X-Pro-Z、Pro-Y-Z、X-Y-Hyp、X-Hyp-ZまたはHyp-Y-Zで表されるトリペプチドであり、かつ前記環状ジペプチドが、それぞれシクロ(X-Pro)、シクロ(Pro-Y)、シクロ(X-Hyp)またはシクロ(Hyp-Y)であり、前記X、YおよびZは、独立に、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、トリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリシンから成る群から選ばれる1種のアミノ酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項7】 前記直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を含有する水溶液が、タンパク質の加水分解物の一部の成分として、前記直鎖ジペプチドまたは直鎖トリペプチドを含有する水溶液である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項8】 前記直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を含有する水溶液は、有機溶媒を含有しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項9】 グリシンおよび少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分として含む、直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を固相で加熱して、環状ジペプチドを得ることを含む、環状ジペプチドの製造方法。 【請求項10】 前記直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドは、グリシルプロリン(Gly-Pro)、プロリルグリシン(Pro-Gly)、グリシルヒドロキシプロリン(Gly-Hyp)またはヒドロキシプロリルグリシン(Hyp-Gly)の配列を含む請求項9に記載の製造方法。」 (1-2) 「【0023】 前記加熱の温度は、直鎖ジペプチドまたは直鎖トリペプチドが脱水・環化反応を生じる温度であればよく、例えば、50℃以上の温度であることができる。加熱温度は高いほど、短い時間で脱水・環化反応を完了できるため、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。一方、加熱温度が100℃を超える条件では、加圧下での加熱が必要となり、加圧の圧力が高くなればなるほど、耐圧性の高い装置が必要となることから、加熱の上限温度は150℃以下であり、好ましくは140℃以下である。より好ましい加熱温度は80℃~100℃である。 【0024】 加熱時の圧力は0.5 MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1MPa~0.2MPaの範囲である。 【0025】 直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を含有する水溶液は、pHを事前に調整しておくことが高い収率を得るという観点から好ましい。上記水溶液のpHは、2以上、10未満の範囲であることが好ましく、2~9の範囲にあることがより好ましく、6~8がより好ましい。水溶液のpH調整は、例えば、適当なpH緩衝剤を併用することで調整することができる。また、直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチド自体が水溶液中で示すpHが上記範囲であれば、特にpH緩衝剤を併用することなくそのままのpHで反応させることもできる。あるいは、直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチド並びに共存する他のアミノ酸等(例えば、タンパク質の加水分解物の場合)が、全体として示すpHが上記範囲である場合にも、特にpH緩衝剤を併用することなくそのままのpHで反応させることもできる。 【0026】 加熱時間は、環状ジペプチドの収率等を考慮して適宜決定でき、例えば、2時間~72時間の範囲であることができる。一般的傾向として、反応温度が高いほど、より短時間で高い収率を得ることができる。例えば、加熱温度は80℃~100℃である場合、時間は、12~36時間の範囲とすることができる。但し、これに限定される意図ではない。」 (1-3) 「【0047】 <実施例5> 直鎖トリペプチド、グリシルプロリルアラニン(Gly-Pro-Ala) (SIGMA社製) 2.43 mgを、0.1 Mリン酸緩衝液(pH 8)100μlに溶解し、95℃で18時間インキュベートした。得られた生成物を逆相クロマトグラフィーにより分析した。分析の結果、Gly-Pro-Alaを含む溶液からシクログリシルプロリンが生成し、収率は90%以上であった。 【0048】 <実施例6> 直鎖トリペプチド、グリシルプロリル-4-ヒドロキシ-プロリン(Gly-Pro-Hyp) (Bachem社製) 2.85 mgを、0.1 Mリン酸緩衝液(pH 8)100μlに溶解し、80℃で48 時間インキュベートした。得られた生成物を逆相クロマトグラフィーにより分析した。分析の結果、Gly-Pro-Hypを含む溶液からシクログリシルプロリンが生成し、収率は80%以上であった。 【0049】 <実施例7> 直鎖ペプチド原料として、コラーゲン分解物である直鎖トリペプチドを15%以上含有する、HACP(ゼライス社製)を用いた。HACP 100 mgを純水900μlに溶解し、を60℃で72時間インキュベートした。得られた生成物をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。分析の結果、HACPの18%含まれていたトリペプチドのうち12%が環化・脱離し、環状ジペプチドシクロ(Gly-Pro)が生成した。」 (1-4) 「【0054】 <実施例12> ・・・ 【0056】 (1-2)トリペプチド試料X-Y-Zを濃度0.1mol/Lとなるようにリン酸緩衝液(pH8) 0.1mol/Lに溶解し、得られた水溶液を90℃で24hrインキュベートした。環状ジペプチド収率を実施例1と同様に求めて、「水溶液中収率」として表2に示す。 (2-2)固相加熱:トリペプチド試料X-Y-Z粉末を180℃で15分間加熱した。環状ジペプチド収率を実施例11と同様に求めて「固相加熱収率」として表2に示す。 【0057】 」 2 甲2 (2-1) 「[0053] (実施例1)本発明のコラーゲンペプチド組成物の調製(1) 脱灰処理をしたテラピアの鱗を8倍量の水に投入し、硫酸を加えてpH2.0に調整し、3時間保持することによって酸処理を行い、その後、水洗して過剰な酸を除去した。酸処理後の鱗に温水を投入し、温度が40~90℃の間で撹拌しながら段階的にゼラチン液を採取し、精製、殺菌、乾燥することによって、魚鱗ゼラチンを調製した。調製された魚鱗ゼラチン1.0kgを75℃の温水2.0kgに溶解した。 [0054] 得られたゼラチン溶液に、ゼラチン1kgに対して精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)(比活性:820U/g)20gを添加し、pHを5.5に調整して60℃にて2時間酵素反応を行った。反応終了後、溶液を85℃以上に10分間加熱して酵素を失活させ、微粉活性炭20gを添加し、ろ布ろ過、メンブレンフィルターを用いた精密ろ過を行った後、噴霧乾燥して粉末状のコラーゲンペプチド組成物1を得た。」 3 甲3 (3-1) 「 」 4 甲4 (4-1) 「請求の範囲 [請求項1] コラーゲンおよび/またはゼラチン溶液にショウガ根茎由来酵素を添加して分解し、X-Hyp-Gly(式中、Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示す。)で示されるペプチドを含むペプチド組成物を生成することを特徴とする、コラーゲンペプチド組成物の製造方法。 [請求項2] ショウガ根茎の乾燥粉砕物を、前記ショウガ根茎由来酵素として使用することを特徴とする、請求項1記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。 [請求項3] 前記ショウガ根茎由来酵素と共にグルタチオン含有酵母エキスを0.005~0.5w/v%の範囲で添加し、および/またはpH4.0~6.0の範囲に調整して反応させることを特徴とする、請求項1または2記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。 [請求項4] 前記ペプチド組成物に含まれる前記式で示されるペプチドの含有量が、前記コラーゲンおよび/またはゼラチンの0.01モル%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。 [請求項5] 更に、X-Pro-Gly(式中、Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示す。)で示されるペプチドを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のコラーゲンペプチド組成物の製造方法。 [請求項6] 請求項1~5のいずれかに記載の製造方法で得られるコラーゲンペプチド組成物を含有するDPP-4阻害剤。 [請求項7] 請求項1~5のいずれかに記載の製造方法で得られるコラーゲンペプチド組成物を含有する血糖値上昇抑制剤。」 (4-2) 「[0014] すなわち本発明は、コラーゲンおよび/またはゼラチン溶液にショウガ根茎由来酵素を添加して分解し、X-Hyp-Gly(式中、Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示す。)で示されるペプチドを含むペプチド組成物を生成することを特徴とする、コラーゲンペプチド組成物の製造方法を提供するものである。 [0015] また本発明は、ショウガ根茎の乾燥粉砕物を、前記ショウガ根茎由来酵素として使用することを特徴とする、上記コラーゲンペプチド組成物の製造方法を提供するものである。 [0016] また本発明は、前記ショウガ根茎由来酵素と共にグルタチオン含有酵母エキスを0.005~0.5w/v%の範囲で添加し、および/またはpH4.0~6.0の範囲に調整して反応させることを特徴とする、上記コラーゲンペプチド組成物の製造方法を提供するものである。 [0017] また本発明は、前記ペプチド組成物に含まれる前記式で示されるペプチドの含有量が、前記コラーゲンおよび/またはゼラチンの0.01モル%以上であることを特徴とする、上記コラーゲンペプチド組成物の製造方法を提供するものである。 [0018] また本発明は、更に、X-Pro-Gly(式中、Xは、Gly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示す。)で示されるペプチドを含むことを特徴とする、コラーゲンペプチド組成物の製造方法を提供するものである。」 5 甲5 (5-1) 「[0030] 比較例25 コラーゲンペプチド混合物「HACP(豚由来)」(ゼライス社製)。 LC-MS/MSで分析したところ、本コラーゲンペプチド混合物には以下のペプチドがそれぞれ含まれていた。 GP:359ppm,PAG:761ppm,POG:14ppm,EO:271ppm,AOG:25ppm,EOG:不検出,OG:75ppm,SOG:不検出,FO:不検出。」 (5-2) 「[0024] 以下、本発明を実施例、比較例、試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。 実施例1~11 前記のペプチド固相合成法を用いて、以下のペプチドを合成した。 (実施例1) (Pro-Hyp-Gly)5 [(POG)5] (実施例2) (Pro-Hyp-Gly)2 [(POG)2] (実施例3) Gly-Pro[GP] (実施例4) Pro-Ala-Gly[PAG] (実施例5) Pro-Hyp-Gly[POG] (実施例6) Glu-Hyp[EO] (実施例7) Ala-Hyp-Gly[AOG] (実施例8) Glu-Hyp-Gly[EOG] (実施例9) Hyp-Gly[OG] (実施例10) Ser-Hyp-Gly[SOG] (実施例11) Phe-Hyp[FO]」 第5 判断 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) (1)本件特許発明1について ア 甲1発明 上記第4の(1-1)~(1-4)(特に請求項1、請求項6、【0023】)より、甲1には、 「少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分として含む、直鎖ジペプチドおよび直鎖トリペプチドの少なくとも1種を含有する水溶液を50℃以上140℃以下で加熱して、少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分として含む環状ジペプチドを得ることを含む、環状ジペプチドの製造方法であって、 前記直鎖トリペプチドが、X-Y-Pro、X-Pro-Z、Pro-Y-Z、X-Y-Hyp、X-Hyp-ZまたはHyp-Y-Zで表されるトリペプチドであり、かつ前記環状ジペプチドが、それぞれシクロ(X-Pro)、シクロ(Pro-Y)、シクロ(X-Hyp)またはシクロ(Hyp-Y)であり、前記X、YおよびZは、独立に、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、トリプトファン、システイン、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリシンから成る群から選ばれる1種のアミノ酸である、前記製造方法。」 に係る発明が記載されている(以下、上記括弧内を「甲1発明」という)。 イ 本件特許発明1と甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、「少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分とする直鎖トリペプチドを水溶液中で50~140℃で加熱することによる、当該直鎖トリペプチドのN末と2番目のアミノ酸から構成される環状ジペプチドの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 原料の、少なくとも1個のプロリンまたはヒドロキシプロリンを構成成分とする直鎖トリペプチドが、本件特許発明1では、「X-Pro/Hyp-Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)」に特定され、結果として、その生成物である環状ジペプチドも、「シクロ(X-Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)」に特定されている点。 ウ 新規性について 甲1において具体的に、直鎖トリペプチドを用いて環状ジペプチドを製造した例は、 Gly-Pro-Alaからシクロ(Gly-Pro)を製造したもの(実施例5)、 Gly-Pro-Hypからシクロ(Gly-Pro)を製造したもの(実施例6)、 コラーゲン分解物である直鎖トリペプチドを15%以上含有するものからシクロ(Gly-Pro)を製造したもの(実施例7)、 Gly-Pro-Ala、Gly-Pro-Hyp、Gly-Pro-Proを固相反応で加熱して環状ジペプチドを製造したもの(実施例12の【0056】~【0057】)のみである。 これらは、原料の直鎖トリペプチドのC末がGlyではない点、及び、原料の直鎖トリペプチド及び生成物である環状ジペプチドのN末が本件特許発明では除外されているGlyである点で、本件特許発明1とは異なるものである。 そして本件特許明細書の実施例5、図6では、本件特許発明の直鎖トリペプチドと、甲1の実施例5や実施例12の直鎖トリペプチド(C末がGlyではなくAla、N末が本件特許発明では除かれているGly)を用いた場合の環状ジペプチドの生成量を対比しており、本件特許発明の直鎖トリペプチドを用いた方が環状ジペプチドの生成量が相当程度大きく、優れていることが認められる。 また本件特許明細書の実施例6、図7の番号14では、本件特許発明の直鎖トリペプチド(番号1~9)と、甲1の実施例6、実施例12の直鎖トリペプチド(C末がGlyではなくHyp、N末が本件特許発明では除かれているGly)を用いた場合の残存原料を対比しており、本件特許発明の直鎖トリペプチドを用いた方が環状ジペプチドの残存原料が相当程度少なく、すなわち環状ジペプチドの生成量が大きく、優れていることが認められる。 さらに甲1の実施例7では、シクロ(Gly-Pro)を製造したことが記載されているところ、その原料の直鎖トリペプチドはN末がGly、2番目がProであることが認められるが、本件特許明細書の実施例6、図7の番号11~15では、そのようなN末にGly-Proを有する種々の直鎖トリペプチドのいずれもが、本件特許発明の直鎖トリペプチド(番号1~9)を用いたときよりも残存原料が相当程度大きい、すなわち環状ジペプチドの生成量が小さく、劣ることが認められる。 加えて、直鎖トリペプチドのC末を本件特許発明と同じGlyとしても、N末を本件特許発明で除かれているProとすると、残存原料が本件特許発明の環状ジペプチドを用いたときよりも相当程度大きい、すなわち環状ジペプチドの生成量が小さく、劣ることが認められる(本件特許明細書の図7の番号16)。 これらのことを踏まえると、甲1には、その請求項6などに、本件特許発明の直鎖トリペプチドも含まれる包括的なトリペプチドが挙げられていても、具体的には、本件特許発明の特定の直鎖トリペプチドについてなんら記載されておらず、また本件特許発明は、本件特許明細書に記載の種々の対比実験により、特に環状ジペプチドの生産量が大きく、優れていることが確認された製造方法のみをその特許請求の範囲に記載したものと認められるから、本件特許発明1は甲1に実質的には記載されておらず、新規性を有すると解される。 エ 進歩性について 本件特許発明1は、上記ウで述べたとおり、特に優れた効果を奏する態様の製造方法のみにその特許請求の範囲が限定されているものであるから、甲1発明、甲1の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができないものであり、進歩性を有すると解される。 オ 申立人の主張について (ア)甲1実施例7のHACPを用いる場合について 申立人は、 「甲1実施例7は、コラーゲンペプチド混合物「HACP(ゼライス社製)」から環状ジペプチドを製造するものであるが、甲5の[0030]比較例25において、LC-MA/MSで分析した結果、「HACP(豚由来)」(ゼライス社製)」のコラーゲンペプチドにAla-Hyp-Gly(AOG)が25ppm含まれているから、当該甲1実施例7は、本件特許発明と同一である」旨、 主張する。 しかしながら、甲1実施例7には、環状ジペプチドとしてシクロ(Gly-Pro)が製造されたことが記載されているのみであるから、反応してもシクロ(Gly-Pro)にはなり得ないAla-Hyp-Glyが、甲1実施例7の原料に含まれていたか否かは不明であり、また環状ジペプチドとしてシクロ(Gly-Pro)が製造されたことが記載されているだけの甲1実施例7から、シクロ(Ala-Hyp)が製造される本件特許発明の製造方法の反応が生じたと断じることはできないから、甲5の記載を参酌しても甲1に本件特許発明の製造方法が記載されているということはできない。 (イ)甲1に本件特許発明の実施例がないことについて 申立人は、 「甲1に本件特許発明の実施例がなくても、【0027】に直鎖トリペプチドから環状ジペプチドが製造される反応機序の説明があり、請求項6や10には、本件特許発明の態様を含むものが記載されているから、甲1に本件特許発明は記載されており、選択発明を構成するものでもなく新規性、進歩性を有しない」旨、 主張する。 しかしながら甲1は、その実施例7に示されるとおり、種々のペプチドを含み得る態様であるコラーゲン分解物を用いたときでさえも、製造物として記載がされているものはシクロ(Gly-Pro)のみであって、甲1【0027】の反応機序を考慮しても、これは本件特許発明には該当しない直鎖トリペプチド(N末がGly-Pro)を用いたときにしか製造できないものである。 加えて、甲1のいずれの箇所をみても直鎖トリペプチドとして具体的に記載されているものは、本件特許発明には該当しないGly-Pro-Ala、Gly-Pro-Hyp、Gly-Pro-Proのみであって、これらを用いる製造方法は、上記ウにおいて示したとおり、いずれも本件特許発明よりも相当程度効果の劣るものである。 そうすると、本件特許明細書に特に優れた効果を奏することが具体的に記載されているものに限定されている本件特許発明の態様が、甲1に記載されているとか、選択発明を構成し得ないものである、などということはできないと解する。 (ウ)申立人の主張に対するまとめ したがって、上記申立人の主張(ア)、(イ)は、いずれも採用できない。 (2)本件特許発明2~5について 上記(1)ウ~オに示したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ということはできず、また、甲1発明、甲1の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができないものであるから、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2~5も、同様に、甲1に記載された発明ということはできず、また、甲1発明、甲1の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)小括 よって、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2(甲1及び甲4に基づく進歩性) 申立人は、 「甲1発明に甲4に記載の事項を適用することにより、本件特許発明は進歩性を有しない」旨、 主張するので検討する。 甲4には、確かにコラーゲン及び/又はゼラチン溶液にショウガ根由来酵素を添加し、X-Hyp-Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される直鎖トリペプチドを含む組成物が記載されている(上記(4-1)、(4-2))。 しかしながら甲4は、そのようなトリペプチド組成物をそのまま用いることによりDDP-4阻害剤や血糖値上昇抑制剤に用いるものであり(請求の範囲、特に請求項6、7)、それを環状化してジペプチドを製造することなどについては記載も示唆もなく、また環状化してジペプチドとすれば、トリペプチドが有していた薬理効果が失われる可能性があることを考慮すると、甲1発明の原料のトリペプチド組成物として、そのままの状態であることが求められる甲4記載の直鎖トリペプチド組成物を用いることなどを、当業者は想到し得ないと解される。 したがって本件特許発明1~5は、甲1、甲4の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 したがって、申立理由2には理由がない。 3 申立理由3(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1 ア 甲2発明 上記第4の2の(2-1)から、甲2には、 「脱灰処理をしたテラピアの鱗を8倍量の水に投入し、硫酸を加えてpH2.0に調整し、3時間保持することによって酸処理を行い、その後、水洗して過剰な酸を除去した酸処理後の鱗に温水を投入し、温度が40~90℃の間で撹拌しながら段階的にゼラチン液を採取し、精製、殺菌、乾燥することによって調製された魚鱗ゼラチン1.0kgを75℃の温水2.0kgに溶解して得られたゼラチン溶液に、ゼラチン1kgに対して精製パパイン(商品名:三菱化学フーズ社製)(比活性:820U/g)20gを添加し、pHを5.5に調整して60℃にて2時間酵素反応を行い、酵素反応終了後、溶液を85℃以上に10分間加熱して酵素を失活させ、微粉活性炭20gを添加し、ろ布ろ過、メンブレンフィルターを用いた精密ろ過を行った後、噴霧乾燥して粉末状のコラーゲンペプチド組成物を得る方法」 に係る発明が記載されている(以下、上記括弧内を「甲2発明」という)。 イ 本件特許発明1と甲2発明との対比 本件特許発明1の直鎖トリペプチドの供給源として、酵素処理を行ったゼラチンの加水分解物も含まれるから(本件特許発明5、本件特許明細書の【0035】等)、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、「酵素処理を行ったゼラチンの加水分解物を85℃以上で加熱する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 本件特許発明1は、加熱により、特定の直鎖トリペプチドから特定の環状ジペプチドを製造する方法の発明であるが、甲2発明は、加熱により、酵素を失活させることが記載されているのみである点。 (相違点3) 本件特許発明1は、加熱の対象が「X-Pro/Hyp-Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)」であり、加熱後の生産物が「シクロ(X-Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチド」であるのに対し、甲2発明では加熱の対象が酵素処理を行ったゼラチン加水分解物であり、加熱後の状態は酵素が失活したことのほかは不明である点。 ウ 新規性について 本件特許発明1と甲2発明は、イで記載した相違点2、3の点で相違するので、本件特許発明1は新規性を有する。 エ 進歩性について 甲2発明では、加熱は酵素失活のために行われているのであるから、甲2発明及び甲2の記載をみても、当業者は、加熱により直鎖トリペプチドを原料として環状ジペプチドを製造することを想到できないと認められる(相違点2)。また、その原料の直鎖トリペプチドとして本件特許発明1に記載の特定のものを用いることなども想到し得ないと認められる(相違点3)。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明、甲2の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができないものであり、進歩性を有すると解される。 オ 申立人の主張について 申立人は、 「本件特許の出願時点で、コラーゲンやゼラチンを含む水溶液に対し、酵素処理、加水分解、加熱処理等を施すことによりペプチド組成物を調製することが広く行われ、そのようにして調製されたペプチド組成物に環状ジペプチドが含まれることが周知であり、甲2の実施例1は、甲3の実験報告書の記載を踏まえると、上記甲2発明における酵素失活のための加熱処理前後の組成物には、Ala-Hyp-Gly(AOG)、シクロ(Ala-Hyp)(cAO)、Leu-Hyp-Gly(LOG)及びシクロ(Leu-Hyp)(cLO)が含まれ、加熱処理の前後でAOGとLOGが減り、cAOとcLOが増えたから、加熱によってAOGがcAOに、また、LOGがcLOとなる製造反応が生じていて、これは本件特許発明と同じであるから、新規性を有しない旨を主張し、また、甲2には甲3のようなことが具体的に記載されていないとしても、追試をすれば甲3のようにそのような反応が生じていることを理解できるので当業者が容易に想到し得た」旨、 主張する。 しかしながら、甲3実験報告書のAOG、LOG、cAO及びcLOに係る記載は、甲2になんらの記載もない事項であるから、そのような事項を含めて甲2発明を認定したり、それらを甲2に記載された事項として本件特許発明の新規性を否定することなどはできないと解される。 また甲2の加熱処理は、上述のとおり、ゼラチンの加水分解のために添加したパパイン酵素の失活のために行われているのであり、そのような酵素失活に係る加熱処理の記載から、対象も反応も異なる、直鎖トリペプチドを原料として環状ジペプチドを製造する方法に想到することは当業者であっても困難であると解される。 申立人は、追試をすれば甲3記載の事項を当業者は理解する旨も主張するが、甲2発明における加熱はパパイン酵素の失活であるから、甲3記載の観点で追試をすること自体、当業者が想到し得ないことと解される。 したがって、上記申立人の主張は、採用できない。 (2)本件特許発明2~5について 上記(1)ウ~オに示したとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ということはできず、また、甲2発明、甲2の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができないものであるから、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2~5も、同様に、甲2に記載された発明ということはできず、また、甲2発明、甲2の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)小括 したがって、申立理由3には理由がない。 4 申立理由4(サポート要件) (1)申立人の主張 申立人は、本件特許発明1~5について、 「・加熱温度として、100℃を超える温度で加熱することを含む点で、本件特許明細書に記載の範囲 (40~100℃で加熱)を超えるものであり、 ・加熱時間として、3時間を超える時間で加熱することを含む点で、本件特許明細書に記載の範囲(5分~3時間)を超えるものであり、 ・液性として、水溶液のpHが2以上4未満および8.6を超え10以下である範囲を含む点で、本件特許明細書に記載の範囲(pH4~8.6)を超えるものであり、 ・製造時の圧力として、0.1MPaより高圧であることを含む点で、本件特許明細書に記載の範囲(0.1MPa)を超えるものであり、 ・直鎖トリペプチドの濃度として、0.1g/L未満の濃度で含有する水溶液を含む点で、本件特許明細書に記載の範囲(0.1g/L以上)を超えるものであり、 ・タンパク質の加水分解物が、コラーゲン及び/又はゼラチンをコラゲナーゼ又はショウガ根茎由来酵素で分解することにより得たもの以外を含む点で、本件特許明細書に記載の範囲を超えるものであるとして、 本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、特許法第36条第1項第1号の規定に違反して特許されたものである」旨、主張する。 (2)判断 本件特許発明、及び、本件特許明細書【0012】の記載を踏まえると、本件特許発明の解決しようとする課題は、「直鎖トリペプチドから効率的にシクロ(X-Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを製造する方法を提供すること」であると認める。 本件特許明細書には、上記課題を解決するための手段として、原料として用いる直鎖トリペプチドの種類や、加熱温度・時間、液性、圧力、直鎖トリペプチドの濃度等の反応条件、得られる生成物の種類等が【0021】~【0033】において説明されている。 そして、【0034】~【0044】の実施例では、本件特許発明に係る環状ジペプチドを、実際に種々の直鎖トリペプチドから直接効率的に製造できたことが確認されている。 そうすると、これらの記載によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の製造方法により、上記の本件特許発明の解決すべき課題を解決できることが、実施例を含め具体的な説明をもって記載されていることが認められる。 そうすると、本件特許明細書の発明の詳細の説明には、本件特許発明が記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものと認められる。 (3)申立人の主張について 申立人は、(1)で述べたとおり、加熱温度・時間、液性、圧力、直鎖トリペプチドの濃度について、本件特許明細書に最適であることが記載されている範囲を超えて本件特許発明が記載されている旨を主張しているが、本件特許発明に記載がされているこれらの要素の値は、すべて本件特許明細書の【0026】~【0031】に採り得る値として挙げられているものであり、加えて、これらの反応条件などは、所望の環状ジペプチドを効率的に製造するという目的を達成し得る範囲で当業者が適宜調整するものにすぎない。 なお実際、図3に液性を変えた場合(実施例2)、図4に加熱温度を変えた場合(実施例3)、図5に加熱時間による生成物の量の確認(実施例4)を行っており、また、圧力と温度は一方を上げれば片方を下げることができるものであるから、これらの実施例で示される傾向も踏まえながら、反応条件は適宜所望の効率の程度に調整することも可能であると認められる。 申立人は、タンパク質の加水分解物についても、コラーゲン及び/又はゼラチンをコラゲナーゼ又はショウガ根茎由来酵素で分解することにより得たもの以外は明細書に記載がされていない旨、主張するが、本件特許明細書の記載に基づくと、X-Pro/Hyp-Gly(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)の直鎖トリペプチドを一定程度含むものであれば、シクロ(X-Pro/Hyp)(式中、XはGly、HypおよびPro以外のアミノ酸残基を示し、Pro/HypはProまたはHypを示す。)で示される環状ジペプチドを生産物として製造する本件特許発明の製造方法を行うことができると認められるので、タンパク質の加水分解物を限定すべきであるとする申立人の主張も採用できない。 (4)小括 したがって、本件特許の請求項1~5に記載された発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであると認められ、申立理由4には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1~5に係る特許について、結論のとおり決定する。

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2021-700742

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