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特許異議申立

2023-701220

軸受状態監視方法及び軸受状態監視システム

審判番号
2023-701220
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-053780
登録番号
7275714
請求日
2023年11月17日
審決日
2025年05月12日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本精工株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】松本 征二
審判長/審判官
  • 審判長 南 宏輔
  • 審判官 藏田 敦之
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
分類
P1651.537-YAA(G01M) / P1651.536-YAA(G01M) / P1651.121-YAA(G01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7275714号発明「軸受状態監視方法及び軸受状態監視システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7275714号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4、〔5、7〕、6、8について訂正することを認める。 特許第7275714号の請求項2、4、6、8に係る特許を維持する。 特許第7275714号の請求項1、3、5、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7275714号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成31年3月20日に出願され、令和5年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、同年11月17日に特許異議申立人 松本 征二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年3月26日付けで取消理由通知書を通知し、同年5月24日に特許権者により意見書及び訂正請求書(以下「先の訂正請求書」という。)が提出され、同年8月23日に申立人により意見書が提出された。その後、当審合議体が同年11月11日付けで取消理由通知書(決定の予告)を通知し、令和7年1月15日に特許権者により意見書及び訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)が提出され、同年2月28日に申立人により意見書(以下「申立人意見書」という。)が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)本件訂正請求書 本件訂正請求書での訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであって、本件訂正の内容は次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記加速度が前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する、請求項1に記載の軸受状態監視方法」と記載されているのを、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、前記診断の結果を出力する工程と、を備え、前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を含む、軸受状態監視方法」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記温度、及び前記加速度の少なくとも一方が、それぞれの前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する、請求項3に記載の軸受状態監視方法」と記載されているのを、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程と、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、前記診断の結果を出力する工程と、を備え、前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を含む、軸受状態監視方法」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「前記加速度が前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する、請求項5に記載の軸受状態監視システム」と記載されているのを、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、を備え、前記診断装置は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を実行するものである、軸受状態監視システム」に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「前記温度、及び前記加速度の少なくとも一方が、それぞれの前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する、請求項7に記載の軸受状態監視システム」と記載されているのを、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、前記転がり軸受の温度を検出する温度センサと、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすベてが、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、を備え、前記診断装置は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を実行するものである、軸受状態監視システム」に訂正する。 (2)訂正の単位 ア 一群の請求項について 訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、請求項2~4は訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項〔1-4〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正前の請求項5~8について、請求項6~8は請求項5を直接的又は間接的に引用しているものであって、請求項6~8は訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項5~8に対応する訂正後の請求項〔5-8〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されている。 イ 別の訂正単位とする求め 訂正後の請求項2、4、6、8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正要件 (1)訂正事項1、3、5、7 ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1、3、5、7は、請求項1、3、5、7を削除するというものであるから、訂正事項1、3、5、7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項1、3、5、7は、請求項1、3、5、7を削除するというものであるから、訂正事項1、3、5、7は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1、3、5、7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1、3、5、7は、請求項1、3、5、7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項1、3、5、7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否について (ア)訂正後の請求項2は独立形式請求項であって、訂正後の請求項2の記載のうち、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、前記診断の結果を出力する工程と、を備え、・・・前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、・・・前記特徴周波数出力が前記前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する・・・、軸受状態監視方法」との記載は、訂正前の請求項2は引用形式請求項であって、訂正前の請求項2における「請求項1に記載の軸受状態監視方法」の記載内容と実質的に同じである、又は、訂正前の請求項2における「請求項1に記載の軸受状態監視方法」の記載内容を包含するものである。 よって、訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 (イ)訂正事項2では、訂正前の請求項2に記載の「前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程」について、「前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、及び「前記加速度が前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する」ことを、「前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を含む」ことに訂正することから、訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載の「診断する工程」について限定(下線部の箇所)を付加するものである。 よって、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項2による上記ア(イ)の限定付加事項は、明細書の段落【0022】~【0031】及び図2の記載により裏付けられるものであるから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記ア(ア)及び(イ)で説示したとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、限定付加事項を加えるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否について (ア)訂正後の請求項4は独立形式請求項であって、訂正後の請求項4の記載のうち、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程と、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、前記診断の結果を出力する工程と、を備え、前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、・・・前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する・・・、軸受状態監視方法」との記載は、訂正前の請求項4は引用形式請求項であって、訂正前の請求項4における「請求項3に記載の軸受状態監視方法」の記載内容と実質的に同じである、又は、訂正前の請求項4における「請求項3に記載の軸受状態監視方法」の記載内容を包含するものである。 よって、訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 (イ)訂正事項4では、訂正前の請求項4に記載の「前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程」について、「前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、「前記診断工程は、前記温度、前記加速度及び前記特徴周波数出力のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、及び「前記温度、及び前記加速度の少なくとも一方が、それぞれの前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する」ことを、「前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を含む」ことに訂正することから、訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載の「診断する工程」について限定(下線部の箇所)を付加するものである。 よって、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項4による上記ア(イ)の限定付加事項は、明細書の段落【0022】~【0031】及び図2の記載により裏付けられるものであるから、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記ア(ア)及び(イ)で説示したとおり、訂正事項4は、請求項間の引用関係を解消し、限定付加事項を加えるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項6 ア 訂正の目的の適否について (ア)訂正後の請求項6は独立形式請求項であって、訂正後の請求項6の記載のうち、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、を備え、・・・前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する・・・、軸受状態監視システム」との記載は、訂正前の請求項6は引用形式請求項であって、訂正前の請求項6における「請求項5に記載の軸受状態監視システム」の記載内容と実質的に同じである、又は、訂正前の請求項6における「請求項5に記載の軸受状態監視システム」の記載内容を包含するものである。 よって、訂正事項6は、訂正前の請求項6の記載が訂正前の請求項5の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項5の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 (イ)訂正事項6では、訂正前の請求項6に記載の「前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置」について、「前記加速度が前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する」ことを、「前記診断装置は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を実行するものである」ことに訂正することから、訂正事項6は、訂正前の請求項6に記載の「診断装置」について限定(下線部の箇所)を付加するものである。 よって、訂正事項6は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項6による上記ア(イ)の限定付加事項は、明細書の段落【0022】~【0031】及び図2の記載により裏付けられるものであるから、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記ア(ア)及び(イ)で説示したとおり、訂正事項6は、請求項間の引用関係を解消し、限定付加事項を加えるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項8 ア 訂正の目的の適否について (ア)訂正後の請求項8は独立形式請求項であって、訂正後の請求項8の記載のうち、「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、前記転がり軸受の温度を検出する温度センサと、前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすベてが、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、を備え、・・・前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する・・・、軸受状態監視システム」との記載は、訂正前の請求項8は引用形式請求項であって、訂正前の請求項8における「請求項7に記載の軸受状態監視システム」の記載内容と実質的に同じである、又は、訂正前の請求項4における「請求項7に記載の軸受状態監視システム」の記載内容を包含するものである。 よって、訂正事項8は、訂正前の請求項8の記載が訂正前の請求項7の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項7の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 (イ)訂正事項8では、訂正前の請求項8に記載の「前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断」する「診断装置」について、「診断装置」が「前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、「前記診断装置は、前記温度を予め設定された診断閾値と比較し、前記温度、前記加速度及び前記特徴周波数出力のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、及び「前記温度、及び前記加速度の少なくとも一方が、それぞれの前記診断閾値以下であり、且つ前記特徴周波数出力が前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常予兆と診断する」ことを、「診断装置」が「前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすベてが、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する」こと、及び「前記診断装置は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を実行するものである」ことに訂正することから、訂正事項8は、訂正前の請求項8に記載の「診断装置」について限定(下線部の箇所)を付加するものである。 よって、訂正事項8は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項8による上記ア(イ)の限定付加事項は、明細書の段落【0022】~【0031】及び図2の記載により裏付けられるものであるから、訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記ア(ア)及び(イ)で説示したとおり、訂正事項8は、請求項間の引用関係を解消し、限定付加事項を加えるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (6)独立特許要件 訂正前の全ての請求項が本件特許異議申立の対象とされているので、訂正事項1~8について特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 3 訂正の適否のまとめ 上記のとおり、訂正事項1~8に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。また、訂正後の請求項2、4、6、8については、別の訂正単位とする求めに応じて、一群の請求項〔1-4〕、〔5-8〕の他の請求項とは別の訂正単位とする。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕、2、4、〔5、7〕、6、8について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件訂正後の請求項2、4、6、8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」、「本件発明4」、「本件発明6」、「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2、4、6、8に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備え、 前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、 前記診断する工程は、 前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、 前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、 前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、 を含む、軸受状態監視方法。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程と、 前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備え、 前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断し、 前記診断する工程は、 前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、 前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、 前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、 前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、 を含む、軸受状態監視方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、 前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、 を備え、 前記診断装置は、 前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、 前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、 前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、 を実行するものである、軸受状態監視システム。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視システムであって、 前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する加速度センサと、 前記転がり軸受の温度を検出する温度センサと、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較して、前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断し、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすベてが、それぞれの前記診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断する診断装置と、 を備え、 前記診断装置は、 前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、 前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、 前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、 前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、 を実行するものである、軸受状態監視システム。」 第4 特許異議の申立ての理由の要約 1 申立ての理由の要約 (1)申立人は、特許異議申立書(第10~11頁、第39~40頁)において、以下の理由により、請求項1~8に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。 ア 取消理由1(特許法第36条第6項第1号、同条第4項第1号、同法第113条第4号) 本件特許の請求項1,2,5,6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 イ 取消理由2(特許法第29条第2項、同法第113条第2号) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術から容易に想到し得る。 ウ 取消理由3(特許法第29条第2項、同法第113条第2号) 本件特許の請求項1,2,5,6に係る発明は、甲第1,2号証に記載された発明から容易に想到し得る。本件特許の請求項3,4,7,8に係る発明は、甲第1,2号証に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術から容易に想到し得る。 エ 取消理由4(特許法第29条第2項、同法第113条第2号) 本件特許発明1,2,5,6は、甲第10~12号証に記載された発明から容易に想到し得る。本件特許発明3,4,7,8は、甲第10~13号証に記載された発明から容易に想到し得る。 オ 取消理由5(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号) 本件特許発明1~8は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 カ 取消理由6(特許法第36条第6項第1号、同法第113条第4号) 本件特許発明1~8は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)申立人は、申立人意見書(第2~8頁)において、以下の理由により、請求項2、4、6、8に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。 ア 特許法第36条第6項第2号及び同法第113条第4号に基づく取消理由(以下「取消理由7」という。) イ 特許法第36条第4項第1号及び同法第113条第4号に基づく取消理由(以下「取消理由8」という。) ウ 特許法第29条第2項及び同法第113条第2号に基づく取消理由(以下「取消理由9」という。) 2 証拠方法 申立人が証拠として提出した文献を以下に示す。甲第1号証~甲第15号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲15」という。)は、特許異議申立書において添付した文献であり、甲第16号証~甲第27号証(以下、それぞれ「甲16」~「甲27」という。)は、令和6年8月23日提出の意見書において添付した文献であり、甲第28号証~甲第33号証(以下、それぞれ「甲28」~「甲33」という。)は、申立人意見書において添付した文献である。 甲第1号証(甲1):特公平2-59420号公報 甲第2号証(甲2):米国特許第5381692号明細書 甲第3号証(甲3):特開2007-303866号公報 甲第4号証(甲4):特開平5-322643号公報 甲第5号証(甲5):特開2018-151232号公報 甲第6号証(甲6):特開2017-125691号公報 甲第7号証(甲7):特開昭62-91834号公報 甲第8号証(甲8):特開2004-198384号公報 甲第9号証(甲9):特開2004-198375号公報 甲第10号証(甲10):特開昭63-297813号公報 甲第11号証(甲11):特開2017-62196号公報 甲第12号証(甲12):特開2017-219469号公報 甲第13号証(甲13):特開2016-24007号公報 甲第14号証(甲14):特開平6-323899号公報 甲第15号証(甲15):特開2013-224853号公報 甲第16号証(甲16):特開平1-270623号公報 甲第17号証(甲17):特開2016-83759号公報 甲第18号証(甲18):特開昭63-303215号公報 甲第19号証(甲19):特開平1-152335号公報 甲第20号証(甲20):特開2006-77938号公報 甲第21号証(甲21):国際公開第2006/030786号 甲第22号証(甲22):特開2005-227172号公報 甲第23号証(甲23):特開2001-356808号公報 甲第24号証(甲24):特開2003-280707号公報 甲第25号証(甲25):特開2003-216729号公報 甲第26号証(甲26):国際公開第2013/145203号 甲第27号証(甲27):特開2001-324200号公報 甲第28号証(甲28):特開平9-292311号公報 甲第29号証(甲29):特開2007-192828号公報 甲第30号証(甲30):特開2015-111113号公報 甲第31号証(甲31):特開平3-221818号公報 甲第32号証(甲32):特開2004-218814号公報 甲第33号証(甲33):特開2009-229089号公報 第5 取消理由通知書(決定の予告)の取消理由の概要 先の訂正請求書によって訂正された請求項1~8について、当審合議体が取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (明確性)本件発明1~8は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 第6 各甲号証の記載等 1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 (1)甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様)。 (甲1-ア)第3欄第30行~第4欄第23行 「本発明においては、振動周波数の強度を検出するセンサーとして圧電型振動加速度計を使用し、ベアリング由来の異常を検出するために監視する振動周波数は1KHz~75kHzとする。一般に玉ベアリングやローラベアリングなどの回転部分の振動は、ベアリングに接触する外輪、内輪との衝撃周波数(ベアリングの回転周波数)に対する基本振動やベアリング全体の摩耗によるうなり等からなるが、ベアリング自身や内外輪に欠陥(キズ)があると、周期的な振動を発生させる。従来においては、このキズや油切れを示す振動として20KHz以下の振動周波数を検出手段としてきた。確かに、ベアリングを構成する部位毎に演算される固有の振動周波数は、理論上1KHzまでの低周波数域にある。しかし機械由来の振動や異常振動の方が振動エネルギが大きく、ベアリングのキズに由来する振動加速度信号を感度よく捕らえることができない。高い周波数領域では機械由来の低周波の振動が十分に減衰しているのでベアリングのキズに由来する振動が検出できる。本発明では、高い周波数領域を包含する1KHz~75KHzまでの振動加速度信号を包絡線処理(高周波成分を半波整流後、ピーク値をつなぎあわせて復調波に加工する処理、かような処理自体は各種の分野で利用されている)した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算されるそれぞれの振動周波数帯域で振動加速度強度を監視する。これに使用するセンサーとしては圧電素子を用いた振動加速度計を使用する。これは、第1図に図解的に示したように圧電素子1をおもり2で押さえたものをケース3内に設置したもので、ケース3の基板4を振動体に固定することにより、その振動加速度を受けたおもり2が圧電素子1を押圧することによつて振動強度に比例した電圧を発生する。これを電気出力として取り出し、前記の1Hz~75KHzでの振動周波数の振動強度を検出する。この振動加速度センサーはネジ止めによつてそれぞれ回転機器の軸受部に強固に固定しておく。」 (甲1-イ)第4欄第24行~第4欄第36行 「本発明は、多数の回転機器軸受部に取付けられた各々の振動加速度センサーからの電気信号をまずスキヤンニング装置で時間分割でアナログ信号として読み取り、これを1台の周波数分析計(スペクトルアナライザー)において、時間分割で入る図信号を1Hz~75KHz(機械由来の異常検出機能として1Hzから1KHzまで、そしてベアリングを構成する部位のキズを診断する機能として1KHzから75KHzまでを包絡線処理した後の信号)の振動周波数の強度に分析し、各測定点の振動周波数の強度をデジタル信号に変換して制御用コンピユータに入力させ、この制御コンピユータにおいて、ベアリングの破壊予知と保全を判断する。」 (甲1-ウ)第4欄第37行~第6欄第3行 「本発明において使用する制御用コンピユータは以下に述べる少なくとも(1)~(5)の機能をもたせ、これによつて各ベアリングの破壊の予知を行う。 (1)回転機器の納入時またはベアリングの交換時をベアリングの正常値として、その振動加速度を第3図に示したように振動加速度センサー11、増幅器12、スキヤンニング装置13、チヤージ増幅器14、フイルタ付きでしかも包絡線処理機能付きのスペクトルアナライザ(周波数分析計)15で分析し、テレビブラウン管(以下、CRTと呼ぶ)21に表示する。 (2)このCRT画面上の周波数分析結果を、コンピユータのテンキーで日付、時刻、機器番号、ベアリングの仕様と共に初期値として登録する機能を有する。 (3)コンピユータのメモリ23に、1Hzから1KHzの低周波数帯域の振動加速度強度と、1KHzから75KHzまでの高周波数帯域の振動加速度を包絡線処理したあと周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度とを、正常であつた時の初期値として第3図に示すカートリツジ磁気テープ17に登録し、記憶する。ベアリングの交換の度に初期値と振動強度を比較することでベアリングの交換が正しく行われたかを判断できる機能を有する。なお、この例では1KHzから75KHzまでの高周波帯域を処理する機能をもたせたが、ベアリング破壊に対しては20~75KHzの範囲でも高精度に予知できる。 (4)回転機器の運転による振動加速度の経時変化を常時スキヤンニングの周期で計測し、計測された1Hzから1KHz域の振動加速度強度と、登録された1Hzから1KHz域の振動加速度強度の比から振動加速度倍率を求める。同様に計測された1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度と、登録された振動加速度強度との比から振動加速度倍率を求める。 振動加速度倍率(N)=計測された振動加速度強度/登録された振動加速度強度 そして、 1≦N≦5では正常域 5≦N<6では注意域 6≦Nでは異常域 と判断する。なお、Nレベルの判断は本発明者が実際の各種の回転機器について試験を繰り返して得たものである。 (5)この正常域、注意域および異常域を変更する場合は、コンピユータのテンキーでそれを入力して変更できる機能をもつ。 この(1)~(5)の演算機能と入力機能によつてベアリング破壊予知が実質的に行い得る。そしてシステム全体としては、次の会話機能をもたせる。」 (甲1-エ)第6欄第4行~第39行 「(6) 回転機器の配置ブロツク図表示。 注意域、異常域箇所をフリツカ(点滅)で表示し、警報ブザーを鳴らす。 データのグループ表示 1Hzから1KHz域の振動加速度強度、1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度、それぞれの振動加速度倍率、運転時間の表示、並びに日付、時刻、回転機器番号の表示。 以上のデータをCRTを介して常時表示する。 (7) また、本システムのデータロギング機能として、次の異常時印字、任意印字、日報印字は第3図に示すラインプリンタ19で出力される。 (a) 異常時印字(注意、異常検出時に自動印字) 注意、異常の別、1Hzから1KHz域の振動加速度強度、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度、それぞれの振動加速度倍率、運転時間、日付、時刻、回転機器番号の印字。 (b) 任意印字(テンキーで回転機器番号を指示し印字) 正常、注意、異常の別、1Hzから1KHz域の振動加速度強度、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度、それぞれの振動加速度倍率、運転時間、日付、時刻、回転機器番号の印字。 (c) 日報印字(定時刻に自動印字) 正常、注意、異常の別、1Hzから1KHz域の振動加速度強度、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度、それぞれの振動加速度倍率、運転時間、日付、時刻、回転機器番号の印字。」 (甲1-オ)第7欄第10行~第12行 「通常は1KHz以下に現れる各回転体の回転数に対応する主振動数、つまりfrの周波数帯の強度分析により、回転軸のズレを監視する。」 (甲1-カ)第8欄第28行~第39行 「〔手順5〕1Hzから1KHz域の振動加速度強度および1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析した振動加速度強度から、fc,fb,fi,frをもとに次式で演算したベアリングを構成する部位の周波数に対応する振動加速度を読取り、それぞれを初期値とする。 周波数(Hz) 初期強度 ベリングのガタ fr LA(t-dt) 内輪のキズ Z・fi LB(t-dt) 外輪のキズ Z・fc LC(t-dt) 玉のキズ fb LD(t-dt)」 (甲1-キ)第8欄第43行~第9欄第3行 「〔手順7〕測定すべき点数の全ての分析が終了したら手順3に戻り、手順5と6で得られた振動加速度強度をそれぞれLA(t),LB(t),LC(t), LD(t),LE1(t)~LE5(t)と記憶しておく。」 (甲1-ク)第9欄第22行~第10欄第19行 「〔手順9〕LA(t),LB(t),LC(t),LD(t),LE1(t)~LE5(t)と各々の初期値の比を振動加速度倍率として次式で計算する。 NA=LA(t)/LA(t-dt) NB=LB(t)/LB(t-dt) NC=LC(t)/LC(t-dt) ND=LD(t)/LD(t-dt) NE=LE1(t)/LE1(t-dt) ~ NE=LE5(t)/LE5(t-dt) そして、演算されたそれぞれの周波数に内応する振動加速度倍率の最大値を検索し、異常の原因を決定する。振動加速度倍率の最大値が例えばNBであつたとすると、 1≦NB<5では“正常” 5≦NB<6では“注意” 6≦NBでは“異常”と判断する。 正常のときは〔手順5〕に戻る。注意、異常のときは、このNA,NB,NC,ND,NEの中で一番大きな振動加速度倍率を示す破壊箇所を決定し、次に示すように異常印字する。 NAが一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “ベアリングの摩耗によりガタ” (当審注:“ベアリングの摩耗によりガタ”は、“ベアリングの摩耗によるガタ”の明らかな誤記であると認められる。) NBが一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “ベアリングの内輪のキズ” NCが一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “ベアリングの外輪のキズ” NDが一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “ベアリングの玉のキズ” NE1が一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “機械の架台のガタによる異常” NE2が一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “機械のアンバランスによる異常” NE3が一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “機械のミスアライメントによる異常” NE4が一番大きな振動加速度倍率を示す時、 “機械シヤフトの曲がりによる異常” NE5が一番大きな振動加速倍率を示す時、 “機械の羽根の欠損による異常”。 その後、ベアリングを交換を指示し〔手順5〕に戻る。」 (2)認定事項 ア (甲1-ウ)の記載から、「計測された1Hzから1KHz域の振動加速度強度と、登録された1Hzから1KHz域の振動加速度強度の比から振動加速度倍率を求め」、「同様に計測された1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度と、登録された振動加速度強度との比から振動加速度倍率を求め」、求められたそれぞれの「振動加速度倍率(N)=計測された振動加速度強度/登録された振動加速度強度」が、「1≦N≦5では正常域 5≦N<6では注意域 6≦Nでは異常域 と判断」していることから、「1Hzから1KHz域の」「振動加速度倍率(N)」及び「1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の」「振動加速度倍率(N)」が予め設定された値(1、5、6)と比較され、当該比較の結果に基づき、「正常」、「注意」、「異常」を「判断」しているといえる。 イ そして、それぞれの「振動加速度倍率(N)」は、「計測された振動加速度強度」を予め「登録された振動加速度強度」で除したものであり、「振動加速度倍率(N)」を予め設定された値(1、5、6)と比較することは、それぞれの「計測された振動加速度強度」を予め設定された値(1×登録された振動加速度強度、5×登録された振動加速度強度、6×登録された振動加速度強度)と比較することと同義であるといえる。 ウ また、(甲1-オ)~(甲1-ク)の記載から、「計測された1Hzから1KHz域の振動加速度強度」のうち、周波数がfrの振動加速度強度及び振動加速度倍率は「LA(t)」及び「NA」であり、当該振動加速度強度及び振動加速度倍率から「ベアリングの摩耗によるガタ」の状態を判断しているといえる。そうすると、上記ア、イを踏まえると、「計測された1Hzから1KHz域の振動加速度強度」を予め設定された値と比較することにより、ベアリングの「正常」、「注意」、「異常」を「判断」しているといえる。 エ さらに、(甲1-ク)の記載から、「注意、異常のときは、このNA、NB、NC、ND、NEの中で一番大きな振動加速度倍率を示す破壊箇所を決定」することから、「1Hzから1KHz域の」「振動加速度倍率(N)」及び「1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の」「振動加速度倍率(N)」の中で一番大きな振動加速度倍率に基づいて、ベアリングの異常の判断を行っているといえる。そうすると、上記ア~ウを踏まえると、「1Hzから1KHz域の振動加速度強度」及び「1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度」のいずれかが、予め設定された値より大きいとき、ベアリングの異常として判断するといえる。 オ よって、上記ア~エより、以下の事項が導かれる。 「『1Hzから1KHz域の振動加速度強度』及び『1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度』を、予め設定された値と比較し、当該比較の結果に基づき、ベアリングの正常、注意、異常を判断すること。」、及び、「『1Hzから1KHz域の振動加速度強度』及び『1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度』のいずれかが、予め設定された値より大きいとき、ベアリングの異常として判断すること。」 (3)甲1に記載された発明 上記(1)、(2)より、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「回転機器の運転による振動加速度の経時変化を常時計測し、玉ベアリングやローラベアリングなどのベアリング由来の異常を検出するために振動加速度強度を監視する方法であって、 回転機器軸受部に取付けられた振動加速度センサーからの電気信号を読み取り、 この電気信号を包絡線処理機能付きのスペクトルアナライザ(周波数分析計)において、1KHzから75KHzまでの高周波数帯域の振動加速度を包絡線処理したあと周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度を求め、 『1Hzから1KHz域の振動加速度強度』及び『1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度』を、予め設定された値と比較し、当該比較の結果に基づき、ベアリングの正常、注意、異常を判断し、正常、注意、異常の別の印字をラインプリンタ19で出力し、 『1Hzから1KHz域の振動加速度強度』及び『1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度』のいずれかが、予め設定された値より大きいとき、ベアリングの異常として判断する方法。」 2 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明 (1)甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2-ア)第6欄第4~28行 「The vibration sensing device 12 of the bearing assembly monitoring system 10 is operative to detect complex vibrations emanating from the duplex bearing assembly 120 that reflect the operating condition of the bearings 124, 126 and to provide vibration signals corresponding thereto. As the ball bearings of the bearing assembly 120 roll or slide within the inner and outer races thereof, vibrations are generated due to microscopic surface discontinuities, e.g., pits, in the ball bearings and/or races. Such surface discontinuities are inherent in all bearing assemblies due to manufacturing limitations. As the ball bearings and/or races experience surface fatigue and/or corrosion due to operational usage, the size of these surface discontinuities increases. The increase in size of the surface discontinuities causes concomitant increases in the amplitudes of the complex vibrations emanating from the bearing assembly 120. The amplitude increases of the complex vibrations correlate directly to the operating condition of the bearing assembly 120. The bearing assembly monitoring system 10 according to the present invention detects such amplitude increases by means of the vibration sensing device 12 and utilizes such amplitude increases to provide a real time early warning of bearing assembly degradation and/or possible impending catastrophic failure.」 (当審訳:軸受アセンブリ監視システム10の振動感知装置12は、軸受124、126の動作状態を反映する複式軸受アセンブリ120から発せられる複雑な振動を検出し、それに対応する振動信号を提供するように動作する。軸受アセンブリ120のボールベアリングがその内輪および外輪内で転がったり滑ったりすると、ボールベアリングおよび/またはレースの微細な表面の不連続性、例えばピットによって振動が発生する。このような表面の不連続性は、製造上の制限により、すべての軸受アセンブリに固有のものである。ボールベアリングおよび/またはレースが運用上の使用により表面疲労および/または腐食を受けると、これらの表面の不連続部のサイズが増加する。表面の不連続部のサイズの増加は、軸受アセンブリ120から発せられる複雑な振動の振幅の付随的な増加を引き起こす。複雑な振動の振幅の増加は、軸受アセンブリ120の動作状態に直接相関する。本発明による軸受アセンブリ監視システム10は、振動感知装置12によってそのような振幅の増加を検出し、そのような振幅の増加を利用して、軸受アセンブリの劣化および/または起こり得る差し迫った致命的故障についてのリアルタイムの早期警告を提供する。) (甲2-イ)第7欄第3~6行 「The vibration sensing device 12 for the bearing assembly monitoring system 10 is preferably an accelerometer that is operative over the frequency range of interest.」 (当審訳:軸受アセンブリ監視システム10の振動感知装置12は、対象となる周波数範囲にわたって動作する加速度計であることが好ましい。) (甲2-ウ)第7欄第35~50行 「A schematic block diagram of an exemplary embodiment of the vibration signal processing circuit 20 is illustrated in FIG. 6 and a detailed circuit schematic of the vibration signal processing circuit 20 for the described embodiment of the bearing assembly monitoring system 10 is depicted in FIGS. 7A, 7B. The processing circuit 20 includes a current subcircuit 26, a passive bandpass filter 28, an RMS chip 30, a reference voltage subcircuit 32, a comparator 34, a time delay subcircuit 36, and an interlock subcircuit 38. The processing circuit 20 is operative to convert the complex vibratory signals from the vibration sensing device 12 to DC voltage signals and to compare such DC voltage signals to one or more reference voltages. Exceedance of a reference voltage activates the alarm subsystem 24, as described in further detail hereinbelow.」 (当審訳:振動信号処理回路20の例示的な実施形態の概略ブロック図が図6に示されている。軸受アセンブリ監視システム10の説明された実施形態の振動信号処理回路20の詳細な回路図が図7A及び図7Bに示されている。処理回路20は、電流サブ回路26と、受動バンドパスフィルタ28と、RMSチップ30と、基準電圧サブ回路32と、比較器34と、時間遅延サブ回路36と、インターロックサブ回路38とを含む。処理回路20は、振動感知装置12からの複雑な振動信号をDC電圧信号に変換し、そのようなDC電圧信号を1つ以上の基準電圧と比較するように動作する。以下にさらに詳細に説明するように、基準電圧を超えると警報サブシステム24が作動する。) (甲2-エ)第8欄第7~27行 「The complex vibration signals 28S transmitted by the bandpass filter 28 are converted to DC voltage signals by means of the RMS chip 30. The RMS chip 30 is operative to rectify and smooth the complex vibrations signals 28S to provide stabilized DC voltage signals 30S. Alternatively, a combination of a rectifying diode and a capacitor may be utilized to perform the signal rectifying and smoothing functions, although the RMS chip is preferred over discrete components for stability. The stabilized voltage signals 30S from the RMS chip 30 are transmitted to the comparator 34 (for the described embodiment there are two comparators 34-1, 34-2 , as illustrated in FIG. 7A). Each comparator 34 is operative to compare the stabilized DC voltage signals 30S against a corresponding reference voltage provided by the reference voltage subcircuit 32. The embodiment of the bearing assembly monitoring system 10 described herein has two reference voltage subcircuits 32-1, 32-2 that are operative to provide first and second reference voltages 32V1, 32V2 as illustrated in FIGS. 6, 7A (see also FIG. 8). 」 (当審訳:バンドパスフィルタ28によって送信された複素振動信号28Sは、RMSチップ30によってDC電圧信号に変換される。RMSチップ30は、複雑な振動信号28Sを整流および平滑化して、安定化されたDC電圧信号30Sを提供するように動作する。あるいは、安定性のためにディスクリート部品よりもRMSチップが推奨されるが、信号の整流および平滑化機能を実行するために、整流ダイオードとコンデンサの組み合わせが利用されてもよい。RMSチップ30からの安定化電圧信号30Sは比較器34に送信される(説明される実施形態では、図7Aに示すように2つの比較器34-1、34-2がある)。各比較器34は、安定化されたDC電圧信号30Sを、基準電圧サブ回路32によって提供される対応する基準電圧と比較するように動作する。 本明細書で説明する軸受アセンブリ監視システム10の実施形態は、図6および図7Aに示されるように(図8も参照)、第1および第2の基準電圧32V1、32V2を供給するように動作する2つの基準電圧サブ回路32-1、32-2を有する。) (甲2-オ)第8欄第47行~60行 「The first reference voltage 32V1 defines a "maintenance" condition, which is an indication that the bearing assembly is experiencing vibration levels significantly above new bearing levels (non-critical degradation) and should be inspected by maintenance personnel at the earliest opportunity. The second reference voltage 32V2 defines a "high vibration" condition, which is an indication that the bearing assembly is experiencing excessive vibration levels (for the described embodiment four or more times greater than the vibration levels of new bearings) indicative of abnormal operating conditions. As FIG. 8 exemplifies, the "high vibration" condition may, in some circumstances, indicate an impending catastrophic failure of the bearing assembly. 」 (当審訳:第1の基準電圧32V1は、「メンテナンス」状態を規定し、これは、軸受アセンブリが新品の軸受のレベル(重大ではない劣化)を大幅に超える振動レベルを受けており、できるだけ早い機会にメンテナンス担当者によって検査される必要があることを示す。第2の基準電圧32V2は、「高振動」状態を規定し、これは、軸受アセンブリが、異常な動作状態を示す過剰な振動レベル(説明される実施形態では、新品の軸受の振動レベルの4倍以上)を経験していることを示す。図8に例示されているように、「高振動」状態は、状況によっては、軸受アセンブリの差し迫った致命的故障を示してもよい。) (甲2-カ)第12欄第39行~51行 「The cockpit advisory devices 62 include a "Maintenance" advisory light 64, a "High Vibrations" caution light 66, and a "High Temperature" warning light 68 as schematically illustrated in FIG. 12 (see also FIG. 7B). The "Maintenance" advisory light 64 is activated by the first vibration alarm signal 38AS1 and apprises the pilot that the duplex bearing assembly 120 is exceeding nominal vibration levels. The "High Vibrations" caution light 66 is activated by the second vibration alarm signal 38AS2 and apprises the pilot that the duplex bearing assembly 120 is experiencing excessive vibration levels and that there is a concomitant possibility of impending catastrophic failure of the duplex bearing assembly 120. 」 (当審訳:コックピット勧告装置62は、図12に概略的に示されるように(図7Bも参照)、「メンテナンス」勧告灯64と、「高振動」警告灯66と、「高温」警告灯68とを含む。「メンテナンス」勧告灯64は、第1の振動警報信号38AS1によって作動し、複式軸受アセンブリ120が公称振動レベルを超えていることをパイロットに知らせる。「高振動」警告灯66は、第2の振動警報信号38AS2によって作動し、複式軸受アセンブリ120が過度の振動レベルに遭遇していること、および複式軸受アセンブリ120の差し迫った致命的故障の付随する可能性があることをパイロットに知らせる。) (甲2-キ)図4 「 [図:0001426794000001.jpg] 」 (甲2-ク)図8、11 「 [図:0001426794000002.jpg] 」 (甲2-ケ)図6、10 「 [図:0001426794000003.jpg] 」 (2)甲2に記載された発明 上記(1)より、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ボールベアリングの動作状態を監視する軸受アセンブリ監視システム10による監視方法であって、 加速度計によりボールベアリングから発生する振動を加速度計の信号として検出し、 前記加速度計の信号をRMSチップ30によって変換されたDC電圧信号30Sを基準電圧サブ回路32によって提供される対応する基準電圧である第1および第2の基準電圧32V1、32V2と比較し、 前記比較の結果に基づき、ボールベアリングの「メンテナンス」状態、「高振動」状態、及び、それ以外の状態を診断し、 前記診断の結果を「メンテナンス」勧告灯64、及び、「高振動」警告灯66の点灯によってパイロットに知らせ、 前記加速度信号をRMSチップ30によって変換されたDC電圧信号30Sが、第2の基準電圧32V2より大きいとき、前記ボールベアリングの「高振動」状態として診断する 方法。」 3 甲3の記載事項 甲3には以下の記載がある。 (甲3-ア) 「【0014】 図1は本発明を実施した実施形態の全体構成の概略図を示す。図2は機械室10の詳細図を示し、図3は中央監視装置30の詳細図を示す。図1において、この実施形態では各ゾーンとして機械室ごとに処理を行うケースについて説明する。複数の機械室10,10・・と中央監視装置30はネットワーク20で接続されている。各機械室10には監視対象である生産設備機器(図示省略)が設置され、該生産設備機器の回転部に設けられている各軸受け(図示省略)に振動計測センサー11が装着されている。振動計測センサー11としては、例えば加速度センサーを利用する。加速度センサー11で計測されたアナログ出力は、まず、プリアンプ12で増幅され、増幅されたアナログ信号出力がデータ生成回路13に入力される。生成回路13で処理された信号はデジタル信号としてデータ処理回路14に入力される。データ処理回路14は複数のデータを時分割による多重化処理し、フレームを作成する。各フレームのデータは変換回路15によって送信データとしてネットワーク20に出力される。ネットワーク20はIPネットワークを利用する。一方、中央監視室35に配置された中央監視装置30の受信装置16はネットワーク20からデータを受信して、中央制御装置31に出力する。中央制御装置31には監視装置32及び診断装置33が接続されており、生産設備機器の監視及び故障診断を行う。 【0015】 次に、データ生成回路13の内容を詳細に説明する。 図2において、プリアンプ12で増幅されたアナログ信号は一部が信号処理回路(第1処理回路)21に送出される。信号処理回路21は入力されたアナログ信号(振動波形信号)を処理して、実効値、ピーク値、加速度値等のアナログ信号(特性波形信号)を生成する。生成されたこれらの特性波形信号は入出力ユニット(I/Oユニット)22に入力され、実効値、ピーク値、加速度値等をデジタル信号(例えば、低ビット数のデジタル信号)として出力される。入出力ユニット(I/Oユニット)22から出力されたデジタルデータは多重化処理回路(データ処理回路)14によって送信データのフレームとして構成される。パケット化回路(変換回路)15は送信データのフレームをプロトコル(通信規約)に合わせてIPパケットを作成し、IPネットワーク20に送出する。」 (甲3-イ) 「【0018】 図3において、中央監視装置30は中央制御装置31、監視装置32、診断装置33、入力装置34、メモリ40から構成されている。監視装置32には監視用表示装置36、警報用ブザー37が接続されている。また、診断装置33には分析した波形等を表示する診断用の表示装置38と聴音発生用のスピーカ39が設けられている。受信装置16はネットワーク20から中央監視室36宛に送られたパッケージデータを受領し、監視用データを監視装置32に出力し、診断用データをメモリ40に記憶すると共に診断装置33に出力する。監視装置32は、例えば図4に示すように、受信した実効値、ピーク値、加速度などのデータを機械室番号、センサー番号と共に表示装置32に表示する。また、それらのデータの閾値と比較して正常、注意、異常と判定する。注意又は異常の場合は警報を表示し、ブザー37を鳴らす。なお、閾値データは軸受けの固定状態、軸受けの直径、平均回転速度等の要因を勘案して実験的又は経験値に基づいて決定され、予めメモリ40に記録しておく。なお、判定は正常と異常だけにしてもよい。また、閾値データは適宜修正可能にしてもよい。」 (甲3-ウ)図1 「【図1】 [図:0001426794000004.jpg] 」 (甲3-エ)図2 「【図2】 [図:0001426794000005.jpg] 」 (甲3-オ)図3 「【図3】 [図:0001426794000006.jpg] 」 (甲3-カ)図4 「【図4】 [図:0001426794000007.jpg] 」 4 甲4の記載事項 甲4には以下の記載がある。 (甲4-ア) 「【0009】 【実施例】以下図面を用いて本発明の一実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の基本的な構成ブロック図である。図において、1はプラントを構成する例えばポンプ等の設備機器を総括的に示すブロックであり、2はこの設備機器1に結合し、その振動に関する信号、例えば振動変位信号、振動速度信号、振動加速度信号を検出する振動検出手段(センサー)である。この振動検出手段としては、例えば、圧電素子を用いたものや、光信号を利用して振動を検出するものなどが使用可能である。 【0010】3は振動検出手段2から出力される測定振動信号を入力し、その測定信号と規定の基準値とを比較評価する絶対値比較評価手段である。ここで、規定の基準値とは、JIS,ISO,VDI等の各種の規格、設備機器メーカが提示している基準値、あるいはユーザが定めた基準値などが該当している。4は振動検出手段2からの測定振動信号を入力し、設備機器1固有の正常時のデータ(信号)を初期値とし、これに対して測定振動信号がどの程度の状態にあるかを相対値評価する相対値比較評価手段、5は絶対値比較評価手段3と相対値比較評価手段4とからの評価結果を入力し、それらの論理和処理を行って設備機器の正常/異常の判断を行う論理和手段、6は論理和手段5からの判断結果を表示する表示手段で、例えば、CRTなどが用いられる。 【0011】図2は、本発明を適用した設備機器の異常診断装置のさらに詳細な構成ブロック図である。 図1の各部分に対応するものには、同じ符号を付して示してある。ここで、11は振動検出手段2からの信号をオンラインあるいはオフラインで収集するデータ収集手段で、設備機器に結合する各種検出手段からの信号を、例えばフィルタリング処理する機能を有している。ここで収集されたデータは、各比較評価手段3,4に渡される。12はデータ収集手段11で収集したデータの加工を行うデータ加工手段で、例えば、振動信号の実効値、平均値、ピーク値、波高率等を演算によって求めたり、エンベロープ、FFT分析等の信号加工を行う部分である。」 (甲4-イ) 「【0013】このように構成した装置の動作を、次に説明する。図3は、絶対値比較評価手段3が行う判断動作の説明図である。ここでは、設備機器として回転機器を想定している。絶対値比較評価手段3は、データ収集手段11が収集した各種のデータを、計測データ格納部22から読みだし、回転数に関する絶対値データと、振動信号の両振幅の絶対値データとを用い、これらの値が、例えば、JIS,ISO,VDI等の各種の規格、メーカ提示の基準値に基づいてあらかじめ決められた値(しきい値)を越えているか否かにより、判定を行うようになっている。 【0014】すなわち、例えば、回転数が600rpmの場合であれば、両振幅の絶対値が、30/1000mm以下であれば優良状態(Very Smooth)にあると判定し、57/1000mm以下であれば、良好状態(Good)であると判定し、90/1000mm以下であれば可(Fair)であると判定し、90/1000mmを越える場合、注意状態であると判定し、さらに、145/1000mmを越えるような場合は、危険状態と判定している。同じように、例えば、回転数が3600rpmの場合であれば、両振幅の絶対値が、7/1000mm以下であれば優良状態にあると判定し、12/1000mm以下であれば、良好状態であると判定し、18/1000mm以下であれば可であると判定し、18/1000mmを越える場合、注意状態であると判定し、さらに、30/1000mmを越えるような場合は、危険状態と判定している。 【0015】・・・図5は、相対値比較評価手段4が行う判断動作の説明図である。相対値比較評価手段4は、データ収集手段11が収集した各種のデータを、計測データ格納部22から読みだすと共に、機器仕様格納部21から設備機器固有の正常時の仕様データを読みだし、正常時のデータを初期値とし、これに対して計測データがどの程度の状態(どの程度の比率)にあるかを相対値評価する。 【0016】・・・また、診断対象がころがり軸受である場合、そこから出力される振動加速度信号値が、正常時のデータに対して、3倍以下であれば良好と判定し、3~6倍以下であれば注意状態と判定し、6倍を越えるような場合には、危険状態であると判断する。」 (甲4-ウ)図1 「【図1】 [図:0001426794000008.jpg] 」 (甲4-エ)図2 「【図2】 [図:0001426794000009.jpg] 」 5 甲5の記載事項 甲5には以下の記載がある。 (甲5-ア) 「【0035】 ・・・軸受の状態の判定については、たとえば図5(b)に示されるように、振動加速度が監視される。軸径と回転数との積に対する振動加速度が、基準に従って判定される。・・・ 【0036】 これら2つのモードにおいては、判定閾値は、予め定められた値であってもよい。その場合の判定閾値は、あくまでも目安値である。ユーザは、モータ1の使用状態に合わせて判定閾値を調整してもよい。」 (甲5-イ)図5 「【図5】 [図:0001426794000010.jpg] 」 6 甲6の記載事項 甲6には以下の記載がある。 (甲6-ア) 「【0014】 ・・・ また、図2に示すように、円筒状のハウジング24の外周面に、ロータ3の軸心から見て直交する位置に、センサ5a及びセンサ5bが取り付けられている。ここで、センサ5a及びセンサ5bとして、例えば、振動センサ(加速度ピックアップ)、音響センサ、或いは温度センサ等が用いられる。」 (甲6-イ) 「【0030】 ・・・ ステップS142では、劣化特性曲線推定部10は、取得された計測値から特徴を抽出する。ここで、抽出される特徴は、例えば、上述の加速度振幅値、実効値(root mean square value: RMS)、或いは加速度振幅値に各種処理を施し得られるマハラノビス距離等である。」 (甲6-ウ) 「【0033】 以下では、累積回転数と劣化指標(実効値:RMS)との関係で示される劣化特性曲線を一例として説明する。 図8は、累積回転数と劣化指標(実効値)との関係を示す劣化特性曲線図である。図8は、横軸に累積回転数をとり、縦軸を劣化指標(実効値)とする劣化特性曲線図である。横軸の累積回転数は、例えば、100rpmの回転速度で1000分間稼働した場合の累積回転数は100000回となり、2000分間稼働した場合の累積回転数は200000回となる。また、縦軸に示される劣化指標(実効値)は、センサ5a及び5bにて計測される振幅値の実効値を求め、求めた実効値と劣化指標との関係は、ISOにより国際標準(国際規格)として規定された値を用いている。劣化指標は、実効値の値により3段階に分類され、「正常(Normal)」は劣化指標が「1」以下、「注意(Caution)」は劣化指標が「1」より大きく「2」以下、「危険(Danger)」は劣化指標が「2」より大きい範囲として定義される。また、累積回転数にも依存することから、累積回転数も加味する必要がある。例えば、累積回転数の増加に伴い、軸受を有する回転装置2そのものが経年変化又は経時変化することが想定される。経年変化又は経時変化が生じた場合、実効値が上昇するため累積回転数についても実効値の比較の際に加味する必要がある。これらを考慮し、「正常(Normal)」、「注意(Caution)」、及び「危険(Danger)」の3段階に分類した結果を図8に示している。」 (甲6-エ)図8 「【図8】 [図:0001426794000011.jpg] 」 7 甲7の記載事項 甲7には以下の記載がある。 (甲7-ア)第2頁左下欄10行~第4頁左上欄第5行 「 [図:0001426794000012.jpg] [図:0001426794000013.jpg] [図:0001426794000014.jpg] [図:0001426794000015.jpg] [図:0001426794000016.jpg] [図:0001426794000017.jpg] [図:0001426794000018.jpg] 」 (甲7-イ)第1図 「 [図:0001426794000019.jpg] 」 (甲7-ウ)第2図 「 [図:0001426794000020.jpg] 」 (甲7-エ)第3図 「 [図:0001426794000021.jpg] 」 8 甲8の記載事項 甲8には以下の記載がある。 (甲8-ア) 「【0011】 センサ22は、軸受21の回転状態に応じて変化する物理量として、音J1、振動J2、軸受の回転数J3、軸受温度J4、軸受外輪上に生じる歪みJ5等の情報を検出する複数の検出素子を有する検出器である。各検出素子は、検出した各物理量を電気信号として演算処理部30に出力する。各検出素子は、それぞれ独立に別の場所に配置されていてもよいし、複数の検出素子を独立に配置する代わりに、複数の検出素子をその筐体の内部に収納し、複数種類の信号を同時に検出する複合センサユニットをセンサ22として用いるように構成してもよい。本実施形態においては、図2(a)に示すように、センサ22は、ユニットケース22a内に各種センサ22b、22c及び22dを収納した構成としている。以下、センサ22は、ユニットケース22a内部に軸受21の温度を検出する温度検出素子22bと、軸受21の内輪(車軸)の回転速度を検出する回転検出素子22cと、軸受21に発生する振動を検出する振動検出素子22dとを有しているとして説明を行う。」 (甲8-イ) 「【0022】 振動分析部35は、振動検出素子22dからの出力信号を基に、軸受21に発生している振動の周波数分析を行う。具体的には、振動分析部35は、振動信号の周波数スペクトルを算出するFFT計算部であり、FFTのアルゴリズムに基づいて、振動の周波数スペクトルを算出する。算出された周波数スペクトルは、比較判定部36に送られる。また、振動分析部35は、FFTを行う前処理として、振動信号の包絡線を求めるエンベロープ処理を行い、ノイズの低減を図るように構成してもよい。振動分析部35は、必要に応じて、エンベロープ処理後のエンベロープデータもあわせて比較判定部36に出力する。」 (甲8-ウ) 「【0026】 比較判定部36は、振動分析部35が求めた振動の周波数スペクトルと、内部データ保存部37に保存されている基準値または周波数スペクトル中から算出される基準値とを比較し、異常振動が発生しているかどうかを判定する。ここで、基準値は、軸受の特定部位の摩耗や破損に起因した周波数成分のデータ、または周波数スペクトル毎に求められるスペクトルに含まれた所定の値である。比較判定部36は、周波数成分の比較による判定と同時に、温度分析部32および回転分析部33から得られた温度および回転速度の分析結果と、内部データ保存部37に蓄積されている軸受の各種データ等の仕様諸元データを参照し、判定の正確性を期す。 【0027】 具体的には、比較判定部36は、振動の周波数スペクトルを基に異常有りと判定された場合、軸受の温度を確認し、温度が所定値を超えていれば重大な異常が発生していると判断する。また、何れかのみが異常を示している場合には、何らかの異常が生じていると判断する。そしてどちらの結果も正常であれば、異常なしと判断する。何れか一方のみが異常を示している場合には、複数回判定を行っても結果が変わらない場合に異常有りと判断するように構成してもよい。比較判定部36は、異常診断の結果をデータ蓄積出力部38に出力する。」 (甲8-エ) 「【0031】 次に、デジタル信号の周波数スペクトルを求め(ステップ104)、求められた周波数スペクトルを基に、フィルタ処理部34が、デジタル信号に適用されるフィルタ帯域を選定する(ステップS105)。フィルタ処理部34は、選定したフィルタ帯域以外の周波数成分を除去するフィルタ処理を行い(ステップS106)、フィルタ処理後のデジタル信号を振動分析部35に出力する。そして、振動分析部35は、フィルタ処理後のデジタル信号にエンベロープ処理を施し(ステップS107)、エンベロープ処理後のデジタル信号の周波数スペクトルを求める(ステップS108)。」 (甲8-オ) 「【0033】次に、図4に示す表に基づき、軸受の異常に起因して発生する周波数を求め(ステップS110)、求めた周波数に対応する各部材の異常周波数成分のレベル、すなわち、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップS111)、ステップ112で計算された基準値との比較を行う(ステップS113)。そして、すべての成分の値が、基準値より小さい場合には、軸受に異常は発生していないと判断し(ステップS114)、いずれかの成分が基準値以上である場合には、該当個所に異常が発生していると判断する(ステップS115)。 【0034】 図7は、異常が発生していない場合の周波数スペクトルを、そして図8は、外輪に異常が発生している場合の周波数スペクトルをそれぞれ例示するグラフである。図7の例においては、エンベロープデータより、基準値が-29.3dBとして得られた。図7中のグラフ中に基準値のラインを引き、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)と比較を行うと、何れの成分のレベルも、基準値より小さかった。従って、この軸受は、正常であると判断できる。一方、図8の場合には、外輪傷成分So(Zfc)が基準値よりも大きく突出しており、軸受の外輪に異常が発生していると判断することができる。 【0035】 また、図9は、保持器に傷がある場合の周波数スペクトルと基準値の関係を示すグラフである。図9においては、保持器傷に対応する周波数fcにおいて、基準値よりも大きなピークが観測されている。このように、発生周波数のピークの有無は、軸受に起因する周波数におけるレベルと基準値との比較によって判断されるため、図9に示すような小さなピークであっても、適切に診断を行うことが可能である。」 (甲8-カ)図1 「 [図:0001426794000022.jpg] 」 (甲8-キ)図2 「 [図:0001426794000023.jpg] 」 (甲8-ク)図6 「 [図:0001426794000024.jpg] 」 (甲8-ケ)図8、9 「 [図:0001426794000025.jpg] 」 9 甲9の記載事項 甲9には以下の記載がある。 (甲9-ア) 「【0021】 センサ22は、軸受21の回転状態に応じて変化する物理量として、音J1、振動J2、軸受の回転数J3、軸受温度J4、軸受外輪上に生じる歪みJ5等の情報を検出する複数の検出素子を有する検出器である。各検出素子は、検出した各物理量を電気信号としてマイクロコンピュータ30に出力する。各検出素子は、それぞれ独立に別の場所に配置されていてもよいし、複数の検出素子を独立に配置する代わりに、複数の検出素子をその筐体の内部に収納し、複数種類の信号を同時に検出する複合センサユニットをセンサ22として用いるように構成してもよい。本実施形態においては、図2(a)に示すように、センサ22は、センサケース22a内に各種センサ22b、22c及び22dを収納した構成としている。以下、センサ22は、センサケース22a内部に軸受21の温度を検出する温度検出素子22bと、軸受21の内輪(車軸)の回転速度を検出する回転検出素子22cと、軸受21に発生する振動を検出する振動検出素子22dとを有しているとして説明を行う。」 (甲9-イ) 「【0032】 振動分析部35は、振動検出素子22dからの出力信号を基に、軸受21に発生している振動の周波数分析を行う。具体的には、振動分析部35は、振動信号の周波数スペクトルを算出するFFT計算部であり、FFTのアルゴリズムに基づいて、振動の周波数スペクトルを算出する。算出された周波数スペクトルは、比較判定部36に送られる。また、振動分析部35は、FFTを行う前処理として、振動信号の包絡線を求めるエンベロープ処理を行い、ノイズの低減を図るように構成してもよい。振動分析部35は、必要に応じて、エンベロープ処理後のエンベロープデータもあわせて比較判定部36に出力する。」 (甲9-ウ) 「【0036】 比較判定部36は、振動分析部35が求めた振動の周波数スペクトルと、内部データ保存部37に保存されている基準値または周波数スペクトル中から算出される基準値とを比較し、異常振動が発生しているかどうかを判定する。ここで、基準値は、軸受の特定部位の摩耗や破損に起因した周波数成分のデータ、または周波数スペクトル毎に求められるスペクトルに含まれた所定の値である。比較判定部36は、周波数成分の比較による判定と同時に、温度分析部32および回転分析部33から得られた温度および回転速度の分析結果と、内部データ保存部37に蓄積されている軸受の各種データ等の仕様諸元データを参照し、判定の正確性を期す。 【0037】 具体的には、比較判定部36は、振動の周波数スペクトルを基に異常有りと判定された場合、軸受の温度を確認し、温度が所定値を超えていれば重大な異常が発生していると判断する。また、何れかのみが異常を示している場合には、何らかの異常が生じていると判断する。そしてどちらの結果も正常であれば、異常なしと判断する。何れか一方のみが異常を示している場合には、複数回判定を行っても結果が変わらない場合に異常有りと判断するように構成してもよい。比較判定部36は、異常診断の結果を制御処理部40に出力する。」 (甲9-エ) 「【0039】 (1)エンベロープデータの実効値を基準値として用いる方法 本方法では、図5の式を基に、異常時に発生する周波数成分を求める。そしてエンベロープデータの実効値を算出し、この実効値から比較用の基準値を求める。そして、基準値以上の周波数を算出し、異常時に発生する周波数成分との比較を行う。以下、図7を参照しながら説明を行う。 【0040】 まず、センサユニット22aに収納された振動検出素子22dを介して軸受の振動を検出する(ステップS101)。検出された信号は、所定の増幅率で増幅され、A/D変換器によりデジタル信号に変換される(ステップS102)。デジタル信号に変換された振動信号は、所定のフォーマットにて、データ蓄積分配部31に保存される(ステップS103)。 【0041】 次に、デジタル信号の周波数スペクトルを求め(ステップ104)、求められた周波数スペクトルを基に、フィルタ処理部34が、デジタル信号に適用されるフィルタ帯域を選定する(ステップS105)。フィルタ処理部34は、選定したフィルタ帯域以外の周波数成分を除去するフィルタ処理を行い(ステップS106)、フィルタ処理後のデジタル信号を振動分析部35に出力する。そして、振動分析部35は、フィルタ処理後のデジタル信号にエンベロープ処理を施し(ステップS107)、エンベロープ処理後のデジタル信号の周波数スペクトルを求める(ステップS108)。 【0042】 同時に、エンベロープ処理後のデジタル信号の実効値を計算し(ステップS109)、実効値を基にして、異常診断に用いられる基準値を算出する(ステップS112)。ここで、実効値は、エンベロープ処理後のデジタル信号の振幅の絶対値の平均値として求められたものである。基準値は、実効値を基に、以下の式(1)または(2)に基づき算出される。 (基準値)=(実効値)+α ・・・(1) (基準値)=(実効値)×β ・・・(2) α,β:データの種類によって可変な所定の値 【0043】 次に、図5に示す表に基づき、軸受の異常に起因して発生する周波数を求め(ステップS110)、求めた周波数に対応する各部材の異常周波数成分のレベル、すなわち、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)を抽出し(ステップS111)、ステップ112で計算された基準値との比較を行う(ステップS113)。そして、すべての成分の値が、基準値より小さい場合には、軸受に異常は発生していないと判断し(ステップS114)、いずれかの成分が基準値以上である場合には、該当個所に異常が発生していると判断する(ステップS115)。 【0044】 図8は、異常が発生していない場合の周波数スペクトルを、そして図9は、外輪に異常が発生している場合の周波数スペクトルをそれぞれ例示するグラフである。図8の例においては、エンベロープデータより、基準値が-29.3dBとして得られた。図8中のグラフ中に基準値のラインを引き、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)と比較を行うと、何れの成分のレベルも、基準値より小さかった。従って、この軸受は、正常であると判断できる。一方、図9の場合には、外輪傷成分So(Zfc)が基準値よりも大きく突出しており、軸受の外輪に異常が発生していると判断することができる。 【0045】 また、図10は、保持器に傷がある場合の周波数スペクトルと基準値の関係を示すグラフである。図10においては、保持器傷に対応する周波数fcにおいて、基準値よりも大きなピークが観測されている。このように、発生周波数のピークの有無は、軸受に起因する周波数におけるレベルと基準値との比較によって判断されるため、図10に示すような小さなピークであっても、適切に診断を行うことが可能である。」 (甲9-オ)図1 「 [図:0001426794000026.jpg] 」 (甲9-カ)図2 「 [図:0001426794000027.jpg] 」 (甲9-キ)図7 「 [図:0001426794000028.jpg] 」 (甲9-ク)図9 「 [図:0001426794000029.jpg] 」 (甲9-ケ)図10 「 [図:0001426794000030.jpg] 」 10 甲10の記載事項及び甲10に記載された発明 (1)甲10に記載された事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 (甲10-ア)第1頁右欄第13~16行 「〔産業上の利用分野〕 この発明は回転機械の軸受として多用されているころがり軸受の異常を、機械の運転中に精度良く診断するための装置に関する。」 (甲10-イ)第3頁右上欄第10行~右下欄第14行 「加速度検出器2は、診断対象のころがり軸受30に密着させて、ころがり軸受30から発生する固体音を振動加速度(G)の形で電気信号として高周波応答特性の良好なピエゾ素子を用いて検出する。 この加速度検出器2で検出した電気信号には、ころがり軸受30以外から生じる振動成分も含まれているため、フィルタ4によって1kHz以下と10kHz以上の振動成分を除去して、ころがり軸受30の診断に必要な軸受振動のみを取り出す。 ・・・ さて再び第1図に戻って、フィルタ4を通過した信号は包絡線検波回路6に入力されここで振動周波数信号を検波して第3図(C)に示す包絡線信号による波形が得られ、この波形をころがり軸受異常診断に使用する。 次にころがり軸受の損傷の程度を表わすQ値を計算するため、自乗平均平方根値算出回路8(以下RMS値算出回路8と記す)に包絡線検波回路6から入力されて、ここで包路線波形の0.1秒間の実効値であるRMS値:Vrmsを算出する。また包絡線検波回路6から尖頭値算出回路10(以下ピーク値算出回路10と記す)に入力されて、ここで包路線波形の0.1秒間の最高値である尖頭値(以下ピーク値と記す):Vpeakを算出する。これらのRMS値算出回路8とピーク値算出回路10とには市販のIC化された専用演算素子を用いている。 Q値計算回路12には、RMS値算比算出回路8からVrmsが、ピーク値算出回路10からVpeakが入力され、次式に従って診断尺度のQ値の計算がなされる。 [図:0001426794000031.jpg] 但し(1)式においてVrmsは包絡線波形のRMS値、Vpeakは包絡線波形のPeak(ピーク)値、a、bは定数である。 Q値の計算結果が表示回路18に表示される。ころがり軸受30の異常診断はこの表示されたQ値と共に、別に準備した判定基準を対比させ、良好、注意、交換の3段階で評価する。」 (甲10-ウ)第4頁左下欄第3~15行 「一方、前記の包絡線検波回路6から周波数分析回路14に包絡線信号による波形が入力されて、これが周波数分析されて周波数スペクトルが求められる。第3図(D)は第3図(C)の包絡線波形の周波数スペクトルを示したもので、図中の卓越した部分(78,156,211,233,389,467Hz)は、外輪36の傷38によって生じた周波数スペクトルである。またこの周波数分析回路14は市販のIC化されたデジタル回路のプロセッサを使用して、周波数分析を高速で処理している。 前記の周波数スペクトルは抽出回路16に入力され、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトルを抽出する。」 (甲10-エ)第5頁左上欄第15行~右下欄第2行 「表示回路18は、例えば液晶表示素子(liquid crystal display:LCD)が備えられており、前記のQ値と、抽出回路16で抽出された各発生周波数fi,fo,fbの周波数とその振動加速度(G)のレベルが表示されている。 ころがり軸受の異常診断においては、表示された前記のQ値と各種の判定基準と対比して、対象ころがり軸受が良好であるか、注意状態にあるか、交換が必要な状態かを判定すると共に、fi,fo,fbの有無を確認して異常診断を行うのである。 第4図は前記の特公昭61-57491号公報から引用したもので、転動体34の公転速度の指標であるDm×Nに対してのQ値の関係を示した判定図であって、Dmは転動体34の公転直径(mm)、Nは内輪32の毎分回転数(rpm)であり、このDm×Nを横軸にとり縦軸にQ値をとってグラフとしたものである。第4図においては、前記のQ値の計算結果が入力され比較され、実線A、Bをそれぞれの境界線として、Q値が境界線A以下は正常のもの(良好)、境界線A、Bの中間はやや損傷があるがまだ使用できるもの(注意)、境界線B以上は交換が必要なもの(交換)と判定するようにして、他の診断情報fi,fofbと共に表示回路18に表示され、下記の条件によって診断される。 (1)Q値が良好でfi,fo,fbも無ければころがり軸受は良好と診断。 (2)Q値が良好でもfi,fo,fbの何れかが現われた場合は注意と診断、その後の診断周期を短縮する。 (3)Q値が注意あるいは交換の状態と判定されても、fi,fo,fbが何れも無ければ、グリース切れもしくは均一な通常の摩耗が進展しているものと診断。 (4)一方前記の(3)の要因がなく、Q値のみが高い場合は、ころがり軸受は正常であるが、軸受以外の外乱によるものと診断。 (5)前記の(2)より状態が悪化して、Q値が注意あるいは交換と判定され、fi,fo,fbの何れかが現われた場合、fiならば内輪、foならば外輪、fbならば転動体というように損傷の部位が診断できる。 前記の診断結果によって、良好の場合はそのまま運転を継続し、注意であれば診断周期を短縮し、交換の場合はその損傷の部位によって、可能の場合は軸受部品を交換し、あるいはころがり軸受自体を交換するなどの処置をとることができ、ころがり軸受の破損による当該回転機械の重大な事故を未然に防止することができる。」 (甲10-オ)第1~3図 「 [図:0001426794000032.jpg] 」 (2)認定事項 ア 上記(1)の(甲10-エ)によれば、「Q値」が「境界線A以下」であれば「良好」と「判定」し、「境界線A、Bの中間」であれば「注意」、「境界線B以上」であれば「交換」と「判定」している。 イ 一方、「Q値が注意あるいは交換の状態と判定されても、fi,fo,fbが何れも無ければ、グリース切れもしくは均一な通常の摩耗が進展しているものと診断」され、実際には、Q値による診断結果のみからは、ころがり軸受の異常診断(注意、交換の判定)は行われておらず、fi、fo、fbによる診断結果と組み合わせて診断が行われているといえる。このことから、ころがり軸受が「交換」と診断されるためには、Q値が境界線B以上となり交換の状態と判定され、なおかつ、fi、fo、fbの何れかが現れた場合であるといえる。 ウ よって、上記ア、イより、以下の事項が導かれる。 「Q値が境界線B以上であり、且つ、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)が現れた場合、ころがり軸受は交換の状態と判定されること。」 (3)甲10に記載された発明 上記(1)、(2)より、甲10には、以下の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ころがり軸受の異常を、機械の運転中に精度良く診断する方法であって、 診断対象のころがり軸受30に密着させた加速度検出器2により、ころがり軸受30から発生する固体音を振動加速度(G)の形で電気信号として検出し、 フィルタ4を通過した信号は包絡線検波回路6に入力されここで振動周波数信号を検波して包絡線信号による波形が得られ、前記の包絡線検波回路6から周波数分析回路14に包絡線信号による波形が入力されて、これが周波数分析されて周波数スペクトルが求められ、前記の周波数スペクトルは抽出回路16に入力され、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトルを抽出し、そのスペクトルの振動加速度(G)のレベルを取得し、 前記振動加速度(G)を処理して算出される数値から計算されるころがり軸受の損傷の程度を表すQ値を、別に準備した判定基準と対比させ、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)の有無を確認し、 これらの結果に基づき、ころがり軸受の良好、注意、交換を診断し、 診断の結果は表示回路18に表示され、 Q値が境界線B以上であり、且つ、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)が現れた場合、ころがり軸受は交換の状態と判定される 方法。」 11 甲11の記載事項 甲11には以下の記載がある。 (甲11-ア) 「【0003】 図19は、軸受で焼付きであるつば焼が生じた場合と、保持器ポケット摩耗が生じた場合の軸受損傷過程を示す図である。同図に示すように、つば焼が生じた場合、ベアリングの隙間が大きくなり、軸受の振れ回りが大きくなる。軸受の振れ回りが大きくなると、転動体(ころ)の保持器ポケットへの衝突が大きくなり、保持器が破損に至る。保持器が破損してしまうと、保持器から転動体が脱落して軸受破損となる。」 (甲11-イ) 「【0009】 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑剤の劣化や不足により発生する軸受の損傷を早期に発見することができる軸受損傷予兆診断装置を提供することにある。」 (甲11-ウ) 「【0011】 (2) 前記判定処理部は、振動の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域、及びエンベロープ処理後の軸受特徴周波数を判定対象とし、それぞれの判定基準を有する、上記(1)に記載の軸受損傷予兆診断装置。」 (甲11-エ) 「【0025】 FFT分析処理部52は、フィルタリング処理部51の出力に対してFFT分析処理を施す。即ち、FFT分析処理部52は、フィルタリング処理された振動測定信号の波形の周波数をFFT分析し、軸受80で発生した振動の周波数スペクトルを求める。エンベロープ処理部53は、FFT分析処理部52の出力(即ち振動の周波数スペクトル)に対してエンベロープ処理を施す。判定処理部54は、エンベロープ処理部53の出力に基づき軸受80の損傷予兆の有無を判定する。判定処理部54は、振動の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域及びエンベロープ処理後の軸受特徴周波数を判定対象とし、それぞれの判定基準を有する。判定処理部54は、振動の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域及びエンベロープ処理後の軸受特徴周波数の各判定対象に対し、それぞれの判定基準と比較することで、軸受80の損傷を予兆診断する。なお、判定対象としては、必ずしも、振動の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域及びエンベロープ処理後の軸受特徴周波数の全てである必要はなく、いずれか1つだけでもよい。但し、判定対象数を多くするほど予兆診断の精度の向上が図れることは言うまでもない。 統計処理部55は、判定処理部54の判定結果に対して統計処理を施す。」 (甲11-オ) 「【0031】 図6は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第1試験における試験中の温度と振動状態を示す図である。同図において、横軸は時間(分)、縦軸は温度(℃)と振動(m/s2)である。温度は、軸受80の内輪つばにおける温度である。図7は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第1試験における振動センサ10の検知出力(振動生波形)示す図である。同図において、横軸は時間(秒)、縦軸は振動(m/s2)である。図8は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第1試験における振動センサ10の検知出力のPEAK値/5及び実効値を示す図である。同図において、横軸は時間(秒)、縦軸は振動(m/s2)である。図9は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第1試験におけるFFT分析結果を示す図である。同図において、横軸は周波数、縦軸はdBである。同図に示すように、FFT分析の最大領域は「0~6kHz、12~14kHz」となっている。図10は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第1試験におけるエンベロープ処理後のFFT分析結果を示す図である。同図において、横軸は周波数、縦軸はdBである。fc,Zfc,Zfiは、それぞれ特徴周波数成分である。 【0032】 第1試験では、焼付き予兆診断するための試験を行った。本試験では正常品の軸受80を組み込み、給油を遮断することで焼付きを再現させ、焼付き前後の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域及びエンベロープ処理後の軸受特徴周波数を把握した。本試験の結果より、軸受80の保持器84の摩耗も発生していたことが分かった。保持器84と転動体83との間で摩耗が発生しており、保持器84と転動体83の衝突による保持器84の振れ回りの特徴周波数成分(fc、図10参照)が発生したと考えられる。なお、特徴周波数成分としてZfc(図10参照)が発生しているが、つば面と転動体83が焼付きにより損傷しており、内輪(つば面)が回転し、転動体83が負荷圏へ突入する際の転動体通過パルス成分が通常より顕著に検出されたためと考えられる。 【0033】 また、本試験を実施後、焼付き損傷した軸受80を継続運転させて、特徴周波数成分を分析した結果、内輪キズ発生時のZfi(図10参照)成分も検出された。内輪つば面の一部が大きく摩耗し、内輪キズの場合の発生周波数であるZfi成分が検出されたものと考えられる。特徴周波数成分は公知(後述する図11参照)であり、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1にこれらの特徴周波数成分を記録させて、実使用中の軸受80と比較することで、軸受80の損傷の箇所や事象を特定することが可能となる。例えば、剥離などのキズの振動は波高値が通常の「5以上で10以下」にもなることが知られており、本試験の結果の焼付きによる波高値は「5」程度で、通常とそれほど変化は見られなかっとことから、剥離(キズ)と焼付きの区別は可能となる。図11は、軸受の各部材の欠陥と各部材で発生する異常振動周波数の関係を示す図である。」 (甲11-カ) 「【0039】 図15は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第2試験における試験中の温度と振動状態を示す図である。同図において、横軸は時間(分)、縦軸は温度(℃)並びに振動(m/s2)である。温度は、軸受80Aの外輪82Aにおける温度である。図16は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第2試験における振動センサ10の検知出力の実効値を示す図である。同図において、横軸は回転数(rpm)、縦軸は振動(m/s2)である。また、図中に実線で示した振動波形は軸受80Aが正常時の振動波形、図中に鎖線で示した振動波形は軸受80Aの保持器84Aが摩耗したときの振動波形である。図17は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第2試験におけるFFT分析結果を示す図である。同図において、横軸は周波数(Hz)、縦軸はdBである。また、図中に実線で示した波形は軸受80Aが正常時の波形、図中に鎖線で示した波形は軸受80Aの保持器84Aが摩耗したときの波形である。図18は、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1を用いた第2試験におけるエンベロープ処理後のFFT分析結果を示す図である。同図において、横軸は周波数(Hz)、縦軸はdBである。また、図中に実線で示した波形は軸受80Aが正常時の波形、図中に鎖線で示した波形は軸受80Aの保持器84Aが摩耗したときの波形である。図16~図18の各図から分かるように、軸受80Aの正常時と異常時を明確に区別できる。 【0040】 本試験では、軸受80Aにおける保持器摩耗の予兆診断のための試験を行い、保持器摩耗前後の実効値変化、波高値変化、FFT分析の最大領域、エンベロープ処理後の軸受特徴周波数を把握した。本試験の結果からも保持器84Aと転動体83Aの衝突による保持器振れ回りの特徴周波数成分(fc)が発生しており、第1試験の結果と一致している。特徴周波数成分としてZfcも発生しているが、負荷圏入り口で保持器84Aと転動体83Aの大きな衝突が発生し、転動体通過パルス成分が発生したと考えられる。なお、本試験の結果においても内輪軌道面に軽微な焼付きが発生していたことから、第1試験の結果と同じ特徴周波数成分が発生したものと考えられる。 【0041】 本試験の結果から、判別基準を診断プログラムに組込むことで、軸受80Aの保持器摩耗の予兆診断が可能となる。」 (甲11-キ) 「【0043】 このように、本実施形態に係る軸受損傷予兆診断装置1は、軸受80(80A)に設けられた振動センサ10の検知出力に対してフィルタリング処理、FFT分析処理、エンベロープ処理を順次施して、エンベロープ処理後の結果に基づき軸受80(80A)の損傷予兆の有無を判定するので、潤滑剤の劣化や不足により発生する軸受80(80A)の損傷を早期に発見することが可能となる。」 (甲11-ク)図8 「 [図:0001426794000033.jpg] 」 (甲11-ケ)図15 「 [図:0001426794000034.jpg] 」 12 甲12の記載事項 甲12には以下の記載がある。 (甲12-ア) 「【請求項1】 静止部材に対して相対的に回転する回転部品の状態を監視する状態監視装置であって、 前記回転部品又は前記静止部材に固定される振動センサと、 前記振動センサにより検出された信号の波形を複数の損傷フィルタ周波数帯域に分割して抽出するフィルタ処理部と、 前記フィルタ処理部から転送されたフィルタ処理後の波形をエンベロープ処理及び周波数分析を行い、スペクトルデータを得る演算処理部と、 前記抽出された損傷フィルタ周波数帯域において、前記回転部品の回転速度信号に基づいて算出した前記回転部品の損傷に起因する軸受損傷周波数と、前記演算処理部で得られたスペクトルデータに含まれる周波数成分とを比較し、前記回転部品の異常の部位を特定する精密診断部と、 前記損傷フィルタ周波数帯域毎に算出される周波数帯域別診断値に基づいて、前記部位の損傷の程度を診断する損傷レベル診断部と、 前記異常の部位、該部位の損傷の程度、及び前記回転部品の運転環境から前記異常の部位の残存寿命を予測する残存寿命予測部と、 を備えることを特徴とする状態監視装置。 【請求項2】 前記振動センサにより検出された信号の波形から得られる少なくとも一つの簡易診断値を算出して閾値と比較し、前記回転部品の異常の有無を診断する簡易診断部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の状態監視装置。」 (甲12-イ) 「【0025】 簡易診断部は、振動センサ12により検出された信号の波形から得られる実効値、ピーク値、波高率の少なくとも一つの簡易診断値を算出して、各閾値と比較する。そして、「実効値、ピーク値、波高率>各閾値」であるときに、転がり軸受11の異常有りと簡易診断する。 【0026】 精密診断部は、簡易診断部にて異常ありと診断された場合に、図4に示す所定の関係式を用いて、転がり軸受11の部位ごとの損傷に起因する軸受損傷周波数を予め計算し、振動分析部214で出力されたスペクトルデータを対象に、軸受損傷周波数ごとの照合(「ピーク周波数=軸受損傷周波数」の成否)により、軸受の傷などの異常の発生有無とその部位を特定する。」 (甲12-ウ) 「【0027】 損傷レベル診断部は、損傷部位の特定時又は特定後、損傷フィルタ周波数帯域毎に算出される周波数帯域別診断値に基づいて、部位の損傷の程度(損傷の程度:初期/進展期/末期)を診断する。なお、損傷の程度の診断手法としては、例えば、以下の2つが挙げられる。」 (甲12-エ) 「【0052】 次に、ステップS2において、データ収集・分配部211及び内部メモリ216に記憶されたデータをもとに、以降の診断に使用される診断パラメータを算出する。具体的に、診断パラメータとして、簡易診断に用いられる実効値(RMS)、ピーク値(PEAK)、波高率(CF)の少なくとも一つの簡易診断値の閾値、軸受損傷周波数、損傷フィルタ周波数帯域が算出される。 【0053】 次に、ステップS3において、振動センサ12により検出された信号の波形から得られる実効値(RMS)、ピーク値(PEAK)、波高率(CF)を各閾値と比較する簡易診断を行う。「実効値(RMS)、ピーク値(PEAK)、波高率(CF)>各閾値」であるときには、転がり軸受11の異常有りとして、ステップS4に進み、各値が閾値以下である場合には、異常なしとして、ステップS1に戻り、次のタイミングでステップS1を実行する。」 (甲12-オ) 「【0062】 (実施例1) まず、内輪軌道面に損傷の程度が異なる3種類の傷欠陥(損傷の程度=傷欠陥部面積/軌道面総面積:大=1.8%、中=0.1%、小=0.01%)を付けた円筒ころ軸受を使用し、該円筒ころ軸受にラジアル荷重127kN,アキシアル荷重50kNを負荷しつつ、1500min-1で内輪を回転させてハウジングの振動を測定する。この結果、表1に示すように、閾値(=正常品の振動実効値に対する比を2)とした簡易診断にて、「実測値>閾値」であることから、それぞれ異常ありと診断される。 【0063】 【表1】 [図:0001426794000035.jpg] 【0064】 次に、振動データを周波数帯域(4000~10000Hz)でフィルタ処理を施し、エンベロープ処理後にFFTを実施した。図5において、実線は実測した振動データに基づくエンベロープ周波数スペクトル、一点鎖線は回転速度1500min-1に基づく内輪損傷に起因した周波数成分を示している。この結果、ピークが内輪損傷に起因した周波数成分と一致していることから、精密診断により、軸受の内輪が損傷していると診断できる。」 (甲12-カ) 「【0067】 周波数帯域別に算出した振動実効値のうち最大値を参照することにより、損傷の程度を判別することができる。すなわち、損傷の程度=大の傷欠陥を付けた円筒ころ軸受であれば、f1の値を参照することにより、傷欠陥部面積=損傷面積率×軌道面総面積を判別することができる。」 (甲12-キ) 「【0069】 ・・・ なお、精密診断において、部位ごとの閾値を振動伝達距離差あるいは経路差ごとに応じて設定してもよいし、事前に部位ごとをインパルスハンマ等の打撃試験にて測定した振動応答レベル差に応じて設定してもよい。」 (甲12-ク) 「【0074】 以上説明したように、このような本発明の実施形態に係る状態監視装置1及び状態監視方法によれば、転がり軸受11又はハウジングに固定される振動センサ12と、振動センサ12により検出された信号の波形を複数の損傷フィルタ周波数帯域に分割して抽出するフィルタ処理部と、フィルタ処理部から転送されたフィルタ処理後の波形をエンベロープ処理及び周波数分析を行い、スペクトルデータを得る演算処理部と、抽出された損傷フィルタ周波数帯域において、転がり軸受11の回転速度信号に基づいて算出した転がり軸受11の損傷に起因する軸受損傷周波数と、演算処理部で得られたスペクトルデータに含まれる周波数成分とを比較し、転がり軸受11の異常の部位を特定する精密診断部と、損傷フィルタ周波数帯域毎に算出される周波数帯域別診断値に基づいて、部位の損傷の程度を診断する損傷レベル診断部と、前記異常の部位、該部位の損傷の程度、及び前記回転部品の運転環境から前記異常の部位の残存寿命を予測する残存寿命予測部と、を備える。これにより、機械設備に組み込まれた転がり軸受11に対し、異常の部位の特定及び損傷の程度を精度良く判断することができると共に、異常の部位の残存寿命を予測することができる。 【0075】 また、振動センサ12により検出された信号の波形から得られる少なくとも一つの簡易診断値を算出して閾値と比較し、転がり軸受11の異常の有無を診断する簡易診断部をさらに備えるので、異常の有無を効率良く判断することができる。また、簡易診断部において、異常なしと判断された場合には、精密診断工程以降の処理が行われないので、コンピュータの負荷を軽減することができる。」 (甲12-ケ) 「【0078】 また、本発明の残存寿命を予測する手法は、本実施形態のものに限定されるものではない。その場合、異常の部位の残存寿命を求めるためのパラメータである、異常の部位の損傷の程度について説明する。転がり軸受の転がり疲れ寿命を判断する場合、表面もしくはその近傍を起点としたはく離寿命を用いる場合が多い。これを例に取ると、転がり軸受の異常初期は表面に摩耗が生じたり、混入異物による圧痕生成や金属組織の変化によって、局所的な応力集中が起こる。応力集中部が繰り返し応力を受けるとはく離に至り、転がり軸受の異常が進行する。 また、転がり軸受の取り付け場所は用途により異なるため、運転環境は良好な潤滑状態であったり、劣悪な潤滑状態であったり様々である。劣悪な潤滑状態とは、例えば、希薄な潤滑状態、異物が混入した潤滑状態、水が混入した潤滑状態、高温の潤滑状態があり、本発明では特に限定するものではない。」 13 甲13の記載事項 甲13には以下の記載がある。 (甲13-ア) 「【0031】 図6は、総合異常診断部8c(図1)の処理の一例を示す。温度異常診断部8bで異常有無を判断し(S1)、温度異常である場合は診断対象物1に異常有りと診断する(S3)。温度異常がない場合は振動異常診断部8aで異常有無を判断し(S2)、振動異常がある場合は診断対象物1に異常有りと診断する(S3)。 振動異常がない場合は、振動の程度が境界領域、つまり振動だけからは異常であるか否かを判断することが難しい領域にあるか否かを判断し(S4)、境界領域にも至っていない場合に診断対象物1が異常なしと診断する(S6)。振動が境界領域にある場合は、先の温度異常の判断(S1)よりも低い閾値よりも温度が高いか否かを判断し(S5)、閾値に達していない場合は診断対象物11に異常がないと診断する(S6)。閾値よりも高い場合は、診断対象物1は異常有りと診断する(S3)。このように、振動だけでは異常か否かを判断することが難しい場合であっても、温度による診断を併用することで、精度良く異常診断を行うことができる。」 (甲13-イ)図6 「 [図:0001426794000036.jpg] 」 14 甲14の記載事項 甲14には以下の記載がある。 (甲14-ア) 「【0020】次に、上記診断装置を使用した本発明方法を説明する。今、連続鋳造機のローラエプロンにおける各ローラが正常で低速回転しているものとすると、この状態では、振動加速度センサ1から出力される振動検出信号Vは図2(a)に示すように、比較的小さい振幅の振動波形にノイズの影響による比較的振幅の大きい振動波形が混在した波形となっており、これを増幅器2で増幅してバンドパスフィルタ3で想定損傷状態を顕著に表す3KHz~8KHzの周波数成分を抽出し、このフィルタ出力Fを第1の波高率回路4に供給して波高率を算出すると、図2(b)に示すような波高率波形の波高率信号W1が得られる。このように、波高率を算出することにより、突発的なピークを顕在化してS/N比を改善することができるが、図2(b)に示すように、ノイズがピーク的に現れる場合には、単に波高率を算出したとしても、この波高率はピーク値を実効値で除算して算出されるので、ノイズ成分がそのまま含まれることになり、この波高率と予め設定した閾値とを比較しても、ノイズによる信号成分と損傷による信号成分とを正確に分離することができない。しかしながら、本発明では、波高率を算出したときに、図2(b)に示すように、ノイズによるピーク値はそれほどバラツキがなく、損傷による突発波形の現れる周期はノイズより長いことを知見し、この知見に基づいて第1の波高率回路4から出力される波高率信号W1を第2の波高率回路5に供給して波高率の波高率を算出すると、図2(c)に示すような波高率の波高率波形の波高率信号W2が得られる。この波高率の波高率信号W2は、周期が短いノイズによる信号成分は平坦化されてレベルが低下し、周期が長い損傷による信号成分を際立たせることができ、この波高率の波高率信号W2を演算処理装置6に供給して図2(c)に示す予め設定した閾値THと比較することにより、ノイズによる信号成分の誤検出を確実に防止することができる。」 (甲14-イ)図2 「【図2】 [図:0001426794000037.jpg] 」 15 甲15の記載事項 甲15には以下の記載がある。 (甲15-ア) 「【0002】 回転軸受の異常診断方法としては、振動信号レベルの傾向管理による簡易診断や、高速フーリエ変換を用いた特定周波数のスペクトラム監視によって異常の有無を判定する振動法が広く知られている。例えば、回転機構に組み込まれた転がり軸受が損傷すると、回転数に比例した周期を持つ衝撃的振動が発生し、該軸受の固有振動数の振動信号レベルも増大するため、こうした機械的振動を測定して振動法を適用することにより、該軸受の異常の有無を判定することが可能となる。かかる振動法は、一般的に、ファンやポンプ、減速機等100rpm(毎分100回転)を越える回転設備の軸受の異常診断に適用される。 【0003】 しかし、エスカレータ等の昇降機に用いられている低速回転軸受の場合、軸受の損傷によって発生する振動の信号レベル(S)が、回転設備の稼働振動や外来振動の信号レベル(N)に比べて小さいため、一般的な振動法によって異常の有無を判定することは難しい。つまり、100rpm以下の低速で回転する軸受においてはSN比(S/N比)が小さく、損傷した軸受から発生する信号がノイズに埋没してしまう可能性が高い。」 16 甲16の記載事項 甲16には以下の記載がある。 (甲16-ア)第2欄第18行~第5欄第19行 「一般に回転機械の運転中の異常の大部分は軸振動の変化として現れる。特に蒸気タービン等の重量の大きい回転体では微小な振動も重大な事故に発展する恐れがある。 このため、振動の発生状況により警報を発し、また、振動の悪化により自動停止等を行う振動監視装置が設置されている。さらに最近では振動の異常兆候を検知し、その原因を推定することにより異常原因の早期除去または安全な運転を支援するための振動診断装置が提案されている。尚、現状回転機械の振動を零にすることは不可能に近いため、正常と考えられる時の振動(基準値と称する)からの変化を検知することで異常または異常兆候の検出を行い、診断(原因の同定)を行うのが一般的である。 第10図は従来の振動診断装置1の一例を示したものである。回転機のロータ2を支える軸受3に各ロータの振動を検出する振動計4およびロータ回転数を検出する回転計5、各軸受3での振動の位相を検出する基準となる位相基準パルス検出器6、および軸受潤滑油量や潤滑油温度、蒸気温度等のプラントの運転状態を示す各種センサ7が設置されている。 これらの信号は振動診断装置1の信号処理部8に入力され、ここで異常兆候の検知および診断の為に、振動の実効値、振動位相および周波数分布等の絶対値および変化率、変化量の計算が行われる。 異常検知部9では、これらの計算された値に対してその絶対量また後記する基準値からの相対量に対して閾値を設け異常兆候を検知し、診断部10を起動する。 異常検知の後、診断部10では、これら計算された値やプラント運転状態等との間の相関や後記基準値との偏差等を使用して異常原因の推定を行う。 表示部11は、異常検知の通知(以下、警報と称す)及び診断の結果を表示装置12へ表示する。 基準値・閾値データベース13は前記したごとく異常検知部9および診断部10で使用され、振動状態の変化が顕著な運転状態毎に、例えば回転数域や負荷帯また回転数や負荷の変化率毎に与えられるのが一般的である。回転数や負荷変化に伴う基準値の変化の傾向は各回転機械の設計値により与えられるが、値は試運転等により実測を行い振動発生状態が正常と判断された時の値、または複数の実測データからの平均等により与えられる。 第2図は異常検知部9の一例であり、各々閾値により異常兆候を検知する。周波数帯域毎レベルは回転同期、n倍回転同期、ロータの固有振動数等の特定周波数帯域毎に閾値を設は異常兆候を検知する。第3図に振動位相-振幅ベクトルによる異常検知の例を示す。基準値の振動位相-振幅ベクトルの回転数によるベクトル軌跡21は同一運転条件のひとではほぼ一定となるため、計測した回転数における基準ベクトル22と計測したベクトル23の差ベクトル24のベクトル量に閾値25を設定し異常兆候の検知が行われている。第4図では振動振幅-振幅変化率ベクトル26のベクトル軌跡27による異常の検知を示す。 診断部10では、振幅、位相、振動スペクトル等の基準値を基にその基準値からの変化量を主体に、診断が行われている。」 (甲16-イ)第10欄第5行~第20行 「本発明の実施例として、発電プラントの蒸気タービン・発電機への軸振動診断装置1の適用を説明する。 異常検知部9には、前記の各異常検知の閾値を2段階で設定している。第3図、第4図で閾値25は異常の兆候を検知し、診断を起動するための閾値で、基準値学習サブシステム14での学習の対象となる。また、同図の閾値40は警報値と称し、明らかに異常と認められ、何等かの対策が必要と考えられるレベルに設定され、学習の対象外としている。何れの場合も内容に応じた警報が出される。 振動診断装置1の構成は第1図に示したとおりであるが、データ収集ステージ判定部15、振動データ妥当性判定部16及び運転状態判定部17で各判定に使用する為、前記した各種センサ7に負荷、真空度、発電機ガス温度等の入力を加えである。」 (甲16-ウ)第1図 「 [図:0001426794000038.jpg] 」 (甲16-エ)第2~4図 「 [図:0001426794000039.jpg] 」 (甲16-オ)第10図 「 [図:0001426794000040.jpg] 」 17 甲17の記載事項 甲17には以下の記載がある。 (甲17-ア) 「【0060】 予兆期監視装置50では、図12に示すように、トータルパワー表示部58に加工時の加速度(G)を2乗した値(G2)の和で示すトータルパワーと、前記トータルパワーの上限閾値である警告閾値79、ならびに上限閾値以下の予兆域に予兆閾値76とが表示される。トータルパワー表示部58は、縦軸に加速度を2乗した値の和を表示し、横軸に経過時間(秒)を表示する。トータルパワー表示部58において、変化量を大きく表すために、縦軸は自動グラフ機能になっている(但し、固定値設定もできる)。 【0061】 なお、トータルパワー表示部58及び周波数スペクトル表示部52は、縦軸を加速度の単位で表示をしているが、これに演算をかけてμm単位の表示にすることもできる。また、トータルパワー表示部58及び周波数スペクトル表示部52における予兆閾値超えの数が、パワー閾値越え積算表示部60及び予兆閾値超え周波数積算表示部54に表され、これらにより切削状態の特徴傾向が表示され、その積算カウントで状態判定も可能である。 【0062】 予兆期監視装置50では、図13に示すように、パワー閾値越え積算表示部60にトータルパワーが予兆閾値76を超えた大きさが画面表示される。パワー閾値越え積算表示部60は、トータルパワー表示部58と連動して働くものであり、前記トータルパワー表示部58に設定された予兆閾値76をオーバーした振動パワーが現れると、予兆閾値超えがあったとして、その大きさが時間軸とともに表示される。 【0063】 パワー閾値越え積算表示部60では、トータルパワー表示部58に設定された予兆閾値超えの量のみを表示するため、パワー量の変化がより強く表示されることになる。従って、加工のトータルパワーの経時傾向が特徴的に表されることなる。 【0064】 パワー閾値越え積算表示部60には、別途にて設定するカウントアップライン78が設定される。カウントアップライン78には、リピートカウンタ機能があり、別途設定したカウント数になると、その超えたことの表示とともに信号が外部に出力される。 【0065】 このように、突発的な異常値は、トータルパワー表示部58に設定された警告閾値79によりリアルタイム性をもって監視することができる。一方、振動が比較的ゆっくりと漸増するようなものに対しては、パワー閾値越え積算表示部60のリピートカウンタ機能のカウントアップで見ることができる。これにより、トータルパワー表示部58とパワー閾値越え積算表示部60とのそれぞれの特徴を生かした監視が、効果的に遂行可能になる。 【0066】 本実施形態では、図3に示すように、予兆期監視装置50は、周波数スペクトル表示部52、予兆閾値超え周波数積算表示部54、ピーク周波数流れ表示部56、トータルパワー表示部58及びパワー閾値越え積算表示部60を単一の表示画面に表示している。このため、一覧性が高くなり、機械オペレータ等がこの表示を見るだけで、現在の切削状態を即座に確認することができ、ビジュアル性が高い表示であるという効果がある。 【0067】 さらに、周波数スペクトル表示部52、予兆閾値超え周波数積算表示部54、ピーク周波数流れ表示部56、トータルパワー表示部58及びパワー閾値越え積算表示部60の各機能は、相互にリンクした関係を有している。すなわち、予兆段階にある切削振動の監視や判断においては、これらの機能が有効的にリンクして働くことにより、早く且つ一層確実な切削状態の監視が可能になる。 【0068】 しかも、予兆閾値の設定では、概略的に決めた値で設定しておけば、予兆閾値超えで現れるカウント傾向に大きな差が出ることはない。このため、予兆閾値の設定は、繊細に行う必要がなく、切削状態の傾向を容易に認識することができる。特に、予兆閾値超え周波数積算表示部54及びパワー閾値越え積算表示部60では、より顕著な特性等を認識することが可能になる。 【0069】 さらにまた、本実施形態では、フーリエ級数展開によるフーリエ解析を用いるピーク周波数の演算において、周波数を10Hz~10,000Hzに限定している。従って、高速性を得ることができ、閾値での検出は、0.1秒単位で遂行されてリアルタイム性が向上する。 【0070】 また、トータルパワー表示部58での監視においても、振動波形を直接的にパワー量(G2)に変更するため、その警告閾値79での監視もリアルタイム性を確保することが可能になる。これにより、予兆期監視装置50によるインプロセス振動監視は、速さ及び確実さを達成することができる。」 (甲17-イ)図12 「【図12】 [図:0001426794000041.jpg] 」 18 甲18の記載事項 甲18には以下の記載がある。 (甲18-ア)第10欄第8行~第21欄第12行 「 [図:0001426794000042.jpg] [図:0001426794000043.jpg] [図:0001426794000044.jpg] [図:0001426794000045.jpg] [図:0001426794000046.jpg] [図:0001426794000047.jpg] [図:0001426794000048.jpg] [図:0001426794000049.jpg] [図:0001426794000050.jpg] [図:0001426794000051.jpg] [図:0001426794000052.jpg] [図:0001426794000053.jpg] 」 (甲18-イ)第1、2図 「 [図:0001426794000054.jpg] 」 (甲18-ウ)第3図 「 [図:0001426794000055.jpg] 」 19 甲19の記載事項 甲19には以下の記載がある。 (甲19-ア)第2頁右下欄第10行~第3頁左上欄第9行 「 [図:0001426794000056.jpg] [図:0001426794000057.jpg] 」 (甲19-イ)第4頁左上欄第19行~第7頁右上欄第9行 「 [図:0001426794000058.jpg] [図:0001426794000059.jpg] [図:0001426794000060.jpg] [図:0001426794000061.jpg] [図:0001426794000062.jpg] [図:0001426794000063.jpg] [図:0001426794000064.jpg] [図:0001426794000065.jpg] [図:0001426794000066.jpg] [図:0001426794000067.jpg] [図:0001426794000068.jpg] [図:0001426794000069.jpg] [図:0001426794000070.jpg] [図:0001426794000071.jpg] 」 (甲19-ウ)第1図~第3図 「 [図:0001426794000072.jpg] 」 20 甲20の記載事項 甲20には以下の記載がある。 (甲20-ア) 「【0009】 以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態である異常診断装置の診断対象である複列円すいころ軸受を備えた鉄道車両用転がり軸受装置の断面図、図2は異常診断装置の信号処理系統のブロック図、図3は軸受の焼付き異常発生時の振動値の経時変化を示すグラフ、図4は軸受の焼付き異常発生時の外輪外周面の温度の経時変化を示すグラフ、及び図5は転がり軸受の傷の部位と、傷に起因して発生する特徴周波数との関係を示す図である。 【0010】 図1に示されるように、異常診断装置が適用される鉄道車両用の転がり軸受装置10は、回転部品である複列円すいころ軸受11と、鉄道車両用台車の一部を構成する静止部材である軸受箱12とを備える。 【0011】 複列円すいころ軸受11は、回転軸である鉄道車両の車軸13を回転可能に支持しており、外周面に円すい外面状に傾斜した内輪軌道面15,15を有する一対の内輪14,14と、内周面に円すい内面状に傾斜した一対の外輪軌道面17,17を有する単一の外輪16と、内輪14,14の内輪軌道面15,15と外輪16の外輪軌道面17,17との間に複列で複数配置された転動体である円すいころ18と、円すいころ18を転動自在に保持する環状の打ち抜き保持器19,19と、外輪16の軸方向の両端部にそれぞれ装着された一対のシール部材20,20とを備える。 【0012】 軸受箱12は、鉄道車両用台車の側枠を構成するハウジング21を備えており、このハウジング21は外輪16の外周面を覆うように円筒状に形成されている。また、ハウジング21の軸方向の前端部側には前蓋22が配置され、ハウジング21の軸方向の後端部側には後蓋23が配置されている。 【0013】 一対の内輪14,14の間には、内輪間座24が配置されている。一対の内輪14,14及び内輪間座24には車軸13が圧入されており、外輪16はハウジング21に嵌合されている。複列円すいころ軸受11には、種々部材の重量等によるラジアル荷重と任意のアキシアル荷重とが負荷されており、外輪16の周方向の上側部が負荷圏になっている。ここで、負荷圏とは、転動体に対して荷重が負荷される領域をいう。 【0014】 車軸13の前端部側に配置された一方のシール部材20は、外輪16の外側端部と前蓋22との間に組み付けられ、後端部側に配置された他方のシール部材20は、外輪16の外側端部と後蓋23との間に組み付けられている。 【0015】 ハウジング21の外周部の複列円すいころ軸受11の軸方向の略中央部位置には径方向に貫通する貫通穴26が形成され、この貫通穴26には異常診断装置の一部を構成する異常検出用センサ31が筐体27に収容された状態で固定されている。 【0016】 異常検出用センサ31は、振動センサ、AE(acoustic emission)センサ、音響センサ、超音波センサの少なくとも1つの振動を検出可能な振動系センサと温度センサとを一体に筐体27内に収納固定した複合型センサである。なお、図1の異常検出用センサ31は、振動センサ32と温度センサ33を備える。 【0017】 振動センサ32は、圧電素子等の振動測定素子であり、複列円すいころ軸受11の内外輪軌道面15,15,17,17の剥離や、歯車の欠損、車輪のフラット摩耗等を検出するのに用いられる。なお、振動センサ32は、加速度、速度或いは変位型等、振動を電気信号化できるものであればよく、ノイズが多いような機械装置に取付ける際には、絶縁型を使用する方がノイズの影響を受けることがないので好ましい。 【0018】 温度センサ33は、サーミスタ温度測定素子や白金測温抵抗体や熱電対等の非接触タイプの温度測定素子であり、筐体27内で外輪16の外周面近傍に配置されている。また、温度センサ33としては、雰囲気温度が規定値を越えると、バイメタルの接点が離れたり、接点が溶断したりすることで導通しなくなる温度ヒューズを用いることができる。その場合、機械装置の温度が規定値を超えたとき、温度ヒューズの導通が遮断されることによって温度異常が検出される。 【0019】 また、異常検出用センサ31は、複列円すいころ軸受11の非回転側軌道輪に嵌合している軸受箱12のラジアル荷重の負荷圏領域に取り付けている。このため、例えば、軸受軌道面に損傷が発生した場合、その損傷部を転動体が通過する際に生じる衝突力は無負荷圏よりも負荷圏の方が大きく、軸受負荷圏側の方が感度良く異常振動を検出することができる。 【0020】 ここで、本実施形態では、図2に示すように、振動センサ32による振動信号を増幅後に振動計測値分析部50を介して異常判定部42に出力すると同時に、温度センサ33による温度信号を増幅後に温度計測値分析部51を介して異常判定部42に出力し、異常判定部42が振動と温度の各計測値又は時間に対する各変化率の組合せに基づいて、複列円すいころ軸受11の異常の有無及び損傷の程度を判定する。ここで、各計測値は、任意の時間における実効値でもピーク値でもよい。 【0021】 即ち、軸受軌道面に剥離損傷が発生した場合には、その損傷部を転動体が通過するごとに衝撃が生じるため振動値の変化が大きくなるが、その前兆または直後では温度はほとんど変化しない。一方、軸受に焼付き異常が生じると、その前兆として計測時間に対する振動と温度の変化が大きくなるという特徴がある。このように、本実施形態では、異常の種類によって振動と温度の変化の仕方が異なるという回転部品の異常形態の特徴を利用したものであり、振動と温度の各計測値又は時間に対する各変化率を組み合わせることにより、複列円すいころ軸受11の異常の有無及び損傷の程度を判定することができる。 【0022】 図3は、軸受に焼付き異常が生じるまでの振動の経時変化を示し、図4は、軸受に焼付き異常が生じるまでの温度の経時変化を示す。 【0023】 図3及び図4より、軸受に焼付きが発生する前兆として、A点から振動が急激に増加しているが、温度変化はほとんどない。その後、B点から振動がさらに増加し、この時点から温度が上昇している。振動はさらに増加後、C点で焼付きが生じ、焼付き後の温度はさらに上昇して過熱していることがわかる。 【0024】 従って、図3及び図4に示した計測結果に基づき、A,B,C点における振動と温度の計測値又は時間に対する変化率を求め、これらの値を予め設定しておいた規定値と比較することにより複列円すいころ軸受11の異常の有無及び損傷の程度を判定する。 【0025】 更に、本実施形態では、振動センサ32による振動の情報について、振動波形にフィルタ処理後、エンベロープ処理を施して周波数分析を行い、軸受の傷等の損傷の有無の判定及び損傷部位の特定を行えるようにして異常診断の信頼性を確実なものとしている。 【0026】 即ち、図2に示すように、振動センサ32が発生した振動信号は、信号伝送手段34を介して増幅及びA/D変換後にフィルタ部35に転送される。フィルタ部35は、固有振動数記憶部36に記憶された、複列円すいころ軸受11の固有振動数に基づいて、振動信号からその固有振動数に対応する所定の周波数帯域のみを抽出する。なお、振動信号の増幅及びA/D変換は、伝送前に行なわれてもよく、増幅、A/D変換の順序は逆であってもよい。 【0027】 この固有振動数は、複列円すいころ軸受11を被測定物として、打撃法により加振し、被測定物に取付けた振動検出器又は打撃により発生した音響を周波数分析することにより容易に求めることができる。なお、被測定物が複列円すいころ軸受の場合には、内輪、外輪、転動体、保持器等のいずれかに起因する固有振動数が与えられる。一般的に、機械部品の固有振動数は複数存在し、また固有振動数での振幅レベルは高くなるため測定の感度がよい。 【0028】 その後、エンベロープ処理部37では、フィルタ部35にて抽出された所定の周波数帯域に対して、波形の絶対値を検波する絶対値検波処理が行われる。さらに、周波数分析部38で波形の周波数の分析処理が行われ、実測値データが比較照合部39へ転送される。 【0029】 一方、理論周波数計算部41において、回転速度情報40に基づき算出された、軸受の剥離、歯車の欠損、車輪のフラット等、回転部品の損傷に起因した周波数成分の計算値データが比較照合部39に転送される。なお、回転部品が転がり軸受の場合には、計算値データは、図5に示されるような、内輪、外輪、転動体、保持器の損傷に起因した周波数成分データとなる。 【0030】 そして、比較照合部39で実測値データと計算値データとが比較照合され、異常判定部42にて異常の有無、異常部位の特定、損傷の程度の判定が行われる。結果出力部43は、複列円すいころ軸受11の異常の有無、損傷の程度、異常部位の特定等の判定結果を出力し、異常が検出された場合にはアラーム等の警報を発したり、判定結果を記憶部に取り込む。ここで、異常判定部42から結果出力部43への情報転送は、有線や無線等のデータ伝送手段44によって行われる。」 (甲20-イ) 「【実施例】 【0035】 以下、本発明の異常診断装置を用いて、転がり軸受の異常診断を二度行った。実施例1及び2の転がり軸受としては、外径62mm,内径30mm,幅16mm,玉数7の玉軸受が使用され、振動センサが軸受箱に固定され、温度センサが軸受の外輪外周面に取付けられた。内輪は3000min-1で回転され、軸受にはラジアル荷重が負荷されている。 【0036】 表1及び表2は、実施例1における図3及び図4に対応する各計測点A,B,Cでの振動と温度の計測値及び時間に対する変化率(前回の計測値に対する倍率)を示し、表3及び表4は、実施例2における各計測点A,B,Cでの振動と温度の計測値及び時間に対する変化率を示す。また、表1~表4は、振動と温度の計測値及び変化率に対する規定値(設定値)と併せて、振動波形をエンベロープ分析した結果から軸受の損傷(剥離)に起因する周波数成分の有無を示す。 【0037】 【表1】 [図:0001426794000073.jpg] 【0038】 【表2】 [図:0001426794000074.jpg] 【0039】 【表3】 [図:0001426794000075.jpg] 【0040】 【表4】 [図:0001426794000076.jpg] 【0041】 実施例1では、表1に示すように、B点,C点ともに振動の計測値が規定値を超え、且つC点では温度の計測値も規定値を超えている。さらに、振動には軸受の損傷成分が無いことから、この軸受は焼付き異常が生じていることがわかり、緊急に交換する必要があることがわかる。なお、実施例1は、表2の変化率からも同様の判定を行うことができる。 【0042】 また、実施例2では、表3に示すように、B点,C点ともに振動の計測値が基準値を超えているが、温度に変化は認められなかった。また、振動には軸受の損傷成分が存在していることから、この軸受は剥離異常が発生していることがわかる。なお、実施例2は、表4の変化率からも同様の判定を行うことができる。 【0043】 従って、本実施例では、振動と温度の計測値または変化率を組み合わせることで異常の有無を複数回診断して判定するため、従来のような突発的なノイズにより急激に計測値が上昇しても異常と判定せず、従来よりも信頼度の高い異常診断が可能となる。」 (甲20-ウ)図1~5 「 [図:0001426794000077.jpg] 」 21 甲21の記載事項 甲21には以下の記載がある。 (甲21-ア) 「 [図:0001426794000078.jpg] [図:0001426794000079.jpg] [図:0001426794000080.jpg] [図:0001426794000081.jpg] [図:0001426794000082.jpg] 」 (甲21-イ) 「 [図:0001426794000083.jpg] [図:0001426794000084.jpg] [図:0001426794000085.jpg] 」 (甲21-ウ)図1 「 [図:0001426794000086.jpg] 」 (甲21-エ)図2 「 [図:0001426794000087.jpg] 」 (甲21-オ)図3、4 「 [図:0001426794000088.jpg] 」 (甲21-カ)図5 「 [図:0001426794000089.jpg] 」 22 甲22の記載事項 甲22には以下の記載がある。 (甲22-ア) 「【0003】 このようなオンラインモニタリングを実現する手段として、軸受ユニットに装着又は内蔵したセンサによって転がり軸受から発生する音響又は振動、温度等を検出し、信号処理と診断アルゴリズムを実行するマイクロコンピュータ等の電子回路を用いて転がり軸受の異常を診断する診断ユニットが検討されている。転がり軸受におけるきずの有無は、加速度センサにより検出した転がり軸受の音響又は振動信号からエンベロープ波形を抽出してその周波数スペクトルを求め、ピークとなる周波数と、転がり軸受の回転速度と転がり軸受の内部諸元から算出されるきず等の異常特徴周波数との一致を判定することにより異常の有無を診断するものが知られている。 【0004】 異常特徴周波数の算出に用いる転がり軸受の内部諸元は、転動体の直径、転動体の転動体のピッチ円直径、接触角、転動体の数、等であり、これらを診断対象の回転機械で使用する軸受の型番に対応させて記憶した記憶装置と、診断対象の回転機械の機械番号を入力する入力装置を備え、機械番号を入力することにより当該機械で使用している転がり軸受の内部諸元を自動的に読み込んで異常を診断する診断ユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。」 (甲22-イ) 「【0009】 本発明の回転機械の診断ユニットは、転がり軸受の振動周波数スペクトラムのピークとなる周波数と、前記転がり軸受の回転速度および前記転がり軸受の内部諸元から算出される異常特徴周波数との一致を判定することにより、回転機械の異常を診断する診断ユニットであって、前記転がり軸受の複数について、それらの内部諸元を英数字からなる軸受型番に対応させて記憶させたROMと、前記軸受型番を外部から設定可能に設けた軸受型番設定手段とを備え、該軸受型番設定手段で設定した軸受型番に対応する前記転がり軸受の内部諸元を前記ROMから読み出して前記転がり軸受の異常特徴周波数を算出するものである。」 (甲22-ウ) 「【0013】 さらに、本発明の回転機械の診断ユニットは、転がり軸受の振動周波数スペクトラムのピークとなる周波数と、前記転がり軸受の回転速度および前記転がり軸受の内部諸元から算出される異常特徴周波数との一致を判定することにより、回転機械の異常を診断する診断ユニットであって、前記転がり軸受又は軸受ユニットに装着し、前記転がり軸受の内部諸元を英数字からなる軸受型番に対応させて記憶させてあり、これを外部から無線で読みとり可能に構成してなる半導体手段と、該半導体手段との間で前記軸受型番および前記転がり軸受の内部諸元を送受信する無線通信手段とを備え、該無線送受信手段で送信した軸受型番に対応して、前記半導体手段から前記転がり軸受の内部諸元を受信し、前記転がり軸受の異常特徴周波数を算出するものである。」 (甲22-エ) 「【0031】 (第1の実施形態) 図1は、本発明の第1の実施形態における診断ユニットの概略構成を示す図である。本実施形態の診断ユニット10は、マイクロプロセッサユニット(MPU)11を内蔵した電子回路で構成され、信号処理と診断アルゴリズムを実行するCPU111、軸受型番と転がり軸受の内部諸元とを対応づけたテーブルおよびCPU111の実行プログラムを記憶したROM112、筐体に取り付けられ診断対象の転がり軸受の型番を設定するロータリスイッチ12、図示しない増幅器やフィルタ、A/D変換器等のアナログ回路を有する構成である。ロータリスイッチ12としては、例えば、複数の桁数分のロータリコードスイッチを用いることができる。 【0032】 なお、軸受型番とはメーカに特有のものであり、例えば英数字で表される。また、転がり軸受の内部諸元とは、きず等の異常特徴周波数を算出するために必要となる数値で、転動体の直径、転動体のピッチ円直径、接触角、転動体の数が含まれる。 【0033】 ROM112に記憶される転がり軸受の内部諸元は、1つの型番について32ビットで表現できるが、ここでは64ビットを割り当てる。例えば、円錐ころ軸受の場合、ころ数、ころの直径、ころのピッチ円直径、接触角のそれぞれに8~16ビットを割り当てる。接触角やころの直径を規格系列化すると共に、さらに鉄道車両用等として用途を限定すれば寸法範囲が限られるので、マイクロコンピュータの演算が固定小数点で行なわれることを考慮し、異常周波数を決めるための定数を整数化して記憶することにより、ROM112の記憶容量を減らすことができる。 【0034】 転がり軸受に剥離等のスポットきずがある場合において、きずに起因する異常特徴周波数を決める定数である転動体公転周波数fc、転動体自転周波数fbおよび転動体と内輪の相対公転周波数fiは、次の算式によって求められる。 【0035】 [図:0001426794000090.jpg] 【0036】 ここで、f0は軸回転周波数、dは転動体直径、Dは転動体のピッチ円直径、αは接触角である。定数が求められると、転がり軸受を構成する各部材におけるきずに起因する異常特徴基本周波数は、Zを転動体の数としたとき、外輪がZfc、転動体が2fb、内輪がZfiとしてそれぞれ算出することができる。 【0037】 このようにして求めた、fc、fbおよびfiから、fc/f0、fb/f0およびfi/f0をそれぞれ整数化し、例えば1つの型番を表すのにそれぞれ16ビットずつ割り当て、別に転動体の数とその他に16ビットをとり、合計で64ビットのデータとすれば、1000種類の転がり軸受について定数を記憶するのに必要な記憶容量は8kBである。 【0038】 図2は、きず等の異常の有無を診断する転がり軸受の検出部の概略構成を示す図である。転がり軸受13から発生する音響又は振動を検出するために、ハウジング14に取り付けられた圧電センサ15と、転がり軸受13によって支承される軸16に近接してその回転速度を検出する回転パルス発生器17とを有する構成である。 【0039】 次に、診断ユニット10における転がり軸受13の診断動作について説明する。まず、ロータリスイッチ12を操作して転がり軸受13の型番を設定する。 【0040】 圧電センサ15によって検出される音響/振動信号は診断ユニット10に入力され、アナログ回路で増幅およびフィルタリングされた後、包絡線検波が行なわれる。包絡線信号波形はA/D変換器によりディジタル信号に変換された後、MPU11において周波数分析され、ピークとなる周波数が抽出される。 【0041】 抽出されたピークの周波数は、外輪、内輪および転動体の各きずに起因する異常特徴周波数と比較され、いずれかの周波数が一致した場合に、転がり軸受13の当該部材にきずがあると判定して、その結果を診断結果として出力する。」 23 甲23の記載事項 甲23には以下の記載がある。 (甲23-ア) 「【0009】上記センサ(5)は、振動波形、温度、および画像の少なくとも一種を検出するものであることが好ましい。上記センサ(5)が振動波形を測定するものである場合、センサ情報から、波形分析や周波数分析等で寿命を診断できる。温度情報は、機械部品(4)が正常である場合、限られた温度範囲があるため、これと比較して寿命の診断が行える。画像情報は、機械部品(4)の外見的に現れる損傷や変色,劣化の情報を与える。」 (甲23-イ) 「【0011】上記診断手段(14)は、機械部品(4)の使用環境を登録したデータベース(20)を診断に利用するものであっても良い。データベース(20)に登録された機械部品(4)の使用環境を診断に加味することで、より一層の診断の精度、信頼性の向上が図れる。また、使用環境を診断に加味することにより、診断結果として使用可能期間を示す場合に、残り何ヵ月、あるいは何年何月何日頃に寿命に達する等の情報を示すことができる。」 (甲23-ウ) 「【0015】上記顧客企業の事業所(2)の機械(3)は、複数の軸(6)を有する機械であり、上記センサ(5)により検出する機械部品(4)は、上記各軸(6)を支持する軸受であり、上記センサ情報送信手段(10)は、これら複数の軸受のセンサ情報(s1)を回線(9)に送信するものであっても良い。このような複数の軸(6)を有する機械(3)における各軸(6)の軸受を寿命監視する場合、監視対象の機械部品(4)の個数が多いため、センサ情報(s1)の送信や診断が効率的に行え、情報送信や診断のコストが低減される。また、軸受の場合、振動波形や温度情報から診断が行え、遠隔地での診断に適する。」 (甲23-エ) 「【0034】判定器21は、例えばセンサ情報s1が振動情報である場合、波形分析器や周波数分析器が用いられる。センサ情報s1が温度情報である場合、設定値と比較する手段等とされる。判定器21は、振動情報と温度情報等の複数種類のセンサ情報s1の分析した結果を総合的に判定する手段としても良い。判定器21で用いる判定基準には、判定器21に設定された基準値であっても良く、またデータベース19に登録された判定基準であっても良い。 【0035】図13は、判定器21による波形分析例の説明図である。同図(A)に示す欠陥信号を含むセンサ情報s1は、同図(B)に示す主信号と、同図(C)に示す欠陥信号とに分けられる。この欠陥信号から、寿命判定が行われる。 【0036】診断手段14によって、現在、どの機械部品4の診断を行っているかは、例えば次のいずれかの方法が採用できる。 ・センサ情報s1に付随して送信される機械部品4の機種情報を用いる。この場合に、どの顧客企業の事業所2のどの機械3のどの位置の機械部品4であるかを識別する情報を付加しておくことで、診断手段14によって、個々の機械部品4の認識が行える。 ・診断手段14またはセンサ情報受信手段13に、いまから診断し、または今から受信するセンサ情報s1がどの機種であるかの管理機能を与えておき、診断手段14に入力されるセンサ情報s1を選択する。この場合に、診断手段14またはセンサ情報受信手段13に設ける管理機能は、どの顧客企業の事業所2のどの機械3のどの位置の機械部品4であるかまでを管理するものとしても良い。 【0037】商品情報付加手段15は、診断手段14の診断結果情報に応じて診断対象の機械部品4に関する商品情報を生成し、かつこの商品情報を診断結果情報に付加する手段である。付加する商品情報は価格情報および納期情報を含むものとする。商品情報付加手段15は、データベース23に登録された機種別の在庫情報(在庫の個数、在庫場所を含む)、価格情報、および納期情報が登録されたものである。データベース23は、生産計画情報を含むものであることが好ましく、商品情報付加手段15は、在庫がない場合は、生産計画情報に含まれる納期情報から、商品情報として付加する納期情報を設定する。商品情報付加手段15は、付加する商品情報を、発注意思の伺い情報を含む見積もり情報としても良い。なお、機械部品4が交換でなくて補修で済むような場合に、補修で済むという診断結果情報が診断手段14から商品情報付加手段15に与えられたときは、商品情報付加手段15は、データベース23に登録された補修情報を商品情報として付加する。」 (甲23-オ)図3 「 [図:0001426794000091.jpg] 」 24 甲24の記載事項 甲24には以下の記載がある。 (甲24-ア) 「【0015】請求項5記載の発明では、異常処理情報は異常処理に必要な保守パーツの情報を含んでおり、異常現象を検出した際には通信回線を介して前記保守パーツの在庫数量をサーバ等から読込んで、保守パーツの情報及びその在庫状況を表示することとした。これにより、ユーザーは必要な保守パーツの情報(型式やメーカー、管理番号等)及びその在庫状況を直ちに知ることができる。」 (甲24-イ) 「【0028】ステップ108では、ステップ106で条件成立と判定した異常検出条件に対応する異常処理情報を異常処理情報記憶部113から読み出す。異常処理情報記憶部113に記憶されている異常処理情報は、ユーザーが異常処理を行う際に有用な情報であり、推定される異常原因や異常発生箇所、異常処理方法などの情報である。続くステップ110では、読み出した異常処理情報をディスプレイ14に表示する。例えば上記のようにポンプに異常が発生したと判定した際には、ポンプに異常振動が発生している旨の表示や、ポンプの固定状態の確認又はポンプの交換をすべきこと等の表示がなされる。これにより、ユーザーは機械の稼動ができなくなるような致命的な異常(故障)が発生する前に、異常の兆候を示す異常現象が発生していることを認識でき、予防保全作業を行うことができる。この予防保全作業は例えば休憩時間やライン稼動終了後の時間、若しくは休日等を利用して行うことができるので、生産ラインの停止を伴うことなく機械の調整や部品の交換などが行える。」 (甲24-ウ) 「【0037】ステップ204は、異常検出条件を演算により求めるステップである。このステップの処理内容の具体例を図5により詳しく説明する。図5のステップ300は、正常時測定データ記憶部110に記憶された正常稼動時における測定データと、測定データ記憶部111に記憶された異常発生前の時点における測定データとを比較するステップである。正常時測定データ記憶部110及び測定データ記憶部111には、前述のように、少なくとも1サイクル分の測定データが記憶されている。このステップでは、工作機械の1サイクルの開始時点を基準時として、その基準時からの経過時間に基づいて両測定データを比較する。次のステップ302では、ステップ300での比較の結果、所定の閾値以上の有意な差異があったか否かを判定する。この閾値は、予め工作機械の設計者等により設定されているもので、例えば両測定データに1.2倍以上の違いがあれば、有意な差異があるとみなすように設定されている。これにより、故障が発生する前にその前兆を捉えていた測定装置からの測定データを抽出することができる。 【0038】ステップ302で閾値以上の差異があると認められた場合には、ステップ304で異常発生条件を演算する。このステップでは、次回以降、故障が発生する前にその前兆が捉えられるように、例えば「正常時の測定データ +(異常発生前の測定データ - 正常時のデータ)×係数」のような演算式により異常発生条件を定める。係数は、例えば「0.8」等の固定値でもよいし、測定装置の種類毎に異なる値を使用するものでもよい。ステップ306では、全ての測定装置からの測定データについて異常発生条件を演算したか否かを判定する。未完であればステップ300へ処理を戻し、全て終了すればリターンして図4のステップ206以降の処理を行う。 【0039】ステップ206では、ステップ202で入力された異常処理情報及びステップ204で求めた異常検出条件を、DRAM11の異常処理情報記憶部113及び異常検出条件記憶部112に追加記憶(登録)する処理を行う。この処理は、異常検出条件と異常処理情報との対応関係が明確になる形で記憶され、例えば、共通の引数で参照される配列変数のデータとして記憶される。」 (甲24-エ) 「【0041】なお、図5では、異常診断装置のCPU10が行う処理として異常処理検出条件を演算によって自動的に求める手順を説明したが、これ以外にも、ユーザーが異常検出条件を入力するものでもよい。この場合には、正常時の測定データと異常発生前の測定データを1サイクルの開始時を基準時としてグラフィック表示し、ユーザーの異常検出条件決定の補助データとするとよい。図6にグラフィック表示画面の一例を示す(正常時及び異常発生前の測定データは実際には色分けされている)。ユーザーがこの表示を見て異常検出条件を設定するようにすれば、ユーザーの知識や経験に基づいて異常の前兆現象を総合的に判断し、より精度の高い異常検出条件を定めることができる。 【0042】以上、一台の異常診断装置のみについて故障診断の処理を説明したが、ある一台の異常診断装置に登録した異常検出条件及び異常処理情報の情報を、同一又は類似の構成を持つ他の機械の異常診断装置でも利用できるようにすれば、その異常診断装置が監視する機械で同様な故障が発生する前にその前兆を捉え、ユーザーに知らせることができる。例えば、図4のステップ206の処理で異常検出条件及び異常処理情報を登録した際に、これらの情報をリンクラインLを介して同一又は類似の構成を持つ他の異常診断装置に送り、これらの情報を受信した異常診断装置では、その情報を記憶するようにするのである。同様の構成を持つ機械では同じような故障が発生する蓋然性が高く、同時期に稼動を開始したものであればなおさらである。例えば図1のトランスファーマシンTRにおいて、R側のステーションで発生した故障は近い時期にL側でも発生することが予想される。このように、異常検出条件及び異常処理情報の情報を異常診断装置間で共有することにより、故障診断を効率的に行うことができる。」 (甲24-オ) 「【0044】異常処理情報記憶部113に記憶される異常処理情報に、異常処理に必要な交換用部品の情報を含むようにすれば、異常診断装置が異常現象を検出した時点で直ちに当該交換用部品の型式やメーカーの情報がディスプレイ14に表示され、この情報をユーザーが知ることができる。さらに、工場を管理するサーバSに交換用部品の在庫状況を記憶させておき、異常診断装置が異常現象を検出した際には当該交換用部品の在庫状況をサーバSに問い合わせ、その結果をディスプレイ14に表示することにより、工場での部品の在庫状況が直ちに確認できる。またさらに、インターネットなどの広域ネットワークを使用して部品のメーカーの在庫状況を確認し、ディスプレイ14に表示するようにしてもよい。これにより、ユーザーは部品の在庫状況に応じた的確な処理を早期に行うことができる。 【0045】また、工作機械の構成によっては、ある異常現象が複数の異なる原因によって発生する場合もある。例えば、直動軸の送り装置に異常振動が発生した場合、その原因はボールネジにある場合もあるし、ベアリングにある場合もある。又はこれらの取り付けに緩みが発生した場合にも同様の異常現象が検出される場合がある。このため、異常処理情報記憶部113に記憶される異常処理情報に従って異常処理をしても、異常現象の解決が図れない場合もある。このような場合には、ユーザーが様々な可能性を検討して原因を調査しなければならないが、この調査の結果を基に当該異常処理情報を修正することにより、次回以降の異常現象発生時に役立てることができる。この異常処理情報修正処理の具体例を図7に示す。」 (甲24-カ) 「【0049】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の異常診断装置によれば、工作機械に故障が発生する前にその前兆である異常現象を検出してユーザーに警告し、その異常処理に関する情報を表示器に表示するので、故障に至る前に的確な予防保全を行うことができる。また、ユーザーに警告することなく、故障が発生してしまった場合でも、その故障に至る前の時点における測定装置からの測定データが記憶されているので、この記憶された測定データに基づいて当該故障の前兆である異常現象を検出するための異常検出条件を的確に求めることができ、次回以降は同様の故障が発生する前にユーザーに警告をし、予防保全によって故障の発生を回避することができる。」 (甲24-キ) 「【0053】またさらに、異常現象を検出した際に、異常処理に必要な保守パーツの型式等の情報を表示するとともに、通信回線を介してその保守パーツの在庫状況を確認し、この確認結果を合わせて表示することができるので、ユーザーはその保守パーツの情報及び在庫状況に応じて的確な対応を直ちにとることができる。」 25 甲25の記載事項 甲25には以下の記載がある。 (甲25-ア) 「【0014】医用画像装置、例えばMRI装置121は、図3に示すように、被検体から画像データ又はその元となるデータを収集するための磁石装置1211、装置全体の制御を司るホストコントローラ1212、操作パネル1213、ディスプレイ1214、通信装置1215、そして装置121内の磁石装置1211等の自動点検を行い、その故障の有無及び故障の予兆の有無を判断する自己点検制御装置1216等からなる。自己点検制御装置1216は、複数の医用画像装置にそれぞれ設けられており、それぞれの医用画像装置の特性に適した点検作業を行う機能を備えている。例えば、MRI装置121であれば、超伝導コイルを液体窒素とともにクライオスタット(低温槽)に封入している。その内部温度が所定温度以下に下がらない場合、正常撮影ができない事態に陥ることがあり、また所定温度以下であっても、それよりも低い温度に設定されている特定の温度以下に下がらない場合には、故障、つまり所定温度以下に下がらないという事態が近日中に起こり得ることが予想される。この特定温度以下に下がらないという事態を故障の予兆としてとらえることができる。その場合、自己点検制御装置1216としては、温度センサと、その検出温度を上記故障検出のための所定温度(故障検出用しきい値)及び上記故障予兆検出のための特定温度(故障予兆検出用しきい値)に比較する比較回路等から構成される。 【0015】また、X線CT装置122を始めX線診断装置等のX線管を構成要素として備える医用画像装置では、自己点検制御装置1216として例えばX線管の劣化を検出する構成を備えることができる。その構成としては、例えば振動センサをX線管の回転陽極子又はその軸受けに取り付け、回転時の振動周波数を検出する。その振動センサの検出信号を増幅器(チャージアンプ)で増幅した後、A/D変換器でA/D変換し、そのサンプリングデータ(振動信号)をDSP(Digital Signal Processor)で解析し、それが正常な場合における振動成分の発生パターンであるのか、又は明確なビート成分を含んだ異常パターン(故障パターン)であるか、さらには不明瞭ではあるがビート成分が増大傾向にある異常予兆パターン(故障予兆)であるか判定する。」 (甲25-イ) 「【0027】図5は、故障予兆が生じた時の動作手順を示すフローチャートである。まず、例えばMRI装置121の自己点検制御装置1216においてMRI装置121の例えばクライオスタットの故障の予兆が生じたか否かが温度比較により診断され(S21)、故障予兆有りと判定された場合(S22)、ホストコントローラ1212の制御のもとで故障予兆情報が、その詳細データ(例えば温度データ及びその経時的な変動データ)と共に、医用画像装置121から直接、又はオーダリングシステム115(又は検査予約システム127)から、メンテナンスサービスシステム2に送信される(S23)。その故障予兆情報及び詳細データをメンテナンスサービスシステム2のメンテナンス修理管理システム21で受信する(S24)。メンテナンス修理管理システム21では、詳細データを解析して、故障予兆が生じた原因を特定し、また実際に故障が発生する時期を推定する(S25)。 【0028】なお、メンテナンス修理管理システム21で行う「詳細データを解析して、故障予兆が生じた原因を特定し、また実際に故障が発生する時期を推定する」という機能は、病院システム1の側で、例えば医用画像装置121の自己点検制御装置1216、オーダリングシステム115及び/又は検査予約システム127にも装備させるようにしてもよい。この場合には、推定した故障時期以後の検査オーダの受付を、オーダリングシステム115及び検査予約システム127で直ちに停止することができる。 【0029】特定した原因に従ってメンテナンス修理管理システム21では、メンテナンス内容(部品補修/交換)、メンテナンス期間、メンテナンスに要する費用等の異なる複数のメンテナンス計画案を作成する(S26)。そして、作成した複数のメンテナンス計画案の情報を、病院システム1に送信する(S27)。 【0030】受信した複数のメンテナンス計画案は、装置管理システム128に送られ(S28)、その選択画面に表示される。装置管理者は、それら複数のメンテナンス計画案からいずれかのメンテナンス計画案を選択するとともに、メンテナンス依頼を入力する(S29)。メンテナンス計画案の選択情報がメンテナンス依頼書と共に、装置管理システム128から、メンテナンスサービスシステム2に送信される(S30)。 【0031】メンテナンスサービスシステム2のメンテナンス修理管理システム21は、メンテナンス計画案の選択情報をその依頼書と共に受信し(S31)、その選択したメンテナンス計画案に従って、部品管理システム24に照会して当該メンテナンスに必要な部品の在庫やその調達に要する期間等を確認すると共に、サービスマンの派遣スケジューリングを担当するサービスマン管理システム23に照会してサービスマンの派遣可能日時を確認する(S32)。そして部品及びサービスマンが揃う最も早い日時を特定すると共に、メンテナンス方法やメンテナンス期間等を含めて最終的なメンテナンス計画を決定する(S33)。そしてメンテナンス修理管理システム21は、決定したメンテナンス計画情報を病院システム1に送信する(S34)。」 (甲25-ウ)図5 「 [図:0001426794000092.jpg] 」 26 甲26の記載事項 甲26には以下の記載がある。 (甲26-ア) 「 [図:0001426794000093.jpg] [図:0001426794000094.jpg] [図:0001426794000095.jpg] [図:0001426794000096.jpg] 」 (甲26-イ)図15 「 [図:0001426794000097.jpg] 」 27 甲27の記載事項 甲27には以下の記載がある。 (甲27-ア) 「【0012】さらに、本発明は、空気調和機に異常又は異常の兆候があると判断された場合に復帰を行う空気調和機のサービスシステムにおいて、空気調和機の機種ごとの情報が記憶された機器情報データベースと、故障コードごとに異常の内容を示す情報とその推定原因とを記憶する故障コード用データベースと、前記機器情報データベースの各機器及び前記故障コードと関連付けられた保守部品の情報を示すパーツ情報データベースと、を有し、前記空気調和機の異常又は異常の兆候を判断し、インターネット上のホームページに前記故障コードを表示する監視センタと、インターネットを介して前記監視センタへアクセス可能とされた端末装置と、を備え、前記端末装置から前記故障コードに関連した保守部品の発注が入力可能とされたものである。 【0013】上記のものにおいて、保守部品の発注にあったて保守部品の価格、在庫、納期を示す情報が前記監視センタから前記端末装置へ提供されることが望ましい。」 (甲27-イ) 「【0028】故障データ監視ソフト301は、異常又は異常の兆候が発生した空気調和機101について故障時の運転情報や、正常時の運転情報を故障/運転情報データベース206から、機器の仕様や、設置条件など機器特有のデータを機器情報データベース203から、保守を行うサービス店の連絡先や担当者名をサービス店データベース204から、保守部品の一覧表と在庫状況をパーツ情報データベース205から、顧客名及び連絡先を顧客データベース207から、故障原因の究明方法や、故障推定原因や復旧方法を故障コード用データベース208から、wwwブラウザに対応したハイパーテキストで作成した画面情報をweb表示データベース210から、試運転方法や据え付けに関わる注意事項、取り扱い方法などに関する情報を技術マニュアルデータベース211から、同時にあるいは、必要に応じて収集する。」 (甲27-ウ) 「【0040】また、故障コード用データベース208は、故障コードごとに異常の内容を示す情報とその推定原因とを記憶し、パーツ情報データベース205では保守部品の情報が機器情報データベース203の各機器及び故障コードと関連付けられている。そこで、端末装置としての例えば携帯電話406に交換用部品の価格、在庫、納期を確認できる画面や、交換用部品の発注画面や、交換部品検索用画面、また、交換部品の写真、故障の来歴や、故障前の運転データを表示する画面などを別途用意しておくことが良い。そして、それらの発注に連動し、監視センタ1は、インターネットのホームページや、インターネットメールや、文書などで、見積りや請求書を同時に作成し、顧客などに配信することができるサービス機能を設ける。さらに、監視センタ1は、機器情報データベース203の機種ごとに故障来歴に関する情報を統計してその結果をホームページで閲覧可能とすることが良く、XML形式のデータとすれば、見積りや請求書、顧客などへのメール、統計結果及びグラフ表示などの作成のためのアプリケーションに係わらずデータを共有化するのに適したものとなる。」 28 甲28の記載事項 甲28には以下の記載がある。 (甲28-ア) 「【0006】このような問題点があるため、実際の設備管理においては、設備診断を行い、状態基準型保全(Condition Based Maintenance:CBM)管理をしている。このCBM管理における設備診断は、主として、例えば特開昭60-31036に記載されているような、転がり軸受の異常に起因して生じる振動を捉えることにより異常の程度を検出する振動法を用い、例えば初期値の3倍位の状態量(例えば加速度)のときを軸受異常と認知して、軸受取替え等の保全措置をとっている。 【0007】しかしながら、この時点では、軸受の軌道輪や転動体に軽度のフレーキング(剥離)が発生しているものの、軸受の損傷程度は軽く、不転事故等が発生する段階ではないため、まだまだ生産設備としては使用可能である。このように、従来法の寿命を用いると、過剰メンテナンスとなり、不必要に生産設備を停止させていることが少なくなかった。」 (甲28-イ) 「【0014】 【発明の実施の形態】異常認知以降の不転事故等の重度の軸受損傷までの残存寿命を予測するためには、不転事故等が発生するまでの軸受寿命試験を行う必要があるが、従来の寿命試験機では強度、剛性が低く、危険を伴うので実験ができなかった。そこで、発明者等は、実際の生産設備と同等な強度を有する頑丈な軸受寿命試験機を製作して、不転事故までの試験を行った。 【0015】具体的には、玉軸受に対して、回転数、荷重等の軸受の使用条件を変えて実験を行い、振動データを採取しながら、軸受の損傷程度との対比を行った。 【0016】図1は、従来技術の軸受寿命であるJIS定格寿命Lh と、本発明が対象とする残存寿命Ldhの相違を示す。 【0017】更に、図2乃至図7及び図8に本実験のデータの例を示す。図2は、軸受の使用回転数N=1000rpm、軸受に作用する荷重P=0.4Cとした実験1の試験データを示し、図3乃至図7は、図2中の各点A~Eにおける生波形及び包絡線波形を示す。又、図8は、同じくN=1800rpm、P=0.07Cとした実験2の試験データを示す。図2の場合は、残存寿命Ldh=11.7時間となり、図8の場合は、Ldh=2305時間となった。」 (甲28-ウ)図2 「 [図:0001426794000098.jpg] 」 (甲28-エ)図3、4 「 [図:0001426794000099.jpg] 」 (甲28-オ)図5、6 「 [図:0001426794000100.jpg] 」 (甲28-カ)図7 「 [図:0001426794000101.jpg] 」 29 甲29の記載事項 甲29には以下の記載がある。 (甲29-ア) 「【0042】 ここで、正常及び外輪軌道面に傷がある前述した複列円すいころ軸受(外径208mm、内径130mm、幅152mm、ころ数25)を軸受箱に組み込み、内輪回転速度200min-1で回転させ、軸受箱のラジアル方向の振動をエンベロープ分析及び周波数分析することで異常の診断を行った。図6は、正常品及び外輪傷品の振動をフィルタ処理せずにエンベロープ分析及び周波数分析した結果を示し、図7は、正常品及び外輪傷品の振動を1~3kHzの帯域でフィルタ処理後にエンベロープ分析及び周波数分析した結果を示す。 【0043】 本実施例では、正常と異常の判別をする基準として、図中にラインを引いた基準値(rms+3dB)を用いることにより、高精度な診断が可能であった。即ち、この基準値を越える周波数成分を抽出後、内輪傷成分Si(Zfi)、外輪傷成分So(Zfc)、転動体傷成分Sb(2fb)及び保持器成分Sc(fc)と比較し、その一致度から異常の有無と部位の特定を行うものであり、図6においては、顕著なピークは出現していないが、図7においては、外輪傷品について、その傷に起因した周波数成分と一致した成分が顕著に出現している。 【0044】 これにより、図7(b)については、軸受の外輪に傷があると判定することができる。また、本試験で用いた外輪傷品の傷の大きさが小さいため1~3kHzの周波数帯域のフィルタ処理後にエンベロープ分析及び周波数分析を行わないと傷成分が顕著に出現しないこともわかる。」 (甲29-イ)図6、7 「 [図:0001426794000102.jpg] 」 30 甲30の記載事項 甲30には以下の記載がある。 (甲30-ア) 「【0019】 走行振動に伴う軸ばね127又は継手117の撓みによって、歯車装置111の小歯車131の軸を支承する軸受135には多様な荷重がかかる。さらに、鉄道車両の実走行時に発生する走行振動には、鉄道車両が受ける風等の環境要因や線路状態による要因等の多様な要因が含まれる。こうした荷重を軸受135が受け続けると、軸受135には、クリープ、つば焼き又はポケット摩耗等の損傷が発生し得る場合がある。また、軸受135に損傷が発生すると、歯車装置111の小歯車131の軸における振動、温度、トルク、変位、AE(Acoustic Emission)又は回転速度等のパラメータ又はその経時変化が正常時とは異なって表れる。なお、損傷した軸受135が破損に至って、軸受135の部品が歯車装置111内に飛び散ると、歯車装置111まで破損してしまう。しかも、軸受135の損傷から破損に至るまでの事象は急速に進行する場合もあるため、軸受135が破損に至る前段階での損傷状態の時点でその実態を検知できた方が望ましい。このため、本実施形態の軸受状態検知装置は、鉄道車両に搭載され、当該鉄道車両の実走行中における軸受135の損傷に応じたパラメータの変化に基づいて、軸受135の損傷に関する実態を検知する。」 (甲30-イ) 「【0021】 軸受135の損傷は、クリープ、つば焼き又はポケット摩耗等によって発生する。クリープが発生すると、ハウジングの端面が摩耗してベアリングすきまが大きくなり、軸の振れ回りが大きくなる。その後、転動体がそのポケット内で衝突する頻度が高くなると保持器の破損に至る。つば焼きが発生した場合も同様に、ベアリングすきまが大きくなり、軸の振れ回りが大きくなる。その後、転動体がそのポケット内で衝突する頻度が高くなると保持器の破損に至る。また、ポケット摩耗が進行すると、保持器の振れ回りが大きくなり、転動体がそのポケット内で衝突する頻度が高くなると保持器の破損に至る。保持器が破損すると、最終的に軸受135の破損に至り、転動体が脱落する等の事象が発生する。」 (甲30-ウ) 「【0028】 軸受135a,135b及び軸受141a,141bそれぞれのハウジング(図示略)は、歯車装置111aの筐体に固定されている。軸受135a,135bによって、小歯車131aの軸の振れ回りが防止され、軸受141a,141bによって、大歯車133aの軸の振れ回りが防止される。モータ113aの回転力は、歯車装置111aの小歯車131aに伝達される。小歯車131aに伝達されたモータ113aからの回転力は、大歯車133aを介して発電機140に伝達される。したがって、モータ113aが動作することで、発電機140から電力が発生する。振動センサー20aは、上述したセンサー20に相当するもので、歯車装置111aの軸受135a,135b近傍に設けられている。振動センサー20aは、軸受135a,135bにおけるつば焼、ポケット摩耗、保持器(軸受を構成する部品の1つで、複数の転動体を一定間隔で保持するもの)の振れ回り等に起因する振動の検出に用いられる。振動センサー20aの測定値が軸受状態検知装置10に入力される。」 (甲30-エ) 「【0032】 また、ポケット摩耗(保持器の転動体を収容する部分)に起因する軸受損傷の兆候としては、保持器の公転周期である特徴周波数成分「fc」が現れたが、その強度は弱く、またその数(「fc」の数)も少なかった。 【0033】 また、ポケット摩耗が進行し、保持器と保持器が振れ回るような状態である軸受損傷の状態においては、保持器の外径面と軸受外輪内径面が接触し、外輪に起因する特徴周波数成分である「Zfc」成分が顕著に現れた。」 (甲30-オ) 「【0035】 上述のように、振動センサー20aでの検知にて、FFT振動解析処理、フィルタリング処理及び絶対値検波処理を行った後、エンベロープ処理した振動解析を行うことで、軸受135bのつば焼け、軸受135bの保持器のポケット摩耗、軸受135bの保持器の振れ回り等の異常を検知可能と確認した。また、小歯車131aと大歯車133aかみ合いによる発生周波数は計算可能であるので、あらかじめこの発生周波数を対象から除外することで、それぞれの振動特徴から、どのような起因(つば焼け、ポケット摩耗、保持器の振れ回り)により損傷に進行していくかの予兆判断が可能と確認した。」 31 甲31の記載事項 甲31には以下の記載がある。 (甲31-ア)第7欄末行~第8欄第17行 「最後に、包絡線回路6Aの出力が比較部S5であらかじめ定めたしきい値と比較され、大きく、かつ、各比較部S1,S2,S4での判定結果でいづれもNoとなっていれば、これは保持器特有の振動ということが分かるので、比較部S6で、包絡線6aの出力のピークの発生位置と、二回積分器16からの出力信号である変位波形のピーク位置とに時間的一致あるいは一定な遅れ、進みなどの相関関係の有無を検定して、相関があるときは軸受倒れによる保持器の振動大と判定し、相関関係がないときは潤滑不良等による保持器の振動大と判定する。 このように、従来の診断装置では、内外輪の剥離に主体をおいていたころがり軸受の異常診断に対して、本実施例ではそれ以外の原因すなわち保持器の振動や軸受外輪と軸受ハウジングのがたなどで発生するころがり軸受の異常振動を識別して判定することができる。」 (甲31-イ)第1図 「 [図:0001426794000103.jpg] 」 (甲31-ウ)第2図 「 [図:0001426794000104.jpg] 」 32 甲32の記載事項 甲32には以下の記載がある。 (甲32-ア) 「【0006】 また、他の構成例として、図9に示す軸受の異常検知装置130は、軸受131の機械的振動を電気的振動に変換して出力するピックアップ132と、ピックアップ132の出力を増幅する自動利得制御増幅器133と、増幅器133の出力から駆動系や他の機械系から生ずるノイズを除去する1~15kHzのバンドパスフィルタ134と、を備えている。また、バンドパスフィルタ134の出力の実効値を演算し自動利得制御増幅器133の利得制御端子に供給する実効値演算器135と、バンドパスフィルタ134の出力を入力する包絡線回路136と、包絡線回路136の出力を入力する実効値演算器137と、実効値演算器137の出力を入力しその値が所定値を超えたときにランプや接点出力で警報を出す警報回路138と、を備えた構成を有する(例えば、特許文献4参照)。」 (甲32-イ) 「【0031】 図3に示すように、異常検出手段13における信号処理の第2の方法において、振動センサ28が発生した振動データ信号は、増幅後に、フィルタ部35において任意の周波数帯域のみを抽出することにより不要な周波数帯域を除去されてエンベロープ処理部36に入力される。エンベロープ処理部36では、波形の絶対値を検波する絶対値検波処理が行われ、その後に周波数分析部37において周波数の分析処理が行なわれ、実測値データが比較照合部38へ転送される。 【0032】 一方、回転速度情報39に基づき理論周波数計算部40において、軸受,歯車,車輪の偏摩耗等の異常に起因したものとして設定された周波数成分の計算値データが比較照合部38に転送される。そして、比較照合部38において実測値データと計算値データとが比較照合されることにより、振動異常の有無、異常部位の特定が行なわれ、結果出力部41において、振動異常の有無、特定部位の出力が行なわれる。結果出力部41への情報転送は、有線や無線で行なわれる。」 (甲32-ウ) 「【0035】 また、図3に示す比較照合部38における振動情報を基にした異常診断の処理方法として以下に示す方法を用いても良い。 (1)エンベロープデータの実効値を基準値として用いる方法 本方法では、予め設定した式を用いて異常時に発生する周波数成分を求める。そして、エンベロープデータの実効値を算出し、この実効値から比較用の基準値を求める。そして、基準値以上の周波数を算出し、異常時に発生する周波数成分との比較を行なう。異常周波数成分としては、内輪傷成分、外輪傷成分、転動体成分、保持器成分が、レベル毎に抽出される。 【0036】 (2)スペクトルのピークを求め、ピーク周波数と異常周波数とを比較する方法 本方法では、異常時に発生する周波数成分を求める。そして、振動分析部において求めた周波数スペクトルの中で所定数または基準値以上のピークについて、異常が発生する周波数成分に該当するかどうかを照合する。この場合も、異常周波数成分としては、内輪傷成分、外輪傷成分、転動体成分、保持器成分が、レベル毎に抽出される。 【0037】 (3)基本周波数と特定の高調波を用いる方法 本方法では、異常周波数成分の基本周波数である1次の値、基本周波数の倍の周波数をもつ2次の値、基本周波数の4倍をもつ4次の値について、ピークの周波数と異常時に発生する周波数が一致しているかどうかを比較する。そして、少なくとも2つの周波数において異常有りと判断された場合には、最終的に異常有りと判断し、異常有りと判断された周波数が1つ以下である場合には、異常なしと判断する。 【0038】 (4)異常診断と共に損傷の大きさを推定する方法 本方法では、エンベロープ処理後の周波数スペクトルを用い、大きなピークの周波数において外輪に損傷が発生していることを確認し、この周波数におけるピークの値と周波数スペクトル全体の平均値である基準レベルとを比較することにより、異常を起こしている外輪における損傷の大きさを推定する。 【0039】 (5)基本周波数の自然数倍の高調波成分とのレベル差を基準値とする方法 本方法では、異常周波数成分の基本周波数である1次のレベルに対して、基本周波数の2,3,4,・・・n倍の周波数をもつ2,3,4,・・・n次のレベルが基準値以上となっている個数をカウントし、所定個数以上基準値を超えている場合に、異常が発生していると判断する。具体的には、1次のレベルに対し、n次の値が{(1次のレベル)-(n-1)・a}(dB)以上である場合に、カウントを行なう。ここでaは、任意の値である。」 (甲32-エ)図3 「 [図:0001426794000105.jpg] 」 (甲32-オ)図9 「 [図:0001426794000106.jpg] 」 33 甲33の記載事項 甲33には以下の記載がある。 (甲33-ア) 「【0010】 ・・・ Q値は、一例として、特開昭56-135140号公報に記載されている次の(1)式により算出される。 【0011】 [数3] Q=Vrms×Vpeak×[a|(Vpeak/Vrms)-5|+b]・・・(1) 但し、Vrms :包絡線波形の自乗平均平方根値 Vpeak:包絡線波形のピーク値 a、b:定数 この(1)式の意味は、特開昭56-135140号公報に記載されているが、次の通りである。 すなわち、Vrms×Vpeakを変形すると、(2)式のように表すことができる。 【0012】 [数4] Vrms×Vpeak=(Vrms)2×(Vpeak/Vrms)・・・(2) (2)式の右辺において、(Vrms)2はランダム波形のパワーを示しており、通常ランダム波のエネルギーを表すのに用いられる値である。一方、(Vpeak/Vrms)はクレストファクタリーまたは波形率と称して、波形のおおよその形の定義として用いられるものである。ここで、(Vrms)2の値について考えてみると、軸受にキズ、うねり、電食等の損傷がある場合にはランダム波形は大きくなるため、当然のことながら(Vrms)2の値は大きくなる。 これに対して、(Vpeak/Vrms)の値はランダム波よりもピーク値が大きく出るような波形の場合、すなわち、軸受にキズがある場合には5よりも大きくなるため、図2において(Vpeak/Vrms)=5の線より上方に位置する。 なお、図2は、(Vpeak/Vrms)、Vrms×Vpeakを演算し、縦軸に(Vpeak/Vrms)、横軸にVrms×Vpeakをとって両対数グラフ上にプロットしたものである。図2からも明らかなとおり、(Vpeak/Vrms)=5に集中しており、軸受を分解した結果、まだ十分使用に耐えるものは○印、かなり損傷があるが、まだ使用にたえなくもないものは△印、損傷がひどく使用できないものは×印でそれぞれプロットされている。 【0013】 また、ランダム波よりも低周波成分の多い波形の場合、すなわち、軸受にうねり、電食等がある場合には5よりも小さくなるため、図2において、(Vpeak/Vrms)の値を掛け算することにより、(Vpeak/Vrms)=5を掛け算する場合に比べて(Vrms)2×(Vpeak/Vrms)の値は小さくなる。しかしながら、損傷がある場合には、(Vrms)2の値のほうが大きな変化を示すこと、損傷としてはうねりや電食よりもキズのほうが重大であることを考えれば、Vrms×Vpeakの値により良否の判別を行なうことができるのである。 次に(1)式の右辺において、[a|(Vpeak/Vrms)-5|+b]について説明する。前述において、Vrms×Vpeakの値により良否の判別を行なうことができることを説明したが、(Vrms)2の値に対して(Vpeak/Vrms)の値の変化のほうが小さいため、Vrms×Vpeakの値だけの良否の判別では(Vpeak/Vrms)=5の線から離れた損傷に対しては不十分なことがある。 そのため、[a|(Vpeak/Vrms)-5|+b]なる補正係数を掛け算し、Vrms×Vpeakの値を補正してQ値を算出しているのである。 この補正の効果は、図2を用いて説明すると、Vrms×Vpeakの値にて良否の判別を行なう場合には、破線bが境界となりVrms×Vpeakの値が小さいが、(Vpeak/Vrms)の値が5より離れているものも含むことができるようになる。なお、軸受の種類によって定数a,bの値を設定することにより、図2において境界bの傾きを変えることができる。」 第7 進歩性についての検討 1 特許異議申立書の取消理由2(甲1を主引用例とした場合)について (1)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「玉ベアリングやローラベアリングなどのベアリング」は、本件発明2の「転がり軸受」に相当する。また、甲1発明の「回転機器の運転による振動加速度の経時変化を常時計測し、ベアリング由来の異常を検出するために振動加速度強度を監視する」ことは、「回転機器の運転」状態において「ベアリング由来の異常を検出するために」「振動加速度」を「常時計測」して、「振動加速度強度を監視する」ことであるから、本件発明2の「転がり軸受の運転状態を監視する」ことに相当する。そうすると、甲1発明の「方法」は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に相当する。したがって、甲1発明の「回転機器の運転による振動加速度の経時変化を常時計測し、玉ベアリングやローラベアリングなどのベアリング由来の異常を検出するために振動加速度強度を監視する方法」は、本件発明2の「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法」に相当する。 (イ)甲1発明の「振動加速度センサー」は、本件発明2の「加速度センサ」に相当し、甲1発明の「読み取り」は、本件発明2の「検出」に相当する。また、甲1発明の「振動加速度センサー」は、「回転機器軸受部に取付けられた」ものであり、「ベアリング由来の異常を検出する」ためのものであるから、甲1発明の「電気信号」は、本件発明2の「前記転がり軸受から発生する加速度」としての「加速度信号」に相当する。したがって、甲1発明の「回転機器軸受部に取付けられた振動加速度センサーからの電気信号を読み取り」は、本件発明2の「加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程」に相当する。 (ウ)甲1発明の「電気信号」は、本件発明2の「加速度信号」に相当し、甲1発明の「包絡線処理機能付きのスペクトルアナライザ(周波数分析計)において、1KHzから75KHzまでの高周波数帯域の振動加速度を包絡線処理」は、本件発明2の「エンベロープ解析」に相当し、甲1発明の「振動加速度強度」は、「周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域」で求められた「振動加速度強度」であり、「ベアリング由来の異常を検出するため」のものであるから、本件発明2の「転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力」に相当する。したがって、甲1発明の「この電気信号を包絡線処理機能付きのスペクトルアナライザ(周波数分析計)において、1KHzから75KHzまでの高周波数帯域の振動加速度を包絡線処理したあと周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度を求め」ることは、本件発明2の「前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程」に相当する。 (エ)甲1発明の「1Hzから1KHz域の振動加速度強度」は、本件発明2の「加速度」に相当し、甲1発明の「1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度」は、本件発明2の「特徴周波数出力」に相当し、甲1発明の「値」は、本件発明1の「診断閾値」に相当する。したがって、甲1発明の「1Hzから1KHz域の振動加速度強度及び1KHzから75KHzまでの振動加速度を包絡線処理した後、周波数分析し、ベアリングを構成する部位毎に演算された固有の振動周波数帯域の振動加速度強度を、予め設定された値と比較」することは、本件発明2の「前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程」に相当する。 (オ)甲1発明の「正常」、「注意」、「異常」は、本件発明2の「異常の無」、「異常予兆」、「異常の有」に相当し、甲1発明の「判断」は、本件発明2の「診断」に相当する。したがって、甲1発明の「当該比較の結果に基づき、ベアリングの正常、注意、異常を判断」することは、本件発明2の「前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程」に相当する。 (カ)甲1発明の「正常、注意、異常の別の印字」は、本件発明2の「前記診断の結果」に相当する。したがって、甲1発明の「正常、注意、異常の別の印字をラインプリンタ19で出力」することは、本件発明2の「前記診断の結果を出力する工程」に相当する。 (キ)上記(ア)~(カ)より、本件発明2と甲1発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点1) 本件発明2では、「前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲1発明では、加速度及び特徴周波数出力のいずれかが、それぞれの閾値より大きいとき、転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点2) 本件発明2では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を含む」のに対し、甲1発明では、このような第一工程~第三工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点2について検討する。 転がり軸受の特徴周波数出力及び加速度をこの順序で判定することで、転がり軸受の正常、異常の予兆、異常を診断するという技術的事項は、甲1~甲33(第6の1~33を参照)のいずれにも記載も示唆もないし、周知技術であるといえる証拠もないことから、当該技術的事項を具現化した相違点2に係る本件発明2の構成は、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明2は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (2)本件発明4 ア 対比 本件発明4は、本件発明2において、「転がり軸受の温度」に関する構成を加えたものであるから、本件発明4と甲1発明との対比については、上記1(1)アの本件発明2と甲1発明との対比を参照されたい。 すると、本件発明4と甲1発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 前記加速度、前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点3) 本件発明4では、「温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程と、」「前記温度を、予め設定された」「診断閾値と比較する工程」と、を備え、「前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲1発明では、加速度及び特徴周波数出力のいずれかが、それぞれの閾値より大きいとき、転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点4) 本件発明4では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を含む、」のに対し、甲1発明では、このような第一工程~第四工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点4について検討する。 転がり軸受の特徴周波数出力、加速度、温度をこの順序で判定することで、転がり軸受の正常、異常の予兆、異常を診断するという技術的事項は、甲1~甲33(第6の1~33を参照)のいずれにも記載も示唆もないし、周知技術であるといえる証拠もないことから、当該技術的事項を具現化した相違点4に係る本件発明4の構成は、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から当業者が容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明4は、上記相違点3について検討するまでもなく、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から甲1発明及び周知技術から容易に想到し得ることではない。 (3)本件発明6 本件発明6は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点2に係る本件発明2の構成における第一工程~第三工程を実行するものである。 よって、本件発明6は、上記1(1)の本件発明2と同様の理由により、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (4)本件発明8 本件発明8は、本件発明4の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点4に係る本件発明4の構成における第一工程~第四工程を実行するものである。 よって、本件発明8は、上記1(2)の本件発明4と同様の理由により、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (5)申立理由2(甲1を主引用例とした場合)についてのまとめ 以上より、本件発明2、4、6、8は、甲1発明、及び、甲2~33に記載の事項、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 2 特許異議申立書の取消理由3(甲2を主引用例とした場合)について (1)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「ボールベアリング」は、本件発明2の「転がり軸受」に相当し、甲2発明の「動作状態」は、本件発明2の「運転状態」に相当し、甲2発明の「軸受アセンブリ監視システム10による監視方法」は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に相当する。したがって、甲2発明の「ボールベアリングの動作状態を監視する軸受アセンブリ監視システム10による監視方法」は、本件発明2の「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法」に相当する。 (イ)甲2発明の「加速度計」は、本件発明2の「加速度センサ」に相当し、甲2発明の「ボールベアリング」は、本件発明2の「転がり軸受」に相当し、甲2発明の「加速計の信号」は、本件発明2の「加速度信号」に相当する。また、甲2発明の「加速度計の信号」は、「ボールベアリングから発生する振動」を「加速度計により」検出した信号であることから、「ボールベアリングから発生する振動」の加速度成分を信号として検出したものであるといえる。したがって、甲2発明の「加速度計によりボールベアリングから発生する振動を加速度計の信号として検出し」は、本件発明2の「加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程」に相当する。 (ウ)甲2発明の「加速度計の信号をRMSチップ30によって変換されたDC電圧信号30S」は、本件発明2の「加速度」に相当し、甲2発明の「基準電圧サブ回路32によって提供される対応する基準電圧である第1および第2の基準電圧32V1、32V2」は、本件発明2の「予め設定された診断閾値」に相当する。そうすると、甲2発明の「前記加速度計の信号をRMSチップ30によって変換されたDC電圧信号30Sを基準電圧サブ回路32によって提供される対応する基準電圧である第1および第2の基準電圧32V1、32V2と比較」する工程と、本件発明2の「前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程」は、「前記加速度を、予め設定された診断閾値と比較する工程」である点で共通する。 (エ)甲2発明の「ボールベアリング」は、本件発明2の「転がり軸受」に相当し、甲2発明の「「メンテナンス」状態」、「「高振動」状態」、「それ以外の状態」は、それぞれ、本件発明2の「異常予兆」、「異常の有」、「異常の無」に相当する。したがって、甲2発明の「前記比較の結果に基づき、ボールベアリングの「メンテナンス」状態、「高振動」状態、それ以外の状態を診断し」は、本件発明1の「前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程」に相当する。 (オ)甲2発明の「前記診断の結果を「メンテナンス」勧告灯64、及び、「高振動」警告灯66の点灯によってパイロットに知らせ」は、本件発明2の「前記診断の結果を出力する工程」に相当する。 (カ)上記(ア)~(オ)より、本件発明2と甲2発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度を、予め設定された診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点5) 本件発明2では、「前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程」と、「前記特徴周波数出力を、予め設定された」「診断閾値と比較する工程」と、を備え、「前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲2発明では、加速度が診断閾値より大きいときに転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点6) 本件発明2では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を含む」のに対し、甲2発明では、このような第一工程~第三工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点6について検討する。 上記相違点6に係る本件発明2の構成は、上記相違点2に係る本件発明2の構成であるから、上記相違点6に係る本件発明2の構成は、上記1(1)イで説示した理由より、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明2は、上記相違点5について検討するまでもなく、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (2)本件発明4 ア 対比 本件発明4は、本件発明2において、「転がり軸受の温度」に関する構成を加えたものであるから、本件発明4と甲2発明との対比については、上記2(1)アの本件発明2と甲2発明との対比を参照されたい。 すると、本件発明4と甲2発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度を、予め設定された診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点7) 本件発明4では、「前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程と、」 「前記特徴周波数出力及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程」と、を備え、「前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲2発明では、加速度が診断閾値より大きいときに転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点8) 本件発明4では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を含む」のに対し、甲2発明では、このような第一工程~第四工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点8について検討する。 上記相違点8に係る本件発明4の構成は、上記相違点4に係る本件発明4の構成であるから、上記相違点8に係る本件発明4の構成は、上記1(2)イで説示した理由より、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明4は、上記相違点7について検討するまでもなく、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (3)本件発明6 本件発明6は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点6に係る本件発明2の構成における第一工程~第三工程を実行するものである。 よって、本件発明6は、上記2(1)の本件発明2と同様の理由により、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (4)本件発明8 本件発明8は、本件発明4の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点8に係る本件発明4の構成における第一工程~第四工程を実行するものである。 よって、本件発明8は、上記2(2)の本件発明4と同様の理由により、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (5)申立理由3(甲2を主引用例とした場合)についてのまとめ 以上より、本件発明2、4、6、8は、甲2発明、及び、甲1、3~33に記載の事項、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 3 特許異議申立書の取消理由4(甲10を主引用例とした場合)について (1)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲10発明とを対比する。 (ア)甲10発明の「ころがり軸受」は、本件発明2の「転がり軸受」に相当する。そして、甲10発明は、「機械の運転中」の「ころがり軸受の異常」の状態を監視して「精度良く診断する」ものであるから、甲10発明の「ころがり軸受の異常を、機械の運転中に精度良く診断する」は、本件発明2の「転がり軸受の運転状態を監視する」に相当し、甲10発明の「方法」は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に相当する。したがって、甲10発明の「ころがり軸受の異常を、機械の運転中に精度良く診断する方法」は、本件発明2の「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法」に相当する。 (イ)甲10発明の「診断対象のころがり軸受30に密着させた加速度検出器2」は、本件発明2の「加速度センサ」に相当し、甲10発明の「ころがり軸受30から発生する固体音を振動加速度(G)」は、本件発明2の「転がり軸受から発生する加速度」に相当し、甲10発明の「電気信号」は、本件発明2の「加速度信号」に相当する。したがって、甲10発明の「診断対象のころがり軸受30に密着させた加速度検出器2により、ころがり軸受30から発生する固体音を振動加速度(G)の形で電気信号として検出し」は、本件発明2の「加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程」に相当する。 (ウ)甲10発明の「フィルタ4を通過した信号は包絡線検波回路6に入力されここで振動周波数信号を検波して包絡線信号による波形が得られ」は、本件発明2の「加速度信号をエンベロープ解析して」に相当し、甲10発明の「ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル」「の振動加速度(G)のレベル」は、本件発明2の「特徴周波数出力」に相当し、甲10発明の「前記の包絡線検波回路6から周波数分析回路14に包絡線信号による波形が入力されて、これが周波数分析されて周波数スペクトルが求められ、前記の周波数スペクトルは抽出回路16に入力され、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトルを抽出し、そのスペクトルの振動加速度(G)のレベルを取得」は、本件発明2の「転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得」に相当する。したがって、甲10発明の「フィルタ4を通過した信号は包絡線検波回路6に入力されここで振動周波数信号を検波して包絡線信号による波形が得られ、前記の包絡線検波回路6から周波数分析回路14に包絡線信号による波形が入力されて、これが周波数分析されて周波数スペクトルが求められ、前記の周波数スペクトルは抽出回路16に入力され、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトルを抽出し、そのスペクトルの振動加速度(G)のレベルを取得し」は、本件発明2の「前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程」に相当する。 (エ)甲10発明の「ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)」は、本件発明2の「特徴周波数出力」に相当する。そして、甲10発明の「有無を確認」することは、「スペクトル(fi、fo、fb)」のレベルを予め設定されたゼロという閾値と比較することであるから、甲10発明の「ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)の有無を確認」は、本件発明2の「特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較」に相当する。そうすると、甲10発明の「前記振動加速度(G)を処理して算出される数値から計算されるころがり軸受の損傷の程度を表すQ値を、別に準備した判定基準と対比させ、ころがり軸受30の損傷部に起因したスペクトル(fi、fo、fb)の有無を確認」する工程と、本件発明2の「前記加速度及び前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程」は、加速度センサにより検出された加速度信号から算出された数値と特徴周波数出力を、予め設定された診断閾値と比較する工程である点で共通する。 (オ)甲10発明の「ころがり軸受」の「良好」、「注意」、「交換」は、それぞれ、本件発明2の「転がり軸受」の「異常の無」、「異常予兆」、「異常の有」に相当する。したがって、甲10発明の「これらの結果に基づき、ころがり軸受の良好、注意、交換を診断し」は、本件発明2の「前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程」に相当する。 (カ)甲10発明の「表示回路18に表示」は、本件発明2の「出力」に相当する。したがって、甲10発明の「診断の結果は表示回路18に表示され」は、本件発明2の「診断の結果を出力する工程」に相当する。 (キ)上記(ア)~(カ)より、本件発明2と甲10発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 前記特徴周波数出力を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点9) 本件発明2では、「前記加速度」を、「予め設定された」「診断閾値と比較する工程」と、を備え、「前記診断する工程は、前記加速度及び前記特徴周波数出力が、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲10発明では、特徴周波数出力が診断閾値より大きいときに転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点10) 本件発明2では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第三工程と、を含む」のに対し、甲10発明では、このような第一工程~第三工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点10について検討する。 上記相違点10に係る本件発明2の構成は、上記相違点2に係る本件発明2の構成であるから、上記相違点10に係る本件発明2の構成は、上記1(1)イで説示した理由より、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明2は、上記相違点9について検討するまでもなく、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (2)本件発明4 ア 対比 本件発明4は、本件発明2において、「転がり軸受の温度」に関する構成を加えたものであるから、本件発明4と甲10発明との対比については、上記3(1)アの本件発明2と甲2発明との対比を参照されたい。 すると、本件発明4と甲2発明は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 (一致点) 「転がり軸受の運転状態を監視する軸受状態監視方法であって、 加速度センサにより前記転がり軸受から発生する加速度を加速度信号として検出する工程と、 前記加速度信号をエンベロープ解析して、前記転がり軸受の損傷に起因する特徴周波数出力を取得する工程と、 前記特徴周波数出力を、予め設定された診断閾値と比較する工程と、 前記比較の結果に基づき、前記転がり軸受の異常の有無および異常予兆を診断する工程と、 前記診断の結果を出力する工程と、 を備える、 軸受状態監視方法。」 (相違点11) 本件発明4では、「温度センサにより前記転がり軸受の温度を検出する工程」と、「前記加速度、」「及び前記温度を、予め設定されたそれぞれの診断閾値と比較する工程」と、を備え、「前記診断する工程は、前記加速度、前記特徴周波数出力及び前記温度のすべてが、それぞれの診断閾値より大きいとき、前記転がり軸受の異常として診断」するのに対し、甲10発明では、特徴周波数出力が診断閾値より大きいときに転がり軸受の異常として診断する点。 (相違点12) 本件発明4では、「前記診断する工程は、前記特徴周波数出力が予め設定された特徴周波数出力診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受が正常であると診断する第一工程と、前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第二工程と、前記第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きく、且つ、前記温度が予め設定された温度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する第三工程と、前記第三工程において前記温度が前記温度診断閾値より大きい場合に、前記転がり軸受が異常であると診断する第四工程と、を含む」のに対し、甲10発明では、このような第一工程~第四工程を含むものでない点。 イ 判断 事案に鑑みて上記相違点12について検討する。 上記相違点12に係る本件発明4の構成は、上記相違点4に係る本件発明4の構成であるから、上記相違点12に係る本件発明4の構成は、上記1(2)イで説示した理由より、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明4は、上記相違点11について検討するまでもなく、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (3)本件発明6 本件発明6は、本件発明2の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点10に係る本件発明2の構成における第一工程~第三工程を実行するものである。 よって、本件発明6は、上記3(1)の本件発明2と同様の理由により、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (4)本件発明8 本件発明8は、本件発明4の「軸受状態監視方法」に対応する「軸受状態監視システム」の発明であって、「軸受状態監視システム」が備える「診断装置」は、上記相違点12に係る本件発明4の構成における第一工程~第四工程を実行するものである。 よって、本件発明8は、上記3(2)の本件発明4と同様の理由により、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術から容易に発明できたものではない。 (5)申立理由4(甲10を主引用例とした場合)についてのまとめ 以上より、本件発明2、4、6、8は、甲10発明、及び、甲1~9、11~33に記載の事項、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第8 記載要件についての検討 1 取消理由通知書(決定の予告)の取消理由について (1)先の訂正請求書によって訂正された請求項1~8について、請求項1に記載の第二工程で「前記第一工程において前記転がり軸受が正常であると診断されず」、請求項1に記載の第三工程で「前記第二工程において前記転がり軸受に異常の予兆があると診断されなかった場合」、請求項2に記載の第四工程で「前記第二工程において前記転がり軸受に異常の予兆があると診断されず」、請求項2に記載の第三工程で「前記第二工程及び前記第四工程において前記転がり軸受に異常の予兆があると診断されなかった場合」は、それぞれ、どのような場合なのか、明確でない旨を指摘したところ、本件訂正によりこれらの記載は改められたので、当該理由は解消した。 (2)先の訂正請求書によって訂正された請求項2~4、6~8について、請求項2の記載では、どのような場合に「前記転がり軸受が異常であると診断」し、また、どのような場合に「前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する」のか、一義的に定まらないため、明確でない旨を指摘したところ、本件訂正によりこれらの記載は改められたので、当該理由は解消した。 (3)先の訂正請求書によって訂正された請求項3、4、7、8について、請求項3に記載の「前記特徴周波数出力と、前記転がり軸受の回転速度及び諸元に基づいて出される、前記転がり軸受の部位ごとの損傷に起因する軸受損傷周波数と、を比較することで、前記転がり軸受の損傷部位を特定する」は、どの工程で行うのか、不明である旨を指摘したところ、本件訂正により当該記載は削除されたので、当該理由は解消した。 (4)先の訂正請求書によって訂正された請求項4、8について、請求項4に記載の「前記転がり軸受に異常の予兆があると診断された場合に、軸受在庫の確認を促す」における「軸受在庫の確認を促す」とは、具体的に何を意味しているのか不明である旨を指摘したところ、本件訂正により当該記載は削除されたので、当該理由は解消した。 (5)以上のとおり、本件訂正により、当審合議体が取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由は全て解消した。 2 特許異議申立書の取消理由1について (1)申立人の主張 申立人は、「本件特許発明1,2,5,6には、温度を検出して、温度の検出結果に基づいて転がり軸受の異常及び異常予兆を診断することが記載されていないから、本件特許発明1,2,5,6では、転がり軸受の診断結果が天候等の外乱要因に影響を受けて、当該診断結果の信頼性が低く、本件特許明細書の段落0005~0007に記載された上記課題を解決することができない。そのため、本件特許発明1,2,5,6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものでない。また、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1,2,5,6により、上記課題を解決できると当業者は認識することはできない。 また、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記課題を解決し得る物または方法として、本件特許発明1,2,5,6を使用できるように記載されていない。」(特許異議申立書第15~16頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 本件特許明細書には、「【0031】・・・さらに、温度については、環境に左右され易いため、場合によっては、温度センサ40で検出した転がり軸受20の温度を軸受以外から検出される温度と比較することで、監視条件から除外することもできる。」と記載されていることを踏まえると、温度を検出して、温度の検出結果に基づいて転がり軸受の異常及び異常予兆を診断することが、本件特許明細書の段落0005~0007に記載された上記課題を解決するための必須構成であるとはいえない。 よって、本件発明4、8から、「転がり軸受の温度」に関する構成を除いた本件発明2、6であっても、発明の詳細な説明に記載したものといえるし、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2、6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるから、上記主張は採用できない。 3 特許異議申立書の取消理由5について (1)申立人の主張 申立人は、「本件特許発明1~8に、「異常」と「異常予兆」が記載されているが、本件特許明細書には、「異常」の定義及び「異常予兆」の定義が記載されていないから、本件特許発明1~8の「異常」及び「異常予兆」の定義、並びに、「異常」と「異常予兆」との違い及び区別が不明である。」(特許異議申立書第38頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 本件訂正により、本件発明2、6は、第一工程~第三工程を含む又は実行することが特定されたことで、また、本件発明4、8は、第一工程~第四工程を含む又は実行することが特定されたことで、転がり軸受の「異常」と「異常予兆」とを一義的に診断できることから、「異常」と「異常予兆」との違いを明確に区別できる。 よって、本件発明2、4、6、8は、明確であるといえるから、上記主張は採用できない。 4 特許異議申立書の取消理由6について (1)申立人の主張 申立人は、「本件特許発明1~8には、転がり軸受の回転速度の範囲等が規定されていない。そうすると、上記技術常識に照らして、単に振動加速度、特徴周波数出力及び温度をそれぞれ診断閾値と比較したにすぎない本件特許発明1~8では、転がり軸受が低速回転する場合等に、軸受の転がり軸受の異常を正確に監視することができず、「運転中における軸受状態の監視結果の信頼性を向上することができる軸受状態監視方法及び軸受状態監視システムを提供する」(本件特許明細書の段落0007)という課題を解決することができない。 したがって、本件特許発明1~8は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。」(特許異議申立書第39頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 発明の詳細な説明には、「【発明の効果】【0009】本発明の軸受状態監視方法及び軸受状態監視システムによれば、軸受の加速度による軸受診断に加え、軸受の損傷に起因する特徴周波数のレベル判定を加味することで、軸受状態監視結果の信頼性を向上させることができる。」と記載されている。すると、ここでの信頼性の向上は、加速度単独での診断を基準とした場合のものであるから、加速度及び特徴周波数の診断工程を併せもつ本件発明2、4、6、8は、転がり軸受が、たとえ低速回転する場合であったとしても、加速度単独の診断と比べて、信頼性が向上していることは明らかであるといえる。 そして、本件訂正により、本件発明2、6は、転がり軸受の特徴周波数出力及び加速度をこの順序で判定することを具現化した第一工程~第三工程を含む又は実行することが特定されたことで、また、本件発明4、8は、転がり軸受の特徴周波数出力、加速度、温度をこの順序で判定することを具現化した第一工程~第四工程を含む又は実行することが特定されたことで、本件発明2、4、6、8は、発明の詳細な説明の記載(例えば、【0022】-【0031】、図2)に裏付けられたものとなり、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たすものである。 よって、本件発明2、4、6、8は、【0007】に記載の課題を解決した発明であるから、上記主張は採用できない。 5 申立人意見書の取消理由7について (1)申立人の主張 「ア 令和7年1月15日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)後の請求項2,6では、第三工程が、第一工程および第二工程で判断が示されていないものに対してのみ(すなわち、加速度及び特徴周波数出力がともに閾値超の場合のみ)診断するものである点が特定されておりません。 そのため、本件訂正後の請求項2,6の第三工程は、[1](当審注:マル囲み数字の代用、以下同様。)特徴周波数出力が特徴周波数出力診断閾値以下、かつ、第二工程において加速度が加速度診断閾値より大きい場合に、転がり軸受が異常であると診断するものと、[2]特徴周波数出力が特徴周波数出力診断閾値より大きく、かつ、第ニエ程において加速度が加速度診断閾値より大きい場合に、転がり軸受が異常であると診断するものとの両方が含まれます。 このように、本件訂正後の請求項2,6では、第三工程が上記[2]の場合であることが特定されておらず、本件訂正後の請求項2,6は不明確です。・・・ イ 同様に、本件訂正後の請求項4,8では、第三工程が、第一工程および第二工程で判断が示されていないものに対してのみ診断するものである点、並びに、第四工程が、第一工程から第三工程で判断が示されていないものに対してのみ診断するものである点が特定されておりません。 そのため、本件訂正後の請求項4,8は、不明確です。」(申立人意見書第2頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 本件発明2、6の「第三工程」は、『「前記第一工程において前記特徴周波数出力が前記特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、前記加速度が予め設定された加速度診断閾値以下である場合に、前記転がり軸受に異常の予兆があると診断する」「第二工程において前記加速度が前記加速度診断閾値より大きい場合に、」』「前記転がり軸受が異常であると診断する」工程である。 すると、本件発明2、6の「第三工程」は、『特徴周波数出力が特徴周波数出力診断閾値より大きく、且つ、加速度が加速度診断閾値より大きい場合に、』「前記転がり軸受が異常であると診断する」工程であるといえる。また、この解釈は、明細書及び図面の記載(例えば、【0022】-【0031】、図2)にも裏付けられる。 このように、本件発明2、6の第一工程~第三工程は、この順に直列の監視手順の関係にあるし、本件発明4、8の第一工程~第四工程は、この順に直列の監視手順の関係にある。 よって、本件発明2、4、6、8は、明確であるといえるから、上記主張は採用できない。 6 申立人意見書の取消理由8について (1)申立人の主張 「ア 本件訂正後の請求項2,6に係る発明は、以下の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしておりません。 第一に、本件訂正後の請求項2,6に係る発明では、加速度診断閾値を軸受の異常の予兆と軸受の異常との境界に設定する必要があります。 しかしながら、一般的に加速度の出力値を用いた異常診断は、特徴周波数出力を用いた精密診断と異なり、単純に振動値の大小を確認する簡易診断として行われるもので、通常同一形式の軸受を同一の運転条件で測定しても個体差があり、個体毎に閾値に差が生じるため、閾値は全く同じ値となる可能性は極めて低く、再現性が高くありません。また、このような閾値設定は、事前に設定した閾値(経験則や統計値から導いたものを含む)では困難であり、診断対象となる個体から得られる測定信号(加速度)の特徴に関連付けた閾値を設定しなければ到底不可能です。 例えば、・・・ このように加速度の閾値を、軸受の異常の予兆と軸受の異常との境界に設定することは困難であり、予め設定された閾値が軸受の異常の予兆の範囲に含まれることや軸受の異常の範囲に含まれることは、高い確率で起こり得ます。 そのため、加速度診断閾値を軸受の異常の予兆と軸受の異常との境界にピンポイントに設定することはできず、どのようにすれば軸受の異常の予兆と軸受の異常とを区別する判断基準となる加速度診断閾値を設定できるのか不明です。したがいまして、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正後の請求項2,6に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではありません。 第二に、本件訂正後の請求項2,6に係る発明では、特徴周波数出力を軸受の異常の予兆と軸受の正常との境界に設定する必要があります。 しかしながら、一般的に特徴周波数出力を用いた異常診断は、精密診断ではありますが、加速度と同様に、通常同一形式の軸受を同一の運転条件で測定しても個体差があり、個体毎に閾値に差が生じるため、閾値は全く同じ値となる可能性は低く、再現性が高くありません。また、このような閾値設定は、事前に設定した閾値(経験則や統計値から導いたものを含む)では困難であり、診断対象となる個体から得られる測定信号(特徴周波数出力)の特徴に関連付けた閾値を設定しなければ到底不可能です。 例えば、・・・ このように、軸受の異常の予兆のような小さな変化は、周波数解析でも正確に特定できないケースがあります。そのため、特徴周波数出力を軸受の異常の予兆と軸受の正常との境界にピンポイントに設定することはできず、どのようにすれば異常の予兆と軸受の正常との境界を特定でき、どのようにすれば軸受の異常の予兆と軸受の正常とを区別する判断基準となる特徴周波数出力を設定できるのか不明です。したがいまして、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正後の請求項2,6に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではありません。 以上のとおり、訂正後の請求項2,6に係る発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしておらず、同法第113条第4号に基づいて取り消されるべきです。 イ 同様に、本件訂正後の請求項4,8でも、加速度診断閾値を軸受の異常の予兆と軸受の異常との境界にピンポイントに設定することはできず、どのようにすれば軸受の異常の予兆と軸受の異常とを区別する判断基準となる加速度診断閾値を設定できるのか不明であるとともに、特徴周波数出力を軸受の異常の予兆と軸受の正常との境界にピンポイントに設定することはできず、どのようにすれば異常の予兆と軸受の正常との境界を特定でき、どのようにすれば軸受の異常の予兆と軸受の正常とを区別する判断基準となる特徴周波数出力を設定できるのか不明です。 したがいまして、訂正後の請求項4,8に係る発明も、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしておらず、同法第113条第4号に基づいて取り消されるべきです。」(申立人意見書第2~5頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 加速度の出力値や特徴周波数出力を、閾値と比較して軸受の異常診断に用いることができることは、技術常識であって、本件発明2、4、6、8は、加速度に加え特徴周波数も用いることを特徴とする発明であり、当該発明を実施する際の具体的な閾値の設定については、軸受の諸元、想定される運転状況、当該発明のシステムや方法を実施する者が求める診断精度等に応じて、これらの具体的条件の下に通常の実験等を行って設定することができるものであり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や、特段複雑高度な実験等をする必要があるものとはいえない。 よって、発明の詳細な説明の記載は、技術常識に鑑み当業者が本件発明2、4、6、8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるから、上記主張は採用できない。 7 申立人意見書の取消理由9について (1)申立人の主張 「以上より、本件訂正後の請求項2,4,6,8は、特許法第29条第2項及び同法第113条第2号の規定により取り消されるべきです。」(申立人意見書第5~9頁)と主張する。 (2)当審合議体の見解 甲1~甲33による進歩性欠如については、「第7 進歩性についての検討」において説示したとおりであるから、上記主張は採用できない。 第9 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項2、4、6、8に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に本件請求項2、4、6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1、3、5、7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1、3、5、7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701220

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