特許異議申立
2023-701030
複層塗膜及び複層塗膜の形成方法
- 審判番号
- 2023-701030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-521152
- 登録番号
- 7248670
- 請求日
- 2023年09月27日
- 審決日
- 2024年05月14日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】関西ペイント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【異議申立人代理人】江藤 聡明
- 【異議申立人代理人】倉脇 明子
- 【異議申立人代理人】山口 修
- 【異議申立人代理人】稲垣 謙司
- 【異議申立人代理人】長山 弘典
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 田口 傑
- 分類
- P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7248670号発明「複層塗膜及び複層塗膜の形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7248670号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7248670号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)5月10日(優先権主張 平成30年5月23日)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月20日にその特許権の設定登録がされ、同年3月29日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年9月27日に特許異議申立人ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(以下、「申立人」という。)により、その特許の全請求項に対して特許異議の申立てがなされ、以降次のとおり手続きが行われた。
令和 5年12月13日付け:申立人に対する審尋
同日付け:特許権者に対する審尋
令和 6年 1月18日 :特許権者による回答書の提出
令和 6年 1月24日 :申立人による回答書の提出
同日 :検証申出書の提出
同日 :検証物指示説明書の提出
令和 6年 3月15日 :第1回口頭審尋
同日 :第1回証拠調べ(検甲第1~第3号証の検証)
第2 本件発明
特許第7248670号の請求項1~10の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、
メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有し、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが2~20であり、かつYが50~250である複層塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)
【請求項2】
Xが4~15であり、かつYが100~200である請求項1に記載の複層塗膜。
【請求項3】
Xが9~12であり、かつYが150~180である請求項1に記載の複層塗膜。
【請求項4】
前記透明着色塗膜は、樹脂成分、及び前記透明着色塗膜の樹脂固形分100質量部を基準として3~10質量部の青色顔料を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の複層塗膜。
【請求項5】
透明着色塗膜の上にクリヤー塗膜をさらに備える請求項1~4のいずれか一項に記載の複層塗膜。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の複層塗膜を備えた対象物。
【請求項7】
下記の工程(1)~(3):
工程(1)被塗物上にメタリックベース塗料を塗装して、メタリックベース塗膜を形成する工程であって、メタリックベース塗料が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有する工程、
工程(2)前記メタリックベース塗膜の上に、青色顔料を含有する透明着色塗料を塗装して、青色顔料を含有する透明着色塗膜を形成する工程、及び
工程(3)前記工程(1)で形成された前記メタリックベース塗膜及び前記工程(2)で形成された前記青色顔料を含有する透明着色塗膜を別々に又は同時に加熱することにより、硬化させる工程
を含む複層塗膜の形成方法であって、前記複層塗膜は、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが2~20であり、かつYが50~250である、複層塗膜の形成方法。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)
【請求項8】
前記メタリックベース塗料は、水、メタリックベース塗料100質量部を基準として固形分で0.2~6質量部のアルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有する請求項7に記載の複層塗膜の形成方法。
【請求項9】
青色顔料のヘイズ値が0~50である請求項7又は8に記載の複層塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記メタリックベース塗膜の硬化後の膜厚が0.02~5μmである請求項7~9のいずれか一項に記載の複層塗膜の形成方法。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証及び甲第2号証(検甲第1号証)を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1、2、5~7に係る特許は、甲第1号証及び甲第2号証に係る検証物(検甲第1号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第3号証及び甲第4号証(検甲第2号証)を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1、5~7に係る特許は、甲第3号証及び甲第4号証に係る検証物(検甲第2号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由1-3(甲第5号証及び甲第6号証(検甲第3号証)を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1、4~7に係る特許は、甲第5号証及び甲第6号証に係る検証物(検甲第3号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証及び甲第2号証(検甲第1号証)を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~7、9、10に係る特許は、甲第1号証及び甲第2号証に係る検証物(検甲第1号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由2-2(甲第3号証及び甲第4号証(検甲第2号証)を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1、4~10に係る特許は、甲第3号証及び甲第4号証に係る検証物(検甲第2号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由2-3(甲第5号証及び甲第6号証(検甲第3号証)を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1、4~10に係る特許は、甲第5号証及び甲第6号証に係る検証物(検甲第3号証)から把握される本件特許出願前に公然実施された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1、2、4~10に係る発明は、以下の(1)及び(2)の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないため、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)請求項1のX及びYの範囲は、人の知覚として捉えられるはずの「深み感に優れ、かつハイライトにおける明度及び彩度が高い」複層塗膜を得られるための要件として適当であるかどうかは不明である。したがって、その数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に発明が記載されていない。
(2)【0029】~【0035】には、X及びYの大小による、深み感、およびハイライトにおける明度および彩度への影響の傾向が文章として記載されているものの、数値範囲の当否が不明であり、具体的な範囲を推認するに足りるほどの実施例や比較例を示されていない。したがって、その数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に発明が記載されていない。
8 証拠方法
甲第1号証:「SUZUKI PARTS CATALOGUE」、1991年6月、SUZUKI MOTOR CORPORATION
甲第2号証:色別番号「OZK」の承認板、日本油脂株式会社、1990年7月18日(承認日)
甲第3号証:「2003 FULL LINE UP CATALOGUE」、2002年10月、SUZUKI MOTOR CORPORATION
甲第4号証:色別番号「YC2」の承認板、日本油脂株式会社、1999年5月12日(承認日)
甲第5号証:「2007 FULL LINE UP CATALOGUE」、2006年9月、SUZUKI MOTOR CORPORATION
甲第6号証:色別番号「YKY」の承認板、BASFコーティングスジャパン株式会社、2005年7月27日(承認日)
甲第7号証:酒井直也、「実験成績証明書1」、BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部 リージョナル カラーアンドペースト テクノロジー、令和5年3月22日
甲第8号証:特開2005-169385号公報
甲第9号証:塗色番号「YC2」成分表、日本油脂株式会社
甲第10号証:色別番号「YKY」塗料成分表、BASFコーティングスジャパン株式会社、2007年2月16日
甲第11号証:長沼桂、最新塗料講座(第III講)塗料用添加剤、色材協会誌、社団法人色材協会、平成22年10月20日、83巻、第10号、p.430-439
甲第12号証:酒井直也、「実験成績証明書2」、BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部 リージョナル カラーアンドペースト テクノロジー、令和5年3月22日
甲第13号証:受領書、松崎化成株式会社 浜松支店、2017年9月1日、同年9月12日、同年8月10日
甲第14号証:“「松崎化成株式会社」の取扱商品、主要取引メーカー”「松崎化成株式会社」のホームページ、[2023年7月25日検索]、インターネット<URL:https://www.matsuzaki-kasei.jp/product>
甲第15号証:特開2013-169507号公報
甲第16号証:特開2016-83631号公報
甲第17号証:末次英樹“宣誓書” BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部 自動車塗料部 テクニカルセールス Tier&MOT マネージャー,テクノロジープロジェクト、2023年9月6日
甲第18号証:特開2003-35598号公報
甲第19号証:石川雅彦“宣誓書”BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部 自動車塗料部 テクニカルセールス Tier&MOT、2024年1月17日
検甲第1号証:色別番号「OZK」の承認板(甲第2号証)の現物、日本油脂株式会社、1990年7月18日(承認日)
検甲第2号証:色別番号「YC2」の承認板(甲第4号証)の現物、日本油脂株式会社、1999年5月12日(承認日)
検甲第3号証:色別番号「YKY」の承認板(甲第6号証)の現物、BASFコーティングスジャパン株式会社、2005年7月27日(承認日)
(以下、甲第1号証~甲第19号証を、それぞれ「甲1」等と、検甲第1号証~甲第3号証を、それぞれ「検甲1」等という。)
第4 甲号証の記載について
1 甲1について
(1)甲1には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000001.jpg]
」
「
[図:0001411346000002.jpg]
」
「
[図:0001411346000003.jpg]
」
「
[図:0001411346000004.jpg]
」
「
[図:0001411346000005.jpg]
」
(2)以上より甲1には、以下の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されていると認める。
「SUZUKI MOTOR CORPORATIONの「SUZUKI PARTS CATALOGUE」(1991年6月出版)記載の「GS500E」のTANK ASSYに「OZK」と称される塗料が使用されている。」
2 甲2及び検甲1について
(1)甲2には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000006.jpg]
」
「
[図:0001411346000007.jpg]
」
(2)甲2に係る検証物である検甲1の検証結果より以下の点が明らかである。
ア 検甲1の基板が金属板基板であること
イ 検甲1の基板の表面に塗膜が形成されていること
ウ 検甲1の基板に形成されている塗膜は性状の異なる3つの部分より構成されること
エ 検甲1である基板の「色別番号」「色名称」との記載がある面を表側とし、当該記載の文字の上下左右と一致するように、上下左右を定めた場合、申立人によれば、「3層積層部分」は、基板の上端から75mmの範囲、「2層積層部分」は、基板の上端から75mm~138mmの範囲、「単一塗膜部分」は、基板の上端から138mm~200mmの範囲であるところ、これらの各部分の厚さ方向寸法がそれぞれ0.869mm、0.851mm、0.826mmとなっており、またこれらの各範囲の境界が視認できる程度に、各範囲の部分は互いに差異が存在するものの、「単一塗膜部分」「2層積層部分」及び「3層積層部分」であるとは把握することはできないこと。
オ 検甲1の表面の下部に貼付した紙には「色別番号 OZK」、「色名称 ペガサスブルー」と記載されていること
カ 検甲1の裏面に貼付した紙には「承認板用色見本」、その下に「日本油脂」と記載され、この記載の上から、「制式ニ承認スル」、「’90.7.18」、「スズキ自動車工業KKデザイン」という赤い押印がされていること。
3 甲3について
(1)甲3には、以下の記載がある。
「(表紙)
[図:0001411346000008.jpg]
」
「(第1頁)
[図:0001411346000009.jpg]
」
「(裏表紙)
[図:0001411346000010.jpg]
」
(2)以上より甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認める。
「SUZUKIの「2003 FULL LINE UP CATALOGUE」(2003年カタログ)記載の「SV1000S」で示される型式の二輪車のうち、「YC2:Candy Grand Blue」と表記された二輪車。」
4 甲4について
(1)甲4には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000011.jpg]
」
「
[図:0001411346000012.jpg]
」
(2)甲4に係る検証物である検甲2の検証結果より
ア 検甲2の基板が金属板基板であること
イ 検甲2の基板の表面に塗膜が形成されていること
ウ 検甲2の基板に形成されている塗膜は性状の異なる3つの部分より構成されること
エ 検甲2である基板の「色別番号」「色名称」との記載がある面を表側とし、当該記載の文字の上下左右と一致するように、上下左右を定めた場合、申立人によれば、「単一塗膜部分」は、基板の上端から30mmの範囲、「2層積層部分」は、基板の上端から30mm~105mmの範囲、「3層積層部分」は、基板の上端から105mm~200mmの範囲であるところ、これらの各部分の厚さ方向寸法がそれぞれ0.810mm、0.836mm、0.868mmとなっており、またこれらの各範囲の境界が視認できる程度に、各範囲の部分は互いに差異が存在するものの、「単一塗膜部分」「2層積層部分」及び「3層積層部分」であるとは把握することはできないこと。
オ 検甲2の表面の下部に貼付した紙には「色別番号 YC2」、「色名称 CDYグランブルー」と記載されていること
カ 検甲2号の裏面に貼付した紙には「承認板用色見本」、その下に「日本油脂」と記載され、この記載の上から、「制式ニ承認スル」、「’99.5.12」、「スズキ株式会社デザイン」という赤い押印がされていること。
5 甲5について
(1)甲5には、以下の記載がある。
「(表紙)
[図:0001411346000013.jpg]
」
「(第5頁)
[図:0001411346000014.jpg]
」
「(裏表紙)
[図:0001411346000015.jpg]
」
(2)以上より甲5には、以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認める。
「SUZUKIの「2007 FULL LINE UP CATALOGUE」(2007年カタログ)記載の「Hayabusa 1300」で示される型式の二輪車のうち、「Pearl Vigor Blue(YKY)」と表記された二輪車。」
6 甲6について
(1)甲6には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000016.jpg]
」
「
[図:0001411346000017.jpg]
」
(2)甲6に係る検証物である検甲3の検証結果より
ア 検甲3の基板が金属板基板であること
イ 検甲3の基板の表面に塗膜が形成されていること
ウ 検甲3の基板に形成されている塗膜は性状の異なる3つの部分より構成されること
エ 検甲3である基板の「色別番号」「色名称」との記載がある面を表側とし、当該記載の文字の上下左右と一致するように、上下左右を定めた場合、申立人によれば、「単一塗膜部分」は、基板の上端から35mmの範囲、「2層積層部分」は、基板の上端から35mm~101mmの範囲、「3層積層部分」は、基板の上端から101mm~200mmの範囲であるところ、これらの各部分の厚さ方向寸法が0.821mm、0.829mm、0.913mmとなっており、またこれらの各範囲の境界が視認できる程度に、各範囲の部分は互いに差異が存在するものの、「単一塗膜部分」「2層積層部分」及び「3層積層部分」であるとは把握することはできないこと。
オ 検甲3の表面の下部に貼付した紙には「色別番号 YKY」、「色名称 PRL.VIGOR BLUE(PRL.ビガーブルー)」と記載されていること
カ 検甲3号の裏面に貼付した紙には「承認板用色見本」、その下に「BASFコーティングスジャパン(株)」と記載され、この記載の上から、「RECEIVED」、「2005 JUL 27」、「SUZUKI」、「MOTORCYCLE STYLING DESIGN」という赤い押印がされていること。
7 甲7について
甲7には、以下の記載がある。
「5.実験内容
本実験は、光学顕微鏡Axio Imager.A2m(商品名、カールツァイス株式会社製)でアンダーコート塗膜を観察することにより行った。
スズキ株式会社二輪車用承認板(色別番号OZK、YC2、およびYKY)は甲第2号証、甲第4号証および甲第6号証に示す通り、○1(当審注:「○1」は丸囲いした数字の1を示す。以下同様。)下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分、○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分、○3下塗塗膜、上塗塗膜、オーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分の3つの部分に分かれている。光学顕微鏡観察は○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分、および○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分の中央付近で行った。
6.実験結果
○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分の観察
甲第2号証(色別番号OZK)の○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分の光学顕微鏡写真を図1に、また、甲第4号証(色別番号YC2)の○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分の光学顕微鏡写真を図3に、さらに甲第6号証(色別番号YKY)の○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分の光学顕微鏡写真を図5に示した。
さらに、比較として、標準的なアルミニウムフレーク顔料含有塗膜(バインダー樹脂/青顔料/アルミニウムフレーク顔料=85.0/7.5/7.5、質量比)の光学顕微鏡写真を図7に示した。」(第1頁第20行~第35行)
8 甲8について
甲8には、以下の記載がある。
「【請求項1】
被塗面上に、光輝性顔料を含有するメタリックベース塗料(A)を塗装し、次いでカラークリヤー塗料(B)を塗装する方法であって、該メタリックベース塗料(A)が、IV値が230以上で、ミクロ光輝感測定器による粒子感の測定値(HG値)が60以下となる塗膜を形成するものであることを特徴とする塗装方法。」
「【0007】
本発明の目的は、緻密な粒子感及び金属感を有し、さらに高彩度で高深み感を有するメタリック塗色を有する複層塗膜を形成でき、自動車外板などの上塗り塗装として好適な、塗装方法を提供することにある。」
「【0019】
メタリックベース塗料(A)には、さらに必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調製剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。」
9 甲9について
甲9には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000018.jpg]
」
「
[図:0001411346000019.jpg]
」
10 甲10について
甲10には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000020.jpg]
」
「
[図:0001411346000021.jpg]
」
11 甲11について
甲11には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000022.jpg]
」
「たとえば、チクソトロピック剤は塗料にチクソトロピーな流動性を付与することで顔料の沈降を防止したり、厚塗りしたときのたれを防止したり、また増粘性付与剤としての機能をも有する。」(第431頁右欄第9行~第12行)
「4.粘性を抑制する揺変剤
塗料に要求される擬塑性流動あるいはチクソトロピーな流動性を付与する添加剤は、揺変剤あるいはチクソトロピック剤と呼ばれる。」(第431頁右欄第22行~第25行)
「6.表面・界面を制御する表面調整剤
塗装工程における泡やワキを防止したりオイルミストによるハジキを防止したり、塗膜の平滑性を向上する添加剤に表面調整剤があり、レベリング剤、消泡剤、オイルハジキ防止剤、ワキ防止剤等と呼ばれる添加剤がある。」(第437頁左欄第7行~第11行)
12 甲12について
(1)甲12には、以下の記載がある。
「5-3.実験内容
スズキ株式会社二輪車用承認板(色別番号OZK、YC2、およびYKY)は甲第2号証、甲第4号証および甲第6号証に示す通り、○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分、○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分、○3下塗塗膜、上塗塗膜、オーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分の3つの部分に分かれている。測定は○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分(クリヤー塗膜なし、本件特許の請求項1の複層塗膜に対応)、○3下塗塗膜、上塗塗膜、オーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分(クリヤー塗膜あり、本件特許の請求項5の複層塗膜に対応)の、それぞれの中央付近で行った。
各測定は、本件特許の段落[0275]に記載のとおりに行った。
すなわち、彩度C*の測定は、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対してそれぞれ15度、25度、及び45度で受光した分光反射率からL*C*h表色系における彩度C*15、C*25、及びC*45を測定した。
明度L*の測定は、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対してそれぞれ15度、25度、及び45度で受光した分光反射率からL*a*b*表色系における明度L*15、L*25、及びL*45を測定した。
また、色相角度hは、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときの分光反射率に基づいて計算されたL*C*h表色系色度図における色相角度hを用いた。
また、XとYの値は、上記により得られた測定値を用い、本件特許の段落[0276]に記載の式に従って求めた。
段落[0276]に記載の式:
X=C*45/L*45
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2
6.実験結果
○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分(クリヤー塗膜なし、本件特許の請求項1の複層塗膜に対応)の測定および計算結果を表1に示す。また、○3下塗塗膜、上塗塗膜、オーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分(クリヤー塗膜あり、本件特許の請求項5の複層塗膜に対応)の測定および計算結果を表2に示す。」(第1頁第25行~第2頁第15行)
「
[図:0001411346000023.jpg]
」
「
[図:0001411346000024.jpg]
」
(2)以上より甲12には、以下の事項(以下「甲12記載事項」という。)が記載されていると認める。
「hはL*C*h表色系色度図の色相角度の値であり、
L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、
X=C*45/L*45、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)である場合において、
下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分のOZKの基板のh、X、Yの値は、297.5、3.9、191.4であり、YC2基板のh、X、Yの値は、275.6、3.2、164.4であり、YKYの基板のh、X、Yの値は、280.7、2.7、177.8であり、
下塗塗膜、上塗塗膜、オーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分のOZKの基板のh、X、Yの値は、299.3、4.3、192.9であり、YC2基板のh、X、Yの値は、275.2、3.3、161.4であり、YKYの基板のh、X、Yの値は、280.3、2.7、176.9である。」
13 甲13について
(1)甲13には、以下の記載がある。
「
[図:0001411346000025.jpg]
」
「
[図:0001411346000026.jpg]
」
「
[図:0001411346000027.jpg]
」
(2)以上より甲13には、以下の事項(以下「甲13記載事項」という。)が記載されていると認める。
「商品名/LotNo.「B-5100 YC2 CDグランブルー 上塗 50989167」で示される製品が、「容量16kg」、「個数1缶」、「数量1缶」、計上日2017年9月1日に松崎化成株式会社からスズキ株式会社に納品されている。
商品名/LotNo.「B-5100 YC2 CDグランブルー 下塗 51061088」で示される製品が、「容量16kg」、「個数1缶」、「数量1缶」、計上日2017年9月12日に松崎化成株式会社からスズキ株式会社に納品されている。
「商品名/LotNo.「B-5100 YKY ビガーブルー 下塗り 51930341」で示される製品が、「容量16kg」、「個数1缶」、「数量1缶」、計上日2017年8月10日に松崎化成株式会社からスズキ株式会社に納品されている。
商品名/LotNo.「B-5100 YKY ビガーブルー 上塗 51930288」で示される製品が、「容量16kg」、「個数1缶」、「数量1缶」、計上日2017年8月10日に松崎化成株式会社からスズキ株式会社に納品されている。
14 甲14について
甲14は、松崎化成株式会社のインターネット上のホームページの記載をプリントアウトしたもので、
「取り扱い商品」として、
「塗料開発から生産設備、副資材まで対応。スムーズな生産を支えるあらゆるサポートを。」
と記載されている。
また、「主要取引メーカー」の「塗料」の欄に、
「BASFジャパン株式会社」
と記載されている。
15 甲15について
甲15には、以下の記載がある。
「【請求項1】
被塗物に、鱗片状アルミニウム顔料及び金属酸化物顔料を含む第1ベース塗料を塗装して第1ベース塗膜を形成し、第1ベース塗膜上に着色顔料を含む第2ベース塗料を塗装して第2ベース塗膜を形成する塗膜形成方法であって、第1ベース塗料による塗膜に対して45度の角度から光を照射して正反射光に対して25度の角度で受光した場合の明度L*25が70~100範囲内であって且つ45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度で受光した場合のL*45を、45度の角度から照射した光を110度の角度で受光した場合のL*110で除した数値L*45/L*110が1.0~1.8の範囲内である塗膜形成方法。」
「【0029】
本発明の塗膜形成方法においては、上記第1ベース塗料を塗装して得られた塗膜上に、第2ベース塗料を塗装する。本発明の第2ベース塗料は、複層塗膜のハイライトにおいて有彩色を発現させることを目的として、着色顔料を含有する。本明細書において、着色顔料としては、具体的には、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料;カーボンブラック顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
第2ベース塗料における着色顔料としては、複層塗膜のハイライトにおける彩度を高くする点から、透明性が高く、一次粒子径が小さい着色顔料を使用することが好ましい。該着色顔料の一次粒子径としては、10~250nmのものが透明性、着色力の点から好ましく、特に好ましくは、一次粒子径が20~200nmのものである。本発明における透明性顔料としては、着色材として該着色顔料のみを、樹脂固形分100質量部に対して10質量部含む塗料を膜厚100μmとなるように塗装した塗膜のヘイズ値が0.1~10.0の範囲内となるものを使用することが、複層塗膜の彩度の点から好ましい。より好ましくは0.1~7.5の範囲内、特に好ましくは0.1~5の範囲内である。
【0030】
本発明において、上記ヘイズ値は、平滑なPTFE板に塗装し、硬化、剥離した塗膜を濁度計COH-300A(商品名、日本電色工業社製)にて測定した拡散光線透過率(DF)及び平行光線透過率(PT)から、次式によって計算された数値として定義するものとする。式:ヘイズ値=100*DF/(DF+PT)
本発明の第2ベース塗料における着色顔料の配合量は、複層塗膜の彩度や、ハイライトとシェードの明度差の点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01~5質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.02~4質量部、特に好ましくは0.03~3質量部の範囲内であることが好ましい。」
16 甲16について
甲16には、以下の記載がある。
「【請求項1】
基材上に第1カラーベース塗料、第2カラーベース塗料、及びクリヤー塗料をウエットオンウエットで順次塗装して複層塗膜を形成する方法であって、
第1カラーベース塗料が、鱗片状光輝性顔料を含み、厚さ10μmの硬化塗膜の積分球型の分光測色計(正反射光を除くモード)にて測定した反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*値が60~80であり、
第2カラーベース塗料が、着色顔料を含み、厚さ10μmの硬化塗膜の波長400~700nmにおける平均光線透過率が10~30%の範囲であり、且つ
複層塗膜の45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*C*h表色系における彩度C*が50以上で且つC*/L*が2.2以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。」
「【0046】
第1カラーベース塗料及び第2カラーベース塗料は、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤を含有することができる。」
「【0069】
光輝性顔料分散液の製造
製造例4
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト(商品名「GX-180A」、旭化成メタルズ株式会社製、金属含有量74%)20部、2-エチル-1-ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2-(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した。次いで、スチレン25部、n-ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」大阪有機化学工業株式会社製)20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間かけて滴下した。その後、1時間攪拌しながら熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。リン酸基含有樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した。その後、さらに1時間攪拌しながら熟成した後、イソプロパノール59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。」
「【0077】
第1カラーベース塗料の製造
製造例12
撹拌混合容器に、製造例1で得たアクリル樹脂エマルション(a)65部(固形分19.5部)、製造例3で得たポリエステル樹脂溶液(b-2)57部(固形分40部)、製造例4で得た光輝性顔料分散液63部(樹脂固形分4部)、製造例2で得たアクリル樹脂溶液(b-1)12部(固形分6.6部)、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分80%)37.5部(固形分30部)を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE-60」ロームアンドハース社製)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第1カラーベース塗料(X-1)を得た。この塗料による厚さ10μmの硬化塗膜の明度L*値は70であった。」
17 甲17について
甲17は、BASFジャパン株式会社の末次英樹の宣誓書であって、
「「成分表」(甲第9号証)に記載された、塗色番号YC2、塗料樹脂名ベルコートNo.5100の上塗塗料および下塗塗料は1995年から2021年に日本油脂株式会社(2005年にBASFコーティングスジャパン株式会社と、さらに、2012年にBASFジャパン株式会社に社名変更)が製造し、同社がスズキ株式会社に販売していたことに相違ありません。
さらに、「塗料成分表」(甲第10号証)に記載された、色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー、色別番号YKYの上塗塗料および下塗塗料は2005年から2018年に、BASFコーティングスジャパン株式会社(2012年にBASFジャパン株式会社に社名変更)が製造し、同社がスズキ株式会社に販売していたことに相違ありません。
私は、私の知識と信念のおよぶ限りにおいて、上記内容が真実かつ正確であることを宣言します。」
と記載されている。
18 甲18について
甲18には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】製品の商品価値はその機能のみならずデザインにも依存する。色はデザインの大きな一要素であり、微妙な色合いの違いが消費者の購買意志決定に影響を与えることもある。そのため、製品に塗装処理を施す際に、カラーデザイナーの意図した塗色が実現されるように、塗料製造工程、塗装工程等を管理することは重要である。」
「【0004】一方、例えば自動車製造などでは、複数の部品が互いに異なる工場等で製造され、それらを一箇所に集めて組み立てたり、設計、製造、出荷検査が別々の場所で行われ得る。この場合には、それら複数の部品間、工程間での色合わせの精度も極めて重要となる。従来は、複数の場所にて塗装される部品間の色合わせには、塗色承認板が用いられている。承認板はカラーデザイナーの意図した塗色の色見本であり、これが各サイトに配布される。各サイトでは、承認板の塗色を基準として塗料が調合され、また各種色差計、色彩計、分光光度計等を用いて、塗装された部品と承認板との塗色の対比が行われる。」
19 甲19について
甲19は、BASFジャパン株式会社の石川雅彦の宣誓書であって、
「1.二輪車製造業者におきまして、当社が提案した塗膜構成と色の採用が決定しますと、当社にてその塗膜構成と色を示す色見本(承認板の原版)を作製し、二輪車製造業者のデザイン部門へ提出します。
2.その後、二輪車製造業者のデザイン部門において提出された色見本(承認板の原版)の検証が行われ、承認が得られると、その色見本(承認板の原版)に承認印が押印され、承認板として関連部署に配布されます。
3.また、塗料製造の受注に関しては、主に当社の受注部門が、代理店を通して、二輪車製造業者の発注部門からの連絡を受けます。この連絡では、承認板に記載されている色別番号により色の指定が行われます。また、指定された塗料が製造された後、当社品質保証部門において、出荷先において承認板と同じ色が再現できるものであることを確認し、塗料が出荷されます。
4.さらにその後は、代理店を通して二輪車製造業者の工場に塗料が納品されます。
5.塗料が納品されると、二輪車製造業者により承認板と同じ塗膜構成と色を有する塗膜が施された製品(二輪車)が製造されます。
6.上記のように製品が製造された後は、製品(二輪車)の色と承認板の色に差がないことを、二輪車製造業者の品質保証部門が確認し、製品が出荷されるものと思われます。
上記1~6の事項は、当職が知る限り真実かつ正確であり、本件の承認板(検甲第2および3号証)につきまして、上記1の手続きが当職の指揮監督下に行われたことに相違ないことを、ここに申し上げます。」
と記載されている。
第5 当審の判断
1.甲号証及び検甲号証から把握される公然実施発明
(1)甲7、甲9、甲10、甲12、甲13、甲17及び甲19の記載の採否について
ア 甲7について
甲7は、私人による実験成績証明書であるが、その内容のうち具体的事実を記載した部分、すなわち各観察対象の光学顕微鏡写真については、私人の実験成績証明書であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。また、他に甲7の各観察対象の光学顕微鏡写真が信頼できないとするに足る証拠が存在するわけでもない。したがって、甲7の各観察対象の光学顕微鏡写真については採用するに足るものと認める。
一方で、甲7の内容のうち、証拠等に基づかずに筆者の意見として記載した部分については、直ちに信頼できるとすることはできない。
また、上記第4の2(2)エ、第4の4(2)エ、及び第4の6(2)エで説示したとおり、基板に形成されている塗膜の3つの部分が「単一塗膜部分」、「2層積層部分」、及び「3層積層部分」であるとすることはできないものである。申立人のいう「単一塗膜部分」、「2層積層部分」、及び「3層積層部分」については、基板における位置で定義することができるから、甲7の「○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分」、「○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分」、及び「○3下塗塗膜、上塗塗膜、及びオーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分」は、甲2(検甲1)についてはそれぞれ「基板の上端から138mm~200mmの範囲」、「基板の上端から75mm~138mmの範囲」、及び「基板の上端から75mmの範囲」、甲4(検甲2)についてはそれぞれ「基板の上端から30mmの範囲」、「基板の上端から30mm~105mmの範囲」、及び「基板の上端から105mm~200mmの範囲」、甲6(検甲3)についてはそれぞれ「基板の上端から35mmの範囲」、「基板の上端から35mm~101mmの範囲」、及び「基板の上端から101mm~200mmの範囲」、と読み替えるものとする。
イ 甲9及び甲10について
甲9及び甲10は、民間企業の内部資料であるが、その内容は一部黒塗りがなされているものの、具体的事実を示したものと認められ、民間企業の内部資料であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。甲9については日付の記載がなされていないが、日付の記載がないからといって直ちに信頼できないとすることもできない。したがって、甲9及び甲10については、その記載の限りにおいて採用するに足るものと認める。
ウ 甲12について
甲12は、私人による実験成績証明書であるが、その内容は具体的事実を詳細に述べたものであり、私人の実験成績証明書であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。また、他に甲12が信頼できないとするに足る証拠が存在するわけでもない。したがって、甲12は、その記載の限りにおいて採用するに足るものと認める。
ただし、上記第4の2(2)エ、第4の4(2)エ、及び第4の6(2)エで説示したとおり、基板に形成されている塗膜の3つの部分が「単一塗膜部分」、「2層積層部分」、及び「3層積層部分」であるとすることはできないものである。申立人のいう「単一塗膜部分」、「2層積層部分」、及び「3層積層部分」については、基板における位置で定義することができるから、甲7の「○1下塗塗膜のみからなる単一塗膜部分」、「○2下塗塗膜と上塗塗膜からなる2層積層部分」、及び「○3下塗塗膜、上塗塗膜、及びオーバーコートクリヤー塗膜からなる3層積層部分」は、甲2(検甲1)についてはそれぞれ「基板の上端から138mm~200mmの範囲」、「基板の上端から75mm~138mmの範囲」、及び「基板の上端から75mmの範囲」、甲4(検甲2)についてはそれぞれ「基板の上端から30mmの範囲」、「基板の上端から30mm~105mmの範囲」、及び「基板の上端から105mm~200mmの範囲」、甲6(検甲3)についてはそれぞれ「基板の上端から35mmの範囲」、「基板の上端から35mm~101mmの範囲」、及び「基板の上端から101mm~200mmの範囲」、と読み替えるものとする。
エ 甲13について
甲13は、民間企業間で取り交わされた受領書であるが、一部黒塗りがなされているものの「受領日」、「取引先名」、「発行元の名称と住所」及び「受領した物品の名称、容量、個数、数量」等の記載があるなど、受領書の体裁を有しており、また、改ざん等を疑う箇所も発見しないことから、その記載内容について直ちに信頼できないとすることはできない。また、他に甲13が信頼できないとするに足る証拠が存在するわけでもない。したがって、甲13については、その記載の限りにおいて採用するに足るものと認める。
オ 甲17及び甲19について
甲17及び甲19は、私人による宣誓書であるが、その内容は具体的内容を詳細に述べたものであり、私人の宣誓書であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。また、他に甲17及び甲19が信頼できないとするに足る証拠が存在するわけでもない。したがって、甲17及び甲19については、その記載の限りにおいて採用するに足るものと認める。
(2)甲1及び甲2に係る検証物(検甲1)から把握される公然実施発明
上記第4の1(2)のSUZUKI MOTOR CORPORATIONの「SUZUKI PARTS CATALOGUE」記載の「GS500E」のTANK ASSYを「OZK」と表記された塗料で塗装した結果としての塗膜を、以下「OZK塗膜」という。
ア 各甲号証より明らかな事項
(ア)上記第4の1(2)の「GS500E」のTANK ASSYが、「SUZUKI MOTOR CORPORATIONの「SUZUKI PARTS CATALOGUE」(1991年6月出版)に記載されていることより、「OZK塗膜」は公然実施されたものである。
(イ)上記第4の18に示す甲18の記載及び、上記第4の19に示す及び甲19の記載より、甲2に係る検証物(検甲1)は「OZK塗膜」の見本が示されているものである。
(ウ)上記第4の2(2)エのとおり、検甲1では、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」は把握することはできない。
(エ)上記第4の7で示される光学顕微鏡写真からも、検甲1が、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」からなることは把握することはできない。図1及び図2で示される光学顕微鏡写真によって、積層の態様は判別することはできない。また、図1及び図2から、並びに図1及び図2と図7の比較から、アルミニウムフレーク顔料含有塗膜であることは判別することはできない。図5及び図6のみからは看取される粒子状物がフレーク状であるか否かについて判別することはできない。
(オ)上記第4の12より、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、検甲1の、基板の上端から75mm~138mmの範囲のh、X、Yの値は、297.5、3.9、191.4、であり、基板の上端から75mmの範囲のh、X、Yの値は、299.3、4.3、192.9である。
イ 上記アより以下の「OZK塗膜」の発明が公然実施されていたと認める(以下「実施発明1」という。)。
「L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が297.5°又は299.3°であり、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが3.9又は4.3であり、かつYが191.4又は192.9である塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
(3)甲3及び甲4に係る検証物(検甲2)から把握される公然実施発明
上記第4の3(2)の「SUZUKIの「2003 FULL LINE UP CATALOGUE」(2003年カタログ)記載の「SV1000S」で示される型式の二輪車のうち、「YC2:Candy Grand Blue」と表記された二輪車に施された塗装による塗膜を、以下「YC2塗膜」という。
ア 各甲号証より明らかな事項
(ア)上記第4の3(2)の「SV1000S」で示される型式の二輪車のうち、「YC2:Candy Grand Blue」と表記された二輪車が、「SUZUKIの「2003 FULL LINE UP CATALOGUE」(2003年カタログ)に記載されていることより、「YC2塗膜」は公然実施されたものである。
(イ)上記第4の3(2)で示す甲3における「YC2:Candy Grand Blue」という表記、上記第4の4(2)オで示す検甲2の「色別番号 YC2」、「色名称 CDYグランブルー」という表記、上記第4の18に示す甲18の記載、及び上記第4の19に示す甲19の記載より、甲4に係る検証物(検甲2)は「YC2塗膜」の見本が示されているものである。
(ウ)上記第4の9より、染色番号「YC2」、染料樹脂名「ベルコートNo.5100」、染色名「下塗」の成分として、シルバー系顔料「アルミ ペースト」、青系顔料「シアニンブルー」、黒系顔料「カーボンブラック」、紫系顔料「ホスタパームバイオレット」、添加剤「ハジキ防止剤」、及び添加剤「沈降防止剤」が含まれているものである。また、染色番号「YC2」、染料樹脂名「ベルコートNo.5100」、染色名「上塗」の成分として、アクリル樹脂、メラミン樹脂、青系顔料「シアニンブルー」、及び紫系顔料「ホスタパームバイオレット」が含まれているものである。
ここで、上記第4の4(2)オで示される検甲2の表面の「色別番号 YC2」、「色名称 CDYグランブルー」の記載、同カで示される検甲2号の裏面の「日本油脂」の記載と「スズキ株式会社デザイン」という赤い押印、上記第4の9で示される塗料メーカー「日本油脂株式会社」、染色番号「YC2」、塗料樹脂名「ベルコートNo.5100」の記載、上記第4の13で示される甲13の受領書の「スズキ株式会社御中」、「松崎化成株式会社 浜松支店」、及び商品名/LotNo.「B-5100 YC2 CDグランブルー」の記載、上記第4の14で示される松崎化成株式会社の主要取引メーカーとしての「BASFジャパン株式会社」の記載、上記第4の17で示される甲17の記載を総合すると、上記第4の9の上記染色番号「YC2」、染料樹脂名「ベルコートNo.5100」の塗料は、「YC2塗膜」に係るものであることが推認され、上記第4の9の上記染色番号「YC2」、染料樹脂名「ベルコートNo.5100」の塗料によって下塗塗膜及び上塗塗膜が形成されることも明らかである。
(エ)上記第4の4(2)エのとおり、検甲2では、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」は把握することはできない。しかしながら上記(ウ)で示したとおり、上記第4の9の上記染色番号「YC2」、染料樹脂名「ベルコートNo.5100」の塗料は、「YC2塗膜」に係るものであり、かつ上塗の染料及び下塗の染料が存在することについては認定することができる。したがって、検甲2の基板の上端から30mmの範囲、基板の上端から30mm~105mmの範囲、及び基板の上端から105mm~200mmの範囲の少なくともいずれか1つの範囲において、上塗塗膜及び下塗塗膜を含む塗膜を有するものである。
(オ)上記第4の7で示される光学顕微鏡写真からも、検甲2が、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」からなることは把握することはできない。図3及び図4で示される光学顕微鏡写真によって、積層の態様は判別することはできない。また、図3及び図4から、並びに図3及び図4と図7の比較から、アルミニウムフレーク顔料含有塗膜であることは判別することはできない。図3及び図4のみからは看取される粒子状物がフレーク状であるか否かについて判別することはできず、また上記(ウ)でも示したとおり、第4の9で示す甲9では、シルバー系顔料として「アルミ ペースト」と記載されているものである。これに関し、申立書には、「なお、甲9および甲10に記載の「アルミペースト」は、これらの成分表では、塗料製造業者と二輪車製造業者間においてアルミペーストの固形分、すなわち、アルミニウムフレーク顔料を意味するということが取り決められている。」(49頁第16行~同第19行)と記載されているが、当該事項については各甲号証からは説明することができず、また当該事項を説明する他の証拠も把握できない。
(カ)上記第4の12より、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、検甲2の、基板の上端から30mm~105mmの範囲のh、X、Yの値は、275.6、3.2、164.4、であり、基板の上端から105mm~200mmの範囲のh、X、Yの値は、275.2、3.3、161.4である。
イ 上記アより以下の「YC2塗膜」の発明が公然実施されていたと認める(以下「実施発明2」という。)。
「シルバー系顔料としてアルミペースト、青系顔料としてシアニンブルー、黒系顔料としてカーボンブラック、紫系顔料としてホスタパームバイオレット、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリル樹脂、メラミン樹脂、青系顔料としてシアニンブルー、及び紫系顔料としてホスタパームバイオレットを含む上塗塗膜とを備えた複層塗膜であって、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が275.6°又は275.2°であり、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが3.2又は3.3であり、かつYが164.4又は161.4である塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
(4)甲5及び甲6に係る検証物(検甲3)から把握される公然実施発明
上記第4の5(2)のSUZUKIの「2007 FULL LINE UP CATALOGUE」(2007年カタログ)記載の「Hayabusa 1300」で示される型式の二輪車のうち、「Pearl Vigor Blue(YKY)」と表記された二輪車に施された塗装による塗膜を、以下「YKY塗膜」という。
ア 各甲号証より明らかな事項
(ア)上記第4の5(2)の「Hayabusa 1300」で示される型式の二輪車のうち、「Pearl Vigor Blue(YKY)」と表記された二輪車が、SUZUKIの「2007 FULL LINE UP CATALOGUE」(2007年カタログ)に記載されていることより、「YKY塗膜」は公然実施されたものである。
(イ)上記第4の5(2)で示す甲5における「Pearl Vigor Blue(YKY)」という表記、上記第4の6(2)オで示す検甲3の「色別番号 YKY」、「色名称 PRL.VIGOR BLUE(PRL.ビガーブルー)」という表記、上記第4の18に示す甲18の記載、及び上記第4の19に示す甲19の記載より、甲6に係る検証物(検甲3)は「YKY塗膜」の見本が示されているものである。
(ウ)上記第4の10より、色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 下塗、色別番号YKYの成分として、シルバー系顔料「アルミ ペースト(4)」、ブルー系顔料「シアニンブルー」、白系顔料「酸化チタン」、添加剤「ハジキ防止剤」、及び添加剤「沈降防止剤」が含まれているものである。また、色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 上塗(UV)、色別番号YKYの成分として、アクリルワニス(C)、メラミン樹脂ワニスH、赤系顔料「赤系特殊パール顔料」、青系顔料「青系特殊パール顔料」、青系顔料「ナショナルブルーE-1」、及び紫系顔料「ファーストバイオレット」が含まれているものである。
ここで、上記第4の6(2)オで示される検甲3の表面の「色別番号 YKY」、「色名称 PRL.VIGOR BLUE(PRL.ビガーブルー)」の記載、同カで示される検甲3の裏面の「BASFコーティングスジャパン(株)」の記載と「SUZUKI」、「MOTORCYCLE STYLING DESIGN」という赤い押印、上記第4の10で示される会社名「BASFコーティングスジャパン(株)」、色名「ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 上塗(UV)」、「ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 下塗」、色別番号「YKY」の記載、上記第4の13で示される甲13の受領書の「スズキ株式会社御中」、「松崎化成株式会社 浜松支店」、及び商品名/LotNo.「B-5100 YKY ビガーブルー」の記載、上記第4の14で示される松崎化成株式会社の主要取引メーカーとしての「BASFジャパン株式会社」の記載、上記第4の17で示される甲17の記載を総合すると、上記第4の10の上記色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 下塗(又は上塗(UV))、色別番号YKYの塗料は、「YKY塗膜」に係るものであることが推認され、上記第4の10の上記色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 下塗(又は上塗(UV))、色別番号YKYの塗料によって下塗塗膜(又は上塗(UV)塗膜)が形成されることも明らかである。
(エ)上記第4の6(2)エのとおり、検甲3では、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」は把握することはできない。しかしながら上記(ウ)で示したとおり、上記第4の10の上記色名ベルコートNo.5100 PRL.ビガーブルー 下塗(又は上塗(UV))、色別番号YKYの塗料は、「YKY塗膜」に係るものであり、かつ下塗及び上塗(UV)の染料の染料が存在することについては認定することができる。したがって、検甲3の基板の上端から35mmの範囲、基板の上端から35mm~101mmの範囲、及び基板の上端から101mm~200mmの範囲の少なくともいずれか1つの範囲において、上塗塗膜及び下塗塗膜を含む塗膜を有するものである。
(オ)上記第4の7で示される光学顕微鏡写真からも、検甲3が、「単一塗膜部分」、「2層積層部分」及び「3層積層部分」からなることは把握することはできない。図5及び図6で示される光学顕微鏡写真によって、積層の態様は判別することはできない。また、図5及び図6から、並びに図5及び図6と図7の比較から、アルミニウムフレーク顔料含有塗膜であることは判別することはできない。図5及び図6のみからは看取される粒子状物がフレーク状であるか否かについて判別することはできず、また上記(ウ)でも示したとおり、第4の10で示す甲10では、シルバー系顔料として「アルミ ペースト(4)」と記載されているものである。これに関し、申立書には、「なお、甲9および甲10に記載の「アルミペースト」は、これらの成分表では、塗料製造業者と二輪車製造業者間においてアルミペーストの固形分、すなわち、アルミニウムフレーク顔料を意味するということが取り決められている。」(49頁第16行~同第19行)と記載されているが、当該事項については各甲号証からは説明することができず、また当該事項を説明する他の証拠も把握できない。
(カ)上記第4の12より、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、検甲3の、基板の上端から35mm~101mmの範囲のh、X、Yの値は、280.7、2.7、177.8、であり、基板の上端から101mm~200mmの範囲のh、X、Yの値は、280.3、2.7、176.9である。
イ 上記アより以下の「YKY塗膜」の発明が公然実施されていたと認める(以下「実施発明3」という。)。
「シルバー系顔料としてアルミ ペースト(4)、ブルー系顔料としてシアニンブルー、白系顔料として酸化チタン、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリルワニス(C)、メラミン樹脂ワニスH、赤系顔料として赤系特殊パール顔料、青系顔料として青系特殊パール顔料、青系顔料としてナショナルブルーE-1、及び紫系顔料としてファーストバイオレットを含む上塗(UV)塗膜とを備えた複層塗膜であって、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が280.7°又は280.3°であり、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが2.7であり、かつYが177.8又は176.9である塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
2.申立理由1-1及び申立理由2-1について(甲第1号証及び甲第2号証(検甲第1号証))
(1)対比
本件発明1と実施発明1とを対比する。
本件発明1の「複層塗膜」と、実施発明1の「塗膜」は、「塗膜」の限りにおいて一致する。
また、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)において、本件発明1の「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」ことと、実施発明1の「色相角度hの値が297.5°又は299.3°であり」、「Xが3.9又は4.3であり、かつYが191.4又は192.9である」は、「色相角度hの値が297.5°又は299.3°を含み」、「Xが3.9又は4.3を含み、かつYが191.4又は192.9を含む」限りにおいて一致する。
以上より、本件発明1と、実施発明1は以下の一致点で一致し、また相違点1及び相違点2で相違する。
<一致点>
「L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が297.5°又は299.3°を含み、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが3.9又は4.3を含み、かつYが191.4又は192.9を含む塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
<相違点1>
本件発明1では、「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」するのに対して、実施発明1では、塗膜ではあるものの、上記本件発明1の構成を有るか否か不明である点。
<相違点2>
L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、本件発明1は「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」のに対し、実施発明1では「色相角度hの値が297.5°又は299.3°であり」、「Xが3.9又は4.3であり、かつYが191.4又は192.9である」点。
(2)判断
<相違点1>について検討する。
実施発明1が「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」する構成を有するか否かについて不明である。そして、「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」することは当業者にとって自明なことでもない。
よって、相違点1は実質的な相違点である。
また、実施発明1において「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」するとする動機付けは存在しない。したがって、実施発明1に基づいて「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」することは容易に想到し得たものではない。
(3)まとめ
以上により、<相違点2>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明1と同一ではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明2及び5~7も、実施発明1と同一ではない。
また、<相違点2>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明1に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明2~7、9及び10も、実施発明1に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
3.申立理由1-2及び申立理由2-2について(甲第3号証及び甲第4号証(検甲第2号証))
(1)対比
本件発明1と実施発明2とを対比する。
本件発明1の「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることにおける、「メタリックベース塗膜」及び「透明着色塗膜」が、それぞれ「下塗塗膜」及び「上塗塗膜」であることにほかならない。そして、実施発明2「青系顔料としてシアニンブルー」は、本願発明の「青色顔料」に相当するから、本件発明1の「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることと、実施発明2の「シルバー系顔料としてアルミペースト、青系顔料としてシアニンブルー、黒系顔料としてカーボンブラック、紫系顔料としてホスタパームバイオレット、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリル樹脂、メラミン樹脂、青系顔料としてシアニンブルー、及び紫系顔料としてホスタパームバイオレットを含む上塗塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることとは、「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であ」る限りにおいて一致する。
本件発明1の「アルミニウムフレーク顔料」と、実施発明2の「シルバー系顔料としてアルミペースト」とは、「アルミニウム顔料」である限りにおいて一致するから、本件発明1の「メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」することと、実施発明2の「シルバー系顔料としてアルミペースト、青系顔料としてシアニンブルー、黒系顔料としてカーボンブラック、紫系顔料としてホスタパームバイオレット、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜」とは、「下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有」する限りにおいて一致する。
さらに、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)において、本件発明1の「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」ことと、実施発明2の「色相角度hの値が275.6°又は275.2°であり」、「Xが3.2又は3.3であり、かつYが164.4又は161.4である」は、「色相角度hの値が275.6°又は275.2°を含み」、「Xが3.2又は3.3を含み、かつYが164.4又は161.4を含む」限りにおいて一致する。
以上より、本件発明1と、実施発明2は以下の一致点で一致し、また相違点3及び相違点4で相違する。
<一致点>
「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であって、
下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有し、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が275.6°又は275.2°を含み、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが3.2又は3.3を含み、かつYが164.4又は161.4を含む塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
<相違点3>
「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であって、下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有」するものにおける、複層塗膜をなす、上塗塗膜及びアルミニウム顔料を含有する下塗塗膜の構成について、本件発明1では、「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」するのに対して、実施発明2では、「シルバー系顔料としてアルミペースト、青系顔料としてシアニンブルー、黒系顔料としてカーボンブラック、紫系顔料としてホスタパームバイオレット、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリル樹脂、メラミン樹脂、青系顔料としてシアニンブルー、及び紫系顔料としてホスタパームバイオレットを含む上塗塗膜とを備えた複層塗膜であ」る点。
<相違点4>
L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、本件発明1では、「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」のに対し、実施発明2では「色相角度hの値が275.6°又は275.2°であり」、「Xが3.2又は3.3であり、かつYが164.4又は161.4である」点。
(2)判断
<相違点3>について検討する。
実施発明2は、「粘性調整剤」を有しない。また、当該「粘性調整剤」を有することは当業者にとって自明なことではない。よって、相違点3は実質的な相違点である。
また、実施発明2は、塗膜として完成され、一般に販売に供される製品に適用されているものであり、何らかの問題点の把握や改良の動機などは、甲3及び甲4(検甲2)からは全く把握されない。したがって、たとえ当業者であったとしても実施発明2の設計変更を検討することはなく、「粘性調整剤」を付加することは容易に想到しない。
以上より、実施発明2に基づいて「粘性調整剤」を付加することは容易に想到し得たものではない。
申立人は、「甲9及び甲10の「ハジキ防止剤」および「沈降防止剤」は、それぞれ構成要件B中の「表面調整剤」及び「粘性調整剤」に対応する。これについては甲11に詳細に説明されている。
すなわち、甲11の431ページの右側上から21~24行目には「4.粘性を抑制する揺変剤 塗料に要求される擬塑性流動あるいはチクソトロピーな流動性を付与する添加剤は、揺変剤あるいはチクソトロピック剤と呼ばれる。」と記載され、同ページの右側上から9~11行目には「たとえば、チクソトロピック剤は塗料にチクソトロピーな流動性を付与することで顔料の沈降を防止したり、厚塗りしたときのたれを防止したり、また増粘性付与剤としての機能をも有する。」と記載されている。すなわち、粘性を制御する揺変剤であるチクソトロピック剤には沈降防止機能があり、甲9及び甲10に記載された「沈降防止剤」は粘性調整剤のひとつであると言える。」(申立書52頁第18行~第27行)と主張する。しかしながら、甲9の「沈降防止剤」については、その成分や組成などについて不明であることから、申立人のいう「粘性を制御する揺変剤であるチクソトロピック剤」とは特定することはできない。そして、沈降防止作用を有する一方で粘性が増大しない添加剤も知られている。よって申立人の上記主張は採用することはできない。
(3)まとめ
以上により、<相違点4>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明2と同一ではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明5~7も、実施発明2と同一ではない。
また、<相違点4>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明2に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明4~10も、実施発明2に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
4.申立理由1-3及び申立理由2-3について(甲第5号証及び甲第6号証(検甲第3号証))
(1)対比
本件発明1と実施発明3とを対比する。
本件発明1の「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることにおける、「メタリックベース塗膜」及び「透明着色塗膜」が、それぞれ「下塗塗膜」及び「上塗塗膜」であることにほかならない。そして、実施発明3「ブルー系顔料としてシアニンブルー」は、本願発明の「青色顔料」に相当するから、本件発明1の「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることと、実施発明3の「シルバー系顔料としてアルミ ペースト(4)、ブルー系顔料としてシアニンブルー、白系顔料として酸化チタン、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリルワニス(C)、メラミン樹脂ワニスH、赤系顔料として赤系特殊パール顔料、青系顔料として青系特殊パール顔料、青系顔料としてナショナルブルーE-1、及び紫系顔料としてファーストバイオレットを含む上塗(UV)塗膜とを備えた複層塗膜であ」ることとは、「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であ」る限りにおいて一致する。
本件発明1の「アルミニウムフレーク顔料」と、実施発明3の「シルバー系顔料としてアルミ ペースト(4)」とは、「アルミニウム顔料」である限りにおいて一致するから、本件発明1の「メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」することと、実施発明3の「シルバー系顔料としてアルミ ペースト(4)、ブルー系顔料としてシアニンブルー、白系顔料として酸化チタン、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜」とは、「下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有」する限りにおいて一致する。
さらに、L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)において、本件発明1の「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」ことと、実施発明3の「色相角度hの値が280.7°又は280.3°であり」、「Xが2.7であり、かつYが177.8又は176.9である」は、「色相角度hの値が280.7°又は280.3°を含み」、「Xが2.7を含み、かつYが177.8又は176.9を含む」限りにおいて一致する。
以上より、本件発明1と、実施発明3は以下の一致点で一致し、また相違点5及び相違点6で相違する。
<一致点>
「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であって、
下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有し、
L*C*h表色系色度図の色相角度hの値が280.7°又は280.3°を含み、
X=C*45/L*45とし、
Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたときに、
Xが2.7を含み、かつYが177.8又は176.9を含む塗膜。
(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)」
<相違点5>
「下塗塗膜と、前記下塗塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する上塗塗膜とを備えた複層塗膜であって、下塗塗膜が、アルミニウム顔料を含有」するものにおいて、複層塗膜をなす、上塗塗膜及びアルミニウム顔料を含有する下塗塗膜の構成について、本件発明1では、「メタリックベース塗膜と、前記メタリックベース塗膜の上に形成される、青色顔料を含有する透明着色塗膜とを備えた複層塗膜であって、メタリックベース塗膜が、アルミニウムフレーク顔料、表面調整剤、及び粘性調整剤を含有」するのに対して、実施発明3では、「シルバー系顔料としてアルミ ペースト(4)、ブルー系顔料としてシアニンブルー、白系顔料として酸化チタン、ハジキ防止剤、及び沈降防止剤を含む下塗塗膜、アクリルワニス(C)、メラミン樹脂ワニスH、赤系顔料として赤系特殊パール顔料、青系顔料として青系特殊パール顔料、青系顔料としてナショナルブルーE-1、及び紫系顔料としてファーストバイオレットを含む上塗(UV)塗膜とを備えた複層塗膜であ」る点。
<相違点6>
L*C*h表色系色度図で示されるL*及びC*の値にて、X=C*45/L*45とし、Y=[(L*15)2+(C*15)2)]1/2+[(L*25)2+(C*25)2)]1/2としたとき(ただし、C*15、C*25、及びC*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度、及び45度の各角度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の彩度をそれぞれ表し、L*15、L*25、及びL*45は複層塗膜に入射角度45度から照射し正反射光に対して15度、25度及び45度で受光した光の分光反射率から計算された複層塗膜の明度をそれぞれ表す。)、本件発明1は「色相角度hの値が225°から300°までの範囲内にあり」、「Xが2~20であり、かつYが50~250である」のに対し、実施発明3では「色相角度hの値が280.7°又は280.3°であり」、「Xが2.7であり、かつYが177.8又は176.9である」点。
(2)判断
<相違点5>について検討する。
実施発明3は、「粘性調整剤」を有しない。そして上記3(2)の<相違点3>での検討と同様に、<相違点5>は実質的な相違点である。
さらに、上記3(2)の<相違点3>での検討と同様に、実施発明3に基づいて「粘性調整剤」を付加することは容易に想到し得たものではない。
(3)まとめ
以上により、<相違点6>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明3と同一ではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明4~7も、実施発明3と同一ではない。
また、<相違点6>について検討するまでもなく、本件発明1は実施発明3に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1を引用する本件発明4~10も、実施発明3に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものではない。
5.申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件についての判断
本件発明の解決しようとする課題は、【0006】に本発明の目的として記載された「深み感に優れ、かつハイライトにおける明度及び彩度が高い複層塗膜及び該複層塗膜の形成方法を提供すること」である。
そして、【0029】~【0033】には、本件発明1で規定するX及びYと、深み感やハイライトにおける明度及び彩度との関係について記載されているものであり、【0245】~【0286】には、本件発明1で規定するX及びYの数値範囲を有する実施例1~17と、X又はYの値が本件発明1で規定する数値範囲外である比較例1~5について記載されているものである。
そうすると、これらの記載から当業者は、本件発明1、2、4~10は、上記課題を解決できるものと理解でき、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。
(2)申立人の主張について
申立人は、請求項1のX及びYの範囲は、人の知覚として捉えられるはずの「深み感に優れ、かつハイライトにおける明度及び彩度が高い」複層塗膜を得られるための要件として適当であるかどうかは不明であり、【0029】~【0035】には、X及びYの大小による、深み感、およびハイライトにおける明度および彩度への影響の傾向が文章として記載されているものの、数値範囲の当否が不明であり、具体的な範囲を推認するに足りるほどの実施例や比較例を示されていないと主張する。
しかしながら、「深み感に優れ、かつハイライトにおける明度及び彩度が高い」ことが官能試験等で示されてはいないものの、上記(1)に示したとおり、【0029】~【0033】及び【0245】~【0286】から、本件発明1で規定するX及びYの数値範囲により発明の解決しようとする課題を解決できるものと理解でき、上記申立人の主張は採用することはできない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701030