特許異議申立
2021-700622
飲料用缶の製造方法、印刷システム、および、飲料用缶
- 審判番号
- 2021-700622
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-224376
- 登録番号
- 6824009
- 請求日
- 2021年07月02日
- 審決日
- 2022年06月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】昭和アルミニウム缶株式会社
- 【権利者代理人】古部 次郎
- 【権利者代理人】水戸 洋介
- 【異議申立人】青木 なお子
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P1651.121-YAA(B41J) / P1651.537-YAA(B41J) / P1651.55 -YAA(B41J) / P1651.851-YAA(B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6824009号発明「飲料用缶の製造方法、印刷システム、および、飲料用缶」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6824009号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6、7について訂正することを認める。
特許第6824009号の請求項1、3、6及び7に係る特許を維持する。
特許第6824009号の請求項2、4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6824009号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、平成28年11月17日に出願され、令和3年1月14日にその特許権の設定登録がされ、同年2月3日に特許掲載公報が発行された。その後、同年7月2日付けで特許異議申立人 青木なお子(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1乃至7に対して特許異議の申立てがされ、同年10月5日付けで取消理由が通知され、同年12月23日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、令和4年1月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月7日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月26日に特許異議申立人により意見書の提出がされた。
第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断
1 令和4年4月7日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容
本件訂正は、その請求の趣旨を「特許第6824009号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」とするものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1乃至5に係る訂正
ア 請求項1に係る訂正(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に
「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、
を備え、
前記ドット像列形成工程では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
飲料用缶の製造方法。」と記載されているのを、
「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、
を備え、
前記ドット像列形成工程では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
飲料用缶の製造方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。
イ 請求項2に係る訂正(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 請求項3に係る訂正(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1又は2に記載の飲料用缶の製造方法」と記載されているのを、
「請求項1に記載の飲料用缶の製造方法」に訂正する。
エ 請求項4に係る訂正(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 請求項5に係る訂正(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(2)一群の請求項6に係る訂正
ア 請求項6に係る訂正(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項6に
「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成手段と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段と、
を備え、
前記ドット像列形成手段は、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
印刷システム。」と記載されているのを、
「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成手段と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段であって、前記像形成手段による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段と、
を備え、
前記ドット像列形成手段は、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
印刷システム。」に訂正する。
(3)一群の請求項7に係る訂正
ア 請求項7に係る訂正(訂正事項7)
特許請求の範囲の請求項7に
「外面と、
前記外面に設けられた像と、
前記外面に設けられ、前記像の輪郭に沿う2列以上のドット像列と、
を備え、
前記2列以上のドット像列では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる、
飲料用缶。」と記載されているのを、
「外面と、
前記外面に設けられた像と、
前記外面に設けられ、当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され、当該像の輪郭に沿う透明の2列以上のドット像列と、
を備え、
前記2列以上のドット像列では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる、
飲料用缶。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
(1)一群の請求項1乃至5に係る訂正
ア 請求項1に係る訂正(訂正事項1)
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「飲料用缶の製造方法」における「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列」について、「透明のインクにより形成され」と、その形成工程をより具体的に特定し、限定するものであり、また、「ドット像列形成工程」について、「前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」と、その形成工程をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正後請求項3は、訂正後請求項1の「透明のインクにより形成され」との記載を引用することにより、訂正後請求項3に係る発明における「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列」の形成工程をより具体的に特定し、限定するものであり、また、訂正後請求項1の「前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」との記載を引用することにより、訂正後請求項3に係る発明における「ドット像列形成工程」の形成工程をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0023】に「クリア印刷工程30にて、ベースコート層の上に、クリアインク(無色透明なインク)を用いたクリア印刷が行われ、ベースコート層の上に、クリアインク部(詳細は後述)が形成される。」、段落【0043】に「クリアインク部301には、2列のドット像列が設けられている。言い換えると、本実施形態では、クリアインク部301にて、ドット状の像(ドット像)が形成され、さらに、このドット像が、形成画像201の脇に2列分形成される。」と、透明のインクにより形成された像の輪郭に沿う2列以上のドット像列が記載されている。
また段落【0042】に「なお、クリアインク部301は、形成画像201やインク層401を形成する前に形成することが好ましい」と、像形成工程による像の形成が行われる前に2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程が記載されている。
してみると、訂正事項1の「透明のインクにより形成され」及び「前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」は、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 請求項2に係る訂正(訂正事項2)
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 請求項3に係る訂正(訂正事項3)
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が「請求項1又は2」を引用するものであったところ、上記訂正事項2の訂正に伴い、「請求項1」のみを引用するものと、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、引用する請求項を削除するものであるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 請求項4に係る訂正(訂正事項4)
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
オ 請求項5に係る訂正(訂正事項5)
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
カ 一群の請求項についての適否
訂正前の請求項1乃至5について、請求項2乃至5は、それぞれ、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
よって、訂正事項1乃至5による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
また、訂正後の請求項1乃至5は、一群の請求項である。
キ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件において、訂正前の請求項1乃至5について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1乃至5に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(2)一群の請求項6に係る訂正
ア 請求項6に係る訂正(訂正事項6)
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6の「印刷システム」における「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列」について、「透明のインクにより形成され」と、その形成手段をより具体的に特定し、限定するものであり、また、「ドット像列形成手段」について、「前記像形成手段による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段」と、その形成手段をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0023】に「クリア印刷工程30にて、ベースコート層の上に、クリアインク(無色透明なインク)を用いたクリア印刷が行われ、ベースコート層の上に、クリアインク部(詳細は後述)が形成される。」、段落【0043】に「クリアインク部301には、2列のドット像列が設けられている。言い換えると、本実施形態では、クリアインク部301にて、ドット状の像(ドット像)が形成され、さらに、このドット像が、形成画像201の脇に2列分形成される。」と、透明のインクにより形成された像の輪郭に沿う2列以上のドット像列が記載されている。
また段落【0042】に「なお、クリアインク部301は、形成画像201やインク層401を形成する前に形成することが好ましい」と、像形成手段による像の形成が行われる前に2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段が記載されている。
してみると、訂正事項6の「透明のインクにより形成され」及び「前記像形成手段による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段」は、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件において、訂正前の請求項6について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項6に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項7に係る訂正
ア 請求項7に係る訂正(訂正事項7)
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項7の「飲料用缶」における「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列」について、「当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され」と、その構成をより具体的に特定し、限定するものであり、また、「2列以上のドット像列」について、「透明の」と、その構成をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、段落【0023】に「クリア印刷工程30にて、ベースコート層の上に、クリアインク(無色透明なインク)を用いたクリア印刷が行われ、ベースコート層の上に、クリアインク部(詳細は後述)が形成される。」、段落【0043】に「クリアインク部301には、2列のドット像列が設けられている。言い換えると、本実施形態では、クリアインク部301にて、ドット状の像(ドット像)が形成され、さらに、このドット像が、形成画像201の脇に2列分形成される。」と、透明のインクにより形成された像の輪郭に沿う2列以上のドット像列が記載されている。
また段落【0042】に「なお、クリアインク部301は、形成画像201やインク層401を形成する前に形成することが好ましい」と、像の形成が行われる前に2列以上のドット像列を形成することが記載されている。
してみると、訂正事項7の「当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され」及び「透明の2列以上のドット像列」は、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件において、訂正前の請求項7について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項7に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
3 まとめ
以上のとおり、令和4年4月7日に特許権者が行った本件訂正は、訂正事項に関して、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1乃至5、6及び7について訂正を認める。
第3 本件訂正特許発明について
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許異議申立の対象である本件特許の請求項1、3、6及び7に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正特許発明1」、「本件訂正特許発明3」、「本件訂正特許発明6」及び「本件訂正特許発明7」という。)は、つぎのとおりのものである。
「【請求項1】
飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、
を備え、
前記ドット像列形成工程では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
飲料用缶の製造方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記2列以上のドット像列が硬化することにより形成される層の厚さが、2μm以上である請求項1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成手段と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段であって、前記像形成手段による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段と、
を備え、
前記ドット像列形成手段は、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、
印刷システム。
【請求項7】
外面と、
前記外面に設けられた像と、
前記外面に設けられ、当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され、当該像の輪郭に沿う透明の2列以上のドット像列と、
を備え、
前記2列以上のドット像列では、
前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる、
飲料用缶。」
第4 取消理由(令和4年1月25日付け決定の予告)で通知した特許異議申立理由及び取消理由(令和4年1月25日付け決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由
1 取消理由(令和4年1月25日付け決定の予告)で通知した特許異議申立理由
本件特許発明1乃至7は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
記
本件特許発明1乃至7は、2列以上のドット像列のインクの特性、及び像形成工程による像の形成が行われる前に、2列以上のドット像列の形成が行われることを特定せず、像形成工程後または同時に2列以上のドット像列の形成が行われることを包含するものである。
そうすると、像形成工程の前に2列以上のドット像列が、形成されることを特定しない本件特許発明1乃至7は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決された手段が反映されていないものであり、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
よって、本件特許発明1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
2 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由
(1)特許異議申立理由1(特許法第29条第2項違反)
本件特許の下記請求項に係る発明は、下記各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
ア 甲第1号証を主引例とした特許異議申立理由1
請求項1、2、5乃至7に対して、甲第1号証乃至甲第4号証
請求項3に対して、甲第1号証乃至甲第5号証
請求項4に対して、甲第1号証乃至甲第4号証及び甲第6号証
イ 甲第2号証を主引例とした特許異議申立理由1
請求項1、4乃至7に対して、甲第2号証及び甲第1号証
請求項2に対して、甲第2号証、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証
請求項3に対して、甲第2号証、甲第1号証及び甲第5号証
ウ 甲第6号証を主引例とした特許異議申立理由1
請求項1、2、4乃至7に対して、甲第6号証及び甲第1号証から甲第4号証
請求項3に対して、甲第6号証及び甲第1号証乃至甲第5号証
(2)特許異議申立理由2(特許法第36条第6項第1号違反)
本件特許発明1乃至7は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
記
本件特許発明2は、本件特許発明2が引用する本件特許発明1で特定される「前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する」というドット像列の配置(以下「構成要件1」という。)と、本件特許発明2で特定する「前記2列以上のドット像列に含まれるドット像は、前記飲料用缶の軸方向に沿って並び且つ当該飲料用缶の周方向に沿って並ぶ」というドット像列の配置(以下「構成要件2」という。)とを兼ね備えるものと特定されている。
一方、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明には、上記構成要件1に対応したドット像列の配置及び構成要件2に対応したドット像列の配置を兼ね備えた実施態様は、記載されていないし、自明の事項ともいえない。
よって、本件特許発明2乃至5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(3)特許異議申立理由3(特許法第36条第6項第2号違反)
本件特許発明1乃至7は、特許請求の範囲の記載が下記の(3-1)乃至(3-3)点で明確でないため、請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件請求項1乃至7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3-1) 本件特許発明1の「像形成工程」は、インクにより「像」を形成する工程であるところ、「ドット像列形成工程」において形成される「ドット像列」も「像」である。
してみると、「像形成工程」の「像」も「ドット像列形成工程」の「ドット像列」も、いずれも、インクジェットヘッドにより形成されるものであって、「ドット列」状になることは明らかである。
そうすると、本件特許発明1には、「ドット像列」は「像」の脇に形成されると特定されているが、「ドット像列」と「像」とは同一のものと解されるので客観的に区別することができない。
したがって、「像形成工程」の「像」と、「ドット像列形成工程」の「ドット像列」とは実質的に同一のものを指しており、客観的に区別することができないので、本件特許発明1は不明確である。
また、本件特許発明6における「像形成手段」も同様に、「像形成手段」の「像」と、「ドット像列形成手段」の「ドット像列」とは実質的に同一のものを指すから、両者を客観的に区別することができず、本件特許発明6は不明確である。
したがって、本件特許発明1及び6は明確でない。
よって、本件特許発明1及び6並びに本件特許発明1を引用する本件特許発明2乃至5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(3-2)本件特許発明2は、本件特許発明2が引用する本件特許発明1で特定される「前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する」というドット像列の配置(以下「構成要件1」という。)と、本件特許発明2で特定する「前記2列以上のドット像列に含まれるドット像は、前記飲料用缶の軸方向に沿って並び且つ当該飲料用缶の周方向に沿って並ぶ」というドット像列の配置(以下「構成要件2」という。)とを兼ね備えるものと特定されている。
しかしながら、千鳥状に配置された2列以上のドット像列に含まれるドット像が、飲料用缶の周方向に沿って並び得ないことは、幾何学的に明らかであるからして、2列以上のドット像列に含まれるドット像が、千鳥状に配置されつつ、飲料用缶の周方向に沿って並び得ないものである。
してみると、本件特許発明2のドット像列の配置が、具体的にどのような配置を指すのか、当業者が理解することができない。
したがって、本件特許発明2は明確でない。
よって、本件特許発明2及びこれを引用する本件特許発明3乃至5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(3-3)本件特許発明7には、「飲料用缶の外面に設けられた『像』」と前記「像」の輪郭に沿う2列以上の「ドット像列」が特定されている。
してみると、「飲料用缶の外面に設けられた『像』」も「ドット像列」も、いずれも、インクジェットヘッドにより形成されるものであって、「ドット列」状になることは明らかである。
そうすると、本件特許発明7には、「ドット像列」は「飲料用缶の外面に設けられた『像』」の輪郭に沿うように形成されると特定されているが、缶の外面に設けられた「飲料用缶の外面に設けられた『像』」と「ドット像列」とは同一のものと解されるので客観的に区別することができない。
したがって、本件特許発明7は明確でない。
よって、本件特許発明7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(4)特許異議申立理由4(特許法第17条の2第3項違反)
令和2年12月21日付けでした手続補正が、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1乃至7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
したがって、本件請求項1乃至7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
令和2年12月21日付けでした手続補正により、本件特許発明1は、「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程と、前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、を備え、前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、飲料用缶の製造方法。」と補正された。これに伴い、本件特許発明2は、本件特許発明2が引用する本件特許発明1で特定される「前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する」というドット像列の配置(以下「構成要件1」という。)と、本件特許発明2で特定する「前記2列以上のドット像列に含まれるドット像は、前記飲料用缶の軸方向に沿って並び且つ当該飲料用缶の周方向に沿って並ぶ」というドット像列の配置(以下「構成要件2」という。)とを兼ね備えるものとなった。
一方、本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)には、上記構成要件1に対応した記載として、以下の記載がある。
「また、図6(A)では、図3にて示した印刷装置500を用いた場合のクリアインク部301を示している。図3にて示した印刷装置500では、インク吐出口610(図3参照)が千鳥状に配置されており、この場合、2列のドット像も千鳥状に配置される。」(【0049】参照。以下「実施態様1」という。)
また、当初明細書等には、上記構成要件2に対応した記載として、以下の記載がある。
「図6(D)は、図11にて示した印刷装置500を用いた場合のクリアインク部301を示している。図11にて示した印刷装置500では、インク吐出口610(図11参照)が、飲料缶100の軸方向および周方向に沿って並んで配置されており、この場合、2列のドット像に含まれる各ドット像も、飲料缶100の軸方向および周方向に沿って並んで配置される。」(【0050】参照。以下「実施態様2」という。)
しかしながら、当初明細書には、実施態様1と実施態様2とは、それぞれ異なる態様として記載されており、上記構成要件1のドット像列の配置と構成要件2のドット像列の配置を兼ね備えた実施態様は、記載も示唆もされていない。
したがって、令和2年12月21日付けでした手続補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の要件を満たさない。
よって、本件特許発明2及びこれを引用する本件特許発明3乃至5に係る特許は、いずれも、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてなされたものである。
第5 特許異議申立理由(取消理由(決定の予告)で通知した理由)についての当審の判断
本件訂正により、取消理由(決定の予告)で通知した理由の対象であった、請求項1乃至7に係る特許は、それぞれ、本件訂正特許発明1及び3は「透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」と訂正され、本件訂正特許発明6は「透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段であって、前記像形成手段による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成手段」と訂正され、本件訂正特許発明7は「当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され、当該像の輪郭に沿う透明の2列以上のドット像列」と訂正されたことにより、像の形成前に、透明の2列以上のドット像列が形成されることが特定された。
そして、上記訂正がなされたことにより、本件訂正特許発明1、3、6及び7は、いずれも、特許異議申立理由のうち、取消理由(決定の予告)で通知した理由が解消されることとなった。
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1、3、6及び7は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たす。
よって、本件訂正特許発明1、3、6及び7について、特許異議申立理由のうち、取消理由(決定の予告)で通知した理由は成り立たない。
第6 特許異議申立理由(取消理由(決定の予告)で採用しなかった理由)についての当審の判断
1 特許異議申立理由1(特許法第29条第2項違反)について
(1)各甲号証の記載及び各甲号証記載の発明
ア 甲第1号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第1号証(特開2002-292840号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は、当決定において付した。以下、同様。)
(ア)「【0004】また、被印刷媒体としては産業用途を想定した場合、プラスチック板やガラス板などをはじめその他の材料のものも使用されることがある。つまり、多種多様な材質、表面平滑度の被印刷媒体が使用され、そこにインクを塗布するために被印刷媒体とインクとの整合性が悪くなり、塗布したインクが被印刷媒体の表面ではじいたり、インクが固まるまでにインクが流れて広がってしまったりすることがある。このため、印刷むらが発生して印刷品質は低下してしまう。仮に、整合性が良くても、一度に多量のインクを塗布して塗膜の厚さを厚くした場合にもインクの広がり(にじみ)が発生する。」
(イ)「【0008】そこで、本発明は、従来のように印刷版を準備する必要をなくして低コスト化し、塗膜の厚さを容易に制御することができ、かつべた塗り部分における輪郭線からの滲み出しを防止して印刷品質を高めることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成しようとしてなされた請求項1のインクジェット記録方法は、べた塗り部分を含む印刷データに基づいて印刷を行うインクジェット記録方法であって、前記印刷データの内の輪郭データに基づいて、べた塗り部分の輪郭線を先に印刷し、この輪郭線を固化又は高粘度化した後に、輪郭線の内部をべた塗り印刷する様にしたことを特徴とする。
【0010】この請求項1のインクジェット記録方法によれば、まず最初に、印刷データの内の輪郭データに基づいて、べた塗り部分の輪郭線を印刷する。そして、この輪郭線を印刷と同時に又は印刷後に固化又は高粘度化する。この結果、被印刷媒体の表面には、べた塗り部分の輪郭線を被印刷媒体の表面から突出させた状態で形成することができ、その輪郭線部分をインク流出防止部として機能させることができる。従って、固化又は高粘度化の工程においては、完全な固化はもちろんであるが、インク流出防止部として機能し得る程度に高粘度化すればそれでも十分である。また、輪郭線部分のインク量は少なくてよいので、固化又は高粘度化に要する時間を短縮できる。そして、こうしてインク流出防止部として形成した輪郭線の内部をべた塗り印刷するので、べた塗り部分のインクが外へ滲み出たりすることがない。この結果、べた塗り部分は、単純に、塗膜の厚さを十分に得られる様にすることと、むらが生じない様にすることだけを考慮して印刷すればよい。従って、この請求項1のインクジェット記録方法によれば、従来のように印刷版を準備する必要がなく、塗膜の厚さを容易に制御することができ、かつべた塗り部分における輪郭線からの滲み出しを制御することができるのである。」
(ウ)「【0013】また、請求項3のインクジェット記録方法は、請求項1又は請求項2記載のインクジェット記録方法において、前記輪郭データについて、内部をべた塗りしたときに当該べた塗り部分が輪郭線を構成する印刷ドットの間から滲み出さない様に、輪郭線を構成する印刷ドット間の隙間を減少させるための補正を行い、該補正後の輪郭線印刷用のデータに基づいて、前記輪郭線の印刷を実行する様にしたことを特徴とする。
【0014】この請求項3のインクジェット記録方法によれば、輪郭データについて、内部をべた塗りしたときに当該べた塗り部分が輪郭線を構成する印刷ドットの間から滲み出さない様に、輪郭線を構成する印刷ドット間の隙間を減少させるための補正を行い、この補正後の輪郭線印刷用のデータに基づいて、輪郭線の印刷を実行する様にしたので、その後のべた塗り印刷を実行する場合におけるインクの滲みを確実に防止することができ、べた塗り印刷に対する制御が一層容易となる。ここで、輪郭データの補正の方法としては、例えば、輪郭データのドットの横に並列にドットを形成する並列印刷方法をとることもできるし、輪郭データのドットの横に半ピッチずらしてドットを形成するピッチずらし印刷方法をとることもできる。また、これらの並列印刷方法及びピッチずらし印刷方法において、追加するドットに関して、同一位置に複数回ドットを形成することによって追加するドットを大きなものとしたり、あるいは、追加するドットを形成する際に、インクジェットヘッドに対して印可する駆動波形を大きなものとして一度に大径のドットを形成する様にすることもできる。」
(エ)「【0017】また、請求項5のインクジェット記録方法は、請求項3記載のインクジェット記録方法において、前記輪郭データに対する補正は、印刷に使用するインクの特性と被印刷媒体の特性とに基づいて、べた塗り部分が輪郭線を構成する印刷ドットの間から滲み出さない条件を決定して実行する様にしたことを特徴とする。」
(オ)「【0027】また、上記目的を達成するためになされた請求項10のインクジェット記録装置は、べた塗り部分を含む印刷データに基づいて印刷を行うインクジェット記録装置であって、前記印刷データの内のべた塗り部分の輪郭データを入力する輪郭データ入力手段と、該輪郭データ入力手段が入力する輪郭データに基づいて、べた塗り部分の輪郭線を印刷する輪郭線印刷手段と、該輪郭線印刷手段が印刷した輪郭線を固化又は高粘度化する輪郭線固化/高粘度化手段と、前記輪郭線印刷手段の印刷した輪郭線の内部をべた塗り印刷するべた塗り印刷手段とを備えること特徴とする。」
(カ)「【0031】また、請求項12のインクジェット記録装置は、請求項10又は請求項11記載のインクジェット記録装置において、前記輪郭データについて、内部をべた塗りしたときに当該べた塗り部分が輪郭線から滲み出さない様に、輪郭線を構成する印刷ドット間の隙間を減少させるための補正を行う輪郭データ加工手段をも備える様にしたことを特徴とする。
【0032】この請求項12のインクジェット記録装置によれば、輪郭データ加工手段が、輪郭データについて、内部をべた塗りしたときに当該べた塗り部分が輪郭線から滲み出さない様に、輪郭線の隙間を減少させるための補正を行う。そして、輪郭線印刷手段は、この輪郭データ加工手段によって補正されたデータに基づいて輪郭線を印刷する。この結果、その後、べた塗り印刷手段により、べた塗り印刷を実行する場合におけるインクの滲みを確実に防止することができ、べた塗り印刷に対する制御が一層容易となる。ここで、輪郭データの補正の方法としては、例えば、抽出した輪郭データのドットの横に並列にドットを形成する並列印刷方法をとることもできるし、抽出した輪郭データのドットの横に半ピッチずらしてドットを形成するピッチずらし印刷方法をとることもできる。また、これらの並列印刷方法及びピッチずらし印刷方法において、追加するドットに関して、同一位置に複数回ドットを形成することによって追加するドットを大きなものとしたり、あるいは、追加するドットを形成する際に、インクジェットヘッドに対して印可する駆動波形を大きなものとして一度に大径のドットを形成する様にすることもできる。この請求項12のインクジェット記録方法によれば、請求項3のインクジェット記録方法を具体的に実現することができる。」
(キ)「【0072】このデータベースは被印刷媒体の種類とそれを印刷するためのUVインクとのマッチングを表すものであり、インクを被印刷媒体に吐出したときの印刷ドットの広がりを測定し、インク吐出後所定時間経過したときの印刷ドットの直径に対する印刷ドットの理論直径の比率が所定値よりも大きい場合には印刷ドット間の隙間(非印刷部)が存在せず、印刷ドット間からべた塗り部のインクがしみ出さないものと判定され、小さいときにはしみ出すものと判定される。この判定結果(輪郭補正要否データ)が被印刷媒体とインクとの順列組合せについて予め設定記憶されているのである。そして、輪郭補正が必要な場合には、どのような補正をすべきかを示す補正方法データも記憶されている。補正方法の一例としては、後述するように、並列印刷方法と副走査方向への移動ピッチを通常の設定値よりも異ならせるピッチずらし印刷方法などが存在する。各補正方法には、それぞれ1ドットあたりのインク量を変更させる吐出インク量補正方法が複数存する。1ドットあたりの吐出インク量を変更しない同一ドット方法や、同じインク量で複数回インクを吐出させてインク量を増やす複数回吐出方法や、1ドットあたりの吐出インク量を大きくする大ドット化方法等が存在する。1ドットあたりの吐出インク量を変更するには、例えば圧電素子を使用した印刷ヘッドの場合、電圧波形として与えられるノズル駆動波形を大小変化させることにより行われる。駆動波形が小さい場合には吐出インク量は少なくなり、駆動波形が大きい場合には吐出インク量は大きくなるのである。圧電素子の変形量は駆動波形の大小(印加電圧の大小)に比例するからである。一方、印刷と同時にインク固化を要するのか否かを示すインク固化要否データも予めインクと被印刷媒体との組合せ別に記憶されている。」
(ク)「【0078】一方、並列印刷では、輪郭データを補正することができないインクであると判断された場合は(S805:NO)、続いて、ピッチずらしによる印刷データの追加によって補正可能なインクか否かを判断する(S810)。そして、ピッチずらしによる印刷データの追加によって補正可能なインクであると判断された場合は(S810:YES)、補正によって吐出するインクのドットが同じ大きさでよいか否かを判断する(S811)。この判断において、同じ大きさでよいと判断された場合は(S811:YES)、図9(e)に示すように同じ大きさのドットを副走査方向にならべる際に主走査方向に半ピッチだけずらした位置にドットを形成する処理を行う輪郭加工データとして設定する(S885)。このパターンは、抽出した輪郭データのドットパターンに対して、半ピッチだけずらした位置にドットパターンを形成する様にしたものである。」
(ケ)「【0088】以上の様にして、第1の実施の形態のインクジェット記録装置100によれば、印刷データが与えられると、これを輪郭データとべたデータに分解して抽出し、まず最初に、輪郭データに基づいて文字又は図形の輪郭を印刷すると共に、その固化又は高粘度化を実行する。これにより、被印刷媒体上には、輪郭データに基づくインク流出防止部が形成される。その後、べたデータに基づいて、輪郭内を埋める様にべた印刷を実行する。このとき、輪郭は既に固化又は高粘度化されてインク流出防止部の役割を果たしているので、べた印刷によるインクが輪郭外へ滲み出すといったことがなく、文字又は図形が崩れた印刷となることがない。しかも、輪郭が既にインク流出防止部の役割を果たしているので、べたデータは、1回の印刷で十分な膜厚を有する様に分厚く印刷するものとして形成することができる。この結果、本実施の形態のインクジェット記録装置100によれば、塗膜が厚く、膜厚が均一な印刷物を得ることができる。」
(コ)「【図9】
[図:0001388363000001.jpg]
」
(サ)上記(ク)及び(コ)より、輪郭データに対して、ピッチずらしによる印刷データを追加する際に、同じ大きさのドットを副走査方向に1列ならべ、主走査方向に半ピッチだけずらした位置にドットを形成する処理を行う輪郭加工データとして設定するパターンが看取できる。
上記(ア)乃至(サ)の記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「べた塗り部分を含む印刷データに基づいて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
前記印刷データの内の輪郭データに基づいて、べた塗り部分の輪郭線を先に印刷し、この輪郭線を固化又は高粘度化した後に、輪郭線の内部をべた塗り印刷する様にしたことインクジェット記録方法であって、
輪郭データに対して、ピッチずらしによる印刷データを追加する際に、同じ大きさのドットを副走査方向に1列ならべ、主走査方向に半ピッチだけずらした位置にドットを形成する処理を行う輪郭加工データとして設定するパターンを印刷する、インクジェット記録方法。」
イ 甲第2号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第2号証(特開2016-16533号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
インクジェットインクが施されたインク印刷面を有する印刷品において、前記インク印刷面は、インク受容層形成用インクジェットインクと像形成用インクジェットインクとの重ね塗り領域と、像形成用インクジェットインクのみによって形成された領域とを有していることを特徴とする印刷品。」
(イ)「【0008】
従って、本発明の目的は、滲みの発生がなく、しかも高い画像濃度を有するインクジェット印刷が施された印刷品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、インクジェットインクが施されたインク印刷面を有する印刷品において、前記インク印刷面は、インク受容層形成用インクジェットインクと像形成用インクジェットインクとの重ね塗り領域と、像形成用インクジェットインクのみによって形成された領域とを有していることを特徴とする印刷品が提供される。」
(ウ)「【0011】
本発明の印刷品は、インクジェット印刷により形成されたインク印刷面(以下、単にインクジェット印刷面)を有するものであるが、このインクジェット印刷面は、受容層形成用インクジェットインクと像形成用インクジェットインクとが重ね塗りされた領域(重ね塗り領域)と、像形成用インクジェットインクのみの印刷による領域(像領域)とを有している。即ち、重ね塗り領域では、インクの滲みが有効に抑制され、重ね塗り領域により囲まれる内側領域である像領域は、高い画像濃度を有している。
従って、本発明におけるインクジェット印刷面では、印刷により形成する像の形態に応じて、重ね塗り領域と像領域との位置を設定することにより、滲みがなく且つ高濃度のインクジェット印刷面を得ることができる。
…
【0013】
本発明の印刷品では、インクジェット印刷面が、インク受容層形成用インクと像形成用インクとを用いてのインクジェット印刷により形成される。
即ち、図1において、印刷が施される印刷素材は、インクジェット印刷が施されるべき下地面1を有している(図1(a)参照)。尚、図1では、矩形状の印刷像を形成する場合を例にとって、この下地面1を矩形状で示している。
本発明では、この下地面1の周縁部に、インクジェット印刷により、受容層形成用インクYを施し、インクの種類に応じて適宜、加熱或いは紫外線照射等によりインクを硬化させてインク受容層3を形成する。従って、インク受容層3で囲まれる領域は、下地面1のままの状態である(図1(b)参照)。また、インク受容層3は、像形成用インクXにより形成される印刷像の色合いが損なわれない色調を有するものであり、一般的には、着色していない透明なインク、白色或いは白色に近い無彩色を有する。
次いで、像形成用インクXを用いて、残された下地面1及びインク受容層3より内側にインクジェット印刷を施し、適宜、加熱或いは紫外線照射等によりインクを硬化させることにより、全体として10で示されるインクジェット印刷面を有する本発明の印刷品が得られる。即ち、このインクジェット印刷面10では、周縁部が受容層用インクYと像形成用インクXとの重ね塗り領域5となり、この重ね塗り領域5で囲まれた領域が、像形成用インクXのみを用いて形成された像領域7となる。
【0014】
このようなインクジェット印刷面10では、周縁部の重ね塗り領域5にのみ受容層3が存在しており、この受容層3上に像形成用インクXが施されるため、滲みが有効に抑制されている。…」
(エ)「【0020】
上述した本発明において、印刷面10を形成する印刷素材(即ち、下地面1の素材)としては、特に制限されず、例えば、プラスチック製、金属製、あるいは紙製であってよい。
また、印刷素材の形態も特に制限されず、プラスチックキャップ、金属キャップ等のキャップの形態や、PETボトル等のプラスチック容器や飲料缶、ボトル缶等の金属容器の形態を有していてもよく、さらには、キャップなどに成形される前の金属板の形態を有してもよく、これにより、これら包装材の加飾性を高めることができる。さらには、ラベルやシュリンクフィルム等のフィルムの形態を有していてもよく、印刷されたフィルムを種々の物品の表面に貼付することもできる。」
(オ)「【0023】
像形成用のインクジェット油性インクは、各種の溶剤、各色の顔料乃至染料及び分散剤を含有しているものである。
【0024】
上記の溶剤としては、脂肪族炭化水素或いは芳香族炭化水素などの炭化水素系溶剤、アルキルアルコール系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、多価アルコール系溶剤などが代表的であり、これら溶剤の量は、インクがノズルヘッドから微粒の状態で噴出されるような粘度を有するように設定される。」
(カ)「【0031】
さらに、受容層インクに用いる溶剤としては、前述した油性インクに用いるものと同様のものを例示することができ、その量も、受容層インクがインクジェットノズルのヘッドから噴射され得るような粘度を有するように設定される。」
上記(ア)乃至(カ)の記載事項から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「着色していない透明なインクからなるインク受容層より内側に、像形成用インクXを用いて、インクジェット印刷を施し、像形成用インクジェットインクのみの印刷による領域(像領域)を形成し、加熱或いは紫外線照射等によりインクを硬化させることにより、全体としてインクジェット印刷面を有する飲料缶。」
ウ 甲第3号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第3号証(特開平8-300741号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 画像情報を入力する画像情報入力部と、
被プリント物のプリント面の起伏形状に関する情報を入力する形状情報入力部と、
前記形状情報入力部から入力した情報に基づいて前記画像情報入力部から入力した画像情報を演算処理し、被プリント物のプリント面の起伏形状に応じたプリントデータを作成する処理手段と、
前記処理手段によって作成されたプリントデータに基づいて被プリント物のプリント面にプリントを行うプリント手段とを備えてなることを特徴とするプリント装置。
…
【請求項3】 前記プリント手段は、被プリント物としての軸対象物をその軸線を中心として回転させる回動機構と、前記回動機構によって回動される被プリント物としての軸対象物の周面にプリントを行うプリントヘッドとを有することを特徴とする請求項1または2に記載のプリント装置。
…
【請求項6】 前記プリントヘッドは、被プリント物としての軸対象物の軸線方向に沿って往復走査するものであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のプリント装置。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被プリント物の起伏するプリント面に対してプリントを行うプリント装置およびプリントシステムに関するものである。
【0002】その被プリント物としては、例えば、球体や円筒体等の軸対象物を挙げることができ、さらに、球体の周面に対するプリントの例としては、ゴルフボールに、ネーム、ホールインワン記念やコンペ優勝等の記念ロゴ、プロ選手および著名人のサインなどをプリントしたり、その他、野球、卓球、庭球等の球技使用球に、企業ロゴ、個人団体名、記念ロゴ、プロ選手および著名人のサインなどをプリントする例を挙げることができる。また、円筒体の周面に対するプリントの例としては、缶ビール等の飲料品に限定ロゴや記念ロゴなどをプリントする例を挙げることができる。本発明のプリント装置およびプリントシステムは、特に、このような少ロットのプリント物の制作に好適である。」
(ウ)「【0020】キャリッジ22には、プリントヘッド29が装着されている。本例のプリントヘッド29は、インク吐出口から下方に向かってインクを吐出するするインクジェットプリントヘッドであり、熱エネルギーを利用してインクを吐出するようになっている。すなわち、複数のインク吐出口のそれぞれに連通するインク路が設けられ、プリントヘッド29を構成する基板に、それぞれのインク路に対応する電気熱変換体が形成されており、それらの電気熱変換体が駆動データに応じて発熱し、その熱エネルギーによってインクに膜沸騰が生じ、その膜沸騰による気泡の生成に伴ってインク吐出口からインクが吐出される。また、このプリントヘッド29は、異なる色のインクを吐出する複数のヘッド部を備えたカラー画像のプリントが可能なヘッドユニットとしてもよく、その場合には、それらのヘッド部を走査方向(矢印A1、A2方向)に並べて備えればよい。」
エ 甲第4号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第4号証(実用新案登録第3205505号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0008】
以下、添付図面を参照して、本考案の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る飲料用缶100の斜視図である。なお、図1では、飲料用缶100の詳細な形状の図示は省略し、有底円筒で表現した。より具体的には、飲料用缶100には、一般的に、フランジ部およびネック部が設けられたり、飲料用缶100のボトムには、一般的に、飲料用缶100の内部方向に凹む円形の凹部が設けられたりするが、これらの図示は省略している。
本実施形態の飲料用缶100には、円筒状に形成された缶本体200が設けられている。
缶本体200の上部には、円形の開口210が形成されている。また、缶本体200の下部には、底部220が設けられている。また、缶本体200は、外周面230を備える。
外周面230には、インクジェットヘッドによる印刷が施され、外周面230には、印刷画像が形成されている。」
(イ)「【0011】
図2は、缶本体200の外周面230に形成された印刷画像の展開図である。
本実施形態では、印刷画像は、いわゆるインクジェット印刷により形成される。
具体的には、缶本体200を周方向に回転させるとともに、缶本体200の軸方向に沿って延びるインクジェットヘッド(不図示)から缶本体200の外周面230に向けてインクを吐出することにより、缶本体200の外周面230に印刷画像が形成される。」
オ 甲第5号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第5号証(特開2004-98309号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0037】
本発明で使用する電子線は、インキジェット印刷物を効率良く硬化、架橋、乾燥させたり、塗装板の表面を改質するために、下地の塗装皮膜には出来るだけダメージを与えないように、120KV以下、より好ましくは100KV以下の加速電圧で照射することが好ましく、インキジェットインキの通常膜厚1?15μmを考慮すると80KV以下が好ましく、10?80KVの範囲がより好ましい」
カ 甲第6号証
本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第6号証(特開2012-245791号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
複数の画像領域に区分けされる画像領域部分と当該画像領域部分を区分けする境界部分とからなる画像データに基づいて、液滴状のインクを噴射する複数の吐出口が配設されてなるインクジェットヘッドを、印刷媒体に対して相対的に走査させることにより、該印刷媒体の表面に複数のインク滴の配列からなる画像を印刷するインクジェット印刷方法であって、
前記インクがエネルギー線硬化型インクであり、
前記境界部分を印刷する境界印刷工程と、
前記境界部分印刷後に、前記境界部分にエネルギー線を照射させて硬化させる境界硬化工程と、
前記境界硬化工程で硬化された前記境界部分に隣接する前記画像領域部分を印刷する画像領域印刷工程と、
前記印刷された画像領域部分をエネルギー線により硬化させる画像領域硬化工程と、
をこの順に有し、
前記境界部分は前記画像領域部分よりも小さなインク滴の配列により形成されるように印刷することを特徴とするインクジェット印刷方法。
…
【請求項4】
前記境界部分を構成するインクおよび前記画像領域部分を構成するインクの少なくとも一方が、クリアインクであることを特徴とする請求項1、2または3記載のインクジェット印刷方法。」
(イ)「【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、滲みのない鮮明でかつ高光沢な画像を得ることができるインクジェットプリンタおよびインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。(構成1)
複数の画像領域に区分けされる画像領域部分と当該画像領域部分を区分けする境界部分とからなる画像データに基づいて、液滴状のインクを噴射する複数の吐出口が配設されてなるインクジェットヘッドを、印刷媒体に対して相対的に走査させることにより、該印刷媒体の表面に複数のインク滴の配列からなる画像を印刷するインクジェット印刷方法であって、
前記インクがエネルギー線硬化型インクであり、
前記境界部分を印刷する境界印刷工程と、
前記境界部分印刷後に、前記境界部分にエネルギー線を照射させて硬化させる境界硬化工程と、
前記境界硬化工程で硬化された前記境界部分に隣接する前記画像領域部分を印刷する画像領域印刷工程と、
前記印刷された画像領域部分をエネルギー線により硬化させる画像領域硬化工程とをこの順に有することを特徴とするインクジェット印刷方法。
(構成2)
前記境界硬化工程は、前記インクジェットヘッドの走査軸と同一軸上の、該インクジェットヘッドの走査方向前方および後方の少なくとも一方に配置され、該インクジェットヘッドと連動するエネルギー線照射手段によって行われることを特徴とする構成1記載のインクジェット印刷方法。
(構成3)
前記画像領域硬化工程は、前記インクジェットヘッドに対して前記印刷媒体の搬送方向前方に配置されたエネルギー線照射手段によって行われることを特徴とする構成1または2記載のインクジェット印刷方法。
(構成4)
前記境界部分を構成するインクおよび前記画像領域部分を構成するインクの少なくとも一方が、クリアインクであることを特徴とする構成1、2または3記載のインクジェット印刷方法。
(構成5)
前記境界部分を構成するインクと前記画像領域部分を構成するインクとが、互いの境界において重なるように印刷することを特徴とする構成4記載のインクジェット印刷方法。
(構成6)
前記境界部分は前記画像領域部分よりも小さなインク滴の配列により形成されるように印刷することを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
(構成7)
二種類以上の異なるノズル径を有する、インク吐出用のノズルを備えたインクジェットヘッドを用いて、前記印刷を行うことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット印刷方法。
(構成8)
前記画像領域硬化工程は、前記画像領域印刷工程で印刷された画像領域部分のインクを平坦化させた後、該画像領域部分にエネルギー線を照射させて硬化させることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
(構成9)
印刷対象の画像データを、複数の画像領域に区分けされる画像領域部分と当該画像領域部分を区分けする境界部分とに分割する画像データ分割工程を、前記境界印刷工程よりも前に有することを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
(構成10)
複数の画像領域に区分けされる画像領域部分と当該画像領域部分を区分けする境界部分とからなる画像データに従って、インク滴を吐出させるインクジェットヘッドを印刷媒体に対して相対的に走査させて印刷するインクジェットプリンタであって、
前記インクがエネルギー線硬化型インクの場合、
前記インクジェットヘッドによる前記画像領域部分の印刷前に、前記インクジェットヘッドにより印刷された前記境界部分を硬化させ、さらに、前記境界部分を硬化させた後に、前記インクジェットヘッドにより印刷された前記画像領域部分を硬化させるエネルギー線照射手段
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
(構成11)
前記エネルギー線照射手段は、
前記インクジェットヘッドによる前記画像領域部分の印刷前に、前記インクジェットヘッドにより印刷された前記境界部分を硬化させる第一のエネルギー線照射手段と、
前記第一のエネルギー線照射手段により前記境界部分を硬化させた後に、前記インクジェットヘッドにより印刷された前記画像領域部分を硬化させる第二のエネルギー線照射手段と
から構成されることを特徴とする構成10に記載のインクジェットプリンタ。
(構成12)
印刷媒体を支持するプラテンと
前記印刷媒体を搬送する搬送手段と、
複数の吐出口を備え、前記印刷媒体に対して相対的に走査して、画像の境界部分および画像領域部分をこの順に印刷するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの走査軸と同一軸上の、該インクジェットヘッドの走査方向前方および後方の少なくとも一方に配置され、該インクジェットヘッドと連動し、前記境界部分を硬化させる第一のエネルギー線照射手段と、
前記インクジェットヘッドに対して前記印刷媒体の搬送方向前方に配置され、前記インクジェットヘッドと連動し、前記画像領域部分を硬化させる第二のエネルギー線照射手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
(構成13)
印刷媒体を支持するプラテンと
前記印刷媒体を搬送する搬送手段と、
複数の吐出口を備え、前記印刷媒体に対して相対的に走査して、画像の境界部分および画像領域部分をこの順に印刷するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの走査軸と同一軸上の、該インクジェットヘッドの走査方向前方および後方の少なくとも一方に配置され、かつ該走査軸上の位置と前記印刷媒体の搬送方向前方の所定位置との間を双方向に移動可能なエネルギー線照射手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成1によれば、エネルギー線硬化型インクを用いて、画像データのうち境界部分を印刷し、その直後に境界部分をエネルギー線により硬化させることにより、硬化された境界部分が画像領域部分のインクが広がり過ぎるのを防止して、滲みを無くし、高鮮明な画像を印刷することができる。」
(ウ)「【0013】
本発明の構成10及び11によれば、画像領域部分の印刷前に境界部分を硬化させた後に印刷された画像領域部分を硬化させることにより、境界部分で確実に分けられた状態で画像領域部分が印刷されるため、画像領域部分同士の滲みを防ぐことができる。」
(エ)「【0020】
メディア12は、PET、PP、PCおよびアクリル等のプラスチック素材、金属、ガラス、塩化ビニール、ゴム素材あるいは紙等のほぼ全ての素材からなるものを用いることができる。」
(オ)「【0029】
上記のように、本発明によれば、輪郭部分を印刷した直後に硬化させるので、輪郭の滲みがない鮮明な画像を得ることができ、さらに、ベタ部分を平坦化した後、硬化させるので光沢感のある画像を得ることができる。すなわち、本発明によれば、滲みの防止とインクの平坦化の両方を可能とし、鮮明かつ高光沢な画像を得ることができる。
【0030】
輪郭部分の印刷は、1ドットライン分以上2乃至15ドットライン幅以下の細い線幅とすることが望ましいが、インクやメディアおよびプリンタの位置精度によって異なるためこれに限るものではなく、適宜調整することが望ましい。」
(カ)「【0033】
次に、図3(b)に示すように、輪郭部分の印刷直後に、インクジェットヘッドの走査軸と同一軸に配置された第一の紫外線照射手段15あるいは16(図1参照)により紫外線を照射して、輪郭部分のインクを硬化させて堤防のようにする。硬化した輪郭部分がベタ部分のインクの滲みを防止することとなり、高鮮明な画像を得ることができる。」
(キ)「【0036】
次に、上述の輪郭部分と、ベタ部分とにおける印刷方法の例につき図5を参照して説明する。基本的には、輪郭部分を構成するインクを第1のインク、ベタ部分を構成するインクを第2のインクと便宜的に称したとき、メディアに着弾させるインク滴の相対的な大きさが、第1のインクのインク滴は小さく、第2のインクのインク滴は大きくなるように印刷する。このインク滴の大きさは、輪郭部分においては「輪郭部分を形成するのに適した大きさのインク滴」であり、ベタ部分においては「ベタ部分を形成するのに適した大きさのインク滴」である。輪郭部分は、図3からも理解できるように、ベタ部分34を囲む狭い領域であるため、小さいサイズのインク滴で形成し、ベタ部分は輪郭部分32及び33に挟まれた領域を埋めるように印刷するため、大きいサイズのインク滴で形成するのが良い。このような方法で印刷を行うことにより、輪郭部分においては所望の形状をより正確に得ることができ、ベタ部分においては効率よく迅速に印刷を行うことができる。」
上記(ア)乃至(キ)の記載事項から、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数の画像領域に区分けされる画像領域部分と当該画像領域部分を区分けする境界部分とからなる画像データに基づいて、液滴状のインクを噴射する複数の吐出口が配設されてなるインクジェットヘッドを、金属に対して相対的に走査させることにより、該金属の表面に複数のインク滴の配列からなる画像を印刷するインクジェット印刷方法であって、
前記インクがエネルギー線硬化型インクであり、
前記境界部分を印刷する境界印刷工程と、
前記境界部分印刷後に、前記境界部分にエネルギー線を照射させて硬化させる境界硬化工程と、
前記境界硬化工程で硬化された前記境界部分に隣接する前記画像領域部分を印刷する画像領域印刷工程と、
前記印刷された画像領域部分をエネルギー線により硬化させる画像領域硬化工程と、
をこの順に有し、
前記境界部分は前記画像領域部分よりも小さなインク滴の配列により形成されるように印刷し、
前記境界部分を構成するインクが、クリアインクであるインクジェット印刷方法。」
(2)甲第1号証を主引例とした特許異議申立理由1
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「印刷データに基づいて印刷を行うインクジェット記録方法」とは、インクを付着さることにより、像を形成することに他ならないから、甲1発明の「インクジェット記録方法」は、「インクを付着させて像を形成する像形成工程」を備えるといえる。
甲1発明は、輪郭データに対して、ピッチずらしによる印刷データを追加する際に、同じ大きさのドットを副走査方向に1列ならべ、主走査方向に半ピッチだけずらした位置にドットを形成する処理を行う輪郭加工データとして設定するパターンを印刷するものであるから、甲1発明の「インクジェット記録方法」は、「外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う1列のドット像列を形成するドット像列形成工程」を備えるといえる。
よって、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「インクを付着させて像を形成する像形成工程と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う1列のドット像列を形成するドット像列形成工程である、方法。」
[相違点1]
本件訂正特許発明1は、「飲料用缶の外面に」にインクを付着する「飲料用缶の製造」方法であるのに対し、甲1発明は、インクジェット記録方法であ点。
[相違点2]
本件訂正特許発明1は、「透明のインクにより形成され、当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程であって、像形成工程による像の形成形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、を備え、前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する」のに対し、甲1発明は、透明のインクの使用は不明であり、輪郭データに対して1列の印刷データを追加し、輪郭線を先に印刷するものの、輪郭データと追加した印刷データの前後は不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
甲2発明、甲6発明をはじめ、特許異議申立人が提出したいずれの甲号証をみても、本件訂正特許発明1の「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」は記載されていないし、示唆する記載もない。
また、「像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」を備えることが、設計的事項といえる理由もない。
したがって、甲1発明に、特許異議申立人が提出したいずれの甲号証を適用したとしても、上記相違点2に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項には至らない。
そして、本件訂正特許発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることによって、「クリアインク部301のドット像が2列以上となると、「△(滲みあり)」、または、「○(滲みはわずか)」という結果となり、滲みを防止する効果が得られた。」という本件特許明細書(【0063】参照。)に記載された効果を奏するものと認められる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明1について、甲第1号証を主引例とした特許異議申立理由1は成り立たない。
イ 本件訂正特許発明3、6及び7について
本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明1を引用するものであるところ、上記アのとおり、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件訂正特許発明3も、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件訂正特許発明6及び本件訂正特許発明7は、本件訂正特許発明1の「飲料用缶の製造方法」を、それぞれ、「印刷システム」及び「飲料用缶」と、発明のカテゴリーを変更したものであるから、上記アと同様の理由により、本件訂正特許発明6及び7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明3、6及び7について、甲第1号証を主引例とした特許異議申立理由1は成り立たない。
(3)甲第2号証を主引例とした特許異議申立理由1
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
本件訂正特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「飲料缶」「インクジェット印刷面」、「透明なインク」は、それぞれ、特許発明1の「飲料用缶」、「外面」、「透明のインク」に相当する。
甲2発明の「飲料缶」は、像形成用インクジェットインクの印刷によるインクジェット印刷面を有するものであるから、「飲料缶」は、飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程により形成されたものといえる。
甲2発明は、着色していない透明なインクからなるインク受容層3より内側に、像形成用インクXを用いて、インクジェット印刷を施し、像形成用インクジェットインクのみの印刷による領域(像領域)を形成するものであるから、「外面のうちの像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿うドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前にドット像列を形成するドット像列形成工程」を備えるといえる。
よって、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
「飲料用缶の外面にインクを付着させて像を形成する像形成工程と、
前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿うドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前にドット像列を形成するドット像列形成工程を備える、
飲料用缶の製造方法。」
[相違点3]
本件訂正特許発明1は、「透明のインクにより形成され、2列以上のドット像列」を形成するドット像列形成工程であって、「当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、を備え、前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する」方法であるのに対し、甲2発明は、着色していない透明なインクによるインク受容層のドット構成が不明である点。
(イ)相違点についての判断
甲1発明には、本件訂正特許発明1の「外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う1列のドット像列を形成するドット像列形成工程」は示されているものの、少なくとも上記相違点3に係る本件訂正特許発明1の「インクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」は示されていない。
甲2発明、甲6発明をはじめ、特許異議申立人が提出したいずれの甲号証をみても、上記相違点3に係る本件訂正特許発明1の「透明インクにより形成され、像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」は記載されていないし、示唆する記載もない。
また、「透明インクにより形成され、像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」を備えることが、設計的事項といえる理由もない。
したがって、甲2発明に、特許異議申立人が提出したいずれの甲号証を適用したとしても、上記相違点3に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項には至らない。
そして、本件訂正特許発明1は、上記相違点3に係る発明特定事項を備えることによって、「クリアインク部301のドット像が2列以上となると、「△(滲みあり)」、または、「○(滲みはわずか)」という結果となり、滲みを防止する効果が得られた。」という本件特許明細書(【0063】参照。)に記載された効果を奏するものと認められる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明2は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証、甲第3号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明1について、甲第2号証を主引例とした、特許異議申立理由1は成り立たない。
イ 本件訂正特許発明3、6及び7について
本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明1を引用するものであるところ、上記アのとおり、本件訂正特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件訂正特許発明3も、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件訂正特許発明6及び本件訂正特許発明7は、本件訂正特許発明1の「飲料用缶の製造方法」を、それぞれ、「印刷システム」及び「飲料用缶」と、発明のカテゴリーを変更したものであるから、上記アと同様の理由により、本件訂正特許発明6及び7は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明3、6及び7について、甲第2号証を主引例とした、特許異議申立理由1は成り立たない。
(4)甲第6号証を主引例とした特許異議申立理由1
ア 本件訂正特許発明1について(ア)対比 本件訂正特許発明1と甲6発明とを対比する。 甲6発明の「インクジェット印刷方法」は、金属の表面に複数のインク滴の配列からなる画像を印刷するものであるから、本件訂正特許発明1の「飲料用缶の製造方法」と甲1発明の「インクジェット印刷方法」とは、「金属の外面にインクを付着させて像列を形成する像列形成工程」を備える点で共通する。 よって、本件訂正特許発明1と甲6発明とは、以下の点で一致し、次の相違点で相違する。[一致点]
「金属の外面にインクを付着させて像列を形成する像列形成工程と、を備える、
金属の製造方法。」
[相違点4]
本件訂正特許発明1は、「前記外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程と、を備え、前記ドット像列形成工程では、前記2列以上のドット像列に含まれるドット像が千鳥状に配置され、且つ、各列に含まれ互いに隣り合うドット像同士の間に重なりが存在し、且つ、互いに隣接する列同士の間でもドット像の重なりが存在し、さらに、一方の列に含まれ互いに隣り合うドット像の間に位置する谷間の部分に対して他方の列に含まれるドット像の一部が入り込んでいる当該2列以上のドット像列を形成する、」方法であるのに対し、甲6発明は、インクジェット印刷方法であ点。
(イ)相違点についての判断
甲6発明には、本件訂正特許発明1の「外面のうちの前記像が形成される箇所の脇に、当該像の輪郭に沿う1列のドット像列を形成するドット像列形成工程」は示されているものの、少なくとも上記相違点4に係る本件訂正特許発明1の「透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」は示されていない。
また、「透明のインクにより形成され像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」を備えることが、設計的事項といえる理由もない。
したがって、甲6発明に、特許異議申立人が提出したいずれの甲号証を適用したとしても、上記相違点4に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項には至らない。
そして、本件訂正特許発明1は、上記相違点4に係る発明特定事項を備えることによって、「クリアインク部301のドット像が2列以上となると、「△(滲みあり)」、または、「○(滲みはわずか)」という結果となり、滲みを防止する効果が得られた。」という本件特許明細書(【0063】参照。)に記載された効果を奏するものと認められる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1は、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証乃至甲5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明1について、甲第6号証を主引例とした特許異議申立理由1は成り立たない。
イ 本件訂正特許発明3、6及び7について
本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明1を引用するものであるところ、上記アのとおり、本件訂正特許発明1は、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証乃至甲5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件訂正特許発明3も、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証乃至甲5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件訂正特許発明6及び本件訂正特許発明7は、本件訂正特許発明1の「飲料用缶の製造方法」を、それぞれ、「印刷システム」及び「飲料用缶」と、発明のカテゴリーを変更したものであるから、上記アと同様の理由により、本件訂正特許発明6及び7は、甲第6号証に記載された発明、甲第1号証乃至甲5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件訂正特許発明3、6及び7について、甲第6号証を主引例とする特許異議申立理由1は成り立たない。
(5)特許異議申立理由1(特許法第29条第2項違反)についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立理由1によっては、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
2 特許異議申立理由2(特許法第36条第6項第1号違反)について
(1)特許異議申立人の特許異議申立理由2は、本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3乃至5に係る発明についてのものであるところ、本件訂正請求による訂正によって、本件特許の請求項2に係る発明は、削除されたことから、当該請求項に係る特許異議の申立てはその対象が消滅したものである。
(2)特許異議申立理由2(特許法第36条第6項第1号違反)についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立理由2によっては、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
3 特許異議申立理由3(特許法第36条第6項第2号違反)について
(1)本件訂正により、特許異議申立理由(3-1)の対象であった、請求項1に係る特許は、本件訂正特許発明1において、「透明のインクにより形成され当該像の輪郭に沿う2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程であって、前記像形成工程による当該像の形成が行われる前に当該2列以上のドット像列を形成するドット像列形成工程」と訂正されたことにより、「ドット像列形成工程により形成する」「2列以上のドット像列」が透明のインクにより形成されることが特定された。
これに対し、「像形成工程」により飲料用缶の外面に形成する「像」は、透明のインクで形成すると、飲料缶の外面には視認できる像が何ら形成されないこととなってしまうから、像形成工程により飲料用缶の外面に形成する像は、飲料缶における表示機能をもった像であること、すなわち、透明のインク以外の有彩色のインクで形成されるものであることは、明らかである。
そうすると、「像形成工程」により飲料用缶の外面に形成する「像」と、「ドット像列形成工程により形成する」「2列以上のドット像列」とは明らかに識別できることとなるのであるから、本件訂正特許発明1は、特許異議申立理由のうち、特許異議申立理由(3-1)が解消されることとなった。
同様の理由により、本件訂正特許発明1を引用する本件訂正特許発明3、及び本件訂正特許発明6も、特許異議申立理由のうち、特許異議申立理由(3-1)が解消されることとなった。
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1、3及び6は、その記載は明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たす。
よって、本件訂正特許発明1、3及び6について、特許異議申立理由(3-1)は成り立たない。
(2)特許異議申立理由(3-2)は、本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3乃至5に係る発明についてのものであるところ、本件訂正請求による訂正によって、本件特許の請求項2に係る発明は、削除されたことから、当該請求項に係る特許異議の申立てはその対象が消滅したものである。
(3)本件訂正により、特許異議申立理由(3-3)の対象であった、請求項7に係る特許は、本件訂正特許発明7において、「前記外面に設けられ、当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され、当該像の輪郭に沿う透明の2列以上のドット像列」と訂正されたことにより、「像の形成が行われる前に当該外面に形成され」る「2列以上のドット像列」が透明であることが特定された。
これに対し、「外面に設けられた像」は、透明に形成すると、飲料缶の外面には視認できる像が何ら形成されないこととなってしまうから、「外面に設けられた像」は、飲料缶におけり表示機能をもった像であること、すなわち、透明以外の有彩色で形成されるものであることは、明らかである。
そうすると、「外面に設けられた像」と、「前記外面に設けられ、当該外面に設けられた前記像の形成が行われる前に当該外面に形成され、当該像の輪郭に沿う透明の2列以上のドット像列」とは明らかに識別できることとなるのであるから、本件訂正特許発明7は、特許異議申立理由のうち、特許異議申立理由(3-3)が解消されることとなった。
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明7は、その記載は明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たす。
よって、本件訂正特許発明7について、特許異議申立理由(3-3)は成り立たない。
(4)特許異議申立理由3(特許法第36条第6項第2号違反)についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立理由3によっては、本件特許の請求項1、3、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
4 特許異議申立理由4(特許法第17条の2第3項違反)について
特許異議申立理由4は、令和2年12月21日付けで提出された手続補正書による手続補正により、本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3乃至5に係る発明が当初明細書等に記載されていないものとなったところ、本件訂正請求による訂正によって、本件特許の請求項2に係る発明は、削除されたことから、当該請求項に係る特許異議の申立てはその対象が消滅したものである。
第7 むすび
以上検討したとおり、本件特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2、4及び5は、本件訂正の請求により削除され、これにより、請求項2、4及び5に係る特許に対する特許異議申立人による特許異議の申立は、申立の対象が存在しないものとなったため、不適法な申立てであってその補正をすることができないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。
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2021-700622