特許異議申立
2023-700990
情報処理装置、管理プログラム、管理方法、および、情報処理システム
- 審判番号
- 2023-700990
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-007343
- 登録番号
- 7276526
- 請求日
- 2023年09月20日
- 審決日
- 2024年01月09日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】オムロン株式会社
- 【権利者代理人】村上 尚
- 【異議申立人】伊藤 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 林 毅
- 審判官 稲垣 良一
- 分類
- P1651.121-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7276526号発明「情報処理装置、管理プログラム、管理方法、および、情報処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7276526号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7276526号の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、令和元年11月29日に出願された特願2019-216983号の一部を令和4年1月20日に新たに特許出願したものであり、令和5年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年5月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年9月20日に特許異議申立人 伊藤 裕美(以下、単に「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
特許第7276526号の請求項1ないし18の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明18」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
1 本件特許発明1
制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
仮想OS上で動作する複数のゲストOSのシャットダウンを管理する第1の管理部と、
前記複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部により前記停止条件を満たしたと判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモードを有する、
情報処理装置。
2 本件特許発明2
前記テストモードは、前記無停電電源装置のバッテリから前記情報処理装置に電力を供給させることなく、前記テストモードの開始の指示を受け付けた場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードである、
請求項1に記載の情報処理装置。
3 本件特許発明3
前記テストモードは、前記無停電電源装置のバッテリから前記情報処理装置に電力を供給させることなく、画面から前記テストモードの開始の指示を受け付けた場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードである、
請求項2に記載の情報処理装置。
4 本件特許発明4
前記複数のゲストOSをシャットダウンするための順序を示す停止優先度をユーザが設定するための停止優先度設定画面を表示する表示制御部をさらに備え、
前記第1の管理部は、前記テストモードの開始の指示を受け付けると、前記停止優先度を取得し、前記停止優先度に従って、前記複数のゲストOSのうち、第1のゲストOSのシャットダウンを実行し、当該第1のゲストOSのシャットダウンが完了した場合に、第2のゲストOSのシャットダウンを実行する、
請求項3に記載の情報処理装置。
5 本件特許発明5
前記表示制御部は、前記テストモードにおける各ゲストOSのシャットダウン時間を表示するための画面データを生成する、
請求項4に記載の情報処理装置。
6 本件特許発明6
前記画面データは、前記各ゲストOSのシャットダウン時間の累計時間をさらに含む請求項5に記載の情報処理装置。
7 本件特許発明7
前記画面データは、前記累計時間の制限時間をさらに含む、
請求項6に記載の情報処理装置。
8 本件特許発明8
前記画面データは、前記各ゲストOSのシャットダウンの成否をさらに含む請求項5に記載の情報処理装置。
9 本件特許発明9
前記画面データは、
前記各ゲストOSのシャットダウン時間の累計時間と、
前記各ゲストOSのシャットダウンの成否と、
前記累計時間の制限時間と、
をさらに含む請求項5に記載の情報処理装置。
10 本件特許発明10
前記テストモードの後に、ユーザの操作により前記複数のゲストOSを起動させる起動テストモードをさらに有する、請求項1に記載の情報処理装置。
11 本件特許発明11
前記第1の管理部は、画面から前記起動テストモードの開始の指示を受け付けると、前記複数のゲストOSを順次起動させる、
請求項10に記載の情報処理装置。
12 本件特許発明12
前記複数のゲストOSを起動するための順序を示す起動優先度をユーザが設定するための起動優先度設定画面を表示する表示制御部を備え、
前記第1の管理部は、前記起動優先度設定画面から前記起動テストモードの開始の指示を受け付けると、前記起動優先度を取得し、前記起動優先度に従って、前記複数のゲストOSを順次起動させ、
前記表示制御部は、前記複数のゲストOSの起動の状況を取得し、前記複数のゲストOSの起動の進捗チャートを表示するための画面データを生成する、
請求項11に記載の情報処理装置。
13 本件特許発明13
前記表示制御部は、前記起動テストモードにおける各ゲストOSの起動時間を表示するための画面データを生成する、
請求項12に記載の情報処理装置。
14 本件特許発明14
1又は複数の情報処理装置上で実行される管理プログラムであって、
仮想OS上で動作する複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える前記1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記シャットダウンが必要と判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモードを有する第1の管理ステップと、
を実行する管理プログラム。
15 本件特許発明15
前記テストモードは、前記無停電電源装置のバッテリから前記情報処理装置に電力を供給させることなく、前記テストモードの開始の指示を受け付けた場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードである、
請求項14に記載の管理プログラム。
16 本件特許発明16
前記テストモードは、前記無停電電源装置のバッテリから前記情報処理装置に電力を供給させることなく、画面から前記テストモードの開始の指示を受け付けた場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードである、
請求項15に記載の管理プログラム。
17 本件特許発明17
1又は複数の情報処理装置上で実行される管理方法であって、
仮想OS上で動作する複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える前記1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記シャットダウンが必要と判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作によりテストモードにて前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードを有する第1の管理ステップと、
を含む管理方法。
18 本件特許発明18
請求項1から13のいずれか一項に記載の情報処理装置を含む1又は複数の情報処理装置と、前記複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置と、前記情報処理装置と前記無停電電源装置を制御する1又は複数の制御装置とを備える、
情報処理システム。
第3 特許異議の申立ての理由、証拠
1 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、本件特許発明1ないし4、10ないし12及び14ないし18は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、また、本件特許発明5ないし9及び13は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1ないし18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113号第2号の規定により取り消すべきものである旨主張する。
2 証拠
甲第1号証:特開2009-37271号公報
甲第2号証:ユーザーズガイドPowerChute Network Shutdown v4.1 VMware
甲第3号証:白山貴之,加藤学,清水亮夫,桂島航(著)、「VMware自動化ガイド スクリプティングとワークフローによる管理テクニック」、翔泳社、2014年11月13日初版発行
甲第4号証:特開2005-275989号公報
なお、以降、甲第1号証ないし甲第4号証を単に「甲1」ないし「甲4」という場合がある。
第4 各甲号証の記載事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲1には、図面とともに次の記載がある。(なお、下線は、強調のため当審が付与した。以降も同様である。)
「【0001】
一つの物理計算機を論理的に分割して複数の仮想計算機を稼動するシステムであって、前記仮想計算機間に、停止に一定の順序が要求されるシステムにおける各仮想計算機の停止方法および前記停止方法を実装する計算機装置に関するものである。」
「【0003】
一方、昨今は一台の物理計算機上に複数の仮想計算機を稼動させる仮想化システムが台頭しており、前述の分散システムを、一台の物理計算機上の複数仮想計算機で構築するケースが出現してきた。この場合においても、物理計算機上で稼動する複数の仮想計算機間に依存関係が存在する場合は、その停止時に適切な順序で各仮想計算機を停止する必要がある。特に物理計算機本体の電源切断時のように、物理計算機そのものを停止する場合には、物理計算機上で稼動する全ての仮想計算機を適切な順序で停止する必要がある。」
「【0008】
本発明は、依存関係を持った複数の仮想計算機システムにおいて、システム構築時に停止順位を決めておくことにより、のちにオペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機をのみを指定するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現することを可能とするものである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、複数の仮想計算機を効率よく停止し、システム全体の停止時間を短縮することである。」
「【0013】
図1は、本発明の実施例を含む構成図である。(100)は物理計算機であって、仮想計算機制御部(200)、停止順位情報(300)、仮想計算機停止処理部(400)、仮想計算機状態監視部(500)を含む。(600)は物理計算機(100)上で稼動する仮想計算機群である。ここでは、各仮想計算機を(600)、(601)、…(60n)とする。仮想計算機制御部(200)は、外部入力インタフェース(700)を通じて、停止順位情報格納部(300)に情報を格納することができる。また、外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取ると、停止順位情報格納部(300)内の登録情報を参照し、その内容に基づいて仮想計算機停止処理部(400)に対して仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止を指示する。と同時に、仮想計算機監視部(500)に対して、当該仮想計算機の監視指示を行う。仮想計算機停止処理部(400)は、仮想計算機制御部(200)からの指示に従い、仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止処理を実施する。仮想計算機状態監視部(500)は、停止処理が実施された仮想計算機の状態を監視し、停止状態を検出すると仮想計算機制御部(200)に報告を行う。当該仮想計算機の停止報告を受けた仮想計算機制御部(200)は、停止順位情報格納部(300)の登録情報に基づき、次に停止する仮想計算機を特定し、再び仮想計算機停止処理部(400)にする仮想計算機の停止と、仮想計算機監視部(500)に対する当該仮想計算機の監視指示を行う。これを外部から停止指示された仮想計算機を停止するための全ての仮想計算機が停止するまで繰り返す。以下、図2、図3、図4を用いて、さらに詳細に述べる。」
「【0015】
ここで図3は停止順位情報格納部に格納する情報の例である。この例における対象仮想計算機列は外部からの停止指示を行うときに指定するキーワードであって、このキーワードごとに停止する仮想計算機の順序を停止順列に登録する。このとき、順序は停止順位という単位で登録し、同じタイミングで停止することが可能な仮想計算機は、同じ停止順位列内に登録する。1から7までの数字はそれぞれ、仮想計算機1から仮想計算機7を示す識別子である。ALLは物理計算機上の全ての仮想計算機の集合を示す。システム1およびシステム2は任意の仮想計算 機のグループを示している。この例では、図2の破線(1500)で示した集合(GR.1,仮想計算機1(800)から仮想計算機6(1300)の集合)と、同じく破線(1600)で示した集合(Gr.2,仮想計算機7(1400)のみ)を定義している。これら停止順位情報格納部の全ての内容は、図1の(700)で示される外部入力インタフェースと仮想計算機制御部を経由して任意に登録することが出来る。
【0016】
図4は、外部からの指示を受け付けた後の仮想計算機制御部の動作フローである。仮想計算機制御部は、仮想計算機を示す識別子かまたは集合名のキーワードとともに停止の指示を受け付けると、停止順位情報格納部の対象仮想装置列をサーチする(1900)。該当するエントリを発見したら、当該エントリの最初の集合(集合1)に登録されている全ての仮想計算機の情報を読み込む(2000)。次に、読み込んだ全ての仮想計算機の停止を仮想計算機停止処理部へ指示する(2100)。同時に、これら仮想計算機の状態監視を仮想計算機監視部へ指示し(2200)、仮想計算機停止処理部から全ての仮想計算機の停止報告がなされるまで待つ(2300),(2400)。読み込んだ全ての仮想計算機の停止報告がなされたら、再び停止順位情報格納部を参照し、現在読んでいる集合の次の集合に登録されている全ての仮想計算機の情報を読み込む(2500)。集合内に仮想計算機の情報が登録されていなくなるまで、(2100)からのステップを繰り返す(2600)。」
「【図1】
[図:0001406737000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001406737000002.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)の【0013】を参酌すれば、甲1には、「物理計算機(100)」の発明が記載されているといえる。
よって、上記(1)の特に下線部に着目すれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 物理計算機(100)であって、
依存関係を持った複数の仮想計算機システムにおいて、システム構築時に停止順位を決めておくことにより、のちにオペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機のみを指定するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現することを可能とするものであって、
仮想計算機制御部(200)、停止順位情報(300)、仮想計算機停止処理部(400)、仮想計算機状態監視部(500)を含み、
仮想計算機群(600)は物理計算機(100)上で稼動し、
仮想計算機制御部(200)は、外部入力インタフェース(700)を通じて、停止順位情報格納部(300)に情報を格納することができ、また、外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取ると、停止順位情報格納部(300)内の登録情報を参照し、その内容に基づいて仮想計算機停止処理部(400)に対して仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止を指示すると同時に、仮想計算機監視部(500)に対して、当該仮想計算機の監視指示を行い、
仮想計算機停止処理部(400)は、仮想計算機制御部(200)からの指示に従い、仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止処理を実施し、
仮想計算機状態監視部(500)は、停止処理が実施された仮想計算機の状態を監視し、停止状態を検出すると仮想計算機制御部(200)に報告を行い、
当該仮想計算機の停止報告を受けた仮想計算機制御部(200)は、停止順位情報格納部(300)の登録情報に基づき、次に停止する仮想計算機を特定し、再び仮想計算機停止処理部(400)にする仮想計算機の停止と、仮想計算機監視部(500)に対する当該仮想計算機の監視指示を行い、これを外部から停止指示された仮想計算機を停止するための全ての仮想計算機が停止するまで繰り返す、
物理計算機(100)。」
2 甲第2号証
甲2には、図面とともに次の記載がある。
(第4ページ)
「冗長UPS構成
冗長UPS構成:各サーバは2台以上のUPSによって保護されます。各UPSは単体でサーバ負荷をサポートできる必要があります。すべてのUPS Network Manager Cardは、PowerChuteがインストールされた各サーバと通信します。
[図:0001406737000003.jpg]
」
(第6ページ)
「1台のPowerChuteエージェントで、クラスタ内のすべてのUPSを管理できます。各UPは1台以上のVMwareホストを保護します。
[図:0001406737000004.jpg]
」
(第31ページ)
「「有効の場合、PowerChuteは、仮想マシンを起動する前にクラスタ内の全ホストが通常電源に復帰するまで待機します。各ホストでの仮想マシンの起動は、ホストのシャットダウンと逆の順番で行われます。」
(第38ページ)
「仮想マシンの優先度付けを使うと、仮想マシンの移行、シャットダウン、電源オンの順番を指定できます。
仮想マシンは、3つの優先度グループ(高/中/低に分けることができます。VM 優先度付けが有効なときは、データセンター、クラスター、仮想マシンのインベントリビューが左側に表示されます。右側には、高/中/低の優先度グループが一覧表示されます。」
(第39ページ)
「
[図:0001406737000005.jpg]
データセンターのインベントリビューと仮想マシンの優先度グループ
仮想マシンを優先度グループに分けるには、左側の仮想マシンをクリックし、右側の優先度グループまでドラッグします。複数の仮想マシンを選択するには、キーボードのCTRLキーを押しながら移動したい仮想マシンをクリックします。また、クラスターアイコンをクリックすると、クラスター内のすべての仮想マシンが選択され、データセンターアイコンをデータセンター内のすべてのクラスターが選択されます。
優先度グループの間で仮想マシンを移動するには、仮想マシンをグループ間でドラッグします。優先度グループから仮想マシンを削除するには、仮想マシンを選択して[削除]ボタンをクリックします。インベントリ内の仮想マシンのうち、優先度グループに割り当てられていないものは、優先度付け解除とみなされます。」
(第44ページ)
「重大なイベントが継続すると、PowerChuteが優先度順にVMシャットダウンを開始します。最初に、優先度付けがない仮想マシンが順番にシャットダウンされます。優先度付けがない仮想マシンの所要時間が経過したら、優先度が低→中→高の順番に仮想マシンがシャットダウンされます。優先度グループの仮想マシンがすべてシャットダウンされたら、PowerChuteはvAppsをシャットダウンし、続いてvCenter Serverが仮想マシンで実行中の場合はvCenter Server VMをシャットダウンします。その後、PowerChuteはホストおよびPowerChute物理サーバをシャットダウンします。
[図:0001406737000006.jpg]
」
3 甲第3号証
甲3には、図面とともに次の記載がある。
(第10ページ)
「仮想アプライアンスベースのコマンド実行環境であるvSphere Management Assistant(vMA)も提供されています。」
(第53ページ)
「ゲストOSが正しく起動したかは、VMware Toolsの稼働状況で確認できます。VMware Toolsの稼働状況の確認には、「<vmパス> get tools last active」を使います。
戻り値の意味は、それぞれ以下のようになります。
・0 :仮想マシンが起動してから、まだVMware Toolsからハートビートが返ってない
・1 :VMware Toolsから正常にハートビートが返ってきている
・5 :VMware Toolsからのハートビートは返ってきているが、欠けたり遅延している
・100:VMware Toolsからのハートビートが途絶えている」
(第54頁)
「仮想マシンの停止には「<vmパス> stop soft」もしくは「<vmパス> stop hard」を使います。stop softは vSphere Clientでの「ゲストOSのシャットダウン」に相当し、VMware Toolsを使いOSにシャットダウンを掛けてから仮想マシンを停止します。」
(第142頁)
「メモ 動作上、このスクリプトは電力変動に敏感に対応はできません。スクリプト自体の実行は1時間に1回程度で、それ以上こまめに動かしてもあまり意味がありません。すなわち、電力が逼迫してから最悪65分は遅れがでます。とは言え、サーバ集約で稼働率が改善されたがゆえに消費電力も比較的大きい仮想化基盤を停止させることは、電力逼迫の解消の一助にはなるでしょう。
[図:0001406737000007.jpg]
」
4 甲第4号証
甲4には、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
本発明は、例えば生産計画、運用計画、プロジェクト管理などの計画業務の管理支援に係る技術であり、特に一度策定した計画業務の変更が生じた際に既策定計画を見直す支援を行う計画業務管理支援システム、及び計画業務管理支援プログラムに関する。」
「【0052】
表示画面に表示された取引先のガントチャートの例えばフェーズAのタイムスケジュールのグラフをプロジェクト管理者が選択し、画面下部に表示された「納期変更」のボタンを操作すると、図11に示すように、ガントチャートの現在の納期である完了予定日の位置(縦軸)に、調整バー50が表示される。この調整バー50をマウスなどで所望の月日、つまり取引先から要望のあった納期である完了日にドラッグ&ドロップ操作して移動された場合には、CPU41は、調整を行う対象を、未着手のタスク(3階層目)、工程数は2日以上としてプロジェクト・テンプレート情報管理DB1の実行中のプロジェクト情報データベース群を検索する(図13のS101)。なお、工程数が2日未満のタスクに関しては、それ以上の短縮が難しいことから、原則対象から外すものとする。」
「【図11】
[図:0001406737000008.jpg]
」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「仮想計算機制御部(200)、停止順位情報(300)、仮想計算機停止処理部(400)、仮想計算機状態監視部(500)」は、全体として「仮想計算機」を制御するものと認められるから、後述する相違点を除いて、本件特許発明1の「制御部」に相当する。
また、甲1発明の「物理計算機(100)」は、「仮想計算機制御部(200)、停止順位情報(300)、仮想計算機停止処理部(400)、仮想計算機状態監視部(500)」を含み、また、“情報処理装置”といい得るものであるから、本件特許発明1の「制御部を備えた情報処理装置」に相当する。
イ 本件特許明細書の【0033】、【0078】、【0097】等の記載を参酌すれば、本件特許発明1の「ゲストOS」は、「仮想マシン」すなわち「仮想計算機」を含む概念である。
よって、甲1発明の「仮想計算機群(600)」と、本件特許発明1の「仮想OS上で動作する複数のゲストOS」とは、「複数のゲストOS」である点において共通する。
また、甲1発明において、「仮想計算機群(600)」に含まれる各「仮想計算機」は、後述する相違点を除いて、本件特許発明1の「ゲストOS」に相当する。
また、甲1発明において、「仮想計算機停止処理部(400)」は、「仮想計算機」を「停止」(シャットダウン)する処理(管理)をする機能部と認められるから、後述する相違点を除いて、本件特許発明1の「複数のゲストOSのシャットダウンを管理する第1の管理部」に相当する。
ウ 甲1発明の「外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取ると、停止順位情報格納部(300)内の登録情報を参照し、その内容に基づいて仮想計算機停止処理部(400)に対して仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止を指示すると同時に、仮想計算機監視部(500)に対して、当該仮想計算機の監視指示を行い、
仮想計算機停止処理部(400)は、仮想計算機制御部(200)からの指示に従い、仮想計算機群(600)のうちいずれかの仮想計算機の停止処理を実施し、
仮想計算機状態監視部(500)は、停止処理が実施された仮想計算機の状態を監視し、停止状態を検出すると仮想計算機制御部(200)に報告を行い、
当該仮想計算機の停止報告を受けた仮想計算機制御部(200)は、停止順位情報格納部(300)の登録情報に基づき、次に停止する仮想計算機を特定し、再び仮想計算機停止処理部(400)にする仮想計算機の停止と、仮想計算機監視部(500)に対する当該仮想計算機の監視指示を行い、これを外部から停止指示された仮想計算機を停止するための全ての仮想計算機が停止するまで繰り返す」との構成によれば、甲1発明は、「外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取る」ことを契機として、「仮想計算機群(600)」の停止を実行する処理形態(モード)を有しているといえる。
そして、甲1発明の「オペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機のみを指定するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現する」との構成を参酌すれば、甲1発明において「外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取る」ことは、「オペレータ」すなわち「ユーザ」の「操作」に基づいてなされているといえる。
したがって、甲1発明において、「外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取る」ことを契機として、「仮想計算機群(600)」の停止を実行する処理形態(モード)を有することと、本件特許発明1の「前記判定部により前記停止条件を満たしたと判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモードを有する」こととは、「ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードを有する」点において共通する。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
○一致点
制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
複数のゲストOSのシャットダウンを管理する第1の管理部
を備え、
ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードを有する、
情報処理装置。
○相違点
(相違点1)
「複数のゲストOS」が、本件特許発明1においては、「仮想OS上で動作する」ものであるのに対し、甲1発明の「仮想計算機群(600)」は「物理計算機(100)上で稼動」するものである点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「制御部」がさらに「前記複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定部」を備えるのに対し、甲1発明は、当該判定部に係る構成を具体的に特定していない点。
(相違点3)
本件特許発明1は、「前記判定部により前記停止条件を満たしたと判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモードを有する」ものであるのに対し、甲1発明において、甲1発明において、「外部入力インタフェース(700)から、任意の仮想計算機の停止指示を受け取る」ことを契機として、「仮想計算機群(600)」の停止を実行する処理形態(モード)を有するものの、当該処理形態(モード)が、「テストモード」であることを具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2と相違点3について検討する。
ア 相違点2について
甲1ないし甲4の中で、「無停電電源装置」(UPS)について記載されているのは、甲2のみである。
そして、甲2の特に第4ページ及び第6ページを参酌すると、甲2は、ネットワークに接続された複数のホストと複数のUPS(無停電電源装置)からなるシステムに関するものと認められる。
一方、甲1には、「物理計算機(100)」を複数のホストで構成すること、及び、無停電電源装置を設けることについての記載も示唆もない。
したがって、甲1発明と甲2に記載された技術事項とは、前提となるシステム構成が異なる以上、甲1発明に、甲2に記載された技術事項を適用する動機付けがない。
したがって、当業者といえども、甲2ないし甲4に記載された発明に基づいて相違点2に係る本件特許発明1の構成を容易に想到することができたとはいえない。
イ 相違点3について
本件特許発明1における「テストモード」に関し、本件特許明細書には、次の記載がある。
「【0015】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、所定の順序に従って、前記複数のゲストOSのシャットダウンを行うテストモードを有してもよい。
【0016】
前記の構成によれば、所定の順序に従って複数のゲストOSのシャットダウンを行うテストモードを有するので、様々な順序によるゲストOSのシャットダウンを試すことができる。
【0017】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、前記テストモードにおける各ゲストOSのシャットダウン時間を表示するための画面データを生成する表示制御部をさらに備えてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、テストモードにおける各ゲストOSのシャットダウン時間を表示するので、ゲストOSのシャットダウンの適切な順序を検討することができる。」
「【0078】
サーバ1は、所定の順序に従って、複数の仮想マシン(ゲストOS)14のシャットダウンを行うテストモードを有することとしてもよい。この場合、ユーザの操作によりテストモード開始の指示を受け付けると、サーバ1の制御部10は、テストモードを実行する。
【0079】
テストモードにおいて、制御部10は、各ノードを停止するための順序を示す停止優先度を取得する停止優先度取得処理と、取得した停止優先度に従って各ノードを順次停止させるノード停止処理と、各ノードへの停止指示時刻から停止完了報告までの時間をシャットダウン時間として表示するシャットダウン時間表示処理とを実行する。」
以上の記載によれば、本件特許発明1における「テストモード」とは、複数のゲストOSの適切なシャットダウンの順序を検討するために、様々なシャットダウンの順序を試すことができる「モード」であると認められる。
一方、甲1発明は、「依存関係を持った複数の仮想計算機システムにおいて、システム構築時に順位を決めておくことにより、のちに、オペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機のみを停止するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現することを可能とするもの」であるところ、「オペレータ」の「操作」の際には、任意の仮想計算機を安全に停止するために、複数の仮想計算機の停止順序が予め決められていることを前提としているところ、当該「オペレータ」の「操作」に基づいて仮想計算機を停止する処理の形態(モード)は、本件特許発明1の「テストモード」とはいえないことは明らかである。
また、甲2ないし甲4には、「ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモード」について記載も示唆もなく、そのような事項が、本件特許出願時における技術常識であるとも認められない。
したがって、当業者といえども、相違点3に係る本件特許発明1の構成を甲1ないし甲4に記載された発明に基づいて容易に想到することができたとはいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人の主張
申立人は、異議申立書において、上記相違点2及び3に関して、以下のように主張している。
(ア)異議申立書第21ページ
「 甲2発明の構成(ウ)の「重大なイベントが継続すると、PowerChuteが優先度順にVMシャットダウンを開始します。」と記載されている。これは、本件特許発明(1C)の「前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する」ことに相当する。
そして、甲3発明の事項(ク)には、「仮想アプライアンスベースのコマンド実行環境であるvSphere Management Assistant(vMA)も提供されています。」と記載されている。甲3発明の事項(ケ)には、「ゲストOSが正しく起動したかは、VMware Toolsの稼働状況で確認できます。」と記載されている。これは本件特許発明(1C)の「仮想OS上で動作する前記複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照」することに相当する。
甲1発明、甲2発明、甲3発明は何れも仮想マシンのシャットダウンに係るものであり、技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性があるため、両者を組み合わせる動機付けが存在する。」
(イ)異議申立書第21~22ページ
「 甲1発明の構成(D1)は、本件特許発明(1D)に相当する。
甲1発明の事項(イ)には、「オペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機をのみを指定するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現することを可能とするものである。」と記載されている。これは本件特許発明(1D)の「ユーザの操作により前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するテストモード」に相当する。」
イ 申立人の主張についての検討
(ア)ア(ア)の主張について
上記ア(ア)の主張に関して、上記(3)アで述べたように、「無停電電源装置」(UPS)について記載されているのは、甲2のみであるところ、甲3には、相違点2に係る本件特許発明1の構成は開示されていない。
また、甲1発明と甲2記載の技術事項とは、前提とするシステム構成が異なるところ、単に、「仮想マシンのシャットダウンに係るもの」との共通性のみにより、複数のホストがネットワークを介して接続されてなるシステムに含まれる無停電電源装置(UPS)の構成を、複数のホストがネットワークを介して接続される構成を前提としていない甲1発明の「物理計算機(100)」に付加すべき理由がない。
したがって、上記ア(ア)の主張は採用することができない。
(イ)ア(イ)の主張について
上記ア(イ)の主張に関して、上記(3)イで述べたように、甲1の「オペレータが任意の仮想計算機を停止するときに、当該仮想計算機のみを指定するという単純な操作で、当該仮想計算機の停止の前提となる他の全ての計算機を予め決定した順序で停止し、複数仮想計算機の安全な停止を実現することを可能とするものである。」との記載は、むしろ、甲1発明の処理が「テストモード」を意図したではないことを示すものであるから、上記ア(イ)の主張は、採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、当業者が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
2 本件特許発明2ないし13及び18について
本件特許発明2ないし13及び18は、本件特許発明1の構成をすべて含むものである。
よって、本件特許発明2ないし13及び18は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
3 本件特許発明14ないし16について
本件特許発明14に係る「仮想OS上で動作する複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える前記1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定ステップ」との構成は、相違点2に係る本件特許発明1の構成に対応し、また、本件特許発明14に係る「仮想OS上で動作する複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える前記1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定ステップ」との構成は、相違点3に係る本件特許発明1の構成に対応するものである。
また、本件特許発明15及び16は、本件特許発明14の構成をすべて含むものである。
よって、本件特許発明14ないし16は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
4 本件特許発明17について
本件特許発明17に係る「仮想OS上で動作する複数のゲストOSの稼動状態と、前記複数のゲストOSを備える前記1又は複数の情報処理装置に接続された1又は複数の無停電電源装置の状態とを参照して、前記複数のゲストOSのシャットダウンを開始する停止条件を満たしたか否かを判定する判定ステップ」との構成は、相違点2に係る本件特許発明1の構成に対応し、また、本件特許発明17に係る「前記判定ステップにより前記シャットダウンが必要と判定された場合に前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードとは別に、ユーザの操作によりテストモードにて前記複数のゲストOSのシャットダウンを実行するモードを有する第1の管理ステップ」との構成は、相違点3に係る本件特許発明1の構成に対応するものである。
よって、本件特許発明17は、本件特許発明1と同様の理由により、当業者が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700990