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特許異議申立

2023-700846

乗物外装用装飾フィルム

審判番号
2023-700846
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-223648
登録番号
7226977
請求日
2023年08月17日
審決日
2024年06月18日
公報発行日
2024年07月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】高橋 正俊
  • 【権利者代理人】胡田 尚則
  • 【権利者代理人】河原 肇
  • 【異議申立人】前田 洋志
審判長/審判官
  • 審判長 塩見 篤史
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 菊地 則義
分類
P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7226977号発明「乗物外装用装飾フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7226977号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 理由 第1 手続の経緯 特許第7226977号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年11月29日の出願であって、令和5年2月13日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~4に係る特許に対し、同年8月17日に特許異議申立人 前田 洋志により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第7226977号の請求項1~4に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 樹脂層及び接着層を含む、乗物外装用装飾フィルムであって、 前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み、 前記樹脂層の引き裂き強度が、20℃において8.0N以上であり、 前記樹脂層の厚さが、150μm以上であり、 前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み、 前記(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度は、-58℃以上、-40℃以下であり、かつ、前記カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている、乗物外装用装飾フィルム。 【請求項2】 前記樹脂層の引き裂き強度が、-5℃において15.0N以上である、請求項1に記載の装飾フィルム。 【請求項3】 保護層及び装飾層から選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。 【請求項4】 鉄道車両の外装に使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。」 第3 申立理由の概要 理由1(新規性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2017-119403号公報 甲第2号証:特開2010-131901号公報 甲第3号証:特開2009-35588号公報 甲第4号証:特開平7-90160号公報 甲第5号証:特開2011-168736号公報 甲第6号証:特開2016-121310号公報 甲第7号証:特開2017-171777号公報 理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許の請求項1においては、「前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含」む旨が記載されている。一方で、本件特許明細書の実施例欄においては、段落0111に示す表1においては架橋剤が例示されているものの、接着層を形成するための接着層用コーティング液の組成を示す表2においては架橋剤が記載されていない。従って、本件特許明細書の実施例欄においては、請求項1で規定する架橋剤が使用されていないため、請求項1で規定する反応生成物は得られていない。 つまり、本件特許明細書においては、特許請求の範囲に記載された発明が実施例による効果の裏付けを欠いており、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の課題を解決できるとは認識し得ない。 従って、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、サポート要件違反に該当する。 第4 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 1 甲号証について 前記第3の甲第1号証~甲第7号証 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「【請求項1】 基材に接着される加飾シートであって、 表面層と、 オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む第1樹脂層と、 前記第1樹脂層と隣接するように配置され前記基材に接着される接着層であって、該接着層は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー混合物の(メタ)アクリル共重合体を含んでなり、30℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が1.0×103Pa以上、1.0×106Pa以下である接着層、と をこの順に含む加飾シート。 1b「【0007】 本開示は、真空圧空成形法を用いた加飾シートの貼り付けに際して、埃などの異物の混入及び基材表面の凹凸を隠蔽することが可能な加飾シートを提供する。また、当該加飾シートを含む構造体及びその製造方法を提供する。」 1c「【0031】 加飾シートは、表面層、意匠層などの支持層となるバルク層を含んでもよい。バルク層として、様々な樹脂、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などの共重合体が使用できる。強度、耐衝撃性などの観点から、バルク層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂及びポリカーボネートが有利に使用できる。バルク層は外部からの穿刺、衝撃などから構造体をより有効に保護する保護層としても機能することができる。バルク層の厚さは様々であってよいが、加飾シートの成形性に悪影響を及ぼさずに上記機能を加飾シートに付与するという観点から、一般に約2μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上であり、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。バルク層を用いると加飾シートの耐引っかき性をより高めることができる。」 1d「【0033】 第1樹脂層は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む。オレフィン系樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)樹脂などが使用できる。スチレン系樹脂として、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン(AAS)樹脂などが使用できる。本開示において、オレフィン単位とスチレン単位の両方の重合単位を有する共重合体を含む樹脂はオレフィン系樹脂に属するものとする。塩化ビニル系樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂などが使用できる。強度及び耐衝撃性が高く、比較的安価であることから、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、及びアクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)樹脂が有利に使用でき、自動車部品などに一般的に使用されるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂がコスト面から特に有利に使用できる。」 1e「【0045】 モノマー混合物には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤として、例えば、1,6-ヘキサンジオールアクリレートなどの多官能アクリレート、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は特に限定されないが、例えば、前記モノマー混合物を100質量部としたとき約0.01質量部以上、約1.0質量部以下とすることができる。」 1f「【0052】 加飾シートの中で基材表面に最初に接触する接着層は、その接触温度にて十分な初期濡れ性を有することが有利である。いくつかの実施態様において、接着層のガラス転移温度(Tg)は、約-15℃以上、約-10℃以上、又は約-5℃以上、約50℃以下、約40℃以下、又は約30℃以下とすることができる。接着層のTgを上記範囲とすることにより、常温で接着層の形状を保持しつつ、成形時の接着層の初期濡れ性を向上させることができる。」 1g「【0075】 本開示の加飾シートは、自動車部品、家電商品、鉄道などの車両、建材などの加飾に使用することができ、特に高光沢又は微細な模様を有する自動車の内装品、家電製品などの加飾に有利に使用することができる。」 1h「【0080】 <例1> <接着層Aの作製> イソオクチルアクリレート(IOA)90.0質量部、及びアクリル酸(AA)10.0質量部を含むモノマー成分液を調製した。さらに、Irg651を光重合開始剤として0.04部添加し、系を10分間攪拌しながら窒素パージした後、紫外線を照射してアクリル部分重合物を得た。得られたアクリル部分重合物に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08質量部、Irg651を0.1部添加してモノマー混合物を調製した。得られたモノマー混合物を70μmのギャップを持つ2つの剥離処理PETフィルム(三菱化学株式会社製)の間に塗布し、紫外線を照射し架橋させて、厚さ70μmの接着層Aを作製した。 【0081】 <表面層の作製> メチルメタクリレート(MMA)99質量部、水酸基を含有するモノマーとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1質量部、溶媒として酢酸エチル150質量部、及び重合開始剤V-601 0.6質量部を混合し、窒素雰囲気下、温度65℃で24時間重合反応を行い、メタクリレート共重合体の酢酸エチル溶液を作製した。 【0082】 得られたメタクリレート共重合体溶液に、メタクリレート共重合体固形分100gに対し7.69mmolとなるように、デュラネート(商標)TPA-100を混合し、得られた混合物を、支持シートである、厚さ約50μmの平坦な透明PETフィルム(東レ株式会社製、製品名T-60)表面上にナイフコートにより塗布した。その後、90℃で3分、130℃で5分、合計8分間オーブン(エスペック社製恒温機PV-221)中で乾燥し、厚さ約60μmのアクリル樹脂表面層を作製した。 【0083】 <金属蒸着層が積層されたバルク層の作製> 水系ポリウレタン溶液(D-6260)を、支持体である、厚さ約50μmの平坦な透明PETフィルム(東レ株式会社製、製品名T-60)表面上にナイフコートにより塗布した。その後、90℃で3分、160℃で5分、合計8分間オーブン(エスペック社製恒温機PV-221)中で乾燥し、厚さ約30μmのポリウレタンバルク層がPETフィルム上に形成されたシートを作製した。その後、真空蒸着機を用いて金属スズをポリウレタンバルク層の片面に厚さ430オングストロームとなるまで蒸着した。蒸着条件は以下のとおりであった。 装置:真空蒸着装置EX-400(株式会社アルバック製、日本国神奈川県茅ヶ崎市) ターゲット金属蒸発のエネルギー源:電子線 スズ蒸着膜の成膜速度:5オングストローム/秒 【0084】 <第1接合層の作製> ポリエステルポリオール(E-295NT)とポリイソシアネート(C-55)を質量比で10:0.3となるように配合し、ウレタン系接着剤組成物を調製した。このウレタン系接着剤組成物を表面層の上に厚さが15μmとなるようコーティングし、第1接合層を形成した。その後、ポリウレタンバルク層の金属スズ蒸着面と第1接合層を接触させて、バルク層と表面層を一体化させた。 【0085】 <第2接合層の作製> Desmocoll 530 100質量部及びDesmoodur IL1541 0.64質量部をメチルエチルケトンで35%濃度になるように希釈した混合液を用意し、剥離処理PETフィルム(三菱化学株式会社製)上に塗布し、80℃で3分間乾燥し、厚さ20μmの第2接合層を作製した。 【0086】 <加飾シートの作製> 接着層Aから剥離処理PETフィルムの一方を剥離し、厚さ0.10mmのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムと接着層Aを一体化させた。バルク層と表面層を一体化させた積層体からPETフィルムを剥離し、バルク層を露出させ、この露出面と第2接合層とを貼り合わせた。その後、第2接合層の表面から剥離処理PETフィルムを剥離して、露出した第2接合層の表面に、ABSフィルムと接着層Aの積層体のABSフィルム面を貼りあわせて、加飾シートを作製した。 ・・・ 【0089】 <例4> 第1樹脂層の厚さが0.20mmとなるように作製した以外は例1と同様にして例4を作製した。 ・・・ 【0109】 加飾シートの構成と隠蔽性能の評価結果を表2に示す。 【0110】 【表2】 [図:0001412300000001.jpg] 【0111】 接着層の粘弾性特性を以下の方法に従って評価した。 【0112】 2.ガラス転移温度(Tg)(30℃未満) Rheometric Scientific社製ARESを用い、温度-60℃~30℃、昇温速度5.0℃/分、周波数1.0Hzの剪断モードで測定された損失正接(tanδ)(損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’))のピーク温度をガラス転移温度とする。 【0113】 3.貯蔵弾性率(G’) Rheometric Scientific社製ARESを用い、所定温度(30℃、80℃、及び130℃)にて、昇温速度5.0℃/分、周波数1.0Hzの剪断モードで測定された剪断貯蔵弾性率を貯蔵弾性率(G’)とする。 【0114】 接着層A~D及びPのガラス転移温度(Tg)、及び貯蔵弾性率(G’)(30℃、80℃及び130℃)を表3に示す。 【0115】 【表3】 [図:0001412300000002.jpg] 」 (2)甲第2号証(以下。「甲2」という。) 2a「【請求項1】 基材に貼り付ける積層シートであって、 最表面に配置される表面層(A)と、熱可塑性樹脂層(B)と、前記基材に接着される接着層(C)とを含み、 前記表面層(A)は、 水酸基を含有するモノマーを0.5質量%以上5質量%未満含む(メタ)アクリレートモノマーを共重合してなる(メタ)アクリル共重合体(I)と、一分子に二以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(II)とを、前記(メタ)アクリル共重合体(I)100gに対し前記イソシアネート基が3~16mmolになる混合比で、混合して形成された、ガラス転移点(Tg)が80℃以上の(メタ)アクリル樹脂化合物を主成分とする積層シート。」 2b「【0011】 そこで、本発明の課題は、上述する従来技術の現状に鑑み、真空加熱圧着法を用いた基材への貼り付けに適した高い延伸性を有するとともに、最表面層が良好な耐傷つき性と耐薬品性を備えた積層シートを提供することである。また、これを用いた部品とその製造方法を提供することである。」 2c「【0029】 上述するように、本実施形態の表面層(A)は、(メタ)アクリル共重合体(I)を形成する際の水酸基含有モノマー量を5質量%未満に調製するとともに、イソシアネート化合物(II)の混合比を調整することで、架橋の進行を抑制して延伸性を高める一方で、アクリル樹脂化合物のガラス転移点(Tg)を80℃以上の比較的高い温度に調整している。このガラス転移点の調整により、アクリル共重合体そのものの構造をより蜜なものとし、薬品の侵入を妨げる結果、耐薬品性、耐傷つき性を向上させるだけでなく、爪などで押してもその跡が残らないようにする力である押し跡回復力を高めることができる。 【0030】 なお、真空加熱圧着法等を用いて基材に装飾シート等を貼り付ける場合、基材の耐熱性を考慮し、貼り付け温度は110℃~150℃、最も一般的には、120℃程度に調整される。アクリル樹脂化合物のガラス転移点(Tg)は、少なくともこの貼り付け温度を超えない範囲であることが望ましく、貼り付け温度以下であれば、例えば90℃以上、あるいは105℃以上にしてもよい。」 2d「【0057】 熱可塑性樹脂層(B)の厚みは、特に限定されないが、積層シートを基材に貼り付け加工する際に、十分な柔軟性を維持し、成形性を確保できればよい。例えば300μm以下、あるいは200μm以下とする。また、積層シートを基材に貼り付け加工する際に、積層シートに生じる応力を緩和する、一種の応力緩和層としての機能が発揮できる厚みが望ましく、例えば10μm以上、20μm以上あるいは30μm以上とすることが好ましい。」 2e「【0079】 本実施形態の積層シートは、最表面に配置される表面層(A)と、熱可塑性樹脂層(B)と、基材に接着される接着層(C)とを少なくとも含むものであるが、さらに、各層間の接着性を挙げるため、図6に示すように、表面層(A)と熱可塑性樹脂層(B)間に、別の第2接着層140を加えてもよい。さらに、図7に示すように、積層シートに装飾性、デザイン性を付加する目的で、印刷層や着色層等の加飾層150や金属層160を表面層(A)と接着層(C)間に加えてもよい。また、各層の間の接着性を上げるために、必要によりプライマーを塗布してもよい。」 2f「【0093】 以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0094】 <実施例1> 実施例1の積層シートは、まず、表面層(A)を含むシートA、熱可塑性樹脂層(B)を含むシートB、および接着層(C)を含むシートCの3つのシートを以下の条件で準備し、これらを貼り合わせることで作製した。 【0095】 (シートAの作製条件) メタクリル酸メチル(MMA)(三菱レイヨン株式会社製、製品名:アクリエステルM)99重量部、水酸基を含有するモノマーとして、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)(三菱レイヨン株式会社製、製品名:アクリエステルHISS)1重量部、溶媒として酢酸エチル150重量部、および重合開始剤としてジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、製品名:V-601)0.6重量部を混合し、窒素雰囲気下で、65℃の温度で24時間重合反応を行い、アクリレート共重合体の酢酸エチル溶液を作製した。 【0096】 得られたアクリレート共重合体溶液に,固形重量比として100gに対し7.69mmolとなるように、イソシアネート(NCO)(製品名:デュラネートTPA-100、旭化成株式会社製)を混合し、支持シートである、約50μm厚みの平坦な透明PETフィルム(東レ株式会社製、製品名T-60)表面上にナイフコートにより塗布した。これを90℃で3分、その後130℃で5分、合計8分間オーブン(エスペック社製 恒温機PV-221)で乾燥させ、厚み約60μmのアクリル樹脂化合物の層を形成した。こうして表面層(A)がPETフィルム上に形成されたシートAを作製した。 【0097】 表1に、アクリレート共重合体を作製するために使用したMMAとHEMAとの質量部比率、アクリレート共重合体100gに対するイソシアネートの添加量をmmol単位で示した。また、アクリル樹脂化合物のガラス転移点(Tg)をあわせて示した。なお、ガラス転移点(Tg)は、Rheometric Scientific社製、RSA-IIIを用い、Mode:Tension、Frequency:10.0Hz、温度:30℃~150℃((5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率E‘’/貯蔵弾性率E‘)のピーク温度を測定することにより求めることもできるが、本実施例および比較例では、以下の計算式を用いてTgを求めた。なお、単量体(ホモポリマー)のガラス転移点(Tg)は、カタログ値を用いた。 【0098】 <Tgの計算式> 重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式(Fox,T.G., Bull. Am. Phys. Soc., 1, in 1956, p.123)に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なった。 【0099】 【数1】 [図:0001412300000003.jpg] 【0100】 式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各重合単量体の重量比率を表わす。なお、ここで、重合体のガラス転移温度(Tg)をアクリル樹脂化合物のガラス転移点とし、MMA、HEMA、およびBMAそれぞれのホモポリマーのガラス転移点をTg1,Tg2、Tg3各混合比率を質量%に換算したものをW1、W2、W3、m=3として計算した。 【0101】 (シートBの作製条件) 水系ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、製品名:D-6260)を支持体である、約50μm厚みの平坦なPETフィルム(東レ株式会社製 製品名T-60)表面上にナイフコートにより塗布した。これを90℃で3分、その後160℃で5分、合計8分間オーブン(エスペック社製 恒温機PV-221)で乾燥させ、厚み、約30μmのポリウレタン樹脂層、すなわち熱可塑性樹脂層(B)がPETフィルム上に形成されたシートBを作製した。 【0102】 (シートCの作製条件) アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製)とアクリル酸(東亞合成株式会社製)とを質量部比率で94:4となるように混合し、Tg=-21℃、カルボキシル基量10.2mol%、平均分子量580,000のカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(成分(a))を得た。一方、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルM)とメタクリル酸n-ブチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルB)と、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルDM)とを質量部比で60:34:6の比率で混合し、Tg=91℃、アミノ基量4.4mol%、平均分子量96,000のアミノ基含有アクリルポリマー溶液(成分(b))を得た。この後、カルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(成分(a))と、アミノ基含有アクリルポリマー溶液(成分(b))を、固形分質量比70:30で混合し、さらに架橋剤として、エポキシ系架橋材((綜研化学社製、製品名:E-5XM)をポリマー全固形分に対して固形分比0.1質量% 添加し、接着剤液を作製した。 【0103】 剥離シートとして厚さ38μm の剥離処理PETフィルム(帝人社製、製品名:ピューレックス(登録商標) A-71)を用意し、この上に上記接着剤液を塗布し、100℃、20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥し、PETフィルム上に厚み40μmの接着層(C)が形成されたシートCを得た。 【0104】 (積層シートの作製) シートBのポリウレタン樹脂層(熱可塑性樹脂層(B))表面に、シートCの接着層(C)を約70℃で貼り合わせ、熱可塑性樹脂層(B)と接着層(C)との積層体を作製した。 【0105】 一方、ポリエステル系樹脂(大日精化工業株式会社製、製品名:E-295NT)とポリイソシアネート(大日精化工業株式会社製、製品名:C-55)とを質量比で10:0.3となるように配合し、ウレタン系接着剤を調整した。このウレタン系接着剤をシートAのアクリル樹脂層の表面に厚みが15μmとなるよう、コーティングし、第2接着層を形成した。 【0106】 先に得られたシートBとシートCとの積層体から一方のPETフィルムを剥離し、ウレタン樹脂層を露出させ、この露出面とシートAの上に形成された第2接着層とを貼り合わせて、図6に相当する積層構造を持つ積層シートを得た。 ・・・ 【0126】 本実施形態の積層シートは、高温で延伸を必要とする基材の貼り付け、特に真空加熱圧着法を用いて、基材端部において巻き込み被覆をする部品に適している。基材表面への装飾、保護、マーキング等の種々の目的のために積層シートを貼り付けた部品として使用することができる。また、高温での延伸性のみならず、耐傷つき性、耐薬品性、および押し跡回復性を備えるため、建材、化粧板、洗面台、電化製品、バイクおよび自動車の外装部品および内装部品などの三次元形状製品の装飾、保護等に好適に使用できるが、特に、自動車内装部品では、高温耐久性と美観が要求されるので、本実施形態の積層シートを自動車の内装部品において好適に使用できる。 ・・・ 【図6】 [図:0001412300000004.jpg] 」 (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【請求項1】 基材と基材上の接着層を含む接着フィルムであって、前記接着層が、 (A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0~25%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び (B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5~15%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマー を含み、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38~75:25である、接着フィルム。」 3b「【0015】 本発明は、上記のような従来技術の現状に鑑み、加熱圧着により瞬時に十分な接着性を発揮し、また、高温での接着性・保持性に優れて、貼り付け後高温条件に曝されても、まったく剥れを生じない接着剤組成物を用いた接着フィルム、その接着フィルムを用いた成形体の製造方法、及び得られる成形体を提供するものである。」 3c「【0024】 接着フィルムの基材は、その加熱圧着工程時の加熱温度に耐熱性があればよく、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。 ・・・ 【0028】 基材は、装飾フィルム、保護フィルムなどとして知られているすべてのものを用いることができ、例えば表面に金属蒸着した修飾フィルム又はシートでもよい。 【0029】 基材の厚さは、限定されないが、特に修飾フィルム(装飾シート)として典型的には、10μm~1200μm(1.2mm)であり、好ましくは25~300μmである。」 3d「【0032】 成分(A)は、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーであり、軟らかい成分である。この軟らかい成分(A)自体は、常温で粘着性を有しているが、成分(B)と上記の量で混合された組成物は、常温では殆ど粘着性を示さない。しかし、この軟らかい成分(A)が含まれないか少ないと、接着剤が被着体表面で展開性が低く、濡れ性が低いものとなり、接着フィルムを加熱圧着後、常温に冷却されたときに、接着層が被着体から容易に剥離して、本発明が意図する接着フィルムとして十分な性能を発揮しない。成分(A)のガラス転移温度(Tg)が25℃以下でないと上記の所望の効果が得られない。 【0033】 ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の(メタ)アクリルポリマーは、そのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が25℃以下となるモノマーを主成分とすることにより、容易に提供できる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。室温での接着性、高温時での凝集力を考慮すると、(メタ)アクリルポリマーの好ましい範囲のTgは、0℃~-50℃である。」 3e「【0057】 <原材料> BA: アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製) 2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(日本触媒社製AEH) IOA: アクリル酸イソオクチル(3M社製) iso-BA: アクリル酸イソブチル(三菱化学社製) AA: アクリル酸(東亞合成株式会社製) V-65: アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製) MMA: メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルM) BMA: メタクリル酸n-ブチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルB) CHMA: メタクリル酸シクロヘキシル(三菱レイヨン社製、アクリエステルCH) DM: メタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルDM) DMAPAA: N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製DMAPAA) Vim:1-ビニルイミダゾール(東京化成工業社製) V-601: ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製) E-5XM: エポキシ樹脂系架橋剤溶液(5wt%2-ブタノン溶液)(綜研化学社製) POLYMENTTM NK-350:35wt%アミノエチル化アクリルポリマーのトルエン/2-プロパノール(70/30)溶液(日本触媒社製) <カルボキシル基含有アクリルポリマーの製造例(表1)> アクリル酸n-ブチル(BA)98重量部、アクリル酸(AA)2重量部、溶媒として酢酸エチル185.7重量部、重合開始剤としてアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)0.2重量部を、窒素雰囲気下50℃・24時間反応させ、アクリルポリマー(A-1)の酢酸エチル溶液を作成した。ポリマー中のカルボキシル基量は3.5mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は-33℃であり、重量平均分子量は約58万であった。 【0058】 同様に、表1に示す組成でカルボキシル基含有アクリルポリマー(A-2)~(A-10)の酢酸エチル溶液を得た。それぞれのポリマー中のカルボキシル基量、Tg及び重量平均分子量を表1に示す。 【0059】 なお、ポリマー中のカルボキシル基量は、カルボキシル基を含有するモノマーのモル数の全モノマーのモル数に対する割合(%)として計算した。 <アミノ基含有アクリルポリマーの製造例(表2)> メタクリル酸メチル(MMA)95重量部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DM)5重量部、溶媒として酢酸エチル150重量部、重合開始剤としてジメチル-2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)0.6重量部を、窒素雰囲気下65℃・24時間反応させ、アクリルポリマー(B-1)の酢酸エチル溶液を作成した。できたポリマー中のアミノ基量は3.2mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は、110℃であり、重量平均分子量は約12.0万であった。 【0060】 同様に、表2に示す組成でアミノ基含有アクリルポリマー(B-2)~(B-10)の酢酸エチル溶液を得た。それぞれのポリマー中のアミノ基量、Tg及び重量平均分子量を表2に示す。 【0061】 なお、ポリマー中のアミノ基量は、アミノ基を含有するモノマーのモル数の全モノマーのモル数に対する割合(%)として計算した。 <Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃未満)> Rheometric Scientific社製、ARESを用い、Mode:Shear、Frequency:1.0Hz、温度:-60℃~30℃(5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)のピーク温度を測定した。 <Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃以上)> Rheometric Scientific社製、RSA-IIIを用い、Mode:Tension、Frequency:10.0Hz、温度:30℃~150℃((5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率E‘’/貯蔵弾性率E‘)のピーク温度を測定した。 <分子量測定(GPC法-ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)> 下記条件でのGPC法によって、重量平均分子量(Mw)を測定した。 【0062】 装置:HP-1090 Series II(Hewlett-Packard社製) 溶媒:テトラヒドロフラン カラム:Plgel MIXED-Bx2(300mm x 外径7.5mm、内径5mm) フローレート:1.0mL/min 検出手段:屈折率 サンプル濃度:0.1wt% キャリブレーション標準:ポリスチレン 表1にカルボキシル基含有アクリルポリマーの製造例、表2にアミノ基含有アクリルポリマーの製造例のデータをまとめて示す。 【0063】 【表1】 [図:0001412300000005.jpg] 【0064】 【表2】 [図:0001412300000006.jpg] 【0065】 <接着フィルムの作成> 上記で製造したカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(A-1)~(A-10)と、アミノ基含有アクリルポリマー溶液(B-1)~(B-10)を、表3および表4に示す固形分比で混合し、さらに架橋剤として、E-5XM(綜研化学社製、エポキシ系架橋剤)をポリマ-全固形分に対して固形分比0.1wt% 添加した。ライナーとして38μm 剥離処理ポリエステルフィルム(帝人社製、ピューレックスTM A-71)に乾燥後厚みが40μmになるように塗布し、100℃・20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥した。接着剤面に、コロナ処理およびプライマーとして酢酸エチルで固形分1.0wt%に希釈したPOLYMENTTM NK-350(日本触媒社製、35wt%アミノエチル化アクリルポリマーのトルエン/2-プロパノール溶液)を塗布した80μ厚みのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)を70℃でラミネートし、接着フィルムを作成した。 ・・・ 【0082】 【表3】 [図:0001412300000007.jpg] ・・・ 【0090】 本発明の接着フィルムは、特に真空加熱圧着機を用いた三次元形状製品への装飾フィルム、保護フィルムなどの接着に有利に用いることができ、例えば100℃までの高温耐久性が要求される自動車の内装製品のほか、建材、化粧板、洗面台などの三次元形状製品の装飾、保護等に好適である。」 (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の樹脂組成物に含有されるゴム強化スチレン系樹脂としては、ゴム成分にスチレン及びこれと共重合可能なモノマーを共重合させた樹脂が用いられる。具体的にはHI-PS(ブタジエン系ゴム-スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、MBS樹脂(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体)、MABS(メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレン・プロピレン系ゴム-スチレン共重合体)等の名称で取引されている樹脂、及びこれらと混合可能な樹脂であるAS(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン等とのブレンド物などが挙げられる。」 4b「【0023】実施例1 ゴム強化スチレン系樹脂としてABS樹脂(電気化学工業社:デンカABSGR-1000)、タルク(日本タルク社:MS-P)及びスチレン-ブタジエンブロック共重合体(電気化学工業社:STR1602、ブタジエン分60%)を表-1に示す割合にて計量し、ヘンシェルミキサーにて混合した。この混合物を、40mmの1軸押出機にて溶融混練し、ペレット形状の樹脂組成物を得た。続いて、本樹脂組成物を使用して図-1に示す形状の成形品A,Bを射出成形法にて得た。得られた成形品の剛性、耐衝撃性、引き裂き性、反発性、比重、燃焼カロリー等を測定した。その結果を表-1に示す。 【0024】成形品A:127mmの平方角板、厚さ=0.86mm 成形品B:高さ=60mm、厚さ=0.7mm、d=60mm、t=5mm、a=30mm、b=50mm、c=4mm 【0025】 【表1】 [図:0001412300000008.jpg] ・・・ 【0027】比較例1 ゴム強化スチレン系樹脂としてABS樹脂(電気化学工業社:デンカABSGR-1000)を用いて、実施例1と同様に溶融混練後成形品を得て、更にその物性を測定した。その結果を表-1に示す。」 (5)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「【0024】 さらに、インクの硬化塗膜の柔軟性を一層良好なものとするためには、ホモポリマーのガラス転移点が室温(25℃)以下であるモノマー(単量体)を併用することが好ましい。ホモポリマーのガラス転移点(Tg)が室温(25℃)以下であるモノマー(単量体)としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート(Tg:-22℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(Tg:-25℃)、イソアミルアクリレート(Tg:-45℃)、ラウリルアクリレート(Tg:-30℃)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(Tg:-50℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tg:-15℃)、イソデシルアクリレート(Tg:-60℃)、イソオクチルアクリレート(Tg:-54℃)トリデシルアクリレート(Tg:-55℃)、カプロラクトンアクリレート(Tg:-53℃)等が挙げられる。 一般に、高分子固体、特に無定形高分子固体において、温度を低温から高温へ上げていくと、わずかな変形に非常に大きな力の要る状態(ガラス状態)から小さな力で大きな変形が起こる状態へと急変する現象が起こるが、この現象の起こる温度をガラス転移温度(又はガラス転移点)という。一般には、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter)による昇温測定によって得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたときのベースラインとの交点の温度がガラス転移温度とされる。本明細書におけるTgは、この定義に従ったものである。また、ガラス転移温度では弾性率、比熱、屈折率などの他の物性も急激に変化することが知られており、これらの物性を測定することによってもガラス転移温度が決定されることが知られている。」 (6)甲第6号証(以下、「甲6」という。) 6a「【0162】 式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)] 〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(-)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕 文献値: 2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):-70℃ n-ブチルアクリレート(BA):-55℃ 2-ヒドロキエチルアクリレート(HEA):-15℃ アクリル酸(AA):106℃」 (7)甲第7号証(以下、「甲7」という。) 7a「【0030】 低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸エチル(Tg-20℃)、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸イソブチル(Tg-26℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-10℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、アクリル酸n-ラウリル(Tg-23℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(-40℃)、アクリル酸イソステアリル(Tg-18℃)等が好ましく挙げられる。中でも、低Tgアルキルアクリレートとして、より効果的に粘着性を付与する観点から、ホモポリマーのTgが、-40℃以下となるものであることがより好ましく、-50℃以下となるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基をいう。」 3 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の段落【0089】に記載された例4の加飾シートの「第1樹脂層」は、同段落【0110】【表2】の記載からみて、例1の加飾シートのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムに相当するから(摘記1d、1h参照)、甲1には例4の加飾シートとして「バルク層と表面層を一体化させた積層体の露出させたバルク層と第2接合層とを貼り合わせ、露出した第2接合層の表面に、厚さが0.20mmのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムと接着層Aの積層体のABSフィルム面を貼りあわせて、作製した加飾シートであって、 接着層Aは、イソオクチルアクリレート(IOA)90.0質量部、及びアクリル酸(AA)10.0質量部を含むモノマー成分液に、Irg651を光重合開始剤として0.04部添加し、紫外線を照射して、得たアクリル部分重合物に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08質量部、Irg651を0.1部添加して、調製したモノマー混合物に紫外線を照射し架橋させて、作製したものであり、ガラス転移温度(Tg)が-7℃である、 加飾シート。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1h参照)。 (2)甲2に記載された発明 甲2には実施例1の積層シートとして「シートBの厚みが約30μmのポリウレタン樹脂層(熱可塑性樹脂層(B))表面に、シートCの接着層(C)を約70℃で貼り合わせて作製した熱可塑性樹脂層(B)と接着層(C)との積層体の露出させたポリウレタン樹脂層と、アクリル樹脂化合物の層を形成した表面層(A)がPETフィルム上に形成されたシートAのアクリル樹脂化合物の層の表面に形成した第2接着層とを貼り合わせて、得た積層シートであって、 接着層(C)が、アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製)とアクリル酸(東亞合成株式会社製)とを質量部比率で94:4となるように混合し、Tg=-21℃、カルボキシル基量10.2mol%、平均分子量580,000のカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(成分(a))とメタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルM)とメタクリル酸n-ブチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルB)と、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルDM)とを質量部比で60:34:6の比率で混合し、Tg=91℃、アミノ基量4.4mol%、平均分子量96,000のアミノ基含有アクリルポリマー溶液(成分(b))を、固形分質量比70:30で混合し、架橋剤としてエポキシ系架橋材((綜研化学社製、製品名:E-5XM)をポリマー全固形分に対して固形分比0.1質量%添加し、作製した接着剤液を100℃、20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥し、形成されたものである、 積層シート。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2f参照)。 (3)甲3に記載された発明 甲3には実施例3の接着フィルムとして「アクリル酸n-ブチル(BA)96重量部、アクリル酸(AA)4重量部、溶媒として酢酸エチル185.7重量部、重合開始剤としてアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)0.2重量部を、窒素雰囲気下50℃・24時間反応させ、作成した、ポリマー中のカルボキシル基量は6.9mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は-28℃であり、重量平均分子量は約66万であるアクリルポリマー(A-3)の酢酸エチル溶液と、メタクリル酸メチル(MMA)66重量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)34重量部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DM)6重量部、溶媒として酢酸エチル150重量部、重合開始剤としてジメチル-2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601)0.6重量部を、窒素雰囲気下65℃・24時間反応させ、作成した、ポリマー中のアミノ基量は4.4mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は、91℃であり、重量平均分子量は約9.6万であるアクリルポリマー(B-3)の酢酸エチル溶液を、70:30の固形分比で混合し、架橋剤としてE-5XM(綜研化学社製、エポキシ系架橋剤)をポリマ-全固形分に対して固形分比0.1wt%添加し、ライナーとして38μm剥離処理ポリエステルフィルム(帝人社製、ピューレックスTM A-71)に乾燥後厚みが40μmになるように塗布し、100℃・20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥し、接着剤面に、コロナ処理およびプライマーとして酢酸エチルで固形分1.0wt%に希釈したPOLYMENTTMNK-350(日本触媒社製、35wt%アミノエチル化アクリルポリマーのトルエン/2-プロパノール溶液)を塗布した80μ厚みのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)を70℃でラミネートし、作成した接着フィルム。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3e参照)。 4 対比・判断 (1)甲1発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「厚さが0.20mmのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルム」は、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)がオレフィン系樹脂であるから(摘記1d参照)、本件特許発明1の「樹脂層」、「前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み」及び「前記樹脂層の厚さが、150μm以上であり」に相当する。 甲1発明の「イソオクチルアクリレート(IOA)」及び「アクリル酸(AA)」は、ぞれぞれ、本件特許発明1の「モノエチレン性不飽和モノマー」及び「カルボキシル基を含有する不飽和モノマー」に相当するから、甲1発明の「イソオクチルアクリレート(IOA)90.0質量部、及びアクリル酸(AA)10.0質量部を含むモノマー成分液に、Irg651を光重合開始剤として0.04部添加し、紫外線を照射して、得たアクリル部分重合物」は本件特許発明1の「モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー」に相当し、甲1発明の「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)」は本件特許発明1の「架橋剤」に相当するから、甲1発明の「接着層Aは、イソオクチルアクリレート(IOA)90.0質量部、及びアクリル酸(AA)10.0質量部を含むモノマー成分液に、Irg651を光重合開始剤として0.04部添加し、紫外線を照射して、得たアクリル部分重合物に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08質量部、Irg651を0.1部添加して、調製したモノマー混合物に紫外線を照射し架橋させて、作製したもの」は、本件特許発明1の「接着層」及び「前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み、前記カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている」に相当する。 甲1発明の「加飾シート」は本件特許発明1の「装飾フィルム」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「樹脂層及び接着層を含む、装飾フィルムであって、 前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み、 前記樹脂層の厚さが、150μm以上であり、 前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み、 前記カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている、装飾フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 樹脂層の引き裂き強度が、本件特許発明1では20℃において8.0N以上であるのに対し、甲1発明ではそれが不明である点。 <相違点1-2> (メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、本件特許発明1では、-58℃以上、-40℃以下であるのに対し、甲1発明では-7℃である点。 <相違点1-3> 加飾シートが、本件特許発明1では乗物外装用であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点1-1> 甲4にはABS樹脂(電気化学工業社:デンカABSGR-1000)を射出成形法にて成形した、127mmの平方角板、厚さ=0.86mmのABS樹脂の成形品Aの引き裂き強度が13Kgであることが記載されており(摘記4a参照)、ここで、13Kgは127Nであるが、甲1発明の加飾シートのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムは甲4に記載のような成形品ではないから、その引き裂き強度が、20℃において8.0N以上である蓋然性が高いとはいえず、この点は実質的な相違点である。 ここで、甲1には加飾シートのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムである第1樹脂層の引き裂き強度について記載はなく、また、甲1発明の加飾シートは、真空圧空成形法を用いた加飾シートの貼り付けに際して、埃などの異物の混入及び基材表面の凹凸を隠蔽することが可能なものとするものであって(摘記1b参照)、引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題があるとはいえない。また、甲2には、本件特許発明1のような風雨・風圧耐性を高めるために引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題について記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。よって、甲1発明の加飾シートにおいて、甲1発明の加飾シートのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムの引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲2~甲7にも甲1発明の加飾シートのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)フィルムの引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の実施例の物性評価からみて、樹脂層の引き裂き強度が20℃において8.0N以上であり、(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、-58℃以上、-40℃以下であることにより、本件特許発明1は高圧洗浄試験及び耐衝撃性試験において優れた効果を奏し、風雨、風圧等にさらされても、めくれ等の不具合を低減又は防止し得るといえるから、そのような効果は甲1発明の効果から当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点1-2>、<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲2発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲2発明との対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「ポリウレタン樹脂層(熱可塑性樹脂層(B))」は、本件特許発明1の「樹脂層」及び「前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み」に相当する。 甲2発明の「アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製)」及び「アクリル酸(東亞合成株式会社製)」は、それぞれ、本件特許発明1の「モノエチレン性不飽和モノマー」及び「カルボキシル基を含有する不飽和モノマー」に相当し、甲2発明の「接着層(C)」の「アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製)とアクリル酸(東亞合成株式会社製)とを質量部比率で94:4となるように混合し、Tg=-21℃、カルボキシル基量10.2mol%、平均分子量580,000のカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(成分(a))」と「架橋剤としてエポキシ系架橋材((綜研化学社製、製品名:E-5XM)をポリマー全固形分に対して固形分比0.1質量%添加し、作製した接着剤液を100℃、20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥し、形成された」ものは、アクリル共重合体として、ポリマーと架橋剤から形成されたものと異なるものとはならないから、本件特許発明1の「前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み」に相当し、甲2発明の「アクリル酸n-ブチル(三菱化学社製)とアクリル酸(東亞合成株式会社製)とを質量部比率で94:4」は本件特許発明1の「カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている」に相当する。 甲2発明の「積層シート」は本件特許発明1の「フィルム」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「樹脂層及び接着層を含む、フィルムであって、 前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み、 前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み、 前記カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている、フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 樹脂層の引き裂き強度が、本件特許発明1では20℃において8.0N以上であるのに対し、甲2発明ではそれが不明である点。 <相違点2-2> 前記樹脂層の厚さが、本件特許発明1では150μm以上であるのに対し、甲2発明では約30μmである点。 <相違点2-3> (メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、本件特許発明1では、-58℃以上、-40℃以下であるのに対し、甲2発明では-21℃である点。 <相違点2-4> フィルムが、本件特許発明1では乗物外装用装飾フィルムであるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点2-1> 甲2発明の積層シートの樹脂層は本件特許発明1と同じポリウレタン樹脂層(熱可塑性樹脂層(B))であるが、ポリウレタン樹脂層(熱可塑性樹脂層(B))であれば必ず同程度の引き裂き強度を有するとはいえないから、樹脂層の引き裂き強度は20℃において8.0N以上である蓋然性が高いとはいえず、この点は実質的な相違点である。 ここで、甲2には積層シートのポリウレタン樹脂層である熱可塑性樹脂層(B)の引き裂き強度について記載はなく、また、甲2発明の積層シートは、真空加熱圧着法を用いた基材への貼り付けに適した高い延伸性を有するとともに、最表面層が良好な耐傷つき性と耐薬品性を備えるものとしたものであって(摘記2b参照)、引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題があるとはいえない。また、甲2には、本件特許発明1のような風雨・風圧耐性を高めるために引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題について記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。よって、甲2発明の積層シートにおいて、甲2発明の積層シートのポリウレタン樹脂層の引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1及び甲3~甲7にも甲2発明の積層シートのポリウレタン樹脂層の引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けとなる記載はない。 <相違点2-2> 相違点2-2も実質的な相違点である。 ここで、甲2には積層シートのポリウレタン樹脂層である熱可塑性樹脂層(B)の厚さの上限は、積層シートを基材に貼り付け加工する際に、十分な柔軟性を維持し、成形性を確保できればよく、例えば300μm以下、あるいは200μm以下とすることが記載され、その厚さの下限は、積層シートを基材に貼り付け加工する際に、積層シートに生じる応力を緩和する、一種の応力緩和層としての機能を発揮するためのものであり、例えば10μm以上、20μm以上あるいは30μm以上とすることが好ましいことが記載されており(摘記2d参照)、甲2発明の積層シートのポリウレタン樹脂層の厚みである30μmは応力緩和層として機能を発揮するための好ましい厚みであることから、さらにポリウレタン樹脂層を厚くして150μm以上とする動機付けがあるとはいえない。また、甲2発明の積層シートは、真空加熱圧着法を用いた基材への貼り付けに適した高い延伸性を有するとともに、最表面層が良好な耐傷つき性と耐薬品性を備えるものとしたものであり、甲2には本件特許発明1のような必要な強靭性等の性能をフィルムに付与するために樹脂層の厚みを特定値以上とする技術的課題について記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。よって、甲2発明の積層シートにおいて、ポリウレタン樹脂層の厚さを150μm以上とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1及び甲3~甲7にも甲2発明の積層シートのポリウレタン樹脂層の厚さを150μm以上とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)と同じ理由により、そのような効果は甲2発明の効果から当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点2-3>及び<相違点2-4>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2-1>及び<相違点2-2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (3)甲3発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲3発明との対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「アクリル酸n-ブチル(BA)」及び「アクリル酸(AA)」は、それぞれ、本件特許発明1の「モノエチレン性不飽和モノマー」及び「カルボキシル基を含有する不飽和モノマー」に相当し、甲3発明の「アクリル酸n-ブチル(BA)96重量部、アクリル酸(AA)4重量部、溶媒として酢酸エチル185.7重量部、重合開始剤としてアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65)0.2重量部を、窒素雰囲気下50℃・24時間反応させ、作成した、ポリマー中のカルボキシル基量は6.9mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は-28℃であり、重量平均分子量は約66万であるアクリルポリマー(A-3)の酢酸エチル溶液と」と「架橋剤としてE-5XM(綜研化学社製、エポキシ系架橋剤)をポリマ-全固形分に対して固形分比0.1wt%添加し」及び「100℃・20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥し」たものは、アクリル共重合体として、ポリマーと架橋剤から形成されたものと異なるものとはならならず、甲3発明の接着フィルムにおいて接着層を形成しているといえるから、本件特許発明1の「接着層」、「前記接着剤層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み」に相当し、甲3発明の「アクリル酸n-ブチル(BA)96重量部、アクリル酸(AA)4重量部」は本件特許発明1の「カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている」に相当する。 甲3発明の「PETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)」は、PETGはポリエチレンテレフタレート樹脂の一種であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂はポリエチレン樹脂であり、接着剤面にラミネートされたものであるから、本件特許発明1の「樹脂層」及び「前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「樹脂層及び接着層を含む、フィルムであって、 前記樹脂層が、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種を含み、 前記接着層が、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを含む材料から得られる(メタ)アクリレートポリマー、並びに架橋剤の反応生成物を含み、 前記カルボキシル基を含有する不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー及びカルボキシル基を含有する不飽和モノマーの総量100質量%当たり、3質量%以上、10質量%以下含まれている、フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 樹脂層の引き裂き強度が、本件特許発明1では20℃において8.0N以上であるのに対し、甲3発明ではそれが不明である点。 <相違点3-2> 前記樹脂層の厚さが、本件特許発明1では150μm以上であるのに対し、甲3発明では80μmである点。 <相違点3-3> (メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、本件特許発明1では、-58℃以上、-40℃以下であるのに対し、甲3発明では-28℃である点。 <相違点3-4> フィルムが、本件特許発明1では乗物外装用装飾フィルムであるのに対し、甲3発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点3-1> 甲3には接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)である基材の引き裂き強度について記載はなく、また、甲3発明の接着フィルムは、高温での接着性・保持性に優れて、貼り付け後高温条件に曝されても、まったく剥れを生じないものであって(摘記3b参照)、引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題があるとはいえない。また、甲2には、本件特許発明1のような風雨・風圧耐性を高めるために引き裂き強度を特定値以上とする技術的課題について記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。よって、甲3発明の接着フィルムにおいて、甲3発明の接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)の引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1、甲2及び甲4~甲7にも甲3発明の接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)の引き裂き強度を20℃において8.0N以上であるものとする動機付けとなる記載はない。 <相違点3-2> 甲3には接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)である基材の厚さは典型的には10μm~1200μmであり、好ましくは25~300μmであることが記載されているものの、上限下限を特定する根拠については記載されておらず(摘記3c参照)、甲3発明の接着フィルムのPETGフィルムの厚みである80μmは好ましい数値範囲内のものであり、さらにPETGフィルムを厚くして150μm以上とする動機付けがあるとはいえない。また、甲3発明の接着フィルムは、高温での接着性・保持性に優れて、貼り付け後高温条件に曝されても、まったく剥れを生じないものであり、甲3には本件特許発明1のような必要な強靭性等の性能をフィルムに付与するために樹脂層の厚みを特定値以上とする技術的課題について記載も示唆もされておらず、技術常識であるともいえない。よって、甲3発明の接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)厚さを150μm以上とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1、甲2及び甲4~甲7にも甲3発明の接着フィルムのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)の厚さを150μm以上とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)と同じ理由により、そのような効果は甲3発明の効果から当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点3-3>及び<相違点3-4>について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~4 本件特許発明2~4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3発明との<相違点3-1>及び<相違点3-2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~4は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2及び甲4~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第5 理由3(サポート要件)について 本件特許発明の課題は、本件特許明細書【0008】からみて、風雨、風圧等にさらされても、めくれ等の不具合を低減又は防止し得る、乗物外装用装飾フィルムを提供することにあると認める。 ここで、本件特許明細書の実施例のものが前記課題を解決できることが理解でき、本件特許明細書の【0110】には「本実施例で使用した商品などを以下の表1に示す。」と記載され、【0111】の【表1】に架橋剤としてビスアミド系架橋剤(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区)と記載され、【0064】には「架橋剤は、(メタ)アクリルポリマー中のカルボキシル基1当量に対して、約0.08当量以上又は約0.15当量以上とすることができ、約0.62当量以下又は約0.50当量以下とすることができる。」と記載されているから、前記実施例において架橋剤としてビスアミド系架橋剤(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区)が(メタ)アクリルポリマー中のカルボキシル基1当量に対して、約0.08当量以上又は約0.15当量以上、約0.62当量以下又は約0.50当量以下で使用されたことが理解できる。 そうすると、実施例のものは本件特許発明1の特定事項を有するといえるから、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~4が前記課題を解決できることが理解できる。 したがって、本件特許明細書においては、特許請求の範囲に記載された発明が実施例による効果の裏付けがあるといえるから、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明2~4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえ、サポート要件違反に該当するとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700846

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    共通の審決分類: 113・C09J、121・C09J、537・C09J
  • 2024-700608異議申立 / 2026-02-04 / 訂正認容活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤層、積層体
    共通の審決分類: 113・C09J、121・C09J、537・C09J
  • 2024-701045異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容粘着剤及び粘着テープ
    共通の審決分類: 113・C09J、121・C09J、537・C09J

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