特許異議申立
2023-700820
カートリッジおよび検出方法
- 審判番号
- 2023-700820
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-055286
- 登録番号
- 7220106
- 請求日
- 2023年08月08日
- 審決日
- 2024年01月31日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】シスメックス株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大石 幸雄
- 【権利者代理人】赤堀 龍吾
- 【権利者代理人】三宅 晃史
- 【異議申立人】小松 一枝
- 【異議申立人】前田 知子
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 櫃本 研太郎
- 審判官 伊藤 幸仙
- 分類
- P1651.113-Y (G01N) / P1651.121-Y (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7220106号発明「カートリッジおよび検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7220106号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7220106号の請求項1~20に係る特許についての出願は、平成31年3月22日に出願され、令和5年2月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年8月8日 :特許異議申立人 小松一枝並びに前田知子(以下、両者を「申立人」という。)による特許異議の申立て
同年10月31日付け:取消理由通知
同年12月28日 :特許権者による意見書の提出
なお、特許権者から訂正請求書が提出されなかったことから、特許法第120条の5第5項の規定及び審判便覧67-05.3Pの2に記載の原則に則り、申立人には意見書を提出する機会を与えることなく審理を進めた。また、下記の第5の2で述べるとおり、特許異議申立理由には理由がなく、上記取消理由通知は職権により通知したものであるから、これに対する特許権者の意見について申立人に審尋する必要はないものである。
第2 本件特許発明
本件特許発明は、特許第7220106号の特許公報(令和5年2月9日発行)の【特許請求の範囲】に開示された、以下の請求項1ないし20に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明20」という。)である。ここで、本件特許発明1及び18の各構成単位冒頭に、当審において分説記号「A」等を付し、以下「構成A」などという。
「 【請求項1】
A 被検物質を含む測定試料から生じる光を検出するための検出装置に設置され、前記光の検出に用いるカートリッジであって、
B 互いに流体的に隔離され、前記測定試料を受け入れ、受け入れた前記測定試料から生じる光が光検出器により検出される複数の検出チャンバと、
C 前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられ、前記検出チャンバ内の前記測定試料から生じる光が他の前記検出チャンバへ透過することを抑制する透過抑制部と、を備え、
D 前記透過抑制部は、前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む、カートリッジ。
【請求項2】
前記光吸収物質は、前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収フィラーである、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記光散乱物質は、前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱フィラーである、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記カートリッジは平板形状を有し、
前記複数の検出チャンバの各々は、前記カートリッジの表面に沿って離れて配置されており、
前記透過抑制部は、前記カートリッジの厚さ方向における、前記測定試料から生じる光に対する光透過率が30%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記測定試料から生じる光は、波長300nm以上800nm以下の光である、請求項1~4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記測定試料から生じる光は、化学発光である、請求項1~5のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記複数の検出チャンバの各々に対して流体的に接続された複数の液体収容部をさらに備え、
前記液体収容部は、前記測定試料から光を生じさせるための発光基質が配置されるように構成されている、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記複数の検出チャンバの各々は、前記測定試料から生じる光の検出後も前記測定試料を貯留し続けるように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記カートリッジは、回転軸を中心に回転される平板形状を有し、
前記複数の検出チャンバは、前記回転軸を中心として前記カートリッジの外周側の位置に配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記カートリッジは、回転軸を中心に回転される平板形状を有し、
前記複数の検出チャンバの各々は、前記回転軸回りに1回転を等分割した角度間隔で配置されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
1つの前記検出チャンバと、前記検出チャンバに前記被検物質を移送するための通路と、を含む複数の処理領域をさらに備え、
前記透過抑制部は、前記複数の処理領域同士の間を隔離するように設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記カートリッジは、回転軸を中心に回転される平板形状を有し、
前記透過抑制部は、前記回転軸または前記回転軸側の端部から、前記回転軸から離れた側の端部まで連続して設けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記複数の検出チャンバを区画する壁部をさらに備え、
前記壁部は、前記透過抑制部によって構成されており、
前記複数の検出チャンバの各々は、前記複数の検出チャンバの各々が向かい合う方向以外の方向において、前記壁部に覆われていない光取出部を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記複数の検出チャンバおよび前記壁部を含む平板状の本体部と、
前記本体部の少なくとも一部を覆い、前記本体部の厚さ方向において前記測定試料の光に対して前記壁部よりも大きい光透過率を有するカバー部とをさらに備え、
前記複数の検出チャンバの各々は、前記本体部の前記壁部に設けられた貫通孔または非貫通の凹部が前記カバー部で覆われた構造を有する、請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記複数の検出チャンバの各々に対して別個に設けられ、前記検出チャンバに流体的に接続された通路をさらに備え、
前記透過抑制部は、前記通路の形成領域に対して前記カートリッジの厚み方向に向かう光の一部を透過するように構成されている、請求項13または14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記複数の検出チャンバの各々に対して別個に設けられ、前記通路を介して前記検出チャンバに流体的に接続された処理チャンバをさらに備え、
前記透過抑制部は、前記処理チャンバの形成領域に対して前記カートリッジの厚み方向に向かう光の一部を透過するように構成されている、請求項15に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記複数の検出チャンバを区画する壁部をさらに備え、
前記透過抑制部は、前記壁部の表面または内部に部分的に形成された部材によって構成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項18】
E 被検物質を含む測定試料を受け入れる複数の検出チャンバを備えたカートリッジを用いて、前記測定試料から生じる光を検出する検出方法であって、
F 互いに流体的に隔離された前記複数の検出チャンバの各々に前記測定試料を配置し、
G 前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられた透過抑制部によって、第1方向に放射された前記測定試料から生じる光の透過を抑制しながら、前記複数の検出チャンバの各々について、前記第1方向とは異なる第2方向に放射された前記測定試料から生じる光を検出し、
H 前記透過抑制部は、前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む、検出方法。
【請求項19】
前記複数の検出チャンバの各々から、前記測定試料から生じる光を発生させた状態で、前記複数の検出チャンバの各々に対して前記測定試料から生じる光を検出する、請求項18に記載の検出方法。
【請求項20】
前記カートリッジは、遮光された筐体内に配置され、
前記測定試料から生じる光を吸収する前記筐体の内面によって、前記カートリッジの外部に放射された前記測定試料から生じる光の散乱を抑制する、請求項18または19に記載の検出方法。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和5年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
(1) 本件特許発明1ないし4,8ないし19は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明5及び6は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項、甲第5号証に記載された技術事項及び甲第6号証に裏付けられる周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明20は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由において引用した甲号証
甲第1号証:特開2010-169672号公報(以下「甲1」という。)
甲第4号証:特開2015-81884号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2018-036105号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2005-77142号公報(以下「甲6」という。)
(3)その他の甲号証
甲第2号証:国際公開第2017/154750号(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開平06-102182号公報(以下「甲3」という。)
第4 各甲号証の記載
1 甲4
(1) 本件特許の出願前である平成27年(2015年)4月27日に頒布された刊行物である甲4には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下同様。)
「【0021】
この実施の形態に係るコンパクトディスク型マイクロチップを用いた分析装置(以後、単に、「分析装置」という)1は、試料の分析に用いられると共に自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能な装置である。分析装置1は、コンパクトディスク型マイクロチップ(以後、適宜、「CD型マイクロチップ」という。)2と、CD型マイクロチップ2の分析部に向けて発光する光源としての有機エレクトロルミネセンス(以後、単に、「有機EL」という)13を含む発光装置4と、上記分析部から受光する受光部16を含む受光装置5と、を備える。分析装置1は、好ましくは、CD型マイクロチップ2を回転駆動する第一回転機構3を、さらに備える。なお、図1では、受光部16は、上記分析部を挟んで有機EL13と対向配置されるように描かれているが、かかる位置に限定されることなく、有機EL13と同様、CD型マイクロチップ2の下方に配置されていても良い。また、発光装置4、受光装置5および次に述べる制御装置6は、図中、宙に浮いているように描かれているが、現実に宙に浮いているわけではなく、配置箇所を問わない意味に解釈される。
【0022】
受光装置5は、好ましくは、制御装置6と接続されていて、受光に基づく情報を制御装置6の制御の下、コンピュータに送信可能となっている。第一回転機構3は、駆動部としてのモータ10およびそれに接続される回転軸11を備える。回転軸11は、CD型マイクロチップ2の略中心に接続可能な構造を有する。このため、モータ10を起動して回転軸11を所定の方向に回転させることにより、CD型マイクロチップ2を回転させることができる。
・・・
【0025】
上記構成の分析装置1を用いると、CD型マイクロチップ2の分析部に集められた試料に対して有機EL13から照光し、試料からの受光による情報から試料の分析を行うことができる。ここで、重要なのは、有機EL13という面発光手段の好適な一例を用いている点にある。有機EL13から、面内光強度の均一性に優れた光を分析部内の試料にあてることができるので、分析部内の照光位置を厳密に設定しなくても、再現性の高い分析が可能となる。また、分析装置1に第一回転機構3を備えるので、CD型マイクロチップ2を回転し、試料を分析部に移動させるのを完了した後に有機EL13を発光させて分析を行うことができるのみならず、CD型マイクロチップ2を回転させながら有機EL13を発光させ、試料の移動による分析値の経時変化を調べることもできる。
・・・
【0027】
この実施の形態にて用いられるCD型マイクロチップ2は、試料の分析に用いられ、それを自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能な構造を持つ。CD型マイクロチップ2は、中央に穴25を有する円板形状のマイクロチップであり、平面視にて8個の略扇形状のブロック30に分割されている。各ブロック30は、同一形状の流路構造を有する。このため、CD型マイクロチップ2を用いて同時にN=8までの分析を行うことができる。ただし、ブロック30は、8個に限定されず、少なくとも1個あれば、その数を問わない。CD型マイクロチップ2は、好適には、共に透光性材料から成る第一ディスク34と第二ディスク35とを積層して成る。この実施の形態では、第一ディスク34は、ポリジメチルシロキサン(シリコーン樹脂の一種)から構成されている。しかし、第一ディスク34を構成する材料として、上記のシリコーン樹脂に代えて、他の透光性を有する材料を選択することもできる。当該材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、あるいはガラスを用いることができる。
【0028】
また、この実施の形態では、第二ディスク35は、ポリカーボネート樹脂から構成されている。しかし、第二ディスク35を構成する材料として、ポリカーボネート樹脂に代えて、他の透光性を有する材料を選択することもできる。当該材料としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、あるいはガラスを用いることができる。本願において、「透光性」とは、有色であるか無色であるかおよび光の透過率の多寡を問わず、光を透過させることができる意味に広義に解釈される。
【0029】
図3は、図2のCD型マイクロチップ中の1つのブロックの平面図(3A)、当該平面図におけるA-A線断面図(3B)および同平面図におけるB-B線断面図(3C)を、それぞれ示す。
【0030】
CD型マイクロチップ2は、少なくとも試料を貯留するための1または2以上の貯留部41,42,43,44,45(以後、「貯留部41等」という)と、貯留部41等より径方向外側に配置され、貯留部41等から送られてきた試料の分析場となる分析部46、および貯留部41等と分析部46とを繋ぐ送液用の流路48を、少なくとも備える。より好ましくは、この実施の形態では、CD型マイクロチップ2の各ブロック30は、(3A)に示すように、その内部に、5つの貯留部41等と、1つの分析部46と、1つの廃液部47と、複数本の送液用の流路48とを備える。流路48は、各貯留部41等同士の間、各貯留部41等と分析部46および廃液部47との間、分析部46と廃液部47との間をそれぞれ繋いでいる。貯留部41等は、少なくとも測定対象の試料を貯留するための領域であって、薄厚の略円柱形状の空間である。この実施の形態では、貯留部41等は同一の形状を有するが、それらの一部または全部が互いに異なる形状を有していても良い。この実施の形態では、貯留部41等は、CD型マイクロチップ2の径方向外側から内側に向かって、貯留部41、貯留部42、貯留部43、貯留部44、貯留部45の順に配置されている。このため、CD型マイクロチップ2を自転させた際に、回転数を上げるに従い、径方向最も外側の貯留部41から最初に送液し、次に貯留部42から、その次に貯留部43から、その次に貯留部44から、最後に径方向最も内側の貯留部45からそれぞれ送液することができる。
【0031】
ただし、貯留部41等の内の一部あるいは全部を、CD型マイクロチップ2の中央から同じ距離に配置することもできる。これによって、互いに分離して貯留していた溶液を同時に送液し、分析部46にて混合させることができる。また、貯留部41等には、測定対象の試料のみならず、洗浄液、抗体を含む溶液、各種試薬を含む溶液といった他の溶液を貯留することができる。さらに、貯留部41等を5個とせずに、少なくとも1個あれば、その数を問わない。なお、以後、「径方向」は、CD型マイクロチップ2の径方向を意味する。
【0032】
分析部46は、貯留部41等より径方向外側に配置される領域であって、貯留部41等から送られてきた試料等の溶液に照光するための領域である。分析部46を貯留部41等より径方向外側に配置するのは、CD型マイクロチップ2を自転させた際の遠心力を利用して分析部46に送液させるためである。廃液部47は、分析部46あるいは貯留部41等から、最終的に廃棄する液体を集める領域である。廃液部47を分析部46より径方向外側に配置すると、測定後にCD型マイクロチップ2を回転し、全ての溶液を廃液部47に集めることができる。ただし、廃液部47は、分析部46より径方向内側あるいは分析部46と径方向同一の距離に設けても良い。その場合には、測定者が、CD型マイクロチップ2を傾けて、手動にて溶液を廃液部47に集めることができる。さらに、廃液部47は、CD型マイクロチップ2にとって必須の領域ではなく、設けなくても良い。その場合には、測定後に、貯留部41等あるいは分析部46から廃液すると良い。かかる意味では、流路48は、最低限、貯留部41等から分析部46までを繋ぐものであれば良い。貯留部41等の径方向内側および径方向外側の各流路48は、好適には、貯留部41等に極めて近い場所に、各流路48を少し太くした拡径部49を1個ずつ備える。拡径部49は、一種のバルブの機能を有する。拡径部49の径を変えることにより、貯留部41等から溶液が流れ出すときの回転数を変えることが可能である。ただし、拡径部49は必須の構成ではなく、設けなくても良い。
【0033】
(3B)に示すように、流路48は、CD型マイクロチップ2の厚さ方向の内部に形成されている。貯留部45は、流路48と同様、CD型マイクロチップ2の厚さ方向の内部に形成されており、かつその上面に開口部50を有する。(3B)に明示されていないが、他の貯留部41,42,43,44も、その上面に開口部50を備える。開口部50は、貯留部41等に溶液(試料も含む)を供給するために、好適に形成されている。開口部50は、貯留部41等に溶液を供給後、好適には、フィルム等(不図示)によって覆われる。CD型マイクロチップ2を自転させて測定を行う際に、貯留部41等から溶液が飛び出し、あるいは外部から塵や埃が入るのを防止する必要からである。貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48は、この実施の形態では、第一ディスク34における第二ディスク35の対向面から内方に窪む凹部によって形成されているが、第二ディスク35側の凹部によって形成し、あるいは第一ディスク34側と第二ディスク35側の各凹部を合わせて形成しても良い。また、第一ディスク34側に、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48の内のいずれか一部を形成する凹部を備え、第二ディスク35側に当該一部以外を形成する凹部を備えても良い。すなわち、CD型マイクロチップ2は、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48の内の少なくとも1つを、面内方に窪む凹部として形成した第一ディスク34と、第一ディスク34と積層することによって貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48を形成可能な第二ディスク35とを積層して成る。ただし、凹部形成の工程をより簡易化するためには、第一ディスク34および第二ディスク35のいずれか一方に、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48用の各凹部を形成する方が好ましい。第一ディスク34に、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48用の各凹部を形成する場合、第一ディスク34の厚さおよび凹部の深さに何らの限定は無いが、一例を挙げるならば、第一ディスク34の厚さを1~3mmの範囲に、凹部の深さを20~80μmの範囲にそれぞれ設定することができる。また、第二ディスク35の厚さについても何らの限定もないが、一例を挙げるならば、1~3mmの範囲に設定できる。
【0034】
(3C)に示すように、廃液部47は、前述の貯留部45と同様、CD型マイクロチップ2の厚さ方向の内部に形成され、その上面に開口部51を有する。開口部51は、廃液時を除き、好適にはフィルム等(不図示)によって常時覆われる。なお、この実施の形態では、分析部46および流路48は、第一ディスク34と第二ディスク35とを積層した後には閉鎖空間となり、それ専用の開口部を備えていないが、分析部46および流路48の少なくともいずれか一方に開口部を備えても良い。測定の際に、CD型マイクロチップ2の上面の全部あるいは各ブロック30の上面をフィルム等(不図示)にて覆うようにし、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48の全てに開口部を備えても良い。
【0035】
第一ディスク34および第二ディスク35は、共に透光性である。したがって、CD型マイクロチップ2の第一ディスク34側から分析部46に入った光は、分析部46および第二ディスク35を透過する。ただし、第一ディスク34の分析部46の少なくとも入光窓および出光窓を透光性にする限り、他の部分を遮光性にすることもできる。
【0036】
<3.CD型マイクロチップの製造方法>
図4は、図2のCD型マイクロチップの製造工程の一例を示す。図5および図6は、図2のCD型マイクロチップの製造過程を示す。
【0037】
ステップ101
まず、第一ディスク34を製造するのに必要となる、平面視にて円形の平板60を準備する(5A)。平板60としては、例えば、シリコンウェハを好適に用いることができる。この実施の形態では、直径6インチのシリコンウェハを好適に用いる。
【0038】
ステップ102
次に、平板60の片面上に、ネガ型フォトレジストを供給し、スピンコート等の手段にて均一な厚さの塗膜61を形成する(5B)。ネガ型フォトレジストとしては、例えば、エポキシ樹脂系のカチオン重合体、オキセタン樹脂系のカチオン重合体等を用いることができる。この実施の形態では、露光部分の架橋を促進させる性質のネガ型フォトレジストを好適に用いるが、これとは逆に露光部分を溶解除去可能なポジ型フォトレジストを用いても良い。ただし、CD型マイクロチップ2の第一ディスク34の構成材料としては、化学薬品への耐性、機械的強度および耐熱性に優れるネガ型フォトレジスト、特に、SU-8(化薬マイクロケム製)を用いる方がより好ましい。平板60に塗膜61を形成後、100℃前後で加熱してネガ型フォトレジスト内の有機溶媒を除去し、その後、室温まで冷却するのが好ましい。
【0039】
ステップ103
次に、ネガ型フォトレジストの塗膜61上に、フォトマスク62を配置する(5C)。フォトマスク62と塗膜61とは、例えば、真空クランプ等を用いて密着固定するのが好ましい。フォトマスク62は、CD型マイクロチップ2の流路領域を透光領域とする一方、当該流路領域以外を遮光領域としたものである。なお、ポジ型フォトレジストにて塗膜61を形成した場合には、フォトマスク62の透光領域と遮光領域は、先の構成の逆になる。
【0040】
ステップ104
次に、フォトマスク62の上から紫外線(UV)を照射する(5C)。この実施の形態では、好適にライトボックス(サンハヤト製、LIGHT BOX BOX-W9B)を用いて、紫外線を約1分間照射する。
【0041】
ステップ105
次に、露光した領域の硬化後、塗膜61付きの平板60からフォトマスク62を外し、現像液を用いて紫外線の非照射領域の未硬化レジストを除去する(5D)。未硬化レジストの除去に先立ち、塗膜61付きの平板60を100℃前後で加熱し、露光した領域の固定を強化する処理を行っても良い。なお、現像液としては、例えば、ディベロッパー(化薬マイクロケム製、SU-8 Developer)を好適に用いることができる。未硬化レジストの除去後、塗膜61付きの平板60を、イソプロパノール(IPA)等の有機溶媒を用いて洗浄し、さらには200℃前後で加熱して有機溶媒を完全に除去しても良い。このような処理を経て、CD型マイクロチップ2用の流路領域64を突出させ、流路領域外63を窪ませた形態のテンプレートが完成する。
【0042】
ステップ106
次に、テンプレート上に、液状ポリマー65を塗布する(5E)。液状ポリマー65としては、硬化後に第一ディスク34となる材料を用いる。当該材料としては、例えば、ポリアルキルシロキサン、より好ましくはポリジメチルシロキサンを主剤とするものを用いることができる。より具体的には、ポリジメチルシロキサンの主剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C BASE)と、その硬化剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C CURING AGENT)を重量比にて10:1で混合したプレポリマーを、液状ポリマー65として好適に用いることができる。液状ポリマー65をテンプレート上に塗布する際、第一ディスク34を高精度に成形する観点から、テンプレートと略同一の底面の円柱空間を持つ型枠内にテンプレートを入れて、その上から液状ポリマー65を流し込む方が好ましい。
【0043】
ステップ107
次に、液状ポリマー65を硬化する(5E)。硬化に先立ち、常圧下若しくは減圧下にて液状ポリマー65内の脱気を行うのが好ましい。硬化の際には、液状ポリマー65が熱硬化型の樹脂であれば、加熱を行うのが好ましい。例えば、ポリジメチルシロキサンを用いた場合には、50~70℃にて加熱するのが好ましい。一方、室温硬化型の液状ポリマー65を用いる場合には、加熱を要しない。
【0044】
ステップ108
次に、硬化した流路形成済みの透光性ポリマー34’をテンプレートから外す(5F)。
【0045】
ステップ109
次に、流路形成済みの透光性ポリマー34’の貯留部41等および廃液部47に、それぞれ開口部50および51を形成すると共に、面内中央に穴25aを形成する(5G)。こうして、第一ディスク34が完成する。
【0046】
ステップ110
次に、第二ディスク35を製造するのに必要となる、平面視にて円形の透光性の平板35を準備する。平板35としては、例えば、好ましくはポリカーボネート樹脂製のものを用いることができる。
【0047】
ステップ111
次に、平板35の面内中心に、穴25bを形成する(6A)。
【0048】
ステップ112
次に、第一ディスク34と平板(第二ディスク)35とを貼り合わせる(6B)。貼り合わせる際には、接着剤、両面テープ、嵌め込み等の如何なる手段を用いても良い。こうして、CD型マイクロチップ2が完成する。
【0049】
上述の工程における開口部50,51および穴25a,25bをそれぞれ形成する各工程を、上述の各工程と異なる順に行うこともできる。例えば、第一ディスク34と第二ディスク35とを貼り合わせた後に、開口部50,51および穴25(穴25aと穴25bとを連結した状態のもの)を形成しても良い。
【0050】
上述のステップ101~109までの第一ディスク34を作製する工程に代えて、以下の製造方法を用いても良い。シリコーン樹脂をCD型に成形し、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48の各位置を、レーザー光等を用いて貫通して第一ディスク34を作製する。その後、第一ディスク34を構成する分割片を第二ディスク35に固着するようにしても良い。また、貯留部41等、分析部46および廃液部47のみをレーザー光等を用いて貫通領域にし、流路48を凹状に加工しても良い。さらには、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48の各位置を、レーザー等を用いて凹状に加工しても良い。」
「【0064】
ステップ203(送液ステップ)
次に、モータ10につながる回転軸11にCD型マイクロチップ2をセットし、モータ10を回転させる。貯留部41等が1個のみの場合には、送液は一回の操作で行われる。しかし、CD型マイクロチップ2に貯留部41等を径方向の距離を変えて5個備える場合には、このステップでは、モータ10の回転数を5水準に変えながら、径方向外側の貯留部41から送液を開始し、続いてその径方向内側の貯留部42から送液を行う。具体的には、モータ10を所定回転数にて回転させて径方向最も外側にある貯留部41から送液を行い、続いて回転数を上げてその径方向内側にある貯留部42から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部43から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部44から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部45から送液を行う。
【0065】
ステップ204(回転停止ステップ)
分析に必要な送液を終了し、分析部46に分析用の試料が存在する状況になったことを確認し、モータ10をオフにし、CD型マイクロチップ2の回転を停止させる。
【0066】
ステップ205(照光ステップ)
次に、有機EL13を発光させ、分析部46に照光する。
【0067】
ステップ206(測定ステップ)
次に、試料等を照光した結果生じる試料由来の蛍光を受光部16にて受光し、測定を行う。」
「【0069】
ステップ210(照光ステップ)
ステップ203に続き、CD型マイクロチップ2を回転させながら、有機EL13を発光させ、分析部46の試料を照光する。この場合、分析部46は、CD型マイクロチップ2の回転1回あたり、1回のみ有機EL13の位置に来る。このため、断続的な照光による分析になる。ただし、後述するように、有機EL13も、CD型マイクロチップ2の回転に合わせて回転させ、常に分析部46の試料を照光するようにしても良い。」
「【0076】
このような構成の分析装置1aを用いると、有機EL13からダイクロイックミラー91にて反射させて半球レンズ15を通して集光された光は、分析部46内の試料に照光される。試料は、この光を受けて蛍光する。試料からの光は、CCDカメラ等に代表される受光部16に入り、アンプ92で増幅される。データ処理器93は、その増幅された光信号を基にデータ処理を行う。」
「【0084】
<9.イムノグロブリンAの蛍光検出方法>
図13は、図1の分析装置を用いて、唾液に含まれるストレスマーカーと位置付けられるイムノグロブリンAの蛍光検出方法を説明するための図であり、検出機構(13A)と、各貯留部からの送液に従って変化する分析部の様子(13B)とを、それぞれ示す。
【0085】
(13A)は、有機EL13を用いた照光直前の分析部46内の状況、および基質溶液104中の基質と過酸化水素がHRPの存在下で反応し、蛍光物質が生成する反応式を示す。CD型マイクロチップ2の分析部46に、予め、抗イムノグロブリンA抗体(抗IgA抗体)100を吸着させ(13Bの(a))、次に、抗IgA抗体100の吸着していない部分にブロッキング試薬(以後、「BSA」という)101を吸着させ(13Bの(b))、その状態で、次に、イムノグロブリンA(IgA)102を分析部46に導入して、抗IgA抗体100とIgA102とを結合させ(13Bの(c))、次に、HRP標識抗IgA抗体103を分析部46に導入する(13Bの(d))。最後に、基質溶液104を分析部46に送液する(13Bの(e))。この結果、抗IgA抗体100にIgA102が結合し、その上にHRP標識抗IgA抗体103が結合し、その周囲に基質溶液104が存在する環境が分析部46内に形成される。かかる環境下では、(13A)の反応式に示すように、基質溶液104中の基質と過酸化水素がHRPの存在下で反応し、蛍光物質が生成する。有機EL13からの励起光を分析部46に照光すると、当該蛍光物質の存在に起因した蛍光が分析部46から発せられる。ここで、抗IgA抗体は、IgAに特異的に結合する抗体であり、この抗原抗体反応において、抗IgA抗体は抗体、IgAは抗原となる。
【0086】
<10.イムノグロブリンAの測定>
図14は、図1の分析装置を用いたイムノグロブリンAの測定方法(14A)および測定結果(14B)をそれぞれ示す。
【0087】
以下の方法は、分析部46において抗原と抗体の特異的結合に基づく物質の検出に関連する。予め、分析部46の内壁に抗IgA抗体100を固定化し、BSA101でブロッキング処理を行った。この段階では、分析部46に、試料中の抗原と結合可能な抗体が少なくとも配置されていることになる。なお、BSA101を用いたブロッキング処理は、試料中に含まれる共存タンパク質の非特異的な吸着を防ぐために必要な処理であるが、必須の処理ではない。次に、CD型マイクロチップ2の貯留部41、貯留部42、貯留部43、貯留部44および貯留部45に、下記1)、2)、3)、4)および5)の液体を導入した。
1)0.1Mリン酸緩衝液(pH=7.4)で希釈した0~1800ng/mLのIgA溶液(IgA102を含む溶液)25μL
2)Tris-HCl緩衝液(洗浄液110)20μL
3)Tris-HCl緩衝液で希釈した5μg/mLのHRP標識抗IgA抗体溶液(HRP標識抗IgA抗体103を含む溶液)15μL
4)Tris-HCl緩衝液(洗浄液110)10μL
5)0.1Mリン酸緩衝液(pH=7.4)で希釈した1mMH2O2を含む0.1mMのAmplex(登録商標)Red溶液(基質溶液104)5μL
【0088】
次に、CD型マイクロチップ2上にマイクロプレート用シーリングフィルム(1-6774-02、アズワン社製)を貼り付け、全ての貯留部41等を密閉した。次に、CD型マイクロチップ2を回転させ、その回転数を段階的に上げていくことにより、貯留部41等中の各溶液を、順次、分析部46に導入した。なお、IgA102を含む溶液とHRP標識抗IgA抗体103を含む溶液とを分析部46に導入した後については約10分間、また、基質溶液104を導入した後については約3分間、それぞれ、CD型マイクロチップ2を静置して抗原-抗体反応および酵素-基質反応のための反応時間を確保した。酵素-基質反応により生成した蛍光物質111(レゾルフィン)の蛍光強度は、有機EL13を備える分析装置1を用いて測定した。この際、有機EL13の電流密度は21mA/cm2、受光部(CCDカメラ)16からの信号の積分時間は500msとした。」
「図1
[図:0001407849000001.jpg]
」
「図2
[図:0001407849000002.jpg]
」
「図3
[図:0001407849000003.jpg]
」
「図5
[図:0001407849000004.jpg]
」
「図6
[図:0001407849000005.jpg]
」
「図10
[図:0001407849000006.jpg]
」
「図11
[図:0001407849000007.jpg]
」
(2) 認定・看取事項
ア 図1からは、段落【0021】に記載の「CD型マイクロチップ2の分析部に向けて発光する光源としての有機エレクトロルミネセンス(以後、単に、「有機EL」という)13を含む発光装置4」と「上記分析部から受光する受光部16を含む受光装置5」は、それぞれ「CD型マイクロチップ2」の「分析部46」(【0030】等)の上方及び下方に配置されることが看て取れる。
イ 図2、3からは、段落【0027】に記載された、各ブロック30の流路構造は、互いに流体的に隔離されていることが看て取れる。
(3) 甲4発明
上記甲4の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位冒頭に、「A」等の本件特許発明1及び18の分節記号に対応する分節記号として「a」等を付し、以下「構成a」などという。
「aeg 分析装置1の第一回転機構3が備える回転軸11にセットされるCD型マイクロチップ2の分析部46の上方及び下方に、分析装置1の、前記分析部46に向けて発光する光源としての有機EL13を含む発光装置4と前記分析部46から受光する受光部16を含む受光装置5とがそれぞれ配置され、回転軸11は、CD型マイクロチップ2の略中心に接続可能な構造を有し、(【0021】~【0022】、【0030】、【0064】、図1、(2)ア)
bf CD型マイクロチップ2は、試料の分析に用いられ、それを自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能な構造を持ち、CD型マイクロチップ2は、中央に穴25を有する円板形状のマイクロチップであり、平面視にて8個の略扇形状のブロック30に分割されており、各ブロック30は、互いに流体的に隔離された同一形状の流路構造を有するため、CD型マイクロチップ2を用いて同時にN=8までの分析を行うことができ、ブロック30は、8個に限定されず、CD型マイクロチップ2は、共に透光性材料から成る第一ディスク34と第二ディスク35とを積層して成り、(【0027】、図2、3、(2)イ)
ab CD型マイクロチップ2は、測定対象の試料のみならず、洗浄液、抗体を含む溶液、各種試薬を含む溶液といった他の溶液を貯留することができる1または2以上の貯留部41,42,43,44,45(以後、「貯留部41等」という)と、貯留部41等より径方向外側に配置され、貯留部41等から送られてきた試料の分析場となる分析部46、および貯留部41等と分析部46とを繋ぐ送液用の流路48を、少なくとも備え、CD型マイクロチップ2の各ブロック30は、その内部に、5つの貯留部41等と、1つの分析部46と、1つの廃液部47と、複数本の送液用の流路48とを備え、流路48は、各貯留部41等同士の間、各貯留部41等と分析部46および廃液部47との間、分析部46と廃液部47との間をそれぞれ繋いでおり、貯留部41等は、少なくとも測定対象の試料を貯留するための領域であって、薄厚の略円柱形状の空間であり、貯留部41等は、CD型マイクロチップ2の径方向外側から内側に向かって、貯留部41、貯留部42、貯留部43、貯留部44、貯留部45の順に配置されているため、CD型マイクロチップ2を自転させた際に、回転数を上げるに従い、径方向最も外側の貯留部41から最初に送液し、次に貯留部42から、その次に貯留部43から、その次に貯留部44から、最後に径方向最も内側の貯留部45からそれぞれ送液することができ、(【0030】~【0031】)
ab2 分析部46は、貯留部41等より径方向外側に配置される領域であって、貯留部41等から送られてきた試料等の溶液に照光するための領域であり、分析部46を貯留部41等より径方向外側に配置するのは、CD型マイクロチップ2を自転させた際の遠心力を利用して分析部46に送液させるためであり、廃液部47を、分析部46より径方向内側あるいは分析部46と径方向同一の距離に設け、測定者が、CD型マイクロチップ2を傾けて、手動にて溶液を廃液部47に集めることができ、さらに、廃液部47は、CD型マイクロチップ2にとって必須の領域ではなく、設けなくても良く、(【0032】)
ab3 流路48は、CD型マイクロチップ2の厚さ方向の内部に形成され、貯留部41等、分析部46、廃液部47および流路48は、第一ディスク34における第二ディスク35の対向面から内方に窪む凹部によって形成されており、分析部46および流路48は、第一ディスク34と第二ディスク35とを積層した後には閉鎖空間となり、第一ディスク34の厚さは1~3mmの範囲であり、貯留部45は、流路48と同様、CD型マイクロチップ2の厚さ方向の内部に形成されており、かつその上面に開口部50を有し、他の貯留部41,42,43,44も、その上面に開口部50を備え、(【0033】~【0034】)
cd 第一ディスク34の分析部46の少なくとも入光窓および出光窓を透光性にする限り、他の部分を遮光性にすることもでき、(【0035】)
efg1 CD型マイクロチップ2の分析部46に、予め、抗イムノグロブリンA抗体(抗IgA抗体)100を吸着させ、次に、抗IgA抗体100の吸着していない部分にブロッキング試薬(以後、「BSA」という)101を吸着させ、その状態で、次に、イムノグロブリンA(IgA)102を分析部46に導入して、抗IgA抗体100とIgA102とを結合させ、次に、HRP標識抗IgA抗体103を分析部46に導入し、最後に、基質溶液104を分析部46に送液する結果、抗IgA抗体100にIgA102が結合し、その上にHRP標識抗IgA抗体103が結合し、その周囲に基質溶液104が存在する環境が分析部46内に形成され、かかる環境下では、基質溶液104中の基質と過酸化水素がHRPの存在下で反応し、蛍光物質が生成し、有機EL13からの励起光を分析部46に照光すると、当該蛍光物質の存在に起因した蛍光が分析部46から発せられ、抗IgA抗体は、IgAに特異的に結合する抗体であり、この抗原抗体反応において、抗IgA抗体は抗体、IgAは抗原となり、(【0085】)
efg2 CD型マイクロチップ2の貯留部41、貯留部42、貯留部43、貯留部44および貯留部45に、下記1)、2)、3)、4)および5)の液体を導入し、
1)0.1Mリン酸緩衝液(pH=7.4)で希釈した0~1800ng/mLのIgA溶液(IgA102を含む溶液)25μL
2)Tris-HCl緩衝液(洗浄液110)20μL
3)Tris-HCl緩衝液で希釈した5μg/mLのHRP標識抗IgA抗体溶液(HRP標識抗IgA抗体103を含む溶液)15μL
4)Tris-HCl緩衝液(洗浄液110)10μL
5)0.1Mリン酸緩衝液(pH=7.4)で希釈した1mMH2O2を含む0.1mMのAmplex(登録商標)Red溶液(基質溶液104)5μL
次に、CD型マイクロチップ2上にマイクロプレート用シーリングフィルム(1-6774-02、アズワン社製)を貼り付け、全ての貯留部41等を密閉し、次に、CD型マイクロチップ2を回転させ、その回転数を段階的に上げていくことにより、貯留部41等中の各溶液を、順次、分析部46に導入し、酵素-基質反応により生成した蛍光物質111(レゾルフィン)の蛍光強度は、有機EL13を備える分析装置1を用いて測定する、(【0087】~【0088】)
CD型マイクロチップ2及び検出方法。」
2 甲1
(1) 本件特許の出願前である平成22年(2010年)8月5日に頒布された刊行物である甲1には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、発光測定に用いられる発光測定用容器に関するものである。更に詳しくは、本発明は、優れたシグナル増強効果と、自己発光等のノイズ低減効果と、更には優れた遮光効果を同時に達成し得る、化学発光測定用などの測定用容器に関するものである。」
「【0006】
発光測定の測定感度を高感度化するためには、前記した容器内面での反射によるシグナル増強や容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるバックグランドの低減に加えて、N(ノイズ)成分を低減して測定系のS/N比を向上することが重要であるが、N成分の中でも測定系の外部からくる不定のノイズを排除するうえで、発光測定用容器の遮光性を向上することが大切である。不定のノイズには、前記したものの他に、例えば、発光測定用容器がマイクロプレートであって、隣接するウェルからの発光が強大であるのに対して測定対象ウェルの発光が微細である場合に、側壁を通して当該強大な発光が対象ウェルに漏れ出るようなものも含まれる。」
「【0009】
そこで本発明の目的は、容器内面での反射によるシグナル増強、容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるバックグランドの低減、そして不定のノイズを排除するための遮光性の全てを同時に達成し得るように光反射性成分と光吸収性成分を配合した熱可塑性樹脂製の発光測定用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明は、0.5から10重量%の光反射性成分及び0.01から0.5重量%の光吸収性成分を配合し、灰色又は有彩色に着色成形した、熱可塑性樹脂製の発光測定用容器である。また、発光測定用容器が複数の開口部を有している場合、光学特性からみた本発明の発光測定用容器は、発光測定用容器が有する開口部の一つに発光溶液を入れたときに前記開口部から検出される前記発光溶液からの光量(A)[cps]、及び前記容器が有する開口部の一つに前記発光溶液を入れたときに前記開口部に隣接した開口部から検出される前記発光溶液からの光量(B)[cps]から、式(1)[{(A)-(B)}÷(A)]×100 式(1)により計算される遮光率が99.99%以上であり、前記光量(A)[cps]が、1.0重量%の黒色顔料を配合した容器が有する開口部に前記発光溶液を入れたときに前記開口部から検出される前記発光溶液からの光量[cps]よりも大きい、発光測定用容器である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における発光は、化学発光や生物発光等の化学反応により基底状態にあった分子がエネルギーを吸収して高エネルギー状態の励起状態に遷移し、元の基底状態に戻る際に生じる可視光であって、蛍光発光又は燐光発光以外のものである。また発光は、測定対象物から直接的に放出される可視光に限定されず、例えば、反応場に共存する蛍光物質などにエネルギーを一旦受け渡すことで、その蛍光物質が励起状態となり、そこから基底状態に戻る際に放出される可視光であっても良い。ここで蛍光発光とは、紫外光や可視光を励起光として照射することで、励起光を吸収した発光体が電子励起されて中間励起状態におち、そこから基底状態に戻るときに発する励起光より長波長の発光をいい、燐光発光とは、電子励起三重項に遷移した電子が基底状態にもどるときに発する発光をいう。
【0012】
容器は、発光反応によって生じる発光を測定するための開口部を有する熱可塑性樹脂製のものであれば寸法は特に限定されないが、一般に容器の肉厚が薄いと遮光性が低下し、後述する光吸収性成分を配合しても十分な遮光性が得られなくなる可能性があるため、1mm程度(0.5mmから1.5mm)の肉厚を確保したものであることが好ましい。容器の形状としては、例えばチューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)が例示できる。容器を構成する熱可塑性樹脂は、後述する光反射性成分や光吸収性成分である顔料又は染料が配合できるものであれば特に制限はなく、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂等を例示することができるがこれらに限定されない。例示した熱可塑性樹脂の中でも、既に発光測定用容器を構成するものとしての実績に富むオレフィン系ホモポリマーやコポリマーは特に好ましい熱可塑性樹脂である。より具体的には、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、プロピレン-エチレン共重合体、アイオノマー、エチレン-アクリル共重合体又はエチレン-酢酸ビニル共重合体等を例示することができる。
【0013】
容器を構成する熱可塑性樹脂に配合する光反射性成分は、容器内面での反射によるシグナル増強と当該反射による熱可塑性樹脂本体の励起を防止することによる自己発光に由来するバックグランドの低減のためのものである。従って、全波長にわたって光を反射する白色系の顔料又は染料や、測定しようとする発光の特定の波長を反射する色の顔料又は染料が光反射性成分として例示できる。中でも顔料は、特に好ましい光反射性成分である。より具体的には、白色顔料である二酸化チタン、亜鉛華、鉛白、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等を例示することができる。中でも二酸化チタンは、熱可塑性樹脂を容器形状に成形する際の分散性や隠蔽性が良好で、安全性も高く、特に好ましい顔料である。なお二酸化チタンの中でも、通常、光触媒作用の小さい結晶型を選択するか、光触媒作用を抑制するために水酸化アルミニウムやアルミナ等で被覆処理されたものが特に好ましい。測定しようとする発光の特定の波長を反射する色の顔料としては、例えば、当該特定の波長が450nm付近であれば、ウルトラマリン青、プロシア青、フタロシアニン青又はアントラキノン等の青色の顔料を、当該特定の波長が550nm付近であれば、フタロシアニン緑、ぺリレン又はニトロソ化合物等の緑色の顔料を、当該特定の波長が650nm付近であれば、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、黄鉛、クロム黄、亜鉛黄、ベンジジン黄、キノフタロン、イソインドリノン又はイミダゾロン等の黄色の顔料を例示することができる。以上に説明した光反射性成分は、一種類のものを単独で配合しても良いし、二種以上のものを組み合わせて配合しても良い。二種以上のものを組み合わせる場合には、同一色の顔料を二種以上組み合わせること以外に、異なる色の顔料を二種以上組み合わせることも含む。
【0014】
容器を構成する熱可塑性樹脂に配合する光吸収性成分は、容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるバックグランドの低減、そして不定のノイズを排除するための遮光性のためのものである。従って、全波長にわたって光を吸収する黒色の顔料又は染料が例示できる。中でも顔料は、特に好ましい光吸収性成分である。より具体的には、黒色料である、カーボンブラック、チタンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック、酸化鉄(Fe3O4)又は還元鉄等を例示することができる。これらは単独で配合することもできるし、二種以上を組み合わせて配合することができる。」
「【0022】
実施例1
光反射性成分として白色顔料(二酸化チタン)、光吸収性成分として黒色顔料(カーボンブラック)を選択し、表1のようにポリプロピレンに対する配合率を#1から#4の4つのパターンで変化させて、それぞれ容量が同一である2槽タイプの発光測定用容器(図1参照)を作製した。対照として無着色、黒色、白色容器も作製した。
【0023】
図1の(a)に示すように空容器の一方の開口部をアルミ箔4でシールした後、もう一方の槽に10ng/mLのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)10μLと0.4mMのALP用化学発光基質溶液(特開2005-77142号参照)100μLとからなる酵素反応液3を分注して発光検出器1にセットし、37℃、5分間反応後の発光量(A)を、反応溶液の入った槽の開口部上方から検出した。
【0024】
次に図1の(b)に示すように新たな空容器を用意し、一方の槽に酵素反応液3を分注して開口部をアルミ箔4でシールした後、37℃、5分間反応させた。反応後、空の槽の開口部の上方に受光面が位置するように発光検出器1に容器をセットし、酵素反応液3が入った槽から最短箇所で約1mmの隔壁を透過して空の槽へ漏れ出た光量(B)を測定した。遮光率は以下のように計算し表1にまとめた。
【0025】
遮光率[%]=
{(サンプル側の光量(A)[cps]-空の槽に漏れ出た光量(B)[cps])
÷サンプル側の光量(A)[cps]}×100
光反射性成分に遮蔽性の良好な二酸化チタンを用い、顔料の練り込み率を成形濃度限界近くの6%に上げた白色容器を用いても、漏れ光量は944,105cpsと高く、遮光率は93.6774%しか得られない。これに対して、黒色、#1、#2、#3(光吸収性成分であるカーボンブラックの配合率は、それぞれ、1.00、0.09、0.048、0.024%)では、いずれも空槽への漏れ光量が30から41cpsと、検出器1のダークカウントと同レベルと低く、遮光率はいずれも99.997%以上の良好な値を示した。光吸収性成分であるカーボンブラックの配合率を0.012%まで落とした#4は1,611cpsの漏れ光量を示し、遮光率は99.9662%となった。」
「【0027】
【表1】
[図:0001407849000008.jpg]
実施例2 実施例1において観察された容器外からのノイズ光の漏れ込みが、実際の発光測定においてどの程度の偽高値に相当するのかを評価するために、無着色、黒色、#2、#4、白色2のそれぞれの容器を用いて実際に甲状腺刺激ホルモン(TSH)の発光測定を行った。」
「図1
[図:0001407849000009.jpg]
」
(2)看取・認定事項
図1からは、【0022】に記載の「2槽」が互いに流体的に隔離されていることが看取される。
(3)甲1発明
上記甲1の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位冒頭に、「A」等の本件特許発明1及び18の分節記号に対応する分節記号として「a」等を付し、以下「構成a」などという。
「ab1 チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)が例示でき、化学発光や蛍光発光などの発光測定に用いられる発光測定用容器であって、(【0001】、【0011】~【0012】)
ac1 優れたシグナル増強効果と、容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるによるバックグランドや、例えば、発光測定用容器がマイクロプレートであって、隣接するウェルからの発光が強大であるのに対して測定対象ウェルの発光が微細である場合に、側壁を通して当該強大な発光が対象ウェルに漏れ出るようなものも含まれるノイズの低減効果と、更には優れた遮光効果を同時に達成し得る、化学発光測定用などの測定用容器であり、(【0001】、【0006】、【0009】)
d11 光反射性成分及び0.01から0.5重量%の光吸収性成分を配合し、灰色又は有彩色に着色成形した、熱可塑性樹脂製の発光測定用容器であり、(【0010】)
ac1 光反射性成分として白色顔料(二酸化チタン)、光吸収性成分として黒色顔料(カーボンブラック)を配合した、それぞれ容量が同一であって流体的に隔離された2槽を有する発光測定用容器の空容器の一方の開口部をアルミ箔4でシールした後、もう一方の槽に10ng/mLのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)10μLと0.4mMのALP用化学発光基質溶液100μLとからなる酵素反応液3を分注して発光検出器1にセットし、37℃、5分間反応後の発光量(A)を、反応溶液の入った槽の開口部上方から検出し、次に示すように新たな空容器を用意し、一方の槽に酵素反応液3を分注して開口部をアルミ箔4でシールした後、37℃、5分間反応させ、反応後、空の槽の開口部の上方に受光面が位置するように発光検出器1に容器をセットし、酵素反応液3が入った槽から最短箇所で約1mmの隔壁を透過して空の槽へ漏れ出た光量(B)を測定し、遮光率[%]={(サンプル側の光量(A)[cps]-空の槽に漏れ出た光量(B)[cps])÷サンプル側の光量(A)[cps]}×100により計算した遮光率が99.997%以上の値を示し、(【0022】~【0025】、図1、(2))
d12 容器を構成する熱可塑性樹脂に配合する光反射性成分は、容器内面での反射によるシグナル増強と 当該反射による熱可塑性樹脂本体の励起を防止することによる自己発光に由来するバックグランドの低減のためのものであって、全波長にわたって光を反射し(【0013】)
d13 容器を構成する熱可塑性樹脂に配合する光吸収性成分は、容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるバックグランドの低減、そして不定のノイズを排除するための遮光性のためのものであって、全波長にわたって光を吸収し、(【0014】)
a1 発光は、化学発光や生物発光等の化学反応により基底状態にあった分子がエネルギーを吸収して高エネルギー状態の励起状態に遷移し、元の基底状態に戻る際に生じる可視光であって、蛍光発光又は燐光発光以外のものである、(【0011】)発光測定用容器。」
3 甲5
本件特許の出願前である平成30年(2018年)3月8日に頒布された刊行物である甲5には、円盤形状のカートリッジ(【0024】、図4B)のチャンバ216における測定試料から、複合体中の標識物質(アルカリホスファターゼ)と化学発光基質との反応により、シグナルとして化学発光が生じ、チャンバ216から生じる光を、光検出器144aにより検出すること(【0124】~【0126】)、蛍光物質で標識された第2の捕捉物質を用いてもよく、この場合、チャンバ216に励起光を照射するための光源が配置され、光検出器144aは、光源からの光照射によって複合体中の蛍光物質から放出される蛍光を検出すること(【0127】)、が記載されている。
また、甲5には、アルカリフォスファターゼの化学発光基質であるR5試薬が、遠心力により、収容部232からチャンバ216に移送されるとの技術的事項が記載されている(段落【0105】、【0124】)。
その他、甲5には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
「【0027】
チャンバ211~216は、被検物質を含む液体を収容するためにカートリッジ200に設けられた収容部である。チャンバ内には常に液体が入っていなくてもよい。チャンバは、液体を収容するために空間的な広がりを有していればよい。チャネル220は、試料を担体粒子と共にあるチャンバから別のチャンバへ移送するためにカートリッジ200に設けられた流路である。チャネル220は、周方向に延びた円弧状の領域221と、径方向に延びた6つの領域222とを備える。領域221は、6つの領域222と繋がっている。6つの領域222は、それぞれチャンバ211~216に繋がっている。6つの収容部231は、流路を介してチャネル220に繋がっており、それぞれチャンバ211~216に繋がる領域222の延長線上にある。収容部232は、流路を介して、チャンバ216に繋がる領域222と、チャンバ216に繋がる領域222の延長線上にある収容部231とを繋ぐ流路に繋がっている。」
「【0056】
上記の標識物質として酵素を用いる場合、カートリッジは、該酵素の基質溶液をさらに備えてもよい。本実施形態のカートリッジにおいて、基質溶液は、担体粒子が最後に移送されるチャンバに内容物を供給可能な収容部に収容されることが好ましい。例えば、図4Bを参照して、基質溶液は、チャンバ216の径方向に位置する収容部231、又は収容部232に収容されることが好ましい。」
「【0082】
<分析装置の構成例>
図4Aに示される分析装置100は、抗原抗体反応を利用して試料中の被検物質を検出し、検出結果に基づいて被検物質を分析する試料分析装置である。分析装置100は、本体部101と蓋部102を備える。本体部101は、蓋部102を開閉可能に支持している。本体部101の上部は、設置部材110で覆われ、設置部材110の上面の中心部にカートリッジ200が置かれる。分析装置100は、カートリッジ200に収容された磁性粒子を、カートリッジ200に形成された複数のチャンバに順次移送することにより、磁性粒子に被検物質と標識物質で標識された捕捉物質との複合体を担持させ、標識物質に基づいて被検物質を検出する。」
「【0085】
収容体150は、その上面151の複数箇所に孔が形成されている。孔155は、後述する回転軸311(図8参照)を通すために設けられている。収容部152、153は、上面151から下方向に窪んだ凹部により構成される。設置部材110が収容体150に設置される際には、設置部材110の外周下面と収容体150の外周上面とが接合される。設置部材110が収容体150に設置されると、移動機構130が収容部152に収容され、検出部140が収容部153に収容される。設置部材110と収容体150は、遮光性の樹脂で形成されており、設置部材110と収容体150の色は、遮光性を高めるために黒色に設定されている。」
「【0091】
図6に示すように、カートリッジ200のチャンバ216から生じた光は、カートリッジ200の上側と下側に広がる。カートリッジ200の下側に広がった光は、反射部材142の孔142bを通り、光調整部160を通り、光検出器144aにより受光される。カートリッジ200の上側に広がった光は、後述する蓋部102の下面に露出する板部材191により反射されてチャンバ216に戻り、同様に光検出器144aにより受光される。蓋部102の板部材191にミラーを配置して、カートリッジ200の上側に広がった光を反射させてもよい。
【0092】
図7に示すように、設置部材110の中心に支持部材177が配置される。支持部材177は、装着されたカートリッジ200を支持して回転させるターンテーブルにより構成される。支持部材177が配置される中心部の周囲には、同軸状に突部115と突部116とが形成され、それらの間に、例えば遮光性のポリウレタン樹脂で形成された弾性部材117が配置される。弾性部材117の色は、遮光性を高めるために黒色に設定されている。弾性部材117は、閉ループに構成されている。弾性部材117の上面は、弾性変形可能な接合面である。」、
「【0095】
設置部材180は、遮光性の樹脂で形成されており、設置部材180の色は、遮光性を高めるために黒色に設定されている。・・・」
「【0097】
クランパ192は、設置部材180の中心に配置される。設置部材180の下面には、閉ループの突部181が形成されている。突部181は、周方向に沿って下方向に突出している。設置部材180の下面には、突部181の外側に凹部が形成されており、この凹部に弾性部材182が配置される。弾性部材182は、たとえば遮光性のポリウレタン樹脂で形成されており、弾性部材182の色は、遮光性を高めるために黒色に設定されている。弾性部材182は、閉ループに構成されている。弾性部材182の下面は、弾性変形可能な接合面である。」
「図4A
[図:0001407849000010.jpg]
」
「図4B
[図:0001407849000011.jpg]
」
「図6
[図:0001407849000012.jpg]
」
「図7
[図:0001407849000013.jpg]
」
「図8
[図:0001407849000014.jpg]
」
図8からは、遮光性である「収容体150」、「設置部材110」、「設置部材180」、「弾性部材117」、「弾性部材117」及び「設置部材180」は、「カートリッジ200」が内部に配置される遮光された筐体を構成していることが看て取れ、「弾性部材117」及び「設置部材180」は、「カートリッジ200」の配置される空間に面する筐体内面を構成することが看て取れる。
してみると、甲5に記載の装置において、「カートリッジ200」の配置される空間に面する「弾性部材117」及び「設置部材180」の部分において、その遮光性により、「カートリッジ200」の外部に放射された測定試料から生じる光の散乱を抑制されるものと認められる。
4 甲6
本件特許の出願前である平成17年(2005年)3月24日に頒布された刊行物である甲6には、次の技術事項が記載されている。
「【0031】
この化学発光用組成物溶液50μLと、アルカリ性ホスファターゼ10-18モル/mL、0.1%ゼラチン加水分解物、1mM MgCl2、0.15M NaClおよび0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM Tris-HCl緩衝溶液10μLと、を反応させ、その発光量を測定した。発光測定にはベルトールド社製ルミノメーターLB96V(検出器:シングルフォトンカウンター;測定波長領域:380~630nm)を使用し、測光条件は化学発光用組成物と上記の酵素の溶液とを混合した5分後の1秒間の発光量(カウント数)を測定した。結果を表1に示す。また後述の比較例1(界面活性剤および蛍光性物質が無添加の場合)の発光量を基準にした発光量の比を増幅率として表1の最右欄に示した。」
7 甲2
本件特許の出願前である2017年(平成29年)9月14日に頒布された刊行物である甲2には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
「[0223] (第3実施形態)
本開示の第3実施形態の測定用プレートは、液体試料中に含まれる検体の定性的又は定量的な測定に用いることができる測定用プレートである。図19及び図20に示すように、本実施形態の測定用プレート100は、第1の基板101と、第1の基板101と対向して設けられると共に凹部121を有する第2の基板102と、第1の基板101と第2の基板102との間に設けられた接着剤層103とを備えている。第1の基板101と、第2の基板102の凹部121とは、液体試料が注入されてその光学的特性を測定する測定ウェル110を構成する。第2の基板102は、接着剤層103と接する接着面122に接着剤を溜める接着剤吸収窪み123を有し、接着剤吸収窪み123は、測定ウェル110と接着面122との間に設けられる。」
「[0233] 第2の基板102は、必要とする深さの凹部121を形成できる厚さの基板とすることができる。第2の基板102は、透明の材料により形成することができるが、測定ウェル110における検出を第1の基板101側だけで行う場合には不透明な材料により形成することができる。第2の基板102が透明である場合には、ガラス又は樹脂材料により形成することができる。樹脂材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド及びポリスルホン等を用いることができる。第2の基板102が不透明である場合には、シリコン、金属又は不透明な樹脂材料等により形成することができる。」
「[0240] 本実施形態の測定用プレート100は、図1Aおよび図1Bに示すように、円盤状で、複数の測定ウェル110が円周上に配置されている構成とすることができる。このようにすれば多検体を一度に測定することができる。図1Aおよび図1Bには、1つの測定用プレート100に8個の測定ウェル110が設けられている例を示しているが、測定ウェル110の数は適宜変更することができる。」
「[0266] 本実施形態の測定用プレートは、図26に示すように、円盤状で、複数の測定ウェル110が円周上に配置されている構成とすることができる。このようにすれば多検体を一度に測定することができる。図26には、1つの測定用プレート100に8個の測定ウェル110が設けられている例を示しているが、測定ウェル110の数は適宜変更することができる。」
「図1A
[図:0001407849000015.jpg]
」
「図19
[図:0001407849000016.jpg]
」
「図20
[図:0001407849000017.jpg]
」
「図26
[図:0001407849000018.jpg]
」
8 甲3
本件特許の出願前である平成6年(1994年)4月15日に頒布された刊行物である甲3には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
「【0029】試験例2 遮光性
測定用プレートとしては、白色系着色合成樹脂からなる本発明プレート(形状;平底を有する1個1個独立した容器よりなる試料穴を有するタイプ)、および同形状の従来のポリスチレンから成る透明プレートを用いた。これらの本発明品と従来品を、一般的に用いられている96穴マイクロプレート(一体型;図4の平面図参照)の各穴に1個1個はめこみ、それぞれの測定用プレートにて化学発光反応を行わせてその発光量を検出した。図4に示すように、1個の被測定試料穴3aを特定し、被測定試料穴3aの周囲に化学発光反応のみを行わせる反応試料穴3bを設け、反応試料穴3bの数を1個ずつ増加させて、被測定試料穴3aでの受光部が受光する受光値を測定した。」
「図4
[図:0001407849000019.jpg]
」
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由(進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
(ア) 構成A
甲4発明の「イムノグロブリンA(IgA)102を分析部46に導入して、HRP標識抗IgA抗体103が結合し、その周囲に基質溶液104が存在する環境が分析部46内に形成され、かかる環境下では、基質溶液104中の基質と過酸化水素がHRPの存在下で反応し、蛍光物質が生成し、有機EL13からの励起光を分析部46に照光すると、当該蛍光物質の存在に起因した蛍光が分析部46から発せられ」(構成efg1)における、「イムノグロブリンA(IgA)102」は構成Aの「被検物質」に相当し、「イムノグロブリンA(IgA)102」と結合した「HRP標識抗IgA抗体103」、「基質溶液104」及びそれらの反応により生じる「蛍光物質」は、「被検物質を含む測定試料」に相当するから、甲4発明の「分析部46から発せられ」る「蛍光」は、「被検物質を含む測定試料から生じる光」に相当する。
そして甲4発明の「分析装置1」は、「分析部46から受光する受光部16を含む受光装置5」を備え(構成aeg)るから、構成Aの「被検物質を含む測定試料から生じる光を検出するための検出装置」に相当し、「分析装置1の第一回転機構3が備える回転軸11にセットされるCD型マイクロチップ2」は、「検出装置に設置され、前記光の検出に用いるカートリッジ」に相当する。
よって、甲4発明は、本件特許発明1の構成Aを備える。
(イ) 構成B
甲4発明において、「CD型マイクロチップ2は、」「平面視にて8個の略扇形状のブロック30に分割されており、各ブロック30は、互いに流体的に隔離された同一形状の」「分析部46」を備える「流路構造を有する」(構成bf、ab)から、「分析部46」は複数存在し、互いに流体的に隔離されていると認められる。また、上記アに説示したとおり、「被検物質を含む測定試料から生じる光」に相当する「蛍光」が「分析部46から発せられ」、「受光部16を含む受光装置5」が「受光する」(構成aeg)。さらに、「分析部46」は「閉鎖空間」である(構成ab3)。すると、甲4発明の「受光装置5」は、構成Bの「光検出器」に相当し、複数の「分析部46」は、「複数の検出チャンバ」に相当する。
よって、甲4発明は、本件特許発明1の構成Bを備える。
(ウ) 構成C
甲4発明において、「CD型マイクロチップ2の分析部46の上方及び下方に、分析装置1の、前記分析部46に向けて発光する光源としての有機EL13を含む発光装置4と前記分析部46から受光する受光部16を含む受光装置5とがそれぞれ配置され」(構成aeg)るのであるから、「分析部46」の「入光窓および出光窓」は、「分析部46の上方及び下方に」位置するものと認められる。
一方、甲4発明には、「第一ディスク34の分析部46の少なくとも入光窓および出光窓を透光性にする限り、他の部分を遮光性にすることもでき」(構成cd)るとも記載されているが、甲4の【0036】~【0050】、図5・6に示されたCD型マイクロチップの製造方法からして、「第一ディスク34」の一部分のみを透明な材料で形成し、他の部分を遮光性の材料で形成するものとはいえないことから、せいぜい第一ディスク34の表面に対して、入光窓および出光窓以外の部分を被覆するような遮光性のシートを貼り付けるなどして、表面に遮光性を付与するようなものであるといえる。そして、上記のような遮光性のシートは、複数の分析部46の間に上方から見て存在するとしても、複数の分析部の間を光が水平方向に透過することを抑制するものではないことから、本件特許発明1の構成Cのように「前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられ、前記検出チャンバ内の前記測定試料から生じる光が他の前記検出チャンバへ透過することを抑制する」ことはない。
よって、甲4発明「第一ディスク34の分析部46の少なくとも入光窓および出光窓を透光性にする限り、他の部分を遮光性にすることもでき」(構成cd)るものと、構成Cの「前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられ、前記検出チャンバ内の前記測定試料から生じる光が他の前記検出チャンバへ透過することを抑制する透過抑制部」とは、「光が」「透過することを抑制する透過抑制部」という限りにおいて共通するものである。
(エ) すると、本件特許発明1と甲4発明とは、
「A 被検物質を含む測定試料から生じる光を検出するための検出装置に設置され、前記光の検出に用いるカートリッジであって、
B 互いに流体的に隔離され、前記測定試料を受け入れ、受け入れた前記測定試料から生じる光が光検出器により検出される複数の検出チャンバと、
C’ 光が透過することを抑制する透過抑制部と、
を備える、
カートリッジ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1のカートリッジは、「前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられ、前記検出チャンバ内の前記測定試料から生じる光が他の前記検出チャンバへ透過することを抑制する」透過抑制部(構成C)を備えるのに対し、甲4発明は、そのような構成がない点。
<相違点1-2>
「透過抑制部」について、本件特許発明1は、「前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む」(構成D)のに対し、甲4発明は「透過抑制部」の材料が不明である点。
イ 判断
上記相違点1-1について検討する。
甲4の【0069】に「この場合、分析部46は、CD型マイクロチップ2の回転1回あたり、1回のみ有機EL13の位置に来る。」と記載され、図1,10~11を見ると、甲4には、分析部46に向けて発光する光源としての有機EL13を含む発光装置4や分析部46から受光する受光部16を含む受光装置5をそれぞれ1つずつ有する分析装置1が開示されるのみであり、複数の「分析部46」を同時に発光させることは記載されていないし、複数の「分析部46」を同時に発光させることを可能とする装置でもない。すると、甲4発明には、「分析部46」内の前記測定試料から生じる光が他の「分析部46」へ透過することを抑制する透過抑制部を複数の「分析部46」の各々の間に設けるようにすることの動機がない。
上記第4で摘記した甲1、3、5~6に記載された技術事項を見ても、甲4に、「複数の検出チャンバの各々の間に設けられ、前記検出チャンバ内の前記測定試料から生じる光が他の前記検出チャンバへ透過することを抑制する」透過抑制部を設けるよう当業者に動機づける記載ないし示唆は見当たらない。
さらに、甲2の[0233]には、図20等に示される「第2の基板102」について、「第2の基板102は、透明の材料により形成することができるが、測定ウェル110における検出を第1の基板101側だけで行う場合には不透明な材料により形成することができる。」と記載されているが、「測定ウェル110」内の前記測定試料から生じる光が他の「測定ウェル110」へ透過することを抑制することについては記載されていない。すると、係る甲2の記載に基づき、甲4に、構成Cの「透過抑制部」を設けることが容易であったということはできない。
すると、本件特許発明1は、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に想到しうるものではない。
(2)本件特許発明2~17
本件特許発明2~17は、本件特許発明1に従属しており、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備える。すると、上記(1)と同様の理由により、本件特許発明2~17は、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に想到しうるものではない。
(3)本件特許発明18
ア 本件特許発明18と甲4発明とを対比する。
(ア) 構成E
上記(1)ア(ア)での対比により、甲4発明は、本件特許発明18の構成Eに相当する構成を備えるものと認められる。
(イ) 構成F
上記(1)ア(イ)での対比により、甲4発明は、本件特許発明18の構成Fに相当する構成を備えるものと認められる。
(ウ) 構成G
甲4発明は、「第一ディスク34の分析部46の少なくとも入光窓および出光窓を透光性にする限り、他の部分を遮光性にすることもでき」(構成cd)、「CD型マイクロチップ2の分析部46の上方及び下方に、分析装置1の、前記分析部46に向けて発光する光源としての有機EL13を含む発光装置4と前記分析部46から受光する受光部16を含む受光装置5とがそれぞれ配置され」(構成aeg)るものである。すると、「分析部46」の、「出光窓」に向かう方向には、光が透過するから、当該方向は、構成Gの「第2方向」に相当する。
そして、甲4発明の構成cdにおいて、「遮光性にする」部分が、少なくとも「透光性」とされる「出光窓」に向かう方向ではない方向であることは明らかであるから、甲4発明における、「分析部46」から構成cdの「遮光性にする」「部分」に向かう方向が、構成Gの「第2方向」とは異なる「第1方向」に相当し、当該「遮光性にする」「部分」が、構成Gの「透過抑制部」に相当する。
(エ) すると、本件特許発明18と甲4発明とは、
「E 被検物質を含む測定試料を受け入れる複数の検出チャンバを備えたカートリッジを用いて、前記測定試料から生じる光を検出する検出方法であって、
F 互いに流体的に隔離された前記複数の検出チャンバの各々に前記測定試料を配置し、
G’ 透過抑制部によって、第1方向に放射された前記測定試料から生じる光の透過を抑制しながら、前記複数の検出チャンバの各々について、前記第1方向とは異なる第2方向に放射された前記測定試料から生じる光を検出する、
検出方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点18-1>
透過抑制部の位置について、本件特許発明18は、「前記複数の検出チャンバの各々の間に設けられた」ことが特定されているのに対し(構成G)、甲4発明の「遮光性にする」「部分」が複数の「分析部46」の各々の間に設けられたものであるか不明な点。
<相違点18-2>
「透過抑制部」について、本件特許発明18は、「前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む」のに対し(構成H)、甲4発明の「遮光性にする」「部分」の材料が不明である点
イ 判断
事案に鑑み、相違点18-1について検討する。
(ア) 上記(1)イに説示したように、甲4発明は、複数の「分析部46」を同時に発光させるものではないから、「分析部46」内の前記測定試料から生じる光が他の「分析部46」へ透過することを抑制する透過抑制部を複数の「分析部46」の各々の間に設けるようにすることの動機付けがない。
なお、上記(1)ア(ウ)で述べたように、甲4発明において、「遮光性にすることもでき」(構成cd)るものとしては、第一ディスク34の表面に対して、入光窓および出光窓以外の部分を被覆するような遮光性のシートを貼り付けるなどして、表面に遮光性を付与するようなものが想定されるところではあるが、このようなディスクの表面に貼り付けるシートは、複数の分析部の間を光が水平方向に透過することを抑制できるものではないことから、上記の判断のとおり、遮光性のシートを複数の分析部46の各々の間に設けるようにすることの動機があるとはいえない。
(イ) また、甲4発明は、「CD型マイクロチップ2は、共に透光性材料から成る第一ディスク34と第二ディスク35とを積層して成」り(構成bf)「閉鎖空間とな」るものであり(構成ab3)、甲1発明のような、「チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)」とは異なり、「開口部」を有していないものであるから、甲1発明に記載されている技術事項を甲4発明に適用することはない。
(ウ) さらに、甲4発明の「遮光性にする」「部分」は、上記(1)ア(ウ)に説示したように、「第一ディスク34」の一部分のみを透明な材料で形成し、他の部分を遮光性の材料で形成したものとはいえず、せいぜい第一ディスク34の表面に対して、入光窓および出光窓以外の部分を被覆するような遮光性のシートを貼り付けるものであるところ、そのような「遮光性にする」「部分」に、「発光測定用容器」全体を遮光性とする甲1発明に記載されている技術事項を適用することには動機付けがない。
(エ) よって、上記(ア)~(ウ)の点で、、甲4発明に甲1技術事項を適用することは、当業者が容易になし得たことではない。
(オ) また、甲2~3,5~6には、本件特許発明18の相違点18-1に係る構成が記載も示唆もされていない。
(カ) 以上のことから、本件特許発明18は、相違点18-2について検討するまでもなく、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に想到しうるものではない。
(4)本件特許発明19~20
本件特許発明19~20は、本件特許発明18に従属しており、本件特許発明18の発明特定事項をすべて備える。すると、上記(3)と同様の理由により、本件特許発明19~20は、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に想到しうるものではない。
(5)小括
したがって、本件特許発明1~20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、取消理由には、理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 特許異議申立理由(以下、「申立理由」という)は、概略、以下のとおりである。
ア 申立理由1
本件特許発明1~4、6、8、13、17は、それぞれ甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 申立理由2
また、本件特許発明1~4、6、8、13、17は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明5は、甲1に記載された発明及び要すれば甲6の記載に裏付けられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明4は、甲1に記載された発明及び要すれば甲2~4の何れかに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明7、20は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明9、10、12は、甲1に記載された発明及び甲2又は甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明11、14は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明15、16は、甲1に記載された発明及び甲4又は甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明18は、甲1に記載された発明及び要すれば甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明19は、甲1に記載された発明及び甲3又は4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 構成A
構成ac1によると、甲1発明は、「発光測定用容器」の「槽に10ng/mLのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)10μLと0.4mMのALP用化学発光基質溶液100μLとからなる酵素反応液3を分注して発光検出器1にセットし、37℃、5分間反応後の発光量(A)を、反応溶液の入った槽の開口部上方から検出」するものである。上記構成ac1における「10ng/mLのアルカリ性ホスファターゼ(ALP)10μLと0.4mMのALP用化学発光基質溶液100μLとからなる酵素反応液3」は、構成Aの「被検物質を含む測定試料」に相当し、「発光検出器1」は、「光を検出するための検出装置」に相当し、「発光検出器1にセット」されることは、「検出装置に設置され」ることに相当し、「発光測定用容器」は、「前記光の検出に用いるカートリッジ」に相当する。
よって、甲1発明は、本件特許発明1の構成Aに相当する構成を備える。
イ 構成B
構成ac1の「発光測定用容器」の「2槽」は、構成Bの「検出チャンバ」と、「互いに流体的に隔離され、前記測定試料を受け入れ、受け入れた前記測定試料から生じる光が光検出器により検出される複数の」空間である点で共通する。
ウ 構成C
構成ac1の「隔壁」は、「2槽」を隔てるものであり、「槽」に「分注」された「酵素反応液3」からの「発光」を「遮光」するものであるから、構成Cの「透過抑制部」と、「前記複数の」空間「の各々の間に設けられ、前記」空間「内の前記測定試料から生じる光が他の前記」空間「へ透過することを抑制する透過抑制部」である点で共通する。
エ 構成D
構成d13の「容器を構成する熱可塑性樹脂本体が出す自己発光によるバックグランドの低減、そして不定のノイズを排除するための遮光性のためのものであって、全波長にわたって光を吸収」する「光吸収性成分」は、構成Dの「前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質」に相当し、構成d12の「容器内面での反射によるシグナル増強と 当該反射による熱可塑性樹脂本体の励起を防止することによる自己発光に由来するバックグランドの低減のためのものであって、全波長にわたって光を反射」する「光反射性成分」は、構成Dの「前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質」に相当する。
すると、構成d11の「光反射性成分及び0.01から0.5重量%の光吸収性成分を配合し」たものであることは、「前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む」ことに相当する。
オ すると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「A 被検物質を含む測定試料から生じる光を検出するための検出装置に設置され、前記光の検出に用いるカートリッジであって、
B’ 互いに流体的に隔離され、前記測定試料を受け入れ、受け入れた前記測定試料から生じる光が光検出器により検出される複数の空間と、
C’ 前記複数の空間の各々の間に設けられ、前記空間内の前記測定試料から生じる光が他の前記空間へ透過することを抑制する透過抑制部と、を備え、
D 前記透過抑制部は、前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む、カートリッジ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
「互いに流体的に隔離され、前記測定試料を受け入れ、受け入れた前記測定試料から生じる光が光検出器により検出される複数の空間」について、本件特許発明1は、「検出チャンバ」であるのに対し、甲1発明の「開口部」を有する「槽」、「チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)」は、いずれも、発光測定を行うための「開口部」を有しており、「チャンバ」ではない点
カ よって、本件特許発明1は甲1発明ではない。
キ また、本件特許発明2~4、6、8、13、17は、本件特許発明1に従属しており、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備えるから、甲1発明との間に少なくとも相違点1-3を有している。
よって、本件特許発明2~4、6、8、13、17は、甲1発明ではない。
ク 小括したがって、本件特許発明1~4、6、8、13、17に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1には、理由がない。
(3) 申立理由2
上記相違点1-3について検討する。
ア 甲1には、「開口部」を有する「槽」、「チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)」を「チャンバ」とするとの記載や示唆はない。すると、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 上記1ア(イ)に説示したとおり、甲4発明は、構成Bの「検出チャンバ」に相当する構成として、「分析部46」を備える。そして、申立人は、申立理由2において、本件特許発明1を引用する本件特許発明4、9、10~12、14~16、19について、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張する。
そこで、甲4発明の技術事項を、甲1発明に適用し、相違点1-3に係る本件特許発明1の構成を備えるようにすることの容易想到性について以下に検討する。
(ア) 甲1発明は、チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)が例示でき、化学発光や蛍光発光などの発光測定に用いられる発光測定用容器であって(構成ab1)、容器内面での反射によるシグナル増強と 当該反射による熱可塑性樹脂本体の励起を防止することによる自己発光に由来するバックグランドの低減のために、容器を構成する熱可塑性樹脂に光反射性成分を配合するものである(構成d12)。
一方、甲4発明の「分析部46」は、「第一ディスク34と第二ディスク35とを積層した後に」形成される「閉鎖空間」であり、甲4の図6からは、出光窓となる上方又は下方(上記1ア(ウ)参照)の面積に比べ、側壁の面積が小さい、上下に扁平な形状を有したものである。このような形状においては、「分析部46」からの光は、側壁で1度も反射されることなく出光窓から出光するものが大部分である。すると、甲4発明の「分析部46」は、甲1発明に対して前提においてそもそも異なるものであるから、当業者にとって、係る構成を甲1発明に適用する動機がない。
(イ)仮に、上記(ア)に関わらず甲4発明の「分析部46」に係る技術事項を、「発光測定用容器」自体を遮光性にする甲1発明に適用した場合、「出光窓」も遮光性となり、発光測定に支障を来すことが明らかであるから、そのような適用には阻害要因があるといえる。
(ウ)以上(ア)・(イ)により、甲4発明の技術事項を、甲1発明に適用し、相違点1-3に係る本件特許発明1の構成を備えるようにすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
ウ 申立人は、本件特許発明1に従属する本件特許発明4~5、7、9~10、12、15~16及び本件特許発明18~20について、甲1に記載された発明及び甲2~3、5又は6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張する。
しかしながら、甲2~3、5又は6には、相違点1-3に係る本件特許発明1の構成が記載されていないか、記載されていたとしても上記イ(ア)・(イ)と同様の理由により、それらを甲1発明に適用して本件特許発明1とすることが当業者にとって容易になし得たことではないものである。
エ よって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件特許発明2~17は、本件特許発明1に従属しており、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備える。すると、上記ア~ウと同様の理由により、本件特許発明2~17は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件特許発明18と甲1発明とを対比する。
(ア) 構成E
上記(2)ア・イでの対比により、甲1発明は、本件特許発明18の構成Eと「被検物質を含む測定試料を受け入れる複数の」空間「を備えたカートリッジを用いて、前記測定試料から生じる光を検出する検出方法であ」る点で共通する構成を備える。
(イ) 構成F
甲1発明は、構成ac1によれば、「発光測定用容器」の「2槽」のうち、一方の槽に酵素反応液3を分注して発光測定を行う構成を有する。「隣接するウェルからの発光が強大であるのに対して測定対象ウェルの発光が微細である場合に」との構成(構成ac1)を有するものの、「隣接するウェルからの発光」が、測定試料からの発光であるかは不明である。
すると、甲1発明は、構成Fと「前記複数の」空間は「互いに流体的に隔離され」、前記空間に「前記測定試料を配置」する点で共通する構成を有する。
(ウ) 構成G
甲1発明において、「槽」の「開口部」の方向に放射された「酵素反応液3」からの光が「発光検出器1」により検出されるから、当該方向が、構成Gの「第2方向」に相当する。一方、「槽」の「隔壁」に向かう光は、「99.997%以上」が「遮光」されるから、当該「隔壁」に向かう方向が、構成Gの「第1方向」に相当する。そして、上記「隔壁」が、構成Gの「透過抑制部」に相当する。
(エ) 構成H
上記(2)エに示した構成Dと同様である。
(オ) すると、本件特許発明18と甲1発明とは、
「E’ 被検物質を含む測定試料を受け入れる複数の空間を備えたカートリッジを用いて、前記測定試料から生じる光を検出する検出方法であって、
F’ 前記複数の空間は、互いに流体的に隔離され、前記空間に前記測定試料を配置し、
G’ 前記複数の空間の各々の間に設けられた透過抑制部によって、第1方向に放射された前記測定試料から生じる光の透過を抑制しながら、前記第1方向とは異なる第2方向に放射された前記測定試料から生じる光を検出し、
H 前記透過抑制部は、前記測定試料から生じる光を吸収する光吸収物質および前記測定試料から生じる光を散乱させる光散乱物質の混合物を含む、検出方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点18-3>
「被検物質を含む測定試料を受け入れる複数の空間」について、本件特許発明18は「検出チャンバ」であるのに対し、甲1発明の「開口部」を有する「槽」、「チューブ、カップ、キュベット等の、個別独立した凹状のもの(開口部を一つ有したもの)、マイクロプレートのように、凹状のものが複数個連結されたもの(開口部を複数有したもの)」は、いずれも、発光測定を行うための「開口部」を有しており、「チャンバ」ではない点。
<相違点18-4>
測定試料から生じる光を検出することについて、本件特許発明18は、前記複数の検出チャンバの「各々」に前記測定試料を配置し(構成F)、前記複数の検出チャンバの「各々」について、前記第1方向とは異なる第2方向に放射された前記測定試料から生じる光を検出する(構成G)ものであるのに対し、甲1発明では、「発光測定用容器」の「2槽」の「一方」に「酵素反応液3を分注し」て発光を検出するものの、「2槽」の「各々」に「酵素反応液3を分注し」、「2槽」の「各々」について「反応溶液の入った槽の開口部上方から」「発光」を検出するか不明である点。
(カ) 判断
上記相違点18-3について検討する。
a 上記(2)イ~エの説示と同様の理由により、甲2~6に記載された事項に基づき、甲1発明に相違点18ー3に係る本件特許発明18の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
b 上記aにより、相違点18-4について検討するまでもなく、本件特許発明18は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件特許発明19~20は、本件特許発明18に従属しており、本件特許発明18の発明特定事項をすべて備える。すると、上記カ(カ)a・bと同様の理由により、本件特許発明19~20は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ク 小括
したがって、本件特許発明1~20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700820