特許異議申立
2023-700757
蛍光X線装置を備えた圧延機、及び圧延機におけるロールコーティングの制御方法
- 審判番号
- 2023-700757
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-071321
- 登録番号
- 7210826
- 請求日
- 2023年07月21日
- 審決日
- 2024年06月12日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社神戸製鋼所
- 【権利者代理人】安田岡本弁理士法人
- 【異議申立人】黒野 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 審判官 渋谷 善弘
- 分類
- P1651.121-YAA(B21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7210826号発明「蛍光X線装置を備えた圧延機、及び圧延機におけるロールコーティングの制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7210826号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第7210826号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7210826号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成31年4月3日に出願され、令和5年1月16日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月24日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、令和5年7月21日に特許異議申立人 黒野 美穂(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年11月21日付け(同月27日発送)で取消理由を通知した。特許権者 株式会社神戸製鋼所(以下単に「特許権者」という。)は、その指定期間内である令和6年1月24日に意見書及び訂正請求書を提出し、令和6年2月26日に当該訂正請求書を補正する手続補正書(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書により請求された訂正を「本件訂正」という。)を提出した。その後、申立人は令和6年4月8日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は訂正事項について特許権者が付したものである。)
(1)訂正事項
[一群の請求項〔1、2〕に係る訂正]
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機であって、前記ワークロールの側方に配備され、前記ワークロールの軸心方向に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロールのロールコーティングの組成や厚みを測定する蛍光X線分析装置が設けられ、」と記載されているのを、
「潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機であって、前記ワークロールの側方に配備され、前記ワークロールの軸心方向に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロールのロールコーティングの組成及び厚みを測定する蛍光X線分析装置が設けられ、」と訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
[請求項3に係る訂正]
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機に対して、蛍光X線により測定される、ワークロールのロールコーティングの組成や厚みの測定結果に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、ワークロールのロールコーティングを制御し、」と記載されているのを、
「潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機に対して、蛍光X線により測定される、ワークロールのロールコーティングの組成及び厚みの測定結果に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、ワークロールのロールコーティングを制御し、」と訂正する。
[明細書に係る訂正]
ウ 訂正事項3
本件明細書等の段落【0002】に「アルミニウム板材(Al熱延材)やチタン板材など非鉄金属板材の圧延においては、鋼製のロールに金属材料が移着してロール表面を覆うことが知られおり、ロールコーティングと呼ばれている。」と記載されているのを、
「アルミニウム板材(Al熱延材)やチタン板材など非鉄金属板材の圧延においては、鋼製のロールに金属材料が移着してロール表面を覆うことが知られており、ロールコーティングと呼ばれている。」と訂正する。
エ 訂正事項4
本件明細書等の段落【0020】に「・・・さて[背景技術]にて述べたように、上記した連続圧延機2(圧延スタンド3)を用いて、アルミニウム板材やチタン板材など非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延すると、鋼製の圧延ロールの表面にアルミやチタンなどの非圧延材料が移着してロール表面を覆うことが知られおり、ロールコーティング6と呼ばれている。」と記載されているのを、
「・・・さて[背景技術]にて述べたように、上記した連続圧延機2(圧延スタンド3)を用いて、アルミニウム板材やチタン板材など非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延すると、鋼製の圧延ロールの表面にアルミやチタンなどの被圧延材料が移着してロール表面を覆うことが知られており、ロールコーティング6と呼ばれている。」と訂正する。
(2)一群の請求項についての説明
本件訂正前の請求項1、2について、本件訂正前の請求項2は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正後の請求項〔1、2〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
[一群の請求項〔1、2〕及び請求項3に係る訂正]
(1)訂正事項1、2
ア 訂正の目的について
訂正事項1、2のうち、「潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機」との事項は、本件訂正前の請求項1、3における圧延機に関して、潤滑油を供給せずに圧延するドライ圧延機を排除して、潤滑油を供給しながら圧延するウェット圧延機に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1、2のうち、「ワークロールのロールコーティングの組成及び厚み」の「測定」又は「測定結果」との事項については、本件訂正前の請求項1、3のワークロールのロールコーティングの「組成や厚み」における「や」の文字が並立助詞であると見做した場合にその意味を明瞭しようとするもの、又は「ワークロールのロールコーティング」について、「組成」と「厚み」のいずれか一方のみを測定する場合を排除し、「組成」と「厚み」の両方を測定する場合に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は同項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
圧延機が、「潤滑油を供給しながら」、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延するものであることは、段落【0030】に「また、ワークロール4などを潤滑する潤滑条件C2を変更するようにする。具体的には、潤滑油の油種を変更したり、供給条件(圧力、温度、吹付け位置)などを変えるようにする。」と記載され、図1に圧延材Wとワークロール4との間に供給される潤滑油が図示されていることから、本件明細書等に記載されていたといえる。
また、「ワークロールのロールコーティングの組成及び厚み」を「測定」するとの事項については、本件明細書等の段落【0024】に「この蛍光X線分析装置1を用いて、アルミ材(圧延材W)の圧延中にワークロール4に付着したコーティングの組成や厚みを計測することもできる。」と記載され、段落【0030】に「S2の結果として、コーティングの厚みが予定よりも厚くなっていたり(あるいは薄くなっていたり)、予期しない成分のコーティングが付着していることがわかった場合には、S3に示すように、コーティングを制御する処置を行う。」と記載されているから、本件明細書等には、ワークロールのロールコーティングの「組成及び厚み」を測定することが記載されていたといえる。
したがって、訂正事項1、2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1、2は、特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
[明細書に係る訂正]
(2)訂正事項3、4について
ア 訂正の目的について
訂正事項3、4のうち、本件訂正前の段落【0002】及び【0020】における「知られおり」との記載を「知られており」とすることは、「ロールコーティング」についての誤記を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項3、4のうち、本件訂正前の段落【0020】における「アルミやチタンなどの非圧延材料」を「アルミやチタンなどの被圧延材料」とする訂正も、「ロールコーティング」についての誤記を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項3、4は、請求項1~3に係る「ロールコーティング」についての明細書の誤記を訂正することを目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
したがって、訂正事項3、4は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
ウ 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項3、4は、請求項1~3に係る「ロールコーティング」についての誤記を訂正するために行う明細書の訂正であり、一群の請求項〔1、2〕、3に関係する訂正である。
したがって、訂正事項3、4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
3 独立特許要件
本件訂正前の全ての請求項(請求項1~3)について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~4について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項1~3に係る発明を、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
一対のワークロールと、
前記ワークロールに押し付けられるブラシロールと、
前記一対のワークロールの間隔を調整できる圧下装置とを備え、
潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機であって、
前記ワークロールの側方に配備され、前記ワークロールの軸心方向に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロールのロールコーティングの組成及び厚みを測定する蛍光X線分析装置が設けられ、
前記蛍光X線分析装置の測定結果に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、前記ワークロールのロールコーティングを適正な範囲に制御する制御装置が設けられている
ことを特徴とする蛍光X線分析装置を備えた圧延機。
【請求項2】
前記潤滑条件が、前記潤滑油の油種か、前記潤滑油の圧力、温度、前記ワークロールへの吹付け位置であり、
前記ブラシ条件が、前記ブラシロールを前記ワークロールに押し付ける圧力か、前記ブラシロールの回転数であり、
前記加工条件が、前記圧下装置にて調整される前記一対のワークロールの間隔か、圧延速度であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析装置を備えた圧延機。
【請求項3】
一対のワークロールと、
前記ワークロールに押し付けられるブラシロールと、
前記一対のワークロールの間隔を調整できる圧下装置と、
前記ワークロールの側方に配備され、前記ワークロールの軸心方向に沿って往復移動可能に支持され、前記ワークロールに対して蛍光X線を用いた分析を行う蛍光X線分析装置を備え、
潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機に対して、
蛍光X線により測定される、ワークロールのロールコーティングの組成及び厚みの測定結果に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、ワークロールのロールコーティングを制御し、
前記潤滑条件が、前記潤滑油の油種か、前記潤滑油の圧力、温度、前記ワークロールへの吹付け位置であり、
前記ブラシ条件が、前記ブラシロールを前記ワークロールに押し付ける圧力か、前記ブラシロールの回転数であり、
前記加工条件が、前記圧下装置にて調整される前記一対のワークロールの間隔か、圧延速度であることを特徴とする圧延機におけるロールコーティングの制御方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和5年11月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性欠如):本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記2の甲第1号証~甲第5号証に記載された発明)に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、申立人が、特許異議申立書に記載した申立ての理由も、取消理由1と同様に、本件訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲第1号証~甲第5号証に基づいて、当業者が容易に想到することができた発明である、というものである(申立書6~7、22ページ)。
2 証拠
甲第1号証:特開平5-329516号公報
甲第2号証:実願昭62-39546号(実開昭63-145853号)のマイクロフィルム
甲第3号証:渡邉貴道,外4名,「アルミニウム熱間圧延におけるロールコーティングの生成挙動」,研究部会報告書No.59 アルミニウム板の圧延トライボロジーの研究,一般社団法人 軽金属学会,平成25年12月16日,p.38-39
甲第4号証:鈴木正道,「アルミニウム圧延の潤滑に関する最近のトピックス」,軽金属,一般社団法人 軽金属学会,1981年,第31巻,第11号,p.739-747
甲第5号証:本城恒,外3名,「熱間圧延」,軽金属,一般社団法人 軽金属学会,2001年4月,第51巻,p.253-261
(以下「甲1」などという。)
第5 取消理由1についての検討
1 本件発明1について
(1)甲1
ア 甲1の記載(下線部は、当審で付した。以下同様。)
甲1には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニュウム等の金属帯の熱間圧延ラインの製品コイル製造工程における圧延ワークロール表面に発生するコーティング層を除去するブラシロールを制御するブラシロール自動制御装置に関する。
・・・
【0007】一般に、このコーティンク層を除去する装置としてブラシロールが採用されている。そして、コーティング層を大量に除去する場合にはスチールブラシが用いられ、コーティング層を均一に滑らかにする場合にはナイロンブラシ等が用いられている。
・・・
【0011】すなわち、一般に圧延ワークロール1a,1bと圧延されるアルミ帯2との間に圧延油を介在させるが、(1)に示した制御用計算機を用いる場合、ブラシロールの動作条件は過去の圧延経験値よりオフライン的に求めたものであるので、動作条件と圧延油との関係が考慮されていない。また、たとえ考慮したとしても圧延油の循環使用による変化(劣化)を設定する動作条件内に吸収しきれない。
・・・
【0013】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、金属帯の圧延中に発生するロール表面のコーティング層の状態を、ニューロにより評価し、その結果をファジィ推論によってブラシロールの最適制御量として設定することによって、コーティング層を程良く除去でき、操作者の経験に頼る事なく、確実かつ簡単に製品コイルの表面品質の均一化と表面品質の向上化とを図ることができるブラシロール自動制御装置を提供することを目的とする。
・・・
【0017】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を用いて説明する。第1図は実施例のブラシロール自動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0018】金属帯としてのアルミ帯4の搬送路を挟むように圧延ワークロール5a,5bが配設されており、この圧延ワークロール5a,5bの上下に圧延バックアップロール6a,6bが配設されている。この圧延バックアップロール6a,6bは圧延ワークロール5a,5bを支えるロールである。圧延バックアップロール6a,6bおよび圧延ワークロール5a,5bは圧延駆動装置10によって正回・逆転方向に駆動制御されると共に、圧延ワークロール5a,5b相互間の間隔dも可変制御される。
【0019】上側の圧延ワークロール5aに対向してブラシロール7が配設されている。このブラシロール7は、圧延ワークロール5aに発生したコーティング層を除去するためのロールであり、上側に位置するスチールブラシ7aと下側に位置するナイロンブラシ7bとで構成されている。そして、ブラシロール7は、ブラシロール駆動装置8によって、設定された押付け圧力で圧延ワークロール5aのロール表面に押付けられてコーティング層を除去する。又、幅方向のオシレーションも可能である。
【0020】クーラントノズル9a,9b,9cは、圧延バックアップロール6aおよび圧延ワークロール5aのロール表面に対して冷却と潤滑を兼ねた圧延油を噴射する。クーラントノズル9a,9b,9cの使用の有無は、計算機による自動設定および操作者の手動介入により決定される。使用される圧延油は、数種類のものがあるが、繰り返し使用されるので経年変化による劣化が発生し、表面品質に悪影響を与える。
【0021】例えば工業カメラ等で構成された画像読取装置11は、圧延ワークロール5aのロール表面に発生するコーティング層の色,揮度等の二次元画像を圧延ワークロール5aの幅方向に検出する。画像読取装置11で読取られた二次元画像データは次の画像処理装置12へ送出される。
【0022】画像処理装置12は、図2に示すように、入力した二次元画像データをロールの円周方向および軸方向に等分割して各領域12aにおけるコーティング層の色度,輝度を0.0~1.0に数値化する。各同一軸方向位置に属する各領域12aにおける数値の最大値を該当軸方向位置におけるコーティング量K1~Knと定義する。そして、このコーティング量K1~Knを、圧延ワークロール5aが各処理装置の処理速度および要求分解能によって予め設定されたN回回転する毎に算出して、次のニューロ演算処理装置13へ送信する。
【0023】ニューロ演算処理部13は、データベース13aに記憶された多数の学習データを用いて、画像処理装置12から入力された各軸方向位置におけるコーティング量K1~Knを基にコーティング層の状態をロールの軸幅方向(幅方向)にパターン認識する。
【0024】具体的には、データベース13a内には、図3に示すように、過去の金属帯の種類毎および圧延油毎における画像データの数値化されたコーテイング量Kと操作者の判定値との関係が複数個学習データとして収集されている。ニューロ演算処理部13はそれらを例えばバックプロバケーション手法によって学習させる事により現在のコーティング状態を判定する。実施例装置においては、薄い,良好,厚いの3通りのパターンに判断している。このニューロ演算処理部14にて得られたパータンは次のファジィ推論処理部14へ送出される。
【0025】ファジィ推論処理部14は、データベース14aに記憶されている多数の推論ルールに従って、過去の圧延実績で予め得られた鋼種/圧延油毎の最適なロールコーティング状態になる様に、例えば以下の様な推論処理を行う。なお、コーティング量を示すパターン以外の例えば材質や品質指定等の各条件はマンマシンインタフェース装置14bを用いて操作者が予め入力しておく。例えばデータベース14a内にはIF-THEN方式で次のような推論ルールが記憶されている。
・・・
【0031】ファジィ推論処理装置14にて得られた上述した各推論結果は最適な制御量としてブラシロール駆動装置8へ送出される。ブラシロール駆動装置8は、この制御量に従って、コーティング層を除去する場合は、いずれか一方のロール7a,7bを選択して、選択したロール7a,7bを回転駆動して、さらに前進させて圧延ワークロール5aのロール表面に所定圧力で当接させる。その結果、圧延ワークロール5aのロール表面に発生しているコーティング層が除去開始される。そして、ブラシロール駆動装置8に設定されたコーティング除去に必要な時間が経過すると、動作を停止して、ブラシロール7を後退させる。
・・・
【0034】このように、各データベース13a,14aに学習データおよび推論ルールを設定しておけば、実際の稼働時には材質等の条件をマンマシンインタフェース装置14bから設定するのみで、圧延ワークロール5aのロール表面のロコーティング層の厚みが常に最適値に制御される。」
(なお、段落【0024】の「コーテイング量K」及び「パータン」は、「コーティング量K」及び「パターン」の誤記と認め、段落【0034】の「ロコーティング層」は「コーティング層」の誤記と認める。)
「【図1】
[図:0001414171000001.jpg]
【図2】
[図:0001414171000002.jpg]
【図3】
[図:0001414171000003.jpg]
」
イ 甲1から理解できる事項
(ア)図1から、画像読取装置11は、圧延ワークロール5a、5bの側方に配備されていることが理解できる。
(イ)段落【0021】~【0024】の記載、図2~3等から、画像読取装置11は、圧延ワークロール5a、5bのロール表面のコーティング層の厚みを測定するものであることが理解できる。
(ウ)段落【0031】の記載等から、ブラシロール自動制御装置は、画像読取装置11の測定結果に基づいて、ブラシロール7を圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更することで、圧延ワークロール5a、5bのロール表面のコーティング層の厚みを最適値に制御していることが理解できる。
(エ)段落【0011】、【0020】の記載、図1等から、熱間圧延ラインは、冷却と潤滑を兼ねた圧延油を噴射しながら、アルミ帯4を熱間圧延するものであることが理解できる。
ウ 甲1発明
上記ア~イから、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。
<甲1発明>
「一対の圧延ワークロール5a、5bと、
前記圧延ワークロール5a、5bに押し付けられるブラシロール7と、
前記一対の圧延ワークロール5a、5bの間隔dを調整できる圧延駆動装置10とを備え、
冷却と潤滑を兼ねた圧延油を噴射しながら、アルミ帯4を熱間圧延する熱間圧延ラインであって、
前記圧延ワークロール5a、5bの側方に配備され、前記圧延ワークロール5a、5bのロール表面のコーティング層の厚みを測定する画像読取装置11が設けられ、
前記画像読取装置11の測定結果に基づいて、ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更することで、前記コーティング層の厚みを最適値に制御するブラシロール自動制御装置が設けられている
画像読取装置11を備えた熱間圧延ライン。」
(2)甲2
ア 甲2の記載
「2.実用新案登録請求の範囲
(1)調質圧延機の上下ワークロールの少なくとも一方にZn付着量分析計を設け、かつ、そのワークロールにロールポリッシャーを設け、該Zn付着量分析計によるZn付着量の計測値が所定値を超える時点で該ロールポリッシャーをワークロールに接触させて研摩を行い、また該測定値が所定値未満となった時点で該ロールポリッシャーをワークロールから離す制御装置を備えたことを特徴とする亜鉛系メッキ鋼板の調質圧延装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「〔従来の技術〕
・・・調質圧延は、調圧油を原則として用いないドライ調圧と、調圧油や水を用いるウェット調圧に大別できるが、本考案はドライ調圧に関するものである。」(1ページ下から2行~2ページ5行)
「〔考案の具体的構成〕
・・・第1図において、亜鉛系メッキ後のストリップ1はバックアップロール2,2によって支持されたワークロール3,3,によって調質圧延される。ワークロール3,3上にはストリップ1から剥離した亜鉛粉、鉄粉等が付着する。この付着亜鉛粉等の付着量は蛍光X線分析計6,6からの信号に基づき、Zn付着量分析装置7により測定される。次いで、該分析装置7からの測定信号をロールポリッシャー制御装置8に導き、測定値に応じて押付シリンダー5,5を起動させロールポリッシャー4,4をワークロール3,3に押し付け、または離すという操作を行う。すなわち、第2図に示したように、ロールポリッシャー制御装置8により、蛍光X線分析出力(亜鉛付着量)が所定の上限値に達すると、ロールポリッシャー4を起動させて、ワークロール3上の亜鉛粉の研摩を開始(ON)する。その研摩により亜鉛付着量が低滅し、所定の下限値に達した時、ロールポリッシャー4をワークロール3から離し、研摩を停止(OFF)する。これにより、押込疵の発生とワークロール表面粗度の寿命の両面を考慮した場合の最適の状態で調圧することができる。
・・・
ポリッシャーロール4,4は対応するワークロール3,3の回転方向と同一方向あるいは逆方向でモーター9により回転させ、かつ板幅方向にトラバースさせることで研摩効率を高める。その材質は、スコッチブライトや砥粒入りナイロンブラシで構成されている。
また、蛍光X線分析計6,6はロール3,3に沿って配したレール10,10を定速で板幅方向にトラバースしながら連続的にワークロール3,3表面上の亜鉛等の付着量を検出するが、一定量以上の亜鉛量を検出した時点で、前述したようにポリッシャーロール4,4に起動信号を送り、これによりワークロール3,3の表面研摩を行う。この研摩は、該ロール3,3上の亜鉛付着量が所定レベル以下になるまで続けられる。」(4ページ16行~7ページ12行)
「次に実施例を示す。
下記条件で調質圧延を行った。
・・・
圧下率 150TON
・・・
ポリッシャーロール押付圧 2.0kg/cm2
ポリッシャーロール回転周速 80m/min
その結果、押込疵の発生は殆んどなくなると共に、ワークロール上の表面粗度の寿命は第4図に示すように延長することができた。」(8ページ1~11行)
第1図
「
[図:0001414171000004.jpg]
」
第3図
「
[図:0001414171000005.jpg]
」
イ 甲2に記載の技術的事項
上記アから、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2に記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「ドライ調圧を行う調質圧延機にて、ワークロール3の側方に配備され、前記ワークロール3の軸心方向のレール10に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロール3上の亜鉛粉等の付着量を測定する蛍光X線分析計6を設けること。」
(3)対比
甲1発明を、本件発明1と対比する。
甲1発明の「ワークロール5a、5b」は、その機能に照らせば、本件発明1の「ワークロール」に相当し、以下同様に、「ブラシロール7」は「ブラシロール」に、「間隔d」は「間隔」に、「圧延駆動装置10」は「圧下装置」に、「冷却と潤滑を兼ねた圧延油」は「潤滑油」に、「噴射しながら」は「供給しながら」に、「アルミ帯4」は「非鉄金属板材」に、「熱間圧延する」は「熱間圧延乃至は冷間圧延する」に、「熱間圧延ライン」は「圧延機」に、「ロール表面のコーティング層」は「ロールコーティング」に、「前記コーティング層の厚みを最適値に制御するブラシロール自動制御装置」は「前記ワークロールのロールコーティングを適正な範囲に制御する制御装置」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「画像読取装置11」と、本件発明1の「蛍光X線分析装置」とは、「測定装置」である点では共通している。
また、甲1発明の「ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力」は、本件明細書等の段落【0030】、図5の記載に鑑みれば、本件発明1の「ブラシ条件」に相当するから、甲1発明の「ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更する」ことは、本件発明1の「潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更する」ことに相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「 一対のワークロールと、
前記ワークロールに押し付けられるブラシロールと、
前記一対のワークロールの間隔を調整できる圧下装置とを備え、
潤滑油を供給しながら、非鉄金属板材を熱間圧延乃至は冷間圧延する圧延機であって、
前記ワークロールの側方に配備され、ワークロールのロールコーティングの厚みを測定する測定装置が設けられ、
前記測定装置の測定結果に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、前記ワークロールのロールコーティングを適正な範囲に制御する制御装置が設けられている
測定装置を備えた圧延機。」
<相違点1>
ワークロールのロールコーティングの状態を測定するための測定装置が、本件発明1は、「前記ワークロールの軸心方向に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロールのロールコーティングの組成及び厚みを測定する蛍光X線分析装置」であり、当該測定された「ロールコーティングの組成及び厚み」(測定結果)に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更するのに対し、甲1発明は、測定装置が、圧延ワークロール5a、5bのロール表面のコーティング層の厚みを測定する画像読取装置11であり、測定されたコーティング層の厚みに基づいて、ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更している点。
(4)判断
ア 甲2には、「ドライ調圧を行う調質圧延機にて、ワークロール3の側方に配備され、前記ワークロール3の軸心方向のレール10に沿って往復移動可能に支持され、蛍光X線によりワークロール3上の亜鉛粉等の付着量を測定する蛍光X線分析計6を設けること。」との技術的事項が記載されているといえるところ(上記(2)イを参照。)、甲1発明と、甲2に記載の技術的事項とは、圧延機において、ワークロールの側方に、ワークロールのロールコーティングの状態を測定する測定装置を設けるとの機能の点で共通することや、潤滑油を供給しながら蛍光X線分析計によりワークロールのロールコーティングの膜厚が測定できることは技術常識であること(例えば、甲3の「2.実験方法」及び「3.結果」等を参照。)から、当該測定装置として、甲1発明における「画像読取装置11」に換えて、甲2に記載の技術的事項における、ワークロール3の側方に配備され、前記ワークロール3の軸心方向のレール10に沿って往復移動可能に支持される「蛍光X線分析計6」を採用して、ワークロールの「ロールコーティングの厚み(付着量)」を測定する構成とすることは、当業者が容易になし得ると解する余地はある。
イ しかしながら、甲1には、ワークロールのロールコーティングの「組成」を測定することは記載も示唆もない。そして、甲1発明は、測定されたコーティング層の厚みに基づいて、ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更するものであるところ、さらに、測定装置によりコーティング層の厚みだけでなく組成も測定するものとし、コーティング層の組成及び厚みに基づいて、ブラシロール7を前記圧延ワークロール5a、5bに押し付ける圧力を変更するように設計変更することの動機付けも見当たらない。
また、甲2に、ワークロール3,3上にはストリップ1から剥離した亜鉛粉、鉄粉等が付着することや、付着亜鉛粉等の付着量は蛍光X線分析計6,6からの信号に基づきZn付着量分析装置7により測定され、一定量以上の亜鉛量を検出した時点でワークロール3,3の表面研摩を行うことは記載されているから、甲2の蛍光X線分析計6,6は、ドライ調圧を行う調質圧延機において、ワークロール上に付着する亜鉛粉、鉄粉等の金属粉の付着量を測定するものであるといえる。しかしながら、甲2には、例えば亜鉛粉と鉄粉とを区別してそれぞれの付着量を分けて検出するようなことは記載も示唆もなく、すなわち、甲2の蛍光X線分析計6,6が、Zn付着量分析装置7を備えるものであるとしても、ワークロール3,3上の金属粉の付着量を測定していると解すべきであるから、甲2にもロールコーティングの組成及び厚みを測定することは記載されていないというべきである。
さらに、仮に、甲2の蛍光X線分析計がロールコーティングの組成も測定可能であったとしても、「ロールコーティングの組成及び厚み」(測定結果)に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更するという点については、甲2に記載あるいは示唆があるともいえない。
よって、甲1発明に甲2に記載の技術的事項を適用しても、蛍光X線分析装置によりワークロールの「ロールコーティングの組成及び厚み」を測定し、当該測定された「ロールコーティングの組成及び厚み」(測定結果)に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更する構成には至らない。
ウ また、蛍光X線分析装置によりワークロールの「ロールコーティングの組成及び厚み」を測定し、当該測定された「ロールコーティングの組成及び厚み」に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することは、甲3~甲5にも記載されていないから、甲1発明に甲3~5に記載の技術的事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。
エ そして、本件発明1は、相違点1に係る構成により、「コーティングの厚みが予定よりも厚くなっていたり(あるいは薄くなっていたり)、予期しない成分のコーティングが付着していることがわかった場合には、コーティングを制御する処置を行う」(本件明細書等の段落【0030】を参照。)ことができるものであり、甲1発明及び甲2~5に記載の技術的事項から、当業者が予測できない作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲1~5に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(5)本件発明1についての申立人の意見
ア 意見の概要
(ア)甲2の蛍光X線分析装置は、当業者の技術常識によれば、測定対象物にX線を照射した際に測定対象物から生じる固有X線(蛍光X線)のエネルギー及び強度を分析し、さらには得られた蛍光X線スペクトルに基づいて測定対象物に含まれる元素の組成、つまり元素の種類や含有比率等を分析する装置である。また、蛍光X線分析装置における測定対象物は、蛍光X線を発生する物質であればよく、その形態は特に限定されることはない。したがって、測定対象物が甲1発明におけるロールコーティングのような薄膜であろうとなかろうと、蛍光X線を発生する物質であれば、蛍光X線分析装置によって測定対象物に含まれる元素の組成を分析することが可能である。そして、甲2においては、「蛍光X線によりワークロール3上の亜鉛粉等の付着量を測定」できることが明確に記載されている。
したがって、甲2の「蛍光X線分析装置6」を甲1発明に適用して、圧延ワークロール5a、5bのロール表面のコーティング層の「組成及び厚み」を測定することに何ら阻害要因はない(申立人意見書3~4ページの(a)、5ページの(c))。
(イ)甲2の蛍光X線分析装置を用いて測定を行う場合には、測定対象物が連続膜であるか粒状物であるかによって技術的に差が生じることはないことが当業者における技術常識である(申立人意見書4~5ページの(b))。
イ 主張に対する検討
上記ア(ア)、(イ)について検討する。
甲1発明に甲2に記載の技術的事項を適用しても、相違点1に本件発明1の構成に至らないことは、上記(4)に説示したとおりである。
そして、甲2の記載からは、甲2の蛍光X線分析装置が、測定対象物に含まれる元素の組成を分析することが可能なもの(例えば、鉄粉と亜鉛粉を分けてそれぞれの付着量を検出するもの)であることや、測定対象物が連続膜であるか粒状物であるかによって技術的に差が生じることがないものであるかは明らかではないが、甲2は押込疵の発生を抑制することを課題とするものであり、鉄粉であっても亜鉛粉であっても押込疵を発生させる恐れがあることは明らかであるから、甲2の蛍光X線分析装置が、ワークロール上の金属粉の組成までを分析するものであると解することはできない。
そして、「ロールコーティングの組成及び厚み」に基づいて、潤滑条件、ブラシ条件、加工条件を変更することで、例えば予期しない成分のコーティングが付着していることがわかった場合にコーティングを制御する処置を行うことは、甲1~5のいずれにも記載されておらず、当業者にとって容易になし得るとはいえないものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(6)小括
以上により、本件発明1は、取消理由1によっては取り消すことはできない。
2 本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用するものであるところ、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも1(3)に示した上記相違点1で相違する。
そして、上記1と同様の理由により、本件発明2は、甲1~5に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
以上により、本件発明2は、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 本件発明3について
本件発明3は、実質的に、本件発明2を方法の発明として特定したものと認められるところ、甲1には、甲1発明に対応する方法の発明も記載されている。
そして、本件発明3と甲1発明に対応する方法の発明とは、実質的に上記相違点1と同様の点で少なくとも相違するから、上記1で説示したのと同様の理由により、本件発明3は、甲1~5に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
以上により、本件発明3は、取消理由1によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700757