特許異議申立
2023-700725
複層塗膜の製造方法
- 審判番号
- 2023-700725
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-208741
- 登録番号
- 7248862
- 請求日
- 2023年07月13日
- 審決日
- 2025年03月18日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】山本 宗雄
- 【権利者代理人】齋藤 明子
- 【異議申立人】高山 さち子
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7248862号発明「複層塗膜の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7248862号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7248862号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7248862号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和4年12月26日の出願であって、令和5年3月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後の特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 7月13日 特許異議申立人 高山 さち子(以下「申立
人」という。)による全請求項に係る特許に
対する特許異議の申立て
同年12月21日付け 取消理由通知書
令和6年 3月 1日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 3月12日付け 訂正請求書に対する手続補正指令書
同年 3月21日 訂正請求書に対する手続補正書
同年 3月28日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 4月17日 意見書(申立人)
同年 9月24日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年11月19日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年11月28日付け 訂正請求書に対する手続補正指令書
同年12月 6日 訂正請求書に対する手続補正書
令和7年 1月23日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 2月17日 意見書(申立人)
なお、令和6年3月21日提出の手続補正書により補正された同年同月1日提出の訂正請求書による訂正は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年12月6日提出の手続補正書により補正された同年11月19日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
特許請求の範囲の請求項1に
「前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、」と記載されているのを、
「前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第1ベース塗料組成物における、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、0質量%以上5.0質量%以下であり、」に訂正する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~7は一群の請求項である。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正の目的
本件訂正は、訂正前の請求項1の「水性第1ベース塗料組成物」について、「水性第1ベース塗料組成物における、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、0質量%以上5.0質量%以下」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
本件訂正は、訂正前の請求項1の「水性第1ベース塗料組成物」の構成を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるか
本件訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0077】の「前記光輝性顔料(C1)は、塗膜形成樹脂(A1)の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上45質量部以下、・・・であり得る。なお、前記水性第1ベース塗料組成物は、光輝性顔料(C1)を含まなくともよく、一の態様において、前記水性第1ベース塗料組成物における光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、0質量%であり得る。」との記載に基づいて、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度の下限を0質量%以上と訂正し、同【0148】の【表2】~【0151】の【表5】において「水性第1ベース塗料組成物」の「(C1)の顔料質量濃度」がいずれの実施例も「5.0質量%」であることを根拠に、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度の上限を5.0質量%と訂正したものであるから、本件訂正は本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
4 独立特許要件についての判断
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められるので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、項番順に「本件訂正発明1」等ともいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第1ベース塗料組成物における、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、0質量%以上5.0質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である、
複層塗膜の製造方法。
【請求項2】
前記水性第1ベース塗料組成物の塗装及び前記水性第2ベース塗料組成物の塗装は、前記第1ベース塗膜の乾燥膜厚t1と前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚t2との比t1/t2が、1.6以上7以下となるように実施される、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項3】
前記複層塗膜の粒状性値(G値)は、9以上18以下である、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項4】
前記水性第2ベース塗料組成物は、粘性調整剤(D)を更に含み、
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物(D-1)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項5】
前記塗膜形成樹脂(A2)は、アクリル樹脂水分散体(A11)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項6】
前記硬化剤(B2)は、アミノ樹脂(B11)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項7】
前記第2ベース塗装膜の上にクリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗装膜を形成するクリヤー塗装膜形成工程を更に含み、
前記加熱硬化工程において、前記第1ベース塗装膜、前記第2ベース塗装膜及び前記クリヤー塗装膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の複層塗膜の製造方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1~7は、後記(3)の甲第1号証(以下「甲1」ともいう。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~7は、後記(3)の甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
甲第1号証:特開2019-119884号公報
前記甲1は、本件特許に係る出願の出願前に公知となったものである。
2 令和5年12月21日付けの取消理由通知書で通知した取消理由
(1)取消理由1(新規性)
本件発明1~3、5~7は、前記1(3)の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明1~7は、前記1(3)の甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
3 令和6年9月24日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由
取消理由(進歩性)
本件発明1~7は、前記1(3)の甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
令和5年12月21日付けの取消理由通知書で通知した取消理由及び令和6年9月24日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由はいずれも申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)に包含されるので、申立理由1及び2について判断する。
1 甲1に記載された事項
甲1には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、塗料組成物、塗装物品及び複層塗膜形成方法に関するものである。」
「【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高い粒子感を持ち、かつメタリックムラの発生が抑制された塗膜を形成することができる塗料組成物を提供することを解決すべき課題としている。」
「【0135】
〔鱗片状アルミニウム顔料(B)〕
本発明で用いる鱗片状アルミニウム顔料(B)は、平均粒子径(d50)が18~25μmの範囲内の鱗片状アルミニウム顔料である。平均粒子径(d50)が18μm以上であると、粒子感が高い塗膜が形成され、平均粒子径(d50)が25μm以下であると、メタリックムラの発生が抑制され、鮮映性に優れた塗膜が形成されるからである。」
「【0147】
鱗片状アルミニウム顔料(B)の平均厚さは0.10~0.80μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.20~0.75μm、さらに好ましくは0.30~0.70μmの範囲内である。
鱗片状アルミニウム顔料(B)の平均厚さが0.10μm以上であると、塗料撹拌時に該鱗片状アルミニウム顔料(B)の変形及び破損が生じにくく、当該平均厚さが0.80μm以下であると、フリップフロップ性に優れた塗膜が形成されるため好ましい。
【0148】
なお、上記鱗片状アルミニウム顔料(B)の平均厚さは、水面拡散面積法(水面拡散面積=Scm2/gとすると、平均厚さ=4000/Sμm)により測定することができる。」
「【0150】
鱗片状アルミニウム顔料(B)の含有量は、前記バインダー成分(A)100質量部を基準として、10~50質量部の範囲内である。含有量が10質量部以上であると、メタリックムラの発生が抑制され、フリップフロップ性に優れた塗膜が形成され、含有量が50質量部以下であると、メタリックムラの発生が抑制され、鮮映性に優れた塗膜が形成されるからである。
【0151】
また、形成される塗膜の粒子感、フリップフロップ性、メタリックムラの発生抑制及び鮮映性の観点から、鱗片状アルミニウム顔料(B)の含有量は、前記バインダー成分(A)100質量部を基準として、好ましくは12~40質量部、より好ましくは15~30質量部の範囲内である。」
「【0187】
増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。
これらの増粘剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記増粘剤としては、特にポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤が好適である。」
「【0231】
・・・
【実施例】
【0232】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
【0233】
各例で使用した成分は以下のとおりである。
【0234】
〔バインダー成分(A)〕
<水酸基含有樹脂(A1)>
(水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)の製造)
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128.0部、「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2.0部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0235】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40.0部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)分散液を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0236】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40.0部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28.0部及びn-ブチルアクリレート21.0部を混合撹拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0237】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17.0部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6.0部、エチルアクリレート1.8部及びn-ブチルアクリレート9.0部を混合撹拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0238】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35.0部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30.0部、2-エチルヘキシルアクリレート20.0部、n-ブチルアクリレート29.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15.0部、アクリル酸6.0部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15.0部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10.0部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.0部の混合物を1時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル13.0部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/g、重量平均分子量が58,000であった。
【0239】
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25.0部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20.0部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15.0部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10.0部、t-ブチルパーオキシオクタノエート4.0部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20.0部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間撹拌熟成して固形分50%の水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)溶液を得た。得られた水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)は酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10,000であった。
【0240】
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41.0部を入れ、90℃まで昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間撹拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59.0部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0241】
(水酸基含有ポリエステル樹脂(A1-2)の製造)
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109.0部、1,6-ヘキサンジオール141.0部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126.0部及びアジピン酸120.0部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A1-2-1)溶液を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0242】
<硬化剤(A3)>
メラミン樹脂:「サイメル325」(オルネクスジャパン社製、固形分80%)
【0243】
〔平均粒子径(d50)が18~25μmの範囲内である鱗片状アルミニウム顔料(B)〕
〔平均粒子径(d50)が8~30μmの範囲内である鱗片状アルミニウム顔料以外の鱗片状顔料(C)〕
(鱗片状アルミニウム顔料(B)及び鱗片状顔料(C)を含有する顔料分散液の製造)
製造例5
撹拌混合容器内において、「アルペースト MG600」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)25μm、平均厚さ0.40μm、アルミニウム含有量65%)26.2部(固形分17.0部)、「TWINCLE PEARL SXB-SO」(商品名、日本光研工業社製、酸化チタン被覆合成雲母顔料、平均粒子径(d50):13μm、干渉色:銀色)4.0部、2-エチル-1-ヘキサノール35.0部並びに製造例3で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)溶液10.5部(固形分5.3部)を均一に混合して、顔料分散液(P-1)を得た。
【0244】
製造例6~32
製造例5において、配合組成を後記の表1に示すものとする以外は、製造例5と同様にして、顔料分散液(P-2)~(P-28)を得た。
【0245】
【表1】
[図:0001423431000001.jpg]
」
「【0248】
なお、表1~3中の(注1)~(注11)の顔料は、以下のものを用いた。
(注1)「アルペースト TCR2020」:商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%
(注2)「アルペースト TCR2060」:商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)18μm、平均厚さ0.40μm、アルミニウム含有量75%」
「【0252】
〔その他の成分(D)〕
(顔料分散液の製造)
製造例33
撹拌混合容器に、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液18.2部(固形分10.0部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)50.0部及び脱イオン水30.0部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を容量225mLの広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(D1)を得た。
【0253】
[実施例1]
撹拌混合容器に、製造例1で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)水分散液100.0部(固形分30.0部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液17.7部(固形分9.7部)、製造例4で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)35.7部(固形分25.0部)、メラミン樹脂(商品名「サイメル325」、オルネクスジャパン社製、固形分80%)37.5部(固形分30.0部)、製造例5で得た顔料分散液(P-1)75.7部及び製造例33で得た顔料分散液(D1)0.3部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE-60」ロームアンドハース社製)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4によって測定される粘度が40秒の塗料組成物(X1)を得た。
【0254】
〔試験用塗装板の作製〕
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT-10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に中塗り塗料組成物(商品名「TP-65-2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成してなる試験用被塗物(1)を作製した。
【0255】
(塗膜形成)
塗料組成物(X1)を、前記塗膜形成方法Iの2コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、上記で得た試験用被塗物(1)上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜を形成した。
【0256】
すなわち、上記で得た試験用被塗物(1)に、塗料組成物(X1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚7.5μmとなるように静電塗装し、第1ベースコート塗膜を形成した。
1分間放置後、該第1ベースコート塗膜上に塗料組成物(X1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚7.5μmとなるように静電塗装し、第2ベースコート塗膜を形成した。
【0257】
3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y1)(商品名「マジクロンKINO-1210」、関西ペイント社製、基体樹脂/架橋剤がカルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂の組み合わせ)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作製した。
得られた試験用塗装板を用いて、下記の評価試験を行った。結果を表4に示す。
【0258】
[実施例2~7、実施例10~20、比較例1~3、比較例5~9]
実施例1において、塗料組成物(X1)を表4~6の配合組成によって作製した塗料組成物(X2)~(X7)、(X10)~(X20)、(X21)~(X23)、(X25)~(X29)とした以外は同様に試験用塗装板を作製し、下記の評価試験を行った。結果を表4~6に示す。
【0259】
[実施例8]
実施例1で得た試験用被塗物(1)に、下記製造例34で得られた塗料組成物(X30)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚10μmとなるように静電塗装し、第1ベースコート塗膜を形成した。
1分間放置後、該第1ベースコート塗膜上に表4の配合組成によって作製した塗料組成物(X8)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚5μmとなるように静電塗装し、第2ベースコート塗膜を形成した。
【0260】
3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y1)(商品名「マジクロンKINO-1210」、関西ペイント社製)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作製した。
得られた試験用塗装板を用いて、下記の評価試験を行った。結果を表4に示す。
【0261】
製造例34
撹拌混合容器内において、「アルペースト TCR2020」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%)12.8部(固形分10.0部)、2-エチル-1-ヘキサノール35.0部並びに製造例3で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)溶液5.0部(固形分2.5部)を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(P-29)を得た。
【0262】
次に、他の撹拌混合容器において、製造例1で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)水分散液100.0部(固形分30.0部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液22.7部(固形分12.5部)、製造例4で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)35.7部(固形分25.0部)、メラミン樹脂(商品名「サイメル325」、オルネクスジャパン社製、固形分80%)37.5部(固形分30.0部)、上記鱗片状アルミニウム顔料分散液(P-29)52.8部及び製造例33で得た顔料分散液(D1)0.3部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE-60」ロームアンドハース社製)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分30%、20℃におけるフォードカップNo.4によって測定される粘度が40秒の塗料組成物(X30)を得た。
【0263】
[実施例9]
実施例8において、塗料組成物(X8)を表4の配合組成によって作製した塗料組成物(X9)とした以外は同様に試験用塗装板を作製し、下記の評価試験を行った。結果を表4に示す。」
「【0270】
製造例37
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)27部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら150℃で撹拌し、この中にスチレン20部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート32.5部、イソブチルメタクリレート46.8部、アクリル酸0.7部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)6.0部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、150℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸イソブチルを21部加えて希釈し、固形分濃度65質量%の水酸基含有アクリル樹脂(y-1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(y-1)の水酸基価は139mgKOH/g、酸価は5.5mgKOH/g、重量平均分子量は5,500、ガラス転移温度38℃であった。
【0271】
上記で得た水酸基含有アクリル樹脂(y-1)溶液100部(固形分65部)及び「BYK-300」(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分52%)0.4部(固形分0.2部)を均一に混合した主剤と、架橋剤「スミジュールN3300」(商品名、住化コベストロウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分含有率100%)35部を塗装直前に均一に混合し、さらに、酢酸ブチルを加えて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が30秒となるように調整してクリヤー塗料組成物(Y2)を得た。」
「【0290】
[実施例37]
実施例1と同様にして塗料組成物(X1)を得た。
【0291】
〔試験用塗装板の作製〕
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT-10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に下記製造例46で得た水性中塗り塗料組成物αを膜厚20μmになるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。かくして、鋼板上に硬化した電着塗膜及び未硬化の中塗り塗膜を形成してなる試験用被塗物(2)を作製した。
【0292】
(塗膜形成)
塗料組成物(X1)を、前記塗膜形成方法IIの3コート1ベーク方式におけるベースコート形成用塗料として使用して、上記で得た試験用被塗物(2)上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜を形成した。
【0293】
すなわち、上記で得た試験用被塗物(2)に、塗料組成物(X1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚7.5μmとなるように静電塗装し、第1ベースコート塗膜を形成した。
1分間放置後、該第1ベースコート塗膜上に塗料組成物(X1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚7.5μmとなるように静電塗装し、第2ベースコート塗膜を形成した。
【0294】
3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y1)(商品名「マジクロンKINO-1210」、関西ペイント社製)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作製した。
得られた試験用塗装板を用いて、下記の評価試験を行った。結果を表10に示す。」
「【0300】
[実施例44]
実施例37で得た試験用被塗物(2)に、製造例34で得られた塗料組成物(X30)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚10μmとなるように静電塗装し、第1ベースコート塗膜を形成した。
1分間放置後、該第1ベースコート塗膜上に表4の配合組成によって作製した塗料組成物(X8)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、膜厚5μmとなるように静電塗装し、第2ベースコート塗膜を形成した。
【0301】
3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y1)(商品名「マジクロンKINO-1210」、関西ペイント社製)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、クリヤーコート塗膜を形成した。7分間放置後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作製した。
得られた試験用塗装板を用いて、下記の評価試験を行った。結果を表11に示す。
【0302】
[実施例45]
実施例44において、塗料組成物(X8)を表11に記載の塗料組成物とした以外は同様に試験用塗装板を作製し、下記の評価試験を行った。結果を表11に示す。」
「【0307】
[実施例63~64]
実施例44~45において、クリヤー塗料組成物(Y1)を製造例37で得られたクリヤー塗料組成物(Y2)とし、クリヤーコート塗膜の7分間放置後の加熱温度を120℃とした以外は同様に試験用塗装板を作製し、下記の評価試験を行った。結果を表13に示す。」
「【0309】
(粒子感(G値))
得られた各試験用塗装板について、「BYK-mac」(商品名、BYKガードナー社製)を用いて粒状性値(G値)を測定した。なお、粒状性値(G値)が大きいほど、粒子感が高いことを示す。例えば、粒子感が高い塗膜を得る場合、粒状性値(G値)は5.0以上が好ましい。」
「【0313】
【表4】
[図:0001423431000002.jpg]
」
「【0322】
【表13】
[図:0001423431000003.jpg]
」
2 甲1に記載された発明
甲1の【0001】には、「本発明は」「複層塗膜形成方法に関するものである」ことが記載されている。
そして、甲1の【0322】の【表13】の「実施例64」に着目し、その塗膜の形成方法については【0307】の記載に従って【0300】~【0302】の記載を参照し、X30の組成については【0261】及び【0262】の記載を参照し、X9の組成については【0253】、【0258】、【0259】、【0263】の記載を参照し、さらにX30に含まれる「顔料分散液(P-29)」について【0261】の記載を参照し、X9に含まれる「顔料分散液P-9」について【0243】~【0245】の記載及び【0245】の【表1】の記載を参照し、「成分(D)の着色顔料分散液について【0252】の製造例33を参照すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「試験用被塗物(2)に、塗料組成物(X30)を膜厚10μmとなるように静電塗装して第1ベースコート塗膜を形成し、
第1ベースコート塗膜上に塗料組成物(X9)を膜厚5μmとなるように静電塗装して第2ベースコート塗膜を形成し、
第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y2)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装してクリヤーコート塗膜を形成し、120℃で30分間加熱して、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作成する複層塗膜形成方法であって、
第1ベースコート塗膜を構成する前記塗料組成物(X30)は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)水分散液100.0部(固形分30.0部)、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液22.7部(固形分12.5部)、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)35.7部(固形分25.0部)、メラミン樹脂(商品名「サイメル325」、オルネクスジャパン社製、固形分80%)37.5部(固形分30.0部)、鱗片状アルミニウム顔料分散液(P-29)52.8部及び顔料分散液(D1)0.3部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE-60」ロームアンドハース社製)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えて得られた、塗料固形分30%の塗料組成物(X30)であり、
前記鱗片状アルミニウム顔料分散液(P-29)は、「アルペースト TCR2020」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%)12.8部(固形分10.0部)、2-エチル-1-ヘキサノール35.0部並びに製造例3で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)溶液5.0部(固形分2.5部)を均一に混合して得た、総量12.8+35.0+5.0=52.8部のうち、固形分が10.0+2.5=12.5部であるアルミニウム顔料分散液(P-29)であり、
第2ベースコート塗膜を構成する前記塗料組成物(X9)は、バインダー成分(A)(水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)水分散液100.0部、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液5.4部、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)35.7部、及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」、オルネクスジャパン社製、固形分80%)37.5部からなる、全固形分配合量が100.0部のバインダー成分(A)と、鱗片状アルミニウム顔料及び鱗片状顔料を含有する顔料分散液(P-9)125.7部、並びに成分(D)(着色顔料(D1))0.3部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE-60」ロームアンドハース社製)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えて得られた、塗料固形分15%の塗料組成物(X9)であり、
前記鱗片状アルミニウム顔料及び鱗片状顔料を含有する顔料分散液(P-9)は、「アルペースト TCR2020」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%)57.7部(固形分57.7×0.78≒45.0部)、「TWINCLE PEARL SXB-SO」(商品名、日本光研工業社製、酸化チタン被覆合成雲母顔料、平均粒子径(d50):13μm、干渉色:銀色)4.0部、2-エチル-1-ヘキサノール40.0部並びに水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)溶液24.0部(固形分24.0×5.3/10.5≒12.0部)を均一に混合して得た、鱗片状アルミニウム顔料及び鱗片状顔料を含有する顔料分散液(P-9)であり、
複層塗膜のG値は9.4である、複層塗膜形成方法。」
3 対比・判断
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「塗料組成物(X30)」及び「塗料組成物(X9)」は、その組成から見て、いずれも水を溶媒として含む水性塗料組成物であるから、甲1発明の「試験用被塗物(1)に、塗料組成物(X30)を膜厚10μmとなるように静電塗装して第1ベースコート塗膜を形成し、第1ベースコート塗膜上に塗料組成物(X9)を膜厚5μmとなるように静電塗装して第2ベースコート塗膜を形成し、第2ベースコート塗膜上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料組成物(Y2)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装してクリヤーコート塗膜を形成し、120℃で30分間加熱して、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより試験用塗装板を作成する複層塗膜形成方法」は、本件訂正発明1の「被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、を含む複層塗膜の製造方法」に相当する。
イ 甲1発明の「塗料組成物(X30)」は本件訂正発明1の「水性第1ベース塗料組成物」に相当し、甲1発明の「塗料組成物(X30)」を構成する「水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)」、「水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)」及び「水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)」は本件訂正発明1の「塗膜形成樹脂(A1)」に相当し、甲1発明の「塗料組成物(X30)」を構成する「メラミン樹脂」は本件訂正発明1の「硬化剤(B1)」に相当する。
ウ 同様に、甲1発明の「塗料組成物(X9)」は本件訂正発明1の「水性第2ベース塗料組成物」に相当し、甲1発明の「塗料組成物(X9)」を構成する「水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)」、「水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)」及び「水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)」は本件訂正発明1の「塗膜形成樹脂(A2)」に相当し、甲1発明の「塗料組成物(X9)」を構成する「メラミン樹脂」は本件訂正発明1の「硬化剤(B2)」に相当する。
エ 甲1発明の「塗料組成物(X30)」は「塗料固形分30%」であり、同「塗料組成物(X9)」は「塗料固形分15%」であり、その固形分濃度の比は30/15=2であるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下」を充足する。
オ 甲1発明の「アルペースト TCR2020」は、商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%である。そして、甲1の明細書【0148】の「水面拡散面積法(水面拡散面積=Scm2/gとすると、平均厚さ=4000/S μm)」の記載に基づいて、「平均厚さ0.67μm」から「水面拡散面積(m2/g)」を計算すると、水面拡散面積=4000/0.67×10-4≒0.60m2/gとなるから、甲1発明の(X9)を構成する「アルペースト TCR2020」及び「TWINCLE PEARL SXB-SO」のうち、「アルペースト TCR2020」は本件訂正発明1の「光輝性顔料(C2)」に相当するものであって、本件訂正発明1の「平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下」を充足する。
カ 甲1発明の「塗料組成物(X30)」の固形分は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-1)水分散液100.0部の固形分30.0部と、水酸基含有アクリル樹脂(A1-1-2)溶液22.7部の固形分12.5部と、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A1-2-1)35.7部の固形分25.0部と、メラミン樹脂(商品名「サイメル325」、オルネクスジャパン社製、固形分80%)37.5部の固形分30.0部と、鱗片状アルミニウム顔料分散液(P-29)52.8部の固形分12.5部と、顔料分散液0.3部のうちの固形分(最大でも0.3部)の合計110.3部である。
これに対して、甲1発明の「塗料組成物(X30)」における光輝性顔料の固形分量は、「アルペースト TCR2020」(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウム顔料ペースト、平均粒子径(d50)22μm、平均厚さ0.67μm、アルミニウム含有量78%)12.8部のうちの固形分10.0部のみである。
そうすると、甲1発明の「塗料組成物(X30)」の固形分100に対する光輝性顔料の濃度は、10.0/110.3×100≒9.07であるか、それよりは大きい値となる(顔料分散液0.3部のうちの固形分は100%を超えることはない。)。
キ 甲1発明の「塗料組成物(X9)」の固形分は、バインダー成分(A)の全固形分配合量100.0部と、鱗片状アルミニウム顔料及び鱗片状顔料を含有する顔料分散液(P-9)125.7部に含まれる水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A1-1-3)12.0部と、鱗片状アルミニウム顔料(B)の固形分配合量45.0部と、鱗片状顔料(C)の固形分配合量4.0部と、成分(D)の固形分0.3部であって、成分(D)の固形分配合量は、明細書の【0252】の製造例33の記載より、0.3×(10.0+50.0)/(18.2+50+30)≒0.18部と計算できるから、甲1発明の「塗料組成物(X9)」における「鱗片状アルミニウム顔料(B)」の質量濃度は、45.0/(100.0+12.0+45.0+4.0+0.18)×100≒27.9質量%であるから、本件訂正発明1の「水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下」を充足する。
ク してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である、
複層塗膜の製造方法。」
<相違点1>
水性第1ベース塗料組成物における、光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度が、本件訂正発明1は「0質量%以上5.0質量%以下」であるのに対し、甲1発明は9.07質量%であるか、それよりは大きい値である点。
前記相違点1について検討する。
両者の間には相違点1があることから、本件訂正発明1は甲1発明であるとはいえない。
また、甲1発明の「第1ベースコート塗膜」ないしは「第2ベースコート塗膜」における「鱗片状アルミニウム顔料(B)」の含有量について、甲1発明を認定した甲1の【0150】及び【0151】には「鱗片状アルミニウム顔料(B)の含有量は、前記バインダー成分(A)100質量部を基準として、10~50質量部の範囲内である。含有量が10質量部以上であると、メタリックムラの発生が抑制され、フリップフロップ性に優れた塗膜が形成され、含有量が50質量部以下であると、メタリックムラの発生が抑制され、鮮映性に優れた塗膜が形成されるからである。形成される塗膜の粒子感、フリップフロップ性、メタリックムラの発生抑制及び鮮映性の観点から、鱗片状アルミニウム顔料(B)の含有量は、前記バインダー成分(A)100質量部を基準として、好ましくは12~40質量部、より好ましくは15~30質量部の範囲内である。」と記載されており、「第1ベースコート塗膜」の「鱗片状アルミニウム顔料(B)」の含有量を「0質量%以上5.0質量%以下」の範囲にすることについては記載も示唆もない。
そして、ベースコート塗膜を2層にした場合について、甲1の【0209】及び【0210】には「また、上記未硬化のベースコート塗膜は、・・・2種以上のベースコート塗料組成物を使用して形成することもできる。その場合、少なくとも最上層のベースコート塗膜を形成するベースコート塗料組成物として本発明の塗料組成物を使用することができる。・・・具体的には、例えば、本発明の塗料組成物を用いてもよい第1ベースコート塗料を被塗物に塗装して第1ベースコート塗膜を形成した後、該第1ベースコート塗膜上に本発明の塗料組成物を用いた第2ベースコート塗料を塗装して第2ベースコート塗膜を形成することができる。」と記載され、第1ベースコート塗膜については、必ずしも本発明の塗料組成物を用いなくてもよいことが記載されているものの、その場合に、「鱗片状アルミニウム顔料(B)」の含有量を「0質量%以上5.0質量%以下」の範囲にしなければならない必然性はないし、そのようにする動機付けも見当たらない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件訂正発明2~7
本件訂正発明2~7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであり、前記(1)の相違点1に係る特定事項を備えるものである。
そうすると、本件訂正発明2~7は、前記(1)と同じ理由により、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和7年2月17日提出の意見書3頁10~15行において、表2-4の光輝性顔料(C1)の「5.0」の数値は、塗料組成物全体を分母にしても導くことができない。このため、訂正発明1の訂正は、願書に添付した明細書に記載された範囲を超える新規事項の追加に該当するか、実質上特許請求の範囲の変更にあたる訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項又は第6項の規定に反する訂正である、との趣旨の主張をしている。
しかしながら、前記第2の3で検討したとおり、本件特許の明細書の表2-4には、「水性第1ベース塗料組成物」の「(C1)の顔料質量濃度」がいずれの実施例も「5.0質量%」であることが記載されているから、新規事項の追加や特許請求の範囲の変更には該当しない。
そうすると、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由、取消理由通知書に記載した取消理由、及び取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700725