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特許異議申立

2022-700329

ペロブスカイト型化合物の製造方法およびペロブスカイト型化合物

審判番号
2022-700329
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-524239
登録番号
6954501
請求日
2022年04月21日
審決日
2022年12月13日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】堺化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】黒田 泰
  • 【異議申立人】金田 綾香
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 山田 倍司
分類
P1651.113-YAA(C01G) / P1651.121-YAA(C01G) / P1651.536-YAA(C01G) / P1651.537-YAA(C01G) / P1651.841-YAA(C01G) / P1651.851-YAA(C01G) / P1651.853-YAA(C01G) / P1651.854-YAA(C01G) / P1651.855-YAA(C01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第6954501号発明「ペロブスカイト型化合物の製造方法およびペロブスカイト型化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6954501号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔4、5〕について訂正することを認める。 特許第6954501号の請求項1~4に係る特許を維持する。 特許第6954501号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6954501号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)2月10日(優先権主張 令和2年3月30日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))を国際出願日として出願され、令和3年10月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 4月21日:特許異議申立人 黒田 泰(以下、「申立人黒田」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 同月25日:特許異議申立人 金田 綾香(以下、「申立人金田」という。)による請求項4、5に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 7月20日付け:取消理由通知 同年 9月16日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年10月27日 :申立人黒田による意見書の提出 申立人金田による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年9月16日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項4に「Ca又はSr」と記載されているのを、「Ca」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「で表され、粉末X線回折による」と記載されているのを、「で表され、BET比表面積が20~70m2/gであり、粉末X線回折による」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔4、5〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項4の「又はSr」との事項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項4における「ペロブスカイト型化合物」の「BET比表面積が20~70m2/g」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、本件明細書等の【0040】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4、5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1~5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCa又はSrを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表されるペロブスカイト型化合物を製造する方法であって、 該製造方法は、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程、 第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程、及び、 第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を含むことを特徴とするペロブスカイト型化合物の製造方法。 【請求項2】 前記第一工程で得られたチタン酸バリウムは、BET比表面積が20~130m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト型化合物の製造方法。 【請求項3】 前記第三工程で得られたペロブスカイト型化合物を溶媒中で30~500℃の温度で加熱してペロブスカイト型化合物の凝集粒子を解粒する第四工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のペロブスカイト型化合物の製造方法。 【請求項4】 下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され、BET比表面積が20~70m2/gであり、 粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすことを特徴とするペロブスカイト型化合物。 【請求項5】 (削除)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和4年7月20日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、申立人黒田が提出した甲第1号証~甲第8号証を、以下、甲1-1~甲1-8といい、申立人金田が提出した甲第1号証~甲第5号証を、以下、甲2-1~甲2-5という。 (1)取消理由1(新規性) 訂正前の請求項4に係る発明は、甲2-1に記載された発明又は甲2-2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当するから、訂正前の請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(進歩性) 訂正前の請求項5に係る発明は、甲2-1に記載された発明及び甲1-2に記載された事項に基づいて、又は、甲2-2に記載された発明及び甲2-2に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲2-1:特開2007-290944号公報 甲2-2:特開平4-16513号公報 甲2-3:特許第4438495号明細書 甲1-2:韓国特許公開第10-2005-0058670号公報 2 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 (1)甲2-1(特開2007-290944号公報) ア 本件特許出願の優先日前に公知となった甲2-1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【請求項1】 主結晶相をチタン酸バリウムカルシウムとし、副結晶相をチタン酸カルシウムとするペロブスカイト型複合酸化物からなり、平均粒径が60nm以上150nm以下であるとともに、前記チタン酸バリウムカルシウムの(111)面のX線回折から求められる結晶面間隔dが0.23089~0.23188nmであり、かつ前記チタン酸カルシウムの(110)面のX線回折強度が前記チタン酸バリウムカルシウムの(110)面のX線回折強度の1%以下であることを特徴とするチタン酸バリウムカルシウム粉末。 【請求項2】 前記チタン酸バリウムカルシウムが、一般式(Ba1-xCax)zTiO3(但し、0.999≦z≦1、0.05≦x≦0.14)で表される主結晶相からなる請求項1に記載のチタン酸バリウムカルシウム粉末。 【請求項3】 前記チタン酸バリウムカルシウムが、一般式(Ba1-xCax)zTiO3(但し、1.001≦z≦1.003、0.15≦x≦0.18)で表される主結晶相からなる請求項1に記載のチタン酸バリウムカルシウム粉末。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明のチタン酸バリウムカルシウム粉末は、Ba、CaおよびTiを元素として含むペロブスカイト型構造の複合酸化物であり、一般式(Ba1-xCax)zTiO3で表される。 ・・・ 【0020】 図1は、一般式(Ba0.95Ca0.05)zTiO3(z=1)で表される本発明のチタン酸バリウムカルシウム粉末のX線回折パターンである。図1から明らかなように、本発明のチタン酸バリウムカルシウム粉末は、チタン酸バリウムカルシウムの結晶構造を有する単相からなるものである。本発明のチタン酸バリウムカルシウム粉末はペロブスカイト型複合酸化物の(111)面の結晶面間隔dが0.23089nm以上0.23185nm以下である。本発明において結晶面間隔dは、例えば、図1のX線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの角度からブラッグの公式(nλ=2dsinθ n=1、λ=0.154056nm)により求められる。(111)ピークを選ぶ理由はチタン酸バリウムカルシウム粉末のX線回折パターンにおける回折強度の強い(110)、(101)等の他のピークに比べてピークの重なりがなく、正方晶性に影響されずに高い精度が得られやすいためである。」 「【0054】 上記の製法により得られた粉末の平均粒径は4万から10万倍で撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めた。電子顕微鏡写真内の粉末を任意に100個以上を選択し、写真に映し出された各粉末について、コンピュータ処理により粉末の周囲を円とみたてて角度で2°毎に寸法を測定し、それらの平均値を求めた。また、X線回折により(111)面間隔を測定した。また、X線回折によりチタン酸バリウムカルシウム(BCT)の(110)ピーク強度に対するチタン酸カルシウムのピーク強度比を求めた。このピーク強度比はX線回折装置に備え付けのコンピュータ解析によって求めた。また、第1の工程で得た混合粉末を昇温速度が1800℃/hの条件で処理した粉末(試料No.20)についても上記と同じ測定し、比較例とした。図3は作製したサンプル粉末のX線回折パターン(x=0.1~0.2)である。 【表1】 [図:0001395217000001.jpg] 【0055】 【表2】 [図:0001395217000002.jpg] 」 「【0060】 上記の製法により得られた粉末の平均粒径は4万から10万倍で撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めた。電子顕微鏡写真内の粉末を任意に100個以上を選択し、写真に映し出された各粉末について、コンピュータ処理により粉末の周囲を円とみたてて角度で2°毎に寸法を測定し、それらの平均値を求めた。また、X線回折により(111)面間隔を測定した。また、X線回折によりチタン酸バリウムカルシウム(BCT)の(110)ピーク強度に対するチタン酸カルシウムのピーク強度比を求めた。このピーク強度比はX線回折装置に備え付けのコンピュータ解析によって求めた。 【表3】 [図:0001395217000003.jpg] 【0061】 【表4】 [図:0001395217000004.jpg] 」 イ 甲2-1に記載された発明 (ア)上記アの【0014】には、チタン酸バリウムカルシウム粉末は、Ba、CaおよびTiを元素として含むペロブスカイト型構造の複合酸化物であり、一般式(Ba1-xCax)zTiO3で表されることが記載されている。 (イ)上記アの【表1】~【表4】(【0054】、【0055】、【0060】、【0061】)の試料番号2~6、8~9、13~22、24~36には、(Ba1-xCax)zTiO3のxが0.05~0.2、zが1.0000であって、d(111)が0.23086nm~0.2311nmであることが記載されている。 また、上記d(111)は、上記アの【請求項1】の「チタン酸バリウムカルシウムの(111)面のX線回折から求められる結晶面間隔d」との記載によれば、「チタン酸バリウムカルシウムの(111)面のX線回折から求められる結晶面間隔d」であるといえる。 (ウ)以上によれば、甲2-1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「一般式(Ba1-xCax)zTiO3(0.05≦x≦0.2、z=1.0000)で表され、チタン酸バリウムカルシウムの(111)面のX線回折から求められる結晶面間隔であるd(111)が0.23086nm~0.2311nmであるペロブスカイト型構造の複合酸化物。」(以下、「甲2-1発明」という。) (2)甲2-2(特開平4-16513号公報) ア 本件特許出願の優先日前に公知となった甲2-2には、以下の記載がある。 「2.特許請求の範囲 (1)水酸化バリウムと、水酸化ストロンチウムと、少なくとも一種の水酸化アルカリ若しくはアミンとを含有し、前記水酸化バリウムおよび水酸化ストロンチウムの合計と前記少なくとも一種の水酸化アルカリ若しくはアミンとのモル比が1:1~1:4である水溶液に、60~90℃の温度で、水酸化バリウムおよび水酸化ストロンチウムの合計モル数と等モルのチタンアルコキシドを加えて反応させ、生成したチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末を粒子成長させない温度で焙焼することを特徴とするチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末の製造方法。」(1ページ左下欄5~17行) 「従って、本発明は、組成が均一で、比表面積が大きく、微細で粒度分布幅の狭いチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末を安価に製造できるようにすることを課題とするものである。」(2ページ右下欄1~4行) 「得られたチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末のX線回折解析を行ったところ、立方晶系チタン酸バリウム・ストロンチウムの単相であった。また、格子定数を測定したところ、a0=3.955Åで、仕込みモル数(Ba0.7Sr0.3)TiO3通りの均一固溶組成であることが確認された。 さらに、この粉末を透過型電子顕微鏡で観測を行ったところ、粒径が0.05~0.10μmで分布幅が狭く均一であった。また、その粉末の比表面積を測定したところ、25m2/gであった。」(3ページ左下欄15行~右下欄4行) 「(発明の効果) 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムおよびチタン酸アルコキシドとを原料として用いているため、それらの反応が温和に進行し、超微粒子で粒度分布幅が狭く、比表面積が大きく表面活性の高いチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末を得ることができる。」(3ページ右下欄5~12行) イ 甲2-2に記載された発明 上記アによれば、甲2-2には以下の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されていると認められる。 「立方晶系チタン酸バリウム・ストロンチウムの単相であり、格子定数a0=3.955Åで、仕込みモル数(Ba0.7Sr0.3)TiO3通りの均一固溶組成であり、比表面積が25m2/gであるチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末。」 (3)甲2-3(特許第4438495号明細書) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲2-3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 ペロブスカイト構造のa軸とc軸の長さ比c/aが1.008以上であり、平均粒径をBET比表面積から算出されるBET比表面積相当径で除した値が1以上1.5以下であり、平均粒径が0.05μm以上0.3μm以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。」 (4)甲1-2(韓国特許公開第10-2005-0058670号公報) 甲1-2については、以下の第5 1(2)イ(ア)で記載する。 3 取消理由1(新規性)について (1)甲2-1発明を主引用発明とする新規性について ア 本件発明4について (ア)対比 本件発明4と甲2-1発明とを対比する。 a 甲2-1発明の「一般式(Ba1-xCax)zTiO3(0.05≦x≦0.2、z=1.0000)」と、本件発明4の「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)」とは、下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.05≦x≦0.2の数である。)の点で一致する。 b 甲2-1の【0020】(上記2(1)ア参照)には、「本発明において結晶面間隔dは、例えば、図1のX線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの角度からブラッグの公式(nλ=2dsinθ n=1、λ=0.154056nm)により求められる。」と記載されている。 そして、上記ブラッグの公式を変形すると、2θ=2(180/π)arcsin(0.154056/(2d))となる。 ここで、甲2-1発明において、「d(111)」は、「チタン酸バリウムカルシウムの(111)面のX線回折から求められる」ものであることから、上記2θも同様に、甲2-1発明に係る「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のX線回折から求められるものといえる。 そうすると、甲2-1発明に係る「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のX線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの値をE1とすると、「d(111)」が下限値である0.23086nmの場合、E1=2(180/π)arcsin(0.154056/(2×0.23086))=38.98となり、また、「d(111)」が上限値である0.2311nmの場合、E1=2(180/π)arcsin(0.154056/(2×0.2311))=38.94となるから、甲2-1発明に係る「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のE1の範囲は、38.94以上38.98以下である。 一方、甲2-1には、ペロブスカイト型構造の複合酸化物のBET比表面積(以下、「D1」という。)は記載されていない。 しかし、上記のとおり、甲2-1発明に係る「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のE1の範囲は、38.94以上38.98以下であるから、「E1+0.0031×D1」の値は、D1がどのような値であっても、38.94以上になる。 したがって、甲2-1発明に係る「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」は、E1+0.0031×D1≧38.94を満たすといえる。 以上によれば、甲2-1発明の、X線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの値E1、BET比表面積D1は、それぞれ、本件発明4の「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θの値」である「E」、「BET比表面積」である「D(m2/g)」に相当し、甲2-1発明と本件発明4とは、「下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」点で一致する。 c 甲2-1発明の「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」は、本件発明4の「ペロブスカイト型化合物」に相当する。 d 以上から、本件発明4と甲2-1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され、 粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすことを特徴とするペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点2-1:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲2-1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 (イ)相違点2-1についての判断 甲2-1には、「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のBET比表面積について、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲2-1発明の「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のBET比表面積が20~70m2/gであることは、本件特許出願の優先日において技術常識であるともいえない。 したがって、相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件発明4は、甲2-1発明であるとはいえない。 (2)甲2-2発明を主引用発明とする新規性について ア 本件発明4について (ア)対比 本件発明4と甲2-2発明とを対比する。 a 甲2-2(上記2(2)ア参照)には、「得られたチタン酸バリウム・ストロンチウム粉末のX線回折解析を行ったところ、立方晶系チタン酸バリウム・ストロンチウムの単相であった。また、格子定数を測定したところ、a0=3.955Åで、仕込みモル数(Ba0.7Sr0.3)TiO3通りの均一固溶組成であることが確認された。」と記載されている。 ここで、甲2-1の【0020】(上記2(1)ア参照)に記載されているように、結晶面間隔dは、X線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの角度からブラッグの公式(nλ=2dsinθ n=1、λ=0.154056nm)により求められるものであるから、甲2-2発明の「格子定数a0=3.955Å」(0.3955nm)は「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」のX線回折解析によって得られたものであるといえる。 そして、一般に、(hkl)面の結晶間隔d(hkl)は、式(I):d(hkl)=a0√(h2+k2+l2)で求められることは技術常識であるから、甲2-2発明に係る「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」の(111)面の結晶面間隔d(111)は、0.3955√(12+12+12)nmである。 また、上記(1)ア(ア)bで検討したように、ブラッグの公式を変形すると、2θ=2(180/π)arcsin(0.154056/(2d))となる。 そうすると、甲2-2発明に係る「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」のX線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θをE2とすると、E2=2(180/π)arcsin(0.154056/(2×0.3955√(12+12+12)))=39.43である。 一方、甲2-2に係る「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」は、「表面積が25m2/g」であるものの、当該「比表面積」が、BET比表面積であるかどうかは不明である。 しかし、上記のとおり、甲2-2発明に係る「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」のE2は39.43であるから、「E2+0.0031×D2」の値は、D2がどのような値であっても、38.94以上になる。 したがって、甲2-2発明に係る「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」は、E2+0.0031×D2≧38.94を満たすといえる。 以上によれば、甲2-2発明の、X線回折パターンの(111)ピークの半価幅の中央値の2θの値E2、BET比表面積D2は、それぞれ、本件発明4の「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θの値」である「E」、「BET比表面積」である「D(m2/g)」に相当し、甲2-2発明と本件発明4とは、「下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」点で一致する。 b チタン酸バリウム及びチタン酸バリウムカルシウムは、いずれもペロブスカイト構造であることからすると(甲2-1の【0014】(上記 2(1)ア)、甲2-3の【請求項1】(上記2(3))参照)、甲2-2発明の「立方晶系チタン酸バリウム・ストロンチウムの単相」である「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」も、チタン酸バリウム及びチタン酸バリウムカルシウムと同様の結晶構造、すなわち、ペロブスカイト構造であるといえる。 したがって、甲2-2発明の「チタン酸バリウム・ストロンチウム粉末」は、本件発明4の「ペロブスカイト型化合物」に相当する。 c 以上から、本件発明4と甲2-2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点2-2-1:「ペロブスカイト型化合物」について、本件発明4は、「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され」るのに対し、甲2-2発明は、「チタン酸バリウム・ストロンチウム」である点。 相違点2-2-2:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲2-2発明は、「比表面積が25m2/g」であるもののBET比表面積であるかどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 まず、相違点2-2-1から検討する。 「ペロブスカイト型化合物」について、甲2-2発明は、「チタン酸バリウム・ストロンチウム」であるのに対し、本件発明4は、「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表される」もの、すなわち、チタン酸バリウムカルシウムであるから、相違点2-2は実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2-2について判断するまでもなく、本件発明4は、甲2-2発明であるとはいえない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲2-1発明又は甲2-2発明ではないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、取消理由1には理由がない。 4 取消理由2(進歩性)について 上記第2のとおり、請求項5は、本件訂正により削除されたから、取消理由2については、ここでの検討を要しない。 第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について なお、上記第2のとおり、請求項5は、本件訂正により削除されたから、請求項5についての申立理由は省略する。 1 申立人黒田の申立理由について (1)申立人黒田の申立理由 ア 申立理由1-1(新規性) 本件発明4は、甲1-1、甲1-6、甲1-7又は甲1-8に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由1-2(進歩性) 本件発明1~3は、甲1-1、甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、又は、甲1-2、甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由1-3(サポート要件) 本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 エ 申立理由1-4(実施可能要件) 発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 ア 甲1-1(韓国特許公開第10-2006-0030230号公報) (ア)本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-1には、以下の記載がある(下線は当審が付加した。以下、同様である。)。なお、甲1-1の記載は、当審の訳文で示す。 a 「本発明は、チタン酸バリウムカルシウム(BaCaTiO3)粉末の製造方法、及びこれより得られた粉末を主成分とする積層セラミックキャパシタに関するものであって、より詳しくは、化学吸着法によりチタン酸バリウムカルシウム粉末を製造する方法に関する。また、この製造方法によって得られるチタン酸バリウムカルシウム粉末と、該粉末を主成分とする積層セラミックキャパシタに関する。」(2ページ13~15行) b 「本発明者らは、BaTiO3粒子をシード(seed)として用い、BaTiO3粒子の表面にCaを水酸化カルシウム塩の形態で化学的にコーティング(化学吸着)すれば、化学的均一度が高いBaCaTiO3粉末が得られるという点に着目し、本発明を完成した。本発明の研究結果によれば、BaTiO3粉末の表面に水酸化カルシウム塩を析出するが、その際に水酸化イオンを供給しながら反応を進めることが好ましい。水酸化イオンを供給する際には、pHを徐々に増加させるようにすると化学的均一度がさらに高くなる。 このような技術的観点から完成した本発明を、添付した図面を参照して具体的に説明する。 [BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液準備工程] BaTiO3粉末は、固相法、粉砕法、湿式法、加水分解法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など、様々な方法により製造されている。本発明では、使用するBaTiO3粉末の製造方法は限定されないが、水熱合成法で製造される粉末が最も好ましい。水熱合成法は、より微細なBaTiO3粉末を提供できるためである。また、BaTiO3粉末において、Ba/Tiの比は、通常の条件であれば可能であるが、好ましくは、0.995~1.005である。使用するBaTiO3粉末の粒度は、分散及び合成のためのか焼処理を考慮すると0.05~0.3μmが好ましい。 前述のようなBaTiO3粉末とCa塩を混合するが、Ca塩は、CaCO3、Ca(NO3)2、Ca(COOCH3)2、Ca(OH)2、CaC12などの群から選択される1種であってもよい。Caは、BaTiO3に対して0.5~2.5mol%ドーピングすることが好ましく、そのためCa塩は、BaTiO3 100molに対して0.5~2.5mo1混合したものが好ましい。Ca塩の混合量が0.5mo1未満であれば、得られるBaCaTiO3粉末におけるCaのドーピング量不足により耐還元性及び信頼性の向上に寄与できず、2.5mo1を超えると誘電率が低下することがある。」(4ページ1行~15行) c 「[実施例1] 水熱合成法で製造した100nm級のBaTiO3(100mol)、Ca(NO3)2(0.5~2.5mo1)を、水系分散剤を用いて水系に分散させる。水系に混合する際、前記材料を順に微量ずつ投入し、十分に分散され得るように機械撹拌機でかき混ぜながら混合した。」(6ページ9~12行) d 「[実施例2] 実施例1と同様の方法で製造するが、Ca(NO3)2を1mol%混合して得たBaCaTiO3粉末に対して、XRD分析とSEM分析、ICP分析、XRF分析を行った。 XRD分析結果を図3に示した。図3bにおいて、左ピークは(002)面、右ピークは(200)面であり、(002)面と(200)面のピークが分離して出てきたことから、電気的特性が適正に具現されていることを確認できた。図3aにおいて、2θは10~110°であり、図3bにおいて、2θは45°領域を拡大したものである。また、K-Factorは7.026であり、結晶性(c/a)は1.010である。 ・・・ ICP分析結果とXRF分析結果を表2及び表3に示した。 ・・・ [表3] [図:0001395217000005.jpg] 実施例2で使用したBaTiO3粉末におけるBa/Tiの比は0.9975であった。表3に示すように、尿素の熱分解を用いた場合、Baの溶出は大きくなく、尿素の濃度が増加するほどBaの溶出が抑制され得ることが分かった。 」(6ページ下から7行~7ページ下から16行) e 「請求項1. BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備するステップと、 前記混合水溶液からBaTiO3粉末の表面に水酸化カルシウム塩を析出するステップと、 前記混合水溶液を乾燥して得た粉末をか焼してBaCaTiO3粉末に合成した後、粉砕するステップとを含んでなる、チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法。」(7ページ下から5行~最下行) f 「図3a [図:0001395217000006.jpg] 」(10ページ) (イ)甲1-1に記載された発明 a 上記(ア)eには、BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備するステップと、 前記混合水溶液からBaTiO3粉末の表面に水酸化カルシウム塩を析出するステップと、 前記混合水溶液を乾燥して得た粉末をか焼してBaCaTiO3粉末に合成した後、粉砕するステップとを含んでなる、チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法が記載されている。 b 上記(ア)bには、BaTiO3粉末は水熱合成法で製造される粉末が最も好ましいこと、BaTiO3粉末において、Ba/Tiの比は、通常の条件であれば可能であるが、好ましくは、0.995~1.005であることが記載されている。 また、上記(ア)cには、実施例1として、水熱合成法で製造したBaTiO3(100mol)、Ca(NO3)2(0.5~2.5mo1)を、水系分散剤を用いて水系に分散させること、上記(ア)dには、実施例2として、実施例1と同様の方法で製造するが、Ca(NO3)2を1mol%混合してBaCaTiO3粉末を得ること、及び、実施例2で使用したBaTiO3粉末におけるBa/Tiの比は0.9975であることが記載されている。 以上から、甲1-1には、Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末を水熱合成法で製造すること、及び、前記BaTiO3粉末(100mol)及びCa(NO3)2(1mol)を、水系分散剤を用いて水系に分散させることが記載されているといえる。 c 上記(ア)dの[表3]には、実施例2において、尿素(CO(NH3)2)の濃度1mol%で製造したBaCaTiO3粉末に対するXRF分析結果として、Ba/Tiが0.9945であることが記載されている。 そうすると、甲1-1には、Ba/Tiが0.9945であるBaCaTiO3粉末(チタン酸バリウムカルシウム粉末)の製造方法が記載されているといえる。 d 以上から、甲1-1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「Ba/Tiの比が0.9945であるチタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法であって、 Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末を水熱合成法で製造するステップと、 前記BaTiO3粉末(100mol)及びCa(NO3)2(1mol)を、水系分散剤を用いて水系に分散させて混合して、BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備するステップと、 前記混合水溶液からBaTiO3粉末の表面に水酸化カルシウム塩を析出するステップと、 前記混合水溶液を乾燥して得た粉末をか焼してBaCaTiO3粉末に合成した後、粉砕するステップとを含んでなる、チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法。」(以下、「甲1-1方法発明」という。) 「BaCaTiO3におけるBa/Tiの比が0.9945であるチタン酸バリウムカルシウム粉末。」(以下、「甲1-1物発明」という。) (ウ)申立人黒田の主張について 申立人黒田は、特許異議申立書の7ページ下から9行、同ページ下から5~3行において、甲1-1には、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系で水系分散剤を使用して分散させて混合して混合水溶液を調製して、BaTiO3粉末のBa/Tiを0.9975と1.00未満とすることが記載されている旨主張している。 しかし、甲1-1の上記(イ)a及びbの検討によれば、甲1-1には、Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末及びCa(NO3)2を、水系分散剤を用いて水系に分散させて混合して、BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備することが記載されているといえるものの、申立人黒田が主張する、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系で水系分散剤を使用して分散させて混合して混合水溶液を調製して、BaTiO3粉末のBa/Tiを0.9975と1.00未満とすることは記載されているとはいえない。 したがって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 イ 甲1-2(韓国特許公開第10-2005-0058670号公報) (ア)本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-2には、以下の記載がある。なお、甲1-2の記載は、当審の訳文で示す。 a 「本発明は、チタン酸バリウムカルシウム(BaCaTiO3)粉末の製造方法、及びこれを用いた積層セラミックキャパシタに関し、より詳しくは、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末に熱処理過程によってCaを固溶させることで、チタン酸バリウムカルシウムをより微粒化し、結晶性を高めるものである。」(2ページ1~3行) b 「本発明は、チタン酸バリウム粉末に熱処理過程によってCaを固溶させることに特徴がある。」(2ページ下から5行) c 「本発明により製造されたチタン酸バリウムカルシウム粉末は、BET法によって求めた比表面積が5.0m2/g以上であり、結晶性が1.005以上である。」(3ページ21~22行) d 「[実施例1] 水熱合成法により製造した100nm級のBaTiO3(100モル)とCa(NO3)水和物0.5~2.5モルを、分散剤を用いて水系に分散させた後、噴霧乾燥してCaが均一にコーティングされたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)粉末を得た。この粉末をBox炉で熱処理し、CaがBaTiO3に固溶されたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)を製造した。ここで、熱処理は、昇温速度1.0~7.0℃/分、保持温度800~1200℃、保持時間1~4時間とした。」(3ページ29~33行) e 「請求項1. BaTiO3粉末が含まれたスラリーに、BaTiO3 100モルに対して0.5~2.5モルの水溶性Ca塩を混合し、該スラリーを噴霧乾燥した後、800~1200℃の温度で熱処理してBaCaTiO3を得ることを含んでなる、チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法。」(5ページ下から9~6行) (イ)甲1-2に記載された発明 a 上記(ア)eには、BaTiO3粉末が含まれたスラリーに、BaTiO3 100モルに対して0.5~2.5モルの水溶性Ca塩を混合し、該スラリーを噴霧乾燥した後、800~1200℃の温度で熱処理してBaCaTiO3を得ることを含んでなる、チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法が記載されている。 b 上記(ア)dには、水熱合成法により製造したBaTiO3(100モル)とCa(NO3)水和物0.5~2.5モルを、分散剤を用いて水系に分散させた後、噴霧乾燥してCaが均一にコーティングされたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)粉末を得、この粉末をBox炉で熱処理し、CaがBaTiO3に固溶されたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)を製造したことが記載されている。 c 以上から、甲1-2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「水熱合成法により製造したBaTiO3(100モル)とCa(NO3)水和物0.5~2.5モルを、分散剤を用いて水系に分散させた後、噴霧乾燥してCaが均一にコーティングされたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)粉末を得、この粉末をBox炉で熱処理し、CaがBaTiO3に固溶されたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)を得ることを含んでなるチタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法。」(以下、「甲1-2発明」という。) (ウ)申立人黒田の主張について 申立人黒田は、特許異議申立書の9ページ4~15行において、甲1-1では、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系で水系分散剤を使用して分散させて混合して混合水溶液を調製することにより、BaTiO3粉末のBa/Tiのモル比が0.9975とのように1.00未満となるので、甲1-2の実施例においても、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系で水系分散剤を使用して分散させることにより、チタン酸バリウム粉末のBa/Tiのモル比が1.00未満となっていること、及び得られるチタン酸バリウムカルシウム粉末のBa/Tiのモル比が1.00未満であることは、明らかであるから、甲1-2には、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系上で水系分散剤を使用して分散させ、BaTiO3粉末のBa/Tiのモル比を1.00未満とすること、及びBa/Tiのモル比が1.00未満であるチタン酸バリウムカルシウムを得ることが、記載されているに等しい旨主張している。 しかし、上記ア(ウ)で検討したとおり、甲1-1には、BaTiO3粉末及びCa(NO3)2を水系で水系分散剤を使用して分散させて混合して混合水溶液を調製して、BaTiO3粉末のBa/Tiを0.9975と1.00未満とすることは記載されているとはいえない。 したがって、申立人黒田の上記主張は前提において誤っているから採用できない。 ウ 甲1-3(特開2011-184247号公報) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 (a)BaTiO3粒子をエッチングすることにより、BaTiO3粒子表層のBaを溶出させて、Ti過剰のBaTiO3粒子とするエッチング工程と、 (b)前記Ti過剰のBaTiO3粒子に、Ca,Sr,およびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を添加する化合物添加工程と、 (c)前記(b)の工程で添加した前記化合物を、前記Ti過剰のBaTiO3粒子と反応させる反応工程と を具備することを特徴とするチタン酸バリウム系セラミック粉末の製造方法。」 「【0021】 <実施例1> (1)BaTiO3粒子のエッチング まず、平均粒子径が0.30μmのBaTiO3粉末を用意した。そして、このBaTiO3粉末を300g秤量し、別途調製しておいた0.2Nの希塩酸1L中に投入し、室温で、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))製の羽根を使って60分間撹拌した。これにより、BaTiO3を一般式ABO3で表した場合におけるAサイトを構成するバリウム(Ba)が溶解して、Bサイトを構成するTiリッチのBaTiO3となる。」 エ 甲1-4(特開平11-335177号公報) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-4には、以下の記載がある。 「【請求項1】 ABO3で表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末において、前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面と粒子中心部とで前記ABO3のA元素とB元素の密度の比が異なり、表面が内部に比べてA元素の密度が小さいことを特徴とするセラミック粉末。 ・・・ 【請求項4】 前記請求項1~3の何れかのペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末を製造する方法であって、前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面を化学的にエッチングして同粒子表面の前記ABO3のA元素を除去することを特徴とするセラミック粉末の製造方法。 ・・・ 【請求項6】 化学的エッチングまた機械的な摩擦の前後におけるペロブスカイト型構造セラミック粒子の比表面積の変化率が1.5~3.0倍であることを特徴とする請求項4または5に記載のセラミック粉末の製造方法。」 「【0014】このようなペロブスカイト粒子を作製するために、一つには主原料表面を硝酸等でエッチングすることによって化学的な表面改質を行う。これにより主原料表面に微細な凹凸をつけることが出来、主原料表面を活性化させるため、添加物成分を前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面にコ-テイングする際、化学的な吸着だけではなく、物理的な吸着を促進し、コーティング後の機械的剥離強度を向上させることが出来る。」 「【0019】 【実施例】次に、本発明の実施例について、具体的数値をあげて詳細に説明する。 (実施例1)チタン酸バリウムを主原料としたB特性積層セラミックコンデンサによる実施例1とその比較例1について説明する。まず、主成分原料成分粉末として、純度99%以上のBaTiO3を用いた。この主原料成分粉末と3φジルコニアビーズとをボールミルに投入し、これに2.0wt%の硝酸塩水溶液を添加し、l0分間撹拌し、その後乾燥した。また比較例として、硝酸塩水溶液を添加せず、BaTiO3を純水でl0分間撹伴し、その後乾燥した。BaTiO3の撹拌前後の比表面積を表1に示す。これより硝酸エッチング処理した実施例1におけるBaTiO3比表面積は、処理する前の2.4倍になったことが分かる。他方、硝酸塩水溶液を添加せず、純水で分散した比較例1におけるBaTiO3の比表面積は、ほとんど変化していなかった。 ・・・ 【0021】硝酸でエッチング処理した実施例1におけるBaTiO3粒子では、その表面のA/B比が中心部のA/B比よりmol比で6/1000だけ小さい、すなわちそれだけ粒子表面におけるA元素の密度が粒子内部に比べて小さく、A元素が希薄となっていることが分かった。他方、硝酸でエッチング処理しなかった比較例1におけるBaTiO3粒子では、表面と中心部でA/B比の差は殆ど認められなかつた。撹拌前後の比表面積を表1に示す。」 オ 甲1-5(特開2005-89293号公報) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-5には、以下の記載がある。 「【請求項1】 A群元素としてMg、Ca、Sr、Ba及びPbから選ばれる少なくとも1種を有し、B群元素としてTi、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも1種を有し、一般式 ABO3 (式中、Aは少なくとも1種のA群元素を示し、Bは少なくとも1種のB群元素を示す。) で表されるペロブスカイト化合物の固着物を得る第一工程と、上記第一工程で得られたペロブスカイト化合物の固着物を溶媒中で30~500℃の範囲の温度で加熱して解砕する第二工程とを含むことを特徴とするペロブスカイト化合物粉体の製造方法。」 カ 甲1-6(特開2007-290944号公報) (ア)本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-6には、以下の記載がある。 「【請求項2】 前記チタン酸バリウムカルシウムが、一般式(Ba1-xCax)zTiO3(但し、0.999≦z≦1、0.05≦x≦0.14)で表される主結晶相からなる請求項1に記載のチタン酸バリウムカルシウム粉末。」 「【実施例1】 【0052】 まず、表1、2に示す組成になるように、BaCO3、CaCO3およびTiO2原料を分散剤、水とともに直径0.5mmのジルコニアボールを有するビーズミルを用いて混合し、得られたスラリーを乾燥後、メッシュパスを行い、550℃で分散剤の有機成分を除去し、混合粉末とした。この場合、組成はモル比で(Ba+Ca)/Ti=1とした。 【0053】 次に、上記混合粉末を表2に示す(b)の工程の圧力下で熱重量分析を行い、それぞれの分解曲線から熱分解開始温度と熱分解終了温度を確定し、表1に示す(b)の工程および(c)の工程の温度を決定した。(b)の工程での処理を終了した後、さらに、表1に示す(c)の工程の条件により加熱処理を行い、さらに解砕処理を行いチタン酸バリウム粉末を製造した。このときの昇温速度は熱重量分析、(b)の工程および(c)の工程ともに、100および300℃/hrとした。 【0054】 上記の製法により得られた粉末の平均粒径は4万から10万倍で撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めた。電子顕微鏡写真内の粉末を任意に100個以上を選択し、写真に映し出された各粉末について、コンピュータ処理により粉末の周囲を円とみたてて角度で2°毎に寸法を測定し、それらの平均値を求めた。また、X線回折により(111)面間隔を測定した。また、X線回折によりチタン酸バリウムカルシウム(BCT)の(110)ピーク強度に対するチタン酸カルシウムのピーク強度比を求めた。このピーク強度比はX線回折装置に備え付けのコンピュータ解析によって求めた。また、第1の工程で得た混合粉末を昇温速度が1800℃/hの条件で処理した粉末(試料No.20)についても上記と同じ測定し、比較例とした。図3は作製したサンプル粉末のX線回折パターン(x=0.1~0.2)である。 【表1】 [図:0001395217000007.jpg] 」 「【図3】 [図:0001395217000008.jpg] 」 (イ)甲1-6に記載された発明 上記(ア)の記載のうち、特に、請求項2及び【0054】の【表1】の記載に注目すると、甲1-6には、以下の発明が記載されていると認められる。 「一般式Ba1-xCaxTiO3(但し、0.02≦x≦0.1)で表される主結晶相からなるチタン酸バリウムカルシウム粉末。」(以下、「甲1-6発明」という。) キ 甲1-7(Preparation of (BaxSr1-x)TiO3 Particles by Vapor-Phase Hydrolysis of Precursors Formed from Alkoxide-Hydroxide, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.37, 1998, pp.5232-5236) (ア)本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-7には、以下の記載がある。なお、甲1-7の記載は、当審の訳文で示す。 「アルコキシド-水酸化物から調製した前駆体を用いた気相加水分解による(BaxSr1-x)TiO3粒子の調製」(5232ページ1~2行) 「 [図:0001395217000009.jpg] 図6 (Ba0.7Sr0.3)TiO3粉末のXRDパターン。(a)前駆体、(b)未焼成の加水分解粉末、(c)900℃焼成粉末」(5234ページ右欄) (イ)甲1-7に記載された発明 上記(ア)の記載によれば、甲1-7には、以下の発明が記載されていると認められる。 「(Ba0.7Sr0.3)TiO3粉末。」(以下、「甲1-7発明」という。) ク 甲1-8( [図:0001395217000010.jpg] ,Korean Journal of Materials Research, Vol.2, No.2, 1992, p.151-156) (ア)本件特許出願の優先日前に公知となった甲1-8には、以下の記載がある。なお、甲1-8の記載は、当審の訳文で示す。 「ゾルゲル法を用いた(Ba1-xSrx)TiO3粉末の合成」(151ページ1行) 「 [図:0001395217000011.jpg] 図3 700℃で1時間か焼した(Ba1-xSrx)TiO3粉末のX線回折パターン」(154ページ左欄) (イ)甲1-8に記載された発明 上記(ア)の記載によれば、甲1-8には、以下の発明が記載されていると認められる。 「(Ba1-xSrx)TiO3粉末(ただし、x=0.25)。」(以下、「甲1-8発明」という。) (3)申立理由1-1(新規性)、申立理由1-2(進歩性)について ア 甲1-1に記載された発明を主引用発明とした新規性・進歩性について (ア)本件発明1について a 対比 甲1-1方法発明と本件発明1とを対比する。 (a)甲1-1方法発明の「Ba/Tiの比が0.9945であるチタン酸バリウムカルシウム」は、Ba(1-x)AxTiO3(式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)と表すことができる。 したがって、甲1-1方法発明と本件発明1とは、下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)の点で一致する。 (b)甲2-1の【0014】(上記第4 2(1)ア参照)の記載によれば、チタン酸バリウムカルシウム粉末は、ペロブスカイト構造であるから、甲1-1方法発明の「チタン酸バリウムカルシウム粉末」も、ペロブスカイト構造である。 したがって、甲1-1方法発明の「チタン酸バリウムカルシウム粉末の製造方法」は、本件発明1の「ペロブスカイト型化合物を製造する方法」に相当する。 (c)甲1-1方法発明の「Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末を水熱合成法で製造するステップ」は、チタン酸バリウムのチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする工程といえるから、甲1-1方法発明と本件発明1とは、チタン酸バリウムのチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程を備えている点で共通する。 (d)甲1-1方法発明の「前記BaTiO3粉末(100mol)及びCa(NO3)2(1mol)を、水系分散剤を用いて水系に分散させて混合して、BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備するステップ」及び、「前記混合水溶液を乾燥」する工程は、本件発明1の「第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程」に相当する。 (e)甲1-1方法発明の「前記混合水溶液を乾燥して得た粉末をか焼してBaCaTiO3粉末に合成」する工程は、本件発明1の「第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程」に相当する。 (f)以上から、本件発明1と甲1-1方法発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)で表されるペロブスカイト型化合物を製造する方法であって、 該製造方法は、チタン酸バリウムのチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程、 第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程、及び、 第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を含むペロブスカイト型化合物の製造方法。」 <相違点> 相違点1-1-1:チタン酸バリウムのバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程について、本件発明1は、「チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満」としているのに対し、甲1-1方法発明は、「Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末を水熱合成法で製造」している点。 b 相違点1-1-1についての判断 甲1-3(上記(2)ウ)及び甲1-4(上記(2)エ)の記載によれば、チタン酸バリウムを酸で処理することによりチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることは、本件特許出願の優先日前に周知の技術であったといえる。 しかし、甲1-1方法発明では、「水熱合成法」により「Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末」が得られているから、甲1-1方法発明に、「酸で処理する」工程を追加することになる上記周知の技術を適用若しくは置換する動機付けはない。 また、甲1-2及び甲1-5には、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることは記載されていない。 したがって、本件発明1は、甲1-1方法発明及び甲1-2~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 c 申立人黒田の主張について (a)申立人黒田は、特許異議申立書の14ページ3~12行及び令和4年10月27日付け意見書の4ページ16行~5ページ3行において、本件発明1では、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満としているのに対し、甲1-1では、チタン酸バリウムを、Ca(NO3)2で処理して、チタン酸バリウムのBa/Tiのモル比を1.00未満(0.9975)としている点で相違するものの、甲1-1において、チタン酸バリウム粒子に接触させているCa(NO3)2は、水に溶解させると、pH4~6程度の酸性を示すことから(例えば、特開2008-150244号公報(参考文献4)の【0020】及び【0021】、安全データシートW01W0103-0073JGHEJP(参考文献5)の第3頁)、甲1-1では、水に添加する際には酸ではないが、水に添加することにより、酸を発生させることが記載されており、チタン酸バリウム粒子を水に分散させておき、水に添加することによって酸を発生するものを添加して、酸を水中で発生させて、その酸をチタン酸バリウム粒子に接触させることも、水にチタン酸バリウム粒子を分散させておき、それに酸を添加し、その酸をチタン酸バリウム粒子に接触させることも、いずれも酸による洗浄処理であるといえるから、甲1-1には、「チタン酸バリウムを酸で洗浄処理して」が記載されている旨主張している。 (b)ここで、申立人黒田の上記主張は、甲1-1方法発明の「前記BaTiO3粉末(100mol)及びCa(NO3)2(1mol)を、水系分散剤を用いて水系に分散させて混合して、BaTiO3粉末とCa塩の混合水溶液を準備するステップ」(以下、「Ca(NO3)2混合ステップ」という。)が、本件発明1の「チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程」に対応することを前提とするものである。 しかし、甲1-1方法発明は、Ca(NO3)2混合ステップの前に、「Ba/Tiの比が0.9975であるBaTiO3粉末を水熱合成法で製造するステップ」を有しており、上記a(c)での検討を参酌すると、当該ステップが、本件発明1の「第一工程」に対応するものであるから、甲1-1方法発明の「Ca(NO3)2混合ステップ」は、本件発明1の「第一工程」に対応するものではない。 したがって、申立人黒田の上記主張は前提において誤っているから採用できない。 (イ)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明2、3は、甲1方法発明及び甲1-2~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (ウ)本件発明4について a 対比 甲1-1物発明と本件発明4とを対比する (a)甲1-1物発明の「BaCaTiO3におけるBa/Tiの比が0.9945であるチタン酸バリウムカルシウム」は、Ba(1-x)AxTiO3(式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)と表すことができる。 したがって、甲1-1物発明と本件発明4とは、下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)の点で一致する。 (b)上記(ア)a(b)での検討を参酌すると、甲1-1物発明の「チタン酸バリウムカルシウム」は、ペロブスカイト化合物であるといえるから、甲1-1物発明と本件発明4とは、「ペロブスカイト型化合物」である点で共通する。 (c)以上から、本件発明4と甲1-1物発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCaを表す。xは、x=0.0055の数である。)で表されるペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点1-1-2:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲1-1物発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 相違点1-1-3:本件発明4は、「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」のに対し、甲1-1物発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み相違点1-1-3から検討する。 甲1-1には、相違点1-1-3に係る本件発明4の構成である「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」点について、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲1-1物発明が、相違点1-1-3に係る本件発明4の構成を備えていることは、本件特許出願の優先日において技術常識であるともいえない。 したがって、相違点1-1-3は実質的な相違点であるから、相違点1-1-2について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1-1物発明であるとはいえない。 c 申立人黒田の主張について 申立人黒田は、特許異議申立書の18ページ2行~19ページ下から4行において、甲1-1の図3a(実施例2)におけるチタン酸バリウムカルシウムの111面の2θのピーク値が、本件明細書等の図2(実施例1)及び図4(実施例5)の位置と一致していることを根拠として、甲1-1の実施例2で得られたチタン酸バリウムカルシウムは、相違点1-1-3に係る本件発明4の構成を満たしている旨主張している。 しかし、甲1-1の図3aからは、チタン酸バリウムカルシウムの111面の2θの値は正確に読み取れない。 したがって、甲1-1の実施例2で得られたチタン酸バリウムカルシウムの111面の2θの値は不明であるから、相違点1-1-3に係る本件発明4の構成を満たしているとはいえない。 よって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上のとおり、本件発明1~3は、甲1-1方法発明及び甲1-2~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 また、本件発明4は、甲1-1物発明ではない。 イ 甲1-2発明を主引用発明とした進歩性について (ア)本件発明1について a 対比 甲1-2発明と本件発明1とを対比する。 (a)甲1-2発明の「BaCaxTiO3(x=0.005~0.025)」と、本件発明1の「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)」とは、下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.005≦x≦0.025の数である。)の点で一致する。 (b)上記ア(ア)a(b)での検討を参酌すると、甲1-2発明の「チタン酸バリウムカルシウム粉末」は、ペロブスカイト化合物であるといえるから、甲1-2発明と本件発明1とは、「ペロブスカイト型化合物を製造する方法」である点で共通する。 (c)甲1-2発明の「熱合成法により製造したBaTiO3(100モル)とCa(NO3)水和物0.5~2.5モルを、分散剤を用いて水系に分散させた後、噴霧乾燥してCaが均一にコーティングされたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)粉末を得」ることは、本件発明1の「チタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程」に対応する。 (d)甲1-2発明の「この粉末をBox炉で熱処理し、CaがBaTiO3に固溶されたBaCaxTiO3(x=0.005~0.025)を得ること」は、本件発明1の「第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程」に対応する。 (e)以上から、本件発明1と甲1-2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCa又はSrを表す。xは、0.005≦x≦0.025の数である。)で表されるペロブスカイト型化合物を製造する方法であって、該製造方法は、チタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程、及び、第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を含むペロブスカイト型化合物の製造方法。」 <相違点> 相違点1-2-1:本件発明1は、「チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程」を含むのに対し、甲1-2発明は、そのような工程を含んでいない点。 相違点1-2-2:「チタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程」における「チタン酸バリウム」について、本件発明1は、「第一工程で得られたチタン酸バリウム」であるのに対し、甲1-2発明は、「水熱合成法により製造したBaTiO3」である点 b 相違点についての判断 まず、相違点1-2-1について検討する。 甲1-2には、「BaTiO3」のチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることは、記載も示唆もされていない。 そうすると、上記ア(ア)bで示したとおり、甲1-3及び甲1-4の記載から、チタン酸バリウムを酸で処理することによりチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることは、本件特許出願の優先日前に周知の技術であったとしても、甲1-2発明に、上記周知の技術を適用する動機付けはない。 また、甲1-5には、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることは記載されていない。 したがって、相違点1-2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-2発明及び甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明2、3は、甲1-2発明及び甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1~3は、甲1-2発明及び甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 甲1-6発明を主引用発明とした新規性について (ア)本件発明4について a 対比 甲1-6発明と本件発明4とを対比する。 (a)甲1-6発明の「一般式Ba1-xCaxTiO3(但し、0.02≦x≦0.1)」と、本件発明4の「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)」とは、下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.02≦x≦0.1の数である。)である点で一致する。 (b)上記ア(ア)a(b)の検討を参酌すると、甲1-6発明の「チタン酸バリウムカルシウム粉末」は、ペロブスカイト化合物であるといえるから、甲1-6発明と本件発明4とは、「ペロブスカイト型化合物」である点で共通する。 「一般式Ba1-xCaxTiO3(但し、0.02≦x≦0.1)で表される主結晶相からなるチタン酸バリウムカルシウム粉末。」 (c)以上から、本件発明4と甲1-6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「下記一般式(1): Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCaを表す。xは、0.02≦x≦0.1の数である。)で表されるペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点1-6-1:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」のに対し、甲1-6発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 相違点1-6-2:本件発明4は、「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」のに対し、甲1-6発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 b 相違点についての判断 事案に鑑み相違点1-6-2から検討する。 甲1-6には、相違点1-6-2に係る本件発明4の構成である「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」点について、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲1-6発明が、相違点1-6-2に係る本件発明4の構成を備えていることは、本件特許出願の優先日において技術常識であるともいえない。 したがって、相違点1-6-2は実質的な相違点であるから、相違点1-6-1について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1-6発明であるとはいえない。 c 申立人黒田の主張について 申立人黒田は、異議申立書の20ページ3行~21ページ最下行において、甲1-6の図1の111面のピーク位置が、本件明細書等の図2(実施例1)及び図4(実施例5)の位置と一致していることを根拠として、甲1-6の実施例で得られたチタン酸バリウムカルシウムは、相違点1-6-2に係る本件発明4の構成を満たしている旨主張している。 しかし、甲1-6の図1からは、チタン酸バリウムカルシウムは、その111面の2θの値は正確に読み取れない。 したがって、甲1-6の実施例で得られたチタン酸バリウムカルシウムの111面の2θの値は不明であるから、相違点1-6-2に係る本件発明4の構成を満たしているとはいえない。 よって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 (イ)小括 以上のとおり、本件発明4は、甲1-6発明ではない。 エ 甲1-7発明を主引用発明とした新規性について (ア)本件発明4について a 対比 甲1-7発明と本件発明4とを対比する。 (a)上記第4 3(2)ア(ア)bの検討を参酌すると、甲1-7発明の「(Ba0.7Sr0.3)TiO3粉末」は、ペロブスカイト化合物であるといえるから、甲1-7発明と本件発明4とは、「ペロブスカイト型化合物」である点で共通する。 (b)以上から、本件発明4と甲1-7発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「ペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点1-7-1:「ペロブスカイト型化合物」について、本件発明4は、「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され」るのに対し、甲1-7発明は、「(Ba0.7Sr0.3)TiO3」である点。 相違点1-7-2:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲1-7発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 相違点1-7-3:本件発明4は、「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」のに対し、甲1-7発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 b 相違点についての判断 まず、相違点1-7-1について検討する。 甲1-7は、「アルコキシド-水酸化物から調製した前駆体を用いた気相加水分解による(BaxSr1-x)TiO3粒子の調製」(上記(2)キ(ア)参照)に関する文献であって、SrをCaに置換することは、記載も示唆もされていないから、相違点1-7-1は実質的な相違点である。 したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明4は、甲1-7発明であるとはいえない。 (イ)小括 以上から、本件発明4は、甲1-7発明ではない。 オ 甲1-8発明を主引用発明とした新規性について (ア)本件発明4について a 対比 甲1-8発明と本件発明4とを対比する。 (a)上記第4 3(2)ア(ア)bの検討を参酌すると、甲1-8発明の「(Ba1-xSrx)TiO3粉末(ただし、x=0.25)。」は、ペロブスカイト化合物であるといえるから、甲1-8発明と本件発明4とは、「ペロブスカイト型化合物」である点で共通する。 (b)以上から、本件発明4と甲1-8発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「ペロブスカイト型化合物。」 <相違点> 相違点1-8-1:「ペロブスカイト型化合物」について、本件発明4は、「下記一般式(1):Ba(1-x)AxTiO3 (1)(式中、AはCaを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され」るのに対し、甲1-8発明は、「(Ba1-xSrx)Ti3粉末(ただし、x=0.25)」である点。 相違点1-8-2:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲1-8発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 相違点1-8-3:本件発明4は、「粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2):E+0.0031×D≧38.94 (2)を満たす」のに対し、甲1-8発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 b 相違点についての判断 まず、相違点1-8-1について検討する。 甲1-8は、「ゾルゲル法を用いた(BaxSr1-x)TiO3粉末の合成」(上記(2)ク(ア)参照)に関する文献であって、SrをCaに置換することは、記載も示唆もされていないから、相違点1-8-1は実質的な相違点である。 したがって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明4は、甲1-8発明であるとはいえない。 (イ)小括 以上から、本件発明4は、甲1-8発明ではない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~3は、甲1-1方法発明及び甲1-2~甲1-5に記載された発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲1-3~甲1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明4は、甲1-1物発明、甲1-6発明、甲1-7発明又は甲1-8発明ではない。 したがって、申立理由1-1及び申立理由1-2には理由がない。 (4)申立理由1-3(サポート要件)について ア 本件明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下、単に「発明の詳細な説明」及び「図面」という。)の記載 発明の詳細な説明及び図面には以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 近年、積層セラミックスコンデンサの薄層化に伴い、その電子材料であるチタン酸バリウムカルシウムにおいても微細化が求められている。しかしながら、カルシウムが均一に固溶したチタン酸バリウムカルシウムを得るには、高温の熱処理を必要とし、熱処理は粒子成長を促進するため、カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを得ることは困難であった。 【0005】 本発明は、上記現状に鑑み、カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを製造する方法を提供することを目的とする。」 「【発明を実施するための形態】 【0014】 以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。 【0015】 1.ペロブスカイト型化合物の製造方法 本発明のペロブスカイト型化合物の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)は、チタン酸バリウムを洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程、第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程、及び、第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を含むことを特徴とする。 第一工程でチタン酸バリウムを酸で洗浄してチタン酸バリウムからバリウム元素を溶出させてバリウム元素不足の状態とした後にカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥させて乾燥混合物とした後、熱処理することでカルシウム又はストロンチウムが固溶したペロブスカイト型化合物を微細な粒子として製造することができる。本発明の製造方法を用いることで、従来のチタン酸バリウムカルシウムの製造方法に比べてカルシウム又はストロンチウムの固溶量の多いペロブスカイト型化合物を製造することができる。 【0016】 上記第一工程では、チタン酸バリウムを洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることができればよく、それにより、カルシウムやストロンチウムが固溶したペロブスカイト型化合物を製造することができるが、後の工程において、チタン元素に対するバリウム元素とカルシウム元素の合計の比、またはチタン元素に対するバリウム元素とストロンチウム元素の合計の比が1.00以下となるように、固溶させるカルシウムやストロンチウム量に応じてチタン元素に対するバリウム元素の比を調整することが望ましい。 チタン元素に対するバリウム元素の比は、蛍光X線分析(XRF)により確認することができる。 【0017】 上記第一工程において行うチタン酸バリウムに対する酸による洗浄処理によって、チタン酸バリウムから効率的にバリウム元素を溶出させることができる。酸による洗浄処理は、チタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることができる処理であればよいが、スラリー状態のチタン酸バリウムを撹拌しながら、酸を添加して行うことが好ましい。 酸による処理に使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸であってもよく、酢酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸であってもよい。 なお、チタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする処理は水洗によって行うことも不可能ではないが、膨大な量の水を必要とするため現実的ではなく、酸を用いてバリウム元素を溶出させることが定量的であり、かつ工業的製造に適している。 ・・・ 【0019】 上記第一工程における酸処理の方法はチタン酸バリウムのチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることができる限り特に制限されないが、チタン酸バリウムに酸を添加したスラリーのpHが5~11となるようにして行うことが好ましい。また、スラリーのpHは、第一工程に原料として用いるチタン酸バリウムの比表面積やバリウム元素をカルシウム元素又はストロンチウム元素に置換する量に応じて上記pHの範囲内で適宜調整して行うことが好ましい。例えば、水熱合成で得られたBET比表面積が60~70m2/gのチタン酸バリウムをpH=6で酸処理した場合は、バリウム元素の比は約0.87~0.88となり、pH=9で処理した場合は約0.92~0.93となる。 ・・・ 【0022】 上記第一工程に原料として用いるチタン酸バリウムは特に制限されないが、BET比表面積が20~130m2/gであるものが好ましい。このようなBET比表面積を有する粒径の小さいチタン酸バリウムを用いることで、第一工程でより効率的にバリウム元素を溶出させることができ、また本発明の製造方法で得られるペロブスカイト型化合物をより粒径の小さいものとすることができる。第一工程に用いるチタン酸バリウムのBET比表面積は、より好ましくは、40~120m2/gであり、更に好ましくは、60~100m2/gである。また、原料として用いるチタン酸バリウムは、比表面積が大きいものほど、溶出されるバリウム元素が多くなることから、バリウム元素をカルシウム元素又はストロンチウム元素に置換する量に応じて上記比表面積の範囲内で適宜調整して行うことが好ましい。 また、第一工程で得られるチタン酸バリウムのBET比表面積も上記と同様であることが好ましい。 【0023】 上記第一工程に原料として用いるチタン酸バリウムの製造方法は特に制限されず、水熱法、固相法、ゾル-ゲル法、有機酸塩法、アルコキシド法等のいずれの方法であってもよいが、BET比表面積の大きいチタン酸バリウムを製造できる点で、水熱法が好ましい。比表面積の大きいチタン酸バリウムを原料に使用することで、上記第一工程において、より効果的にバリウム元素を溶出させることが可能となり、それに伴いカルシウム元素又はストロンチウム元素の置換量を高めることが可能になる。また、水熱法で得られたチタン酸バリウムは粒子表面に水酸基を多く含んでおり、表面近傍はバリウムが溶出しやすい状態であることも考えられ、この点からも上記第一工程で用いる原料としては好適であるといえる。 【0024】 上記第二工程は、第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る工程である。 チタン酸バリウムと混合するカルシウム塩、ストロンチウム塩は特に制限されず、カルシウムやストロンチウムの酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ヨウ化水素酸、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸などの有機酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。 ・・・ 【0027】 上記第二工程では、チタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩との混合物を第三工程で熱処理する前に乾燥させる。これにより組成の偏析を抑え、カルシウム元素やストロンチウム元素が均一に分布した前駆体を得ることができる。 混合物を乾燥させる方法は特に制限されないが、箱型乾燥機、流動層乾燥機、気流式乾燥機、噴霧乾燥機のいずれかを用いる方法が好ましい。 ・・・ 【0029】 上記第三工程は、第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する工程である。 第三工程において、チタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩との乾燥混合物を熱処理する際の温度は、500~1200℃であることが好ましい。より好ましくは、550~1000℃であり、更に好ましくは、600~900℃である。 また熱処理する時間は、0.5~12時間であることが好ましい。より好ましくは、1~10時間であり、更に好ましくは、2~8時間である。 熱処理する雰囲気は特に制限されず、空気下であってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であってもよい。 【0030】 本発明のペロブスカイト型化合物の製造方法は更に、第三工程で得られたペロブスカイト型化合物の凝集粒子を解粒する工程を含んでいてもよい。これにより、粒子同士の連結が少ないペロブスカイト型化合物を得ることができる。 第三工程で得られたペロブスカイト型化合物の凝集粒子を解粒する方法は特に制限されないが、第三工程で得られたペロブスカイト型化合物を溶媒中で30~500℃の温度で加熱する方法が好ましい。この方法を用いることで、ペロブスカイト型化合物の凝集粒子を十分に解粒し、粒子同士の連結が少なく、かつ、真球状に近い粒子の割合が多いペロブスカイト型化合物とすることができる。このような、第三工程で得られたペロブスカイト型化合物を溶媒中で30~500℃の温度で加熱してペロブスカイト型化合物の凝集粒子を解粒する第四工程を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。 ・・・ 【0036】 2.ペロブスカイト型化合物 従来のチタン酸バリウムカルシウムの製造方法では、固溶できるカルシウムの量が少なく、カルシウムを多量に使用すると生成物にチタン酸バリウムカルシウム以外のカルシウム塩が含まれることになる。一方、本発明のペロブスカイト型化合物の製造方法を用いると、チタン酸バリウム中に多量のカルシウムやストロンチウムを固溶させることができるため、カルシウムやストロンチウムの固溶量が少ないものから多いものまで、固溶量を調整して所望のペロブスカイト型化合物を製造することができる。このような本発明の製造方法で製造可能なペロブスカイト型化合物、すなわち、下記一般式(1) Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCa又はSrを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され、粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすことを特徴とするペロブスカイト型化合物もまた、本発明の1つである。 【0037】 本発明のペロブスカイト型化合物は、チタン酸バリウムのバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されることで、カルシウムもしくはストロンチウムがチタン酸バリウム中に固溶したものとなっている。チタン酸バリウムのバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換された場合、バリウムとカルシウムやストロンチウムとの元素のイオン半径の関係から置換後の化合物の方が結晶格子が小さくなるため、XRDプロファイルにおいてピークが高角側にシフトすることが知られている。一方で、未置換のチタン酸バリウムにおいても、粒子サイズが大きくなるに従い、ピーク位置が高角側にシフトする傾向がある。この明確な理由は定かでないが、粒成長が進むことで、格子内に取り込まれた水や水酸基の脱離が進み、格子が縮むことによるものと考えられる。 本発明者らは、粒子径(比表面積)の異なる未置換のチタン酸バリウムについて111面の2θ値Eの測定を行い、Eを縦軸、BET比表面積D(m2/g)を横軸にしたグラフ上にプロットしたところ、E=-0.0031×D+38.91の関係があることを見出した。したがって、本発明のペロブスカイト型化合物についてEとDとを測定した場合に、Eが-0.0031×D+38.91より大きい場合には、Eのピークシフトにはバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されたことによる寄与が含まれているといえる。このようなチタン酸バリウムの粒子サイズによるピークシフトとバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されることによるピークシフトの両方を考慮した解析は従来なされておらず、本発明者らが見出した手法である。 このことから、チタン酸バリウムのバリウムがカルシウム又はストロンチウムで置換されているかどうかは、未置換品の比表面積における2θ値よりも、本発明によるペロブスカイト型化合物の2θ値が高いかどうかで判断することができ、上記Eが-0.0031×D+38.91より大きいかどうかで判断できる。本発明のペロブスカイト型化合物の製造方法を用いると、Eが-0.0031×D+38.91より大きいというだけでなく、Eが38.94以上であるような、カルシウム又はストロンチウムによる置換量の多いペロブスカイト型化合物を製造することができる。そのようなカルシウム又はストロンチウムによる置換量の多いペロブスカイト型化合物が、上記式(2)を満たす本発明のペロブスカイト型化合物である。 上述した特許文献1に記載の製造方法で得られるチタン酸バリウムカルシウムは、比表面積が20m2/g以上の領域でXRDプロファイルのピークシフトが十分ではない。このため、カルシウムの固溶が不十分であり、積層セラミックコンデンサ等の用途において十分な性能が発揮されない可能性がある。また、従来技術の方法では、Eが38.94よりも大きく、上記式(2)を満たすようなペロブスカイト型化合物は製造できていない。 一方、本発明の製造方法で合成されたチタン酸バリウムカルシウムはチタン元素に対するカルシウム元素の量が0.01モル以下の領域でもEが38.94以上となり、十分にCa元素が置換されたものである。これは、Ca元素の量が極めて少ない領域であっても、従来技術よりも十分に置換がなされていることを示唆しており、積層セラミックコンデンサの信頼性を大幅に向上できる可能性があると考えられる。 ・・・ 【0040】 本発明のペロブスカイト型化合物は、BET比表面積が8~70m2/gであることが好ましい。このようなBET比表面積を有する、粒径の小さい粒子であると、積層セラミックスコンデンサ等の電子材料用途により適したものとなる。また、分散工程において再凝集成分を少なくし、易分散化する上では、BET比表面積が小さいものの方が好適である。ペロブスカイト型化合物のBET比表面積は、より好ましくは、15~65m2/gであり、更に好ましくは、20~60m2/gである。 ・・・ 【0043】 本発明のペロブスカイト型化合物の製造方法は、カルシウムの固溶量の多く、かつ微細な粒子状のチタン酸バリウムカルシウムを製造することができる方法であり、そのような本発明の製造方法で得られる、本発明のペロブスカイト型化合物の1種であるチタン酸バリウムカルシウムは、積層セラミックコンデンサ等の電子材料用途に好適に用いることができる。」 「【実施例】 【0044】 本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。 【0045】 実施例1 (チタン酸バリウム原料の製造) 5L容量の反応容器に純水326mLと水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)545gを入れ、100℃に加熱し、水酸化バリウム八水和物を水に溶解させて、水酸化バリウム水溶液を調製した。 水酸化チタンの水スラリー(堺化学工業社製、酸化チタンとして110g/L)540mLを温度100℃に保ちながら、同じく、温度を100℃に保った上記水酸化バリウム水溶液に1時間かけて加えた後、温度100℃で2時間反応させて、BaTiO3換算で0.68モル/L濃度のチタン酸バリウム前駆体水スラリーを得た。水酸化バリウム水溶液に含水酸化チタンの水スラリーを加え終わった時点でのBa/Tiモル比は2.2であった。 上記チタン酸バリウム前駆体水スラリーをオートクレーブ容器に入れ、110℃で2時間水熱処理した。オートクレーブ内容物を室温まで放冷し、チタン酸バリウム原料スラリーを得た。 (第一工程) 上記チタン酸バリウム原料スラリーを撹拌機で撹拌しながら、濃度20%の硝酸水溶液を滴下し、スラリーpHが6.0になるように調整し、pHを30分間維持させた。この後、スラリーを濾過水洗し、ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで洗浄を行い、水洗後ケーキを得た。上記水洗後ケーキに純水を加えて、撹拌機で撹拌した後、固形分濃度が100g/Lになるように更に純水を加え、水洗後チタン酸バリウム原体スラリーを得た。上記で得られたスラリーから、一部サンプリングを行い、130℃の乾燥機で乾燥させた後、XRF分析にてBa/Ti比を求めたところ、0.870であった。また、BET法による比表面積は68.2m2/gであった。 (第二工程) 上記水洗後チタン酸バリウム原体スラリー100mLに酢酸カルシウム1水和物(関東化学社製)0.98gを入れて撹拌機で撹拌した後、130℃の箱型乾燥機に2時間入れて乾燥させ、乳鉢等で解砕することで、チタン酸バリウムカルシウム前駆体粉末を得た。 (第三工程) 上記チタン酸バリウムカルシウム前駆体粉末10gをアルミナ製ルツボに入れて、大気焼成炉にて800℃で2時間熱処理させることでチタン酸バリウムカルシウム固着物を得た。 (第四工程) 上記で得られたチタン酸バリウムカルシウム固着物7gをオートクレーブ容器に入れ、純水10gと10%水酸化ナトリウム水溶液を2g加えた後、160℃で24時間水熱処理した。オートクレーブ内容物を室温まで放冷し、回収したスラリーを濾過水洗し、ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで洗浄を行った後、110℃の箱型乾燥機で6時間乾燥させた。乾燥後の固着物を乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0046】 実施例2 実施例1において、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて700℃で2時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0047】 実施例3 実施例1において、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて600℃で2時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0048】 実施例4 実施例1において、チタン酸バリウム原料の製造におけるチタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理温度を100℃とし、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を1.51gとしたこと以外は、実施例1と同様にして第三工程までのチタン酸バリウムカルシウム固着物を得た。このとき、水洗後チタン酸バリウム原体のBa/Ti比は0.671であり、比表面積は119m2/gであった。 上記で得られたチタン酸バリウムカルシウム固着物7gを乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0049】 実施例5 実施例4において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を1.89gとしたこと以外は、実施例4と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0050】 実施例6 実施例5において、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて700℃で2時間としたこと以外は、実施例5と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0051】 実施例7 実施例5において、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて600℃で2時間としたこと以外は、実施例5と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0052】 実施例8 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.15gとしたことと、乾燥装置を噴霧式乾燥機にしたこと、第四工程での水酸化ナトリウムの添加の代わりに水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)1.29gを添加したこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0053】 実施例9 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.38gとし、乾燥装置を噴霧式乾燥機にし、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて700℃で2時間としたことと、第四工程での水酸化ナトリウムの添加の代わりに水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)0.99gを添加したこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0054】 実施例10 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.23gとし、乾燥装置を噴霧式乾燥機にし、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて600℃で2時間としたことと、第四工程での水酸化ナトリウムの添加の代わりに水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)1.19gを添加したこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0055】 実施例11 実施例9において、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて900℃で2時間としたこと以外は、実施例9と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0056】 実施例12 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.08gとし、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて700℃で2時間としたことと、第四工程での水酸化ナトリウムの添加の代わりに水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)1.39gを添加したこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0057】 実施例13 実施例8において、第一工程でのスラリーpHを9.0としたことと、第二工程での乾燥方法を、130℃の箱型乾燥機に2時間入れて乾燥させたことと、第四工程での水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)の添加量を0.71gとしたこと以外は、実施例8と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0058】 実施例14 実施例1において、チタン酸バリウム原料の製造におけるチタン酸バリウム前駆体水スラリーの水熱処理の温度及び時間を190℃、1時間とし、第一工程でのスラリーpHを5.0としたことと、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.38gとし、第三工程での熱処理を、大気焼成炉にて600℃で2時間とし、第四工程での水酸化ナトリウムの添加の代わりに水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)0.28gを添加したこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0059】 実施例15 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加に代えて酢酸ストロンチウム0.5水和物を0.92g添加したこと以外は、実施例1と同様にして第三工程までを行い、チタン酸バリウムストロンチウム固着物を得た。 上記で得られたチタン酸バリウムストロンチウム固着物7gを乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムストロンチウム粉末を得た。 【0060】 実施例16 実施例1において、第二工程での酢酸カルシウム1水和物の添加に代えて酢酸ストロンチウム0.5水和物を0.46g添加したこと以外は、実施例1と同様にして第三工程までを行い、チタン酸バリウムストロンチウム固着物を得た。 上記で得られたチタン酸バリウムストロンチウム固着物7gを乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムストロンチウム粉末を得た。 【0061】 比較例1 実施例1において、第一工程での硝酸添加及びpH調整を省略したことと、第二工程の酢酸カルシウム1水和物の添加量を1.51gとしたこと以外は、実施例1と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。このとき、水洗後チタン酸バリウム原体のBa/Ti比は1.000であり、比表面積は50m2/gであった。 【0062】 比較例2 実施例1において、第一工程での硝酸添加及びpH調整を省略したことと、第二工程の酢酸カルシウム1水和物の添加量を1.51gとしたこと以外は、実施例1と同様にして第三工程までのチタン酸バリウムカルシウム固着物を得た。このとき、水洗後チタン酸バリウム原体のBa/Ti比は1.000であり、比表面積は50m2/gであった。 上記で得られたチタン酸バリウムカルシウム固着物7gを乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0063】 比較例3 比較例2において、第二工程の酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.38gとし、第三工程で、大気焼成炉にて700℃で2時間熱処理したこと以外は、比較例2と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0064】 比較例4 5L容量の反応容器に純水531mLと水酸化バリウム八水和物(堺化学工業社製)242.7gを入れ、100℃に加熱し、水酸化バリウム八水和物を水に溶解させて、水酸化バリウム水溶液を調製した。この時の溶液pHは13.5以上であった。 水酸化チタンの水スラリー(堺化学工業社製、酸化チタンとして110g/L)を温度100℃に保ちながら、同じく、温度を100℃に保った上記水酸化バリウム水溶液に1時間で加えた後、温度100℃で2時間維持した。 次に、反応液に水酸化カルシウム(和光純薬工業社製:試薬特級)1.11gと、48%水酸化ナトリウム水溶液50mLを投入し、そのまま撹拌しながら温度100℃を4時間維持した。 この時の水酸化バリウムと水酸化カルシウムのモル比は0.97:0.03であり、水酸化バリウムと水酸化カルシウムの合計モル量と酸化チタンのモル比は1.01であった。 その後、反応液をろ過して得られたケーキを、110℃の乾燥機で6時間乾燥させた。乾燥後の固着物を乳鉢で解砕することでチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0065】 比較例5 比較例4において、温度100℃を4時間維持した後のスラリーをオートクレーブ容器に入れ、160℃で24時間水熱処理させる工程を追加したことと、乾燥後の固着物を大気焼成炉にて300℃で2時間熱処理させる工程及び熱処理後の固着物を乳鉢で解砕する工程を追加したこと以外は、比較例4と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0066】比較例6 比較例5において、熱処理を大気焼成炉にて900℃で2時間としたこと以外は、比較例5と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0067】比較例7 比較例4において、純水量を550mL、水酸化バリウム量を198.1g、水酸化カルシウム量を11.11gとしたこと以外は、比較例4と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。上記条件において、温度100℃で反応した時の水酸化バリウムと水酸化カルシウムのモル比は0.69:0.31であり、水酸化バリウムと水酸化カルシウムの合計モル量と酸化チタンのモル比は1.01であった。 【0068】 比較例8 比較例7において、温度100℃を4時間維持した後のスラリーをオートクレーブ容器に入れ、160℃で24時間水熱処理させる工程を追加したことと、乾燥後の固着物を大気焼成炉にて300℃で2時間熱処理させる工程及び熱処理後の固着物を乳鉢で解砕する工程を追加したこと以外は、比較例7と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0069】 比較例9 比較例8において、熱処理を大気焼成炉にて900℃で2時間としたこと以外は、比較例8と同様にしてチタン酸バリウムカルシウム粉末を得た。 【0070】 上記実施例及び比較例で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末及びチタン酸バリウムストロンチウム粉末について、以下の方法により、組成分析、結晶構造の確認を行った。 また、チタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウムカルシウム粉末及びチタン酸バリウムストロンチウム粉末の比表面積測定を行った。 (組成分析) 蛍光X線分析装置((株)リガク製ZSX PrimusII、検量線法)を用いて、その組成分析(Ca/Ti、Ca/(Ba+Ca)、(Ba+Ca)/Ti)を行った。 (結晶構造) 粉末X線回折装置((株)リガク製RINT-TTR III、線源CuKα)を用いて、その結晶構造を確認した。 (比表面積) チタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウムカルシウム粉末及びチタン酸バリウムストロンチウム粉末の比表面積は、全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製HM model-1220)を用いて、205℃で30分脱気した後、BET1点法で測定した。 【0071】 上記実施例1~16及び比較例1~3における各工程条件を表1に、比較例4~9における各工程条件を表2に、得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末及びチタン酸バリウムストロンチウムの物性を表3に示す。また、上記第四工程を行った実施例1、8~14及び比較例1、3、5、6で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末の最大長さ(絶対最大長)の平均値と円相当径の平均値との比(絶対最大長/円相当径)に係る物性値(変動係数等)を表4に示す。チタン酸バリウムカルシウム粉末の最大長さ、円相当径、変動係数はそれぞれ以下の方法により得た。 (最大長さ、円相当径) 5万倍の倍率で撮影したチタン酸バリウムカルシウム粉末のSEM像から画像解析ソフト(WinROOF2015(三谷商事株式会社製))により測定した。 (変動係数) 上記方法で測定した200~300個のペロブスカイト型化合物粒子の絶対最大長/円相当径の標準偏差から絶対最大長/円相当径の平均値を除することにより得た。 【0072】 更に、図1に、実施例1~14及び比較例1~9で得られたチタン酸バリウムカルシウムのCa/Ti比とE+0.0031×Dの値の関係を示す。図2~4に実施例1、3、5で得られたチタン酸バリウムカルシウムの、図5~7に比較例7~9で得られたチタン酸バリウムカルシウムの、図8に実施例15で得られたチタン酸バリウムストロンチウムのXRDチャート図を示す。図9に実施例8~10で得られたチタン酸バリウムカルシウムのSEM像を示す。図10及び表5に実施例1で得られたチタン酸バリウムカルシウムにおけるTEM-EDS分析の結果を示す。 【0073】 【表1】 [図:0001395217000012.jpg] 【表2】 [図:0001395217000013.jpg] 【0075】 【表3】 [図:0001395217000014.jpg] 【0076】 表3に示したとおり、実施例1~14で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末は全て上記式(2)を満たしている。また図1から、Ca/Ti比に応じて、E+0.0031×D値が大きくなることが分かる。一方で、第一工程の酸処理を行っていない比較例1~3で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末においては、Eが-0.0031×D+38.91値よりも大きいものの、上記式(2)を満たしておらず、カルシウムイオンは置換されているが、その置換される度合いが低いことが示唆される。 このことから、第一工程の酸処理を行うことにより、十分にCaが置換されたチタン酸バリウムカルシウムを合成できるといえる。 同様に、実施例15、16で得られたチタン酸バリウムストロンチウム粉末についても上記式(2)を満たしている。このことから、第一工程の酸処理を行うことにより、十分にSrが置換されたチタン酸バリウムストロンチウムを合成できるといえる。 【0077】 表3に示したとおり、従来から知られる湿式反応と熱処理反応を併用した製造方法によってチタン酸バリウムカルシウムを製造した比較例4~9では、BET比表面積が7.0~65.6m2/gのチタン酸バリウムカルシウムが得られた。中でも熱処理をしていない比較例4及び比較例7(表2参照)については、BET比表面積が50m2/g以上となり、非常に微細な粒子が合成できている。しかし、比較例4及び比較例7ではEが-0.0031×D+38.91値を上回っていないことから、カルシウムイオンは置換されていないと考えられる。また、熱処理をしている比較例5、6、8、9(表2参照)においては、Eが-0.0031×D+38.91値を上回っているが、上記式(2)を満たしておらず、カルシウムイオンは置換されているが、その置換される度合いが低いことが示唆される。 表3からわかるとおり、比較例においては、Ca/Ti比が増えてもE+0.0031×D値が38.94を超えることはなかった。 【0078】 図2~4に示したとおり、実施例1、3、5については、全てチタン酸バリウムカルシウム単相となっている。一方、図5~7に示したとおり、比較例7~9については、チタン酸カルシウム相も確認されており、混相となっている。また、図8に示したとおり、実施例15については、チタン酸バリウムストロンチウム単相となっている。 【0079】 【表4】 [図:0001395217000015.jpg] 【0080】 表4に示したとおり、比較例1、3、5、6においては、絶対最大長/円相当径の最大値が1.5を超え、変動係数も0.08以上であった。一方、実施例1、8~14においては、絶対最大長/円相当径の最大値がいずれも1.5以下、かつ変動係数も0.06以下であり、粒子の独立性が高いことが示唆される。実施例8~10の粒子の状態は図9に示したとおりである。また、比較例1に対して、実施例1で得られたチタン酸バリウムカルシウムは、BET比表面積が大きくなっており、この結果から第一工程の酸処理を行うことで、その後の熱処理工程での粒子成長の抑制効果が示唆される。 【0081】 また実施例1で得られたチタン酸バリウムカルシウムの図10の領域01、02、03の各点において、それぞれCa、Ba、Tiの組成比を分析した結果を表5に示す。 【0082】 【表5】 [図:0001395217000016.jpg] 【0083】 表5に示したとおり、粒子の内部と外部でほぼ同量のカルシウムイオンが検出されており、カルシウムイオンが粒子表面のみでなく、粒子内部まで存在していることが示唆される。 以上の結果から、本発明の製造方法を行うことで、カルシウムが均一かつ十分に固溶した微細な粒子のチタン酸バリウムを製造することができることが確認された。」 「【図1】 [図:0001395217000017.jpg] 【図2】 [図:0001395217000018.jpg] 【図3】 [図:0001395217000019.jpg] 【図4】 [図:0001395217000020.jpg] 【図5】 [図:0001395217000021.jpg] 【図6】 [図:0001395217000022.jpg] 【図7】 [図:0001395217000023.jpg] 【図8】 [図:0001395217000024.jpg] 」 イ 本件発明が解決しようとする課題 発明の詳細な説明の【0004】、【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを得ること」、及び、「カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを製造する方法を提供すること」である(以下、「本件課題」という。)。 ウ 特許請求の範囲の記載(本件発明)と発明の詳細な説明の記載との対比 (ア)発明の詳細な説明において、【発明を実施するための形態】の【0015】には、チタン酸バリウムを洗浄処理してチタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とする第一工程、第一工程で得られたチタン酸バリウムとカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥して乾燥混合物を得る第二工程、及び、第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を含むペロブスカイト型化合物の製造方法が記載されている。 そして、同段落には、第一工程でチタン酸バリウムを酸で洗浄してチタン酸バリウムからバリウム元素を溶出させてバリウム元素不足の状態とした後にカルシウム塩又はストロンチウム塩とを混合し、乾燥させて乾燥混合物とした後、熱処理することでカルシウム又はストロンチウムが固溶したペロブスカイト型化合物を微細な粒子として製造することができること、及び、上記ペロブスカイト型化合物の製造方法を用いることで、従来のチタン酸バリウムカルシウムの製造方法に比べてカルシウム又はストロンチウムの固溶量の多いペロブスカイト型化合物を製造することができることが記載されている。 (イ)また、同【0036】には、上記ペロブスカイト型化合物の製造方法で製造可能なペロブスカイト型化合物、すなわち、下記一般式(1) Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCa又はSrを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され、粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすペロブスカイト型化合物が記載されており、同【0040】には、ペロブスカイト型化合物は、BET比表面積が8~70m2/gであることが好ましく、より好ましくは、15~65m2/gであり、更に好ましくは、20~60m2/gであることが記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明には、下記一般式(1) Ba(1-x)AxTiO3 (1) (式中、AはCa又はSrを表す。xは、0.00<x≦0.30の数である。)で表され、BET比表面積が20~70m2/gであり、粉末X線回折による結晶相解析において111面の2θ値をEとし、BET比表面積をD(m2/g)とした場合に下記式(2): E+0.0031×D≧38.94 (2) を満たすペロブスカイト型化合物が記載されているといえる。 そして、同【0037】には、 ・上記ペロブスカイト型化合物は、チタン酸バリウムのバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されることで、カルシウムもしくはストロンチウムがチタン酸バリウム中に固溶したものとなっていること ・チタン酸バリウムのバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換された場合、バリウムとカルシウムやストロンチウムとの元素のイオン半径の関係から置換後の化合物の方が結晶格子が小さくなるため、XRDプロファイルにおいてピークが高角側にシフトすることが知られていること ・一方で、未置換のチタン酸バリウムにおいても、粒子サイズが大きくなるに従い、ピーク位置が高角側にシフトする傾向がある。この明確な理由は定かでないが、粒成長が進むことで、格子内に取り込まれた水や水酸基の脱離が進み、格子が縮むことによるものと考えられること ・本発明者らは、粒子径(比表面積)の異なる未置換のチタン酸バリウムについて111面の2θ値Eの測定を行い、Eを縦軸、BET比表面積D(m2/g)を横軸にしたグラフ上にプロットしたところ、E=-0.0031×D+38.91の関係があることを見出したこと、 ・したがって、上記ペロブスカイト型化合物についてEとDとを測定した場合に、Eが-0.0031×D+38.91より大きい場合には、Eのピークシフトにはバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されたことによる寄与が含まれているといえること ・このようなチタン酸バリウムの粒子サイズによるピークシフトとバリウムサイトがカルシウムもしくはストロンチウムに置換されることによるピークシフトの両方を考慮した解析は従来なされておらず、本発明者らが見出した手法であること ・このことから、チタン酸バリウムのバリウムがカルシウム又はストロンチウムで置換されているかどうかは、未置換品の比表面積における2θ値よりも、本発明によるペロブスカイト型化合物の2θ値が高いかどうかで判断することができ、上記Eが-0.0031×D+38.91より大きいかどうかで判断できること、 ・上記ペロブスカイト型化合物の製造方法を用いると、Eが-0.0031×D+38.91より大きいというだけでなく、Eが38.94以上であるような、カルシウム又はストロンチウムによる置換量の多いペロブスカイト型化合物を製造することができること ・そのようなカルシウム又はストロンチウムによる置換量の多いペロブスカイト型化合物が、上記式(2)を満たす上記ペロブスカイト型化合物であること が記載されている。 (ウ)次に、発明の詳細な説明の【実施例】(【0044】~【0083】)には、 ・上記ペロブスカイト型化合物の製造方法で製造した実施例1~14で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末は全て上記式(2)を満たしていること(【0075】【表3】、【0076】) ・第一工程の酸処理を行っていない比較例1~3で得られたチタン酸バリウムカルシウム粉末においては、Eが-0.0031×D+38.91値よりも大きいものの、上記式(2)を満たしておらず、カルシウムイオンは置換されているが、その置換される度合いが低いことが示唆されること(【0075】【表3】、【0076】) ・以上から、第一工程の酸処理を行うことにより、十分にCaが置換されたチタン酸バリウムカルシウムを合成できるといえること(【0075】【表3】、【0076】) ・従来から知られる湿式反応と熱処理反応を併用した製造方法によってチタン酸バリウムカルシウムを製造した比較例4~9においては、Ca/Ti比が増えてもE+0.0031×D値が38.94を超えることはなかったこと(【0075】【表3】、【0077】) ・実施例1、3、5については、全てチタン酸バリウムカルシウム単相となっている。一方、図5~7に示したとおり、比較例7~9については、チタン酸カルシウム相も確認されており、混相となっていること(【0078】、【図2】~【図4】) ・比較例1に対して、実施例1で得られたチタン酸バリウムカルシウムは、BET比表面積が大きくなっており、この結果から第一工程の酸処理を行うことで、その後の熱処理工程での粒子成長の抑制効果が示唆されること(【0079】【表4】、【0080】) ・実施例1で得られたチタン酸バリウムカルシウムでは、粒子の内部と外部でほぼ同量のカルシウムイオンが検出されており、カルシウムイオンが粒子表面のみでなく、粒子内部まで存在していることが示唆されること(【0081】、【0082】【表5】、【0083】) が記載されている。 (エ)以上によれば、上記(ア)におけるペロブスカイト型化合物の製造方法に関する記載、及び、上記(イ)におけるペロブスカイト型化合物の記載は、上記(ウ)における実施例において裏付けられているといえる。 (オ)上記ウ(ア)におけるペロブスカイト型化合物の製造方法、及び、上記ウ(イ)におけるペロブスカイト型化合物と、本件発明1及び4とは、同様の構成を有するものであるから、本件発明1及び4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 そして、上記ウ(ア)によれば、上記ペロブスカイト型化合物の製造方法は、カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを製造できるといえ、また、上記ウ(イ)によれば、上記ペロブスカイト型化合物は、カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムであるといえる。 したがって、本件発明1は、「カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを製造する方法を提供すること」という上記本件課題を解決し得るものであることが理解でき、また、本件発明4は、「カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムカルシウムを得ること」という上記本件課題を解決し得るものであることが理解できる。 以上によれば、本件発明1及び4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (カ)発明の詳細な説明の【発明を実施するための形態】の【0022】、【0030】には、本件発明2、3と同様の構成が記載されているから、本件発明2、3は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、本件発明2、3は、いずれも本件発明1の構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 エ 申立人黒田の主張について 申立人黒田は、特許異議申立書の25ページ5行~27ページ下から8行において、本件明細書の記載及び技術常識によれば、水熱法により得られたチタン酸バリウムを原料として用い、所定のpHの元、濃度20%の硝酸水溶液により酸処理を行う第一工程、第一工程で得られたチタン酸バリウムと酢酸カルシウム1水和物又は酢酸ストロンチウム0.5水和物とを混合し乾燥する第二工程、及び第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を行うことが、課題を解決するための手段として必須となる事項の一つであると認められ、これらの事項が特定されていない本件特許の請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張している。 しかし、上記アにおける発明の詳細な説明の【0016】、【0017】、【0019】、【0023】の記載によれば、第一工程では、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理して、チタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることができれば良く、原料であるチタン酸バリウムを得る方法、酸のpH、濃度及び種類は、いずれも任意のものであることが理解できる。 また、同【0024】の記載によれば、第二工程では、第一工程で得られたチタン酸バリウムと混合するカルシウム塩、ストロンチウム塩は、特に制限されるものではなく、いずれも任意のものであることが理解できる。 したがって、水熱法により得られたチタン酸バリウムを原料として用い、所定のpHの元、濃度20%の硝酸水溶液により酸処理を行う第一工程、第一工程で得られたチタン酸バリウムと酢酸カルシウム1水和物又は酢酸ストロンチウム0.5水和物とを混合し乾燥する第二工程、及び第二工程で得られた乾燥混合物を熱処理する第三工程を行うことが、課題を解決するための手段として必須となる事項であるとはいえない。 そして、本件発明が、上記本件課題を解決し得ると認識できるものであることは、上記イ、ウで検討したとおりである。 よって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 キ 小括 以上から、本件発明1~4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細に記載されたものである。 したがって、申立理由1-3には理由がない。 (5)申立理由1-4(実施可能要件)について ア 上記(4)アの発明の詳細な説明及び図面の記載には、方法の発明である本件発明1~3について、その方法を使用できるように、具体的に記載されており、また、物の発明である本件発明4について、その物を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されているといえる。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 申立人黒田の主張について 申立人黒田は、特許異議申立書の27ページ下から6行~29ページ最下行において、「水熱法により得られたチタン酸バリウムを原料として用いること」、「所定のpHの元、濃度20%の硝酸水溶液により酸処理を行うこと」、「チタン酸バリウムと酢酸カルシウム1水和物又は酢酸ストロンチウム0.5水和物とを混合し乾燥すること」が特定されていない本件発明に関し、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨主張している。 しかし、上記(4)エで検討したとおり、発明の詳細な説明の記載によれば、第一工程では、チタン酸バリウムを酸で洗浄処理して、チタン元素に対するバリウム元素の比を1.00未満とすることができれば良く、原料であるチタン酸バリウムを得る方法、酸のpH、濃度及び種類は、いずれも任意のものであることが理解でき、また、第二工程では、第一工程で得られたチタン酸バリウムと混合するカルシウム塩、ストロンチウム塩は、特に制限されるものではなく、いずれも任意のものであることが理解できる。 そして、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであることは、上記アで検討したとおりである。 したがって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上から、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、申立理由1-4には理由がない。 2 申立人金田の申立理由について (1)申立人金田の申立理由2-1(進歩性) 本件発明4は、甲2-1~甲2-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲2-1:特開2007-290944号公報 甲2-2:特開平4-16513号公報 甲2-3:特許第4438495号明細書 甲2-4:特許第4743481号明細書 甲2-5:特開2019-119630号公報 (2)甲2-1発明 甲2-1発明は、上記第4 2(1)イ(ウ)で認定したとおりのものである。 (3)甲号証の記載 ア 甲2-1(特開2007-290944号公報)、甲2-2(特開平4-16513号公報) 甲2-1、甲2-2には、それぞれ上記第4 2(1)ア、第4 2(2)アで摘記したとおりの記載がある。 イ 甲2-3(特許第4438495号明細書) 甲2-3には、上記第4 2(3)で摘記した記載に加えて以下の記載がある。 「【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明のチタン酸バリウム粉末は、ペロブスカイト構造のa軸とc軸の長さ比c/aが1.008以上であり、粉末のBET比表面積から算出されるBET比表面積相当径で平均粒径を除した値(以下、「BET径比」ということがある。)が1以上1.5以下である。ここで、BET比表面積はBET1点法により測定することができ、平均粒径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置等により測定することができる。そして、BET径比の値は、粉末を構成する粒子が完全に均一な粒径の球形であった場合に理論上1となり、粒子同士の凝集が多くなると大きくなる。また、c/aの値は結晶性が高い(結晶に欠陥が少ない)ほど高くなる。このようなc/aが1.008以上であり、かつBET径比が1.5以下の場合に、チタン酸バリウム粉末は低温での焼結性に優れる粉末となることを本発明者らは見出したのである。BET径比は1.3以下が好ましく、1.2以下がさらに好ましい。また、低温焼結性に優れる粉末となるので、c/aの値は、1.0090以上が好ましく、1.0095以上がさらに好ましい。なお、c/aの上限は1.011程度である。」 「【実施例】 【0026】 以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。 以下の実施例においては、焼成は2回行った。1回目の焼成は、200℃以上でチタン酸バリウムが生成する温度未満の温度範囲において、ハロゲンを含有する雰囲気にチタン化合物とバリウム化合物を含む混合物を曝露し、その後加熱を続け、チタン酸バリウムが生成する温度以上においては、空気中で該混合物を加熱して行った。焼成した後に得られた粉末を水洗し、さらに空気中で800℃以上1100℃以下の範囲の温度で保持して2回目の焼成を行った。 1.平均粒子径の測定 平均粒子径は、粉末を0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に分散させ、超音波処理を実施した後に、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(英国マルバーン社製、マスターサイザー2000型)を用いて測定した。 【0027】 2.BET比表面積、BET比表面積相当径の測定 粉末のBET比表面積は、BET1点法によるBET比表面積測定装置(島津製作所製、フローソーブII2300型)により測定した。BET比表面積相当径は、得られたBET比表面積の値から、6÷(チタン酸バリウムの理論密度(g/cm3))÷(BET比表面積(m2/g))により算出したBET比表面積相当径(μm)を用いた。なおチタン酸バリウムの理論密度は正方晶の6.02g/cm3を用いた。」 ウ 甲2-4(特許第4743481号明細書) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲2-4には、以下の記載がある。 「【請求項2】 次式(1) 【数1】 D1=6/ρS (1) (式中、ρは粒子の密度であり、SはBET法で求めた粒子の比表面積である。)により球に換算して求めたチタン含有ペロブスカイト型化合物の一次粒径(D1)が、原料酸化チタンの一次粒径の50~200%である請求項1に記載のチタン含有ペロブスカイト型化合物の製造方法。」 「【0021】 従って、本発明の実施態様の一つであるチタン含有ペロブスカイト型化合物は湿式合成法により得られ、好ましくは該粒子が強誘電性を示すという特徴を有する。また、本発明の実施態様の一つであるチタン含有ペロブスカイト型化合物は微粉末状であり、原料の酸化チタンの一次粒径とほぼ同等の微細な粒子であるという特徴を有する。具体的には、得られたチタン含有ペロブスカイト型化合物の一次粒径が、下記式 【数3】 D1=6/ρS (1) (式中、ρは粒子の密度であり、SはBET法で求めた粒子の比表面積である。)により球に換算して求めた比表面積球相当径において、原料酸化チタン一次粒径の50~200%、好ましくは60~135%、さらに好ましくは70~120%であることを特徴とする。原料と製品とで一次粒径がほぼ同等であるため、材料設計が容易であり、また、チタン含有ペロブスカイト型化合物中への水酸基等の官能基の取り込みが実質的にない。さらに、本発明のチタン含有ペロブスカイト型化合物は耐熱性が高く、分散性が優れているという特徴を有する。」 エ 甲2-5(特開2019-119630号公報) 本件特許出願の優先日前に公知となった甲2-5には、以下の記載がある。 「【0041】 <チタン酸バリウム> 本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムは、比表面積換算径が200nm以下であることが好ましい。このような比表面積換算径であると、積層セラミックスコンデンサ等の共材や誘電体の材料として好適なものとなる。チタン酸バリウムの比表面積換算径は、より好ましくは、150nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下である。また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法で得られるチタン酸バリウムの比表面積換算径は、通常、1nm以上である。 上記チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径は、BET法によって求められる比表面積と同一の表面積を有する球の直径に相当する。すなわち、比表面積換算粒子径は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定して求めた比表面積:Sgと、チタン酸バリウムの真比重:ρから、下記計算式により求めた値である。 チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径(μm)=[6/(Sg×ρ)] (Sg(m2/g):比表面積、ρ(g/cm3):粒子の真比重) なお、粒子の真比重:ρは、チタン酸バリウムの真比重の値である6.08を上記計算に用いる。」 「【0045】 各種測定は以下のようにして行った。 <電子顕微鏡写真撮影> 電界放出型走査電子顕微鏡FE-SEM SU8020(日立ハイテクノロジーズ社製)により観察した。 <比表面積測定> 全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定した。 <分解開始温度測定> 示差熱天秤Thermoplus EVOII TG-DTA(リガク社製)を使用して大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃まで昇温し、得られたDTA曲線において550℃未満の温度領域において最も顕著な発熱ピークまたは吸熱ピークのピークトップに相当する温度を分解開始温度とし、550℃未満の温度領域において顕著な発熱ピークまたは吸熱ピークが検出されないものについては、550℃以上の温度領域において最も顕著な発熱ピークまたは吸熱ピークのピークトップに相当する温度を分解開始温度とした。 <炭酸バリウム由来の800℃吸熱ピークの有無の確認> 示差熱天秤Thermoplus EVOII TG-DTA(リガク社製)を使用して大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃まで昇温し、得られたDTA曲線上の800℃近傍に炭酸バリウム由来の吸熱ピークが検出されるかどうかを確認した。 <チタン酸バリウムに変化する温度> 示差熱天秤Thermoplus EVOII TG-DTA(リガク社製)を使用して大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃まで昇温し、得られたTG曲線の最も高温側における重量減少が完了する温度をチタン酸バリウムに変化する温度とした。 <比表面積換算径> チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径は、BET法によって求められる比表面積と同一の表面積を有する球の直径に相当する。すなわち、比表面積換算粒子径は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM-1200(Mountech社製)により測定して求めた比表面積:Sgと、チタン酸バリウムの真比重:ρから、下記計算式により求めた値である。 チタン酸バリウムの比表面積換算粒子径(μm)=[6/(Sg×ρ)] (Sg(m2/g):比表面積、ρ(g/cm3):粒子の真比重) なお、粒子の真比重:ρは、チタン酸バリウムの真比重の値である6.08を上記計算に用いた。 <格子内部水酸基ピークの有無の確認> フーリエ変換赤外分光装置Nicolet iS10 FT-IR(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、3500cm-1近傍に検出される格子内部水酸基のピークの有無を確認した。 <チタン酸バリウム粒子のc/a比> 粉末X線回折装置RINT-TTR III(リガク製、線源CuKα)を用いて、粉末X線回折を行い、WPPF法を用いてc/a比を算出した。」 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲2-1発明とを対比すると、一致点及び相違点は上記第4 3(1)ア(ア)dで認定したとおりのものであり、相違点2-1を以下に再掲する。 <相違点> 相違点2-1:本件発明4は、「BET比表面積が20~70m2/g」であるのに対し、甲2-1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。 イ 相違点2-1についての判断 (ア)「ペロブスカイト型化合物の製造方法」である本件発明4は、本件明細書の【0043】(上記1(4)ア参照)の記載によれば、カルシウムが均一に固溶し、かつ微細な粒子のチタン酸バリウムであるといえるところ、同【0079】の【表4】(上記1(4)ア参照)には、チタン酸バリウムカルシウムのBET比表面積と円相当径の測定結果が記載されており、そのうち、BET比表面積が20m2/g以上である実施例9、10、12、14の円相当径は、いずれも60nm以下となっている。 (イ)一方、甲2-1の【0055】の【表2】、【0061】の【表4】(上記第4 2(1)ア)によれば、チタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径は、いずれも65nmより大きくなっている。 ここで、甲2-3の【0027】(上記(3)イ)、甲2-4の【請求項2】、【0021】(上記(3)ウ)、甲2-5の【0041】、【0045】(上記(3)エ)の記載によれば、ペロブスカイト型化合物における粒径と比表面積との関係が、S=6/(d×ρ)、S:比表面積[m2/g]、d:粒径[μm]、ρ:密度[g/cm3]で表されること、及び、チタン酸バリウムの密度が6.02g/cm3であることは技術常識である。 そして、甲2-1のチタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径を65nm、密度を6.02g/cm3として、比表面積を計算すると、6/(65×10-3×6.0)=15.4m2/gとなるから、甲2-1のチタン酸バリウムカルシウム粉末の比表面積は、最も大きいもので15.4m2/gであるといえる。 なお、申立人金田が特許異議申立書の22ページ~25ページにおいて示した<表1>、<表2>における甲2-1のBET比表面積Sの値も同様に、最も大きいもので15.4m2/gとなっている。 以上から、甲2-1には、チタン酸バリウムカルシウム粉末のBET比表面積が20~70m2/gであるものは記載されているとはいえず、また、BET比表面積を20~70m2/gにする製造方法も記載されているとはいえない。 (ウ)また、甲2-2~甲2-5のいずれにも、チタン酸バリウムカルシウムのBET比表面積を20~70m2/gとすることは、記載も示唆もされていない。 (エ)以上から、甲2-1発明に甲2-2~甲2-5に記載された発明を適用しても、相違点2-1に係る本件発明4に係る構成は得られない。 したがって、本件発明4は、甲2-1発明及び甲2-2~甲2-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (オ)なお、本件発明4は、訂正前の請求項5に係る発明を限定したものであるともいえるから、上記第4 1(2)の取消理由2について検討すると、甲1-2(上記1(2)イ(ア)c)には、チタン酸バリウムカルシウム粉末は、BET法によって求めた比表面積が5.0m2/g以上であることが記載されているものの、上記(イ)で検討したとおり、甲2-1には、チタン酸バリウムカルシウム粉末のBET比表面積が20~70m2/gであるものは記載されているとはいえず、また、BET比表面積を20~70m2/gにする製造方法も記載されているとはいえないから、甲2-1発明において、「ペロブスカイト型構造の複合酸化物」のBET比表面積を20~70m2/gとすること、すなわち、相違点2-1に係る本件発明4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 申立人黒田の主張について 申立人黒田は、令和4年10月27日付け意見書の2ページ15~26行において、特開2006-89368号公報(参考文献1)及び国際公開2011/024582号(参考文献2)の記載によれば、本件特許出願の優先日前に、チタン酸バリウムカルシウムの比表面積が、23~49m2/gであることは、公知であるから、「BET比表面積が20~70m2/gであり、」とすることは、当業者には容易に想到し得た事項である旨主張している。 しかし、上記(イ)で検討したとおり、甲2-1には、チタン酸バリウムカルシウム粉末のBET比表面積が20~70m2/gであるものは記載されているとはいえず、また、BET比表面積を20~70m2/gにする製造方法も記載されているとはいえない。 そうすると、本件特許出願の優先日前に、チタン酸バリウムカルシウムの比表面積が、23~49m2/gであることが公知であったとしても、甲2-1発明において、BET比表面積を20~70m2/gとすることは、当業者には容易に想到し得た事項であるとはいえない。 したがって、申立人黒田の上記主張は採用できない。 エ 申立人金田の主張について 申立人金田は、令和4年10月27日付け意見書の1ページ下から4行~2ページ下から6行において、甲2-1には、チタン酸バリウムカルシウム粉末の粒子径が小さくてもCa固溶を実現できることが、実質的に示唆されているといえ、また、甲2-1発明に係るチタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径を60nm以下にすること自体には、格別の技術的困難性は認められないため、甲2-1に接した当業者が、「Ca固溶と粒子の微細化との両立」を実現すべく甲2-1発明に係るチタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径を60nm以下にすること、すなわちBET比表面積を「20~70m2/g」にすることには、動機付けがあるから、甲2-1発明に基づいて本件発明4を導き出すことは、当業者が容易に想到し得る旨主張している。 しかし、上記(イ)で検討したとおり、甲2-1において、チタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径は、いずれも65nmより大きくなっている。 また、甲2-1には、チタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径を60nm以下にする方法は記載されていない。 したがって、甲2-1発明に係るチタン酸バリウムカルシウム粉末の平均粒径を60nm以下にすること、すなわちBET比表面積を「20~70m2/g」にすることには、動機付けがあるとはいえない。 よって、申立人金田の上記主張は採用できない。 オ 小括 以上のとおり、本件発明4は、甲2-1発明及び甲2-2~甲2-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいない。 したがって、申立理由2-1には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700329

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