特許異議申立
2023-700632
燃料電池システムおよびその制御方法
- 審判番号
- 2023-700632
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-500855
- 登録番号
- 7191193
- 請求日
- 2023年06月15日
- 審決日
- 2024年02月21日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】クミンス エンタープライズ エルエルシー
- 【権利者代理人】関口 一哉
- 【異議申立人】小山 恵
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 長馬 望
- 審判官 西 秀隆
- 分類
- P1651.537-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7191193号発明「燃料電池システムおよびその制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7191193号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14-18〕について訂正することを認める。
特許第7191193号の請求項1及び3ないし18に係る特許を維持する。
特許第7191193号の請求項2についての申立を却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7191193号の請求項1ないし18に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)7月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2018年7月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月8日にその特許権の設定登録がされ、同月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年6月15日に特許異議申立人小山 恵(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年8月23日(18日付け)に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年11月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年12月26日に意見書を提出した。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のアないしウのとおりである(下線は、訂正箇所を示す、)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、
前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループと、
燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、
空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイスと、
前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワと、
前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素と、
アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイスと
を備える、燃料電池システム。」
とあるのを
「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、
前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループと、
燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、
空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイスと、
前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワと、
前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素と、
アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイスと
を備え、
前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ、燃料電池システム。」
と訂正する(請求項1の記載を直接的、間接的に引用する請求項3ないし13も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項14に
「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワを含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法であって、
前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、
燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給することと、
前記アノードブロワの動作状態を監視することと、
前記アノードブロワの故障信号を受信すると、前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、を含み、
前記シャットダウン手順が
アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること、および
前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすることと、
を含む方法。」
とあるのを
「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法であって、
前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、
燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給することと、
前記アノードブロワの動作状態を監視することと、
前記アノードブロワの故障信号を受信すると、前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、を含み、
前記シャットダウン手順が
アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること、
前記アノードブロワ経路が遮断されること、および
前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすることと、
を含む方法。」
と訂正する(請求項14の記載を直接的・間接的に引用する請求項15ないし18も同様に訂正する。)。
(2)訂正の適否について
ア 訂正事項1及び2について
訂正事項1は、本件訂正請求前の請求項2に「前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ、請求項1に記載の燃料電池システム。」とあるのを本件訂正請求後の請求項1に係る発明の発明特定事項とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項14に係る発明で特定されていた「アノード再循環ループ」が「アノードブロア経路を含む」ことを特定すると共に、訂正前の請求項14に係る発明で特定されていた「シャットダウン手順」が「前記アノードブロワ経路が遮断されること」を含むことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件特許明細書には、「アノード再循環ループは、アノードブロワ経路とアノード経路とを含む。アノードブロワはアノードブロワ経路に配置され、燃料電池スタックのアノードはアノード経路に配置される。」([0004] 下線は、当審で付与した。)と記載されており、さらに、「アノード再循環ループ10は、第1の経路P3と第2の経路P4とを有する」([0021])、「例えば、アノードブロワ41は、図1に示すように、第1の経路P3に配置される。」([0021])、「アノードブロワの故障信号を受信すると、逆止弁71がオフ(閉)にトリガされて第1の経路P3が遮断される。」([0031])と記載されているから、これらの記載より、「アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループ」及び「シャットダウン手順」が「前記アノードブロワ経路が遮断されること」を含むことが記載されていたと認められ、このような事項を新たに特定する訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。
ウ 一群の請求項について
本件訂正請求後の請求項3ないし13は、請求項1を引用する形式で記載された請求項であり、請求項1ないし13は、一群の請求項であり、また、本件訂正請求後の請求項15ないし18は、請求項14を引用する形式で記載された請求項であり、請求項14ないし18は、一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-13〕、〔14-18〕について請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕及び〔14-18〕について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、
前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループと、
燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、
空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイスと、
前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワと、
前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素と、
アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイスと
を備え、
前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ、燃料電池システム。
【請求項2】 削除
【請求項3】
前記圧力制御デバイスは、前記燃料電池システムがシャットダウンされる場合に、前記アノード圧力を前記カソード圧力よりも高く維持する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第2の経路で、前記アノードの上流に配置された改質器を前記アノード再循環ループがさらに備える、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
アノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気とを燃焼させるための触媒バーナと、
前記空気供給経路に順次配置された第1の空気熱交換器と第2の空気熱交換器とであって、高温ガスからの熱を前記空気供給デバイスによって供給される低温の空気に伝達するように構成された第1の空気熱交換器と、前記触媒バーナからの高温のバーナ排気の熱を前記第1の空気熱交換器の出口からの温かい空気に伝達するように構成された前記第2の空気熱交換器と、
をさらに備える、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記圧力制御デバイスがオリフィスを備え、前記オリフィスが前記第1の空気熱交換器の下流に配置される、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記高温ガスが、前記第2の空気熱交換器の出口からのガスを含む、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記触媒バーナからの前記高温のバーナ排気の熱を前記改質器に伝達するように構成されたアノード熱交換器をさらに備え、前記高温ガスが前記アノード熱交換器の出口からのガスを含む、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池スタックと、前記改質器と、前記触媒バーナと、前記第2の空気熱交換器と、前記アノード熱交換器とがホットボックスに密封される、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記圧力制御デバイスは、アノード圧力制御弁を備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
アノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気を燃焼させるための触媒バーナをさらに備え、前記アノード圧力制御弁が前記分岐点と前記触媒バーナとの間に配置される、請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記燃料電池スタックと、改質器と、前記触媒バーナとがホットボックスに密封され、前記アノード圧力制御弁が前記分岐点の後で、かつ、前記ホットボックスの前に配置される、請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記スイッチング要素が、逆止弁と、電磁弁と、フェイルセーフ三方弁と、またはそれらの組み合わせとを含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法であって、
前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、
燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給することと、
前記アノードブロワの動作状態を監視することと、
前記アノードブロワの故障信号を受信すると、前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、を含み、
前記シャットダウン手順が
アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること、
前記アノードブロワ経路が遮断されること、および
前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすることと、
を含む方法。
【請求項15】
前記方法が、前記アノード再循環ループに蒸気を供給することをさらに含み、
前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することが、
前記燃料電池スタックの電力負荷を遮断することと、
前記燃料電池スタックの前記カソードに供給される前記空気の空気流量を所定の空気流量値に設定することと、
炭素堆積を回避するために、前記アノード再循環ループに供給される前記燃料ガスの燃料流量と前記蒸気の蒸気流量とをそれぞれ所定の燃料流量値と所定の蒸気流量とに設定することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アノード再循環ループが前記アノードの上流に配置された改質器をさらに含み、前記燃料電池システムがアノード出口からの燃料排気とカソード出口からの空気排気とを燃焼させるための触媒バーナを含み、
前記方法が、前記触媒バーナの負荷を調整することと、アノード温度がアノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値を下回るまで改質器入口の温度を所定の改質反応温度よりも高く維持するように、前記触媒バーナからの高温のバーナ排気の熱を前記改質器に伝達することと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記燃料ガスと、前記蒸気と、前記空気とを遮断することと、前記アノード温度が前記温度閾値を下回ると前記触媒バーナを停止することと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アノード温度が前記温度閾値を下回ると、前記アノードを所定の時間パージすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
4 取消理由通知に記載した取消理由
(1)取消理由の概要
本件訂正請求前の請求項1及び3ないし18に係る特許に対して、当審が令和5年8月23日(18日付け)に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
発明の詳細な説明には、「アノード保護を備えた燃料電池システムおよび燃料電池システムを制御する方法に関」([0002])し、「システム効率と燃料利用率とを改善し、外部の水の使用量を減らすために、燃料電池システムには、通常はアノード再循環ループが含まれ」([0005])、「アノード再循環ループは、アノードブロワ経路とアノード経路とを含」([0004]み、「アノードブロワはアノードブロワ経路に配置され、燃料電池スタックのアノードはアノード経路に配置され」([0004])でおり、「アノード経路は、分岐点でアノードブロワ経路と燃料排気経路とに分岐され」([0004])、「アノードブロワは、アノード再循環ループに駆動力を提供するために使用される」([0004])ところ、「アノードブロワで故障または異常事象が発生すると、アノード再循環ループが遮断され」([0006])、「供給されるパージガス(通常は燃料と蒸気との混合物を使用)は、アノード経路ではなくアノードブロワ経路から漏出可能であり、必要な還元ガスが燃料電池スタックを通過することを保証できな」([0006」)く、「さらに、アノード再循環が失われた後、アノード再循環ループの改質器は、アノード排気から熱を回収することができなくな」([0007」)り、「改質器入口温度が特定の値を下回ると、使用される触媒に応じて400℃から650℃の範囲になる可能性があり、水蒸気改質反応は停止」([0007」)し、「その結果、アノードにH2リッチな還元ガスが供給されなくな」(「0007」)って、「アノードが還元ガス雰囲気の欠如にさらされると、アノードのNiは再酸化される可能性があり、Niは、約350℃を超える温度で、カソード層から拡散した空気中の酸素またはアノードチャンバに導入された空気中の酸素と反応して酸化ニッケル(NiO)を形成する可能性がある」([0008])ことを発明が解決しようとする課題としてなされたもので、スイッチング要素を「第1の経路P3(当審注:「アノードブロワ経路」のこと)と結合点Q1との少なくとも1つに配置」([0031])し、この「スイッチング要素の例として、逆止弁71を取り上げ」([0031])た場合には、「逆止弁71は、アノード再循環ループ10の第1の経路P3に配置され」([0031])、「アノードブロワの故障信号を受信すると、逆止弁71がオフ(閉)にトリガされて第1の経路P3が遮断され」([0031])、「燃料ガスは、第1の経路P3ではなく第2の経路P4(当審注:「アノード経路」のこと)を通って確実に燃料排気経路P5に流れる」([0031])ようにして、「アノード12を還元雰囲気中に保持することができる」([0031])ようにしたものが記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明には、アノードブロワの故障の信号を受信すると、スイッチング要素がオフにトリガされてアノードブロア経路である第1の経路が遮断され、燃料ガスが第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐことで、アノード経路である第2の経路P4を通るようにし、上記課題を解決したものが記載されている。
これに対し、請求項1及び3ないし13に係る発明は、「前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素」を備えることは、特定されているものの、アノードブロワが故障した場合に、第1の経路が遮断され、燃料ガスが第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐことは特定されていない。
また、請求項14ないし18に係る発明は、「前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすること」をシャットダウン手順が含むことは特定されているが、アノード再循環ループがアノードブロア経路を備えると共に、アノードブロワが故障した場合に、アノードブロア経路が遮断されることは特定されていない。
そうすると、請求項1、3ないし18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するために必要な事項を特定しないものを含んでいる。
よって、請求項1、3ないし18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
5 当審の判断
(1)当審の判断
上記4に示すように、発明の詳細な説明には、アノードにH2リッチな還元ガスが供給されなくな」(「0007」)って、「アノードが還元ガス雰囲気の欠如にさらされると、アノードのNiは再酸化される可能性があり、Niは、約350℃を超える温度で、カソード層から拡散した空気中の酸素またはアノードチャンバに導入された空気中の酸素と反応して酸化ニッケル(NiO)を形成する可能性がある」([0008])ことを課題とし、これを解決するために、アノードブロワの故障の信号を受信すると、スイッチング要素がオフにトリガされてアノードブロア経路である第1の経路が遮断され、燃料ガスが第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐことで、アノード経路である第2の経路P4を通るようにしたものが記載されている。
これに対し、上記3に示すように、本件訂正請求後の請求項1に係る発明である本件発明1は、「第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループ」を備え、「燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される」ことが特定され、さらに、「前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素」を備え、「前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ」ことが特定されている。すなわち、本件訂正請求後の請求項1に係る発明である本件発明1は、アノードブロワの故障の信号を受信すると、スイッチング要素がオフにトリガされることで、燃料ガスが第1の経路を通って燃料排気経路に流れるのを防いで、アノードが配置される第2の経路から排気経路に流すように構成することが特定されているから、上記課題を解決しており、発明の詳細な説明に記載した発明である。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。また、請求項3ないし13は、請求項1を引用する形式で記載され、本件発明3ないし13は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様に、上記課題を解決しており、発明の詳細な説明に記載した発明である。
また、本件発明14についてみると、本件訂正請求後の請求項14には、「アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループとを備え」、シャットダウン手順が「アノードブロワ経路が遮断されること」と「燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすること」が記載されている。そうすると、本件発明14は、アノード再循環ループに備えられている経路のうち、アノードブロワ経路が遮断されることで、燃料ガスはアノード再循環ループのアノードを通る経路を通って燃料排気経路に流れることが特定されており、これは、発明の詳細な説明に記載された課題を解決する手段である燃料ガスが第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐことで、アノード経路である第2の経路P4を通るようにしたことが特定されているといえるから、本件発明14は、上記課題を解決しており、発明の詳細な説明に記載した発明である。また、請求項15ないし18は、請求項14を引用する形式で記載され、本件発明15ないし18は、本件発明14をさらに限定した発明であるから、本件発明14と同様に、上記課題を解決しており、発明の詳細な説明に記載した発明である。
よって、請求項1、3ないし18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
(2)申立人の意見について
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正請求前の請求項1及び3ないし13に係る発明が、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないことは、主張しているが、本件訂正請求前の請求項2については、このような主張をしていない(特許異議申立書98ページ7行ないし99ページ末行)。そして、本件訂正請求後の請求項1及び3ないし13に係る発明である本件発明1及び3ないし13は、本件訂正請求前の請求項2により特定される事項を含むものであるから、申立人の主張をみても、本件発明1及び3ないし13が特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないとすることはできない。
また、申立人は、令和5年12月26日に提出した意見書において、本件発明14について次のように主張している。
ア 「訂正後の請求項14では、アノードブロワ経路がアノード再循環ループのどの地点からどの地点までの範囲を指すのかが特定されていないため、例えば下図に示すA地点からB地点までの範囲をアノードブロワ経路と把握することも可能で」あり、「アノードブロワ経路のどの地点を遮断するのかについても特定されていないため、例えば下図に示すC地点を遮断することについても含まれており」、そうすると、「シャットダウン手順においてアノードブロワ経路のC地点を遮断すると、結合点Qに供給された燃料ガスがアノードを通過せずにアノード再循環ループを逆流して燃料排気経路P5に流れる形態をも含んでしまっており」、本件発明14は、「発明の詳細な説明に記載された課題を解決するために必要な事項を特定しないものを含んで」いる。
なお、上記意見書において示された図は、次のとおりである。
[図:0001410216000001.jpg]
この申立人の主張について検討すると、申立人が主張するとおり、上記図のC地点を遮断した場合、結合点Qに供給された燃料ガスがアノードを通過せずにアノード再循環ループを逆流して燃料排気経路P5に流れることとなる。すなわち、燃料ガスはアノードを流れない。しかし、本件発明14は、シャットダウン手順において、「前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすること」が特定されているから、該シャットダウン手順において、燃料ガスがアノードを流れないものは含んでおらず、申立人の上記主張は、請求項14の記載に基づかないものであって、採用することができない。
6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項について
ア 申立人の主張
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、特許第6062263号公報(以下、「甲1」という。)に記載された発明と特開2006-156262号公報(以下、「甲2」という。)に記載された発明の組み合わせ、及び、甲1に記載された発明と特開2004-152729号公報(以下、「甲3」という。)に記載された発明の組み合わせに対して進歩性を有さず、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明の組み合せ、及び、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明の組み合わせに対して進歩性を有さない旨主張(以下、「進歩性の理由1」という。)する。
また、本件訂正前の請求項14に係る発明は、甲1に記載された発明と特許第6821356号公報(以下、「甲4」という。)に記載された発明、周知技術(周知例として、甲3に記載された発明及び特開2007-257929号公報(以下、「甲9」という。)に記載された発明があると主張する。)の組み合わせより、進歩性を有さない旨主張(以下、「進歩性の理由2」という。)する。
以下、この点について検討する。
イ 甲号証の記載
(ア)甲1の記載及び甲1に記載された発明
甲1には、次の事項が記載されている。
a 甲1には、燃料電池を有する複合発電システム10が記載されている([0025])。この燃料電池は、SOFC12であり、SOFC12は、発電を行い、燃料極と空気極を有する([0026])。
b 甲1には、「SOFC12には、燃料供給ライン24を介して、還元性ガス(本実施形態では水素ガス)、水蒸気、不活性ガス(本実施形態では窒素ガス)、及び燃料ガス(本実施形態では都市ガス)が供給可能とされ」([0028])、「SOFC12から排出された燃料ガスは、冷却器30で冷却され、燃料再循環ライン32によって燃焼器20へ供給されると共にSOFC12へ戻され」([0029])、「燃料再循環ライン32は、分岐され、排出ライン42によって燃料ガスをパージ可能とされている」([0030])ことが記載されている。これらの記載の「SOFC12には、燃料供給ライン24を介して」供給可能とされる燃料ガスであって、「SOFC12から排出された燃料ガス」は、SOFC12の燃料極へ供給可能とされ、燃料極から排出された燃料ガスと解される。これらの記載から、燃料ガスは、燃料供給ライン24を介して燃料電池のアノードに供給され、燃料電池のアノードから排出された燃料ガスは、排出ライン42と分岐する地点(以下、「分岐点」という。)まで流れ、この分岐点から燃料再循環ライン32へ流れたガスは、再度燃料供給ライン24へ循環し、新たに供給された燃料ガスと合流すると解される(この合流する地点を「合流点」といい、新たに供給された燃料ガスが流れる流路を「外部供給ライン」という。)。そして、このような解釈は、甲1の図1(下図)の記載とも整合する。
[図:0001410216000002.jpg]
そうすると、甲1に記載された燃料供給ライン24と燃料再循環ライン32とで構成される燃料ガスの循環ラインは、排出ライン42との分岐点から新たに供給された燃料ガスと合流する合流点まで流れるライン(以下、「環流ライン」という。)と、この合流点から燃料電池の燃料極を介して分岐点まで流れるライン(以下、「燃料極を含むライン」という。)とを有していることがわかる。
c 上記bより、複合発電システム10の正常動作中は、新たに供給された燃料ガスが流れる外部供給ラインと環流ラインとは合流点で合流し燃料極を含むラインとなり、この燃料極を含むラインが分岐点で環流ラインと排出ライン42とに分岐されることがわかる。そして、新たに供給される燃料ガスは、外部供給ラインを流れてSOFC12の燃料極に供給される。これら外部供給ライン、燃料極を含むライン及び環流ラインにより、SOFC12に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段を構成している。
d 甲1に記載されたSOFC12は、「コンプレッサ18で圧縮され、空気予熱器(再生熱交換器)48で予熱された空気が空気供給ライン46を介して供給される」([0031])ものであり、これにより供給される空気は、SOFC12の空気極に供給されると解される。
e 甲1には、「燃料再循環ライン32には、SOFC12内の差圧を制御する制御弁34、及びSOFC12から排出されるガスをSOFC12へ循環させる再循環ブロワ36が備えられる」([0029])ことが記載され、この再循環ブロワ36は、上記bに示す図1の記載より、分岐点より下流側に設けられていることがわかるから、循環ラインの環流ラインに備えられているといえる。
f また、制御弁34が燃料再循環ライン32に備えられており([0029])、さらに、「燃料再循環ライン32におけるSOFC12へ燃料を戻すラインには流調弁38が備えられ」([0030])、「排出ライン42には、減圧弁44が設けられ」([0030])ている。この制御弁34と流調弁38は、図1の記載からみて、分岐点の下流であるから、環流ラインに備えられているといえる。さらに、甲1には、制御弁34について、「SOFC12内の差圧を制御する」([0029])ことが記載され、また、「SOFC12の燃料極側と空気極側との差圧は、所定値(例えば0.5kPa)となるように減圧弁44が制御され」([0071])、「燃料供給ライン24に都市ガス、水蒸気、又は水素ガスが供給され、空気供給ライン46に空気が供給されながら大気開放が行われることにより、燃料極側に酸素成分が混入しないように、燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態で停止動作を実行しながら、発電室の冷却が行われる」([0071])とも記載されていることから、甲1には、燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態となるように制御される環流ラインに備えられる制御弁34と排出ライン42に設けられる減圧弁を備えることが記載されているといえる。
g 甲1には、「運転監視データの入力を受け付ける」([0044])ことも記載されており、ここで「運転監視データは、複合発電システム10の運転状態を監視するためのデータであり、本実施形態では、再循環ブロワ36の運転可否を示す再循環ブロワ運転データや窒素ベントを行うために窒素ガスの連続供給(以下、「窒素連給」という。)の可否を示す窒素連給データである」([0044])から、複合発電システム10は、再循環ブロワ36の運転の可否を監視しているといえる。
さらに、甲1に記載された複合発電システム10は、「常時監視データの入力を受け付け」([0039])、「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とが比較され」([0040])、「許容範囲外となった計測点の値が、SOFC12の停止を必要とする重異常であるか否かを判定し」([0042])、「重異常の場合は、複合発電システム10の停止を必要とする」([0042])ものにおいて、再循環ブロワ36の運転ができない場合([0052]参照)、トリップ状態Aによる複合発電システム10の至急停止が行われる。そして、この至急停止は、「複合発電システム10と電力系統との解列、MGT16の停止、都市ガスの停止、及び窒素パージによりコンバインド運転を停止させ」([0069])、「その後、運転制御装置80は、SOFC12の圧力を低下させながら蒸気ラインを立ち上げて、都市ガスと水蒸気をSOFC12へ供給することで、SOFC12の内部改質反応により還元性ガスである水素ガスを生成しながら、内部改質の吸熱反応とガス流通による除熱によりSOFC12の発電室の降温を行」([0069])い、「発電室が、例えば4時間で容器内温度において700℃に達した後に、燃料供給ライン24に窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され」([0070])、「さらに、温度が100℃に達した後、ガスの供給が停止され、排出ライン42,62に備えられる減圧弁44,64が開かれ、燃料供給ライン24及び空気供給ライン46等が大気開放される」([0070])ものである。そして、この記載の「ガスの供給が停止され」とは、その直前に「水素ガスが供給され」るものであることから、図1等の記載からみて、外部供給ラインを介して供給される水素ガスの供給が停止されるものと理解できる。また、「都市ガスの停止、及び窒素パージによりコンバインド運転を停止させ」([0069])とは、図1の記載からみて、燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給しSOFC12の燃料極の燃料ガスをパージすることと理解できる。そうすると、甲1に記載された複合発電システム10は、上記至急停止を行う場合、燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給し、その後、都市ガスと水蒸気をSOFC12の燃料極へ供給して、SOFC12の降温を行い、700℃に達した後に、外部供給ラインから窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され、さらに、温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され、減圧弁44が開かれ、燃料極を含むラインが大気開放されるものと理解できる。
h 甲1には、「燃料再循環ライン32は、分岐され、排出ライン42によって燃料ガスをパージ可能とされ」([0030])、「排出ライン42には、減圧弁44が設けられ」([0030])、「複合発電システム10内の燃料ガスは、減圧弁44が開かれるとパージされる」([0030])ことが記載されているから、上記gにおいて、「減圧弁44が開かれ」たときは、排出ライン42によってガスがパージ可能にされ、これにより「燃料極を含むラインが大気開放される」ものといえる。
i 上記aないしhに示す事項を考慮すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
・甲1発明1
「発電を行い、燃料極と空気極を有するSOFC12と、
前記燃料極を含み、環流ラインと前記燃料極を介して流れる燃料極を含むラインとを有する燃料ガスの循環ラインと、
複合発電システム10の正常動作中は、外部供給ラインと前記環流ラインとは合流点で合流し前記燃料極を含むラインとなり、前記燃料極を含むラインが分岐点で前記環流ラインと排出ライン42に分岐される、前記外部供給ラインを介して燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
空気供給ライン46を介して前記SOFC12の前記空気極に空気を供給するコンプレッサ18と、
前記循環ラインに備えられ、SOFC12から排出される燃料ガスを循環させる再循環ブロワ36と、
燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態となるように制御される環流ラインに備えられる制御弁34と排出ライン42に設けられる減圧弁44と、
を備え、
常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定すると、燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給し、その後、都市ガスと水蒸気をSOFC12の燃料極へ供給して、SOFC12の降温を行い、700℃に達した後に、外部供給ラインから窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され、さらに、温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され、前記減圧弁44が開かれ、上記排出ライン42からガスがパージ可能とされることで、燃料極を含むラインを大気開放し、燃料極の圧力を空気極の圧力よりも高く保った状態とする、
複合発電システム10。」
j また、上記aないしhに加えて、甲1には、「運転監視データの入力を受け付ける」([0044])ことも記載されており、ここで「運転監視データは、複合発電システム10の運転状態を監視するためのデータであり、本実施形態では、再循環ブロワ36の運転可否を示す再循環ブロワ運転データや窒素ベントを行うために窒素ガスの連続供給(以下、「窒素連給」という。)の可否を示す窒素連給データである」([0044])から、複合発電システム10は、再循環ブロワ36の運転の可否を監視しているといえる。
k 上記jに示す事項を考慮すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)も記載されている。
・甲1発明2
「発電を行い、燃料極と空気極を有するSOFC12と、再循環ブロワ36と環流ラインとを含む循環ラインとを備える複合発電システム10を制御する方法であって、
前記再循環ブロワ36を運転することによって、前記循環ラインの燃料ガスを循環させることと、
SOFC12の前記空気極に空気を供給することと、
前記再循環ブロワ36の運転の可否を監視することと、
常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定すると、前記複合発電システム10の至急停止を行うことと、を含み、
前記至急停止が、
燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給し、その後、都市ガスと水蒸気をSOFC12の燃料極へ供給して、SOFC12の降温を行い、700℃に達した後に、外部供給ラインから窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され、さらに、温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され、燃料極を含むラインを大気開放するために排出ライン42に設けられた減圧弁44が開かれ、このとき、燃料極の圧力を空気極の圧力よりも高く保った状態とすることと、
を含む方法。」
(イ)甲2の記載及び甲2に記載された発明
甲2には、次の事項が記載されている。
a 「燃料電池システム1は燃料電池スタック100・・・とに大略構成され」([0023])、「燃料電池スタック100は、燃料電池単位セル15と燃料電池セパレータ13とを交互に積層して構成され」([0024])、「セパレータ13は、単位セル15の電極に接触して電流を外部に取り出すための集電部材3、4」([0025])を備えているところ、「集電部材3は、単位セル15の燃料極に接触し、集電部材4は酸素極に接触する」([0026])ものであるから、燃料電池スタック100は、燃料極と酸素極とを有する。また、燃料電池は、「燃料ガスと酸化ガスとの反応により発電する」ものであるから、燃料電池システム1が備える燃料電池スタック100は、発電を行うといえる。そうすると、甲2には、発電を行い、燃料極と酸素極とを有する燃料電池スタック100を備えた燃料電池燃料電池システム1が記載されていると認められる。
b 甲2には、「燃料ガス供給流路201、ガス排出流路202、循環流路204、外気導入電磁弁28により、ガスの循環経路が形成される」([0037])と記載されており、この「ガスの循環経路」を形成する経路のうち燃料ガス供給流路201は、「燃料ガスボンベである水素貯蔵タンク11には、燃料ガス供給流路201A、201Bを介して燃料電池スタック100のガス取入口201BINに接続されている」([0036])ものであるから、燃料ガスボンベから燃料電池スタック100のガス取入口201BINまでを接続する流路であり、ガス排出流路202は、「燃料電池スタック100のガス排出口202OUTには、ガス排出流路202の一端が接続され、その他端は、レベルセンサS11が取り付けられたトラップ24に接続されている」([0036])から、燃料電池スタック100のガス排出口202OUTからトラップ24までを接続する流路である。ここで、燃料電池スタック100のガス取入口201BINとガス排出口202OUTは、燃料電池スタック100の燃料極に燃料ガスを供給するために接続されていると解される。また、循環流路204は、「トラップ24には、循環流路204の一端」([0036])に接続され、「循環流路204の他端は、外気流入路206に接続されている」([0037])から、循環流路204は、トラップ24から外気流入路206までを接続する流路であり、外気導入電磁弁28は、外気導入路206に設けられ([0037]参照)、図1の記載より、この外気導入路206は、その一端を燃料ガス供給流路201に接続される流路であるといえる。そうすると、甲2には、燃料電池システム1が、燃料極を含み、循環流路204及び外気導入流路206で構成される流路と燃料極が配置されるガス供給流路201及びガス排出流路202で構成される流路とを有するガスの循環経路を備えることが記載されていると認められる。
c 上記bに示すように、外気導入路206の一端は燃料ガス供給流路201に接続されており、この燃料ガス供給流路201は、「燃料ガスボンベである水素貯蔵タンク11には、燃料ガス供給流路201A、201Bを介して燃料電池スタック100のガス取入口201BINに接続されている」([0036])ものであり、燃料電池システム1の定常発電状態([0044]参照)では、燃料ガス供給流路201からの燃料ガスが外気導入路206からのガスと合流して、燃料ガスを燃料極に供給される([図1]参照。)。また、「循環流路204には、循環ポンプ25と、循環電磁弁26が設けられており、循環ポンプ25と循環電磁弁26の間には、減圧排出路205の一端が接続されている」([0037」)から、循環流路204は、上記bに示すように外気導入路206へ流れる流路と減圧排出路205に分岐する流路に分岐している。また、これらの流路は、「燃料供給系10の構成」([0036])として説明されたものである。そうすると、甲2には、上記bに示すガスの循環経路に関し、燃料電池システム1の定常発電状態では、燃料ガス供給流路201と外気導入路206とが合流して、燃料ガスを燃料極に供給し、循環流路204が外気導入路206へ流れる流路と減圧排出路205に分岐されている、燃料ガス供給経路201を介して燃料ガスを供給する燃料供給系10が記載されていると認められる。
d 甲2には、「空気供給系12は、空気導入路123と、・・・を備えている。空気導入路123には、・・・空気マニホールド54の順で流入方向に沿って設けられている。・・・空気マニホールド54は、燃料電池スタック100の導入口43に空気を分割して流入させる」([0038])ことが記載されており、この記載において、燃料電池スタック100の導入口43に流入された空気は、燃料電池スタックの酸素極に流入されると解される([0028]、[0029]参照)から、甲2には、空気導入路123を介して燃料電池スタック100の酸素極に空気を流入させる空気供給系12が記載されていると認められる。
e 甲2には、「循環流路204には、循環ポンプ25と、循環電磁弁26が設けられており、循環ポンプ25と循環電磁弁26の間には、減圧排出路205の一端が接続されている」ことが記載されているから、循環経路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも上流側に循環ポンプ25が設けられており、この循環ポンプ25を駆動することにより、上記bに示すガスの循環経路内のガスの循環が行われるといえる。したがって、甲2には、燃料電池システム1は、ガスの循環経路の循環経路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも上流側に設けられ、ガスの循環経路内のガスの循環が行われる循環ポンプ25を備えることが記載されていると認められる。
f 甲2には、「定常発電状態において車両若しくは燃料電池自体に何らかの不具合が検知され停止動作に入った場合、燃料電池システムは、停止動作に入り、まず、定常発電運転の際に動作していた水素元電磁弁18、ガス供給弁22、循環電磁弁26、・・・を閉じ、減圧電磁弁23を開放する」([0044])ことが記載され、さらに、「燃料ガス供給流路201Aには、水素元電磁弁18、・・・ガス供給弁22・・・が順に設けられ」([0036])、「循環流路204には、・・・循環電磁弁26が設けられて」([0037])おり、「減圧排出路205には、減圧電磁弁23が設けられている」([0037])ことも記載されている。そして、図1の記載より、水素元電磁弁18とガス供給弁22は、燃料ガス供給流路201Aの外気導入路206との合流位置(上記c参照)よりも上流側に設けられ、循環電磁弁26は、減圧排出路205と分岐する位置よりも下流側に設けられているといえる。そうすると、甲2には、定常発電状態において、燃料電池自体に不具合が検知され、停止動作に入った場合、燃料ガス供給流路201の外気導入路206と合流する位置よりも上流側に設けられた水素元電磁弁18とガス供給弁22とを閉じ、循環流路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも下流側に設けられた循環電磁弁26を閉じ、減圧排出路205に設けられた減圧電磁弁23を開放することが記載されていると認められる。
g 上記aないしf及び甲2の図1等の記載から、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
・甲2発明
「発電を行い、燃料極と酸素極とを有する燃料電池スタック100と、
前記燃料極を含み、循環流路204及び外気導入流路206で構成される流路と燃料極が配置される燃料ガス供給流路201及びガス排出流路202で構成される流路とを有するガスの循環経路と、
燃料電池システム1の定常発電状態では、前記燃料ガス供給流路201と前記外気導入路206とが合流して、燃料ガスを前記燃料極に供給し、前記循環流路204が前記外気導入路206へ流れる流路と減圧排出路205に分岐されている、前記燃料ガス供給経路201を介して燃料ガスを供給する燃料供給系10と、
空気導入路123を介して燃料電池スタック100の酸素極に空気を流入させる空気供給系12と、
ガスの循環経路の循環経路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも上流側に設けられ、ガスの循環経路内のガスの循環が行われる循環ポンプ25と、
を備え、
定常発電状態において、燃料電池自体に不具合が検知され、停止動作に入った場合、燃料ガス供給流路201の外気導入路206と合流する位置よりも上流側に設けられた水素元電磁弁18とガス供給弁22とを閉じ、循環流路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも下流側に設けられた循環電磁弁26を閉じ、減圧排出路205に設けられた減圧電磁弁23を開放する、燃料電池システム1。」
(ウ)甲3の記載及び甲3に記載された発明
甲3には、次の事項が記載されている。
a 甲3には、「燃料電池システム20は、図示するように、循環路30に循環する水素と供給された空気中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池22と、循環路30に水素を供給する水素タンク24と、システム全体をコントロールする電子制御ユニット50とを備える」([0016])と記載されているから、甲3に記載された燃料電池システム20は、発電する燃料電池22と、循環路30に水素を供給する水素タンク24とを備えていると認められる。また、水素タンク24から水素の供給を循環路30が受けていることから、この燃料電池システム20は、循環路30も備えていると認められる。
b 甲3には、「燃料電池システム20は、この他、空気を燃料電池22に供給するブロアや空気や水素を加湿する加湿器,燃料電池22を冷却する冷却系統,燃料電池22の発電電力を所望の電圧に変換するDC/DCコンバータなどの機器も備える」([0016])と記載されていることから、燃料電池システム20は、燃料電池22に空気を供給するブロアを備えることも甲3には記載されていると認められる。
c 甲3には、「循環路30には、燃料電池22から排出される未反応の水素を加圧するポンプ32」([0017])が取り付けられていることが記載されている。ここで、甲3には、「凍結などの原因により逆止弁36が固着してポンプ32の圧送によっては循環路30に水素が循環されない循環系の異常の状態を考える」と記載されていることから、正常な状態では、ポンプ32の圧送によって循環路30に水素が循環されるものといえる。そうすると、甲3には、循環路30に取り付けられ、循環路30の水素を循環させるポンプ32が記載されていると認められる。
d 甲3には、「循環路30には、燃料電池22から排出される未反応の水素を加圧するポンプ32と、その吐出側に加圧された水素の逆流を防止する逆止弁36とが取り付けられている」([0017])と記載されていることから、甲3には、循環路30のポンプ32の吐出側に、加圧された水素の逆流を防止する逆止弁36が取り付けられていることが記載されていると認められる。
e 上記aないしd及び甲3の図1等の記載から、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
・甲3発明
「発電する燃料電池22と、
循環路30と、
前記循環路30に水素を供給する水素タンク24と、
前記燃料電池22に空気を供給するブロアと、
前記循環路30に取り付けられ、前記循環路30の水素を循環させるポンプ32と、
前記循環路30のポンプ30の吐出側に取り付けられ、加圧された水素の逆流を防止する逆止弁36と、
を備えた燃料電池システム20。」
f また、甲3に記載された上記ポンプ32は、「センサレスの電動機34により駆動され」([0017])ているものであり、さらに、電子制御ユニット50には、「インバータ42と電動機34とを接続する三相電力ラインのu相とv相に取り付けられた電流センサ62,64からの相電流Iu,Ivなどが入力ポートを介して入力され」([0018])、「読み込んだ相電流Iu,Ivに基づいて過電流異常およびロック異常を判定」([0019])し、「過電流異常やロック異常・・・が判定されたときには、異常検出回数Nを値1だけインクリメントして」([0021])、「異常検出回数Nが閾値Nref異常のときには、システムを停止」([0021])するものである。ここで、電動機34は、ポンプ32を駆動するものであるから、電動機34の相電流Iu、Ivに基づいて過電流異常およびロック異常を判定することは、ポンプ32の異常を検出するものともいえる。そうすると、甲3には、次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)も記載されているといえる。
・甲3記載事項
「循環路30の水素を循環させるポンプ32の異常を所定回数検出すると燃料電池システムを停止すること」
(エ)甲4の記載及び甲4に記載された発明
甲4には、次の事項が記載されている。
a 甲4に記載された「燃料電池システム」([0034])は、SOFC13を用いており、このSOFC13は、燃料極109と固体電解質111と空気極113とを積層して形成した燃料電池セル105を用い([0038]参照)、発電を行うもの([0030]参照)であるから、甲4には、発電を行い、燃料極109と空気極113とが形成されたSOFC13を備えた燃料電池システムが記載されていると認められる。
b 甲4には、「SOFC13は、燃料ガスL2を燃料極109の導入部に供給する第2燃料ガス供給ライン41と接続されている」([0072])ことが記載されており、これより、第2燃料ガス供給ライン41は、上記aに示すSOFC13の燃料極109に接続されていると解される。さらに、甲4には、「燃料極109で用いられた排燃料ガスL3を排出する排燃料ガスライン43が接続され」([0073])、「排燃料ガスライン43と、排燃料ガスライン43から分岐して再循環ブロワ50に接続する再循環ライン51を設け」([0073])られ、「再循環ブロワ50を設けた再循環ライン51の再循環ブロワ50の出口において、第2燃料ガス供給ライン41に供給する燃料ガス再循環ライン49と、燃焼器22に接続される排燃料ガス供給ライン45とに分岐される」([0073])ことが記載されている。そうすると、甲4には、第2燃料ガス供給ライン41から燃料極109を介し、排燃料ガスライン43、再循環ライン51、再循環ブロワ50,燃料ガス再循環ライン49を通って、第2燃料ガス供給ライン41へ戻る燃料ガスの循環路(以下、「燃料ガス循環路」という。)が形成され、この燃料ガス循環路は、再循環ライン51、再循環ブロワ50、燃料ガス再循環路49を含んでいることが記載されているといえる。よって、甲4には、燃料電池システムが再循環ブロワ50と再循環ライン51、燃料ガス再循環路49を含む燃料ガス循環路を備えていることが記載されていると認められる。
そして、「排燃料ガスライン43から分岐して再循環ブロワ50に接続する再循環ライン51」へ流れてきた燃料ガスが再循環ブロワ50により、燃料ガス循環ライン49から第2燃料ガス供給ライン41に供給されることは明らかであるから、甲4に記載された燃料システムは、再循環ブロワ50を動作させることにより、燃料ガス循環路の第2燃料ガス供給ライン41に燃料ガスを供給するものといえる。
c 甲4には、「熱交換器60は、コンプレッサ21から供給された圧縮後の空気を熱交換し、熱交換後の圧縮空気Aの一部を第2圧縮空気供給ライン31を介して、空気極113に空気A2として供給する」([0067])こと及び「SOFC13は、第1圧縮空気供給ライン26から分岐した第2圧縮空気供給ライン31が接続され、コンプレッサ21が圧縮した一部の圧縮空気A2を空気極113の導入部に供給する」([0070])ことが記載されているから、甲4には、SOFC13の空気極に113に空気を供給することが記載されていると認められる。
d 甲4には、「インターロック時に空気極113側と燃料極109側との差圧がつかないように制御、もしくは、燃料極109側が空気極113側よりも所定圧高くなるように維持しながら、SOFC13の減圧を行う」([0076])ことが記載されているから、甲4に記載された燃料電池システムは、インターロック時に燃料極109側が空気極113側よりも所定圧高くなるように維持すると認められる。
e 上記bに示す燃料ガス循環路の排燃料ガスライン43は、「系外に排出する排燃料ガス排出ライン44と、排燃料ガス均圧ベントライン48とに分岐され」([0073])ている。ここで燃料ガス循環路は、第2燃料ガス供給ライン41から燃料極109を介し、排燃料ガスライン43が形成されている(上記b参照。)から、排燃料ガス均圧ベントライン48は、燃料ガス循環路における燃料極109の出口側で分岐しているといえる。そして、排燃料ガス均圧ベントライン48について、甲4には、「例えば、インターロック動作時に用いられる経路であり、排燃料放出遮断弁46よりも上流側から分岐させ、燃料極109からの排燃料ガスL3を系外へ流通させる」([0075])と記載されている。これらのことから、甲4に記載された燃料電池システムは、インターロック動作時に燃料極109から排出される燃料ガスを燃料極109の出口側で燃料ガス循環路から分岐する排燃料ガス均圧ベントライン48を介して系外へ流通させると認められる。
f 上記aないしe及び甲4の図4等の記載から、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
・甲4発明
「発電を行い、燃料極109と空気極113とが形成されたSOFC13と、再循環ブロワ50と再循環ライン51、燃料ガス再循環路49を含む燃料ガス循環路とを備える燃料電池システムをインターロック時に燃料ガスを排気する方法であって、
再循環ブロワ50を動作させることにより、燃料ガス循環路の第2燃料ガス供給ライン41に燃料ガスを供給することと、
SOFC13の空気極に113に空気を供給することと、
インターロック時に燃料極109側が空気極113側よりも所定圧高くなるように維持することと、
インターロック時に燃料極109から排出される燃料ガスを燃料極109の出口側で燃料ガス循環路から分岐する排燃料ガス均圧ベントライン48を介して系外へ流通させることと、
を含む方法。」
(オ)甲9の記載及び甲9に記載された事項
甲9には、次の事項が記載されている。
a 甲9には、「燃料電池システム100は、主に燃料電池10・・・を備えて」([0021])おり、燃料電池10には、アノードとカソードとが配置され([0022])、「燃料電池10の燃料ガスが流れる流路をアノード流路25と呼」([0022])ぶとすることが記載されており、このアノード流路25は、燃料電池10のアノードを通る流路といえる([図1])。「水素タンク20は、高圧の水素ガスが貯蔵される貯蔵装置であり、燃料ガス供給流路24を介して燃料電池10のアノード流路25に接続され」([0023])、「アノード流路25の出口側と燃料ガス供給流路24とがガス循環流路27によって接続され」([0024])、「ガス循環流路27上には、循環ポンプ50が設けられている」([0024])から、甲9には、アノードとカソードとが配置された燃料電池10と、循環ポンプ50とガス循環流路27とを備える燃料電池システム100が記載されていると認められる。
b 甲9に記載された燃料電池システム100は、「循環ポンプ50が駆動することにより、燃料電池10のアノードで電気化学反応に供された後の燃料ガスは、ガス循環流路27および燃料ガス供給流路24を介して、再び、燃料電池10のアノード流路25(アノード)に供給され、発電に再利用される」([0024])ものであるから、甲9には、循環ポンプ50を駆動することにより、ガス循環流路27を介して燃料ガスをアノード流路25に供給することが記載されていると認められる。
c 甲9に記載された燃料システム100は、「燃料電池システム100は、起動時において、循環ポンプ50の故障を検知するためのポンプ故障検知処理を実行する」([0034])ものであるから、甲9には、燃料電池システム100の起動時に、循環ポンプ50の故障を検知するポンプ故障検知処理が実行されることが記載されていると認められる。
d 甲9には、「故障判定部450は、・・・循環ポンプ50が故障であると判定し(ステップS100)、この処理を終了」([0048])し、「この処理の終了時において、・・・、燃料電池10の発電を行っている場合には、発電を停止するようにしてもよい」([0048])と記載されているから、甲9には、ポンプ故障検知処理によって、循環ポンプ50が故障であると判定されると、燃料電池10の発電を停止することが記載されている。
e 上記aないしd及び甲9の図1等の記載から、甲9には、次の事項(以下、「甲9記載事項」という。)が記載されていると認められる。
・甲9記載事項
「アノードとカソードとが配置された燃料電池10と、循環ポンプ50とガス循環流路27とを備える燃料電池システム100の起動時に循環ポンプ50の故障を検知するものにおいて、
ポンプ故障検知処理によって、循環ポンプ50が故障であると判定されると、燃料電池10の発電を停止すること。」
ウ 対比及び判断
(ア)請求項1について
a 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「発電を行」うことは、SOFC12が発電し、電力を生成するように構成していることにほかならないから、本件発明1の「電力を生成するように構成され」ていることに相当し、甲1発明1の「燃料極」と「空気極」は、それぞれ、本件発明1の「アノード」と「カソード」に相当し、甲1発明1の「SOFC12」は、本件発明1の「燃料電池スタック」に相当する。そうすると、甲1発明1の「発電を行い、燃料極と空気極を有するSOFC12」は、本件発明1の「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタック」に相当する。
甲1発明1の「環流ライン」は、本件発明1の「第1の経路」に相当し、甲1発明1の「前記燃料極を介して流れる燃料極を含むライン」は、燃料極を含むラインに燃料極が配置されているものであり、上記のようにこの「燃料極」は本件発明1の「アノード」に相当するから、甲1発明1の「前記燃料極を介して流れる燃料極を含むライン」は、本件発明1の「前記アノードが配置される第2の経路」に相当する。さらに、甲1発明1の「燃料ガスの循環ライン」は、本件発明1の「アノード再循環ループ」に相当する。そうすると、甲1発明1の「前記燃料極を含み、環流ラインと前記燃料極を介して流れる燃料極を含むラインとを有する燃料ガスの循環ライン」は、本件発明1の「前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループ」に相当する。
甲1発明1の「複合発電システム10」は、本件発明1の「燃料電池システム」に相当し、甲1発明1の「外部供給ライン」は、本件発明1の「燃料供給経路」に相当する。また、甲1発明1の「合流点で合流」することは、本件発明1の「結合点で結合され」ることに相当し、甲1発明1の「燃料極を含むラインとな」ることは、本件発明1の「第2の経路を形成」することに相当する。さらに、甲1発明1の「排出ライン42」は、本件発明1の「燃料排気経路」に相当し、甲1発明1の「燃料ガス供給手段」は、本件発明1の「燃料供給デバイス」に相当する。そうすると、甲1発明1の「複合発電システム10の正常動作中は、外部供給ラインと前記環流ラインとは合流点で合流し前記燃料極を含むラインとなり、前記燃料極を含むラインが分岐点で前記環流ラインと排出ライン42に分岐される、前記外部供給ラインを介して燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段」は、本件発明1の「燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイス」に相当する。
甲1発明1の「空気供給ライン46」は、本件発明1の「空気供給経路」に相当し、甲1発明1の「前記SOFC12の前記空気極」は、本件発明1の「前記燃料電池スタックの前記カソード」に相当し、甲1発明1の「コンプレッサ18」は、本件発明1の「空気供給デバイス」に相当する。そうすると、甲1発明1の「空気供給ライン46を介して前記SOFC12の前記空気極に空気を供給するコンプレッサ18」は、本件発明1の「空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイス」に相当する。
甲1発明1の「再循環ブロワ36」は、本件発明1の「アノードブロワ」に相当し、甲1発明1において、再循環ブロワ36が「前記循環ラインに備えられ」ることは、本件発明1において、アノードブロワが「前記アノード再循環ループに配置され」ることに相当する。甲1発明1において、再循環ブロワ36が「SOFC12から排出される燃料ガスを循環させる」ことは、本件発明1のアノード再循環ループに相当する燃料ガスの循環ラインを循環させるように再循環ブロワ36を駆動することにほかならないから、甲1発明1の「SOFC12から排出される燃料ガスを循環させる」ことは、本件発明1の「前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成された」ことに相当する。そうすると、甲1発明1の「前記循環ラインに備えられ、SOFC12から排出される燃料ガスを循環させる再循環ブロワ36」は、本件発明1の「前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワ」に相当する。
甲1発明1の「燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態となる」ことは、本件発明1の「アノード圧力をカソード圧力よりも高くなる」ことに相当する。甲1発明1において、「制御される」のは、制御弁34と減圧弁44であって、これらがそれぞれ制御されるから、甲1発明1の「制御される」は、本件発明1の「別個に調整する」に相当し、甲1発明1の「環流ラインに備えられる制御弁34と排出ライン42に設けられる減圧弁44」は、本件発明1の「圧力制御デバイス」に相当する。そうすると、甲1発明1の「燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態となるように制御される環流ラインに備えられる制御弁34と排出ライン42に設けられる減圧弁44」は、本件発明1の「アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイス」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。
・一致点
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、
前記アノードを含み、第1の経路と前記アノードが配置される第2の経路とを有するアノード再循環ループと、
燃料電池システムの正常動作中は、燃料供給経路と前記第1の経路とが結合点で結合されて前記第2の経路を形成し、前記第2の経路が分岐点で前記第1の経路と燃料排気経路に分岐される、前記燃料供給経路を介して燃料ガスを供給する燃料供給デバイスと、
空気供給経路を介して前記燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給する空気供給デバイスと、
前記アノード再循環ループに配置され、前記アノード再循環ループ内の循環を駆動するように構成されたアノードブロワと、
アノード圧力をカソード圧力よりも高くなるように別個に調整する圧力制御デバイスと
を備えた
燃料電池システム。
・相違点1
本件発明1が「前記第1の経路と前記結合点との少なくとも一つに配置され、前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成されたスイッチング要素」を備え、「前記アノードブロワの故障の信号を受信すると、前記スイッチング要素がオフにトリガされて前記第1の経路が遮断され、前記燃料ガスが前記第1の経路を通って前記燃料排気経路に流れるのを防ぐ」のに対し、甲1発明1は、「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定すると、燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給し、その後、都市ガスと水蒸気をSOFC12の燃料極へ供給して、SOFC12の降温を行い、700℃に達した後に、外部供給ラインから窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され、さらに、温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され、前記減圧弁44が開かれ、上記排出ライン42からガスがパージ可能とされることで、燃料極を含むラインを大気開放し、燃料極の圧力を空気極の圧力よりも高く保った状態とする、」点。
b 判断
上記相違点1について検討する。
まず、甲1発明1において、減圧弁44が開かれ、排出ライン42からガスがパージ可能となるのは、SOFC12の「温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され」たときであり、停止動作において、それ以前の時点で減圧弁44を開くこと、及び排出ライン42をガスが流れることが可能であることは、甲1に記載されていない。そうすると、甲1発明1において、再循環ブロワ36の運転ができないと判定されて、本件発明1の燃料排気経路に相当する排出ライン42をガスが流れることができるのは、この場合に限られる。しかし、この時点では、減圧弁44は開いているものの、SOFC12の「温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され」たときであるから、水素ガス等の供給は停止されており、SOFC12の燃料極を通って、排出ライン42にガスが流れることはできない状態になっているといえる。
そして、甲1発明1は、「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり 、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定」された場合に、一連の動作を行うことで複合発電システム10を適切に停止させるものであるから、甲1発明1において、燃料ガスが燃料極を通って、排出ライン42に流れるようにすることには、阻害要因がある。したがって、仮に、本件の優先日前において、燃料ガスをアノードが再循環ループにおけるアノードが配置された第2の経路から排気経路に流すように構成されたスイッチング要素が公知であったとしても、直ちに、これを甲1発明1に適用し、本件発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、この点について、甲2発明についてみると、甲2発明は、「停止動作に入った場合、燃料ガス供給流路201の外気導入路206と合流する位置よりも上流側に設けられた水素元電磁弁18とガス供給弁22とを閉じ、循環流路204の減圧排出路205と分岐する位置よりも下流側に設けられた循環電磁弁26を閉じ、減圧排出路205に設けられた減圧電磁弁23を開放する」ものであるから、減圧電磁弁23を開いて、減圧排出路205をガスが流れるようになったときには、水素元電磁弁18とガス供給弁22とが閉じられており、燃料ガスは、燃料極を通って減圧排出路205へ流れることはできないものである。
そうすると、甲1発明1に甲2発明を適用したとしても、「前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成された」ものとはならず、本件発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を得ることはできない。
また、甲3に記載された上記甲3発明は、本件発明1の燃料排気経路に相当する経路を備えていないことから、ポンプ32が故障した場合に、水素を循環路のうち、燃料電池22を通る経路から「排気経路」に流すものではない。そうすると、甲1発明1に甲2発明、甲3発明を適用したとしても、「前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成された」ものとはならず、本件発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を得ることはできない。
c 請求項1についてのまとめ
以上のように、本件発明1は、甲1発明1に甲2発明を適用して、容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明1に甲2発明、甲3発明を適用して、容易に発明をすることができたものでもないから、申立人が特許異議申立書において主張する進歩性の理由1により、本件発明1の特許を取り消すことはできない。
(イ)請求項3ないし13について
請求項3ないし13は、請求項1の記載を引用する請求項であって、本件発明3ないし13は、本件発明1の発明特定事項を含み、さらに減縮した発明である。
そうすると、本件発明1が甲1発明1及び甲2発明に基いて、容易に発明をすることができるものではなく、また甲1発明1、甲2発明及び甲3発明に基いて、容易に発明をすることができたものではないのと同様に、本件発明3ないし13も甲1発明1及び甲2発明に基いて、容易に発明をすることができたものではなく、また甲1発明1、甲2発明及び甲3発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。
また、申立人が特許異議申立書において、本件発明3ないし13が進歩性を有しない証拠として示した甲4ないし8をみても、上記相違点1の本件発明1の発明特定事項を容易とする事項は、記載されていない。なお、甲4ないし8は、以下の通りである。
甲4:特許第6821356号公報
甲5:特開2015-130337号公報
甲6:特開2006-318907号公報
甲7:特開2018-67469号公報
甲8:特開2014-75248号公報
そうすると、本件発明3ないし13は、甲1ないし甲8に記載された発明または事項に基いて、容易に発明をすることができたものではなく、本件発明3ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
(ウ)請求項14について
a 対比
本件発明14と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「発電を行」うことは、SOFC12が発電し、電力を生成するように構成していることにほかならないから、本件発明14の「電力を生成するように構成され」ていることに相当し、甲1発明2の「燃料極」と「空気極」は、それぞれ、本件発明14の「アノード」と「カソード」に相当し、甲1発明2の「SOFC12」は、本件発明14の「燃料電池スタック」に相当する。また、甲1発明2の「再循環ブロワ36」、「環流ライン」、「循環ライン」は、それぞれ、本件発明14の「アノードブロワ」、「アノードブロワ経路」、「アノード再循環ループ」に相当する。また、甲1発明2の「複合発電システム10」は、本件発明14の「燃料電池システム」に相当する。そうすると、甲1発明2の「発電を行い、燃料極と空気極を有するSOFC12と、再循環ブロワ36と環流ラインとを含む循環ラインとを備える複合発電システム10を制御する方法」は、本件発明14の「電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法」に相当する。
甲1発明2の再循環ブロワ36を「運転すること」は、本件発明14のアノードブロワを「駆動すること」に相当するから、甲1発明2の「前記再循環ブロワ36を運転することによって、前記循環ラインの燃料ガスを循環させること」は、本件発明14の「前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給すること」に相当する。また、甲1発明2の「SOFC12の前記空気極に空気を供給すること」は、本件発明14の「燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給すること」に相当する。
甲1発明2の「運転の可否を監視すること」は、本件発明14の「動作状態を監視すること」に相当するから、甲1発明2の「前記再循環ブロワ36の運転の可否を監視すること」は、本件発明14の「前記アノードブロワの動作状態を監視すること」に相当する。
甲1発明2の「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であ」ることと本件発明14の「前記アノードブロワの故障信号を受信する」こととは、燃料電池システムに異常が発生したときである限りで一致する。また、甲1発明2の「至急停止」は、本件発明14の「シャットダウン手順」に相当するから、甲1発明2の「至急停止を行うこと」は、本件発明14の「シャットダウン手順を開始すること」に相当する。
甲1発明2の「燃料極の圧力を空気極の圧力よりも高く保った状態とすること」は、本件発明14の「アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること」に相当する。
以上のことから、本件発明14と甲1発明2とは、次の一致点で一致し、相違点2で相違する。
・一致点
電力を生成するように構成され、アノードとカソードとを有する燃料電池スタックと、アノードブロワとアノードブロワ経路を含むアノード再循環ループとを備える燃料電池システムを制御する方法であって、
前記アノードブロワを駆動することによって前記アノード再循環ループに燃料ガスを供給することと、
燃料電池スタックの前記カソードに空気を供給することと、
前記アノードブロワの動作状態を監視することと、
燃料電池システムに異常が発生したとき、前記燃料電池システムのシャットダウン手順を開始することと、を含み、
前記シャットダウン手順が、
アノード圧力を調整し、前記アノード圧力をカソード圧力よりも高く維持するようにすること、
を含む方法。
・相違点2
燃料電池システムに異常が発生したときに関し、本件発明14は、「前記アノードブロワの故障信号を受信」したときであるのに対し、甲1発明2は、「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定」したときであり、これによって行われるシャットダウン手順が、本件発明14は、「前記アノードブロワ経路が遮断されること、および前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるようにすること」を含むのに対し、甲1発明2は、「燃料ガスの供給を停止し、窒素ガスを外部供給ラインから供給し、その後、都市ガスと水蒸気をSOFC12の燃料極へ供給して、SOFC12の降温を行い、700℃に達した後に、外部供給ラインから窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給され、さらに、温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され、燃料極を含むラインを大気開放するために排出ライン42に設けられた減圧弁44が開かれ」ることを含む点。
b 判断
上記相違点2について検討する。
まず、甲1発明2において、「燃料極を含むラインを大気開放するために排出ライン42に設けられた減圧弁44が開かれ」るのは、SOFC12の「温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され」たときであり、至急停止において、それ以前の時点で減圧弁44を開くこと、及び排出ライン42をガスが流れることが可能であることは、甲1には、記載されていない。そうすると、甲1発明2において、再循環ブロワ36の運転ができないと判定されて、本件発明1の燃料排気経路に相当する排出ライン42をガスが流れることができるのは、この場合に限られる。しかし、この時点では、減圧弁44は開いているものの、SOFC12の「温度が100℃に達した後、水素ガスの供給が停止され」たときであるから、水素ガス等の供給は停止されており、SOFC12の燃料極を通って、排出ライン42にガスが流れることはできない状態になっているといえる。
そして、甲1発明2は、「常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とを比較し、許容範囲外となった計測点の値が、重異常であり、前記再循環ブロワ36の運転ができないと判定」された場合に、一連の動作を行うことで複合発電システム10を至急停止させるものであるから、甲1発明2において、燃料ガスが燃料極を通って、排出ライン42に流れるようにすることには、阻害要因がある。したがって、仮に、本件の優先日前において、燃料ガスをアノードが再循環ループにおけるアノードが配置された第2の経路から排気経路に流すように構成されたスイッチング要素が公知であったとしても、直ちに、これを甲1発明2に適用し、本件発明14の上記相違点2に係る発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、この点について、「アノードブロワの故障信号を受信すると、燃料電池システムのシャットダウン手順を開始すること」は、周知技術(上記イ(ウ)f及びイ(オ)d参照)であり、また、甲4には、燃料電池システムの「インターロック時に燃料極109から排出される燃料ガスを燃料極109の出口側で燃料ガス循環路から分岐する排燃料ガス均圧ベントライン48を介して系外へ流通させること」が記載(上記イ(エ)f参照)されているといえるが、いずれの文献にもアノードブロワの故障信号を受信すると開始されるシャットダウン手順において、「アノードブロワ経路が遮断される」ものではなく、アノード再循環ループに含まれるアノードブロワで故障が発生し、「アノードブロワの故障信号を受信」しても「燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるように」したものが記載されているとはいえないから、甲1発明2に甲3及び甲9に記載される周知技術及び甲4発明を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明14の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
c 請求項14についてのまとめ
以上のように、本件発明14は、甲1発明2、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人が特許異議申立書において主張する進歩性の理由2により、本件発明14の特許を取り消すことはできない。
(エ)請求項15ないし18について
請求項15ないし18は、請求項14の記載を引用する請求項であって、本件発明15ないし18は、本件発明14の発明特定事項を含み、さらに減縮した発明である。
そうすると、本件発明14が甲1発明2、甲4発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものではないのと同様に、本件発明15ないし18も甲1発明2、甲4発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものではない。
また、申立人が特許異議申立書において、本件発明15ないし18が進歩性を有しない証拠として示した甲10ないし13をみても、上記相違点2の本件発明14の発明特定事項を容易とする事項は、記載されていない。なお、甲10ないし13は、以下の通りである。
甲10:特開2005-340075号公報
甲11:特開2009-176660号公報
甲12:特開平11-67254号公報
甲13:特開2017-16816号公報
そうすると、本件発明15ないし18は、甲1、甲4、甲10ないし甲13に記載された発明または事項及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものではなく、本件発明15ないし18に係る特許を取り消すことはできない。
(オ)申立人の主張について
申立人は、甲1に記載された発明について「制御弁34又は流調弁38が再循環ブロワ36が故障した場合に、燃料ガスを燃料再循環ライン32における「第2の経路」の相当する経路から排出ライン32に流すように構成されているかについては定かではない」(特許異議申立書80ページ20行(空白行を含まず。以下同様。)ないし81ページ4行)が、「甲2発明には、定常発電状態において燃料電池自体に何らかの不具合が検知され停止動作に入った場合、燃料電池システムは、停止動作に入り、まず、定常発電運転の際に動作していた水素元電磁弁18,ガス供給弁22、循環電磁弁26、排気電磁弁27を閉じ、減圧電磁弁23を開放する点が記載されている」(特許異議申立書81ページ5行ないし同ページ10行)から、「甲1発明から出発した当業者が、・・・甲2発明を参照して、甲1発明の再循環ブロワ36が故障した場合に、制御弁34又は流調弁38を閉止して燃料ガスを第2の経路に相当する経路から排出ライン42に流すように構成して構成要件1F(当審注:本件発明1のスイッチング要素の特定事項)に到達することは、容易になし得たことである」(特許異議申立書81ページ20行ないし同ページ25行)と主張する。
しかし、甲1に記載されている再循環ブロワ36の運転ができないと判定されたときの複合発電システム10の停止動作において、燃料ガスを第2の経路に相当する経路から排出ライン42に流すように構成することに、阻害要因があるのは、上記(ア)bに示すとおりであり、また、甲2発明において、水素元電磁弁18、ガス供給弁22が閉じられると、燃料ガスは、燃料極に供給されなくなり、これは、「前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成された」ものとはいえないから、申立人の主張は採用することができない。
また、申立人は、甲3には、「前記循環路30におけるポンプ32の吐出側に加圧された水素の逆流を防止する逆止弁36が取り付けられている点が開示され」(特許異議申立書82ページ3行ないし同ページ5行)、「甲1発明から出発した当業者が、・・・甲3発明を参照して、甲1発明の再循環ブロワ36の下流側に燃料ガスが逆流するのを防止する目的で逆止弁を設置して構成要件1Fに到達することは、容易になし得たことである」(特許異議申立書82ページ15行ないし同ページ19行)とも主張する。
しかし、甲1発明1において、「前記アノードブロワが故障した場合に、前記燃料ガスを前記第2の経路から前記排気経路に流すように構成」することに阻害要因があるのは、上記(ア)bに示すとおりであり、また、甲3発明は、本件発明1の燃料排気経路に相当する経路を備えていないことから、ポンプ32が故障した場合に、水素を循環路のうち、燃料電池22を通る経路から本件発明1の「排気経路」に相当する経路に燃料ガスを流すものではなく、申立人の主張は採用することができない。
また、申立人は、本件発明14について、「甲4発明には、インターロック動作時・・・において燃料極109・・・から排出される燃料ガスを排燃料ガス均圧ベントライン48・・・を介して系外へ流通させる点が開示されている・・・。当該記載より、甲4発明では、インターロック動作時において、燃料ガスが燃料極109を通って排燃料ガス均圧ベントライン48に流れるように構成されていることが把握され」(特許異議申立書93ページ3行ないし同ページ10行)、「また、甲4発明の段落【0086】~【0087】には、インターロック時において、燃料極109側が空気極113・・・側と比較して差圧が大きくなった場合に、排燃料放出遮断弁46を閉状態から開状態にして排燃料ガス排出ライン44・・・を介して系外に排出させることが開示されている。当該記載からも、甲4発明では、インターロック動作時において、燃料ガスが燃料極109を通って排燃料ガス排出ライン44に流れるように構成されていることが把握され」(特許異議申立書93ページ11行ないし同ページ18行、「そうすると、甲1発明から出発した当業者が、甲1発明と同じ技術分野の発明である甲4発明を参照して、甲1発明の複合発電システム10のシャットダウン手順時において、燃料ガスが燃料極を通って排出ライン42に流れるようにして構成要件14Hに到達することは、容易に想到し得たことである」(特許異議申立書93ページ19行ないし同ページ23行)と主張する。
しかし、甲1発明2において、燃料ガスが燃料極を通って、排出ライン42に流れるようにすることに阻害要因があるのは、上記(ウ)bに示すとおりであり、また、いずれの文献にもアノード再循環ループに含まれるアノードブロワで故障が発生し、「アノードブロワの故障信号を受信」しても「燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れるように」したものが記載されているとはいえないから、仮に甲1発明2に甲4発明及び周知技術を適用したとしても、上記相違点2に係る本件発明14の発明特定事項を得ることはできず、申立人の主張は、採用することができない。
(2)特許法第36条第6項第2項について
請求人は、「本件発明16における『アノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値』(下線付加)との記載は、どの程度の温度閾値であれば無視し得るのかが定かではなく、「無視し得る」との記載が明確性を欠く」(特許異議申立書100ページ2行ないし同ページ4行と主張する。
この主張について検討する。まず、請求項16は、請求項14及び15を引用する形式で記載されたものであるから、アノードとは、「アノードとカソードを有する燃料電池スタック」であって、「前記燃料ガスが前記アノードを通って燃料排気経路に流れる」([請求項14])ものにおけるアノードであり、アノード材料とは、この燃料電池スタックの燃料ガスが流れるアノードを構成する材料であることは、明らかである。そして、このようなアノードを構成する材料として、金属などの酸化するもの(以下、「金属材料等」という。)が用いられ、このような金属材料等は、酸化ガス雰囲気では、特に高温の状態で酸化速度が速くなり、アノードにおいて金属材料等に酸化が進むと金属材料等の膨張(体積膨張)が生じ、燃料電池として機能しなくなる状態になりえるが、還元ガス雰囲気では、高温の状態であっても酸化が進まないことは、燃料電池の技術分野において、技術常識である。以上のような理解は、本件特許明細書の[0008]の記載とも整合する。
このような理解のもとで、請求項16の記載をみると、本件発明16は、「アノードの上流に配置された改質器をさらに含み」、「アノード温度がアノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値を下回るまで改質器入口の温度を所定の改質反応温度よりも高く維持する」ことが特定されている。ここで、改質器入口の温度が改質反応温度よりも高いことから、改質器では燃料ガスの改質が行われ、アノードへは改質された燃料ガス、すなわち還元ガスがアノードの上流に配置された改質器からアノードに供給されることが理解でき、このとき、アノードには、還元ガスが供給されることから、高温(金属材料等が酸化する温度以上)であっても還元ガス雰囲気のため、金属材料等の酸化は進まないこととなる。そうすると、「アノード温度がアノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値を下回るまで改質器入口の温度を所定の改質反応温度よりも高く維持する」とは、アノードを構成する金属材料等の酸化が事実上進まないように「アノードの上流に配置された改質器」によるガスの改質反応が行われ、改質ガスがアノードに供給される状態を維持することを意味していると理解できるから、「アノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値」とは、この温度閾値を超えると、酸化ガス雰囲気においてアノード材料の酸化が事実上進んでしまう温度を意味していると理解でき、この点、明確である。そして、このような理解は、発明の詳細な説明において、アノードにNiを用いた場合には、「Niは、約350℃を超える温度で、カソード層から拡散した空気中の酸素またはアノードチャンバに導入された空気中の酸素と反応して酸化ニッケル(NiO)を形成する可能性がある」([0008])ことから、「温度が500℃を超える場合、Niの再酸化を防ぐために、アノード12を還元雰囲気中に保持することができ」([0031])、「温度閾値は、例えば350℃である」([0056])としていることとも整合する。
そうすると、「アノード材料の酸化速度を無視し得る温度閾値」の記載が明確でないとはいえず、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。
7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3ないし18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び3ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2は、本件訂正により削除され、本件特許の請求項2に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しなくなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700632