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特許異議申立

2024-700279

液化ガス燃料船

審判番号
2024-700279
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-168565
登録番号
7355461
請求日
2024年03月28日
審決日
2025年09月11日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】常石ソリューションズ東京ベイ株式会社
  • 【権利者代理人】神崎 真
  • 【権利者代理人】小倉 洋樹
  • 【権利者代理人】松浦 孝
  • 【異議申立人】小山 恵
審判長/審判官
  • 審判長 田村 耕作
  • 審判官 高橋 学
  • 審判官 横溝 顕範
分類
P1651.121-YAA(B63B) / P1651.113-YAA(B63B) / P1651.537-YAA(B63B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7355461号発明「液化ガス燃料船」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7355461号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。 特許第7355461号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7355461号(以下「本件発明」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年10月28日に出願した特願2016-212220号の一部を令和3年10月14日に新たな特許出願としたものであって、令和5年9月25日にその特許権の設定登録がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行された。 その後、特許異議申立人小山恵(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。 本件特許についての申立人による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 3月28日 :特許異議の申立て(全請求項) 同年 6月 5日 :特許異議申立書に対する手続補正書(方式)の提出 同年 8月30日付け:取消理由通知書 同年11月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月 6日 :特許権者による訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出 令和7年 1月16日 :申立人による意見書の提出 同年 3月 4日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 6月26日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年5月9日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 また、令和6年11月1日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げされたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から機関室前壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」と記載されているのを、「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備え、フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について (1-1)訂正の目的 訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1に対して「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」との事項を加える訂正は、本件訂正前の請求項1における「液化ガス燃料タンク」が「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ることを特定するものである。 また、訂正事項1のうち、本件訂正前の請求項1の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から機関室前壁までの間に配置される」との記載を、「前前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」とする訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が」配置される位置が、「前記フリーボードデッキよりも下側の区画」であること、及び「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から」更に「長手方向後方にある機関室前壁までの間」であることを特定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (1-2)新規事項の有無 訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)の段落【0011】、【0018】、【0021】、及び図1の記載に基づくものであるので、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (1-3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について (2-1)訂正の目的 訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項2に対して「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」との事項を加える訂正は、本件訂正前の請求項2における「液化ガス燃料タンク」が「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ることを特定するものである。 また、訂正事項2のうち、本件訂正前の請求項2の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」との記載を「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」とする訂正は、本件訂正前の請求項2の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」位置が「前記フリーボードデッキよりも下側の区画」であることを特定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2-2)新規事項の有無 訂正事項2は、明細書等の段落【0008】、【0011】、【0018】、【0023】、及び図1の記載に基づくものであり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2-3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3について (3-1)訂正の目的 訂正事項3は、本件訂正前の請求項3における「1列センターピラー構造」について、該「1列センターピラー構造」が「フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる」ものであることを特定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3-2)新規事項の有無 訂正事項3は、明細書等の段落【0016】、図1及び3の記載に基づくものであり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3-3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~3に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の発明 前記第2で説示したように本件訂正請求は認められるから本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、 前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される ことを特徴とする液化ガス燃料船。 【請求項2】 液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、 前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される ことを特徴とする液化ガス燃料船。 【請求項3】 液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、 前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備え、フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される ことを特徴とする液化ガス燃料船。」 第4 取消理由通知で通知した取消理由について 本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審において特許権者に通知したこれまでの取消理由の要旨は、次の取消理由を含むものである。 (令和6年8月30日付け取消理由通知書及び令和7年3月4日付け取消理由通知書(決定の予告)参照) 理由1:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明、又は日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 <引用文献一覧> 甲第1号証:Nick Savvides,“GREENSTREAM: LNG barge for Shell”, SIGNIFICANT SHIPS OF 2013,UK,The Royal Institution of Naval Architects,2014, P52, P54 甲第3号証:Jevgenij Petrov et al., Seminar-roundtable THE POSSIBILITIES OF LNG“LNG fuelled vessels”, MarTech LNG, Risavika, 18th of September 2013 甲第4号証:STUDY VISIT TO STAVANGER, NORWAY TO EXPLORE LNG, PROGRAMME DAY 2: 18th of SEPTEMBER 2013 AT RISAVIKA HARBOUR/SKANGASS LNG TERMINAL/MS STAVANGERFJORD 甲第5号証:「国際海運におけるエネルギー効率化に向けた枠組み作り(フェーズ2)」,日本,財団法人 日本船舶技術研究協会,2012年3月,P55~P58,P157~P170,P197~P198 なお、甲第4号証は、甲第3号証の公表日を証明するための証拠であり、技術的内容を示すための証拠ではない。 以下、「甲第○号証」を「甲○」という。 <請求項に係る発明と引用文献との関係> ・請求項1 引用文献 甲1、甲5 ・請求項1 ・引用文献 甲3、甲5 ・請求項2 ・引用文献 甲5 ・請求項3 ・引用文献 甲5 第5 当審の判断 1 理由1(明確性要件) (1)本件発明1について 請求項1には、「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」との記載がある。 ここで、乾舷甲板(フリーボードデッキ)は、日本産業規格(JIS)F0011「造船用語-船体-基本計画」の「番号2009」の記載や、「満載喫水線規則第二条 第一項」及び「船舶構造規則(平成十年運輸省令第十六号)第一条第二項」の記載から、「船体の主要部を構成する最上層の全通甲板」を意味するものであると認められる。 そして、フリーボードデッキの位置は、個々の船舶の船体構造に応じたものであり、全ての船舶の船体において、必ずしも共通した位置にあるとは認められないものの、船舶がフリーボードデッキを備えていることは明らかであると認められる。 そうすると、請求項1の前記記載は、「液化ガス燃料船」における「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」が、「液化ガス燃料船」が備える「フリーボードデッキ」を基準として、その「下側の区画」であることを特定するものであり、「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」の位置が「フリーボードデッキ」との関係によって、明確に特定されていると認められる。 そして、このような請求項1における「フリーボードデッキ」を基準とした「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」の位置の特定は、明細書等の記載と矛盾するものでもない。 したがって、請求項1の記載は、明確であるといえる。 (2)本件発明2について 請求項2にも、「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」との記載があるところ、前記(1)と同様に、請求項2の前記記載も、「液化ガス燃料船」における「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」が、「液化ガス燃料船」が備える「フリーボードデッキ」を基準として、その「下側の区画」であることを特定するものであり、「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」の位置が「フリーボードデッキ」との関係によって、明確に特定されていると認められる。 そして、このような請求項2における「フリーボードデッキ」を基準とした「前記液化ガス燃料タンク」が「収容され」る「区画」の位置の特定は、明細書等の記載と矛盾するものでもない。 したがって、請求項2の記載は、明確であるといえる。 (3)申立人の意見書について 令和7年6月26日提出の意見書(1ページ~3ページ)において、申立人は、請求項1~3の「フリーボードデッキ」についてその定義が定かではない点、及び「管海官庁が船舶の構造を考慮して差し支えないと認める場合」とそうでない場合とで、請求項1~3における「フリーボードデッキ」は異なる全通甲板を意味することとなる点から、請求項1~3の記載は明確でなく、本件発明1~3は、明確でない旨を主張する。 しかしながら、前記(1)で述べたように、乾舷甲板(フリーボードデッキ)は、「船体の主要部を構成する最上層の全通甲板」であり、フリーボードデッキの位置は、個々の船舶の船体構造に応じたものとはなるものの、船舶がフリーボードデッキを備えていることは明らかであるといえる。 そうすると、請求項1~2は、液化ガス燃料船が備えるフリーボードデッキを基準として、液化ガス燃料タンクが収容される区画の上下方向の位置を特定するものであるので、液化ガス燃料船の上下方向における液化ガス燃料タンクが収容される区画の位置がフリーボードデッキとの関係で明確に特定されていると認められる。 また、本件発明3においても同様に、液化ガス燃料船における1列センターピラー構造の設けられる上下方向の範囲が、液化ガス燃料船が備えるフリーボードデッキと自動車搭載区画の関係によって明確に特定されているものと認められる。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 (4)小括 以上のとおり、請求項1、2の記載は明確であるので、本件発明1、2は明確である。 したがって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 よって、取消理由1(明確性)によって、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。 2 理由2(進歩性) (1)甲1について (1-1)甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、括弧内は、申立人の提出した抄訳文である。 ア「GREENSTREAM is the first LNG-powered LNG-carrying barge to be delivered from Peters Shipyards to Shell, managed by Interstream Barging, as part of the company’s longer term development of a new European LNG marine fuel industry with the potential to fuel inland barges, ferries, tugs, or even cruise ships.」(52ページ左欄14~20行) (GREENSTREAMは、Peters ShipyardsからShellに引き渡されることになるLNG燃料船であるLNG運搬バージであり、内陸バージ、フェリー、タグボートまたはクルーズ船でさえも燃料供給できる可能性がある新たな欧州船舶LNG燃料産業の会社の長期的事業展開の一部としてInterstream Bargingによって管理される。) イ「Greenstream is propelled by two electrically powered Z-drives. These Z-drives with a single rudder propeller (in a nozzle) ensure that the aft ship section can be optimised for shallow water. The thrusters give the vessel better maneuverability and eliminate the need for separate rudders. Their electric motors are placed inboard, which keeps the hub of the pod compact. Electric power is generated in four 300kW LNG-powered gensets, which are mounted in pairs in containers on the aft deck.」(52ページ左欄36行~45行) (Greenstreamは、2基の電動Z-ドライブによって推進される。単一舵プロペラ(ノズルの中に)を有するこれらのZ-ドライブは、船尾セクションが浅瀬向けに最適化され得るようにする。そのスラスターは、より良い操縦性を船舶に与え、分離した舵の必要性を無くす。それらの電動モータは船内に配置され、それによってポッドのハブがコンパクトに維持される。電力は4基の300kWのLNG燃料発電機セットにおいて発電され、それらの発電機セットは対として後部甲板上のコンテナに搭載される。) ウ「An LNG generator set consists of two Scania engines, with spark plugs to enable the combustion of natural gas, and an alternator. Each container, or LNG Pack, houses two LNG gensets and the necessary ventilation and fire extinguishing equipment and can be easily coupled and shipped to a workshop by truck.」(52ページ左欄46行~51行) (LNG発電機セットは、天然ガスの燃焼を可能にするスパークプラグを備えた2基のScaniaエンジンと、1基の交流発電機により構成される。各コンテナ、すなわちLNG Pack (LNGパック)は、2基のLNG発電機セットおよび必要な換気および消火設備を収容し、簡単に連結されてトラックで作業場に輸送可能である。) エ「The vessel is equipped with six cargo tanks with double skinned hull」(52ページ13行~12行) (船舶には、二重船殻構造の6基の貨物タンクが装備されている。) オ 甲1の54ページの図は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000001.jpg] 」 カ 甲1の54ページの図に対して申立人の注釈を入れた図は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000002.jpg] 」 (1-2)甲1からの認定事項 前記(1-1)から、以下の事項が認められる。 ア 前記(1-1)ア、ウ、及びオから、LNG燃料船のLNG燃料タンクの少なくとも一部は、船側から船幅の1/5よりも内側に配置されていることが看取できる。 イ 前記(1-1)イ、オ、及びカから、推進機関である「電動Z-ドライブ」の「電動モータ」は、前記(1-1)エ、オ、及びカにおける「LNG Pack」の下方で船内に位置する区画内に配置されているといえる(以下、当該「区画」を前記(1-1)カの図面に記載されたとおり「機関室」という。)。 ウ 前記(1-1)オ、並びに前記(1-1)カに記載された垂線間長である全長(L)(以下「全長L」という。)の中心線、及び該中心線からの全長Lの30%の長さ(以下「30%L」という。)を示す補助線の記載から、LNG燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記全長Lの中心から長手方向後方に向かった前記30%Lの位置と、前記30%Lの位置から長手方向後方にある機関室の前壁との間に配置されていることが看取できる。 エ 前記(1-1)イから、「電動Z-ドライブ」の「電動モータ」は、「LNG燃料発電機セットにおいて発電され」た「電力」で駆動する。 オ 技術常識を踏まえれば、LNG燃料船がLNG燃料タンク内のLNG燃料をLNG燃料発電機セットに対して供給するLNG燃料供給システムを備えていることは明らかである。 カ 前記(1-1)イ、オ、及びカから、LNG燃料タンクは、後部甲板上に配置されている。 (1-3)甲1発明 前記(1-1)、(1-2)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「LNG燃料発電機セットにおいて発電された電力で駆動する電動Z-ドライブの電動モータを備えたLNG燃料船であって、 LNG燃料タンクと、 前記LNG燃料タンク内のLNG燃料を前記LNG燃料発電機セットへ供給するためのLNG燃料供給システムとを備え、 前記LNG燃料タンクは、後部甲板上に配置され、 前記LNG燃料タンクの少なくとも一部が、船側から船幅の1/5よりも内側に配置され、 前記LNG燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方に向かった30%Lの位置と、当該30%Lの位置から長手方向後方側にある機関室の前壁との間に配置される LNG燃料船。」 (2)甲3及び甲4について (2-1)甲3の公知日 甲3の1ページの記載から、甲3は、MarTech LNGが主催したセミナーにおける2013年9月18日に発表された資料であることが認められ、甲4の当該セミナーのプログラムからもその点が裏付けられる。 (2-2)甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。なお、括弧内は、申立人の提出した抄訳文である。 ア 甲3の9ページの図は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000003.jpg] 」 イ 甲3の9ページの図の注釈を申立人が翻訳した図は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000004.jpg] 」 ウ「Gas detector system arranged to automatically shutdown the gas supply system, and disconnect all non-ex equipment.」(7ページ) (ガス供給システムを自動的にシャットダウンし、すべての非Ex機器を切断するように配置されたガス検知器システム。) (2-3)甲3からの認定事項 前記(2-2)及び甲3の記載全体から、以下のことが認められる。 ア 前記(2-2)アの船が、LNG燃料船であること。 イ エンジンがLNGを燃料として使用していること。 ウ 燃料であるLNGをLNGタンクに貯蔵していること。 エ ガス供給システムを有すること。また、技術常識を踏まえると、前記ガス供給システムによってLNGタンク内のLNGがエンジンへ供給されることは、明らかである。 オ 前記(2-2)ア及びイから、LNGタンクは、船体内に収容され、LNG燃料船の船幅方向中央に配置されることが看取できる。 カ 前記(2-2)ア及びイから、LNGタンクの全体が、LNG燃料船の全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%の位置(以下「30%位置」という。)から前記全長の中心から長手方向前方にある機関室の前壁までの間に配置されていることが看取できる。 (2-4)甲3発明 前記(2-1)~(2-3)、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が本件特許出願前に公然知られていたといえる。 「LNGを燃料として使用するLNG燃料船であって、 前記LNGを貯蔵するLNGタンクと、 前記LNGタンク内のLNGをエンジンへ供給するガス供給システムとを備え、 前記LNGタンクは、船体内に収容され、前記LNG燃料船の船幅方向中央に配置され、 LNGタンクの全体が、LNG燃料船の全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%位置から前記全長の中心から長手方向前方にある機関室の前壁までの間に配置される LNG燃料船」 (3)甲5について (3-1)甲5の記載事項1 甲5には、次の事項が記載されている。 ア「2011年度はこの結果を基に内航小型船に適用した場合の技術的課題の抽出、経済性の評価を行うことにした。環境対策を主たる目的として、国および(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下JRTTと略す)は電気推進船スーパーエコシップ(以下SESと略す)の普及促進を推進してきた。このSESへのLNG焚き適用の可能性を調査した。」(157ページ13行~16行) イ「今回の調査では内航小型船としてJRTTが普及を促進しているSESをモデルとし、この実用化開発中の舶用ガスエンジンの採用を前提とした。・・・SESでは主としてパワーマネージメントの観点から推進に必要な電力を複数の発電機関の並列運転により供給している。このコンセプトを活用して複数のLNG専焼の発電機関(単ーガス燃料エンジン)と、1基のA重油焚き発電機関とを組み合わせたLNG焚きSESを想定した。」(157ページ30行~37行) ウ「常時はLNG燃料だけで運航し、必要な場合のみ予備発電機関によりA重油にて発電するものとした。」(158ページ21行~22行) エ「(2) LNG燃料タンクについて 749GT型内航貨物船の場合には、特に他の船と比べて燃料タンクを置くスペースの確保が難しいため、他方式と比べて容積効率に優れるIHI-SPB(IMO Type-B)方式(以下SPB方式)とした。」(158ページ32行~35行) オ「(3)LNG燃料供給システムについて ガス発電機機関にはLNGを温水または海水による気化器により気化させ常温まで温度を上げて、低圧の3.5barの天然ガスとして供給するものとし、これによって発電した電力を推進モータに供給するものとした。」(159ページ1行~4行) カ「(4)機関室とLNG機器配置について ・・・LNG焚きのSESとするにあたり、機関室には推進器関連の機器のみを配置し、船首部にLNG燃料区画を設けて、LNGタンクと関連機器を配置することにより、従来の機関室配置上の制約から緩和され機関室を圧縮することにより性能改善の効果を意図する。 機関室には推進電動機、ガス発電機関とそれに関連する機器を配置し、従来の燃料油関連の機器、燃料油タンクは非常用の一部を除いて全廃する。LNG燃料区画にはLNGタンク室とその上部にLNG機器室を配置する。LNG燃料はLNG機器室にてガス化し、上甲板上を縦方向に機関室まで導き、ガス発電機関に供給する。機関室内の供給配管は全てダクト構造の中に導設し、そのダクト内は強制排気通風機にて規定の換気を行う。」(159ページ35行~160ページ8行) キ「(1) 船舶の概要 749GT型タンカーは現在約150隻が燃料油、石油製品の内航輸送に運航されており、最もポピュラーな船種、船型の1つである。近年になり環境対策、輸送効率の向上を目的としてSESが現在のところ3隻が就航している。・・・最新鋭の2軸型SESを選定し、これをLNG焚き船とする検討を行った。」(162ページ2行~6行) ク「2.3.3.2 概略配置図の検討結果 (1)内航タンカーの検討結果 表 3.1. の基本計画で示した 749GT型内航タンカーの概略配置検討図を添付の図7.1.に示した。・・・今回も2軸型SESの船型開発の考え方に沿って、LNGタンクおよび機器を船首部に配置し船尾部の機関室は出来るだけ圧縮した配置とした。これにより重心位置および浮心位置を船尾側に動し、船首肥大度を小さくし、船型性能の向上に努めた。 船首部の狭い区画にLNGタンクを格納するには、円筒型では難しいため、図3.1.に示すような容積効率の良いSPB方式のLNGタンクを想定した。」(167ページ1行~14行) ケ 「 [図:0001429976000005.jpg] 」 (166ページ、表3.1) コ 「 [図:0001429976000006.jpg] 」 (197ページ、電気推進型LNG焚き内航タンカーの概略配置図 検討例) (3-2)甲5からの認定事項1 ア 参考図 前記(3-1)コの図面を一部を拡大した以下の参考図に示すように、船首部に上甲板(以下「船首部上甲板」という。)があり、その下に、船体の上甲板があることが認められる(前記(3-1)コの図面に当審で部材名を付した。)。 [図:0001429976000007.jpg] イ 前記(3-1)キ~コから、LNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカーのLNG燃料タンクの少なくとも一部は、船側から船幅の1/5よりも内側に配置されているといえる。 ウ 前記(3-1)キ~コから、LNGタンクは、LNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカーの全長としての垂線間長(Lpp)の中心から長手方向前方へ35%Lppの位置から船首隔壁までの間に配置されているといえる。 エ 前記(3-1)カ、ク、及びコ、並びに前記アから、船首部上甲板の下側であって、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置にLNG燃料区画が設けられ、LNG燃料区画におけるLNGタンク室内にLNG燃料タンクがあり、当該LNG燃料タンク内のLNGがLNG機器室にて気化されて、ガス発電機関に供給されているといえる。 (3-3)甲5発明1 前記(3-1)、(3-2)から、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明1」という。)が記載されているといえる。 「常時はLNG燃料だけで運航するLNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカーであって、 船首部上甲板の下側であって、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置にLNG燃料区画を設け、 前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室とその上部にLNG機器室を配置し、 前記LNG燃料は前記LNG機器室にてガス化して、上甲板上を縦方向に機関室まで導き、ガス発電機関に供給され、 前記LNG燃料タンクの少なくとも一部は、船側から船幅の1/5よりも内側に配置され、 前記LNG燃料タンク全体は、垂線間長Lppの中心から長手方向前方へ35%Lppの位置から船首隔壁までの間に配置される LNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカー。」 (3-4)甲5の記載事項2 甲5には、次の事項も記載されている。 ア 「(iv)全海域LNGを使用するコンテナ船のタンク配置 全海域LNGを使用するコンテナ船のコンセプトについて、シリンドリカル型Type Cタンクを採ったケースについてのものを図2.2.5.4.1に、・・・示す。いずれも船橋の真下に主機を、タンクはその主機の前面に、それぞれ配置している。タンクを積載した船倉デッキ上にもコンテナを積載することで、必要数を維持している。・・・双方に共通した船体全体の一般配置図を図2.2.5.4.3に、ここから機関室周辺を拡大した配置図を図2.2.5.4.4に、それぞれ示す。」(55ページ16行~24行) イ 「 [図:0001429976000008.jpg] 」 (56ページ) ウ 「 [図:0001429976000009.jpg] 」 (57ページ) エ 「 [図:0001429976000010.jpg] 」 (57ページ) オ 「 [図:0001429976000011.jpg] 」 (58ページ) (3-5)甲5からの認定事項2 ア 前記(3-4)ア~ウから、全海域LNGを使用するコンテナ船において、シリンドリカル型Type Cタンク内にLNG燃料が貯蔵され、当該LNG燃料が主機に供給されること、前記LNG燃料を主機に供給するための機器を備えることは自明である。 イ 前記(3-4)オから、シリンドリカル型Type Cタンクの少なくとも一部が船側から船幅の1/5よりも内側に配置されることが看取できる。 ウ 前記(3-4)ウ、オから、全海域LNGを使用するコンテナ船が1列のセンターピラー構造を有する船舶であり、一対のシリンドリカル型Type Cタンクが船体中心線に対して左右対称に配置されることが看取できる。 (3-6)甲5発明2 前記(3-4)、(3-5)から、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明2」という。)も記載されているといえる。 「全海域LNGを使用するコンテナ船であって、 LNG燃料が貯蔵されるシリンドリカル型Type Cタンクと、前記LNG燃料を主機に供給するための機器とを備え、 前記シリンドリカル型Type Cタンクの少なくとも一部が船側から船幅の1/5よりも内側に配置され、 前記コンテナ船が1列のセンターピラー構造を有する船舶であり、一対の前記シリンドリカル型Type Cタンクが船体中心線に対して左右対称に配置される 全海域LNGを使用するコンテナ船。」 (3-7)甲5の記載事項3 更に、甲5には、以下のことが記載されている。 ア 「 [図:0001429976000012.jpg] 」 (198ページ、電気推進型LNG焚き旅客フェリーの概略配置図 検討例) イ 「LNG 燃料は LNG 機器室にてガス化し、・・・ガス発電機関に供給する。」(160ページ6行~7行) (3-8)甲5技術事項 前記(3-7)ア、イから、甲5には、以下の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されている。 「電気推進型LNG焚き旅客フェリーにおいて、LNGタンク内のLNG燃料をガス化してガス発電機に供給する機器を備えたLNG機器室を船側から船幅の1/5よりも外側に配置させること。」 (4)本件発明1について (4-1)甲1を主引用文献とした場合 ア 対比 (ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、後者の「LNG」が前者の「液化ガス」に相当し、以下同様に、後者の「燃料」が前者の「燃料」に、後者の「LNG燃料船」が前者の「液化ガス燃料船」に、後者の「LNG燃料タンク」が前者の「液化ガス燃料タンク」に、後者の「LNG燃料供給システム」が前者の「液化ガス供給システム」に、後者の「船側」が前者の「船側」に、後者の「船幅」が前者の「型幅」に、後者の「容量」が前者の「容量」に、後者の「全長L」が前者の「全長L」に、後者の「全長Lの中心」が前者の「全長Lの中心」に、後者の「機関室の前壁」が前者の「機関室前壁」に、後者の「配置」が前者の「配置」に、それぞれ相当する。 そして、以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 (イ)後者の「LNG燃料発電機セットにおいて発電された電力で駆動する電動Z-ドライブの電動モータを備えたLNG燃料船」は、「LNG」を「燃料」として「LNG燃料発電機セット」で「発電」を行い、その「電力」で「電動Z-ドライブの電動モータ」を「駆動」させていることから、「LNG」を「燃料」として使用しているといえるので、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船」に相当する。 (ウ)後者の「LNG燃料タンク」は、「LNG」を貯蔵することは明らかなので、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 (エ)後者の「前記LNG燃料タンク内のLNG燃料を前記LNG燃料発電機セットへ供給するためのLNG燃料供給システム」における「LNG燃料発電機セット」は、「LNG燃料」を消費して発電を行うものなので、後者の「LNG燃料発電機セット」は、前者の「燃料消費部」に相当する。 そうすると、後者の「前記LNG燃料タンク内のLNG燃料を前記LNG燃料発電機セットへ供給するためのLNG燃料供給システム」は、前者の「前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。 (オ)前記(ウ)及び(エ)から、後者の「LNG燃料タンクと、前記LNG燃料タンク内のLNG燃料を前記LNG燃料発電機セットへ供給するためのLNG燃料供給システムとを備え」ることは、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 (カ)後者の「前記LNG燃料タンクの少なくとも一部が、船側から船幅の1/5よりも内側に配置され」ることは、前者の「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことに相当する。 (キ)後者の「全長Lの中心から長手方向後方に向かった30%Lの位置」が前者の「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置」に相当するので、後者の「当該30%Lの位置から長手方向後方側にある機関室の前壁との間」が前者の「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間」に相当する。 そうすると、後者の「前記LNG燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方に向かった30%Lの位置と、当該30%Lの位置から長手方向後方側にある機関室の前壁との間に配置される」ことは、前者の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、」「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」ことに相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明は、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置され、 前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される 液化ガス燃料船。」 との点で、一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-1-1] 液化ガス燃料タンクの配置に関して、本件発明1は、液化ガス燃料タンクが「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」「前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、」配置されるのに対して、甲1発明は、LNG燃料タンクが「後部甲板上に」配置される点。 [相違点4-1-2] 液化ガス供給システムの配置に関して、本件発明1は、「船側から型幅の1/5よりも外側に配置され」るのに対して、甲1発明は、LNG供給システムの配置場所が定かでない点。 イ 相違点についての検討 相違点4-1-1について検討する。 まず、甲1からは、甲1発明のどの甲板がフリーボードデッキに当たるのかは、不明である。 また、甲1には、前記(1)(1-1)ウで示したように、2基のLNG燃料発電機セットを含むLNGパックがトラックによる輸送を簡単にしたものであることが記載されているところ、LNGパックが後部甲板上に配置されることも、その輸送の簡単化に寄与しているものと認められる。そして、LNG燃料タンクの後部甲板上への配置も、LNG燃料タンクからLNG燃料が供給されるLNG燃料発電機セットの後部甲板上への配置に対応したものであると認められる。 そうすると、甲1発明において、LNG燃料タンクだけを船体内の区画に収容することに、動機は認められない。 一方、甲5には、前記(3)(3-4)で示したように、船体内の隣接した区画に、LNG燃料が貯蔵されるシリンドリカル型Type CタンクとLNG燃料が供給される主機を収容することが記載されている。 しかしながら、前記(1-1)イ、オ、及びカから、甲1において、LNGパックの下方の区画は、電動モータが配置された機関室となっているので、LNGパックをLNG燃料タンクと一緒に船体内の区画に収容することには、阻害要因があるといえる。 また、前記(1)(1-1)エ~カから、甲1発明において、LNG燃料タンクを船体内の区画に収容すると、少なくとも1つの貨物タンクが使用できなくなり、貨物の搭載量が減ることとなるので、甲1発明において、LNG燃料タンクを船体内の区画に収容することにも、阻害要因があるといえる。 そして、申立人が提出した他のいずれの証拠においても、甲1発明において、LNGパックとLNG燃料タンクを船体内の区画に収容できることを示すような記載も示唆も認められない。 そうすると、甲1発明には、LNG燃料タンクを船体内の区画に収容することに、動機がなく、また阻害要因があるといえるので、甲1発明において、フリーボードデッキがどの位置にあったとしても、その下側の区画にLNG燃料タンクを収容する区画を設けることは、当業者が容易に想到し得たことではないと認められる。 以上のとおりであるから、甲1発明において、相違点4-1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4-2)甲3を主引用発明とした場合 ア 対比 (ア)本件発明1と甲3発明を対比すると、後者の「LNG」が前者の「液化ガス」に相当し、以下同様に、後者の「燃料」が前者の「燃料」に、後者の「使用」が前者の「使用」に、後者の「LNG燃料船」が前者の「液化ガス燃料船」に、後者の「貯蔵」が前者の「貯蔵」に、後者の「LNGタンク」が前者の「液化ガス燃料タンク」に、後者の「ガス供給システム」が前者の「液化ガス供給システム」に、後者の「船幅」が前者の「型幅」に、後者の「全長」が前者の「全長L」に、後者の「全長の中心」が前者の「全長Lの中心」に、後者の「機関室の前壁」が前者の「機関室前壁」に、後者の「配置」が前者の「配置」に、それぞれ相当する。 そして、以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 (イ)後者の「LNGを燃料として使用するLNG燃料船」は、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船」に相当する。 (ウ)後者の「前記LNGを貯蔵するLNGタンク」は、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 (エ)後者の「前記LNGタンク内のLNGをエンジンへ供給するガス供給システム」において、「エンジン」は燃料である「LNG」を消費するものであるので、後者の「エンジン」は、前者の「燃料消費部」に相当する。 そうすると、後者の「前記LNGタンク内のLNGをエンジンへ供給するガス供給システム」は、前者の「前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。 (オ)前記(ウ)及び(エ)から、後者の「前記LNGを貯蔵するLNGタンクと、前記LNGタンク内のLNGをエンジンへ供給するガス供給システムとを備え」ることは、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 (カ)後者の「前記LNGタンクは、船体内に収容され」ることと、前者の「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ることは、「前記液化ガス燃料タンクは船体内に収容され」ることで共通する。 (キ)後者の「前記LNGタンクは、」「前記LNG燃料船の船幅方向中央に配置され」ることは、「LNGタンク」が「LNG燃料船」の船側から型幅1/5よりも内側に配置されていることは明らかなので、前者の「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことに相当する。 (ク)後者の「全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%位置」が前者の「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置」に相当し、後者の「全長の30%位置から前記全長の中心から長手方向前方にある機関室の前壁までの間」と、前者の「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間」は、「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から機関室前壁までの間」で共通する。 そして、前記(カ)も踏まえると、後者の「前記液化ガス燃料タンクは、船体内に収容され、」「LNGタンクの全体が、LNG燃料船の全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%位置から前記全長の中心から長手方向前方にある機関室の前壁までの間に配置される」ことと、前者の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」ことは、「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、船体内において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から機関室前壁までの間に配置される」ことで共通する。 したがって、本件発明1と甲3発明は、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクは船体内に収容され、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置され、 前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、船体内において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から機関室前壁までの間に配置される 液化ガス燃料船。」 との点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-2-1] 液化ガス燃料タンクの配置に関して、本件発明1は、液化ガス燃料タンクが「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され、」「前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、」配置されるのに対して、甲3発明は、LNGタンクは「船体内に収容され、」「船体内において、」配置されるものの、「フリーボードデッキ」との関係は定かではない点。 [相違点4-2-2] 機関室前壁の位置に関して、本件発明1は、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から「長手方向後方にある」のに対して、甲3発明は、全長の中心から「長手方向前方にある」点。 [相違点4-2-3] 液化ガス供給システムの配置に関して、本件発明1は、液化ガス供給システムが「船側から型幅の1/5よりも外側に」配置されるのに対して、甲3発明は、ガス供給システムがどこに配置されるのかが定かではない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、相違点4-2-2について検討する。 前記(2)(2-2)ア及びイから、甲3において、機関室は、LNG燃料船の全長の中心から長手方向後方にあるLNGタンクよりも前方に位置するものであり、甲3には、LNG燃料船の全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%の位置から長手方向後方に機関室が存在することは、記載も示唆もされていない。 一方、甲5には、前記(3)(3-4)で示したように、船体内の隣接した区画に、LNG燃料が貯蔵されるシリンドリカル型Type CタンクとLNG燃料が供給される主機を収容することが記載されているものの、主機を収容する区画の前壁が、船の全長の中心から長手方向後方に向かった全長の30%の位置から長手方向後方に位置するものではなく、相違点4-2-2に係る本件発明1の発明特定事項は示されていない。 また、甲3発明において、機関室の位置を相違点4-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とするように変更することに動機も認められない。 そして、申立人が提出した他のいずれの証拠においても、甲3発明において、機関室の位置を相違点4-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とするように変更できることを示すような記載も示唆も認められない。 以上のとおりであるから、甲3発明において、甲5に記載された事項を踏まえ、相違点4-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明2について (5-1)本件発明2と甲5発明1の対比 ア 本件発明2と甲5発明1を対比すると、後者の「LNG」が前者の「液化ガス」に相当し、以下同様に、後者の「燃料」が前者の「燃料」に、後者の「LNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカー」が前者の「液化ガス燃料船」に、後者の「LNG燃料タンク」が前者の「液化ガス燃料タンク」に、後者の「船側」が前者の「船側」に、後者の「船幅」が前者の「型幅」に、後者の「垂線間長Lpp」が前者の「全長L」に、後者の「垂線間長Lppの中心」が前者の「全長Lの中心」に、後者の「船首隔壁」が前者の「船首隔壁」に、後者の「配置」が前者の「配置」に、それぞれ相当する。 そして、以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 イ 後者の「常時はLNG燃料だけで運航するLNG炊き2軸SES型計画船749型内航タンカー」は、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船」に相当する。 ウ 後者の「LNG燃料タンク」は、LNG燃料を貯蔵するのは明らかなので、前者の「液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 エ 前記ウから、後者の「前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室」「を配置」することは、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」「を備え」ることに相当する。 オ 後者の「前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室とその上部にLNG機器室を配置し、前記LNG燃料は前記LNG機器室にてガス化して、上甲板上を縦方向に機関室まで導き、ガス発電機関に供給され」ることにおいて、「LNG燃料」を「ガス化して、」「ガス発電機関に供給」する機器が「LNG機器室」に配置され、「LNG燃料」が「ガス発電機関」で消費されるといえる。 そうすると、後者の「ガス発電機関」が前者の「燃料消費部」に相当し、後者の「LNG機器室」に配置される「LNG燃料」を「ガス化して、」「ガス発電機関に供給」する機器が前者の「液化ガス供給システム」に相当する。 そして、前記エも踏まえると、後者の「前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室とその上部にLNG機器室を配置し、前記LNG燃料は前記LNG機器室にてガス化して、上甲板上を縦方向に機関室まで導き、ガス発電機関に供給され」ることは、液化ガスを供給するためのシステムを備えていることが明らかであるので、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 オ 後者の「船首部上甲板の下側であって、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置にLNG燃料区画を設け、前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室」「を配置」することと、前者の「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ることは、「前記液化ガス燃料タンクは船内区画に収容される」ことで共通する。 カ 後者の「前記LNG燃料タンクの少なくとも一部は、船側から船幅の1/5よりも内側に配置され」ることは、前者の「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことに相当する。 キ 後者の「垂線間長Lppの中心から長手方向前方へ35%Lppの位置」は、前者の「全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置」に相当する。 そして、前記オも踏まえると、後者の「船首部上甲板の下側であって、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置にLNG燃料区画を設け、前記LNG燃料区画にはLNG燃料タンクがあるLNGタンク室」「を配置し、」「前記LNG燃料タンク全体は、垂線間長Lppの中心から長手方向前方へ35%Lppの位置から船首隔壁までの間に配置される」ことは、前者の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」ことと、「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記船内区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」ことで共通する。 そうすると、本件発明2と甲5発明1とは、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクは船内区画に収容され、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置され、 前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記船内区画において、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される 液化ガス燃料船。」 との点で一致し、以下の点で、相違する。 [相違点5-1-1] 液化ガス燃料タンクが収容される船内区画に関して、本件発明2は、「フリーボードデッキよりも下側の」区画であるのに対して、甲5発明1は、「船首部上甲板の下側であって、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置に」設けられたLNG燃料区画である点。 [相違点5-1-2] 液化ガス供給システムの配置に関して、本件発明2では、「船側から型幅の1/5よりも外側に配置され」るのに対して、甲5発明1では、「船側」からの「船幅」方向のどの位置にLNG機器室が配置されるのかが定かではない点。 (5-2)相違点についての検討 相違点5-1-1について検討する。 甲5発明1においては、フリーボードデッキの位置が定かではないので、LNG燃料区画とフリーボードデッキの関係は不明である。 また、仮に、前記(3)(3-2)アの参考図で示す船体の上甲板がフリーボードデッキであったとしても、LNG燃料区画は、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置に設けられるものであるので、フリーボードデッキの下側の区画ではない。 そして、甲5の他の記載においても、甲5発明1のLNG燃料区画をフリーボードデッキの下側の区画とすることを示すような記載も示唆もない。 さらに、前記(3)(3-1)クの記載から、甲5においては、船首部のLNG燃料区画の配置は、容積効率の良いLNGタンクの形状を想定した配置となっていることから、LNG燃料区画の配置を変更することには、阻害要因があるといえる。 また、申立人が提出した他のいずれの証拠においても、甲5発明1において、LNG燃料区画をフリーボードデッキの下側の区画とすることを示すような記載も示唆も認められない。 以上のとおりであるから、甲5発明1において、甲5に記載された事項を踏まえ、相違点5-1-1に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲5発明1及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明3について (6-1)本件発明3と甲5発明2の対比 ア 本件発明3と甲5発明2を対比すると、後者の「LNG」が前者の「液化ガス」に相当し、以下同様に、後者の「燃料」が前者の「燃料」に、後者の「コンテナ船」が前者の「液化ガス燃料船」に、後者の「貯蔵」が前者の「貯蔵」に、後者の「シリンドリカル型Type Cタンク」が前者の「液化ガス燃料タンク」に、後者の「船側」が前者の「船側」に、後者の「船幅」が前者の「型幅」に、後者の「船舶」が前者の「船舶」に、後者の「一対の前記シリンドリカル型Type Cタンク」が前者の「一対の前記液化ガス燃料タンク」に、後者の「船体中心線」が前者の「船体中心線」に、後者の「左右対称」が前者の「左右対称」に、後者の「配置」が前者の「配置」に、それぞれ相当する。 そして、以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 イ 後者の「全海域LNGを使用するコンテナ船」は、「LNG」を燃料として使用していることは明らかであるので、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船」に相当する。 ウ 後者の「LNG燃料が貯蔵されるシリンドリカル型Type Cタンク」は、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 エ 後者の「前記LNG燃料を主機に供給するための機器」は、「主機」において「LNG燃料」が消費されることは明らかなので、後者の「主機」が前者の「燃料消費部」に相当し、後者の前記「供給するための機器」が前者の「液化ガス供給システム」に相当する。 そうすると、後者の「前記LNG燃料を主機に供給するための機器」は、前者の「液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。 オ 前記ウ及びエから、後者の「LNG燃料が貯蔵されるシリンドリカル型Type Cタンクと、前記LNG燃料を主機に供給するための機器とを備え」ることは、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 カ 後者の「前記シリンドリカル型Type Cタンクの少なくとも一部が船側から船幅の1/5よりも内側に配置され」ることは、前者の「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことに相当する。 キ 後者の「一対の前記シリンドリカル型Type Cタンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」ことは、「コンテナ船」が複数の「シリンドリカル型Type Cタンク」を備えることが明らかであるので、前者の「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備え、」「少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」ことに相当する。 ク 後者の「前記コンテナ船が1列のセンターピラー構造を有する船舶であ」ることと、前者の「前記液化ガス燃料船が、」「フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる1列センターピラー構造を有する船舶であ」ることは、「前記液化ガス燃料船が、」「1列センターピラー構造を有する船舶であ」ることで共通する。 そうすると、本件発明3と甲5発明2とは、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置され、 前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備え、1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される 液化ガス燃料船。」 との点で一致し、以下の点で、相違する。 (相違点6-1-1) 液化ガス供給システムの配置に関して、本件発明3では、「船側から型幅の1/5よりも外側に配置され」るのに対して、甲5発明2では、LNG燃料を主機に供給するための機器がどこに配置されるのかが定かでない点。 (相違点6-1-2) 1列センターピラー構造に関して、本件発明3は、「フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる」1列センターピラー構造であるのに対して、甲5発明2では、1列のセンターピラー構造にかかる特定がされていない点。 (6-2)相違点についての検討 事案に鑑み、相違点6-1-2について検討する。 前記(3)(3-4)から、甲5発明2は、コンテナ船であり、自動車搭載区画を有する船舶ではない。また、甲5発明2のコンテナ船に、自動車収容区画を形成することには動機がない。 そして、甲5の他の記載においても、甲5発明2のコンテナ船に、自動車搭載区画を設けることを示すような記載も示唆もない。 更に、自動車搭載区画を有する自動車運搬船とコンテナ船とは、船体構造が異なることから、甲5発明2のコンテナ船を自動車運搬船とすることには、阻害要因があると認められる。 また、申立人が提出した他のいずれの証拠においても、甲5発明2において、甲5発明2のコンテナ船を自動車運搬船とすることを示すような記載も示唆も認められない。 以上のとおりであるから、甲5発明2において、甲5に記載された事項を踏まえ、相違点6-1-2に係る本件発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲5発明2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)申立人の意見書について ア 令和7年6月26日提出の意見書(4ページ~6ページ)において、申立人は、「本件発明2について、仮に「フリーボードデッキ」が「船体の主要部を構成する最上層の全通甲板」であると解釈できたとしても、本件発明2では、「液化ガス燃料タンク」の全体が「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ていることを特定して」いないこと、及び「甲5発明1では、」「LNG燃料タンクの2/3程度が「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ている」ので、甲5発明1は、「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」る点で、本件発明2と一致する」旨を主張する。 しかしながら、前記(5)(5-2)アで述べたように、甲5発明1においては、LNG燃料タンクがあるLNGタンク室が配置されるLNG燃料区画は、船体の上甲板を挟んで、その下側から上側に渡る位置に設けられるものであるので、仮に、甲5発明1の船体の上甲板がフーリボードデッキであったとしても、LNG燃料区画がフリーボードデッキの下側の区画であるとは認められない。 イ 次に、同意見書(6ページ~7ページ)において、申立人は、「仮に、本件発明2の「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」るとの発明特定事項を、「液化ガス燃料タンク」の全体が「フリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ているという意味に解釈できたとしても、」甲2の第7図、甲5の198頁図面、甲11の図1、3、4、及び6の記載から、「甲5発明1において、」「「LNG燃料タンク」の全体をフリーボードデッキよりも下側の区画に収容して本件発明2の上記発明特定事項の構成を採るごとは、当業者にとって容易に想到し得たことである。」旨を主張する。 しかしながら、前記(5)(5-2)アで述べたように、甲5においては、船首部のLNG燃料区画の配置は、容積効率の良いLNGタンクの形状を想定した配置となっていることから、LNG燃料区画の配置を変更することには、阻害要因があるといえる。 ウ また、同意見書(第7ページ~第9ページ)において、申立人は、甲6の20頁図面、甲8の93頁図面、及び甲9の図6に記載された事項から、「甲5発明2において、」「1列センターピラー構造」を、「フリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる1列センターピラー構造」に変更し、 本件発明3の構成を採ることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。」旨を主張する。 しかしながら、前記(6)(6-2)アで述べたように、甲5発明2は、コンテナ船であり、自動車搭載区画を有する船舶ではなく、甲5発明2のコンテナ船に、自動車収容区画を形成することには動機がない。また、甲5発明2のコンテナ船を自動車運搬船とすることには、阻害要因があると認められる。 エ 更に、同意見書(14ページ~20ページ)において、申立人は、本件発明3について、新たに甲5発明3を認定し、当該甲5発明3及び甲6の20頁図面に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができた旨を主張する。 しかしながら、甲5発明3においては、本件発明3における1列センターピラー構造の有無、及びフリーボードデッキの位置は、不明である。 そして、前記1(1)において述べたように、乾舷甲板(フリーボードデッキ)は、船体の主要部を構成する最上層の全通甲板であるといえるところ、甲6の20頁図面からでは、どの甲板がフリーボードデッキであるかを特定することはできず、甲6の20頁図面で示される4つのタンクのどれがLNGタンクであるかも特定することはできない。そして、甲6の20頁図面においては、1列センターピラーの存在も定かではない。 更に、申立人が提出した他の証拠にも、甲5発明3において、本件発明3の発明特定事項で示される1列センターピラー構造とフリーボードデッキの関係が得られるようにフリーボードデッキを設けることを示すような記載も認められない。 また、甲5発明3においては、船体中心線上にLNGタンクが位置するような態様で、4つのLNGタンクが船体内の区画に配置されており、このような配置は、LNGタンクの側方に位置するLNG機器室の配置とも関連していると認められる。 そうすると、甲5発明3において、4つのLNGタンクを船体中心線に対して左右対称に配置させることの動機はなく、むしろLNG機器室の配置との関係において、阻害要因があると認められる。 したがって、本件発明3は、甲5発明3及び甲6の20頁図面に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない。 オ そして、令和7年1月16日提出の意見書(2ページ~5ページ)において、申立人は、甲2の第7図、甲5の198頁図面、並びに甲11の図1、3、4、及び6の記載から、「甲1発明において、」「LNG燃料タンク(「LNG bunker tank」)」をアフトデッキ(フリーボーデッキ)の下側の区画に収容」することは、「当業者にとって容易に想到し得たことである。」旨を主張する。 しかしながら、前記(4)(4-1)イで述べたように、甲1発明には、LNG燃料タンクを船体内の区画に収容することに、動機がなく、また阻害要因があるといえる。 以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。 (8)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 また、本件発明1は、甲3発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 そして、本件発明2は、甲5発明1及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 さらに、本件発明3は、甲5発明2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 よって、取消理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、前記第4の引用文献一覧で示した証拠以外に、次の証拠を提出し、以下の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張している。 甲2:永田良典(外3名)、「LNG燃料船用IHI-SPBタンク」、IHI技報、日本、Vol.52、No.3(2012)、P36~P41 甲6:Per Magne Einang, LNG fuelled ships Norwegian experience, ECSA-EMSA meeting Brussels 24th of November 2009, P1~P34 甲7:Bergensfjord [retrieved 2024-03-06],Retrieved from https://lmgmarin.no/referrence/bergensfjord/ 甲8:惠美洋彦、英和版 新船体構造イラスト集、初版、日本、株式会社成山堂書店、平成27年3月18日、表紙、P5、P93、奥付 甲9:特許第3531819号公報 甲10:西藤浩一、「天然ガス燃料船の実用化とNKの取組み」、日本マリンエンジニアリング学会誌、日本、第47巻、第6号(2012)、P8~11 甲11:特開2012-121401号公報 なお、甲7は、甲6で示されるBergensfjordの就航日を証明するための証拠であり、技術的内容を示すための証拠ではない。 1 申立理由の概要 (1)請求項1に係る発明に関する明確性要件違反[特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)]。 (2)請求項2に係る発明の新規性について(甲5を主たる証拠とした場合。)[特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)]。 (3)請求項1に係る発明の進歩性について(甲2を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]。 (4)請求項3に係る発明の進歩性について(甲6を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]。 2 申立理由についての検討 (1)申立理由(1)について (1-1)申立理由(1)の概要 請求項1の記載において、「機関室」に対する相対的な「液化ガス燃料タンク」の配置が明確でないので、本件発明1は、明確でない。 したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (1-2)申立理由(1)の検討 本件訂正後の請求項1に係る発明は、前記第4で示した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本件訂正後の請求項1には、「機関室」と「液化ガス燃料タンク」の配置に関して、「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」ことが特定されているところ、当該記載から、「液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が」、「全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置」と「30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁」との間に配置されることが明確に特定されている。 そうすると、「機関室」と「液化ガス燃料タンク」の配置に関して、請求項1の記載は明確であるので、本件発明1は明確である。 (2)申立理由(2)について (2-1)申立理由(2)の概要 本件発明2は、甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2-2)申立理由(2)の検討 本件発明2と甲5発明1とは、前記第5の(5)(5-1)で示したとおり、相違点5-1-1及び相違点5-1-2で相違するところ、相違点5-1-1及び相違点5-1-2は、実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は、甲5発明1ではない。 (3)申立理由(3)について (3-1)申立理由(3)の概要 本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3-2)申立理由(3)の検討 ア 甲2の記載事項 (ア)「3.2 LNG燃料タンクとしてのIHI-SPBタンクの特長」(38ページ左欄13行) (イ)「4.IHI-SPBタンクを用いたLNG燃料供給システム IHI-SPBタンクを用いたLNG燃料供給システムの一例を第6図に示す。ガス圧縮機、LNGポンプ、気化器およびヒータから構成される。タンク内で自然蒸発したガス(NBOG)は、ガス圧縮機によって昇圧されて主機、エンジン発電機、ボイラなどに送気される。自然蒸発ガスの量が、主機やエンジン発電機の必要量に対して不足する場合は、タンク内に設置されたLNGポンプからLNGを供給し、気化器で強制的にガス化されたガス(FBOG)を供給する。」(40ページ左欄9行~18行) (ウ)「現在、LNG燃料用の主機としては、圧力6bar{0.6MPa}程度の低圧システムと200~300bar{20~30MPa}の高圧システムが提案されているが、第6図に示すように、低圧LNG燃料供給システム(-(a))、高圧LNG燃料供給システム(-(b))のどちらのシステムに対してもIHI-SPBタンクを用いた燃料供給システムは対応可能である。」(40ページ右欄1行~6行) (エ)「5.LNG燃料船の試設計 IHI-SPBタンクを用いたLNG 燃料システムを適用した10000TEUコンテナ船の試設計を実施した。 ・・・ LNGタンク配置 居住区下 圧縮機室配置 居住区下 LNG燃料化による積載コンテナの減少を最小限にするため,LNG燃料はECA内のみでの使用とし,ECA以外の地域ではC重油を用いる。ECA以外の海域を航行している場合,LNGタンク内で発生するNBOGを主機では消費しないため,ガスが余剰となることが懸念される。このため,このNBOGは発電機エンジンに供給し,船内電力用に使用する。 本船の一般配置を第7図に示す。LNGタンクおよび圧縮機室を居住区下に配置し,LNGタンク設置によるコンテナエリアヘの影響を最小限にしている。この結果LNG燃料化による積載コンテナの減少を200TEU以下に抑えることが可能になった。IHI-SPBタンク燃料供給システムを採用した本船の概念を第8図に示す。」(40ページ右欄7行~34行) (オ)40ページの第7図は、以下に示すとおりである。 「 [図:0001429976000013.jpg] 」 (カ)40ページの第7図に対して申立人の注釈を入れた参考図は、以下のとおりである。 [参考図] 「 [図:0001429976000014.jpg] 」 イ 甲2からの認定事項 前記アから、以下の事項が認められる。 (ア)10000TEUコンテナ船は、LNG燃料船である。 (イ)10000TEUコンテナ船は、LNG燃料タンクとしてのIHI-SPBタンクと、IHI-SPBタンク燃料供給システムとを備える。 (ウ)LNG燃料供給システムは、IHI-SPBタンク内で自然蒸発したガス及びIHI-SPBタンク内のLNGを気化器でガス化されたガスを、主機、エンジン発電機に送気する。 (エ)IHI-SPBタンクは、居住区下の船体内の燃料タンク室に配置される。 (オ)燃料タンク室は、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室の前であって、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置よりも前方に位置する。 ウ 甲2発明 前記ア、イから、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「LNG燃料船である10000TEUコンテナ船であって、 LNG燃料タンクとしてのIHI-SPBタンクと、 LNG燃料供給システムとを備え、 前記LNG燃料供給システムは、IHI-SPBタンク内で自然蒸発したガス及びIHI-SPBタンク内のLNGを気化器でガス化したガスを、主機、エンジン発電機に送気し、 前記IHI-SPBタンクは、居住区下の船体内の燃料タンク室に配置され、 前記燃料タンク室は、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室の前方であって、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置よりも前方に位置する 10000TEUコンテナ船。」 エ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明の対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 a 後者の「LNG燃料船である10000TEUコンテナ船」は、液化ガスを燃料として使用していることは明らかである。 そうすると、後者の「LNG燃料船である10000TEUコンテナ船であって、」は、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、」に相当する。 b 後者の「LNG燃料タンクとしてのIHI-SPBタンク」は、液化ガスを貯蔵するためのものであることは明らかなので、後者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 c 後者の「前記LNG燃料供給システムは、IHI-SPBタンク内で自然蒸発したガス及びIHI-SPBタンク内のLNGを気化器でガス化したガスを、主機、エンジン発電機に送気」することにおいて、後者の「主機」及び「エンジン発電機」は、IHI-SPBタンク内のLNGが自然蒸発又はガス化したガスを消費することは明らかである。 そうすると、後者の「主機」及び「エンジン発電機」が前者の「燃料消費部」に相当するので、後者の「IHI-SPBタンク内で自然蒸発したガス及びIHI-SPBタンク内のLNGを気化器でガス化したガスを、主機、エンジン発電機に送気」する「前記LNG燃料供給システム」は、前者の「前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。 d 前記b及びcから、後者の「LNG燃料タンクとしてのIHI-SPBタンクと、LNG燃料供給システムとを備え、前記LNG燃料供給システムは、IHI-SPBタンク内で自然蒸発したガス及びIHI-SPBタンク内のLNGを気化器でガス化したガスを、主機、エンジン発電機に送気」することは、ガスを供給するためのシステムを備えていることが明らかであるので、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 e 後者の「前記IHI-SPBタンクは、居住区下の船内の燃料タンク室に配置され」ることと、前者の「前記液化ガス燃料タンクはフリーボードデッキよりも下側の区画に収容され」ることは、「前記液化ガス燃料タンクは船体内の区画に収容され」ることで共通する。 f 前記eから、後者の「前記燃料タンク室は、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室の前方であって、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置よりも前方に位置する」ことと、前者の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、前記フリーボードデッキよりも下側の区画において、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」ことは、「前記液化ガス燃料タンクは、船体内の区画において、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される」ことで共通する。 そうすると、本件発明1と甲2発明は、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料タンクは船体内の区画に収容され、 前記液化ガス燃料タンクは、前記船体内の区画において、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室前壁までの間に配置される 液化ガス燃料船。」 との点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点3-2-1] 液化ガス燃料タンクが収容される船体内の区画に関して、本件発明1は、「フリーボードデッキよりも下側の」区画であるのに対して、甲2発明は、居住区下の船体内の燃料タンク室であり、「フリーボードデッキ」との関係は定かではない点。 [相違点3-2-2] 液化ガス燃料タンクの配置に関して、本件発明1は、「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、」「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、」全長Lの中心から「長手方向後方へ30%Lの位置から長手方向後方にある機関室前壁までの間」に配置されるのに対して、甲2発明は、全長Lの中心から長手方向後方にある機関室の前方であって、全長Lの中心から「長手方向後方へ30%Lの位置よりも前方に位置する」する点。 [相違点3-2-3] 液化ガス供給システムの配置に関して、本件発明1は、「船側から型幅の1/5よりも外側に配置され」るのに対して、甲2発明は、LNG燃料供給システムの配置場所が定かでない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、相違点3-2-2について検討する。 前記ア(エ)から、甲2において、居住区下のIHI-SPBタンクの配置位置は、LNGタンク設置によるコンテナエリアヘの影響を最小限にするものとして決められたものである。 そうすると、甲2発明において、IHI-SPBタンクが配置される燃料タンク室の前後方向の位置を変えることには動機があるとはいえず、むしろ、阻害要因があると認められる。 また、申立人が提出した他のいずれの証拠においても、甲2発明において、燃料タンク室を変更し、相違点3-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とするように燃料タンク室を変更することを示す記載も示唆も認められない。 したがって、甲2発明において、相違点3-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、申立人は、令和7年6月26日提出の意見書(13ページ)において、「甲2発明から出発した当業者にとって、例えば、船体内部のスペースをより一層有効活用するために、船体長手方向における機関室の寸法を縮小し、これに伴い、燃料タンク室を後方に移動させたり、あるいは、例えば、機関室及び燃料タンク室の配置を変更しない代わりに、より多くの積荷スペースを確保するために船体を前方に延ばしたりすること」は、「通常の創作能力の発揮に過ぎない。」旨を主張する。 しかしながら、前述したとおり、甲2における居住区下のIHI-SPBタンクの配置位置は、LNGタンク設置によるコンテナエリアヘの影響を最小限にするものとして決められたものであるので、その配置位置の変更には、動機はなく、むしろ、阻害要因があるといえる。 そして、船体の全長を長くするにしても、その際には、他の配置はそのままに、前方だけを長くするものでもないので、仮に、船体の全長を長くすることができたとしても、IHI-SPBタンクの配置位置が、必ず、相違点3-2-2に係る本件発明1の発明特定事項で示される位置になるといえるものでもない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 (4)申立理由(4)について (4-1)申立理由(4)の概要 本件発明3は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4-2)申立理由(4)の検討 ア 甲6の記載事項 (ア)甲6の20ページには、以下のとおりのものが示されている。 「 [図:0001429976000015.jpg] 」 (イ)甲6の21ページには、以下のとおりのものが示されている。 「 [図:0001429976000016.jpg] 」 (ウ)甲6の22ページには、以下のとおりのものが示されている。 「 [図:0001429976000017.jpg] 」 (エ)甲6の20ページの記載の抄訳は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000018.jpg] 」 (オ)甲6の21ページの記載の抄訳は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000019.jpg] 」 (カ)甲6の22ページの記載の抄訳は、以下のとおりである。 「 [図:0001429976000020.jpg] 」 (キ)前記(ア)で示した図面の一部を拡大し、タンク及び自動車搭載区画についての記載を記入した参考図は、以下のとおりである。 [参考図] [図:0001429976000021.jpg] イ 甲6からの認定事項 前記アから、甲6には、以下の事項が示されていると認められる。 (ア)LNGフェリーベルゲンスフィヨルドは、LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段とロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンを備えている。 (イ)技術常識から、LNGフェリーベルゲンスフィヨルドは、貯蔵タンク内のLNGのLNG燃料をロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システムを備えていることは明らかである。 (ウ)船体内に、4つのタンクを収容する区画があり、この区画の上に自動車搭載区画がある。 (エ)4つのタンクは、船体中心線に対して左右対称に配置される。 (オ)タンク収容区画と自動車搭載区画は、船体中心線に沿って仕切られている。 ウ 甲6発明 前記ア、イから、甲6には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。 「LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段とロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンを備えたLNGフェリーベルゲンスフィヨルドであって、 前記貯蔵手段のLNG燃料を前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システムを備え、 船体内に、4つのタンクが収容される区画があり、前記区画の上に自動車搭載区画があり、 前記区画と前記自動車収容区画は、船体中心線に沿って仕切られており、 前記4つのタンクは、前記船体中心線に対して左右対称に配置される LNGフェリーベルゲンスフィヨルド。」 エ 本件発明3について (ア)本件発明3と甲6発明の対比 本件発明3と甲6発明を対比する。 a 後者の「LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段」は、前者の「前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」に相当する。 b 後者の「前記貯蔵手段のLNG燃料を前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システム」において、「前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジン」は、「前記貯蔵手段のLNG燃料」を消費するものであるといえる。 そうすると、後者の「前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジン」は、前者の「燃料消費部」に相当する。 したがって、後者の「前記貯蔵手段のLNG燃料を前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システム」は、前者の「前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。 c 後者の「LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段とロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンを備えたLNGフェリーベルゲンスフィヨルドであって、前記貯蔵手段のLNG燃料を前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システムを備え」ることにおいて、「LNGフェリーベルゲンスフィヨルド」がLNGを燃料として使用することは明らかである。 そして、前記a及びbを踏まえると、後者の「LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段とロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンを備えたLNGフェリーベルゲンスフィヨルドであって、前記貯蔵手段のLNG燃料を前記ロールスロイスK型リーンバーンガスエンジンに対して供給するLNG燃料供給システムを備え」ることは、前者の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え」ることに相当する。 d 後者の「LNGフェリーベルゲンスフィヨルド」が「LNG貯蔵量が125m3の2つのLNG貯蔵手段」を備えることは、前者の「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備え」ることに相当する。 そうすると、本件発明3と甲6発明は、 「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、 前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、 前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、 前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える 液化ガス燃料船。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点4-2-1] 本件発明3は、「液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、」「少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」るのに対して、甲6発明は、「船体内に、4つのタンクを収容するタンク収容する区画があり、」「前記4つのタンクは、前記船体中心線に対して左右対称に配置される」ものの、該「4つのタンク」と「LNG貯蔵手段」の関係が不明であるとともに、液化ガス供給システムがどこに配置されるのかも不明である点。 [相違点4-2-2] 本件発明3は、「フリーボードデッキ下方からフリーボードデッキ上方の自動車搭載区画までセンターピラーが船体中心線に沿って1列に設けられる1列センターピラー構造を有する船舶であ」るのに対して、甲6発明は、「船体内に、4つのタンクを収容する区画があり、前記区画の上に自動車収容区画があり、前記区画と前記自動車収容区画は、船体中心線に沿って仕切られ」るものであり、「仕切」るもの、及び「仕切」るものと「フリーボードデッキ」の関係が、不明である点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、相違点4-2-2について検討する。 前記第5の1(1)において述べたように、乾舷甲板(フリーボードデッキ)は、船体の主要部を構成する最上層の全通甲板であるといえるところ、甲6の記載からでは、どの甲板がフリーボードデッキであるかを特定することはできない。 また、申立人が提出した他の証拠にも、甲6発明において、相違点4-2-2に係る本件発明3の発明特定事項が示す位置にフリーボードデッキを設けることを示すような記載も認められない。 一方、申立人が提出した甲8及び甲9には、自動車運搬船おけるセンターピラー構造についての記載があるが、甲6の記載からでは、4つのタンクを収容する区画と自動車収容区画を船体中心線に沿って仕切るものが、どのような構造を有しているのかが不明であるので、甲6発明において、甲8及び甲9で示されるセンターピラー構造の適用の可否は、不明である。 そうすると、申立人が提出した他のいずれの証拠を踏まえても、甲6発明において、相違点4-2-2に係る本件発明3の発明特定事項とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 なお、仮に、甲8及び甲9におけるセンターピラー構造を甲6発明に適用することができたとしても、依然として、甲6発明におけるフリーボードデッキは不明のままであるので、甲6発明において、相違点4-2-2に係る本件発明3の発明特定事項とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、請求項1の記載は明確であり、本件発明1は明確である。 したがって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 また、本件発明2は、甲5発明1ではないので、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 そして、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。 したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 さらに、本件発明3は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。 したがって、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 よって、申立理由(1)~(4)によって、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700279

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