特許異議申立
2024-700838
電解槽と結合された水素化物タンクを含む水の高温可逆電解用システム
- 審判番号
- 2024-700838
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-128894
- 登録番号
- 7446372
- 請求日
- 2024年09月04日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】小山 恵
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 石川 雄太郎
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1652.113-ZC (C25B) / P1652.121-ZC (C25B) / P1652.537-ZC (C25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7446372号発明「電解槽と結合された水素化物タンクを含む水の高温可逆電解用システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7446372号の請求項1~10に係る特許を取り消す。
特許第7446372号の請求項11~21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7446372号(以下「本件特許」という。)の請求項1~23に係る特許についての出願は、2017年(平成29年) 9月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年 9月19日 フランス共和国(FR))を国際出願日とする出願である、特願2019-515352号の一部を令和 4年 8月12日に新たな特許出願(特願2022-128894号。以下「本願」という。)としたものであって、令和 6年 2月29日にその特許権の設定登録がなされ、同年 3月 8日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 6年 9月 4日に、請求項1~21に係る特許に対し、特許異議申立人である小山 恵(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
そして、当合議体は、令和 7年 1月24日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~23に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~23に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明23」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
-水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モードで、及び/又は、水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動するように構成された、高温可逆電解槽(11)を形成する装置であって、前記高温可逆電解槽(11)は、2~15barの圧力下で作動するように構成されている、装置を含む、水の高温可逆電解用システム(10)であって、
前記高温可逆電解用システムは、蒸気発生器(18)と、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、それぞれ前記高温可逆電解用システム(10)の入口における水(H2Otоtal)を予熱し、かつ前記高温可逆電解槽(11)に入る蒸気を過熱することを可能にする、前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)と、を含む、システム(10)。
【請求項2】
前記高温可逆電解槽(11)は、カソード(2.1、2.2)、アノード(4.2)、及び前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.2)によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セル(C1、C2)と、2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の電気的及び流体的相互接続体(5)と、のスタックを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムはまた、
-前記高温可逆電解槽(11)内の未反応蒸気と前記高温可逆電解槽(11)によって生成された水素(H2)とを受け取り、未反応水(H2Orecоv)を凝縮させて前記システム(10)内で再利用できるようにするように意図された、相分離器(13)に結合された凝縮器(23)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムはまた、
-前記システム(10)の入口における水(H2Otоtal)を2~15barの圧力に圧縮するように意図された圧縮ポンプ(14)
を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムはまた、
-蒸気のさらなる過熱を提供する、前記高温可逆電解槽(11)の上流における電気加熱要素(22)
を含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムはまた、
-水素化物タンク(12)の上流及び相分離器(13)の下流における、前記水素化物タンク(12)に貯蔵する前に水素(H2)に含まれる湿気を除去することを可能にするように意図された乾燥機(24)
を含むことを特徴とする、請求項3~5の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記高温可逆電解槽(11)は、加圧固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れを用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る少なくとも1つの流れを予熱するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(30、38、47、90)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れから来る高温熱を回収するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(31、39、49、91)
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の、又は請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記水素回路は、
-2~15barの圧力範囲にわたって、水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するための手段(M1)と、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H2)を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る水素流(H2tоtal)を予熱するように意図された熱交換器(30)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H2)から高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(31)と、
を含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムはまた、相分離器(34)を出る水素流(H2)によって熱回収要素を形成する熱交換器(31)を出る水素流(H2)を冷却し、生成された水の回収を可能にするように意図された熱交換器(33)を含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記一次空気回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る空気流を予熱するように意図された熱交換器(38)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流から来る高温熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(39)と、
を含むことを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムはまた、前記熱回収要素を形成する熱交換器(39)を出る空気流と補足酸素(FO2)とを混合するための手段であって、前記高温可逆電解槽(11)に入る全空気流を形成する、混合手段(M1)を含むことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムはまた、
-混合手段(M1)によって混合された全空気流を冷却することを可能にする、熱交換器(40)及び冷却装置(41)と、
-予熱のために前記熱交換器(40)に注入する前に前記冷却装置(41)を出る空気を圧縮することを可能にする圧縮ポンプ(42)と、
を含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記一次空気回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る空気流を予熱するように意図された熱交換器(47)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流から来る熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(49)と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記冷却回路は、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)を用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る流れ(Fincоming)を予熱するように意図された熱交換器(90)と、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)から来る熱を回収するように意図された、熱回収要素を形成する熱交換器(91)と、
-前記熱交換器(91)を出る熱流(Fhоt)を冷却するように意図された、熱交換器(92)及び冷却装置(93)と、
-前記熱交換器(92)を出る熱流(Fhоt)を冷却するために、前記熱交換器(92)及び過冷却装置(93)を出る流れを圧縮して圧縮流体流(Fcompressed)を形成するように意図された、圧縮ポンプ(94)と、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
水の高温可逆電解による電気の貯蔵及び/又は電気の引出しのための方法であって、請求項1~17の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、
-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物電解槽(SOEC)モードである場合に、前記高温可逆電解槽(11)に入るように意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に水素化物タンク(12)によって放出された熱を回収するステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、前記水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱を回収するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
電気貯蔵モードに従って実施され、前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成されており、水素を生成することで電気を貯蔵するために蒸気の高温電解反応を行うステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~4の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
-注入水(H2O)と相分離器(13)からの再循環水(H2Orecоv)とを含む前記システム(10)の全水(H2Otоtal)を圧縮ポンプ(14)内に導入し、2~15barの圧力にするステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、前記システム(10)の入口における水(H2Otоtal)の予熱を可能にするために、熱交換器(16、17)を通して前記システム(10)の全水(H2Otоtal)を循環させるステップと、
-前記システム(10)の入口における水(H2Otоtal)を前記蒸気発生器(18)内に導入し、水素の吸収中に水素化物タンク(12)によって放出され、また、熱伝達流体(FC)によって前記蒸気発生器(18)に供給される熱を用いて前記高温可逆電解槽(11)用の加圧蒸気を生成するステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、前記高温可逆電解槽(11)に入る前に蒸気の過熱を可能にするために熱交換器(20、21)を通して蒸気を循環させるステップと、
-電気加熱要素を使用することによって前記高温可逆電解槽(11)の作動温度に到達するように蒸気を追加で過熱するステップと、
-水素(H2)及び酸素(O2)の流れを生成するために前記高温可逆電解槽(11)に加圧蒸気を導入するステップと、
-熱交換器(16、17、20、21)を用いて水素(H2)及び酸素(O2)の流れを冷却するステップと、
-前記相分離器(13)内で未反応の加圧蒸気を凝縮させて、前記システム(10)内に再導入される再循環水(H2Orecоv)を生成するステップと、
-生成及び乾燥された水素(H2)を前記水素化物タンク(12)内に貯蔵するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電気引出しモードに従って実施され、前記高温可逆電解槽(11)は固体酸化物形燃料電池(SOFC)に従って作動するように構成されており、水素を引き出すことで電気を生成するために蒸気の高温電解の逆反応を生じさせるステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項9を引用する、請求項11~15の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
・水素(H2)回路用:
-混合手段(M1)を用いて、水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器(30)を通して全水素(H2tоtal)を注入し、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H2)によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-全水素(H2tоtal)を前記高温可逆電解槽(11)内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器(30)によって、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体(FC)との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器(31)によって、前記予熱熱交換器(30)を出る水素流を冷却するステップ、
-相分離器(34)から来る、生成された水流から水素流(H2residuel)を分離するステップ、
-水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-前記高温可逆電解槽(11)に入る圧縮空気によって冷却されるように、冷却熱交換器(38)を通して前記高温可逆電解槽(11)を出る空気を注入するステップ、
-熱伝達流体(FC)が通過する熱回収要素を形成する熱交換器(39)を通して、前記冷却熱交換器(38)を出る空気を注入するステップ、
-混合手段(M1)によって、熱回収要素を形成する熱交換器(39)を出る空気と、追加の圧縮空気流(FO2)とを混合するステップ、
-水頭損失を補填し、かつ混合手段(M1)の下流の冷却熱交換器(40)に注入される圧縮空気を得るために、混合物を熱交換器(40)、次いで冷却装置(41)、次いで圧縮ポンプ(42)に注入するステップ、
-前記冷却熱交換器(40)から来る空気を熱交換器(38)内に注入して予熱し、次いで、それを2~15barの目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)内に注入するステップ、
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項10を引用する、請求項11、12、16及び17の何れか1項に記載の水の高温可逆電解用システム(10)を用いて実施され、以下の一連のステップ:
・水素(H2)回路用:
-混合手段(M1)を用いて、2~15barの目標圧力で、水素化物タンク(12)から来る水素と前記高温可逆電解槽(11)内の未消費水素(H2residuel)の全リサイクルとを混合するステップ、
-熱交換器(30)を通して2~15barの目標圧力で全水素(H2tоtal)を注入し、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流(H2)によってそれを予熱することを可能にするステップ、
-2~15barの目標圧力で全水素(H2tоtal)を前記高温可逆電解槽(11)内に、その消費と、水、電気、及び熱の生成とのために注入するステップ、
-予熱熱交換器(30)によって、前記高温可逆電解槽(11)を出る水素流を冷却するステップ、
-熱伝達流体(FC)との交換により熱の回収を可能にする、熱回収要素を形成する熱交換器(31)によって、前記予熱熱交換器(30)を出る水素流を冷却し、ステップ、
-相分離器(34)から来る、生成された水流から水素流(H2residuel)を分離するステップ、
-アセンブリの水頭損失の値に対してのみそれを再圧縮することによって、未消費水素を再循環させるステップ、
・一次空気回路用:
-周囲空気(Fair1)を圧縮ポンプ(48)内に注入し、2~15barの圧力にするステップと、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る空気流を用いて、予熱熱交換器(47)に入る空気を予熱するステップ、
-前記目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)に入る予熱空気を注入するステップ、
-前記予熱熱交換器(47)内で前記高温可逆電解槽(11)を出る空気を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて熱を得るために、熱回収要素である熱交換器(49)を通して前記予熱熱交換器(47)を出る空気を冷却するステップ、
-出て行く空気(Fair2)を排出する前に、熱回収要素を形成する熱交換器(47)を出る空気をガスタービン(43)内に注入するステップ、
・冷却回路:
-前記高温可逆電解槽(11)に入る流体(Fincоming)によって、予熱熱交換器(90)を通して前記高温可逆電解槽(11)を出る熱流(Fhоt)を冷却するステップ、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて、熱回収要素を形成する熱交換器(91)内で前記予熱熱交換器(90)を出る流れを冷却するステップ、
-再圧縮流体流(Fcompressed)によって熱交換器(92)内で、前記熱回収要素を形成する熱交換器(91)を出る流れを全て冷却するステップ、
-再圧縮流体流(Fcompressed)が通過する前記熱交換器(92)を出る流れを過冷却装置(93)内、次いで圧縮ポンプ(94)内に注入するステップ、
-2~15barの目標圧力で前記高温可逆電解槽(11)に入る前に、前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって前記圧縮ポンプ(94)を出る流れを予熱するステップ、
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第9号証を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~21に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。
(1)申立理由1(新規性)
ア 本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
ア 本件発明1~5は、甲第1号証(補助的に甲第2号証)に記載された発明に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
カ 本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
キ 本件発明18、19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明18、19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ク 本件発明20は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明20に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ケ 本件発明21は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明21に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性)
ア 本件発明1の蒸気発生器(18)、及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードを前提とするものであり、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに対応するものではないから、本件発明1の高温可逆電解槽(11)を形成する装置が、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する場合に、上記蒸気発生器(18)及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は技術的に無意味であるし、これらが何を指すのか不明である。
したがって、本件発明1~17については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 本件発明1は、高温可逆電解槽(11)の作動モードに関する複数の可能性を「及び/又は」で選択肢的に特定するものであるところ、固体酸化物電解槽(SOEC)モードと固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードは、電気化学的に真逆の反応であり、選択肢同士が「類似の性質又は機能を有しないために、一の発明を把握できず、明確ではない。
したがって、本件発明1~17については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件)
ア 本件発明1の蒸気発生器(18)、及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードを前提とするものであり、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに対応するものではないから、本件発明1の高温可逆電解槽(11)を形成する装置が、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する場合に、上記蒸気発生器(18)及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は技術的に無意味であり、高温電解槽(HTE)の熱的動作条件を管理するという課題を解決できない。
したがって、本件発明1~17については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲第1号証:彦坂猛、外4名、「平板型固体酸化物セルによる高温水蒸気電解システムの電気分解効率」、[online]、2008年12月19日(掲載日:発行日は2000年 5月 1日)、一般社団法人電気学会、インターネット
<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejpes1990/120/5/120_5_694/_pdf/-char/ja>
甲第2号証:特表2016-508182号公報
甲第3号証:特開2014-185388号公報
甲第4号証:橋崎克雄、「水素供給ステーション用固体高分子水電解装置の開発」、[online]、2019年 8月30日(掲載日:発行日は2003年 4月 5日)、公益社団法人電気化学会、インターネット
<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/electrochemistry/71/4/71_282/_pdf/-char/ja>
甲第5号証:岡野一清、「WE-NETプロジェクトにおける水素利用技術の開発」、[online]、2010年 8月 5日(掲載日:発行日は2000年 9月25日)、一般社団法人日本高圧力技術協会、インターネット
<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1972/38/5/38_5_290/_pdf/-char/ja>
甲第6号証:特開平5-41236号公報
甲第7号証:特開2004-199997号公報
甲第8号証:大川大輔、外2名、「空気再循環を行うガスタービン・固体酸化物形燃料電池ハイブリッドシステムの基本特性」、[online]、2011年 3月 3日(掲載日:発行日は2007年 6月25日)、一般社団法人日本機械学会、インターネット
<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaib1979/73/730/73_730_1385/_pdf/-char/ja>
甲第9号証:特開昭60-154473号公報
2 令和 7年 1月24日付け取消理由の概要
(1)取消理由1(進歩性)
ア 本件発明1~5、7、8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
本件発明1~6、9、10については、特許請求の範囲の記載が、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない。
第4 当審における判断
1 申立理由1(新規性)
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「平板型固体酸化物セルによる高温水蒸気電解システムの電気分解効率」(表題)に関し、以下の事項が記載されている(下線は強調のため当審が付した。以下同様である。)。
(ア)「1.まえがき
化石燃料の消費を抑え,自然エネルギーをもっと大幅に使うため,条件の良い所で水力や太陽電池などで発電し,その電力で水を電気分解して水素に変換し,消費地に輸送して使う水素工ネルギーシステムが提案されている。水を電気分解する際,現状では技術の確立しているアルカリ水電解や,電流密度や電解効率が高い固体高分子セルが良く検討されている。水の電気分解エネルギーは熱力学的には,電気エネルギーに相当するギブズの自由エネルギー分と熱エネルギーに相当するエントロピー分の和で表わすことが出来る。ここで電解温度を上げると,よく知られているように,自由エネルギー分が減り,エントロピー分が増え,利用価値の高い電気入力を減らし,水素エネルギーに変換される熱エネルギー分を増やすことができる(1)。1000℃では自由エネルギー分が1に対して,エントロピー分が約0.6になり,運転温度約100℃,電気分解効率90%程度の固体高分子膜などによる水電解(2)より,電解に必要な電気入力が少なく,エントロピー分の熱量がより多く利用できる。ところで,日射条件の良い砂漠や洋上で太陽電池で発電する時,太陽電池の効率は15%程度で残り85%は有効利用されていない。この利用されていない分を高温熱として回収し,水電解のエントロピー分の熱として使い,電気のみならず太陽エネルギーなどの未利用熱を有効利用し,水素製造量を増やせないものであろうか。
水電解技術の一つとして,Y2O3安定化ZrO2(YSZ)を固体酸化物とする1000℃付近の高温水蒸気電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell, SOEC)が,これまで,いくつかの研究機関で開発されてきた。ドイツのDornier社では円筒型横縞型のセルを用い,2kW級のモジュール試験や3000時間以上の耐久試験などが行なわれた(3,4)。米国のWestinghouse社では円筒縦縞型のセルが研究開発された(5,6)。その後世界的に,高温水蒸気電解の研究は固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell, SOFC)を開発する流れに変わってしまった。また,高出力密度と低コスト化を狙った平板型SOFCの研究も盛んになった。最近では,高温水蒸気電解の研究は電力貯蔵用に,夜間電力で平板型セルをSOECとして動作させ,水を電気分解し水素と酸素を貯蔵し,昼間にセルを燃料電池として動作させ,水素と酸素を戻して発電する研究が三菱重工と関西電力で進められた(7,8)。
電気分解するためSOECに電気を流すと,実際のセルでは活性化過電圧などの損失により熱が生じ,熱力学的に理想的な電気1に対して約0.6のエントロピー熱分を一部補ってしまう。これら活性化過電圧などの諸損失を含め,温度分布も考慮し,実際に近い状態で,円筒型SOECのセル特性やサイクル効率などを永田らは解析している(9.10)。本研究ではこれまでの研究を元に,低コスト化が期待できる平板型SOECに対し,どの程度の電解特性が得られるか,諸損失や温度分布を考慮したセルの解析コードを作り,約1000℃の高温熱を太陽熱などから貰いつつ,高温熱交換などでの熱損失を考慮し,いくつかの運転条件で次式で定義する電気分解効率
電気分解効率=(単位時間当りの生成水素量)・(水の生成エンタルピー)/電解システムへの電気入力 ・・・(1)
を試算してみた。現在,太陽熱によりヘリウムを約900℃まで加熱させて稼動するスターリングエンジンがあるが,1000℃ の高温の熱を貰うことは決して容易ではない。しかし,1000℃付近の熱でどの程度の電解効率が得られるか,諸々の損失を考慮して検討しておくことは重要と考えられる。」(第694ページ左欄~第695ページ左欄)
(イ)「2.SOECとSOFCの性能解析シミュレーション
<2.1>セル構成
図1に平板型SOEC単セルの概略図を示す。水蒸気は水素を発生する溝のx方向へ流れ,電流密度分布を伴って電気分解される。水電解反応に伴う吸熱は加熱したヘリウムを流すことにより賄うものとする。また,一流路の単セルの解析結果を単純にy,z方向に並べて,スタックを構成するものとし,y,z方向には多数の一流路単セルが並ぶので,ガスの出入口以外は全て断熱境界とし,またインタコネクタの上下面は計算が容易なように等電位と仮定する。後述するように,温度分布は一定とする場合と,エネルギー収支式を解き温度分布がある二つの場合を検討する。
SOECを構成する材質,物性値(10,11)を表1のように決め,寸法はSOFCを参考に表2のように仮定する。SOECを構成する材料の中で,電解質の抵抗のみ温度依存性が大きいので,温度T(K)における抵抗率ρeは次式で表す(12)。
ρe(T)=3.61・10-5exp(10092/T) ・・・(2)」(第695ページ左欄~右欄)
(ウ)「
[図:0001433058000001.jpg]
」(第695ページ左欄)
(エ)「3.高温水蒸気電解システムの電気分解効率
<3.1>高温水蒸気電解システム
図7にここで検討したシステム構成を示す。このシステムは自然エネルギーにより水素を生成するシステム例である。0.1MPa,25℃の水をポンプによって1MPaまで加圧し,低温熱交換器,水蒸気生成器を通って200℃の水蒸気を生成する。その水蒸気は高温熱交換器,高温水蒸気加熱器を通り,1000℃程度の温度に昇温されSOEC内へ入る。SOECから出てきた水素,酸素および電解されなかった水蒸気は高温,低温熱交換器を通り,酸素,水素はタンクに貯蔵される。電解に必要な電力はここでは太陽電池からすべて供給され,また熱は太陽熱によって過熱されたヘリウムなどを循環させることにより,必要な熱は全て供給されるものとする。
図8にH2O,H2とO2(21)の熱力学データを示す。SOECは1000℃程度で運転されるため,室温の水をSOEC出口ガスや外部熱などで水蒸気にし,加熱して供給する必要がある。電解により生成した高温の水素と酸素の顕熱で室温の水をセル温度まで再生加熱するため,それぞれのエンタルピーを元に計算すると,図から分かるように、ほぼ水の蒸発潜熱分だけ不足する。
再生熱交換した晴に不足する熱の供給と電解反応に必要な吸熱量を,全て太陽熱などの外部熱源により行う場合を運転法1とする。SOECの反応に必要な高温吸熱量をSOECの電解電流によるジュール損失により賄い,高温水蒸気加熱器用ヘリウムを太陽電池による電気加熱で行う場合を運転法2とする。この場合,温度を決めるとエントロピー吸熱を補う電解電流は一義的に決まってしまい、運転の調整度が低い。そこで,エントロピー吸熱と高温水蒸気加熱器をまとめて電気加熱しても、熱交換損失を除いて必要熱量の供給は同じとなるので、これを運転法2’とする。生成した酸素と水素の一部を燃焼して,SOEC及び高温水蒸気加熱に必要な熱を供給する場合を運転法3とした。表3に各運転法における加熱法をまとめて示す。ただし,すべての運転法において,水蒸気生成器で要する熱は低温であるため,太陽熱など外部より貰うものとした。」(第699ページ右欄~第700ページ右欄)
(オ)「
[図:0001433058000002.jpg]
」(第699ページ右欄)
(カ)「
[図:0001433058000003.jpg]
」(第700ページ左欄)
(キ)「4.むすび
諸損失を含め,電流や温度分布のある平板型SOECの解析プログラムを作成した。このプログラムを使って,入口ガス温度差が50℃程度のSOECを計算したところ,平均温度を合わせて等温としたSOECの電解電圧・平均電流密度特性はほぼ一致した。これは非等温セル内では温度分布が小さく、平均温度で充分代表できるためと思われる。また,このSOECではインタコネクタや電解質による抵抗過電圧や活性化過電圧が大きく,電極の抵抗過電圧や濃度過電圧が小さいこと,セル構成要素内では熱伝導が大きく,温度差がほとんど無いことなどが分かった。また、等温SOECの計算結果を使って、機器損失を考慮した実際的な高温水蒸気電解システムを検討し,運転圧力1MPa,運転温度1000℃,平均電流密度300mA/cm2で,水の蒸発潜熱など必要な低温熱を太陽熱など外部から貰うと,電気分解効率は122%となり,低温の固体高分子水電解などによる約90%の電気分解効率より高い値が得られることを示した。」(第701ページ右欄)
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア(ア)には、「本研究では」「平板型SOEC」を対象としたことが記載されているところ、上記ア(オ)に摘記した図7には、「平板型固体酸化物セルによる高温水蒸気電解システム」(表題)のシステム構成が示されており、図7から、高温水蒸気電解システムは、1MPa、25℃のO2(酸素)を貯蔵するタンク、1MPa、25℃のH2(水素)を貯蔵するタンク、0.1MPa、25℃のH2O(水)を貯蔵するタンク、気液分離器、1MPaの供給水ポンプ、1.01MPaの循環水ポンプ、低温熱交換器、高温熱交換器、SOEC(固体酸化物電解セル)、SOEC加熱器、Heを循環するブロア1、熱吸収体、水蒸気生成器、高温水蒸気加熱器、Heを循環するブロア2、選択透過膜、太陽電池、インバータ及び集光器を有することが看取できる。
また、SOECから出てきたO2(酸素)、H2(水素)及びH2O(水蒸気・水)は高温熱交換器において、水蒸気生成器により生成された水蒸気と熱交換され、低温熱交換器において、循環水ポンプを出た水と熱交換され、その後、H2(水素)及びH2O(水蒸気・水)は気液分離器で分離され、気体であるH2(水素)は水素タンクに貯蔵され、液体であるH2O(水蒸気・水)は、供給水ポンプを出た水と混合され、循環水ポンプに供給されることも看取できる。
(イ)上記ア(エ)には、図7が、水素を生成するシステム例であり、その際、「0.1MPa、25℃の水をポンプによって1MPaまで加圧し、低温熱交換器、水蒸気生成器を通って200℃の水蒸気を生成」し、「その水蒸気は高温熱交換器、高温水蒸気加熱器を通り、1000℃程度の温度に昇温されSOEC内へ入」り、「SOECから出てきた水素、酸素および電解されなかった水蒸気は高温、低温熱交換器を通り、酸素、水素はタンクに貯蔵される」ことが記載されている。
ここで、上記ア(エ)の「電解により生成した高温の水素と酸素の顕熱で室温の水をセル温度まで再生加熱する」との記載によれば、高温熱交換器及び低温熱交換器において、SOECから出てきた水素、酸素及び電解されなかった水蒸気は、SOEC内へ入る水及び水蒸気を加熱し、水素、酸素及び電解されなかった水蒸気は冷却されるものと認められる。
また、上記ア(エ)、(カ)には、高温水蒸気加熱器用ヘリウムを太陽電池による電気加熱で行うことも記載されている(運転法2、2’)。
(ウ)上記ア(キ)には、高温水蒸気電解システムの運転圧力が1MPa(10bar)であることが記載されている。
(エ)上記ア(ウ)の摘記した図1には、平板型SOEC単セルの概略図が示されおり、図1から、隣接する2つのインタコネクタの間に水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質を有する、平板型SOEC単セルが看取できる。また、上記ア(イ)には、平板型SOEC単セルをガス流路の方向(x方向)に垂直な方向(y、z方向)に複数並べてスタックを構成することも記載されている。
(オ)以上によれば、甲第1号証には、以下2つの発明(以下「甲1発明」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
平板型固体酸化物セルによる高温水蒸気電解システムであって、
高温水蒸気電解システムは、1MPa、25℃の酸素を貯蔵するタンク、1MPa、25℃の水素を貯蔵するタンク、0.1MPa、25℃の水を貯蔵するタンク、気液分離器、供給水ポンプ、循環水ポンプ、低温熱交換器、高温熱交換器、SOEC(固体酸化物電解セル)、SOEC加熱器、Heを循環するブロア1、熱吸収体、水蒸気生成器、高温水蒸気加熱器、Heを循環するブロア2、選択透過膜、太陽電池、インバータ及び集光器を有し、
電気分解においては、供給水ポンプによって、0.1MPa、25℃の水を1MPaまで加圧し、前記加圧された水は、循環水ポンプにより低温熱交換器に供給され、低温熱交換器により加熱され、水蒸気生成器を通って200℃の水蒸気となり、前記水蒸気は高温熱交換器により加熱され、高温水蒸気加熱器を通り、1000℃程度の温度に昇温されSOEC内へ入り、SOECでの電気分解の後、SOECから出てきた酸素は前記高温熱交換器、前記低温熱交換器により冷却され、その後、酸素タンクに貯蔵され、SOECから出てきた水素及び電解されなかった水蒸気は前記高温熱交換器、前記低温熱交換器により冷却され、その後、気液分離機で分離され、気体である水素は水素タンクに貯蔵され、液体である水(水蒸気)は、供給水ポンプで加圧された水と混合され、循環水ポンプに供給され、
運転圧力は1MPa、運転温度は1000℃であり、
前記高温水蒸気加熱器に用いるヘリウムは、太陽電池による電気で加熱され、
前記SOECは、ガス流路を有する隣接する2つのインタコネクタの間に水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質を有する単セルを、前記ガス流路の方向に垂直な方向に複数並べてスタックを構成した、高温水蒸気電解システム。
<甲1発明2>
甲1発明の高温水蒸気電解システムを用いて実施された、高温水蒸気電解方法。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)本件発明1の「水の高温可逆電解用システム(10)」において、「高温可逆電解槽(11)」を、「固体酸化物電解槽(SOEC)モード」で作動する際の「固体酸化物電解槽(SOEC)」は、「電流の影響下で水素(及び酸素)を生成するための電気化学的装置」である(本件明細書の段落【0011】)。
一方、甲1発明の「高温水蒸気電解システム」における、「SOEC(固体酸化物電解セル)」も、電解(電気分解)によって、水素(及び酸素)を生成するための電気化学的装置である。
そうすると、甲1発明における、「SOEC(固体酸化物電解セル)」は、本件発明1における、「固体酸化物電解槽(SOEC)モード」で「作動する」「高温可逆電解槽(11)」に相当する。
(イ)甲1発明の高温水蒸気電解システムは、高温水蒸気電解によって、水素を生成し貯蔵するシステムである。水素は発電の燃料に用いることができるため、水素を貯蔵することには、電気を貯蔵しているという意味があることは明らかである。
そうすると、甲1発明において、「SOECでの電気分解の後、」「SOECから出てきた水素」「は水素タンクに貯蔵され」ることは、本件発明1において、「-水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モード」「に従って作動するように構成された」ことに相当する。
(ウ)甲1発明における、「SOEC(固体酸化物電解セル)」は、「高温水蒸気電解システム」の構成要素であって、1000℃程度の温度に昇温された水蒸気を電気分解する装置であるから、甲1発明の「SOEC(固体酸化物電解セル)」を有する「高温水蒸気電解システム」と、本件発明1の、「高温可逆電解槽」「を形成する装置」「を含む、水の高温可逆電解用システム(10)」とは、「高温」「電解槽(11)を形成する装置」「を含む、水の高温」「電解用システム(10)」である限りにおいて共通する。
(エ)甲1発明の「高温水蒸気電解システム」の「運転圧力は1MPaであ」ることは、「SOEC(固体酸化物電解セル)」の「運転圧力」が「1MPa」(10bar)であることと同義であるから、本件発明1の「高温可逆電解槽(11)は、2~15barの圧力下で作動するように構成されている、装置」であることと、「高温」「電解槽」「は、2~15barの圧力下で作動するように構成されている、装置」である限りにおいて共通する。
(オ)甲1発明における、「水蒸気生成器」は、本件発明1における、「蒸気発生器(18)」に相当する。
(カ)甲1発明における、「低温熱交換器」及び「高温熱交換器」は、水(水蒸気)の流れからみて、それぞれ、「水蒸気生成器」の上流及び下流に位置し、「低温熱交換器」は、高温水蒸気電解システムにおける、供給水ポンプによって加圧された水を加熱し、「高温熱交換器」は、SOEC(固体酸化物電解セル)に入る蒸気を加熱するものである。
そうすると、甲1発明における「低温熱交換器」及び「高温熱交換器」は、本件発明1における、「前記高温可逆電解槽(11)を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、それぞれ前記高温可逆電解用システム(10)の入口における水(H2Otоtal)を予熱し、かつ前記高温可逆電解槽(11)に入る蒸気を過熱することを可能にする、前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)」と、「高温」「電解槽(11)を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、それぞれ前記高温」「電解用システム(11)の入口における水(H2Otоtal)を予熱し、かつ前記高温」「電解槽(11)に入る蒸気を過熱することを可能にする、前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)」である限りにおいて共通する。
(キ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「-水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モードで作動するように構成された、高温電解槽(11)を形成する装置であって、前記高温電解槽(11)は、2~15barの圧力下で作動するように構成されている、装置を含む、水の高温電解用システム(10)であって、
前記高温電解用システムは、蒸気発生器(18)と、前記高温電解槽を出る水素(H2)及び酸素(O2)の流れを用いて、それぞれ前記高温電解用システム(10)の入口における水(H2Otоtal)を予熱し、かつ前記高温電解槽(11)に入る蒸気を過熱することを可能にする、前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)と、を含む、システム(10)。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点1>
「高温電解槽」として、本件発明1は、「高温可逆電解槽」を含み、前記「高温可逆電解槽」が「可逆」であるため、「水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モード」と「水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モード」のいずれのモードでも作動するように構成されている、水の高温可逆電解用システムであるのに対し、甲1発明は、SOEC(固体酸化物電解セル)を有し、高温水蒸気を電気分解するシステムではあるものの、前記SOEC(固体酸化物電解セル)が「可逆」ではないため、固体酸化物形燃料電池として作動させるものではない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
a 相違点1が実質的な相違点であるかについて
甲1発明の高温水蒸気電解システムは、SOEC(固体酸化物電解セル)で高温水蒸気を電気分解する装置であって、固体酸化物形燃料電池(SOFC)にも用いるものではないから、相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が甲第1号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明2~5についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
したがって、申立理由1(新規性)によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(進歩性)、取消理由1(進歩性)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記1(2)アで述べたとおり、上記相違点1の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>(再掲)
「高温電解槽」として、本件発明1は、「高温可逆電解槽」を含み、前記「高温可逆電解槽」が「可逆」であるため、「水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モード」と「水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モード」のいずれのモードでも作動するように構成されている、水の高温可逆電解用システムであるのに対し、甲1発明は、SOEC(固体酸化物電解セル)を有し、高温水蒸気を電気分解するシステムではあるものの、前記SOEC(固体酸化物電解セル)が「可逆」ではないため、固体酸化物形燃料電池として作動させるものではない点。
イ 判断
(ア)相違点1の容易想到性について
上記1(1)ア(ア)に摘記したとおり、甲第1号証には、高温水蒸気電解の研究は電力貯蔵用に、夜間電力で平板型セルをSOECとして動作させ、水を電気分解し水素と酸素を貯蔵し、昼間にセルを燃料電池として動作させ、水素と酸素を戻して発電する研究が進められた旨が記載されている。
そうすると、甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、各単セルを燃料電池としても動作可能なものとし、タンクに貯蔵された水素と酸素を戻して発電すること、すなわち、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池としても作動するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における、「水素極」、「酸素極」及び「前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質」は、それぞれ、本件発明2における、「カソード(2.1、2.2)」、「アノード(4.2)」及び「前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.2)」に相当する。
(イ)甲1発明における、「水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質」のセットは、本件発明2における、「カソード(2.1、2.2)、アノード(4.2)、及び前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.2)によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セル(C1、C2)」すなわち「基本セル」に相当する。
(ウ)甲1発明における、「単セル」は、「隣接する2つのインタコネクタの間に、水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質を有する」ものであり、単セルをガス流路の方向に垂直な方向に複数並べてスタックを構成した場合、「インタコネクタ」は、隣接する「水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質」のセットの間のそれぞれに2つずつ配置されることになる。そうすると、甲1発明における、「インタコネクタ」は、本件発明2における、「2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の」「相互接続体」に相当する。
(エ)甲1発明の「スタック」は、「単セル」(「隣接する2つのインタコネクタの間に、水素極、酸素極、前記水素極と前記酸素極との間に配置された電解質を有する」もの)をガス流路の方向に垂直な方向に複数並べたものであり、本件発明2の「スタック」は、それぞれ形成された基本セル(基本固体酸化物電気化学セル)間にそれぞれ配置された複数の相互接続体を含むものであるから、甲1発明における、「スタック」は、本件発明2における、「スタック」と、「カソード(2.1、2.2)、アノード(4.2)、及び前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.2)によってそれぞれ形成された基本固体酸化物電気化学セル(C1、C2)と、2つの隣接する基本セル間にそれぞれ配置された複数の相互接続体(5)と、のスタック」である限りにおいて共通する。
(オ)そうすると、本件発明2と甲1発明とは、上記(2)ア(キ)の相違点1に加えて、以下の相違点2で相違し、その余の点で一致する。
<相違点2>
本件発明2は、「相互接続体」が、「電気的及び流体的相互接続体」であるのに対し、甲1発明は、「インタコネクタ」が、「電気的及び流体的」に接続するのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおりである。
(イ)相違点2について
甲1発明のインタコネクタは、図1に示されるように、ガス(He、O2、H2)の流路を有するものであるから、流体的接続体であり、また、電気分解における電気の経路でもあるから、電気的接続体でもある。
よって、相違点2は、実質的な相違点ではない。仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、甲第2号証の段落【0014】~【0021】の記載、【図2】の高温水蒸気電解槽における個別ユニットの分解図を踏まえると、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明2は、甲第1号証(補助的に甲第2号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における、「気液分離機」は、本件発明3における、「相分離器(13)」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記(1)アの相違点1及び上記(2)ア(オ)の相違点2に加えて、以下の相違点3で相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
本件発明3は、「-前記高温可逆電解槽(11)内の未反応蒸気と前記高温可逆電解槽(11)によって生成された水素(H2)とを受け取り、未反応水(H2Orecоv)を凝縮させて前記システム(10)内で再利用できるようにするように意図された、相分離器(13)に結合された凝縮器(23)」を含むのに対し、甲1発明は、「SOECから出てきた水素及び電解されなかった水蒸気は前記高温熱交換器、前記低温熱交換器により冷却され、その後、気液分離機で分離され」るものの、このような機能を有する凝縮器を含むのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1、2について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点3について
甲1発明において、気液分離器が気相の水素と液相の水とを分離するものであることからすれば、気液分離器に到達する前に、電解されなかった水蒸気の少なくとも一部は凝縮して液相の水となっているはずであり、係る水蒸気の凝縮は、SOECと気液分離器との間の高温熱交換器又は低温熱交換器のいずれかで生じなければならない。
ここで、高温熱交換器に流入する前の水蒸気の温度が200℃であり、当該水蒸気が、高温熱交換器を出る水素及び電解されなかった水蒸気と熱交換されることから、高温熱交換器を出る水素及び電解されなかった水蒸気の温度は200℃以上であると認められる。このため、lMPa(運転圧力)における水の飽和温度179.9℃であることに鑑みれば、高温熱交換器内で水蒸気の凝縮は起こり得ず、水蒸気の凝縮は低温熱交換器内で生じると解される。
そうすると、甲1発明における、「低温熱交換器」は、本件発明3における、「-前記高温可逆電解槽(11)内の未反応蒸気と前記高温可逆電解槽(11)によって生成された水素(H2)とを受け取り、未反応水(H2Orecоv)を凝縮させて前記システム(10)内で再利用できるようにするように意図された、相分離器(13)に結合された凝縮器(23)」に相当する。
よって、相違点3は、実質的な相違点ではない。
ウ 小括
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
(ア)本件発明4の圧縮ポンプ(14)は、本願の願書に添付した図面の図4を参照すると、熱交換器(16、17)に入る水を圧縮する態様も包含するものであるから、前記圧縮ポンプ(14)を出て、熱交換器(16、17)に入るまでの領域は、「システム(10)の入口」に対応するものである。
対して、甲1発明における、「供給水ポンプ」は、0.1MPa、25℃の水を1MPaまで加圧するものである。また、甲第1号証の図7において、「供給水ポンプ1MPa」、「循環水ポンプ1.01MPa」と記載されていることから、「循環水ポンプ」の圧力は、「1.01MPa」であると解される。そして、これらのポンプは、低温熱交換器に入る水を圧縮するものであるから、高温水蒸気電解システムの入口における水を圧縮するものである。
(イ)そうすると、本件発明4と甲1発明とは、上記(1)アの相違点1、上記(2)ア(オ)の相違点2及び上記(3)ア(イ)の相違点3で相違し、その余の点で一致する。
イ 判断
(ア)相違点1~3について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおり、相違点3については、上記(3)イ(イ)のとおりである。
ウ 小括
したがって、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明とを対比する。
(ア)甲第1号証の図7を参照すると、甲1発明における、「高温水蒸気加熱器」は、SOEC(固体酸化物電解セル)に入る水蒸気をさらに加熱(すなわち、過熱)する機器であり、太陽電池による電気で加熱したヘリウムと熱交換することで、水蒸気を過熱するものである。つまり、甲1発明における、「高温水蒸気加熱器」は、電気により水蒸気を過熱する機器である。
(イ)そうすると、本件発明5と甲1発明とは、上記(1)アの相違点1、上記(2)ア(オ)の相違点2及び上記(3)ア(イ)の相違点3で相違し、その余の点で一致する。
イ 判断
(ア)相違点1~3について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおり、相違点3については、上記(3)イ(イ)のとおりである。
ウ 小括
したがって、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における、「気相分離器」は、本件発明6における、「相分離器(13)」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明6と甲1発明とは、上記(1)アの相違点1、上記(2)ア(オ)の相違点2及び上記(3)ア(イ)の相違点3に加えて、以下の相違点6-1、6-2で相違し、その余の点で一致する。
<相違点6-1>
水素を貯蔵するタンクについて、本件発明6は、「水素化物タンク」であるのに対し、甲1発明は、「1MPa、25℃の水素を貯蔵するタンク」である点。
<相違点6-2>
本件発明6は、「水素化物タンク(12)の上流及び相分離器(13)の下流における、前記水素化物タンク(12)に貯蔵する前に水素(H2)に含まれる湿気を除去することを可能にするように意図された乾燥機(24)」を含むのに対し、甲1発明は、水素の乾燥機を含まない点。
イ 判断
(ア)相違点1~3について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおり、相違点3については、上記(3)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点6-1について
a 甲第3~5号証には、以下の事項が記載されている。
(a)甲第3号証には、「ガス製造方法」(発明の名称)に関し、以下の事項が記載されている。
「【0018】
そして、本実施形態の水素・酸素発生装置100は、それぞれの気液混合水を気液分離するための2台のガス分離タンク4がさらに備えられており、酸素ガスを含んだ気液混合水を気液分離するガス分離タンク4aからは、気液分離後の水(純水)が前記純水タンク2に返送されるようになっている。
また、水素ガスを含んだ気液混合水については、水素ガス用のガス分離タンク4bで分離された後の水蒸気を多く含んだ水素ガス(以下「湿潤水素」、又は、単に「湿潤ガス」ともいう)が前記除湿装置3に供給されるようになっている。
また、本実施形態の水素・酸素発生装置100には、前記除湿装置3で除湿・乾燥がされた乾燥水素を製品ガスとして利用すべく一次貯留するバッファータンク51と、該バッファータンク51から導入される乾燥水素を貯留させるための高圧タンク52とがさらに備えられており、当該水素・酸素発生装置100は、製造される水素ガス(製品ガス)が前記高圧タンク52から取り出されて利用されるように構成されている。」
「【図1】
[図:0001433058000004.jpg]
」
(b)甲第4号証には、「水素供給ステーション用固体高分子水電解装置の開発」(表題)に関し、以下の事項が記載されている。
「2.3 水素供給ステーシヨン向け固体高分子水電解装置の製作
水素ステーション向け固体高分子水電解装置のシステム基本仕様をTable 2に,システム系統をFig.9に示す。
水電解装置は屋外ユニットとし,主な構成機器として電解スタック,酸素気液分離器,水素酸素気液分離器,冷却装置,ガス精製器,及び直流電源装置等から構成されている。昇圧ポンプにて酸素気液分離器に加圧供給された純水は,循環ポンプにより電解スタックに供給される。電解スタックに電力印加され発生した水素は,一旦水素気液分離器に集められドレンを分離後,さらに水分を除去するためにガス精製器へ導入される.
これら発生水素ガスは,水素貯蔵としてその後流機器の水素吸蔵合金タンク,及び高圧水素ガス圧縮機,高圧ガスタンクに供給されるため,特に合有不純物成分である水素中水分濃度,水素中酸素濃度について厳しく制限されている.そこで本水電解装置には,ガス精製器として除湿器,酸素除去触媒装置を設け,所要の水素性状が確保されるようになっている.また,これら後流機器による急激な流量変動,圧力変動対応としてバッファータンクを設け,電解スタックヘの圧力衝撃を和らげる工夫も行っている.尚,これら一連の機器動作はすべて全自動運転で行われるようになっている.」(第285ページ左欄第18行~右欄第12行)
「Fig.9
[図:0001433058000005.jpg]
」(第285ページ右欄)
(c)甲第5号証には、「WE-NETプロジェクトにおける水素利用技術の開発」(表題)に関し、以下の事項が記載されている。
「5.4 水電解型水素ステーション
海外ではアルカリ水電解式水素ステーションが実用化されているが,電流密度は0.5A/cm2程度でエネルギー変換効率は80%弱である。WE-NETプロジェクトでは大容量水素製造プラント用に開発している固体高分子電解質水電解技術を利用し,電流密度1~3A/cm2で効率90%以上の高効率の水電解装置を使用する計画である。固体高分子電解質水電解型水素ステーションは直流電源,水電解装置,除湿装置,精製装置,水素貯蔵装置およびディスペンサーで構成される。水素ステーションの基本仕様をTable 3に,固体高分子電解質水電解システムの原理をFig.8に示す。
水電解法では99.99%の高純度の水素が得られるが,若干の酸素と水分が含まれるので水素吸蔵合金に吸蔵させる場合はそれらの不純物を10ppm以下に除去する必要がある。水素の貯蔵はTiZr系合金を使用する30Nm3タンク2基で行うが,水素放出時の加熱を効率良く行うために水電解装置の排熱を利用する。本電解型水素ステーションはオフピーク電力の利用ができるので,将来は電力の負荷平準化に貢献できるメリットがある。」(第295ページ右欄第12行~第296ページ左欄第6行)
「Fig.8
[図:0001433058000006.jpg]
」(第296ページ左欄)
b 上記aのとおり、甲第3~5号証には、水素を貯蔵するタンクとして、それぞれ、乾燥水素を貯留させるための高圧タンク、水素吸蔵合金タンク及び高圧ガスタンク、水素吸蔵合金であるTiZr系合金を使用するタンクが記載されている。
これら例示されるとおり、水素を貯蔵するタンクの態様は、当業者が適宜選択し得るものと認められるから、甲1発明において、水素を貯蔵するタンクを水素吸蔵合金タンク、すなわち、水素化物タンクとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(ウ)相違点6-2について
上記(ア)a(b)、(c)のとおり、水素吸蔵合金に水素を貯蔵する際に、不純物としての水を除去する必要があり、そのために除湿装置を設けることが知られているから、甲1発明において、水素を貯蔵するタンクを水素吸蔵合金タンクとするに当たり、同時に、水素吸蔵合金タンクの上流及び気相分離器の下流に、水素(H2)に含まれる湿気を除去することを可能にするように意図された除湿装置(乾燥機)を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1及び上記(2)ア(オ)の相違点2に加えて、以下の相違点7で相違し、その余の点で一致する。
<相違点7>
本件発明7は、「前記高温可逆電解槽(11)は、加圧固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れを用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る少なくとも1つの流れを予熱するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(30、38、47、90)を含む」のに対し、甲1発明は、固体酸化物形燃料電池として作動した場合、各熱交換器がどのような流れを熱交換するのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1、2について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点7について
甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池として作動させた場合、酸素、水素及び水(水蒸気)の流れは、電気分解の場合と逆になるから、SOFCを出た高温水蒸気は、少なくとも高温熱交換器において、SOFCに入る酸素及び水素の流れを予熱するものと認められる。
そうすると、甲1発明における、「高温熱交換器」は、本件発明7における、「少なくとも1つの熱交換器」に相当する。
よって、相違点7は、実質的な相違点ではない。仮に、相違点7が実質的な相違点であったとしても、甲第6号証の段落【0025】、甲第7号証の段落【0029】に記載されているように、SOFCを出た水蒸気・排燃料の熱により、SOFCに入る空気を予熱することが知られているから、排熱の有効利用の観点から、甲1発明において、上記相違点7に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明8について
ア 対比
本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1、上記(2)ア(オ)の相違点2及び上記(7)アの相違点7に加えて、以下の相違点8で相違し、その余の点で一致する。
<相違点8>
本件発明8は、「前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、そして、
-少なくとも1つの熱伝達流体(FC)を用いて前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れから来る高温熱を回収するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(31、39、49、91)を含む」のに対し、甲1発明は、固体酸化物形燃料電池として作動した場合、各熱交換器がどのような流れを熱交換するのか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1、2、7について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおり、相違点7については、上記(7)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点8について
甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池として作動させた場合、酸素、水素及び水(水蒸気)の流れは、電気分解の場合と逆になるから、SOFCに入る酸素及び水素の流れは、SOFCを出た高温水蒸気の高温熱を、少なくとも高温熱交換器において回収するものと認められる。
そうすると、甲1発明における、「酸素及び水素」及び「高温熱交換器」は、本件発明8における、「熱伝達流体(FC)」及び「少なくとも1つの熱交換器」に相当する。
よって、相違点8は、実質的な相違点ではない。仮に、相違点8が実質的な相違点であったとしても、甲第6号証の段落【0025】に記載されているように、SOFCに入る水素と酸素により、SOFC出る水蒸気の排熱を回収することが知られているから、排熱の有効利用の観点から、甲1発明において、上記相違点8に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1及び上記(2)ア(オ)の相違点2に加えて、以下の相違点9で相違し、その余の点で一致する。
<相違点9>
本件発明9は、「前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」である」のに対し、甲1発明は、「水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」」を有しない点。
イ 判断
(ア)相違点1、2について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点9について
甲第1号証には、高温水蒸気電解システムに関する事項は記載されているものの、固体酸化物形燃料電池の「水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」」については何ら記載されていないから、甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池として作動させることができたとしても、甲1発明の高温水蒸気電解システムに対し、固体酸化物形燃料電池の「水素回路と一次空気回路とからなる「圧縮空気再循環システム」」を追加することが動機付けられるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点9に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。このことは、甲第6号証の請求項1に、水蒸気電解セルと燃料電池とを兼用する電解兼発電手段を具備してなる電力貯蔵装置が記載され、甲第8号証のFig.1から、改質器によってCH4を改質して得られる改質後燃料をSOFCのアノードに導く燃料回路と、圧縮機で圧縮された高圧空気及びカソードから出た排空気を再循環した再循環空気との混合空気をSOFCのカソードに導く空気回路とを備えた空気再循環方式のシステムが看取できても変わるものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(10)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アの相違点1及び上記(2)ア(オ)の相違点2に加えて、以下の相違点10で相違し、その余の点で一致する。
<相違点10>
本件発明10は、「前記高温可逆電解槽(11)は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されており、前記システム(10)は、「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」である」のに対し、甲1発明は、「「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」」を有しない点。
イ 判断
(ア)相違点1、2について
相違点1については、上記(1)イ(ア)のとおり、相違点2については、上記(2)イ(イ)のとおりである。
(イ)相違点10について
甲第1号証には、高温水蒸気電解システムに関する事項は記載されているものの、固体酸化物形燃料電池の「「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」」については何ら記載されていないから、甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池として作動させることができたとしても、甲1発明の高温水蒸気電解システムに対し、固体酸化物形燃料電池の「「三流」相互接続体(5)を使用する、水素回路と、一次空気回路と、冷却回路とからなる「三流システム」」を追加することが動機付けられるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点10に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。このことは、甲第6号証の段落【0013】に、「水素と酸素を電解兼発電手段において反応させて水蒸気を発生させる発電時には、電解兼発電手段において発熱がある」ことが記載され、甲第9号証の特許請求の範囲に、燃料電池の熱を除去するための「一対の燃料電池の間に配置されそれを貫通して延びる溝により冷却管を受けるよう構成された複数個の冷却器組立体」が記載されていても変わるものではない。
ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(11)本件発明18について
ア 対比
本件発明18と甲1発明2とを対比する。
上記1(2)ア(イ)、(ウ)での対比を踏まえると、本件発明18と甲1発明2とは、「水の高温電解による電気の貯蔵のための方法であって、水の高温電解用システム(10)を用いて実施される方法。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点18-1>
「高温電解槽」として、本件発明18がその方法を実施するために用いる本件発明1の水の高温可逆電解用システムは、「高温可逆電解槽」を含み、前記「高温可逆電解槽」が「可逆」であるため、本件発明18は、「電気の貯蔵」と「電気の引出し」のいずれの方法も実施できるのに対し、甲1発明2が引用する甲1発明の高温水蒸気電解システムは、SOEC(固体酸化物電解セル)を有し、高温水蒸気を電気分解するシステムではあるものの、前記SOEC(固体酸化物電解セル)が「可逆」ではないため、甲1発明2は、「電気の引出し」のための方法ではない点。
<相違点18-2>
本件発明18は、「-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物電解槽(SOEC)モードである場合に、前記高温可逆電解槽(11)に入るように意図された加圧蒸気を生成するために水素の吸収中に水素化物タンク(12)によって放出された熱を回収するステップ」を含むのに対し、甲1発明2は、甲1発明の高温水蒸気電解システムが、水素を貯蔵するタンクを有するものの、水素を貯蔵するタンクが放出した熱を回収するのか不明であり、さらに、回収した熱を水蒸気を生成するために用いるのか不明である点。
<相違点18-3>
本件発明18は、「-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、前記水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために前記高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱を回収するステップ」を含むのに対し、甲1発明2は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されておらず、水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱を回収するステップを有しない点。
イ 判断
(ア)相違点18-1について
上記1(1)ア(ア)に摘記したとおり、甲第1号証には、高温水蒸気電解の研究は電力貯蔵用に、夜間電力で平板型セルをSOECとして動作させ、水を電気分解し水素と酸素を貯蔵し、昼間にセルを燃料電池として動作させ、水素と酸素を戻して発電する研究が進められた旨が記載されている。
そうすると、甲1発明2が引用する甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、各単セルを燃料電池としても動作可能なものとし、タンクに貯蔵された水素と酸素を戻して発電すること、すなわち、SOEC(固体酸化物電解セル)を可逆とし、固体酸化物形燃料電池としても作動するようにし、甲1発明2において「電気の引出し」もすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(イ)相違点18-2について
甲第1号証には、甲1発明2が引用する甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、水素を貯蔵するタンクが熱を放出することは記載されておらず、その熱を水蒸気を生成するために回収することも記載されていないから、甲1発明2において、水蒸気を生成するために水素を貯蔵するタンクの熱を回収するステップを含むことが動機付けられるとはいえない。
よって、甲1発明2において、上記相違点18-2に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
ここで、上記(6)イ(イ)の「相違点6-1について」で述べたとおり、水素を貯蔵するタンクの態様は、当業者が適宜選択し得るものと認められるから、甲1発明2が引用する甲1発明において、水素を貯蔵するタンクを水素吸蔵合金タンク、すなわち、水素化物タンクとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、仮に、水素化物タンクが水素の吸収中に熱を放出するとしても、甲1発明2が引用する甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、水素を貯蔵するタンクを水素化物タンクに変更した上で、水素の吸収中に水素化物タンクによって放出された熱を回収することは、いわゆる「容易の容易」であり、妥当なものとはいえない。
このことは、甲第6号証の段落【0022】に、「水素が水素タンク5で水素吸蔵合金に吸収される際に発熱が行なわれるが、この熱も水タンク2からの水によって吸収され」ること、段落【0025】に「リバーシブル形SOE電解セル1で生成した水蒸気は、発電時にリバーシブルSOE電解セル1での発熱による熱エネルギを受けて高温となり、その一部は、再生熱交換器4A,4Bを逆流しながら、リバーシブル形SOE電解セル1へ供給される水素と酸素を加熱し、さらに水素タンク5に入って水素吸蔵合金を加熱して水素吸蔵合金からの水素の放出を活溌化」することが記載されていても変わるものではない。
(ウ)相違点18-3について
本件発明18において、高温可逆電解槽(11)を出る流れによって放出された熱は、水素化物タンク(12)からの水素の脱着を可能にするために回収され、水素化物タンク(12)を加熱するために用いられるものである。
一方、甲第1号証には、高温水蒸気電解システムに関する事項は記載されているものの、固体酸化物形燃料電池における水素化物タンクについては何ら記載されていないから、甲1発明2が引用する甲1発明の高温水蒸気電解システムにおいて、水素を貯蔵するタンクを水素化物タンクに変更した上で、固体酸化物形燃料電池モードで作動させ、前記水素化物タンクからの水素の脱着を可能にするために、水素化物タンクを加熱することが動機付けられるとはいえない。
よって、甲1発明2において、上記相違点18-3に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明18は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(12)本件発明19~21について
本件発明19~21は、本件特許の請求項18の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明18の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(11)で述べたとおり、本件発明18が、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明19~21についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。このことは、甲第3~5号証に、上記(6)イ(イ)aに摘記した事項が記載され、甲第6号証に、上記(11)イ(イ)に摘記した事項が記載されていても変わるものではない。
(13)まとめ
以上のとおり、本件発明1~5は、甲第1号証(補助的に甲第2号証)に記載された発明に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6、9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明18、19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明20は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明21は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項9、10、18~21に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(明確性)
(1)本件発明1~17について
本件特許の請求項1~17の記載は、上記第2のとおりのものであるところ、請求項1~17の記載に不明確なところはなく、その意味は明確であるから、本件発明1~17については、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(2)ア 申立人は、特許異議申立書の第91ページ第2~23行において、本件発明1の蒸気発生器(18)、及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードを前提とするものであり、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに対応するものではないから、本件発明1の高温可逆電解槽(11)を形成する装置が、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する場合に、上記蒸気発生器(18)及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)は技術的に無意味であるし、これらが何を指すのか不明である旨を主張する。
しかしながら、本件発明1は、高温可逆電解槽を用いて、「水素の生成、故に電気の貯蔵」と、「水素の消費、故に電気の引出し」とを行い得る水の高温可逆電解用システムの発明であって、蒸気発生器(18)、及び前記蒸気発生器(18)の上流及び下流の熱交換器(16、17、20、21)が、当該システムを「水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モード」で作動させる際の特定事項であることは、申立人も認めるとおり明らかであるから、これらの特定事項が、「固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードに従って作動する場合」に、「技術的に無意味であるし、これらが何を指すのか不明である」からといって、本件発明1が不明確になるものではなく、申立人の主張は、本件発明1の前提を欠くものである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 申立人は、特許異議申立書の第91ページ下から第2行~第91ページ第2行において、本件発明1は、高温可逆電解槽(11)の作動モードに関する複数の可能性を「及び/又は」で選択肢的に特定するものであるところ、固体酸化物電解槽(SOEC)モードと固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードは、電気化学的に真逆の反応であり、選択肢同士が「類似の性質又は機能を有しない」ために、一の発明を把握できず、明確ではない旨を主張する。
しかしながら、本件発明1は、高温可逆電解槽を用いて、「水素の生成、故に電気の貯蔵」と、「水素の消費、故に電気の引出し」とを行い得る水の高温可逆電解用システムの発明であるから、その両者を、「水素の生成、故に電気の貯蔵のために固体酸化物電解槽(SOEC)モード」「及び/又は」「水素の消費、故に電気の引出しのために固体酸化物形燃料電池(SOFC)モード」と選択肢的に記載したからといって、本件特許の請求項1の記載が不明確になるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1~17ついては、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
したがって、申立理由3(明確性)によっては、本件特許の請求項1~17に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(サポート要件)、取消理由2(サポート要件)
(1)本件発明1~17について
ア 本件発明の水の高温可逆電解用システムは、「可逆」との技術的事項から明らかなように、高温水電解槽(HTE)及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)のいずれにも適用可能なシステムであるから、本件発明が解決しようとする課題は、「高温水電解槽(HTE)及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)の熱的動作条件の管理を改善する」ことであると認められる(段落【0028】~【0040】)。
イ そして、本件明細書の発明の詳細な説明の記載、特に、段落【0098】~【0102】、【0128】~【0131】、【0135】~【0140】の記載によれば、上記(1)の課題は、固体酸化物電解槽(SOEC)モード及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードのいずれの場合においても、高温可逆電解槽を出る流れから熱交換器又は熱伝達流体FCで回収した熱や、水素化物タンクから熱伝達流体FCで回収した熱を、回収し利用することによって解決できると認識できる。
ウ 一方、本件発明1は、固体酸化物電解槽(SOEC)モードにおける熱の回収、利用に係る「熱交換器(16、17、20、21)」を発明特定事項としているものの、
-前記高温可逆電解槽(11)が固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、「前記高温可逆電解槽(11)を出る少なくとも1つの流れを用いて前記高温可逆電解槽(11)に入る少なくとも1つの流れを予熱するように意図された、少なくとも1つの熱交換器(30、38、47、90)」を含むことを発明特定事項としていないため、上記アの「固体酸化物形燃料電池(SOFC)の熱的動作条件の管理を改善する」との課題を解決できるとはいえない。
また、上記少なくとも1つの熱交換器を有しない、本件発明2~6、9、10についても同様である。
エ これに対して、本件発明7、8、11、13、16、17は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モードで作動するように構成されている場合に、少なくとも1つの熱交換器(30、31、38、39、47、49、90、91)を有しているから、本件発明7、8、11、13、16、17は、上記アの課題を解決できると認識できる。
また、請求項11、13の記載を直接又は間接的に引用する本件発明12、14、15も同様に、上記アの課題を解決できると認識できる。
(2)まとめ
以上のとおり、本件発明1~6、9、10については、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
したがって、本件発明1~6、9、10は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
一方、本件発明7、8、11~17については、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、申立理由4(サポート要件)、取消理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項7、8、11~17に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~6、9、10については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、本件発明11~21については、特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項11~21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項11~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700838