特許異議申立
2023-700505
無線通信装置および無線通信用チャネル選択方法
- 審判番号
- 2023-700505
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-070325
- 登録番号
- 7174265
- 請求日
- 2023年05月16日
- 審決日
- 2023年07月19日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社バッファロー
- 【権利者代理人】弁理士法人明成国際特許事務所
- 【異議申立人】福岡 麗子
- 審判長/審判官
- 審判長 廣川 浩
- 審判官 圓道 浩史
- 審判官 角張 亜希子
- 分類
- P1651.121-Y (H04W) / P1651.537-Y (H04W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7174265号発明「無線通信装置および無線通信用チャネル選択方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7174265号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7174265号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年3月19日の出願である特願2013-55923号の一部を平成29年6月2日に新たな特許出願とした、特願2017-109893号のさらに一部を令和2年4月9日に新たな特許出願としたものであって、令和4年11月9日にその特許権が設定登録され、同月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年5月16日に特許異議申立人(以下、単に「申立人」という。) 福岡 麗子 により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を常時更新して取得する干渉度取得部と、
実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する判定部と、
前記実行対象の無線通信が前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、レーダ波を検出したために使用できないチャンネルを除き、前記干渉度取得部による取得結果に基づき、前記レーダ波を検出する可能性のある5GHz帯のチャンネルを含むチャンネルのうち、前記干渉度が低いチャネルの中から選択するチャンネル決定処理を実行するチャネル選択部と
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信は、ストリーミングである
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
使用中のチャネルの干渉度が基準値未満の場合、前記チャネル選択部にチャネルの切り替えをさせないチャネル維持部
を備える請求項1または請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記干渉度取得部は、使用可能な各チャネルの帯域を対象にしたFFTを利用して、各チャネルの干渉度を取得する
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の無線通信装置。
【請求項5】
使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を常時更新して取得しておき、
実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定し、
前記実行対象の無線通信が前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信であると判定された場合、当該通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、レーダ波を検出したために使用できないチャンネルを除き、前記干渉度の取得結果に基づき、前記レーダ波を検出する可能性のある5GHz帯のチャンネルを含むチャンネルのうち、前記干渉度が低いチャネルの中から選択することで決定する
無線通信用チャネル選択方法。」
第3 申立理由の概要
申立人が主張する本件特許についての特許異議申立の理由の概要は、次のとおりである。
申立理由1 本件発明1、2、及び5は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された公知技術、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許の請求項1、2、4、及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。
申立理由2 本件発明3は、明確でなく、本件特許の請求項3に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2005-333510号公報
甲第2号証:特開2004- 96595号公報
甲第3号証:特開2010-183376号公報
甲第4号証:特開2012-120033号公報
甲第5号証:特開2012- 60443号公報
甲第6号証:特開2008-283508号公報
甲第7号証:特開2010-199942号公報
甲第8号証:特開2007-158485号公報
第4 当審の判断
1 申立理由1について
(1) 甲1発明
甲第1号証として提出された特開2005-333510号公報の段落0009、0011ないし0014、及び0016ないし0018の記載、及び無線LANの分野の技術常識を考慮すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 アクセスポイントであって、
チャネルA~Cの3つの周波数チャネルを選択的に設定して各端末との無線通信が可能であり、
無線通信制御装置が設けられており、
前記無線通信制御装置は、無線アンテナで受信した信号から所定の周波数の信号を抽出するRF部と、無線通信制御装置を統括制御するCPUと、電力測定部と、制御演算部とを備え、
前記電力測定部は、定期的に、600μS周期内で各周波数チャネルA~Cに対して時間をずらしてキャリアセンスを実行することで、各周波数チャネルにおける電波のレベル(電力量)を測定し、
前記制御演算部は、前記電力測定部による測定チャネルの変更及びそのタイミング等の制御を行い、測定結果を入力して、各周波数チャネルにおける測定した電力が予め設定した閾値より大きい場合にはチャネル使用中、小さい場合にはチャネル未使用と判断すると共に、その測定結果を統計データテーブルとして保持し、
前記統計データテーブルでは、選択可能な周波数チャネルA~Cそれぞれについて、全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合を示す使用率のデータを保持しており、
前記アクセスポイントと端末との間で無線通信が確立しているときに、端末がストリーミング動画データの配信要求を前記アクセスポイントに対して実行すると、前記CPUはQoS(Quality of Service)要求が大きいと判断し、前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認し、
確認した結果、現在のチャネルAと比較して使用率の低いチャネル、例えばチャネルBがあれば、現在のチャネルAからチャネルBに変更する一方、現在のチャネルAが最適と判断された場合には現在のチャネルAを変更せず、
チャネルBに変更した後、チャネルAで通信していた時のスループットと、変更後のチャネルBにおける通信のスループットを比較し、スループットが良くなっていれば変更後のチャネルBでの通信を継続する一方、変更後のチャネルBでのスループットがチャネルAでのスループットと比較して改善していない場合には、チャネルAに再度戻して通信を行う、
前記アクセスポイント。」
(2) 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証として提出された特開2004-96595号公報(段落0062及び0063の記載を参照。)には、「受信信号レベルが一番低いワイヤレスチャンネルを判別し、これを通信に用いるワイヤレスチャンネルとして選択する。」という技術的事項が記載されている。
(3) 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証として提出された特開2010-183376号公報(段落0070の記載を参照。)には、「最も信号強度が小さいチャネルを選択し、無線LANチャネルとして設定することにより、干渉を最小限に抑える。」という技術的事項が記載されているといえる。
(4) 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証として提出された特開2012-120033号公報(段落0003ないし0008の記載を参照。)には、「無線LANシステムでは、5GHz帯が使用可能であり、このうちDFSバンドと称されるW53及びW56等の周波数帯では、アクセスポイントには、レーダー波との干渉を避けるための動的周波数選択(DFS)の搭載が義務づけられており、DFSは、運用前モニタリング、運用中モニタリング、再利用規制の機能からなり、運用前モニタリングは、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルでの通信を開始する前に、当該周波数チャンネルを対象として、1分間レーダー波のモニタリングを行い、レーダー波が検出されないことを確認する機能であり、運用中モニタリングは、ISMと称され、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルでの通信を行う間は、当該周波数チャンネルに対して常時レーダー波のモニタリングを継続する機能であり、再利用規制は、レーダー波が検出された周波数チャンネルをその検出以降の30分間通信禁止とする機能である。」という技術的事項が記載されているといえる。
(5) 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証として提出された特開2012-60443号公報(段落0003ないし0008の記載を参照。)には、「無線LANの主な規格には、5GHz帯を使用するIEEE802.11aがあり、IEEE802.11aが使用する、W53、W56では、レーダとの干渉を避け、レーダを検出した場合には、使用しているチャネルを停止し、一定時間経過後に別のチャネルに移ることが定められており、無線LANを介してストリーミング再生を行う情報処理装置では、無線LANの通信速度が低下した場合に、ストリーミング再生を行うために必要充分なストリーミングデータを受信することができず、コマ落ちが発生するなどして、スムーズなストリーミング再生ができないことがある。」という技術的事項が記載されている。
(6) 甲第6号証に記載された事項
甲第6号証として提出された特開2008-283508号公報(段落0094の記載を参照。)には、「映画(Video)などのストリーミングの配信には5GHzの周波数帯域を使用する。」という技術的事項が記載されている。
(7) 甲第7号証に記載された事項
甲第7号証として提出された特開2010-199942号公報(段落0026の記載を参照。)には、「RSSI検出部は、FFTにより得られた複素シンボルのサブキャリア成分ごとにRSSI(受信信号強度)を検出し、各サブチャネルにおけるサブキャリアの使用数と前記複素シンボルのサブキャリア成分ごとのRSSIとから、各サブチャネルにおけるRSSIを算出する。」という技術的事項が記載されている。
(8) 甲第8号証に記載された事項
甲第8号証として提出された特開2007-158485号公報(段落0030ないし0034の記載を参照。)には、「アクセスポイントは、通常動作時に、定期的に現行チャネル測定と周辺チャネル測定をそれぞれおこない、現行チャネル測定は、アクセスポイントが通信に使用中のチャネルにおける干渉の状況を測定するものであり、アクセスポイントの受信RFパワーなどの値が干渉の指標となり、これら測定値を基にチャネル変更への分岐判定を実行し、判定基準としては、フレーム誤り率が予め設定した閾値より高く、かつ、受信RFパワーが予め設定した閾値より高いときチャネル変更とする方法があり、周辺チャネル測定では、通信に使用中のチャネル以外のチャネルにおける干渉の状況を測定し、測定するデータとしては受信RFパワーを採用し、10分間隔で測定・蓄積をおこなうものとし、1週間を蓄積の1単位とする。」という技術的事項が記載されている。
(9) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「選択可能な周波数チャネルA~C」は、本件発明1の「使用可能な複数のチャネル」に含まれる。
また、甲1発明の「使用を検知した検知回数」とは、「周波数チャネルにおける測定した電力が予め設定した閾値より大きい」ことに基づき「チャネル使用中」と判断した回数を意味することが明らかである。
さらに、甲1発明は「キャリアセンスを実行する」するものであって、キャリアセンスとは、自無線局が送信を行う前に、無線チャネルで他の電波を検出することにより、他の無線局が当該無線チャネルを使用中であるかを確認し、当該無線チャネルが使用中であれば当該無線チャネルでの送信を延期することで、他の電波からの干渉を避けて送信を行うための技術であることが技術常識である。
そうすると、甲1発明の「使用を検知した検知回数」は、他の電波の受信電力が閾値より大きい回数、すなわち、他の電波から所定以上の干渉を受けた回数を意味するといえるから、甲1発明の「全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合」は、本件発明1の「他の電波の干渉を受ける度合い」に含まれる。
そして、甲1発明の「選択可能な周波数チャネルA~Cそれぞれについて、全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合」は、本件発明1の「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合い」に含まれるといえる。
その上、甲1発明の「割合」を「率」と呼ぶか、「度」と呼ぶかは任意であるから、甲1発明の「選択可能な周波数チャネルA~Cそれぞれについて、全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合を示す使用率」は、本件発明1の「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度」に含まれるといえる。
また、甲1発明の「電力測定部」が「定期的に、・・・各周波数チャネルにおける電波のレベル(電力量)を測定し」、また、「制御演算部」が、「・・・測定結果を入力して、各周波数チャネルにおける測定した電力が予め設定した閾値より大きい場合にはチャネル使用中、小さい場合にはチャネル未使用と判断すると共に、その測定結果を統計データテーブルとして保持し」、「前記統計データテーブルでは、選択可能な周波数チャネルA~Cそれぞれについて、全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合を示す使用率のデータを保持して」いることは、使用率を定期的に更新することを意味するといえるから、「電力測定部」と「制御演算部」を備えた甲1発明の「無線通信制御装置」は、前記使用率を更新するものといえる。
また、甲1発明の「CPU」が、「前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認」する際に、使用率を取得していることは明らかであるから、甲1発明の「CPU」は、前記使用率を取得するものといえる。
そして、甲1発明の「無線通信制御装置」は、「CPUと、電力測定部と、制御演算部とを備え」、前記使用率を更新して取得するものであり、さらに、甲1発明の「使用率」が本件発明1の「干渉度」に含まれることは上述のとおりであるから、本件発明1の「干渉度を常時更新して取得する干渉度取得部」と、甲1発明の使用率を更新して取得する「無線通信制御装置」とは、干渉度を更新して取得する干渉度取得部である点で共通するといえる。
したがって、本件発明1の「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を常時更新して取得する干渉度取得部」を備えることと、甲1発明の「無線通信制御装置は、・・・無線通信制御装置を統括制御するCPUと、電力測定部と、制御演算部とを備え、前記電力測定部は、定期的に・・・キャリアセンスを実行することで、各周波数チャネルにおける電波のレベル(電力量)を測定し、前記制御演算部は、・・・測定結果を入力して、各周波数チャネルにおける測定した電力が予め設定した閾値より大きい場合にはチャネル使用中、小さい場合にはチャネル未使用と判断すると共に、その測定結果を統計データテーブルとして保持し、前記統計データテーブルでは、選択可能な周波数チャネルA~Cそれぞれについて、全測定回数に対する、使用を検知した検知回数の割合を示す使用率のデータを保持しており、・・・前記CPUは・・・前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認」することは、「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を」「更新して取得する干渉度取得部」を備える点で共通する、といえる。
(イ) 甲1発明では、端末がストリーミング動画データの配信要求をアクセスポイントに対して実行すると、アクセスポイントは、端末との間で、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信を行うことが明らかであり、当該無線通信は、本件発明1の「実行対象の無線通信」に含まれる。
また、CPUが、QoS要求が大きいと判断したことに基づいて、「各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認」することや、「チャネルAで通信していた時のスループットと、変更後のチャネルBにおける通信のスループットを比較」することは、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを選択するために行われることが明らかであるから、甲1発明のCPUが「QoS要求が大きいと判断」することは、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信を行う前に、行われることが明らかである。
さらに、甲1発明では、アクセスポイントと端末との間で無線通信が確立しているときに、端末がストリーミング動画データの配信要求をアクセスポイントに対して実行すると、CPUはQoS要求が大きいと判断するから、QoS要求が大きいと判断する対象は、既に確立している無線通信ではなく、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信であるといえる。
そして、甲1発明が、「QoS要求が大きいと判断」する手段を備えていることは明らかであり、当該判断する手段を「判定部」と称することは任意である。
ところで、甲1発明の「アクセスポイント」は、端末がストリーミング動画データの配信要求をアクセスポイントに対して実行すると、QoS要求が大きいと判断するものであるが、甲第1号証には、アクセスポイントが「QoS要求が大きいと判断する」際に、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ことは記載されていない。
また、端末からストリーミング動画データの配信要求を受信した際に、アクセスポイントが、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ことが技術常識であると認めるに足りる証拠は、見当たらない。
そうすると、甲1発明の「アクセスポイント」は、「前記実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ものとはいえない。
したがって、本件発明1の「実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する判定部」を備えることと、甲1発明の「前記アクセスポイントと端末との間で無線通信が確立しているときに、端末がストリーミング動画データの配信要求をアクセスポイントに対して実行すると、前記CPUはQoS(Quality of Service)要求が大きいと判断し、・・・各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認し、・・・チャネルAで通信していた時のスループットと、変更後のチャネルBにおける通信のスループットを比較し・・・て通信を行う」ことは、「実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、」所定の通信「であることを判定する判定部」を備える点で共通する、といえる。
(ウ) 甲1発明では、「端末がストリーミング動画データの配信要求を前記アクセスポイントに対して実行すると、前記CPUはQoS・・・要求が大きいと判断し、前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認し、・・・現在のチャネルAと比較して使用率の低いチャネル、例えばチャネルBがあれば、現在のチャネルAからチャネルBに変更する一方、現在のチャネルAが最適と判断された場合には現在のチャネルAを変更せず、チャネルBに変更した後、・・・スループットが良くなっていれば変更後のチャネルBでの通信を継続する一方、変更後のチャネルBでのスループットがチャネルAでのスループットと比較して改善していない場合には、チャネルAに再度戻して通信を行う」から、端末が実行したストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信(上記「(イ)」を参照。)を実行する際に、当該ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを選択するといえる。
そして、甲1発明においてQoS要求が大きいと判断する対象は、前記ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信であり、また、本件発明1と甲1発明が、「実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、」所定の通信「であることを判定する判定部」を備える点で共通することは、上記「(イ)」で説示したとおりであるから、本件発明1の「前記実行対象の無線通信が前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、・・・選択する」ことと、甲1発明の、QoS要求が大きい通信であると判定された、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信を実行する際に、当該ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを選択することは、「前記実行対象の無線通信が」所定の通信「であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、」「選択する」点で、共通するといえる。
また、甲1発明では、ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを選択するために、「前記CPUは・・・前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認」しており、確認する際に使用率を取得していることは上記「(ア)」で説示したとおりであるから、甲1発明は、前記ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを、「CPU」を備えた「無線通信制御装置」による取得結果に基づき、選択するといえる。
そして、甲1発明の「無線通信制御装置」は干渉度を更新して取得するものといえ、また、本件発明1と甲1発明が、「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を」「更新して取得する干渉度取得部」を備える点で共通することは、上記「(ア)」で説示したとおりであるから、本件発明1の「前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、・・・前記干渉度取得部による取得結果に基づき、・・・選択する」ことと、甲1発明の、端末が実行した前記ストリーミング動画データの配信要求に応じた無線通信に使用するチャネルを、無線通信制御装置による取得結果に基づき、チャネルを選択することは、「前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、」「前記干渉度取得部による取得結果に基づき、」「選択する」点で、共通するといえる。
さらに、チャネルを選択することは、選んだチャネルを決めることを意味するといえ、さらに、「チャネル」と「チャンネル」が置換可能な用語であることは技術常識であるから、甲1発明の「チャネルを選択する」ことは、本件発明1の「チャネルを、」「選択するチャンネル決定処理を実行する」ことに含まれるといえる。
その上、甲1発明が、チャネルを選択する手段、を備えていることは明らかであり、当該手段を「チャネル選択部」と称することは任意である。
ところで、甲1発明では、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認した結果、現在のチャネルAが最適と判断された場合には現在のチャネルAを変更しないから、この場合には、最も使用率が低いチャネルAが選択される。
一方、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認した結果、現在のチャネルAと比較して使用率の低いチャネル、例えばチャネルBがあれば、現在のチャネルAからチャネルBに変更し、その後、チャネルAで通信していた時のスループットと、変更後のチャネルBにおける通信のスループットを比較し、スループットが改善していない場合には、チャネルAに再度戻して通信を行うから、この場合には、最終的にはチャネルBよりも使用率が高いチャネルAが選択される。
そうすると、甲1発明は、前記「ストリーミング動画データの配信要求に応じたデータ配信」に使用するチャネルを選択する際に、使用率が低いチャネルの中から選択するものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明1の「前記実行対象の無線通信が前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、レーダ波を検出したために使用できないチャンネルを除き、前記干渉度取得部による取得結果に基づき、前記レーダ波を検出する可能性のある5GHz帯のチャンネルを含むチャンネルのうち、前記干渉度が低いチャネルの中から選択するチャンネル決定処理を実行するチャネル選択部」を備えることと、甲1発明の「無線通信制御装置は・・・CPU・・・を備え、・・・端末がストリーミング動画データの配信要求を前記アクセスポイントに対して実行すると、前記CPUはQoS(Quality of Service)要求が大きいと判断し、前記統計データテーブルを参照し、各チャネルA~Cのチャネル使用率を確認し、・・・現在のチャネルAと比較して使用率の低いチャネル、例えばチャネルBがあれば、現在のチャネルAからチャネルBに変更する一方、現在のチャネルAが最適と判断された場合には現在のチャネルAを変更せず、チャネルBに変更した後、・・・スループットが良くなっていれば変更後のチャネルBでの通信を継続する一方、変更後のチャネルBでのスループットがチャネルAでのスループットと比較して改善していない場合には、チャネルAに再度戻して通信を行う」ことは、「前記実行対象の無線通信が」所定の通信「であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、」「前記干渉度取得部による取得結果に基づき、」「選択するチャンネル決定処理を実行するチャネル選択部」を備える点で共通する、といえる。
(エ) 甲1発明の「アクセスポイント」は、「端末との無線通信が可能」な装置であるから、本件発明1の「無線通信装置」に含まれる。
以上をまとめると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、また相違する。
(一致点)
「使用可能な複数のチャネルのそれぞれが他の電波の干渉を受ける度合いである干渉度を更新して取得する干渉度取得部と、
実行対象の無線通信を行う前に、前記実行対象の無線通信が、所定の通信であることを判定する判定部と、
前記実行対象の無線通信が所定の通信であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、前記干渉度取得部による取得結果に基づき、選択するチャンネル決定処理を実行するチャネル選択部と
を備える無線通信装置。」
(相違点1)
「干渉度」について、本件発明1では「常時」更新するとの発明特定事項を有するのに対して、甲1発明では、定期的に更新するものである点。
(相違点2)
本件発明1では、「判定部」について、「電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であることを判定するとの発明特定事項を有し、かつ、「チャネル選択部」について、「前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、「レーダ波を検出したために使用できないチャンネルを除き、」「前記レーダ波を検出する可能性のある5GHz帯のチャンネルを含むチャンネルのうち、前記干渉度が低いチャネルの中から」選択するとの発明特定事項を有するのに対して、甲1発明では、これらの発明特定事項が特定されていない点。
イ 各相違点についての当審の判断
(ア) 相違点1について
甲1発明の電力測定部は、「各周波数チャネルA~Cに対して時間をずらしてキャリアセンスを実行する」ものであって、そもそもチャネルA~Cを同時に測定するものでないから、測定することで得られる使用率を「常時」更新することは不可能であり、また、前記電力測定部は、「定期的に、・・・各周波数チャネルにおける電波のレベル(電力値)を測定」するものであるところ、レベルの測定、及び使用率の更新を、常時行うように設計変更する合理的な理由もない。
さらに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証には、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項について何ら記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項を考慮しても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである、とはいえない。
(イ) 相違点2について
相違点2について検討するに当たり、事案に鑑みて、「電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であることを判定する点について、始めに検討する。
甲1発明のアクセスポイントは、「端末がストリーミング動画データの配信要求を前記アクセスポイントに対して実行すると、」「QoS(Quality of Service)要求」の大きさを判断することで、チャネル変更に関する処理を行うものであり、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」必然性はなく、また、QoS要求の大きさを判断することに代えて、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ように設計変更する合理的な理由もない。
また、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証には、端末からストリーミング動画データの配信要求を受信した際に、アクセスポイントが、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ことについて、何ら記載も示唆もされていない。
したがって、相違点2に係る発明特定事項のうち、「電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であることを判定するとの発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項を考慮しても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである、とはいえないことが明らかであるから、相違点2に係る発明特定事項のうち、「チャネル選択部」について、「前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、「レーダ波を検出したために使用できないチャンネルを除き、」「前記レーダ波を検出する可能性のある5GHz帯のチャンネルを含むチャンネルのうち、前記干渉度が低いチャネルの中から」選択するとの発明特定事項について論及するまでもなく、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項を考慮しても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである、とはいえない。
ウ 本件発明1の進歩性についてのまとめ
上記「イ」の「(ア)」及び「(イ)」で説示したとおり、相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項を考慮しても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである、とはいえないから、本件発明1は、甲1発明、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 当審で採用しなかった申立人の主張について
(ア) 申立人は、特許異議申立書の26ページ1行ないし5行「(相違点2)」において、「本件特許発明1・・・では、「干渉度を常時更新して取得する」と記載されており、・・・[甲1A](当審注:申立人が主張する甲第1号証に記載された発明の一部。)においても、「使用率を定期的に確認」して「全測定回数」のデータを保持すると記載されているので、・・・差異はない。」と主張している。
しかしながら、使用率を「定期的に」確認することは、一定の時間間隔を空けて確認をすることを意味し、「常時」確認するとまではいえず、本件発明1の「干渉度を常時更新して取得する」ことと差異がないとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(イ) 申立人は、特許異議申立書の24ページ1行ないし9行において、甲第1号証には、[甲1B]を含む発明が記載されていることを主張するとともに、以下のように主張している(下線は申立人が付した。)。
「[甲1B]AP1のCPU10は、実行対象の無線通信を行う前に、端末1aからの要求により、実行対象の無線通信がストリーミング動画データの配信であり、QoS要求が大きいと判断する。ストリーミング動画データの配信は、ファイルをダウンロードしながら再生する通信に含まれる。
【0016】
AP1と端末1aとの間で無線通信が確立しているときに、端末1aが例えば20Mbpsの帯域を要するようなストリーミング動画データの配信要求をAP1に対して実行すると、AP1のCPU10はQoS(Quality of Service)要求が大きいと判断し(ステップ1)、・・・」
しかしながら、甲第1号証の段落0016に記載された「端末1aが・・・ストリーミング動画データの配信要求をAP1に対して実行すると、AP1のCPU10はQoS・・・要求が大きいと判断し」という記載は、「端末1aが・・・ストリーミング動画データの配信要求をAP1に対して実行」したことを契機として、「AP1のCPU10はQoS・・・要求が大きいと判断」することを示しているに過ぎない。
そして、甲第1号証には、アクセスポイントが「QoS要求が大きいと判断する」際に、「実行対象の無線通信が、電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信であることを判定する」ことが記載されていないことは、上記「(9)」の「ア」の「(イ)」で説示したとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(ウ) 申立人は、特許異議申立書の24ページ11行ないし21行において、甲第1号証には、「[甲1C]ストリーミング動画データの配信要求を受けた場合に、AP1のCPU10は、制御演算部12の保持する各チャネルの使用率を確認し、ストリーミング動画データの配信のためのチャネルとして、現在のチャネルよりも使用率の低いチャネルがあれば使用率の低いチャネルに変更する」ことを含む発明が記載されていることを主張するとともに、特許異議申立書の26ページ「(相違点5)」において、「本件特許発明1・・・では、「前記干渉度が低いチャネルの中から選択する」と記載されており、・・・[甲1C]では、「使用率の低いチャネルに変更する」と記載されているので、・・・差異はない。」と主張している。
しかしながら、上記「(9)」の「ア」の「(ウ)」で説示したとおり、甲1発明は、現在のチャネルAと比較して使用率の低いチャネルBに変更した後、変更後のチャネルBでのスループットがチャネルAでのスループットと比較して改善していない場合には、チャネルAに再度戻して通信を行うものであり、この場合には、最終的にはチャネルBよりも使用率が高いチャネルAが選択され、甲1発明は、使用率が低いチャネルの中から選択するものとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(10) 本件発明2、4、及び5について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同じ理由により、甲1発明、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、また、甲7号証に記載された技術的事項は、上記相違点1または2に係る本件発明1の発明特定事項の内容を開示するものではない。
したがって、本件発明4は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明5は、「無線通信装置」の発明である本件発明1を、「無線通信用チャネル選択方法」の発明としたものであって、上記「(9)」の「ア」で検討した「相違点1」に係る発明特定事項と対応する、「干渉度を常時更新して取得してお」くという発明特定事項を含み、かつ、上記「(9)」の「ア」で検討した「相違点2」に係る発明特定事項の一部と対応する、「電波の干渉による影響の受けやすい、ファイルをダウンロードしながら再生する通信」であることを判定するという発明特定事項を含むから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(11) 申立理由1についての小括
上記「(9)」の「ウ」及び「(10)」で説示したとおり、本件発明1、2、及び5は、甲1発明、並びに、甲第2号証ないし甲第6号証、及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記「(10)」で説示したとおり、本件発明4は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許の請求項1、2、4、及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 申立理由2について
(1) 申立理由2についての申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の34ページ「4.1 請求項3について」において、以下のとおり主張している(下線は申立人が付した。)。
「 請求項3には、「使用中のチャネルの干渉度が基準値未満の場合、前記チャネル選択部にチャネルの切り替えをさせないチャネル維持部を備える」ことが記載されている。
しかし、請求項3が引用する請求項1の「チャネル選択部」は、「前記実行対象の無線通信が前記ファイルをダウンロードしながら再生する通信であると前記判定部によって判定された通信を実行する際に、前記実行対象の無線通信に用いるチャネルを、(当審注:発明特定事項の一部が途中省略されている。)干渉度が低いチャネルの中から選択するチャンネル決定処理を実行する」機能を有するものであり、使用中のチャネルを切り替える機能を有することは記載されていない。
したがって、使用中のチャネルを切り替える機能を有しないチャネル選択部に対して、チャネルの切り替えをさせないチャネル維持部を備える、請求項3の記載は技術的意味を理解することができず不明確である。』
(2) 申立理由2についての当審の判断
請求項3、並びに、請求項3が引用する請求項1及び2において、「チャネル選択部」が使用中のチャネルを切り替える機能を有することが記載されていないことは、申立人が主張するとおりである。
しかしながら、請求項3の記載は、「使用中のチャネルの干渉度が基準値未満の場合、前記チャネル選択部にチャネルの切り替えをさせないチャネル維持部を備える」ことのみを特定するものである。つまり、請求項3が引用する請求項1又は2に記載された「前記チャネル選択部」が使用中のチャネルを切り替える機能を有しているか否かにかかわらず、「チャネル維持部」が、単に「前記チャネル選択部にチャネルの切り替えをさせない」よう機能することを特定しているだけであり、「チャネル維持部」の機能は明確である。
また、「チャネル維持部」が「前記チャネル選択部にチャネルの切り替えをさせない」ことは、請求項3が引用する請求項1又は2に記載された「チャネル選択部」の機能や動作との関係において矛盾を生じさせるものでないから、明確である。
したがって、請求項3の記載は、明確でないとはいえず、本件特許の請求項3に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載された申立理由1又は2によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を、取り消すことはできない。
また、他に、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700505