特許異議申立
2022-700995
ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置
- 審判番号
- 2022-700995
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-059095
- 登録番号
- 7050843
- 請求日
- 2022年10月07日
- 審決日
- 2023年06月21日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社キャタラー
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【権利者】日揮触媒化成株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【異議申立人】小海 善史
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J) / P1651.851-YAA(B01J) / P1651.853-YAA(B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第2条第3項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7050843号発明「ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7050843号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7050843号の請求項1~4、6~8に係る特許を維持する。
特許第7050843号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7050843号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年3月27日の出願であって、令和4年3月31日にその特許権の設定登録がされ、同年4月8日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月7日に、請求項1~8に係る特許について、特許異議申立人小海 善史(以下、「申立人」という。)により、甲第1~6号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年12月21日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である令和5年2月17日に訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出がされたので、特許法第120条の5第5項の規定に従い、申立人に相当の期間を指定して意見を求めたが、申立人からは、当該期間内に何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容及び一群の請求項について
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7050843号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8に訂正することを求めます。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライトであって、」
の記載の後に
「前記Cu-CHA型ゼオライトのSARは5.0超であり、
前記Cu-CHA型ゼオライトにおける、銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)は、0.05以上1.00以下であり、
前記Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下であり、」
との記載を追加する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記Cu-CHA型ゼオライトのSARが、5.0超10.0以下である、」
と記載されているのを、
「前記Cu-CHA型ゼオライトのSARが10.0以下である、」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6~8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれか一項に記載の」
と記載されているのを
「請求項1~4のいずれか一項に記載の」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項2~8は、いずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正事項1~4による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1~8について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、本件特許明細書の段落【0031】~【0034】の記載に基づいて、「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」の下限を「5.0超」に限定し、「銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)」を「0.05以上1.00以下」に限定し、「Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量」を、「M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正事項1により、請求項1において「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」の下限が「5.0超」に限定されたことに伴って、訂正前の請求項2の「5.0超」を削除することで、重複する発明特定事項を削除して請求項1及び2の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項3による請求項5の削除に伴い、請求項6における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 独立特許要件について
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1~8に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、本件訂正後の請求項1~8に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。
4 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件特許の請求項1~4及び6~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」及び「本件発明6」~「本件発明8」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~4及び6~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライトであって、
前記Cu-CHA型ゼオライトのSARは5.0超であり、
前記Cu-CHA型ゼオライトにおける、銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)は、0.05以上1.00以下であり、
前記Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下であり、
前記Cu-CHA型ゼオライトについて測定されたFT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下である、
ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト。
【請求項2】
前記Cu-CHA型ゼオライトのSARが10.0以下である、請求項1に記載のディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト。
【請求項3】
前記Cu-CHA型ゼオライトにおける前記比(AP1/AP0)が、0.063以下である、請求項1又は2に記載のディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト。
【請求項4】
前記Cu-CHA型ゼオライト中の、K2O換算のカリウム量が、1.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
基材と、前記基材上のSCR触媒層とを含み、かつ、
前記SCR触媒層が、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライトを含む、
ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置。
【請求項7】
前記基材上に、酸化触媒層を更に含む、請求項6に記載のディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置を含む、尿素SCRシステム又は尿素SCR-フィルターシステム。」
第4 特許異議申立理由の概要
1 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1においては、「Cu-CHA型ゼオライト」が有機構造指向剤(OSDA)を含むか否かが特定されていないから、前記請求項1に係る発明には、有機構造指向剤(OSDA)を用いて製造された「Cu-CHA型ゼオライト」が含まれる。
ところが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、有機構造指向剤(OSDA)を用いて前記請求項1に係る発明の発明特定事項を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」を製造する方法が記載されていないから、有機構造指向剤(OSDA)を用いて前記「Cu-CHA型ゼオライト」を製造するには過度の試行錯誤を要求されるし、本件特許明細書の段落【0111】(後記第6の1(2)イ)の比較例5に記載された水熱合成法の記載を参照しても、前記請求項1に係る発明における「Cu-CHA型ゼオライト」の水熱合成法による製造方法を導き出すこともできないので、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(特許異議申立書41ページ7行~42ページ最終行)。
(2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1においては、「Cu-CHA型ゼオライト」の「AP1/AP0」の下限値が特定されていないが、技術常識からみれば、「AP1/AP0」が0になることはあり得ず、「AP1/AP0」をどこまでも小さくできるものでもないから、「AP1/AP0」が小さい「Cu-CHA型ゼオライト」を製造するためには過度の試行錯誤を要求されるので、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(特許異議申立書43ページ1行~44ページ5行)。
(3)本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例(以下、「本件実施例」という。)においては、「AP1/AP0」が「0.070以下」を満足する「Cu-CHA型ゼオライト」として、「SAR」が7.5の「Cu-CHA型ゼオライト」しか記載されていない。
そして、本件特許明細書の段落【0020】(後記第6の2(2)イ)、甲第5号証の段落【0001】、【0019】、【0134】【表3】の実施例1~5、甲第6号証の段落【0001】、【0021】、【0124】【表2】の実施例1~4の記載によれば、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するといえるし、「SAR」が7.5の二倍近い「15未満」となった場合、「AP1/AP0」が本件実施例で示されたものより大幅に高くならないといえる根拠はなく、発明の詳細な説明の比較例5には、「SAR」が8.0のときに「AP1/AP0」が0.0725となり、「0.070」を超えることも示されている。
そうすると、「SAR」が7.5を超え、かつ「AP1/AP0」が「0.070以下」を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」を製造するためには過度の試行錯誤を要求されるので、前記発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たさない(特許異議申立書44ページ6行~45ページ18行)。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1)本件特許に係る発明の課題は、初期NOx浄化能及び水熱耐久性の双方が高く、高温の水蒸気にさらされた場合でも、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できる、ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用の「Cu-CHA型ゼオライト」、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置を提供することであるから、初期NOx浄化能が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含するが、本件実施例では、水熱処理前の初期NOx浄化率は測定されていないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明により、初期NOx浄化能が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供する、という課題を解決できることが裏付けられていない。
また、前記請求項1に係る発明の発明特定事項を満足することで、初期NOx浄化能が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供する、という課題を解決できることを示す技術常識も存在しないから、前記発明の詳細な説明に記載された事項を前記請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することができない。
そうすると、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるから、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書45ページ20行~46ページ17行)。
(2)本件特許に係る発明の課題は、水熱耐久性が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含するが、本件実施例では、水熱処理前の初期NOx浄化率が測定されていないから、水熱処理前後のNOx浄化率の変化量を求めることができないので、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明によって前記課題を解決できるとはいえない。
したがって、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書46ページ18行~47ページ18行)。
(3)本件特許に係る発明の課題は、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できる「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含する。
ここで、本件特許明細書の段落【0018】(後記第6の2(2)イ)の記載によれば、「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」が高まると、これに含まれるAlが減少し、AlとCuが結合している部位、すなわち活性点が減少して、NOx浄化能が低下するものと解されるが、本件実施例では、「SAR」が7.5の「Cu-CHA型ゼオライト」の水熱処理後のNOx浄化率が高いことが示されているだけであり、「SAR」が7.5を超え、NOx浄化能が低下するはずの「Cu-CHA型ゼオライト」が、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できることは裏付けられていない。
また、「SAR」が7.5を超えても前記課題を解決できることを示す技術常識も存在しないから、前記発明の詳細な説明に記載された事項を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することもできない。
そうすると、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるから、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書47ページ19行~48ページ21行)。
(4)本件特許に係る発明の課題は、初期NOx浄化能及び水熱耐久性の双方が高く、かつ、水熱耐久性が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含する。
ここで、本件特許明細書の段落【0003】~【0004】(後記第6の2(2)ア)の記載によれば、「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」が低くなるほど水熱耐久性は低くなると解されるが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、「SAR」の下限値を特定していないから、課題を解決できないものを含むのに加え、本件実施例においては、「SAR」が7.5未満の「Cu-CHA型ゼオライト」の水熱耐久性が高いことは実証されていない。
また、「SAR」が7.5未満であっても前記課題を解決できることを示す技術常識も存在しないから、前記発明の詳細な説明に記載された事項を前記請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することもできない。
そうすると、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるから、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書48ページ22行~49ページ23行)。
(5)本件特許に係る発明の課題は、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できる「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含する。
ここで、本件特許明細書の段落【0018】(後記第6の2(2)イ)の記載によれば、「Cu-CHA型ゼオライト」のCu量が少なくなるほど、NOx浄化能は低下すると解されるが、本件実施例においては、Cu量(Cu/Al)が0.25未満の「Cu-CHA型ゼオライト」が高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できることが示されていないし、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、「Cu-CHA型ゼオライト」のCu量(Cu/Al)の下限値を特定していないから、前記課題を解決できないものを含むものである。
また、「AP1/AP0」が「0.070以下」、「SAR」が「15未満」であれば、Cu量(Cu/Al)が低くても前記課題を解決できることを示す技術常識も存在しないから、前記発明の詳細な説明に記載された事項を前記請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することもできない。
そうすると、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるから、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書49ページ24行~50ページ25行)。
(6)本件実施例においては、「AP1/AP0」が「0.070以下」を満足する「Cu-CHA型ゼオライト」として、「SAR」が7.5の「Cu-CHA型ゼオライト」しか記載されていない。
ここで、本件特許明細書の段落【0020】(後記第6の2(2)イ)、甲第5号証の段落【0001】、【0019】、【0134】【表3】の実施例1~5、甲第6号証の段落【0001】、【0021】、【0124】【表2】の実施例1~4の記載によれば、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するから、「SAR」が7.5よりも増加して15近傍となれば、「AP1/AP0」も大幅に増加する蓋然性が高いし、発明の詳細な説明の比較例5には、「SAR」が8.0のときに「AP1/AP0」が0.0725となり、「0.070」を超えることも示されているので、当業者は、発明の詳細な説明に、「SAR」が7.5を超え、かつ「AP1/AP0」が「0.070以下」の「Cu-CHA型ゼオライト」が記載されていると認識することができない。
したがって、前記発明の詳細な説明に記載された事項を本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することができないから、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるので、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書50ページ26行~52ページ9行)。
(7)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明には、有機構造指向剤(OSDA)を用いて製造された「Cu-CHA型ゼオライト」が含まれるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、有機構造指向剤(OSDA)を用いて「Cu-CHA型ゼオライト」を製造する方法が記載されていないから、前記発明の詳細な説明に、前記請求項1に係る「Cu-CHA型ゼオライト」が記載されていると認識することができない。
したがって、前記発明の詳細な説明に記載された事項を前記請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することができないから、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるので、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書52ページ10行~53ページ19行)。
(8)本件特許に係る発明の課題は、初期NOx浄化能及び水熱耐久性の双方が高い「Cu-CHA型ゼオライト」を提供することを包含する。
ここで、本件特許明細書の段落【0034】(後記第6の2(2)イ)の記載によれば、「Cu-CHA型ゼオライト」に含まれるアルカリ金属量が過度に高いと、初期NOx浄化能が損なわれ、前記課題を解決できなくなると解されるが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、アルカリ金属量を特定していないから、課題を解決できないものを含むものである。
また、前記請求項1に係る発明の発明特定事項を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」において、初期NOx浄化能が損なわれるアルカリ金属の含有量が技術常識であるともいえないから、前記発明の詳細な説明に記載された事項を前記請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化することもできない。
そうすると、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるから、前記請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(特許異議申立書53ページ20行~54ページ11行)。
3 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである(特許異議申立書54ページ12行~68ページ23行)。
4 各甲号証
甲第1号証:特許第6320658号公報
甲第2号証:特開2015-101506号公報
甲第3号証:特表2012-508096号公報
甲第4号証:特開2017-14100号公報
甲第5号証:特開2018-135261号公報
甲第6号証:特開2018-197170号公報
第5 取消理由の概要
取消理由は、特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)に関するものであって、その内容は次のとおりである。
1 本件特許明細書の段落【0031】(後記第6の2(2)イ)には、「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」が過度に低いと、ゼオライトの比表面積が小さくなり、このことにより、Cuが担持される表面Alサイトの数がかえって減少して、NOx浄化能が損なわれる場合があり、これを回避する観点から、「Cu-CHA型ゼオライト」の「SAR」の下限値は、5.0超がよいことが記載されている。
ところが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、前記「SAR」の下限値が特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、前記「SAR」が、NOx浄化能が損なわれるほどに過度に低いものを含むものであるので、本件特許に係る発明の課題を解決しないものを包含するものである。
したがって、前記請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3~8に係る発明(請求項2を引用するものを除く)について検討しても事情は同じであるので、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
2 本件特許明細書の段落【0032】(後記第6の2(2)イ)には、「Cu-CHA型ゼオライト」におけるCu量は、CuとAlとのモル比(Cu/Al)として、高いNOx浄化能を発現させる観点から、0.05以上がよく、NOx浄化能を安定的に維持する観点から、1.00以下がよいことが記載されている。
ところが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、「Cu-CHA型ゼオライト」におけるCu量が特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、高いNOx浄化能を発現しなかったり、NOx浄化能を安定的に維持できないものを含むものであるので、本件特許に係る発明の課題を解決しないものを包含するものである。
したがって、前記請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~4及び6~8に係る発明(請求項5を引用するものを除く)について検討しても事情は同じであるので、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
3 本件特許明細書の段落【0033】~【0034】(後記第6の2(2)イ)には、「Cu-CHA型ゼオライト」において水熱耐久性が更に向上するアルカリ金属の適正な量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が「Cu-CHA型ゼオライト」の全質量に占める割合として、0.2質量%以上がよいこと、及び、「Cu-CHA型ゼオライト」に含まれるアルカリ金属量が過度に多いと、初期NOx浄化能が損なわれる場合があるので、「Cu-CHA型ゼオライト」中のアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、2.0質量%以下がよいことが記載されている。
ところが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、「Cu-CHA型ゼオライト」におけるアルカリ金属量が特定されていないから、前記請求項1に係る発明は、水熱耐久性が向上しなかったり、初期NOx浄化能が損なわれるものを含むものであるので、本件特許に係る発明の課題を解決しないものを包含するものである。
したがって、前記請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~8に係る発明について検討しても事情は同じであるので、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。
第6 取消理由及び特許異議申立理由についての当審の判断
事案に鑑み、取消理由及び特許異議の申立て理由についてまとめて判断する。
1 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について
(1)実施可能要件の判断手法
物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が上記の実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきであるので、以下、この観点に立って検討する。
(2)本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下のア~ウの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
ア「【0037】
〈Cu-CHA型ゼオライトの製造方法〉
本発明のCu-CHA型ゼオライトは、上記のような特性を有する限り、どのような方法によって製造されてもよい。例えば、本発明におけるCu-CHA型ゼオライトは、SAR15未満のY型ゼオライトを原料として、以下のような方法で製造されてもよい。
【0038】
本発明のCu-CHA型ゼオライトは、例えば、後述する実施例に記載されるような、
SAR15未満のY型ゼオライトと種結晶と水とを混合して原料スラリーを調製し、この原料スラリーを湿式粉砕して粉砕スラリーを調製し、
この粉砕スラリー中にアルカリ金属水酸化物を添加して調合スラリーを調製し、
この調合スラリーを130℃以上190℃以下の温度で水熱処理してCHA型ゼオライトを調製し、
このCHA型ゼオライトをCuでイオン交換したあと所定の温度で焼成する方法で、製造されてもよい。
【0039】
この方法を用いる場合、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量を、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量を1モルとしたときに、0.320モル以上0.380モル以下の範囲に調整することで、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下である、本発明のCu-CHA型ゼオライトを調製することができる(例えば、実施例1~3)。また、この範囲内においても、調合スラリーに含まれるSiのモル量を1モルとしたときに、当該調合スラリー中のアルカリ金属水酸化物を0.32モルに近いモル量で添加する方法で得られたCu-CHA型ゼオライトは、比(AP1/AP0)が低く、水熱処理後であっても良好なNOx浄化率を示す。」
イ「【実施例】
【0072】
《実施例1》
〔原料スラリー調製工程〕
純水846gとFAU型ゼオライト(SAR=8.8)104gとを混合した。次いで、「VERIFIED SYNTHESES OF ZEOLITIC MATERIALS」,H.Robson編、K.P.Lillerud XRD図:2001年発行、第2版、第123頁~第125頁に記載されたチャバサイト(Chabazite)の合成方法により得られたチャバサイト型ゼオライト(SAR=4.5、Na2O/Al2O3モル比=0.02、K2O/Al2O3モル比=0.98)11.2gを種結晶として添加し、原料スラリーを得た。このとき、原料スラリーのSARは8.3であり、当該スラリーのアルカリ金属の含有量は、当該スラリーに含まれるSiを1モルとしたとき、0.03モルであった。また、原料スラリーに含まれる種結晶の含有量は、前記原料スラリーに含まれる種結晶とFAU型ゼオライトの質量の和に対して、9.7質量%であった。
【0073】
〔粉砕スラリー調製工程〕
前記工程で調製した原料スラリーを、循環式のビーズミル(アシザワファインテック(株)製:LMZ015)を用いて、ビーズミルの容器及び原料スラリーの容器をチラーで冷却しながら湿式粉砕した。このとき、原料スラリーに含まれるFAU型ゼオライトのX線回折パターンに現れる3本のピーク〔(111)、(331)、及び(533)のミラー指数に帰属されるピーク〕の合計強度(Ha)に対して、FAU型ゼオライトの合計強度(Hb)が半分以下(0.5Ha≧Hb)になるまで当該スラリーを湿式粉砕して、粉砕スラリーを得た。
なお、原料スラリーに含まれるFAU型ゼオライトのX線回折パターンは、当該スラリーから溶媒を除去して得られた粉末を、以下の条件で測定して得た。
・・・
【0075】
この湿式粉砕の条件は、ジルコニアビーズ0.5mm、周速10m/s、ビーズ充填量は体積換算で容器容積の85%であった。
【0076】
〔調合スラリー調製工程〕
前記工程で得られた粉砕スラリーにアルカリ金属水酸化物としての水酸化カリウム(KOH濃度:95.5質量%)27.9gを添加して、調合スラリーを調製した。このとき、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量は、当該スラリー中のSi 1モルに対して、0.335モルであった。
【0077】
〔水熱処理工程〕
この調合スラリーをオートクレーブに入れ、150℃、48時間水熱処理した。その後、水熱処理後の調合スラリーを取出し、ろ過、洗浄、及び乾燥して、CHA型ゼオライトを得た。得られたCHA型ゼオライト50gを、硫酸アンモニウム50gを含む水溶液500gに懸濁してスラリーを調製した。このスラリーを撹拌しながら60℃に昇温して、1時間イオン交換した。イオン交換後のスラリーをろ過、洗浄、及び乾燥した。これらの操作を更に2回行い、NH4イオン交換CHA型ゼオライトを調製した。
【0078】
〔Cuイオン交換工程〕
前述の工程で得られたCHA型ゼオライトを、当該ゼオライト中のアルミニウム1モルに対して0.25モルの硝酸銅を含有する水溶液中に分散して、スラリーとした。このスラリーを、1時間撹拌して、ゼオライトのCuイオン交換を行った。
【0079】
Cuイオン交換が完了した後、ゼオライトを噴霧乾燥し、焼成することにより、Cu-CHA型ゼオライトを得た。このCu-CHA型ゼオライトについて、原子吸光分析法によって測定したK2O換算のカリウムの含有量は、Cu-CHA型ゼオライトの全質量に対して、0.8質量%であった。
【0080】
〔X線回折測定〕
前述の工程で得られたCu-CHA型ゼオライトについてX線回折測定を行い、CHA骨格の有無及び異相の有無を確認した。具体的には、以下の方法で測定及び確認した。その結果を表3に示す。
・・・
【0084】
〔SAR測定〕
前述の工程で得られたCu-CHA型ゼオライトについて、SARを算出した。具体的には、Cu-CHA型ゼオライトについて、ICP発光分光分析を用いてSi及びAlの含有量を測定し、各成分の含有量をSiO2及びAl2O3のモル量に換算して、SAR(SiO2/Al2O3モル比)を算出した。ICP発光分光分析は、以下の条件で行った。得られた結果を表3に示す。
・・・
【0089】
〔FT-IR測定〕
前述の工程で得られたCu-CHA型ゼオライトを、乳鉢で粉砕し、約20mgをはかり取り、圧縮成形によって、直径20mmΦのFT-IR分析用のディスク試料を得た。この圧縮成形は、市販の20mmΦ錠剤成形機により、手動油圧ポンプを用いて、成形圧力60kNにて行った。得られたディスク試料につき、以下の条件でFT-IR測定を行った。
・・・
【0093】
得られたFT-IRチャートにつき、日本分光(株)製、分光光度計用解析ソフトウエア、「スペクトルマネージャ」を用いて、解析を行い、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)、及び波数3,720cm-1のピークP2のピーク面積AP2と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP2/AP0)を求めた。
・・・
【0100】
〔耐久後のSCR性能の評価〕
前述の工程で得られた実施例1のCu-CHA型ゼオライト100質量部、バインダーゾル50質量部、及び純水を混合して、触媒コート層形成用塗工液を調製した。ハニカム基材上に、得られた触媒コート層形成用塗工液を塗布し、次いで、加熱処理を行って、基材上に、コート量120g/Lの触媒コート層を形成することにより、実施例1の排ガス浄化触媒装置を製造した。
【0101】
得られた排ガス浄化触媒装置に、水分濃度10体積%の空気を流通させながら、700℃にて50時間加熱することにより、水熱耐久処理を行った。
【0102】
水熱耐久処理後の排ガス浄化触媒装置に、濃度既知のNOx及びNH3を含むモデルガスを導入して流通させ、排出ガス中のNOx濃度を測定し、以下の数式によって算出されるNOx浄化率を求め、これを耐久後のSCR性能の指標とした。
NOx浄化率(%)={(導入ガス中のNOx濃度-排出ガス中のNOx濃度)/導入ガス中のNOx濃度}×100
・・・
【0104】
実施例1の排ガス浄化触媒装置について、上記の条件で測定された、水熱耐久処理後のSCR性能(NOx浄化率)を表3に示す。
【0105】
《実施例2》
調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量を、当該スラリーに含まれるSi1モルに対して、0.350モルにしたこと以外は、実施例1と同様の方法でCu-CHA型ゼオライトを調製した。また、実施例1と同様の分析を行った。その結果を表3に示す。
【0106】
《実施例3》
水熱処理温度を165℃にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でCu-CHA型ゼオライトを調製した。また、実施例1と同様の分析を行った。その結果を表3に示す。
・・・
【0111】
《比較例5》
比較例5では、OSDA(Organic-Structure-Directing Agent、有機構造規定剤)を用いて製造されたCHA型ゼオライトを用い、実施例1と同様に、Cuイオン交換を行ってCu-CHA型ゼオライトを合成し、実施例1と同様の分析を行った。その結果を表3に示す。」
ウ「【0114】
【表3】
[図:0001401661000001.jpg]
」
(3)実施可能要件についての一般的な判断
ア 前記(2)アの記載によれば、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、SAR15未満のY型ゼオライトと種結晶と水とを混合して原料スラリーを調製し、この原料スラリーを湿式粉砕して粉砕スラリーを調製し、この粉砕スラリー中にアルカリ金属水酸化物を添加して調合スラリーを調製し、この調合スラリーを130℃以上190℃以下の温度で水熱処理してCHA型ゼオライトを調製し、このCHA型ゼオライトをCuでイオン交換したあと所定の温度で焼成する方法で製造されるものであり、この方法を用いる場合、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量を、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量を1モルとしたときに、0.320モル以上0.380モル以下の範囲に調整することで、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が0.070以下である「Cu-CHA型ゼオライト」を製造することができるものである。
そして、前記(2)イ、ウの記載によれば、当業者は、前記(2)アに記載された製造方法にのっとった実施例1~3により、本件発明1の発明特定事項を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」を製造することができることを理解できるし、前記「Cu-CHA型ゼオライト」を、排ガス浄化触媒装置として使用することができるものである。
イ 前記アによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1に係る「Cu-CHA型ゼオライト」を製造でき、製造した「Cu-CHA型ゼオライト」を使用することができるのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が、過度の試行錯誤をすることなく、本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
更に、本件発明2~4及び6~8について検討しても事情は同じであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するといえる。
(4)申立人の主張について
ア 申立人の前記第4の1(1)~(3)の主張は、総じて、有機構造指向剤(OSDA)を用いて製造された「Cu-CHA型ゼオライト」、水熱合成法を用いて製造された「Cu-CHA型ゼオライト」、「AP1/AP0」が小さい「Cu-CHA型ゼオライト」、及び、「SAR」が7.5を超え、かつ「AP1/AP0」が「0.070以下」を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」といった、本件発明1に含有され得るが、本件実施例には開示されていない「Cu-CHA型ゼオライト」の製造方法が明らかでないことを理由にしたものといえる。
ところが、前記(1)の判断手法に立ってみれば、発明の詳細な説明の記載は、本件発明の発明特定事項を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」が製造できる程度に記載されていれば足りるのであって、仮に、前記本件実施例には開示されていない「Cu-CHA型ゼオライト」の製造方法が明らかでないとしても、前記(3)イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」を製造でき、製造した「Cu-CHA型ゼオライト」を使用することができるのであるから、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するといえる。
イ なお、申立人は、前記第4の1(3)において、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するし、発明の詳細な説明の比較例5には、「SAR」が8.0のときに「AP1/AP0」が0.0725となり、「0.070」を超えることも示されているから、「SAR」が7.5を超え、かつ「AP1/AP0」が「0.070以下」を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」を製造するためには過度の試行錯誤を要求される旨を主張しているので、これについて検討しておくと、前記(2)ア(段落【0039】)の記載によれば、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」の「AP1/AP0」は、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量を、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量を1モルとしたときに、0.320モル以上0.380モル以下の範囲に調整することで、「0.070以下」とされるものであるから、専ら、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量と、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量との比により調整されるものである。
また、前記(2)ウ(段落【0114】【表3】)の実施例1~3及び比較例4をみれば、これらは、いずれも「SAR」が7.5で一致しているにも関わらず、「AP1/AP0」が全て異なるものである。
これらのことからみれば、「AP1/AP0」は、専ら、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量と、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量との比により調整されるものであって、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するものとはいえないし、前記(2)イ(段落【0111】)の記載によれば、比較例5は、従来「SAR」が低いCHA型ゼオライトを合成することが困難といわれている(下記2(2)ア(段落【0007】)を参照されたい。)OSDAを用いて製造されたものであって、OSDAを用いずに製造された実施例1~3とはそもそも製造方法が異なるから、比較例5において「SAR」が8.0となったことにより、「AP1/AP0」が0.0725と大きくなったものと直ちにいえるものでもない。
更に、甲第5号証には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明はチャバザイト型ゼオライトに関するものである。」
「【0019】
結晶性アルミノシリケートであるゼオライトは、これに含まれるケイ素が多くなるほど、当該ゼオライトの骨格に含まれるシラノール基の量(以下、「シラノール量」とする。)が多くなる傾向がある。そのため、SiO2/Al2O3比が5未満であるゼオライト(以下、「ローシリカゼオライト」ともいう。)は、SiO2/Al2O3比が5を超えるゼオライト(以下、「ハイシリカゼオライト」ともいう。)よりもシラノール量が少なくなる傾向にある。しかしながら、ローシリカゼオライトはSiO2/Al2O3比が低すぎるために、ハイシリカゼオライトよりも耐熱性が低く、高温高湿雰囲気下に曝露される用途に適していない。本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ハイシリカゼオライトでありながらシラノール量が少ない。これにより骨格構造の崩壊が生じにくくなるため、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは高温下、更には高温高湿雰囲気下に曝露された後であっても、高い結晶性を有する。」
「【0134】
【表3】
[図:0001401661000002.jpg]
」
また、甲第6号証には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明はCHA型ゼオライト及びその製造方法に関する。特に、工業的なCHA型ゼオライトの製造方法に関する。」
「【0021】
シラノール基はT原子のケイ素(Si)と水酸基(OH)が結合して形成する。そのため、シラノール基の含有量は骨格構造中のケイ素量の影響を受ける。例えば、骨格構造中のケイ素量が多いゼオライト、すなわちハイシリカゼオライトであるほど、シラノール基が多くなりやすいことが挙げられる。一般に、シラノール基の含有量が多くなると、高温雰囲気における骨格構造の崩壊が生じやすくなる。これに対し、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3」ともいう。)と、ケイ素に対するシラノール基のモル比(以下、「SiOH/Si比」ともいう。)と、の両方が本発明のCHA型ゼオライトの範囲を満たすことにより、シラノール基が増えた場合であっても、高温雰囲気における骨格構造の崩壊が生じにくくなる。これにより、本発明のCHA型ゼオライトが高い耐熱性を示し、触媒又は触媒担体として、特に窒素酸化物還元触媒又はその担体として適する。」
「【0124】
【表2】
[図:0001401661000003.jpg]
」
ところが、甲第5号証及び甲第6号証の前記記載は、「Cu-CHA型ゼオライト」において、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加することを開示するものではなく、ほかに、このことを開示する記載もないし、そのような技術常識も存在しない。
そうすると、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」において、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するとはいえない。
そして、本件特許明細書の記載に接した当業者は、調合スラリーに含まれるアルカリ金属水酸化物のモル量を、当該調合スラリーに含まれるSiのモル量を1モルとしたときに、0.320モル以上0.380モル以下の範囲に調整することで、「AP1/AP0」を「0.070以下」とすることができるのであるから、「SAR」が7.5を超え、かつ「AP1/AP0」が「0.070以下」を満たす「Cu-CHA型ゼオライト」を製造するために、過度の試行錯誤を要求されるとはいえないので、申立人の前記主張は採用できない。
ウ したがって、申立人の前記第4の1(1)~(3)の主張はいずれも採用できない。
(5)小括
よって、前記第4の1の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2)本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、更に、以下のア~イの記載がある。
ア「【0001】
本発明は、ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスを浄化するシステムとして、アンモニア(NH3)を用いてNOxを窒素(N 2)及び水(H2O)に変換して浄化する、SCR(Selective Catalytic Reduction、選択触媒還元)システムが知られている。SCRシステムにおけるアンモニア源としては、アンモニア、アンモニア水、尿素((NH2)2C=O)等が用いられる。
【0003】
SCRシステムにおける選択還元触媒として、銅でイオン交換されたCHA(Chabazite、チャバサイト)型のゼオライト(Cu-CHA型ゼオライト)を含むSCR触媒が知られている。特に、SAR(Silica Alumina Ratio、SiO2/Al2O3モル比)が15以下のCu-CHA型ゼオライトは、SCR触媒として高いNOx浄化能を示す材料である。
【0004】
しかし、低SARのCu-CHA型ゼオライトは、水熱耐久性が低く、高温の水蒸気に長時間さらされると、Al原子及びCu原子がゼオライトの骨格構造から脱離してしまい、その結果、NOx浄化能が著しく損なわれるとの問題がある。
・・・
【0007】
なお、ゼオライトの合成に際して、OSDA(Organic Structure Directing Agent、有機構造規定剤)を用いると、所望の結晶構造及び細孔サイズを有するゼオライトを容易に合成できることが知られている。しかし、OSDAを用いて、SARが低いCHA型ゼオライトを合成することは、困難といわれている。この点、OSDAを用いない低SARのCHA型ゼオライトの製造方法として、特許文献3に記載された技術が公知である。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低SARのCu-CHA型ゼオライトにアルカリ金属等を含有させると、水熱耐久性は向上されるものの、初期のNOx浄化能が損なわれる。すなわち、アルカリ金属等の添加による、水熱耐久性の向上と、初期NOx浄化能の維持とは、トレードオフの関係にある。これに加えて、水熱耐久性を向上しつつ、初期NOx浄化能の低下をできる限り抑制しようとすれば、アルカリ金属等の添加量を厳密にコントロールする必要があり、Cu-CHA型ゼオライトの製造工程において、多額の管理コストを要することとなる。
【0010】
本発明は、初期NOx浄化能及び水熱耐久性の双方が高く、高温の水蒸気にさらされた場合でも、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できる、ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置を提供することを目的とする。」
イ「【0018】
高温の水蒸気は、ゼオライト表面において、Si-OHサイトに吸着する。この吸着水は、当該吸着水が吸着しているSi-OHサイトに隣接するAlと反応して、Alをチャバサイト骨格から脱離させる。すると、この脱離Alに結合していたCuも、Alとともに脱離して、NOx浄化能の活性サイトが減少するから、NOx浄化能が劣化するものと推察される。本発明において、ゼオライトの表面とは、Cu-CHA型ゼオライトの外表面及び内表面の両方を含む概念である。Cu-CHA型ゼオライトの外表面とは、当該Cu-CHA型ゼオライトの結晶粒界を指すものとし、Cu-CHA型ゼオライトの内表面とは、当該Cu-CHA型ゼオライトのチャバサイト骨格に由来する細孔の表面を指すものとする。
【0019】
・・・このような理由により、チャバサイト骨格の欠陥がない、又は当該欠陥が少ない、Cu-CHA型ゼオライトは、NOx浄化能を長時間維持できると考えられる。・・・
【0020】
本発明のCu-CHA型ゼオライトは、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm -1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下である。FT-IRスペクトルにおける、波数1,975cm-1のピークP0は、チャバサイト骨格のSi-O結合に帰属される。波数3,745cm-1のピークP1は、Cu-CHA型ゼオライトの外表面のSi-OH結合に帰属される。
【0021】
したがって、Cu-CHA型ゼオライトのFT-IRスペクトルにおける、ピークP1のピーク面積AP1とピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下であることは、当該Cu-CHA型ゼオライトの外表面の欠陥濃度が所定の値よりも低いこと、すなわち、当該Cu-CHA型ゼオライトの外表面の欠陥が少ないことを示す。
・・・
【0029】
本発明におけるCu-CHA型ゼオライトは、シリカ/アルミナのモル比(SAR)が15.0未満である。SARは、シリカ(SiO2)のモル数と、アルミナ(Al2O3)のモル数との比で表される。したがって、ゼオライトのSARの値は、当該ゼオライト中の、ケイ素(Si)のモル数とアルミニウム(Al)のモル数との比の、2倍の値となる。
【0030】
SARが15.0未満のCu-CHA型ゼオライトは、SCR触媒として高いNOx浄化能を示すことが知られている。・・・
【0031】
一方で、Cu-CHA型ゼオライトのSARが過度に低いと、ゼオライトの比表面積が小さくなる。このことにより、Cuが担持される表面Alサイトの数がかえって減少して、NOx浄化能が損なわる場合がある。これを回避する観点から、Cu-CHA型ゼオライトのSARは、5.0超、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、又は7.5以上であってよい。Cu-CHA型ゼオライトのSARは、典型的には、5.0超10.0以下であってよい。
【0032】
本発明におけるCu-CHA型ゼオライトは、Cuによってイオン交換されている。このCuは、CHA型ゼオライトの表面Alサイトに担持され、SCR触媒におけるNOx浄化の触媒活性点を構成すると考えられている。Cu-CHA型ゼオライトにおけるCu量は、CuとAlとのモル比(Cu/Al)として、高いNOx浄化能を発現させる観点から、0.05以上、0.10以上、0.15以上、0.20以上、又は0.25以上であってよく、NO x浄化能を安定的に維持する観点から、1.00以下、0.80以下、0.60以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、又は0.25以下であってよい。
【0033】
本発明におけるCu-CHA型ゼオライトは、アルカリ金属を含んでいてよい。適正な量のアルカリ金属を含むCu-CHA型ゼオライトは、高い初期NOx浄化能を維持しながら、その水熱耐久性が更に向上する。Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、又は0.8質量%以上であってよい。
【0034】
一方で、Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量が過度に多いと、初期NOx浄化能が損なわれる場合がある。この観点から、Cu-CHA型ゼオライト中のアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、2.0質量%以下、1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、又は0.8質量%以下であってよい。」
(3)サポート要件についての一般的な判断
ア 前記(2)アの記載によれば、本件発明は、ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用の「Cu-CHA型ゼオライト」に関するものであって、従来、SAR(Silica Alumina Ratio、SiO2/Al2O3モル比)が15以下の「Cu-CHA型ゼオライト」は、SCR触媒として高いNOx浄化能を示す材料であることが知られていたのであるが、もともと、(i)低SARの「Cu-CHA型ゼオライト」は、水熱耐久性が低く、高温の水蒸気に長時間さらされると、Al原子及びCu原子がゼオライトの骨格構造から脱離してしまい、その結果、NOx浄化能が著しく損なわれる、との課題があり、一方、(ii)低SARの「Cu-CHA型ゼオライト」にアルカリ金属等を含有させると、水熱耐久性は向上されるものの、初期のNOx浄化能が損なわれる、という課題があり、更に、(iii)水熱耐久性を向上しつつ、初期NOx浄化能の低下をできる限り抑制しようとすれば、アルカリ金属等の添加量を厳密にコントロールする必要があり、Cu-CHA型ゼオライトの製造工程において、多額の管理コストを要することとなる、という課題があったものである。
そこで、本件発明は、これら(i)~(iii)の課題(以下、まとめて「本件課題」という。)を解決して、初期NOx浄化能及び水熱耐久性の双方が高く、高温の水蒸気にさらされた場合でも、高いレベルのNOx浄化能を長時間維持できる、ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用のCu-CHA型ゼオライト、及びこれを含むディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置を提供することを目的とするものである。
イ そして、前記(2)イの記載によれば、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm -1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)を0.070以下とすることで、当該「Cu-CHA型ゼオライト」の外表面の欠陥が少なくなり、NOx浄化能を長時間維持できると考えられるものである。
また、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、シリカ/アルミナのモル比(SAR)が15.0未満であり、SARが15.0未満の「Cu-CHA型ゼオライト」は、SCR触媒として高いNOx浄化能を示すことが従来から知られているものであるが、その一方で、SARが過度に低いと、ゼオライトの比表面積が小さくなることにより、Cuが担持される表面Alサイトの数がかえって減少して、NOx浄化能が損なわる場合があることから、「Cu-CHA型ゼオライト」のSARは、5.0超とするものである。
更に、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」におけるCu量は、CuとAlとのモル比(Cu/Al)として、高いNOx浄化能を発現させる観点から、0.05以上がよく、NOx浄化能を安定的に維持する観点から、1.00以下がよいものであり、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、アルカリ金属を含んでいてよいものであり、適正な量のアルカリ金属を含む「Cu-CHA型ゼオライト」は、高い初期NOx浄化能を維持しながら、その水熱耐久性が更に向上するものであり、「Cu-CHA型ゼオライト」に含まれるアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上がよい一方で、含まれるアルカリ金属量が過度に多いと、初期NOx浄化能が損なわれる場合があることから、「Cu-CHA型ゼオライト」中のアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、2.0質量%以下がよいものである。
ウ 前記イによれば、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm -1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)を0.070以下とし、シリカ/アルミナのモル比(SAR)を15.0未満5.0超とし、CuとAlとのモル比(Cu/Al)を、0.05以上1.00以下とし、アルカリ金属量を、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量がCu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下とすることで、SCR触媒として高いNOx浄化能を示し、NOx浄化能を長時間維持でき、水熱耐久性が更に向上するものとなって、本件課題を解決できるものである。
そして、このような「Cu-CHA型ゼオライト」は、本件発明1の発明特定事項を有する「Cu-CHA型ゼオライト」にほかならない。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえる。
更に、同請求項2~4及び6~8について検討しても事情は同じである。
(4)取消理由について
本件発明1は、「前記Cu-CHA型ゼオライトのSARは5.0超であり、前記Cu-CHA型ゼオライトにおける、銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)は、0.05以上1.00以下であり、前記Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量は、M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下であ」る、との発明特定事項を有するものであり、係る発明特定事項により本件課題を解決できることは前記(3)エに記載したとおりであるから、前記第5の1~3の取消理由はいずれも理由がない。
(5)申立人の主張について
ア 始めに、前記第4の2(1)~(3)の主張について検討すると、前記(2)ア(段落【0003】)の記載によれば、従来、SAR(Silica Alumina Ratio、SiO2/Al2O3モル比)が15以下のCu-CHA型ゼオライトは、SCR触媒として高いNOx浄化能を示す材料として知られていたのであるから、「シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライト」、との発明特定事項を有する本件発明1は、もともと、初期NOx浄化能が高いものといえる。
また、本件発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、FT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm -1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)を0.070以下とすることで、当該「Cu-CHA型ゼオライト」の外表面の欠陥が少なくなり、NOx浄化能を長時間維持できると考えられることは、前記(3)イに記載したとおりである。
そうすると、本件実施例において、水熱処理前の初期NOx浄化率が測定されていないとしても、また、「SAR」が7.5の「Cu-CHA型ゼオライト」の水熱処理後のNOx浄化率が高いことが示されているだけであり、更に、「SAR」が高まるとNOx浄化能が低下するとしても、「シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライト」であって、「波数3,745cm -1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が0.070以下である」、との発明特定事項を有する本件発明1により、初期NOx浄化能が高く、NOx浄化能を長時間維持できる「Cu-CHA型ゼオライト」が得られて、本件課題を解決できることに変わりはないから、前記第4の2(1)~(3)の主張はいずれも採用できない。
イ 次に、前記第4の2(4)、(5)及び(8)の主張について検討すると、本件発明1は、「SAR」の下限値が「5.0超」と特定されるものであって、「SAR」の値が過度に低いものを含むものではなく、「銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)」の下限値が「0.05以上」と特定されるものであって、Cu量(Cu/Al)が過度に低いものを含むものではなく、「Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量」が、「M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下」と特定されるものであって、「Cu-CHA型ゼオライト」に含まれるアルカリ金属量が過度に高いものを含むものではない。
そして、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることは、前記(3)エに記載したとおりであるから、前記第4の2(4)、(5)及び(8)の主張もいずれも採用できない。
ウ 次に、前記第4の2(6)の主張について検討すると、前記主張は、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加することを前提としたものと解されるが、「SAR」が増加すると「AP1/AP0」も増加するとはいえないことは、前記1(4)イに記載したとおりであるから、前記主張は前提において誤っているので、採用できない。
エ 最後に、前記第4の2(7)の主張について検討すると、前記第4の2(7)の主張は、専ら実施可能要件についての主張と解されるし、特許請求の範囲の請求項1~4、6~8の記載はサポート要件に適合するといえることは、前記(3)エに記載したとおりであるから、前記第4の2(7)の主張も採用できない。
(6)小括
したがって、前記第5の取消理由及び第4の2の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。
3 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について
(1)甲各号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
(ア)甲第1号証には、以下のa~dの記載がある。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(イ)~(二)を具備する基材コート用のチャバザイト型ゼオライト。
(イ)Si、Alを含有し、
(ロ)SiO2/Al2O3モル比が、5<SiO2/Al2O3<10、の範囲にあり、
(ハ)平均結晶サイズが、0.05μm<平均結晶サイズ<1μm、の範囲にあり、
(ニ)27AlーNMRで測定されるスペクトルにおいて、該スペクトル中の全てのピークの面積(ATotal)と、4配位Al以外のAlに帰属されるピークの面積(ANFA)の比率(ANFA/ATotal)が、20%≦(ANFA/ATotal)≦70%、の範囲にある。」
b「【0020】
本発明のゼオライトにおいて、平均結晶サイズは、0.05μm<平均結晶サイズ<1μmの範囲にあり、さらに、0.1μm≦平均結晶サイズ≦0.5μmの範囲にあることが好ましい。本発明における平均結晶サイズは、電子顕微鏡等で本発明のゼオライトを観察して測定した一次粒子のサイズの平均値である。
【0021】
本発明のゼオライトは、その平均結晶サイズが1μm以上では、単位体積当たりのチャバザイト型ゼオライトの結晶間の接点数が少なくなり、コート層の強度が低下するので好ましくない。また、その平均結晶サイズが0.05μm以下では、チャバザイト型ゼオライトの結晶性が低下するので好ましくない。チャバザイト型ゼオライトの結晶性が影響を及ぼす用途に使用する場合(例えば、自動車排ガス浄化用の触媒等)、結晶性が低いとその用途に適さなくなることがある。」
c「【0057】
製造したゼオライトについて、下記の方法で平均結晶サイズの測定を行った。
[平均結晶サイズの測定条件]
製造したゼオライトについて、下記の条件で電子顕微鏡観察を行った。なお、倍率は、一次粒子のサイズが確認できる倍率であれば、必ずしも下記の条件でなくともよい。得られた画像から、平均結晶サイズを測定した。
<電子顕微鏡観察条件>
測定装置 日本電子 JEOL JSM-7600
加速電圧 1.0kV
倍率 20,000倍
<平均結晶サイズの算出方法>
電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとした。」
d「【0063】
〔実施例1〕
〔FAU調製工程〕
Al2O3濃度22質量%、Na2O濃度17質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液0.168kgを、NaOH濃度21.65質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.35kgに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を撹拌しながら、SiO2濃度24質量%、Na2O濃度7.7質量%の珪酸ナトリウム水溶液1.361kgに添加した。このときの溶液の組成は、酸化物換算のモル比で以下のとおりであった。ついで、この溶液を30℃で15時間静置してアルミノシリケート溶液を調製した。
Na2O/Al2O3=16
SiO2/Al2O3=15
H2O/Al2O3=330
【0064】
SiO2濃度24質量%、Na2O濃度7.7質量%の珪酸ナトリウム水溶液22.78kgに水5.66kgとSiO2濃度30質量%シリカゾル(日揮触媒化成社製:Cataloid SI-30:平均粒子径10nm)18.97kgと、前記アルミノシリケート溶液2.88kgを加え、攪拌混合した。これに、Al2O3濃度22質量%、Na2O濃度17質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10.03kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリーを調製した。このときの混合ヒドロゲルスラリーの組成は、酸化物換算のモル比で以下のとおりであった。
Na2O/Al2O3=2.80
SiO2/Al2O3=8.70
H2O/Al2O3=108
【0065】
上記混合ヒドロゲルスラリー60.3kgを結晶化槽にて、95℃で35時間、水熱処理を行った。その後、70℃まで冷却し、濾過してNa-Y型ゼオライトのケーキ29.5kgを得た。得られたNa-Y型ゼオライトのケーキを、更に洗浄し、濾過し、乾燥してNa-Y型ゼオライトを調製した。
【0066】
Na-Y型ゼオライト500g、硫酸アンモニウム280gを含む水溶液5000gを80℃に昇温し、撹拌しながら2時間イオン交換した後、濾過し、洗浄し、乾燥し、550℃で5時間焼成した。更に、上記条件でイオン交換、濾過、洗浄、乾燥の操作を2回行い、NH4イオン交換率95%の0.95(NH4)2O・0.05Na2O・Al2O3・5SiO2ゼオライト(NH4(95)Y型ゼオライトともいう。)を調製した。
ついで、NH4(95)Y型ゼオライトに水を加えて50質量%の水分を含むように水分調整した。水分調整したNH4(95)Y型ゼオライトを容器に充填し、600℃に昇温して2時間スチーム処理することで、超安定性FAU型ゼオライトを調製した。
【0067】
この超安定性FAU型ゼオライト500gに、濃度25質量%の硫酸825gを0.5時間で滴下して脱アルミ処理を行い、SiO2/Al2O3=10.0のFAU型ゼオライトを調製した。
【0068】
〔原料スラリー調製工程〕
このFAU型ゼオライトの濃度が11質量%となるように、純水846gとFAU型ゼオライト104gを混合した。次いで、「WERIFIED SYNTHESES OF ZEOLITIC MATERIALS」H.Robson編、K.P.Lillerud XRD図:2001年発行、第2版、第123頁~第125頁に記載されたチャバザイト(Chabazite)の合成方法により得られたチャバザイト型ゼオライト16g(SiO2/Al2O3モル比4.5)を添加した。次いで、濃度95.5質量%のKOH34gを混合して原料スラリーを得た。この時、原料スラリーのSiとAlのモル比率は、SiO2/Al2O3換算で、9.3であった。
【0069】
〔粉砕スラリー調製工程〕
この原料スラリーを、ビーズミル(アシザワファインテック社製:LMZ015)を用いて、原料スラリーに含まれるFAUのX線回折パターンに現れる3本のピーク〔(111)、(331)および(533)のミラー指数に帰属されるピーク〕合計強度(Ha)に対して、粉砕スラリーに含まれるFAUの合計強度(Hb)が半分以下(0.5Ha≧Hb)になるまで湿式粉砕して、粉砕スラリーを得た。このときの湿式粉砕の条件は、ジルコニアビーズ0.5mm、周速10m/s、ビーズ充填量は体積換算で85%であった。
【0070】
上記粉砕スラリーを150℃で48時間水熱処理した。その後、水熱処理した粉砕スラリーを取出し、ろ過、洗浄、乾燥してゼオライトを得た。
【0071】
得られたゼオライトについて、前述のチャバザイト構造の判定方法によってチャバザイト型ゼオライトであることを確認した。さらに、前述の組成の測定方法、結晶性の評価方法、平均結晶サイズの測定方法、SiO2/Al2O3モル比の測定方法、平均結晶サイズの測定方法、粒度分布の標準偏差測定方法、外表面積測定方法、NFAとNFA以外のAlの比率の測定方法、比表面積の測定方法、および剥離率の測定方法に基づき、これらの属性を評価した。結果を表1に示す。また、その粒度分布を図1に示す。電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0072】
〔実施例2〕
実施例1で調製した超安定性FAU型ゼオライト500gに、濃度25質量%の硫酸650gを0.5時間で滴下して脱アルミ処理を行い、SiO2/Al2O3=8.8のFAU型ゼオライトを調製した。
【0073】
〔原料スラリー調製工程〕
このFAU型ゼオライトの濃度が11質量%となるように、純水844gとFAU型ゼオライト107gを混合した。次いで、実施例1で用いたチャバザイト型ゼオライト15g(SiO2/Al2O3モル比4.5)を添加した。次いで、濃度95.5質量%のKOH34gを混合して原料スラリーを得た。この時、原料スラリーのSiとAlのモル比率は、SiO2/Al2O3換算で、8.1であった。
【0074】
以降の工程および評価は、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例3〕
実施例2で得られたチャバザイト型ゼオライト50gを1mol/Lの硝酸銅3水和物溶液500gに懸濁してスラリーを調製した。このスラリーを撹拌しながら80℃に昇温し、1時間イオン交換した後、ろ過、洗浄した。この操作をCuの担持量が4質量%になるまで繰り返して、Cuを担持したチャバザイト型ゼオライトを得た。このチャバザイト型ゼオライトについて、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
・・・
【0091】
【表1】
[図:0001401661000004.jpg]
」
(イ)前記(ア)aによれば、甲第1号証には、「基材コート用のチャバザイト型ゼオライト」が記載されており、前記「基材コート用のチャバザイト型ゼオライト」は、下記(イ)~(ニ)を具備するものである。
(イ)Si、Alを含有し、
(ロ)SiO2/Al2O3モル比が、5<SiO2/Al2O3<10、の範囲にあり、
(ハ)平均結晶サイズが、0.05μm<平均結晶サイズ<1μm、の範囲にあり、
(ニ)27AlーNMRで測定されるスペクトルにおいて、該スペクトル中の全てのピークの面積(ATotal)と、4配位Al以外のAlに帰属されるピークの面積(ANFA)の比率(ANFA/ATotal)が、20%≦(ANFA/ATotal)≦70%、の範囲にある。
そして、前記(ア)c(段落【0057】)の記載及びdの実施例3に注目すれば、前記「基材コート用のチャバザイト型ゼオライト」は、CHA構造を有し、SiO2/Al2O3モル比が7.5であり、相対結晶度が112%であり、平均結晶サイズが0.4μmであり、ANFA/ATotalが32%であり、粒度分布標準偏差が0.33であり、外表面積が34m2/gであり、比表面積が457m2/gであり、担持金属がCuであり、前記平均結晶サイズの算出方法は、電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたものである。
(ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、
「下記(イ)~(ニ)を具備する基材コート用のチャバザイト型ゼオライトであって、
(イ)Si、Alを含有し、
(ロ)SiO2/Al2O3モル比が、5<SiO2/Al2O3<10、の範囲にあり、
(ハ)平均結晶サイズが、0.05μm<平均結晶サイズ<1μm、の範囲にあり、
(ニ)27AlーNMRで測定されるスペクトルにおいて、該スペクトル中の全てのピークの面積(ATotal)と、4配位Al以外のAlに帰属されるピークの面積(ANFA)の比率(ANFA/ATotal)が、20%≦(ANFA/ATotal)≦70%、の範囲にある。
CHA構造を有し、SiO2/Al2O3モル比が7.5であり、相対結晶度が112%であり、平均結晶サイズが0.4μmであり、ANFA/ATotalが32%であり、粒度分布標準偏差が0.33であり、外表面積が34m2/gであり、比表面積が457m2/gであり、担持金属がCuであり、
前記平均結晶サイズの算出方法は、電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたものである、基材コート用のチャバザイト型ゼオライト。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の(ア)~(ウ)の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)~(c)からなることを特徴とするチャバサイト型ゼオライトの合成方法。
(a)フォージャサイト型ゼオライト粒子を微細化する工程
(b)微細化したフォージャサイト型ゼオライト粒子の水分散スラリーに水酸化カリウムを添加して合成用スラリーを調製する工程
(c)80~110℃で水熱処理する工程」
(イ)「【0024】
本発明では、フォージャサイト型ゼオライト粒子および得られるチャバサイト型ゼオライトの粒子径は走査型電子顕微鏡写真(SEM)を測定し、任意の10個の粒子について粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径(DFZ)、平均粒子径(DCHA)とした。
・・・
【0039】
[実施例1]
フォージャサイト型ゼオライト(Na-Y)の合成
アルミノシリケート溶液(S1)の調製
Al2O3濃度22重量%、Na2O濃度17重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液0.168kgを、NaOH濃度21.65重量%の水酸化ナトリウム水溶液1.35kgに撹拌しながら加えて溶解し、30℃まで冷却した。この溶液を、撹拌しながらSiO2濃度24重量%、Na2O濃度7.7重量%の珪酸ナトリウム水溶液1.361kgに撹拌しながら添加した。このときの組成は酸化物モル比で、
Na2O/Al2O3=16
SiO2/Al2O3=15
H2O/Al2O3=330
であった。ついで、この溶液を30℃で15時間静置してアルミノシリケート溶液(S1)を調製した。
【0040】
混合ヒドロゲルスラリー(M1)の調製
SiO2濃度24重量%、Na2O濃度7.7wt%の珪酸ナトリウム水溶液22.78kgに水5.66kgとSiO2濃度30重量%シリカゾル(日揮触媒化成製:Cataloid SI-30:平均粒子径10nm)18.97kgと、前記アルミノシリケート溶液(S1)2.88kgを加え攪拌混合した。
これに、Al2O3濃度22重量%、Na2O濃度17重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10.03kgを加え、室温で3時間攪拌熟成して、混合ヒドロゲルスラリー(M1)を調製した。このときの組成は酸化物モル比で、
Na2O/Al2O3=2.80
SiO2/Al2O3=8.70
H2O/Al2O3=108
であった。
【0041】
混合ヒドロゲルスラリー(M1)60.3kgを結晶化槽にて、95℃で35時間、水熱処理を行った。
その後、70℃まで冷却し、結晶化スラリーを濾過・分離して合成母液30.8kgと、Na-Y型ゼオライトのケーキ29.5kgを採取した。
Na-Y型ゼオライトのケーキの一部を引き続き洗浄し、乾燥してNa-Y型ゼオライトを得た。
【0042】
チャバサイト型ゼオライト(1)の合成
NaY型ゼオライト500g、硫酸アンモニウム280gを含む水溶液5000gを80℃に昇温し、撹拌しながら2時間イオン交換した。イオン交換後、濾過洗浄し、ついで、乾燥した後、550℃で5時間焼成し、ついで、同様のイオン交換を2回行い、NH4イオン交換率95%の0.95(NH4)2O・0.05Na2O・Al2O3・5SiO2ゼオライト(NH4(95)Yと標記する)を調製した。
ついで、NH4(95)Yを550℃で5時間焼成して合成用原料のフォージャサイト型ゼオライト(HY(1))を調製した。
このフォージャサイト型ゼオライト(HY(1))について、平均粒子径、組成、格子定数を測定し、結果を表に示す。
・・・
【0044】
ついで、濃度20重量%のHY(1)ゼオライトスラリーを調製し、ビーズミル(芦沢ファインテック(株)製:LMZ015)で3時間微細化を行った。このときの微細化条件は、ジルコニアビーズ径0.5mm、周速10m/S、ビーズ充填量は体積換算で85%で行った。[工程(a)]
微細化されたHY(1)について、相対結晶度、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0045】
ついで、微細化されたHY(1)スラリー95gを水48gに分散させ、ついで濃度95.5重量%のKOH8.3gを混合して合成用スラリー(1)を調製した。[工程(b)]
合成用スラリー(1)の組成を表に示す。
ついで、合成用スラリー(1)を結晶化槽にて、95℃で48時間水熱処理を行った。[工程(c)]
その後、水熱処理したスラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してチャバサイト型ゼオライト(1)を得た。
得られたチャバサイト型ゼオライト(1)について、結晶形、相対結晶度、組成、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
【0046】
[実施例2]
チャバサイト型ゼオライト(2)の合成
実施例1の工程(a)において、ビーズミルで6時間微細化した以外は同様にして微細化した。[工程(a)]
ついで、微細化されたフォージャサイト型ゼオライト(HY(2))について、相対結晶度、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。
ついで、微細化されたフォージャサイト型ゼオライト(HY(2))を用いた以外は実施例1と同様にして合成用スラリー(2)を調製した。[工程(b)]
合成用スラリー(2)の組成を表に示す。
ついで、合成用スラリー(2)を結晶化槽にて、95℃で48時間水熱処理を行った。[工程(c)]
その後、水熱処理したスラリーを取り出し濾過、洗浄、乾燥してチャバサイト型ゼオライト(2)を得た。
得られたチャバサイト型ゼオライト(2)について、結晶形、相対結晶度、組成、平均粒子径を測定し、結果を表に示す。」
(ウ)「【0060】
【表1】
[図:0001401661000005.jpg]
」
ウ 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の(ア)、(イ)の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxを低下させるように機能する基材上に配置されるCHA結晶構造を有するゼオライトを含む触媒物品であって、前記ゼオライトは、約15未満のシリカ/アルミナのモル比を有し、約3質量パーセント未満のアルカリ含有量を有する、触媒物品。」
(イ)「【0016】
本発明の態様は、CHAゼオライト、およびSCR触媒等の触媒物品におけるその使用を対象とする。かかる触媒物品は、排気ガス流、特にガソリンまたはディーゼルエンジンから発するものの処理に特定の実用性が見出される。出願者は、本明細書で開示されるプロセスによって作製された触媒物品が、広い温度範囲にわたって優れた熱水安定性および高い触媒活性を示すことを見出した。本分野における用途を見出す他のゼオライト触媒と比較して、本発明の実施形態に関するFe-βゼオライト、CHA触媒物品等は、改善された低温活性および熱水安定性を提示する。さらに、本明細書で開示されるCHA触媒物品は、SSZ-13CHA触媒より手頃で経済的な方法で調製され得る。以前は、低Si/Al比のCHAゼオライトはNOx還元触媒として使用されるのに十分なNOx変換および/または熱水安定性を示さないと考えられていた。1つもしくは複数の本発明の実施形態によれば、低アルカリ含有量の低Si/Al比のCHAゼオライトは、良好な熱水安定性および少なくとも約50%を超えるNOx変換を示す。」
エ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の(ア)、(イ)の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項6】
下記(f)~(h)の特徴を具備するNH3-SCR反応用の高シリカチャバザイト型ゼオライト。
(f)ケイバン比が7.5以上
(g)相対結晶度が100%以上
(h)Cuを2~10質量%含む」
(イ)「【0038】
本発明のNH3-SCR反応用の高シリカチャバザイト型ゼオライトは、Cuを含む。Cuの担持量は、母体となる本発明の高シリカチャバザイト型ゼオライトに対して、下記の範囲にあることが好ましい。Cuの担持量が少なすぎると、NH3-SCR活性が低下するので好ましくない。また、Cuの担持量が多すぎると、耐久性が低下するので好ましくない。特に、水蒸気雰囲気下で高温の状態で使用すると、結晶構造が破壊されやすくなる。
<好ましいCu担持量>
Cu担持量=2~10質量%」
(2)対比・判断
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「SiO2/Al2O3モル比が7.5であり」、「担持金属がCuである」「チャバザイト型ゼオライト」は、本件発明1における「シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライト」であって、「前記Cu-CHA型ゼオライトのSARは5.0超」である、「Cu-CHA型ゼオライト」に相当する。
すると、本件発明1と甲1発明とは、
「シリカ/アルミナ比(SAR)がモル比で15未満のCu-CHA型ゼオライトであって、
前記Cu-CHA型ゼオライトのSARは5.0超である、Cu-CHA型ゼオライト。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本件発明1に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、「前記Cu-CHA型ゼオライトにおける、銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)」が、「0.05以上1.00以下であり」、「前記Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量」が、「M2O(Mはアルカリ金属を示す。)換算質量が前記Cu-CHA型ゼオライトの全質量に占める割合として、0.2質量%以上2.0質量%以下」であるのに対して、甲1発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」の「銅原子とアルミニウム原子とのモル比(Cu/Al)」及び「前記Cu-CHA型ゼオライトに含まれるアルカリ金属量」は明らかでない点。
・相違点2:本件発明1に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、「前記Cu-CHA型ゼオライトについて測定されたFT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下」であるのに対して、甲1発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、「27AlーNMRで測定されるスペクトルにおいて、該スペクトル中の全てのピークの面積(ATotal)と、4配位Al以外のAlに帰属されるピークの面積(ANFA)の比率(ANFA/ATotal)が、20%≦(ANFA/ATotal)≦70%、の範囲にあ」り、「相対結晶度が112%であり、平均結晶サイズが0.4μmであり、ANFA/ATotalが32%であり、粒度分布標準偏差が0.33であり、外表面積が34m2/gであり、比表面積が457m2/gであ」り、「前記平均結晶サイズの算出方法は、電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたもの」であるものの、FT-IRスペクトルに係る特定はない点。
・相違点3:本件発明1に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、「ディーゼル自動車排ガス浄化触媒装置に用いられるNH3-SCR触媒用」であるのに対して、甲1発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」は、「基材コート用」である点。
イ 事案に鑑み、前記アの相違点2から検討すると、甲1発明に係る「Cu-CHA型ゼオライト」が、「27AlーNMRで測定されるスペクトルにおいて、該スペクトル中の全てのピークの面積(ATotal)と、4配位Al以外のAlに帰属されるピークの面積(ANFA)の比率(ANFA/ATotal)が、20%≦(ANFA/ATotal)≦70%、の範囲にあ」り、「相対結晶度が112%であり、平均結晶サイズが0.4μmであり、ANFA/ATotalが32%であり、粒度分布標準偏差が0.33であり、外表面積が34m2/gであり、比表面積が457m2/gであ」り、「相対結晶度が112%であり、平均結晶サイズが0.4μmであり、ANFA/ATotalが32%であり、粒度分布標準偏差が0.33であり、外表面積が34m2/gであり、比表面積が457m2/gであ」り、「前記平均結晶サイズの算出方法は、電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたもの」であるとしても、このことから、「Cu-CHA型ゼオライトについて測定されたFT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下」となっているとはいえないし、甲第2~4号証にも、「Cu-CHA型ゼオライト」を、「前記Cu-CHA型ゼオライトについて測定されたFT-IRスペクトルにおいて、波数3,745cm-1のピークP1のピーク面積AP1と、波数1,975cm-1のピークP0のピーク面積AP0との比(AP1/AP0)が、0.070以下」とすることは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、「Cu-CHA型ゼオライト」を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。
してみれば、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、本件発明2~4及び6~8について検討しても事情は同じである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の前記相違点2の容易想到性についての主張は、概略、以下のとおりである。
甲1発明においては、「AP1/AP0」が「0.070以下」であることは特定されていないが、甲第2号証(段落【0028】、【0039】~【0046】、【表1】の実施例1及び2)の記載からみれば、甲第2号証には、フォージャサイト型ゼオライトと水とKOHを含む湿式粉砕されたスラリーからチャバザイト型ゼオライトを製造する方法において、チャバザイト型ゼオライトの結晶度を高めるために、スラリー中の水酸化カリウムのモル数(MKOH)とフォージャサイト型ゼオライトのAl2O3のモル数(MAl2O3)とのモル比(MKOH)/(MAl2O3)を3.0にすることが記載されている。
そして、甲第2号証に記載されたチャバザイト型ゼオライトと甲1発明とは、その製造方法及び用途が共通しており、SiO2/Al2O3モル比も重複するので、甲第2号証に記載された事項を甲1発明に適用することに阻害要因はないから、甲1発明において、「Cu-CHA型ゼオライト」の結晶度を高めるために、(MKOH)/(MAl2O3)を3.0にすることは、当業者が容易になし得ることである。
更に、その場合、甲1発明の製造の際のスラリー中のアルカリ/Si比が0.35となり、本件特許明細書の段落【0039】に記載された、「AP1/AP0」を「0.070以下」とするための製造条件である0.32モル以上0.38モル以下の範囲を満たすから、「AP1/AP0」が「0.070以下」である「Cu-CHA型ゼオライト」が製造されるので、甲1発明において、「AP1/AP0」を「0.070以下」とすることは、甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることである(特許異議申立書29ページ6行~30ページ24行)。
イ そこで、前記アの主張について検討すると、甲1発明は、「平均結晶サイズが0.4μm」であり、「前記平均結晶サイズの算出方法は、電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたもの」であって、前記(1)ア(ア)bの甲第1号証の記載によれば、甲1発明のゼオライトは、その「平均結晶サイズ」が1μm以上では、単位体積当たりのチャバザイト型ゼオライトの結晶間の接点数が少なくなり、コート層の強度が低下するので好ましくないものである。
ウ 一方、前記(1)イ(ア)の記載によれば、甲第2号証には、下記の工程(a)~(c)からなる、チャバザイト型ゼオライトの合成方法が記載されているといえる。
(a)フォージャサイト型ゼオライト粒子を微細化する工程
(b)微細化したフォージャサイト型ゼオライト粒子の水分散スラリーに水酸化カリウムを添加して合成用スラリーを調製する工程
(c)80~110℃で水熱処理する工程
また、同(イ)、(ウ)の記載によれば、甲第2号証には、前記合成方法により合成されたチャバザイト型ゼオライトの実施例として、実施例1及び2が記載されているといえるのであるが、前記実施例1に係るチャバザイト型ゼオライトの平均粒子径(DCHA)は1.5μmであり、前記実施例2に係るチャバザイト型ゼオライトの平均粒子径(DCHA)は2.0μmであり、ここで、同(イ)(段落【0024】)の記載によれば、チャバザイト型ゼオライトの粒子径は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を測定し、任意の10個の粒子について粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径(DCHA)としたものである。
すると、前記実施例1及び2に係るチャバザイト型ゼオライトは、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を測定し、任意の10個の粒子について粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径(DCHA)としたときの平均粒子径(DCHA)が、それぞれ1.5μm及び2.0μmであるものであるが、このことと、甲1発明の「平均結晶サイズの算出方法」が、「電子顕微鏡の画像から10個の一次粒子をランダムに抽出し、その一次粒子の長径の平均値を一次粒子のサイズとしたものである」ことからみれば、前記実施例1及び2に係るチャバザイト型ゼオライトの「平均結晶サイズ」は1μm以上となることが強く推認されるものである。
そして、当業者は、「平均結晶サイズ」が1μm以上となることが強く推認される甲第2号証に記載された事項を、「平均結晶サイズ」が1μm以上になると、単位体積当たりのチャバザイト型ゼオライトの結晶間の接点数が少なくなり、コート層の強度が低下して、好ましくないものとなる甲1発明に適用することはしないから、甲1発明に、甲第2号証に記載された事項を適用する動機づけは存在しない。
そうすると、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用して、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、前記アの主張は採用できない。
エ 小括
よって、本件発明1~4及び6~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、前記第4の3の特許異議の申立て理由は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立て理由によっては、本件請求項1~4及び6~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに、本件請求項1~4及び6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により本件請求項5は削除されたから、本件請求項5に係る特許異議の申立てについては対象となる特許が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700995