特許異議申立
2023-700494
ジスアゾ顔料、顔料組成物、及び印刷インキ
- 審判番号
- 2023-700494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-536690
- 登録番号
- 7173353
- 請求日
- 2023年05月15日
- 審決日
- 2023年10月30日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】DIC株式会社
- 【権利者代理人】小川 眞治
- 【権利者代理人】岩本 明洋
- 【権利者代理人】大野 孝幸
- 【異議申立人】猪股 純子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.113-YAA(C09B) / P1651.121-YAA(C09B) / P1651.536-YAA(C09B) / P1651.537-YAA(C09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7173353号発明「ジスアゾ顔料、顔料組成物、及び印刷インキ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7173353号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2~4〕について訂正することを認める。
特許第7173353号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7173353号の請求項1~4に係る特許についての出願は、2020年6月28日を国際出願日とする出願であって、令和4年11月8日に特許権の設定登録がされ、同年同月16日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和5年5月15日に、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 猪股 純子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
そして、令和5年7月7日付けで当審合議体から取消理由通知が通知され、同年8月24日(受付日)に訂正請求書及び意見書が提出され、同年9月4日付けで当審合議体から特許法第120条の5第5項に基づく通知書が通知され、特許異議申立人から同年10月3日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 令和5年8月24日受付の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである。
訂正事項1
請求項2について、訂正前に「請求項1に記載のジスアゾ顔料と、炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル、及び/又は、炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む顔料組成物。」とあるのを、「請求項1に記載のジスアゾ顔料と、炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む顔料組成物。」に訂正する。
3 訂正事項1についての訂正要件の判断
(1) 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前に「請求項1に記載のジスアゾ顔料」とともに含まれる成分として、「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル」だけを特定する場合や、「炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミン」だけを特定する場合や、それら両者が含まれるとして特定した場合が選択肢として存在していたところ、訂正後に、両者が含まれる「及び」の場合だけに限定し、訂正前の「及び/又は」の前後の読点も削除したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項2の上記訂正に連動する請求項3及び4の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で述べたとおり、択一的選択肢の一部を削除したものにすぎず、特許登録時の明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、請求項2の上記訂正に連動する請求項3及び4の訂正も、同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、択一的選択肢を削除したものにすぎず、特許請求の範囲を減縮した訂正であって、かつ発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
また、請求項2の上記訂正に連動する請求項3及び4の訂正も、同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項2~4について訂正を認める。
第3 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~4に係る発明を、「訂正前の本件特許発明2~4」ということもある。)。
「 【請求項1】
C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料。
【請求項2】
請求項1に記載のジスアゾ顔料と、炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む顔料組成物。
【請求項3】
前記アルキルアミンが、オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルオクタデシルアミンである請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の顔料組成物を含む印刷インキ。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、下記の甲第1~4号証を提出し、以下の異議申立理由を主張している。
(1)新規性
異議申立理由1:本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証を参照すると、甲第1号証又は甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第1項第2号の規定により取消されるべきものである。
(2)進歩性
異議申立理由2-1:本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明若しくは甲第2号証に記載された発明若しくは甲第3号証に記載された発明並びに甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第1項第2号の規定により取消されるべきものである。
異議申立理由2-2:本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明並びに甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第1項第2号の規定により取消されるべきものである。
(3)実施可能要件
異議申立理由3:請求項1~4に係る発明に関して、ポリ塩化ビフェニル含有量、第一級芳香族アミン含有量いずれにおいても下限値が規定されておらず、0ppmを含みうるところ、実施例において製造したジスアゾ顔料は、ポリ塩化ビフェニル含有量は最小で1ppmであり、第一級芳香族アミン含有量は最小で102ppmであるので、いずれも0ppmのジスアゾ顔料の製造方法が明示されておらず、当業者がどのように実施するか理解できず、発明の詳細な説明の記載が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
したがって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものである。
(4)サポート要件
異議申立理由4:請求項1~4に係る発明に関して、ポリ塩化ビフェニル含有量、第一級芳香族アミン含有量いずれにおいても下限値が規定されておらず、0ppmを含みうるところ、実施例において製造したジスアゾ顔料は、ポリ塩化ビフェニル含有量は最小で1ppmであり、第一級芳香族アミン含有量は最小で102ppmであるので、いずれも0ppmのジスアゾ顔料の製造方法が明示されておらず、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものである。
記
甲第1号証:特開平7-126545号公報
甲第2号証:特開平7-173408号公報
甲第3号証:特開平10-288860号公報
甲第4号証:有機顔料中に副生するPCBの工業技術的・経済的に低減可能なレベルに関する報告書、有機顔料中に副生するPCBの工業技術的・経済的に低減可能なレベルに関する検討会、2016年1月29日、https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai.seisan.yuuki_pcb2/report_02.html
2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審合議体が令和5年7月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
理由1:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2:(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
理由1について
請求項1~4について
1 請求項1及び2に係る発明は、いずれの発明も不可避的に含まれる成分を特定したジスアゾ顔料に関する発明であると考えられるところ、請求項1においては、末尾を「ジスアゾ顔料」とし、請求項2においては、末尾を「ジスアゾ顔料組成物」として、用語を使い分けて記載しており、両者の用語の使い分けについては、記載自体から一義的に理解できるものではなく(請求項1に係るジスアゾ顔料も組成物であると理解することもできる。)、本件明細書全体の記載を参照しても、定義がない上に、本願出願時の技術常識であるともいえないので、結果的に、請求項1及び2の記載について、それらの発明の技術的意味(ジスアゾ顔料とジスアゾ顔料組成物は技術的にどのような相違があるのか。)及び発明の範囲(請求項1に係る発明と請求項2に係る発明の包含関係や請求項1に係るジスアゾ顔料に含まれる可能性のある成分)が不明確となっている。
2 請求項3及び4の記載についても、請求項2又は3を引用しており、上記1において、請求項1及び2の記載について、述べた点が少なくとも該当するので、同様に不明確であるといえる。
理由2について
請求項2~4について
1 本件特許発明の機構が明確に示されていないこと、PAAとPCBを共に削減することが困難であることを背景として本件特許発明がなされていることを考慮すると、PAAが700ppm未満でかつPCB15ppm未満というジスアゾ顔料組成物を、POEアルキルエステル及びアルキルアミンを共に用いた場合で課題解決できたことを示したからといって、訂正前の本件特許発明2又は3に包含されるPOEアルキルエステル又はアルキルアミンの一方のみを用いて上記両不純物の範囲を達成した具体的実験結果を示さずに、当業者が上記の本件特許発明2及び3の課題を解決できることを認識できるとはいえない。
さらに、PCB含有量が15ppm未満であって、且つPAA含有量が700ppm未満とできたことの記載や示唆がなくとも、当業者が上記の本件特許発明2及び3の課題を解決できることを認識できる本件特許の出願時の技術常識も存在しない。
2 訂正前の本件特許発明4の印刷用インキについても、上記1で述べたことが同様に当てはまることから、当業者が上記の本件特許発明4の課題を解決できることを認識できるとはいえない。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した理由及び特許異議申立人の申し立てた理由によって、本件特許の請求項1~4に係る特許は取り消されるべきではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
I 取消理由について
1 取消理由1の明確性要件に関する点(請求項1のジスアゾ顔料と請求項2のジスアゾ顔料組成物の用語の技術的意味及び使い分け)について
上記取消理由の明確性要件について、請求項1の「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料。」との記載は、出願時以前から知られていたPCBやPAA等の不純物を特定した有機顔料の発明であり(甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証では、不純物を特定した有機顔料の記載がある。)、請求項2の「請求項1に記載のジスアゾ顔料と、炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む顔料組成物。」との記載は、請求項1に記載の不純物を含んだジスアゾ顔料と、不純物低減の解決手段としての成分である「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミン」を成分として特定することで、「顔料組成物」と表現したものと理解できる(甲第3号証では、有機顔料とその他の成分を含む顔料組成物を「イエロートナー」と表現している。)。
したがって、請求項1の顔料と不純物を特定事項とした「ジスアゾ顔料」と、請求項2の顔料と不純物と特定のアルキルエステル及びアルキルアミンを特定事項とした「ジスアゾ顔料組成物」の関係、末尾の用語の使い分け、技術的意味は、上記のような解釈に立てば、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確とはいえず、この点での取消理由は解消している。
なお、特許権者は、意見書2頁下から5行において、「有機顔料製造時に副生する不純物はその含有量がppmオーダーであることをもって「有機顔料」との末尾が適切であるかのような主張をしているが、審判合議体は、請求項1は、あくまでも不純物で規定した顔料であるとの理解(不純物と顔料成分以外は発明の特定事項にはなっていない。)を前提として、上記甲号証でも末尾の表現として通常利用されていることも考慮して、上記のとおり請求項1の記載は不明確とはいえないと判断するものである。
2 取消理由2のサポート要件に関する点(請求項2及び3のジスアゾ顔料組成物と請求項4の印刷インキにおいて、POEアルキルエステル又はアルキルアミンの一方のみを用いて、PCB及びPAAの両不純物の含有量範囲を達成した具体的実験結果がない点)について
(1)本件特許発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件特許発明の課題
本件特許発明2~4の課題は、本件特許明細書の【0006】及び【0007】の「 【0006】
上記のように、ジスアゾ顔料の原料残留物や分解生成物として有害となり得る化学物質の一つであるPAAを削減する方法は知られているが、それ以外の有害となり得る化学物質を同時に削減する方法は知られていない。本発明の課題は、特に食品包装などの分野において有害な規制物質となり得る化学物質の含有量を低減し、安全性の高いジスアゾ顔料を提供することである。
・・・
【0007】
本発明者らは、ジスアゾ顔料において有害な規制物質となり得る化学物質が生成するメカニズムを検討した結果、ジスアゾ顔料の合成過程における処方を工夫することにより、有害な複数の化学物質を低減できることを見出し、本発明を完成させた。」との記載(下線は、審判合議体による。)、本件特許発明2~4の発明特定事項及び本件特許明細書全体の記載を参酌して、本件特許発明2及び3については、同時に削減する方法は知られていない、有害な規制物質となり得る化学物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)及び第一級芳香族アミン(PAA)のそれぞれの含有量を15ppm未満及び700ppmに低減し、安全性の高いジスアゾ顔料組成物を提供することにあると認める。
また、本件特許発明4の課題は、上記顔料組成物を含む印刷インキを提供することにあると認める。
(3) 特許請求の範囲の記載
請求項2には、前記第3のとおり、「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料」と、「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む」ことを特定した顔料組成物の発明が記載されている。
また、請求項3には、請求項2において、「アルキルアミンが、オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルオクタデシルアミンである」ことをさらに特定した顔料組成物の発明が記載されている。
さらに、請求項4には、「請求項2又は3に記載の顔料組成物を含む」ことを特定した印刷インキの発明が記載されている。
(4) 発明の詳細な説明の記載
ア 本件特許の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲に記載された発明に対応した記載として、実質的な繰り返し記載を除いて以下のような記載がある。
イ 本件特許発明の一般的説明について
本件特許明細書の【0002】~【0009】には、背景技術、課題、解決手段、効果について記載され、【0011】~【0012】には、ジスアゾ顔料について、PCBの含有量及びPAAの含有量範囲、ジスアゾ顔料の例示が記載され、【0013】~【0027】には、ジスアゾ顔料組成物について、含まれるアルキルアミンの例示、そのHLB値、アルキルアミンの作用、含まれるPOEアルキルエステルの例示、そのHLB値、その他の含有成分の例示が記載され、【0028】~【0032】には、顔料組成物の製造方法について、カップリング反応の原料や反応条件が記載され、【0033】~【0035】には、印刷インキについて、溶剤や添加剤の例示が記載されている。
ウ 具体的記載について
特許請求の範囲の実施例及び比較例としては、表1に、PEGリシノール酸エステル又はPEGリシノール酸トリグリセリドといったPOEアルキルエステルを用い、かつオクタデシルアミン又はN,N-ジメチルオクタデシルアミンといったアルキルアミンを用いた実施例1~6と、PEGリシノール酸エステルのみ又はオクタデシルアミンのみ又はPOEアルキルエステルとアルキルアミンをともに用いていない比較例1~6の顔料組成物を得て、C.I.ピグメントイエロー83(Y83)、C.I.ピグメントイエロー13(Y13)、及びC.I.ピグメントイエロー14(Y14)合成後のGC/MASを用いたPCBとPAAの含有量の測定結果が以下のとおり示されている。
【表1】
[図:0001406708000001.jpg]
(5) 対比・判断
ア 本件特許発明2~4の課題は、上記(2)に述べたとおり、同時に削減する方法は知られていない、有害な規制物質となり得る化学物質であるポリ塩化ビフェニル及び第一級芳香族アミンのそれぞれの含有量を15ppm未満及び700ppm未満に低減し、安全性の高いジスアゾ顔料組成物又は印刷インキを提供することにあるといえる。
イ そして、上記(2)に記載のとおり、特許請求の範囲には、「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料」と、「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンとを含む」ことを特定した顔料組成物の発明が記載され、当該顔料組成物は、「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル」(POEアルキルエステル)及び「炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミン」(アルキルアミン)を共に含むものだけに限定されている。
そして、発明の詳細な説明においては、上記(4)イのとおり、ジスアゾ顔料組成物について、含まれるアルキルアミンの例示、そのHLB値、アルキルアミンの作用、含まれるPOEアルキルエステルの例示、そのHLB値、その他の含有成分の例示が記載されるとともに、【0019】に「上記アルキルアミンは少量であっても、カップラーの分散性を向上することができると考えられ、結果としてPCBとPAAの発生を抑制することができ、その含有量は問わない。」との記載や、【0021】に「上記POEアルキルエステルにおけるアルキル基は、炭素数8以上であるが、炭素数10~30が好ましく、炭素数12~20がより好ましい。炭素数が上記範囲であると、十分な疎水性が得られるためジスアゾ顔料の合成過程においてカップラーの分散性を向上することができると考えられる。」との作用を推定しようとする記載がある。
ウ さらに、上記(4)ウのとおり、実施例として、PEGリシノール酸エステル又はPEGリシノール酸トリグリセリドといったPOEアルキルエステルと、オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルオクタデシルアミンといったアルキルアミンとを共に用いて、上記PCBとPAA両物質を一定以下にする結果を得た具体例がある(表1)。
エ そして、本件訂正によって、POEアルキルエステル又はアルキルアミンの一方のみを用いる場合は、請求項2~4に係る発明から除外されて、訂正後POEアルキルエステル及びアルキルアミンが共に使用される場合に限定されることとなった。
したがって、POEアルキルエステル及びアルキルアミンが共に使用される場合については、上記発明の詳細な説明の記載、実施例の表1の結果、及び本件特許の出願時のジアゾ顔料の技術分野における不純物の発生と除去に関する技術常識を参酌すれば、PCB及びPAAの両不純物を請求項2において規定した範囲に低減することが裏付けられているので、当業者であれば本件特許発明の課題が解決できることを認識できるといえる。
よって、取消理由2も解消している。
4 取消理由の判断のまとめ
以上のとおり、当審合議体から通知した取消理由通知に示した取消理由は解消しており、上記取消理由には理由がない。
II 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての検討
1 異議申立理由1(新規性)、異議申立理由2-1及び異議申立理由2-2(進歩性)について
(1)異議申立理由1及び異議申立理由2-1について(甲第1号証又は甲第2号証又は甲第3号証を主引用例とした理由)
ア 甲号証の記載
ア-1 甲第1号証
(ア-1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解することを特徴とする低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法。
【請求項2】 酸化剤がキノン類、過酸化水素、次亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、アミン-N-オキシドから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】 請求項1又は請求項2の製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、衛生性に優れたジスアゾ顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジスアゾ顔料は、ベンジジン類のテトラゾ溶液とアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせることにより得られる。テトラゾ成分は、化学的に不安定で容易に分解や縮合をし、その結果、ジスアゾ顔料の色材としての品位を著しく劣化させる。テトラゾ成分の遊離を防止する目的で、通常、化学量論的に若干過剰のカップラーを用いてカップリングさせている。しかし、この結果として、過剰量分のカップラーが顔料に残留することになる。残留カップラーは、顔料スラリーの加熱処理や濾過した顔料ケーキの乾燥中に、一部分解して芳香族アミン類に変化する。顔料が色材として使用される際、残留するカップラーや芳香族アミン類は、衛生上好ましくないと考えられている。残留カップラーを低減するために顔料スラリーにアルカリを添加してアセトアセトアニリド類をカップラー液に溶解させ、顔料の濾過時に過剰のカップラーを濾液とともに除去することが行われている。しかし、過剰のアセトアセトアニリド類は顔料粒子中に吸蔵する傾向があり、このような残留カップラーまでをも除去することは困難であった。このため、芳香族アミン類を含まないジスアゾ顔料への要求が世界的に非常に大きいにもかかわらず、現在の製品はこの要求に十分答えていると言いがたい。例えば、上市されているC.I.ピグメントイエロー 83中の2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリン含有率は、300ppmから1000ppmの範囲が多く、中には5000ppm以上のものもあるのが実情である。又、上述したように、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近くして反応させれば、残留芳香族アミンの少ないジスアゾ顔料が得られるが、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、顔料品位を著しく低下させるという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、残留カップラーおよびその分解物、特に、芳香族アミン類を低減させたジスアゾ顔料の製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解することを特徴とする低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法に関する。
さらに、本発明は、上記製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料に関する。」
(ア-1b)「【0007】酸化剤による処理を終えた顔料スラリーは、通常の顔料の製造方法に従って、濾過、水洗、乾燥して製品とする。以下、実施例により本発明を説明する。実施例中、部、%は重量部、重量%を表す。酸化剤を添加する上記の工程において、顔料スラリーをアルカリ領域に調整した後、同様の処理を行ってもよい。この際のアルカリ領域は、pH7からpH13までの範囲である。以下、実施例により本発明を説明する。実施例中、部、%は重量部、重量%を表す。
【0008】実施例1
氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8gを加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得た。一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-m-キシリジド42.2部を30℃で仕込みカップラーのアルカリ溶液とした。水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカップラーのアルカリ溶液を滴下し、カップラーを酸析して下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入しカップリングさせた。得られた顔料スラリーにp-クロラニル2部を添加後、50℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
【0009】実施例2
実施例1においてカップリング後の顔料スラリーに苛性ソーダを加えてpH8とした。次亜塩素酸ナトリウム4部を添加後、70℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
比較例1
実施例1においてカップリング後の顔料スラリーを60℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。各例で得られた顔料のテトラヒドロフラン抽出液中に含まれるアセトアセト-m-キシリジドおよびm-キシリジンを高速液体クロマトグラフにより分離、定量し、それらの含有率を求めた。なお、測定条件は、オクタデシルシラン系の充填剤を用い、メタノールと水の1:1混合液を溶離液とし、検出波長は235nmである。結果を以下の実施例および比較例とともに表1に示した。
【0010】実施例3
3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を実施例1と同様にしてテトラゾ化してテトラゾ溶液を得た。一方、実施例1のアセトアセト-m-キシリジド42.2部の代わりにアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリド57.0部を使用して下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入しカップリングさせた。得られた顔料スラリーに苛性ソーダを加えてpH10とした。過ヨウ素酸カリウム1.5部を添加後、70℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
実施例4
実施例3においてカップリング後の顔料スラリーに苛性ソーダを加えてpH8とした。次亜臭素酸カリウム2部および過酸化水素3部を添加後、90℃に加熱した。30分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
比較例2
実施例3においてカップリング後の顔料スラリーを90℃に加熱した。30分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。実施例3,4および比較例2で得られた顔料中に含まれるアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリドおよび2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリンの含有率を実施例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーにより測定し、表1に示した。
【0011】実施例5
3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を実施例1と同様にしてテトラゾ化してテトラゾ溶液を得た。一方、実施例1のアセトアセト-m-キシリジド42.2部の代わりにアセトアセト-o-トルイジド39.3部を使用して下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下より注入しカップリングさせた。得られた顔料スラリーにラウリルジメチルアミン-N-オキシド3部およびp-ベンゾキノン3部を添加後、30℃に加熱した。90分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
比較例3
実施例5においてカップリング後の顔料スラリーを30℃に加熱した。90分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。実施例5,2および比較例1で得られた顔料中に含まれるアセトアセト-o-トルイジドおよびo-トルイジンの含有率を実施例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーにより測定し、表1に示した。
【0012】
【表1】
[図:0001406708000002.jpg]
【0013】
【発明の効果】本発明では、顔料スラリーに酸化剤を添加して残留カップラーを処理によって、残留カップラーおよび芳香族アミン類の含有率を大幅に低減させることができた。さらに、テトラゾ成分に対してカップラー成分を過剰に反応させているので、顔料品位も従来のものと同等のものが得ることができ、色材としての品位および衛生上の両者の問題を同時に解決することができた。」
ア-2 甲第2号証
(ア-2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理することを特徴とする低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法。
【請求項2】 請求項1の製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衛生性に優れたジスアゾ顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジスアゾ顔料は、ベンジジン類のテトラゾ溶液とアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせることにより得られる。テトラゾ成分は、化学的に不安定で容易に分解や縮合をし、その結果、ジスアゾ顔料の色材としての品位を著しく劣化させる。テトラゾ成分の遊離を防止する目的で、通常、化学量論的に若干過剰のカップラーを用いてカップリングさせている。しかし、この結果として、過剰量分のカップラーが顔料に残留することになる。残留カップラーは、顔料スラリーの加熱処理や濾過した顔料ケーキの乾燥中に、一部分解して芳香族アミン類に変化する。顔料が色材として使用される際、残留するカップラーや芳香族アミン類は、衛生上好ましくないと考えられている。残留カップラーを低減するために顔料スラリーにアルカリを添加してアセトアセトアニリド類をカップラー液に溶解させ、顔料の濾過時に過剰のカップラーを濾液とともに除去することが行われている。しかし、過剰のアセトアセトアニリド類は顔料粒子中に吸蔵する傾向があり、このような残留カップラーまでをも除去することは困難であった。このため、芳香族アミン類を含まないジスアゾ顔料への要求が世界的に非常に大きいにもかかわらず、現在の製品はこの要求に十分答えていると言いがたい。例えば、上市されているC.I.ピグメントイエロー 83中の2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリン含有率は、300ppmから1000ppmの範囲が多く、中には5000ppm以上のものもあるのが実情である。又、上述したように、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近くして反応させれば、残留芳香族アミンの少ないジスアゾ顔料が得られるが、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、顔料品位を著しく低下させるという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、残留カップラーおよびその分解物、特に、芳香族アミン類を低減させたジスアゾ顔料の製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理することを特徴とする低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法に関する。さらに、本発明は、上記製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料に関する。」
(ア-2b)「【0007】実施例1
氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8部を加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得た。一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリド57.0部を30℃で仕込みカップラーのアルカリ溶液とした。水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカップラーのアルカリ溶液を滴下し、カップラーを酸析して下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入してカップリングさせた。得られた顔料スラリーに臭素5部を添加後、70℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
【0008】実施例2
実施例1においてカップリング後の顔料スラリーにヨウ素8部を添加し90℃に加熱した。30分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
実施例3
実施例1においてカップリング後の顔料スラリーに塩素ガス2部を20分かけて吹き込んだ後、30℃に加熱した。90分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
【0009】比較例1
実施例2においてカップリング後の顔料スラリーをヨウ素を添加しないで70℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。以上の各例で得られた顔料のテトラヒドロフラン抽出液中に含まれるアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリドおよび2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリンを高速液体クロマトグラフにより分離、定量し、それらの含有率を求めた。なお、測定条件は、オクタデシルシラン系の充填剤を用い、メタノールと水の1:1混合液を溶離液とし、検出波長は235nmである。結果を以下の実施例および比較例とともに表1に示した。
【0010】実施例4
3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を実施例と同様にしてテトラゾ化してテトラゾ溶液を得た。一方、実施例のアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリド57.0部の代わりにアセトアセト-m-キシリジド42.2部を使用して下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下より注入しカップリングさせた。得られた顔料スラリーに臭素1部を添加後、60℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
比較例2
実施例4においてカップリング後の顔料スラリーに臭素を添加しないで60℃に加熱した。60分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。実施例4および比較例2で得られた顔料中に含まれるアセトアセト-m-キシリジドおよびm-キシリジンの含有率を実施例1と同様にて高速液体クロマトグラフィーにより測定し、表1に示した。
【0011】実施例5
3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を実施例1と同様にしてテトラゾ化してテトラゾ溶液を得た。一方、実施例1のアセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリド57.0部の代わりにアセトアセト-o-トルイジド39.3部を使用した下漬液を調製し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下より注入しカップリングさせた。得られた顔料スラリーにヨウ素3部を添加後、90℃に加熱した。30分放置後このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。
比較例3
実施例4においてカップリング後の顔料スラリーを90℃に加熱した。30分放置後、このスラリーを濾過、水洗および乾燥した。実施例5および比較例3で得られた顔料中に含まれるアセトアセト-o-トルイジドおよびo-トルイジンの含有率を実施例1と同様にして高速液体クロマトグラフィーにより測定し、表1に示した。
【0012】
【表1】
[図:0001406708000003.jpg]
【0013】
【発明の効果】本発明では、顔料スラリーにハロゲンを添加して残留カップラーを処理によって、残留カップラーおよび芳香族アミン類の含有率を大幅に低減させることができた。さらに、テトラゾ成分に対してカップラー成分を過剰に反応させているので、顔料品位も従来のものと同等のものが得ることができ、色材としての品位および衛生上の両者の問題を同時に解決することができた。」
ア-3 甲第3号証
(ア-3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリング反応させて得られるジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理してなるジスアゾ顔料(1)と、少なくとも結着樹脂とを溶融混練して成ることを特徴とする静電荷像現像用イエロートナー。
【請求項2】 ジスアゾ顔料(1)が、アミン類の含有量が375ppm以下のジスアゾ顔料(2)であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用イエロートナー。
・・・
【請求項9】 アミン類の含有量が30ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の静電荷像現像用イエロートナー。」
(ア-3b)「【0003】ジスアゾ系顔料は、静電荷像現像用トナー(以下、トナーと略す)にはもちろん、インキ、塗料等の分野で広く使用されている有用な黄色系顔料である。係るジスアゾ顔料は、ベンジジン類のテトラゾ成分とカップラーと呼ばれるアセトアセトアニリド類とをカップリング反応させることより得られる。カップリング反応は、カップラー粒子を分散させた弱酸性の水性スラリー中にテトラゾ水溶液を注入することによって行われる。テトラゾ成分は、化学的に不安定で容易に分解や縮合する。この傾向は特にアルカリ側で顕著で直ちに分解する。強酸性化ではかなり安定であるが、この領域ではカップリング反応も殆ど進行しない。このためカップリング反応は、弱酸性下で且つ注入したテトラゾが直ちにすべてカップラーと反応するような条件で行われる。
【0004】一方、カップラーは、アルカリ側では良く溶解するものの、カップリング反応が行われる弱酸性下では溶解性がかなり悪く、大部分は固体で存在する。従って、カップリング反応は、カップラー粒子を分散させた弱酸性の水性スラリー中にテトラゾ溶液を注入する固液反応として行われる。このため、カップラーの溶解が何らかの理由で不十分だと、高い反応率が得られないことが多くなる。
【0005】カップリング反応の反応率は、水性スラリー中にカップラーを微細に良く分散せしめることによって向上させることができる。カップラー粒子の調整には種々の工夫がなされる。例えば、アルカリ水溶液に溶解したカップラーを酸水溶液中に注入して再沈殿させて微細化したり、サンドミル等を用い機械的に摩砕して微細化する等の工夫がなされる。
【0006】カップリング工程の初期には溶解状態のカップラーとテトラゾ成分とがカップリングすると考えられるが、カップリングが進むとカップラーの溶解が間に合わなくなり、反応はカップラー粒子表面付近で起きるようになる。また、テトラゾ成分の供給が速過ぎても、あるいはテトラゾ成分とカップラーとのカップリング反応が速過ぎる場合にも同様の現象が起きる。このような現象が起きると生成した顔料がカップラー粒子表面を覆い、カップラーの溶解を妨げたりカップリング反応を妨げたりする。カップリング反応の末期にはこのように顔料に被覆され、カップリングできないカップラーが残り、反応率を低下させると考えられる。そこで、反応率の向上を図るべく上記したようにカップラーを微細化する他、カップラーに対しテトラゾ成分を化学量論的に近づけテトラゾ成分をゆっくり注入したり、顔料に被覆されたカップラー粒子を機械的方法や溶剤を添加する等の方法によって強制的に溶解させたり等種々の方法が提案されているが、これらの方法では十分に反応率を向上することは難しく、生成する顔料中に未反応のカップラーが残留しやすい。あるいは十分な反応率を確保するためには長時間を要したり、かなりの費用がかかったりし、生産性の点で満足できるものではなかった。
【0007】また、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近づけテトラゾ成分をゆっくり注入せしめることによってもカップラー成分の残留量を低減せしめることが可能であることは前述した次第であるが、この場合はテトラゾ成分が逆に残留し易くなり、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、係る顔料を用いると印刷物等の鮮明性を著しく低下させるという問題点があった。
【0008】残留カップラー、即ち残留アセトアセトアニリド類を低減する方法としては、カップリング反応終了後の顔料スラリーにアルカリを添加して残留アセトアセトアニリド類を溶解せしめ、顔料の濾過時に過剰のアセトアセトアニリド類を濾過液とともに除去する方法があるが、過剰のアセトアセトアニリド類は顔料粒子中に吸蔵される傾向があり、残留アセトアセトアニリド類を十分に除去することは困難であった。
【0009】トナーは、一般的な塗料・インキとは異なり、その製造時にかなりの高温で顔料を分散することを必須とするものである。具体的にトナーは、一般に顔料等の着色剤と結着樹脂とを溶融混練、冷却、粉砕、必要に応じて分級してなるものであるあが、従来からジスアゾ顔料の溶融混練時に不快臭を生ずることがあった。また、電子写真法は、感光体等上の静電潜像にトナーを付着せしめ、可視化した像を紙等の被転写材上に転写後加熱して転写像を定着せしめ、画像・文字情報を得るというものであるが、係る実際の使用に際しても不快臭を生じることがあり、不快臭の発生の抑制・防止が望まれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造時及び使用時に臭気を生じ難い静電荷像現像用イエロートナーを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ジスアゾ系顔料を含有するイエロートナーを製造する際及び使用する際に生じる臭気について鋭意検討した結果、係る臭気の原因が使用するジスアゾ系顔料中の残留カップラーが溶融混練時又はトナー定着時の熱によって一部分解し、不快臭を伴う芳香族アミン類に変化することを見出し、残留カップラー伴う及び残留カップラーに由来する芳香族アミン類を低減せしめたジスアゾ系顔料を使用することによって本発明に到達したものである。
【0012】第1の発明は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリング反応させて得られるジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理してなるジスアゾ顔料(1)と、少なくとも結着樹脂とを溶融混練して成ることを特徴とする静電荷像現像用イエロートナーである。」
(ア-3c)「【0040】
【実施例】以下実施例に基づいて本発明を説明する。例中部または%とあのるは、重量部または重量%を示す。
[合成例1]氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8部を加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得た。一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-m-キシリジド42.2部を30℃で仕込みカプラーのアルカリ溶液とした。水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカプラーのアルカリ溶液を滴下し、カプラーを酸析して下漬液を調整し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入してカップリングさせた。得られた顔料スラリーに臭素5部を添加後、70℃に加熱した。60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗し乾燥し、ジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー13)を得た。
【0041】〔合成例2〕アセトアセト-o-トルイジドを使用する以外は実施例1と同様にしてカップリング反応させ、臭素3部を添加後、90℃に加熱して60分間放置後に濾過、水洗、乾燥してジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー14)を得た。
【0042】〔合成例3〕アセトアセト-o-アニシジドを使用する以外は実施例1と同様にしてカップリング反応させ、臭素0.1部を添加後、60℃に加熱して60分間放置後に濾過、水洗してジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー17)を得た。
【0043】〔比較合成例1〕合成例1においてカップリング後の顔料スラリーに臭素を添加しないで70℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗及び乾燥し、顔料とした。
【0044】〔比較合成例2〕合成例2においてカップリング後の顔料スラリーに臭素を添加しないで90℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗及び乾燥し、顔料とした。
【0045】〔比較合成例3〕合成例3においてカップリング後の顔料スラリーに臭素を添加しないで60℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗及び乾燥し、顔料とした。
【0046】
[実施例1]
非線状ポリエステル樹脂 100部
合成例1の顔料(C.I.ピグメントイエロー13) 8部
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)で上記原料を混合し、エクストルーダーで溶融混練し、粉砕、分級してイエロートナー粒子を得た。得られたイエロートナー粒子の体積平均粒径をコールターカウンター(TA-II)で求めたところ8.5μmであった。上記イエロートナー粒子に対して疎水化処理したアナターゼ型酸化チタン微粒子を0.6%添加し、イエロートナーとした。
【0047】[実施例2~3]合成例2~3の顔料を実施例1と同様にして使用し、イエロートナーを作製した。
【0048】〔実施例4〕合成例3で得られたジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー17):250部、塩化ナトリウム:1000部、およびジエチレングリコール200部(東京化成製)をステンレス1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、3時間混練した。次いでこの混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃まで加熱、攪拌した。約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、固形分50%のジスアゾ系顔料と水との混合物を得た。係る混合物中の顔料の形態を透過型電子顕微鏡で観察したところ平均粒径が0.1μm、顔料粒子の長径と短径の比が1.4であった。
【0049】次に下記の材料をスーパーミキサー((株)カワタ製)に入れ、80℃で加熱混練し、水を除去して樹脂分散型ジスアゾ系顔料を作製した。
上記ジスアゾ系顔料と水との混合物(固形分50%) 100部
線状ポリエステル樹脂 50部
高分子型分散剤 2.5部
【0050】そして、下記の材料をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)で混合後、エクストルーダーで溶融混練し、粉砕、分級してイエロートナー粒子を得た。
非線状ポリエステル樹脂 94部
上記樹脂分散型ジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー17)6部
得られたイエロートナー粒子の体積平均粒径をコールターカウンター(TA-II)で求めたところ8.5μmであった。上記イエロートナー粒子に対して疎水化処理したアナターゼ型酸化チタン微粒子を0.6%添加し、イエロートナーとした。
【0051】〔比較例1~3〕実施例1において合成例1~3のかわりに比較合成例1~3の顔料を使用する以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。」
(ア-3d)「【表1】
[図:0001406708000004.jpg]
」
ア-4 甲第4号証
(ア-4a)「国際的な動向を踏まえ(別紙3)、化審法に基づき、緊急的かつ暫定的な措置として、50ppmを超えてPCBを含有することが判明した有機顔料の製造・輸入の中止、製造等の場所や出荷先事業者等の報告、出荷先からの回収などの行政指導を各社に対して行った(別紙4)。」(2頁1~3行)
(ア-4b)「これらの実態把握の結果、17製品について50ppmを超えるPCB含有が確認され、当該製品の製造・輸入は中止された(表I -3)。」(2頁19~20行)
(ア-4c)
「表I -1 PCB含有実態調査結果の概要」
の表が示され、第1次実態調査(23種)第2次実態調査(23種以外)の合計553品目中、PCB濃度(ppm)が、0.5以下 378品目、0.5超~1 48品目、1~5 65品目、5~10 20品目、10~15 9品目、15~20 5品目、20~25 11品目、25~50 10品目、50超 7品目
との結果が示されている。(2頁)
(ア-4d)
「表I -2 再分析の結果の概要」
の表が示され、再分析の結果242品目を含めて合計588品目中、PCB濃度(ppm)が、0.5以下 359品目、0.5超~1 51品目、1~5 89品目、5~10 29品目、10~15 13品目、15~20 7品目、20~25 10品目、25~50 13品目、50超 17品目
との結果が示されている。(3頁)
(ア-4e)
「表I -3 副生するPCB含有量が50ppmを超えることが判明した有機顔料」
の表が示され、
平成24年2月~平成25年4月に判明した17事例のピグメントイエロー等の事業者名、商品名、測定値、製造輸入量、主な用途等が示されている。(4頁)
(ア-4f)「3 副生する第一種特定化学物質に係る考え方
化審法においては、自然的作用により環境中では容易に分解せず(難分解性)、生物の体内に蓄積しやすく(高蓄積性)、人又は高次捕食動物に対して長期毒性を有するものであることから、ひとたび環境中に放出されると、環境汚染の進行を管理することが困難となり、人の健康等に被害を生じるおそれがある物質について第一種特定化学物質として指定し、その製造・輸入・使用について制限を行っている。
また、他の化学物質を製造する際に副生する第一種特定化学物質については、「利用可能な最良の技術(BAT: Best Available Technology)」を適用し、副生する第一種特定化学物質を「工業技術的・経済的に可能なレベル」まで低減すべきとの考え方に基づく運用を行っている(別紙6)。
PCBについても同様に、「副生ポリ塩化ビフェニルを含有する有機顔料の製造・輸入等について(行政指導)」(平成24年2月13日付け経済産業省製造産業局長。別紙5参照)において「化審法では、化学物質を製造する際に副生する第一種特定化学物質について、可能な限りその生成を抑制するとの観点から、「利用可能な最良の技術」(BAT: Best Available Technology)を適用し、第一種特定化学物質が副生成物として微量含まれる場合であって、当該副生成物による環境の汚染を通じた人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがなく、その含有割合が工業技術的・経済的に可能なレベルまで低減していると認められるときは、当該副生成物は第一種特定化学物質としては取り扱わないものとしている」という考え方を踏襲し、運用を行っている。」(5頁1~19行)
(ア-4g)「1.2 アゾ顔料(溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、βナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料)
アゾ顔料は古くから使用されている顔科であり、カラーインデックスに登録され構造が開示されている顔料のうち半数近くを占めているといわれ、有機顔料に限れば半数以上がアゾ顔料であるとされる。
アゾ顔料については、その構造等に基づき溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、βナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料に分類される。これらのうち、PCBが副生することが明らかとなった顔料はモノアゾイエロー、オレンジ顔料、ジスアゾ顔料、ピラロゾン顔料、ナフトールAS顔料である。」(9頁1~9行)
(ア-4h)「図II -2 アゾ顔料の構造(モノアゾイエロー、オレンジ顔料、ジスアゾ顔料、ピラソロン頻料、ナフトールAS顔料)」には、
<ジスアゾ顔料、ピラゾロン顔料の一般構造>として、
[図:0001406708000005.jpg]
との化学構造であって、
構造中に2つのアゾ基を有することや、
<ジスアゾ顔料の代表的な構造>として、Pigment Yellow 12の化学構造式が示されている。(9~10頁)
(ア-4i)「1.2.2 一般的な製法と副生PCBの生成過程
アゾ顔料は、原料をジアゾ化し、その生成物にカップリング成分を反応させ、更に熟成して顔料化し、ろ過・水洗、乾燥、粉砕を経て製造されている。図II-3にアゾ顔料の製造プロセスを示す。
PCBの副生は、主にカップリング反応及び熟成の過程において生じていると考えられる。具体的には、反応時に添加される化学物質や、未反応の化学物質が PCB副生の原因になっていると推察される。」(10頁下から1~7行)
(ア-4j)「図II -3 アゾ顔料の製造プロセス
(モノアゾイエロー、オレンジ顔料、ジスアゾ顔料、ピラゾロン顔料、ナフトールAS顔料)」として、ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスが示され、PCB副生がカップリング反応、顔料化(熟成)の工程で生じていることが表示されている。(11頁)
イ 甲号証記載の発明
イ-1 甲第1号証記載の発明
(ア)甲第1号証は、摘記(ア-1a)のとおり、衛生性に優れたジスアゾ顔料の製造方法に関する特許文献であって、請求項1を引用する請求項3に係る発明として、「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解する」「低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法」「で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料」の発明が記載され、摘記(ア-1b)の実施例1、2及び5には、請求項3に係る発明に対応した具体例が示されている。
(イ)したがって、甲第1号証には、請求項3に係る発明として、以下の発明が記載されているといえる。
「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料。」(以下「甲1発明」という。)
イ-2 甲第2号証記載の発明
(ア)甲第2号証は、摘記(ア-2a)のとおり、衛生性に優れたジスアゾ顔料の製造方法に関する特許文献であって、請求項1を引用する請求項2に係る発明として、「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理する」「低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法」「で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料」の発明が記載され、摘記(ア-2b)の実施例1~5には、請求項2に係る発明に対応した具体例が示されている。
(イ)したがって、甲第2号証には、請求項2に係る発明として、以下の発明が記載されているといえる。
「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料。」(以下「甲2発明」という。)
イ-3 甲第3号証記載の発明
(ア)甲第3号証は、摘記(ア-3a)のとおり、イエロートナーに関する特許文献であって、請求項1を引用する請求項2に係る発明として、「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリング反応させて得られるジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理してなるジスアゾ顔料(1)と、少なくとも結着樹脂とを溶融混練して成る」「静電荷像現像用イエロートナー」であって、「ジスアゾ顔料(1)が、アミン類の含有量が375ppm以下のジスアゾ顔料(2)である」「静電荷像現像用イエロートナー」の発明が記載されれているところ、摘記(ア-3c)では、上記請求項2のイエロートナーの構成成分であるアミン類の含有量が375ppm以下のジスアゾ顔料(2)に対応する具体例として、[合成例1]では、氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8部を加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得て、一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-m-キシリジド42.2部を30℃で仕込みカプラーのアルカリ溶液とし、水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカプラーのアルカリ溶液を滴下し、カプラーを酸析して下漬液を調整し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入してカップリングさせ、得られた顔料スラリーに臭素5部を添加後、70℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗し乾燥し、ジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー13)を含有芳香族アミン類が5ppmで得たこと、〔合成例2〕では、[合成例1]において、アセトアセト-m-キシリジドをアセトアセト-o-トルイジドに替えて使用し、ジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー14)を、同様に含有芳香族アミン類が5ppmで得たことが記載された具体例が示されている。
(イ)したがって、甲第3号証には、請求項2のジスアゾ顔料(2)に対応した具体例である[合成例1]及び〔合成例2〕に係る発明として、以下の発明が記載されているといえる。
「氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8部を加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得て、一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-m-キシリジド(又はアセトアセト-o-トルイジド)42.2部を30℃で仕込みカプラーのアルカリ溶液とし、水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカプラーのアルカリ溶液を滴下し、カプラーを酸析して下漬液を調整し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入してカップリングさせ、得られた顔料スラリーに臭素5部を添加後、70℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗し乾燥して得た、含有芳香族アミン類が5ppmのジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー13(又はC.I.ピグメントイエロー14))。」(以下「甲3発明」という。)
イ-4 甲第4号証記載の発明
(ア)甲第4号証は、有機顔料中に副生するPCBの工業技術的・経済的に低減可能なレベルに関する報告書であって、摘記(ア-4h)には、ジスアゾ顔料の代表的な構造として、Pigment Yellow 12の化学構造式が示され、摘記(ア-4i)には、アゾ顔料の「1.2.2 一般的な製法と副生PCBの生成過程」として、アゾ顔料は、原料をジアゾ化し、その生成物にカップリング成分を反応させ、更に熟成して顔料化し、ろ過・水洗、乾燥、粉砕を経て製造されていることが示され、摘記(ア-4j)には、「図II -3 アゾ顔料の製造プロセス」として、ジスアゾ顔料等の製造プロセスが、ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスを経ることが図示され、PCB副生がカップリング反応、顔料化(熟成)の工程で生じていることが表示されている。
(イ)したがって、甲第4号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスで製造された、PCBを副生物として含むPigment Yellow 12等のジスアゾ顔料。」(以下「甲4発明」という。)
ウ 本件特許発明1と甲第1~3号証記載の発明との対比・判断
(ア-1)本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
a 対比
甲1発明の「ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法で得られる芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料」は、芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であれば、第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であることは明らかであるから、本件特許発明1の「第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料」に該当するといえる。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満」であるのに対して、甲1発明は、そのような特定のない点。
相違点2-1:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであ」るのに対して、甲1発明においては、ジスアゾ顔料の種類が特定されていない点。
b 判断
(a)相違点1-1について検討する。
甲1発明は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、酸化剤の添加により過剰のアセトアニリド類を酸化的に分解することを特徴とする低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法を用いることで、芳香族アミン類の含有率が100ppm以下であるジスアゾ顔料を得たもので(摘記(ア-1a))、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近くして反応させれば、残留芳香族アミンの少ないジスアゾ顔料が得られるが、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、顔料品位を著しく低下させるという問題点があったという認識のもと、残留カップラー及びその分解物、特に、芳香族アミン類を低減させたジスアゾ顔料の製造方法を提供することを課題とすることが甲第1号証において、前提となっている(摘記(ア-1a))。
また、甲第1号証には、残留カップラーおよびその分解物である芳香族アミン類以外に、PCBの副生及び含有を問題としたり、除去を示す記載や示唆は全く存在しない。
さらに、芳香族アミン類の含有率が100ppm以下になれば、それに伴って、同時にジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となるという本願出願時の技術常識も存在しないのであるから、上記相違点1-1に関する「ジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となる」という事項は甲第1号証全体の記載を参照しても、記載されているに等しい事項であるとはいえない。
したがって、相違点1-1は、実質的な相違点である。
特許異議申立人は、化学的に不安定なテトラゾ成分が分解することで、ポリ塩化ビフェニル(PCB)が生成することを、権利者が審査段階での意見書で認めていることを前提として、甲第1号証では、テトラゾ成分に対して化学量論的に過剰のカップラー成分とを反応させて、テトラゾ成分を確実に消費しているので、「ジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となる」蓋然性が高い旨主張している(特許異議申立書26~27頁)。
しかしながら、化学的に不安定なテトラゾ成分が分解することで、ポリ塩化ビフェニル(PCB)が生成することが技術常識であることの証拠は提示されていないし、該技術的事項が技術常識であるかどうかはともかく、テトラゾ成分に対して化学量論的に過剰のカップラー成分とを反応させて、テトラゾ成分を消費することによって、PBC含有量が15ppm未満まで低減し得るとはかぎらず、甲第1号証で製造した甲1発明のジスアゾ顔料の「ジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となる」かどうかは記載されているに等しい事項であるとはいえない。
(b)よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。
(c)また、上述のとおり、甲1発明は、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近くして反応させれば、残留芳香族アミンの少ないジスアゾ顔料が得られるが、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、顔料品位を著しく低下させるという問題点があったという認識のもと、残留カップラーおよびその分解物、特に、芳香族アミン類を低減させたジスアゾ顔料の製造方法を提供することを課題とするもので、残留カップラーや芳香族アミン類を低減した結果のみが示されているのであるから、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする動機付けがあるとはいえない。
甲第2号証及び甲第3号証の記載を考慮しても、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、特定の添加剤により、過剰のアセトアセトアニリド類を処理する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法が記載されているだけで、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする動機付けがあるとはいえない。
また、甲第4号証の記載を考慮しても、ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスで製造された、PCBを副生物として含むPigment Yellow 12等のジスアゾ顔料や、副生するPCB含有量が50ppmを超えることが判明した有機顔料が複数あったという調査結果が示されているだけで、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする解決手段の記載は全くない。
したがって、甲第2~4号証の記載を考慮しても、芳香族アミン類の含有率が100ppm以下とした甲1発明において、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とすることには、動機付けがあるとはいえない。仮に、有害な規制物質となり得るPCBを低減する動機付けがあったとしても、芳香族アミン類の含有率を100ppm以下にし、かつPCBを15ppm未満とする手段は、甲第1~4号証をみても記載されておらず、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件特許明細書【0009】及び【0025】や実施例の【0065】~【0070】に示されたような、本件特許発明1の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、本件特許発明1は、相違点1-2を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ア-2)本件特許発明1と甲2発明との対比・判断
上記(ア-1)の対比と同様に、本件特許発明1と甲2発明とは、
「第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-2:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満」であるのに対して、甲2発明は、そのような特定のない点。
相違点2-2:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであ」るのに対して、甲2発明においては、ジスアゾ顔料の種類が特定されていない点。
上記(ア-1)の判断と同様に、本件特許発明1は、相違点2-2を検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明とはいえないし、甲2発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ア-3)本件特許発明1と甲3発明との対比・判断
a 対比
甲3発明の「氷水600部に35%塩酸30部と3,3’-ジクロロベンジジン25.3部を加え、続いて、亜硝酸ナトリウム13.8部を加えてテトラゾ化しテトラゾ溶液を得て、一方、水300部に水酸化ナトリウム17部とアセトアセト-m-キシリジド(又はアセトアセト-o-トルイジド)42.2部を30℃で仕込みカプラーのアルカリ溶液とし、水600部に80%酢酸22部を加えた後、先のカプラーのアルカリ溶液を滴下し、カプラーを酸析して下漬液を調整し、この下漬液にテトラゾ溶液を液面下から注入してカップリングさせ、得られた顔料スラリーに臭素5部を添加後、70℃に加熱し、60分間放置後、このスラリーを濾過、水洗し乾燥して得た、含有芳香族アミン類が5ppmのジスアゾ系顔料(C.I.ピグメントイエロー13(又はC.I.ピグメントイエロー14))」は、含有芳香族アミン類の含有率が5ppmであれば、第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であることは明らかであるから、本件特許発明1の「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであ」る、「第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料」に該当するといえる。
したがって、本件特許発明1と甲3発明とは、
「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満であるジスアゾ顔料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-3:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満」であるのに対して、甲3発明は、そのような特定のない点。
b 判断
(a)相違点1-3について検討する。
甲3発明は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリング反応させて得られるジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理してなるジスアゾ顔料(1)と、少なくとも結着樹脂とを溶融混練して成ることを特徴とする静電荷像現像用イエロートナーの製造過程で(摘記(ア-3a))、芳香族アミン類類の含有率が5ppmであるジスアゾ顔料を得たもので(摘記(ア-3c)摘記(ア-3d))、テトラゾ成分とカップラー成分とを化学量論量に近くして反応させれば、残留芳香族アミンの少ないジスアゾ顔料が得られるが、テトラゾ成分に由来する分解物が顔料の色相を汚し、顔料品位を著しく低下させるという問題点があったという認識のもと、製造時及び使用時に臭気を生じ難い静電荷像現像用イエロートナーを提供することを課題とすることが甲第3号証において、前提となっている(摘記(ア-3b))。
また、甲第3号証には、残留カップラーおよびその分解物である芳香族アミン類以外に、PCBの副生及び含有を問題としたり、除去を示す記載や示唆は全く存在しない。
さらに、含有芳香族アミン類が5ppmになれば、それに伴って、同時にジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となるという本願出願時の技術常識も存在しないのであるから、上記相違点1-3に関する「ジスアゾ顔料中のポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満となる」という事項は甲第3号証全体の記載を参照しても、記載されているに等しい事項であるとはいえない。
したがって、相違点1-3は、実質的な相違点である。
(b)よって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。
(c)また、上述のとおり、甲第3号証は、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリング反応させて得られるジスアゾ顔料スラリーに、ハロゲンを添加することによって過剰のアセトアセトアニリド類を処理してなるジスアゾ顔料(1)と、少なくとも結着樹脂とを溶融混練して成ることを特徴とする静電荷像現像用イエロートナーにおいて、製造時及び使用時に臭気を生じ難い静電荷像現像用イエロートナーを提供することを課題とするもので(摘記(ア-3a)摘記(ア-3b))、残留カップラーや芳香族アミン類、残留アミン類を低減した結果のみが示されているのであるから、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする動機付けがあるとはいえない。
甲第1号証及び甲第2号証の記載を考慮しても、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、特定の添加剤により、過剰のアセトアセトアニリド類を処理する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法が記載されているだけでポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする動機付けがあるとはいえない。
また、甲第4号証の記載を考慮しても、ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスで製造された、PCBを副生物として含むPigment Yellow 12等のジスアゾ顔料や、副生するPCB含有量が50ppmを超えることが判明した有機顔料が複数あったという調査結果が示されているだけで、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とする解決手段の記載は全くない。
したがって、甲第1~4号証の記載を考慮しても、芳香族アミン類の含有率が5ppmとした甲3発明において、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とすることには、動機付けがあるとはいえない。仮に、有害な規制物質となり得るPCBを低減する動機付けがあったとしても、芳香族アミン類の含有率を5ppm以下にし、かつPCBを15ppm未満とする手段は、甲第1~4号証をみても記載されておらず、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、本件特許明細書の【0009】及び【0025】や実施例の【0065】~【0070】に示されたような、本件特許発明1の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明とはいえないし、甲3発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明のいずれであるともいえないし、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、並びに甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、異議申立理由1及び異議申立理由2-1には理由がない。
(2)異議申立理由2-2について(甲第4号証を主引用例とした理由)
ア 本件特許発明1と甲4発明との対比・判断
a 対比
甲4発明の「ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスで製造された、」「Pigment Yellow 12等のジスアゾ顔料」は、本件特許発明1の「ジスアゾ顔料」に相当する。
また、甲4発明の「PCBを副生物として含む」ことは、本件特許発明1の「ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満」であることと、「ポリ塩化ビフェニルを副生物として含む」点で共通する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「ポリ塩化ビフェニルを副生物として含むジスアゾ顔料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-4:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満」であるのに対して、甲4発明は、ポリ塩化ビフェニル含有量が不明である点。
相違点2-4:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであ」るのに対して、甲4発明においては、ジスアゾ顔料の種類が「Pigment Yellow 12等」と特定されている点。
相違点3-4:ジスアゾ顔料が、本件特許発明1は、「第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満である」と特定されているのに対して、甲4発明においては、第一級芳香族アミン含有量は特定されていない点。
b 判断
(a)相違点1-4について検討する。
甲4発明の認定の根拠となった甲第4号証には、ジアゾ成分によりジアゾ化反応させ、カップリング成分と反応させ、顔料化(熟成)、ろ過・水洗、乾燥、粉砕、製品という製造プロセスで製造された、PCBを副生物として含むPigment Yellow 12等のジスアゾ顔料や、副生するPCB含有量が50ppmを超えることが判明した有機顔料が複数あったという調査結果が示されているだけで、実際にポリ塩化ビフェニル(PCB)含有量を低減し15ppm未満とする解決手段の記載は全くない。
また、甲第1~3号証には、上述のとおり、ベンジジン類のテトラゾ溶液と、該ベンジジン類に対して化学量論的に過剰のアセトアセトアニリド類を含むカップラー液とをカップリングさせて得られたジスアゾ顔料スラリーに、特定の添加剤により、過剰のアセトアセトアニリド類を処理する低アミン含有率のジスアゾ顔料の製造方法が記載されているだけであるから、甲第1~4号証の記載を考慮しても、甲4発明において、ポリ塩化ビフェニル含有量を低減し15ppm未満とすることを実現することは当業者といえども容易になし得る技術的事項ではない。
そして、本件特許明細書【0009】及び【0025】や実施例の【0065】~【0070】に示されたような、本件特許発明1の構成全体による、予測できない顕著な効果を奏しているのであるから、本件特許発明1は、相違点2-4、3-4を検討するまでもなく、甲4発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
特許異議申立人は、甲第4号証の公開時点で、PCB濃度が15ppm未満の相当数のジスアゾ顔料が市場に流通していたことは明らかで、甲第4号証に「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満であるジスアゾ顔料」の発明が記載されているといえる旨主張し、該主張を前提として、進歩性欠如の主張をしている(特許異議申立書28~29頁)。
しかしながら、甲第4号証には、副生ポリ塩化ビフェニルを含有する有機顔料の実態調査の結果は示されているものの、ジスアゾ顔料の具体的種類については、50ppmを超える有機顔料の問題となったものが示されているだけで、50ppmを超える有機顔料が存在する中、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を減少させる手法について開示がないのであるから、特許異議申立人の主張する「C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満であるジスアゾ顔料」が記載されているとはいえない。
したがって、進歩性欠如の主張は前提において失当であり、採用することはできない。
イ 異議申立理由2-2についてのまとめ
したがって、相違点2-4及び相違点3-4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、異議申立理由2-2には理由がない。
(3)異議申立理由1(新規性)及び異議申立理由2-1及び2-2(進歩性)のまとめ
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証(又は甲第2号証又は甲第3号証)に記載された発明とはいえず、甲第1号証(又は甲第2号証又は甲第3号証)に記載された発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、異議申立理由1、2-1及び2-2には理由がない。
2 異議申立理由3(実施可能要件)について
(1)判断
I 取消理由について 2(サポート要件に関する点)の(4)のとおり、発明の詳細な説明に記載があり、特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明の個々の発明特定事項に対応した説明が記載され、顔料、顔料組成物及び印刷インキの製造方法が示され、対応した具体例も示されているであるから、本件特許の出願時の技術常識も考慮すれば、当業者が過度な試行錯誤なく、請求項1~4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
(2)特許異議申立人の主張の検討
特許異議申立人は、請求項1~4に係る発明に関して、ポリ塩化ビフェニル含有量、第一級芳香族アミン含有量いずれにおいても下限値が規定されておらず、0ppmを含みうるところ、実施例において製造したジスアゾ顔料は、ポリ塩化ビフェニル含有量は最小で1ppmであり、第一級芳香族アミン含有量は最小で102ppmであるので、いずれも0ppmのジスアゾ顔料の製造方法が明示されておらず、当業者がどのように実施するか理解できず、発明の詳細な説明の記載が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない旨主張している。
しかしながら、請求項1の特定事項に不純物の下限がないからといって、完全に0ppmのものが形式的に特許請求の範囲に記載されているとはいえないし(分析装置の検出限界自体が一定の値を有しているため、技術常識を考慮して特許請求の範囲で想定されている範囲を理解すべきである。)、上述のとおり、【0069】の表1の実施例の結果を参考にPOEアルキルエステルやアルキルアミンの量を適切な範囲で増加させれば、PCB含有量やPAA含有量は減少すると予想でき、実施例がない範囲があるからといって、当業者が請求項1~4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(3)異議申立理由3(実施可能要件)の判断のまとめ
以上のとおり、異議申立理由3には理由がない。
3 異議申立理由4(サポート要件)について
(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲には、I 取消理由について 2(サポート要件に関する点)の(3)のとおり、各請求項に係る発明が記載されている。
(3)発明の詳細な説明の記載
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、I 取消理由について 2(サポート要件に関する点)の(4)のとおりの記載がある。
(4)判断
ア 本件特許発明の課題について
I 取消理由について 2(サポート要件に関する点)の(2)のとおり、本件特許発明2及び3についての課題は、同時に削減する方法は知られていない、有害な規制物質となり得る化学物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)及び第一級芳香族アミン(PAA)のそれぞれの含有量を15ppm未満及び700ppmに低減し、安全性の高いジスアゾ顔料組成物を提供することにあると認める。
また、本件特許発明4の課題は、上記顔料組成物を含む印刷インキを提供することにあると認める。
イ 本件特許発明2及び3に関して
上記I 取消理由について 2(サポート要件に関する点)の(4)のとおり、本件特許発明2及び3の各構成である、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー13、及びC.I.ピグメントイエロー14等のジスアゾ顔料に関する記載、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満である条件を満たすジスアゾ顔料に関する記載、ポリ塩化ビフェニル含有量が15ppm未満、且つ第一級芳香族アミン含有量が700ppm未満という条件を達成するための解決手段である炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミンに関する説明、前記アルキルアミンが、オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルオクタデシルアミンである実施例の記載があり、構成全体を採用することの技術的意義の一般的記載が存在するのであるから(【0006】【0007】【0025】)、本件特許発明2及び3の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明2及び3の課題を解決できることを認識できるといえる。
ウ 本件特許発明4に関して
本件特許発明4に関しても、【0033】~【0035】の印刷インキに関する記載についても併せて考慮すれば、本件特許発明2及び3と同様に、本件特許発明4の構成によって、当業者であれば上記本件特許発明4の課題を解決できることを認識できるといえる。
エ 特許異議申立人のサポート要件に関する主張(異議申立理由4)について
特許異議申立人は、請求項1~4に係る発明に関して、ポリ塩化ビフェニル含有量、第一級芳香族アミン含有量いずれにおいても下限値が規定されておらず、0ppmを含みうるところ、実施例において製造したジスアゾ顔料は、ポリ塩化ビフェニル含有量は最小で1ppmであり、第一級芳香族アミン含有量は最小で102ppmであるので、いずれも0ppmのジスアゾ顔料の製造方法が明示されておらず、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである旨主張している。
しかしながら、請求項1の特定事項に不純物の下限がないからといって、完全に0ppmのものが形式的に特許請求の範囲に記載されているとはいえないし(分析装置の検出限界自体が一定の値を有しているため、技術常識を考慮して特許請求の範囲で想定されている範囲を理解すべきである。)、上述のとおり、【0069】の表1の実施例の結果を参考にPOEアルキルエステルやアルキルアミンの量を適切な範囲で増加させれば、PCB含有量やPAA含有量は減少すると予想できる。
そして、実施例がない範囲があるからといって、「炭素数8以上のアルキル基を有するポリ(オキシエチレン)アルキルエステル及び炭素数8以上のアルキル基を有するアルキルアミン」を併用することが「発明の課題を解決するための手段」であり、その発明の課題解決手段が反映されていないとか、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(5)異議申立理由4(サポート要件)の判断のまとめ
以上のとおり、異議申立理由4には理由がない。
4 特許異議申立人の意見書の主張について
(1)特許異議申立人は、意見書2~3頁(1-2)(1-3)において、本件特許発明1のPOEアルキルエステル等の残存物がppmオーダーまで除去された、ジスアゾ顔料を具体的に製造した例がないので、発明の詳細な説明の記載が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない旨主張している。
しかしながら、すでに、取消理由1の判断で上述したとおり、本件特許発明1は、顔料と不純物を特定事項とした「ジスアゾ顔料」であり、本件特許発明2は、顔料と不純物と特定のアルキルエステル及びアルキルアミンを特定事項とした「ジスアゾ顔料組成物」であると理解できるのであるから、本件特許発明1として、発明特定事項になっていないPOEアルキルエステル等がppmオーダーでなければ、実施できていないとはいえず、本件特許明細書【0028】の記載も参酌すれば、合理的に本件特許発明1のジスアゾ顔料の効果を奏するものが製造できているといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(2)特許異議申立人は、意見書3~4頁(2-1)(2-2)において、本件特許発明1のPOEアルキルエステル等の残存物がppmオーダーまで除去された、ジスアゾ顔料が記載されていないので、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである旨主張している。
しかしながら、すでに、取消理由1の判断で上述したとおり、本件特許発明1は、顔料と不純物を特定事項とした「ジスアゾ顔料」であり、本件特許発明2は、顔料と不純物と特定のアルキルエステル及びアルキルアミンを特定事項とした「ジスアゾ顔料組成物」であると理解できるのであるから、本件特許発明1として、発明特定事項になっていないPOEアルキルエステル等がppmオーダーでなければ、本件特許発明1のジスアゾ顔料でないとはいえず、本件特許明細書【0028】の記載も参酌すれば、合理的に本件特許発明1のジスアゾ顔料の効果を奏するジスアゾ顔料が記載されているといえる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
5 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
したがって、異議申立理由1(新規性)、異議申立理由2-1及び2-2(進歩性)、異議申立理由3(実施可能要件)、異議申立理由4(サポート要件)に関する特許異議申立理由には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700494