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特許異議申立

2023-700416

窒化ホウ素粉末、及び窒化ホウ素粉末の製造方法

審判番号
2023-700416
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-533206
登録番号
7165287
請求日
2023年04月24日
審決日
2023年06月27日
公報発行日
2023年07月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】中塚 岳
  • 【異議申立人】安藤 宏
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1652.121-Y (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7165287号発明「窒化ホウ素粉末、及び窒化ホウ素粉末の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7165287号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7165287号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)9月27日(優先権主張 令和2年9月30日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和4年10月25日にその特許権の設定登録がされ、同年11月2日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、2に係る特許に対し、令和5年4月24日に特許異議申立人 安藤 宏(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第7165287号の請求項1、2の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1、2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末であって、 純度が98.5質量%以上であり、溶出性不純物濃度が700ppm以下であり、 前記一次粒子の黒鉛化指数が2.3以下であり、 平均粒子径が7~100μmであり、 前記溶出性不純物濃度は、医薬部外品原料規格2006に準拠して測定される溶出ホウ素濃度と、以下の方法によって測定されるCu2+ 、Ag+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Mg2+ 、NH4+ 、F- 、Cl- 、Br- 、及びNO3- の合計量である特定イオン濃度と、の合計量であり、 前記特定イオン濃度は、前記窒化ホウ素粉末5gと純水25mLとを外装がステンレス製であり、内装がテフロン(登録商標)製である耐圧容器中に測り取り、85℃で20時間撹拌することによって、イオンを溶出させた後、ろ過によって得られたろ液を対象として、イオンクロマトグラフ及びICP分析装置を用いた分析を行うことで測定される値である、窒化ホウ素粉末。 【請求項2】 比表面積が0.8~8.0m2 /gである、請求項1に記載の窒化ホウ素粉末。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第6号証を提出し、以下の理由により、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1、2は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2019-218254号公報 甲第2号証:特開2019-182737号公報 甲第3号証:特開2015-212217号公報 甲第4号証:特開平11-26661号公報 甲第5号証:特開2018-104253号公報 甲第6号証:特開2019-116401号公報 (なお、申立人は、甲第1号証に記載された発明を主たる発明としている。) 第4 申立理由1(進歩性)について 1 甲号証の記載事項、甲号証に記載された発明等 (1)甲第1号証(特開2019-218254号公報) ア 本件特許出願の優先日前に公開された甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素凝集体を含み、そして全ホウ素中の11Bの存在比が90%以上であり、JIS-K-6217-4に準拠して測定して算出される最大トルクが0.20~0.50Nm、DBP吸収量が50~100ml/100g、及び、タップ嵩密度が0.66~0.95g/cm3であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項2】 比表面積が1.3~7.0m2/gの請求項1記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項3】 湿式レーザー回折粒度分布法における粒度分布の累積体積頻度90%の粒径が50~150μmである請求項1または2に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項4】 窒化ホウ素純度が99.95質量%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。」 ・・・ 【請求項9】 11B濃縮含酸素ホウ素化合物、カーボン源、含酸素カルシウム化合物および11B濃縮炭化ホウ素を、11B濃縮含酸素ホウ素化合物のB換算質量とカーボン源のC換算質量の比B/C(元素比)が0.75~1.05、11B濃縮含酸素ホウ素化合物のB2O3換算質量とカーボン源のC換算質量の合計量100質量部に対して含酸素カルシウム化合物がCaO換算で5~20質量部、そして11B濃縮含酸素ホウ素化合物、カーボン源および含酸素カルシウム化合物の、それぞれB2O3、CおよびCaO換算質量の合計量100質量部に対して上記11B濃縮炭化ホウ素が10~45質量部、11B濃縮含酸素ホウ素化合物および11B濃縮炭化ホウ素に含まれる全ホウ素中の11Bの濃縮度が90%以上となる割合で混合し、該混合物を窒素雰囲気下にて1700~2100℃の温度に加熱して、還元窒化することを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。」 「【0044】 本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の比表面積は、1.3~7.0m2/gであることが好ましく、1.6~6.0m2/gであればより好ましく、2.0~5.0m2/gであれば更に好ましい。即ち、該比表面積を7.0m2/g以下とすることによって、絶縁放熱シート内での熱抵抗を特に抑制することができ、且つ、微粒子の飛散を軽減してハンドリング性を向上できる。一方、比表面積を1.3m2/g以上とすることによって、樹脂への充填性に特に優れた六方晶窒化ホウ素粉末を得ることができる。 【0045】 本発明において、六方晶窒化ホウ素粉末の比表面積は、後述する実施例に示すように、BET1点法によって測定し、例えばマウンテック社製:Macsorb HM model-1201(商品名)によって確認することができる。」 「【0049】 また、本発明において、六方晶窒化ホウ素粉末の純度は、後述する実施例に示すように、蛍光X線分析法によって測定し、例えば蛍光X線分析装置としては、Rigaku社製ZSX Primus2(商品名)によって確認することができる。 【0050】 本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の純度は、好ましくは99.95質量%以上であり、より好ましくは99.97質量%以上である。本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、有機もしくは無機バインダーを必須成分としないため、かかる純度を比較的容易に達成できる。窒化ホウ素の純度を、99.95質量%以上とすることによって、不純物に起因する樹脂の硬化阻害や熱伝導率、絶縁耐力低下等が起こり難い窒化ホウ素粉末とすることができる。ここでいう六方晶窒化ホウ素粉末純度とは、上述した蛍光X線分析法により、測定した六方晶窒化ホウ素粉末の測定元素中、B及びN以外の不純物元素の含有質量割合を100から引いた値である。」 「【0120】 【表2】 [図:0001399437000001.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アにおける【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】の記載によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「六方晶窒化ホウ素凝集体を含み、そして全ホウ素中の11Bの存在比が90%以上であり、JIS-K-6217-4に準拠して測定して算出される最大トルクが0.20~0.50Nm、DBP吸収量が50~100ml/100g、及び、タップ嵩密度が0.66~0.95g/cm3であり、 湿式レーザー回折粒度分布法における粒度分布の累積体積頻度90%の粒径が50~150μmであり、 窒化ホウ素純度が99.95質量%以上である、六方晶窒化ホウ素粉末。」 (2)甲第2号証(特開2019-182737号公報) 本件特許出願の優先日前に公開された甲第2号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 単粒子の平均アスペクト比が、1.5~10の範囲にあり、0.5mol/Lの濃度の硫酸水溶液に25℃で120分浸漬後における、溶出ホウ素量が、B2O3に換算して100ppm以下、溶出カルシウム量が50ppm以下、溶出ナトリウム量および溶出銅量がそれぞれ5ppm以下、160℃の水に30時間浸漬後の溶出塩素量が10ppm以下、更に、含水率が0.1質量%以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項2】 前記六方晶窒化ホウ素粉末の、平均粒径が5~20μmの範囲にある、請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項3】 湿度90%、温度50℃の雰囲気下で、10日間放置後の前記溶出ホウ素量の増加率が、10%以下である請求項1又は2に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項4】 含酸素ホウ素化合物、カーボン源および含酸素カルシウム化合物を含む原料混合物を窒素雰囲気下にて1700~2200℃の温度に加熱して還元窒化することにより、平均アスペクト比が10以下の粗六方晶窒化ホウ素粉末を製造した後、上記粗六方晶窒化ホウ素粉末を塩酸水溶液にて洗浄し、次いで、25℃における比抵抗が0.2MΩ・cm以上の純水にて洗浄し、更に、洗浄後の六方晶窒化ホウ素粉末を20kPaA以下の圧力下、温度140℃~500℃で、8時間以上加熱処理することを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。」 「【0008】 一方、六方晶窒化ホウ素粉末において、可溶性ホウ素も、前記樹脂に充填した際の絶縁耐性を低下させるために問題となる。かかる可溶性ホウ素は、六方晶窒化ホウ素粉末の乾燥時に、窒化ホウ素が加水分解を起こして生成することが報告されている(特許文献2)。上記特許文献2は、主に、立方晶窒化ホウ素の原料としての六方晶窒化ホウ素粉末を提供するものであるが、可溶性ホウ素の生成を防止するために、100℃以下の低温、実施例においては、80℃で長時間乾燥することが記載されている。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 従って、本発明の目的は、その製造方法に起因して、高純度化が困難な、低アスペクト比の六方晶窒化ホウ素粉末において、粒子表面に存在するカルシウム等の金属元素や塩素等の不純物および可溶性ホウ素が著しく低減され、また、含有する水分量も極めて少ない六方晶窒化ホウ素粉末を提供することにある。」 「【0023】 しかも、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、上記低アスペクト比を有しているにも拘わらず、カルシウム等の金属元素や塩素などの不純物量が極めて少ないこと、更には、気泡を生成する原因となる水分も低く抑えられることから、前記樹脂成形体の絶縁耐性の低下を更に効果的に抑制することが可能となる。 また、本発明の製造方法によれば、反応によって得られる特定のアスペクト比を有する粗六方晶窒化ホウ素粉末について、特定の洗浄方法、特定の加熱処理による乾燥方法を採用することにより、乾燥後の再加熱等の複雑な工程を経ることなく、前記特性を有する六方晶窒化ホウ素粉末を工業的に有利に製造することが可能である。」 「【発明を実施するための形態】 【0024】 (六方晶窒化ホウ素粉末) 本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、 (1)単粒子の平均アスペクト比が、1.5~10の範囲にあること、 0.5mol/Lの濃度の硫酸水溶液に25℃で120分浸漬後における (2)溶出ホウ素量が、B2O3に換算して100ppm以下であること、 (3)溶出カルシウム量が50ppm以下であること、 (4)溶出ナトリウム量および溶出銅量がそれぞれ5ppm以下であること、 160℃の水に30時間浸漬後における (5)溶出塩素量が10ppm以下であること、 (6)含水率が0.1質量%以下であること、 の全ての特性を満足することを特徴とする。以下、各特性について説明する。 ・・・ 【0028】 本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、後述する製造方法において、洗浄後に得られる六方晶窒化ホウ素粉末に対して、特定の加熱処理による乾燥方法を適用することにより、乾燥時における可溶性ホウ素の原因となるB2O3の生成量を極めて低く抑制でき、0.5mol/Lの濃度の硫酸水溶液に、25℃で120分浸漬後の溶出ホウ素量が、B2O3に換算して100ppm以下、特に、50ppm以下という極めて低い値を達成することができる。そして、かかる値を満足することにより、六方晶窒化ホウ素粉末を樹脂に充填して得られる樹脂成形体の絶縁耐性の低下を極めて効果的に抑制することができる。 ・・・ 【0034】 本発明において、前記(3)~(5)に記載の不純物濃度を満足することにより、六方晶窒化ホウ素粉末を樹脂に充填して得られる樹脂成形体の絶縁耐性の低下を極めて効果的に抑制することができるが、前記溶出カルシウム量は、40ppm以下であることが好ましく、溶出ナトリウム量および溶出銅量は、それぞれ3ppm以下であることが好ましい。また、前記溶出塩素量は5ppm以下であることが好ましい。 ・・・ 【0050】 (酸洗浄) 本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法において、還元窒化により得られた粗六方晶窒化ホウ素粉末は、塩酸水溶液にて洗浄し、次いで、25℃における比抵抗が0.2MΩ・cm以上の純水にて洗浄することにより清浄化される。 【0051】 上記塩酸水溶液による洗浄において、使用する水溶液中の塩酸濃度は、10~15質量%が好ましく、粗六方晶窒化ホウ素粉末1g当たり、10ccの塩酸水溶液と接触せしめることが、粗六方晶窒化ホウ素粉末に含まれる未反応の含ホウ素化合物、未反応の含カルシウム化合物等のカルシウム成分、その他金属成分を十分除去するために好ましい。また、洗浄温度は、20~60℃、洗浄時間は、12~15時間が適当である。好ましい態様として、撹拌翼等を用いて撹拌しながら洗浄する態様が挙げられる。 【0052】 酸水溶液により洗浄後、六方晶窒化ホウ素粉末は、塩酸水溶液を可及的に、具体的には、塩素濃度で10ppm以下となるまで除去して純水による洗浄に供することが好ましい。上記塩酸水溶液の除去方法は、遠心分離等による脱液による除去方法、水による予備洗浄による除去方法などが適宜実施される。 【0053】 また、純水による洗浄において、使用する水は、25℃における比抵抗が0.2MΩ・cm以上、好ましくは、1MΩ・cm以上の純水であることが必要である。即ち、上記水の比抵抗が上記範囲より小さい場合、六方晶窒化ホウ素粉末に付着している不純物成分を十分に除去することができない。洗浄は、六方晶窒化ホウ素粉末1g当たり、300ccの純水と接触せしめることが好ましく、また、洗浄温度は、20~60℃が適当である。洗浄に使用する水として、例えば水道水などの比抵抗が0.1MΩ・cmを下回る水を使用した場合、水道水中に含まれる塩素やナトリウムおよび銅などが六方晶窒化ホウ素粉末に残存する虞があるため、適切ではない。 【0054】 純水による洗浄後、六方晶窒化ホウ素粉末は、濾過により可及的に脱水を行うことが好ましい。具体的には、濾過後の含水率が40wt%以下になるまで脱水されることが好ましい。濾過方法には、吸引による減圧濾過、遠心分離による濾過などが適宜実施される。 【0055】 前記還元窒化反応において、六方晶窒化ホウ素粉末は、平均アスペクト比が5以下に調整されているため、上記洗浄による浄化作用が極めて効果的に作用し、従来の六方晶窒化ホウ素粉末では達成できない高純度の六方晶窒化ホウ素粉末を得ることができる。 【0056】 (乾燥) 本発明において、上記洗浄後の六方晶窒化ホウ素粉末は、20kPaA以下、特に10kPaA以下、好ましくは、5kPaA以下の圧力下、温度140℃~500℃、好ましくは、150~250℃で、8時間以上、特に、10時間以上、好ましくは、10~20時間加熱処理して乾燥することが、溶出ホウ素量が抑制され、耐水性に富む六方晶窒化ホウ素粉末を得るために必要である。 【0057】 なお、上記濾過工程により、含水率を40wt%以下にすることにより、乾燥時の水蒸気分圧を低下させ、可溶性ホウ素の生成を抑制するために効果的である。 【0058】 更に、前記加熱処理において、加熱温度が100℃に到達してから、六方晶窒化ホウ素 粉末の含水量が5質量%以下になるまでの時間が2時間以内となるように加熱を行うこと が、得られる六方晶窒化ホウ素粉末の可溶性ホウ素をより低減することができ、好ましい 。 」 (3)甲第3号証(特開2015-212217号公報) 本件特許出願の優先日前に公開された甲第3号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素凝集粒子と、平均アスペクト比が3~25、平均粒径が4~30μmの六方晶窒化ホウ素単粒子とを含み、上記窒化ホウ素凝集粒子100質量部に対する窒化ホウ素単粒子の質量部が10~50質量部、BET比表面積が0.5~6.0m2/g、JISK5101-13-1に基づいて測定される吸油量が100g/100g以下であり、且つ、CaB6の含有量が500ppm以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項2】 請求項1記載の六方晶窒化ホウ素単粒子の平均アスペクト比が3~5である請求項1記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項3】 ホウ素化合物、カーボン源および含酸素カルシウム化合物を原料とする還元窒化法により得られたものである、請求項1又は2に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか一項に記載の六方晶窒化ホウ素粉末を充填してなる樹脂組成物。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、絶縁放熱材料等、熱伝導性が要求される用途に好適である、新規な六方晶窒化ホウ素粉末及びその製造方法に関する。」 「【0032】 また、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、含酸素カルシウム化合物の使用により、高い結晶性を以て得られ、結晶性を示す黒鉛化指数(GI値)が1.7以下という良好な値を示す。GI値は、六方晶窒化ホウ素粉末の結晶性の指標であり、結晶性が高いほどこの値が小さくなる。完全に結晶化(黒鉛化)した六方晶窒化ホウ素粉末ではGI値が1.6になるが、高結晶性でかつ粒子が充分に成長した六方晶窒化ホウ素粉末の場合、粉末の配向によりGI値はさらに小さくなる。」 「【0061】 7)六方晶窒化ホウ素粉末のBET比表面積及び吸油量 得られた六方晶窒化ホウ素粉末のBET比表面積は窒素ガス吸着BET一点法により測定し、吸油量はJIS K 5101-13-1に基づいて測定した。」 (4)甲第4号証(特開平11-26661号公報) 本件特許出願の優先日前に公開された甲第4号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素の鱗片状の一次粒子が配向せずに集合してなる松ボックリ状窒化ホウ素を付加反応型液状シリコーン固化物に含有させてなることを特徴とする放熱スペーサー。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高柔軟性を有し、電子機器に組み込んだ時の発熱性電子部品への負荷を小さくした放熱スペーサーに関するものである。」 「【0012】本発明で使用される松ボックリ状窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子が凝集してその粒径が45μm以上となったものを20重量%以上含有しているものであり、高結晶性で配向性が殆どないことが特徴である。このような松ボックリ状窒化ホウ素の結晶性と配向性の評価は、粉末X線回析法によって行うことができる。 【0013】すなわち、結晶性は粉末X線回折法による黒鉛化指数(GI=GraphitizationIndex)の程度で評価することができ、そのGIはX線回折図上の(100)、(101)、(102)回折線の積分強度(面積)から、GI=[面積{(100)+(101)}]/[面積(102)]、で求めることができる。 【0014】結晶性が高くなるほどGIは小さくなり、配向性がなく極めて結晶性の高い窒化ホウ素ではGI=1.4~1.6である。しかしながら、実際の粉末X線回折測定においては、配向の影響を完全に除去することができないため、GIはこれよりも小さくなることがある。本発明で使用される松ボックリ状窒化ほう素粉末のGIは高結晶性であるため、1.0~2.0である。」 (5)甲第5号証(特開2018-104253号公報) 本件特許出願の優先日前に公開された甲第5号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 以下の(1)及び(2)を満たす六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集し、平均粒子径が10μm以上200μm以下、かつ凝集体の圧壊強度が1MPa以上4MPa以下で、アルカリ金属の含有率が10ppm以下である六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体。 (1)粉末X線回折法により算出した黒鉛化指数が1.8以上2.2以下である。 (2)長辺長さが1μm未満の割合が25~50%、1μm以上5μm以下の割合が50~75%かつ5μmを超える粒子の割合が5%以下である。 【請求項2】 アルカリ金属がナトリウムまたはリチウムである、請求項1記載の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体。 【請求項3】 ホウ酸メラミンを、400℃以上1200℃以下、1時間以上5時間以下の窒素雰囲気下で一次焼成して一次焼成品を得た後、前記一次焼成品100質量部に対して、アルカリ金属ホウ酸塩を5質量部以上15質量部以下添加し、さらに1900℃以上2200℃以下の窒素雰囲気下で二次焼成する、請求項1または2記載の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体の製造方法。 【請求項4】 請求項1または2記載の六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を含む樹脂組成物。 【請求項5】 請求項4の樹脂組成物を含むプリント配線板の絶縁層。 【請求項6】 請求項4の樹脂組成物を含む熱インターフェース材。」 「【0020】 <黒鉛化指数> 黒鉛化指数(GI、Graphitization Indexなどともいう)は、元来黒鉛サンプルの結晶性の程度を示す指標値であり(J.Thomas,et.al,J.Am.Chem.Soc.84,4619(1962))、本発明では、これを六方晶窒化ホウ素に適用した値である。即ち、六方晶窒化ホウ素一次粒子を粉末X線回折法で測定したスペクトル図における、(100)面、(101)面及び(102)面による各回折ピークの積分強度、即ち各回折ピークとそのベースラインに囲まれる面積値(単位は任意)を、それぞれS100、S101、S102を求め、GI=(S100+S101)/S102の式に代入して算出した値である。 完全に結晶化したものでは、GIの値が1.60になるとされているが、高結晶性でかつ粒子が十分に成長した鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の場合、粒子が配向しやすいため完全に結晶化したGIはさらに小さくなる。すなわち、GIは鱗片形状の六方晶窒化ホウ素粉末の結晶性の指標であり、この値が小さいほど結晶性が高い。 本発明においては、凝集させる六方晶窒化ホウ素一次粒子のGIは、1.8~2.2であることが好ましい。GIが2.2より大きいと、六方晶窒化ホウ素一次粒子の結晶性が低いため、高熱伝導率を得ることができない場合がある。また、GIが1.8より小さいと、鱗片形状が発達しすぎているため、凝集構造の維持が難しくなる場合があり、粒子強度が低下する恐れがある。」 (6)甲第6号証(特開2019-116401号公報) 本件特許出願の優先日前に公開された甲第6号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素の一次粒子の凝集体を含む六方晶窒化ホウ素粉末であって、 平均一次粒子径が0.5μm以上10.0μm未満、50%体積累積粒径D50が10.0~150.0μm、BET比表面積が1.0m2/g以上10.0m2/g未満、嵩密度が0.50~2.00g/cm3であり、 体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において、粒径1.0μm以上20.0μm未満の範囲にピークAを有し、粒径20.0μm以上200.0μm未満の範囲にピークBを有し、 該六方晶窒化ホウ素粉末を下記条件1にて3分間超音波処理したときの、処理前の前記ピークAの高さa1と前記ピークBの高さb1の比(a1/b1)が0.07~0.80、処理後の前記ピークAの高さa2と前記ピークBの高さb2の比(a2/b2)が0.40~2.00である、六方晶窒化ホウ素粉末。 [条件1]胴内径40mm、高さ60mmの50mLガラス製ビーカーに、該六方晶窒化ホウ素粉末の0.12質量%の20℃の水分散液50mLを入れ、超音波発生機の振動子のチップの先端を前記ビーカーの中央部の底面から1cmの高さにセットして、出力150W、発振周波数19.5kHzで超音波処理する。」 「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明は、h-BNの一次粒子の凝集体を含むh-BN粉末について、所定の粒度分布を有し、かつ、前記凝集体が所定の凝集強度を有するものであることにより、樹脂等の絶縁性放熱材のフィラーとして用いた場合に、該絶縁性放熱材の放熱性及び絶縁性が向上することを見出したことに基づくものである。」 「【0019】 (50%体積累積粒径D50) 前記h-BN粉末は、D50が10.0~150.0μmであり、好ましくは20.0~120.0μm、より好ましくは30.0~100.0μmである。D50が10.0μm以上であることにより、前記凝集体が十分な凝集強度を有するものとすることができる。また、150.0μm以下であることにより、前記樹脂等の熱伝導率及び耐電圧を高めるのに十分な充填率とすることができる。 なお、本発明で言うD50とは、レーザー回折散乱法によって測定された値である。具体的には、下記実施例に記載のマイクロトラック(登録商標)粒度分布測定装置で測定した値である。」 「【0073】 (h-BN原料粉、炭化ホウ素及びh-BN粉末の50%体積累積粒径D50) 粉末試料0.06g、水(20℃)50g、及び分散剤として洗剤(「ママレモン」、ライオン株式会社製)0.005gを含む、粉末試料濃度0.12質量%の分散液を調製した。前記分散液をマグネティックスターラーで400rpmで撹拌しながら、レーザー回折散乱法による粒度分布測定装置(「マイクロトラック(登録商標)MT3300EXII」、日機装株式会社製)にて粒度分布を測定し、D50を求めた。」 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「六方晶窒化ホウ素凝集体を含」む「六方晶窒化ホウ素粉末」は、本件発明1の「六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末」に相当する。 イ 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末。」 <相違点> 相違点1:本件発明1は、「純度が98.5質量%以上」であるのに対し、甲1発明は、「窒化ホウ素純度が99.95質量%以上」である点。 相違点2:本件発明1は、「医薬部外品原料規格2006に準拠して測定される溶出ホウ素濃度と、以下の方法によって測定されるCu2+ 、Ag+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Mg2+ 、NH4+ 、F- 、Cl- 、Br- 、及びNO3- の合計量である特定イオン濃度と、の合計量」である「溶出性不純物濃度が700ppm以下」であり、「前記特定イオン濃度は、前記窒化ホウ素粉末5gと純水25mLとを外装がステンレス製であり、内装がテフロン(登録商標)製である耐圧容器中に測り取り、85℃で20時間撹拌することによって、イオンを溶出させた後、ろ過によって得られたろ液を対象として、イオンクロマトグラフ及びICP分析装置を用いた分析を行うことで測定される値である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点3:本件発明1は、「黒鉛化指数が2.3以下」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点4:本件発明1は、「平均粒子径が7~100μm」であるのに対し、甲1発明は、「湿式レーザー回折粒度分布法における粒度分布の累積体積頻度90%の粒径が50~150μm」である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み相違点2から検討する。 相違点2に係る本件発明1の構成、すなわち、「医薬部外品原料規格2006に準拠して測定される溶出ホウ素濃度と、以下の方法によって測定されるCu2+ 、Ag+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Mg2+ 、NH4+ 、F- 、Cl- 、Br- 、及びNO3- の合計量である特定イオン濃度と、の合計量」である「溶出性不純物濃度が700ppm以下」であり、「前記特定イオン濃度は、前記窒化ホウ素粉末5gと純水25mLとを外装がステンレス製であり、内装がテフロン(登録商標)製である耐圧容器中に測り取り、85℃で20時間撹拌することによって、イオンを溶出させた後、ろ過によって得られたろ液を対象として、イオンクロマトグラフ及びICP分析装置を用いた分析を行うことで測定される値である」ことは、甲第1号証~甲第6号証のいずれにも記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、その他の相違点についてするまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、相違点2について、特許異議申立書の17ページ8行~18ページ14行において、以下の主張をしている。 本件発明では、請求項3及び明細書【0073】~【0076】に記載されているように、六方晶窒化ホウ素粉末(原料粉末)を「酸と接触させて湿式処理」した後、「洗浄液の電気伝導度が0.7mS/m以下となるまで、水を含む溶液で洗浄」することによって溶出性不純物を除去し、その結果として本件発明1で規定する「溶出性不純物濃度」(700ppm以下)を実現しているのに対し、甲第1号証には「溶出性不純物濃度」が明示されていないものの、【0001】に記載されているように甲1発明は窒化ホウ素粉末を樹脂に充填した際の絶縁耐力を向上させることを課題としており、【0050】には窒化ホウ素の純度を高めることによって不純物に起因する樹脂の硬化阻害や熱伝導率、絶縁耐力低下などが起こり難い窒化ホウ素粉末とすることも記載されているのに加えて【0074】~【0076】には、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸を用いて洗浄することで不純物を除去し、次いで、純水を用いて洗浄することも記載されている。 さらに、甲第2号証には、溶出ホウ素だけでなく、カルシウム、ナトリウムなどの金属元素や塩素などの不純物元素の溶出量を低減することによって樹脂に充填した際の絶縁耐性の低下を抑制することが記載されており、(【0008】、【0012】、【0023】、【0024】、【0028】)、甲第2号証では、前記不純物元素の溶出量を低減するために、塩酸水溶液による洗浄と、純水による洗浄を行っている(特許請求の範囲、明細書の【0050】~【0052】)。 してみれば、上述したように甲1発明においても絶縁耐力の向上を課題としており、酸と純水による洗浄を行っているのであるから、甲第2号証の前記記載を参考に、酸と純水による洗浄により溶出ホウ素量だけでなく他の元素の溶出量も低減することは当業者が容易に想到し得ることといえ、その際に、溶出性不純物濃度をどの程度まで低減するかは要求される水準に応じて当業者が適宜調整し得る事項であり、溶出性不純物濃度を本件発明1の範囲内とすることに格別の困難性もない。 イ 検討 本件発明1の「溶出性不純物濃度」は、「医薬部外品原料規格2006に準拠して測定される溶出ホウ素濃度」と、「Cu2+ 、Ag+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Mg2+ 、NH4+ 、F- 、Cl- 、Br- 、及びNO3- の合計量である特定イオン濃度と、の合計量」であるところ、甲第2号証(【請求項1】、【0024】、【0034】参照)には、溶出ホウ素だけでなく、カルシウム、ナトリウム及び塩素の溶出量を低減することによって樹脂に充填した際の絶縁耐性の低下を抑制することが記載されているものの、本件発明1における「特定イオン」、すなわち、「Cu2+ 、Ag+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Mg2+ 、NH4+ 、F- 、Cl- 、Br- 、及びNO3-」の合計量を低減させることは記載されていない。 また、本件特許の請求項3、明細書の【0073】~【0077】に記載の湿式処理、洗浄及び加熱処理の条件と、甲第2号証の【請求項4】、【0050】~【0052】、【0056】~【0058】に記載の酸洗浄、純水による洗浄及び乾燥(加熱処理)の各処理条件は異なっているから、甲第2号証において、本件発明1の全ての「特定イオン」の溶出量が低減できるとはいえない。 したがって、相違点2に係る本件発明1に係る構成は、甲1発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得るものとはいえない。 よって、申立人の上記アの主張は採用できない。 (4)小括 以上から、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証~甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由1は、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700416

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