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特許異議申立

2020-700788

窒化ホウ素塊状粒子、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物

審判番号
2020-700788
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-543782
登録番号
6682644
請求日
2020年10月14日
審決日
2022年02月01日
公報発行日
2022年02月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】中塚 岳
  • 【異議申立人】安藤 宏
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 関根 崇
分類
P1651.113-Y (C01B) / P1651.121-Y (C01B) / P1651.536-Y (C01B) / P1651.537-Y (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6682644号発明「窒化ホウ素塊状粒子、その製造方法及びそれを用いた熱伝導樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6682644号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6682644号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)8月31日(優先権主張 平成28年10月7日 平成28年11月25日)を国際出願日として出願され、令和2年3月27日にその特許権の設定登録がされ、同年4月15日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~11に係る特許について、特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続きが行われた。 令和 2年10月14日 :特許異議申立人安藤宏(以下、「申立人」と いう。)による請求項1~11に係る特許に 対する特許異議の申立て 令和 3年 3月23日付け:取消理由通知 同年 5月25日 :特許権者による意見書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 以下の(A)~(C)の特徴を有する、一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素からなる窒化ホウ素粉末。 (A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm以上3.5μm以下で、標準偏差が1.2μm以下であること。 (B)塊状窒化ホウ素の塊状粒子における累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であり、かつ累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であること。 (C)窒化ホウ素粉末の平均粒径が20μm以上100μm以下であること。 【請求項2】 前記(C)窒化ホウ素粉末の平均粒径が30μm以上80μm以下である請求項1記載の窒化ホウ素粉末。 【請求項3】 以下の(a)及び(b)を含む窒化ホウ素粉末の製造方法。 (a)平均粒径が6μm以上55μm以下で炭素量18%以上21%以下の炭化ホウ素を加圧窒化焼成すること、及び (b)加圧窒化焼成後の脱炭結晶化工程において、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min以下で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超40時間未満保持する熱処理を行うこと。 【請求項4】 前記(a)において、前記炭化ホウ素を、1800℃以上、圧力0.7MPa以上1.0MPa以下で加圧窒化焼成する請求項3記載の窒化ホウ素粉末の製造方法。 【請求項5】 請求項1又は2記載の窒化ホウ素粉末を原料として当該窒化ホウ素粉末に、酸化剤を加えて湿式粉砕又は湿式解砕にて粒子の表面改質処理を施し、さらに金属カップリング剤を反応させて、表面処理塊状窒化ホウ素粉末を得る、表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法。 【請求項6】 前記表面改質処理のときに、酸化剤と水溶性溶媒を添加する請求項5記載の表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法。 【請求項7】 前記金属カップリング剤が、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤から選ばれる1種又は2種以上である請求項5又は6記載の表面処理塊状窒化ホウ素粉末の製造方法。 【請求項8】 以下の(A)~(D)を有することを特徴とする塊状窒化ホウ素粉末。 (A)六方晶のh-BN一次粒子が凝集して成る塊状窒化ホウ素粒子であること; (B)塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること; (C)塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること; (D)塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること 【請求項9】 さらに(E)塊状窒化ホウ素粒子の表面に有機官能基が存在することを特徴とする、請求項8記載の塊状窒化ホウ素粉末。 【請求項10】 前記塊状窒化ホウ素粒子表面中に存在する有機官能基は、置換基を有してもよいエポキシ基、置換基を有してもよいスチリル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアセチルアセテート基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいイソシアネート基、置換基を有してもよいシクロヘキシル基及び置換基を有してもよいテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)基から選ばれる1種又は2種以上である、請求項8又は9記載の塊状窒化ホウ素粉末。 【請求項11】 請求項1若しくは2記載の窒化ホウ素粉末、又は請求項8~10のいずれか一項記載の塊状窒化ホウ素粉末を含有する、熱伝導樹脂組成物。」 第3 特許異議の申立ての理由及び証拠方法について 申立人は、以下のとおり、証拠方法として甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出し、本件特許は、申立理由1~7により取り消すべきものである旨主張している。 1 申立ての理由 (1)申立理由1(新規性欠如)、申立理由3(進歩性欠如) (甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 本件発明1、2、11は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1、2、5~11は、甲1に記載された発明及び周知慣用技術(甲3~6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(新規性欠如)、申立理由4(進歩性欠如) (甲2を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 本件発明1~4、11は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1~11は、甲2に記載された発明及び周知慣用技術(甲3~6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由5(明確性要件違反) 本件発明1、2、5~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)申立理由6(実施可能要件違反) 本件発明1、2、5~7、11に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5)申立理由7(サポート要件違反) 本件発明1、2、5~11に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 証拠方法 甲1:国際公開第2015/119198号 甲2:特開2011-98882号公報 甲3:特開2015-36361号公報 甲4:特開2015-196632号公報 甲5:国際公開第2016/092952号 甲6:国際公開第2016/092951号 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 当審において通知した令和3年3月23日付けの取消理由通知における取消理由の概要は、以下のとおりである。 1 取消理由 (1)取消理由1(進歩性欠如)について 本件発明8~11は、甲1に記載された発明及び甲3、5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由2(実施可能要件違反) 本件特許は、発明の詳細な説明に記載が下記ア、イの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。 ア 本件発明1において、「(B)塊状窒化ホウ素の塊状粒子における累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であり、かつ累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であること。」が特定されているが、本件明細書の記載を参照しても、「累積破壊率」の具体的な算出方法は明らかでないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明2、5~7、11について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。 イ 本件発明1、2、8において、窒化ホウ素粉末の平均粒径が、本件発明3において、炭化ホウ素の平均粒径が、それぞれ特定されているが、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0110】には「(1)平均粒径 平均粒径の測定にはベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いた。得られた平均粒径は測定処理の前にホモジナイザーをかけずに測定したものを平均粒径値として採用した。また、得られた平均粒径は体積統計値による平均粒径である。」と記載されているのみであって、具体的な測定条件等は不明であるから、当業者が上記各平均粒径について測定可能であるとはいえない。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~3、8並びに本件発明1、2に従属する本件発明5~7、11、本件発明3に従属する本件発明4及び本件発明8に従属する本件発明9~11について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。 2 証拠方法 甲1:国際公開第2015/119198号 甲3:特開2015-36361号公報 甲5:国際公開第2016/092952号 第5 当審の判断 1 取消理由についての判断 (1)取消理由1(進歩性欠如)について ア 各証拠方法の記載事項 (ア)甲1の記載事項 甲1には、以下の記載事項1a~1eを認めることができる。 1a「[0001] 本発明は窒化ホウ素凝集粒子(以下「BN凝集粒子」と称す。)、該粒子の製造方法に係り、詳しくは、窒化ホウ素一次粒子(以下「BN一次粒子」と称す。)が凝集してなるBN凝集粒子及びその製造方法に関する。 本発明はまた、このBN凝集粒子を含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。」 1b「[0031] (BN凝集粒子の特性) ・一次粒子の大きさ BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の長軸は通常0.5μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは、0.8μm以上、更に好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.1μm以上である。また通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。 尚、上記長軸とはSEM測定により得られたBN凝集粒子1粒を拡大し、1粒のBN凝集粒子を構成しているBN一次粒子について、画像上で観察できるBN一次粒子の最大長を平均した値である。 [0032] ・BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶構造 BN一次粒子の結晶構造は、特に限定されないが、合成の容易さと熱伝導性の点で六方晶系のh-BNを主成分として含むものが好ましい。また、バインダーとしてBN以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、BNが主成分として含まれていればよい。なお、上記BN一次粒子の結晶構造は、粉末X線回折測定により確認することができる。」 1c「[0042] ・BN凝集粒子の平均粒子径(D50) BN凝集粒子の平均粒子径(D50)は、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは26μm以上であり、特に好ましくは30μm以上、最も好ましくは40μm以上であり、45μm以上であっても好ましく、50μm以上であっても好ましい。また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。大きすぎると成形体とした際に表面の平滑性が悪くなる、BN凝集粒子間の間隙が多くなる等により、熱伝導性が向上しない傾向があり、小さすぎると成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる、BN凝集粒子自体の熱伝導性が低くなる等の傾向がある。 [0043] なお、D50は測定に供した粉体の体積を100%として累積曲線を描かせた際に丁度累積体積が50%となる時の粒子径を意味し、その測定方法は、湿式測定法としては、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中にBN凝集粒子を分散させた試料に対して、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置などを用いて測定することができ、乾式測定法としては、Malvern社製「Morphologi」を用いて測定することができる。」 1d「[0044] ・破壊強度 BN凝集粒子の破壊強度は、通常2.5MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上、更に好ましくは4.0MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、更に好ましくは10MPa以下である。大きすぎると、粒子の強度が強すぎるため、成形体とした際に表面平滑性が悪くなり、熱伝導性が低下する傾向があり、小さすぎると、成形体を作製する際の圧力で粒子が変形しやすくなり、熱伝導性が向上しない傾向がある。 [0045] なお、破壊強度は、粒子1粒をJIS R 1639-5に従って圧縮試験し、下記式により算出できる。通常、粒子は5点以上測定し、その平均値を採用する。 式:Cs=2.48P/πd2 Cs:破壊強度(MPa) P:破壊試験力(N) d:粒子径(mm)」 1e「[0053] 本発明のBN凝集粒子はBN凝集粒子自体の熱伝導性が高いだけでなく、樹脂と複合化して作製した成形体の熱伝導性も高くなる。 すなわち、本願発明によれば、当業者では通常制御することを想定していなかったスラリー粘度を特定の範囲に制御することにより、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径を大きくすることが可能である製造方法を見出したものである。」 (イ) 甲3の記載事項 甲3には、以下の記載事項3a、3bを認めることができる。 3a「【特許請求の範囲】 【請求項1】 窒化ホウ素をメカノケミカル処理する工程を有することを特徴とする、変性窒化ホウ素の製造方法。 【請求項2】 水または有機溶媒の存在下においてメカノケミカル処理するものである、請求項2に記載の変性窒化ホウ素の製造方法。 【請求項3】 請求項1または2記載に記載の製造方法で得られる変性窒化ホウ素。 【請求項4】 請求項3に記載の変性窒化ホウ素と、金属カップリング剤とを含有することを特徴とする、変性窒化ホウ素組成物。 【請求項5】 金属カップリング剤が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、アルミン酸ジルコニウムカップリング剤、アルミネートカップリング剤から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の窒化ホウ素組成物。 【請求項6】 請求項3に記載の変性窒化ホウ素と、金属カップリング剤とを反応させて得られることを特徴とする、表面処理変性窒化ホウ素。 ・・・・・ 」 3b「【0014】 〔窒化ホウ素〕 本発明では、窒化ホウ素をメカノケミカル処理によって変性することで、変性窒化ホウ素を得ることができる。窒化ホウ素(BN)には、六方晶BN、立方晶BN等いろいろな結晶構造のものが知られているが、本発明では、いずれをも用いることができる。これらBNの中で工業的規模で入手し易く、安価であることから、六方晶BNが好ましい。この六方晶窒化ホウ素は、ホウ素を窒素気流中で高温加熱すること、アンモニアと酸化ホウ素とを加熱すること、あるいは塩化アンモニウムとホウ砂とを加熱することなどにより得られる。こうして得られる窒化ホウ素は、鱗片状又は多角板状の形態が一般的であり熱伝導材料に用いるには結晶サイズが大きい粒子が有利であり、窒化ホウ素の平均粒径は10μm以上であると好ましく、15~60μmであるとより好ましい。 【0015】 〔メカノケミカル処理〕 本発明のメカノケミカル処理とは、窒化ホウ素に対し、圧縮力と剪断力を同時にかける処理をいう。メカノケミカル処理は、被処理物に圧縮力と剪断力とを同時にかけることができる装置であればよく、装置構造は特に限定されない。このような装置として、たとえば、ビーズミルなどの媒体攪拌ミル、ペイントコンディショナーなどの分散機、遊星型ボールミル(フリッチュ社製)、振動ミル、加圧ニーダー、二本ロールなどの混練機、回転ボールミル、ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)などを使用することができる。 【0016】 上記のようなメカノケミカル処理条件は、使用する装置によっても異なり一概にはいえないが、処理によって生成する変性窒化ホウ素の粒子を破壊しないように設定することが好ましい。負荷エネルギーが強すぎると粒子破壊が進行し、小粒径化とフィラーの分解が部分的に発生するので処理条件を適切にコントロールすることが重要である。たとえばペイントコンディショナーを用いる場合にはガラスビーズなど軽量のビーズを用いて処理時間を20~60分間で行い、遊星型ボールミルを用いる場合には、台座の回転数を200~600rpmで、処理時間を5~20分間で、行えばよい。 【0017】 メカノケミカル処理により、窒化ホウ素の表面が活性化し、変性窒化ホウ素となる。どのように変性しているかの詳細は不明であるが、窒化ホウ素が粉砕される過程で、表面原子/分子数が増大し、それらの結合状態の乱れから、活性化するものと考えられている。 【0018】 メカノケミカル処理は、水または有機溶剤を用いた湿式法と用いない乾式法のどちらも使用することができるが、水または有機溶剤を用いた湿式法でのメカノケミカル処理が好ましい。湿式法でのメカノケミカル処理により、窒化ホウ素の変性が促進されるためである。 【0019】 〔金属カップリング剤〕 本発明の変性窒化ホウ素は、表面が変性しているため、金属カップリング剤による表面処理を行うと、表面材が強固に付着しやすい。そのため、流動性等、金属カップリング剤による表面処理の効果がより得られやすい。 【0020】 本発明で用いる金属カップリング剤としては、たとえば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用でき、好ましくはシランカップリング剤である。 ・・・ 【0025】 上記金属カップリング剤と変性窒化ホウ素を反応させる方法としては、公知慣用の方法を用いればよく、例えば金属カップリング剤と変性窒化ホウ素混合し、加熱するなどすればよい。金属カップリング剤が、変性された窒化ホウ素の表面に結合することで、表面改質変性窒化ホウ素となる。」 (ウ)甲5の記載事項 甲5には、以下の記載事項5aを認めることができる。 5a「[0023] <表面処理> 本発明のhBN粉末は、樹脂成分中に分散させて樹脂シートを製造する際に、樹脂成分に対する分散性を高め、加工性を向上させる等の目的で、必要に応じ、各種カップリング剤等を用いて表面処理を施してもよい。 [0024] (カップリング剤) カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系等が挙げられるが、これらの中で効果の点から、シラン系カップリング剤が好ましい。・・・ 」 イ 甲1に記載された発明 甲1の1a、1bによると、甲1には、六方晶系のh-BN一次粒子を主成分として含む窒化ホウ素凝集粒子(「BN凝集粒子」)の発明が記載されている。 そして、甲1の1bによると、甲1に記載のBN凝集粒子の長軸は、1.1μm以上3μm以下であり、同1cによると、同BN凝集粒子の平均粒子径(D50)が30μm以上100μm以下であり、同1dによると、同BN凝集粒子の破壊強度は、4.0MPa以上10.0MPa以下であるといえる。 そうすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「六方晶系のh-BN一次粒子を主成分として含む窒化ホウ素凝集粒子であって、一次粒子の長軸が1.1μm以上3μm以下であり、破壊強度が、4.0MPa以上10.0MPa以下であり、平均粒子径(D50)が30μm以上100μm以下である、窒化ホウ素凝集粒子。」 ウ 本件発明8について (ア)対比 本件発明8と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「六方晶系のh-BN一次粒子を主成分として含む窒化ホウ素凝集粒子」は、本件発明8の「六方晶のh-BN一次粒子が凝集して成る塊状窒化ホウ素粒子」に対応するものであるものの、本件発明8と甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点1:本件発明8は「塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること」を発明特定事項としているのに対して、甲1発明は、粒子表面にSi等が存在することは規定されていない点。 相違点2:本件発明8は「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」を発明特定事項としているのに対して、甲1発明は「破壊強度が、4.0MPa以上10.0MPa以下」であることが規定されている点。 相違点3:本件発明8は「塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること」が特定されているのに対して、甲1発明は、「平均粒子径(D50)が30μm以上100μm以下である」ことが規定されている点。 (イ)相違点についての検討 まず、相違点1について検討する。 本件発明8に係る塊状窒化ホウ素粉末は、本件明細書の段落【0069】に記載されているように、「(1)原料である強度の強い塊状窒化ホウ素粒子から構成される塊状窒化ホウ素粉末(以下、「第1の塊状窒化ホウ素粉末」ともいう。)を得ること、(2)この塊状窒化ホウ素粉末(原料)に、特殊な表面改質処理を行い、金属カップリング反応を行う」ことを含む製造方法により得ることできる。そして、同段落【0091】によると、上記「特殊な表面改質処理」は、前記「第1の塊状窒化ホウ素粉末」に酸化剤を加えて湿式にて粒子の表面改質処理を施すこと」を含むものであり、このように粉砕・解砕処理に酸化剤を併用させることではじめて、粒子表面が効率よく改質され、分散性を向上させると共に表面官能基も増大して、カップリング反応が効率よく進行するというものである。 この点は、本件明細書に記載された具体例からも見て取れる。すなわち、「第1の塊状窒化ホウ素粉末」に対して、酸化剤(過酸化水素)を加えて湿式にて粉砕・解砕処理(ヘンシェルミキサーによる処理)を施した上で金属カップリング反応を行った実施例8~24(段落【0142】~【0162】、表3)では、表面金属量が相違点1に係る特定事項を充足する塊状窒化ホウ素粉末が得られているのに対して、当該「特殊な表面改質処理」を施さずに金属カップリング反応を行った試験例2、4~8の塊状窒化ホウ素粉末の表面金属量は、当該特定事項を充足しないものである。 以上のような本件明細書の記載を踏まえると、甲3、5が、上記記載事項にあるように、樹脂への流動性、分散性等を高めるために、窒化ホウ素粉末をシランカップリング剤等の金属カップリング剤によって表面処理するという周知の技術事項について教示するものであるとしても、上述の「特殊な表面改質処理」についてまで教示するものではないことから、当該甲3、5の記載を斟酌しても、当業者において上記相違点1に係る発明特定事項に想到し得るとはいえない。 なお、記載事項3a、3bによると、甲3には、窒化ホウ素をメカノケミカル処理した後、金属カップリング剤による表面処理を行うことで、表面材が強固に付着しやすく、金属カップリング剤による表面処理の効果が得られること、及びメカノケミカル処理としてペイントコンディショナーを用いることが記載され、しかも上記ペイントコンディショナーは、本件発明8に係る塊状窒化ホウ素粉末を得る際の表面改質処理で用いる粉砕機又は解砕機として例示されたものである(本件明細書段落【0094】)。しかし、甲3は、表面改質処理工程において粉砕・解砕処理に酸化剤を併用させるものではないから、甲1発明に係る窒化ホウ素凝集粒子に甲3に記載の表面処理を適用しても、必ずしも上記相違点1に係る本件発明8の発明特定事項を充足するものが得られるわけではない。 したがって、上記相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1に記載された発明及び甲3、5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明9~11について 本件発明9~11は、本件発明8の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記ウの本件発明8についての判断と同様に、本件発明9~11は、甲1に記載された発明及び甲3、5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小括 以上のとおりであるから、取消理由1は理由がない。 (2)取消理由2(実施可能要件違反)について ア 「第4 1(2)ア」について 本件発明で特定された「粒子強度」については、本件明細書の段落【0111】に、「JIS R1639-5に準じて測定を実施した。測定装置としては、微小圧縮試験器(「MCT-W500」島津製作所社製)を用いた。粒子強度(σ:MPa)は、粒子内の位置によって変化する無次元数(α=2.48:-)と圧壊試験力(P:N)と粒子径(d:μm)からσ=α×P/(π×d2)の式を用いて20粒子以上で測定を行い、累積破壊率20%及び/又は63.2%それぞれの値を算出した。表3及び4において、累積破壊率63.2%の値を、粒子強度(圧壊強度)として表示した。」と記載されているところ、特許権者が令和3年5月25日提出の意見書に添付した乙第1号証(JIS R1639-5)には、粒子強度の測定方法が記載されているとともに「試験結果には,次の事項を記入する」とされており、その一つの事項として「i) 全データの平均圧壊強さ,ワイブルプロット図(JISR1625による。)」が挙げられている。 そして、同乙第2号証(JIS R 1625)には、ファインセラミックスの強さデータのワイブル統計解析法について説明されており、ワイブルプロット図を用いて累積破壊率を導出することができることがわかる。 そうすると、本件明細書の記載及び乙第1、2号証に示される技術常識により、当業者であれば本件発明で特定された所定の「累積破壊率」における粒子強度は、乙第2号証に記載の「累積破壊率」に基づくものであることを理解することができる。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、当該「累積破壊率」についての実施可能要件違反に係る不備は見当たらない。 イ 「第4 1(2)イ」について 上記第4の1(2)イに摘記した本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0110】には、「測定処理の前にホモジナイザーをかけずに測定した」とあるから、本件発明においては、単に窒化ホウ素粉末等を溶媒に投入して測定装置に供したことが理解できる。そして、その際、「平均粒径の測定にはベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いた。」とされているのであるから、これらの記載により、当業者であれば、本件発明に係る窒化ホウ素粉末の平均粒径は、この特定の測定装置を使用し、その取扱説明書に従って測定したものであることを諒解するとみるのが合理的である。加えて、上記の記載のみでは当該平均粒径を測定することができないとする根拠も見出せない。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、当該「平均粒径」についての実施可能要件違反に係る不備は見当たらない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、取消理由2は、理由がない。 2 取消理由において採用しなかった申立理由についての判断 (1)申立理由1、3(甲1を主たる証拠とした新規性及び進歩性欠如) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1には、実質的に塊状窒化ホウ素からなる窒化ホウ素粉末が記載されているといえるから、甲1発明の「六方晶系のh-BN一次粒子を主成分として含む窒化ホウ素凝集粒子」は、本件発明1の「一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素からなる窒化ホウ素粉末」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。 相違点1-1:本件発明1は「一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm以上3.5μm以下で、標準偏差が1.2μm以下であること」を発明特定事項としているのに対して、甲1発明は「一次粒子の長軸が1.1μm以上3μm以下」であると規定している点。 相違点1-2:本件発明1は「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」を発明特定事項としているのに対して、甲1発明は「破壊強度が、4.0MPa以上10.0MPa以下」であると規定している点。 相違点1-3:本件発明1は「塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること」を発明特定事項としているのに対して、甲1発明は、「平均粒子径(D50)が30μm以上100μm以下である」と規定している点。 (イ)判断 はじめに、相違点1-1について検討する。 当該相違点1-1について、申立人は、甲1発明も本件発明1と同様に高い熱伝導性を得ることを課題とし、また、甲1発明に係る窒化ホウ素凝集粒子は、一次粒子の長軸、平均粒子径及び破壊強度の点で本件発明1と相違しないから、甲1発明の一次粒子の標準偏差の範囲は、本件発明1の範囲を満たす蓋然性は高く、その上、粒子強度の確保の点からも、ばらつきを調整することも技術常識であるとし、他方、本件発明1の標準偏差は、かなりのばらつきが許容されており、一次粒子が一般的にとり得る範囲をカバーするものであって、特別な技術的意義を有するものとはいえない旨主張している。 しかし、本件明細書では、窒化ホウ素粉末の一次粒子の長辺長さの標準偏差が1.2μm超では、粒子が均一な構造にならず粒子強度が低下する恐れがあることが記載され(段落【0022】)、実施例の欄をみると、本件発明1に係る窒化ホウ素粉末の一次粒子の長辺長さの標準偏差を充足する各実施例は、粒子強度が大きく、熱伝導率に優れるものであるが、当該標準偏差を充足しない比較例1、4、7、8は、粒子強度が小さく、熱伝導率が劣るものであることが理解できるから(表1、2)、その技術的な意義を把握することができる。 一方、甲1は、実施例において、窒化ホウ素凝集粒子の一次粒子の長さは、具体的には記載されておらず、その上、甲1には、一次粒子の長辺長さの標準偏差の値やこれを調整する手段について何ら開示するものではなく、申立人のいう一次粒子の長軸のばらつきを調整するという技術常識を認めるに足りる根拠も示されていない。そうすると、甲1発明に係る一次粒子の長軸の長さの標準偏差は本件発明1で特定する範囲であるということはできないから、上記相違点1-1は、実質的な相違点である。 また、甲1には、ホウ素粉末の一次粒子の長軸の標準偏差を、本件発明1が特定する範囲内とすることについて、これを示唆する記載は認められない。 さらに、申立人が周知慣用技術として引用した甲4は、窒化ホウ素の剥離のために超酸を使用することを開示しているにすぎず(特許請求の範囲、段落【0022】)、甲6も、金属カップリング剤による処理について甲5と同内容の事項が開示されているにすぎないから、これらの記載に基いて、上記相違点1-1に係る事項を容易想到の事項ということもできない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5~11について 本件発明2、5~7、11は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記アの本件発明1の判断と同様であり、本件発明2、11は、甲1に記載された発明であるとはいえない。また、甲4、6は、上記1(1)ウにおいて検討した本件発明8の相違点1に係る事項が容易想到の事項であるとする手掛かりとなるものではないから、上記1(1)の検討結果を踏まえれば、本件発明2、5~11は、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由1、3は、理由がない。 (2)申立理由2、4(甲2を主たる証拠とした新規性及び進歩性欠如) ア 甲2の記載事項 甲2には、以下の記載事項2a~2cを認めることができる。 2a「【特許請求の範囲】 【請求項1】 一次粒子の長径と厚みの比が平均で5~10で、一次粒子の凝集体の大きさが平均粒径(D50)で2μm以上 200μm以下で、嵩密度が0.5~1.0 g/cm3であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。 【請求項2】 前記凝集体の平均粒径(D50)が20μm以上 80μm以下で、かつ空隙率が50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 ・・・・・ 【請求項4】 六方晶窒化ホウ素粉末を、0.3MPaおよび0.01MPaの圧力で噴射し、噴射後の凝集体の粒径をそれぞれ乾式法により測定し、0.01MPaの圧力で噴射したときの凝集体の平均粒径に対する0.3MPaの圧力で噴射したときの平均粒径の比で定義する粉末強度が、0.4 以上を満足することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の六方晶窒化ホウ素粉末。 ・・・・・ 【請求項6】 炭化ホウ素を、窒素分圧:5kPa以上の窒素雰囲気中、温度:1800~2200℃の条件で窒化処理し、ついで得られた生成物に三酸化二ホウ素および/またはその前躯体を加えたのち、非酸化性雰囲気中にて、温度:1500~2200℃の条件で脱炭処理し、その後破砕、分級することによって六方晶窒化ホウ素粉末を製造するに際し、上記窒化処理中または上記脱炭処理後に、炉内圧を100kPa未満に保持する減圧処理を施すことを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。 ・・・・・ 」 2b「【0022】 一次粒子の長径と厚みの比(平均):5~10 一次粒子の長径Dと厚みdの比D/dが平均で5未満というのは製造が困難であり、一方10を超えると配向性が出て、凝集体の密度が低下する(空隙率が増加する)ので、D/dは5~10の範囲に限定した。好ましくは6~9の範囲である。 なお、一次粒子の長径Lについては2~8μm 程度、また一次粒子の厚みdについては0.1~1.6μm 程度とするのが好ましい。」 2c「【0026】 本発明において「一次粒子」とは、鱗片状を形成する単一粒子と定義する。 また、「一次粒子の凝集体」とは、一次粒子が2個以上化学結合した状態で存在する粒子と定義する。そして、本発明のBN粉末では、粉末全体の60%以上が凝集体の形態で存在する。ここに、剥離などにより発生する微粉 は少ないほど好ましく、かかる微粉が20%を超えるとフィラー特性が若干低下するため、粉末全体に対する凝集体の割合は80%以上とするのが好ましい。なお、粉砕による粒度調整により凝集体は幾分かの破壊を余儀なくされるため、凝集体の比率の上限は97%程度である。 【0027】 次に、本発明の製造方法について説明する。一般に六方晶窒化ホウ素粉末は、図1にフローチャートを示すように、炭化ホウ素(B4C)を原料として、窒素雰囲気中にて焼成後、脱炭処理を施し、ついで破砕・分級することにより製造されるが、本発明では、上記したB4Cの窒化工程中またはその後の脱炭工程後に減圧処理を施すところに特徴がある。以下、各製造工程毎に説明する。 【0028】 まず、B4Cを製造するには、ほう酸(H3BO3)原料を炭素含有材料と非酸化性雰囲気中で高温で反応させたのち、粉砕・分級することによって、B4C粉末とする。 4H3BO3+7C → B4C+6H2O+6CO なお、上記したような炭素含有材料として代表的なコークスは、不純物としてFeを含有している。また、合成したB4Cは高硬度の材料であるため、粉末にする際に粉砕装置からのFeの混入が避けられない。さらに、本発明で使用するB4C粉末は、反応を進める観点からは微粉が適していることから、この傾向が顕著である。 【0029】 ついで、得られたB4C粉末を窒素雰囲気中で焼成(窒化処理)して、次式(1)の反応によりBN粉末とする。 (1/2)B4C+N2 → 2BN+(1/2)C ・・・(1) 上記の反応をスムーズに進行させるためには、十分な窒素分圧と温度を与える必要がある。窒素分圧は5kPa以上、また焼成温度は1800~2200℃、好ましくは1900~2100℃とする必要がある。というのは、窒素分圧が5kPaに満たないと、窒化反応の進行が遅くなり反応に長時間を要するからであり、高窒素分圧雰囲気は窒化反応を促進させるので有効である。ここに、窒素分圧の上限は、高圧ガス保安上の観点から1000kPa程度とする。また、焼成温度が1800℃に満たないと反応時間が長くなり、一方2200℃を超えると逆反応が生じ反応が進行しないからである。 なお、原料であるB4C粉末の粒径は、とくに制限されることはないが、反応性の観点からは1000μm以下(好ましくは2μm以上)とすることが望ましい。 【0030】 ついで、上記の反応により得られたBN粉末に脱炭処理を施して混在するCを除去する。 この脱炭処理は、上記のBN粉末に三酸化二ホウ素および/またはその前駆体(以下、三酸化二ホウ素等ともいう)を混合し、次式(2)の反応により、混在するCをCO(気体)として除去する。 2BN+(1/2)C+(1/2)B2O3→2BN+(1/2)CO↑+(1/2)B2O2↑・・・(2) 上記の脱炭処理は、非酸化性雰囲気中にて温度:1500~2200℃(好ましくは1800~2200℃)、時間:1時間以上(好ましくは6時間以上、15時間以下)の条件で実施するのが好適であり、十分な温度と処理時間を与えることにより、BN粉末中におけるC量を0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下まで低減する。ここに、C量の低減は、現行の製造プロセスでは0.01質量%が限界である。なお、処理時における圧力は常圧でよい。 また、上記の脱炭処理でのBN粉末等の窒化処理材と三酸化二ホウ素等との混合は、ボールミルに溶媒を加えて湿式で行うこともできるが、V-ブレンダーのような乾式混合機を用いて行うことが好ましい。なお、混合は均一状態になるまで実施される。具体的には、目視にて混合物が均質な灰色になればよい。」 イ 甲2に記載された発明 甲2の記載事項2cの段落【0026】によると、甲2に記載された六方晶窒化ホウ素粉末は、鱗片状の一次粒子の凝集体からなるものである。 また、記載事項2a、2bによると、一次粒子の長径は2~8μm程度、一次粒子の凝集体の平均粒径(D50)は20μm以上80μm以下であり、粉末強度が0.4以上を満足するものである。 そうすると、甲2には、次の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されていると認められる。 「一次粒子が鱗片状の凝集体である六方晶窒化ホウ素粉末であって、一次粒子の長径は2~8μm、一次粒子の凝集体の平均粒径(D50)は20μm以上80μm以下であり、粉末強度が0.4以上である六方晶窒化ホウ素粉末。」 さらに、甲2の記載事項2a、2cには、炭化ホウ素(B4C)を、窒素分圧5KPa以上の窒素雰囲気中、温度1800~2200℃で窒化処理し、得られた生成物を非酸化性雰囲気中で、温度1500~2200℃、1時間以上15時間以下の条件で脱炭処理することで、六方晶窒化ホウ素粉末を製造することが記載されている。 そうすると、甲2には、次の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されていると認められる。 「2μm以上1000μm以下の炭化ホウ素を窒素分圧5kPa以上1000kPa以下の窒素雰囲気中、温度1800~2200℃の条件で窒化処理した後、温度1500~2000℃、1時間以上15時間未満の条件で脱炭処理する、六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。」 ウ 本件発明3について 申立人は、本件発明3は、甲2に記載された発明であって、本件発明1は、本件発明3により得られるから、本件発明1も甲2に記載された発明であると主張している。 そこで、まず、本件発明3について検討する。 本件発明3と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明の1800~2200℃の条件で窒化処理することは、本件発明3の加圧窒化焼成に相当し、また、甲2-2発明の脱炭処理は、加圧窒化焼成後の脱炭結晶化工程に相当することは明らかである。 そうすると、本件発明3と甲2-2発明とは、加圧窒化焼成及びその後の脱炭結晶化工程を有する点で共通するものの、以下の点で相違するといえる。 相違点2-1:加圧窒化焼成について、本件発明3は、「平均粒径が6μm以上55μm以下で炭素量18%以上21%以下の炭化ホウ素」を処理することを発明特定事項としているのに対して、甲2-2発明は、「2μm以上1000μm以下の炭化ホウ素を窒素分圧5kPa以上1000kPa以下の窒素雰囲気中」で処理することが規定されている点。 相違点2-2:脱炭結晶化工程について、本件発明3は、脱炭開始可能な温度に上昇させた後昇温温度5℃/min以下で保持温度になるまで昇温を行い、1750℃以上の温度で0.5時間超40時間未満保持する熱処理を行うことが特定されているのに対して、甲2-2発明は、温度1500~2000℃、1時間以上15時間未満の条件で脱炭処理することが規定されている点。 事案に鑑みて、上記相違点2-2について検討する。 本件発明3の脱炭結晶化工程について、本件明細書の段落【0035】には、「「(b)脱炭結晶化工程」において、前記加圧窒化工程で得られた炭窒化ホウ素を、常圧以上の雰囲気にて、特定の昇温温度で保持温度になるまで昇温を行い、特定の温度範囲で一定時間保持する熱処理を行うことにより、一次粒子(一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素)が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素粒子を得ることができる。」と記載され、さらに同段落【0036】~【0042】には、上記熱処理により、粒成長が良好に起こることが説明されている。 そして、本件発明3の脱炭結晶化工程の「昇温温度5℃/min以下で保持温度になるまで昇温を行う」点について着目すると、同段落【0040】に粒成長が均一になることが記載されているところ、1000℃からの「昇温速度」(本件発明3の「昇温温度」と同義であると認められる。)を2℃/minで昇温した実施例1は、窒化ホウ素粉末の一次粒子の長辺長さの標準偏差は0.7μmとなり、粒子強度及び熱伝導率が良好であるのに対して、「昇温速度」のみを10℃/minに変更した比較例1は、窒化ホウ素粉末の一次粒子の標準偏差は1.3μmとなり、粒子強度及び熱伝導率は低いものとなることが分かる(特に、本件明細書の段落【0123】、【0131】、【0138】~【0140】を参照した。)。 一方、甲2には、脱炭工程において、昇温温度を調整して窒化ホウ素の粒成長を制御すること、さらには一次粒子の長辺長さの標準偏差を制御する点は、何ら記載されていないから、上記相違点2-2は、実質的な相違点である。 また、甲2には、一次粒子の長辺長さの標準偏差を制御することを示唆する記載も認められない。 さらに、甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて、上記相違点2-2に係る事項を容易想到の事項ということもできない。 なお、申立人は、上記「昇温温度」について、5℃/min以下とすることは技術常識であり、甲2に記載されているに等しい事項である旨主張しているが、何らの根拠も示されていない以上、この主張を採用することはできない。 したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2に記載された発明とはいえず、また、甲2に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件発明4について 本件発明4は、本件発明3の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記ウの本件発明3の判断と同様に、本件発明4は、甲2に記載された発明とはいえず、また、甲2に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明1について 本件発明1と甲2-1発明とを対比する。 甲2-1発明は、一次粒子が鱗片状の凝集体である六方晶窒化ホウ素粉末であるから、本件発明1の「一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素が凝集して塊状になった塊状窒化ホウ素からなる窒化ホウ素粉末」に相当するものということができるが、本件発明1と甲2-1発明とは、以下の点で相違する。 相違点2-3:本件発明1は、「一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm以上3.5μm以下で、標準偏差が1.2μm以下である」ことを発明特定事項としているのに対して、甲2-1発明は、「一次粒子の長径が2~8μm」であると規定している点。 相違点2-4:本件発明1は、「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」を発明特定事項としているのに対して、甲2-1発明は、「粉末強度が0.4以上」であると規定している点。 相違点2-5:本件発明1は、「塊状窒化ホウ素粉末の平均粒径が、20μm以上100μm以下であること」を発明特定事項としているのに対して、甲2-1発明は、「平均粒子径(D50)が20μm以上80μm以下」であると規定している点。 まず、相違点2-3について検討する。 甲2には、六方晶窒化ホウ素粉末の一次粒子の平均長径が2~3μm程度である実施例が記載されているから、甲2-1発明は、本件発明1で特定する一次粒子の長辺の長さの平均の値を含んでいるといえるが、一次粒子の長辺の長さの標準偏差は明らかではない。 そして、甲2は、上記一次粒子の長辺の長さの標準偏差を調整する手段を何ら開示するものではない点は、上記ウで検討したとおりであるところ、相違点2-3の判断は、「2(1)ア(イ)」の相違点1-1の判断と同様であり、甲2-1発明に係る窒化ホウ素粉末の一次粒子の長径の標準偏差は本件発明1で特定する範囲であるということはできず、また、甲2には、これを示唆する記載は認められない。 さらに、甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて、上記相違点2-3に係る事項を容易想到の事項ということもできない。 なお、申立人は、上記のとおり本件発明1の製造方法である本件発明3は、甲2に記載された発明であるから、本件発明1は、甲2に記載された発明であるか、少なくとも容易想到である旨主張するが、上記ウで検討したとおり、本件発明3は、甲2に記載された発明とはいえないから、当該主張も採用できない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 カ 本件発明2、5~7、11について 本件発明2、5~7、11は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記オの本件発明1の判断と同様であり、本件発明2、11は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明2、5~7、11は、甲2に記載された発明及び甲3~6に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 キ 本件発明8~11について 本件発明8と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明には、少なくとも本件発明8の「塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること」という発明特定事項が規定されていない点で相違している。 この相違点について検討すると、甲2には、甲2-1発明に係る窒化ホウ素粉末を、金属カップリング剤で表面改質処理することについて何ら記載がないことは、甲1と同様であるから、当該相違点の判断についても、「第5 1(1)ウ(イ)」に記載した本件発明8と甲1発明との相違点との検討と同様である。 そうすると、本件発明8及び本件発明8を引用する本件発明9~11は、甲2に記載された発明及び甲3、5、さらには甲4、6に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ク 小括 以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由2、4は、理由がない。 (3)申立理由5(明確性要件違反) ア 申立人は、本件発明1の「一次粒子の長辺長さの平均」なる特定事項は、本件明細書の段落【0112】の「一次粒子径評価法」について参照しても、不明確である旨主張している。 しかし、当該段落【0112】には、「作製した塊状窒化ホウ素に対し、観察の前処理として、窒化ホウ素粒子をエポキシ樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行った。断面観察は走査型電子顕微鏡(例えば「JSM-6010LA」(日本電子社製))を用いて観察倍率2000~5000倍で観察した。得られた断面粒子像を画像解析ソフトウェア、例えば「Mac-view」に取り込み粒子の長辺長さを計測し、任意の断面粒子100個の長辺長さを求めその平均値を長辺長さの平均値とした。」と記載されているのであるから、所定の走査型電子顕微鏡により得られた断面粒子像を画像解析ソフトウェアを使用して計測し一次粒子の長辺長さを算出したことが理解できるため、上記特定事項が明確でないとはいえない。 イ 申立人は、本件発明1の「累積破壊率」なる特定事項は、本件明細書の段落【0111】に算出方法の記載があるものの、「累積」の意義が明らかでなく、また、本件発明8の「圧壊強度」なる特定事項も明確でない旨主張している。 しかし、上記「累積破壊率」の測定方法については、上記「第5 1(2)ア」に記載したとおり、本件明細書の記載及び乙第1、2号証に示される技術常識により、当業者であれば理解することができる。 また、本件発明8の「圧壊強度」についても、本件明細書の段落【0063】に「本発明の第三実施形態の「(C)塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」を特徴とする。なお、「圧壊強度」又は「圧壊強度(63.2%時)」とは、「粒子強度(累積破壊率63.2%時)」ともいう。」と記載され、上記「圧壊強度」は、累積破壊率63.2%時の粒子強度を意味するから、本件発明1と同様に理解することができる。 したがって、本件発明1及び本件発明8の発明特定事項は明確であるといえる。 ウ 小括 以上のとおりであるから、申立理由5は、理由がない。 (4)申立理由6(実施可能要件違反) 申立人は、本件発明1の「(A)鱗片状の六方晶窒化ホウ素の一次粒子の長辺長さの平均が1.5μm以上3.5μm以下で、標準偏差が1.2μm以下であること」が特定されているが、本件明細書をみても、具体的に製造条件をどのように制御すれば前記標準偏差を制御できるのかは明記されていないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、5~7、11について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。 上記主張について検討すると、上記2(2)ウの本件発明3の相違点2-2の検討において参照した本件明細書段落【0036】~【0042】に記載のとおり、窒化ホウ素の粒成長は、本件発明3の脱炭結晶化工程の特定事項である「昇温温度」及び「保持時間」を調整することで制御可能であるということができる。 そして、このことは、実施例1、4~7、比較例1、4、5(表)において、脱炭結晶化工程における「昇温速度」(上記「昇温温度」と同義であると認められる。)及び「保持時間」を調節することにより窒化ホウ素粉末の一次粒子の標準偏差が制御されていることからも具体的に把握することができる。 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者であれば、本件発明1の六方晶窒化ホウ素の長辺長さの一次粒子の上記「標準偏差」の制御方法について理解することができ、本件発明1などを実施することができるといえる。 したがって、申立理由6は、理由がない。 (5)申立理由7(サポート要件違反) ア 申立人は、本件発明1で「(B)塊状窒化ホウ素の塊状粒子における累積破壊率63.2%時の粒子強度が8.0MPa以上であり、かつ累積破壊率20.0%時の粒子強度が4.5MPa以上であること」が特定されているところ、比較例では、累積破壊率63.2%及び累積破壊率20%の両方を満たす例(比較例2、3、5)か、両方が外れる例(比較例1、4、6~8)しかなく、各累積破壊率の下限の技術的意義を理解することができないから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、5~7、11は、発明の詳細な説明の記載に基づいて発明の課題が解決できることを当業者において認識できる発明とはいえない旨主張している。 この点について検討するに、本件発明1における特定事項(B)の累積破壊率63.2%時の粒子強度の下限値であり、累積破壊率20.0%時の粒子強度の下限値近傍の値を有する窒化ホウ素粉末である実施例4と、各累積破壊率がそれぞれの下限値より低い点でのみ本件発明1の特定事項を充足しない比較例6とを対比してみると、これらの窒化ホウ素粉末を樹脂に充填した場合に、前者は後者より熱伝導率及び塊状粒子の残存率が良好であることが理解できる(表1、表2)。 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者であれば、本件発明1の特定事項(B)の各粒子強度を同時に充足することにより、「熱伝導率に優れ粒子強度の高い窒化ホウ素粉末を提供する」(段落【0010】)という本件発明1の課題が解決できることを認識できるものであり、単に比較例に特定事項(B)のいずれか一方を充足しない比較例が記載されていないことをもって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、5~7、11がサポート要件に適合しないということはできない。 イ 申立人は、本件発明8は、「塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度が、5MPa以上であること」が特定され、ここでいう圧壊強度とは、粒子強度(累積破壊率63.2%時)を意味するため、本件発明8では粒子強度(累積破壊率20%時)については特定されていないことになるところ、本件明細書の段落【0023】には、粒子強度(累積破壊率20%時)が4.5MPa未満の場合には「樹脂との混練時やプレス時などに応力で凝集粒子が崩れてしまい、熱伝導率が低下する恐れがある。」と記載されているから、本件発明8及び本件発明8を引用する本件発明9~11は、課題を解決するための構成が反映されておらず、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できる発明とはいえない旨主張している。 この点について検討するに、上記段落【0023】に記載された内容は、本件発明1に対応する「第1の実施形態に係る窒化ホウ素粉末」に関するものであって、本件発明5で特定された表面処理塊状窒化ホウ素粉末の原料とされる窒化ホウ素粉末について記載されたものである。 一方、本件発明8は、同段落【0059】に記載された「第三実施形態に係る塊状窒化ホウ素粉末」に対応するものであり、樹脂への充填性に優れたものとすることを発明の課題としたものであって、同段落【0105】に記載されているように「熱伝導樹脂組成物を製造する際に粘度が高くなるのを抑制することができる」という効果を奏するものである。 そして、本件発明8の実施例(実施例8~24)は、本件発明8の特定事項を充足しない試験例1~9と比べて、粘度を測定した結果(段落【0116】、表3、4)、当該実施例は、粘度を少なくとも40Pa・s以下にすることができ、樹脂への充填性に優れたものであることが理解できる。 そうすると、本件発明8及び本件発明8を引用する本件発明9~11は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できる発明であるといえる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 さらに、申立人は、本件発明8に対応する実施例は、実施例8~24であるが、熱伝導率は測定されておらず、課題が解決されているか不明であり、また、「(B)塊状窒化ホウ素粒子表面10nm中の組成において、0.1atm%以上3.0atm%以下のSi、Ti、Zr、Ce、Al、Mg、Ge、Ga及びVのいずれか1種又は2種以上が存在すること」の発明特定事項は、表面金属量が上限を上回る比較例は存在せず、表面金属量の数値範囲の技術的意義を理解することはできない旨も主張している。 この点について検討するに、本件発明8の課題は、樹脂への充填性に優れたものとすることであることは上述のとおりであるが、本件発明8に係る塊状窒化ホウ素粉末は、本件明細書の記載によると、本件発明1に係る窒化ホウ素粉末を原料として表面処理するものであって(例えば、同段落【0172】参照)、表面処理後も所定の強度を維持し、また、平均粒径も保持されるのであるから、樹脂へ充填した際には、原料粉末と同様に熱伝導率に優れたものが得られることを当業者であれば理解することができる。 また、上記発明特定事項の表面金属量の上限については、同段落【0062】に「3.0atm%を超えるとフィラーとして用いた時に熱伝導率の低下が起こるおそれがある。」と記載されていることから、適切な範囲の表面金属量が必要であって過剰では窒化ホウ素粉末の熱伝導性を阻害する恐れがあることを当業者であれば理解することができる。 したがって、申立人の当該主張も採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、申立理由7は、理由がない。 第6 むすび 以上の検討のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700788

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