特許異議申立
2022-700012
包装材
- 審判番号
- 2022-700012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-053067
- 登録番号
- 6901712
- 請求日
- 2022年01月07日
- 審決日
- 2023年03月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】森 隆一郎
- 【権利者代理人】飯田 雅人
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.161-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6901712号発明「包装材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6901712号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
特許第6901712号の請求項3、5、6、9ないし14に係る特許を維持する。
特許第6901712号の請求項1、2、4、7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6901712号(以下「本件特許」という)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成28年3月16日の特許出願であって、令和3年6月22日に特許権の設定登録がされ、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立ては、本件特許のすべての請求項に係る特許を対象としたものであって、その手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年1月7日 :特許異議申立人千野肇(以下「申立人」という)による特許異議の申立て
同年3月30日付け :取消理由の通知
同年6月2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年7月27日 :申立人による意見書の提出
同年9月20日付け :取消理由の通知(決定の予告)
同年11月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、申立人に、令和4年11月18日提出の訂正請求書を送付したが、意見書は提出されなかった。また、特許権者が令和4年6月2日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年11月18日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6901712号の明細書、及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」というものであって、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
請求項1、2を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項3の
「最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする包装材。」を、
「前記樹脂Bがポリスチレンであり、
最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする包装材。」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項5、6、9~14の記載も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
請求項4、7、8を削除する。
(4)訂正事項4
請求項5、6、9、12の記載をそれぞれ次のように訂正する(また、これらの各請求項を引用して記載する請求項も同様に訂正する。)。
・「【請求項5】
前記最内層表面に存在する前記樹脂Bに油分が吸着、吸油又は溶解することにより、油膜潤滑層が形成されている、請求項3に記載の包装材。」
・「【請求項6】
前記相分離構造が海島状、針状又はマトリックス状である、請求項3又は5に記載の包装材。」
・「【請求項9】
さらに、ガスバリア性を有する樹脂層を備える、請求項3、5、6のいずれか一項に記載の包装材。」
・「【請求項12】
請求項3、5、6、9~11のいずれか一項に記載の包装材に収容されたことを特徴とする食品。」
(5)訂正事項5
明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】を、
「【0012】
本発明は以下の態様を含む。
[3]主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成しており、前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であり、前記樹脂Bがポリスチレンであり、最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする包装材。
[5]前記最内層表面に存在する前記樹脂Bに油分が吸着、吸油又は溶解することにより、油膜潤滑層が形成されている、[3]に記載の包装材。
[6]前記相分離構造が海島状、針状又はマトリックス状である、[3]又は[5]に記載の包装材。
[9]さらに、ガスバリア性を有する樹脂層を備える、[3]、[5]、[6]のいずれか一つに記載の包装材。
[10]包装材の最外面から、低密度ポリエチレンを含む最外層、前記ガスバリア性を有する樹脂層及び前記最内層の順に層構造が形成された、[9]に記載の包装材。
[11]さらに、前記低密度ポリエチレンを含む樹脂層と前記ガスバリア性を有する樹脂層との間、及び前記ガスバリア性を有する樹脂層と前記最内層との間に接着層を備える、[10]に記載の包装材。
[12][3]、[5]、[6]、[9]~[11]のいずれか一つに記載の包装材に収容されたことを特徴とする食品。
[13]前記食品がマヨネーズ類である、[12]に記載の食品。
[14]前記マヨネーズ類の油含有量が5重量%以上45重量%以下である、[13]に記載の食品。」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】を、
「【0020】
[樹脂B]
本実施形態において、樹脂Bとしては、上記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂、つまり、樹脂Aよりも油分に対する親和性が高く、油分に溶解又は混和しやすい樹脂であれば特別な限定はない。樹脂Bとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリ環状オレフィン、環状オレフィン系共重合体、環状オレフィン系共重合体、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン) ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS) 、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体 、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体等が挙げられ、又は、これらの混合物でもよい。中でも、樹脂Bとしては、ポリスチレンが好ましい。」に訂正する。
(7)本件訂正前の請求項1~14について、請求項1、請求項3がいずれも独立請求項であるところ、請求項2、5~14の記載は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであり、請求項4~14の記載は、請求項3の記載を直接的又は間接的に引用しているものであるから、これら請求項〔1-14〕は、一群の請求項を構成している。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1、3について
訂正事項1、3は、請求項1、2、4、7、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1、3によって、発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではなく、また、訂正事項1、3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という)に記載した事項の範囲内のものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3に記載された「樹脂B」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2における「樹脂B」は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7及び明細書の段落【0020】等に記載されていたものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2によって請求項4、7を削除することに伴い、請求項の記載において引用する請求項から請求項4、7を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4は、それにより発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、訂正事項1~4によって特許請求の範囲の記載が訂正されることに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5、6は、それにより発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正を認めることができるので、本件特許の請求項1~14に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(これらの各発明を以下「本件発明1」のようにいう。)。
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂Bと、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、
前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成しており、
前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であり、
前記樹脂Bがポリスチレンであり、
最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする包装材。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記最内層表面に存在する前記樹脂Bに油分が吸着、吸油又は溶解することにより、油膜潤滑層が形成されている、請求項3に記載の包装材。
【請求項6】
前記相分離構造が海島状、針状又はマトリックス状である、請求項3又は5に記載の包装材。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
さらに、ガスバリア性を有する樹脂層を備える、請求項3、5、6のいずれか一項に記載の包装材。
【請求項10】
包装材の最外面から、低密度ポリエチレンを含む最外層、前記ガスバリア性を有する樹脂層及び前記最内層の順に層構造が形成された、請求項9に記載の包装材。
【請求項11】
さらに、前記低密度ポリエチレンを含む最外層と前記ガスバリア性を有する樹脂層との間、及び前記ガスバリア性を有する樹脂層と前記最内層との間に接着層を備える、請求項10に記載の包装材。
【請求項12】
請求項3、5、6、9~11のいずれか一項に記載の包装材に収容されたことを特徴とする食品。
【請求項13】
前記食品がマヨネーズ類である、請求項12に記載の食品。
【請求項14】
前記マヨネーズ類の油含有量が5重量%以上45重量%以下である、請求項13に記載の食品。
第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して令和4年9月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
・(新規性)本件特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・(進歩性)本件特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・引用文献1:特開2008-279662号公報(甲第1号証)
・引用文献2:特開2015-151131号公報(甲第2号証)
・引用文献6:特開2012-148811号公報(甲第6号証)
2 取消理由についての判断
新規性(特許法第29条第1項第3号)、進歩性(同法同条第2項)について
(1)引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、剛性、透明性、表面光沢性、耐熱性とともに低温耐衝撃性に優れ、特に高温内容物の充填時の透明性および滑り性に優れた多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装用ボトルとして従来から多層構造を有するプラスチック製のものが用いられてきた。当該多層ボトルは内容物の保存性の観点より中間層として酸素バリア性の高いエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのバリア性樹脂を配置した多層構造として構成されまた、内容物および用途に応じて内外層に用いられる樹脂が選択される。例えば、軟質でスクイーズ性を必要とする場合には低密度ポリエチレンが用いられ、耐熱性および剛性を必要とする場合にはポリプロピレンが用いられる。
【0003】
ところが、一般にポリプロピレンは低温における耐衝撃性が低く、落下によるボトルの破損が生じやすい。このため、種々の方法により低温時の落下強度を向上させることが行なわれてきた。例えば、特許文献1には低温耐衝撃性を向上させるためにポリプロピレン樹脂に5~20重量部の直鎖低密度ポリエチレンと2~20重量部のオレフィン系の軟質エラストマーを配合した樹脂からなるブロー成形製のボトルが開示されている。ポリプロピレンに添加される上記直鎖状ポリエチレンまたはオレフィン系エラストマー等の軟質樹脂はその密度に依存して低温耐衝撃性を改善させることができるが、一方で容器の剛性と高温充填時の透明性が過度に低下し、容器表面が軟質となり傷つき易いという問題があった。
【0004】
このため、ポリプロピレンに添加する低温耐衝撃性および透明性の改質樹脂としてスチレン系エラストマーを用いることが提案されている。例えば、特許文献2または3にはプロピレンのホモポリマーまたはブロックコポリマーにスチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加ポリマーを配合することにより透明性を低下させることなく、耐衝撃性を改善させた多層容器が開示されている。
【0005】
しかし、内容物としてタレ、ソース、ケチャップ、ドレッシングなどの液状または半液状の調味料が充填される用途にあっては、内容物は充填時に高温(例えば70℃)の状態にてボトルへ注入され、その後低温にて保存される。従来のスチレン系エラストマーを配合したものにあっては低温耐衝撃性が充分でなく、さらに高温充填により透明性および充填ライン上での滑り性が劣るものであった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、低温耐衝撃性を改善するとともに耐熱性および高温充填時の透明性および滑り性の良好な多層ボトルを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、多層ボトルの最外層を構成する熱可塑性樹脂をプロピレン・α-オレフィンランダムコポリマーとスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBSエラストマー)とのブレンド樹脂とし、かつスチレン含有量が12wt%好ましくは10wt%以下のSEBSエラストマーを用い、さらに最外層を構成する熱可塑性樹脂に対して2000ppm以下の有機滑剤が添加ることにより低温耐衝撃性および高温充填時の透明性および滑り性の良好なボトルが得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。」
「【0012】
また、酸素バリア性を有する中間層には30℃-60%RHにおける酸素透過率が10(cc・20μm/m2・day・atm)以下、好ましくは1.0(cc・20μm/m2・day・atm)以下の熱可塑性樹脂で、融点が180℃以上であり、好ましくは185℃以上、さらに好ましくは190℃以上のものが好適に用いられる。前記酸素バリア性を有する樹脂としてはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が好適であり、一般にエチレン含有量が60mol%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化度90%以上にケン化したものが用いられる。」
「【実施例】
【0014】
各実施例の多層構造体からなる多層ボトルを形成し、この多層ボトルの性能を、以下の測定法及び基準により評価した。多層ボトルはブロー成形により形成された容量500mlのものであり、胴部における総膜厚が400~600μmで、以下の層構成とした。
3種5層構造:外層側より、最外層/接着層/中間層/接着層/最内層 各層の膜厚比率は最外層42%、接着層1.5%、中間層4%、最内層50%であった。
【0015】
[実施例1]
上記層構成からなるブロー成形製の多層ボトルを形成した。外層および内層を構成する樹脂としてプロピレン・α-オレフィンランダムコポリマー90wt%にスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー10wt%を配合した熱可塑性樹脂を用いた。スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマーはスチレン含有量が10wt%のものを用いた。また、内外層を構成する熱可塑性樹脂には滑剤として公知の脂肪酸アマイド系滑剤を1000ppmを添加した。さらに、中間層を構成する樹脂としてエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いた。エチレン-ビニルアルコール共重合体はエチレン含有量32mol%、ケン化度99%の日本合成化学株式会社製ソアノールDC3212Bを用いた。また、接着層を構成する樹脂として変性ポリオレフィン樹脂を用いた。変性ポリオレフィン樹脂は三菱化学株式会社製モディックP512Vを用いた。ラインでの滑り性も良好で、ライン上でボトルの詰まりが発生することなく傷つきによる透明性または光沢性の低下も見られなかった。
【0016】
[実施例2]
上記層構成からなるブロー成形製の多層ボトルを形成した。外層および内層を構成する樹脂としてプロピレン・α-オレフィンランダムコポリマー95wt%にスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー5wt%を配合した熱可塑性樹脂を用いた以外は実施例1と同様とした。
【0017】
[実施例3]
上記層構成からなるブロー成形製の多層ボトルを形成した。各層を構成する樹脂として、内外層を構成する樹脂をプロピレン・α-オレフィンランダムコポリマーに配合するスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマーをスチレン含有量が12wt%のものとした以外は実施例1と同様とした。スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマーはスチレン含有量が12wt%のものを用いた。
【0018】
[実施例4]
上記層構成からなるブロー成形製の多層ボトルを形成した。外層および内層を構成する樹脂としてプロピレン・α-オレフィンランダムコポリマー95wt%にスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー5wt%を配合した熱可塑性樹脂を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0019】
[実施例5]
上記層構成からなるブロー成形製の多層ボトルを形成した。内外層を構成する熱可塑性樹脂には滑剤として実施例1で用いた公知の脂肪酸アマイド系滑剤を500ppmを添加した以外は実施例1と同様とした。ラインでの滑り性が悪く、ライン上でボトルの詰まりが発生した。また、傷つきによる透明性および光沢性の低下が見られた。」
「【0024】
【表1】
[図:0001398232000001.jpg]
」
以上の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「最外層/接着層/中間層/接着層/最内層の3種5層構造で構成された多層ボトルであって、
前記最外層及び最内層が、プロピレン・α-オレフィンランダムコポリマーとスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBSエラストマー)とのブレンド樹脂により構成し、
前記中間層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を用いた酸素バリア性を有する樹脂で構成され、
前記ブレンド樹脂は、プロピレン・α-オレフィンランダムコポリマーを90重量%または95重量%とし、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマーを10重量%または5重量%で配合してなる多層ボトル。」
イ 引用文献2には以下の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズに代表される水中油型乳化物を内容物とする包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、成形が容易であり、種々の形態に容易に成形できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
【0005】
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
【0006】
上述した特許文献1~3は、何れもプラスチック容器について、容器内面を形成する熱可塑性樹脂組成物の化学組成によって内容物に対する滑り性を向上させたものであり、ある程度の滑り性向上は達成されているが、用いる熱可塑性樹脂の種類や添加剤が限定される為、滑り性向上には限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
特に、油滴が水に分散する水中油型(0/W型)乳化物を内容物とする場合には、この内容物が完全に排出されず、どうしても容器内に内容物が残存してしまうという問題が顕著であり、さらなる改良が望まれている。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、水中油型乳化物が内容物として収容された包装容器について、内容物の排出性を高め、容器内に残存することなく、内容物を排出せしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、内容物と接触する内表面に液層が形成されているプラスチック容器を提案している(例えば、特願2012-199236号、特願2013-23468号及び特願2013-091244号)。
即ち、これらは、何れも内容物と非混和性の液体による液層を形成することにより内容物に対する滑り性を従来公知のものに比して格段に向上させることに成功したものであり、容器を倒立或いは傾倒せしめることにより、容器内壁に付着・残存させることなく、内容物を速やかに容器外に排出することが可能となっている。
本発明は、これらで提案されている液層を容器内面に設けるという技術を水中油型乳化物が内容物として収容された包装容器に適用した技術である。
【0010】
即ち、本発明によれば、水中油型乳化物が収容された包装容器であって、該水中油型乳化物が接触する容器内面に、油膜が形成されていることを特徴とする包装容器が提供される。」
「【0014】
<容器材質、形態及び層構造>
本発明の包装容器は、容器内容物が接触する内面に後述する油膜が形成されている限り、容器の材質は、各種プラスチック、紙、金属、ガラス等であってよいが、一般に、少なくとも内面がプラスチックで形成されていることが好ましい。
【0015】
このような容器内面を形成するプラスチックとしては、一般に、容器内面を形成することが可能であれば特に制限されず、任意のプラスチックで形成されていてよいが、一般的には、容器素材として従来から使用されているポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやオレフィン系樹脂などが好適であり、特に油膜の下地として最適であると同時に、可撓性に富んだ絞りだしダイレクトブローボトルの成形にも好適であるという点で、オレフィン系樹脂例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンなどにより形成されることが最も好適である。勿論、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等が最も好適である。また、特開2007-284066号等に開示されている環状オレフィン共重合体も好適である。
【0016】
本発明の包装容器においては、その内面に油膜が形成される限り、種々の形態を採ることができる。
例えば、紙容器、ガラス容器や金属容器の内面に、前述した油膜の保持に適した前記プラスチック材料で形成されたプラスチックのコーティング層が形成された態様とすることもできるし、さらには、油膜の保持に適した前記プラスチック材料により容器壁が形成された単層構造或いは多層構造のプラスチック容器とすることもできる。 特に容器壁がプラスチックで形成されたプラスチック容器では、油膜の保持に適した前記プラスチック材料により内面層が形成され、中間層としてエチレン-ビニルアルコール共重合体等からなるガスバリア層を設けた多層構造とすることが好適である。さらには、このような多層構造の容器では、容器を形成する際に生じるスクラップを含むリグラインド層を中間層として設けることもできるし、さらに、多層構造とする場合には、各層との接着性を高めるために、公知の接着剤樹脂層を適宜設けることもできる。」
「【0040】
<実験例1>
各種層を形成する樹脂ならびに内面に液層を形成するための油性液体として、以下のものを用意した。
最内層形成用樹脂;
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3/10min (190℃、2.16Kg)
密度:0.922g/cm3
環状オレフィン系樹脂(COC);エチレン-テトラシクロドデセン共重合体
MFR:30g/10min (260℃、2.16Kg)
密度:1.02g/cm3
Tg:80℃
最外層形成用樹脂;
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3g/10min
密度:0.92g/cm3
第2外層用樹脂;
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR:0.3g/10min
密度:0.92g/cm3
接着剤層形成用樹脂;
無水マレイン酸変性ポリエチレン
ガスバリア層形成用樹脂;
エチレンビニルアルコール共重合体
密度:1.19g/cm3
Tg:69℃
油膜形成用油性液体;
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上(引火点:242℃(参考値))
分子量:504
【0041】
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA-130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV-10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0042】
40mm押出機に、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)と環状オレフィン系樹脂(COC)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とが100/14/6(重量部)の割合からなる樹脂組成物のペレット、30mm押出機Aに最外層形成用樹脂ペレット、50mm押出機に第2外層形成用樹脂ペレット、30mm押出機Bに接着剤層形成用樹脂ペレット、及び30mm押出機Cにガスバリア層形成用樹脂ペレットをそれぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度20℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの5種6層の多層ボトルを作製した。
作製したボトルを用い、前述の液体被覆率の測定、ボトル形状での残存量試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0043】
このボトルの胴部層構成は以下の通りである。
最外層:40μm
第2外層:250μm
接着材層:10μm
ガスバリア層:20μm
接着材層:10μm
最内層:80μm (最内層比20%)」
以上の記載を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「マヨネーズに代表される水中油型乳化物を内容物とする包装容器であって、
前記包装容器は、最外層、第2外層、接着材層、ガスバリア層、接着材層、最内層の5種6層の多層ボトルで構成されており、
前記最内層は、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)と環状オレフィン系樹脂(COC)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とが100/14/6(重量部)の割合からなる樹脂組成物からなり、
前記ガスバリア層は、エチレンビニルアルコール共重合体からなる樹脂であり、
前記最外層及び第2外層は、低密度ポリエチレン(LDPE)である、
包装容器。」
ウ 引用文献6には以下の記載がある。
「【0053】
[層構成]
プラスチック容器1のA部(図1参照)の層構成については、次の第1の樹脂組成物による層(以下、「第1樹脂層」)、及び/又は、第2の樹脂組成物による層(以下、「第2樹脂層」)を含む層構成を種々に変更して試行し、下記の実施例5ないし9と比較例6ないし12を得た。
第1樹脂層:ポリプロピレン(r-PP)に、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)を配合、混練して得られた樹脂組成物による層。
第2樹脂層:ポリプロピレン(r-PP)に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)を配合、混練して得られた樹脂組成物による層。
【0054】
[実施例5]
第1樹脂層につき、混合物合計100重量%として、ランダムポリプロピレン(r-PP 密度:0.890g/cm3、MFR(230℃、2.16kg):1.50g/10min、融点:132℃)を85重量%を用い、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS 密度:0.890g/cm3、MFR(230℃、2.16kg):1.50g/10min、融点:132℃)を10重量%配合し、さらに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 密度:0.908g/cm3、MFR(190℃、2.16kg):0.90g/10min、融点:125℃)を5重量%配合し、混練して作製したものを用いた。
第2樹脂層につき、混合物合計100重量%として、ランダムポリプロピレン(r-PP密度:0.890g/cm3、MFR(230℃、2.16kg): 3.43g/10min、融点:132℃)を85重量%用い、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 密度:0.895g/cm3、MFR(190℃、2.16kg):9.34g/10min、融点:99℃)を10重量%と、低密度ポリエチレン(LDPE 密度:0.919g/cm3、MFR(190℃、2.16kg):1.05g/10min、融点:107℃)を5重量%配合して混練して作製したものを用いた。
層構成につき、内層側から順に膜厚比30:30:1:3:1:35として次の層構成にて作製した。なお、EVOHはガスバリア層であり、日本合成化学工業株式会社社製ソアノール DC3212Bを用いた。
第1樹脂層/第2樹脂層/接着/EVOH/接着/第1樹脂層」
「【0072】
1 プラスチック容器
2 内層
3 中間層
4 接着層
5 ガスバリア層
6 外層」
「【図1】
[図:0001398232000002.jpg]
【図2】
[図:0001398232000003.jpg]
」
以上の記載を総合すると、引用文献6には次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明6)
「多層構造のプラスチック容器であって、
内層2としてランダムポリプロピレン85重量%と、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)10重量%、直鎖状低密度ポリエチレン5重量%を配合、混練したものを用い、
ガスバリア層5としてEVOHを用いてなる
多層構造のプラスチック容器。」
(2)対比・判断
ア 本件発明3について
(ア)引用発明2について
本件発明3と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「最内層」を構成する部分の組成に着目する。
引用発明2の「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)」は、本件発明3の「前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)である」に含まれるから、本件発明3の「樹脂A」に相当する。
また、上記引用発明2の「最内層」を構成する部分の組成とされた材料は、「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)」の含有量が最も大きいので、引用発明2の「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)」は、本件発明3の「主材料である樹脂A」との特定も充足する。
b 引用発明2の「環状オレフィン系樹脂(COC)」と本件発明3の「樹脂B」は、いずれも、「最内層」が備える「樹脂層」に[樹脂A]とともに含まれる樹脂であるという点で共通しており、それらを「樹脂B」と称することができる。
そして、引用発明2の最内層の樹脂層における「環状オレフィン系樹脂」の含有量は、「最内層は、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、MFR=0.3)と環状オレフィン系樹脂(COC)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とが100/14/6(重量部)の割合からなる」とされていることから、本件発明3の「最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下である」という特定事項を充足するものである。
c そうすると、本件発明3と引用発明2の一致点、相違点は、以下のようにまとめられる。
<一致点>
主材料である樹脂Aと、樹脂Bと、を含む樹脂層を最内層に備える包装材であって、
前記樹脂Aが低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)又はポリプロピレン(PP)であり、
最内層を形成する樹脂中の前記樹脂Bの含有量が1重量%以上30重量%以下である包装材。
<相違点1>
本件発明3の「樹脂B」は、「前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する」と特定されているのに対し、引用発明2は該特定が明記されていない点。
<相違点2>
本件発明3は、「前記樹脂Aと前記樹脂Bとが相分離構造を形成しており」と特定されているのに対し、引用発明2は該特定が明記されていない点。
<相違点3>
「樹脂B」が、本件発明3では「ポリスチレン」であるのに対して、引用発明2では、「環状オレフィン系樹脂(COC)」である点。
d 判断
事案に鑑み、相違点3から検討を始める。
相違点3は、実質的なものであり、引用発明2の「環状オレフィン系樹脂(COC)」を「ポリスチレン」に変更することが当業者に動機付けられるものではない。
したがって、引用発明2において相違点3に係る本件発明3の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
そうすると、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明3の構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易に採用し得たものではない。
(イ)引用発明1について
本件発明3と引用発明1とを対比すると、本件発明3と引用発明2を対比した際と同様に、両発明の相違点として、“「樹脂B」が、本件発明3では「ポリスチレン」であるのに対して、引用発明1では、「スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBSエラストマー)」である点。”が含まれる(以下、これを「相違点3-2」という。)。
前述した相違点3と同様に、この相違点3-2も実質的なものであり、引用発明1の「スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBSエラストマー)」を「ポリスチレン」に変更することが当業者に動機付けられるものではない。
したがって、引用発明1において相違点3-2に係る本件発明3の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)引用発明6について
本件発明3と引用発明6とを対比すると、本件発明3と引用発明2を対比した際と同様に、両発明の相違点として、“「樹脂B」が、本件発明3では「ポリスチレン」であるのに対して、引用発明6では、「スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)」である点”が含まれる(以下、これを「相違点3-3」という。)。
前述した相違点3と同様に、この相違点3-3も実質的なものであり、引用発明6の「スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)」を「ポリスチレン」に変更することが当業者に動機付けられるものではない。
したがって、引用発明6において相違点3-3に係る本件発明3の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
(エ)まとめ
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明1、2又は6ではなく、また、引用発明1、2又は6に基いて当業者が容易に発明し得たものではないといえる。
イ 本件発明5、6、9~14について
本件発明5、6、9~14は、本件発明3の発明特定事項を全て含んだ上で限定が付加されたものであるから、引用発明1、2又は6と対比すると、少なくとも上記アで述べた本件発明3と引用発明1、2又は6の相違点3、相違点3-2又は相違点3-3が存在することは明らかである。
そして、相違点3、相違点3-2又は相違点3-3についての判断は、既に上記アで述べたとおりであるから、本件発明5、6、9~14は、いずれも、引用発明1、2又は6ではなく、また、引用発明1、2又は6に基いて当業者が容易に発明し得たものでもない。
ウ 以上のとおりであるから、本件発明3、5、6、9~14は、いずれも、特許法第29条第1項第3号の規定に該当しないし、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。
したがって、本件発明3、5、6、9~14に係る特許は、いずれも、特許法第113条第2号に該当しない。
3 令和4年9月20日付け取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)明確性(特許法第36条第6項第2号)について
ア 本件訂正前の請求項1及び2の記載に、「樹脂A」及び「樹脂B」について、「主材料」に係る矛盾が存在していたが、これは、本件訂正により解消した。
イ 本件訂正前の請求項1及び3の「油分に対する高い相溶性を有する」とした記載は、発明の包装材を構成する「樹脂A」と「樹脂B」の特定として明確でなかったが、本件訂正により請求項1が削除されるとともに請求項3の記載において「樹脂B」の具体的な物質名が特定されたことにより、「主材料である樹脂Aと、前記樹脂Aよりも油分に対する高い相溶性を有する樹脂B」という発明特定事項の内容は明確になったといえる。
ウ 本件訂正前の請求項7に記載の「樹脂B」に「ゼオライト」、「親油性粒子又は親油性無機物を添加した樹脂」が含まれていることは、技術的に不適切であったが、本件訂正により各請求項には「樹脂B」として「ゼオライト」も「親油性粒子又は親油性無機物を添加した樹脂」も含まれないものとなったので、この点も解消した。
「樹脂B」に性状としてエラストマーのものが含まれるが、そのことによって発明の技術的範囲が不明確となり、第三者の利益が不当に害されるとは認められない。
(2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
本件訂正前の請求項1~2及び請求項4を引用する請求項7、請求項7を引用する請求項8~14の発明には、相溶化剤と樹脂Bとが共に含まれる場合が含まれていたところ、発明の詳細な説明に記載された相溶化剤の物質には物質Bと重複するものが挙げられていたが、本件訂正により、各請求項の記載に相溶化剤が含まれないものとなった。
本件各発明は、最内層たる樹脂層として「物質B」として特定された「ポリスチレン」が1重量%以上30重量%以下含有させることで実施可能であると理解する。
したがって、この点に関する不備も解消した。
(3)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
申立人は、樹脂Bについて、発明の詳細な説明(実施例)に開示されていないポリマーにまで発明を拡張したものである旨主張するが、本件訂正により「樹脂B」は「ポリスチレン」と特定され、実施例に用いられたものにまで限定されており、申立人の主張は採用できない。
(4)新規性(特許法第29条第1項第3号)及び進歩性(同法同条第2項)について
ア 甲第3号証(特開2014-213934号公報)に基づくもの
甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「外層2、接着層3、ガスバリア層4、接着層3、中間層5、内層6の多層構造とされた食品用ボトルであるプラスチック容器であって、
前記外層2及び前記内層6は、ポリプロピレン(PP)と、ポリエチレン系エラストマー(PE系エラストマー)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とを配合し混練してなり、
前記配合比は、r-PP/LLDPE/LDPE/PE系エラストマー1=84.6/9.4/1/5である、
プラスチック容器。」
本件発明3と甲3発明を対比すると、両発明が、“最内層において、本件発明3が樹脂Bとして「ポリスチレン」を含むのに対して、甲3発明が「ポリスチレン」を含まない点”で相違することは明らかである。
そして、この相違点は、実質的なものであるし、甲3発明においてその最内層に「ポリスチレン」を含ませることが容易であったとはいえないから、本件発明3は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。
また、本件発明5、6、9~14は、いずれも、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明し得たものではない。
イ 甲第4号証(国際公開第2014/123217号)に基づくもの
甲第4号証には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「最内層樹脂、最外層樹脂、第2内層樹脂、接着材層樹脂、ガスバリア層樹脂を有する多層ボトルであって、
最外層樹脂は低密度ポリエチレンからなり、
前記最内層樹脂は、高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE、MFR=2.2、融点=60℃、低結晶性)、および中鎖脂肪酸トリグリセライドが82/15/3(wt%)の割合からなる多層ボトル。」
本件発明3と甲4発明を対比すると、両発明が、“最内層において、本件発明3が樹脂Bとして「ポリスチレン」を含むのに対して、甲4発明が「ポリスチレン」を含まない点”で相違することは明らかである。
そうすると、本件発明3、並びに、本件発明3の発明特定事項を全て含んだ上で限定が付加された本件発明5、6、9~14も、甲4発明ではなく、また、甲4発明に基いて当業者が容易に発明し得たものでもない。
ウ 甲第5号証(特開平6-99481号公報)に基づくもの
甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「最内層を成形するための成形材料として、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを重量比で7対3にブレンドしたものを用いた多層ポリエチレン容器。」
本件発明3と甲5発明を対比すると、両発明が、“最内層において、本件発明3が樹脂Bとして「ポリスチレン」を含むのに対して、甲5発明が「ポリスチレン」を含まない点”で相違することは明らかである。
そうすると、本件発明3も、本件発明5、6、9~14も、甲5発明ではなく、また、甲5発明に基いて当業者が容易に発明し得たものでもない。
エ 甲第7号証(特開2014-84389号公報)に基づくもの
甲第7号証には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
「多層構造のボトルであって、
最内層が、ランダムポリプロピレンと、水添スチレンブタジエンゴムと、ブリード性添加剤としてのエチレンビスステアリン酸アミドと、を88/10/2(重量%)の割合、93/5/2の割合、78/20/2、68/30/2の割合、58/40/2の割合、又は89/10/1の割合のいずれかとなるよう配合したものとし、
ガスバリア層にエチレンビニルアルコール共重合体からなる層を含む、
多層構造のボトル。」
本件発明3と甲7発明を対比すると、両発明が、“最内層において、本件発明3が樹脂Bとして「ポリスチレン」を含むのに対して、甲7発明が「ポリスチレン」を含まない点”で相違することは明らかである。
そうすると、本件発明3も、本件発明5、6、9~14も、甲7発明ではなく、また、甲7発明に基いて当業者が容易に発明し得たものでもない。
(5)拡大先願(特許法第29条の2)について
ア 申立人は、本件訂正前の請求項1~14に係る発明は、本件特許に係る出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2016-507941号(国際公開2016/076410号)(以下「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨主張する。
イ 先願明細書等には、「水性液状体に対する滑り性に優れた中空成形体」に関し、実施例として、中空成形体である多層容器の最内層形成樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例1)、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例2)、低密度ポリエチレン(LDPE)とポリプロピレン(PP)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例3)、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例4)、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例5)、低密度ポリエチレン(LDPE)とステアリン酸カルシウム(StCa)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とからなる樹脂組成物を用いたもの(実施例6)が示されている。
これらの実施例において、「低密度ポリエチレン(LDPE)」が本件各発明における「樹脂A」に相当するとしても、本件各発明における「樹脂B」(ポリスチレン)が含まれているといえるものではない。
そうすると、本件各発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
ウ したがって、申立人の特許法第29条の2の規定を根拠とした上記主張は、採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項3、5、6、9~14に係る特許は、特許権者に通知した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項3、5、6、9~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1、2、4、7、8に係る特許についての特許異議の申立ては、当該請求項1、2、4、7、8が本件訂正により削除されたことによりその対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700012