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特許異議申立

2019-700145

ドライバの運転不能状態検出装置

審判番号
2019-700145
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-128388
登録番号
特許第6379720号(P6379720)
請求日
2019年02月25日
審決日
2019年10月03日
公報発行日
2020年03月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社デンソー
  • 【権利者代理人】山田 強
  • 【権利者代理人】日野 京子
  • 【権利者代理人】松田 洋
  • 【異議申立人】田中 貞嗣
  • 【異議申立人】小山 卓志
審判長/審判官
  • 審判長 柿崎 拓
  • 審判官 長馬 望
  • 審判官 窪田 治彦
分類
P1651.113-ZC (G08G) / P1651.121-ZC (G08G) / P1651.537-ZC (G08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項特許法29条2項特許法113条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6379720号発明「ドライバの運転不能状態検出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

特許第6379720号の請求項1、2、5、7、13、14に係る特許を取り消す。 同請求項3、4、6、8ないし12、15ないし17に係る特許を維持する。

理由

第1 手続の経緯 特許第6379720号の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、平成26年6月23日に出願され、平成30年8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月29日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 2月25日  : 特許異議申立人 田中 貞嗣、小山 卓志による請求項1~17に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 元年 5月23日付け: 取消理由通知書 なお、取消理由通知に対し、特許権者から何ら応答はなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明17」といい、本件発明1ないし17を総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。 【請求項1】 車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)と、 前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する向き崩れ状態検出手段(73)と、を備えることを特徴とするドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項2】 車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)と、 前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つ前記ドライバが前記車両のハンドル(15)を放している場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する向き崩れ状態検出手段(73)と、を備えることを特徴とするドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項3】 車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)と、 前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つアクセル開度が所定開度よりも大きい場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する向き崩れ状態検出手段(73)と、を備えることを特徴とするドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項4】 車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)と、 前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つ操作判定時間(T3)よりも長い時間アクセル操作及びブレーキ操作が行われていない場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する向き崩れ状態検出手段(73)と、を備えることを特徴とするドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項5】 前記向き崩れ状態検出手段は、操作判定時間よりも長い時間、前記ドライバが前記ハンドルを放していることを条件として、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する請求項2に記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項6】 前記向き崩れ状態検出手段は、操作判定時間よりも長い時間、前記アクセル開度が前記所定開度よりも大きいことを条件として、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する請求項3に記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項7】 前記向き崩れ状態検出手段は、向き崩れ判定時間を超えて前記顔の向きが前記顔向き閾値よりも大きいことを条件として、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する請求項2~6のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項8】 前記向き崩れ状態検出手段は更に、前記顔が、下向き閾値(Th2d)よりも大きく下側に向いている、又は上向き閾値(Th2u)よりも大きく上側に向いている場合にも、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する請求項7に記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項9】 前記向き崩れ状態検出手段は、前記ドライバの手が前記ドライバの首よりも下にあることを条件として、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する請求項1、7、8に記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項10】 前記ドライバが運転不能状態でない場合において、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きを学習する学習手段(51)と、を備え、 前記向き崩れ状態検出手段は、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、前記学習手段により学習された前記顔の向きよりも、傾き判定値(D1)を超えて大きいことを条件として、前記ドライバが運転不能であることを検出する請求項1、7~9のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項11】 前記画像に基づいて、前記ドライバの首よりも上の頭部を検出する頭部検出手段(61)と、 前記向き崩れ状態検出手段により前記ドライバが運転不能状態であると検出されなかった場合に、前記車両に外力が加わってから揺れ判定時間(T5)経過するまでの間において、前記頭部の揺れの振幅が第1振幅(Am1)よりも小さい、又は前記第1振幅よりも大きい第2振幅(Am2)よりも大きいときに、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する揺れ状態検出手段(74)を備える請求項1、7~10のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項12】 前記ドライバの痙攣を検出する痙攣検出手段(63)を備え、 前記痙攣検出手段により前記痙攣が検出された場合に、前記顔向き閾値を縮小する請求項1、7~11のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項13】 前記車両の車速が高いほど、前記向き崩れ判定時間(T2)を短くする請求項1、7~12のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項14】 先行車両との車間距離を前記先行車両との相対速度で除した衝突余裕時間が短いほど、前記向き崩れ判定時間を短くする請求項1、7~13のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項15】 前記ドライバの病歴及び年齢を含む個人情報が登録された記憶手段(52)を備え、 前記記憶手段に登録された個人情報に基づいて、前記向き崩れ判定時間を設定する請求項1、7~14のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項16】 前記車両において運転支援制御が実行されている場合には、前記向き崩れ判定時間を延長する請求項1、7~15のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 【請求項17】 前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きに基づいて、前記ドライバの姿勢の崩れ度合を前記ドライバに報知する姿勢報知手段(80)を備える請求項1~16のいずれかに記載のドライバの運転不能状態検出装置。 第3 取消理由の概要 請求項1、2、5、7、13及び14に係る特許に対して、当審が令和元年5月23日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1.請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2013/008300号(甲第1号証。以下、「甲1」という。)又は特開平10-960号公報(甲第2号証。以下、「甲2」という。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2.請求項2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3.請求項5及び7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項5及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 4.請求項1、2、5及び7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1及び甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5.請求項13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1、甲2及び特開平7-57172号公報(甲第3号証。以下、「甲3」という。)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 6.請求項14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1ないし3に記載された発明並びに周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第4 引用文献の記載 1.甲1に記載された事項及び甲1発明 (1)甲1に記載された事項について 取消理由で通知した甲1には、図面と共に、以下のア.ないし シ.に示す事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。) ア.「[0001] 本発明は、自動車等の車両に於いて運転者の緊急時に車両を自動的に停止させる緊急退避装置に係り、より詳細には、緊急退避装置に於いて用いられる自動停車制御の実行開始のための運転者により操作されるスイッチ又は指示入力装置に係る。」 イ.「[0007]かくして、本発明の主な課題は、運転者の緊急時に運転者自身のスイッチ又は指示入力装置を通じた入力に応答して自動的な停車制御を実行する車両の緊急退避装置に於いて、運転者の体調の悪化又は異常時に、指示入力が容易に与えられるよう構成されたスイッチ又は指示入力装置を提供することである。 [0008]更に、本発明の更なる課題は、上記の如き車両の緊急退避装置の運転者により操作されるスイッチ又は指示入力装置に対して、運転者の体調が正常であるときには、誤って指示入力が与えられないようにすることである。」 ウ.「[0010] 上記の本発明の装置は、基本的には、運転者が自身の体調の異常又は悪化等の要因により運転の続行が困難であることを感じたときなどに、運転者指示入力部の受容器(即ち、スイッチ又は指示入力装置)に対して車両の自動的な停止の要求を指示する運転者の入力に対応して、車両を自動的に停止できるよう構成される。しかしながら、既に触れた如く、運転者の体調の異常又は悪化の際には、運転者の運動能力が低下している状態にあると想定されるので、そのような状態でも運転者が容易に指示入力を受容器に与えられるようにすべきところ、運転者の体調が正常なときにも受容器に容易に指示入力が与えられるようになっていると、例えば、運転者の受容器に対する意図しない接触により、指示入力があったと誤認識され、自動停車制御の実行が誤って開始されてしまうといったことが起き得る。そこで、上記の如き自動停車制御の誤作動を防止すべく、本発明の装置は、運転者を撮像する運転者カメラなどの運転者状態監視部により運転者の体調を監視し、体調の異常又は悪化が検出されたときのみに、受容器を、運転者からの指示入力の受容可能な状態にするよう構成される。……」 エ.「[0012] 上記の本発明の構成に於いて、運転者の体調の監視は、上記の如く、運転者カメラにより撮影された運転者の画像に於いて、任意の手法により、例えば、非特許文献1又は特許文献4に記載された手法により検出される顔及び/又は上半身の像を用いて為されてよい。その場合、運転者の画像に基づいて決定された運転者の顔が下を向いている時間が所定時間を越えているとき、運転者の体調が異常であると判定されてよい。ここで所定時間は、例えば、正常な状態に於いて想定される、顔が下向きとなる最長時間であってよく、実験的に予め決定されてよい。また、運転者の顔の向きと同時に運転者の上半身の姿勢、特に、ステアリングホイールに手をかけているか否かが判定できるときには、上記の所定時間は、運転者の画像に基づいて運転者の手がステアリングホイールにかかっていないと判断されたとき、運転者の手がステアリングホイールにかかっていると判断されたときの所定時間よりも短く設定されてよい。このように所定時間を変更する理由は、運転者が顔をした向け、且つ、運転者の手がステアリングホイールにかかっていない場合には、単に運転者が顔を下に向けている場合に比して、運転者の体調の悪化の程度が進行しており、早急に自動停車制御を実行した方が好ましいためである。……」 オ.「[0018] 本発明による車両の緊急退避装置は、端的に述べれば、車両の運転中に運転者が急病又は体調不良により運転し続けることが困難となった際に、周囲を巻き込まないように、車両を路端や路線の端等に寄せて停止する処理(自動停車制御による緊急退避処理)を自動的に実行する装置である。特に、本発明に於いては、後に詳細に説明される如く、運転者が自動停車制御の実行に対する要求のための指示入力を与える運転者指示入力部70の受容器70a又は70bは、運転者の体調の悪化又は異常が検出されたときにのみ、指示入力を受容可能となるよう制御される。以下、本発明による緊急退避装置の構成と作動について詳細に説明する。」 カ.「[0020] 図1は、車両の緊急退避装置と関連する装置とのシステム構成をブロック図の形式にて示している。同図を参照して、車両の緊急退避装置に於いては、車両の走行中、運転者の顔を撮影する顔用カメラ40a及び運転者の上半身の姿勢を撮影する上半身用カメラ40bを用いた運転者状態認識部40(運転者状態認識ECU)からの情報又はデータに基づいて、体調悪化や意識低下の有無等の運転者の体調が監視される。そして、後に説明する態様にて運転者の体調の異常又は悪化が判定されたときには、その情報が、運転者指示入力部70に対して送られ、運転者指示入力部70は、受容器70aを可能化し(運転者からの指示入力が受容可能な状態にする)及び/又はタッチパネル70b等を運転者指示入力部70の受容器として機能させる。……」 キ.「[0023](b)顔向き・視線計測部 上記の如く、運転者の体調の異常又悪化を監視するための一つの構成として、本実施形態に於いては、運転者の顔を撮像し、その画像から運転者の顔の向き及び/又は視線の方向が検出される。運転者の顔を撮像する顔用カメラ40aは、例えば、ステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネル(図示せず)の任意の位置に装着され、車両の走行中(車速>0のとき)に、図2(A)に模式的に描かれている如き運転者の顔を逐次撮像する。かくして、逐次的に得られた運転者の顔の画像は、顔向き・視線計測部(画像処理装置)へ送られ、そこに於いて、例えば、非特許文献1に記載されている如き任意の手法により、運転者の顔の向きが逐次的に計測される。 [0024] かかる顔の向きの計測に於いては、例えば、まず、ニューラルネットワークや学習アルゴリズム(Boosting等)を利用して、逐次的に得られた画像毎に、その中から、顔の像の範囲及び顔の特徴点、即ち、左右目頭、左右目尻、鼻中心、左右口角等の位置、左右虹彩又は瞳孔(図2(A)中、矢印が付された黒丸点)等が検出される。次いで、図2(B)に模式的に描かれている如き、前記の顔の像の範囲及び顔の特徴点に対して、同様の顔の特徴点の位置が定められた3次元の顔モデル100をフィッティングし、画像中の顔の像の範囲及び顔の特徴点と顔モデル中の顔の像の範囲及び顔の特徴点とがそれぞれ最も一致する際の顔モデルの向きが決定され、その状態に於ける顔の絶対的な位置(顔用カメラは、固定されている。)と、回転方向(ロール方向R、ヨー方向Y、ピッチ方向P)の角度とが計測される。また、左右虹彩又は瞳孔の位置と左右目頭及び左右目尻の位置から推定される眼球中心位置とから視線の方向が決定されてよい。かくして、逐次的に上記の如く計測された顔の絶対的な位置、回転方向角度及び視線の方向から、顔が下を向いているか否かが逐次的に判定される。なお、顔が下を向いているか否かの判定に於いては、顔の絶対的な位置、回転方向角度及び視線の方向のそれぞれが、顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲(実験的に決定されてよい。)を越えて下方を向いているときに顔が下を向いていると判定されてよい。」 ク.「[0026](d)受容器の可能化制御 上記の顔向き・視線計測部にて逐次的に検出される運転者の顔が下を向いているか否かの情報と、姿勢計測部にて逐次的に検出されるステアリングホイールに運転者の手がかかっているか否かの情報は、判定処理ECU10へ送信され、運転者の体調が異常又は悪化しているか否かの判定、及び、運転者の自動停車制御の実行に対する指示入力を受容する受容器を可能化するか否かの判定に利用される。かかる判定処理に於いては、端的に述べれば、運転者の顔が下を向いている時間が第一の所定時間を越えたときには、運転者の体調が悪化したと判断して、受容器の可能化が為される。また更に、運転者の顔が下を向いており、ステアリングホイールに運転者の手がかかっていない状態となったときには、その状態が第一の所定時間よりも短い第二の所定時間を越えたときに、運転者の体調が悪化したと判断して、受容器の可能化が為される。これは、運転者の顔が下を向いており、ステアリングホイールに運転者の手がかかっていない状態は、運転者の顔が下を向いているが、ステアリングホイールに運転者の手がかかっている状態よりも運転者の体調の悪化の程度が大きく、より迅速に自動停車制御が実行されることが好ましいためである。上記の判定処理は、図4に於いてフローチャートの形式にて示されている。なお、図4の処理は、車両の走行中、即ち、車速>0のとき、所定のサイクル時間ΔTにて反復して実行される。」 ケ.上記キ.の記載より、ステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置に装着された顔用カメラ40aにより、運転者の顔を逐次撮像しており、この、運転者の顔の画像から、顔向き・視線計測部(画像処理装置)に於いて、運転者の顔の向きが逐次的に計測されることがわかるから、甲1には、ステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置に装着された顔用カメラ40aにより逐次撮像された運転者の顔の画像から、運転者の顔の向きを計測する顔向き・視線計測部が記載されている。 コ.上記オ.及びカ.の記載より、甲1に記載されている緊急待避装置は、車両の走行中に自動的に実行する装置であるから、この装置は、車両の走行中に実行されるといえる。そして、上記キ.及びク.の記載より、顔向き・視線計測部により計測された運転者の顔の向きが、顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているときに顔が下を向いていると判定し、運転者の顔が下を向いている時間が第一の所定時間を越えたときには、運転者の体調が悪化したと判定処理ECUが判断することがわかるから、甲1には、車両の走行中に、顔向き・視線計測部により計測された運転者の顔の向きが、第一の所定時間を越えて顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているときに、運転者の体調が悪化したと判断する判定処理ECUが記載されている。 サ.上記カ.ないしク.の記載より、甲1に記載された運転待避装置は、顔向き・視線計測部と判定処理ECUを備えているといえる。 シ.さらに、上記ケないしサ.に加え、甲1には、上記ク.の記載より、顔向き・視線計測部にて逐次的に検出される運転者の顔が下を向いているか否かの情報と、姿勢計測部にて逐次的に検出されるステアリングホイールに運転者の手がかかっているか否かの情報は、判定処理ECU10へ送信され、運転者の顔が下を向いており、ステアリングホイールに運転者の手がかかっていない状態となったときには、その状態が第一の所定時間よりも短い第二の所定時間を越えたときに、運転者の体調が悪化したと判断することも記載されている。 (2)甲1に記載された発明 上記(1)のア.ないしサ.から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。 「車両のステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置に装着された顔用カメラ40aにより逐次撮像された運転者の顔の画像から、運転者の顔の向きを計測する顔向き・視線計測部と、 前記車両の走行中に、前記顔向き・視線計測部により計測された運転者の顔の向きが、第一の所定時間を越えて顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているときに、前記運転者の体調が悪化したと判断する判定処理ECUと、を備える運転待避装置。」 また、上記(1)のア.ないしケ.、サ.及びシ.より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)も記載されていると認められる。 「車両のステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置に装着された顔用カメラ40aにより逐次撮像された運転者の顔の画像から、運転者の顔の向きを計測する顔向き・視線計測部と、 前記車両の走行中に、前記顔向き・視線計測部により計測された運転者の顔の向きが、顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いていて、且つ前記車両のステアリングホイールに前記運転者の手がかかっていない状態となったときに、前記運転者の体調が悪化したと判断する判定処理ECUと、を備える運転待避装置。」 さらに、甲1には、上記(1)のク.及びシ.より、次の甲1発明3も記載されている。 甲1発明3 「判定処理ECUは、第二の所定時間を越える時間、運転者がステンアリングホイールに手をかけていないことを条件として、運転者の体調が悪化したと判断する甲1発明2」 甲1には、上記(1)のク.及びシ.より、次の甲1発明4も記載されている。 甲1発明4 「判定処理ECUは、第二の所定時間を超えて運転者の顔が下を向いていることを条件として、運転者の体調が悪化したと判断する甲1発明2または甲1発明3」 2.甲2に記載された事項及び甲2発明 (1)甲2に記載された事項について 取消理由で通知した甲2には、図面と共に、以下のア.ないしコ.に示す事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 運転者の顔に輝点パターンを投影するパターン光投光手段と、 運転者の顔に投影した前記輝点パターンを撮像する撮像手段と、 該撮像手段によって撮像して得た画像を処理し運転者の顔をサンプリングし、各サンプリング点の3次元位置データを求め、該求めた3次元位置データを処理して運転者の顔の傾きを求めるデータ処理手段と、 該データ処理手段により求めた顔の傾きによって運転者が危険な状態にあるかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴とする運転者監視装置。」 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は運転者監視装置に係り、特に、運転者の脇見や居眠りなどの危険な状態での運転を監視する運転者監視装置に関するものである。」 ウ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、車両にシステムを実装する場合を考えたとき、システムは次のような条件、すなわち、装置が簡易であること、装置の性能・信頼性・安全性が確保されていること、運転者の運転の支障にならないことを考慮に入れなければならない。 【0004】以上の条件を考慮したとき、実際に有効であるものと考えられるのは、運転者の身体的反応をセンサの装着なしに観察するもので、ほとんどの場合、画像処理によって検出することになる。運転者にセンサの装着を必要とせずに、顔の3次元情報を取得し、運転者の顔の向きを検出することによって、運転者の居眠り・よそ見といった運転者の危険な状態を検知することが必要である。 【0005】よって本発明は、上述した状況に鑑み、車両への取り付けを考慮して、性能・信頼性・安全性が確保され、運転者の運転の支障になることなく簡易な運転者監視装置を提供することを課題としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明により成された請求項1記載の運転者監視装置は、図1の基本構成図に示すように、運転者の顔に輝点パターンを投影するパターン光投光手段Zと、運転者の顔に投影した前記輝点パターンを撮像する撮像手段4と、該撮像手段によって撮像して得た画像を処理し運転者の顔をサンプリングし、各サンプリング点の3次元位置データを求め、該求めた3次元位置データを処理して運転者の顔の傾きを求めるデータ処理手段61と、該データ処理手段により求めた顔の傾きによって運転者が危険な状態にあるかどうかを判定する判定手段62と備えることを特徴としている。」 エ.「【0023】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は本発明による運転者監視装置の一実施の形態を示すブロック図である。同図において、運転者監視装置は、レーザ光源1と、レーザ光源1を駆動するレーザ光源駆動装置2と、レーザ光源1からのレーザ光1aを入力し、この入力したレーザ光1aにより監視領域に輝点マトリクスを投影するパターン光投光素子3とを有する。レーザ光源1と、レーザ光源駆動装置2と、パターン光投光素子3とは、運転者の顔に輝点パターンを投影するパターン光投光手段Zを構成している。 【0024】同図において、運転者監視装置はまた、運転者の顔に投影した輝点マトリクスからなる輝点パターンを撮像する撮像手段としてのCCDカメラ4と、CCDカメラ4から得られる映像信号を一時的に蓄えるフレームメモリ5と、予め定めたプログラムに従って動作するコンピュータによって構成されるデータ処理部6と、所定位置に設置したスクリーンに投影したときに得られる輝点マトリクスの画像データを参照データとして予め記憶した参照データ記憶部7と、運転者への危険を警告する警報音を発するブザーや、運転者への危険を警告する警報メッセージを発するスピーカなどの発音手段8と、運転者への危険を警告する警報表示などを行う表示器9とを備えている。 【0025】上記パターン光投光素子3としては、図3(a)に示すように、2枚のファイバグレイティング(FG)31を直交して重ねたものが使用される。…… 【0026】FG31はCCDカメラ4とともに一体化されて視覚センサ部を構成し、図5の正面図(a)及び側面図(b)に示すように、視覚センサ部10は車両のステアリングコラム11上に設置され、このことで運転者Dの顔Fを正面方向から見た場合の3次元位置計測を行う。しかし、センサ部の設置位置はステアリングコラム上に限らず、顔の3次元位置を検出し易い場所であれば、他の場所に設置することも可能である。 【0027】以上の構成により、パターン光投光素子3により監視領域に投影された輝点マトリクス14がCCDカメラ4によって撮像され、CCDカメラ4から得られる映像信号はフレームメモリ5に一時的に蓄えられた後、データ処理部6に取り込まれる。データ処理部6は、フレームメモリ5から得られる画像データと、参照データ記憶部7に予め記憶された参照データとを比較することによって、CCDカメラ4のイメージプレーン上での輝点の移動量を求める。」 オ.「【0032】輝点の移動量は、基準平面PLに投影された場合の対応する輝点からの距離である。従って、図7(a)~(c)に示されるように、基準平面PL上の輝点に対応する参照データとしての基準面データ(a)と、顔上の輝点に対応する顔のデータ(b)とに基づいて、互いに対応する輝点の移動量(c)を求めることができる。以下、移動量が検出される輝点を移動スポットと呼ぶ。また、基準平面PLに投影された輝点投影画像を基準画面像、その画像中の輝点を基準スポットと呼び、その画像中の位置を(ui,vi)とする。この際iは輝点番号を示し、基準画面像において予めナンバリングしておく。 【0033】データ処理部6は、基準スポットからの移動量δを求めたら、このδを使用して顔の3次元座標位置(x,y,z)を算出する。このように得られた3次元データは、以後の処理を簡単にするために、計測されたデータを用いてサンプリング点を正方格子上に並ぶように線形補間を用いてリサンプリングが行われる。データ処理部6はまた、上述のようにして得られた顔の3次元情報を用いて、運転者の顔の向きを検出し、この検出した運転者の現在の顔の向きにより、運転者の危険を判定して警報を発する。」 カ.「【0059】上述のようにして視覚センサ10により得られた顔の3次元情報を用いて、運転者の顔の向きを検出するためのステップS16~ステップS18の処理は、具体的には以下のように行う。 【0060】ところで、顔の向きは、図17に示すように、 1.左右の耳を貫く直線を軸とした向き(X軸周り)(a) 2.顎から頭の頂点を貫く直線を軸とした向き(Y軸周り)(b) 3.後頭部から鼻の頂点を貫く直線を軸とした向き(Z軸周り)(c) の3方向で表すことができる。よって、この3方向それぞれについて運転者の顔の向きを検出すれば、現在の運転者の顔の向きを検出することができる。 【0061】上述のように視覚センサ10により取得された3次元データは、顔の3次元情報だけでなく、運転者の肩や車のシートといった3次元情報も得られてしまう。運転者の顔の向きを検出するためには、この様な顔以外の3次元情報は必要としない。そこで、取得される3次元データの中から顔の情報のみを抽出する必要がある。以下、ステップS16における顔のみの情報を抽出する具体的な方法の一例を示す。」 キ.「【0064】これにより抽出された3次元データは、運転者の顔の情報だけとなる。… 【0065】まず、ステップS18において、運転者のX軸周り(上下)の顔の向きを検出する具体的な方法の一例について説明する。……これにより、運転者が前方または後方へ傾いた場合、初期状態(平常状態)からの前方または後方への傾きの変化を取得することができる。 【0066】次に、ステップS18において、運転者のY軸周り(左右)の顔の向きを検出する具体的な方法の一例について説明する。…… 【0067】…… 【0068】そして、図21(d)は上から見た図であるが、このように、検出された鼻の位置と頭の重心を結ぶベクトルの角度θをY軸周り(左右)の顔の傾きとして決定する。これにより、運転者が外観に目を奪われたり、助手席の人物との会話などで、よそ見をした場合、初期状態(平常状態)からのY軸周り(左右)の顔の向きの変化が検出できる。ただし、ここでは回転軸を固定して考えている。回転中心は、個人差もありまた状況により異なってしまうためである。 【0069】最後に、ステップS18において、Z軸周りの顔の向きを検出する具体的な方法の一例について説明する。ここでは、顔の形はほぼ楕円であると考え、顔に当てはめた外接四角形中の高さを持った点に対して図22(a)に示すように慣性等価楕円をあてはめる。そして、図22(b)のように、この楕円の長軸の傾きを、Z軸周りの顔の傾きとする。……」 ク.「【0079】以上の処理により、運転者の現在の顔の向きが検出できる。以下では、ステップS19における運転者の危険の判定方法について述べる。 【0080】運転者がよそ見をした場合、Y軸周り(左右)の顔の向きを検出した角度が大きく変化する。しかし、Y軸周り(左右)の向きは、運転者がサイドミラーを確認した場合にも変化がでるため、検出された角度が大きいからといってそのまま危険な状態とは言いがたい。そこで、前フレームで検出した顔の傾きの情報を用いて運転者の状態を判断することにする。数フレームにわたって、検出された角度がしきい値以上であれば危険であるとする。ここで、しきい値は例えば±7度とする。高速道路を走行している場合、2秒以上のよそ見は、非常に危険であると考えられる。よって、検出された角度がしきい値以上の状態で例えば2秒以上続いた場合は、運転者の状態が危険であるとする。 【0081】次に、運転者が居眠り状態に陥った場合、筋肉の緊張度が低下し、頭部を支える僧帽筋が弛緩し、運転者の顔が前方あるいは後方へ傾くことが知られている。そこで、運転者の危険状態は、前フレームの情報を用いて、運転者の顔のX軸周り(上下)の顔の傾きが、しきい値より大きい状態で例えば2秒以上続いた場合、危険とみなす。ここでしきい値は、例えば±7度とする。 【0082】最後に、Z軸周りの動きに関してであるが、この状態でも検出される角度が大きい状態が続くということは、顔を斜めに傾けて運転していることになるので、危険であるとする。ここで、しきい値を例えば±15度として、しきい値以上の状態が例えば2秒以上続いた場合は、危険であるとする。以上の説明では、傾斜角度、時間を例示したが、これらの値に限定されるものではない。 【0083】なお、上述の実施の形態によれば、輝点パターンを投影するために、レーザ光を使用しているが、レーザ光に代えて赤外線を使用するようにしてもよい。 【0084】また、運転者を監視して居眠りや脇見を運転者に警告を発するようにしているが、監視結果を警告以外の制御などに利用するようにしてもよい。」 ケ.上記エ.の記載より、車両のステアリングコラム11上に設置された視覚センサ部10は、運転者Dの顔Fを正面方向から見た場合の3次元位置計測を行うことが甲2に記載されているといえる。 上記エ.の記載より、この視覚センサ部10は、FG31とCCDカメラ4が一体化されて構成されたものであり、3次元位置計測して得られた画像データからCCDカメラ4のイメージプレーン上での輝点の移動量を求めているといえる。さらに上記オ.の記載より、データ処理部6は、輝点の移動量から運転者の顔の向きを検出していることが、甲2に記載されているといえる。 これらのことから、甲2には、車両のステアリングコラム11上に設置された視覚センサ部10により3次元位置計測された運転者Dの顔Fに基づいて、運転者の顔の向きを検出するデータ処理部6が記載されている。 さらに、この「運転者の顔の向き」に関して、上記カ.の記載より、左右の耳を貫く直線を軸とした向き(以下、「X軸周りの顔の向き」という。)と、顎から頭の頂点を貫く直線を軸とした向き(以下、「Y軸周りの顔の向き」という。)と、後頭部から鼻の頂点を貫く直線を軸とした向き(以下、「Z軸周りの顔の向き」という。)の3方向それぞれについて運転者の顔の向きを検出することが甲2に記載されているから、甲2には、車両のステアリングコラム11上に設置された視覚センサ部10により3次元位置計測された運転者Dの顔Fに基づいて、運転者のX軸周りの顔の向きと、Y軸周りの顔の向きと、Z軸周りの顔の向きを検出するデータ処理部6が記載されている。 コ.上記ク.の記載より、甲2には、X軸周りの顔の向きが、しきい値より大きい状態で例えば2秒以上続いた場合、危険とみなし、Y軸周りの顔の向きが、しきい値以上の状態で例えば2秒以上続いた場合は、運転者の状態が危険であるとし、Z軸周りの顔の向きがしきい値以上の状態が例えば2秒以上続いた場合は、危険であるとすることが記載されている。この危険と判定することは、車両の走行中に行われ、さらに、X軸周りの顔の向きと、Y軸周りの顔の向き、Z軸周りの顔の向きは、いずれも上記ケ.で示したデータ処理部6により検出されたものと解される。また、甲2に記載された運転者監視装置は、このような危険を判定するための危険判定手段を備えているといえる。したがって、甲2には、車両の走行中に、データ処理部6により検出されたX軸周りの顔の向き、Y軸周りの顔の向き、Z軸周りの顔の向きのいずれかが、所定時間以上続いてしきい値以上の場合に、運転者の状態が危険であると判定する危険判定手段について記載されているといえる。 (2)甲2に記載された発明 上記(1)のア.ないしコ.から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「車両のステアリングコラム11上に設置された視覚センサ部10により3次元位置計測された運転者Dの顔Fに基づいて、運転者のX軸周りの顔の向きと、Y軸周りの顔の向きと、Z軸周りの顔の向きを検出するデータ処理部6と、 前記車両の走行中に、データ処理部6により検出されたX軸周りの顔の向き、Y軸周りの顔の向き、Z軸周りの顔の向きのいずれかが、所定時間以上続いてしきい値以上の場合に、前記運転者の状態が危険であると判定する危険判定手段と、を備える運転者監視装置。」 3.甲3に記載された事項 取消理由で通知した甲3には、図面と共に、以下の(1)ないし(8)に示す事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 所定範囲における運転者の頭部の有無に基づいて運転者状態を検出する運転者状態検出手段と、 自車両の運転速度を検出する車速検出手段と、 前記自車両の駆動レンジを検出する駆動レンジ検出手段と、 前記自車両の運転速度および前記駆動レンジに基づいて前記自車両が前方に進行状態であることを判定する進行状態判定手段と、 前記自車両が進行状態のときに、前記運転者状態に基づいて前記運転者の頭部が非検出状態であることを判定する非検出判定手段と、 前記非検出状態が予め設定された第一の許容時間以上継続したときに前記運転者に警報を発する自車両警報発生手段とを備えた運転者異常事態発生警報装置。」 (2)「【請求項8】 前記自車両の前方の障害物を検出する障害物検出手段と、 前記障害物までの相対距離を検出する相対距離検出手段と、 前記障害物と前記自車両との間の相対速度を検出する相対速度検出手段と、 前記相対距離および前記相対速度に基づいて前記第一の許容時間を可変設定する許容時間設定手段とを備え、 前記許容時間設定手段は、前記相対距離または前記相対速度が小さくなるにつれて前記第一の許容時間を短く設定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかの運転者異常事態発生警報装置。」 (3)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、運転者状態を検出して異常事態に応答して警報を発生する運転者異常事態発生警報装置に関し、特に異常判定処理を簡略化した運転者異常事態発生警報装置に関するものである。」 (4)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】従来の運転者異常事態発生警報装置は以上のように、眼位置検出装置を用いて運転者を撮像して得られる画像を処理することにより、運転者の眼の位置を検出しているので、著しく膨大な画像処理能力を必要とし、実用的でないという問題点があった。 【0007】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、運転者の頭部あるいは顔領域を検出して許容時間以上かの判定を加えることにより、簡単な判定を行うことで運転状態を検出することのできる運転者異常事態発生警報装置を得ることを目的とする。」 (5)「【0036】次に、図4のフローチャートを参照しながら、図1~図3に示したこの発明の実施例1による運転中での処理装置1aの運転者異常事態発生警報装置の異常検出動作について説明する。前述したように、運転前に運転者Mが設定スイッチ411を押すことにより、運転者異常事態発生警報検出動作が開始される。 【0037】まず、自車両の運転速度Vが検出され、たとえば、停止、渋滞走行および高速走行などの走行状況が確認される(ステップS101)。次に、駆動レンジDを検出することにより自車両の進行方向を確認し(ステップS102)、前進しているか否かを判定する(ステップS103)。 【0038】もし、前進している(即ち、YES)と判定されたときには、運転者状態検出装置4aにより、運転中である自車両の運転者Mの頭部421を所定範囲内で検出し(ステップS104)、頭部421の有無を判定する(ステップS105)。もし、頭部421が無(即ち、NO)と判定されたとき、即ち、頭部非検出判定装置41aにより頭部421が非検出状態であると判定されたときには、非検出時間T0を検出する(ステップS106)。 【0039】続いて、予め記憶装置5に設定された許容時間T1を読み出し(ステップS107)、許容時間T1と非検出時間T0を比較し、T0≧T1か否かを判定する(ステップS108)。もし、T0≧T1(即ち、YES)であって危険運転状態と判定されたときには、自車両の運転者Mに警報が発せられる(ステップS109)。 【0040】つまり、ステップS109においては、自車両が前進しており且つ運転者Mの頭部非検出時間T0が許容時間T1以上になったときに警報が発せられることになる。したがって、たとえば、信号待ちで車両が停止しているときに運転者Mが下を向くなど、通常の運転姿勢をとらなくても安全である場合は排除される。」 (6)「【0044】実施例2.なお、上記実施例1では、運転者状態検出装置4aにより運転者Mの頭部421の有無を検出し、非検出時間T0を許容時間T1と比較して危険状態を判定したが、頭部421の基準位置に対する位置ずれ量に応じて許容時間T1を可変設定し、ずれ位置での停止時間を許容時間T1と比較して危険状態を判定してもよい。」 (7)「【0053】次に、図1、図5~図8とともに、図9のフローチャートを参照しながら、この発明の実施例2による運転中での処理装置1bの運転者異常事態発生警報検出動作について説明する。図9において、S101~S103およびS109は前述と同様のステップである。前述したように、運転前に運転者Mが設定スイッチ411を押すことにより、運転者異常事態発生警報検出動作が開始される。 【0054】まず、ステップS101において自車両の運転速度Vを検出して、たとえば、停止、渋滞走行および高速走行などの走行状況を確認し、ステップS102において駆動レンジを検出することにより進行方向を確認し、ステップS103において前進しているか否かを判定する。 【0055】もし、前進している場合には、運転者状態検出装置4bにより運転中である自車両の運転者Mの頭部421を所定範囲内で検出し(ステップS204)、頭部421の基準位置からの位置ずれ△Lの値を上記(1)式により検出する(ステップS205)。 【0056】次に、位置ずれ量△Lに基づいて、許容時間T1を設定する(ステップS206)。このとき、図8(a)に示したように、位置ずれ量△Lが大きくなるにともなって、また、自車車速Vが大きくなるにともなって、許容時間T1は短く設定される。これにより、頭部421の位置ずれΔLが大きく、または、車速Vが大きく、運転者Mにとって危険度が高い場合には、後述の判定ステップS208において、短時間で運転者Mの危険事態を判定することができる。 【0057】続いて、ずれ位置での頭部421の停止時間△Tを検出し(ステップS207)、設定された許容時間T1と比較し、ΔT≧T1か否かを判定する(ステップS208)。もし、ΔT≧T1(即ち、YES)であって危険運転状態と判定されたときには、自車両の運転者Mに警報が発せられる(ステップS109)。 【0058】つまり、ステップS206においては、自車両が前進しており且つ運転者Mの頭部421のずれが基準位置に対して大きくずれたとき、許容時間T1を短く設定するので、ステップS109において的確に運転者Mに対して警報が発せられ、一層安全性が高められる。即ち、簡易的にわき見運転、居眠り運転の検出が行うことができる。」 (8)「【0117】実施例8.なお、上記実施例1~実施例7では、許容時間T1またはT2を、マップから読み出したり、位置ずれΔL、面積比ΔAまたは自車車速Vなどに応じて設定したが、障害物までの相対距離Sおよび障害物との相対速度ΔVに応じて設定してもよい。 【0118】以下、障害物との相対距離Sおよび相対速度ΔVに応じて許容時間T1またはT2を設定するようにしたこの発明の実施例8(請求項8および請求項9に対応)について、前述と同様に自動車に適用した場合を例にとって説明する。 【0119】ここでは、第二の許容時間T2を設定して他車両運転者に対する警報を行う実施例5~実施例7に適用した場合を示しているが、実施例1~実施例4のように、第一の許容時間T1を設定して自車両運転者のみに対する警報を行う場合にも適用できることは言うまでもない。 【0120】図26はこの発明の実施例8の構成を簡略的に示すブロック図、図27は実施例8における障害物までの(a)相対距離Sおよび(b)相対速度△Vと各許容時間T1およびT2との関係を示す特性図である。図26において、1hは処理装置1a~1gに対応し、4hは運転者状態検出装置4a~4eに対応しており、2、3、5および6aは前述と同様のものである。 【0121】7は車両の進行方向に存在する障害物を検出する公知の障害物検出装置、8は障害物との相対距離Sを検出する相対距離検出装置、9は障害物と自車両との間の相対速度ΔVを検出する相対速度検出装置であり、それぞれ、処理装置1hと協動して機能するようになっている。 【0122】この発明の実施例8においては、図26に示すように、上記実施例1~実施例7で示した構成の他に、障害物検出装置7、相対距離検出装置8および相対速度検出装置9が設けられている。 【0123】次に、図27を参照しながら、図26に示したこの発明の実施例8の動作について説明する。この場合、自車両が前進していると判定された後、障害物検出装置7により障害物を検出し、続いて、相対距離検出装置8および相対速度検出装置9を用いて、障害物までの相対距離Sおよび相対速度△Vを検出する。 【0124】そして、図27(a)および(b)に示したように、障害物までの相対距離Sおよび相対速度△Vに基づいて、第一および第二の許容時間T1およびT2を可変設定する。このとき、障害物までの相対距離Sおよび相対速度△Vは、運転者Mの顔の向き方向によらず、実際の運転状況の判定を行うのに有効であり、運転者Mが正面遠方を向いているにもかかわらず、ぼんやりしているときなどに対処することができる。 【0125】即ち、障害物との相対距離Sが小さい場合には、危険度が大きいため許容時間T1およびT2は短く設定され、同様に、相対速度ΔVが小さい(障害物に近づいている)場合には、危険度が大きいため許容時間T1およびT2は短く設定される。 【0126】これにより、運転者Mがぼんやりしていて、障害物に対して適切に対処していない状態であっても、危険度に応じた適切な許容時間T1およびT2を設定することができる。」 4.甲4に記載された事項 異議申立人が本件出願時における技術常識を示す例として提示した特開2006-318446号公報(甲第4号証。以下「甲4」という。)には、図面と共に、以下の(1)ないし(5)に示す事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 ドライバー自ら運転操作を行うマニュアル運転と、一部若しくは全ての運転操作を自動で行う自動運転とによる走行が可能な車両において、当該走行を支援する情報を報知する装置であって、 前記車両の周囲の状況及び前記車両の走行状態を検出する検出手段と、 前記検出手段が検出した前記車両の周囲の状況及び前記車両の走行状態が、所定の条件を満たした場合には、前記車両の周囲の状況及び前記車両の走行状態に応じた走行支援情報を報知するものであって、前記車両の運転状態がマニュアル運転の時と、自動運転の時とでは、前記走行支援情報を報知するための所定条件を異ならせた報知手段を備えることを特徴とする走行支援装置。」 (2)「【背景技術】 【0002】 従来より、安全に運転走行できるように、運転走行中における、車両の周囲の状況など走行を支援する情報を報知する走行支援装置が提案されている。このような走行支援装置を用いることにより、例えば、ドライバーは他車との接近度合いを速やかに把握することができ、適切なアクセル操作又はブレーキ操作をすることができる。特許文献1と特許文献2で提案されている走行支援装置では、さらに、周囲の環境に応じて報知タイミングを変えたり、または、ドライバーごとに報知タイミングを変えることができるようになっている。これにより、ドライバーは、より適切かつ安全に車両を走行させることができる。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】 【0003】 ところで、近年、車両の運転操作の一部を自動で行う技術が実用化されてきている。例えば、車両前方をレーダーで監視しつつ、車両の加減速を自動制御する、いわゆるレーダクルーズ装置が広く用いられるようになりつつある。さらに、全ての運転操作を自動で行う技術も研究されており、将来的には、実用化されると予想される(以下、車両の運転操作の一部若しくは全てを自動で行う運転を、まとめて自動運転という)。実際、車両を駐車させるときに限定されるが、設定した目標駐車スペースに車両が収まるように、車両の速度やステアリング舵角を制御する技術が実用化されている。 【0004】 ここで、車両の運転状態が、自動運転の状態であるときに対しても、上述の車両の周囲の状況等を報知することは有益である。車両がある程度制御されていて、安全であるとは言っても、周囲の状況によっては、危険な状況に陥ることも考えられるからである。しかし、運転操作の一部又は全てを自動で行うという点を考えると、運転操作をすべてドライバー自身が行うマニュアル運転のときとで区別なく同じ報知をするのは妥当ではない。 【0005】 本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、マニュアル運転と自動運転の両方の運転機能を備えている車両を運転した際に、それぞれの運転状態に合った、走行を支援する情報を報知することができる走行支援装置を提供することを目的とする。」 (4)「【0034】 本実施形態では、車両の現在の状態を、当該車両に対する危険度に応じて複数のレベルに分け、車両が自動運転を行っているときには、所定以上の危険度のレベルに属しているときのみ警告するようにしている。通常、車両が自動運転しているときには、安全に走行するように制御されているので、それほど危険度が少ない内容を警告しなくても、事故につながるということは少ない。却って、このような情報を警告すると、ドライバーを不安にさせてしまうということにもなりかねないからである。一方、ドライバー自身の操作で車両を運転しているときには、事故を防ぐという観点から、自動運転のときのような制限を設けず、危険度が小さい内容の情報でも極力警告するようにしている。 【0035】 この、レベルの分け方としては、例えば、図4に示すように、「この先に以前事故が発生した交差点有り」など参考となる情報を報知するレベル1、「この先、急カーブ有り」、「この先、渋滞しています」など注意を喚起する情報を報知するレベル2、「障害物が接近している」など事故につながる可能性がある危険情報を報知するレベル3、及び、「障害物が急接近している」など生命に関わるかもしれない重大な危険情報を報知するレベル4に分ける。そして、車両が自動運転しているときには、例えば、事故につながる可能性がある危険情報を報知するレベル3と生命に関わるかもしれない重大な危険情報を報知するレベル4の情報のみを報知するようにする。参考となる情報を報知するレベル1と注意を喚起する情報を報知するレベル2の情報については、特段報知しなくても、車両は自動制御されているので、危険となることは少ないと考えられるからである。」 (5)「【0041】 ステップS30において、現在の車両の運転状態が、マニュアル運転か自動運転かを判定する。そして、ステップS40において、現在の車両の運転状態に応じて、警告(支援情報を報知)するか否かを判定する。具体的には、車両の現在の運転状態がマニュアル運転である場合は、安全走行のために、全てのレベルの情報について警告すると判定する。一方、車両の現在の運転状態が、自動運転である場合は、複数に分けられたレベルのうち、車両に対する危険度が高いレベルの情報のみを警告すると判定する。つまり、車両に対する危険度が低い情報については、特に警告しなくても、危険となることは少ないと考えられるので、警告を行わないようにする。」 5.甲5に記載された事項 異議申立人が本件出願時における技術常識を示す例として提示した特開2000-130205号公報(甲第5号証。以下「甲5」という。)には、図面と共に、以下の(1)ないし(5)に示す事項が記載されている。 (1)「【請求項1】自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、 自車と先行車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づき、前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、 を備える車間制御装置において、 前記車間制御手段による車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチ及びその車間制御を実行させるための開始スイッチと、 前記車間制御手段による車間制御の実行中に所定の解除条件が成立した場合、当該車間制御の実行を解除させる制御解除手段と、 所定の車間警報条件が成立した場合に、車両運転者に対する警報処理を実行可能な車間警報手段と、 前記制御解除手段によって前記車間制御の実行が解除された状態であっても、前記準備スイッチがオン状態である場合には、前記車間警報手段による警報処理の実行を許可する警報許可手段と、 を備えることを特徴とする車間制御装置。 【請求項2】請求項1記載の車間制御装置において、 前記警報許可手段は、 前記制御解除手段によって前記車間制御の実行が解除された状態であり、且つ前記準備スイッチがオン状態である場合に限って、前記車間警報手段による警報処理の実行を許可すること、 を特徴とする車間制御装置。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自車を先行車に追従させて走行させるための車間制御装置に関し、特に所定の車間警報条件の成立時に車両運転者に対する警報処理も実行可能な装置に関する。」 (3)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した公知文献記載のものでは、次のような不都合が生じることとなる。 車間制御が解除されたことを運転者が認識している状況であっても、制御解除の度に報知されるため、煩わしい。 【0006】車間制御が解除された時点で所定時間報知がなされたとしても、その後も制御解除状態であるという認識を持続することができずに、車間制御が継続していると勘違いしてしまう可能性もある。 そこで、本発明は、車間制御が解除されている状態をユーザに報知する警報機能に関して、余分な警報がされず警報の実効性を向上させた車間制御装置を提供することを目的とする。」 (4)「【0031】次に、図2~図11を参照して、車間制御ECU2にて実行される処理について説明する。図2は、メイン処理を示すフローチャートである。まず、最初のステップS10においてはクルーズメインスイッチ22が現在ON状態であるかどうかを判断し、ON状態でなければ(S10:NO)、そのまま本メイン処理を終了する。一方、クルーズメインスイッチ22がON状態であれば(S10:YES)、続いてクルーズコントロールスイッチ20がON操作されかどうかを判断する(S20)。そして、クルーズコントロールスイッチ20がON操作されると(S20:YES)、車間制御に係る処理を実行する(S30)。このS30での車間制御の詳細については後述する。 【0032】S30での車間制御に続いてS40では、車間警報Aの処理を実行する。この車間警報Aは車間制御が実行されている状況で行われる処理であり、ブレーキスイッチ18がONされない間は(S50:NO)、S30での車間制御及びS40での車間警報Aを実行する。なお、このS40での車間警報Aの詳細については後述する。 【0033】ブレーキスイッチ18がONされると(S50:YES)、S60へ移行して車間制御を解除し、続くS70にてクルーズメインスイッチ22が現在ON状態であるかどうかを判断する。ここでクルーズメインスイッチ22がON状態であれば(S70:YES)、車間警報Bをの処理を実行する(S80)。この車間警報Bは車間制御が実行されていない状況にて行われる処理である。このS80での車間警報Bの詳細についても後述する。一方、クルーズメインスイッチ22がON状態でなければ(S70:NO)、S90へ移行して車間警報を解除してから、本メイン処理を終了する。」 (5)「【0054】このように、本実施形態のシステムによれば、車間制御を開始可能状態にするための準備スイッチであるクルーズメインスイッチ22及びその車間制御を実行させるための開始スイッチであるクルーズコントロールスイッチ20とを備えており、図2に示すように、クルーズメインスイッチ22がONされている状態で(S10:YES)、クルーズコントロールスイッチ20がONされると(S20:YES)、車間制御を実行する(S30)。そして、ブレーキスイッチ18がONされると(S50:YES)、所定の解除条件が成立したこととなり、車間制御が解除される(S60)。しかし、このように車間制御が解除(S60)された状態であっても、クルーズメインスイッチ22がON状態である場合には(S70:YES)、車間警報Bを実行する(S80)。 【0055】これにより、運転者が車間制御が解除されていることに気づかなくても、クルーズメインスイッチ22をOFFにしない限り、所定の車間警報条件が成立すれば(図10のS410でYES、又はS430でYES)、警報処理が実行されることとなる(S420,S440)。そのため、例えば車間制御が解除されていることにより運転者の意図に反して自車が先行車に異常接近し、運転者が慌ててブレーキ操作をしなくてはならないといった状況を未然に回避することができる。」 6.甲6に記載された事項 異議申立人が本件出願時における技術常識を示す例として提示した特開平8-216728号(甲第6号証。以下「甲6」という。)には、図面と共に、以下の(1)ないし(7)に示す事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 自車前方の物体を検出し、自車と同物体との間の距離を算出する距離算出手段と、該距離算出手段により算出された自車と物体との距離が所定値以上に短かくなったときに運転者に対して警報を発する警報手段と、必要に応じ自車を所定の設定車速で走行させる定速走行制御手段とを備えてなる自動車において、上記定速走行制御手段による走行時に同一車速の下での通常走行時に比べて上記警報手段の警報発生タイミングを早くする警報タイミング制御手段を設けたことを特徴とする自動車の走行制御装置。」 (2)「【0001】 【産業上の利用分野】本願発明は、車間距離警報装置を備えた自動車の走行制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】最近では、例えば交通流中での先行車との車間距離が予じめ設定された所定の安全車間距離以下となった時に警報を発生するようにした車間距離警報装置において、通常時の運転者のブレーキ操作タイミングに応じて上記基準となる所定の安全車間距離に応じた警報の発生タイミングを可変調整し得るようにしたものが提案されている(特開平5-162596号公報参照)。」 (3)「【発明が解決しようとする課題】ところで、上記定速走行制御手段による定速走行制御では、走行車速を設定された目標車速に維持するのみであり、自車の前方車両と自車との距離、すなわち車間距離の制御はできない。 【0006】しかも、運転者自身の運転による通常走行時の場合に比べて前方に対する注意力が低下した状態にあることも予想される。また、アクセル操作が不要であることから、アクセル並びにブレーキペダル付近から足を遠く離しているケースが多く、緊急時のブレーキ操作に時間がかかる等の問題がある。 【0007】したがって、上記定速走行制御装置に上記車間距離警報装置を組合わせたような場合、車間距離警報装置本来の警報タイミングでは遅すぎるケースを生じる。」 (4)「【0010】本願発明は、以上のような自動車の自動走行制御に係る問題を解決するためになされたもので、定速走行制御時はそうでない通常の場合に比べて車間距離警報制御の警報タイミングを早くする一方、追従走行制御実行中は、そうでない通常の場合に比べて車間距離警報制御の警報タイミングを遅くするようにした自動車の走行制御装置を提供することを目的とするものである。」 (5)「【0037】次に、ステップS2に進み、現在の自動車走行状態が、(A)運転者自身の運転による通常走行状態であるか、(B)定速走行制御システムによる所定設定車速での定速走行制御状態であるか、(C)追従走行制御システムによる所定目標車間距離での追従走行制御状態であるかを判定する。 【0038】その結果、(A)通常走行状態であると判定された時は、ステップS3に進んで、上記走行制御装置の自動車コントロールユニット4の車間距離算出手段で算出された現在の前車との間の車間距離Dが、当該自車の車速、前車の車速との関係における相対速度、当該走行路の路面μの3つのパラメータによってマップ値により決定される第1の安全車間距離(第1の警報基準距離)D1よりも短かいか否かを判定する。そして、その結果がYESの時は、ステップS4に進んで運転者に対して所定内容の警報(コリュージョンワーニング)を発生し、前車との車間距離が小さぎること(当審注:「小さぎること」は、「小さすぎること」の誤記。)を認知させる。」 (6)「【0041】一方、上記ステップS2の走行状態の判定の結果、(B)定速走行制御状態であると判定された時は、ステップS7に進んで、上記走行制御装置の自動車コントロールユニット4の車間距離算出手段で算出された現在の前車との間の車間距離Dが、当該自車の車速、前車の車速との関係における相対速度、当該走行路の路面μの3つのパラメータによってマップ値により決定される上記通常走行時の第1の安全車間距離D1よりも長い第2の安全車間距離(第2の警報基準距離)D2よりも短かいか否かを判定する。そして、その結果がYESの時は、上記同様ステップS4に進んで運転者に対して所定内容の警報(コリュージョンワーニング)を発生し、前車との車間距離が小さぎること(当審注:「小さぎること」は、「小さすぎること」の誤記。)を通常走行時よりも早めに認知させる。」 (7)「【0044】さらに、また上記ステップS2での結果、(C)追従走行制御状態であると判定された時は、ステップS8に進んで、上記走行制御装置の自動車コントロールユニット4の車間距離算出手段で算出された現在の前車との間の車間距離Dが、当該自車の車速、前車の車速との関係における相対速度、当該走行路の路面μの3つのパラメータによってマップ値により決定される上記第1の安全車間距離D1よりも短かい第3の安全車間距離(第3の警報基準距離)D3よりも短かいか否かを判定する。そして、その結果がYESの時は、上記同様ステップS4に進んで運転者に対して所定内容の警報(コリュージョンワーニング)を発生し、前車との車間距離が小さぎること(当審注:「小さぎること」は、「小さすぎること」の誤記。)を認知させる。」 第5 対比・判断 1.本件発明1と甲1発明1について (1)本件発明1と甲1発明1の一致点と相違点 ア.請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と甲1発明1とを対比する。 (ア)甲1発明1の「車両のステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置」は、車両の内部であるから、本件発明1の「車両(10)」に相当し、前者の「装着された」、「顔用カメラ40a」、「逐次撮像された」、「運転者の顔の画像から」は、それぞれ、後者の「搭載された」、「撮像装置(21)」、「撮像された」、「運転席の画像に基づいて」に相当する。また、甲1発明1の「運転者の顔の向き」は、本件発明1の「車両の前方に対するドライバの顔の向き」に相当し、前者の「計測する」、「顔向き・視線計測部」は、それぞれ、後者の「検出する」、「顔向き検出手段(65)」に相当する。したがって、甲1発明1の「ステアリングホイールのハブ近傍又はフロントパネルの任意の位置に装着された顔用カメラ40aにより逐次撮像された運転者の顔の画像から、運転者の顔の向きを計測する顔向き・視線計測部」は、本件発明1の「車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)」に相当する。 (イ)甲1発明1の「計測された運転者の顔の向き」は、本件発明1の「検出された前記顔の向き」に相当し、前者の「第一の所定時間を越えて」は、後者の「向き崩れ判定時間(T2)を超えて」に相当する。 甲1発明1の「顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているとき」は、本件発明1の「顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合」と所定値以上に下方を向いている限りで一致する。 したがって、甲1発明1の「前記車両の走行中に、前記顔向き・視線計測部により計測された運転者の顔の向きが、第一の所定時間を越えて顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているとき」は、本件発明1の「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合」と「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間を超えて所定値以上に下方を向いている場合」である限りで一致する。 甲1発明1の「運転者の体調が悪化したと判断する」は、本件発明1の「ドライバが運転不能状態であることを検出する」に相当し、前者の「判定処理ECU」、「運転待避装置」は、それぞれ、後者の「向き崩れ状態検出手段(73)」、「ドライバの運転不能状態検出装置」に相当する。 イ.以上のことから、本件発明1と甲1発明1とは、次の[一致点]で一致し、[相違点1]において、一応相違する。 [一致点] 車両に搭載された撮像装置により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段と、 前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間を超えて所定値以上に下方を向いている場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する向き崩れ状態検出手段と、を備えるドライバの運転不能状態検出装置。 [相違点1] ドライバが運転不能状態であることを検出する場合が、本件発明1では、ドライバの顔の向きが顔向き閾値よりも大きい場合、すなわち、顔の向きの方向にかかわらず、顔向き閾値よりも大きい場合であるのに対し、甲1発明1では、顔が通常の正面を向いている状態よりも所定の範囲を越えて下方を向いているときである点。 (2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断 上記[相違点1]について検討する。 本件発明1の「ドライバの顔の向きが顔向き閾値よりも大きい場合」とは、顔の向きについての特定はされていないから、ドライバの顔の向きが任意の特定の方向(例えば下向き)に顔向き閾値よりも大きい場合が含まれ、これ以外の方向(例えば、上向きや左右方向)に顔向き閾値よりも大きい場合にドライバが運転不能状態であることを検出しないものも本件発明1には含まれていると解される。すなわち、本件発明1には、ドライバの顔の向きが上下左右方向の全ての方向において顔向き閾値よりも大きいことを検知するものだけでなく、上下左右方向の特定の方向に顔向き閾値よりも大きいことを検知するものも含まれていると解される。 そうすると、顔が所定の範囲を越えて下方を向いていることを検知する甲1発明1と本件発明1とは、相違点1において相違するものではなく、この点においても一致しているといえる。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、同条第1項の規定に違反してされたものである。 また、仮に、本件発明1が検出される全ての方向において、顔向き閾値よりも大きいことを検知することを発明特定事項としているとしても、上記「第4 引用文献の記載」の「2.甲2に記載された事項及び甲2発明」、「(2)甲2に記載された発明」に示したように、甲2発明は、運転者の顔の向きを全ての方向について検出し、これが所定のしきい値より大きい場合に運転者の状態が危険であると判定するものであるから、これを甲1発明1に適用し、本件発明1の上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。 よって、本件発明1は、甲1発明1及び甲2発明に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.本件発明1と甲2発明について (1)本件発明1と甲2発明の一致点と相違点 ア.本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「車両のステアリングコラム11上」は、車両の内部であるから、本件発明1の「車両(10)」に相当し、前者の「設置された」、「視覚センサ部10」、「3次元位置計測された運転者Dの顔F」は、それぞれ、後者の「搭載された」、「撮像装置(21)」、「運転席の画像」に相当する。また、甲2発明の「運転者のX軸周りの顔の向きと、Y軸周りの顔の向きと、Z軸周りの顔の向き」は、本件発明1の「前記車両の前方に対するドライバの顔の向き」に相当し、前者の「データ処理部6」は、後者の「顔向き検出手段(65)」に相当する。したがって、甲2発明の「車両のステアリングコラム11上に設置された視覚センサ部10により3次元位置計測された運転者Dの顔Fに基づいて、運転者のX軸周りの顔の向きと、Y軸周りの顔の向きと、Z軸周りの顔の向きを検出するデータ処理部6」は、本件発明1の「車両(10)に搭載された撮像装置(21)により撮像された運転席の画像に基づいて、前記車両の前方に対するドライバの顔の向きを検出する顔向き検出手段(65)」に相当する。 (イ)甲2発明の「データ処理部6により検出されたX軸周りの顔の向き、Y軸周りの顔の向き、Z軸周りの顔の向きのいずれか」は、本件発明1の「前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向き」に相当し、前者の「所定時間以上続いてしきい値以上の場合」は、後者の「向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合」に相当する。また、甲2発明の「運転者の状態が危険であると判定する」ことは、本件発明1の「ドライバが運転不能状態であることを検出する」ことに相当し、前者の「危険判定手段」、「運転者監視装置」は、それぞれ後者の「向き崩れ状態検出手段(73)」、「ドライバの運転不能状態検出装置」に相当する。 (ウ)以上のことから、本件発明1と甲2発明とは一致し、相違点は存在しない。 よって、本件発明1は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、同条第1項の規定に違反してされたものである。 3.本件発明2と甲1発明2について (1)本件発明2と甲1発明2の一致点と相違点 本件発明2と甲1発明2とを対比すると、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(1)本件発明1と甲1発明1の一致点と相違点」において対比した事項に加え、甲1発明2の「前記車両のステアリングホイールに前記運転者の手がかかっていない状態となったとき」は、本件発明2の「前記ドライバが前記車両のハンドル(15)を放している場合」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲1発明2とは、上記[相違点1]の点で相違し、その余の点で一致する。 (2)判断 この相違点1についての判断は、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断」と同様である。 したがって、本件発明2は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2に係る特許は、同条第1項の規定に違反してされたものである。また本件発明2は、甲1発明2及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4.本件発明5と甲1発明3について 本件発明5と甲1発明3とを対比すると、甲1発明3の「判定処理ECU」、「第二の所定時間を越える時間」は、それぞれ、本件発明5の「向き崩れ状態検出手段」、「操作判定時間よりも長い時間」に相当し、前者の「運転者がステンアリングホイールに手をかけていないことを条件として」、「運転者の体調が悪化したと判断する」は、それぞれ後者の「ドライバが前記ハンドルを放していることを条件として」、「ドライバが運転不能状態であることを検出する」に相当する。 そうすると、本件発明5と甲1発明3とは、本件発明2と甲1発明2との一致点に加えて、「向き崩れ状態検出手段は、操作判定時間よりも長い時間、ドライバがハンドルを放していることを条件として、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する」点で一致し、本件発明2と甲1発明2との相違点(本件発明1と甲1発明1との相違点でもある。)である[相違点1]で相違する。 そして、この[相違点1]についての判断は、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断」と同様である。 したがって、本件発明2と同様に本件発明5も、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項5に係る特許は、同条第1項の規定に違反してされたものであり、また甲1発明3及び甲2発明に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定に違反してされたものである。 5.本件発明7と甲1発明4について 本件発明7と甲1発明4とを対比すると、甲1発明4の「判定処理ECU」、「第二の所定時間」は、それぞれ本件発明7の「向き崩れ状態検出手段」、「向き崩れ判定時間」に相当し、前者の「運転者の顔が下を向いていること」、「運転者の体調が悪化したと判断する」は、それぞれ後者の「前記顔の向きが前記顔向き閾値よりも大きいこと」、「ドライバが運転不能状態であることを検出する」に相当する。 そうすると、本件発明7と甲1発明4とは、本件発明2と甲1発明2との一致点、及び本件発明5と甲1発明3との一致点に加えて、「向き崩れ状態検出手段は、向き崩れ判定時間を超えて顔の向きが顔向き閾値よりも大きいことを条件として、ドライバが運転不能状態であることを検出する」点で一致し、本件発明2と甲1発明2との相違点(本件発明1と甲1発明1との相違点でもある。)である[相違点1]で相違する。 そして、この[相違点1]についての判断は、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断」と同様である。 したがって、本件発明2及び本件発明5と同様に本件発明7も、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項7に係る特許は、同条第1項の規定に違反してされたものであり、また甲1発明4及び甲2発明に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定に違反してされたものである。 6.本件発明13について (1)本件発明13と甲1発明1について 本件発明13と甲1発明1とを対比すると、前記「1.本件発明1と甲1発明1について」に示すように対比でき、本件発明1と甲1発明1との一致点と同様の点で一致し、本件発明1と甲1発明1との相違点である[相違点1]に加えて、次の[相違点2]で相違する。 [相違点2] 本件発明13は、「車両の車速が高いほど、前記向き崩れ判定時間(T2)を短くする」のに対し、甲1発明1は、そのような事項が特定されていない点。 [相違点1]及び[相違点2]について検討する。 [相違点1]についての判断は、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断」と同様である。 [相違点2]について検討すると、異議申立人から提出された甲3には、上記「第4」、「3」に示す事項が示されており、これより、自車速度Vが大きくなるにともなって短く設定される許容時間T1とずれ位置での運転者の頭部の停止時間を比較し、後者が大きい場合に危険運転状態と判定することが記載されている(段落【0056】ないし【0058】参照。)。 上記甲1発明1と甲3に記載された上記事項とは、運転者の頭部を検知して、運転者の状態が車両の運転に適した状態であるか否かを判定する点で共通することから、甲3に記載された上記事項を甲1発明1に適用し、上記相違点2に係る本件発明13の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 また、[相違点1]及び[相違点2]を総合的に勘案しても、本件発明13の奏する作用効果は、甲1発明1及び甲3に記載された事項又は甲1発明1及び甲2発明、甲3に記載された事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 よって、本件発明13は、甲1発明1及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるか、甲1発明1及び甲2発明、甲3に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件発明13と甲2発明について 本件発明13と甲2発明とを対比すると、前記「2.本件発明1と甲2発明について」に示すように対比でき、本件発明1と甲2発明と同様の点で一致し、本件発明13と甲1発明1との相違点である[相違点2]と同様の点で相違する。 そして、この[相違点2]について検討すると、上記「(1)本件発明13と甲1発明1について」において示すのと同様の理由により、甲2発明に甲3に記載された事項を適用し、[相違点2]に係る本件発明13の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 よって、本件発明13は、甲2発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 7.本件発明14について (1)本件発明14と甲1発明1について 本件発明14と甲1発明1とを対比すると、前記「1.本件発明1と甲1発明1について」に示すように対比でき、本件発明1と甲1発明1との一致点と同様の点で一致し、本件発明1と甲1発明1との相違点である[相違点1]に加えて、次の[相違点3]で相違する。 [相違点3] 本件発明14は、「先行車両との車間距離を前記先行車両との相対速度で除した衝突余裕時間が短いほど、前記向き崩れ判定時間を短くする」のに対し、甲1発明1は、そのような事項が特定されていない点。 [相違点1]及び[相違点3]について検討する。 [相違点1]についての判断は、上記「1.本件発明1と甲1発明1について」の「(2)甲1発明1を主引用発明とした場合についての判断」と同様である。 上記[相違点3]について検討すると、甲3には、上記「第4」、「3」に示す事項が示されており、障害物検出装置により障害物を検出したとき、障害物までの相対距離Sおよび相対速度△Vを検出して、これらから定められる許容時間T1とずれ位置での運転者の頭部の停止時間を比較し、後者が大きい場合に危険運転状態と判定することが記載されている(段落【0122】ないし【0126】参照。)。車両進行方向の物体との距離を相対速度で除することにより、衝突までの許容時間を算出することは周知技術(周知例として特開2007-72570号(段落【0035】参照。)がある。)であるから、甲3に記載された上記事項及び周知技術を甲1発明1に適用し、上記相違点3に係る本件発明14の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 また、[相違点1]及び[相違点3]を総合的に勘案しても、本件発明14の奏する作用効果は、甲1発明1及び甲3に記載された事項、周知技術又は甲1発明1及び甲2発明、甲3に記載された事項、周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 よって、本件発明14は、甲1発明1及び甲3に記載された事項、周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるか、甲1発明1及び甲2発明、甲3に記載された事項、周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件発明14と甲2発明について 本件発明14と甲2発明とを対比すると、前記「2.本件発明1と甲2発明について」に示すように対比でき、本件発明1と甲2発明と同様の点で一致し、本件発明14と甲1発明1との相違点である[相違点3]と同様の点で相違する。 そして、この[相違点3]について検討すると、上記「(1)本件発明14と甲1発明1について」において示すのと同様の理由により、甲2発明に甲3に記載された事項及び周知技術を適用し、[相違点3]に係る本件発明14の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 よって、本件発明14は、甲2発明及び甲3に記載された事項並びに周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人の主張 (1)本件発明16に対する特許法29条第2項に基づく主張について 本件発明16と甲1または甲2に記載された発明とを対比すると、本件発明16が「前記車両において運転支援制御が実行されている場合には、前記向き崩れ判定時間を延長する」ものであるのに対して、甲1または甲2に記載された発明においては、明らかでない点で相違し、残余の点で一致する。 この相違点について検討するに、運転支援制御が実施されている場合には、そうでない場合に比して危険度が低いということが、本件特許出願時における技術常識であったと認められる(甲4ないし6)。ここで、甲1発明1は、運転者の体調異常を検出するものである。また、甲1または甲2に記載された発明は、当該検出をするにあたり、時間判定を行うものである。さらに、危険度を考慮して判定時間を適切な値に設定することは、時間判定により当該検出をする技術分野全般における共通の課題であるといえる。 よって、甲1または甲2に記載された発明において、上記技術常識を考慮して、運転支援制御が実行されている場合には、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明の所定時間を延長することは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)本件発明1ないし17に対する特許法第36条第6項第2号に基づく主張について 本件の請求項1の記載における「運転不能状態」には、明細書の記載を考慮したとしても、「脇見等による顔向きの崩れ」が向き崩れ判定時間を超えて継続している状態を含み得るものと認められる。一方、上記意見書(本件特許出願に係る平成30年1月11日付提出の意見書)における出願人による主張によれば、本件請求項1の記載における「運転不能状態」には、「脇見等による顔向きの崩れ」が向き崩れ判定時間を超えて継続している状態を含まれないこととなる。 すなわち、本件請求項1の記載は、当該請求項1の記載における「運転不能状態」の意味が不明である結果、本件特許発明1の範囲が定まらず、不明確なもの(すなわち「ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されている」とは言えないもの)となっている。 したがって、本件請求項1は、「特許を受けようとする発明(本件特許発明1)が明確であること」との要件に適合するとはいえないものである。 また、本件特許に係る出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2~17についても、本件請求項1と同様に、明確でない。 2 当審の判断 (1)本件発明16に対する特許法29条第2項に基づく主張について 本件発明16と甲1発明1とを対比すると、本件発明1と甲1発明1との相違点である[相違点1]に加えて、本件発明16が「前記車両において運転支援制御が実行されている場合には、前記向き崩れ判定時間を延長する」ものであるのに対して、甲1発明1においては、そのような事項が特定されていない点(以下、[相違点4]という。)で相違する。また、本件発明16と甲2発明とを対比すると、上記[相違点4]と同様の点で相違する。 そして、異議申立人によって提出されている証拠をみても、運転支援制御が実行されている場合には、向き崩れ判定時間を延長することが、本件特許出願時に公知または周知であることを示す証拠はない。 異議申立人が提出した甲4には、上記「第4」、「4」に示す事項が記載されており、これより、マニュアル運転と自動運転の両方の運転機能を備えている車両を運転した際に、車両の現在の運転状態がマニュアル運転である場合は、全てのレベルの情報について警告し、車両の現在の運転状態が、自動運転である場合は、車両に対する危険度が高いレベルの情報のみを警告することが記載されているといえる。 また、異議申立人が提出した甲5には、上記「第4」、「5」に示す事項が記載されており、これより、車間制御を開始可能状態にするクルーズメインスイッチ22がONされている状態で車間制御が解除された状態であっても、車間警報Bを実行することが記載されている。 さらに、異議申立人が提出した甲6には、上記「第4」、「6」に示す事項が記載されており、通常走行状態であると判定された時は、現在の前車との間の車間距離Dが、第1の安全車間距離D1よりも短かいか否かを判定し、その結果がYESの時は、運転者に対して警報を発生し、前車との車間距離が小さすぎることを認知させ、追従走行制御状態であると判定された時は、現在の前車との間の車間距離Dが、上記第1の安全車間距離D1よりも短かい第3の安全車間距離D3よりも短かいか否かを判定し、その結果がYESの時は、運転者に対して警報を発生し、前車との車間距離が小さすぎることを認知させることが記載されている。 しかしながら、甲4ないし6には、ドライバの運転不能状態を検出することについては、記載されておらず、これらの刊行物に記載されているのは、運転できる状態にあるドライバに対する警告又は警報することに関する時間についてであり、ドライバが運転不能状態であることを検出する本件発明、甲1発明1、甲1発明2及び甲2発明とは、発明の前提が異なる。よって、甲4ないし6に記載された事項から、運転支援制御が実施されている場合には、そうでない場合に比して危険度が低いということが技術常識であるといえたとしても、これは、ドライバが運転できる状態にある場合での技術常識であるから、甲1発明1、甲1発明2及び甲2発明に当該技術常識を適用することが当業者にとって容易であるとはいえない。 さらに、異議申立人は、「危険度を考慮して判定時間を適切な値に設定することは、時間判定により当該検出(「運転者の体調異常の検出」の意味と解される。)をする技術分野全般における共通の課題であるといえる」と主張するが、この点についての具体的な証拠を示しておらず、また、運転支援制御が実施されている場合には、本件発明16の向き崩れ判定時間に相当する時間を延長することは示されていない。したがって、異議申立人によって提出されている証拠をみても、運転支援制御が実行されている場合には、向き崩れ判定時間を延長することが、本件特許出願時に公知または周知であることを示す証拠はない。 よって、甲4ないし6に記載された事項から、運転支援制御が実施されている場合には、そうでない場合に比して危険度が低いということが技術常識であるといえたとしても、運転支援制御が実行されている場合には、向き崩れ判定時間を延長することが、本件特許出願時に公知または周知の事実ではないから、この技術常識によって、運転支援制御が実施されている場合には、甲1発明1の第一の所定時間及び甲2発明のしきい値を延長するようにすることは、当業者にとって、容易であるとはいえない。 よって、本件発明16は、甲1発明または甲2発明及び甲4ないし6に示される技術常識に基いて、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 (2)本件発明1ないし17に対する特許法第36条第6項第2号に基づく主張について 本件発明1は、上記「第2」に記載したとおりであり、これによれば、本件発明1の「向き崩れ状態検出手段」は、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合に、前記ドライバが運転不能状態であることを検出する」手段である。そして、異議申立人の主張は、この「運転不能状態」とは、どのような状態を意味しているか不明であるという主張と解される。 そして、上記発明特定事項によれば、「ドライバが運転不能状態であることを検出する」のは、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大きい場合」であることは明確であって、このような場合を検出してドライバが運転不能状態であるとしているのが本件発明1の上記発明特定事項が意味するところであるから、その意味は、請求項の記載から明確である。 また、本件発明2は、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つ前記ドライバが前記車両のハンドル(15)を放している場合」を検出して、ドライバが運転不能状態であるとすることを発明特定事項としているのであって、その意味は、請求項の記載から明確である。 同様に、本件発明3は、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つアクセル開度が所定開度よりも大きい場合」を検出して、ドライバが運転不能状態であるとすることを発明特定事項としているのであって、その意味は請求項の記載から明確である。 本件発明4は、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが顔向き閾値(Th2)よりも大きく、且つ操作判定時間(T3)よりも長い時間アクセル操作及びブレーキ操作が行われていない場合」を検出して、ドライバが運転不能状態であるとすることを発明特定事項としているのであって、その意味は請求項の記載から明確である。 さらに、本件発明5ないし17に係る発明は、本件発明1ないし4を直接または間接に引用する引用形式で特定された発明であって、本件発明1ないし4が明確であるのと同様の理由により、明確である。 そして、本件の発明の詳細な説明の記載をみても、「本発明は、ドライバが運転不能となった状態を検出するドライバの運転不能状態検出装置に関する」(【0001】)発明であって、「従来、車両の運転中に、急病等によりドライバが運転不能状態に陥り、事故に至ることが問題となっている」(【0002】)ことから、「このようなドライバの運転不能状態を検出し、事故を防止することが提案されて」(【0002】)おり、「運転中にドライバの急病等が発症した場合、ドライバの顔向きが崩れることが予想される」(【0005】)が、「ドライバが運転中に脇見等をした場合にも、ドライバの顔向きは崩れる」(【0005】)ため、「意識低下や急病等以外の要因による顔向きの崩れを考慮していないので、ドライバの運転不能状態の検出を誤るおそれがある」(【0005】)という課題を解決するためになされた発明であって、「一般的に、急病を発症すると、ドライバは顔の向きを維持できなくなり、車両の前方に対する顔の向きが崩れたままの状態になる」(【0008】)のに対して、「走行中にドライバが脇見をするときは、一般的にドライバは顔の向きを変えた後、すぐに戻すことが多い」(【0008】)ことから、「車両の前方に対する顔の向きが、向き崩れ判定時間を超えて顔向き閾値よりも大きい場合には、脇見などによる顔向きの崩れではなく、急病による顔向きの崩れである可能性が高」(【0009】)く、「車両の前方に対する顔向きが、向き崩れ判定時間を超えて顔向き閾値よりも大きい場合に、ドライバが運転不能状態であることを検出することにより、ドライバの運転不能状態を高精度に検出できる」(【0009】)ようにした発明であると理解でき、本件発明1にいう「運転不能状態であることを検出する」場合とは、「前記車両の走行中に、前記顔向き検出手段により検出された前記顔の向きが、向き崩れ判定時間(T2)を超えて顔向き閾値(Th2)よりも大き」い場合であって、ドライバが車両を運転できない状態であると本件明細書から理解でき、これは、上記本件発明1における「運転不能状態であることを検出する」ことの解釈と整合する。 また、同様に、本件発明2ないし17における「運転不能状態であることを検出する」上記解釈も発明の詳細な説明の記載による理解と整合する。 よって、申立人の「運転不能状態」の意味が不明であるという主張は、採用することができない。 第7 むすび 以上のことから、本件の請求項1、2、5、7に係る特許は、特許法第29条第1項及び同条第2項の規定に違反してされたことから、同法第113条第2項の規定に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件の請求項13、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたことから、同法第113条第2項の規定に該当し、取り消されるべきものである。 請求項3、4、6、8ないし12、15ないし17に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項3、4、6、8ないし12、15ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700145

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