特許異議申立
2023-700291
清酒
- 審判番号
- 2023-700291
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-105715外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7141568
- 請求日
- 2023年03月16日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C12G) / P1651.121-YAA(C12G) / P1651.537-YAA(C12G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7141568号発明「清酒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7141568号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7141568号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7141568号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、令和3年10月26日に出願した特願2021-174443号の一部を令和4年6月30日に新たな特許出願(特願2022-105715号)としたものであって、令和4年9月13日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和5年3月16日に特許異議申立人 吉久 悦子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月4日付けで取消理由が通知され、同年10月5日に特許権者 宝酒造株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月12日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年11月13日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求における訂正の趣旨は、「特許第7141568号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で15mg/L以上23mg/L以下であり、」と記載されているのを、「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上23mg/L以下であり、」に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定する請求項2ないし6も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で16mg/L以上22mg/L以下である」と記載されているのを、「前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上22mg/L以下である」に訂正する。
請求項2の記載を直接的又は間接的に引用して特定する請求項3、4及び6も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で16mg/L以上22mg/L以下である」と記載されているのを、「前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上22mg/L以下である」に訂正する。
請求項5の記載を引用して特定する請求項6も同様に訂正する。
(4) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6は請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであるので、訂正前の請求項1ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、酢酸イソアミル含量の範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0042】・【表2】や【0047】・【表3】の記載から見て、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項2ないし6についても同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、酢酸イソアミル含量の範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許の明細書の【0042】・【表2】や【0047】・【表3】の記載から見て、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項2の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項3、4及び6についても同様である。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項5の訂正は、酢酸イソアミル含量の範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る請求項5の訂正は、本件特許の明細書の【0042】・【表2】や【0047】・【表3】の記載から見て、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項5の記載を引用して特定する請求項6についても同様である。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和5年10月5日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上23mg/L以下であり、
カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、
酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下であることを特徴とする清酒。
【請求項2】
前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上22mg/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の清酒。
【請求項3】
前記カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で1.0mg/L以上2.0mg/L以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の清酒。
【請求項4】
前記酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で100mg/L以上140mg/L以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の清酒。
【請求項5】
前記酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上22mg/L以下であり、
前記カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で1.0mg/L以上2.0mg/L以下であり、
前記酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で100mg/L以上140mg/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の清酒。
【請求項6】
非発泡性であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の清酒。」
第4 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨(下記1ないし6)は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(新規性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(新規性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由2-1(進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-2(進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-3(進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
本件特許発明は、アルコール濃度当たりの香味成分濃度の範囲で特定されているが、あらゆるアルコール度数で発明の課題(豊かなフレッシュ感が感じられる清酒になる)が解決できるとは言えない。
7 証拠方法
・甲第1号証 :特開平8-173147号公報
・甲第1-1号証:特開2019-4721号公報
・甲第2号証 :特許第3544987号公報
・甲第3号証 :特開平7-184639号公報
・甲第4号証 :日本醸造協會雑誌、日本醸造協会、82巻3号144-148頁(1987年)
・甲第4-1号証:高知県中小企業団体中央会ウェブページ、「TOSA SAKE MAP 2020.4」、高知県中小企業団体中央会、2020年4月、https://www.kbiz.or.jp/kumiai/sake/wp/wp-content/uploads/2020/07/tosasake-map-2020.pdf
・甲第5号証 :高知県工業技術センター研究報告、高知県工業技術センター、48号1-5頁、2017年10月
・甲第6号証 :特許第6838850号公報
・甲第7号証 :独立行政法人酒類総合研究所ウェブページ、「清酒のにおいとその由来について」、独立行政法人酒類総合研究所、2011年7月、https://www.nrib.go.jp/data/pdf/seikoumisan.pdf
・甲第8号証 :特許第4798748号公報
・甲第9-1号証:Wayback Machineのアーカイブ、ウェブページ「日本酒をもっと知りたくなるWEBメディア SAKETIMES」「原酒に水を加えるのは何のため?-日本酒の味わいとバランスを整える『割水』の役割」の項目、2021年4月14日、https://web.archive.org/web/20210511062206/https://jp.sake-times.com/think/study/sake_g_genshu-warimizu
・甲第9-2号証:Wayback Machineのアーカイブ、ウェブページ「日本酒をもっと知りたくなるWEBメディア SAKETIMES」「日本酒のアルコール度数はいくつ?」の項目、2017年12月27日、https://web.archive.org/web/20230103090749/https://jp.sake-times.com/think/study/alcohol-by-volume
・甲第9-3号証:Wayback Machineのアーカイブ、株式会社Clearホームページ、2021年5月6日保存、https://web.archive.org/web/20210506011730/https://clear-inc.net/
・甲第10号証 :宝酒造株式会社のウェブページ、「松竹梅白壁蔵澪『一果(いちか)』スパークリング清酒地域・数量限定新発売」の項目、https://www.takarashuzo.co.jp/news/2019/TS19-093.htm
・甲第11号証 :日本食糧新聞のウェブページ、「『コールド大関』発売(大関)」の項目、日本食糧新聞社、2012年4月25日、https://news.nissyoku.co.jp/news/trend20120413124925071
・甲第12号証 :日本醸造協会誌、日本醸造協会、97巻5号377-381頁、2002年
・甲第13号証 :毎日新聞ウェブページ、「人気の「渡る世間の鬼ころし」シリーズから原酒登場「渡る世間の鬼ころし原酒」新発売(共同通信PRワイヤー)」、毎日新聞社、2020年9月10日、https://mainichi.jp/articles/20200910/pls/00m/020/502000c
また、特許異議申立人は、令和5年11月13日に提出した意見書に添付して、次の甲第14号証を提出している。
・甲第14号証:新明解国語辞典、株式会社三省堂、第六版第三刷、2005年4月10日、第1427頁
なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書及び意見書における記載にしたがった。
第5 令和5年8月4日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1ないし6に係る特許に対して、当審が令和5年8月4日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由には、申立理由1-1、申立理由1-2のうち請求項1、3、4及び6に係る部分、申立理由2-1及び申立理由2-2のうち請求項1、3、4及び6に係る部分が包含される。
1 取消理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、3、4及び6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、3、4及び6に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 令和5年8月4日付け取消理由通知で通知した取消理由について
(1) 取消理由1-1及び取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第1号証の記載事項等
(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「新規酵母及びその用途」について、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カプロン酸エチル高生産酵母の発酵性能及びアルコール耐性の改善された酵母及び該酵母を用いた香気成分の豊かな酒類、食品の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、カプロン酸感受性で、香気成分のうちカプロン酸エチルを多く生成する酵母の中から、発酵性能及びアルコール耐性の改善された新菌株を容易に選択し、該酵母を用いて、香気成分の豊かな酒類、食品を製造する方法に関する。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】香気成分の豊かな吟醸酒の場合、原料コストが高く、また製造日数も長くかかることから、安定に大量の吟醸酒を製造することは困難であった。また、低精白米を用いる普通酒仕込では、吟醸香に富んだ清酒を製造することは更に困難であった。本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決すべく、普通酒仕込で吟醸香が高く、かつ生成エタノール濃度の高い清酒の原酒を製造することにあり、そのためにカプロン酸エチル及び酢酸イソアミルがバランスよく高生成し、発酵力の強い新規酵母菌を提供すること、及び該酵母を用いて低精白米から、安定にかつ大量に、吟醸香の豊かな酒類を製造する方法、更には該酵母を用いて吟醸香の豊かな食品を製造する方法を提供することにある。」
「【0026】実施例1
変異・馴養株4株(18Al、13L3、13S5、13S12株)及び交雑株1株(10-143-2株)について、表1に示す仕込配合で清酒の製造を行った。掛米は精米歩合77%(w/w)のα米〔セブンライス工業(株)製〕を使用した。麹は、精米歩合72%(w/w)の白米を用いて製造した。酵母は5ml中に1×109 個含むものを添加した。発酵温度は15℃一定で行った。対照株として親株の13-e株及びK-901株を用いた。上槽液の分析結果を表5に示す。
【0027】
【表5】
[図:0001409105000001.jpg]
【0028】官能検査は3点法(1:良、2:普通、3:悪)で行い、パネラー10名の平均値で表した。この結果、18Al株、13L3株、13S5株、13S12株及び10-143-2株の5株は親株の13-e株に比べて発酵性能及びアルコール耐性が向上し、かつカプロン酸エチル生産能もK-901株の3倍から9倍を示した。また、18Al株及び10-143-2株はK-901株の3倍から5倍の酢酸イソアミルを生成した。この酢酸イソアミル高生産能は13-e株にはなかった性能である。得られた5株は官能的にも華やかな香りが認められ、特にカプロン酸エチルの生成量が13-e株より増加した13L3株で製造した清酒は、リンゴ様のフルーティな香りが強く、また酢酸イソアミル生成量も増加した18Al株及び10-143-2株で製造した清酒は、軽快で香りのバランスの良い優良な酒質となった。」
(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例1における交雑株(10-143-2株)を用い製造した清酒についてまとめると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「アルコールが19.3v/v%、酢酸イソアミルが22.0ppm、カプロン酸エチルが2.1ppm、酢酸エチルが155.2ppmである、清酒。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると両者は、
「清酒。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
清酒に含まれる成分について、本件特許発明1は、「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8g/L以上23mg/L以下であり、」「カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、」「酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下である」と特定されるのに対し、甲1発明は、「アルコールが19.3v/v%、酢酸イソアミルが22.0ppm、カプロン酸エチルが2.1ppm、酢酸エチルが155.2ppmである」点。
上記相違点1について検討する。
一般に特定のアルコール濃度あたりの香気成分濃度の換算は、アルコール濃度と香気成分濃度が正比例の関係にあるものとして換算される(必要ならば甲第1-1号証の【0016】などを参照のこと。)。
そこで、甲1発明の各香気成分について、アルコール濃度15v/v%に換算すると、次のように算出される。
・酢酸イソアミル : 22.0ppm×15/19.3≒ 17.1ppm(mg/L)
・カプロン酸エチル: 2.1ppm×15/19.3≒ 1.6ppm(mg/L)
・酢酸エチル :155.2ppm×15/19.3≒120.6ppm(mg/L)
してみると、相違点1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲第1号証及び他の全ての証拠を見ても、甲1発明において、酢酸イソアミルの含量を変更し、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、「しぼりたて清酒のようなみずみずしさや豊かなフレッシュ感を持った風味良好な清酒を提供する」との、格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、「上槽直後の清酒は、当然に、しぼりたて清酒のようなみずみずしさや豊かなフレッシュ感を持っており、」本件特許発明1の効果は、甲第1号証に示されているものであって、予測できない格別顕著な効果とはいえないこと(意見書p.3)、酢酸イソアミル濃度の数値範囲の選択は当業者が通常行うことであること(意見書p.4)などを主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において、酢酸イソアミルの濃度を変更する動機がないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ) 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし6も、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-1及び取消理由2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-1及び取消理由2-1の理由では、本件特許発明1ないし6に係る特許を取消すことはできない。
(2) 取消理由1-2及び取消理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第2号証の記載事項等
(ア) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「芳香性酵母新菌株」に関し、次の記載がある。
「技術分野
本発明は、芳香性の高い新規酵母及び該酵母による芳香性に富んだ酒類、食品の製造方法に関する。
更に詳細には、本発明は、芳香成分のうちカプロン酸エチル及び/又は酢酸イソアミルを多く生成する酵母を容易に造成する方法に関し、更には選択した酵母を用いて、香気の豊かな酒類、食品を製造する方法に関する。」(第1頁下から第7行ないし第2行)
「本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決すべく、普通酒仕込で吟醸香の高い、あるいは新規な吟醸香を有する清酒を製造することにあり、そのために酢酸イソアミル及び/又はカプロン酸エチルの生成能の高い新規酵母菌を提供すること、及び該酵母を用いて低精白米から、安定にかつ大量に、吟醸香の豊かな酒類を製造する方法、更には該酵母を用いて吟醸香の豊かな食品を製造する方法を提供することにある。」(第2頁第26行ないし第30行)
「実施例1
K-701株由来交雑株5株について、表1に示す仕込配合で清酒の製造を行った。掛米は精米歩合77%(w/w)のα米〔セブンライス工業(株)製〕を使用した。麹は、精米歩合72%(w/w)の白米を用いて製造した。酵母は5ml中に1×109個含むものを添加した。発酵温度は15℃一定で行った。対照株として親株のK-701株、及び代表的な清酒酵母である日本醸造協会901号(以下K-901と略述する)を用いた。上槽液の分析結果を表6に示す。
[図:0001409105000002.jpg]
」
(イ) 甲第2号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例1の交雑株(8-30-1)を用いて製造された清酒小仕込上槽液についてまとめると、甲第2号証には次の発明が記載されているものと認める。
「アルコールが18.4v/v%、酢酸イソアミルが18.5ppm、カプロン酸エチルが1.2ppm、酢酸エチルが161.3ppmである、清酒小仕込上槽液。」(以下、「甲2発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「清酒小仕込上槽液」は、本件特許発明1の「清酒」に相当する。
してみると、両者は、
「清酒。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点2)
清酒に含まれる成分について、本件特許発明1は、「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上23mg/L以下であり、」「カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、」「酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下である」と特定されるのに対し、甲21発明は、「アルコールが18.4v/v%、酢酸イソアミルが18.5ppm、カプロン酸エチルが1.2ppm、酢酸エチルが161.3ppmである」点。
上記相違点2について検討する。
一般に特定のアルコール濃度あたりの香気成分濃度の換算は、アルコール濃度と香気成分濃度が正比例の関係にあるものとして換算される(必要ならば甲第1-1号証の【0016】などを参照のこと。)。
そこで、甲2発明の各香気成分について、アルコール濃度15v/v%に換算すると、次のように算出される。
・酢酸イソアミル : 18.5ppm×15/18.4≒ 15.1ppm(mg/L)
・カプロン酸エチル: 1.2ppm×15/18.4≒ 1.0ppm(mg/L)
・酢酸エチル :161.3ppm×15/18.4≒131.5ppm(mg/L)
してみると、相違点2は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2発明ではない。
また、甲第2号証及び他の全ての証拠を見ても、甲2発明において、酢酸イソアミルの含量を変更し、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、相違点2に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、「しぼりたて清酒のようなみずみずしさや豊かなフレッシュ感を持った風味良好な清酒を提供する」との、格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、この点について、特許異議申立人は意見書において、上記(1)イ(ア)と同旨の主張をするが、上記検討のとおり、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、酢酸イソアミルの濃度を変更する動機がないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ) 本件特許発明3、4及び6について
本件特許発明3、4及び6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3、4及び6も、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-2及び取消理由2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-2及び取消理由2-2の理由では、本件特許発明1、3、4及び6に係る特許を取消すことはできない。
2 令和5年8月4日付け取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
令和5年8月4日付け取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由1-2のうち請求項2及び5の部分、申立理由2-2のうち請求項2及び5の部分、申立理由2-3及び申立理由3である。
以下、検討する。
(1) 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)のうち、請求項2及び5に係る部分について
ア 請求項2及び5について
本件特許発明2及び5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定するものである。
そして、上記1(2)イ(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び5も、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 申立理由1-2及び申立理由2-2のうち、請求項2及び5に係る部分についてのまとめ
上記アのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2の理由では、本件特許発明2及び5に係る特許を取消すことはできない。
(2) 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の実施例(【0019】~【0020】)における、変異株「AM004」を用いた例に着目して整理すると、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「アルコールが19.0v/v%、酢酸イソアミルが21.2ppm、カプロン酸エチルが0.5ppm、酢酸エチルが164.9ppmである、清酒小仕込上槽液。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「清酒小仕込上槽液」は、本件特許発明1の「清酒」に相当する。
してみると、両者は、
「清酒。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点3)
清酒に含まれる成分について、本件特許発明1は、「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で17.8mg/L以上23mg/L以下であり、」「カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、」「酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下である」と特定されるのに対し、甲21発明は、「アルコールが19.0v/v%、酢酸イソアミルが21.2ppm、カプロン酸エチルが0.5ppm、酢酸エチルが164.9ppmである」点。
上記相違点3について検討する。
一般に特定のアルコール濃度あたりの香気成分濃度の換算は、アルコール濃度と香気成分濃度が正比例の関係にあるものとして換算される(必要ならば甲第1-1号証の【0016】などを参照のこと。)。
そこで、甲3発明の各香気成分について、アルコール濃度15v/v%に換算すると、次のように算出される。
・酢酸イソアミル : 21.2ppm×15/19.0≒ 16.7ppm(mg/L)
・カプロン酸エチル: 0.5ppm×15/19.0≒ 0.4ppm(mg/L)
・酢酸エチル :164.9ppm×15/19.0≒130.2ppm(mg/L)
してみると、相違点3は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3発明ではない。
また、甲第3号証及び他の全ての証拠を見ても、甲3発明において、酢酸イソアミルの含量及びカプロン酸の含量を変更し、相違点3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機付けもない。
そして、本件特許発明1は、相違点3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、「しぼりたて清酒のようなみずみずしさや豊かなフレッシュ感を持った風味良好な清酒を提供する」との、格別の効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし6も、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由2-3についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-3の理由では、本件特許発明1ないし6に係る特許を取消すことはできない。
(3) 申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「エステル系成分に着目した、今までにない新しい風味を備えた清酒を提供すること」(【0008】)であって、具体的には、「しぼりたて清酒のようなみずみずしさや豊かなフレッシュ感を持った風味良好な清酒を提供」(【0009】することである。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の1つの様相は、酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で15mg/L以上23mg/L以下であり、カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、かつ酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下であることを特徴とする清酒である」(【0010】)こと、「本発明の清酒における酢酸イソアミル含量は、アルコール濃度15v/v%換算で、15mg/L以上23mg/L以下(15~23mg/L)である。ここで、酢酸イソアミル含量が15mg/L未満であると、フレッシュ感につながる香気が不足して所望の酒質が得られないおそれがある。酢酸イソアミル含量が23mg/L超であると、香気が強すぎ、酒類としての良好なバランスを崩してしまうおそれがある」(【0022】)こと、「本発明の清酒におけるカプロン酸エチル含量は、アルコール濃度15v/v%換算で、0.5mg/L以上2.2mg/L(0.5~2.2mg/L)である。ここで、カプロン酸エチル含量が0.5mg/L未満であると、香気のふくらみに欠け、所望の酒質が得られないおそれがある。カプロン酸エチル含量が2.2mg/L超であると、苦味や香気の重さにつながるおそれがある」(【0023】)こと、「本発明の清酒における酢酸エチル含量は、アルコール濃度15v/v%換算で、75mg/L以上160mg/L以下(75~160mg/L)である。ここで、酢酸エチル含量が75mg/L未満であると、みずみずしさに欠け、所望の酒質が得られないおそれがある。酢酸エチル含量が160mg/L超であると、溶媒様でオフフレーバーとして認識されるおそれがある」(【0024】)ことが記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、「酢酸イソアミル含量がアルコール濃度15v/v%換算で15mg/L以上23mg/L以下であり、カプロン酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で0.5mg/L以上2.2mg/L以下であり、かつ酢酸エチル含量がアルコール濃度15v/v%換算で75mg/L以上160mg/L以下」である清酒との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明1ないし6はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1ないし6はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 6の趣旨の主張をする。
しかしながら、上記ウの検討のとおり、アルコール度数を15v/v%に換算した数値として、酢酸イソアミル含量、カプロン酸エチル含量、酢酸エチル含量が特定の範囲を満たすものであれば、発明の課題を解決することは、本件特許の明細書の記載及び実施例から、当業者であれば認識できるものといえる。
さらに、特許異議申立人は意見書において、官能評価試験の条件が不明であることなどを挙げ、技術上の意味が不明である旨主張するが、上記の判断を左右するものではない(そもそも、特許異議申立時において主張することができた事項であって、新たな申立理由を主張するものであるともいえる。)。
また、特許異議申立人は、本件特許発明の発明特定事項を満たす場合において、具体的に課題を解決できないとする証拠を提示するものでもない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
オ 申立理由3についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明1ないし6に係る特許を取消すことはできない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700291