特許異議申立
2024-700529
オリゴ核酸化合物の製造方法
- 審判番号
- 2024-700529
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-518368
- 登録番号
- 7394749
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2025年06月03日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本新薬株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】落合 康
- 【権利者代理人】林 康次郎
- 【異議申立人】坂本 麻衣子
- 【異議申立人代理人】松浦 正明
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 宮田 透
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1652.851-YAA(C07F) / P1652.852-YAA(C07F) / P1652.853-YAA(C07F) / P1652.857-YAA(C07F) / P1652.113-YAA(C07F) / P1652.121-YAA(C07F) / P1652.536-YAA(C07F) / P1652.537-YAA(C07F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7394749号発明「オリゴ核酸化合物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7394749号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20について訂正することを認める。
特許第7394749号の請求項1、3~12、14~20に係る特許を維持する。
特許第7394749号の請求項2に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7394749号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)5月10日(優先権主張 平成30年5月10日)を国際出願日とする出願であって、令和5年11月30日に特許権の設定登録がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~12に係る発明の特許に対し、令和6年6月4日付けで坂本 麻衣子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和6年 7月30日付け 取消理由通知
同年 9月27日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年10月25日付け 手続補正指令(方式)
同年11月28日 手続補正書(方式)(特許権者)
令和7年 1月14日付け 訂正拒絶理由通知
同年 1月30日 応対記録(日付は初回応対日)
同年 2月 6日 意見書・手続補正書の提出(特許権者)
同年 2月25日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和7年2月25日付けの通知に対して申立人から応答はなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨
令和7年2月6日付けの手続補正書によって補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、
「特許第7394749号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12および14~20について訂正することを求める。」
というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正請求書の記載並びに訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~12からなるものであると認められる。訂正による記載の変更箇所を下線によって一部示した。
なお、訂正前後の請求項の関係は次のとおりである。
訂正後の請求項 訂正前の請求項
請求項1 請求項1
請求項2(削除)請求項2
請求項3 請求項3
請求項4 請求項4
請求項5 請求項5
請求項6 請求項6
請求項7 請求項7
請求項8 請求項8
請求項9 請求項9
請求項10 請求項10(請求項8の記載を引用するもの)
請求項11 請求項11(請求項8の記載を引用するもの)
請求項12 請求項12(請求項8の記載を引用するもの)
請求項13 請求項13(訂正なし)
請求項14 請求項10(請求項9の記載を引用するもの)
請求項15 請求項11(請求項9の記載を引用するもの)
請求項16 請求項11(請求項8の記載を引用する請求項10の記載
を引用するもの)
請求項17 請求項11(請求項9の記載を引用する請求項10の記載
を引用するもの)
請求項18 請求項12(請求項9の記載を引用するもの)
請求項19 請求項12(請求項8の記載を引用する請求項10の記載
を引用するもの)
請求項20 請求項12(請求項9の記載を引用する請求項10の記載
を引用するもの)
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含み」との記載を、「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合には」との記載に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の「d、BP、R4a、R4b1およびR4b2は前記一般式[4a]~[4d]におけるd、BP、R4a、R4b1およびR4b2と同義であり」との記載を、「d、BP、J、R4a、R4b1およびR4b2は前記一般式[4a]~[4d]におけるd、BP、J、R4a、R4b1およびR4b2と同義であり」との記載に訂正する。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること」との記載に続けて、「、中性条件下で脱離可能な基が、2-シアノエトキシメトキシ、2-シアノエトキシ-2-エトキシおよびtert-ブチルジメチルシリルからなる群から選択される基であること、塩基性条件下で脱離可能な基が、トリフルオロアセチルであること、酸性条件下で脱離可能な基が、トリチル、モノメトキシトリチルおよびジメトキシトリチルからなる群から選択される基であること、」との記載を追加する訂正をする。
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1において、前記訂正事項1-3により追加した記載に続けて、「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒であること、」との記載を追加する訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3の冒頭の「化合物[A]および化合物[B]を構成する各ヌクレオシドユニット間のリン結合が」との記載の直前に、訂正事項1により訂正された請求項1の「水酸基または1級のもしくは2級のアミノ基を有する化合物[A]」から「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3の末尾の「結合である、請求項1に記載の方法。」との記載を、「結合であること、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項1により訂正された請求項1の「中性条件下で脱離可能な基が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項4の冒頭の「化合物[A]を構成するヌクレオシドユニットが」との記載の直前に、訂正事項1により訂正された請求項1の「水酸基または1級のもしくは2級のアミノ基を有する化合物[A]」から「当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4の末尾の「ヌクレオシドユニットである、請求項1に記載の方法。」との記載を、「ヌクレオシドユニットである、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項1により訂正された請求項1の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項5の冒頭の「化合物[A]および化合物[B]を構成する各ヌクレオシドユニット間のリン結合が」との記載の前に、訂正事項1により訂正された請求項1の「水酸基または1級のもしくは2級のアミノ基を有する化合物[A]と」から「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5の末尾の「結合である、請求項1に記載の方法。」との記載を、「結合であること、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項1により訂正された請求項1の「中性条件下で脱離可能な基が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
(6)訂正事項6
ア 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項6の冒頭の「化合物[B]が」との記載を削除する。
イ 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項6の「化合物であり、化合物[A]が次の一般式[A-1]」との記載を、「化合物と、次の一般式[A-1]」との記載に訂正する。
ウ 訂正事項6-3
特許請求の範囲の請求項6の「化合物であり、化合物[C]が一般式[C-1]」との記載を、「化合物を縮合反応に付し、次の一般式[C-1]」との記載に訂正する。
エ 訂正事項6-4
特許請求の範囲の請求項6の末尾の「化合物である、請求項1に記載の方法。」との記載を、「化合物を製造するための方法であって、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項1により訂正された請求項1の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
オ 訂正事項6-5
特許請求の範囲の請求項6の「除去可能」との記載(8箇所)を、すべて「脱離可能」との記載に訂正する。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項7の冒頭の「更に」との記載の直前に、訂正事項6より訂正された請求項6の「次の一般式[B-1]」から「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われること、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項7の冒頭の「更に、請求項6に記載の製造方法で製造される化合物[C-1]」との記載を、「更に、化合物[C-1]」との記載に訂正する。
ウ 訂正事項7-3
特許請求の範囲の請求項7の末尾の「化合物を形成することを含む、請求項6に記載の方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項6により訂正された請求項6の「中性条件下で脱離可能な基が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
エ 訂正事項7-4
特許請求の範囲の請求項7の「除去可能」との記載(7箇所)を、すべて「脱離可能」との記載に訂正する。
(8)訂正事項8
ア 訂正事項8-1
特許請求の範囲の請求項8の「化合物を形成し、該一般式[A-1]の化合物と」との記載を、「化合物を形成し、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において、該一般式[A-1]の化合物と」との記載に訂正する。
イ 訂正事項8-2
特許請求の範囲の請求項8の「化合物とを反応させて、一般式[C-1]」との記載を、「化合物を縮合反応に付し、次の一般式[C-1]」との記載に訂正する。
ウ 訂正事項8-3
特許請求の範囲の請求項8の「化合物を調製する、請求項1または2に記載の方法。」との記載を、「化合物を調製するための方法であって、酸性条件下で脱離可能な基が、トリチル、モノメトキシトリチルおよびジメトキシトリチルからなる群から選択される基であること、極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒であること、を特徴とする方法。」との記載に訂正する。
(9)訂正事項9
ア 訂正事項9-1
特許請求の範囲の請求項9の冒頭の「混合溶媒が」の直前に、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、一般式[A-1-1]」から「化合物を調製するための方法であって、酸性条件下で脱離可能な基が、トリチル、モノメトキシトリチルおよびジメトキシトリチルからなる群から選択される基であること、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項9-2
特許請求の範囲の請求項9の「である、請求項8に記載の一般式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「であること、を特徴とする方法。」との記載に訂正する。
(10)訂正事項10
ア 訂正事項10-1
特許請求の範囲の請求項10の冒頭の「一般式[A-1-1]」の直前に、「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」との記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項10-2
特許請求の範囲の請求項10の「そしてn、」から「の化合物より」までの記載を、訂正事項8により訂正された請求項8の「BPは、保護されていてもよい核酸塩基であり」との記載に訂正し、それに続けて、同請求項8の「Wは、酸素原子または硫黄原子であり」から「の化合物より」までの記載を追加する訂正をする。
ウ 訂正事項10-3
特許請求の範囲の請求項10の「Q1を除去することを含む、請求項8または9に記載の一般式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、訂正事項8により訂正された請求項8の「Q1を除去して、一般式[A-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載に訂正し、それに続けて、同請求項8の「極性溶媒が」から「特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
エ 訂正事項10-4
特許請求の範囲の請求項10のうち、請求項9の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項9及び訂正事項10-1~訂正事項10-3を含めて独立請求項として、新たな請求項14とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項10の冒頭の「一般式[A-1-1]」の直前に、「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」との記載を追加する訂正をし(訂正事項10-1)、
特許請求の範囲の請求項10の「そしてn、」から「の化合物より」までの記載を、訂正事項8により訂正された請求項8の「BPは、保護されていてもよい核酸塩基であり」との記載に訂正し、それに続けて、同請求項8の「Wは、酸素原子または硫黄原子であり」から「の化合物より」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項10-2)、
特許請求の範囲の請求項10の「Q1を除去することを含む、請求項8または9に記載の一般式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、訂正事項8により訂正された請求項8の「Q1を除去して、一般式[A-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載に訂正し、それに続けて、訂正事項9により訂正された請求項9の「混合溶媒が、」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項10-3の一部と訂正事項9-2)、新たな請求項14とする。
(11)訂正事項11
ア 訂正事項11-1
特許請求の範囲の請求項11の「前記一般式[A-1]」の直前に、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、一般式[A-1-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項11-2
特許請求の範囲の請求項11の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項8により訂正された請求項8の「酸性条件下で脱離可能な基が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
ウ 訂正事項11-3
特許請求の範囲の請求項11のうち、請求項9の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項9並びに訂正事項11-1及び訂正事項11-2を含めて独立請求項として、新たな請求項15とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項11の「前記一般式[A-1]」の直前に、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、一般式[A-1-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項11-1)、
特許請求の範囲の請求項11の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項9により訂正された請求項9の「混合溶媒が、」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項11-2の一部と訂正事項9-2)、新たな請求項15とする。
エ 訂正事項11-4
特許請求の範囲の請求項11のうち、請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項10並びに訂正事項11-1及び訂正事項11-2を含めて独立請求項として、新たな請求項16とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項11の「前記一般式[A-1]」の直前に、訂正事項10により訂正された請求項10の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項10-1~訂正事項10-3の一部)、
特許請求の範囲の請求項11の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項11-2の一部と訂正事項8-3の一部)、新たな請求項16とする。
オ 訂正事項11-5
特許請求の範囲の請求項11のうち、請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項9、訂正事項10並びに訂正事項11-1及び訂正事項11-2を含めて独立請求項として、新たな請求項17とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項11の「前記一般式[A-1]」の直前に、訂正事項10により訂正された請求項10の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項10-1~訂正事項10-3の一部)、
特許請求の範囲の請求項11の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項9により訂正された請求項9の「混合溶媒が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項11-2の一部と訂正事項9-2の一部)、新たな請求項17とする。
(12)訂正事項12
ア 訂正事項12-1
特許請求の範囲の請求項12の「前記一般式[A―1-1]」の直前に、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、一般式[A-1-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をする。
イ 訂正事項12-2
特許請求の範囲の請求項12の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項8により訂正された請求項8の「酸性条件下で脱離可能な基が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をする。
ウ 訂正事項12-3
特許請求の範囲の請求項12のうち、請求項9の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項9並びに訂正事項12-1及び訂正事項12-2を含めて独立請求項として、新たな請求項18とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項12の「前記一般式[A-1-1]」の直前に、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、一般式[A-1-1]」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項12-1)、
特許請求の範囲の請求項12の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項9により訂正された請求項9の「酸性条件下で脱離可能な基が、」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項12-2の一部と訂正事項9の一部)、新たな請求項18とする。
エ 訂正事項12-4
特許請求の範囲の請求項12のうち、請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項10並びに訂正事項12-1及び訂正事項12-2を含めて独立請求項として、新たな請求項19とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項12の「前記一般式[A-1-1]」の直前に、訂正事項10により訂正された請求項10の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項10-1~訂正事項10-3の一部)、
特許請求の範囲の請求項12の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項8により訂正された請求項8の「極性溶媒が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項12-2の一部と訂正事項8-3の一部)、新たな請求項19とする。
オ 訂正事項12-5
特許請求の範囲の請求項12のうち、請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項8、訂正事項9、訂正事項10並びに訂正事項12-1及び訂正事項12-2を含めて独立請求項として、新たな請求項20とする。
すなわち、
特許請求の範囲の請求項12の「前記一般式[A-1-1]」の直前に、訂正事項10により訂正された請求項10の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中、」から「化合物を調製するための方法であって、」までの記載を追加する訂正をし(訂正事項10-1~訂正事項10-3の一部)、
特許請求の範囲の請求項12の「化合物を形成することを含む、請求項8~10に記載の式[C-1]の化合物を調製する方法。」との記載を、「化合物を形成することを含むこと、」との記載に訂正し、それに続けて、訂正事項9により訂正された請求項9の「混合溶媒が」から「を特徴とする方法。」までの記載を追加する訂正をして(訂正事項12-2の一部と訂正事項9-2の一部)、新たな請求項20とする。
(13)訂正事項13
明細書の【0045】の「塩基性条件下で除去可能な基」との記載(3箇所)を、「塩基性条件下で脱離可能な基」との記載に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の【0045】の「酸性条件下で除去可能な基」との記載を、「酸性条件下で脱離可能な基」との記載に訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の【0045】の「中性条件下で除去可能な基」との記載を、「中性条件下で脱離可能な基」との記載に訂正する。
3 本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、令和6年7月30日付けの取消理由通知において、訂正前の請求項1の「化合物[A]および化合物[B]がその分子内に1個~複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含み、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」との記載が矛盾する事項を含み、訂正前の請求項1に係る発明が明確でない旨の指摘に対応してされた訂正であり、「化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」るのが、「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合」であることを明確にするものである。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)の【0017】に「化合物[A]がその分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合には、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合されていることが好ましい。」と記載され、同【0029】に「化合物[B]がその分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合には、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合されていることが好ましい。」と記載されているから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項1-2について
特許明細書等の【0027】に、一般式[4e]~[4h]のヌクレオシドユニットの式中の記号の定義として「式中、d、B P、J、R 4a、R 4b1およびR 4b2は前記と同義であり」との記載があるところ、訂正前の請求項1の記載は「J」が抜けた誤記であることは明らかであり、訂正前の記載が、当然に「J」を加えた訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の明細書の【0027】に、上記した特許明細書等の【0027】と同じ記載があるから、この訂正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、特許明細書等の【0045】に「「酸性条件下で除去可能な基」としては、例えば、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチルを挙げることができる。「塩基性条件下で除去可能な基」としては、例えば、トリフルオロアセチルを挙げることができる。「中性条件下で除去可能な基」としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドまたは三フッ化水素・トリエチルアミン塩を作用させることによって脱離させることができる基を挙げることができ、例えば、2-シアノエトキシメトキシ、2-シアノエトキシ-2-エトキシ、tert-ブチルジメチルシリルを挙げることができる。」と記載されているから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 訂正事項1-4について
訂正事項1-4は、極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、特許明細書等の請求項2に「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒である」と記載されているから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前に請求項1の記載を引用する記載であった請求項3の記載を、訂正事項1で訂正された請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
「化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」るのが、「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合」であることを明確にする訂正、
「J」についての誤記を正す訂正、
中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(「J」についての誤記を正す訂正以外の訂正について)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(「J」についての誤記を正す訂正について)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前に請求項1の記載を引用する記載であった請求項4の記載を、訂正事項1で訂正された請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
「化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」るのが、「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合」であることを明確にする訂正、
中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前に請求項1の記載を引用する記載であった請求項5の記載を、訂正事項1で訂正された請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
「化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」るのが、「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合」であることを明確にする訂正、
「J」についての誤記を正す訂正、
中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(「J」についての誤記を正す訂正以外の訂正について)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(「J」についての誤記を正す訂正について)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6-1~6-4について
訂正事項6-1~6-4は、訂正前に請求項1の記載を引用する記載であった請求項6の記載を、訂正事項1で訂正された請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項6-5について
訂正事項6-5は、訂正前の請求項6の「除去可能な基」との記載について、特許明細書等において、「除去可能な基」との記載と「脱離可能な基」との記載が同じ意味を表すものとして混在し明瞭でなかったのを、「脱離可能な基」に統一するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
特許明細書等の請求項6には、一般式[B-1]の化合物の置換基Q1の定義として「酸性条件下で除去可能な基」と記載されているが、特許明細書等の【0032】には同じ一般式[B-1]の化合物の置換基Q1の定義として「Q1は酸性条件下で脱離可能な基を表す。」と記載されている。
また、特許明細書等の請求項6には、一般式[2]におけるA1について「塩基性条件下で除去可能な基」と記載されているが、特許明細書等の【0010】には同じ一般式[2]におけるA1について「塩基性条件下で脱離可能な基」と記載されている。
このように、特許明細書等において、「脱離可能な基」と「除去可能な基」は同義であることが明らかである。
したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7-1~7-3について
訂正事項7-1~7-3は、訂正前に請求項6の記載を引用する記載であった請求項7の記載を、訂正事項1及び6で訂正された請求項6との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
中性条件下で脱離可能な基、塩基性条件下で脱離可能な基及び酸性条件下で脱離可能な基をそれぞれ所定の基に限定する訂正、
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正、並びに
「除去可能な基」との記載と「脱離可能な基」との記載が同じ意味を表すものとして混在し明瞭でなかったのを、「脱離可能な基」に統一する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項7-4について
訂正前の請求項7の「除去可能な基」との記載について、特許明細書等において、「除去可能な基」との記載と「脱離可能な基」との記載が同じ置換基を意味するものとして混在し明瞭でなかったのを、「脱離可能な基」に統一するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記(6)イで述べたのと同様の理由により、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8(訂正事項8-1~訂正事項8-3)は、訂正前に請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であった請求項8の記載を、請求項2の記載の引用を削除し、訂正事項1で訂正された請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正、及び
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9(訂正事項9-1及び訂正事項9-2)は、訂正前に請求項8の記載を引用する記載であった請求項9の記載を、訂正事項1及び8で訂正された請求項8との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、及び
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(10)訂正事項10について
ア 訂正事項10-1~10-3について
訂正事項10-2は、訂正前の請求項10に「そしてn、BP、W、X、G、およびTが請求項10に記載の一般式[A-1-1]におけるn、BP、W、X、G、およびTと同義である」との記載を訂正することを含むところ、当該記載における「請求項10」との記載は、請求項10に一般式[A-1-1]における記号n、BP、W、X、G、およびTの定義が記載されていないことから、誤記があることは明らかである。そして、訂正前の請求項10は、請求項8又は請求項9の記載を引用するものであるが、一般式[A-1-1]の上記記号の定義を記載しているのは請求項8である。したがって、訂正前の記号n、BP、W、X、G、およびTの定義の記載が、当然に訂正事項8により訂正された請求項8の訂正後の記号n、BP、W、X、G、およびTの定義の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、上記の点についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、当初明細書等には、訂正前の請求項10に対応する請求項12に、一般式[A-1-1]について、「n、BP、W、X、G、およびTが前記と同義である」と記載され、訂正前の請求項8に対応する請求項10に、一般式[A-1-1]における、n、BP、W、X、G、およびTの定義の記載がある。
してみると、上記の点についての訂正事項10-2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
さらに、上記の点以外の訂正事項10-1~10-3は、
訂正前に請求項8又は請求項9の記載を引用する記載であった請求項10の記載のうち、請求項8の記載を引用するものについて、訂正事項1及び8で訂正された請求項8との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項10-4について
訂正事項10-4は、訂正前に請求項8又は請求項9の記載を引用する記載であった請求項10の記載のうち、請求項9の記載を引用するものについて、上記アで述べた誤記又は誤訳の訂正及び特許請求の範囲の減縮を含めて、訂正事項1、8及び9で訂正された請求項9との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記アで述べた誤記又は誤訳の訂正以外の訂正)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記アで述べた誤記又は誤訳の訂正)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(11)訂正事項11について
ア 訂正事項11-1及び11-2について
訂正事項11-1及び11-2は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項11の記載のうち、請求項8の記載を引用するものについて、訂正事項1及び8で訂正された請求項8との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項11-3について
訂正事項11-3は、
訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項11の記載のうち、請求項9の記載を引用するものについて、訂正事項1、8及び9で訂正された請求項9との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、及び
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項11-4について
訂正事項11-4は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項11の記載のうち、請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項1、8及び10で訂正された請求項10との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、
上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正以外の訂正)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 訂正事項11-5について
訂正事項11-5は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項11の記載のうち、請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項1、8、9及び10で訂正された請求項10との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、及び
上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正以外の訂正)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(12)訂正事項12について
ア 訂正事項12-1及び12-2について
訂正事項12-1及び12-2は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項12の記載のうち、請求項8の記載を引用するものについて、訂正事項1及び8で訂正された請求項8との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項12-3について
訂正事項12-3は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項12の記載のうち、請求項9の記載を引用するものについて、訂正事項1、8及び9で訂正された請求項9との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、及び
酸性条件下で脱離可能な基を所定の基に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項12-4について
訂正事項12-4は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項12の記載のうち、請求項8の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項1、8及び10で訂正された請求項10との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、
上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正、並びに
極性溶媒及びハロゲン系溶媒をそれぞれ所定の溶媒に限定する訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正以外の訂正)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 訂正事項12-5について
訂正事項12-5は、訂正前に請求項8~請求項10の記載を引用する記載であった請求項12の記載のうち、請求項9の記載を引用する請求項10の記載を引用するものについて、訂正事項1、8、9及び10で訂正された請求項10との引用関係を解消して独立形式の請求項の記載に改める訂正
(当該訂正は、
請求項2の記載の引用を削除する訂正、及び
上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正を含む。)
である。
したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、「誤記又は誤訳の訂正」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正以外の訂正)及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするもの(上記(10)アで述べた誤記又は誤訳の訂正)であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(13)訂正事項13~15について
訂正事項13~15は、特許明細書等において、「塩基性条件下で除去可能な基」と「塩基性条件下で脱離可能な基」、「酸性条件下で除去可能な基」と「酸性条件下で脱離可能な基」及び「中性条件下で除去可能な基」と「中性条件下で脱離可能な基」との記載が、それぞれ同じ置換基を意味するものとして混在し、明瞭ではなかったものを、それぞれ、「塩基性条件下で脱離可能な基」、「酸性条件下で脱離可能な基」及び「中性条件下で脱離可能な基」に統一するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項6-5について(6)イで述べたのと同様の理由により、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(14)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の請求項1~12に係る特許に対して特許異議の申立てがされているところ、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12及び14~20に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
(15)一群の請求項について
本件訂正に係る訂正前の請求項1~12について、その請求項2~12は直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12及び14~20は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
(16)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項13~15による明細書についての訂正は、当該訂正に係る一群の請求項である請求項1~12及び請求項14~20に関係するところ、本件訂正は、当該請求項の全てについて行われているから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
(17)別の訂正単位とする求め
本件訂正の請求において、訂正後の請求項3~12及び14~20については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求められている。
4 まとめ
以上のとおり、訂正事項1~15による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号~第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1-2〕、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19及び20について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1、3~12及び14~20に係る発明(以下請求項の番号順に「本件発明1」等といい、併せて「本件発明」ともいうことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3~12及び14~20に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(4)に示す甲第1号証~甲第4号証を提出し、本件訂正前の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(3)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。申立理由の概要は、申立書の全体の記載からみて、以下のとおりと認められる。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性・進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第2号証を主引例とする新規性・進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件違反)
ア 本件特許発明で用いられる「極性溶媒」は、本件特許明細書に定義がされておらず、また当業者にも「極性溶媒」がどの溶媒まで含むのかは、明らかではない。したがって、本件発明1、3~8及び10~12は明確性に違反する。
また、如何なる極性溶媒も本件特許発明における「極性溶媒」に含まれるとすれば、本件発明1、3~8及び10~12の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
イ 本件発明1及び3~8で用いられる「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」、及び「酸性条件下で脱離可能な基」は、本件特許明細書に定義がされておらず、また当業者にもどの基まで含むのかは、明らかではない。
したがって、「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」、及び「酸性条件下で脱離可能な基」は明確ではないため、本件発明1、3~8及びこれらに従属する本件発明2及び9~12は明確性に違反する。
また、如何なる基も本件特許発明における上記の基に含まれるとすれば、本件発明1~12の発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
ウ 本件発明1では、「・・・化合物[A]および化合物[B]がその分子内に1個~複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含み、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され、・・・」(下線は申立人が付与)と記載されているが、前者の下線が、化合物[A]及び[B]が1個のヌクレオシドユニットを含む場合を包含する定義であるのに対し、後者の下線は、化合物[A]及び[B]が複数個のヌクレオシドユニットを含む場合に限定する定義であるため、前者と後者の範囲の整合性がなく、特許発明の範囲が明確でない。本件発明1及びそれに従属する本件発明2~12は明確性に違反する。
エ 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の[0003]~[0005]の問題を解決して、「オリゴ核酸化合物の製造期間を短縮しうる、新規な製造方法」を提供することにある。
本件発明1~12の「化合物[C]等を製造するための方法」は、固相法と液相法の双方に用いられる。
しかし、固相法の「縮合」反応の試験は、本件特許明細書の実施例には、全く記載されていない。すなわち、[0004] に記載された「極性溶媒を使用するということは、縮合反応の反応効率および反応速度を向上するという側面から好ましいとはいえない」との固相法における問題が、本件特許発明で解決され、極性溶媒を用いる従来技術と比較して、本件特許発明で反応効率および反応速度が向上したことが、具体的に示されていない。
したがって、本件発明1~12は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
オ 本件発明1~12において、混合溶媒中の極性溶媒とハロゲン系溶媒の比率は特定されていない。
したがって、本件発明1~12における「極性溶媒とハロゲン系溶媒の比率」は、例えば従来技術の極性溶媒のみ(本件特許明細書の[0004])、又はハロゲン系溶媒のみ(本件特許明細書の[0005])の方法と極めて近似する比率、例えば1:99、99:1等をも含む。
このような比率では、従来技術と大差が無いと思われるため、本件特許発明の課題を解決することができないと考えられる。
したがって、本件発明1~12は、従来技術の方法に極めて近似する方法を含むため、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
カ 本件発明1においては、化合物[A]及び化合物[B]の定義が非常に広範囲に枝分かれする形で及ぶものであるが、それに対する実施例は、表3に記載されるようなモルフォリン骨格を有する化合物のアミノ基と、表1に記載されるようなホスホロアミドクロリダート構造を有する化合物の縮合に関するもののみであり、それ以外の化合物全般、例としてモルフォリン骨格を有さない化合物や、アミノ基ではなく水酸基で縮合する化合物、あるいはホスホロアミドクロリダート構造ではなくホスホロアミダイト構造を反応点として有する化合物など、においてまで本件特許発明の課題を解決できるとは理解できない。
したがって、本件発明1~3及び5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、発明の詳細な説明の記載が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないため、サポート要件及び実施可能要件を満たさない。
(4)証拠方法
申立理由1~3について、提出された証拠方法は次のとおりである。
甲第1号証:Piet Herdewijn編、Oligonucleotide Synthesis Methods and Applications、Humana Press、2005年、表紙、前付け、目次、127~145頁
甲第2号証:特許第6190534号公報
甲第3号証:コトバンク(DIGITALIO社提供)のインターネット情報、「極性溶媒」、化学辞典 第2版 「極性溶媒」の解説、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「極性溶媒」の意味・わかりやすい解説、改訂新版 世界大百科事典 「極性溶媒」の意味・わかりやすい解説、世界大百科事典(旧版)内の極性溶媒の言及、URL:https://kotobank.jp/word/%E6%A5%B5%E6%80%A7%E6%BA%B6%E5%AA%92-53250
甲第4号証:株式会社河辺商会のインターネット情報:「溶剤の溶解性(極性溶媒と無極性溶媒)」、URL:https://www.kawabe-group.com/knowlage/880/
以下では、甲第1号証~甲第4号証を、それぞれ「甲1」~「甲4」ということがある。
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~12に係る特許について、当審合議体が令和6年7月30日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由1](明確性)
本件請求項1~12に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
よって、本件請求項1~12に係る発明の特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的な指摘事項の概要は次に示すとおりである。
(1)請求項1に記載された「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒」における「極性溶媒」及び「ハロゲン系溶媒」について、ジクロロメタン、トリクロロエタン等の、極性溶媒及びハロゲン系溶媒の両方に該当する溶媒が存在するから、そのような溶媒を極性溶媒とハロゲン系溶媒のいずれの溶媒と認識するのかが明確でない。
したがって、請求項1に記載された「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒」に包含される溶媒の範囲が明確でない。
請求項8に記載された「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒」についても同様である。
よって、本件発明1及び8は明確でない。
請求項1又は8の記載を引用して特定される本件発明3~7及び10~12についても同様に明確でない。
(2)請求項1に記載された「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」及び「酸性条件下で脱離可能な基」について、「脱離可能な基」との記載のみでは、どのような化学構造を有する基が包含されるかを理解することはできず、また、それらの基の範囲を明確に把握することができない。
請求項3~8に記載された「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」又は「酸性条件下で脱離可能な基」についても同様である。
また、請求項6及び請求項7に記載された「塩基性条件下で除去可能な基」及び「酸性条件下で除去可能な基」との記載についても、同様にその範囲を明確に把握することができない。
したがって、本件発明1及び3~8は明確でない。
請求項1又は8の記載を直接的・間接的に引用して特定される本件発明2及び9~12についても同様に明確でない。
(3)請求項1の「化合物[A]および化合物[B]がその分子内に1個~複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含み、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」との記載は矛盾する事項を含むといえるから、本件発明1は明確でない。
また、請求項3及び5の「化合物[A]および化合物[B]を構成する各ヌクレオシドユニット間のリン結合」との記載についても、上記請求項1の記載と同様に、化合物[A]及び化合物[B]が、いずれも、複数のヌクレオシドユニットをもつ化合物であることが特定されているのかいないのかが明確でない。
したがって、本件発明1、3及び5は明確でない。
請求項1の記載を直接的・間接的に引用して特定される本件発明2、4及び6~12についても同様に明確でない。
(4)請求項1に記載の一般式[4f]に「J」が用いられているが、その定義がされていない。
したがって、本件発明1は明確でない。
請求項1の記載を直接的・間接的に引用して特定される本件発明2~12についても同様に明確でない。
(5)請求項10の「n、BP、W、X、G、およびTが請求項10に記載の一般式[A-1-1]におけるn、BP、W、X、G、およびTと同義である。」と記載されているが、請求項10には「n、BP、W、X、G、およびT」が具体的に定義されていないから、かかる記載は明確でない。
したがって、本件発明10は明確でない。
請求項10の記載を引用して特定される本件発明11及び12も同様に明確で
ない。
[取消理由2](新規性)
本件請求項1及び3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1及び甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1及び3に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[取消理由3](進歩性)
本件請求項1及び3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2及び3について、甲1及び甲2のほか以下の文献を提示した。
参考文献A:特開2008-201742号公報(技術常識を示す文献)
参考文献B:特開2008-195731号公報(技術常識を示す文献)
参考文献C:日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station、インターネット、URL:https://www.chem-station.com/archives/reagents/2021/01/phosphoramidite.html(技術常識を示す文献)
第5 当審の判断
当審合議体は、本件特許の請求項1、3~12及び14~20に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の記載事項の摘記において、下線は特に注釈がない限り当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
1 甲1~甲4及び参考文献A~参考文献Cの記載事項
(1)甲1
甲1には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲1a)「
[図:0001427939000001.jpg]
図1 LNAホスホロアミダイドの構造・・・」(128頁、図1)
甲1b)「3.方法
本節には、LNA、すなわち完全に修飾したLNAオリゴヌクレオチド及びLNA-DNAキメラオリゴヌクレオチド(ホスホジエステル又はホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)の段階的な合成及び精製が記載される。また、固相担体からの切断、保護基の除去、精製及び分析が記載される。
3.1. 5’-DMT保護LNAの合成
合成スケールは0.2μモルであるが、プロトコールは0.05と1.0μモルスケールに簡単に適用することができる。既定のプロトコールの改変が必要である(参照、表1及び表2)。LNAホスホロアミダイトには、カップリング時間を120秒から250秒に増やし、酸化時間を45秒にする。濃アンモニア水の処理で、合成されたLNAを固相担体から切断する。リン酸塩及び核酸塩基の保護基も除去される。
表1(略)
RPカートリッジ又はRP-HPLCを用いて、クルードのLNAを精製する。精製したLNAを、陰イオン交換クロマトグラフィーで分析する。
1.製造業者のプロトコールに従って、DNAアミダイトをACNに溶解する。製造業者のプロトコールの説明に従って、ボトル(dA、dC、dG、及びTホスホロアミダイト)をそれぞれ合成装置の位置5、6、7及び8に取り付ける。
2.以下に従って、LNAホスホロアミダイトを3mLに溶解して、0.07M溶液を得る。
a.0.07Mアミダイト
b.186mgのLNA-ABz
表2(略)
c.162mgのLNA-T
d.184mgのLNA-mCBz
e.179mgのLNA-GDMF
LNA-mCアミダイト以外のLNAアミダイトは無水ACNに溶解する。LNA-mCアミダイトは、15~25%(v/v)THF/ACN溶液を用いることが必要である。例えば、LNA-mCアミダイトを、無水THF(0.75mL)に溶解して、ACN(2.25mL)を加える(参照、注10)。モレキュラーシーブスを加え、溶液を不活性ガス中で16時間以上、放置する(参照、注11と12)。製造業者のプロトコールの説明に従って、ボトル(LNA-A、LNA-mC、LNA-G、及びLNA-Tホスホロアミダイト)をそれぞれ合成装置の位置A、C、G及びTに取り付ける。
3.製造業者のプロトコールの説明に従って、もし用いるのであれば、すべての試薬とアミダイトを、カラム位置1上に2回、カラム位置2上に1回、準備する。最終的に、両方のカラム位置をWsh Aで準備する。
4.製造装置に、適切なカラム(固相担体)を取り付け、Wsh Aで、続いてGas Bで準備する。
5.DNA及びLNAホスホロアミダイトのために、合成プロトコールを改変する。LNAホスホロアミダイトのための合成プロトコール(0.2μモルスケール;サイクルA、C、G及びT)を表1に示す(参照、注13)。DNAホスホロアミダイトのための合成プロトコール(サイクル6、7、8及び9)を表2に示す(参照、注14)。以下のスキームを用いて、合成されるべき所望の配列を入れる。
モノマー 命名
LNA-A A
LNA-mC C
LNA-G G
LNA-T T
DNA-a 6
DNA-c 7
DNA-g 8
DNA-t 9
6.最終DMT「ON」を選択し、製造業者のプロトコールに従って、合成を開始する。
7.異なるカップリング工程の効率は、トリチルモニターでフォローすることができる。
・・・
3.3. LNAのカートリッジ精製
1.クルードの5’-DMT保護LNA(参照、3.2項、工程4)を、1mLの0.1MのTEAA水溶液、pH8.0に溶解させる。
2.カートリッジを、1mLのACNで2回、1mLの0.1MのTEAA水溶液、pH8.0で1回、フラッシュする(参照、注18)。
3.溶解させたクルードのLNAを、カートリッジの先端に移す。
重要:カートリッジに溶液を適用する際、次の工程を開始する前に、適用した材料を完全に導入されなければならない。
LNA配列の例(参照、図2):5’-aGccAatCeaCggCteCaaAgtCaaAagAg-3’(大文字はLNAモノマー;小文字はDNAモノマー)」(131頁、「3.方法」の項~134頁末行)
甲1c)「3.10.5’-DMT保護ホスホロチオエートLNAのRP-HPLC精製
1.検出器を260nmに合わせてRP-HPLCを準備し、カラムを、0.1M酢酸アンモニウム水溶液中の5%ACN溶液、pH10、室温で5mL/分で平衡化する。
2.クルードのホスホロチオエートLNA(参照、3.9項、工程2)を、希アンモニア水、pH8.0を添加して塩基性にした300μLの水に溶解させる。例えば、ホスホロチオエートLNA配列:5’-TCCAaagcaccaAACA-3’(完全にチオレート化される)(大文字はLNAモノマー;小文字はDNAモノマー)」(141頁9~17行)
甲1d)「4. 注
・・・
10.無水THFの代わりに、無水ジクロロメタンを用いることができる。THFはジクロロメタンよりも蒸発しにくいため、我々はTHFを用いることを勧める。」(143頁、「4.注」の項~144頁2行)
(2)甲2
甲2には以下の記載がある。
甲2a)「 【請求項1】
以下の構造(III)
[図:0001427939000002.jpg]
を有する水溶性化合物であって、ここで
M1及びM2は、各存在において、独立して、2つ以上の二重結合及び少なくとも1共役度を含む蛍光性又は有色部分であり、M1の少なくとも1つの存在は、3つ以上のアリール若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む蛍光性又は有色部分であり、
L1、L3、L4、L6、L7及びL8は、各存在において、独立して、任意のアルキレン又はヘテロアルキレンリンカーであり、
R1は、各存在において、独立してH、アルキル又はアルコキシであり、
R2は、電子対、H、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、ホスホ、チオホスホ、アルキルホスホ、アルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル若しくはチオホスホアルキルエーテルであり、又は、R2は、生体分子若しくは微小粒子に対する共有結合を含むリンカーであり、
R3は、H、OH、SH、-NH2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、-Oアラルキル、ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホ、アルキルチオホスホ、-Oアルキルホスホ、-Oアルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、-Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、-Oホスホアルキル、O-ホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル又は-Oチオホスホアルキルエーテルであり、
R4は、各存在において、独立してO-、S-、OZ、SZ又はN(R6)2であり、ここでZはカチオンであり、各R6は、独立してH又はアルキルであり、
R5は、各存在において、独立してオキソ、チオキソであるか又は存在せず、
nは、2~20の整数であり、且つ
q及びwは、nの各整数値に関して各々独立して0又は1であり、ここでqは、nの少なくとも2つの整数値に関して1であり、又は、ここでq及びwは各々独立して、nの少なくとも1つの整数値に関して1である
ことを特徴とする、水溶性化合物。
・・・
【請求項17】
以下の構造
・・・
[図:0001427939000003.jpg]
・・・
[図:0001427939000004.jpg]
[図:0001427939000005.jpg]
[図:0001427939000006.jpg]
[図:0001427939000007.jpg]
[図:0001427939000008.jpg]
の1つを有する、水溶性の蛍光性又は有色化合物。」
甲2b)「【0085】
上述のように、本発明の1つの実施形態において、種々の分析法において蛍光染料及び/又は有色染料として有用な化合物が提供される。化合物は、以下の構造(I)
・・・
を有し、・・・
【0088】
例えば、幾つかの実施形態において、化合物は、以下の構造(III)
・・・
を有し、・・・」
甲2c)「【0168】
・・・オリゴマー化のための例示的方法として、当該分野で周知のホスホロアミダイトベースの固相オリゴヌクレオチド合成に類似の方法が挙げられる。
・・・
【0170】
リボース部分を含む構造(I)の化合物は、類似の手順により調製されるか、又は商業的供給者から購入される(例えば、ホスホロアミダイトとして)。
【0171】
特定の実施形態において、構造Iの化合物は、2~10個の繰返し単位を含むオリゴマーである。このようなオリゴマーは、周知の自動化DNA合成方法に類似の方法を用いて調製することができる。DNA合成方法は、当該分野で周知である。簡単に言えば、2つのアルコール基を、それぞれ、ジメトキシトリチル(DMT)基及び2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基で官能化する。ホスホロアミダイト基は、典型的にはテトラゾールのような活性化剤の存在下でアルコール基に結合され、次いでリン原子がヨウ素で酸化される。ジメトキシトリチル基を酸(例えば、クロロ酢酸)で除去して遊離アルコールを露出させることができ、これがホスホロアミダイト基と反応することができる。オリゴマー化の後、アンモニア水で処理することにより、2-シアノエチル基を除去することができる。
【0172】
オリゴマー化法で用いられるホスホロアミダイトの調製もまた当該分野で周知である。例えば、第一級アルコール(例えば、R3)をDMT-Clとの反応によりDMT基として保護する。次いで第二級アルコール(例えばR2)を、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどの適切な試薬との反応によりホスホロアミダイトとして官能化する。ホスホロアミダイトの調製及びそのオリゴマー化のための方法は、当該分野で周知であり、実施例においてより詳細に説明する。」
甲2d)「【0187】
実施例3
オリゴマー染料の合成
オリゴマー染料を、Applied Biosystems 394 DNA/RNA合成機又はGE AKTAe10 OligoPilotで、1μmol又は10μmolスケールのいずれかで合成し、これは3’-ホスフェート基を有していた。染料は、CPGビーズ上にて又はポリスチレン固体支持体上にて直接合成した。染料は、標準的な固相DNA法によって3’から5’の方向で合成した。カップリング方法は、標準的なβ-シアノエチルホスホロアミダイト化学条件を使用した。全てのホスホロアミダイトモノマーをアセトニトリル/ジクロロメタン(0.1M溶液)に溶解し、以下の合成サイクルを用いて順番に加えた:1)トルエン中のジクロロ酢酸による5’-ジメトキシトリチル保護基の除去、2)アセトニトリル中の活性化剤による、次のホスホロアミダイトのカップリング、3)ヨウ素/ピリジン/水による酸化、及び4)無水酢酸/1-メチルイミジゾール(methylimidizole)/アセトニトリルによるキャッピング。合成サイクルを、5’オリゴフルオロシドが組み立てられるまで繰り返した。鎖の組立てが終了した時点で、モノメトキシトリチル(MMT)基又はジメトキシトリチル(DMT)基を、ジクロロメタン中のジクロロ酢酸又はトルエン中のジクロロ酢酸によって除去した。染料を、濃水酸化アンモニウム水溶液を用いて室温にて2~4時間かけて、固体支持体から切断した。生成物を減圧下で濃縮し、Sephadex G-25カラムを用いて主生成物を単離し、これをRP-HPLCで分析した。一般的方法に従って調製された代表的オリゴマーの配列、並びにエレクトロスプレー質量分析によって決定されたスペクトル特性及び分子量(MW)を表1に示す。
【0188】
【表1】
[図:0001427939000009.jpg]
」
(3)甲3
甲3には以下の記載がある。
甲3a)「
[図:0001427939000010.jpg]
」
(4)甲4
甲4には以下の記載がある。
甲4a)「
[図:0001427939000011.jpg]
」
(5)参考文献A
参考文献Aには以下の記載がある。
A1)「【0002】
核酸の固相(自動)合成は、20年以上も前から行われており、自動合成装置もその時点で販売されていたが、現在でも、アンチセンスDNA、siRNA等、機能性人工核酸の蛍光標識等の修飾のため、より緩やかな条件で核酸を得ることができる核酸原料(アミダイド)及びCPG等の固相担体の改良が行われている。
前記核酸の固相合成は、例えば、ヌクレオシドを結合させた固相担体(例えば、CPG)に、核酸原料(アミダイド)を縮合反応させていくことにより行われるが、このとき、前記固相担体にリンカーを導入し、該リンカーを介して前記固相担体に核酸を合成する。また、合成後に、前記リンカーを切り出すことにより、前記核酸のみを分離して回収している。」
(6)参考文献B
参考文献Bには以下の記載がある。
B1)「【0424】
・・・
【図49】 固相RNA分析の一般的工程」
B2)「【図49】
[図:0001427939000012.jpg]
」
(7)参考文献C
参考文献Cには以下の記載がある。
C1)「ホスホロアミダイト法
ホスホロアミダイト法とは、1980年代にCaruthers教授によって開発された核酸合成法です。亜リン酸ジエステルのモノアミド体であるホスホロアミダイトモノマーを使用し、ポリマービーズなどの固相上で核酸モノマーを付加させる方法です。1つの核酸モノマーを付加するためには、以下の○1(原文は○の中に1。以下同様。)~○4の工程を1サイクルとして、目的の鎖長になるまで繰り返します(式1)。その後、濃アンモニア水を用いて固相担体から切り出します。自動合成装置用の試薬として、多くが溶液として販売されており、適切な濃度や組成のものを選択することで、別途調液する必要がないため効率的です。
<各工程>
○1脱保護: 固相に担持されたヌクレオシドから、5’位の4,4′-ジメトキシトリチル基(DMTr基)を除去する。(デブロッキング試薬)
○2カップリング: ○1で5’位のDMTr基を除去したヌクレオシドに対し、ホスホロアミダイト(核酸モノマー)と活性化剤(アクチベーター)を用いて縮合する。(アミダイト・アクチベーター)
○3キャッピング: 副反応を抑制するために、○2で生じた未反応鎖の5’位水酸基をアセチル化する。(キャッピング試薬)
○4安定化: 酸化もしくは硫化によって、亜リン酸エステルを安定なリン酸エステル、もしくはチオリン酸エステルに変換する。(酸化試薬・硫化試薬)
[図:0001427939000013.jpg]
」
2 取消理由通知で通知された取消理由について
(1)取消理由1(明確性要件違反)について
ア 上記第4の2(1)について
この理由は、請求項1及び8に記載された「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒」に包含される溶媒の範囲が明確でないことに基づく理由であるところ、本件訂正により、請求項1及び8において、極性溶媒とハロゲン系溶媒が具体的な化合物名で特定されることにより、包含される溶媒の範囲が明確となった。
したがって、この理由は理由がない。
イ 上記第4の2(2)について
この理由は、請求項1及び3~8に記載された「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」及び「酸性条件下で脱離可能な基」、並びに請求項6及び7に記載された「塩基性条件下で除去可能な基」及び「酸性条件下で除去可能な基」にどのような化学構造を有する基が包含されるかを理解することはできず、また、それらの基の範囲を明確に把握することができないことに基づく理由であるところ、本件訂正により、請求項1及び3~8において、「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」及び「酸性条件下で脱離可能な基」は具体的な化学名により特定され、請求項6及び7において、「塩基性条件下で除去可能な基」及び「酸性条件下で除去可能な基」は「塩基性条件下で脱離可能な基」及び「酸性条件下で脱離可能な基」に訂正されることによって、包含される基が明確となり、それらの基の範囲を明確に把握できる記載となった。
したがって、この理由は理由がない。
ウ 上記第4の2(3)について
この理由は、請求項1の「化合物[A]および化合物[B]がその分子内に1個~複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含み、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」との記載は矛盾する事項を含むこと、請求項3及び5の「化合物[A]および化合物[B]を構成する各ヌクレオシドユニット間のリン結合」との記載についても、上記請求項1の記載と同様に、化合物[A]及び化合物[B]が、いずれも、複数のヌクレオシドユニットをもつ化合物であることが特定されているのかいないのかが明確でないことに基づく理由であるところ、本件訂正により、請求項1、3及び5には「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む場合には」との記載が存在するから、必ずしも分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含まなくてもよい(1個のヌクレオシドユニットでもよい)こととなり、矛盾する事項を含まない記載となった。
したがって、この理由は理由がない。
エ 上記第4の2(4)について
この理由は、請求項1に記載の一般式[4f]に「J」が用いられているが、その定義がされていないことに基づくものであるところ、本件訂正により、一般式[4f]の「J」が定義された。
したがって、この理由は理由がない。
オ 上記第4の2(5)について
この理由は、請求項10に「n、BP、W、X、G、およびTが請求項10に記載の一般式[A-1-1]におけるn、BP、W、X、G、およびTと同義である。」と記載されているが、請求項10には「n、BP、W、X、G、およびT」が具体的に定義されていないことに基づく理由であるところ、本件訂正により、請求項10において「n、BP、W、X、G、およびT」が定義された。
したがって、この理由は理由がない。
カ 取消理由1のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正前の請求項1~12に対応する、本件発明1~12及び14~20に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえず、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由1は理由がない。
(2)取消理由2(新規性欠如)及び3(進歩性欠如)について
ア 引用発明
(ア)甲1発明
甲1には、LNAオリゴヌクレオチ及びLNA-DNAキメラオリゴヌクレオチド(ホスホジエステル又はホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)の段階的な合成及び精製が記載されているところ(摘記甲1b、「3.方法」)、5’-DMT保護LNAを合成すること(なお、「DMT」がジメトキシトリチルであることは技術常識である。)、LNAホスホロアミダイドを用いて、合成装置によってオリゴヌクレオチドを製造すること、固相担体を用いること、ボトル(LNA-A、LNA-mC、LNA-G、及びLNA-Tホスホロアミダイト)をそれぞれ合成装置の位置A、C、G及びTに取り付けること、LNA-mCアミダイトは、15~25%(v/v)THF/ACN溶液を用いることが必要であること(摘記甲1b)が記載され、LNA配列の例として、5’-aGccAatCeaCggCteCaaAgtCaaAagAg-3’(大文字はLNAモノマー;小文字はDNAモノマー)が(摘記甲1b)、ホスホロチオエートLNA配列の例として、5’-TCCAaagcaccaAACA-3’が(摘記甲1c)、LNAホスホロアミダイドの化学構造が(摘記甲1a)、それぞれ記載されている。
また、LNA-mCアミダイトの溶解について、無水THFの代わりに、無水ジクロロメタンを用いることができることが記載されている(摘記甲1d)。
ここで、甲1に記載の合成方法では、5’-DMT保護LNAが用いられているところ、参考文献A~文献Cに記載のとおり(摘記A1~摘記C1)、合成装置を用いてオリゴヌクレオチドを製造する際に、5’-DMT保護モノマーを用いる場合に、3’位から5’位の方向に伸張することは技術常識である。
したがって、上記LNA配列の例として記載された5’-aGccAatCeaCggCteCaaAgtCaaAagAg-3’を製造する際には、その途中の工程として、例えば、3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’と5’-DMT保護LNA-mCアミダイトを反応させて、5’-DMT保護CaaAagAg-3’を製造していることは明らかである。
以上のことから、甲1には、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’と無水ジクロロメタン/ACN溶液に溶解した以下の化学構造を有する5’-DMT保護LNA-mCアミダイトを反応させて、3’末端が固相担体に結合した5’-DMT保護CaaAagAg-3’を製造する方法。
[図:0001427939000014.jpg]
」
(イ)甲2発明
甲2には所定の化学構造を有する水溶性化合物についての記載があるところ(摘記甲2a~甲2d)、具体的な水溶性化合物として、5’-YAAA-3’等のオリゴヌクレオチド構造を有する化合物(オリゴマー染料)が記載されており(摘記甲2a、請求項17、摘記甲2d、表1)、その製造方法として、周知の自動化DNA合成方法に類似の方法を用いて調製することができること、DNA合成方法は、当該分野で周知であること、2つのアルコール基を、それぞれ、ジメトキシトリチル(DMT)基及び2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基で官能化し、ホスホロアミダイト基は、典型的にはテトラゾールのような活性化剤の存在下でアルコール基に結合され、次いでリン原子がヨウ素で酸化され、ジメトキシトリチル基を酸(例えば、クロロ酢酸)で除去して遊離アルコールを露出させることができ、これがホスホロアミダイト基と反応することができること(摘記甲2c)、ポリスチレン固体支持体上にて直接合成したこと、染料は、標準的な固相DNA法によって3’から5’の方向で合成したこと、全てのホスホロアミダイトモノマーをアセトニトリル/ジクロロメタン(0.1M溶液)に溶解し、合成サイクルを用いて順番に加えたこと、合成サイクルの第1の手順が、トルエン中のジクロロ酢酸による5’-ジメトキシトリチル保護基の除去であり、第2の手順が、アセトニトリル中の活性化剤による、次のホスホロアミダイトのカップリングであること(摘記甲2d)が記載されている。
そして、かかる製造方法によれば、上記5’-YAAA-3’の製造方法においては、その途中の工程として、3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’と5’位がジメトキシトリチル基で保護され、3’位が2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基で官能化されたA(2’-デオキシアデノシン)を反応させて、3’末端が固体支持体に結合され、5’末端がジメトキシトリチル基で保護された5’-AAA-3’が製造されているといえる。
したがって、甲2には、次に示す発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’とアセトニトリル/ジクロロメタン(0.1M溶液)に溶解した、5’位がジメトキシトリチル基で保護され、3’位が2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基で官能化されたA(2’-デオキシアデノシン)を反応させて、3’末端が固体支持体に結合され、5’末端がジメトキシトリチル基で保護された5’-AAA-3’を製造する方法。」
イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲1発明について
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’」について、合成装置を用いたオリゴヌクレオチドの製造方法に関する技術常識(摘記A1~摘記C1)からみて、その5’末端のa(2’-デオキシアデノシン:上記配列の左末端のa)の5位に遊離水酸基が結合しているといえるから、本件発明1の化合物[A]が「水酸基を有する」ことに相当する。
甲1発明の「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’」は、本件発明1の「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」ることに相当する。
甲1発明の「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’」のうち、a及びgの各ヌクレオシドは、本件発明1において、一般式[4a]であって、
一般式[4a]における*が、「(1)隣接するヌクレオシドユニットの5’位の酸素原子と結合しているリン結合との結合位置」(3’末端のg以外について)又は固相担体(3’末端のgについて)であり、
一般式[4a]における**が、「(2)水素原子との結合位置」(5’末端のaについて)又は「(1)隣接するヌクレオシドユニットの3’位の酸素原子もしくは3’位の窒素原子と結合しているリン結合との結合位置」(5’末端のa以外について)であり、
BPが保護されていてもよい核酸塩基であり、
R4aが水素原子
であるヌクレオシドユニットに相当し、
甲1発明の「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’」のうち、Aのヌクレオシド(化学構造は、摘記甲1aのLNA-ABz参照)は、本件発明1において、一般式[4b]であって、
一般式[4b]における*が、「(1)隣接するヌクレオシドユニットの5’位の酸素原子と結合しているリン結合との結合位置」であり、
一般式[4b]における**が、「(1)隣接するヌクレオシドユニットの3’位の酸素原子もしくは3’位の窒素原子と結合しているリン結合との結合位置」であり、
BPが保護されていてもよい核酸塩基であり、
R4b1及びR4b2が水素原子であり、
dが0であり、
Jが酸素原子
であるヌクレオシドユニットに相当する。
甲1発明の「5’-DMT保護LNA-mCアミダイト」は、本件発明1の化合物[B]におけるDがジ(C3アルキル)アミノであり、
W0は孤立電子対であることに相当する。
また、本件発明1の化合物[B]におけるXについて、本件明細書の【0038】にXに相当する基として2-シアノエトキシが記載されていることからみて、甲1発明の5’-DMT保護LNA-mCアミダイトは、上記Xが中性条件下で脱離可能な基で置換されている水酸基であることに相当する。
甲1発明の5’-DMT保護LNA-mCアミダイトは、本件発明1の「その分子内に1個のヌクレオシドユニットを含む化合物であ」ることに相当し、当該ヌクレオシドユニットが本件発明1の一般式[4f]であって、
BPが保護されていてもよい核酸塩基であり、
R4b1及びR4b2が水素原子であり、
dが0であり、
Jが酸素原子であり、
一般式[4f]における***が(2)次の一般式[1]:
【化13】
[図:0001427939000015.jpg]
(式中、
**は結合位置を表し;
Dはジ(C3アルキル)アミノを表し;
W0は孤立電子対を表し;および
Xは中性条件下で脱離可能な基で置換されている水酸基を表す。)であり、
一般式[4f]における****が(3)酸性条件下で脱離可能な基との結合位置であって、酸性条件下で脱離可能な基が、ジメトキシトリチル(=DMT)であるヌクレオシドユニットに相当する(なお、「中性条件下で脱離可能な基」については上述のとおりである。)。
そして、甲1発明において、「3’末端が固相担体に結合した5’-aaAagAg-3’」と「5’-DMT保護LNA-mCアミダイト」が反応して製造される「5’-DMT保護CaaAagAg-3’」が本件発明1の化合物[C]に対応することは明らかであるから、甲1発明の「方法」は、本件発明1の「化合物[C]を製造するための方法」であることに対応する。
さらに、甲1発明は、無水ジクロロメタン/ACN溶液に溶解した5’-DMT保護LNA-mCアミダイトを反応させているから、本件発明1の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われる」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
化合物[A]を構成するヌクレオシドユニットのうち、3’末端のヌクレオシドユニットについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲1発明は、固相担体に結合したgのヌクレオシドである点。(具体的には、一般式[4a]の*が異なる。)
<相違点2>
化合物[B]におけるXが、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲1発明は2-シアノエトキシである点。
<相違点3>
上記相違点1及び2に対応して、化合物[C]のAにおける3’末端のヌクレオシドユニットについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲1発明は、固相担体に結合したgのヌクレオシドであり、化合物[C]のXについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲1発明は2-シアノエトキシである点。
<相違点4>
極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒について、本件発明1は、「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒である」とされているのに対し、甲1発明は、無水ジクロロメタン/ACN溶液である点。
そして、上記相違点1~4はいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討するにあたり、事案に鑑みて、相違点4について検討する。
甲1には、反応に使用する溶媒について、「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒である」、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中で反応させることは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1~3について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
b 甲2発明について
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’」について、ジメトキシトリチル基を酸(例えば、クロロ酢酸)で除去して遊離アルコールを露出させることができることが記載されており(摘記甲2c)、その5’末端のA(2’-アデノシン:上記配列の左のA)の5位に遊離水酸基が結合しているといえるから、本件発明1の化合物[A]が「水酸基を有する」ことに相当する。
甲2発明の「3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’」は、5’末端のAを含むオリゴヌクレオチドであるから、本件発明1の「その分子内に複数個のヌクレオシドユニットを含む化合物であり、当該化合物中の隣接するヌクレオシドユニットは互いにリン結合を介して結合され」ることに相当する。
甲2発明の「3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’」の各ヌクレオシドは、本件発明1において、一般式[4a]であって、
一般式[4a]における*が、「(1)隣接するヌクレオシドユニットの5’位の酸素原子と結合しているリン結合との結合位置」(5’末端のAについて)又は固体支持体(3’末端のAについて)であり、
一般式[4a]における**が、「(2)水素原子との結合位置」(5’末端のAについて)又は「(1)隣接するヌクレオシドユニットの3’位の酸素原子もしくは3’位の窒素原子と結合しているリン結合との結合位置」(3’末端のAについて)であり、
であり、
BPが保護されていてもよい核酸塩基であり、
R4aが水素原子
であるヌクレオシドユニットに相当する。
甲2発明の「5’位がジメトキシトリチル基で保護され、3’位が2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基で官能化されたA(2’-アデノシン)」(以下「甲2発明アデノシン」という。)は、本件発明1の化合物[B]におけるDがジ(C3アルキル)アミノであり、
W0は孤立電子対であることに相当する。
また、甲2発明アデノシンの2-シアノエチルが結合したホスホロアミダイドは、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、本件発明1の化合物[B]におけるXが中性条件下で脱離可能な基で置換されている水酸基であることに相当する。
甲2発明の甲2発明アデノシンは、本件発明1の「その分子内に1個のヌクレオシドユニットを含む化合物であ」ることに相当し、当該ヌクレオシドユニットが本件発明1の一般式[4e]であって、
BPが保護されていてもよい核酸塩基であり、
R4aが水素原子であり、
一般式[4e]における***が(2)次の一般式[1]:
【化13】
[図:0001427939000016.jpg]
(式中、
**は結合位置を表し;
Dはジ(C3アルキル)アミノを表し;
W0は孤立電子対を表し;および
Xは中性条件下で脱離可能な基で置換されている水酸基を表す。)であり、
一般式[4e]における****が(3)酸性条件下で脱離可能な基との結合位置であって、酸性条件下で脱離可能な基が、ジメトキシトリチルであるヌクレオシドユニットに相当する(なお、「中性条件下で脱離可能な基」については上述のとおりである。)。
そして、甲2発明において、「3’末端が固体支持体に結合された5’-AA-3’」と「甲2発明アデノシン」が反応して製造される「5’末端がジメトキシトリチル基で保護された5’-AAA-3’」が本件発明1の化合物[C]に対応することは明らかであるから、甲2発明の「方法」は、本件発明1の「化合物[C]を製造するための方法」であることに対応する。
さらに、甲2発明は、アセトニトリル/ジクロロメタン(0.1M溶液)に溶解した甲2発明アデノシンを反応させているから、本件発明1の「極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われる」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点5>
化合物[A]を構成するヌクレオシドユニットのうち、3’末端のヌクレオシドユニットについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲2発明は、固体支持体に結合したAのヌクレオシドである点。(具体的には、一般式[4a]の*が異なる。)
<相違点6>
化合物[B]におけるXが、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲2発明は2-シアノエトキシである点。
<相違点7>
上記相違点5及び6に対応して、化合物[C]のAにおける3’末端のヌクレオシドユニットについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲1発明は、固体支持体に結合したAのヌクレオシドであり、化合物[C]のXについて、本件発明1は所定の基であるのに対し、甲2発明は2-シアノエトキシである点。
<相違点8>
極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒について、本件発明1は、「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒である」とされているのに対し、甲2発明は、アセトニトリル/ジクロロメタン(0.1M溶液)である点。
そして、上記相違点5~8はいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討するにあたり、事案に鑑みて、相違点8について検討する。
甲2には、反応に使用する溶媒について、「極性溶媒がジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンおよびN,N’-ジメチルプロピレン尿素からなる群から選択される溶媒であって、ハロゲン系溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンおよび1,2-ジクロロエチレンからなる群から選択される溶媒である」、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中で反応させることは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点5~7について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明3について
本件発明3は、化合物[A]と化合物[B]を縮合反応に付して、化合物[C]を製造するための方法である点、及び極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行われる点において、本件発明1と同様であるから、甲1発明及び甲2発明との対比において、上記相違点4及び相違点8と同様の相違点が存在し、その判断については、上記(ア)で述べたのと同様である。
したがって、本件発明3は甲1及び甲2に記載された発明であるとはいえず、甲1及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、上記(ア)及び(イ)に関して、甲1及び甲2について、各々1つの塩基配列を有する化合物のみを製造方法の目的物として発明を認定したが、甲1に記載の5’-aGccAatCeaCggCteCaaAgtCaaAagAg-3’及び5’-TCCAaagcaccaAACA-3’の他の「C」の部分で区切った化学構造に基づく化合物、甲2の請求項17に記載された配列に基づく化合物について発明を認定することができ、そのように認定した発明についての判断も、上で述べたのと同様である。
ウ 取消理由2及び3のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び3に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取消理由2及び取消理由3は理由がない。
3 取消理由で採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性欠如)及び2(甲2を主引例とする新規性・進歩性欠如)について
申立理由1及び申立理由2のうち請求項1及び3に対する理由は取消理由で採用した理由である。
申立理由1及び申立理由2のうち、請求項4~12(本件訂正後の請求項4~12及び14~20)に対する理由について、本件発明4~12及び14~20は、いずれもオリゴヌクレオチドの製造方法における縮合反応を、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中において行うものであるところ、本件発明4~12及び14~20において特定される極性溶媒及びハロゲン系溶媒からなる混合溶媒は、甲1及び甲2のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明4~12及び14~20は甲1及び甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明4~12及び14~20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものであるとはいえない。
よって、申立理由2は理由がない。
(2)申立理由3(明確性要件、サポート要件及び実施可能要件違反)について
ア 明確性要件について
申立理由3のうち、明確性要件違反の理由とされているのは、上記第4の1(3)ア~ウであるところ、それらはいずれも取消理由で採用した理由である。
イ サポート要件及び実施可能要件について
(ア)サポート要件及び実施可能要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
また、物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明には、当業者がその物を生産する方法を使用することができ、その方法により生産した物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されている必要がある。
(イ)本件発明の課題
本件発明の解決しようとする課題は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面(特に【0008】)の記載からみて、「オリゴ核酸化合物の製造期間を短縮しうる、新規な製造方法を提供すること」であると認める。
(ウ)判断
本件明細書の【0004】及び【0005】には、背景技術として、
「【0004】
固相法は固相担体と溶液との不均一系の反応であるため、固相担体による立体障害が原因で縮合反応の反応性が落ちることが知られている。固相担体としては、一般的にポリスチレン樹脂が使用されるが、反応中は使用する反応溶媒によって膨潤し、乾燥状態よりその体積が大きくなる。その膨潤度は反応溶媒に依存する。
したがって、固相法における縮合反応の反応効率および反応速度は使用する反応溶媒に依存する。特に、ポリスチレン樹脂はオリゴ核酸化合物の合成に一般的に使用されるアセトニトリルのような極性溶媒では、膨潤度がそれほど大きくなく、固相法において極性溶媒を使用するということは、縮合反応の反応効率および反応速度を向上するという側面から好ましいとはいえない。
【0005】
一方、均一系の反応方法としては、液相法と疎水性基結合ヌクレオシドや擬似固相保護ヌクレオシド等を用いた合成法が知られている。
液相法は、基質と反応試薬の両方を含む溶液中で反応させる均一系の反応方法であり、固相法と比較して反応効率は高く、反応速度は速いが、不純物となる反応試薬や反応溶媒を除去するため、カラム精製などが必要となる。
疎水性基結合ヌクレオシドや擬似固相保護ヌクレオシド等を用いた合成法は、液相法と同様、均一系で反応することができるため、固相法と比較して反応効率は高く、反応速度は速い。さらに、反応後、反応混合物から目的とする化合物を析出させることで不要な反応試薬や反応溶媒を除去することができる(例えば、特許文献4を参照。)。
これらの均一系の反応方法では、縮合反応においてクロロホルムのような非極性溶媒が使用されているが、例えば、モルフォリノ核酸の合成で報告されているように(例えば、特許文献5を参照。)、非極性溶媒中での縮合反応は非常に長い時間を必要とするため、均一系の反応において非極性溶媒を使用するということは、縮合反応の反応効率および反応速度を向上するという側面から好ましいとはいえない。」
と記載され、同【0009】には、課題を解決するための手段として、
「本発明者らは、オリゴ核酸化合物の縮合反応において極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することにより、効率よくリン結合を形成しうることを見出し、本発明を完成した。」
と記載されている。
また、本件明細書の【0014】~【0149】には、化合物[A]、化合物[B]及び化合物[C]について、化合物[C]の製造方法及び精製方法について、化合物[C]の分子内のQ1の脱離方法について、最終脱保護、核酸化合物の単離工程について、精製分離工程について記載されており、さらに、化合物[A]の製造、化合物[B]の製造について記載されている。
そして、同【0047】には、
「本製造方法で使用しうる極性溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、N-メチルピペリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素またはそれらの混合溶媒を挙げることができる。なかでも、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピぺリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素が好ましい。
本製造方法で使用しうるハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,2-ジクロロエチレンまたはそれらの混合溶媒を挙げることができる。なかでも、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンが好ましい。」
と記載され、同【0045】には、
「「酸性条件下で脱離可能な基」としては、例えば、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチルを挙げることができる。
「塩基性条件下で脱離可能な基」としては、例えば、トリフルオロアセチルを挙げることができる。
「中性条件下で脱離可能な基」としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドまたは三フッ化水素・トリエチルアミン塩を作用させることによって脱離させることができる基を挙げることができ、例えば、2-シアノエトキシメトキシ、2-シアノエトキシ-2-エトキシ、tert-ブチルジメチルシリルを挙げることができる。」
と記載されている。
さらに、本件明細書の【0204】には、比較例1として、縮合反応の溶媒としてシクロヘキサン/クロロホルム混合溶媒を使用した場合に、反応時間(60分)で変換収率が86.8%であったことが記載され、一方、【0205】には、試験例1として、縮合反応の溶媒としてジメチルアセトアミド/ジクロロメタン混合溶媒を使用した場合に、反応時間(30分)で変換収率94.6%であったこと、【0206】には、試験例2として、縮合反応の溶媒としてジメチルスルホキシド/ジクロロメタン混合溶媒を使用した場合に、反応時間(30分)で変換収率97.7%であったことが記載され、さらに、実施例11~25として多数の実施例が記載されている。
これらの記載からみて、本件明細書の発明の詳細な説明には、オリゴ核酸化合物の縮合反応において極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することによって、短い反応時間で、高い変換収率が得られることが示されているといえるから、当業者が、本件発明は、「オリゴ核酸化合物の製造期間を短縮しうる、新規な製造方法を提供すること」という課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明の物を生産する方法を使用することができ、その方法により生産した物を使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たすものであり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、同法同条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たすものである。
(エ)申立理由3の各理由(上記第4の1(3)ア、イ、エ~カのサポート要件及び実施可能要件違反)について
a アについて
この理由は、如何なる極性溶媒も本件特許発明における「極性溶媒」に含まれることを前提とした理由であるが、本件訂正により極性溶媒が具体的な化合物名で特定された。
したがって、この理由は理由がない。
b イについて
この理由は、「中性条件下で脱離可能な基」、「塩基性条件下で脱離可能な基」及び「酸性条件下で脱離可能な基」に如何なる基も含まれることを前提とした理由であるが、本件訂正により上記各基は具体的な化学名で特定された。
したがって、この理由は理由がない。
c エについて
本件明細書には、
「【0048】
・・・本製造方法は、オリゴ核酸化合物の製造方法として知られた、固相法、液相法、疎水性基結合ヌクレオシドや擬似固相保護ヌクレオシド等を用いた液相法においても適用しうる。
【0049】
固相法を利用してオリゴ核酸化合物である化合物[C]を製造しうる場合、化合物[A]の3’末端側のヌクレオシドユニットの3’位の酸素原子においてまたは化合物[A]の5’末端側のヌクレオシドユニットの5’位の酸素原子において、固相担体に担持されたものを使用することができる。」
等として、本件発明の方法が固相法にも適用し得ることが記載されている。
一方、本件明細書には、
「【0004】
・・・
したがって、固相法における縮合反応の反応効率および反応速度は使用する反応溶媒に依存する。特に、ポリスチレン樹脂はオリゴ核酸化合物の合成に一般的に使用されるアセトニトリルのような極性溶媒では、膨潤度がそれほど大きくなく、固相法において極性溶媒を使用するということは、縮合反応の反応効率および反応速度を向上するという側面から好ましいとはいえない。」
と記載されており、当該記載は固相法において極性溶媒を使用する際の好ましくない点を指摘しているといえるものの、本件発明で特定される極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を固相法で使用した場合に同様の問題があることまでは記載されているとはいえず、むしろ、かかる点を指摘した上で固相法でも適用し得ることが記載されている本件明細書の記載全体からは、固相法においても、実施例に記載された方法と同様の結果が得られるものといえる。
したがって、この理由は理由がない。
d オについて
本件明細書の【0047】には、
「本製造方法で使用しうる極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中における極性溶媒の割合は、その下限は1.0重量%、好ましくは2.0重量%、より好ましくは3.0重量%、更に好ましくは5.0重量%である。また、その上限は90重量%、好ましくは75重量%、より好ましくは50重量%、更に好ましくは40重量%、特に好ましくは30重量%である。さらに、それらの上限と下限は適宜組み合わせて使用することができ、例えば、1%~90%の範囲内が適当であり、5%~75%の範囲内が好ましく、5%~50%の範囲内が特に好ましい。」
と記載され、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒中における極性溶媒の割合の例示的な記載があるところ、かかる記載からは、本件発明の方法において、混合溶媒中の極性溶媒が1%又は90%であり得ることが理解できる。
一方、本件明細書の【0009】に、
「本発明者らは、オリゴ核酸化合物の縮合反応において極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することにより、効率よくリン結合を形成しうることを見出し、本発明を完成した。」
と記載されるとおり、本件発明は、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することにより、効率よくリン結合を形成し得ることを見出したものであるといえ、かかる溶媒を用いることで縮合反応の効率化が図られることは、実施例の記載から理解できるといえる。
したがって、本件発明は、混合溶媒における極性溶媒とハロゲン系溶媒の比率が例えば、1:99又は99:1である場合を包含するものであるということができるが、本件明細書の記載からは、そのような場合には、程度の差があるとしても、縮合反応の効率化が図られることを当業者は理解するといえる。
したがって、この理由は理由がない。
e カについて
本件発明における化合物[A]及び化合物[B]は、それら化合物の定義に応じて、モルフォリン骨格、アミノ基及びホスホロアミドクロリダート構造を有するものではないものを包含するが、本件発明について、本件明細書の【0014】~【0149】には、化合物[A]、化合物[B]及び化合物[C]について、化合物[C]の製造方法及び精製方法について、化合物[C]の分子内のQ1の脱離方法について、最終脱保護、核酸化合物の単離工程について、精製分離工程について記載されており、また、実施例において、本件発明の具体的な製造方法が記載されている。
また、上記dで述べたとおり、本件発明は、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することにより、効率よくリン結合を形成し得ることを見出したものであるといえ、かかる溶媒を用いることで縮合反応の効率化が図られることは、実施例の記載から理解できるといえる。
したがって、本件明細書の記載からは、化合物[A]及び化合物[B]がモルフォリン骨格、アミノ基及びホスホロアミドクロリダート構造を有するか否かにかかわらず、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用することにより、効率よくリン結合を形成し得ると当業者は理解するものといえる。また、モルフォリン骨格、アミノ基及びホスホロアミドクロリダート構造を有しない場合に、極性溶媒とハロゲン系溶媒との混合溶媒を反応溶媒として使用しても、効率よくリン結合を形成し得ることができないという技術的理由もない。
よって、この理由は理由がない。
ウ 申立理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1、3~12及び14~20に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1、3~12及び14~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2は本件訂正により削除され、請求項2に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700529