特許異議申立
2023-700271
防災システム
- 審判番号
- 2023-700271
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-133284
- 登録番号
- 7137599
- 請求日
- 2023年03月13日
- 審決日
- 2023年09月06日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ホーチキ株式会社
- 【権利者代理人】竹内 進
- 【権利者代理人】竹内 愛規
- 【異議申立人】西村 裕之
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-YAA(G08B) / P1651.857-YAA(G08B) / P1651.851-YAA(G08B) / P1651.06 -YAA(G08B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7137599号発明「防災システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7137599号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7137599号の請求項3ないし11に係る特許を維持する。
特許第7137599号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7137599号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成28年9月16日に出願された特願2016-181072号の一部を令和2年8月5日に新たな特許出願としたものであって、令和4年9月6日にその特許権の設定登録がされ、同年9月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~11に係る特許に対し、令和5年3月13日に特許異議申立人 西村裕之(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
その後の経緯は次のとおりである。
令和 5年 4月 6日付け 手続補正指令書(方式)
4月18日 手続補正書(方式)
5月 9日付け 取消理由通知書
7月 7日 訂正請求書・意見書(特許権者)
8月25日 意見書(申立人)
証拠説明書
甲第6号証~甲第9号証
以下では、令和5年4月18日の手続補正書(方式)によって補正された令和5年3月13日の特許異議申立書を単に「申立書」といい、同年7月7日の訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、同年8月25日の意見書を単に「意見書」という。
第2 本件訂正の適否の判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の(1)に示す訂正事項1~10からなり、以下の(2)に示す本件訂正前の請求項1~11並びに明細書【0023】及び【0031】を、以下の(3)に示す本件訂正後の請求項1~11並びに明細書【0023】及び【0031】に訂正するものである。
なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項
本件訂正は、以下の訂正事項1~10からなる。
訂正事項1
請求項1を削除する。
訂正事項2
請求項2を削除する。
訂正事項3
請求項3を次のとおりに訂正し、請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4~11も同様に訂正する。
「火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
前記防災受信盤は、
前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
前記防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
前記第2表示部は、前記扉の閉鎖時に前記筐体の前方から視認される前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され、
前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置されたことを特徴とする防災システム。」
訂正事項4
本件訂正前の請求項4における
「請求項1乃至3の何れかに記載の」を、
「請求項3記載の」に訂正し、請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5~11も同様に訂正する。
訂正事項5
本件訂正前の請求項5における
「請求項1乃至4の何れに記載の」を、
「請求項3又は4の何れに記載の」に訂正し、請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6~11も同様に訂正する。
訂正事項6
本件訂正前の請求項8における
「請求項1乃至7の何れかに記載の」を、
「請求項3乃至7の何れかに記載の」に訂正し、請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。
訂正事項7
本件訂正前の請求項10における
「請求項1乃至9の何れかに記載の」を、
「請求項3乃至9の何れかに記載の」に訂正し、請求項10を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する。
(当審注:訂正請求書には訂正事項7について「請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項11も同様に訂正する。」と記載されているが、「請求項8」は「請求項10」の明らかな誤記であると認める。また、請求項11が引用する請求項10は、直接的に引用されるのみであるから、「直接的又は間接的に」の部分は「直接的に」の誤記と認める。)
訂正事項8
本件訂正前の請求項11における
「請求項1乃至10の何れに記載の」を、
「請求項3乃至10の何れに記載の」に訂正する。
訂正事項9
本件訂正前の明細書【0023】における
「筐体の前方から視認される位置に配置され、」を
「筐体の前方から視認される扉の表面側である筐体外部に配置され、」に訂正する。
訂正事項10
本件訂正前の明細書【0031】における
「筐体の前方から視認される位置に配置され、」を
「筐体の前方から視認される扉の表面側である筐体外部に配置され、」に訂正する。
(2)本件訂正前の特許請求の範囲及び明細書
本件訂正前の特許請求の範囲において一群の請求項をなす請求項1~11並びに明細書【0023】及び【0031】の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムに於いて、
前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
前記防災受信盤は、
前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
前記表示部と前記第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されたことを特徴とする防災システム。
【請求項2】
火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムに於いて、
前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
前記防災受信盤は、
前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
前記表示部は、前記第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置されたことを特徴とする防災システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防災システムであって、
前記防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
前記第2表示部は、前記扉の閉鎖時に前記筐体の前方から視認される位置に配置され、
前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置された
ことを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の防災システムに於いて、
所定の前記測定結果の表示要求に基づいて、前記測定結果の履歴を、前記信号回線の状態を識別可能に前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れに記載の防災システムに於いて、
前記制御部は、測定した電流値に基づき前記信号回線に流れる電流の異常である電流値異常の有無を判定し、
前記表示部に識別可能に表示される前記信号回線の状態は、前記制御部で前記信号回線に流れる電流値が異常であると判定された状態である電流値異常状態を含むことを特徴とする防災システム。
【請求項6】
請求項5記載の防災システムに於いて、
前記信号回線の前記電流値異常状態以外の所定の状態として、前記信号回線に所定の障害が生じた回線障害状態、前記信号回線の所定の試験中である回線試験中状態、又は前記信号回線に前記火災信号が出力された火災状態を含むことを特徴とする防災システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の防災システムに於いて、
所定の前記電流値異常の表示要求に基づいて、前記信号回線の前記電流値異常状態の履歴である異常履歴を抽出し、前記信号回線の状態を識別可能に、前記測定結果と前記電流値異常の判定結果とを前記異常履歴として前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の防災システムに於いて、
所定の測定要求に基づいて、前記信号回線に流れる電流値を測定して得られた測定結果の履歴を、前記信号回線の状態を識別可能に前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項9】
請求項8記載の防災システムに於いて、
前記測定要求に基づく前記電流値の測定は、全ての信号回線に対して、又は一部の信号回線に対して行うことを特徴とする防災システム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の防災システムに於いて、
前記表示部に前記信号回線の状態を表示する際、前記信号回線の状態ごとに異なる配色として前記信号回線の状態を識別可能としたことを特徴とする防災システム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れに記載の防災システムに於いて、
前記第2表示部は、前記表示部に表示するのと同じ態様で前記測定結果及び又は電流値異常の判定結果を表示することを特徴とする防災システム。
【0023】
(第2表示部の配置)
表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置される。
より具体的には、防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
第2表示部は、扉の閉鎖時に筐体の前方から視認される位置に配置され、
表示部は、扉の閉鎖時において扉の裏面側である筐体内部の、扉の開放時に第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置される。
【0031】
(第2表示部の配置による効果)
また、表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置され、より具体的には、防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、第2表示部は、扉の閉鎖時に筐体の前方から視認される位置に配置され、表示部は、扉の閉鎖時において扉の裏面側である筐体内部の、扉の開放時に第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置されたため、第2表示部により防災監視に関する所定の情報で火災や障害等の存在を知り、表示部に表示された電流値の測定結果や電流値異常の判定結果を見ることで信号回線に関する詳細情報を知ることができ、必要とする情報に合わせて見る表示部を選択して必要な対処を可能とする。また、表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置されるため、一つの表示部だけを確認できる位置が存在することで、確認したい表示部の表示のみを確認することを可能とする。
(3)本件訂正後の特許請求の範囲及び明細書
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~11並びに明細書【0023】及び【0031】の記載は、次のとおりである。
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
前記防災受信盤は、
前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
前記防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
前記第2表示部は、前記扉の閉鎖時に前記筐体の前方から視認される前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され、
前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置されたことを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項3記載の防災システムに於いて、
所定の前記測定結果の表示要求に基づいて、前記測定結果の履歴を、前記信号回線の状態を識別可能に前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項5】
請求項3又は4の何れに記載の防災システムに於いて、
前記制御部は、測定した電流値に基づき前記信号回線に流れる電流の異常である電流値異常の有無を判定し、
前記表示部に識別可能に表示される前記信号回線の状態は、前記制御部で前記信号回線に流れる電流値が異常であると判定された状態である電流値異常状態を含むことを特徴とする防災システム。
【請求項6】
請求項5記載の防災システムに於いて、
前記信号回線の前記電流値異常状態以外の所定の状態として、前記信号回線に所定の障害が生じた回線障害状態、前記信号回線の所定の試験中である回線試験中状態、又は前記信号回線に前記火災信号が出力された火災状態を含むことを特徴とする防災システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の防災システムに於いて、
所定の前記電流値異常の表示要求に基づいて、前記信号回線の前記電流値異常状態の履歴である異常履歴を抽出し、前記信号回線の状態を識別可能に、前記測定結果と前記電流値異常の判定結果とを前記異常履歴として前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかに記載の防災システムに於いて、
所定の測定要求に基づいて、前記信号回線に流れる電流値を測定して得られた測定結果の履歴を、前記信号回線の状態を識別可能に前記表示部に表示することを特徴とする防災システム。
【請求項9】
請求項8記載の防災システムに於いて、
前記測定要求に基づく前記電流値の測定は、全ての信号回線に対して、又は一部の信号回線に対して行うことを特徴とする防災システム。
【請求項10】
請求項3乃至9の何れかに記載の防災システムに於いて、
前記表示部に前記信号回線の状態を表示する際、前記信号回線の状態ごとに異なる配色として前記信号回線の状態を識別可能としたことを特徴とする防災システム。
【請求項11】
請求項3乃至10の何れに記載の防災システムに於いて、
前記第2表示部は、前記表示部に表示するのと同じ態様で前記測定結果及び又は電流値異常の判定結果を表示することを特徴とする防災システム。
【0023】
(第2表示部の配置)
表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置される。
より具体的には、防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
第2表示部は、扉の閉鎖時に筐体の前方から視認される扉の表面側である筐体外部に配置され、
表示部は、扉の閉鎖時において扉の裏面側である筐体内部の、扉の開放時に第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置される。
【0031】
(第2表示部の配置による効果)
また、表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置され、より具体的には、防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、第2表示部は、扉の閉鎖時に筐体の前方から視認される扉の表面側である筐体外部に配置され、表示部は、扉の閉鎖時において扉の裏面側である筐体内部の、扉の開放時に第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置されたため、第2表示部により防災監視に関する所定の情報で火災や障害等の存在を知り、表示部に表示された電流値の測定結果や電流値異常の判定結果を見ることで信号回線に関する詳細情報を知ることができ、必要とする情報に合わせて見る表示部を選択して必要な対処を可能とする。また、表示部及び第2表示部は、何れも同一の防災受信盤に設置され、表示部と第2表示部とは、両者が同時には視認されない場合が存在する相互の位置関係となるように配置されるか、表示部は、第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置されるため、一つの表示部だけを確認できる位置が存在することで、確認したい表示部の表示のみを確認することを可能とする。
2 訂正事項1及び2による訂正の適法性
訂正事項1及び2は、いずれも、本件訂正前の請求項を削除するものであるから、その目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
また、訂正事項1及び2による訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条4項~6項の規定に反しないことが明らかである。
さらに、本件は、全ての請求項について特許異議の申立てがなされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の規定は適用されない。
以上によれば、訂正事項1及び2による訂正は、適法である。
3 訂正事項3による訂正の適法性
(1)訂正事項3の内容
訂正事項3は、以下の訂正事項3-1及び3-2に分けられる。
訂正事項3-1 本件訂正前の請求項3の冒頭の「請求項1又は2記載の防災システムであって、」との記載を削除し、本件訂正前の請求項2の「火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムに於いて、前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、前記防災受信盤は、前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、を備え、前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、」との記載を、「に於いて」を「であって」に置き換えた上で、請求項3の冒頭に挿入することにより、請求項1又は2の記載を引用する本件訂正前の請求項3記載を、請求項1又は2の記載を引用しないものとする。請求項3を引用する請求項4~11も同様に訂正する。
訂正事項3-2 本件訂正前の請求項3の「視認される位置」との記載を、「視認される前記扉の表面側である前記筐体外部」との記載に置き換える。請求項3を引用する請求項4~11も同様に訂正する。
(2)訂正事項3による訂正の目的
ア 本件訂正前の請求項3は、請求項1又は2を引用するものであったところ、訂正事項3-1の訂正により、請求項3はいずれの請求項も引用しないものとなる。
したがって、訂正事項3による訂正の目的の一つは、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する「他の請求項の記載を引用しないものとすること」であると認められる。
イ 訂正事項3-2による訂正は、本件訂正前の請求項3の発明特定事項である「視認される位置」を、「視認される前記扉の表面側である前記筐体外部」に訂正することにより、「位置」をより限定している。
したがって、訂正事項3による訂正の目的の一つは、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」であると認められる。
ウ 前記ア及びイによれば、訂正事項3による訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号であると認められる。
(2)訂正事項3による特許請求の範囲の拡張・変更の有無
ア 訂正事項3-1の訂正により、本件訂正前の請求項2の「前記表示部は、前記第2表示部が視認されない位置からも視認可能となる場合が存在する位置に配置された」との記載が削除されるが、当該記載によって特定される事項は、訂正事項3-1による訂正前後双方の請求項3の「前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置された」との記載によって、より限定されたものとして特定されている。
よって、訂正事項3-1による訂正後の請求項3には、実質的に、本件訂正前の請求項2及び請求項3に記載された発明特定事項の全てが記載されていると認められるから、訂正事項3-1による訂正には、特許請求の範囲の拡張又は変更はない。
イ 前記(1)イのとおり、訂正事項3-2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、訂正事項3-2による訂正には、特許請求の範囲の拡張又は変更はない。
ウ 前記ア及びイによれば、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定を満たす。
(3)訂正事項3による新規事項追加の有無
ア 前記(2)アのとおりであるから、訂正事項3-1により訂正された請求項3は、本件訂正前の請求項2を引用する請求項3に記載された発明特定事項の全てを記載したものである。
そして、訂正事項3-1によっては、上記以外の発明特定事項は導入されない。
したがって、訂正事項3-1による訂正には、新規事項の追加はない。
イ 訂正事項3-2による訂正は、「第2表示部」の配置位置を「前記扉の表面側である前記筐体外部」と限定するものである。
願書に添付した明細書には、「パネル扉62の表側にはタッチパネル付きの液晶ディスプレイを用いたメインモニタ装置44が設置され、…(後略)…」(【0052】)との記載があり、明細書における「パネル扉62」及び「メインモニタ装置44」は、それぞれ訂正事項3-2により訂正された請求項3の「前記扉」及び「第2表示部」に対応すると認められる。
「パネル扉62の表側」が筐体外部であることは、願書に添付した図面の図2から明らかである。
そうすると、訂正事項3-2による訂正によって導入される事項は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 前記ア及びイによれば、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定を満たす。
(4)独立特許要件
訂正事項3に係る請求項3~11は、いずれも、本件特許異議の申立てがされた請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。
(5)小括
前記(1)~(4)のとおりであるから、訂正事項3による訂正は、適法なものと認められる。
4 訂正事項4~8による訂正の適法性
訂正事項4~8による訂正は、いずれも、本件訂正前において請求項1及び2が引用されていたところ、引用される請求項から請求項1及び2を除くものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項4~8による訂正が、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定を満たすことは明らかである。
また、訂正事項4~8に係る請求項4~11は、いずれも、本件特許異議の申立てがされた請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。
以上によれば、訂正事項4~8による訂正は、適法なものと認められる。
5 訂正事項9及び10による訂正の適法性
訂正事項9及び10による訂正は、いずれも、訂正事項3により訂正された請求項3及びそれを引用する請求項4~11の記載に、明細書の記載を整合させるものである。よって、訂正事項9及び10による訂正の目的は、本件訂正後の請求項3~11の記載と整合しないために不明瞭となる本件訂正前の明細書【0023】及び【0031】の記載を、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させて明瞭なものとすること、すなわち、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」であると認められ、かつ、訂正事項9及び10による訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条4項の規定を満たすことが明らかである。
さらに、訂正事項9及び10による訂正は、訂正事項3による訂正で導入される事項と同一であるから、前記3(3)と同様の理由で、訂正事項9及び10による訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定を満たす。
また、訂正事項9及び10による訂正が特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定を満たすことは明らかである。
そして、本件訂正後に存在する請求項3~11は、いずれも、本件特許異議の申立てがされた請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。
以上によれば、訂正事項9及び10による訂正は適法なものと認められる。
6 本件訂正についてのむすび
前記2~5によれば、本件訂正は適法なものと認められる。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項3~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明3」~「本件発明11」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3~11に記載された事項により特定されるものであり、前記第2、1(3)に掲げたとおりである。
第4 申立理由及び申立人の主張の概要
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件訂正前の請求項1~11に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
また、申立人は、令和5年8月25日に、以下の1に示す甲第6号証~甲第9号証(以下、それぞれ「甲6」~「甲9」という。)を提出し、同日の意見書において、以下の3を主張する。
1 証拠方法
甲1 「トンネル非常用設備 盤標準仕様書 施仕第15301-8号」、目次、1~25、35~49、86~90、142~144頁
甲2 「新名神高速道路 川西トンネル~道場トンネル間非常用設備工事 特記仕様書」、1~4、33~35頁
甲3 特開平8-177737号公報
甲4 特開2004-22654号公報
甲5 特開2004-259044号公報
甲6 「新名神高速道路 川西トンネル~道場トンネル間非常用設備工事 設計図」、図面番号:SH-P-001~SH-P-004、SH-P-KW051、SH-P-RK015、SH-P-I017、SH-P-K083、SH-P-D046
甲7 「’16-’17 消火設備機器 製品カタログ」、目次、3~4頁、奥付
甲8 特開2013-37483号公報
甲9 特開昭62-47797号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1~11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3~甲5に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
3 申立人の主張
意見書に記載された申立人の主張は、以下のとおりである。
主張1 取消理由通知では、甲1に記載された発明を、申立書と異なる甲1発明として認定している。(意見書2頁)
主張2 甲1を引用する甲2と同時に頒布された甲6によれば、甲1に基づいた仕様では、表示装置部を防災受信盤の扉の表面側に配置することは技術常識であるから、本件訂正により生じる新たな構成は、本件発明3と甲1に記載された発明との実質的な相違点となるものではない。(意見書2~3頁)
主張3 本件訂正により生じる新たな構成は、甲3及び甲4に記載されている従来周知の技術に過ぎない。(意見書3頁)
甲3及び甲4には、本件発明3の「表示部」と「第2表示部」の配置位置が開示されている。(意見書9~10頁)
主張4 本件明細書【0047】にはトンネルの非常用施設として消火ポンプ設備20及び冷却ポンプ設備22が記載され、甲7にはトンネル非常用設備として防災受信盤とともにポンプ制御盤が用いられることが記載されているから、防災受信盤の当業者は、当然にポンプ制御盤の技術、特に、表示部の配置位置についても十分に理解しており、甲3及び甲4に示されるポンプ制御盤における周知技術を防災受信盤に適用することは、防災システムの当業者であれば、容易に想到し得た。(意見書4頁)
主張5 本件発明3の「表示部」と「第2表示部」の配置位置については、甲3~甲5以外にも、防災受信盤の一種である制御装置において、甲8及び甲9に示される周知技術が存在する。
甲8の「表示部12」、「表示操作部31」は、本件発明3の「表示部」、「第2表示部」にそれぞれ対応し、本件発明3の「表示部」と「第2表示部」の配置位置については、防災受信盤の一種である火災受信機ユニットを有する総合監視盤においても甲8に示されるように周知技術である。
甲9の「火災回線表示32と表示部34とフロア火災表示灯36」、「代表表示灯27と地区表示部28と表示過剰灯29と連動表示灯30と発信機灯31」は、本件発明3の「表示部」、「第2表示部」にそれぞれ対応し、本件発明3の「表示部」と「第2表示部」の配置位置については、防災受信盤の一種である自火報システムの中継器においても甲9に示されるように周知技術である。(意見書4~8頁)
主張6 甲1発明の「電流値測定機能部の表示装置」と「表示装置部」をどのような位置に配置するかは利便性等を考慮して適宜決めればよい技術的な設計事項であるから、甲3~5に記載された周知技術を甲1に記載された発明に適用できない理由はない。(意見書8~9頁)
主張7 本件発明3~11は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(意見書10頁)
第5 証拠の採否
訂正請求後に申立人が意見書を提出した場合の審理は、次のとおりである。
「合議体は、特許異議申立人が提出した意見書の内容を参酌し、審理する。ただし、意見の内容が、実質的に新たな理由及び証拠を提示しているときは、公益に及ぼす影響や特許異議の申立ての期間が特許掲載公報発行の日から6月以内に制限されている趣旨を踏まえ、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる理由である場合や、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合を除き、当該実質的に新たな理由及び証拠は採用しない。」(審判便覧(改訂第19版)67-05.4、1.(2))
そして、本件訂正により追加された事項は、前記第2、2~5によれば、訂正事項3-2による事項、すなわち、「第2表示部」が「前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」るという事項のみである。
以上に照らし、意見書と同日に提出された甲6~甲9の採否は、以下1~4のとおりである。
1 甲6の採否
甲6の立証趣旨は、「甲1の「盤標準仕様書」に基づいた仕様では、表示装置部を防災受信盤の扉の表面側に配置することは技術常識であること」(証拠説明書)である。
そして、甲6には、グラフィックパネル(本件発明における「第2表示部」に対応)がトンネル防災受信盤の扉の表面側に配置されている姿図が掲載されている。
以上によれば、甲6は、本件訂正の請求の内容に付随して生じる理由を構成するためのものと認められるので、これを証拠として採用する。
2 甲7の採否
甲7は、ホーチキ株式会社の平成28年3月時点での製品カタログであり(表紙、奥付)、その立証趣旨は「トンネル非常用設備として、防災受信盤とともにポンプ制御盤が用いられること。」(証拠説明書)である。
申立人は、申立理由として、甲1に記載された発明及び甲3~甲5に示される周知技術に基づく進歩性欠如を主張するところ(前記第4、2)、甲1は防災受信盤に係る文献であり、甲3及び甲4はポンプ用の制御盤に係る文献であるから、甲7は、甲1に記載された発明と、甲3及び甲4に示される周知技術との組み合わせに係る周知技術を立証するものと認められる。
そうすると、甲7は実質的に新たな理由及び証拠を提示するものとは認められないので、これを証拠として採用する。
3 甲8及び甲9の採否
甲8及び甲9の立証趣旨は、「防災受信盤の一種である制御装置において、特許発明3の「表示部」と「第2表示部」の配置位置が周知であること。」(証拠説明書)であり、申立人はその旨を主張5(前記第4、3)として主張する。
しかしながら、申立人が主張する甲8及び甲9に示される周知技術は、申立理由として主張されていなかった理由及び証拠である。
そして、甲8は、総合監視盤100の筐体101の本体の前面開口部を覆う扉に開口部を設け、扉の開口部内に操作表示部31(本件発明の「第2表示部」に対応)が配置されていることが記載されている(【0017】)が、甲8全体を参照しても、扉の開口部内に操作表示部31が配置されるという態様が、扉の開口部から操作表示部31が操作できるように、操作表示部31が扉の開口部よりも本体内部側に配置されていることをいうのか、それとも、操作表示部31が扉の開口部に嵌め込まれて配置されていることをいうのか、他の配置をいうのかが不明である。よって、甲8は、「第2表示部」が「前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」るという本件訂正により追加された事項についての見解を示すためのものと認めることはできない。
さらに、甲9は、「代表表示灯27」、「地区表示部28」、「表示過剰灯29」、「連動表示灯30」及び「発信機灯31」(これらは本件発明の「第2表示部」に対応)が「上面表面パネル」に設けられていることが記載されている(2頁右下欄15行~3頁左上欄9行、第3図)が、これらが「扉42」の表面に設けられているとは記載されていない。よって、甲9は、「第2表示部」が「前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」るという本件訂正により追加された事項についての見解を示すためのものと認めることはできない。
以上によれば、甲8及び甲9は、実質的に新たな理由を根拠づける証拠であると認められるため、これらを証拠として採用しない。
4 小括
前記1~3のとおり、甲6及び甲7は証拠として採用し、甲8及び甲9は証拠として採用しない。
第6 本件発明3の進歩性の有無についての判断
後の参照の便宜のため、本件発明3を以下のように分説し、「発明特定事項3A」のようにして参照する。
【請求項3】
3A 火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
3B 前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
3C 前記防災受信盤は、
3C1 前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
3C2 防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
3D 前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
3E 前記防災受信盤の筐体に、当該筐体の前方回りに回動することにより開閉可能な扉を設け、
3F 前記第2表示部は、前記扉の閉鎖時に前記筐体の前方から視認される前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され、
3G 前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置された
3H ことを特徴とする防災システム。
1 甲1の記載内容
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下、同様)。
ア 表紙
表紙には、以下の記載がある。
「トンネル非常用設備 盤標準仕様書
施仕第15301-8号
西日本高速道路株式会社」
イ 1頁1~8行
1頁1~8行には、以下の記載がある。
「第1章 一般事項
1-1 適用範囲
本仕様書は、自動車専用道路のトンネルの非常用設備として設置する盤に適用する。
1-2 設備の概要
1-2-1 機能
(1)防災受信盤
・トンネル内での事故発生時に事故通報で監視・制御をすると同時に他の管理用諸設備と連動し、機能の結合によってこれを効果的に活用し、事故等の適切な措置が迅速にできるものである。」
ウ 5頁
5頁には、次の表1-4-2が掲載されている。
[図:0001404808000001.jpg]
表1-4-2によれば、電流値監視測定とは、防災受信盤からトンネル内に設置されている押ボタン式通報装置及び消火ポンプ起動回路及びダクト内温度検知器に流れる電流値を測定することである。
エ 6頁
6頁には「第2章 必要条件」の記載の下に、次の図2-1-1が掲載されている。
[図:0001404808000002.jpg]
上図によれば、防災受信盤は、電流値測定機能を備えた入出力部、及び、表示装置部を備え、入出力部はトンネル内機器と接続されていると認められる。
また、上図によれば、標準構成図1の表示機能部は、防災受信盤の筐体部の内部にあると認められる。
オ 7頁
7頁には、次の図2-1-2が掲載されている。
[図:0001404808000003.jpg]
上図によれば、防災受信盤は、電流値測定機能を備えた入出力部、及び、表示装置部を備え、入出力部はトンネル内機器と接続されていると認められる。
また、上図によれば、標準構成図2の表示機能部は、防災受信盤内の筐体部とは別体であると認められる。
カ 12頁1~11行
12頁1~11行には、以下の記載がある。
「2-2 構造
2-2-1 防災受信盤
(1)筐体部
防災受信盤を収容する筐体は、電気的及び機械的に堅牢なものとし、構造は「JEM 1265[低圧金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ]」によるほか、次によるものとする。
(a)筐体は、屋内自立単位閉鎖型または壁掛け型とし、保守点検が容易な構造とする。
(b)筐体の形は、「JEM 1265[低圧金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ] 5.低圧スイッチギヤの形」のCX、CY、CS、CW形のいずれかによるものとする。
(c)筐体の保護等級は、「JEM 1265[低圧金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ] 7.2.1人間及び外部からの固形異物に対する保護」のIP2X以上とする。
(d)扉を開けた状態で主回路に接触しないよう保護するものとする。」
キ 13頁12~22行
13頁12~22行には、以下の記載がある。
「(2)表示装置部
表示装置部は標準構成図にあわせて下記の通りとする。
(a)標準構成図1の表示装置部は、保守員の視認性及び操作性を考慮し、床面からの高さは800mm以上の高さに設けるものとする。
(b)標準構成図2の表示装置部は、卓上型とし、二つの表示部から構成され、互いに独立して保守点検に関する内容及びトンネル内監視に関する内容を表示することができ、また切替ができるものとする。
なお、設置高さは椅子に座って操作することを考慮し、床面からの高さは600mm以上の高さに設けるものとする。
(c)標準構成図1及び標準構成図2の表示装置部に異常が発生した際には、防災受信盤の他の部位などに影響を与えることなく、防災受信盤の機能維持を行える構造とする。」
ク 20頁21行以降
20頁21~23行には、次の記載がある。
「2-3 主要性能
2-3-1 防災受電盤
(1)トンネル内機器への出力電圧を次に示す。」
上記記載に続き、次の表が掲載されている。
[図:0001404808000004.jpg]
前記表2-3-1によれば、トンネンル内機器の1つとして押ボタン式通報装置があると認められる。
ケ 22頁5~12行
22頁5~12行には、以下の記載がる。
「(c)電流値測定機能
パラレル伝送方式のみの機能であり、防災設備等級B級以上(ただし、トンネル長5km以下)の消火栓、手動通報装置、ダクト内温度検知器の平常時の監視電流を定期的に測定(記録)することができるものとする。
また、測定結果が予め設定された閾値(上限値/下限値)を超えた場合、施設制御室へ信号を送出することができるものとする。
なお、火災監視/制御機能に影響を与えることが無いようにし、電流値測定時に火災が発生した場合は火災優先とする。」
コ 37頁
37頁には、以下の記載がある。
「2)押ボタン式通報装置及び非常電話ボックス内押ボタン式通報装置監視
a)火災監視
防災受信盤の機能フローは以下の通りである。押ボタン式通報装置及び非常電話ボックス内押ボタン式通報装置からの火災信号を入力すると、防災受信盤は以下の動作を行う。」
上記記載に続き、次の図が掲載されている。
[図:0001404808000005.jpg]
上記記載及び上図によれば、防災受信盤は、押ボタン式通報装置からの火災信号を入力すると、「火災」表示を行うと認められる。
上図に続き、次の記載がある。
「b)電流値監視(パラレル方式のみ)
電流値監視とは、外線ケーブルの経年劣化による障害への予防保全の観点から、押ボタン式通報装置の外線ケーブルに流れる電流を監視し、定期的に記録する。」
サ 46頁
46頁には、以下の記載がある。
「(2)仕様
(a)トンネル内機器接続数
トンネル内機器接続数は特記仕様書によるものとする。
(b)表示装置部仕様
1)表示項目、表示色及び表示点数
表示装置部の表示項目、表示色及び表示点数は以下によるものとする。なお、表示項目が表示されると同時にベル、またはブザーの音響が連動して鳴動するものとし、該当表示項目を示すものとする。」
上記記載に続き、次の表が掲載されている。
[図:0001404808000006.jpg]
上記記載及び表2-4-14によれば、表示装置部の仕様として、表示項目には、火災の監視表示(表中「監視表示」の6行目)と、監視電流値の監視表示(表中「監視表示」の13行目)とが含まれると認められる。
シ 47頁
47頁には、次の表が掲載されている。
[図:0001404808000007.jpg]
ス 86頁4~7行
86頁4~7行には、次の記載がある。
「e)電流値測定機能部
電流値測定機能部の画面構成は、表2-4-00に示す表示画面が切り替えできるものとする。なお、表示装置はディスプレイサイズ10インチ以上、解像度800ドット×600ドット以上(表示色256色以上)とし、火災監視用表示装置と別装置としても構わない。」
セ 86頁表2-4-32
86頁には、次の表2-4-32が掲載されている。
[図:0001404808000008.jpg]
(2)甲1発明の認定
前記(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa~lに分説し、「構成a」のように参照する。
「a トンネル内での事故発生時に事故通報で監視・制御をすると同時に他の管理用諸設備と連動し、機能の結合によってこれを効果的に活用し、事故等の適切な措置が迅速にできる防災受信盤であって(1頁)、
b 防災受信盤は、電流値測定機能を備えた入出力部、及び、表示装置部を備え、入出力部はトンネル内機器と接続されており(7頁)、
c トンネンル内機器の1つとして押ボタン式通報装置があり(20頁)、
d 防災受信盤は、押ボタン式通報装置からの火災信号を入力すると、「火災」表示を行い(37頁)、
e 電流値測定機能は、手動通報装置の平常時の監視電流を定期的に測定(記録)することができるものであり(22頁)、
f 電流値監視とは、外線ケーブルの経年劣化による障害への予防保全の観点から、押ボタン式通報装置の外線ケーブルに流れる電流を監視し、定期的に記録することであり(37頁)、
g 表示装置部の仕様として、表示項目には、火災の監視表示と、監視電流値の監視表示とが含まれ(46頁)、
h 電流値測定機能部の表示装置は、火災監視用表示装置と別装置としても構わず(86頁)、
i 表示機能部は、防災受信盤内の筐体部とは別体であり(7頁)、
j 表示装置部は、卓上型とし、二つの表示部から構成され、互いに独立して保守点検に関する内容及びトンネル内監視に関する内容を表示することができ、また切替ができ、設置高さは椅子に座って操作することを考慮し、床面からの高さは600mm以上の高さに設け(13頁)、
k 筐体部は、扉を開けた状態で主回路に接触しないよう保護するものである(12頁)
l 防災受信盤。」
(3)申立人の主張1についての判断
前記(2)において当審で認定した甲1発明は、「筐体部」と「扉」に関して構成kを新たに認定した以外は、取消理由通知書にて通知した取消理由で認定したものと同じであり、甲1図2-1-2に示される「防災受信盤 標準構成図2」(7頁)に基づいている。
これに対し、申立人は、取消理由通知では、甲1に記載された発明を、申立書と異なる甲1発明として認定していると主張する(前記第4、3、主張1)。申立人の主張する甲1発明は、以下に示すとおりである
aa:トンネル内の火災を検知することで火災監視を行う火災検知器と、火災監視及び電流値監視を行う押ボタン式通報装置からなるトンネル内機器を、外線ケーブルで配線されている防災受信盤により、トンネル内での事故発生時に事故通報で監視・制御をする自動車専用道路のトンネルの非常用設備において、
ab:押ボタン式通報装置の外線ケーブルに流れる電流を監視し、定期的に記録する電流値監視機能を有し、
ac:防災受信盤は、
ac1:火災監視用表示装置である表示装置部と別装置としても構わないものであって、平常時の監視電流を定期的に測定(記録)し、また、測定結果が予め設定された閾値(上限値/下限値)を超えた場合に施設制御室へ信号を送出することができるものであり、対象設備の自動測定と対象回路の手動測定の測定結果の表示、測定結果の時系列での一覧表示、及び、測定結果のうち異常履歴を時系列で表示する電流値測定機能部の表示装置と、
ac2:防災受信盤及びトンネル内機器の機器故障、断線等を常時監視し、異常発生時に、火災や、電流値の異常、回路断線、伝送異常を表示する表示装置部と、を備え、
ad:防災受信盤は、筐体部に、電流値測定機能を有する入出力部と、表示装置部を有している
af:ことを特徴とする自動車専用道路のトンネルの非常用設備。
申立人の主張する甲1発明は、「防災受信盤は、筐体部に電流値測定機能を有する入出力部と、表示装置部を有している」との構成を備える(構成ad)が、この構成は、当審で認定する甲1発明の「表示装置部は防災受信盤内の筐体部とは別体であ」る構成(構成i)と相違しており、この構成の相違は、本件発明3の「第2表示部」及び「表示部」の配置位置(発明特定事項3F及び3G)に係る容易想到性の判断に影響を与えるため、以下、申立人が主張する甲1発明の妥当性について検討する。
ア 甲1には「表示装置部」の説明として、「表示装置部は標準構成図にあわせて下記の通りとする。」(13頁)との説明があり、「標準構成図」として「標準構成図1」(6頁図2-1-1)及び「標準構成図2」(7頁図2-1-2)が掲げられ、「(a)標準構成図1の表示装置部は、保守員の視認性及び操作性を考慮し、床面からの高さは800mm以上の高さに設けるものとする。」(13頁)との説明、及び、「(b)標準構成図2の表示装置部は、卓上型とし、二つの表示部から構成され、互いに独立して保守点検に関する内容及びトンネル内監視に関する内容を表示することができ、また切替ができるものとする。」(同頁)との説明がある。
そして、「標準構成図1」は、「防災受信盤」の「筐体部」の中に「表示装置部」があり(前記1(1)エ)、「標準構成図2」は、「防災受信盤」の「筐体部」とは別に「表示装置部」(前記1(1)オ)がある。
以上によれば、「筐体部」の中に「表示装置部」がある「標準構成図1」については、「表示装置部」を2つの表示部から構成することについて記載がない。他方、「筐体部」とは別に「表示装置部」がある「標準構成図2」については、「表示装置部」を2つの表示部から構成し、それら表示部が互いに独立して、一方(以下、「保守点検表示部」という。)が「保守点検に関する内容」を、他方(以下、「トンネル内監視表示部」という。)が「トンネル内監視に関する内容」を表示することが記載されている。
イ 甲1には、「表示装置部仕様」として表2-4-14(46頁)及び表2-4-15(47頁)が掲載されており、表示装置部の表示項目として、「火災」の監視表示、「監視電流値」の監視表示(前記1(1)サ)及び「電流値 異常」の故障表示(前記1(1)シ、表の下から8行目)があると解される。
これらの表示のうち「火災」の監視表示は、「標準構成図2」においては、トンネル内監視表示部(前記ア)に表示されると解され、「監視電流値」の監視表示及び「電流値 異常」の故障表示は、「保守点検表示部」(前記ア)に表示されると解される。
ウ 甲1には、「電流値測定機能部」の説明として、「電流値測定機能部の画面構成」及び「表示装置」が説明されている(86頁)。その説明中で、「電流値測定機能部」の「表示装置」は、「火災監視用表示装置と別装置としても構わない。」(86頁)とされている。
上記説明の「電流値測定機能部」の「表示装置」(86頁)は、前記イに示した「監視電流値」及び「電流値 異常」の表示を行い、前記アに示した「標準構成図2」についての「保守点検表示部」に対応すると解される。
また、上記説明の「火災監視用表示装置」(86頁)は、前記イに示した「火災」の表示を行い、前記アに示した「標準構成図2」についての「トンネル内監視表示部」に対応すると解される。
エ 甲1において、「電流値測定機能部」の「表示装置」(86頁)が、「標準構成図1」の「入出力部」(6頁)が担う「電流値測定機能」の一部であると解することはできない。
「標準構成図1」の「入出力部」(6頁)には「電流値測定機能」が含まれるが、これは、「入出力部」という部位が担う機能として「電流値測定機能」すなわち電流値を測定する機能が含まれることを表しているに過ぎないと解され、「入出力部」(6頁)に、電流値測定に係る画面や当該画面の表示装置が含まれているとは解されない。「電流値測定機能部」の「表示装置」(86頁)は、その機能に鑑み、「標準構成図1」の「表示装置部」(6頁)の「表示機能」により実現されると解するべきである。
オ 前記ア~ウによれば、甲1に記載された「電流値測定機能部」の「表示装置」(86頁、申立人による構成ac1に対応)と「火災監視用表示装置」(86頁、申立人による構成ac2に対応)とが別体であり、両者がそれぞれ「保守点検表示部」及び「トンネル内監視表示部」(前記ウ)として「表示装置部」(7頁)を構成するならば、「表示装置部」(7頁)は、「標準構成図2」に基づき、「筐体部」と別体でなければならず、申立人の構成adに反する。
また、前記エによれば、甲1に記載された「電流値測定機能部」の「表示装置」(86頁)が「入出力部」(6頁)に備わり、「火災監視用表示装置」(86頁)が「表示装置部」(6頁)に備わると解釈することはできない。
さらに、甲1に記載された「電流値測定機能部」の「表示装置」と「火災監視用表示装置」とが同一の装置であるとするならば、甲1発明の構成として構成ac1と構成ac2とを別の構成として認定することが不合理である。
以上によれば、甲1発明が、構成aa~構成afを備えるものであるとの申立人の主張、特に、構成adのように「筐体部」が「表示装置部」を有するものであるという申立人の主張は、採用できない。
2 甲2の記載
(1)表紙
表紙には、次の記載がある。
「新名神高速道路
川西トンネル~道場トンネル間非常用設備工事
特記仕様書
平成27年8月
西日本高速道路株式会社 関西支社
新名神兵庫事務所」
(2)33頁1~6行
33頁1~6行には、次の記載がある。
「第3章 機器仕様
3-1 防災受信盤
防災受信盤は火災報知器、押ボタン式通報装置、消火栓等からの信号を受信し、各設備の監視を行い、火災信号受信時には、発生位置の表示を行うと同時に消火栓設備、遠方監視制御設備等の各設備に対して必要な信号の供給を行うもので「機器仕様書集(施仕第15301-8号)トンネル非常用設備 盤標準仕様書」による他、下記のとおりとする。」
3 甲1の公知日についての判断
甲1は、「施仕第15301-8号」の「トンネル非常用設備 盤標準仕様書」であり(表紙、前記1(1)ア)、その発行日は明らかではない。
他方、甲2には、「施仕第15301-8号」の「トンネル非常用設備 盤標準仕様書」(前記2(2))について言及されており、これは、明らかに甲1のことであると認められる。
そして、甲2は平成27年8月に発行されたと認められる(表紙、前記2(1))から、甲2において言及された甲1は、甲2の発行日よりも前に発行されたものと認められる。
そうすると、甲1の公知日は、本件特許の出願日(遡及により平成28年9月16日)前である平成27年8月よりも前と認められる。
4 本件発明3と甲1発明との対比
(1)発明特定事項3Aについて
ア 甲1発明の「防災受信盤」及び「押ボタン式通報装置」について
甲1発明の「トンネル内」は、「事故発生時に事故通報で監視・制御」を行う(構成a)対象であるから、本件発明1の「防災監視エリア」に相当する。
甲1発明の「防災受信盤」は、明らかに、本件発明3の「防災受信盤」に相当する。
甲1発明の「押ボタン式通報装置」は「トンネル内機器」の1つであり(構成c)、「トンネル内機器」は、明らかに本件発明3の「端末機器」に相当する。
甲1発明の「防災受信盤」は「押ボタン式通報装置からの火災信号を入力すると、「火災」表示を行う」(構成d)ことから、甲1発明の「押ボタン式通報装置」は、本件発明3の「火災に伴い火災信号を出力する端末機器」に相当し、甲1発明の「防災受信盤」及び「押ボタン式通報装置」は、トンネル内すなわち防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムを形成している。
よって、甲1発明の「防災受信盤」及び「押ボタン式通報装置」は、本件発明3の「防災監視エリアの火災発生を監視する防災システム」に相当する。
イ 甲1発明の「電流値測定」及び「電流値監視」について
構成eによれば、甲1発明における「電流値測定」は、「手動通報装置の平常時の監視電流を定期的に測定(記録)すること」であると認められ、甲1発明の「押ボタン式通報装置」は、前記「手動通報装置」の一種であると認められる。
構成fによれば、甲1発明における「電流値監視」とは、「外線ケーブルの経年劣化による障害への予防保全の観点から、押ボタン式通報装置の外線ケーブルに流れる電流を監視し、定期的に記録すること」である。
また、甲1の表1-4-2によれば、「電流値監視測定」とは、「防災受信盤からトンネル内に設置されている押ボタン式通報装置に流れる電流値を測定すること」である(前記1(1)ウ)。
以上によれば、甲1発明における「電流値測定」、「電流値監視」及び「電流値監視測定」は、表記にゆれがあるものの、いずれも同内容を指すことが明らかである。
ウ 甲1発明の「外線ケーブル」及び「火災信号」について
甲1発明において、「防災受信盤」の入出力部は「トンネル内機器」と接続されており(構成b)、「トンネル内機器」の1つである「押ボタン式通報装置」の「外線ケーブル」に流れる電流は、外線ケーブルの経年劣化による障害への予防保全の観点から、平常時、監視されるものである(構成e、f)。
ここでいう、「外線ケーブルの経年劣化による障害」とは、外線ケーブルが劣化することにより「押ボタン式通報装置」からの「火災信号」(構成d)が「防災受信盤」に正常に伝送されなくなることであると解される。
そうすると、甲1発明の「外線ケーブル」は、「押ボタン式通報装置」と「防災受信盤」とを接続して、「火災信号」を伝送するための信号回線であると認められ、本件発明3の「信号回線」に相当する。
エ 発明特定事項3Aについての小括
前記ア~ウによれば、本件発明3と甲1発明とは、「火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システム」である点で一致する。
(2)発明特定事項3Bについて
甲1発明は、外線ケーブルに流れる電流を監視する「電流値測定機能」(構成e、f)を備え、当該機能を備える「入出力部」(構成b)は当該機能を制御するものと認められるから、前記(1)イ及びウも考慮すると、本件発明3の「前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、「前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え」る点で一致する。
(3)発明特定事項3Cについて
甲1発明の「防災受信盤」は、「表示装置部」を備えており(構成b)、「表示装置部」は、「二つの表示部」から構成される(構成j)。該「二つの表示部」のうち、一方を「表示部」と呼び、他方を「第2表示部」と呼ぶことは任意である。
よって、本件発明3と甲1発明とは、「前記防災受信盤は、表示部と、第2表示部と、を備え」る点で一致する。
ア 発明特定事項3C1について
甲1発明において「電流値監視」は、「外線ケーブルの経年劣化による障害への予防保全の観点から」(構成f)行われるものであるから、保守点検に関すると認められる。
したがって、甲1発明において「保守点検に関する内容」を表示する「表示部」(構成j)は、「監視電流の監視表示」(構成g)を行うものであって、本件発明3の「前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部」に相当する。
そして、甲1発明において、監視電流の監視表示を行えば、外線ケーブルの状態を識別可能であることは明らかである。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、「前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部」を備える点で一致する。
イ 発明特定事項3C2について
甲1発明において「火災」表示を行う(構成d)ことは、「火災の監視表示」(構成g)を行うことであるから、「トンネル内監視に関する内容を表示」する「表示部」(構成j)は、本件発明3の「防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部」に相当する。
ウ 発明特定事項3Cについての小括
前記ア及びイ並びに本節(3)の冒頭部分によれば、本件発明3と甲1発明とは、「前記防災受信盤は、前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、を備え」る点で一致する。
(4)発明特定事項3Dについて
甲1発明の「保守点検に関する内容」を表示する「表示部」及び「トンネル内監視に関する内容を表示」する「表示部」は、どちらも、「表示装置部」を構成するものであり(構成j)、「表示装置部」は1つの「防災受信盤」に備わるものである(構成b、標準構成図2)から、甲1発明の両表示部は、いずれも同一の防災受信盤に設置されている。
よって、本件発明3と甲1発明とは、「前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され」る点で一致する。
(5)発明特定事項3Eについて
甲1発明において「筐体部は、扉を開けた状態で主回路に接触しないよう保護するものである」(構成k)から、甲1発明の「筐体部」は、「開閉可能な扉」を有している。
甲1発明の「筐体部」は、本件発明3の「筐体」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、「前記防災受信盤の筐体に、開閉可能な扉を設け」る点で共通するが、甲1発明の「扉」の開閉が「当該筐体の前方回りに回動することにより」実現されるか否かは不明である。
(6)発明特定事項3F及び3Gについて
甲1発明の「電流値測定機能部の表示装置」及び「火災監視用表示装置」(構成h)は、「表示装置部」の「二つの表示部」(構成j)と同じと解され、「表示装置部」は、「筐体部とは別体」であり(構成i)、「卓上型」である(構成j)ため、甲1発明の「二つの表示部」は、本件発明3のように「前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」ることも、「前記扉の裏面側である前記筐体内部」に配置されることもない。
加えて、甲1発明の「二つの表示部」は、「互いに独立して」おり、「椅子に座って操作することを考慮し、床面からの高さは600mm以上の高さに設ける」(構成j)ものであるが、互いの位置関係は不明である。
(7)発明特定事項3Hについて
前記(1)アのとおり、甲1発明の「防災受信盤」及び「押ボタン式通報装置」は、本件発明3の「防災システム」に相当する。
(8)一致点・相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「火災に伴い火災信号を出力する端末機器を、信号回線を介して防災受信盤に接続して防災監視エリアの火災発生を監視する防災システムであって、
前記信号回線に流れる電流値を測定する制御部を備え、
前記防災受信盤は、
前記防災受信盤は、前記信号回線の状態を識別可能に、少なくとも前記制御部により測定された電流値を含む測定結果を表示する表示部と、
防災監視に関する所定の情報を表示する第2表示部と、
を備え、
前記表示部及び前記第2表示部は、何れも同一の前記防災受信盤に設置され、
前記防災受信盤の筐体に、開閉可能な扉を設けたことを特徴とする防災システム。」
〈相違点1〉
本件発明3の「扉」の開閉は、「当該筐体の前方回りに回動することにより」実現されるものである(発明特定事項3E)のに対し、甲1発明の「扉」は、どのように開閉が実現されるかが不明である点。
〈相違点2〉
「表示部」及び「第2表示部」の配置について、
本件発明3では、「前記表示部は、前記扉の閉鎖時において前記扉の裏面側である前記筐体内部の、前記扉の開放時に前記第2表示部が視認されない位置から視認される場合が存在する位置に配置され」(発明特定事項3G)、「前記第2表示部は、前記扉の閉鎖時に前記筐体の前方から視認される前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」る(発明特定事項3F)のに対し、
甲1発明の「二つの表示部」は、「互いに独立して保守点検に関する内容及びトンネル内監視に関する内容を表示することができ、また切替ができ、設置高さは椅子に座って操作することを考慮し、床面からの高さは600mm以上の高さに設け」るものであるが、「前記扉の裏面側である前記筐体内部」に配置されるものではないし、「前記扉の表面側である前記筐体外部に配置され」るものでもない点。
加えて、甲1発明の「二つの表示部」のうち一方の表示部が「扉の閉鎖時」に「筐体の前方から視認され」、かつ、「扉の開放時」に他方の表示部の位置が、一方が「視認されない位置から視認される場合が存在する位置」となるか否かが不明である点。
5 本件発明3の進歩性の有無
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明の「二つの表示部」から構成される「表示装置部」は、「筐体部とは別体」であり(構成i)、これは、「施仕第15301-8号」(表紙)として策定された盤標準仕様により定められたものである。
そうすると、甲1発明において、「二つの表示部」の片方を本件発明3のように「扉の裏面側である前記筐体内部」に配置することは、前記盤標準仕様の定めるところに反するため、そのような配置を採用する動機付けは存在せず、むしろ、阻害要因があるといえる。
したがって、甲3~甲7の存在に関わらず、本件発明3の発明特定事項3F及び3Gに係る構成は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
以上によれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明3は、当業者といえども、甲1発明から容易に発明をすることができたものではない。
申立人の主張2~主張7(前記第4、3)は、主張1による甲1発明を前提としているが、主張1は前記第6、1(3)のとおり採用できない。
また、主張2及び主張3については、相違点2についての判断を左右するものではない。
主張4、主張6及び主張7は、甲1発明において盤標準仕様に反する改変が妥当であることを裏付けるものではないため、採用できない。
主張5は、証拠として採用しなかった甲8及び甲9に基づくものであり、採用しない。
以上によれば、申立人の主張2~主張7は採用できない。
よって、本件発明3についての特許は、特許法29条2項の規定に違反しない。
第7 本件発明4~11の進歩性の有無についての判断
請求項4~11は、請求項3を直接的又は間接的に引用し、さらに別の発明特定事項を付加する記載を含むから、本件発明4~14は発明特定事項3F及び3Gを含むものであって、本件発明4~11と甲1発明との間には、少なくとも前記第6、4(8)に示した相違点2が存在し、前記第6、5と同様の理由で、本件発明4~11についての特許は、特許法29条2項の規定に違反しない。
第8 むすび
前記第6及び第7によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明3~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明3~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件の請求項1及び2に係る特許は、本件訂正により削除され、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700271