特許異議申立
2023-700253
GHG排出量導出装置、GHG排出量導出方法及びプログラム
- 審判番号
- 2023-700253
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-024220
- 登録番号
- 7132580
- 請求日
- 2023年03月07日
- 審決日
- 2023年06月29日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】booost technologies株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 【異議申立人】赤木 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 高瀬 勤
- 審判官 後藤 亮治
- 審判官 梶尾 誠哉
- 分類
- P1651.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7132580号発明「GHG排出量導出装置、GHG排出量導出方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7132580号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7132580号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和4年2月18日に出願され、令和4年8月30日にその特許権の設定登録がされ、同年9月7日に特許公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和5年3月7日に特許異議申立人 赤木太郎(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
本件特許に係る各発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明12」といい、合わせて「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを取得する取得部と、
活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する選択部と、
前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する決定部と、
前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部と
を備えるGHG排出量導出装置であって、
前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含み、
前記排出原単位フォーマットは、活動内容が前記他の間接排出量の対象に該当する場合、前記他の間接排出量の活動内容に応じた少なくとも1つのカテゴリに対応する少なくとも1つの排出原単位を示し、
前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容に対応する、前記他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを、前記第1活動量データの種別に対応する他の既存の排出原単位フォーマットから、抽出する抽出部と、
前記少なくとも1つのセットの中から、前記決定できない活動内容についてのセットをユーザから受け付ける受付部と
をさらに備える、GHG排出量導出装置。
【請求項2】
前記活動量データの種別は、活動量データの作成に用いられたアプリケーションの種別に対応する、請求項1に記載のGHG排出量導出装置。
【請求項3】
前記活動量データの種別は、活動主体の業種にさらに対応する、請求項2に記載のGHG排出量導出装置。
【請求項4】
前記活動内容は、活動に関わる業者に関する業者情報を含む、請求項1から3の何れか1つに記載のGHG排出量導出装置。
【請求項5】
前記活動内容は、活動に関わる場所に関する地点情報を含む、請求項1から4の何れか1つに記載のGHG排出量導出装置。
【請求項6】
前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容を提示する提示部と、
提示された前記活動内容についての排出原単位をユーザから受け付ける受付部と
を備える、請求項1から5の何れか1つに記載のGHG排出量導出装置。
【請求項7】
前記受付部は、
活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位データベースの中から、提示された前記活動内容について排出原単位を決定するために参照する排出原単位データベースの指定をユーザから受け付け、受け付けられた前記排出原単位データベースに示される排出原単位の中から、提示された前記活動内容についての前記排出原単位をユーザから受け付ける、請求項6に記載のGHG排出量導出装置。
【請求項8】
温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを取得する取得部と、
活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する選択部と、
前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する決定部と、
前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部と
を備えるGHG排出量導出装置であって、
前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含み、
前記GHG排出量導出装置は、
新たな活動量データの種別に対応する既存の排出原単位フォーマットから、前記新たな活動量データに示されるそれぞれの活動内容に対応する、他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを抽出する抽出部と、
前記少なくとも1つのセットの中から、ユーザの指示に応じて、前記新たな活動量データに示されるそれぞれの活動内容に対する1つのセットをそれぞれ特定することで、新たな活動量データに対する新たな排出原単位フォーマットを生成する生成部と
をさらに備える、GHG排出量導出装置。
【請求項9】
前記抽出部は、
既存の排出原単位フォーマットから特定される、活動量データの種別及び活動内容と、他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位との組合せを教師データとして機械学習させた学習モデルに従って、信頼度が高い順に予め定められた数のセットを、前記少なくとも1つのセットとして抽出する、請求項8に記載のGHG排出量導出装置。
【請求項10】
取得部が、温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを記憶部から取得する段階と、
選択部が、前記記憶部に記憶された、活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する段階と、
決定部が、前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する段階と、
導出部が、前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する段階と
を備えるGHG排出量導出方法であって、
前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含み、
前記排出原単位フォーマットは、活動内容が前記他の間接排出量の対象に該当する場合、前記他の間接排出量の活動内容に応じた少なくとも1つのカテゴリに対応する少なくとも1つの排出原単位を示し、
抽出部が、前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容に対応する、前記他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを、前記第1活動量データの種別に対応する他の既存の排出原単位フォーマットから、抽出する段階と、
受付部が、前記少なくとも1つのセットの中から、前記決定できない活動内容についてのセットをユーザから受け付ける段階と
をさらに備える、GHG排出量導出方法。
【請求項11】
取得部が、温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを記憶部から取得する段階と、
選択部が、前記記憶部に記憶された、活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する段階と、
決定部が、前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する段階と、
導出部が、前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する段階と
を備えるGHG排出量導出方法であって、
前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含み、
前記GHG排出量導出方法は、
抽出部が、新たな活動量データの種別に対応する既存の排出原単位フォーマットから、前記新たな活動量データに示されるそれぞれの活動内容に対応する、他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを抽出する段階と、
生成部が、前記少なくとも1つのセットの中から、ユーザの指示に応じて、前記新たな活動量データに示されるそれぞれの活動内容に対する1つのセットをそれぞれ特定することで、新たな活動量データに対する新たな排出原単位フォーマットを生成する段階と
をさらに備える、GHG排出量導出方法。
【請求項12】
請求項1から9の何れか1つに記載のGHG排出量導出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲6」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2016-126372号公報
甲第2号証(甲2):The Global GHG Accounting and Reporting Standard for the Financial Industry. First edition、Partnership for Carbon Accounting Financials、2020年11月18日
(異議申立人は併せて、甲第2号証の第51-60頁、第61-70頁、第71-80頁、第91-96頁、第101-110頁部分の翻訳としてそれぞれ、甲第2-1号証(甲2-1)、甲第2-2号証(甲2-2)、甲第2-3号証(甲2-3)、甲第2-4号証(甲2-4)、甲第2-5号証(甲2-5)を提出している。)
甲第3号証(甲3):Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions (version 1.0)、World Resources Institute、2013年
(異議申立人は併せて、甲第3号証の第15頁部分の翻訳として、甲第3-1号証(甲3-1)、甲第3号証が2013年に発行されたことを示すものとして、甲第3-2号証(甲3-2):Scope 3 Calculation Guidance | Greenhouse Gas Protocol、World Resources Instituteを提出している。)
甲第4号証(甲4):特開2008-108204号公報
甲第5号証(甲5):特開2004-152091号公報
甲第6号証(甲6):特開2007-164753号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する本件特許発明についての具体的な特許異議の申立ての理由(進歩性欠如)は以下のとおりである。
(1) 本件特許発明1~6及び10
本件特許発明1~6及び10は、甲1、甲2、甲5及び甲6に記載された発明、並びに、周知技術及び周知慣用技術の組合せに基づいて、あるいは、甲4、甲1、甲2、甲5、甲6に記載された発明、並びに、周知技術及び周知慣用技術の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2) 本件特許発明7及び12
本件特許発明7及び12は、甲1、甲2、甲3、甲5及び甲6に記載された発明、並びに、周知技術及び周知慣用技術の組合せに基づいて、あるいは、甲4、甲1、甲2、甲3、甲5、甲6に記載された発明、並びに、周知技術及び周知慣用技術の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(3) 本件特許発明8、9及び11
本件特許発明8、9及び11は、甲1、甲4、甲5、甲6に記載された発明、及び、甲2又は甲3に記載された事項、並びに、周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許は、取り消されるべきものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線加筆、以下同じ。)。
「【背景技術】
【0002】
従来、企業がサプライチェーン全体の環境負荷量としての温室効果ガス(GHG)排出量を算定し報告するために、スコープ3基準と呼ばれる国際基準が規定されている。このスコープ3基準では、企業のGHG排出量が3つのスコープ(Scope)に分類されている。1つ目のScope1排出量とは、企業が所有あるいは制御している発生源からの直接排出量を意味する。2つ目のScope2排出量とは、企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味する。3つ目のScope3排出量とは、企業のサプライチェーンで発生するScope2排出量以外の間接排出量を意味する。すなわち、Scope3排出量は、企業のサプライチェーンの上流および下流において発生するGHG排出量を意味する。
【0003】
Scope3排出量(以下、Scope3とも記す。)は、その算定対象に応じて16のカテゴリに分類されている。また、各カテゴリのGHG排出量の算定に関するガイドラインが開示されている(非特許文献1参照)。そのうち、カテゴリ4に該当する上流での物品の輸送、配送については、輸送手段ごとのCO2排出量と倉庫や配送センタ等の拠点ごとのCO2排出量とを合計して、環境負荷量(GHG排出量)としてのCO2排出量が算定される。」
「【0007】
しかしながら、上記したScope3排出量のうちのカテゴリ4を従来の技術で算定するために必要な輸送量や燃料使用量の情報は、入手が困難という問題があった。すなわち、カテゴリ4に該当する委託等の企業外部の業者が実施する輸送には、図11に破線で囲んで示す範囲のように、複数の他社の輸送業者が関わっている。例えば、原材料等の1次サプライヤーから自社への輸送は、自社輸送による他、他社輸送により倉庫を経由する場合、他社輸送により仲介業者を介する場合等がある。そのため、輸送量や燃料使用量、とくに輸送量を求めるために必要な輸送距離の情報は、業者の引き受け価格の妥当性を想定できる情報ともなり、各業者の効率化技術の開示につながり易いため、公開されない場合が多い。そのため、従来の技術では、カテゴリ4のScope3排出量(サプライチェーン上流での物品の輸送に伴うCO2排出量)を算定できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に入手可能な情報を用いて物品の輸送に伴う環境負荷量を算定することを目的とする。」
「【0013】
[算定対象]
まず、図1および図2を参照して、本実施形態の算定対象について説明する。図1に示すように、スコープ3基準では、企業(報告事業者)のGHG排出量が3つのスコープ(Scope)に分類されている。すなわち、前述したように、1つ目のScope1排出量とは、企業が所有あるいは制御している発生源からの直接排出量を意味する。例えば、固定燃焼、移動燃焼、プロセスおよび漏出等によるGHG排出量が例示される。2つ目のScope2排出量とは、企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味する。例えば、電力の生産、蒸気の生産等において発生するHG排出量が例示される。3つ目のScope3排出量とは、企業のサプライチェーンで発生するScope2排出量以外の間接排出量を意味する。言い換えれば、Scope3排出量は、企業のサプライチェーンの上流および下流において発生するGHG排出量を意味する。例えば、上流事業者による原材料の採掘、輸送、下流事業者による製品の輸送、小売等に伴って発生するGHG排出量が例示される。
【0014】
このScope3排出量は、図2に示すように、その算定対象に応じて16のカテゴリに分類されている。例えば、カテゴリ4は、上流事業者による原材料や部品等の輸送に伴って排出されるGHG排出量(環境負荷量)を算定対象とする。また、カテゴリ9は、下流事業者による製品の輸送や保管等に伴って排出されるGHG排出量(環境負荷量)を算定対象とする。
【0015】
本実施形態は、図1および図2に太線で囲んで示すカテゴリ4に該当する、サプライチェーン上流での物品の輸送、配送における環境負荷量(CO2排出量)を主な算定対象とする。以下、カテゴリ4におけるCO2排出量を算定対象として説明する。ただし、図1および図2に破線で囲んで示すカテゴリ9に該当するサプライチェーン下流での物品の輸送、配送におけるCO2排出量の算定にも本実施形態を適用できる。
【0016】
[算定装置の構成]
図3は本実施形態に係る算定装置の概略構成を示す模式図である。図3に示すように、算定装置1は、入力部11と、出力部12と、通信制御部13と、記憶部14と、各構成部を制御する制御部15とを備える。
【0017】
入力部11は、電源スイッチおよび入力キー等の入力デバイスを用いて実現され、操作者による入力操作に対応して、制御部15に対して処理開始などの各種指示情報を入力する。具体的に、入力部11は、操作者の操作入力に対応して、制御部15に物品の購入額と物品を購入した企業の属する業種とを入力する。」
「【0020】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、物流コスト比率情報141と、産業連関情報142と、環境産業連関情報143とを記憶する。なお、記憶部14は、通信制御部13を介して制御部15と通信する構成でもよい。
【0021】
物流コスト比率情報141は、各業種における物品の購入額に対する輸送費の比率を示す情報である。ここで、物品の購入額(取引額)には、物品の代金、輸送費の他、販売管理費、営業費等の多数の項目が含まれる。そして、物流コスト比率情報141は、各業種での購入額(取引額)のうちの物流コスト(輸送費)の統計上の比率、すなわち物流コスト比率を示す。」
「【0024】
産業連関情報142は、各業種における輸送費のうちの各輸送手段にかかる輸送費を示す情報である。具体的に、産業連関情報142には、輸送手段と、業種ごとの各輸送手段にかかる輸送費(各業種における輸送費の内訳)とが含まれる。本実施形態では、倉庫等の拠点が輸送手段に含まれる。」
「【0028】
環境産業連関情報143は、各輸送手段の輸送費に対するCO2排出量の比率を示す情報である。具体的に、環境産業連関情報143には、各輸送手段と、対応する単位輸送費あたりのCO2排出量とが含まれる。例えば、図6に例示する環境産業連関情報143には、輸送手段として、図5に例示した産業連関情報142と同様に、鉄道貨物輸送、道路貨物輸送(除自家輸送)、自家輸送(貨物自動車)、沿海・内水面輸送、航空輸送、貨物利用運送、および倉庫(拠点)が示される。また、この環境産業連関情報143には、輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量(t-CO2/百万円)が示される。」
「【0030】
これらの情報は、例えば、非特許文献4に開示されている情報から抽出され、予め通信制御部13あるいは入力部11を介して記憶部14に格納される。本実施形態では、非特許文献4に開示されている部門別直接エネルギー消費量および各種GHG排出量、エネルギー原単位およびGHG原単位を掲載した表を用い、上記輸送手段(部門名:71××××)について、CO2排出原単位(CO2排出量、t-CO2/百万円)を単位輸送費あたりのCO2排出量に相当する値として抽出する。環境産業連関情報143は、この非特許文献4のデータが更新されたタイミング等、適宜なタイミングで更新される。
【0031】
制御部15は、メモリに記憶された処理プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等を用いて実現され、処理プログラムを実行することにより、受付部151、取得部152、算出部153、および算定部154として機能する。算定装置1は、この制御部15の制御により後述する算定処理を実行して、容易に入手可能な物品の購入額に基づいて、サプライチェーンの上流での物品の輸送に伴うCO2排出量を算定する。」
「【0045】
[算定処理手順]
次に、図9のフローチャートを参照して、算定装置1における算定処理手順について説明する。図9のフローチャートは、例えば、操作者が入力部11を操作して処理開始の指示入力を行ったタイミングで開始となる。なお、この算定処理は、物流コスト比率情報141、産業連関情報142、環境産業連関情報143のいずれかが更新されたタイミング等に開始されてもよい。
【0046】
まず、受付部151が、企業の属する業種と物品の購入額との入力を受け付ける(ステップS1)。そして、取得部152が、物流コスト比率情報141を参照し、入力された業種に対応する物流コスト比率、すなわち、この業種における取引額(購入額)に対する物流コスト(輸送費)の比率を取得する(ステップS2)。
【0047】
次に、取得部152は、産業連関情報142を参照し、入力された業種に対応する輸送費の内訳(各輸送手段にかかる輸送費)を取得する。また、取得部152は、環境産業連関情報143を参照し、この業種に対応する、各輸送手段にかかる輸送費に対する各輸送手段によるCO2排出量の比率を取得する(ステップS3)。
【0048】
次に、算出部153が、ステップS3の処理で取得された各輸送手段にかかる輸送費とCO2排出量の比率とから、この業種における輸送費に対するCO2排出量の比率(輸送費の排出係数)を算出する(ステップS4)。すなわち、算出部153は、まず、取得された業種に対応する各輸送手段にかかる輸送費から、この業種における輸送費(各輸送手段にかかる輸送費の合計)に対する各輸送手段にかかる輸送費の比率を算出する。次に、算出部153は、取得された各輸送手段のCO2排出量の比率と算出された各輸送手段にかかる輸送費の比率とを乗算したものを、全輸送手段について合計する。これにより、算出部153は、企業の属する業種での輸送費に対するCO2排出量の比率(輸送費の排出係数)を算出する。
【0049】
そして、算定部154が、ステップS1の処理で入力された物品の購入額と、ステップS2の処理で取得された物流コスト比率と、ステップS4の処理で算出された排出係数とを乗算する。これにより、算定部154は、物品の購入額に対応するCO2排出量を算定する(ステップS5)。
【0050】
最後に、算定部154が、算定したCO2排出量を、企業が購入した物品の輸送に伴う環境負荷量の推定値として、出力部12に出力する(ステップS6)。これにより、一連の算定処理は終了する。」
「【0053】
なお、前述したように、本発明は、Scope3排出量のうち図1および図2に太線で囲んで示すカテゴリ4に該当する、サプライチェーンの上流の物品の輸送を主な対象としている。ただし、本発明は、図1および図2に破線で囲んで示すカテゴリ9に該当する、サプライチェーンの下流の物品の輸送にも適用可能である。その場合、物品の取引額が上記した物品の購入額に該当する。」
図6
[図:0001400496000001.jpg]
図9
[図:0001400496000002.jpg]
(2) 甲1発明
上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味するScope2排出量以外の、企業のサプライチェーンで発生する間接排出量を意味するScope3排出量(【0013】)の、上流事業者による原材料や部品等の輸送に伴って排出されるGHG排出量(環境負荷量)であるカテゴリ4(【0014】)におけるCO2排出量を算定対象(【0015】)とする算定装置1(【0016】)であって、
メモリに記憶された処理プログラムを実行することにより、受付部151、取得部152、算出部153、および算定部154として機能する制御部15(【0031】)を備え(【0016】)、
受付部151は、企業の属する業種と物品の購入額との入力を受け付け(【0046】)、
取得部152は、物流コスト比率情報141を参照し、入力された業種に対応する物流コスト比率、すなわち、この業種における取引額(購入額)に対する物流コスト(輸送費)の比率を取得し(【0046】)、産業連関情報142を参照し、入力された業種に対応する輸送費の内訳(各輸送手段にかかる輸送費)を取得し(【0047】)、環境産業連関情報143を参照し、この業種に対応する、各輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量の比率(t-CO2/百万円)を取得し(【0028】、【0047】)、
算出部153は、取得された各輸送手段にかかる輸送費とCO2排出量の比率とから、この業種における輸送費に対するCO2排出量の比率(輸送費の排出係数)を算出し(【0048】)、
算定部154は、入力された物品の購入額と、取得された物流コスト比率と、算出された輸送費の排出係数とを乗算して、物品の購入額に対応するCO2排出量を算定する(【0049】)、
算定装置1。
2 甲2について
(1) 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。なお、英語の原文の摘記は省略し、当審訳を示した。また、当審訳は特許異議申立人 赤木太郎が提出した甲2-1~甲2-5を基に一部合議体で修正した。
(第53頁)
「必要なデータ
PCAFは、上場株式および社債からの資金調達排出量を算定するための3つのオプションを、使用する排出量データに応じて区別している。
・ オプション1:報告された排出量
・ オプション2:物理的活動ベースの排出量
・ オプション3:経済活動ベースの排出量
オプション1と2は、企業固有の報告された排出量や、借入人または投資先、あるいは第三者データ提供者が提供する一次の物理的活動データに基づくものであるが、オプション3は、統計などの公的データソースや他の第三者データ提供者から提供されたデータを用いた、地域やセクターごとの平均的な排出量や財務データに基づくものである。
データの質の観点からは、オプション3よりもオプション1と2の方が望ましい。オプション1と2は、金融機関により正確な排出量の結果を提供するものである。データの制約上、特定の企業にはオプション1または2を使用し、その他の企業にはオプション3を使用することがある。データ品質の組み合わせは、第6章で示すように、平均データ品質スコアに反映される。」
(第55頁)
「推計モデル(オプション2、3)
すべての企業が、公式文書やデータ提供者を通じて排出データを開示しているわけではない。新興国市場での報告は先進国市場に遅れをとっている。排出量データのカバレッジを最大化するために、残りのギャップはしばしば推定値で埋められる。
データが入手できない場合は、主要事業活動からの排出量と整合性のある推計モデルを用いることができる。生産に基づくモデルからの排出係数(すなわち、物理的活動当たりの排出原単位)は、収入に基づくモデルからの排出係数(すなわち、収入当たりの排出原単位)よりも好ましい。なせなら、生産に基づくモデルは、為替レートや商品価格の変動に対する感度が低いからである。オプション2に沿った生産ベースのモデルからの排出係数は、電力、材料、エネルギー、産業などの炭素集約型産業にとって特に有用である。オプション3に沿った収益ベースのモデルからの排出係数(例えば、集約度ベースまたは環境入カモデル)は、金融機関からのより詳細なデータを必要としないという利点がある。」
(第56頁)
「オプション2(物理的活動に基づく排出量)については、PCAFは、実際のエネルギー消費量(例えば、天然ガス消費量のメガワット時)または企業が報告する生産量(例えば、鉄鋼生産量のトン)のデータを使用することを推奨している。ただし、データが企業の排出活動を完全に網羅していることを条件とする。使用される物理的活動当たりの排出係数は、信頼できる独立機関によって発行または承認された、適切かつ検証された計算方法またはツールに基づくべきである。排出係数を検索するためのデータソースの例としては、ecoinvent、Defra、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、GEMIS(統合システム用世界排出量モデル)、国連食糧農業機関(FAO)がある。最も直近に得られるデータが、データ源、報告期間、発行日の言及も含めて、使用されるべきである。
オプション3(経済活動ベースの排出量)については、PCAFは、経済活動あたりの係数(例えば、tC02e/ユーロの収益またはtC02e/ユーロの資産)を表す、地域別または部門別の平均排出量を提供する、公式の統計データまたは確認済みのEEIO表の使用を推奨している。金融機関は、主要事業活動と可能な限り整合性のある排出係数を用いるべきである。例えば、水稲農家への事業融資の場合、金融機関は、農業部門全体の排出係数ではなく、水稲部門の部門別平均排出係数を見つけ、利用することを目指すことを行うべきである。このような排出係数を得るために使用できるEEIOデータベースの例としては、EXIOBASE、世界貿易分析プロジェクト(GTAP)、世界入出力データベース(WIOD)がある。
PCAFのウェブベースの排出係数データベースは、オプション2と3の排出係数の大きなセットを提供している。このデータベースは、金融機関が、資金調達された投資の排出量の推計を始めるのに役立つ。
PCAFは、ほとんどの上場株式および社債の資金による排出量は、報告された排出量(オプション1)、物理的活動データ(オプション2)、または経済活動データ(オプション3)のいずれかによって算出できると予想している。しかし、PCAFでは、次のような代替オプションを使用することができる。指定されたオプションのいずれも使用できない場合、または新しいオプションが開発された場合には、排出量を計算する。報告金融硼関は、上記3つの選択肢から逸脱した場合には、必ず代替選択枝を利用する理由を説明するものとする。」
(第80頁)
「必要なデータ
実際の建物のエネルギー消費が望ましいが、広くは入手できないかもしれない。計測されたデータがない場合、建物の特性と公的に利用可能なデータに基づいてエネルギー利用を推定することができる。
様々な情報ソースおよび商業データベースが利用可能であり、エネルギー消費量をエネルギーラベル、資産の種類、および不動産の床面積などの特性で割っている。これらのデータを融資対象不動産の大規模サンプルに適用する場合、排出量の合理的な近似値を得ることが可能である。同様に、供給者固有の排出係数は、特定のエネルギー源が利用可能であれば、使用されるべきである。もしそうでなければ、平均排出係数を使用してもよい。PCAFのWebベースの排出係数データベースは、建物の種類、床面積、および広い地域の建物数別の排出係数を提供する。
建物のエネルギー利用の推計を改善するために、金融機関は建物の特性(例えば、規模、建物利用、気候帯、建築年)に関するデータを収集すべきである。利用可能なデータに基づき、以下のデータ階層が、望ましい順に、提案される。」
(第92頁)
「自動車ローンからの資金調達された排出量は、資金調達された自動車の排出量を算出するためのデータの入手可能性に応じて、いくつかの方法で算出することができる。全体的に、PCAFは、使用したデータに応じて、自動車ローンからの融資排出量を計算するための3つの選択肢を区別する。
・オプション1:車両固有の実際排出量。この場合、排出量は、借入人から直接データを収集した既知の製造/型式の車両の実車燃費または実車走行距離を用いて、算出される。
- オプションla:車両排出量は、実車燃費の一次データに基づいて算出される。
- オプションlb:車両排出量は、既知の車両の製造/型式からの車両効率および燃料の種類(化石または電気)ならびに実際の車両走行距離の一次データに基づいて算出される。」
(第93頁)
「・オプション2:車両固有の推定排出量。この場合、排出量は、公式統計から収集されたデータを用いて、既知の車両の製造/型式について推定された車両走行距離に基づいて計算される。
- オプション2a:車両排出量は、既知の車両の製造/型式からの車両の効率と燃料の種類(化石または電気)、及び、地方の統計データから推定された車両の走行距離に基づいて計算される。
- オプション2b:車両排出量は、既知の車両の製造/型式からの車両の効率と燃料の種類(化石または電気)、及び、地域の統計データから推定された車両の走行距離に基づいて計算される。
・オプション3:特定されていない車両の推定排出量。この場合、排出量は、公式統計から収集されたデータを用いて、特定されていない車両の推定走行距離に基づいて計算される。
- オブション3a:車両排出量は、既知の車種(車両の製造/型式は不明)からの車両効率および燃料の種類(化石または電気)、及び、地方または地域の統計データから導出された推定車両距離に基づいて計算される。
- オプション3b:車両排出量は、平均的な車両(車両の製造/型式および車種が不明)から車両効率と燃料の種類(化石または電気)、及び、地方または地域の統計データから導出された推定車両距離に基づいて計算される。」
(第95頁)
「3つのオプションすべてのデータは、異なるデータソースから導出することができる。車両の製造/型式ごとの車両効率および燃料の種類に関するデータは、米国EPAの連邦テスト手順およびEEAの世界調和型軽自動車試験方法(WLTP)などの公式統計データソースから得ることができる。両データソースは、車両の製造/型式ごとの詳細な車両効率および燃料の種類の情報を提供する。オプション1b、オプション2a、およびオプション2bは、そのような情報を必要とする。報告金融機関に製造/型式が知られていない場合(オプション3)、クリーン輸送に関する国際評議会(ICCT)の輸送ロードマップ、または、経済協力開発機構の国際輸送フォーラム(ITF OECD)を使用して、車両の効率および燃料の種類は、車類レベル(乗用車など)で推定することができる。
報告金融機関が実際の走行距離を把握していない場合、ICCT輸送ロードマップやITF OECDなどのデータに基づいて、車両走行距離データを推定することができる。いくつかの地域の統計データソースは、地域特有の車両走行距離を提供している。米国とカナダでは、年間の州レベルまたは県レベルの距雛は、carinsurance.comとカナダエネルギー効率局から検索することができる。
PCAFのwebベースの排出係数データベースは、車種別(乗用車など)および車両の製造/型式別(VWやPoloなど)の排出係数を、広い地域で提供している。これらの自動車排出係数は、上記のデータソースに広く基づいている。」
(2) 甲2記載事項
上記(1)によれば、甲2には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
[甲2記載事項]
・すべての企業が、公式文書やデータ提供者を通じて排出データを開示しているわけではないので、データが入手できない場合は、主要事業活動からの排出量と整合性のある推計モデルを用いることができ、例えば、水稲農家への事業融資の場合、金融機関は、農業部門全体の排出係数ではなく、水稲部門の部門別平均排出係数を見つけ、利用することを目指すことを行うべきであること(第55頁、第56頁)
・PCAFは、使用したデータに応じて、自動車ローンからの融資排出量を計算するためのオプションとして、以下の3つの選択肢を区別していること
(1)借入人から直接データを収集した既知の製造/型式の車両の実車燃費または実車走行距離を用いて、算出するオプション1、
(2)公式統計から収集されたデータを用いて、既知の車両の製造/型式について推定された車両走行距離に基づいて計算するオプション2、
(3)公式統計から収集されたデータを用いて、特定されていない車両の推定走行距離に基づいて計算するオプション3(第92頁、第93頁)
・排出係数を検索するためのデータソースの例としては、ecoinvent、Defra、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、GEMIS(統合システム用世界排出量モデル)、国連食糧農業機関(FAO)など、様々なデータソースがあること(第56頁)
・融資対象不動産の排出量の合理的な近似値を得るために使用されるデータは、様々な情報ソース及び商業データベースから取得可能であること(第80頁)
・自動車ローンからの融資排出量を計算するためのオプションで使用されるデータは、異なるデータソースから導出することができること(第93頁、第95頁)
3 甲3について
(1) 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。なお、英語の原文の摘記は省略し、当審訳を示した。また、当審訳は特許異議申立人 赤木太郎が提出した甲3-1を基に一部合議体で修正した。
(第15頁)
「一次データおよび二次データ
企業は、スコープ3排出量を算出するために、一次データまたは二次データのいずれかを使用することができる。表IIIにこれらのタイプのデータの定義を示す。
表[III]
データの種類 説明
一次データ 企業のバリューチェーン内の具体的活動からのデータ
二次データ 企業のバリューチェーン内の具体的活動からでないデータ
出所:スコープ3基準の表7.4
一次データには、報告企業のバリューチェーン内の具体的活動に直接関連する提供者などから提供されたデータが含まれる。
二次データには、産業平均データ(例えば、公表されているデータベース、政府統計、論文研究、業界団体からのデータ)、財務データ、代理データ、その他の一般データが含まれる。ある場合には、企業は、そのバリューチェーン内のある活動か具体的データを用いて、そのバリューチェ―ン内の別の活動の排出量を推定することができる。この種類のデータ(すなわち、代理データ)は、排出量が算定される活動に固有のものではないため、二次データとみなされる。
スコープ3カテゴリによる一次データおよび二次データの例については、スコープ3基準の表7.4を参照のこと。」
(2) 甲3記載事項
上記(1)によれば、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。
[甲3記載事項]
・二次データには、産業平均データ(例えば、公表されているデータベース、政府統計、論文研究、業界団体からのデータ)、財務データ、代理データ、その他の一般データが含まれること(第15頁)。
4 甲4について
(1) 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原単位データを取得することにより、比較的容易に環境影響評価を行うことが可能となる。しかしながら、公的情報により計算される原単位データは、国内の平均的な値である。従って、実際の評価対象である機器の環境影響評価では、当該機器の原単位データの調査、収集、作成を行なう必要がある。
【0008】
また、産業連関表に基づいて計算される原単位データ以外には、公的機関や研究所、また製造メーカより公開された原単位データがある。これらの原単位データは、原単位を算出するための前提条件や境界の設定などが異なるため、ばらつきがある。従って、これらの原単位データを使用した場合に、製品である機器に対する適切な環境負荷評価を得られないことがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、一貫性を確保した原単位データを取得できるようにして、比較的容易に実行でき、かつ信頼性、客観性、透明性が高い環境負荷評価を実現できる環境負荷評価システムを提供することにある。」
「【0013】
[第1の実施形態]
(構成)
図1は、本実施形態に関する環境負荷評価システムに含まれる原単位データの自動生成装置の要部を示すブロック図である。
【0014】
自動生成装置は、具体的には、ハードウェア及びソフトウェアを含むコンピュータシステムにより実現されており、大別して入力部1、出力部6、及び装置本体10を有する。入力部1は、環境負荷評価の対象機器を指定するための入力データや、各種のデータ及びコマンドを入力する。出力部6は、対象機器の原単位データを出力する。具体的には、出力部6は、表示装置や、インターネット11に接続された通信インターフェースを含む。
【0015】
装置本体10は、既知の原単位データを蓄積するデータベース(以下、原単位DBと表記する)2と、原単位データの補間推定に用いる補間推定用データを蓄積するデータベース(以下、推定用DBと表記する)3と、原単位データの選定部4と、原単位データの補間推定部5とを有する。
【0016】
原単位DB2には、例えば産業連関表から推計した原単位データが蓄積されている。また、既知の原単位データとして、研究所、行政機関、メーカなどから公開された原単位データがある。装置本体10は、例えばインターネット11を介して、公開された原単位データを収集して、原単位DB2に蓄積する。推定用DB3には、補間推定用データとして、機器の仕様情報であり、様々な型式の例えば定格容量、定格出力、重量、価格、エネルギー消費量、効率などのデータが蓄積されている。装置本体10は、例えばインターネット11を介して当該補間推定用データを収集して、推定用DB3に蓄積してもよい。
【0017】
選定部4は、原単位DB2を検索して、入力部1で指定された機器に対応する原単位データを選定する。また、補間推定部5は、原単位DB2に蓄積されている既知の原単位データ、及び推定用DB3に蓄積されている補間推定用データを使用して、入力部1で指定された機器の原単位データの補間推定処理を実行する。」
「【0019】
装置本体10は、入力部1から環境負荷評価の対象機器を指定されると、当該機器の仕様データ(定格容量、定格出力など)を入力する(ステップS1)。選定部4は、原単位DB2を検索し、入力部1から指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在する場合には、当該原単位データを選定する(ステップS2のYES,S3)。
【0020】
出力部6は、選定部4で選定された原単位データを、例えば表示画面上に表示する(ステップS5)。また、出力部6は、インターネット11を介して、指定の対象機器に対応する原単位データを要求した端末装置などに送信する。ここで、入力部1は、例えばインターネット11を介して、要求元の端末装置などから環境負荷評価の対象機器の指定と、当該機器の仕様データを入力する構成でもよい。
【0021】
一方、原単位DB2には、指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在しない場合には、補間推定部5の補間推定処理に移行する(ステップS2のNO,S4)。補間推定部5は、原単位DB2に蓄積されている既知の原単位データ、及び推定用DB3に蓄積されている補間推定用データを使用して、入力部1で指定された機器の原単位データの補間推定処理を実行する。出力部6は、補間推定部5により補間推定された原単位データを、例えば表示画面上に表示する(ステップS5)。」
[図:0001400496000003.jpg]
(2) 甲4発明
上記(1)によれば、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
[甲4発明]
環境負荷評価の対象機器の指定を受けて、対象機器の原単位データを出力する自動生成装置であって(【0014】)、
環境負荷評価の対象機器を指定し、当該機器の仕様データ(定格容量、定格出力など)を入力する入力部1(【0019】)と、
原単位DB2を検索し、入力部1から指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在する場合には、当該原単位データを選定する選定部4(【0019】)と、
指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在しない場合に、原単位DB2に蓄積されている既知の原単位データ、及び推定用DB3に蓄積されている補間推定用データを使用して、入力部1で指定された機器の原単位データの補間推定処理を実行する補間推定部5(【0021】)と、
インターネット11を介して、指定の対象機器に対応する原単位データを要求した端末装置などに送信する出力部6(【0020】)と
を備える自動生成装置。
5 甲5について
(1) 甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【0014】
なお、この活動量データ収集手段17における活動量データの収集方法は、以下に説明する二通りの方法がある。一つ目の方法は、通信ネットワークを介して、ガス排出事業者が管理するユーザ端末5に備えられている表示画面に活動量データ入力画面(詳細は後記する)を提示し、この入力画面を通じて活動量データを収集(取得)するものである。二つ目の方法は、ガス排出事業者に計測機器を設置し、この計測機器によって計測された計測データに基づいて自動的にガス排出量を把握する、または、電力会社の送電網を活用することで、自動的に電気等の消費電力量(活動量データ)を収集するものである。なお、この活動量データ収集手段17が特許請求の範囲の請求項に記載した活動量データ入力手段に相当するものである。」
「【0018】
こういった基本的な考え方に則ると共に、この排出量モニタリング手段19は、京都議定書第5条2項及び第3回締約国会議(COP3)決定2におけるIPCCガイドラインに従った以下の排出量の算定式に基づいて、ガス排出量を算出するものである。なお、ここで記載した算定式は、国内および世界でも確立されていないため、この排出量モニタリング手段19は、締約国会議(COP3)決定2以降に国等によって定められた算定式を使用することとする。
(各温室効果ガス排出量)=Σ{(活動量データ)×(排出係数)}・・・(1)」
(2) 甲5記載事項
上記(1)によれば、甲5には次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。
[甲5記載事項]
・活動量データを収集し、温室効果ガス排出量を、収集した活動量データと排出係数とから算出すること(【0014】、【0018】)。
6 甲6について
(1) 甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
「【0040】
より詳しく述べると、以下の通りである。
本実施の形態における温暖化対策支援システムは、活動量、排出係数、単位発熱量、地球温暖化係数、その他の係数のうち少なくとも1つを取得する装置1を備える。
【0041】
ここで、活動量は、当該温室効果ガス排出活動の大きさを表す変数であり、排出係数は、単位活動量当たりの温室効果ガスの排出量を表す係数であり、単位発熱量は、その燃料の単位量当たりの燃焼時の発熱量であり、地球温暖化係数は、当該温室効果ガスの温室効果の割合を二酸化炭素の温室効果に対する比として表した無次元数であり、その他の係数は、温室効果ガス排出量若しくは二酸化炭素換算排出量の算定に当たって必要となる、活動量、排出係数、単位発熱量、地球温暖化係数以外の数である。」
「【0047】
また、参照された温室効果ガス排出量を計算する式を用い、活動量、排出係数、単位発熱量、地球温暖化係数、その他の係数のうち少なくとも1つから温室効果ガス排出量を演算により算定する装置5を備える。参照された温室効果ガス排出量を計算する式を用い算定するものであれば、特に限定されない。」
(2) 甲6記載事項
上記(1)によれば、甲6には次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されている。
[甲6記載事項]
・活動量、排出係数等を取得し、温室効果ガス排出量を計算する式を用いて、取得されたデータから、温室効果ガス排出量を演算により算定すること(【0040】、【0047】)。
第5 当審の判断
1 本件特許発明1について
(1) 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「CO2排出量」及び「企業」はそれぞれ、本件特許発明1の「温室効果ガス(GHG)排出量」及び「導出対象」に相当する。
そして、甲1発明は、企業のCO2排出量を算定するにあたって、算定対象の企業の属する業種と、当該企業の物品の購入額との入力を受け付けるものであるから、かかる物品の購入額は、算定対象の企業の物品の購入という活動内容と、当該活動内容の購入額という活動量を示すデータであるといえる。
よって、甲1発明の「CO2排出量」の算定対象の「企業の属する業種と物品の購入額との入力を受け付け」る「受付部151」は、本件特許発明1の「温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを取得する取得部」に相当する。
また、甲1発明の「CO2排出量を算定対象とする算定装置1」は、後述の相違点を除き、本件特許発明1の「GHG排出量導出装置」に相当する。
イ 甲1発明の「CO2排出量の比率(t-CO2/百万円)」は、本件特許発明1の「排出原単位」に相当する。
しかしながら、甲1発明は、企業のサプライチェーンの上流事業者による原材料や部品等の輸送に伴って排出されるGHG排出量であるカテゴリ4におけるCO2排出量を算定するために、入力された企業の属する業種に対応した物流コスト比率、各輸送手段にかかる輸送費、各輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量の比率(t-CO2/百万円)を取得し、各輸送手段にかかる輸送費と、CO2排出量の比率(t-CO2/百万円)とから、この業種における輸送費に対するCO2排出量の比率(輸送費の排出係数)を算出し、入力された物品の購入額と、取得された物流コスト比率と、算出された輸送費の排出係数とを乗算して、物品の購入額に対応するCO2排出量を算定するものであるから、甲1発明の「各輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量の比率(t-CO2/百万円)」は、算定対象(導出対象)の企業の上流事業者の輸送に関する排出原単位ではあるものの、算定対象(導出対象)の企業の物品の購入に対応する排出原単位ではない。
してみると、甲1発明は、導出対象である企業の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位」をデータとして有するものではないから、本件特許発明1の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマット」を有するものでもない。
よって、甲1発明は、「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する選択部」を有するものではない。
そして、甲1発明は複数の「排出原単位フォーマット」を有するものでもなく「第1排出原単位フォーマット」を選択できるものでもないことから、甲1発明は、「前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する決定部」を有するものでもない。
また、本件特許発明1の「前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部」についても、「前記少なくとも1つの排出原単位」は、「決定部」で「決定」された「少なくとも1つの排出原単位」である。そして、上記アの相当関係によれば、甲1発明の「入力された」「企業の属する業種」と「物品の購入額に対応するCO2排出量」は、本件特許発明1の「第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量」に相当することから、甲1発明の「各輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量の比率(t-CO2/百万円)」に基づいて、「入力された」「企業の属する業種」と「物品の購入額に対応するCO2排出量を算定する」「算定部154」と、本件特許発明1の「前記少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部」とは、「少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部」である点で共通するものの、甲1発明は「少なくとも1つの排出原単位」が「決定部」で「決定」されたものではない点で相違している。
ウ 甲1発明の「企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味するScope2排出量」は、本件特許発明1の「事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量」に相当する。
よって、甲1発明の「企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味するScope2排出量以外の、企業のサプライチェーンで発生する間接排出量を意味するScope3排出量」は、本件特許発明1の「事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量」に相当する。
したがって、甲1発明の「算定対象」である「CO2排出量」が、「企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味するScope2排出量以外の、企業のサプライチェーンで発生する間接排出量を意味するScope3排出量」の「カテゴリ4におけるCO2排出量」であることは、本件特許発明1の「前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含」むことに相当する。
エ 上記イの相当関係によれば、甲1発明は「排出原単位フォーマット」を有するものではないから、甲1発明は、本件特許発明1の「前記排出原単位フォーマットは、活動内容が前記他の間接排出量の対象に該当する場合、前記他の間接排出量の活動内容に応じた少なくとも1つのカテゴリに対応する少なくとも1つの排出原単位を示し」との特定事項を有するものではない。
また、甲1発明は複数の「排出原単位フォーマット」を有するものではなく、「第1排出原単位フォーマット」を選択できるものでもないことから、甲1発明は、本件特許発明1の「前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容に対応する、前記他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを、前記第1活動量データの種別に対応する他の既存の排出原単位フォーマットから、抽出する抽出部」及び「前記少なくとも1つのセットの中から、前記決定できない活動内容についてのセットをユーザから受け付ける受付部」を有するものでもない。
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
温室効果ガス(GHG)排出量の導出対象である活動内容及び活動内容ごとの活動量を示す第1活動量データを取得する取得部と、
少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する導出部と、
を備えるGHG排出量導出装置であって、
前記GHG排出量は、事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出されたGHG排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出されたGHG排出量を示す他の間接排出量を少なくとも含む、
GHG排出量導出装置。」
[相違点1]
本件特許発明1は、「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットの中から、前記第1活動量データの種別に対応する第1排出原単位フォーマットを選択する選択部」を備えるのに対し、甲1発明は、算定対象の企業の上流事業者の輸送に関する排出原単位である各輸送手段に対応する単位輸送費あたりのCO2排出量の比率(t-CO2/百万円)をデータとして有するものではあるものの、導出対象である企業の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマット」を有するものではなく、かかる発明特定事項を備えていない点。
[相違点2]
相違点1に派生して、本件特許発明1は「前記第1排出原単位フォーマットに基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとに、少なくとも1つの排出原単位を決定する決定部」を備えるのに対し、甲1発明は、かかる発明特定事項を備えていない点。
[相違点3]
相違点2に派生して、本件特許発明1は「決定部」により「決定」された「少なくとも1つの排出原単位に基づいて、前記第1活動量データに示される活動内容ごとの活動量のそれぞれについて、GHG排出量を導出する」ものであるのに対し、甲1発明の「少なくとも1つの排出原単位」は、「決定部」により「決定」されたものではない点。
[相違点4]
相違点1に派生して、本件特許発明1において、「前記排出原単位フォーマットは、活動内容が前記他の間接排出量の対象に該当する場合、前記他の間接排出量の活動内容に応じた少なくとも1つのカテゴリに対応する少なくとも1つの排出原単位を示」すものであるのに対し、甲1発明は、かかる発明特定事項を備えていない点。
[相違点5]
相違点1、2に派生して、本件特許発明1は、「前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容に対応する、前記他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを、前記第1活動量データの種別に対応する他の既存の排出原単位フォーマットから、抽出する抽出部」及び「前記少なくとも1つのセットの中から、前記決定できない活動内容についてのセットをユーザから受け付ける受付部」を備えるものであるのに対し、甲1発明は、かかる発明特定事項を備えていない点。
(2) 判断
ア 相違点1について
上記第4の4(2)で述べたとおり、甲4には、以下の甲4発明が記載されている。
「環境負荷評価の対象機器の指定を受けて、対象機器の原単位データを出力する自動生成装置であって、
環境負荷評価の対象機器を指定し、当該機器の仕様データ(定格容量、定格出力など)を入力する入力部1と、
原単位DB2を検索し、入力部1から指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在する場合には、当該原単位データを選定する選定部4と、
指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在しない場合に、原単位DB2に蓄積されている既知の原単位データ、及び推定用DB3に蓄積されている補間推定用データを使用して、入力部1で指定された機器の原単位データの補間推定処理を実行する補間推定部5と、
インターネット11を介して、指定の対象機器に対応する原単位データを要求した端末装置などに送信する出力部6と
を備える自動生成装置。」
しかしながら、甲4発明は、「原単位DB2を検索し、入力部1から指定された対象機器の仕様データに対応する原単位データが存在する場合には、当該原単位データを選定する選定部4」とあるように、「環境負荷評価」の「対象機器」の指定に応じて、「対象機器」の「仕様データ」に対応する「原単位データ」を出力するものに過ぎないから、かかる「原単位データ」には、「対象機器」の「仕様データ」が関連付けられているとはいえるものの、導出対象である「対象機器」の「活動内容」が関連付けられているものではない。
よって、甲4発明は、本件特許発明1の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位」との事項を有するものでもなく、「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマット」を有するものでもない。
したがって、甲4発明は、相違点1に係る本件特許発明1の構成を有するものではない。
そして、甲2記載事項、甲3記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項(上記第4の2(2)、3(2)、5(2)及び6(2))について検討しても、相違点1に係る本件特許発明1の構成を開示するものではない。
また、甲1~甲6のいずれにも、当該構成を示唆する記載はなく、さらに、当該構成が、本件特許出願時に周知技術あるいは周知慣用技術であったとの合理的な理由も証拠もない。
してみると、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものはいえない。
イ 相違点2、4、5について
上記アのとおり、甲1~甲6のいずれにも、本件特許発明1の、導出対象である企業の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマット」は記載も示唆もされておらず、当該構成が、本件特許出願時に周知技術あるいは周知慣用技術であったともいえないから、当該フォーマットを含む相違点2、4、5に係る本件特許発明1の構成を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 上記ア、イのとおり、甲1発明に、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術を組み合わせることができたとしても、本件特許発明1の構成には至らないから、[相違点3]について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ そして、本件特許発明1は、活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマットを有することで、「一旦、排出原単位フォーマットが作成されると、以降は、別のユーザであっても、ユーザの業種及びアプリケーション種別が以前に排出原単位フォーマットを作成したユーザのものと同一であれば、作成済みの排出原単位フォーマットからスコープ、カテゴリ及び排出原単位が提示される。これにより、ユーザが逐一手動で活動内容に対し、スコープ、カテゴリ及び排出原単位を割り当てる手間が省ける。」(本件特許明細書の【0037】参照。)との作用効果を奏するものである。
(3)甲4発明を主引用発明とした検討
本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、上記(2)アで述べたとおり、甲4発明は、導出対象である企業の「活動量データの種別ごとに予め定められた活動内容ごとの排出原単位を示す複数の排出原単位フォーマット」を有しないから、両者は少なくとも上記相違点1、2、4、5で相違する。
そして、上記(1)イ、(2)イで述べたとおり、甲1発明は、相違点1、2、4、5に係る本件特許発明1の構成を有するものではなく、上記(2)ア、イで述べたとおり、甲2記載事項、甲3記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項は、相違点1、2、4、5に係る本件特許発明1の構成を開示するものではないから、本件特許発明1は、甲4発明、甲1発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件特許発明2~7について
本件特許発明2~7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、甲1発明または甲4発明と対比すると、少なくとも、上記1(1)の[相違点]を有するところ、本件特許発明1が上記1(2)、(3)のとおり、甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~7も甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明8について
本件特許発明1と本件特許発明8を比較すると、本件特許発明1の「GHG排出量導出装置」は、「前記第1活動量データに示される活動内容のうち、前記決定部が少なくとも1つの排出原単位を前記第1排出原単位フォーマットに基づいて決定できない活動内容に対応する、前記他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを、前記第1活動量データの種別に対応する他の既存の排出原単位フォーマットから、抽出する」ものであるのに対し、本件特許発明8の「GHG排出量導出装置」は、「新たな活動量データの種別に対応する既存の排出原単位フォーマットから、前記新たな活動量データに示されるそれぞれの活動内容に対応する、他の間接排出量に関する少なくとも1つのカテゴリ及び少なくとも1つの排出原単位の少なくとも1つのセットを抽出する」ものである点で相違するが、本件特許発明8も上記1(1)の[相違点1]の構成を含むものである。
したがって、本件特許発明8と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも上記1(1)の[相違点1]で相違する。
そうすると、上記1(2)と同様の理由により、本件特許発明8は、甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明8の発明特定事項を全て含む発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記3の[相違点]を有するところ、本件特許発明8が上記3のとおり、甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明9も甲1発明、甲4発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本件特許発明10について
本件特許発明10は、「GHG排出量導出方法」の発明であるところ、本件特許発明1の「GHG排出量導出装置」を方法の発明で特定したものであり、カテゴリが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件特許発明10は、甲1から認定される方法の発明または甲4から認定される方法の発明と対比すると、上記1(1)の[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記1(2)、(3)と同様、本件特許発明10は、カテゴリに沿って、甲1から認定される発明、甲4から認定される発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 本件特許発明11について
本件特許発明11は、「GHG排出量導出方法」の発明であるところ、本件特許発明8の「GHG排出量導出装置」を方法の発明で特定したものであり、カテゴリが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件特許発明11は、甲1から認定される方法の発明と対比すると、上記3の[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記3と同様、本件特許発明11は、カテゴリに沿って、甲1から認定される発明、甲4から認定される発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
7 本件特許発明12について
本件特許発明12は、「プログラム」の発明であるところ、本件特許発明1~9の「GHG排出量導出装置」をプログラムの発明で特定したものであり、カテゴリが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件特許発明12は、甲1から認定されるプログラムの発明または甲4から認定されるプログラムの発明と対比すると、上記1~4の[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、上記1~4と同様、本件特許発明12は、カテゴリに沿って、甲1から認定される発明、甲4から認定される発明、甲2、3、5及び6記載事項、並びに、周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
8 小括
以上によれば、本件特許発明1~12についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、特許第7132580号の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許第7132580号の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700253