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特許異議申立

2022-701245

脱炭素社会の構築に向けた導出装置、導出方法、及びプログラム

審判番号
2022-701245
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-127722
登録番号
7084584
請求日
2022年12月15日
審決日
2023年04月25日
公報発行日
2023年06月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】booost technologies株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
  • 【異議申立人】赤木 太郎
審判長/審判官
  • 審判長 渡邊 聡
  • 審判官 佐藤 智康
  • 審判官 後藤 亮治
分類
P1651.113-Y (G06Q) / P1651.121-Y (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7084584号発明「脱炭素社会の構築に向けた導出装置、導出方法、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7084584号の請求項に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7084584号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和3年8月3日に出願され、令和4年6月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年12月15日に特許異議申立人 赤木太郎 は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7084584号の請求項1~5に係る発明(以下「本件特許発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出装置であって、 事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する第1特定部と、 カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する第2特定部と、 前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する第3特定部と、 特定された前記他の事業者に向けて、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する出力部と、 前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者から受け付けられた値に基づいて、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する導出部と を備える、導出装置。 【請求項2】 前記出力部は、前記要求メッセージに応じて、特定された前記他の事業者から前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を受け付けなかった場合、特定された前記他の事業者から前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を受け付けなかったことを示す報告メッセージを前記主事業者に向けて出力する、請求項1に記載の導出装置。 【請求項3】 他の事業者から受け付けられた少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を記憶部に登録する登録部をさらに備え、 特定された前記他の事業者について前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値が前記記憶部にすでに登録されている場合、前記出力部は、前記要求メッセージを出力せず、前記導出部は、前記記憶部に登録されている値に基づいて、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する、請求項1または2に記載の導出装置。 【請求項4】 事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出方法であって、 第1特定部が、事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、記憶部に記憶された第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する段階と、 第2特定部が、カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた 、記憶部に記憶された第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する段階と、 第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階と、 出力部が、特定された前記他の事業者に向けて、ネットワークを介して、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する段階と、 前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者からネットワークを介して受け付けられた値に基づいて、導出部が、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する段階と を備える、導出方法。 【請求項5】 事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、 事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する第1特定部と、 カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する第2特定部と、 前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する第3特定部と、 特定された前記他の事業者に向けて、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する出力部と、 前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者から受け付けられた値に基づいて、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する導出部と として、前記コンピュータを機能させるためのプログラム。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人 赤木太郎 が、請求項1~5に係る特許に対して申し立てた「申立理由」、「証拠方法(甲号証)」及び「主張の概要」は以下のとおりである。 1 申立理由 (1)本件特許発明1、4、5は、特許法第29条第1項第3号に規定される要件を満たしていないため、請求項1、4、5に係る特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。(以下「申立理由1」という。) (2)本件特許発明1~5は、特許法第29条第2項に規定される要件を満たしていないため、請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号により取り消されるべきものである。(以下「申立理由2」という。) 2 証拠方法(甲号証) 甲第1号証:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.2) 甲第2号証:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(小売業)Ver1.0 甲第3号証:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(物流業) 甲第4号証:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(建設業(プレハブ住宅)) 甲第5号証:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(セメント製造業)Ver.1.0 甲第6号証:サプライチェーン排出量算定の考え方 甲第7号証:特開2016-126372号公報 3 主張の概要 (1)本件特許発明1と甲1発明との間に実質的な相違点は認められない。したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明である。 仮に相違点が認められるとしても、甲1発明と、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項とを組み合わせることにより、本件特許発明1は容易に想到することができる。 よって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の取消理由(同法第113条第2号)を有する。(特許異議申立書第25ページ) (2)本件特許発明2は、特許法第29条第2項の取消理由(同法第113条第2号)を有する。(特許異議申立書第26ページ) (3)本件特許発明3は、特許法第29条第2項の取消理由(同法第113条第2号)を有する。(特許異議申立書第26ページ) (4)本件特許発明4は、本件特許発明1の発明のカテゴリを方法にしたものである。 したがって、上述した本件特許発明1と同様に、本件特許発明4と甲1発明との間に実質的な相違点は認められない。したがって、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明である。 仮に相違点が認められるとしても、甲1発明と、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項とを組み合わせることにより、本件特許発明4は容易に想到することができる。 よって、本件特許発明4は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の取消理由(同法第113条第2号)を有する。(特許異議申立書第26ページ) (5)本件特許発明5(異議申立書には「本件特許発明4は、・・・」と記載されているが、「本件特許発明4」は「本件特許発明5」の誤記であることは明らかである。)は、本件特許発明1の発明のカテゴリをプログラムにしたものである。 したがって、上述した本件特許発明1と同様に、本件特許発明5と甲1発明との間に実質的な相違点は認められない。したがって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明である。 仮に相違点が認められるとしても、甲1発明と、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項とを組み合わせることにより、本件特許発明5は容易に想到することができる。 よって、本件特許発明5は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の取消理由(同法第113条第2号)を有する。(特許異議申立書第27ページ) 第4 甲号証の記載 特許異議申立の証拠方法として提出された甲第1号証から甲第7号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。(なお、下線は合議体が付与した。) 1 甲第1号証(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.2)) (1)「2.本文書の位置付けと使い方 本文書は我が国における既存の取組み状況と国際動向を踏まえ、我が国の事業者がサプライチェーン排出量を算定する際の考え方を示すものです。スコープ3基準等との整合を図るとともに [図:0001398289000001.jpg] 我が国の実態を踏まえて策定した我が国のガイドラインです。 本文書は全業種共通の算定方法を示しており、本文書単独で活用してサプライチェーン排出量を算定していただくこともできます。 また、業種の固有の状況を踏まえ、一部業種については「業種別解説」を作成しています。対象業種に該当する場合には、本文書と業種別解説とをあわせて適用して算定を行ってください。」(I-5) (2)「3.用語の定義 (1)事業者 民間企業、公的機関等事業活動を行う主体で、排出量を算定する主体となる組織。なお、以下で示す「組織」は事業者そのもの、事業者の構成要素及び事業者に含まれない組織を含む。 (2)サプライチェーン排出量 事業者のサプライチェーンにおける事業活動に伴って発生する温室効果ガス排出量全体を差し、直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)及びその他の間接排出量(Scope3排出量)から構成される。 (3)直接排出量(Scope1排出量) 組織境界における温室効果ガスの排出源からの直接的な大気中の温室効果ガスの排出量。JIS Q 14064-1における「直接的な温室効果ガス(GHG)の排出量」、スコープ3基準における「Scope1 emissions」を指す。 (4)エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量) 他者から供給を受けた電気、熱の利用により発生した電気、熱の生成段階でのCO2排出量。JIS Q 14064-1における「エネルギー起源の間接的な温室効果ガス(GHG)の排出量」、スコープ3 基準における「Scope2 emissions」のうちCO2排出量のみに限定した排出量であり、スコープ3基準には含まない発電所での自家消費及び送配電ロスも含む。 (5)その他の間接排出量(Scope3排出量) 直接排出量、エネルギー起源間接排出量以外の事業者のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量。JIS Q 14064-1における「その他の間接的な温室効果ガス(GHG)の排出量」、スコープ3基準における「Scope3 emissions」を指す。 ※エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)の定義の差異に基づく差異が存在する。」(I-6) (3)「4.サプライチェーン排出量算定の概要 4.1排出量算定の概要 サプライチェーン排出量の把握・管理を効果的に行うためには、自社が他の事業者と連携することによって、サプライチェーンの各段階における実際の排出量データを収集し、積み上げて算定することが望まれます。しかしながら、現実的には排出量データの取得が容易ではない段階が存在する可能性があります。このため、実際の排出量データの取得が困難な場合に事業者が比較的把握しやすいデータから算定できるよう、サプライチェーンを自社と、上流・下流に区分し、表4-1に示すとおり区分ごとに算定方法の考え方をまとめました。本ガイドラインにおける「上流」、「下流」の定義は以下のとおりです。 <「上流」・「下流」の定義> ・上流 原則として購入した製品やサービスに関する活動 ・下流 原則として販売した製品やサービスに関する活動 [図:0001398289000002.jpg] また、算定対象範囲の広いサプライチェーン排出量の把握に当たっては、継続的な排出量の管理や透明性の高い情報開示を可能とするために、体系的にサプライチェーンの段階ごとの排出量を把握することが重要です。このため、本ガイドラインではサプライチェーンのうち、自社以外の上流・下流の区分を15カテゴリに区分し(表2.1-2)(当審注:「(表4-2)」の誤記であると認める。)、カテゴリごとに具体的な算定方法を示しています。ここで、15のカテゴリ区分は原則としてスコープ3基準におけるカテゴリ区分と同じ区分です。 ・・・途中省略・・・ 本ガイドラインにおけるサプライチェーン排出量は、これらのScope1、Scope2及びScope3の排出量を全て含むものになります。 【サプライチェーン排出量】=【Scope1排出量】+【Scope2排出量】+【Scope3排出量】」(I-8、I-9) (4)「 [図:0001398289000003.jpg] 」(I-10) (5)「4.2算定・報告・公表制度との関係 我が国においては、現在、温対法に基づく算定・報告・公表制度が導入されており、制度対象となる事業者(以下「特定排出者」といいます。)は、毎年、算定対象となっている排出活動に伴う排出量を算定し、国へ報告しています。特定排出者が算定すべき排出量の範囲は、自社の活動による排出に加え、荷主に係る間接的な排出等も含まれており、現行の算定・報告・公表制度においても、一部、自社の排出量以外の排出量の報告が行われています。 ここで、算定・報告・公表制度の排出量把握の範囲とサプライチェーン排出量のカテゴリ区分がどのような関係になっているかについて、算定・報告・公表制度の対象事業者別に整理します。 ・・・途中省略・・・ 例として、自社が製造業者である場合の、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係を図4-2に示します。 [図:0001398289000004.jpg] 」(I-11、12) (6)「5.2算定対象範囲 本ガイドラインにおけるサプライチェーン排出量の算定対象範囲は、事業者が提供する製品・サービスに関する排出です。カテゴリ毎にサプライチェーン排出量を算定するに当たり、算定対象とする範囲は、原則として表5-1に示す範囲です。 また、自社として算定すべき組織境界は、原則として、自社(法人等)及び連結対象事業者等自社が所有又は支配する全ての事業活動の範囲とします。 [図:0001398289000005.jpg] 」(I-14) (7)「5.3 カテゴリ抽出の考え方等 サプライチェーン排出量は、表2.1-2(当審注:「表4-2」の誤記と認める。)に示すカテゴリごとに算定を行います。全てのカテゴリについて排出量を算定することが望まれますが、算定の目的や排出量全体に対する影響度、データ収集等の算定の負荷等を踏まえて、算定するカテゴリを抽出して算定することも考えられます。具体的に、一部のカテゴリを算定対象範囲から除外する際の基準としては、以下が挙げられます。 ・該当する活動がないもの ・排出量が小さくサプライチェーン排出量全体に与える影響が小さいもの ・事業者が排出や排出削減に影響力を及ぼすことが難しいもの ・排出量の算定に必要なデータの収集等が困難なもの ・自ら設定した排出量算定の目的から見て不要なもの」(I-16) (8)「5.4算定方法概要 事業者がサプライチェーン排出量を把握する方法としては、主に以下の2通りの方法があります。 <算定方法> (1)関係する取引先から排出量の提供を受ける方法 (2)「排出量=活動量*排出原単位」という算定式を用いて算定する方法」(I-17) (9)ア 上記(5)で摘記したように、「算定・報告・公表制度の排出量把握の範囲とサプライチェーン排出量のカテゴリ区分がどのような関係になっているか」は、「算定・報告・公表制度の対象事業者別に整理」されるものであり、その例として、図4-2には、「自社が製造業者である場合の、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係」が記載されており、さらに、上記(4)で摘記した「表4-2 カテゴリ区分」の記載を併せみると、前記「図4-2」中で示されている「1.」~「15.」で示されているものは、スコープ3として規定されているカテゴリを意味するものであるから、甲第1号証には、「算定・報告・公表制度の排出量把握の範囲とサプライチェーン排出量のカテゴリ区分がどのような関係になっているかは、算定・報告・公表制度の対象事業者別に整理されるものであり、対象事業者(自社)が製造業者である場合、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)によって、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する対象となるカテゴリとしてカテゴリ1~15が特定される。」との事項が記載されているといえる。 イ 上記(3)で摘記したように、「サプライチェーン」には、自社と、他の事業者が含まれており、「本ガイドラインではサプライチェーンのうち、自社以外の上流・下流の区分を15カテゴリに区分し(表4-2)、カテゴリごとに具体的な算定方法を示して」あること、及び、上記(6)で摘記したように、「表5-1 サプライチェーン排出量の算定対象範囲」には、スコープ3として算定すべきカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者、加工者、使用者、加盟者などが関連付けられた情報が示されており、この情報はスコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象の範囲に含まれる事業者等を特定するために用いられるものであることを踏まえると、甲第1号証には、「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)には、算定する対象となるカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者等が関連づけられており、当該表に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象範囲に含まれる事業者等が特定される。」との事項が記載されているといえる。 (10)甲第1号証に記載されている発明 上記(1)から(9)によると甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。 「事業者がサプライチェーン排出量を算定する全業種共通の算定方法であって、 事業者とは、民間企業、公的機関等事業活動を行う主体で、排出量を算定する主体となる組織のことであり、 サプライチェーン排出量とは、事業者のサプライチェーンにおける事業活動に伴って発生する温室効果ガス排出量全体を差し、直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)及びその他の間接排出量(Scope3排出量)から構成され(【サプライチェーン排出量】=【Scope1排出量】+【Scope2排出量】+【Scope3排出量】)、 直接排出量(Scope1排出量)は、組織境界における温室効果ガスの排出源からの直接的な大気中の温室効果ガスの排出量のことであり、 エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)は、他者から供給を受けた電気、熱の利用により発生した電気、熱の生成段階でのCO2排出量のことであり、 Scope3排出量とは、直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)以外の事業者のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量のことであり、 サプライチェーン排出量は、表4-2に示すカテゴリごとに算定を行い、算定の目的や排出量全体に対する影響度、データ収集等の算定の負荷等を踏まえて、算定するカテゴリを抽出して算定し、 排出量把握の範囲とサプライチェーン排出量のカテゴリ区分がどのような関係になっているかは、算定・報告・公表制度の対象事業者別に整理されており、 例として、対象事業者(自社)が製造業者である場合、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)によって、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する対象となるカテゴリとしてカテゴリ1~15が特定され、 サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)には、算定する対象となるカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者等が関連づけられており、当該表に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象範囲に含まれる事業者等が特定され、 事業者がサプライチェーン排出量を把握するため、関係する取引先から排出量の提供を受ける、 サプライチェーン排出量の算定方法。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲第2号証(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(小売業)Ver1.0) (1)「2.1適用範囲 本文書は小売業として行う事業活動を対象として解説します。ここ小売業とは日本標準産業分類の定義によれば、以下の通りです。 ・・・途中省略・・・ 2.2活用方法 基本ガイドラインと本文書とをあわせてご確認いただき、サプライチェーン排出量を算定してください。本解説の対象範囲は表2.2-1のとおりです。顧客の移動は、カテゴリとしては輸送、配送(下流)の一部に含まれますが、小売業として特にサプライチェーン排出量算定において重要で解説を要する項目であるため、本文書においては独立した項目としています。カテゴリについての解説は4.2を参照ください。また、小売業の業態により内容が異なる場合には、業態ごとの解説も示しておりますので、必要に応じて最も近い業態の該当箇所を参照しながら活用してください。 [図:0001398289000006.jpg] 」(I-4、5) 3 甲第3号証(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(物流業)) (1)「2.1適用範囲 本文書は物流業として行う事業活動を対象として解説します。ここで物流業とは日本標準産業分類でいう運輸業のうち貨物に関する事業であり、以下のものを含みます。 ・鉄道業(うち貨物の運送業) ・道路貨物運送業 ・水運業(うち貨物の運送業) ・航空運送業 ・倉庫業 ・貨物運送取扱業 ・港湾運送業 ・・・途中省略・・・ 2.2活用方法 基本ガイドラインと本文書とをあわせてご確認いただき、サプライチェーン排出量を算定してください。本解説の対象範囲は表2.2-1のとおりです。カテゴリについての解説は4.2を参照ください。 [図:0001398289000007.jpg] 」(I-5、6) 4 甲第4号証(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(建設業(プレハブ住宅) )) (1)「2.1適用範囲 本文書は建設業(プレハプ住宅)として行う事業活動を対象として解説します。ここで建設業(プレハプ住宅)には、以下のものを含みます。 ・プレハブ住宅の建設事業 ・プレハプ住宅の建設に直接要する部品の生産および販売事業 ・・・途中省略・・・ 2.2活用方法 基本ガイドラインと本文書とをあわせてご確認いただき、サプライチェーン排出量の算定の際のご参考としてください。本文書の対象範囲は表2.2-1のとおりです。カテゴリについての解説は4.2を参照ください。 [図:0001398289000008.jpg] 」(I-4、5) 5 甲第5号証(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(セメント製造業)Ver.1.0) (1)「2.1組織境界 自社として算定すべき組織境界は、原則として、自社(法人等)及び連結対象事業者等自社が所有又は支配する全ての事業活動(セメント製造業以外の事業活動も含む)の範囲とします。 ただし、本解説はセメント製造業として行う事業活動のみを対象としています。ここでセメント製造業とは日本標準産業分類の定義によれば、以下の通りです。 セメント製造業とは、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどを製造する事業所をいう。 (出典)日本標準産業分類(平成19年11月改定) ・・・途中省略・・・ 日本のセメント産業は一般的に、下流側に関する事業者が多岐にわたるため、データの収集が困難です。従って本解説で推奨する算定対象範囲は以下のとおりとします。 セメント産業における調査範囲は、原則、原料採掘~セメントの出荷(一次輸送を含む)とします。ただし、生コンクリート製造会社を連結対象としているセメント会社は、その範囲も含めてください。なお、算定対象を開示する場合は、明確に算定範囲を示してください。 また、自社だけでなく、上流から下流までの全体の排出量を把握したいというニーズも考えられることから、下流側の加工、使用等に関しても本解説の対象範囲として含めています。 [図:0001398289000009.jpg] 」(I-3、5) 6 甲第6号証(サプライチェーン排出量算定の考え方) (1)「他事業者との連携による削減 排出量算定のための情報交換がきっかけとなり、サプライチェーン上の他事業者と連携した削減策を共同で考案し取り組むことができます。」(1頁) (2)「取引先企業からのサプライチェーン排出量調査票の回答がきっかけとなり連携深化 D社の取引先企業からサプライチェーン排出量の調査票が届いた。取引先にサプライチェーン排出量削減のニーズがあることが分かったD社は、調査票回答にあわせてD社の独自技術による削減策やD社と取引先企業の連携による削減策を提案。」(4頁) 7 甲第7号証(特開2016-126372号公報) (1)「【0013】 [算定対象] まず、図1および図2を参照して、本実施形態の算定対象について説明する。図1に示すように、スコープ3基準では、企業(報告事業者)のGHG排出量が3つのスコープ(Scope)に分類されている。すなわち、前述したように、1つ目のScope1排出量とは、企業が所有あるいは制御している発生源からの直接排出量を意味する。例えば、固定燃焼、移動燃焼、プロセスおよび漏出等によるGHG排出量が例示される。2つ目のScope2排出量とは、企業が購入して消費するエネルギーの生成で発生する間接排出量を意味する。例えば、電力の生産、蒸気の生産等において発生するHG排出量が例示される。3つ目のScope3排出量とは、企業のサプライチェーンで発生するScope2排出量以外の間接排出量を意味する。言い換えれば、Scope3排出量は、企業のサプライチェーンの上流および下流において発生するGHG排出量を意味する。例えば、上流事業者による原材料の採掘、輸送、下流事業者による製品の輸送、小売等に伴って発生するGHG排出量が例示される。 【0014】 このScope3排出量は、図2に示すように、その算定対象に応じて16のカテゴリに分類されている。例えば、カテゴリ4は、上流事業者による原材料や部品等の輸送に伴って排出されるGHG排出量(環境負荷量)を算定対象とする。また、カテゴリ9は、下流事業者による製品の輸送や保管等に伴って排出されるGHG排出量(環境負荷量)を算定対象とする。」 第5 当審の判断 上記「第4 甲号証の記載」において認定した甲1発明は「方法」の発明であることを踏まえ、最初に本件特許発明4について検討する。 1 本件特許発明4について (1)対比 本件特許発明4と甲1発明とを対比する。 ア 「事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出方法であって、」について 甲1発明の「組織境界における温室効果ガスの排出源からの直接的な大気中の温室効果ガスの排出量」である「直接排出量(Scope1排出量)」は、本件特許発明4の「事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量」に相当し、甲1発明の「他者から供給を受けた電気、熱の利用により発生した電気、熱の生成段階でのCO2排出量」である「エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)」は、本件特許発明4の「事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量」に相当する。 そして、甲1発明の「直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)以外の事業者のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量」である「Scope3排出量」は、本件特許発明4の「事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量」に相当する。 ここで、甲1発明は、事業者のサプライチェーンにおける事業活動に伴って発生する温室効果ガス排出量全体である「サプライチェーン排出量」を算定するものであり、「サプライチェーン排出量とは、事業者のサプライチェーンにおける事業活動に伴って発生する温室効果ガス排出量全体を差し、直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)及びその他の間接排出量(Scope3排出量)から構成され(【サプライチェーン排出量】=【Scope1排出量】+【Scope2排出量】+【Scope3排出量】)」るものであることから、「サプライチェーン排出量」を算定するためには、その一部である「スコープ3排出量(Scope3排出量)」を把握する必要があることは明らかである。そして、甲1発明において、「スコープ3排出量(Scope3排出量)」は、「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)」に関係付けられた「算定する対象となるカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者等」に基づいて、「スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象範囲に含まれる事業者等」を特定し、特定された「関係する取引先」から提供を受けた排出量に基づいて算定すればよいものである。 してみると、甲1発明の「事業者がサプライチェーン排出量を算定する全業種共通の算定方法」が含む「直接排出量(Scope1排出量)、エネルギー起源間接排出量(Scope2排出量)以外の事業者のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量」である「Scope3排出量」を関係する取引先から提供を受けた排出量に基づいて算定する方法は、後述する相違点は別として、本件特許発明4と甲1発明は、「事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出方法」に相当する。 イ 「第1特定部が、事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、記憶部に記憶された第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する段階と、」について 甲1発明において、「排出量把握の範囲とサプライチェーン排出量のカテゴリ区分がどのような関係になっているかは、算定・報告・公表制度の対象事業者別に整理されて」いるものであり、甲1発明の「対象事業者(自社)が製造業者である場合」との事項は、「対象事業者(自社)」の「業種」が「製造業」であることを示しており、そして、甲1発明の「サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)」は、「対象事業者(自社)が製造業者である場合、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する対象となるカテゴリとしてカテゴリ1~15が特定されていること」を示しているものである。 そうすると、甲1発明の「サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)」は、本件特許発明4の「事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、第1関連情報」に相当する。 してみると、本件特許発明4と甲1発明は、「事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する段階」を備えているという点において共通している。 一方、甲1発明においては、「事業者(自社)が製造業者である場合、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)によって、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する対象となるカテゴリとしてカテゴリ1~15が特定され、」との事項を実行する動作主体(本件特許発明4の「第1特定部」)が特定されていない点、及び、甲1発明の「サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)」が本件特許発明4のように「記憶部に記憶され」ている旨特定されていない点、で本件特許発明4と甲1発明とは相違している。 ウ 「第2特定部が、カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた 、記憶部に記憶された第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する段階と、」について 本件特許発明4の「カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた」「第2関連情報」の具体的態様は、令和4年6月15日に発行された特許第7084584号公報の【図3】で示されるものである。 他方、甲1発明の「算定する対象となるカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者等が関連づけられており、当該表に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象範囲に含まれる事業者等が特定され」る「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)」の「組織的範囲」の箇所には、同様の具体的態様が示されている。 よって、甲1発明の「算定する対象となるカテゴリと当該カテゴリに含まれる事業者等が関連づけられており、当該表に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象範囲に含まれる事業者等が特定され」る「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)」は、本件特許発明4の「カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた、第2関連情報」に相当する。 そして、甲1発明においては、「当該表(サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1))に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象事業者等が特定」されるのであるから、本件特許発明4と甲1発明は、「カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた、第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する段階」を備えているという点において共通している。 一方、甲1発明においては、「当該表(サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1))に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象事業者等が特定され、」との事項を実行する動作主体(本件特許発明4の「第2特定部」)が特定されていない点、及び、甲1発明の「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)」が本件特許発明4のように「記憶部に記憶され」ている旨特定されていない点、で本件特許発明4と甲1発明とは相違している。 エ 「第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階と、」について 甲1発明には、本件特許発明4の「第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階と、」に相当する事項は特定されておらず、また、甲第1号証にも前記事項を示唆する記載はないから、本件特許発明4と甲1発明は、上記事項の有無という点で相違している。 オ 「出力部が、特定された前記他の事業者に向けて、ネットワークを介して、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する段階と、」について 甲1発明には、本件特許発明4の「出力部が、特定された前記他の事業者に向けて、ネットワークを介して、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する段階と、」に相当する事項は特定されておらず、また、甲第1号証にも前記事項を示唆する記載はないから、本件特許発明4と甲1発明は、上記事項の有無という点で相違している。 カ 「前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者からネットワークを介して受け付けられた値に基づいて、導出部が、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する段階と」について 甲1発明の「事業者がサプライチェーン排出量を把握するため、関係する取引先から排出量の提供を受ける」との事項における「排出量」は、本件特許発明4の「受け付けられた値」に相当する。 ここで、甲1発明の「排出量」は、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する際に利用されるものである。 また、甲1発明の「関係する取引先」と本件特許発明4の「前記他の事業者」は、「主事業者の取引先事業者」という点で共通している。 以上を総合すると、本件特許発明4と甲1発明は、「主事業者の取引先事業者から受け付けられた値を利用してスコープ3排出量(Scope3排出量)を導出する段階」という点で共通している。 一方、甲1発明には、「事業者がサプライチェーン排出量を把握するため、関係する取引先から排出量の提供を受ける」に際して、上記オで言及したように、本件特許発明4のように「要求メッセージ」が「他の事業者に向けて」「出力」されるものではないから、「前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者からネットワークを介して」との事項を含むものではなく、「導出部が、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する」との事項は特定されていない点で本件特許発明4とは相違している。 上記「ア」~「カ」で対比した事項を踏まえると、本件特許発明4と甲1発明は、 「事業者より直接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す直接排出量、及び事業者がエネルギーを購入することで間接的に排出された温室効果ガスの排出量を示す間接排出量に含まれない事業者の活動により排出された温室効果ガスの排出量を示す他の間接排出量を導出する導出方法であって、 事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する段階と、 カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた 、第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する段階と、 主事業者の取引先事業者から受け付けられた値を利用してスコープ3排出量(Scope3排出量)を導出する段階と を備える、導出方法。」 という点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件特許発明4においては、「第1特定部が、事業者の業種と、事業者の業種において他の間接排出量の導出に必要な少なくとも1つのカテゴリとを関連づけた、記憶部に記憶された第1関連情報を参照して、主事業者の業種に関連付けられた少なくとも1つのカテゴリを特定する段階」の動作主体として「第1特定部」が特定され、そして、上記「第1関連情報」は「記憶部に記憶され」ている旨特定されているのに対し、甲1発明においては、「対象事業者(自社)が製造業者である場合、サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)によって、スコープ3排出量(Scope3排出量)を算出する対象となるカテゴリとしてカテゴリ1~15が特定され、」との事項を実行する動作主体が特定されていない点、及び、甲1発明の「サプライチェーン排出量と算定・報告・公表制度における算定範囲との関係(図4-2)」が「記憶部に記憶され」ている旨特定されていない点。 (相違点2) 本件特許発明4においては、「第2特定部が、カテゴリとカテゴリについて他の間接排出量を導出するために入力すべき項目に関連する業種とを関連づけた 、記憶部に記憶された第2関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種を特定する段階」の動作主体として「第2特定部」が特定され、そして、上記「第2関連情報」は「記憶部に記憶され」ている旨特定されているのに対し、甲1発明においては、「当該表(サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1))に基づいて、スコープ3排出量(Scope3排出量)の算定対象事業者等が特定され、」との事項を実行する動作主体が特定されていない点、及び、甲1発明の「サプライチェーン排出量の算定対象範囲を示す表(表5-1)」が「記憶部に記憶され」ている旨特定されていない点。 (相違点3) 本件特許発明4においては、「第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階」との事項が特定されているのに対し、甲1発明にはかかる事項が特定されていない点。 (相違点4) 本件特許発明4においては、「出力部が、特定された前記他の事業者に向けて、ネットワークを介して、前記少なくとも1つのカテゴリで入力すべき項目の値を提供することを要求する要求メッセージを出力する段階」との事項が特定されているのに対し、甲1発明にはかかる事項が特定されていない点。 (相違点5) 本件特許発明4においては、「前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者からネットワークを介して受け付けられた値に基づいて、導出部が、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する段階」との事項が特定されているのに対し、甲1発明には、「事業者がサプライチェーン排出量を把握するため、関係する取引先から排出量の提供を受ける」に際して、「前記要求メッセージを受けて、前記他の事業者からネットワークを介して」との事項や「導出部が、前記少なくとも1つのカテゴリについての他の間接排出量を導出する」との事項は特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点3について検討する。 甲1発明は、本件特許発明4において実行される「第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階」で参照する「第3関連情報」に相当する構成を備えていない。そして、甲第1号証にも本件特許発明4の「第3関連情報」を示唆する記載もない。さらに、上記「第3関連情報」が本件特許出願の出願日前に当業者にとって周知であるとの合理的な理由も証拠もない。 また、甲第2号証~甲第7号証のいずれの甲号証にも、上記「第3関連情報」に相当するもの、又は、それを示唆する記載はない。 してみると、甲1発明に本件特許発明4で特定されている「第3特定部が、前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた、記憶部に記憶された第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する段階」との事項を適用することは当業者といえども容易になし得るものではない。 以上のとおりであるから、その他の相違点(相違点1、2、4、5)について判断するまでもなく、本件特許発明4は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 上記相違点3に対応する構成について、特許異議申立人は特許異議申立書(13ページ5行-30行)において以下のとおり述べている。 「甲第1号証には、次のような記載がある。 「また、サプライチェーン排出量の把握の過程で、サプライチェーンを構成する他の事業者や製品等の使用者へ情報提供等を働きかけることにより、他の事業者等における理解が促進されることに加え、それらの事業者等と連携を図ることにより、サプライチェーンを構成する事業者等間で協力して温室効果ガス排出量の削減を進めることが重要です。」 「サプライチェーン排出量の把握・管理を効果的に行うためには、自社が他の事業者と連携することによって、サプライチェーンの各段階における実際の排出量データを収集し、積み上げて算定することが望まれます。」 これらの記載では、自社は、サプライチェーンを構成する他の事業者と連携可能であることが前提となっている。したがって、D「前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する」ことは可能であることが前提となっており、このように他の事業者を特定するためには、少なくとも、自社(主事業者)と、他の事業者とを関連づけた情報が存在していることは自明である。 また、上述したようなカテゴリ別の事業者が特定可能であることも想定されており、どのような事業者がどういった業種であるかも管理されていることも自明である。 よって、甲第1号証からは、D「前記主事業者と、前記主事業者の活動に関わる他の事業者及び他の事業者の業種とを関連づけた第3関連情報を参照して、前記少なくとも1つのカテゴリに関連する業種に該当し、かつ前記主事業者の活動に関わる他の事業者を特定する」構成は自明である。」(なお、以下では、上記主張において、特許異議申立人が引用する甲第1号証の摘記部分の先の部分を「摘記1」、後の部分を「摘記2」という。) 摘記1は、甲第1号証のI-3下から6~9行に記載された部分であるが、当該記載は、「1.3サプライチェーンの把握・管理の目的及び効果」と題した記載の元になされているものであって、「サプライチェーンを構成する他の事業者や製品等の使用者へ情報提供等を働きかけることにより、・・・、サプライチェーンを構成する事業者等間で協力して温室効果ガス排出量の削減を進めることが重要」であるという「サプライチェーンの把握・管理の目的及び効果」を示している記載であって、特許異議申立人が述べるような「自社は、サプライチェーンを構成する他の事業者と連携可能であることが前提」とするような記載ではない。 また、摘記2は、甲第1号証のI-8の3~6行に記載された部分であるが、当該記載は、「サプライチェーン排出量の把握・管理を効果的に行うためには、自社が他の事業者と連携することによって、サプライチェーンの各段階における実際の排出量データを収集し、積み上げて算定することが望まれ」るという願望を記載しているのであって、そのために「自社は、サプライチェーンを構成する他の事業者と連携可能であることが前提」であるということを述べているわけではない。このことは、上記摘記2の記載に続けて「しかしながら、現実的には排出量データの取得が容易ではない段階が存在する可能性があります。このため、実際の排出量データの取得が困難な場合に事業者が比較的把握しやすいデータから算定できるよう、サプライチェーンを自社と、上流・下流に区分し、表4―1に示すとおり区分ごとに算定方法の考え方をまとめました。」とあるように、他の事業者と連携できない場合について説明がなされていることからも、特許異議申立人の「自社は、サプライチェーンを構成する他の事業者と連携可能であることが前提」との主張が誤りであることは明白である。 したがって、上記相違点3に対応する構成についての特許異議申立人の主張は採用することはできない。 (3)小括 上記「(1)対比」及び「(2)判断」で検討したように、本件特許発明4は、甲1発明と同一の発明とはいえないから、同発明に対する申立理由1(特許法第29条第1項第3号)は理由がない。 同様に、本件特許発明4は、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同発明に対する申立理由2(特許法第29条第2項)は理由がない。 2 本件特許発明1、2、3について 本件特許発明1は、本件特許発明4に対応する「導出装置」に係る発明であり、本件特許発明4で検討した「第3関連情報」及びそれに関する事項を備えるものであるから、上記本件特許発明4で検討したのと同様の理由により、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明と同一の発明とはいえないから、同発明に対する申立理由1(特許法第29条第1項第3号)は理由がない。 同様に、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同発明に対する申立理由2(特許法第29条第2項)は理由がない。 さらに、本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を引用する発明であるから本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件特許発明2及び3は、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同発明に対する申立理由2(特許法第29条第2項)は理由がない。 3 本件特許発明5について 本件特許発明5は、本件特許発明4に対応する「プログラム」に係る発明であり、本件特許発明4で検討した「第3関連情報」及びそれに関する事項を備えるものであるから、上記本件特許発明4で検討したのと同様の理由により、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本件特許発明5は、甲1発明と同一の発明とはいえないから、同発明に対する申立理由1(特許法第29条第1項第3号)は理由がない。 同様に、本件特許発明5は、甲1発明及び甲第2~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同発明に対する申立理由2(特許法第29条第2項)は理由がない。 第6 むすび したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701245

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