特許異議申立
2023-700215
熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体
- 審判番号
- 2023-700215
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-008513
- 登録番号
- 7128371
- 請求日
- 2023年02月24日
- 審決日
- 2024年12月04日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】彦野 友子
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.113-YAA(C09K) / P1651.121-YAA(C09K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7128371号発明「熱膨張性マイクロカプセル、発泡性マスターバッチ及び発泡成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
結論
特許第7128371号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7128371号の請求項1、4~8に係る特許を維持する。
特許第7128371号の請求項2、3に係る特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許第7128371号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年1月24日(優先権主張 令和3年8月6日)の出願であって、令和4年8月22日に特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年2月24日に特許異議申立人である彦野 友子(以下「申立人」という。)により、請求項1~8に係る特許について異議申立てがなされたものである。
2 以後の手続は、次のとおりである。
令和 5年 8月30日付け 当審から取消理由の通知
同年11月 2日 特許権者から訂正の請求及び意見書の提出
同年11月15日付け 当審から訂正請求があった旨の通知
同年12月15日 申立人から意見書の提出
令和 6年 5月14日付け 当審から取消理由(決定の予告)の通知
同年 7月 9日 特許権者から訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出
同年 8月21日付け 当審から訂正請求があった旨の通知
同年 9月18日 申立人から意見書の提出
なお、令和5年11月2日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 令和6年7月9日付け訂正請求について
1 訂正の内容
補正前の本件訂正請求による訂正の請求の趣旨は、「特許第7128371号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「D10/D50が0.6以上1.0以下」とあるのを、「D10/D50が0.6以上0.9以下」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4~8も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「D99/D50が1.0以上2.0以下である、熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である、熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4~8も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1~3のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「請求項1に記載の熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5~8も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「請求項1及び4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6~8も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「請求項1及び4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~8も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1~6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」とあるのを、「請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~8において、請求項2~8は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~8は一群の請求項である。そうすると、本件訂正は一群の請求項ごとにされた訂正である。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「D10/D50が0.6以上1.0以下」という事項について、上限を0.9以下に限定し、「D10/D50が0.6以上0.9以下」とするものであり、D10/D50の数値範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの記載から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「D10/D50が0.6以上1.0以下」という事項について、D10/D50の数値範囲を限定するものであり、訂正前の請求項1にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項1にかかる「D10/D50が0.6以上0.9以下」という事項は、願書に添付した明細書の段落0032の「上記D10/D50が0.6以上であることで、熱膨張性マイクロカプセルに含有される微粉の割合を低くすることができ、発泡性が高くすることができる。上記D10/D50の好ましい下限は0.62、より好ましい下限は0.63、さらに好ましい下限は0.65であり、好ましい上限は1.0、例えば0.9以下である。」という記載から、当該段落0032に記載された事項であるといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「D99/D50が1.0以上2.0以下である、熱膨張性マイクロカプセル」という事項について、下限を1.64以上に限定すると共に、「D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」との構成を付加して、「D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である、熱膨張性マイクロカプセル」と限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの記載から明らかなように、訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「D99/D50が1.0以上2.0以下である、熱膨張性マイクロカプセル」という事項について下限を限定すると共に、構成を付加して限定するものであり、訂正前の請求項1にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項2にかかる「D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」という事項は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2の「D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が1.0以上8.0以下である」という記載、同請求項3の「D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.4以下である」という記載、願書に添付した明細書の段落0033の「上記D99/D50の・・・好ましい下限は・・・例えば1.3以上である。」という記載、同段落0034の「D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が・・・例えば2以上であり、」という記載、同段落0035の「D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が・・・さらに好ましくは1.2以下である。」という記載、及び、同段落0084の実施例7の「D99/D50」が「1.64」、「(D99)3/(D50)3」が「4.41」であり、同実施例8の「(D99-D10)/D50」が「1.15」であるという記載から、当該請求項2、3、段落0033~0035、段落0084に記載された事項であるといえるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(3)訂正事項3、4
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項2を削除する訂正であり、訂正事項4は、請求項3を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項3は、請求項2を削除する訂正であり、訂正前の請求項2にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正事項4は、請求項3を削除する訂正であり、訂正前の請求項3にかかる発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、請求項2を削除する訂正である訂正事項3及び請求項3を削除する訂正である訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項5~9
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1~3のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1を引用する記載として、訂正事項6は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1及び4を引用する記載として、訂正事項7は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~4のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1及び4を引用する記載として、訂正事項8は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1~6のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1、4、5及び6を引用する記載として、訂正事項9は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1~6のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1、4、5及び6を引用する記載として、いずれも、訂正事項3及び4により削除する請求項2及び3の記載を引用しないように整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項5~9は、請求項の削除に伴い引用する請求項を整合させる訂正であり、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項5~9は、請求項の削除に伴い引用する請求項を整合させる訂正であり、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(5)特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
本件訂正請求による訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~8に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
前記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明8」といい、まとめて「本件訂正発明」ということもある。)は次のとおりの発明である。
「【請求項1】
シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、
D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、
D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である、
熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
D99が15μm以上80μm以下である、請求項1に記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項5】
シェルは、ニトリル系モノマーを含有するモノマー組成物の重合体からなる、請求項1及び4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項6】
シェルは、ニトリル系モノマーとカルボキシル基を有するモノマーとを含有するモノマー組成物の重合体であり、モノマー組成物中における、カルボキシル基を有するモノマーの含有量は5重量%以上、50重量%以下である、請求項1及び4のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂を含有する、発泡性マスターバッチ。
【請求項8】
請求項1、4、5及び6のいずれかに記載の熱膨張性マイクロカプセル、又は、請求項7に記載の発泡性マスターバッチを用いてなる、発泡成形体。」
第4 取消理由の概要
1 令和 5年 8月30日付け取消理由通知の取消理由及び令和 6年 5月14日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由
理由1:(新規性)本件特許の下記の請求項1~8に係る発明は、本件特許に係る出願(以下「本件出願」ともいう。)の優先権主張の基礎となる出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲2、甲3、甲4、甲5又は甲6)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由2:(進歩性)本件特許の下記の請求項1~8に係る発明は、本件出願の優先権主張の基礎となる出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲2、甲3、甲4、甲5又は甲6)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 甲号証について
申立人は、次の甲第1号証~甲第6号証を提出した。甲第1号証~甲第6号証を、以下「甲1」~「甲6」ともいう。
甲第1号証:積水化学工業株式会社、「アドバンセル」の製品情報、インターネット<URL:https://www.sekisui.co.jp/cs/products/1270513_25825.html>、各頁の左上に「2020/12/22」と表記
甲第1-1号証:甲第1号証のアドバンセルEMと従来品の粒度分布のグラフの拡大図
甲第1-2号証:株式会社島津製作所、「粉博士の優しい粉講座:実践コース レーザ回折式粒度分布測定装置 21 任意%粒子径とメディアン径」、インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/powder/lecture/practice/p01/lesson21/index.html>
甲第2号証:国際公開2020/158613号
甲第2-1号証:株式会社フジキン、「【日本機械工業連合会会長賞】多孔付きエレメント組み合わせ式高効率連続ミキサー(混合君・分散君)」、インターネット<URL:http://www.jmf.or.jp/japanese/commendations/energy/pdf/h21/21_14.pdf>
甲第3号証:株式会社クレハ、「クレハマイクロスフェアー」のパンフレット、2017年1月(更新日)
甲第3-1号証:甲第3号証のクレハマイクロスフェアーの粒子径分布のグラフの拡大図
甲第4号証:特開2000-191817号公報
甲第4-1号証:粒度分布の計算手順
甲第5号証:中国特許出願公開110551248号明細書
甲第5-1号証:甲第5号証の部分翻訳文
甲第6号証:J. Zhang et al, “Synthesis and characterization of high temperature resistant thermal expansion microsopheres with P(acrylonitrile/methacrylic acid/N,N-dimethylamide/n-butylacrylate) shell”, SN Applied Sciences,[online], 2019年7月26日, インターネット<https://doi.org/10.1007/s42452-01900976-4>
甲第6-1号証:甲第6号証の部分翻訳文
3 甲1-1の不採用について
特許異議申立書には、甲1を主引例とする新規性及び進歩性欠如の理由が挙げられている。
そして、甲1-1の公知日に関して、特許異議申立書とともに提出された証拠説明書には甲1のダウンロード日が2020年12月22日であると記載され、甲1-1には各ページの左上に2020/12/22と記載されており、それが事実であるとすれば、公知日は本件特許出願の優先日前であり、前記理由の証拠といえる。
しかし、URL:https://www.sekisui.co.jp/cs/products/1270513_25825.htmlを参照しても、各ページの左上に2020/12/22なる記載はないから、甲1-1のダウンロード日が2020年12月22日であるとは認定できず、甲1-1には他に甲1-1の公知日をうかがえる記載もない。
したがって、甲1-1は前記理由の証拠として採用できない。
4 甲号証の記載について
(1)令和 5年 8月30日付け取消理由通知の取消理由では甲2~甲6が採用され、令和 6年 5月14日付け取消理由通知(決定の予告)では、甲2、甲2-1、甲3、甲6が採用された。
(2)甲2には、次の記載がある。
「[請求項1] 重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、
前記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、
IRスペクトル分析を行った場合において、シェル中のC=O結合に基づくピーク強度と、二酸化ケイ素に基づくピーク強度との比(C=O結合に基づくピーク強度/二酸化ケイ素に基づくピーク強度)が0.25~1.0であり、
最大発泡温度(Tmax)が180~225℃である、熱膨張性マイクロカプセル。
[請求項2] 平均粒子径が10~30μmである、請求項1記載の熱膨張性マイクロカプセル。」
「[0020] 上記モノマー組成物中における、上記炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーの含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は50重量%である。5重量%以上とすることで、最大発泡温度を高めることができ、50重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることが可能となる。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は30重量%である。」
「[0026] 上記モノマー組成物は、上記カルボニル基含有モノマー以外に、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマーを含有することが好ましい。
上記ニトリル系モノマーを添加することで、シェルのガスバリア性を向上させることができる。
また、上記カルボニル基含有モノマー、ニトリル系モノマー以外にも、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、スチレン系モノマー等を含有してもよい。」
「[0050] 本発明の熱膨張性マイクロカプセルに、化学発泡剤及び熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた発泡成形用組成物、又は、熱膨張性マイクロカプセル及び化学発泡剤と熱可塑性樹脂等のベースレジンとを混合することでマスターバッチペレットが得られる。
また、上記マスターバッチペレットに熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた発泡成形用組成物を添加し、射出成形等の成形方法を用いて成形した後、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡成形体を製造することができる。」
「[0059] (実施例1)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
固形分20重量%のコロイダルシリカ333.7重量部(平均粒子径20nm)、ポリビニルピロリドン6重量部、塩化ナトリウム1094重量部、亜硝酸ナトリウム1.0重量部をイオン交換水3100重量部に加え混合した後、水系分散媒体を調製した。なお、コロイダルシリカ(水分散液)としては、アルカリ性コロイダルシリカを用いた。
アクリロニトリル722.2重量部(43.33重量%)、メタクリロニトリル157.6重量部(9.46重量%)、メタクリル酸415重量部(24.90重量%)、メタクリル酸メチル365.2重量部(21.912重量%)、トリメチロールプロパントリメタクリレート6.64重量部(0.398重量%)を混合して均一溶液のモノマー組成物(括弧内はモノマー組成物全体に対する重量%)とした。これに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)10重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.5重量部、nペンタン400重量部を添加してタンク1の中に仕込み混合した。
次いで、水系分散媒体をタンク2の中に仕込み、タンク1の油性混合物をタンク2に投入、混合し一次分散液を得た。この時、一次分散液のpHは3.5~4.0となる。得られた一次分散液を静的管内混合器(スタティックミキサー、株式会社フジキン社製、分散君)を用いて、流速が200L/min、圧力1.5MPaで通過させた。通過した液はオートクレーブ中に仕込んだ。
なお、使用したエレメント式静止型分散器は、板状エレメントが厚さ5mm、有効直径15mm、板状エレメントの孔径2mmで杵状の形状をしており、隣り合う異なる種類の板状エレメントの間で少なくとも一部が対向することができる孔数が78個のものを使用した。そして、第1エレメントと第2エレメントの組合せで構成されるユニットの数は10組で各板状エレメントの孔を通過する流体となるようにセットした。
その後、窒素置換し、反応温度60℃で15時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。
その後、得られた重合スラリー8000Lを圧搾脱水装置(石垣社製、フィルタープレス)に分割して供給し、脱水した後に洗浄水の所定量を脱水機に供給し、洗浄工程を行った後、乾燥させて、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
[0060] (実施例2~6、比較例1~7)
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソペンタン、nペンタン、イソオクタン、コロイダルシリカを表1に示す組成で混合し、モノマー組成物とした後、表1に示す乳化条件で乳化を行った以外は実施例1と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを得た。ただし、メタクリル酸の添加量が0.1重量%の比較例1及びメタクリル酸の添加量が少ない実施例4、6及び比較例2の場合は、水系分散媒体に塩酸を添加してpH3.5~4.0になるように調整した。
なお、通常撹拌機としては、回分式高速回転高せん断型分散器(エム・テクニック株式会社製、クレアミックスCLM-150S ローターR2)を用いた。
[0061] (実施例7~12、比較例8~16)
(発泡成形体の製造)
表2に示す配合でヘンシェルミキサー(120℃でドライアップ)を用いて混合を行い、得られたコンパウンドを射出成形機(JSW社製、350t)コアバック成形(樹脂温度200℃、金型温度40℃、コアバック量3.0mm)することで発泡成形体を得た。
なお、可塑剤としてビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP、三菱ケミカル社製)、充填剤として重質炭酸カルシウム(ホワイトン305、白石工業社製)、熱安定剤として錫系安定剤(ONZ142AF、三共有機合成社製)、加工助剤としてポリエチレンワックス(AC316A、ハネウェル社製)を用いた。」
「[0069]
[表1]
[図:0001420291000001.jpg]
[0070]
[表2]
[図:0001420291000002.jpg]
」
(3)甲2-1には、次の記載がある。
「
[図:0001420291000003.jpg]
」(1.機器の概要)
「
[図:0001420291000004.jpg]
」(2.機器の技術的特徴および効果)
「
[図:0001420291000005.jpg]
」(3.用途)
(4)甲3には、次の記載がある。
「
[図:0001420291000006.jpg]
」(第1頁)
「
[図:0001420291000007.jpg]
」(第1頁)
「
[図:0001420291000008.jpg]
[図:0001420291000009.jpg]
」(第2頁)
「
[図:0001420291000010.jpg]
」(第4頁)
(5)甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】 重合体の外殻内に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーであって、平均粒径が3~100μmの範囲内で、かつ、粒径分布の変動係数が1.50%以下であることを特徴とする発泡性マイクロスフェアー。
【請求項2】 重合体の外殻が、塩化ビニリデン共重合体または(メタ)アクリロニトリル共重合体から形成されたものである請求項1記載の発泡性マイクロスフェアー。」
「【0039】(用途)本発明により得られる発泡性マイクロスフェアーは、発泡(膨張)させて、あるいは未発泡のままで、各種分野に使用される。発泡性マイクロスフェアーは、例えば、その膨張性を利用して、自動車等の塗料の充填剤、壁紙、発泡インク(T-シャツ等のレリーフ模様付け)の発泡剤、収縮防止剤などに使用される。また、発泡性マイクロスフェアーは、発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される。特に、本発明による発泡性マイクロスフェアーは、表面性や平滑性の要求される塗料、壁紙、インク分野に好適に用いることができる。」
「【0046】[比較例3]攪拌機付の重合缶(1.5L)に、脱イオン水770g、及び固形分40重量%のコロイダルシリカ11gを加え溶解させた。さらに、塩酸を加えて、pHが3.5の水系分散媒体を調製した。一方、アクリロニトリル123.2g、メタクリル酸メチル85.8g、アクリル酸メチル11g、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン0.33g、2,2′-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル1.1g、及びイソペンタン35.2gからなる重合性混合物を調製した(単量体の各重量%=アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=56/39/5)。次いで、この重合性混合物と上記で調製した水系分散媒体とを回分式高速回転高剪断型分散機で攪拌混合して、重合性混合物の微小な液滴を造粒した後、前記重合缶に仕込み、50℃で22時間反応させた。得られた反応生成物を濾過と水洗を繰り返し、乾燥して、平均粒径が12μm、変動係数が3.17%である発泡性マイクロスフェアーを得た。
【0047】[実施例4]重合性混合物と水系分散媒体とを攪拌混合する際に、回分式高速回転高剪断型分散機を用いずに、図1に示すように、水系分散体と重合性混合物をそれぞれ別の槽に保持し、これらをある一定の比率で連続的に連続式高速回転高剪断型攪拌分散機(回転数=2,500rpm)を通過させた後、懸濁重合を行うこと以外は、比較例3と同様にして、発泡性マイクロスフェアーを調製した。得られた反応生成物を濾過と水洗を繰り返し、乾燥して、平均粒径が16μm、変動係数が1.00%である発泡性マイクロスフェアーを得た。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、粒子形状が真球状で、かつ、粒径分布が極めてシャープであり、スラリーにした時の粘度が低く、発泡がシャープで均一な発泡体を与えることができる発泡性マイクロスフェアーが提供される。本発明の製造方法により得られる発泡性マイクロスフェアーは、粒径分布の変動係数が1.50%以下で粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ないため、発泡がシャープであり、均一な発泡体を形成することができる。」
(6)甲5には、次の記載がある。なお、原文は、外国語なので、その日本語訳として、申立人が提出した甲5-1に記載された抄訳を採用し、括弧を付して付記する。
「
[図:0001420291000011.jpg]
」(日本語訳:技術分野
本発明は粒径制御可能な熱膨張性マイクロスフェアー調製方法に関し、乳化効率を向上することによって平均粒径制御可能で粒径分布の狭い熱膨張性マイクロスフェアーを得る。)(段落[0001])
「
[図:0001420291000012.jpg]
」(日本語訳:[実施例2]
工程1、イオン交換水11.0Kgを秤取して、硫酸でpH値を3.8に調節し、5gの亜硝酸ナトリウム、3.2KgのNaCl、45gのポリビニルピロリドンおよび2.5Kgの二酸化ケイ素をそれに加え、均ーに攪拌して水相を得た。;
工程2、2.8Kgのアクリロニトリル、1.8Kgのメタアクリル酸メチル、1.2Kgのメタアクリル酸メチルを秤取し、それにトリメチロールプロパントリメタクリレート2.4gおよびアゾビスイソヘプトニトリル48gを添加し、最後に1.9Kgのイソベンタンを添加し、1.1Kgのオクタンを添加し、均ーに攪拌して油相を得た。;
工程3、工程2で調整した油相を膜乳化装置の循環槽中に移し、工程1で調整した水相を膜乳化装置の循環槽中に移し、変性のステンレス管状膜を選択して膜材料とし、膜平均細孔径は20μmとし、孔径分布範囲は13~27μmとし、循環槽を撹拌し、攪拌速度は350rpmとし、膜乳化圧力は0.4MPaとし、循環槽の温度を5-10℃に制御して、粒径制御可能均ーな微小球エマルジョンを得た;
工程4、乳化が完了した後、エマルジョンを反応釜中へ移す:エマルジョン移すまでに、3回窒素で反応釜を置換し、撹拌を開始し、攪拌速度を40rpmに制御し、昇温し始め、最後に温度制御を60℃に、反応時間を20時間とした;
工程5、反応終了後に、真空ろ過により熱膨張性マイクロスフェアーを得、イオン交換水1.8Kgで洗浄し、600mlのメタノール洗浄後で濾過ケーキを得、濾過ケーキを真空乾燥オーブン中に入れ、真空度を制御して0.092MPaとし、乾燥温度は80℃とし、乾燥時間は2.5時間とし、乾燥完了後、乾燥物を粉砕して製品を得る。
最後に8.2Kgの熱膨張性マイクロスフェアーを得、その熱膨張性マイクロスフェアーの発泡倍率は200倍で、平均粒径は19μmであり、粒径分布範囲は14~24.6μmであり、水分は1.2%(乾燥減量でテスト)未満であった。)(段落[0014])
(7)甲6には、次の記載がある。なお、原文は、外国語なので、その日本語訳として、申立人が提出した甲6-1に記載された抄訳を採用し、括弧を付して付記する。
「
[図:0001420291000013.jpg]
」(日本語訳:要旨
ピッカリング懸濁重合法により、耐熱性マイクロスフェアーを作製した。アクリロニトリル(AN)、メタクリル酸(MAA)およびN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)をモノマーとして用い、n-ブチルアクリレート(BA)を修飾モノマーとして用いてマイクロスフェアーの膨張特性を向上させた。マイクロスフェアーの形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)および偏光光学顕微鏡(POM)により評価した。調製したマイクロスフェアーの平均直径は51.9μmであり、最大膨張体積は元の体積の4倍であった。・・・)(第1頁、要約)
「
[図:0001420291000014.jpg]
」(日本語訳:2.2.2 油相の準備
AN(15g)、MAA(4.6g)、DMAA(2.3g)およびBA(1.15g)を100mLガラスビーカーに加え、モノマーの混合物を得た。EGDMA(0.09g)、AIBN(0.127g、モノマー基準0.55wt%)、及びノルマルペンタン(8g、油相中25.8wt%)をモノマーの混合物に混ぜ、マグネチックスターラーで攪拌した。)(第2頁 2.2.2 油相の準備)
「
[図:0001420291000015.jpg]
」(日本語訳:2.3 粒子微小形態
図1に微小球のSEM画像を示す。粒子の形状は球状であり、表面には多くのしわが見られた。・・・図1(a)に示した微小球の粒子径は、金属組織学的サイズ分析ソフトウェアによって測定され、カウントされたものである。マイクロスフェアーの粒子径は、38.6-80.2μmに分布していた。最大粒径は45-50μmであり、平均粒径は51.9μmであった。(図2)。)(第3頁 2.3 粒子微小形態)
「
[図:0001420291000016.jpg]
」(日本語訳:図2 TEMによる粒径分布)(第3頁 図2)
5 甲号証に記載された発明
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2(上記4(2)参照。)の請求項1を引用する請求項2には、「重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、カルボニル基含有モノマーを含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、平均粒子径が10~30μmである、熱膨張性マイクロカプセル。」が記載されている。また、甲2の段落[0050]には、「熱膨張性マイクロカプセル及び化学発泡剤と熱可塑性樹脂等のベースレジンとを混合することでマスターバッチペレットが得られる。また、上記マスターバッチペレットに熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた発泡成形用組成物を添加し、射出成形等の成形方法を用いて成形した後、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡成形体を製造することができる。」ことが記載されている。
イ 甲2の段落[0059]、[0060]、[0069]の[表1]には、熱膨張性マイクロカプセルの実施例2、3として、シェルとして、「アクリロニトリル43.33重量%、メタクリロニトリル9.46重量%、メタクリル酸24.90重量%、メタクリル酸メチル21.912重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.398重量%を混合したモノマー組成物を重合させてなる重合体」を用いること、体積平均粒子径及びCV値がそれぞれ「25μm、20%」(実施例2)、「23μm、19%」(実施例3)であることが記載されており、段落[0061]、[0070]の[表2]には、同実施例2、3の熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体の実施例8、9が記載されている。
ウ すると、甲2には次の発明(以下「甲2Aa発明」、「甲2Ab発明」)が記載されているものと認められる。
(甲2Aa発明)
「重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、アクリロニトリル43.33重量%、メタクリロニトリル9.46重量%、メタクリル酸24.90重量%、メタクリル酸メチル21.912重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.398重量%を混合したモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、体積平均粒子径が25μm、CV値が20%である、熱膨張性マイクロカプセル。」
(甲2Ab発明)
「重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセルであって、前記シェルは、アクリロニトリル43.33重量%、メタクリロニトリル9.46重量%、メタクリル酸24.90重量%、メタクリル酸メチル21.912重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.398重量%を混合したモノマー組成物を重合させてなる重合体、及び、二酸化ケイ素を含み、平均粒子径が23μm、CV値が19%である、熱膨張性マイクロカプセル。」
(2)甲3に記載された発明
ア 甲3(上記4(4)参照。)の第1頁には、「クレハマイクロスフェアーは、加熱により急激に膨張(=発泡)する熱膨張マイクロカプセル」であること、「発泡剤(主に脂肪族炭化水素)をアクリル系熱可塑性樹脂で包み込んだ、コア-シェル構造」であること、クレハマイクロスフェアーを用いた発泡成形体である「PVCシート(H850を3%添加)を加熱発泡させた」ものが記載されており、用途例として、靴底、断熱材、吸音材等の各種発泡成形体が挙げられている。また、甲3の第4頁には、クレハマイクロスフェアーを用いたマスターバッチとして、MSを40wt%含有させたLLDPEを含有するマスターバッチLLDPE/S2340が記載されている。ここで、MSはマイクロスフェアー、LLDPEが直鎖状低密度ポリエチレンの略であることは明らかである。
イ 甲3の第2頁には、クレハマイクロスフェアーの製品一覧が記載されており、グレードM430の粒子径、CV値はそれぞれ「14μm」、「20」であることが記載されている。
ウ すると、甲3には次の発明(以下「甲3A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲3A発明)
「加熱により急激に発泡する熱膨張マイクロカプセルであって、主に脂肪族炭化水素である発泡剤をアクリル系熱可塑性樹脂で包み込んだ、コア-シェル構造であり、粒子径が14μm、CV値が20である熱膨張マイクロカプセル。」
(3)甲4に記載された発明
ア 甲4(上記4(5)参照。)の請求項1を引用する請求項2には、「重合体の外殻内に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーであって、平均粒径が3~100μmの範囲内で、かつ、粒径分布の変動係数が1.50%以下である」、「重合体の外殻が、塩化ビニリデン共重合体または(メタ)アクリロニトリル共重合体から形成されたものである」、「発泡性マイクロスフェアー」が記載されており、段落【0039】には、発泡性マイクロスフェアーは、「発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される」ことが記載されている。ここで、前記「各種資材」が発泡成形体であることは明らかである。
イ 甲4の段落【0046】、【0047】には、発泡性マイクロスフェアーの実施例4として、「単量体の各重量%=アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=56/39/5」である重合性混合物を用いた、「平均粒径が16μm、変動係数が1.00%である発泡性マイクロスフェアー」が記載されており、段落【0048】には、「本発明の製造方法により得られる発泡性マイクロスフェアーは、粒径分布の変動係数が1.50%以下で粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ないため、発泡がシャープであり、均一な発泡体を形成することができる」ことが記載されている。
ウ すると、甲4には次の発明(以下「甲4A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲4A発明)
「重合体の外殻内に発泡剤が封入された発泡性マイクロスフェアーであって、重合体の外殻が、単量体の各重量%=アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=56/39/5である重合性混合物から得られたものであり、平均粒径が16μmで、かつ、粒径分布の変動係数が1.00%である、粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ない、発泡性マイクロスフェアー」
(4)甲5に記載された発明
ア 甲5(上記4(6)参照。)の段落[0001]には、「平均粒径制御可能で粒径分布の狭い熱膨張性マイクロスフェアーを得る」ことが記載されており、実施例2には、「2.8Kgのアクリロニトリル、1.8Kgのメタアクリル酸メチル、1.2Kgのメタアクリル酸メチルを秤取し、それにトリメチロールプロパントリメタクリレート2.4gおよびアゾビスイソヘプトニトリル48gを添加し、最後に1.9Kgのイソベンタンを添加し、1.1Kgのオクタンを添加し、均ーに攪拌して油相を得た」こと、最後に得られる熱膨張性マイクロスフェアーの「平均粒径は19μmであり、粒径分布範囲は14~24.6μm」であることが記載されている。ここで、前記「油相」のうち、「2.8Kgのアクリロニトリル、1.8Kgのメタアクリル酸メチル、1.2Kgのメタアクリル酸メチル」、「トリメチロールプロパントリメタクリレート2.4g」が熱膨張性マイクロスフェアーのシェルを構成する重合体のモノマー成分であり、「イソベンタン」(当審注:イソペンタンの誤記と認められる)、「オクタン」が熱膨張性マイクロスフェアーのコア剤として内包されることは明らかである。
イ すると、甲5には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲5発明)
「平均粒径制御可能で粒径分布の狭い熱膨張性マイクロスフェアーであって、コア剤としてイソペンタン、オクタンを内包し、シェルを構成する重合体のモノマー成分として、2.8Kgのアクリロニトリル、1.8Kgのメタアクリル酸メチル、1.2Kgのメタアクリル酸メチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート2.4gを用いること、得られた熱膨張性マイクロスフェアーの平均粒径は19μmであり、粒径分布範囲は14~24.6μmである、熱膨張性マイクロスフェアー。」
(5)甲6に記載された発明
ア 甲6(上記4(7)参照。)の要約には、「ピッカリング懸濁重合法により、耐熱性マイクロスフェアーを作製」すること、「アクリロニトリル(AN)、メタクリル酸(MAA)およびN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)をモノマーとして用い、n-ブチルアクリレート(BA)を修飾モノマーとして用い」ること、が記載されており、甲6の2.2.2 油相の準備には、「AN(15g)、MAA(4.6g)、DMAA(2.3g)およびBA(1.15g)を100mLガラスビーカーに加え、モノマーの混合物を得た」こと、「EGDMA(0.09g)、AIBN(0.127g、モノマー基準0.55wt%)、及びノルマルペンタン(8g、油相中25.8wt%)をモノマーの混合物に混ぜ、マグネチックスターラーで攪拌した」ことが記載されている。ここで、前記「油相」のうち、「アクリロニトリル(AN)」、「メタクリル酸(MAA)」、「N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)」、「n-ブチルアクリレート(BA)」が耐熱性マイクロスフェアーのシェルを構成する重合体のモノマー成分であり、「ノルマルペンタン」が耐熱性マイクロスフェアーのコア剤として内包されることは明らかである。
イ 甲6の2.3 粒子微小形態には、「マイクロスフェアーの粒子径は、38.6-80.2μmに分布していた。最大粒径は45-50μmであり、平均粒径は51.9μmであった。」ことが記載されている。
ウ すると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲6発明)
「ピッカリング懸濁重合法により作製される耐熱性マイクロスフェアーであって、コア剤としてノルマルペンタンを内包し、シェルを構成する重合体のモノマー成分として、15gのアクリロニトリル(AN)、4.6gのメタクリル酸(MAA)、2.3gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、1.15gのn-ブチルアクリレート(BA)を用いること、得られた耐熱性マイクロスフェアーの粒子径は38.6-80.2μmに分布し、最大粒径は45-50μmであり、平均粒径は51.9μmである、耐熱性マイクロスフェアー。」
6 対比・判断
(1)甲2を主引用例とする場合について
ア 本件訂正発明1
(ア) 本件訂正発明1と甲2Aa発明、甲2Ab発明を対比すると、本件訂正発明1と甲2Aa発明、甲2Ab発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセル」
<相違点1-1>
本件訂正発明1では、熱膨張性マイクロカプセルの粒度分布について、「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」のに対し、甲2Aa発明、甲2Ab発明では、「体積平均粒子径」及び「CV値」で特定し、累積頻度の特定体積%の粒子径の比で特定されていない点
(イ) 相違点1-1について検討する。変動係数であるCV値は標準偏差を算術平均で割ったものであり、粒度分布の変動係数が小さいこと、すなわち、算術平均に比して標準偏差が小さいことは、粒度分布が狭くシャープであることを意味することは明らかである。そして、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルはCV値が20%、19%と小さいことから、甲2Aa発明、甲2Ab発明の粒度分布が狭くシャープなものであることがいえる。また、甲2の段落[0059]には、本件訂正発明と同様に、油性混合物を水系分散媒体の中に投入、混合して得られた一次分散液を静止管内混合器(スタティックミキサー)を用いて所定の流量で通過させることが記載されており、甲2に記載された静止管内混合器(スタティックミキサー)である株式会社フジキン社製「分散君」について、甲2-1には従来型のホモミキサーに比べて連続処理が可能となり、処理時間を短縮することができ、しかも図5の粒度分布から見て取れるように分散性能がよかったことが記載され、図5より分散君を用いた粒度分布はほぼ正規分布を示すことが見て取れる。そこで、甲2Aa発明、甲2Ab発明の粒度分布が狭くシャープであること、及び、これらの製造工程において静止管内混合器(スタティックミキサー)である株式会社フジキン社製「分散君」を用いていることから、粒度分布がほぼ正規分布を示すと仮定することができる。
ここで、正規分布における公知の標準偏差(σ)と変動係数(CV値)との関係が、
D99.85=平均値+3σ
D97.7=平均値+2σ
D15.85=平均値-σ
D2.3=平均値-2σ
であり、平均値である体積平均粒子径がD50と一致し、σはD50×CV値である(特許異議申立書の22頁最終行~24頁下から4行目を参照。)ことから、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99.85、D97.7、D15.85、D2.3はそれぞれ、
甲2Aa発明
D99.85=40μm、D97.7=35μm、D15.85=20μm、D2.3=15μm
甲2Ab発明
D99.85=36.11μm、D97.7=31.74μm、D15.85=18.63μm、D2.3=14.26μm
と算出することができる。
すると、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50は、
甲2Aa発明
D99/D50=1.4~1.6
甲2Ab発明
D99/D50=1.38~1.57となり、いずれも本件訂正発明1の「D99/D50が1.64以上2.0以下」を充足しない。
また、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99.85、D97.7の算出値から、[(D99.85)3/(D50)3]、[(D97.7)3/(D50)3]はそれぞれ、
甲2Aa発明
[(D99.85)3/(D50)3]≒4.10、[(D97.7)3/(D50)3]≒2.74
甲2Ab発明
[(D99.85)3/(D50)3]≒3.87、[(D97.7)3/(D50)3]≒2.63
と算出することができる。
すると、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルの[(D99)3/(D50)3]は、
甲2Aa発明
[(D99)3/(D50)3]=2.74~4.10
甲2Ab発明
[(D99)3/(D50)3]=2.63~3.87
となり、いずれも本件訂正発明1の「[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下」を充足しない。
してみると、前記相違点1-1は実質的な相違点である。
そして、甲2には、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50及び[(D99)3/(D50)3]について記載も示唆もないから、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けがあるとはいえない。
さらに、他の証拠をみても、甲2Aa発明、甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けとなる記載はない。
(ウ) 申立人は、令和6年9月18日に提出した意見書3(3)において、「甲2発明のマイクロカプセルの使用した原料の組成及び製造方法は本件特許の原料の組成及び製造方法と同一である。そして、甲2発明と本件特許発明との技術課題は同一であるため、甲2発明のマイクロカプセルは、本件特許と実質的に同一であり、本件特許は新規性がない。・・・熱膨張性マイクロカプセルの製造に使用した原料の組成及び製造方法が、甲2の記載と同一であるから、甲2発明から容易に想到し得るものである。」と主張している。
しかしながら、上記(イ)での検討のとおり、甲2Aa発明及び甲2Ab発明の熱膨張性マイクロカプセルは、本件訂正発明1の「D99/D50が1.64以上2.0以下」及び「[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下」を充足しない。よって、特許権者の主張は採用することができない。
(エ) したがって、本件訂正発明1は甲2Aa発明、甲2Ab発明ではなく、甲2Aa発明、甲2Ab発明、並びに、甲3~甲6の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明4~8
本件訂正発明4~8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2Aa発明、甲2Ab発明との<相違点1-1>と同じ相違点を有するものであり、甲2Aa発明、甲2Ab発明ではなく、甲2Aa発明、甲2Ab発明、並びに、甲2~甲6の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲3を主引用例とする場合について
ア 本件訂正発明1
(ア) 本件訂正発明1と甲3A発明を対比すると、甲3A発明の「加熱により急激に発泡する熱膨張マイクロカプセル」、「主に脂肪族炭化水素である発泡剤をアクリル系熱可塑性樹脂で包み込んだ、コア-シェル構造」は、本件訂正発明1の「熱膨張性マイクロカプセル」、「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された」に相当する。
してみると、本件訂正発明1と甲3A発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセル」
<相違点2-1>
本件訂正発明1では、熱膨張性マイクロカプセルの粒度分布について、「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、 D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」のに対し、甲3A発明では、「粒子径」及び「CV値」で特定し、累積頻度の特定体積%の粒子径の比で特定されていない点
(イ) 相違点2-1について検討する。上記(1)ア(イ)での検討のとおり、変動係数であるCV値は標準偏差を算術平均で割ったものであり、粒度分布の変動係数が小さいこと、すなわち、算術平均に比して標準偏差が小さいことは、粒度分布が狭くシャープであることを意味することは明らかである。そして、甲3A発明の熱膨張マイクロカプセルはCV値が20と小さいことから、甲3A発明の粒度分布が狭くシャープなものであることがいえる。ここで、粒度分布が狭くシャープであることから、粒度分布がほぼ正規分布を示すと仮定することができる。この点は甲3第2頁のM430の粒子径分布のグラフがほぼ左右対称であることからも推認できる。
そこで、上記(1)ア(イ)で検討した算出方法と同様の手法を用いて、甲3A発明の熱膨張カプセルのD99.85、D97.7、D15.85、D2.3を算出すると、以下のとおりとなる。ここで平均値である甲3A発明の粒子径14μmがD50と一致するものとする。
D99.85=22.4μm、D97.7=19.6μm、D15.85=11.2μm、D2.3=8.4μm
すると、M430の熱膨張マイクロカプセルのD99/D50=1.4~1.6となり、本件訂正発明1の「D99/D50が1.64以上2.0以下」を充足しない。
また、甲3A発明の熱膨張マイクロカプセルのD99.85、D97.7の算出値から、[(D99.85)3/(D50)3]、[(D97.7)3/(D50)3]は、
[(D99.85)3/(D50)3]≒4.10、[(D97.7)3/(D50)3]≒2.74
と算出することができる。
すると、甲3A発明の熱膨張マイクロカプセルの[(D99)3/(D50)3]は、
[(D99)3/(D50)3]=2.74~4.10
となり、本件訂正発明1の「[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下」を充足しない。
してみると、前記相違点2-1は実質的な相違点である。
そして、甲3には、甲3A発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50及び[(D99)3/(D50)3]について記載も示唆もないから、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けがあるとはいえない。
さらに、他の証拠をみても、甲3A発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けとなる記載はない。
(ウ) したがって、本件訂正発明1は甲3A発明ではなく、甲3A発明、並びに、甲2、甲2-1及び甲4~甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明4~8
本件訂正発明4~8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲3A発明との<相違点2-1>と同じ相違点を有するものであり、甲3A発明ではなく、甲3A発明、並びに、甲2、甲2-1及び甲4~甲6の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲4を主引用例とする場合について
ア 本件訂正発明1
(ア) 本件訂正発明1と甲4A発明を対比すると、甲4A発明の「外殻」、「外殻内に発泡剤を封入」、「発泡性マイクロスフェアー」は、本件訂正発明1の「シェル」、「コア剤として揮発性膨張剤が内包」、「熱膨張性マイクロカプセル」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲4A発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセル」
<相違点3-1>
本件訂正発明1では、熱膨張性マイクロカプセルの粒度分布について、「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」のに対し、甲4A発明では、「平均粒径が16μmで、かつ、粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ない」ものであり、累積頻度の特定体積%の粒子径の比で特定されていない点
(イ) 相違点3-1について検討する。甲4には、D99及びD10の粒子径は記載されていないものの、「粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ない」ことは、すなわち、「D99の値がD50の値からわずかに大きく、D10の値がD50からわずかに小さいこと」を意味することは明らかである。してみれば、甲4A発明の粒径分布について、「粒径分布が極めてシャープなものであり、粗大粒子や微小粒子が少ない」状態、すなわち、「D99の値がD50の値からわずかに大きく、D10の値がD50からわずかに小さい」状態を、D10、D99とD50の比で表すことはできるかもしれないが、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下であるとまではいえず、そのような範囲のものとする動機付けがあるともいえない。
また、他の証拠をみても、甲4A発明の発泡性マイクロスフェアーのD10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下であるものとする動機付けとなる記載はない。
(ウ) したがって、本件訂正発明1は甲4A発明、並びに、甲2、甲2の1、甲3、甲5及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明4~8
本件訂正発明4~8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲4A発明との<相違点3-1>と同じ相違点を有するものであり、甲4A発明、並びに、甲2、甲2の1、甲3、甲5及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲5を主引用例とする場合について
ア 本件訂正発明1
(ア) 本件訂正発明1と甲5発明を対比すると、甲5発明の「イソペンタン」、「オクタン」は、本件訂正発明1の「揮発性膨張剤」に相当する。また、甲5発明の「熱膨張性マイクロスフェアー」は、本件訂正発明1の「熱膨張性マイクロカプセル」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲5発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセル」
<相違点4-1>
本件訂正発明1では、熱膨張性マイクロカプセルの粒度分布について、「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」のに対し、甲5発明では、「平均粒径制御可能で粒径分布の狭い」ものであり、「平均粒径は19μmであり、粒径分布範囲は14~24.6μmである」ものであり、累積頻度の特定体積%の粒子径の比で特定されていない点
(イ) 相違点4-1について検討する。甲5発明の熱膨張性マイクロスフェアーの粒径分布について、「粒径分布範囲は14~24.6μmである」ことは、すなわち、「D0が14μmかつD100が24.6μm」であることを意味し、D0はD10より小さく、D100はD99より大きな値となることから、「D10は14μmより大きく、D99は24.6μmより小さい」ことがいえる。そして、甲5発明の熱膨張性マイクロスフェアーの「平均粒径は19μm」であることから、D50=19μmとしてD99/D50を算出すると、
D99/D50<24.6/19≒1.29
となる。
また、D99/D50はD50/D50=1より大きいことから、上記算出結果と合わせると、
1<D99/D50<1.29
となり、本件訂正発明1の「D99/D50が1.64以上2.0以下」を充足しない。
また、「D99は24.6μmより小さい」値となり、D50=19μmとして[(D99)3/(D50)3]を算出すると、
[(D99)3/(D50)3]<[(24.6)3/(19)3]≒2.17
となる。
また、[(D99)3/(D50)3]は[(D50)3/(D50)3]=1より大きいことから、上記算出結果と合わせると、
1<[(D99)3/(D50)3]<2.17
となり、本件訂正発明1の「[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下」を充足しない。
してみると、前記相違点4-1は実質的な相違点である。
そして、甲5には、甲5発明の熱膨張性マイクロスフェアーのD99/D50及び[(D99)3/(D50)3]について記載も示唆もないから、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けがあるとはいえない。
さらに、他の証拠をみても、甲5発明の熱膨張性マイクロカプセルのD99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けとなる記載はない。
(ウ) したがって、本件訂正発明1は甲5発明ではなく、甲5発明、並びに、甲2、甲2-1、甲3、甲4及び甲6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明4~8
本件訂正発明4~8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲5発明との<相違点4-1>と同じ相違点を有するものであり、甲5発明ではなく、甲5発明、並びに、甲2、甲2-1、甲3、甲4及び甲6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲6を主引用例とする場合について
ア 本件訂正発明1
(ア) 本件訂正発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「ノルマルペンタン」は、本件訂正発明1の「揮発性膨張剤」に相当する。また、甲6発明の「耐熱性マイクロスフェアー」は、本件訂正発明1の「熱膨張性マイクロカプセル」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲5発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包された熱膨張性マイクロカプセル」
<相違点5-1>
本件訂正発明1では、熱膨張性マイクロカプセルの粒度分布について、「レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である」のに対し、甲6発明では、「粒子径の分布範囲」、「最大粒径」及び「平均粒径」で特定し、累積頻度の特定体積%の粒子径の比で特定されていない点
(イ)a 相違点5-1について検討する。甲6発明の耐熱性マイクロスフェアーの粒径分布について、甲6の図2のTEMによる粒径分布に関する説明として、「図1(a)に示した微小級の粒子径は、金属組織的サイズ分析ソフトウェアによって測定され、カウントされたものである。マイクロスフェアの粒子径は、38.6-80.2μmに分布していた。最大粒径は45-50μmであり、平均粒径は51.9μmであった。(図2)」と記載されていることから、特許権者によって令和5年11月2日に提出された意見書における主張(下記(ウ))に基づき、図2の棒グラフが個数換算粒子径によるものである解した場合について検討すると、図2の棒グラフの幅の中央値(例えば、粒子径35-40μmの棒グラフの場合は37.5μmとなる。)と頻度(例えば、35-40μmの棒グラフの場合は2.9%となる。)のそれぞれの値から体積換算頻度に換算することが可能であり(例えば、35-40μmの棒グラフの場合は0.9%となる。)、すべての棒グラフについて同様に換算すると、申立人が令和5年12月15日に提出した意見書3.1)ウにおける第6頁下段の表(後記bに示す。)に示された値に換算することができ、その換算結果を同第6頁中段のグラフ(後記cに示す。)のようにグラフ化することが可能であることから、このグラフよりD50≒54μm、D99≒82μmとそれぞれ読み取ることができる。ここで、甲6には、「マイクロスフェアの粒子径は、38.6-80.2μmに分布していた」と記載されていることから、D99が80.2μmを超える値になることはありえず、前記下段の表より粒子径75-80μmの棒グラフ(中央値は77.5μm)の換算結果がD94.7であることから、D99は77.5~80.2μmの範囲内であるといえる。すると、D50、D99の値からD99/D50≒1.44~1.49と算出することができ、本件訂正発明1の「D99/D50が1.64以上2.0以下」を充足しない。
b 前記表
[図:0001420291000017.jpg]
c 前記グラフ
[図:0001420291000018.jpg]
また、D50≒54μm、D99≒77.5~80.2μmの値から[(D99)3/(D50)3]を算出すると、
[(D99)3/(D50)3]≒2.96~3.28となり、本件訂正発明1の「[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下」を充足しない。
してみると、前記相違点5-1は実質的な相違点ではない。
そして、甲6には、甲6発明の耐熱性マイクロスフェアーのD99/D50及び[(D99)3/(D50)3]について記載も示唆もないから、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けがあるとはいえない。
さらに、他の証拠をみても、甲6発明の耐熱性マイクロカプセルのD99/D50が1.64以上2.0以下であり、D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下とする動機付けとなる記載はない。
(ウ) したがって、本件訂正発明1は甲6発明ではなく、甲6発明及び甲1~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正発明4~8
本件訂正発明4~8は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲6発明との<相違点5-1>と同じ相違点を有するものであり、甲6発明ではなく、甲6発明及び甲1~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 申立人によって令和6年9月18日に提出された意見書において新たに申し立てられた取消理由
1 新たに申し立てられた取消理由
(1)明確性要件違反
訂正後の請求項1における各数値は、以下に示す通りである。
[図:0001420291000019.jpg]
請求項1における(iv)の(D99-D10)/D50の値は、つまり、(D99/D50)-(D10/D50)であるため、請求項1における(i)及び(ii)から、
(iv)(D99-D10)/D50の最小値=1.64-0.9=0.74
(iv)(D99-D10)/D50の最大値=2.0-0.6=1.4
と算出される。
この算出値「0.74-1.4」は、訂正後の請求項1の(iv)の値「0-1.15」と合致せず、よって、これらの値は矛盾している。
あるいは、その逆、つまり、(D99/D50)-(D10/D50)=0-1.15としても、上述した(i)、(ii)からは、(D99/D50)=(D10/D50)とはなり得ないため、やはり、これらの値は矛盾している。
このようなことから、訂正後の請求項1に記載は、明確性要件に違反するものである。
(2)サポート要件違反及び実施可能要件違反
本件特許の訂正請求後の課題解決手段は、本来の「微粉の除去/粗大粒子の除去により、分布のないシャープな分布を有する熱膨張性マイクロカプセル」をその範囲から除外し、適度な分布に調整することで、特に軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供できるというもの」とした(特許権者2024年7月9日提出意見書p6)。
一般に、使用する原料の組成やその添加量によって、分散工程前の配合物の物性が変化するだけでなく、得られる熱膨張性マイクロカプセルの物性も変化することは、当該技術分野の技術常識である。よって、上記実施例の極めて限定された例示のみで、特定の粒度分布を有する膨張性マイクロカプセルに包含される多種多様な熱膨張性マイクロカプセルが特に軽量化に優れるという効果が得られることは自明ではない。
以上より、発明の詳細な説明、つまり、実施例等に開示された内容から、訂正請求後の本件発明まで、拡張ないし一般化するための根拠はない。また、訂正請求後の本件発明に包含される熱膨張性マイクロカプセルを得るためには、当業者に期待し得る程度を越える厳しい試行錯誤が必要であり、発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許されるべきではない。
(3)新規性・進歩性欠如
申立人によって令和6年9月18日に提出された意見書において訂正により新たに生じた取消理由とされているが、異議申立書において申し立てられた取消理由であり、前記第4 6(1)で判断した取消理由と同じである。
2 当審の判断
(1)明確性要件
(D99-D10)/D50の算出値「0.74-1.4」は、訂正後の請求項1の(iv)の値「0-1.15」の範囲内であり、(i)及び(ii)と(iv)は両立する範囲がある以上、両者の値は本件訂正発明1を不明確とするほど矛盾しているとはいえない。
また、(D99/D50)-(D10/D50)=0-1.15であって、(D99/D50)=(D10/D50)とはなり得ないとしても、前記(i)及び(ii)と両立する範囲がある以上、両者の値は本件訂正発明1を不明確とするほど矛盾しているとはいえない。
よって、本件訂正発明1は明確である。
(2)サポート要件違反及び実施可能要件違反
ア サポート要件
本件訂正発明の課題は、表面が均一で、軽量性に優れる発泡成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することにあると認める。
そして、本件特許明細書の実施例の記載からみて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、
D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、
D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である、熱膨張性マイクロカプセル、すなわち、適度な分布に調整されたものが、前記課題を解決できることは理解できる。
なお、本件特許明細書の実施例の記載からみて、前記適度な分布に調整されたものに加え、分布のないシャープな分布を有するものも前記課題を解決できることも理解できる。
そうすると、発明の詳細な説明、つまり、実施例等に開示された内容から、本件訂正発明まで、拡張ないし一般化できるといえる。
イ 実施可能要件
本件特許明細書の実施例の記載からみて、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた体積換算粒子径のふるい下積算分布において、累積頻度10体積%の粒子径をD10、累積頻度50体積%の粒子径をD50、累積頻度99体積%の粒子径をD99とした場合、D10/D50が0.6以上0.9以下、かつ、D99/D50が1.64以上2.0以下であり、
D99とD50の体積換算比[(D99)3/(D50)3]が4.41以上8.0以下であり、
D99とD10の差をD50で除した値[(D99-D10)/D50]が0以上1.15以下である、熱膨張性マイクロカプセル、すなわち、適度な分布に調整されたものが、実施できることは理解でき、実施例のものの組成やエレメント式静止型分散器を用いた分散において、流量、エレメント孔径、エレメント数に基づけば、適度な分布に調整されたものを得るためには、当業者に期待し得る程度を越える厳しい試行錯誤が必要であるとはいえない。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(3)新規性・進歩性欠如
前記第4 6(1)のとおり。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、令和5年8月30日付け取消理由通知に記載した取消理由、令和6年5月14日付け取消理由通知に記載した取消理由、令和6年9月18日に提出された意見書において申し立てられた取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、4~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2、3に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700215