審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700202

積層造形経路生成装置、積層造形経路生成方法、積層造形システム、および、積層造形方法

審判番号
2023-700202
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-537252
登録番号
7126638
請求日
2023年02月21日
審決日
2023年06月27日
公報発行日
2023年07月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱電機株式会社
  • 【権利者代理人】高村 順
  • 【異議申立人】荒木 博之
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 河原 正
  • 審判官 杉山 輝和
分類
P1652.121-Y (B29C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7126638号発明「積層造形経路生成装置、積層造形経路生成方法、積層造形システム、および、積層造形方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7126638号の請求項1~4、8~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7126638号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願(特願2022-537252号)は、2022年(令和4年)3月24日を出願日とする国際出願であって、令和4年8月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和5年2月21日に、請求項1~4、8~10に係る特許に対し、特許異議申立人 荒木 博之(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7126638号の請求項1~4、8~10の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」、「本件特許発明8」~「本件特許発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4、8~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形するための前記造形経路を生成する積層造形経路生成装置において、 前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成する基準経路生成部と、 複数の前記層のそれぞれについて、前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した前記造形経路候補に基づいて前記造形経路を生成する造形経路生成部と、 を備え、 前記基準経路生成部は、複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成することを特徴とする積層造形経路生成装置。 【請求項2】 前記層定義面と前記造形物の造形形状とに基づいて、前記造形物の前記層定義面による断面領域を生成する層断面領域生成部、 をさらに備え、 前記造形経路生成部は、前記造形経路候補から前記断面領域を造形する部分を抽出することで前記造形経路を生成することを特徴とする請求項1に記載の積層造形経路生成装置。 【請求項3】 前記造形経路生成部は、前記造形経路候補から前記断面領域を造形する部分を抽出する際に、前記造形経路候補の中心から予め定められた幅の領域が前記断面領域と重なる場合、当該造形経路候補の部分を抽出して前記造形経路とすることを特徴とする請求項2に記載の積層造形経路生成装置。 【請求項4】 前記造形経路生成部は、層毎に指定された間隔を用いて、前記基準経路と平行であって、前記間隔をとった複数の前記造形経路候補を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層造形経路生成装置。」 「【請求項8】 材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形するための前記造形経路を生成する積層造形経路生成方法において、 前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成するステップと、 複数の前記層のそれぞれについて、前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成するステップと、 生成した前記造形経路候補に基づいて前記造形経路を生成するステップと、 を含み、 前記基準経路を生成するステップでは、複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成することを特徴とする積層造形経路生成方法。 【請求項9】 請求項1から7のいずれか1項に記載の積層造形経路生成装置と、 前記積層造形経路生成装置によって生成された前記造形経路に従って前記造形物を積層造形する積層造形装置と、 を備えることを特徴とする積層造形システム。 【請求項10】 材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形する積層造形方法において、 前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成するステップと、 複数の前記層のそれぞれについて、前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成するステップと、 生成した前記造形経路候補に基づいて前記造形経路を生成するステップと、 生成された前記造形経路に従って前記造形物を積層造形するステップと、 を含み、 前記基準経路を生成するステップでは、複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成することを特徴とする積層造形方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年2月21日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由 請求項1~4、8~10の特許に係る発明は、本件特許の出願前に、日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術又は甲第3号証に記載された技術に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、8~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2021/016666号 甲第2号証:Sajan Kapil et al, "5-AXIS SLICING METHODS FOR ADDITIVE MANUFACTURING PROCESS", The Minerals, Metals & Materials Society, Solid Freeform Fabrication 2017: Proceedings of the 28th Annual International Solid Freeform Fabrication Symposium-An Additive Manufacturing Conference Reviewed Paper, 2017, p.1886-1896 甲第3号証:Wang Fuji et al, "A Novel Printing Strategy in Additive Manufacturing of Continuous Carbon Fiber Reinforced Plastic Composites", SME, Manufacturing Letters, Vol.27, January 2021(24 December 2020), p.72-77(www.elsevier.com/locate/mfglet) (当合議体注:甲第1号証~甲第3号証を、以下、甲1~甲3と略す。) 第4 当合議体の判断 1 甲1の記載 甲1(国際公開第2021/016666号)には、以下の記載がある。 なお、国際公開第2021/016666号の原文の摘記を省略し、原文の対応箇所(段落番号等)を明示した上で、対応する箇所の日本語翻訳文のみを記載している。下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 (1) 1頁3~7行 (日本語訳) 「技術分野 [0001] 本発明は、付加造形、特に付加造形プロセスで印刷ツールを制御するためのツールパスを決定し、続いてそのツールパスに基づいて付加造形プロセスで印刷ツールを制御する方法に関する。」 (2) 1頁11行~3頁10行 (日本語訳) 「背景技術 [0003] 付加造形(「3D印刷」とも呼ばれる)プロセスでは、印刷メカニズム(「ツール」と呼ばれる)は、3D空間で事前定義されたパス(「ツールパス」と呼ばれる)をたどるようにコンピュータ制御され、印刷材料から目的のオブジェクトを作成する。 ・・・略・・・ [0006] 3D印刷は、従来、レイヤーごとの構築プロセスを伴う。このプロセスでは、レイヤーnの全てのツールパスが完了してから、次のレイヤーn+1に進む。・・・略・・・最初にオブジェクトをスライスする。 ・・・略・・・ [0007] ただし、このレイヤーごとのアプローチは、3軸付加造形システム、特に1つ又は2つの6軸ロボットアームを含むより高度なシステムでは非効率的であり、より高度な3次元造形を実行できる可能性がある。・・・略・・・厳格なレイヤーごとのパス計画アプローチは、この自由を利用していない。 [0008]・・・略・・・いくつかのより高度なツールパスが考案されている。ただし、これらのパスは本質的に、特定の長さのパスに対して多数のターンを伴う。重い部品や堆積ヘッドを高速で操作する場合、かなりの減速/加速が必要となる大規模なロボットアプリケーションでは、回転数が多すぎる可能性がある。ツールパスに多数の方向変更が含まれていると、ロボットは過度の振動と摩耗を受け、また、ロボットアームに加速して一定速度に達するのに十分なパス長がない場合、高速移動はできない。 [0009]・・・略・・・各セグメント内で異なるパス計画戦略を使用して、個々のオブジェクトレイヤーのパーティション化(セグメンテーション)を使用した。彼らはこれを「モジュラーパスプランニング(MPP)」と呼んでいる。MPPプロセスでは、全てのセグメントに対してパスが生成されると、それらは単一のレイヤーパスに結合される。ただし、堆積は層全体に沿って連続的ではない。代わりに、セクションの終わりに達すると、堆積が停止され、トーチはアークをオフにして材料を供給せずに次のセクションの開始点に移動する。したがって、この手法には、ツールの複数の非アクティブ化が含まれる。 ・・・略・・・ [0012] しかしながら、上記の各技術では、ツールパスの堆積は、次の層が開始される前に層(平面又は湾曲)が完全に堆積されなければならない層ごとのアプローチで計画される。」 (3) 3頁11~8頁2行 (日本語訳) 「発明の概要 [0013] 本発明の一態様は、印刷ツールを制御するためのツールパスを決定する方法を提供し、この方法は、 a)形成される3次元構造を示すデータを含む入力ファイルを受け取るステップと、 b)3次元構造を複数の構築層に分割するステップであって、ここで、構築層は構築方向に分離され、各構築層は構築方向に対して横方向に伸び、各構築層は、前記構築層と前記3次元構造の外面との交差を定義する外部輪郭を含むステップと、 c)前記3次元構造を埋めるツールパスを定義するステップであって、前記ツールパスは、少なくとも1つのより低い構築層を完全に埋める前に、前記構築方向に沿って1つ以上のより高い構築層を部分的に埋めることを含むステップと、 d)前記印刷ツールを制御して前記ツールパスに沿って移動して、前記3次元構造を形成するための一連の制御コマンドを含む印刷ツール制御アルゴリズムを生成するステップと、を含む。 ・・・略・・・ [0032] 本発明の第7の態様は、付加造形システムを提供し、前記付加積層造形システムは、 前記第1から第3の態様のいずれかによる方法によって生成された印刷ツール制御アルゴリズムを実行するように構成されたコンピュータプロセッサと、 前記印刷ツール制御アルゴリズムに基づいてコンピュータプロセッサによって生成された電気信号に応答する印刷ツールと、を含み、 前記電気信号は、前記印刷ツールをツールパスに沿って移動させて、事前定義された3次元構造を形成するように構成される。」 (4) 12頁22~26行 (日本語訳) 「[0070] 本明細書全体を通して、付加造形プロセスを実行するための「印刷ツール」という用語の使用は、スプレーガン102、印刷ヘッド114、及びロボットアーム104及び116のうちの1つ又は複数を指すことを意図している。これに関して、「ツールパス」は、印刷ヘッド114の先端又はツール中心点(TCP)と基板105との間の相対的な物理的位置を指し得る。」 (5) 13頁6行~28頁5行 (日本語訳) 「[0072] ツールパスプランニング [0073] 図4aを参照すると、・・・略・・・印刷ツールを制御するためのツールパスを決定する方法400が示される。最初のステップ401で、方法400は、形成される3次元構造を示すデータを含む入力ファイルを受信することを含む。 ・・・略・・・ [0076] オプションのステップ402において、3次元構造を構築するための1つ又は複数の構築パラメータは、ユーザインターフェースを介してユーザによって入力され得る。・・・略・・・ステップ402は、構築パラメータが手動で入力されるのではなく自動的に事前定義および設定され得るという点でオプションである。いずれの場合も、ツールパス決定プロセスを開始する前に、特定の構築パラメータを定義する必要がある。 [0077] 構築パラメータの例は以下を含む。 ・ラスター、スパイラル、ジグザグ、ハイブリッドパターン充填戦略などの充填戦略 ・構築層の層の高さ又は厚さ ・ツールパスの行間隔 ・印刷ヘッドの移動速度 ・印刷ヘッドのノズル角度 ・ツールパスの曲率半径の最小値又は最大値 ・印刷ヘッドの開始点 ・実際のツールパス仕様から許容される許容誤差又は偏差 ・・・略・・・ [0079] オプションのステップ403において、3次元構造は、複数のボリューム構造に分割され得る。このボリューム分割は、3次元構造がより複雑で、さまざまな形状のコンポーネントが含まれている場合に生じ得る。・・・略・・・したがって、方法400によって決定されるツールパスによって製造される3次元構造は、異なるボリューム構造が異なる構築方向を有する、より大きな3次元オブジェクトの一部を形成することができる。単純な構造の場合、構築プロセスは、3次元構造をボリューム構造に分割せずに実行できる。 [0080] ステップ404において、ボリューム構造のそれぞれについて、構築方向が構造を通して定義され、構築方向に対して横方向に延びる複数の構築層が定義される。例として、図7aは、破線で示される複数の水平面(例えば、701)に分割された3D十字形構造700を示している。構築方向は矢印702で示されている。スライスの結果である層701は図7bに示されている。 [0081] 付加造形プロセスは、基板105上への材料の連続的な堆積を伴うので、必然的に、基板105の表面に通常垂直である事前定義された構築方向が存在する。 ・・・略・・・ [0082] 各構築層は3次元構造全体に広がるため、構築層と形成されるオブジェクトの表面との交差を定義するループである1つ又は複数の輪郭が含まれる。 ・・・略・・・ [0083] 外部輪郭は、層平面と、十字形構造700の垂直壁などの3Dオブジェクトの外面との交差から生じる。定義された各層には、少なくとも1つの外部輪郭が含まれている必要がある。 ・・・略・・・ [0084]・・・略・・・従来の付加造形プロセスは、プロセスが次の層に移動する前に、層を完全に塗りつぶすことに依存している。つまり、外部輪郭と内部輪郭(存在する場合)の間の構築層を完全に埋める。 ・・・略・・・ [0089] ステップ405で、本発明に特有の部分層完成技術を採用することによって、ボリューム構造(又はステップ403で単一のボリューム構造のみが定義される場合は3次元構造全体)を埋めるためのツールパスが定義される。この部分レイヤー完了手法では、少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋めるツールパスが定義される。このように、ツールパスは、従来技術のように層ごとのアプローチに制約されず、3次元ボリューム構造全体を横断することから利用可能な自由度を利用する。 [0090] ステップ405で部分層完成技術を実行するために、いくつかの異なるアプローチが可能である。そのようなアプローチの1つは、最適化アルゴリズムを活用して、部分的な層交差を持つ適切なパスを定義することである。1つのアプローチでは、ツールパスの個別のセクションがボリューム構造内で定義され、グラフ理論に基づく最適化アルゴリズムを使用してこれらがリンクされる。例えば、ハミルトンパス探索アルゴリズムを適用して、ツールパスの各セクションを1回だけ使用しながら、隣接するツールパスのセクションをリンクすることができる。 [0091] 3次元では、層nのツールパスセクションは、層nの隣接領域、又は層n+1又はn-1の領域に隣接し得る。この手法は、セクションをリンクするために異なる層にまたがる複数の遷移が必要な複雑な形状を埋めようとする場合に特に役立つ。あるいは、ツールパスの近くのセクション間の距離をコストマトリックスとして記録することもできる。次に、コスト最小化ルーチンを実装して、近くのセクション間の最小パスを見つけることができる。「アンダーカット」を回避するために現在の層の特定の領域を塗りつぶす前に、最初に塗りつぶす必要がある下の層の領域を追跡するために、優先度グラフを作成できる。 [0092] 二重層ツールパス戦略 [0093] ここで図4bを参照すると、部分的な層の完成を実行するための二重層戦略に基づいてツールパスを定義するためにステップ405を実行する例示的な方法が示されている。ステップ405aで、各構築層は、1つ又は複数の横方向層要素又はパーティションに分割される。例として、図8は、3つの長方形のパーティションP1-P3に分割された図7の十字形構造700の層701を示している。 ・・・略・・・ [0094] ステップ405aは、各層について、外部輪郭によって囲まれた領域をより小さな多角形に分割することを含む。例えば、凸型の分割ルーチンを使用して凹型の頂点を削除し、充填パスの計算を簡単にすることができる。 ・・・略・・・ [0095] ステップ405bにおいて、第1のパーティションを完全に埋める第1のツールパスセクションは、第1の事前定義された充填戦略に基づいて決定される。充填戦略は、ラスター、スパイラル、又はハイブリッド戦略などの複数の既知の戦略のいずれか1つであり得る。図9aは、長方形のパーティションのスパイラルパターンの充填戦略の例を示し、図9bは、同じ領域のラスターパターンの充填戦略の例を示している。これらの図では、実線は破線で示された長方形の輪郭内のツールパスを表している。輪郭の頂点には1、2、3、4のラベルが付けられ、インフィルパスの最初の2つの頂点には5と6のラベルが付けられる。 ・・・略・・・ [0097] ラスター充填戦略では、最初の輪郭セグメントを距離Lだけオフセットし、次のセグメントの方向に少し移動してから、最初のセグメントをオフセットする。 ・・・略・・・ [0099] 終了点は、充填戦略ごとに異なる場所にあることに注意すべきである。このように、コンピュータアルゴリズムは、さまざまなラスターとスパイラルの組み合わせを使用して、隣接するパーティションの開始点に隣接する点、例えば、上又は下のレイヤーに到達できる。 [0100] ステップ405cにおいて、第2の層領域を完全に埋める第2のツールパスセクションが、第2の事前定義された充填戦略に基づいて決定される。第2の事前定義された充填戦略は、第1の事前定義された充填戦略と同じであっても異なっていてもよい。第2の層領域は、好ましくは、次の隣接層(n+1)の第1層領域に隣接して配置される。部分的又は完全な連続性を維持するために、第1の層領域内の第1のツールパスセクションの終了点は、好ましくは、第2のツールパスセクションの対応する開始点に直接隣接するか、又は可能な限り近い。これは、図11に概略的に示されています。この図は2つの隣接する層の同じ正方形の層領域のツールパスセクションを示している。図に示すように、層nでは、ツールパスセクションはポイントAからポイントBに伸び、層n+1では、ツールパスセクションはポイントBからポイントAに戻り、2つの隣接するレイヤー領域にまたがる連続したツールパスを提供する。 [0101] 図11に示す例では、機能が実行される順序は、i)点Aにつながる正方形の層nの下部輪郭、ii)層nの充填ポイントAからポイントB、iii)層n+1にステップアップし、ポイントBからポイントAに逆方向に塗りつぶす、iv)層nにステップダウンし、反時計回りに移動して黒い点に移動する、v)層n+1にステップアップし、完全な反時計回りの輪郭ループを実行する、である。終了点は開始点と同じだが、1層上にある。もしツールヘッドをもう一度1層上げてパターンを繰り返すと、次の2つの層(n+2とn+3)内の層領域を、層n+2又はn+3のいずれかを完全に埋める前に、同様の2層の方法で埋めることができる。 [0102] このような充填戦略は、層n+1のツールパスセクションが、隣接する層nの隣接する層領域のツールパスセクションの直接の逆である二重層戦略と呼ぶことができる。図11は逆ラスターパターンを示すが、他の相互パターンが可能であることが理解される。例えば、1つの二重層充填戦略には、層nの外層領域ポイントで始まり、層nの中央層領域ポイントで終わるスパイラル充填パターンが含まれる場合がある。隣接する層n+1の充填戦略には、中心点で始まり外側点で終わる逆スパイラルパターンが含まれる。 [0103] 図12aから図12cは、図7に示される十字形構造700の層701を埋めるために使用することができる3つの例示的なツールパスを示す。ここで、矢印はツールヘッドの移動方向を示し、ドットは現在の層から上の層への遷移を示す。破線は、上又は下のレイヤーから現在のレイヤーへの移行移動を表す。図12a及び図12bのパス戦略は、図8に示されているステップ404の層分割を活用しない不十分な戦略を表す。図12c及び図12dのパス戦略は、層分割を活用し、連続した非交差パスを提供する改善された戦略を表す。 ・・・略・・・ [0106] 図12cは、図8に示されている層分割に従うことにより、十字形構造を埋める連続した交差しないパスを示す。ラスター充填パターンは、各パーティション内で縦方向に配置される。輪郭ループパスは、あるパーティションから別のパーティションに移動するために使用される。各パーティションに示されている層から上の層への遷移が1つと、左側の外部輪郭に別の遷移がある(合計4つの層遷移)。上の層には同じラスターパターンが含まれているが、移動方向は逆方向である。図12dは、同じツールパスを示しているが、2つの隣接する層の3Dビューである。 [0107] 図12c及び図12dの戦略のように、ツールパスが連続的である場合、印刷ヘッド114への印刷材料の流れは、印刷プロセス全体を通して維持することができる。これは、材料の流れのプロセスを阻害する可能性がある印刷ヘッド114の望ましくない非活性化(又は「ジャンプ」)を回避する。送り機構によっては、送りをオフにしてから再度オンにしても、ほぼ瞬時に反応しない場合がある。粉末供給プロセスでは、供給が再開されると、多くの場合、一定でない又は不安定なロジスティクスフローの期間がある。コールドスプレープロセスでは、粉末注入の突然の乱れが超音速ガス流の変動を引き起こし、堆積物の欠陥や過剰な多孔性、又はノズルの閉塞を引き起こす。粘性流体のポンプ駆動供給では、圧力の蓄積のために流れを止めることは困難である。これにより、堆積する材料の量、処理時間、及び製造プロセスの実行に必要なエネルギーを削減することもできる。 [0108] 図11及び図12に示されているツールパス戦略に従うと、構造の2つの隣接する層の領域が部分的に埋められ、その後、これらの層のいずれかが完全に埋められることが指摘される。これは、構造が純粋に層ごとに製造され、隣接する層が前の層が完成するまで開始されない従来技術の技術とは異なる。ツールパスのこの追加の柔軟性は、時間、コスト、及び製造品質に利点がある、より連続的なツールパスを提供する。さらに、部分的な層補完技術は、オプションで、構築方向に沿ってより多くの層間ツール交差を定義することを提供する。これにより、層の交差が構築方向に沿った補強として機能できるため、層化が減少し、構築全体の強度を高めることができる。 [0109] 従来の3D印刷部品は、X-Y(構築層)平面に平行な方向で測定されたプロパティと比較して、Z方向(構築方向)のプロパティが劣るため、機械的異方性が発生することがよくある。 ・・・略・・・ [0110]・・・略・・・連続繊維印刷と呼ばれることもあるが、実際には、繊維の敷設は全ての層の完了時に中断され、通常は各層内で何度も中断される。・・・略・・・。しかしながら、本発明者らは、層交差をツールパスに組み込むことにより、製造プロセスに面倒なステップを大幅に変更又は追加する必要なしに、Z方向特性を改善するより簡単な方法を提供することを確認した。 ・・・略・・・ [0112] ステップ405dで、ツールパスが完了したかどうかに関して判断がなされる。埋める追加の層領域がある場合、ツールパスセクションの開始点を、隣接する層又は層領域の前のツールパスセクションの対応するツールパスセクションの終了点とマッチングさせることによって、ステップ405b及び405cは、全ての層領域に対して繰り返される。マッチングとは、それぞれのツールパスセクションの開始点と終了点が、印刷ヘッド114の非アクティブ化又はジャンプを最小化又は回避するのに十分に近いことを意味する。 [0113] ツールパスセクション間の連続パスを実現するには、ツールパス戦略がパーティションの開始点と終了点を接続する際に、構造の外部輪郭をループすることが有利である。この輪郭ループは、個々のパーティション又は層領域がばらばらになる可能性を減らし、連続したパスを提供する能力を高める。したがって、外部輪郭パスは、充填パスの各セクションの終了点と開始点の間のリンクを提供するセクションに分割される。 ・・・略・・・ [0131] 図4aに戻ると、最後に、ステップ406で、定義されたツールパスに基づいて印刷ツール制御アルゴリズムが生成される。アルゴリズムは、印刷ヘッド114を制御してツールパスに沿って移動して3次元構造を形成するための一連の制御コマンドを含む。このアルゴリズムは、制御コンピュータ118及び制御信号120、122、及び124として送信される制御コマンドによって実行され、ロボットアーム104及び116及びスプレーガン102を介して印刷プロセスを実行することができる。 ・・・略・・・ [0134] 方法400は、積層造形プロセスを実行するための最初の手順を形成することが理解されよう。これに関して、本開示の一態様は、付加造形プロセスにおいてシステム100などの印刷ツールを制御する方法に関する。この方法には次のものが含まれまる。 a)制御コンピュータ118などのコンピュータプロセッサによって、方法400によって生成された印刷ツール制御アルゴリズムを実行する。そして、 b)印刷ツール制御アルゴリズムに応答して、電気信号(例えば、信号120、122、および124)を生成して、定義されたツールパスに沿って移動して事前定義された3次元構造を形成するように印刷ツールを制御する。 ・・・略・・・ [0136] 方法400は、制御コンピュータ118などのコンピュータによって実行されると、コンピュータに方法400を実行させる命令を含むコンピュータプログラムとして実装され得ることが理解されよう。方法400はまた、コンピュータ可読記憶媒体に記憶された一組の命令として具体化され得る。記憶媒体がコンピュータ(制御コンピュータ118など)とインターフェースされるとき、命令は、コンピュータに方法400を実行させるためにコンピュータによって実行され得る。」 (6) Fig.4a 「 [図:0001399405000001.jpg] 図4a 」 (7) Fig.4b 「 [図:0001399405000002.jpg] 図4b 」 (8) Fig.7a 「 [図:0001399405000003.jpg] 図7a 」 (9) Fig.7b 「 [図:0001399405000004.jpg] 図7b 」 (10) Fig.8 「 [図:0001399405000005.jpg] 図8 」 (11) Fig.9b 「 [図:0001399405000006.jpg] 図9b 」 (12) Fig.11 「 [図:0001399405000007.jpg] 図11 」 (13) Fig.12c 「 [図:0001399405000008.jpg] 図12c 」 (14) Fig.12d 「 [図:0001399405000009.jpg] 図12d 」 2 引用発明 (ア) 甲1でいう本発明は、「付加造形プロセスで印刷ツールを制御するためのツールパスを決定し、続いてそのツールパスに基づいて付加造形プロセスで印刷ツールを制御する方法」([0001])に関する。 また、甲1の[0073]によれば、「図4a」には、「印刷ツールを制御するためのツールパスを決定する方法400」が示されていることが理解できる。 さらに、甲の1の[0093]によれば、「部分的な層の完成を実行するための二重層戦略に基づいてツールパスを定義するためにステップ405を実行する」「方法」として、「図4b」に例示された方法があることが理解でき る。 (イ) 甲1の[0070]の記載によれば、甲1でいう「印刷ツール」は、「スプレーガン102、印刷ヘッド114、及びロボットアーム104及び116のうちの1つ又は複数を指」し、「ツールパス」とは、「印刷ヘッド114の先端又はツール中心点(TCP)と基板105との間の相対的な物理的位置を指」す。 (ウ) 甲1の[0136]の記載によれば、「方法400は」、「制御コンピュータ118」「によって実行される」ことが理解できる。 そうすると、甲1に記載の「制御コンピュータ118」は、「印刷ツールを制御するためのツールパスを決定する方法400」を実行するものであり、また、「制御コンピュータ118」は、「方法40」の各ステップを実行する実行部を備えているということができる。 (エ) 上記(ア)~(ウ)と、甲1の[0001]、[0070]、[0073]、[0076]~[0077]、[0079]~[0083]、[0089]、[0093]~[0095]、[0099]、[0100]、[0112]、[0131]、[0136]、図4a及び図4b等の記載から、甲1には、「図4a」に示された、「付加造形プロセスで」([0001])、「スプレーガン102、印刷ヘッド114、及びロボットアーム104及び116のうちの1つ又は複数を指す」([0070])、「印刷ツールを制御するための」([0073])、「印刷ヘッド114の先端又はツール中心点(TCP)と基板105との間の相対的な物理的位置を指」([0070])す、「ツールパスを決定する方法400」([0073])において、「部分的な層の完成を実行するための二重層戦略に基づいてツールパスを定義するためにステップ405を実行する」「方法」([0093])である「図4b」に例示された方法を採用した、「方法400」([0073])を実行する「制御コンピュータ118」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「 付加造形プロセスで、スプレーガン102、印刷ヘッド114、及びロボットアーム104及び116のうちの1つ又は複数を指す、印刷ツールを制御するための、印刷ヘッド114の先端又はツール中心点(TCP)と基板105との間の相対的な物理的位置を指す、ツールパスを決定する方法400を実行する制御コンピュータ118であって、 形成される3次元構造を示すデータを含む入力ファイルを受信する、最初のステップ401の実行部、 オプションのステップ402の実行部であって、ステップ402は、3次元構造を構築するための1つ又は複数の構築パラメータが、ユーザインターフェースを介してユーザによって入力されるものであり、 構築パラメータの例は以下を含む、ステップ402の実行部、 ・ラスター、スパイラル、ジグザグ、ハイブリッドパターン充填戦略などの充填戦略 ・構築層の層の高さ又は厚さ ・ツールパスの行間隔 ・印刷ヘッドの移動速度 ・印刷ヘッドのノズル角度 ・ツールパスの曲率半径の最小値又は最大値 ・印刷ヘッドの開始点 ・実際のツールパス仕様から許容される許容誤差又は偏差 ステップ403の実行部であって、ステップ403においては、 3次元構造は、複数のボリューム構造に分割することができ、ボリューム分割は、3次元構造がより複雑で、さまざまな形状のコンポーネントが含まれている場合に生じ、方法400によって決定されるツールパスによって製造される3次元構造は、異なるボリューム構造が異なる構築方向を有し、単純な構造の場合、構築プロセスは、3次元構造をボリューム構造に分割せずに実行できる、ステップ403の実行部、 ボリューム構造のそれぞれについて、構築方向が構造を通して定義され、構築方向に対して横方向に延びる複数の構築層が定義されるステップ404の実行部であって、 付加造形プロセスは、基板105上への材料の連続的な堆積を伴うので、基板105の表面に通常垂直である事前定義された構築方向が存在し、 各構築層は3次元構造全体に広がるため、構築層と形成されるオブジェクトの表面との交差を定義するループである輪郭が含まれ、 外部輪郭は、層平面と、オブジェクトの外面との交差から生じ、定義された各層には、少なくとも1つの外部輪郭が含まれる、ステップ404の実行部、 ボリューム構造(又はステップ403で単一のボリューム構造のみが定義される場合は3次元構造全体)を埋めるためのツールパスが定義されるステップ405の実行部であって、 ステップ405の部分レイヤー完了手法では、少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋めるツールパスが定義される、ステップ405の実行部であって、 ここで、 ステップ405は、部分的な層の完成を実行するための二重層戦略に基づいてツールパスを定義するものであり、 ステップ405は、 各構築層が、1つ又は複数の横方向層要素又はパーティションに分割されるステップ405aであって、 各層について、外部輪郭によって囲まれた領域をより小さな多角形に分割することを含む、ステップ405a、 第1のパーティションを完全に埋める第1のツールパスセクションは、第1の充填戦略に基づいて決定され、充填戦略は、ラスター、スパイラル、又はハイブリッド戦略などの複数の既知の戦略のいずれか1つであり得る、ステップ405bであって、 終了点は、充填戦略ごとに異なる場所にあり、コンピュータアルゴリズムは、さまざまなラスターとスパイラルの組み合わせを使用して、隣接するパーティションの開始点に隣接する点、例えば、上又は下のレイヤーに到達できる、ステップ405b、 第2の層領域を完全に埋める第2のツールパスセクションが、第2の充填戦略に基づいて決定されるステップ405cであって、第2の充填戦略は、第1の充填戦略と同じであっても異なっていてもよく、第2の層領域は、好ましくは、次の隣接層(n+1)の第1の層領域に隣接して配置され、部分的又は完全な連続性を維持するために、第1の層領域内の第1のツールパスセクションの終了点は、好ましくは、第2のツールパスセクションの対応する開始点に直接隣接するか、又は可能な限り近い、ステップ405c、 ツールパスが完了したかどうかに関して判断がなされるステップ405dであって、埋める追加の層領域がある場合、ツールパスセクションの開始点を、隣接する層又は層領域の前のツールパスセクションの対応するツールパスセクションの終了点とマッチングさせることによって、ステップ405b及び405cは、全ての層領域に対して繰り返され、マッチングとは、それぞれのツールパスセクションの開始点と終了点が、印刷ヘッド114の非アクティブ化又はジャンプを最小化又は回避するのに十分に近いことを意味する、ステップ405dとからなる、ステップ405の実行部、 定義されたツールパスに基づいて印刷ツール制御アルゴリズムが生成されるステップ406の実行部であって、 アルゴリズムは、印刷ヘッド114を制御してツールパスに沿って移動して3次元構造を形成するための一連の制御コマンドを含む、ステップ406の実行部を備える、 方法400を実行する制御コンピュータ118。」 3 本件特許発明1について (1) 対比 本件特許発明1と、引用発明とを対比する。 ア 引用発明は、「付加造形プロセス」において、「印刷ツールを制御するための、印刷ヘッド114の先端又はツール中心点(TCP)と基板105との間の相対的な物理的位置を指す」、「ツールパスを決定する」ものである。 イ 引用発明の「ステップ403の実行部」によれば、「3次元構造」が「ボリューム構造」に分割され、「ボリューム構造のそれぞれについて」、「基板105の表面に通常垂直である事前定義された構築方向」「に対して横方向に延びる複数の構築層が定義され」ること、「付加造形プロセス」においては、「基板105上への材料の連続的な堆積を伴う」ことが理解できる。 ウ 引用発明の「ステップ405の実行部」によれば、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋めるツールパスが定義される」ことが理解できる。 エ 引用発明の「ステップ405の実行部」によれば、「定義されたツールパスに基づいて」、「印刷ヘッド114を制御してツールパスに沿って移動して3次元構造」が「形成」されることが理解できる。 オ ここで、引用発明は、「付加造形プロセス」に係るものであるから、上記イの「基板105上への材料の連続的な堆積」は、上記エの「定義されたツールパスに基づいて」、「ツールパスに沿って」、「制御」、「移動」される「印刷ヘッド114」からの「材料」の射出、「付加」によることは技術常識より明らかである。 そうすると、上記ア~エより、引用発明は、「付加造形プロセス」における「ツールパスを決定」するものであって、当該「ツールパス」とは、「材料」を「ツールパス」に沿って「付加」し「堆積」させて、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋める」ようにすることにより、「構築方向」に「複数の定義層」を形成、積層して、「3次元構造」を「造形」するためのもの、ということができる。 引用発明の「付加造形プロセス」の、このような動作原理からみて、引用発明の「材料」、「ツールパス」及び「3次元構造」は、本件特許発明1の「材料」、「造形経路」及び「造形物」に相当する。 そうすると、引用発明の「ツールパスを決定する方法400を実行する制御コンピュータ118」は、本件特許発明1の「積層造形経路生成装置」に相当し、両者は、「材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形するための前記造形経路を生成する」点で共通する。 カ 造形経路生成部 引用発明の「ツールパスを決定する方法400を実行する制御コンピュータ118」が、「ツールパス」(造形経路)を生成する部分(装置)を具備することは明らかである。 したがって、本件特許発明1と引用発明とは、「複数の前記層」「について、」「前記造形経路を生成する造形経路生成部」を備える点で共通する。 キ 基準経路生成部 本件特許発明1の「基準経路」は、複数の層に共通する1つの基準経路面と各層定義面との交線として、複数の層のそれぞれに対応して複数生成され、その後、各層定義面内で、当該「基準経路」と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した造形経路候補に基づき造形経路を生成するという一連のステップを前提として生成されるものである。 一方、引用発明は、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋めるツールパスが定義される」点に技術的特徴を有するものである。 そうすると、引用発明の「ツールパス」は、ボリューム構造のそれぞれにおいて、各構築層の(輪郭)形状や入力される充填戦略に基づき、引用発明の一連のステップ(ステップ405a~405d)により、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋める」ように定義、決定されるものであって、何らかの基準となる面に基づいて、基準パスが生成されて、当該基準パスに基づいて、複数の候補となるパスが生成されるような一連のステップを経て、生成されるパスとはいえないし、引用発明の一連のステップにおいて、基準パスが生成されることがないことも明らかである。 したがって、引用発明の「ツールパスを決定する方法400を実行する制御コンピュータ118」が、本件特許発明1の「前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成する」及び「複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」とされる「基準経路生成部」を有するとはいえない。 (2) 一致点及び相違点 上記(1)の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と、引用発明は、 「材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形するための前記造形経路を生成する積層造形経路生成装置において、複数の前記層について、前記造形経路を生成する造形経路生成部を備えた、積層造形経路生成装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本件特許発明1は、「前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成する基準経路生成部」であって、「前記基準経路生成部は、複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」「基準経路生成部」を備え、「造形経路生成部」が、複数の前記層「のそれぞれに」ついて、「前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するのに対して、 引用発明は、上記の「基準経路生成部」を備えておらず、「造形経路生成部」も、複数の前記層「のそれぞれ」について、「前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するものではない点。 (3) 判断 ア 新規性について 上記のとおり、本件特許発明1と引用発明とは、上記相違点1において相違する。 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。 イ 進歩性について 上記相違点1について検討する。 (ア)上記(1)キに示したとおり、引用発明は、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋めるツールパスが定義される」点に技術的特徴を有するものであるから、引用発明において、甲1に接した当業者が、少なくとも相違点1に係る本件特許発明1の構成のうち、「複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」との構成を採用する動機はない。 したがって、相違点1のその他の構成について検討するまでもなく、引用発明において、甲1の記載に基づき、相違点1に係る構成とすることが、当業者に容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ)引用発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用する動機がない以上、仮に他の文献に相違点1に係る本件特許発明1の構成が開示されていたとしても、本件特許発明1が、甲1に記載された発明及び当該他の文献に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。しかしながら、特許異議申立人は、甲1並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づく進歩性の欠如についても取消理由として主張している(特許異議申立書11頁3行~25頁5行)ので、以下検討する。 特許異議申立人が提出した甲2(1886頁1~5行、1888頁38~41行、1889頁1~7行、1889頁図3、1890頁16~18行、1891頁3~13行、1892頁図6等)には、付加製造のための5軸スライシング方法、3軸スラシング方法等に関し、連続的に層を堆積するために、各スライスに対して、まず、(a)外部輪郭を堆積、積層し、その後、(b)内部領域を充填することや、内部領域充填のために、輪郭平行ツールパスによる内部領域充填戦略とする(特に、1889頁6~7行、図3(d))ことが記載されている。 (甲2 図3) [図:0001399405000010.jpg] (甲2 図6) [図:0001399405000011.jpg] また、特許異議申立人が提出した甲3(72頁タイトル、72頁右欄13行~73頁左欄16行、73頁図1等)には、連続炭素繊維補強樹脂部品の付加製造における、スライシング(73頁図1(a))、充填パス生成(同図1(b)~(f))、層内接続(同図1(g)~(h))、層間接続(同図1(i))を含む、新規な印刷戦略において、経路の飛ばしや集まった経路接続のない連続した印刷とするために、充填パス生成において、自己交差ループと相互交差ループの処理アルゴリズムを使用して、まず試料の寸法精度を保証するために、内部及び外部境界曲線が印刷軌道幅の半分(d/2)だけオフセットされてE11、E21が生成され、その後、内部輪郭が完全であれば、E21が外側に3個オフセットされてE22~E24が達成され、次に、領域全体が充填されるまで、外部輪郭が内側ヘオフセットされ、このステップの間に自己交差ループと相互交差ループが生成され、E13とE24が交差(図1(c))すると、相互交差(図1(d))後は、E31が生成され、加えて、E34が自身と自己交差(図1(d))すると、自己交差アルゴリズムに基づき、E41、E51、E61が得られるようにする(特に、73頁「2.2. Filling path generation」)ことが記載されている。 (甲3 図1) [図:0001399405000012.jpg] しかしながら、甲2及び甲3に記載された上記事項はいずれも、その内容からみて、各層毎に充填するツールパスを生成する技術であり、引用発明でいう従来技術に係るものであって、付加造形技術という技術分野自体は引用発明と共通するものの、ツールパスを生成、決定する手法に関して、引用発明の「ツールパス」を、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋める」ように定義、決定する技術とは前提が異なるものである。 そうすると、引用発明において、ステップ405及びその実行部の一部として、ツールパスを決定する手法に関して前提が異なる甲2及び甲3に記載のツールパスを決定する技術を採用する動機付けはない。 さらに、甲2に記載された上記事項(特に、図3(a),(d))によれば、複数の層に共通する1つのドーナツ形状の表面(トーラス面)に基づいて、(各層の輪郭に平行な)ツールパスを決定する技術が記載されているといえるかもしれないが、複数の層に共通する1つの基準経路面に基づいて、各層において「基準経路」を作成し、その後、「基準経路」と平行な複数の経路を「ツールパス候補」(造形経路候補)として生成し、生成した「ツールパス候補」に基づき「ツールパス」(造形経路)を生成しているとまではいえない。 また、甲3に記載された上記事項(特に、図1(a),(e))によれば、複数の層に共通する1つの面に基づいて、各層の外部輪郭に平行なE11、E12からなる充填パスを決定する技術が記載されているといえるかもしれないが、他の充填パスがこれらE11、E12と平行となるわけではない(図1(e))から、複数の層に共通する1つの基準経路面に基づいて、各層において「基準経路」を作成し、その後、「基準経路」と平行な複数の経路を「充填パス候補」(造形経路候補)として生成し、生成した「充填パス候補」に基づき「充填パス」(造形経路)を生成しているとまではいえない。 そうすると、甲2及び甲3のいずれにも、上記(1)キで示したような、一連のステップを前提として、「複数の層に共通する1つの基準経路面」に基づいて、複数の層のそれぞれに対して「基準経路」を生成する技術や、当該「基準経路」と平行な複数の経路を「造形経路候補」として生成し、生成した「造形経路候補」に基づき「造形経路」を生成する技術が記載されているとはいえない。 してみると、仮に、甲2及び甲3に記載の技術を、引用発明に採用することができたとしても、相違点1に係る本件特許発明1の構成に至らない。 したがって、引用発明1において、甲2及び甲3に記載された技術を採用して、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ) 本件特許発明1の効果 本件特許発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「層の断面形状が層毎に変わるような場合であっても、適当な基準経路面を指定することによって、層断面領域と基準経路との位置関係を維持することができ、各層で連続的な造形を長く行える造形経路が得られ、全体的に効率のよい造形が可能になる」、「上下層間で造形経路の位置ずれが抑制され、位置ずれによるダレなどの造形不良を抑制することが可能になる」(【0048】)という従来技術から予測し難い顕著な効果を奏する。 (エ) 特許異議申立人の特許異議申立書の主張について a 特許異議申立人は、「(4)本件特許を取り消すべき理由」「ウ.本件発明と証拠に記載された発明との対比」「(ア)本件特許発明1(請求項1)」「a.一致点」(特許異議申立書19頁下から4行~22頁最下行)において、 「請求項1の「外部輪郭」については、「外部輪郭は、層平面と、十字形構造700の垂直壁などの3Dオブジェクトの外面との交差から生じる。定義された各層には、少なくとも1つの外部輪郭が含まれている必要がある」とされています・・・略・・・。」、 「図9bは、同じ領域のラスターパターンの充填戦略の例を示している。これらの図では、実線は破線で示された長方形の輪郭内のツールパスを表している」とされ・・・略・・・、さらには「ラスター充填戦略では、最初の輪郭セグメントを距離Lだけオフセットし、次のセグメントの方向に少し移動してから、最初のセグメントをオフセットする」とされています・・・略・・・。」、 「以上からすると、・・・略・・・甲1発明は、構築層を定義する面と、ツールパスを生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する3次元構造の外面との交線から、基準経路として外形輪郭を生成するものと言えます。また、・・・略・・・甲1発明は、複数の構築層のそれぞれについて、基準経路としての外形輪郭のオフセットによって生成される侯補、つまり基準経路としての外形輪郭と平行な候補に基づいてツールパスを生成するものと言えます。」と主張する。 ここで、甲1の「図9b」は、「ラスター、スパイラル、又はハイブリッド戦略などの複数の既知の戦略のいずれか1つであり得る」充填戦略における「長方形のパーティション」のラスターパターンの充填戦略の例示(甲1[0095])であるところ、「図9b」及び「最初の輪郭セグメントを距離Lだけオフセットし、次のセグメントの方向に少し移動してから、最初のセグメントをオフセットする」([0097])とのことから、長方形のパーティションに対するラスター充填戦略として、長方形の輪郭のセグメント(線分12)に平行な複数のツールパスが把握できる。 しかしながら、甲1に記載された発明においては、各構築層の(輪郭)形状や入力される充填戦略に基づき、ツールパスは、「少なくとも1つの下位構築層を完全に埋める前に、構築方向に沿って1つ以上の上位構築層を部分的に埋めることによってボリューム構造を埋め」るように最終的に決定される。 そうすると、図9bに例示される長方形のパーティションに対するラスター充填戦略が入力、設定されたからといって、これらの長方形の輪郭のセグメント(線分12)に平行な複数のツールパスのみから、ボリューム構造を埋めるツールパスが生成され、決定されるわけではない。実際、甲1の図12c及び図12dに示された、図8に示されている層分割に従う、十字形構造を埋める連続した交差しないツールパスは、図9bに示された長方形のパーティションの輪郭のセグメントに平行な複数のツールパスだけでなく、長方形の輪郭をループ状に進むツールパスに基づいて、生成、決定されている。 してみると、特許異議申立人が指摘する図9bの記載内容を検討しても、甲1には、複数の層のそれぞれについて、複数の層に共通する1つの基準経路面と各層定義面の交線として、基準経路を生成することが記載ないし示唆されているとはいえない。 したがって、上記主張は採用できない。 b また、特許異議申立人は、同「b.相違点」(特許異議申立書23頁1行~25頁5行)において、 「本件特許発明1の構成A4は「基準経路」を「複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」であるのに対し、甲1発明において構成A4の「基準経路面」に相当する3次元構造の外面は、複数の構築層に共通する1つの面とは必ずしも言い得ず、この点が甲1発明と本件特許発明1との相違点であると言えます。」、 「甲第2号証の「3軸スライシング」では、図3、特に後掲する図3(b)に明りょうに示されているように、複数のスライスに共通する1つの面、より具体的にはトーラス(ドーナツ形状の表面)に対する個々のスライスの交差輪郭が求められ、そのオフセットでツールパスが生成されています・・・略・・・。つまり、甲第2号証の「3軸スライシング」では、ツールパスを、複数のスライスに共通する1つの面に基づいて生成しています。」、 「また、甲第2号証の「6軸スライシング」では、図6、後掲する特に図6(b)に明りょうに示されているように、複数のスライスに共通する1つの面、より具体的には円筒面に対する個々のスライスの交差輪郭が求められ、そのオフセットでツールパスが生成されています・・・略・・・。つまり、甲第2号証の「6軸スライシング」では、ツールパスを、複数のスライスに共通する1つの面に基づいて生成しています。」、 「甲第3号証に開示されているのは、「連続炭素繊維補強樹脂部品の付加製造のための新規な印刷戦略」に関するものであり・・・略・・・、付加製造のための充填経路の生成方法が記載されています・・・略・・・。つまり、甲第3号証は甲1発明と技術分野が共通しています。」、 「甲第3号証の充填経路の生成方法では、図1、特に後掲する図1(i)に明りょうに示されているように、複数にスライスの外側輪郭は1つの面に属しており、外側輪郭のオフセットにより充填経路が生成されています・・・略・・・。つまり、甲第3号証では、ツールパスを、複数のスライスに共通する1つの面(外側輪郭)に基づいて生成しています。」、 「甲第2号証と甲第3号証はいずれも甲1発明と技術分野が共通しているところ、以上のように、これらの各号証には「基準経路」を「複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」ことが教示されています。よって、本件特許発明1は、甲1発明に甲第2号証又は甲第3号証の教示を適用することで、当業者が容易に発明できたものであると言えます。」と主張する。 しかしながら、上記(イ)で述べたとおり、引用発明に、ツールパスを決定する手法において、前提が異なる甲2及び甲3に記載のツールパスを決定する技術を採用する動機付けはなく、また、甲2及び甲3には、「基準経路」を「複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」ことが教示されているともいえないから、引用発明において、甲2及び甲3に記載された技術を採用して、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 したがって、上記主張は採用できない。 ウ 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4 本件特許発明2~4について 本件特許発明2~4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。 そうすると、上記3(3)のとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない以上、本件特許発明2~4は、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 5 本件特許発明8について (1) 引用方法発明 甲1の[0001]、[0070]、[0073]、[0076]~[0077]、[0079]~[0083]、[0089]、[0093]~[0095]、[0099]、[0100]、[0112]及び[0131]、図4a及び図4b等の記載から理解される、「図4a」に示された「ツールパスを決定する方法400」([0073])において、「部分的な層の完成を実行するための二重層戦略に基づいてツールパスを定義するためにステップ405を実行する」「方法」([0093])として「図4b」に示された方法を採用した、「方法400」に係る発明を、以下「引用方法発明」という。 (2) 対比 本件特許発明8と引用方法発明との対比は、上記3(1)における対比と同様である。 (3) 一致点及び相違点 上記対比結果を踏まえると、本件特許発明8と、引用方法発明は、 「材料を造形経路に沿って付加して形成する層を複数積層することによって造形物を造形するための前記造形経路を生成する積層造形経路生成方法において、前記造形経路を生成するステップを含む、積層造形経路生成方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点8) 本件特許発明8は、「前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成するステップ」であって、「複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」「前記基準経路を生成するステップ」と、「複数の前記層のそれぞれについて、前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成するステップ」とを備え、「前記造形経路を生成するステップ」が、「生成した前記造形経路候補に基づいて」造形経路を生成するのに対して、 引用方法発明が、これらの「ステップ」を含んでおらず、「前記造形経路を生成するステップ」も、「生成した前記造形経路候補に基づいて」造形経路を生成するものではない点。 (4) 判断 相違点8は、相違点1の、「積層造形経路生成装置」における「基準経路生成部」及び「造形経路生成部」のそれぞれの構成を、「積層造形経路生成方法」における1つのステップの構成及び2つのステップの構成としてそれぞれ言い換えたものにすぎないから、上記3(3)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明8は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6 本件特許発明9について (1) 引用システム発明 ア 甲1の[0032]の記載によれば、「付加積層造形システム」として、「印刷ツール制御アルゴリズムを実行するように構成されたコンピュータプロセッサ」と、「前記印刷ツール制御アルゴリズムに基づいてコンピュータプロセッサによって生成された電気信号に応答する印刷ツールと、を含み」、「前記電気信号は、前記印刷ツールをツールパスに沿って移動させて、事前定義された3次元構造を形成するように構成される」ものが理解される。 また、甲1の「0134」の「制御コンピュータ118などのコンピュータプロセッサ」との記載によれば、甲1の「制御コンピュータ118」は「コンピュータプロセッサ」でもある。 イ 上記アと甲1の記載(上記2で挙げた記載に加え、[0032]、[0134])から理解される、「印刷ツール制御アルゴリズムを実行するように構成された」引用発明と、「前記印刷ツール制御アルゴリズムに基づいて」「引用発明」「によって生成された電気信号に応答する印刷ツールと、を含み」、「前記電気信号は、前記印刷ツールをツールパスに沿って移動させて、事前定義された3次元構造を形成するように構成される」「付加積層造形システム」に係る発明を、以下「引用システム発明」という。 (2) 対比 本件特許発明9と、引用システム発明との対比は、上記3(1)と同様である。 対比結果を踏まえると、本件特許発明9と、引用システム発明は、以下の点で少なくとも相違する。 (相違点9) 「積層造形経路生成装置」が、本件特許発明9は、「前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成する基準経路生成部」であって、「複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」「基準経路生成部」を備え、「造形経路生成部」が、複数の前記層「のそれぞれ」について、「前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するのに対して、 引用システム発明は、上記「基準経路生成部」を備えておらず、「造形経路生成部」も、複数の前記層「のそれぞれ」について、「前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成し、生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するものではない点。 (3) 判断 相違点9は、相違点1と同じであるから、上記3(3)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明9は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 7 本件特許発明10について (1) 引用3次元構造形成発明 甲1の記載(上記2で挙げた記載に加え、[0032]、[0131]等)から理解される、引用方法発明により生成された「印刷ヘッド114を制御してツールパスに沿って移動して3次元構造を形成するための一連の制御コマンドを含む」「印刷制御アルゴリズム」により、「印刷ヘッド114を制御してツールパスに沿って移動して3次元構造を形成する」方法に係る発明を、以下「引用3次元構造形成方法発明」という。 (2) 対比 本件特許発明10と、引用3次元構造形成発明との対比は、上記3(1)と同様である。 対比結果を踏まえると、本件特許発明10と、引用3次元構造形成方法発明は、以下の点で相違する。 (相違点10) 本件特許発明10は、「前記造形物を造形するための複数の前記層のそれぞれについて、対象の層を定義する層定義面と、前記造形経路を生成するための基準とする基準経路の位置を拘束する面である基準経路面との交線から、前記基準経路を生成するステップ」であって、「複数の前記層のそれぞれに対応する複数の前記基準経路を、複数の前記層に共通する1つの前記基準経路面に基づいて生成する」「前記基準経路を生成するステップ」と、「複数の前記層のそれぞれについて、前記層定義面内で前記基準経路と平行な複数の経路を造形経路候補として生成するステップ」とを含み、「前記造形経路を生成するステップ」が、「生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するのに対して、 引用3次元構造形成方法発明は、これらのステップを含んでおらず、「前記造形経路を生成するステップ」も、「生成した前記造形経路候補に基づいて」前記造形経路を生成するものではない点。 (3) 判断 相違点10は、相違点8と同じであるから、上記3(3)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明10は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4、8~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700202

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決938件(三菱電機株式会社、荒木 博之)
  • 2026-700042異議申立 / 2026-07-06 / 維持照明制御システムおよび照明制御プログラム
    同じ当事者: 三菱電機株式会社
  • 2024-701025異議申立 / 2026-04-28 / 訂正認容照明器具
    同じ当事者: 三菱電機株式会社
  • 2025-700140異議申立 / 2026-04-16 / 訂正認容照明器具
    同じ当事者: 三菱電機株式会社
  • 2024-700450異議申立 / 2026-04-14 / 訂正認容照明器具
    同じ当事者: 三菱電機株式会社
  • 2024-700946異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容照明器具及び照明装置
    同じ当事者: 三菱電機株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)518件(121・B29C)
  • 2025-700006異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容ハイブリッド成形体、成形装置、及び成形方法
    共通の審決分類: 121・B29C
  • 2026-700116異議申立 / 2026-05-26 / 維持電気融着装置
    共通の審決分類: 121・B29C
  • 2025-700289異議申立 / 2026-02-10 / 請求成立(取消)共回転ツインスクリュー処理装置のための要素
    共通の審決分類: 121・B29C
  • 2024-700730異議申立 / 2026-01-23 / 訂正認容シクロオレフィン系樹脂成形体製造方法
    共通の審決分類: 121・B29C
  • 2025-700775異議申立 / 2025-12-23 / 維持防水部品及びそれを備えた電子機器、インサート成形体を用いる防水方法ならびに電子機…
    共通の審決分類: 121・B29C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存