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特許異議申立

2023-700200

生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤

審判番号
2023-700200
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-527716
登録番号
7125558
請求日
2023年02月21日
審決日
2023年12月26日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水化成品工業株式会社
  • 【権利者代理人】山田 泰之
  • 【権利者代理人】安藤 達也
  • 【異議申立人】中川 太佑
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 小出 直也
  • 審判官 近野 光知
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7125558号発明「生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7125558号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第7125558号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7125558号(以下、「本件特許」という。)は、令和2年6月25日(優先権主張 令和1年6月28日 日本国(JP))を国際出願日とする特許出願(特願2021-527716号)に係るものであって、令和4年8月16日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年2月21日に特許異議申立人 中川 太佑(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の主な経緯は以下のとおりである。 令和5年5月31日付け 取消理由通知 同年6月26日 意見書の提出(特許権者) 同年7月31日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年9月8日 応対記録 同年9月25日 訂正請求書・意見書の提出(特許権者) 同年9月29日付け 訂正請求があった旨の通知書(申立人宛て) なお、令和5年9月29日付けの訂正請求があった旨の通知書に対し、申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年9月25日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1(下線は訂正箇所を示す。) 特許請求の範囲の請求項1に 「3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなるポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。」 と記載されているのを、 「3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなるポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の「粒子中に含まれるCa成分量」を「粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量」に限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0019】の「分散安定剤としては、・・・炭酸カルシウムが好ましい。」との記載、【0021】の「生分解性樹脂粒子の製造工程」において、工程(2)で「粒子表面に分散安定剤が被覆された生分解性樹脂粒子分散体」を得て、工程(3)で「被覆された分散安定剤を除去」するとの記載、「実施例6」として【0021】の製造工程にならって分散安定剤として炭酸カルシウムを用い、その後20%塩酸を加えて炭酸カルシウムを分解し、Ca成分量が135ppmの生分解性樹脂粒子が得られたとの記載から、分散安定剤である炭酸カルシウムが粒子表面に被覆され、被覆された分散安定剤を除去することにより、粒子中に含まれるCa成分量を所定の量とすることが記載されているといえるから、上記訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 4 本件訂正後の独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~8に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 5 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、順に「本件発明1」、「本件発明2」のようにいい、本件発明1~8を総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなるポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。 【請求項2】 粒子径の変動係数が45%以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂粒子。 【請求項3】 750℃で30分加熱後の灰分が0.01~3%である、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂粒子。 【請求項4】 3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(但し、いずれもアルコキシ基の炭素数は1~5個)のうち少なくとも1つを更に含む、請求項1~3いずれかに記載の生分解性樹脂粒子。 【請求項5】 体積平均粒子径が8~20μmである、請求項1~4いずれかに記載の生分解性樹脂粒子。 【請求項6】 請求項1~5いずれかに記載の生分解性樹脂粒子を含む、外用剤。 【請求項7】 20℃の粘度が550mPa・s以下である不揮発性油を更に含む、請求項6記載の外用剤。 【請求項8】 スキンケア化粧料、洗浄用化粧料、日焼け止め化粧料である、請求項6又は7記載の外用剤。」 第4 特許異議申立書に記載された申立理由の概要、証拠方法及び取消理由通知(決定の予告)の概要 1 特許異議申立書に記載された申立理由の概要 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。 申立理由1(甲第1号証による新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1~3、5~8に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~3、5~8についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由3(甲第5号証による新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1、3~8に係る発明は、下記の甲第5号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は甲第5号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、3~8についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由4(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~8についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (具体的な理由の概要) (1)本件発明において、課題を解決するためには、ポリヒドロキシアルカノエートを可塑化させる成分として、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートが必須と考えられるから、それを含まない「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」にまで拡張できる根拠が見当たらない。 (2)「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」はポリヒドロキシアルカノエートを極少量含有する生分解性樹脂粒子も範囲内とされ得るが、本件明細書には、どのような成分をどの程度含むのかについての記載はなく、またポリヒドロキシアルカノエートがいかなる含有量であっても課題を解決できるのか、また、ポリヒドロキシアルカノエート、Ca成分、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール以外の成分が多く含まれる場合であっても課題を解決できるのかについての記載や技術的な根拠が見当たらず、本件発明において課題を解決できるのは実施例に記載の樹脂粒子のみである。 (3)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを含まない場合は、比較例に示されているとおり課題を解決できておらず、本件発明において課題を解決するには、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは構成成分として必須成分と考えられる。そうすると、訂正前の請求項1~3、5~8に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 (4)本件明細書には、Ca成分としては、分散安定剤として記載されているのみであるが、樹脂粒子中のCa成分量をどのようにコントロールするのか記載がなく、どのようにして課題を解決できるのか不明である。 申立理由5(明確性) 本件訂正前の請求項1~8についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (具体的な理由の概要) 「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」は、ポリヒドロキシアルカノエートを極少量含有する生分解性樹脂粒子も範囲内とされ得るが、本件明細書には、「樹脂粒子が実質的にポリヒドロキシアルカノエートにより構成されている」との記載があるのみであり、生分解性樹脂粒子中に含まれるポリヒドロキシアルカノエートの含有量に関する記載はなく、「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」は、発明の詳細な説明に定義が記載されておらず、発明特定事項の意味する内容ないし範囲について明確ではない。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/178899号及びその翻訳文 甲第1-1号証:国際公開第2011/045625号及びその翻訳文 甲第2号証:韓国公開特許第10-2013-0103187号公報及びその翻訳文 甲第3号証:国際公開第2016/080530号 甲第4号証:特開2003-175092号公報 甲第5号証:特開2018-95794号公報 (以下、これらを「甲1」~「甲5」のようにいう。) 3 取消理由通知(決定の予告)の概要 令和5年7月31日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は次のとおりである。 取消理由1(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~8についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (具体的な理由の概要) 生分解性樹脂粒子に含まれるCa成分が、分散安定剤に由来するものであれば、具体的に開示された実施例1~8と同様に、本件発明の課題を解決できることが期待できるといえるものの、分散安定剤に由来しないCa成分が生分解性樹脂粒子に含まれていたとしても、それらは分散安定剤としての作用(親水性物質と親油性物質との親和性の向上作用)を有さないし、Ca成分として「親水性物質と親油性物質との親和性の向上作用」を有するものを用いたとしても、それが分散安定剤に由来するCa成分のように、生分解性樹脂粒子の表面に存在するものではなく、生分解性樹脂粒子の内部に存在するような場合には、Ca成分と親油性物質とが直接接触することがないから、「Ca成分が10ppm以上含まれることで親油性物質との馴染みが向上し、外用剤の調液時にダマができにくくなるため、結果として肌への滑りを良好なものとする」(本件明細書の【0016】)ことは期待できるとはいえず、その結果、「肌上での軽やかな伸びに優れる」という本件発明の課題を解決できるものとは認められない。 したがって、Ca成分が分散安定剤由来のものに限定されていない訂正前の本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 第5 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、申立書に記載した理由及び取消理由通知(決定の予告)で通知した理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由1(サポート要件)、申立理由4(サポート要件)について 取消理由1及び申立理由4は、いずれもサポート要件違反をいうものであるから、まとめて検討する。 (1)サポート要件違反の考え方 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件明細書の発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。(なお、下線は当審による。) 「【0001】 本発明は、生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤に関する。 【背景技術】 【0002】 樹脂粒子は、大きな比表面積及び粒子の構造を利用して、各種材料の改質及び改良に用いられている。主要用途としては、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧品用の配合剤、塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、医療用診断検査剤等の各種剤、自動車材料、建築材料等の成形品への添加剤等の用途が挙げられる。樹脂粒子としては、例えば、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエチレン等が挙げられる。 【0003】 一方、近年の環境問題への関心が高まる中、環境負荷を低減するため、樹脂を使用するあらゆる分野で、非石油原料由来の材料や生分解性の材料を使用することが求められている。例えば、化粧品、塗料等の樹脂粒子が使用される分野でもそのように求められている。 【0004】 これまでの生分解性の材料を用いた樹脂粒子の製造方法としては、凍結粉砕に代表される粉砕法(特許文献1)、高温下の溶媒に溶解し、冷却して析出させたり、溶媒に溶解した後に貧溶媒を加えることにより析出させたりする溶媒溶解析出法(特許文献2)等が知られている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2017-2291号公報 【特許文献2】特開2016-102152号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、化粧料等の外用剤に用いる場合において、特許文献1の樹脂粒子は球形状ではない、粒子径が小さくならない等の課題があり、肌上での伸びの点で更なる向上が求められている。また特許文献2で得られる樹脂粒子は、比較的球状の粒子が得られているが、粒子径が小さくならないという課題があった。また表面が多孔質状であるため、粒子が脆くなり、安定性が低いという課題もあった。 【0007】 本発明の課題は、粒子径が小さく、肌に適用した場合、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れる生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤を提供することである。」 「【0011】 (生分解性樹脂樹脂粒子) 本発明の生分解性樹脂粒子(以下、「本発明の樹脂粒子」とも称する)は、ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子である。ポリヒドロキシアルカノエートとしては、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる重合体や共重合体が挙げられる。このうち、ハンドリング性や使用感を良好なものとする観点から、3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位の共重合体であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシオクタノエート単位の共重合体であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、及び3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位と3-ヒドロキシバリレート単位の共重合体であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート-コ-3-ヒドロキシバリレート)が好ましい。なお、本発明において「ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子」とは、樹脂粒子が実質的にポリヒドロキシアルカノエートにより構成されているが、該粒子中にCa成分、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート等、各種の成分の含有を排除するものではなく、各種成分を含み得るものである。 【0012】 本発明の生分解性樹脂粒子は体積平均粒子径が2~50μmである。体積平均粒子径が2μmより小さいと肌への滑りが悪くなる事がある。体積平均粒子径が50μmより大きいと、外用剤などで肌に使用した際に感触が悪くなる傾向がある。好ましい範囲は3~45μm、より好ましい範囲は5~35μm、更に好ましい範囲は8~30μm、更に好ましい範囲は8~25μm、更に好ましい範囲は8~20μmである。体積平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。 【0013】 本発明の生分解性樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)は特に限定されないが、45%以下であることが好ましい。変動係数が45%以下であると粗大粒子が少なく、外用剤として使用した場合、良好な感触を得ることができる。より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。 【0014】 本発明の生分解性樹脂粒子はBET比表面積が0.8~10m2/gである。比表面積が0.8より低いと粒子の比重が重くなり、沈降し易くなる為、外用剤の調液時のハンドリング性が低下し、好ましくない。比表面積が10m2/gより高いと、表面が大きな凹凸構造あるいは多孔質形状となるため、粒子強度が低く、保存安定性が低下する為、好ましくない。好ましい範囲は0.9~8m2/g、より好ましい範囲は1~5m2/gである。BET比表面積は、後述の実施例に記載の方法により測定される。 【0015】 本発明の生分解性樹脂粒子はアマニ油吸油量が50~300ml/100gである。アマニ油吸油量が50ml/100gより低いと、肌への滑り性が低下する事がある。吸油量が300ml/100gより高いと、外用剤やリキッドファンデーションの調液時に粘度増加しやすく、ハンドリング性が著しく低下する為好ましくない。好ましい範囲は55~250ml/100g、より好ましい範囲は60~200ml/100gである。アマニ油吸油量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。 【0016】 本発明の生分解性樹脂粒子は粒子中に含まれるCa成分が10~10,000ppmである。Ca成分が10ppm以上含まれることで親油性物質との馴染みが向上し、外用剤の調液時にダマができにくくなるため、結果として肌への滑りを良好なものとする傾向がある。また、Ca成分が10,000ppm以下であることで、樹脂粒子からCa成分が遊離することを効果的に抑制することができる。また、Ca成分が10,000ppmより多いと、Ca成分の硬度の影響から、外用剤などで肌に使用した際に肌への付着性が低下する傾向があるため、好ましくない。好ましい範囲は20~5,000ppm、より好ましい範囲は30~500ppmである。Ca成分量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。」 「【0018】 本発明の生分解性樹脂粒子は、粒子表面に分散安定剤が被覆されていてもよいし、必要に応じて分散安定剤を除去してもよい。分散安定剤の被覆量は樹脂粒子を750℃で30分加熱した後の灰分量により見積もることができる。除去により、灰分量を0.01~3%にすることで、分散安定剤が粒子から遊離する事を効果的に抑制することができる。灰分は、後述の実施例に記載の方法により測定される。 【0019】 分散安定剤としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の難水溶性無機化合物等を用いることができる。上記の中でも、分散安定剤を容易に除去できるという点において、炭酸カルシウムが好ましい。特に、シランカップリング剤で表面処理した炭酸カルシウムは生分解性樹脂と馴染みが高く、分散安定性に優れており、粒子径のコントロールがし易いため、好ましい。分散安定剤の粒子径は、特に限定されないが、比表面積が高い観点から1次粒子径が小さいものが好ましい。好ましい分散安定剤の平均1次粒子径は10~1000nm、より好ましくは10~500nm、さらに好ましくは10~100nmである。 【0020】 本発明の生分解性樹脂粒子は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(但し、いずれもアルコキシ基の炭素数は1~5個)のうち少なくとも1つを更に含んでもよい。上記物質を含むことで親水性物質、親油性物質との馴染みが向上する。含有量は粉体として取り扱うためのハンドリング性を考慮すると、0.010~0.500質量%が好ましく、0.020~0.100質量%がさらに好ましい。 【0021】 (生分解性樹脂粒子の製造方法) 本発明の生分解性樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下の(1)~(4)に示される工程を含む製造方法が例示される。 (1)生分解性樹脂として、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂を、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(但し、いずれもアルコキシ基の炭素数は1~5個)のうち少なくとも1つを含む溶媒、水及び分散安定剤の存在下、DSC測定による前記樹脂の融点の最大となる温度ピークをTmaxとした場合、Tmax±15℃で乳化・分散する工程(乳化・分散工程) (2)その後冷却することで得られる粒子表面に分散安定剤が被覆された生分解性樹脂粒子分散体を得る工程(冷却・粒子化工程) (3)被覆された分散安定剤を除去することで得られる生分解性樹脂粒子分散体を得る工程(分散安定剤除去工程) (4)(2)又は(3)で得られた粒子をろ過・洗浄・脱水・乾燥・分級することで生分解性樹脂粒子粉体を得る工程(粉体化工程) 【0022】 上記製造方法によれば、通常生分解性樹脂の微粒子化法でよく用いられる皮膚刺激性のある有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、n-メチルピロリドン、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキソラン、THF等)を用いることなく、安全性の高いアルコール溶媒を使用しており、球状で、小粒子径で、粒度分布の狭い生分解性樹脂粒子を製造できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、生分解性を有し、かつ低皮膚刺激性であるため、化粧品のような用途で用いる際の残留による悪影響を抑制できる。加えて、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、高温で生分解性樹脂を溶解又は可塑化するが、常温では生分解性樹脂を溶解しないので、これらアルコール系溶媒を容易に再利用でき、工業的に有利である。この製造方法により得られた生分解性樹脂粒子は、他の製造方法により得られた粒子に比べ、吸油特性に優れるという効果を有する。 【0023】 (a)乳化・分散工程 溶媒は、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(以下、特定溶媒とも称する)を含む。特定溶媒が溶媒中に占める割合は、吸油特性や粒子化の観点から、好ましい範囲は10~90%であり、より好ましい範囲は20~80%であり、更に好ましい範囲は30~70%である。特定溶媒以外の使用可能溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤が挙げられる。特定溶媒としては、クラレ社製からソルフィットの商品名で市販されている溶媒も使用できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノールは、例えば、国際公開WO2013/146370号に記載の方法により製造できる。ここで、特定溶媒中のアルコキシ基の炭素数は、それぞれ独立して1~5個である。アルコキシ基の炭素数が5より大きい場合、溶解性が悪化することがある。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられる。プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基には、直鎖状だけではなく、取り得る構造異性体も含まれる。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。溶媒の使用量は、生分解性樹脂100質量部に対して、十分な攪拌混合を行う観点や生産性の観点から、好ましい使用量は100~1200質量部であり、より好ましい使用量は100~800質量部であり、更に好ましい使用量は100~400質量部である。 【0024】 分散安定剤は、上記したものを使用することができ、1次粒子径がサブミクロン以下の場合、粉体の状態では凝集体のものが多く、解砕処理することが好ましい。解砕方法に関しては、特に限定されないが、再凝集の防止の観点から湿式でのボールミルやビーズミルなどが好適に用いる事ができる。分散安定剤は、再凝集の防止の観点から、溶媒分散体の状態で保存することが好ましい。溶媒分散体の固形分濃度は特に限定されないが、沈降・凝集を抑制する観点や解砕不良を防止する観点から、好ましくは3%~20%であり、より好ましくは4~18%であり、さらに好ましくは5~15%である。 【0025】 また、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。界面活性剤の添加量としては、例えば、水100質量部に対して0.01~0.5質量部で使用することができる。 【0026】 加熱攪拌時にエマルションを形成させるに十分な剪断力を得るためには、撹拌羽根による液相撹拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射法等の通常公知の方法で混合することができる。撹拌の速度及び時間は、生分解性樹脂が溶媒中に均一に分散する様に、適宜選択される。加熱撹拌は、通常、加圧下で行われる。 【0027】 (b)冷却・粒子化工程 生分解性樹脂を含む溶媒は、加熱撹拌後、冷却される。加熱撹拌時の温度から冷却温度までは緩やかに冷却することが好ましく、具体的には0.5~5.0℃/分の速度で冷却することが好ましい。また、冷却は、撹拌しつつ行うことが好ましい。撹拌速度は、加熱撹拌の撹拌速度と同様の範囲とすることができる。 【0028】 (c)分散安定剤除去工程・粉体化工程 冷却後の溶媒中の生分解性樹脂粒子は、ろ過、洗浄、脱水、乾燥を経て、溶媒から取り出される。分散安定剤が被覆されていない生分解性樹脂粒子を得る場合は、上記ろ過工程の前に分散安定剤を酸などで除去する工程を追加する。分散安定剤を分解する際は、加水分解抑制及び肌上での伸びの観点から、強酸とならない様に必要モル数の1.05~1.50倍、より好ましくは1.05~1.20倍の酸を加え、40℃以下で攪拌し、24時間以内、より好ましくは12時間以内にろ過、洗浄することが好ましい。乾燥は、減圧乾燥法やスプレードライ法を用いることができる。乾燥後の生分解性樹脂粒子を分級することで本発明の生分解性樹脂粒子を得ることができる。分級方法としては、風力分級、スクリーン分級などが挙げられる。風力分級とは、空気の流れを利用して粒子を分級する方法をいう。スクリーン分級とは、スクリーン上に生分解性樹脂粒子を供給し、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の生分解性樹脂粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法をいう。分級は、生分解性樹脂粒子が空気中の水分を吸収しないように除湿された空気の雰囲気下にて行われることが好ましく、具体的には、空気の相対湿度が30%以下の雰囲気下にて行われることが好ましく、空気の相対湿度が20%以下の雰囲気下にて行われることがより好ましい。このようにして得られた生分解性樹脂粒子は、空気中の水分を吸収しないように、製造後は、湿気を透過しにくい包装材料で密封し包装物品として保存しておくことが好ましい。」 「【実施例】 【0052】 以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。 ・・・ 【0058】 <Ca成分量> 樹脂粒子に含まれるCa成分量は、マルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、「ICPE-9000」)を用いて、測定した。 具体的には、樹脂粒子1.0gを坩堝に精秤し、精秤した樹脂粒子を、電気炉(株式会社いすず製のマッフル炉STR-15K)を用いて450℃で3時間加熱することにより、灰化させた。灰化した樹脂粒子を濃塩酸2mlに溶解させ、超純水にて50mlに定容して測定試料とした。そして、測定試料について、下記測定条件にて、上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、Ca金属元素の波長のピーク強度を得た。次いで、得られたCa金属元素の波長のピーク強度から、下記検量線作成方法により作成した定量用の検量線に基づき、測定試料中のCa金属元素の濃度(μg/ml)を求めた。そして、求めたCa金属元素の濃度C(μg/ml)と、上記の精秤した樹脂粒子の質量W(g)とを以下の式に代入し、樹脂粒子中の残存金属量を算出した。 残存金属量=(C(μg/ml)/W(g))×50(ml) <測定条件> 測定波長:Ca(183.801nm) 観測方向:軸方向 高周波出力:1.20kW キャリアー流量:0.7L/min プラズマ流量:10.0L/min 補助流量:0.6L/min 露光時間:30秒 <検量線作成方法> 検量線用標準液(米国SPEX社製、「XSTC-13(汎用混合標準溶液)」、31元素混合(ベース5%HNO3)-各約10mg/l)を超純水で段階的に希釈調製して、0ppm(ブランク)、0.25ppm、1ppm、2.5ppm、及び5ppmの濃度の標準液をそれそれ調製した。各濃度の標準液について、上記測定条件にて上記マルチタイプICP発光分光分析装置による測定を実施し、Ca金属元素の波長のピーク強度を得た。Ca金属元素について、濃度とピーク強度をプロットし、最小二乗法による近似線(直線あるいは二次曲線)を求め、求めた近似線を定量用の検量線とした。 ・・・ 【0060】 製造例1 2Lの石英ガラスポットミルに5mmジルコニアビーズ3,500g、シランカップリング剤で処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ACTIFORT700;1次粒子径:20nm)100g、イオン交換水450g、3-メトキシ-3-メチル-1 -ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)450gを添加したものをボールミル回転架台で周速100rpmで24時間処理する事で炭酸カルシウム分散液を得た。 【0061】 製造例2 シランカップリング剤で処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ACTIFORT700;1次粒子径:20nm)100gをシランカップリング剤で処理された炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、RK53BR;1次粒子径:150nm)100gに変更したこと以外は製造例1と同様に炭酸カルシウム分散液を得た。 【0062】 実施例1 撹拌翼及び温度計を取り付けた2Lオートクレーブに生分解性樹脂として3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-01210;融点Tmax142℃)を120g、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール486g、イオン交換水486g、分散安定剤として製造例1で得られた炭酸カルシウム分散液120gを投入し、回転数600rpmで攪拌しながら内温が142℃となるように加熱し、142℃到達後、60分乳化した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで1時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を50g(必要モル数の1.14倍)加え、10分間攪拌して炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子を分離し、得られた生分解性樹脂粒子を樹脂の添加量に対して20倍量のイオン交換水を用いて洗浄した。次に、得られた生分解性樹脂粒子を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用意した。分級機を用いて生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級した。生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気の流れにのせて、生分解性樹脂粒子をスクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過しない粒子を除去することによって粒径の大きな粒子を除去し、生分解性樹脂を得た。 【0063】 実施例2 生分解性樹脂を240g、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール372g、イオン交換水372g、分散安定剤として製造例1で得られた炭酸カルシウム分散液240g、に変更したこと以外は実施例1と同様にして懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を100g(必要モル数の1.14倍)加えたこと以外は、実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き63μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0064】 実施例3 乳化温度を135℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして生分解性樹脂を得た。 【0065】 実施例4 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール702g、イオン交換水270gに変更した以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き96μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0066】 実施例5 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール162g、イオン交換水810gに変更したこと以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き63μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0067】 実施例6 分散安定剤として製造例1で得られた炭酸カルシウム分散液120gを、分散安定剤として製造例2で得られた炭酸カルシウム分散液120gに変更した事以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き53μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0068】 実施例7 3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-01210;融点Tmax142℃)120gを、3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシバリレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-02265;融点Tmax142℃)120gに変更したこと以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き53μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0069】 実施例8 回転数1200rpmに変更したこと以外は実施例1と同様にして生分解性樹脂を得た。 【0070】 比較例1 乳化温度を120℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き150μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0071】 比較例2 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール1026gに変更し、イオン交換水を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行ったところ、冷却後のスラリーはゲル状化しており、脱液困難で粒子として取り出すことができなかった。 【0072】 比較例3 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを添加せず、イオン交換水1026g添加したこと以外は実施例1と同様にして分散安定剤除去工程、及び洗浄工程、乾燥工程を行った。分級工程は目開き150μmのスクリーンに変更したこと以外は実施例1同様にして行う事で生分解性樹脂を得た。 【0073】 比較例4 20%塩酸を加えなかったこと以外は、実施例6と同様にして生分解性樹脂粒子を得た。 【0074】 比較例5 撹拌翼及び温度計を取り付けた2Lオートクレーブに、3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体樹脂(カネカ社製アオニレックスX131A;融点Tmax137℃)56g、ヒドロキシプロピルセルロース40g、アセト酢酸エチル704gを加え、120℃に加熱し、樹脂が完全に溶解するまで2時間攪拌を行った。系の温度を70℃に戻した後に、攪拌しながら、50質量%エタノール水溶液800gを、ポンプを使って2時間で滴下し、滴下後70℃を維持したまま30分攪拌した。その後、30℃まで冷却して得られた懸濁液をろ過紙、イオン交換水400gで洗浄し、ろ別したものを、80℃、真空度0.05MPaの条件にて10時間に亘って乾燥して樹脂粒子を得た。 【0075】 (粉体特性試験) 実施例1~8、比較例1、3、4、5の樹脂粒子を皮膚塗布時の感触(さらさら感、滑らかさ)を専門検査員10名によって評価した。尚、判定は感触について良いと答えた人の人数で以下の様に評価した。9~10名を◎、7~8名を○、4~6名を△、3名以下を×として評価した。 (パウダーファンデーションの作製) 実施例1~8、比較例1、3、4、5の樹脂粒子15質量部、セリサイト21質量部、白雲母51質量部、赤色酸化鉄0.6質量部、黄色酸化鉄1質量部及び黒色酸化鉄0.1質量部をヘンシェルミキサーを用いて混合して混合物を作製した。一方、2-エチルヘキサン酸セチル10質量部にソルビタンセスキオレエート1質量部及び防腐剤0.2質量部を混合溶解させて溶解物を作製した。上記混合物と上記溶解物とを均一に混合させた後に香料0.1質量部を加えて均一に混合した後に粉砕して篩に通してファンデーション材料を作製した。このファンデーション材料を金皿に圧縮成形してパウダーファンデーションを作製した。10名のパネラーが、得られたパウダーファンデーションを手首に塗り伸ばす行為を行い、肌への付着性、肌上での軽やかな伸びについて次の基準で評価した。結果を表1に示す。尚、表中の数値は10名の試験結果の平均値である。 5:非常に良い 4:良い 3:やや良い 2:あまり良くない 1:良くない 【0076】 実施例1~8及び比較例1~5で使用した原料の種類、量、及び乳化温度と、実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解樹脂粒子における体積平均粒子径、変動係数、BET比表面積、アマニ油吸油量、10%圧縮強度、灰分、Ca成分量、及び実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解性樹脂粒子を配合したファンデーションの付着性、及び伸びの官能評価を表1、2にまとめて示す。 【0077】 【表1】 [図:0001409098000001.jpg] 【0078】 【表2】 [図:0001409098000002.jpg] 【0079】 以上のように、DSC測定による樹脂の融点の最大となる温度ピークをTmaxとした場合、Tmax±15℃で乳化・分散しなかった比較例1では、樹脂粒子が粗大化してしまい、当該目的の体積平均粒子径の樹脂粒子を得ることができなかった。3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(但し、いずれもアルコキシ基の炭素数は1~5個)のみを使用した比較例2では、樹脂が可塑化しすぎることでゲル状化して粒子として取り出すことができず、水のみを使用した比較例3では、樹脂が可塑化しないため、粗大粒子化してしまい、当該目的の体積平均粒子径の樹脂粒子を得ることができなかった。また、比較例4では、Ca成分を除去しなかったため、Ca残存量が多い影響で肌への付着性が悪くなる結果となった。比較例5では、当該目的の体積平均径より大きな粒子径となり、粒子が多孔質状となって脆くなるため、BET比表面積及びアマニ油吸油量が当該範囲より高くなり、目的の粒子を得ることができなかった。これに対し、実施例1~8では、目的の体積平均粒子径の樹脂粒子を得ることができた。また、以上のように、粒子径が小さく肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れており、一定の強度をもつ実施例1~8の生分解性樹脂粒子は、粒子径が大きい比較例1、3、4、5と比較して、パウダーファンデーションとして適用した際に、優れた肌への付着性、肌上での伸び、肌上での滑らかさを実現することができた。」 (3)本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の【0007】の記載からみて、「粒子径が小さく、肌に適用した場合、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れる生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤を提供すること」であると認められる。 (4)サポート要件の検討 ア 本件明細書の発明の詳細な説明の【0012】には、生分解性樹脂粒子の体積平均粒子径が2μmより小さいと肌への滑りが悪くなる事があり、50μmより大きいと、外用剤などで肌に使用した際に感触が悪くなる傾向があることが記載されている。 【0015】には、生分解性樹脂粒子のアマニ油吸油量が50ml/100gより低いと、肌への滑り性が低下する事があり、300ml/100gより高いと、外用剤やリキッドファンデーションの調液時に粘度増加しやすく、ハンドリング性が著しく低下する為好ましくないことが記載されている。 【0016】には、Ca成分が10ppm以上含まれることで親油性物質との馴染みが向上し、外用剤の調液時にダマができにくくなるため、結果として肌への滑りを良好なものとする傾向があり、また、Ca成分が10,000ppm以下であることで、樹脂粒子からCa成分が遊離することを効果的に抑制することができ、Ca成分が10,000ppmより多いと、Ca成分の硬度の影響から、外用剤などで肌に使用した際に肌への付着性が低下する傾向があるため、好ましくないことが記載されている。 イ また、本件明細書の発明の詳細な説明における実施例1~8(【0062】~【0079】)では、分散安定剤として炭酸カルシウムを用いる方法によってポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含む生分解性樹脂粒子が製造されており、これらは分散安定剤として炭酸カルシウムを用いて製造されたものであり、また炭酸カルシウム以外にCa成分は用いられていないから、粒子中に含まれているCa成分は分散安定剤に由来するものと認められる。 そして、実施例1~8で得られた生分解性樹脂粒子は、粒子中に含まれる(分散安定剤に由来する)Ca成分量、体積平均粒子径、BET比表面積、アマニ油吸油量が本件発明1で定義される条件を満たし、粉体の感触評価が「◎」又は「○」であり、それらの樹脂粒子を用いて製造されたパウダーファンデーションの肌への付着性及び肌上での軽やかな伸びについての評価結果がいずれも3.0以上と良好であるから、本件発明1の要件を満たす実施例1~8の樹脂粒子が、「粒子径が小さく、肌に適用した場合、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れる生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤を提供すること」という本件発明の課題を解決できることが示されている。 一方、体積平均粒子径が「2~50μm」の範囲外である比較例1、3、5及び粒子中に含まれる(分散安定剤由来の)Ca成分量が「10~10000ppm」の範囲外である比較例4は、粉体の感触評価が「×」又は「△」であることに加え、パウダーファンデーションとしたときの付着性の評価が2.1~2.5と劣る結果となっており、本件発明の課題を解決できないことが示されている。 ウ 本件明細書の上記の記載を考慮すると、体積平均粒子径、アマニ油吸油量、粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量が本件発明1の条件を満たすことにより、「粒子径が小さく、肌に適用した場合、肌への付着性と肌上での軽やかな伸びに優れる生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤を提供すること」という本件発明の課題を解決できることを、当業者であれば認識できるといえる。 エ したがって、本件発明1及びそれを直接的又は間接的に引用する本件発明2~8は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (5)申立人の主張についての検討 申立人は、申立書において、概略、上記第4の1、申立理由4の(1)~(4)に掲げた点を主張する。 そこで、まず主張(1)、(3)について検討すると、本件明細書の【0022】には、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、生分解性を有し、かつ低皮膚刺激性であるため、化粧品のような用途で用いる際の残留による悪影響を抑制できること、また、それらは高温で生分解性樹脂を溶解又は可塑化するが、常温では生分解性樹脂を溶解しないため、容易に再利用でき、工業的に有利であることが記載されている。 上記記載からみて、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、本件発明の生分解性樹脂粒子を化粧品等に用いたり、工業生産したりする際に用いる溶媒として好ましいものではあるものの、本件発明の課題を解決するために必須のものであるとまでは認められない。 また、本件明細書の比較例3では、溶媒である「3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール」を用いず、溶媒として水のみを用いた結果、樹脂が可塑化せず、粗大粒子化して目的の体積平均粒子径の樹脂粒子を得ることができなかったことが示されている(【0072】、【0078】、【0079】)。しかし、この結果は、単に(樹脂粒子を溶解又は可塑化する)溶媒を用いなかった結果、樹脂が可塑化しなかったことを示しているにすぎず、「3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール」でなくても、樹脂を可塑化、溶解できる任意の溶媒であれば目的の体積平均粒子径の樹脂粒子を得ることができると認められるから、比較例3の結果を考慮しても、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートを用いることが本件発明の課題を解決するために必須の要件であるとは認められない。 主張(2)について検討すると、上記(4)で検討したように、所定の生分解性樹脂粒子であって、分散安定剤に由来するCa成分量、体積平均粒子径、BET比表面積、アマニ油吸油量が本件発明1の条件を満たすものであれば、本件発明の課題を解決することができると認められ、そこに他の成分が追加で含まれたとしても、それだけで本件発明の課題を解決できないとまではいえない。 主張(4)について検討すると、訂正後の本件発明はCa成分が「分散安定剤由来」のものに限定されているし、【0021】に記載された製造方法(分散安定剤が被覆された樹脂粒子を製造し、その後分散安定剤を除去する)や、比較例4の結果(分散安定剤の除去剤である「20%塩酸」を加えないとCa成分量が過大となる。)を考慮すれば、塩酸等を用いて分散安定剤を目的とする濃度となるまで除去することによって、樹脂粒子中のCa成分量をコントロールできると認められる。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 (6)取消理由1及び申立理由4についてのまとめ よって、本件発明1~8についての特許は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、取消理由1及び申立理由4によっては取り消すことはできない。 2 申立理由1(甲1による新規性、進歩性)、2(甲1を主引用文献とする進歩性)について 申立理由1、2は、いずれも甲1による新規性欠如か、甲1を主引用文献とする進歩性欠如をいうものであるから、まとめて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1は英語で記載されているため、その翻訳文の該当する箇所を示す。 甲1には、 「70重量%~99.9重量%の、油相を含む化粧品として許容可能なベース配合物と、 0.1μmから100μmの平均直径(d50)を有する粒子形態で、少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を0.1重量%から30重量%と、 を含む化粧品組成物であって 重量%は、前記化粧品組成物の総重量に対して表されている、化粧品組成物。」 が記載されており(請求項1)、その化粧品組成物に配合する粒子形態のPHAの具体的な製造例が実施例1として記載されている。 甲1の実施例1に着目すると、甲1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「細菌発酵プロセスから得られ、事前に精製及び漂白にかけられたPHAの水性分散液(約20重量%の濃度)を、開ループ構成で高圧噴霧乾燥機により霧化に供することにより得られた、以下の特徴を有するPHA粉末。 平均直径(d50)=10μm(ISO13320:2009) 「スパン」=(d90-dl0)/d50=1.4(ISO13320:2009) アマニ油の吸収=106gの油/100gのポリマー(ISO787-5:1980)」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1との対比 本件発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「PHA」は、本件発明1の「ポリヒドロキシアルカノエート」に相当する。 また、「ポリヒドロキシアルカノエート」は生分解性樹脂であるから、引用発明1の「PHA粉末」は、本件発明1の「生分解性樹脂粒子」に相当する。 引用発明1の「アマニ油の吸収」は、本件発明1の「アマニ油吸油量」に相当する。 そうすると、両者は、 「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子である、生分解性樹脂粒子。」 である点において一致し、以下の5点において相違する。 <相違点1-1> 「ポリヒドロキシアルカノエート」が、本件発明1では「3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる」ものであるのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点 <相違点1-2> 本件発明1では、「粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量が10~10,000ppm」であるのに対し、引用発明1ではその量が不明な点 <相違点1-3> 本件発明1では、「体積平均粒子径が2~50μm」であるのに対し、引用発明1では「平均直径(d50)=10μm(ISO13320:2009)」である点 <相違点1-4> 本件発明1では、「BET比表面積が0.8~10m2/g」であるのに対し、引用発明1ではその値が不明な点 <相違点1-5> 本件発明1では、アマニ油吸油量が、「50~300ml/100g」であるのに対し、引用発明1では「106gの油/100gのポリマー(ISO787-5:1980)」である点 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。 (ア)新規性についての検討 甲1には、引用発明1の粒子の製造中にCa成分を含む分散安定剤を用いることや、粒子中に含まれる分散安定剤に由来するCa成分量について何ら記載がないから、相違点1-2は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 (イ)進歩性についての検討 甲1-1は、甲1に記載された文献(甲1の翻訳文の【0032】)で、PHAを、微生物の株による有機基質の微生物発酵、及びその後の細胞塊からのPHAの回収によって生産することが記載され、11頁の表1には、PHAを合成するための細胞成長に用いられるミネラル溶液中に一定量の塩化カルシウム二水和物(CaCl2・2H2O)が含まれていることが記載されている。 また、甲2には、「例えば、本発明者の実験でC.necator H16の場合セル内PHBナノパーティクルに複合化されたカルシウムの細胞内濃度は約150-370nM間の範囲であった。」と記載されている(甲2の翻訳文の「記載事項6」を参照。)。 甲4には、ポリヒドロキシアルカノエートを含有する粒状体に関して、ポリヒドロキシアルカノエートを微生物によって製造する際に、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、CaCl2を含む微量成分溶液を培地に添加することが好ましいことが記載されている(請求項1、【0164】~【0169】)。 しかし、甲1-1、甲2、甲4の記載は、いずれもポリヒドロキシアルカノエート(PHA)やポリヒドロキシブチレート(PHB)を微生物から製造する際に、一定量のCaが混入する可能性を示唆するにとどまり、引用発明1の粒子を製造する際に、Ca成分を用いる分散安定剤を使用することや、粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量を10~10,000ppmの範囲とすることを何ら教示するものではない。 また、甲3は、[0063]に「比較例1」として平均粒径3.57μm、標準偏差0.309、変動係数8.65%、アスペクト比1.05であるポリエステル樹脂B(ポリ乳酸)が開示されているにすぎないものであり、引用発明1の粒子を製造する際に、Ca成分を用いる分散安定剤を使用することや、粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量を10~10,000ppmの範囲とすることを何ら教示するものではない。 そして、本件明細書の【0016】に記載されるように、本件発明1は、分散安定剤由来のCa成分量を10~10,000ppmとすることによって、「Ca成分が10ppm以上含まれることで親油性物質との馴染みが向上し、外用剤の調液時にダマができにくくなるため、結果として肌への滑りを良好なものとする傾向があり、また、Ca成分が10,000ppm以下であることで、樹脂粒子からCa成分が遊離することを効果的に抑制することができ、Ca成分が10,000ppmより多いと、Ca成分の硬度の影響から、外用剤などで肌に使用した際に肌への付着性が低下する傾向があるため、好ましくない。」という効果が得られるものであり、このような効果は甲1、甲1-1、甲2~甲4の記載を考慮しても、当業者が予測できることではない。 したがって、引用発明1において、相違点1-2の構成を採用することは、甲1、甲1-1、甲2~甲4の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。 ウ まとめ よって、相違点1-2以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明であるとも、また甲1、甲1-1、甲2~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、申立理由1、2によっては本件発明1についての特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明2、3、5~8について 本件発明2、3、5~8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が甲1に記載された発明であるとも、また甲1、甲1-1、甲2~甲4の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件発明2、3、5~8も甲1に記載された発明であるとも、また、甲1、甲1-1、甲2~甲4の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、申立理由1によっては本件発明2、3、5~8についての特許を取り消すことはできない。 (4)申立理由1、2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1によっては本件発明1~3、5~8についての特許を取り消すことはできず、また申立理由2によっては本件発明1についての特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲5による新規性、進歩性)について (1)甲5に記載された発明 甲5には、「棒状の樹脂粒子を含む樹脂粒子群であって、前記棒状の樹脂粒子がその長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有し、平均アスペクト比が0.85以下であり、粒子の平均最大長径が1~500μmである、樹脂粒子群。」が記載されており(請求項1)、「樹脂粒子」が、生分解性の熱可塑性樹脂である「ポリブチレンサクシネート又はポリヒドロキシアルカン酸」であること(請求項2、4、5)も記載されている。 そして、その樹脂粒子群の具体的な製造例として実施例1が記載されている。 甲5の実施例1に着目し、請求項1の記載にならって整理すると、甲5には次の発明(「引用発明5」という。)が記載されている。 「1500mLオートクレーブに樹脂としてポリブチレンサクシネートを240g、特定溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール120g、イオン交換水600g、分散安定剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液240g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.48gを投入し、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmにて90分撹拌し、撹拌回転数を維持したまま設定温度を変更して急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出し、20%塩酸を20g添加し、粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイトを除去した後、脱水・ろ過・乾燥に付して得られた、棒状の樹脂粒子を含む樹脂粒子群であって、前記棒状の樹脂粒子がその長手方向に沿った一部の領域において短手方向に膨らんだ形状の膨らみ部を有し、平均アスペクト比が0.517であり、粒子の平均最大長径が48.09μm、アマニ油吸油量が107mL/100g、平均最大長径のCV値が93.64%、アスペクト比のCV値が40.38%、アスペクト比が0.90以上の粒子の割合が5.51%である、樹脂粒子群。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明5との対比 本件発明1と引用発明5を対比すると、引用発明5の「ポリブチレンサクシネート」を含む「樹脂粒子群」は、「ポリブチレンサクシネート」が「生分解性樹脂」である限りにおいて、本件発明1の「生分解性樹脂粒子」に相当する。 そうすると、両者は、 「生分解性樹脂粒子であり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。」 である点において一致し、以下の点において相違する。 <相違点2-1> 「生分解性樹脂粒子」が、本件発明1では「3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる1種以上の繰り返し単位からなるポリヒドロキシアルカノエートを含有する」ものであるのに対し、引用発明5では「ポリブチレンサクシネート」を含む点 <相違点2-2> 本件発明1では、「粒子中に含まれる分散安定剤由来のCa成分量が10~10,000ppm」であるのに対し、引用発明5ではその量が不明な点 <相違点2-3> 本件発明1では、「体積平均粒子径が2~50μm」であるのに対し、引用発明5では「粒子の平均最大長径が48.09μm」である点 <相違点2-4> 本件発明1では、「BET比表面積が0.8~10m2/g」であるのに対し、引用発明5ではその値が不明な点 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2-2について検討すると、引用発明5の樹脂粒子群は、分散安定剤として「10%第三リン酸カルシウム水溶液」を用いて樹脂粒子を製造し、その後20%塩酸を添加して粒子表面に被覆したヒドロキシアパタイト(Ca成分)を除去して製造されたものであり、本件明細書の【0021】に記載された工程の少なくとも(2)~(4)を含む工程によって製造されたものであるから、本件明細書の実施例6及び比較例4の結果も考慮すると、粒子中に分散安定剤に由来するCa成分がある程度残存している可能性があるものである。 しかし、その量が「10~10,000ppm」の範囲であるか否かは明らかでないし、甲5には粒子中の分散安定剤に由来するCa成分量を調節することの技術的な意義も記載されていないから、相違点2-2が実質的な相違点でないとはいえないし、また相違点2-2の構成を採用することが当業者にとって容易であるともいえない。 また、仮に相違点2-2が実質的な相違点でないとしても、相違点2-1は実質的な相違点であるし、その構成を採用することは以下の理由から当業者が容易に想到することではない。 甲5には、生分解性の熱可塑性樹脂として「ポリブチレンサクシネート」又は「ポリヒドロキシアルカン酸」(注:ポリヒドロキシアルカノエートと同義)が用いられることが記載され(請求項5)、ポリヒドロキシアルカン酸の具体例として、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシバリレート、3-ヒドロキシヘキサノエートのホモポリマー又はコポリマーを使用できることも記載されている(【0015】)。 しかし、引用発明5において、樹脂を「ポリブチレンサクシネート」に代えて「ポリ3-ヒドロキシブチレート」や「ポリ3-ヒドロキシヘキサノエート」に置き換えた場合、それらの融点は本件明細書の実施例1において、3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂の融点が142℃と記載されていることからみて、140℃前後であると認められるところ、引用発明5における「120℃」という反応温度で粒子を製造した場合には、本件明細書の【0021】に記載された工程(1)の条件(Tmax±15℃で乳化・分散する)という条件を満たさなくなるから、本件明細書の比較例1と同様に、体積平均粒子径が50μmを超える粒子が得られると考えられる。 また、引用発明5においては本件発明1との相違点となっていないアマニ油吸油量についても、引用発明5の「ポリブチレンサクシネート」を「ポリ3-ヒドロキシブチレート」や「ポリ3-ヒドロキシヘキサノエート」に置き換えた場合、同じ値の粒子が得られるとは限らない。 これらのことを考慮すると、引用発明5において、本件発明1の全ての条件を満足すると同時に、相違点2-1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。 そして、相違点2-1、2-2が実質的な相違点であって、それら構成を採用することが当業者にとって容易に想到することでない以上、相違点2-3、2-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明ではないし、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ まとめ したがって、申立理由3によっては本件発明1についての特許を取り消すことはできない。 (3)本件発明3~8について 本件発明3~8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明1が甲5に記載された発明であるとも、また甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件発明3~8についても、甲5に記載された発明であるとも、また甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)申立理由3についてのまとめ よって、申立理由3によっては、本件発明1、3~8についての特許を取り消すことはできない。 4 申立理由5(明確性)について 申立理由5の具体的な理由の概要を以下に再掲する。 「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」は、ポリヒドロキシアルカノエートを極少量含有する生分解性樹脂粒子も範囲内とされ得るが、本件明細書には、「樹脂粒子が実質的にポリヒドロキシアルカノエートにより構成されている」との記載があるのみであり、生分解性樹脂粒子中に含まれるポリヒドロキシアルカノエートの含有量に関する記載はなく、「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」は、発明の詳細な説明に定義が記載されておらず、発明特定事項の意味する内容ないし範囲について明確ではない。 そこで検討すると、「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」というのは、文字通り、生分解性樹脂粒子中にポリヒドロキシアルカノエートを含有していればよいのであって、本件発明の生分解性樹脂粒子は、本件発明1の「粒子中に含まれるCa成分量」との規定や、本件発明4の「3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール」等をさらに含むとの規定からみても、ポリヒドロキシアルカノエートのみから構成されるのではなく、他の成分を含有するものであることは明らかであるから、「ポリヒドロキシアルカノエートを含有する生分解性樹脂粒子」の意味する内容ないし範囲は明確である。 したがって、本件発明1~8についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、申立理由5によっては取り消すことができない。 第6 むすび 特許第7125558号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 そして、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1~8についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700200

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