特許異議申立
2023-700182
非水系インクジェットインキセット及び印刷物
- 審判番号
- 2023-700182
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-210342
- 登録番号
- 7121245
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2024年06月18日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者】トーヨーカラー株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1652.113-YAA(C09D) / P1652.121-YAA(C09D) / P1652.537-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第4号、特許法第120条の5第2項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7121245号発明「非水系インクジェットインキセット及び印刷物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7121245号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7121245号の請求項3、5、6に係る特許を維持する。
特許第7121245号の請求項1、2、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7121245号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年12月18日の出願であって、令和4年8月9日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~3、5~7に係る特許に対し、令和5年2月17日に特許異議申立人 鈴木 多香子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月12日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年9月14日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月20日付けで特許申立人に通知し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年10月25日に意見書を提出し、当審は、同年11月29日付けで訂正拒絶理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年12月25日に意見書を提出し、当審は、令和6年1月31日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年4月3日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行ったものである。
なお、本件訂正は、実質的に、特許異議の申立てのされなかった本件訂正前の請求項4を、本件訂正後の特許請求の範囲における独立請求項としたもの、すなわち、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を訂正後の請求項3とし、訂正前の請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を訂正後の請求項4としたものであるから、特許法第120条の5第5項に定める「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事項があるとき」に該当し、特許異議申立人に対し、当該訂正についての意見を求めなかった。
また、本件訂正請求がされたことにより、令和5年9月14日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~7からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含む、請求項1または2記載の非水系インクジェットインキセット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改め、また、新たに「前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、」を特定し、「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキAを含む、非水系インクジェットインキセットであって、前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み、前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であり、前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、非水系インクジェットインキセット。インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ」に訂正し、請求項3とする。(請求項3の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、請求項3に記載の非水系インクジェットインキセット。」とあるうち、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて独立形式請求項へ改め、「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキCを含む、非水系インクジェットインキセットであって、前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み、前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であり、前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、非水系インクジェットインキセット。インキC:顔料及び有機溶剤を含むグリーンインキであって、前記グリーンインキに含まれる顔料の平均粒子径が、前記イエローインキに含まれる前記顔料の平均粒子径よりも小さく、前記グリーンインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、及び、C.I.ピグメントグリーン36からなる群から選択される1種以上を含む、グリーンインキ」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5及び請求項6も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記オレンジインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及び、C.I.ピグメントオレンジ71からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~4いずれかに記載の非水系インクジェットインキセット。」とあるうち、請求項3又は4を引用するものについて、「オレンジインキを更に含み、」を特定し、「オレンジインキを更に含み、前記オレンジインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及び、C.I.ピグメントオレンジ71からなる群から選択される1種以上を含む、請求項3又は4に記載の非水系インクジェットインキセット。」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「非浸透性基材用途である、請求項1~5のいずれかに記載の非水系インクジェットインキセット。」と記載されているのを、「非浸透性基材用途である、請求項3~5のいずれかに記載の非水系インクジェットインキセット。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項3~7は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、また、請求項2を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は一群の請求項ごとにされたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2、7
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項7は、請求項7を削除するというものであるから、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1、2、7は、前記アのとおり、請求項を削除するものであるから、訂正事項1~3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1、2、7は、前記アのとおり、請求項を削除するものであるから、訂正事項1~3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1、2及び7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1、2及び7に係る訂正事項1、2及び7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、請求項1を引用する請求項3について請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるとともに、「有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含」むこと及び「3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である」ことを限定するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではない。したがって、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではない。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1又は2を引用する請求項3を引用するものであるところ、請求項1を引用する請求項3を引用しないものとした上で、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではない。したがって、訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではない。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項4に係る訂正後の請求項4に記載された発明は、先の特許異議申立書において提出された甲第1号証(特開2010-197932号公報)、甲第2号証(特開2013-147544号公報)、及び甲第2号証(特開2009-227812号公報)に記載された発明と、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、有機溶剤全量に対して50質量%以上であるという点で相違する。これらの発明の内容中に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証に記載された発明に、3-メトキシブタノールを有機溶剤全量に対して50質量%以上の含有量で適用することに関する示唆や動機付けはない。したがって、当業者が、本件特許出願前に、訂正後の請求項4に係る発明に想到することは容易でないから、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項又は同法第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しない。
また、訂正事項4に係る訂正後の請求項4は、何ら不明確性を生じるものでもなく、また発明の詳細な説明によりサポートされており、また当業者が実施可能な程度に発明の詳細な説明に明確・十分に記載されているから、特許法第36条第6項第2号、同法同条同項第1号及び同法同条第4項第1号に適合するものである。
上記のとおり、訂正後の請求項4に記載された発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件を満たす。
(4)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5に係る訂正前の請求項5は、直接又は間接的に引用する請求項の組合せが多数含まれるところ、訂正事項5により、訂正後の請求項5は、「請求項 1又は2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの」を含むこととなり、全体として含まれる引用関係の数が減少する。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
また、訂正事項5において、訂正前の請求項5の「前記オレンジインキ」について、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか1項の記載を引用する記載であり、請求項1~4はその発明特定事項として「オレンジインキ」がないものであったところ、「オレンジインキを更に含み、」というものであることを明確にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであり、また、訂正事項 5における「オレンジインキを更に含み、」は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
引用する請求項の数を減少させる訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項5における「オレンジインキを更に含み、」は、願書に添付した明細書段落0119のオレンジインキを含むインキセット(例えば、実施例1~5、7等)の記載に基づくものである。
訂正事項5における「オレンジインキを更に含み、」は、願書に添付した明細書の段落0130には、「表10に記載したインキの組み合わせを1組のインキセットとして、その性能を、下記の方法で評価した。」ことが記載されている。そして、段落0132の表10には、実施例74、75、及び78として、それぞれ1組のインキセットが記載され、これらのインキセットはいずれもマゼンタインキとオレンジインキとを含み、「マゼンタ-オレンジ」の平均粒子径差(nm)が負の値であるというものである。さらに段落0134には、「表10に示した通り、インキセットが特色カラーインキを2つ以上含む場合、そのうちの1つが、上述した顔料の平均粒子径、及び、粒子径が450nm以上である顔料の割合に関する条件を満たしていれば、総合的に見て画質に優れた(高精細かつ広色域である)印刷物を得ることができる。」ことが記載されている。前記の「特色カラーインキ」は、ブルーインキ、オレンジインキ、グリーンインキの総称である(段落0027)。これらの記載によれば、当業者であれば、願書に添付した明細書の実施例には、オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径が、併用されるマゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さいという特定のないものが記載されていると理解することができる。
願書に添付した明細書の段落0029には、「本発明のインキセットは、それぞれが1種類以上の顔料を含有する、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキに加え、上記インキA、上記インキB、及び、上記インキCからなる群から選択される1種以上のインキを含むことを特徴としている。なお、これらのインキに加えて、上述した色相を有するインキを、本発明のインキセットとは別に併用することも可能である。」ことが記載されている。前記の「上述した色相を有するインキ」は、段落0023~0028に説明があり、オレンジインキが挙げられ、「45°以上80°未満の領域の色相角H°を有するインキをオレンジインキとする。」と記載されている。そうすると、段落0029には、インキセットには、オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径が、併用されるマゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さいという特定のないものを併用できることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項5について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6に係る訂正前の請求項6は、直接又は間接的に引用する請求項の組合せが多数含まれるところ、訂正事項6により、訂正後の請求項6は、「請求項 1又は2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの」と「請求項1又は2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を引用するもの」とを含むこととなり、全体として含まれる引用関係の数が減少する。そのため、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 新規事項の有無
訂正事項6は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項6について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項6に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)特許異議申立人による訂正事項5の訂正要件違反についての主張及び当審の判断について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和5年10月25日提出の意見書において、同年9月14日の訂正の請求における訂正事項5について、次のように主張する。
「ア 訂正事項5が前提としていること
(ア)・・・訂正前の請求項1には、訂正前の請求項5における「前記オレンジインキ」との記載に対応する、「オレンジインキ」の記載はない。
(イ)上記(ア)の事実のもと、訂正事項5が前提としているのは、訂正前の請求項1においては、オレンジインキを含む態様が包含されるとの解釈である。
(ウ)・・・審査の過程で、インキB(オレンジインキ)に関する拒絶理由を指摘する拒絶理由通知に対応して、特許請求の範囲について補正がされ、出願当初の請求項1からインキB(オレンジインク)の発明特定事項は削除されるとともに、インキA(ブルーインキ)を発明特定事項とする新請求項1と、インキC(グリーンインキ)を発明特定事項とする新請求項2という二つの独立請求項となり、特許査定に至ったものである。
(エ)上記(ウ)の経緯にかんがみれば、訂正前の請求項1は、オレンジインキを包含しないこととなったと解するのが当然であって、上記(イ)の解釈は、前提において誤りであると言わざるを得ない。
(オ)なお、訂正前の請求項5については、出願当初の請求項1からインキB(オレンジインク)の発明特定事項を削除する補正に伴い、削除されるべき請求項であったのに、誤って残っていると理解するのが自然である。
イ 訂正の目的について
イ-1 引用関係の解消(特許法第120条の5第2項第4号)
(ア)特許権者は、訂正事項5の訂正の目的を、引用関係の解消であると主張している。
(イ)訂正事項5の訂正の内容は、形式的には、引用関係を解消する訂正のように見えるが、訂正前の請求項5に基づいて、引用関係の解消を目的とする訂正が認められるためには、訂正前の請求項5には誤りがなく、訂正前の請求項1に係る発明がオレンジインキを含む態様を包含することが前提である。
(ウ)しかしながら、かかる前提が誤りであることは、上記アにおいて説明したとおりである。
(エ)よって、訂正事項5は、引用関係の解消を目的とする訂正とは認められない。
イ-2 明瞭でない記載の釈明(特許法第120条の5第2項第3号)
(ア)特許権者は、訂正事項5の訂正の目的を、明瞭でない記載の釈明であるとも主張している。
(イ)上記アで説明したとおり、訂正前の請求項1は、そもそもオレンジインキを含まないものとなったのに・・・明瞭でない記載の釈明を主張することは認められるべきでないことは明らかである。
(ウ)訂正前の請求項5の明確性要件違反は・・・請求項5を削除する以外に明確性要件違反を解消する方途はないはずである。
(エ)よって、訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正とは認められない。
(オ)なお、上記(イ)~(エ)と同様の理由により、訂正事項5は、誤記の訂正(特許法第120条の5第2項第2号)を目的とするものでもない。
ウ 新規事項追加
(ア)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、本件特許発明の課題解決の観点からは、本件特許のインクセットでは、オレンジインキとして、
「マゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径」との要件・・・を充足することが必要であることが記載されており(【0021】、【0038】、【0120】の比較例等)、かかる要件を充足しないオレンジインキを、本件特許のインキセットの構成インクとして用いることは、記載されているとはいえない。
(イ)よって、「マゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径」との要件を伴うことのない「オレンジインキ」を発明特定事項として追加する訂正は、新規事項を追加するものである。
(ウ)なお、特許権者は、明細書の【0119】を根拠に、訂正事項5は新規事項を追加するものではない旨主張するが、かかる記載の直後の【0120】には、上記要件を充足しないオレンジインキが比較例とされているのであるから(上記(ア))、特許権者の主張は失当である。
エ 特許請求の範囲の拡張ないし変更について
(ア)上記アで説明したとおり、訂正前の請求項1に係る発明は、オレンジインキを含まないものとなっていた。
(イ)本件特許の利害関係者からしてみれば、インキB(オレンジインキ)に関する発明特定事項が削除されたとの審査経過にかんがみ、本件特許発明は、当然にオレンジインキを含まないものと理解するはずである。それにもかかわらず、上記ア(イ)のような解釈を前提に、訂正前の請求項1に対して、オレンジインキを包含するとの発明特定事項の追加を許容することは、審査経過及び特許請求の範囲の記載から発明の内容を把握する利害関係者の期待を大きく損なうものである。
(ウ)よって、訂正事項5は、特許請求の範囲の実質的変更を伴うものと言わざるを得ない。
(エ)なお、特許権者は、「前記非水系インクジェットインキセットが、オレンジインキを更に含み、」は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲の拡張、変更には該当しない旨主張する。しかしながら、審査過程でオレンジインキを含まないものに変更されたのであるから、これをまた、オレンジインキを含むものへと変えることが、実質変更に相当するものであることは、上記(ア)~(ウ)で説明したとおりである。」
イ 当審の判断
前記主張は、令和5年9月14日の訂正の請求における訂正事項5に対するものであるが、本件訂正の訂正事項5にも当てはまる可能性があるため、念のため判断する。
訂正前の請求項5の記載から、当該請求項5に係る発明はオレンジインクを含むことが読み取れる以上、前記特許異議申立人の主張中の「ア 訂正事項5が前提としていること」にかかわらず、訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
そして、前記(4)ウのとおり、訂正事項5は、新規事項を追加するものであるとはいえず、同様に、特許請求の範囲の拡張ないし変更するものともいえない。
訂正事項6についても、同じ理由で、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえるし、そして、前記(4)ウと同じ理由で、新規事項を追加するものであるとはいえず、同様に、特許請求の範囲の拡張ないし変更するものともいえない。
よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
したがって、特許第7121245号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~7に係る発明は、令和6年4月3日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明6」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキA を含む、非水系インクジェットインキセットであって、
前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み、
前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であり、
前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、
前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、
前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、非水系インクジェットインキセット。
インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ
【請求項4】
シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキC を含む、非水系インクジェットインキセットであって、
前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み、
前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であり、
前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、
前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、
前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上である、非水系インクジェットインキセット。
インキC:顔料及び有機溶剤を含むグリーンインキであって、前記グリーンインキに含まれる顔料の平均粒子径が、前記イエローインキに含まれる前記顔料の平均粒子径よりも小さく、前記グリーンインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントグリーン7、及び、C.I.ピグメントグリーン36からなる群から選択される1種以上を含む、グリーンインキ
【請求項5】
オレンジインキを更に含み、前記オレンジインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及び、C.I.ピグメントオレンジ 71からなる群から選択される1種以上を含む、請求項3又は4に記載の非水系インクジェットインキセット。
【請求項6】
非浸透性基材用途である、請求項3~5に記載の非水系インクジェットインキセット。
【請求項7】
(削除)」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 特許権設定登録時の請求項1~3、5~7に係る特許に対して、当審が令和5年7月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項5~7の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
本件特許発明5は、「前記オレンジインキ」について、それに含まれる顔料の種類を特定されているが、本件特許発明5が引用する本件特許発明1~4にはその発明特定事項として「オレンジインキ」はない。
そうすると、本件特許発明5は、引用する本件特許発明1~4の発明特定事項をどのように特定するものであるのか、不明であり、結果として、本件特許発明5は、明確ではない。
本件特許発明5を直接的あるいは間接的に引用する本件特許発明6、7についても、同様である。
理由2(新規性)本件特許の請求項1、2、6、7に係る発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由3(進歩性)本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明並びに甲第9号証、甲第13号証及び甲第14号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和5年9月14日の訂正の請求により訂正された請求項1~3、5~7に係る特許に対して、当審が令和6年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由3(進歩性)本件特許の請求項5~8に係る発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明並びに甲第6号証~甲第8号証、甲第13号証、甲第14号証及び甲17号証~甲第20号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2010-197932号公報
甲第2号証:特開2013-147544号公報
甲第3号証:特開2009-227812号公報
甲第4号証:特開2013-194149号公報
甲第5号証:特開2016-166311号公報
甲第6号証:野口弘道、細田徹、「インクジェットインクにおける顔料の微粒子分散」、色材協会誌、69巻12号(1996)、855-866頁、[online]、公開日:2012年11月20日、色材協会、[2023年1月13日検索]、インターネット、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/69/12/69_855/_pdf/char/ja>
甲第7号証:奥田貞直、大島健嗣、「ライン型インクジェットヘッドを用いた高速ビジネスプリンタ」、日本写真学会誌、68巻1号(2005年)、36-41頁、[online]、公開日:2011年8月11日、日本写真学会、[2023年1月13日検索]、インターネット、
<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/photogrst1964/68/1/68_1_36/_pdf/char/ja>
甲第8号証:特開2016-190900号公報
甲第9号証:特開2015-189056号公報
甲第13号証:特許第5567256号公報
甲第14号証:特開2016-83844号公報
甲第17号証:”6色インクジェットガーメントプリンターの色域戦略について考えてみました~オレンジ・ブルーvsレッド・グリーン”,[online],2020年6月2日,松栄シルク,[2023年10月18日検索],インターネット<URL:https://shoeisilk-factory.blog/2020/06/02/inkjet-garment-printer-6color-color-gamut/>
甲第18号証:国際公開2016/159037号
甲第19号証:国際公開2017/200031号
甲第20号証:特開2003-160750号公報
第5 前記第4における理由1(明確性要件)についての判断
本件訂正により、本件特許発明5において「前記オレンジインキ」なる記載の前に「オレンジインキを更に含み」との記載があるものとなったので、本件特許発明5はオレンジインキを含むことが明確となり、本件特許発明5は明確となった。
本件特許発明5を引用する本件特許発明6についても、同様である。
第6 前記第4における理由2(新規性)、理由3(進歩性)についての判断
1 甲号証について
(1)特許異議申立書とともに提出されたもの
甲第1号証~甲第9号証、甲第13号証及び甲第14号証は前記第4のとおり。
甲第11号証:グリコールエーテル E.O系 P.O系 ジアルキル 日本乳化剤株式会社
(2)令和5年12月25日提出の意見書とともに提出されたもの
甲第15号証:特開平11-14824号公報
甲第16号証:特開2017-128694号公報
甲第17号証:”6色インクジェットガーメントプリンターの色域戦略について考えてみました~オレンジ・ブルーvsレッド・グリーン”,[online],2020年6月2日,松栄シルク,[2023年10月18日検索],インターネット<URL:https://shoeisilk-factory.blog/2020/06/02/inkjet-garment-printer-6color-color-gamut/>
甲第18号証:国際公開2016/159037号
甲第19号証:国際公開2017/200031号
甲第20号証:特開2003-160750号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
顔料を含む複数種のインクを備え、当該インクを、多数個のセルが設けられた基板上に、インクジェット方式で吐出することにより、カラーフィルターの製造に用いるカラーフィルター用インクセットであって、
赤色を呈する赤色顔料インクと、
緑色を呈する緑色顔料インクと、
青色を呈する青色顔料インクと、
藍紫色を呈する藍紫色顔料インクと、
紅紫色を呈する紅紫色顔料インクと、
黄色を呈する黄色顔料インクとを備え、
前記各インクが、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含有するものであることを特徴とするカラーフィルター用インクセット。
【化1】
[図:0001414152000001.jpg]
【化2】
[図:0001414152000002.jpg]
【化3】
[図:0001414152000003.jpg]
」
1b「【0295】
[2]カラーフィルター用インクセットの調製
(実施例1)
<赤色顔料インクの調製>
アミン価分散剤としてのディスパービック166と、重合体M1と、重合体Z1と、重合体W1と、これらの重合体(重合体M1、重合体Z1、重合体W1)を溶解する溶媒(カラーフィルター用インクにおける分散媒の構成成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより、重合体M1、重合体Z1、重合体W1が溶媒に溶解した重合体溶液を得た(重合体溶液調製工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0296】
次に、以下に述べるようにして、重合体溶液調製工程で得られた重合体溶液に、顔料を添加し、攪拌機(ビーズミル)を用いて、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた重合体溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントレッド177と上記式(30)で表される顔料誘導体との混合物と、C.I.ピグメントレッド254と上記式(31)で表される顔料誘導体との混合物と、下記式(34)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用いた。また、このとき、重合体溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0297】
【化47】
・・・
[図:0001414152000004.jpg]
【0298】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0299】
次に、上記のようにして得られた顔料分散体に、重合体X1、重合体Y1、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))、酸化防止剤(TINUVIN 152、チバジャパン株式会社製)、および、分散媒(液性媒体)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを加え、混合した(重合体X混合工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする赤色顔料インク(Rインク)を得た。Rインクを構成する顔料の平均粒径は、70nmであった。
【0300】
<緑色顔料インクの調製>
顔料としてC.I.ピグメントグリーン58および上記式(34)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、Rインクと同様にして緑色顔料インク(Gインク)を調製した。Gインクを構成する顔料の平均粒径は、70nmであった。
【0301】
<青色顔料インクの調製>
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、Rインクと同様にして青色顔料インク(Bインク)を調製した。Bインクを構成する顔料の平均粒径は、70nmであった。
【0302】
<藍紫色(シアン)顔料インクの調製>
顔料としてFastgen Blue GR6HS(DIC社製)を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、Rインクと同様にして藍紫色顔料インク(Cインク)を調製した。Cインクを構成する顔料の平均粒径は、80nmであった。
【0303】
<紅紫色(マゼンタ)顔料インクの調製>
顔料としてLionogen Red Violet L5100(東洋インキ社製)を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、Rインクと同様にして紅紫色顔料インク(Mインク)を調製した。Mインクを構成する顔料の平均粒径は、80nmであった。
【0304】
<黄色(イエロー)顔料インクの調製>
顔料としてByplast Yellow E-4GN(Lanxess社製)を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、Rインクと同様にして黄色顔料インク(Yインク)を調製した。Yインクを構成する顔料の平均粒径は、80nmであった。
これにより、上記のような6種のインクからなるカラーフィルター用インクセットが得られた。
【0305】
(実施例2~10)
各カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
(比較例1)
Cインク、MインクおよびYインクを調製することなく、3種のインク(Rインク、GインクおよびBインク)のみを調製した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを得た。すなわち、比較例1のインクセットは、Rインク、GインクおよびBインクの3種のインクからなるものである。
(比較例2~6)
各カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
なお、上記各実施例および比較例では、いずれも、重合体M、W、Zを用いる場合には、これらを重合体溶液調製工程(またはこれに対応するタイミングで行う工程)で用い、重合体X、Y、X’を用いる場合には、これらを重合体X混合工程(またはこれに対応するタイミングで行う工程)で用いた。
【0306】
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを構成する各カラーフィルター用インクの構成成分の種類、含有量を表2、表3、表4、表5にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物を「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物を「PR254D」、上記式(34)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が1個)で構成された粉末を「SPD1」、下記式(35)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が2個)で構成された粉末を「SPD2」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントバイオレット23を「PV23」、Fastgen Blue GR6HS(DIC社製)を「GR6HS」、Lionogen Red Violet L5100(東洋インキ社製)を「L5100」、Byplast Yellow E-4GN(Lanxess社製)を「E-4GN」、Chromofine Blue 5208(大日精化社製)を「5208」、Fastgen Super Blue 6070S(DIC社製)を「6070S」、Lionogen Magenda R(東洋インキ社製)を「LMR」、Chromophotal Violet B(CSC社製)を「CVB」、Paliotol Yellow K0961HD(BASF社製)を「K0961HD」、Paliotol Yellow D1819(BASF社製)を「D1819」、ディスパービック111(酸価:50KOHmg/g)を「DA1」、ディスパービック2095(酸価:13KOHmg/g)を「DA2」、ディスパービックP104(酸価:360KOHmg/g)を「DA3」、ディスパービック166(アミン価:115KOHmg/g)を「DA4」、ディスパービック9075(アミン価:12KOHmg/g)を「DA5」、ディスパービック2001を「DA6」、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))を「DF58」、レベリング剤(LHP-90、楠本化成社製)を「L90」、レベリング剤(LHP-95、楠本化成社製)を「L95」、レベリング剤(LF-1970、楠本化成社製)を「LF」、レベリング剤(オルフィンSPC、日信化学工業(株)社製)を「SPC」、酸化防止剤(TINUVIN 152、チバジャパン株式会社製)を「T152」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3-ブチレングリコールジアセテートを「S2」、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエチルアセテートを「S3」、ビス(2-ブトキシエチル)エーテルを「S4」、オクタン酸エチルを「S5」、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S6」、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S7」、3-エトキシプロピオン酸エチルを「S8」、熱硬化性アクリル樹脂としての樹脂A(商品名:ACRYDIC A-430-60、DIC株式会社製)を「A」で示した。なお、分散剤のアミン価は、DIN 16945に準拠する方法により求め、酸価は、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めた。
・・・
【0309】
【表2】
[図:0001414152000005.jpg]
・・・
【0311】
【表4】
[図:0001414152000006.jpg]
・・・
【0325】
[5]カラーフィルターの製造
前記各実施例および各比較例で調製したカラーフィルター用インクセットを用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO2)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0326】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cm2という条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.0μmであった。なお、3色のインクからなる比較例1のカラーフィルター用インクセットを適用する基板については、形成する隔壁の形成パターンを各実施例、比較例2~6のカラーフィルター用インクセットを適用する基板とは異なるものとし、隔壁で囲まれた領域としてのセルの大きさ(基板を平面視した際の大きさ)が、各実施例、比較例2~6のカラーフィルター用インクセットを適用する基板が有するセルの2倍となるようにした。
【0327】
次に、図4~図7に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、各インクを吐出した。この際、カラーフィルター用インクセットを構成する各色のインクが混色しないようにした。各セル内には、形成される着色部の平均厚さが2.0μmとなるような量のインクを付与した。
その後、ホットプレート上にて80℃で20分間の加熱処理を施した(第1の加熱処理)。
【0328】
さらに230℃のオーブン内で60分加熱処理を施すことにより(第2の加熱処理)、用いたインクの色に対応する複数色の着色部(各実施例および比較例2~6については6色の着色部、比較例1については3色の着色部)が形成された。その後、N-メチル-2-ピロリドンおよびγ-ブチロラクトンを用いた洗浄を行い、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを用いて、それぞれ、7000枚のカラーフィルターを製造した。」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるインクセットであって、
前記紫外線硬化型インクジェット用インクとして、有彩色の顔料を含む有彩色顔料インクと、鱗片状の金属粉末を含むメタリックインクとを備えることを特徴とするインクセット。」
2b「【0002】
近年、顔料を含むインクを、インクジェット方式により吐出する印刷方法が広く用いられている。
インクジェット方式による印刷では、微細な液滴を吐出するため、高精細な画像を容易に形成することができる。
また、近年、インクジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用インク)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、インクジェット方式による印刷では、いわゆるフルカラー印刷のために、インクの多色化(例えば、シアン(藍紫色)、マゼンダ(紅紫色)、イエロー(黄色)、ブラック(黒色)の4色や、さらに、オレンジ(橙色)、グリーン(緑色)等を追加したり、フォトブラックおよびマットブラックのように、さらなる色の細分化)が行われている。
・・・
【0032】
<重合性化合物>
メタリックインクは、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含むものである。このような成分を含むことにより、インクセットを用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。重合性化合物は、液状をなすものであり、メタリックインクにおいて、金属粉末を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、インクセットを用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、メタリックインクは、メディア対応性に優れたものとなる。」
2c「【0061】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インクセットの製造
(実施例1)
<メタリックインクの製造>
まず、Fe-Si-Al合金の溶湯を用いて、水アトマイズ法により、球形状をなし、平均粒径が9.2μmの金属粉末を製造した(粉末製造工程)。製造された金属粉末は、Fe:84.9質量%、Si:9.9質量%、Al:5.2質量%の組成を有するものであった。
【0062】
次に、上記のようにして得られた略球形状の金属粉末を、ジルコニアビーズ(直径:5mm)を用いた遊星ボールミルにより、鱗片形状に異形化(鱗片化)した(鱗片化工程)。本工程は、フェノキシエチルアクリレート中で行った。
次に、鱗片化工程で得られた混合物を、超音波分散機に導入し、微細処理を行い、さらにその後、5μmメンブレンフィルターにて濾過を行い、ジルコニアビーズを除去するとともに、金属粉末の粗大粒子をカットして、平均粒子径D50が0.8μmの分散体を得た。
【0063】
次に、鱗片化した金属粉末を分離し、その後、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより、メタリックインクを得た。
【0064】
<有彩色顔料インクの製造>
藍紫色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3(平均粒径:150nm)を用意し、これを、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより、藍紫色顔料インクを得た。
【0065】
また、藍紫色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3の代わりに、それぞれ、紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)、黄色顔料としてのC.I.ピグメントイエロー155(平均粒径:250nm)、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド177(平均粒径:100nm)、緑色顔料としてのC.I.ピグメントグリーン36(平均粒径:100nm)、青色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:6(平均粒径:100nm)を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、上述した、藍紫色顔料インクと同様にして、紅紫色顔料インク、黄色顔料インク、赤色顔料インク、緑色顔料インク、および、青色顔料インクを製造した。
【0066】
<黒色インクの製造>
カーボンブラック(平均粒径:150nm)を用意し、これを、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより、黒色インクを得た。
以上のようにして、8種のインク(メタリックインクと、6種の有彩色顔料インクと、黒色インク)からなるインクセットを得た。
【0067】
(実施例2~12)
メタリックインクの調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表1に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてメタリックインクを製造し、インクセットを得た。
(比較例1)
金属粉末として、鱗片化処理を施していない球形状の粉末を用いた以外は、前記実施例と同様にしてメタリックインクを製造し、インクセットを得た。
(比較例2)
メタリックインクを備えておらず、7種のインク(6種の有彩色顔料インクと、黒色インク)からなるものとした以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを得た。
・・・
【0077】
[5]記録物の製造
各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、製造直後のインクセットをインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、インクセットを構成する各インクを吐出し、Au(金)色、Ag(銀)色、Cu(銅)色、藍紫色(シアン)、紅紫色(マゼンダ)、黄色(イエロー)、赤色(レッド)、緑色(グリーン)、青色(ブルー)および黒色を目標色とする各領域を有するパターンを形成した。
【0078】
その後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を照射を、照射強度180mW/cm2を20秒間照射し、基材上のインクを硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
【0079】
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂社製 ダイヤホイル G440E 38μm厚)を用いて成形したもの、低密度ポリエチレン(三井化学東セロ社製 T.U.X(L-LDPE) HC-E #80)を用いて成形したもの、2軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製 OP U-1 #60)を用いて成形したもの、硬質塩化ビニル(アクリサンデー社製 サンデーシート(透明)0.5mm厚)を用いて成形したものを用いた以外は、上記と同様にして、各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、10個ずつのインテリアパネル(記録物)を製造した。」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
少なくとも第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがそれぞれ色材を含有すると共に組み合わされる油性インクセットであり、かつ、該第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがいずれも波長領域400~700nmの範囲において記録媒体上での反射率が80%から5%に変わる波長領域を有する油性インクセットであって、上記第1の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、上記第2の油性インクにおける反射率が第1の油性インクの反射率よりも連続して高く、且つ、第2の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、第3の油性インクにおける反射率が前記第2の油性インクの反射率よりも連続して高く、さらに、前記第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクにおける色材がすべて異なることを特徴とする油性インクセット。」
3b「【0005】
本発明の目的は、ポリ塩化ビニル基材への印字に適し、印字品質、印刷安定性、印字乾燥性、インクの保存安定のいずれにも優れる油性インクセットであって、特に、色再現性、色彩度の高い画像を得ることができる油性インクセットの提供を課題とする。」
3c「【0066】
本発明のインクジェット記録用油性緑色インク組成物における溶剤は、グリコールエーテルジアルキルエーテル類、また、ポリオキシエチレン(アルキレン)グリコールアルキルエーテルアセテート類を含むものとするとよい。グリコールエーテルジアルキルエーテル類としては、好ましくは上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジエチルエーテルまたはポリオキシエチレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられ、好ましくはジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである。これらのグリコールエーテルジアルキルエーテルは、一種又は二種以上の組み合わせで用いることもできる。このようなグリコールエーテルジアルキルエーテルは高沸点、低蒸気圧のものであることから、低臭気で安全性が高く、作業環境に優れるものである。
【0067】
上記一般式(2)で示されるポリオキシエチレン(アルキレン)グリコールアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールのモノメチルエーテルアセテート、モノエチルエーテルアセテート、およびモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールのモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールのn-プロピルエーテルアセテート、およびn-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールのエチルエーテルアセテート、およびn-ブチルエーテルアセテートなど、とくに好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである。
【0068】
また、溶剤として、上記一般式(3)で表される環状エステル類溶剤をさらに含んでいてもよく、具体例としては五員環構造のγ‐ラクトンや、六員環構造のδ‐ラクトン、七員環構造のε‐ラクトン等があり、例えばγ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、γ‐カプロラクトン、γ‐カプリロラクトン、γ‐ラウロラクトン、δ‐バレロラクトン、δ‐ヘキサラクトン、δ‐ヘプタラクトン、ε‐カプロラクトンの単独、またはそれらの混合物を用いることができる。環状エステル類溶剤は、本発明の好ましい態様においては5員環のγ‐ラクトン類であり、さらに好ましい態様においては、γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトンである。環状エステル類溶剤を用いることによって、ポリ塩化ビニル基材に対する印刷品質をさらに改善することができる。
【0069】
本発明のインクにおける全溶剤中の一般式(1)および/または一般式(2)溶剤の含有量は5質量%~100質量%、好ましくは10質量%~100質量%とするとよい。
【0070】
インクとするには、上記の各成分を公知の方法で均一に混合して顔料を溶媒中に分散して調製する。調製方法としては、例えばペイントシェイカーにてφ0.8mmのジルコニアビーズにて1時間分散後、φ0.3mmのジルコニアビーズで3時間分散し、インクの粘度を後述する範囲に調整する方法が挙げられる。なお、インクの粘度測定は、アントンパール(株)製のAMVnにて測定した値である。」
3d「【0074】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明を明確にするためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、実施例及び比較例中の部は特に断らない限り、質量部とする。
・・・
【0078】
(インク1の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 15.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0079】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0080】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク1(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。
・・・
【0084】
(インク3の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 51.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 25.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0085】
次に、上記組成の溶媒の一部にピグメントオレンジ64(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) ORANGE GP)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0086】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク3(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。
・・・
【0093】
(インク6の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 48.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 28.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0094】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0095】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク6(20℃での粘度4.2mPa・s)を調製した。
【0096】
(インク7の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 10.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 20.0質量部。
【0097】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0098】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク7(20℃での粘度4.1mPa・s)を調製した。
【0099】
(インク8の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 52.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 19.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 5.0質量部
・ γ-バレロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0100】
次に、上記組成の溶媒の一部に、ピグメントグリーン36(大日精化社製、シアニングリーン5370)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0101】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク8(20℃での粘度4.5mPa・s)を調製した。
・・・
【0134】
セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に上記で得た各油性インクを充填し、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字し、印字された各インクにおける反射率スペクトル、L*値、a*値、b*値、色相角H°を、グレタグ社製「GRETAG Spedtrolino」(D65光源、視野角2°)で測定した。
・・・
【0152】
(第3の油性インクセット)
下記表7に示すように、第1の油性インクセット、第2の油性インクセットを組合せて、本発明の第3の油性インクセットである、組合せ2~組合せ12のインクセットとした。
【0153】
【表7】
[図:0001414152000007.jpg]
【0154】
図18は、組合せ1(YMに関しては比較例A、YGに関しては比較例B)とするもの、組合せ2(YMに関しては実施例1、YGに関しては実施例7)、組合せ9(YMに関しては実施例4、YGに関しては実施例10)とするもの、組合せ10(YMに関しては実施例5、YGに関しては実施例11)とするもの、組合せ13(YMに関しては比較例1、YGに関しては比較例3)とするものの色再現域について、L*a*b*表色系色度図により説明するための図である。」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】
マゼンタ顔料を含有するマゼンタインク、シアン顔料を含有するシアンインク、及びイエロー顔料を含有するイエローインク、及びグリーン顔料を含有するグリーンインクを備えるインクジェット記録用インクセットにおいて、
前記マゼンタ顔料の平均粒径が20nm以上60nm未満、前記シアン顔料の平均粒径が30nm以上60nm未満であり、
前記シアン顔料の平均粒径が前記マゼンタ顔料の平均粒径よりも大きいことを特徴とする、インクジェット記録用インクセット。」
4b「【0027】
本実施の形態に係るインクセットは、マゼンタ顔料、シアン顔料、グリーン顔料、イエロー顔料の順で平均粒径が大きくなることが好ましい。上述のように、シアン顔料の平均粒径をマゼンタ顔料の平均粒径よりも大きくすることで記録媒体上における色再現域を拡大できるが、マゼンタ顔料、シアン顔料、グリーン顔料、イエロー顔料の順で平均粒径を大きくすることで記録媒体上における色再現域をより一層拡大することができる。」
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「【請求項1】
顔料と、環状エステルである溶剤aと、前記溶剤aよりもポリ塩化ビニルの溶解力が低い溶剤bと、を含有し、
前記溶剤aの含有量が、1.0~7.0質量%であり、
前記溶剤bの含有量が、前記溶剤aの含有量1質量部に対して、10質量部以上である、
溶剤系インクジェットインク組成物。」
5b「【0004】
しかしながら、特許文献1のように浸透性が低い(樹脂溶解力が小さい)溶剤を用いる場合、例えばサイン用被記録媒体に広く適用されている塩化ビニルメディアでは、インク組成物が定着しにくく、記録物の摩擦堅牢性が低下する。これは、上記溶剤が塩化ビニルを溶解しにくく、インク組成物の被記録媒体への定着力が小さいことに起因する。また摩擦堅牢性向上の目的で、インク組成物に定着樹脂を溶解して配合する場合、溶解力が不足して十分な量の定着樹脂を配合できないことがある。更には、樹脂溶解力が小さい溶剤を多く配合すると、インク組成物が被記録媒体の深さ方向に浸透せず、表面を濡れ広がるため、記録物の埋まり性は向上するものの、印刷物のにじみや印刷ムラが悪化する。一方、樹脂溶解力が大きい溶剤を多く配合すると、インク組成物が被記録媒体の深さ方向に浸透するため、表面を広がりにくくなり記録物の埋まり性やレベリング性(光沢性)が低下する。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、乾燥性に優れ、摩擦堅牢性、及び、光沢やドットサイズなどの埋まり性に優れる記録物を得ることのできる溶剤系インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。」
5c「【0074】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0075】
[インク組成物用の材料]
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔顔料〕
JR-806(酸化チタン、テイカ社製)
JR-301(酸化チタン、テイカ社製)
〔分散剤〕
ソルスパース3000(ポリエステルポリアミド樹脂、ルーブリゾール社製)
〔溶剤a〕
GBL(γ-ブチロラクトン)
〔溶剤b〕
DEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、引火点64℃)
DEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、引火点94℃)
DEGdEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル、引火点70.8℃)
TetraEGmBE(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、引火点177℃)
〔溶剤c〕
DPGmME(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、引火点79℃)
DEGdME(ジエチレングリコールジメチルエーテル、引火点57℃)
〔溶剤d〕
エクアミドM100(アミド系溶剤、出光興産社製)
〔界面活性剤〕
BYK340(シリコーン系界面活性剤、ビックケミージャパン社製)
〔樹脂〕
G-1000P(メタクリル樹脂「パラペット」、株式会社クラレ社製)
【0076】
[インク組成物の調製]
各材料を下記の表1に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各インク組成物を得た。具体的には、まず、各材料の溶剤を混合し、混合溶剤を得た。得られた混合溶剤の一部と、ソルスパース3000(日本ルーブリゾール社)を混合し、その後酸化チタンJR-806(テイカ製)を加えて、ホモジナイザーを用いて予備分散した。その後、ビーズミルにて分散をさせ、酸化チタン分散体を得た。次いで、混合溶剤の一部と、パラペットG-1000P(クラレ製)とを混合し樹脂溶液を得た。最後に、酸化チタン分散体と、樹脂溶液と、混合溶液の残部と、BYK340(ビックケミー製)と、を混合し、インク組成物を作製した。また、実施例6においては、JR-806(テイカ製)に代えて、JR-301(テイカ製)を用いたこと以外は上記と同様にして、インク組成物を得た。なお、下記の表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
【0077】
(PVC溶解性試験)
ポリ塩化ビニル(PVCストレートポリマーTK-800、信越化学工業社製)0.5gと、溶剤50gとを、ガラス瓶内で混合し、25℃で5分間撹拌した。その後、静置し、静置してから25秒時点の、ガラス瓶底からの溶剤液面高さXと、膨潤又は溶解したポリ塩化ビニル粉末が分布するガラス瓶底からの高さYを測定した。得られたX及びYにより、比Y/Xを求め、これを各溶剤のポリ塩化ビニルの溶解力の指標とした。なお、本願実施例のγ-ブチロラクトンのY/Xは、0.8であったため、各溶剤は以下のように定義した。
溶剤b: Y/X<0.7
溶剤c:0.7≦Y/X≦0.9
溶剤d:0.9<Y/X
【0078】
【表1】
[図:0001414152000008.jpg]
」
(6)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「
[図:0001414152000009.jpg]
[図:0001414152000010.jpg]
[図:0001414152000011.jpg]
」(第855ページ左欄第9行~第856ページ左欄第3行)
6b「
[図:0001414152000012.jpg]
[図:0001414152000013.jpg]
・・・
[図:0001414152000014.jpg]
[図:0001414152000015.jpg]
[図:0001414152000016.jpg]
」(第856ページ左欄下から第3行~第857ページ左欄第15行)
6c「
[図:0001414152000017.jpg]
」(第859ページ右欄第5~22行)
(7)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「
[図:0001414152000018.jpg]
・・・
[図:0001414152000019.jpg]
[図:0001414152000020.jpg]
」(第39ページ左欄第17行及び右欄第3~19行
(8)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「【0001】
本発明は、インク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術を用いた方法が知られている。従来、インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では、商業印刷分野で応用されつつある。
インクジェット技術の分野では、インク(「インク組成物」ともいう。)として、顔料を含むインク(即ち、顔料インク)が広く用いられている。」
8b「【0205】
〔イエローインク組成物Y1の調製〕
下記組成の成分を混合し、メンブレンフィルタ(孔径0.5μm)を通して粗大粒子を除去し、イエローインク組成物Y1(実施例1のインク組成物)を得た。
作製したイエローインク組成物Y1の物性は、粘度5.5mPa・s(30℃)、表面張力27.0mN/m(25℃)、pH8.3(30℃)、及び電気伝導度155mS/m(30℃)であった。
ここで、粘度及び表面張力は、それぞれ、粘度計(型名:VISCOMETER TV-22、TOKI SANGYO CO.LTD製)、表面張力計(型名:Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z、協和界面科学(株)製)を用いて測定した。
また、pH及び電気伝導度は、電気伝導率・pHメーター(型名:WM-50EG、東亜DDK(株)製)を用いて測定した。
・・・
【0233】
【表5】
[図:0001414152000021.jpg]
」
(9)甲第9号証(以下、「甲9」という。)
9a「【0001】
本発明は、画像形成方法、及びインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法を利用した画像形成方法は、インクジェットヘッドに設けられた多数のノズル孔からインクを液滴状に吐出することにより、多種多様な記録媒体に対して高品位の画像を形成できること等から広く利用されている。」
9b「【0202】
〔実施例1〕
<インク組成物の調製1>
下記組成の成分を混合し、メンブレンフィルタ(孔径0.5μm)を通して粗大粒子を除去することで、ブラックインク1、シアンインク1、マゼンタインク1及びイエローインク1を得た。
・・・
【0237】
〔実施例3〕
富士フィルム製のJet Press 720を用いて、2種の処理液をセットし、サブタンクで混合できるように改造して、下記のインクを用いて、実施例1と同様に実験を行った。処理液は実施例1で用いた処理液A及び処理液Bを用いた。評価結果は下記表6に示す。
【0238】
<インク組成物の調製2>
下記組成の成分を混合し、メンブレンフィルタ(孔径0.5μm)を通して粗大粒子を除去し、インク(インク組成物)を得た。」
(10)甲第11号証
11a「
[図:0001414152000022.jpg]
・・・
[図:0001414152000023.jpg]
・・・
[図:0001414152000024.jpg]
・・・
[図:0001414152000025.jpg]
」
(11)甲第13号証(以下、「甲13」という。)
13a「【請求項1】
下記の第1工程及び第2工程を有する非水系顔料分散体の製造方法。
第1工程:少なくとも顔料、高分子分散剤、及び有機溶媒を含有する顔料組成物を高速撹拌混合装置で混合分散し、チャンバー式高圧ホモジナイザーを用いて予備分散する工程
第2工程:得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を用いるメディア式分散機により分散処理する工程
・・・
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の方法によって得られた非水系顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【請求項8】
カラーフィルターがインクジェット法で作製されるものである、請求項7に記載のカラーフィルター用着色組成物。」
13b「【0049】
実施例1
PGMEA84部、製造例1で得られた高分子分散剤6部を混合したものに、ホモミキサー(IKAジャパン株式会社製、ウルトラタラックス)を用いて17,000rpmの撹拌下、顔料としてジケトピロロピロール系顔料10部(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、PR254:商品名「IRGAPHOR BT-CF」)を投入し、30分間撹拌混合して一次混合分散体を得た。
得られた混合物を、0.2mmφのジルコニアビーズを充填(充填率60vol%)したダイノーミル(シンマルエンタープライゼス製、0.6L-ECM)を撹拌周速8m/s、滞留時間5分の条件で、連続方式により3パス処理し、数μmの粗大粒子を分散し、二次混合分散体を得た。
次に、得られた二次混合分散体をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、MF-110H)により150MPaの圧力で、連続方式により6パス処理した(第1工程)。
次に、0.05mmφのジルコニアビーズを充填(充填率64vol%)したウルトラアペックスミル(内容積0.17L、寿工業株式会社製、商品名)を撹拌周速6m/s、滞留時間0.6分の条件で、連続方式により50パス処理した(第2工程)(2槽による液戻し方式、図2参照)。
【0050】
得られた顔料分散体の粒度分布、マイクロフルイダイザー処理後の減粘率、及び保存安定性を以下の方法に従って、測定、評価した。結果を表1に示す。
(粒度分布)
各工程で得られた分散体をPGMEAで300倍に希釈し、日機装株式会社製のレーザードップラー式粒度分布計「マイクロトラック UPA150」を用いて体積基準の粒度分布を測定した。
(マイクロフルイダイザー処理後の減粘率)
マイクロフルイダイザー(MF)処理前後の顔料分散体の粘度を、E型粘度計〔測定温度20℃、測定時間1分、回転数20rpm、標準ローター(1°34′×R24)〕を用いて測定し、以下の式により、MF処理後の減粘率を算出した。
MF処理後の減粘率(%)=[1-(MF処理後の分散体粘度)/(MF処理前の分散体粘度)]×100
(保存安定性)
顔料分散体の保存前の粘度を、E型粘度計〔測定温度20℃、測定時間1分、回転数20rpm、標準ローター(1°34′×R24)〕を用いて測定した。同様にして、顔料分散体を40℃で1週間保存した後の粘度を測定し、保存前後の粘度を対比することにより保存安定性を評価した。
【0051】
実施例2
実施例1と同様の処理を行い、第2工程で得られた50パス処理品を、再度マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、MF-110H)により150MPaの圧力で、連続方式により6パス処理した。
実施例2では、2度マイクロフルイダイザー処理を行ったので、表1のマイクロフルイダイザー処理後の減粘率は、2度目のマイクロフルイダイザー処理後の減粘率を示した。
比較例1
実施例1において、マイクロフルイダイザー処理を行わなかった以外は同様の操作を行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
一次混合における高分子分散剤として、味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB-822〔組成(重量比):ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン=5/95、Mw:8,000〕を用い、二次混合におけるダイノーミルの処理周速を6.5m/sとした以外は、実施例1と同様の処理を行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例4
一次混合における高分子分散剤として、味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB-822〔組成(重量比):ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン=5/95、Mw:8,000〕を用い、二次混合におけるダイノーミルの処理周速を6.5m/sとした以外は、実施例2と同様の処理を行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例2
実施例3において、マイクロフルイダイザー処理を行わなかった以外は同様の操作を行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例5
回転衝撃式乾式粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製、ACM-2EC、12000rpm)を用いて予め粉砕したジケトピロロピロール系顔料10部(PR254:商品名「IRGAPHOR BT-CF」)、PGMEA84部、製造例1で得られた高分子分散剤6部をスターラーで混合して粉砕顔料混合物を得た。
得られた粉砕顔料混合物を、マイクロフルイダイザーにより150MPaの圧力で、連続的に6パス処理し、一次予備分散体を得た(第1工程)。
次に、第2工程を実施例1と同様の条件で行い評価した。結果を表1に示す。
比較例3
実施例5において、マイクロフルイダイザー処理を行わなかった以外は同様の操作を行い評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
[図:0001414152000026.jpg]
」
(12)甲第14号証(以下、「甲14」という。)
14a「【請求項1】
水性インクと、前記水性インクを収容する、繊維積層体又は多孔質体により構成された収容部材と、を備えるインクジェット用のインクカートリッジであって、
前記水性インクが、体積基準の粒度分布の累積50%粒径D50が80nm以上300nm以下である顔料を含有し、
前記収容部材の平均空隙半径が、50μm以上800μm以下であることを特徴とするインクカートリッジ。
・・・
【請求項9】
前記顔料の体積基準の粒度分布の累積90%粒径D90が、350nm以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。」
(13)甲第15号証(以下、「甲15」という。)
13a「【請求項1】バインダー樹脂および、C.I.ピグメントレッド177より黄味で、透過スペクトルの立ち上がり波長が530~560nmの範囲にある赤色の主顔料を含有することを特徴とするカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項2】赤色の主顔料がC.I.ピグメントレッド242である請求項1記載の組成物。
【請求項3】赤色の主顔料が60m2/g以上の比表面積を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】赤色の主顔料が80m2/g以上の比表面積を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】さらに、C.I.ピグメントレッド177およびC.I.ピグメントレッド254から選ばれる調色顔料を含有する請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】請求項1~5のいずれかに記載の組成物から作成された赤色画素を含むことを特徴とするカラーフィルター。」
13b「【0004】有機顔料を用いてカラーフィルターを製造する場合、要求される色特性を得るためには、2種類以上の顔料を用いて調色するのが普通である。そして、赤フィルターについては一般に、主顔料として、色特性、耐光性および耐熱性に優れたアントラキノン系の赤色顔料であるC.I.ピグメントレッド177が、また調色用として、黄色顔料であるC.I.ピグメントイエロー83やC.I.ピグメントイエロー139が使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、透過度、すなわち明度を高め、また色純度を上げるなど、カラーフィルターに対する色特性の要求が日増しに高まるなか、赤フィルターについては、上記の主顔料および調色顔料を用いた場合、その微粒子化や微分散化を行っても、これら顔料種の組合せだけではカラーフィルターとしての色特性の向上に限界があった。
【0006】本発明の目的は、色特性に優れた、特に透過度が高く、したがって明度の高いカラーフィルター用赤色組成物を提供することにある。本発明の別の目的は、この赤色組成物を用いて作成された色特性のよいカラーフィルターを提供することにある。」
(14)甲第16号証(以下、「甲16」という。)
16a「【請求項1】
顔料、顔料分散剤及び有機溶剤を含有する非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物であって、
顔料が、
C.I.ピグメントオレンジ36と、
C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントオレンジ71から選ばれる少なくとも1種の顔料、
を含有する非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物。
【請求項2】
C.I.ピグメントオレンジ36と、
C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントオレンジ71から選ばれる少なくとも1種の顔料の質量割合が、
(C.I.ピグメントオレンジ36):(C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントオレンジ71から選ばれる少なくとも1種の顔料)=95:5~40:60である請求項1に記載の非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物。
【請求項3】
C.I.ピグメントオレンジ36と、
C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントオレンジ71から選ばれる少なくとも1種の顔料の質量割合が、
(C.I.ピグメントオレンジ36):(C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254及びC.I.ピグメントオレンジ71から選ばれる少なくとも1種の顔料)=9:3~7:3である請求項1又は2に記載の非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂として、塩化ビニル系重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体及びアクリル系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1~3のいずれかに記載の非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物。
【請求項5】
前記顔料分散剤が塩基性基含有高分子顔料分散剤である請求項1~4のいずれかに記載の非水性インクジェット用オレンジ色インク組成物。」
(15)甲第17号証(以下、「甲17」という。)
17a「
[図:0001414152000027.jpg]
[図:0001414152000028.jpg]
[図:0001414152000029.jpg]
[図:0001414152000030.jpg]
[図:0001414152000031.jpg]
[図:0001414152000032.jpg]
[図:0001414152000033.jpg]
[図:0001414152000034.jpg]
[図:0001414152000035.jpg]
」
(16)甲第18号証(以下、「甲18」という。)
18a「【0135】
各実験例において使用した材料の詳細は以下のとおりである。
・マゼンタ顔料-P.R.266(C.I.ピグメントレッド266)、P.R.269(C.I.ピグメントレッド269)、P.R.147(C.I.ピグメントレッド147)、P.R.150(C.I.ピグメントレッド150)、P.R.176(C.I.ピグメントレッド176)、P.R.122(C.I.ピグメントレッド122)、P.V.19(C.I.ピグメントバイオレット19)、P.R.81:2(C.I.ピグメントレッド81:2)、P.R.48:1(C.I.ピグメントレッド48:1)
・イエロー顔料-P.Y.180(C.I.ピグメントイエロー180)P.Y.185(C.I.ピグメントイエロー185)、P.Y.150(C.I.ピグメントイエロー150)、P.Y.151(C.I.ピグメントイエロー151)
・シアン顔料-P.B.15:3(C.I.ピグメントブルー15:3)、P.B.15:4(C.I.ピグメントブルー15:4)
・オレンジ顔料-P.O.64(C.I.ピグメントオレンジ64)
・バイオレット顔料-P.O.23(C.I.ピグメントバイオレット23)
・SP32000: ポリエチレンイミン系塩基性顔料分散樹脂(ルーブリゾール社製「ソルスパース32000」、Mw=25,000、酸価12、アミン価22)
・EFKA7701: アクリルブロック共重合体の塩基性分散剤(BASF社製「EFKA7701」、Mw=22,000、アミン価40)
・PEA: 2-フェノキシエチルアクリレート(大阪有機社製「ビスコート#192」)
・LA: ラウリルアクリレート(大阪有機社製「ラウリルアクリレート」)
・DPGDA: ジプロピレングリコールジアクリレート(BASF社製「Miramer M222」)
・VEEA: アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、「VEEA-AI」)
・Irg127: 2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製「IRGACURE127」)
・BMS: 4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド(日本化薬社製「KAYACURE BMS」)
・EDB: エチル-4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート(ソート社製「SB-PI-704」)
・TPO: 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「Irgacure TPO」)
・DEDG: ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製「DEDG」)
・フェノチアジン: フェノチアジン(精工化学社製「フェノチアジン」)
・BYK-UV3510: ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK Chemie社製「BYK-UV3510」)」
(17)甲第19号証(以下、「甲19」という。)
19a「【0158】
[インクセットB用(実施例顔料)]
・オレンジ顔料…PO64(BASF社製:ORANGE K 2960)
・オレンジ顔料…PO71(BASF社製:IRGAZIN ORANGE D2905)・オレンジ顔料…PO36(クラリアント社製:Hostaperm Orange)・バイオレット顔料…PV23(クラリアント社製:Hostaperm Violet RL-NF)
・バイオレット顔料…PV37(BASF製:Cromophtal violet D5700)
・グリーン顔料…PG36(DIC社製:FASTOGEN Green 2YK)
・グリーン顔料…PG7(BASF社製:Heliogen Green D8370)
・ブルー顔料…PB60(クラリアント社製:PV Fast BlueL6472)
【0159】
[インクセットB用(比較特色顔料)]
・オレンジ顔料…PO43(クラリアント社製:PV Fast Orange GRL)
・バイオレット顔料:PV29(DIC社製:QUINDO Violet 19 228-1119:「QUINDO」は同社の登録商標)
・グリーン顔料…PG50(BASF社製、SICOPAL GREEN K 9610:「SICOPAL」は同社の登録商標)
(18)甲第20号証(以下、「甲20」という。)
20a「【0095】
<オレンジインク〔インク(A)〕>
C.I.ピグメントオレンジ43 2.0重量%
スチレン-アクリル酸共重合体(分散剤) 1.0重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0重量%
ジエチレングリコール 10.0重量%
イオン交換水 残 量
計 100.0重量%」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1発明1
甲1には、甲1に記載のインクは、インクジェット方式で吐出することにより、カラーフィルターの製造に用いるものであることが、記載されているから(摘記1a参照)、甲1には実施例10のインクセットとして「顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、C.I.ピグメントレッド177と、C.I.ピグメントイエロー150を用いた、平均粒径70nmの赤色顔料インク(Rインク)、
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントイエロー150を用いた、平均粒径70nmのRインクと同様にして緑色顔料インク(Gインク)、
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を用いた、平均粒径70nmの青色顔料インク(Bインク)、
顔料としてFastgen Super Blue 6070S(DIC社製)およびC.I.ピグメントグリーン36を用いた、平均粒径80nmの藍紫色顔料インク(Cインク)、
顔料としてChromophotal Violet B(CSC社製)およびC.I.ピグメントレッド177を用いた、平均粒径80nmの紅紫色顔料インク(Mインク)、
顔料としてPaliotol Yellow D1819(BASF社製)を用いた、平均粒径80nmの黄色顔料インク(Yインク)、
からなり、各インクが、希釈した重合体溶液と顔料との混合物に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、30分攪拌し、次に、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、30分攪拌する、微分散処理を行う微分散工程を施し、得られた顔料分散体をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈して得られたものであって、インクジェット方式で吐出することにより、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO2)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)に適用して、カラーフィルターの製造に用いるカラーフィルター用インクセット。」の発明が記載されているといえる(摘記1b参照)。
イ 甲1発明2
甲1には実施例10のインクセットを適用した印刷物として「顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、C.I.ピグメントレッド177と、C.I.ピグメントイエロー150を用いた、平均粒径70nmの赤色顔料インク(Rインク)、
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントイエロー150を用いた、平均粒径70nmのRインクと同様にして緑色顔料インク(Gインク)、
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を用いた、平均粒径70nmの青色顔料インク(Bインク)、
顔料としてFastgen Super Blue 6070S(DIC社製)およびC.I.ピグメントグリーン36を用いた、平均粒径80nmの藍紫色顔料インク(Cインク)、
顔料としてChromophotal Violet B(CSC社製)およびC.I.ピグメントレッド177を用いた、平均粒径80nmの紅紫色顔料インク(Mインク)、
顔料としてPaliotol Yellow D1819(BASF社製)を用いた、平均粒径80nmの黄色顔料インク(Yインク)、
からなり、各インクが、希釈した重合体溶液と顔料との混合物に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、30分攪拌し、次に、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、30分攪拌する、微分散処理を行う微分散工程を施し、得られた顔料分散体をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈して、得られたものであって、インクジェット方式で吐出することにより、カラーフィルターの製造に用いるカラーフィルター用インクセットを、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO2)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)に適用して、得たカラーフィルター。」の発明が記載されているといえる(摘記1b参照)。
(2)甲2に記載された発明
ア 甲2発明1
甲2には甲2に記載のインクはインクジェット方式により吐出されるものであることが記載されているから(摘記2b参照)、甲2には実施例1として「メタリックインク、藍紫色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3(平均粒径:150nm)から得た藍紫色顔料インク、紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)から得た紅紫色顔料インク、黄色顔料としてのC.I.ピグメントイエロー155(平均粒径:250nm)から得た黄色顔料インク、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド177(平均粒径:100nm)から得た赤色顔料インク、緑色顔料としてのC.I.ピグメントグリーン36(平均粒径:100nm)から得た緑色顔料インク、青色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:6(平均粒径:100nm)から得た青色顔料インク、及び、黒色インクからなり、インクが、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより得られ、インクジェット方式によりポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に吐出され、記録物を製造するインクセット。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。
イ 甲2発明2
甲2には実施例1の記録物として「メタリックインク、藍紫色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3(平均粒径:150nm)から得た藍紫色顔料インク、紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)から得た紅紫色顔料インク、黄色顔料としてのC.I.ピグメントイエロー155(平均粒径:250nm)から得た黄色顔料インク、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド177(平均粒径:100nm)から得た赤色顔料インク、緑色顔料としてのC.I.ピグメントグリーン36(平均粒径:100nm)から得た緑色顔料インク、青色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:6(平均粒径:100nm)から得た青色顔料インク、及び、黒色インクからなり、
インクが、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより得られ、インクセットのインクがインクジェット方式によりポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に吐出され、製造された記録物。」の発明が記載されているといえる(摘記2c参照)。
(3)甲3に記載された発明
ア 甲3発明1
甲3の【0153】の【表7】に記載の組合せ2のインクセットは、L* a* b* 表色系色度図を得るためにセイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に充填し、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字されているから(摘記3d参照)、組合せ2のインクセットとして「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク1、
ジエチレングリコールジエチルエーテル51.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル25.0質量部及び15.0質量部からなる組成の溶媒にピグメントオレンジ64(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) ORANGE GP)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク3、
ジエチレングリコールジエチルエーテル48.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル28.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク6、
ジエチレングリコールジエチルエーテル60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン20.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク7、
ジエチレングリコールジエチルエーテル52.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル19.0質量部、γ-ブチロラクトン5.0質量部及び15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントグリーン36(大日精化社製、シアニングリーン5370)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク8、
ジエチレングリコールジエチルエーテル62.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン18.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブラック7(三菱化学社製、CARBON BLACK MA-8)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク11からなり、セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に充填され、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字される、インクセット。」の発明が記載されているといえる(摘記3d参照)。
イ 甲3発明2
甲3には甲3に記載の組合せ2のインクセット印字したものとして「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク1、
ジエチレングリコールジエチルエーテル51.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル25.0質量部及び15.0質量部からなる組成の溶媒にピグメントオレンジ64(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) ORANGE GP)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク3、
ジエチレングリコールジエチルエーテル48.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル28.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク6、
ジエチレングリコールジエチルエーテル60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン20.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク7、
ジエチレングリコールジエチルエーテル52.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル19.0質量部、γ-ブチロラクトン5.0質量部及び15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントグリーン36(大日精化社製、シアニングリーン5370)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク8、
ジエチレングリコールジエチルエーテル62.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン18.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブラック7(三菱化学社製、CARBON BLACK MA-8)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク11からなるインクセットを、セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に充填し、印字した軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)。」の発明が記載されているといえる(摘記3d参照)。
4 対比・判断
(1)甲1に記載された発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明3
(ア)甲1発明1との対比
甲1発明1の「赤色顔料インク(Rインク)」、「藍紫色顔料インク(Cインク)」及び「黄色顔料インク(Yインク)」は、それぞれ、本件特許発明3の「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ」に相当し、甲1発明1の「ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート」は本件特許発明3の「有機溶剤」に相当するから、甲1発明1の「顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、C.I.ピグメントレッド177と、C.I.ピグメントイエロー150を用いた、平均粒径70nmの赤色顔料インク(Rインク)、「顔料としてFastgen Super Blue 6070S(DIC社製)およびC.I.ピグメントグリーン36を用いた、平均粒径80nmの藍紫色顔料インク(Cインク)」及び「顔料としてPaliotol Yellow D1819(BASF社製)を用いた、平均粒径80nmの黄色顔料インク(Yインク)」は、本件特許発明3の「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ」及び「前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み」に相当する。
甲1発明1の「顔料としてC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を用いた、平均粒径70nmの青色顔料インク(Bインク)」は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈したものであり、「顔料としてFastgen Super Blue 6070S(DIC社製)およびC.I.ピグメントグリーン36を用いた、平均粒径80nmの藍紫色顔料インク(Cインク)」より平均粒径が小さいから、本件特許発明3の「インキA」及び「インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ」に相当する。
甲1発明1の「インクジェット方式で吐出することにより、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO2)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)に適用して、カラーフィルターの製造に用いるカラーフィルター用インクセット」は、水を含んでいないから、本件特許発明3の「非水系インクジェットインキセット」に相当する。
そうすると、本件特許発明3と甲1発明1は、「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキAを含む、非水系インクジェットインキセットであって、
前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含む、
非水系インクジェットインキセット。
インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であるのに対し、甲1発明1ではその量が不明である点。
<相違点1-2>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるのに対し、甲1発明1では、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含むか不明であり、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含まない点。
(イ)の相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点1-2>について検討する。
<相違点1-2>は実質的な相違点である。
甲1には甲1発明1のカラーフィルター用インクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
そして、甲2及び甲3にも、甲2及び甲3に記載のインクセットのインクにおいて、3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
また、甲4~甲9、甲11、甲13~甲20にも、甲1発明1のカラーフィルター用インクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いる動機づけとなる記載はない。
そうすると、甲1発明1のカラーフィルター用インクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用い、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明3は、<相違点1-1>について検討するまでもなく、甲11発明1ではなく、甲1発明1、並びに、甲2~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明5、6
本件特許発明5、6は、本件特許発明3を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明3と甲1発明1との<相違点1-2>と同じの相違点を有するものであり、甲1発明1ではなく、甲1発明1、並びに、甲2~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2に記載された発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明3
(ア)甲2発明1との対比
甲2発明1の「紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)から得た紅紫色顔料インク、黄色顔料としてのC.I.ピグメントイエロー155(平均粒径:250nm)から得た黄色顔料インク、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド177(平均粒径:100nm)から得た赤色顔料インク」は、本件特許発明3の「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ」に相当し、甲2発明1の「フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート」は、分散媒であるから(摘記2b参照)、本件特許発明3の「有機溶媒」に相当するから、甲2発明1の「紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)から得た紅紫色顔料インク、黄色顔料としてのC.I.ピグメントイエロー155(平均粒径:250nm)から得た黄色顔料インク、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド177(平均粒径:100nm)から得た赤色顔料インク」及び「インクが、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV-3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp-メトキシフェノールと混合することにより得られ」は、本件特許発明3の「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ」及び「前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み」に相当する。
甲2発明1の「青色顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:6(平均粒径:100nm)から得た青色顔料インク」は、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートを含み、「紅紫色顔料としてのC.I.ピグメントバイオレット19(平均粒径:150nm)から得た紅紫色顔料インク」より平均粒径が小さいから、本件特許発明3の「インキA」及び「インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ」に相当する。
そうすると、本件特許発明3と甲2発明1は、「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキAを含む、非水系インクジェットインキセットであって、
前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含む、
非水系インクジェットインキセット。
インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキ」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であるのに対し、甲2発明1ではその量が不明である点。
<相違点2-2>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるのに対し、甲2発明1では、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含むか不明であり、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含まない点。
(イ)の相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点2-2>について検討する。
<相違点2-2>は実質的な相違点である。
甲2には甲2発明1のインクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
そして、甲1及び甲3にも、甲1及び甲3に記載のインクセットのインクにおいて、3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
また、甲4~甲9、甲11、甲13~甲20にも、甲2発明1のカラーフィルター用インクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いる動機づけとなる記載はない。
そうすると、甲2発明1のインクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用い、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明3は、<相違点2-1>について検討するまでもなく、甲2発明1ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲3~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明5、6
本件特許発明5、6は、本件特許発明3を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明3と甲2発明1との<相違点2-2>と同じの相違点を有するものであり、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲3~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)甲3に記載された発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明3
(ア)甲3発明1との対比
甲3発明1の「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク1」の「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒」、「ジエチレングリコールジエチルエーテル48.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル28.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク6」の「ジエチレングリコールジエチルエーテル48.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル28.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒」及び「ジエチレングリコールジエチルエーテル60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン20.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク7」の「ジエチレングリコールジエチルエーテル60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン20.0質量部からなる組成の溶媒」は、いずれも、本件特許発明3の「有機溶剤」に相当するから、甲3発明1の「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒の一部に、ピグメントイエロー150(ランクセス社製、YELLOW PIGMENT E4GN-GT)を3.0質量部と分散剤としてルブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク1」、「ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを15.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒」、「ジエチレングリコールジエチルエーテル48.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル28.0質量部及びγ-ブチロラクトン15.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントレッド122(大日本インキ化学工業社製、FASTGEN SUPER MAGENTA RG)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク6」及び「ジエチレングリコールジエチルエーテル60.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル10.0質量部及びγ-ブチロラクトン20.0質量部からなる組成の溶媒に、ピグメントブルー15:4(大日精化社製、シアニンブルーCP-1)を3.0質量部と分散剤としてルーブリゾール社製「ソルスパース32000」を2.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散し、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、得られた、平均粒径は250nmである顔料粒子を含む顔料分散液から得た、油性インク7」は、本件特許発明3の「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ」及び「前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含み」に相当する。
甲3発明1の「インクセット」は、水を含まないものであり、セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に充填され、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字されるものであるから、本件特許発明3の「非水系インクジェットインキセット」に相当する。
そうすると、本件特許発明3と甲3発明1は、「シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキ、並びに、以下に示すインキAを含む、非水系インクジェットインキセットであって、
前記シアンインキ、マゼンタインキ、及び、イエローインキのそれぞれが、顔料、及び、有機溶剤を含む、
非水系インクジェットインキセット。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満であるのに対し、甲3発明1ではその量が不明である点。
<相違点3-2>
本件特許発明3では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含み、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるのに対し、甲2発明1では、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含むか不明であり、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含まない点。
<相違点3-3>
本件特許発明3では、インキA:顔料及び有機溶剤を含むブルーインキであって、前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さく、前記ブルーインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上を含む、ブルーインキを含むのに対し、甲3発明1では、そのような特定がない点。
(イ)の相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点3-2>について検討する。
<相違点3-2>は実質的な相違点である。
甲3には甲3発明1のインクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
そして、甲1及び甲2にも、甲1及び甲2に記載のインクセットのインクにおいて、3-メトキシブタノールを用いることについて記載も示唆もない。
また、甲4~甲9、甲11、甲13~甲20にも、甲3発明1のカラーフィルター用インクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用いる動機づけとなる記載はない。
そうすると、甲3発明1のインクセットのインクにおいて溶剤として3-メトキシブタノールを用い、有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明3は、<相違点3-1>及び<相違点3-3>について検討するまでもなく、甲3発明1ではなく、甲3発明1、並びに、甲1、甲2、甲4~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明5、6
本件特許発明5、6は、本件特許発明3を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明3と甲3発明1との<相違点3-2>と同じの相違点を有するものであり、甲2に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲2、甲4~甲9、甲11及び甲13~甲20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、次のとおりである。
「理由(サポート要件)本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(ア)本件特許発明の課題
本件特許発明が解決しようとする課題に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
【0004】
近年、印刷物の色域を拡大するため、プロセスカラーであるシアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキに加えて、ブルーインキ、オレンジインキ、グリーンインキなどの特色カラーを搭載したインクジェットインキセットが提案されている(特許文献1参照)。更に、屋外広告用途に用いるために、耐候性に優れた特色インキの検討も進められている(特許文献2参照)。しかしながら、プロセスカラーを呈するインキと特色カラーを呈するインキとを組み合わせた際に、隣接するインキ同士の滲みを防ぎ、精細かつ色域の広い画像を描くことは非常に困難である。
【0005】
またインクジェットプリンタで使用するにあたっては、安定的に連続吐出できることが求められる。吐出時の安定性を向上させるための方策として、例えば特許文献3には、C.I.ピグメントグリーン36等の顔料を、特定の顔料分散剤及び/または有機溶剤とともに、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤中に分散させる工程を含む、非水性インクジェットインキの製造方法が開示されている。しかしながらこの場合、使用できる顔料分散剤及び/または有機溶剤が限定されるため、希望の品質を有するインクジェットインキを得ることができなくなる恐れがあった。また、特有の臭気を有するアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート系溶剤を必須成分とするため、印刷作業者に対する負担の軽減等も考慮すると、必ずしも望ましい方策とはいえなかった。
【0006】
なお、屋外広告用途等で使用される塩化ビニル系基材に対する定着性を確保するため、非水性インクジェットインキでは含酸素複素環化合物を使用することが多い(特許文献4、5参照)。一般に含酸素複素環化合物は高い浸透能力を有しており、塩化ビニル系基材内部への浸透によって定着性が発現する。その一方で、印刷後の基材内部に長期間残留することになるため、印刷物が十分に乾燥せず、長期に渡って特有の臭気を放つことが問題となることがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的としたものであり、具体的には、連続印刷時の吐出安定性に優れ、高精細かつ色域の広い印刷物を得ることが可能な、非水系インクジェットインキのセット(非水系インクジェットインキセット)を提供することを目的とする。また本発明の更なる目的は、上記に加え、乾燥性及び保存安定性にも優れたインキセットを提供することを目的とする。
(イ)本件特許発明1について
(イ-1)粒子径が450nm以上の顔料の含有量について
a 本件特許発明1では、「非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満である」と規定されている。
b 粒子径450nm以上の顔料の含有量を特定することの意義について、明細書には、以下のとおり記載されている。
【0041】
また本発明では、インキセットを構成する各インキにおいて、上記条件で測定した、粒子径が450nm以上である顔料の割合が、当該インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満である。粒子径が450nm以上である顔料の割合が多いと、プリンタ流路内でのインキ詰まり、連続吐出時の不安定化、インキの保存安定性の悪化を引き起こす。また記録媒体上に付与されたインキ内部での、上記粒子径が450nm以上である顔料の対流速度の遅さに起因して、印刷物からの有機溶剤の揮発の遅れ及び不均一化が起き、当該印刷物の精細さの悪化につながる可能性がある。更には、粗大な顔料の表面で、当該顔料に入射した光が散乱する、あるいは長波長の散乱光が増加することで、顔料の着色力を最大限に活かすことが困難となり、色域が狭まる恐れがある。粒子径が450nm以上である顔料の割合は、インキ中に含まれる顔料全量に対して8%未満であることが好ましく、6%未満であることが更に好ましく、4%未満であることが最も好ましい。
c また、実施例(表1~表6)における各インクの粒子径450nm以上の顔料の含有量は、次のとおりである(「質量%」を「%」と略記する)。各インクについて16ないし18の具体例が記載されているところ、特定の含有量を示した具体例の数を含有量の次にカッコ書きで記載している。
シアン:1%(14例)、7%(1例)、9%(1例)、11%(1例)<表1>
マゼンタ:5%(14例)、9%(2例)、11%(1例)<表2>
イエロー:2%(14例)、8%(1例)、9%(1例)、11%(1例)<表3>
ブルー:2%(16例)、9%(1例)、11%(1例)<表4>
オレンジ:6%(16例)、9%(1例)、11%(1例)<表5>
グリーン:6%(14例)、9%(1例)、11%(1例)<表6>
d 各インクの具体例において、比較例に相当するものは、粒子径450nm以上の顔料含有量が11%である例であり、「保存安定性」の評価結果が唯一「1」(良好は「3」以上)とされている。
他方、これ以外の具体例は、その評価結果からみて、すべて実施例に相当するものであると考えられるが、上記Cの太字のとおり、ほとんどの実施例は、粒子径450nm以上の顔料含有量が特定の値のもの(マゼンタインキであれば、5%)であり、粒子径450nm以上の顔料含有量がこの特定の値未満となる具体例は一切記載がなく、例えば、450nm以上の顔料含有量が0(ゼロ)質量%の場合のインキの評価は全く行われていない。
e ここで、顔料の粒子径と諸特性の間には、以下のような関係があることは周知の技術的事項である(甲10参照)。
・粒子径と着色力と顔料の粒子径が小さくなると比表面積が大きくなる。よって、同一顔料濃度であれば顔料粒子表面での光の吸収が増加するため、着色カが大きくなる。
・粒子径と凝集・分散性:顔料粒子間に作用する凝集力はファン・デル・ワールス引力であり同じ濃度であれば粒子径が小さいほど粒子間の距離は狭まるため凝集力が増加する。また、粒子径が小さくなるほど、表面エネルギーが増大する。以上のことから、粒子径を大きくすることにより、凝集の緩和、分散性の向上を図ることができる。
f eの周知の技術的事項を踏まえつつ、上記b~dで指摘した本件特許明細書の開示内容を検討すると、平均粒子径が450nm以上の顔料の割合を10質量%未満とした場合に、実施例による裏付けのない、450nm以上の顔料の含有量を限りなく少なくした(例えばゼロ)ときにも、顔料の分散性の問題に起因する保存安定性の問題は生じず、本件特許発明の課題は解決できることを、当業者が理解できるように、本件特許明細書の発明の詳細な説明は記載されているとはいえない。
(イ-2)ブルーインキの顔料の平均粒子径<シアンインキの顔料の平均粒子径
a 本件特許発明1では、「前記ブルーインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記シアンインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さ」いことが規定されている。
b この発明特定事項の意義について、明細書には、以下のとおり記載されている。
【0038】
プロセスカラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径よりも特色カラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径が小さい場合、プロセスカラーインキと特色カラーインキとを同時に印刷した際のインキ塗膜において、当該プロセスカラー中に含まれる顔料よりも当該特色カラー中に含まれる顔料の方が光の散乱が小さくなるため、異なる散乱光の波長が得られ、より広い色域の表現が可能となると考えられる。例えば、赤味領域に分類されるマゼンタインキとオレンジインキの場合、「マゼンタインキ中に含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキ中に含まれる顔料の平均粒子径」とすることで、マゼンタインキからは、長波長成分が多い黄味を有した赤色散乱光が観測され、オレンジインキからは、青味を有した赤色散乱光が観測される。このように、同じ色領域でありながら散乱光の波長が異なることで、色材の着色力を最大限に活かした印刷物を得ることができる。
【0039】
また詳細は不明ながら、2種類のインキに含まれる顔料の平均粒子径が異なる場合、インキ中の各成分の平衡状態等が互いに変化するため、当該2種類のインキ同士の親和性が低くなると考えられる。その結果、上記2種類のインキを接触させた際、互いに合一することがなく、高精細な印刷物が得られると考えられる。
c 実施例では、色間滲み(印刷物の精細性)評価(※)について、インキセットを構成するインキのうち、シアンインキとブルーインキ、マゼンタインキとオレンジインキ、イエローインキとグリーンインキという、2種類のインキからなる3つのサブセットを用いて行っている(【0115】、表7~表9)。
そして、シアンインキとブルーインキのサブセットに関しては、顔料の平均粒子径の関係が上記aの規定を満足せず、かつ、粒子径が450nm以上の顔料の含有量は10質量%以下であった比較例1~4、7~10では、色間滲みの評価がすべて「1」(不合格ドットの割合が30%以上)とされている。
なお、マゼンタインキとオレンジインキ、イエローインキとグリーンインキのサブセットについても、これと同様の結果となっている(前者が比較例1~3、5、7~10、後者が比較例1~3、6~10)。
(※)色間滲みの評価基準は、色の異なるインキの液滴ドット同士が隣接している箇所を探し、当該箇所においてドット同士が独立して定着し、その界面が明確に観察できるものを合格とし、逆に、ドット同士が混色しにじんだ状態で定着したものを不合格とする(本件特許明細書【0115】)。
d ここで、プロセスインキと特色インキの色相角H°の関係は、次のようになっている(本願明細書【0027】)。このように、特色インキは、2つのプロセスインキの色相の間の色相を表現するものと位置付けられるものであるから、ブルーインキが印刷される場合、その液滴はシアンのみならずマゼンタの液滴とも隣接する関係になりうるものである。
インキ 色相角H°
マゼンタ 0~45、330~360
オレンジ 45~80
イエロー 80~110
グリーン 110~220
シアン 220~265
ブルー 265~330
e そうしてみると、「プロセスカラーを呈するインキと特色カラーを呈するインキとを組み合わせた際に、隣接するインキ同士の滲みを防」ぎ、精細な画像を描くようにする(上記(ア)【0004】)には、ブルーインキの場合、シアンインキとのサブセットにおいてインキ同士の滲みを防ぐだけでは不十分であり、ブルーインキとマゼンタインキとのサブセットにおいてもインキ同士の滲みを防ぐ必要がある。
f そして、上記bの明細書の記載を参酌すれば、ブルーインキとマゼンタインキとのサブセットにおいても、ブルーインキの顔料の平均粒子径<マゼンタインキの顔料の平均粒子径となる必要があると考えられるところ、かかる点について、本件特許発明1では、発明特定事項とされていない。
g 以上のとおり、ブルーインキと隣接する関係になりうるマゼンタインキとブルーインキの平均粒子径の関係が特定されていない点で、本件特許発明1は、課題解決のための手段が反映されておらず、サポート要件を満たさない。
(イ-3)ブルーインキの顔料種は特定されているが、シアンインキの顔料種は特定されていない
a 本件特許発明1では、平均粒子径の大小関係が特定されるブルーインキとシアンインキのうち、ブルーインキについては、含まれる顔料が「C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、及び、C.I.ピグメントバイオレット23からなる群から選択される1種以上」と特定されているが、シアンインキについては、含まれる顔料種は特定されていない。
b シアンインキに含まれる顔料について、本件特許明細書には、「C.I.ピグメントブルー15:3、及び、15:4からなる群から選択される1種以上含有することが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:4を含有することがより好ましい。」と2種類の顔料だけが記載され(【0033】)、実施例においても、この2種類の顔料が用いられている(表1)。
c ここで、本件特許明細書には、課題解決のメカニズムについて、以下のような記載がある。
c-1「プロセスカラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径>特色カラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径」という関係を満たす際、高精細かつ広い色域の印刷物を得ることが可能であること(【0037】
c-2 上記平均粒子径の関係を充足することで、プロセスカラーインキと特色カラーインキとを同時に印刷した際の塗膜において、当該プロセスカラー中に含まれる顔料よりも当該特色カラー中に含まれる顔料の方が光の散乱が小さくなるため、異なる散乱光の波長が得られ、より広い色域の表現が可能となること(【0038】)
c-3 2種類のインキに含まれる顔料の平均粒子径が異なる場合、インキ中の各成分の平衡状態等が互いに変化するため、当該2種類のインキ同士の親和性が低くなると考えられ、その結果、上記2種類のインキを接触させた際、互いに合一することがなく、高精細な印刷物が得られると考えられること(【0039】)
d 上記c-2の広い色域の実現に関しては、顔料種が異なればその固有の色相は異なることから(甲12)、インキ中に含まれる顔料種による影響も大きいと考えられ、実施例で使用されている具体的な顔料種(PB15:4、PB15:3)以外の顔料種を用いた場合であっても、広い色域が実現されることは、本件特許明細書の記載からは理解できない。
e また、上記c-3の高精細な印刷物の実現に関しては、インキ中の各成分の平衡状態等が重要なファクターとなっているところ、インク中の顔料の比重はこの平衡状態に影響を与える(比重が大きい顔料の方が沈降しやすい)と考えられるが、顔料種が異なればその比重は大きく異なる(甲12)。よって、実施例で使用されている具体的な顔料種(PB15:4、PB15:3)と比重が異なる顔料種を用いた場合であっても、高精細な印刷物が実現されることは、本件特許明細書の記載からは理解できない。
f よって、シアンインキの顔料として、明細書に実際に記載され、ブルーインクとの滲み等の課題が解決されたことが確認されている、上記bの特定の顔料種以外を用いた場合については、本件特許発明の課題を解決できるものとは認められない。
g また、上記(イ-2)で指摘したとおり、ブルーインキの液滴と隣接する関係になりうるマゼンタインキについても、顔料種の特定が必要であることは、当然である。
h 以上のとおり、ブルーインキと隣接する関係になり得る、シアン・マゼンタインキに含まれる顔料種が特定されていない点において、本件特許発明1はサポート要件を満たさない。
(イ-4)ブラックインキについて
a 本件特許発明1は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブルーインキを含むインキセットの発明に関するものであり、このインキセットがこれらの4色以外の色のインキを含むことを排除するものではなく、通常のインキセットには必ず含まれるブラックインキを含む態様も包含している。
b ここで、ブラックインキは無彩色であり、その液滴は、他のカラーインキの液滴と、色相を問わず隣接する関係になり得るものである。
c そうしてみると、「プロセスカラーを呈するインキと特色カラーを呈するインキとを組み合わせた際に、隣接するインキ同士の滲み」の問題は、ブラックインキと他のカラーインキが隣接することによっても生じる課題であるといえるが、これを解決するための具体的手段は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、何ら開示されていない。
d そうしてみると、本件特許発明1は、通常のインキセットには必ず含まれるブラックインキと、他のカラーインキとの間で生じる隣接するインキ同士の滲みの課題を解決できるものといえず、サポート要件を満たさない。
(イ-5)プロセスカラーインキ同士の顔料の粒子径の関係について
a 本件特許発明1は、プロセスカラーインキ(シアン、マゼンタ、イエローインキ)、及び、特色カラーインクとしてのブルーインキを含むインキセットの発明であり、プロセスカラーインキの液滴同士も隣接する関係となりうるものである。
b そうしてみると、「プロセスカラーを呈するインキと特色カラーを呈するインキとを組み合わせた際に、隣接するインキ同士の滲み」の問題は、プロセスカラーインキ同士(例えば、シアンとイエロー)が隣接することによっても生じる課題であるといえるが、これを解決するための具体的手段(隣接するインキ同士の平均粒子径の関係)について、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、特に説明されているわけではない。
c 他方で、本件特許明細書の発明の詳細な説明の、ほぼすべての実施例において(実施例52を除く実施例1~71)、プロセスカラーインキの顔料の平均粒子径の関係は、シアンインキ<イエローインキ<マゼンタインキとなっている。
d 本件特許明細書の【0037】~【0039】の記載(「プロセスカラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径>特色カラーインキ中に含まれる顔料の平均粒子径」とするメカニズム)は、プロセスカラーインキ同士が隣接する場合に課題を解決するためにも妥当する考え方であるといえ、上記cの実施例におけるプロセスカラーインキの顔料の平均粒子径の関係を踏まえると、本件特許発明1において、隣接するインキの滲みの課題を解決するためには、プロセスカラーインキの顔料の平均粒子径についても、シアンインキ<イエローインキ<マゼンタインキとなるようにする必要があるといえる。
e しかしながら、本件特許発明1においては、プロセスカラーインキの顔料の平均粒子径の関係については特定されておらず、課題解決のために必要な事項が特定されているとはいえないから、本件特許発明1は、サポート要件を満たさない。
(イ-6)小括
よって、本件特許発明1はサポート要件を満たさない。
かかるサポート要件違反の記載不備は、請求項1を直接的あるいは間接的に引用する本件特許発明3、5~7にも妥当するものである。
(ウ)本件特許発明2について
(ウ-1)粒子径が450nm以上の顔料の含有量について
a 本件特許発明2では、「非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれにおいて、粒子径が450nm以上である顔料の量が、インキ中に含まれる顔料全量に対して10質量%未満である」と規定されている。
b この点のサポート要件違反については、上記(イ)(イ-1)で説明したのと同様の理由である。
(ウ-2)グリーンインキの顔料の平均粒子径<イエローインキの顔料の平均粒子径
a 本件特許発明2では、「前記グリーンインキに含まれる前記顔料の平均粒子径が、前記イエローインキに含まれる顔料の平均粒子径よりも小さ」いことが規定されている。
b 色相角の関係から、グリーンインキが印刷される場合、その液滴はイエローのみならずシアンの液滴とも隣接する関係になりうるものであるから、上記(イ)(イ-2)で説明したのと同様のサポート要件違反が存在する。
(ウ-3)グリーンインキの顔料種は特定されているが、イエローインキの顔料種は特定されていない
a 本件特許発明2では、平均粒子径の大小関係が特定されるグリーンインキとイエローインキのうち、グリーンインキについては、含まれる顔料が「C.I.ピグメントグリーン7、及び、C.I.ピグメントグリーン36からなる群から選択される1種以上」と特定されているが、イエローインキについては、含まれる顔料種は特定されていないが、この点に関して、上記(イ)(イ-3)b、cで説明したのと同様のサポート要件違反が存在する。
b また、グリーンインキの液滴と隣接する関係になりうるシアンインキについても、同様である。
(ウ-4)ブラックインキについて
a 本件特許発明2は、シアン、マゼンタ、イエロー、グリーンインキを含むインキセットの発明に関するものであり、このインキセットがこれらの4色以外の色のインキを含むことを排除するものではなく、通常のインキセットには必ず含まれるブラックインキを含む態様も包含している。
b そして、この点に関して、上記(イ)(イ-4)で説明したのと同様のサポート要件違反が存在する。
(ウ-5)プロセスカラーインキ同士の顔料の粒子径の関係について
a 本件特許発明2は、シアン、マゼンタ、イエロー、グリーンインキを含むインキセットの発明に関するものであるところ、プロセスカラーインキの顔料の平均粒子径の関係が特定されていない点で、上記(イ)(イ-5)で説明したのと同様のサポート要件違反が存在する。
(ウ-6)小括
よって、本件特許発明2はサポート要件を満たさない。
かかるサポート要件違反の記載不備は、請求項2を直接的あるいは間接的に引用する本件特許発明3、5~7にも妥当するものである。
(エ)本件特許発明3について
a 本件特許発明3は、本件特許発明1又は2において、「前記非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を有機溶剤全量中95%質量以上含む」ことを発明特定事項とするものである。
b この有機溶剤(a)を含むことの意義について、本件特許明細書には、以下のように記載されている。
【0043】
本発明では、非水系インクジェットインキセットを構成するインキのそれぞれが、溶解度パラメーター値(SP値)が8.0~10.0(cal/cm3)1/2であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を、有機溶剤全量中95%以上含むことが好ましい。このようにすることで、インキの保存安定性、印刷時の連続印刷安定性の観点で優れたインキを得ることを可能としている。また、インキの乾燥時に有機溶剤が揮発する速度が良好となることで、印刷物の残留溶剤量を低減させ、乾燥性を向上させることができる。更に、インキが樹脂を含む場合は、乾燥時に塗膜が形成する際に、当該樹脂の溶解性を確保しながらすばやく当該塗膜が形成するため、印刷物のブロンズ効果を抑制し、高精細かつ色域の広い印刷物を得ることができる。
【0049】
上述したとおり、溶解度パラメーター値(SP値)(cal/cm3)1/2は、8.0~10.0であることが、インキの保存安定性、印刷時の連続印刷安定性、及び印刷物の残留溶剤量の観点から好ましい。更に、連続印刷安定性が特段に向上する観点から、溶解度パラメーター値(SP値)(cal/cm3)1/2は、8.0~9.8であることがより好ましく、8.1~9.6であることが最も好ましい。
【0050】
また本発明のインキに使用する有機溶剤を選択するにあたっては、溶解度パラメーター値(SP値)(cal/cm3)1/2の指標に加えて、1気圧下における沸点も重要な要素である。1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)を使用することで、優れた連続印刷安定性の確保と、印刷物中の残留溶剤量の最小化が可能となる。更に、印刷物の精細さの観点から、1気圧下における沸点は、195℃以下であることが好ましく、193℃以下であることがより好ましい。
【0057】
更に本発明は、前記有機溶剤(a)が、3-メトキシブタノールを含み、前記3-メトキシブタノールの含有量が、前記有機溶剤全量に対して50質量%以上含むことで、インキの保存安定性、印刷時の連続印刷安定性、印刷物の残留溶剤量の観点で優れた印刷性能を発揮することを可能としている。
【0058】
3-メトキシブタノールはSP値が9.6であり、上述したような連続印刷安定性の向上に寄与する。また高い表面張力を持つことから、インクジェットプリントヘッドのノズルプレートに対して濡れにくく、連続印刷を安定的に実施することができる。また、3-メトキシブタノールは優れた乾燥性能を有するため、印刷物に残留しにくく乾燥性に優れる効果もある。
c 次に、実施例の各インキにおける有機溶媒の選択を見てみる。
(c-1)実施例(表1~表6)では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブルー、オレンジ、グリーンのすべてのインクにおいて、有機溶剤(a)として、MB(3-メトキシブタノール)、DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、MBA(3-メトキシブチルアセテート)、BGAc(エチレングリコールモノプチルエーテルアセテート)が用いられているが、以下のとおり、大半の具体例では、課題解決の観点から特に好ましいとされるMB(上記bの【0057】【0058】)と、これと化学構造の類似したMBAを併用したものである。また、それ以外の具体例においても、MB、MBAのいずれか一方を含んだものとなっている。MBを含まない具体例は、すべてのインクにおいて1例のみであった(MBA+DEDG)。
[図:0001414152000036.jpg]
[図:0001414152000037.jpg]
(c-2)また、表1~表6の具体例のうち、有機溶剤以外の条件がすべて同じインキについて纏めると、以下の整理表のとおりである。
有機溶剤以外の条件がすべて同じインキとは、例えば、シアンインキの場合、有機溶剤以外の条件、すなわち、有機溶剤以外のインキの組成(顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、表面張力調整用添加剤の種類及び量)、顔料の平均粒子径(150nm)及び450nm以上の顔料量(1質量%)がすべて同じものである。他のインキについても同様である。また、整理表のとおり、インクの種類(シアン、マゼンタ等)が異なっても、評価結果の内容は、すべて同じであった。
なお、本件特許明細書の表1~表6の「有機溶剤全量に対する有機溶剤(a)量(質量%)」及び「有機溶剤全量に対する3-メトキシプタノール量(質量%)」の値については、計算間違いが認められた。整理表では、正しい数値を記載するとともに、その部分に、黄色のマーカーを付している。
この整理表によれば、有機溶剤(a)としてMBを使用していない具体例CYl2,MA12,YE12、BL12、OR12、GR12(単に「CY12等という。他の具体例も同様)では、有機溶剤全量に、する有機溶剤(a)の含有量が100%と本件特許発明3の構成を充足しているにもかかわらず、本件特許発明3の構成を充足しないCY7等~CYl0等(有機溶剤(a)の含有量が95質量%未満)よりも、評価結果(特に連続印刷安定性)が低くなっている。
<整理表>
[図:0001414152000038.jpg]
d ここで、本件特許の出願当時、所定のSP値及び沸点を有する有機溶剤(a)を用いることと、インキの保存安定性、印刷時の連続印刷安定性、高精細か¥つ色域の広い印刷物といった技術的意義との関連を示す技術常識は存在しないことを踏まえつつ、上記cの実施例の開示内容を検討すると、有機溶剤(a)としてMBは用いず、上記実施例で効果の確認されていない有機溶剤(a)を用いた場合(例えば、BGAc+DEDGの組合せや、実施例では用いられていない有機溶剤(a)に該当する有機溶剤の使用)であっても、本件特許発明の課題が解決できることを、当業者が理解できるように、本件特許明細書の発明の詳細な説明は記載されていない。
e 小括
よって、本件特許発明3はサポート要件を満たさない。
かかるサポート要件違反の記載不備は、請求項3を直接的あるいは間接的に引用する本件特許発明5~7にも妥当するものである。」
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(ア)本件訂正により、本件特許発明1、2は削除されたが、前記1「取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由」中の(イ)については、削除された本件特許発明1の特定事項を本件特許発明3も有しているので、検討する。
(イ)「取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由」中の(イ)本件特許発明1(訂正後の本件特許発明3)について
本件特許発明3が解決しようとする課題は前記1(ア)のとおりである。
(イ-1)粒子径が450nm以上の顔料の含有量について
確かに、本件特許発明3について、粒子径450nm以上の顔料含有量がこの特定の値未満となる具体例は一切記載がなく、例えば、粒子径450nm以上の顔料含有量が0(ゼロ)質量%の場合のインキの評価は全く行われておらず、ここで、顔料の粒子径と諸特性の間には、以下のような関係があることは周知の技術的事項であるかもしれない。
・粒子径と着色力と顔料の粒子径が小さくなると比表面積が大きくなる。よって、同一顔料濃度であれば顔料粒子表面での光の吸収が増加するため、着色カが大きくなる。
・粒子径と凝集・分散性:顔料粒子間に作用する凝集力はファン・デル・ワールス引力であり同じ濃度であれば粒子径が小さいほど粒子間の距離は狭まるため凝集力が増加する。また、粒子径が小さくなるほど、表面エネルギーが増大する。以上のことから、粒子径を大きくすることにより、凝集の緩和、分散性の向上を図ることができる。
しかし、本件特許明細書の実施例の記載からみて、粒子径450nm以上の顔料含有量が1質量%のものが前記課題を解決できることは理解でき、本件特許明細書【0035】には「インキセットを構成するインキでは、顔料の平均粒子径(D50)が50~350nmであることが好ましい。顔料の平均粒子径が50nm以上では、耐光性と着色力が得られ、350nm以下では、インキの保存安定性や連続印刷時の吐出安定性が良好になる。」と記載されるから、粒子径450nm以上の顔料含有量が0(ゼロ)質量%の場合であっても、粒子径450nm未満であっても、【0035】に記載されるような十分大きい粒子が含まれていれば、450nm以上の顔料の含有量を限りなく少なくした(例えばゼロ)ときにも、粒子径450nm以上の顔料含有量が1質量%のものと同様に、顔料の分散性の問題に起因する保存安定性の問題は生じない蓋然性が高いといえ、本件特許発明の課題は解決できないとはいえず、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
(イ-2)ブルーインキの顔料の平均粒子径<シアンインキの顔料の平均粒子径
ブルーインキの顔料の平均粒子径<マゼンタインキの顔料の平均粒子径とならない場合、ブルーインキの顔料の平均粒子径<マゼンタインキの顔料の平均粒子径となるものに比べて、多少インキ同士の滲みを防ぐことにおいて劣るかもしれないが、本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明3に特定されるようにシアンインキの顔料の平均粒子径<ブルーインキの顔料の平均粒子径となるものであれば、前記課題を解決できることは理解でき、ブルーインキの顔料の平均粒子径<マゼンタインキの顔料の平均粒子径とならない場合に、本件特許発明の課題は解決できないほどインキ同士の滲みを防げないとまではいえず、また、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
(イ-3)ブルーインキの顔料種は特定されているが、シアンインキの顔料種は特定されていない
実施例で使用されている具体的な顔料種(PB15:4、PB15:3)以外の顔料種を用いた場合であっても、実施例で使用されている具体的な顔料種(PB15:4、PB15:3)を用いた場合と比較して、多少広い色域の実現及び高精細な印刷物の実現において劣るものがあるかもしれないが、本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明3でと特定されるものが前記課題を解決できることは理解でき、特定のブルーインキの顔料種を用いた場合に、本件特許発明の課題は解決できないほど広い色域の実現及び高精細な印刷物の実現において劣るものがあるとまではいえず、また、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
(イ-4)ブラックインキについて
本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明3に特定されるようにシアンインキの顔料の平均粒子径<ブルーインキの顔料の平均粒子径となるものであれば、本件特許発明3で特定されるようにブルーインキの顔料の平均粒子径<シアンインキの顔料の平均粒子径であれば、ブラックインキを含むか含まないかにかかわらず、前記課題を解決できることは明らかであり、また、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
(イ-5)プロセスカラーインキ同士の顔料の粒子径の関係について
プロセスカラーインキの顔料の平均粒子径についても、シアンインキ<イエローインキ<マゼンタインキとならない場合、シアンインキ<イエローインキ<マゼンタインキとなる場合に比べて、多少インキ同士の滲みを防ぐことにおいて劣るかもしれないが、本件特許明細書の実施例の記載からみて、本件特許発明3に特定されるようにシアンインキの顔料の平均粒子径<ブルーインキの顔料の平均粒子径となるものであれば、前記課題を解決できることは理解でき、シアンインキ<イエローインキ<マゼンタインキとならない場合に、本件特許発明の課題は解決できないほどインキ同士の滲みを防げないとまではいえず、また、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
(ウ)本件特許発明2について
本件訂正により本件特許発明2は削除されたので、「取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由」中の(ウ)の理由はない。
(エ)本件特許発明3について
本件訂正により、有機溶剤(a)はMB以外にも、DEDG、MBA及びBGAcを有機溶剤全量中95%質量以上含むものに特定され、本件特許明細書の実施例の記載から、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm 3 ) 1/2 であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)としてMBを有機溶剤全量中95%質量以上含むものが前記課題を解決できることが、記載されている以上、溶解度パラメーター値が8.0~10.0(cal/cm 3 ) 1/2 であり、かつ、1気圧下における沸点が200℃以下である有機溶剤(a)としてMBを有機溶剤全量中95%質量以上含むものが前記課題を解決できることが理解できる。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
第8 異議申立人による令和5年10月25日提出の意見書において新たに主張された取消理由について
特許異議申立人は、前記意見書において、「訂正発明5~10は、「前記オレンジインキに含まれる顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及び、C.I.ピグメントオレンジ71からなる群から選択される1種以上を含む」ことを発明特定事項としている。訂正発明5~10は、「マゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径」との要件を伴わず、課題を解決しない比較例を包含することとなっている点で、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっている。したがって、訂正発明5~10は、サポート要件を充足しない。」と主張している。
そして、前記主張は、取り下げたものとみなされる令和5年9月14日の訂正の請求により訂正された発明に対するものであるが、本件特許発明5は令和5年9月14日の訂正の請求により訂正された発明の発明特定事項を有するので、一応検討すると、前記第7の2(イ)で検討したとおり、本件特許発明3は、「マゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径」との要件を伴わななくとも、前記1(ア)の本件特許発明の課題を解決できるといえるから、本件特許発明5についても、「マゼンタインキに含まれる顔料の平均粒子径>オレンジインキに含まれる顔料の平均粒子径」との要件を伴わななくとも、本件特許発明の課題を解決できるといえる。
そうすると、本件特許発明5は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されていないとはいえない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、令和5年7月12日付けの取消理由通知、令和6年1月31日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和5年10月25日提出の意見書において申し立てられた特許異議申立理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3、5、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項3、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正前の請求項1、2、7は本件訂正により削除されたため、請求項1、2、7についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700182