特許拒絶査定不服審判
2023-006200
着色組成物、および固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法
- 審判番号
- 2023-006200
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-522130
- 請求日
- 2023年04月14日
- 審決日
- 2024年05月27日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】artience株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 【請求人】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 【請求人】トーヨーカラー株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 【請求人】TOPPANホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 本田 博幸
- 審判官 廣田 健介
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-522130「着色組成物、および固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月 5日国際公開、WO2019/230539、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特願2020-522130号(以下「本件出願」という。)は、2019年(令和元年)5月22日(先の出願に基づく優先権主張 平成30年5月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和4年11月 9日付け:拒絶理由通知書
令和4年12月26日 :意見書の提出
令和5年 1月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和5年 4月14日 :審判請求書の提出
令和5年 4月14日 :手続補正書の提出
令和6年 1月26日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書による拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和6年 3月26日 :意見書の提出
令和6年 3月26日 :手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.(新規性)本件出願の請求項1~8に係る発明は、その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本件出願の請求項1~8に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2017/122695号
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1:(進歩性)本件出願の請求項1~請求項5に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2018-4735号公報(当審において新たに引用した文献)
引用文献2:特開2016-170325号公報(当審において新たに引用した文献)
第4 本願発明
本件出願の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、以下のとおりである。
「 ドライエッチングによる固体撮像素子用カラーフィルタの着色パターンの形成に使用する着色組成物であって、
有機顔料(A)、分散剤(B)、エポキシ化合物(C)、溶剤(D)及び色素誘導体(E)を含有し、
前記有機顔料(A)の含有割合が、前記着色組成物中の不揮発分に対し50質量%以上であり、
前記エポキシ化合物(C)を含む熱硬化性化合物の含有割合が、前記着色組成物中の不揮発分に対し3~20質量%であり、
前記分散剤(B)が、酸性官能基を有する分散剤(b1)および/または塩基性官能基を有する分散剤(b2)を含み、
前記エポキシ化合物(C)が、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、着色組成物。」
第5 引用文献に記載された技術的事項及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用文献1として引用され、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-4735号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置やEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等の表示装置に用いられるカラーフィルタに使用される緑色感光性樹脂組成物、それを用いたカラーフィルタ及び表示装置に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多色の膜形成をする場合、隣接画素からの移染を抑制することができる緑色画素を形成しうる、緑色感光性樹脂組成物を提供し、高透過率で高精細のカラーフィルタを提供することにある。」
(3)「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の課題を解決するべく鋭意検討の結果、以下の本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る請求項1に記載の発明は、少なくとも、(a)C.I.Pigment Green58の緑色顔料、(b)透明樹脂、(c)光重合性モノマー、(d)光重合開始剤、(e)多官能エポキシ化合物である熱硬化性モノマー、(f)溶剤を含有してなるカラーフィルタ用の緑色感光性樹脂組成物において、該緑色感光性樹脂組成物を用いて着色画素の画素間距離が30μm以下のカラーフィルタの緑色画素を形成し、あわせて他色感光性樹脂組成物により該カラーフィルタの他色画素を形成したときに、該緑色画素のD65光源による色度(x,y)が、(0.170,0.570)、(0.260,0.650)、(0.330,0.620)、(0.364,0.565)、(0.190,0.500)の5点で囲まれる領域内にあり、該緑色画素の中心部の透過率と、該緑色画素と同じ膜厚で同じ線幅に前記緑色感光性樹脂組成物で形成された緑色単色パターンの中心部の透過率との差が5%以内であることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記多官能エポキシ化合物のエポキシ当量が95~220であり、前記緑色感光性樹脂組成物の固形分中に占める前記多官能エポキシ化合物の割合が3~15%である請求項1に記載の緑色感光性樹脂組成物である。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の緑色感光性樹脂組成物を用いて形成された緑色画素を有し、該緑色画素のD65光源による色度(x,y)が、(0.170,0.570)、(0.260,0.650)、(0.330,0.620)、(0.364,0.565)、(0.190,0.500)の5点で囲まれる領域内にあり、該緑色画素の中心部の透過率と、該緑色画素と同じ膜厚で同じ線幅に請求項1又は2に記載の緑色感光性樹脂組成物で形成された緑色単色パターンの中心部の透過率との差が5%以内であり、着色画素の画素間距離が30μm以下であることを特徴とするカラーフィルタである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のカラーフィルタを具備する表示装置である。
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、着色画素の硬化密度が低い場合、染料含有着色組成物を塗布すると、着色組成物中の染料が着色画素へ移染し、透過率が低下することを確認した。
【0014】
そのため、緑色画素形成に使用する緑色感光性樹脂組成物において、エポキシ化合物を使用すると、膜の硬化密度が向上し、隣接画素形成材料として用いる顔料や染料の移染を抑制し、カラーフィルタ化した際の透過率低下の問題を解消できることを見出した。」
(4)「【発明の効果】
【0015】
本発明の緑色感光性樹脂組成物を用いることにより、多色の膜形成をする場合、隣接画素からの移染を抑制し、高透過率な高精細カラーフィルタを提供することができる。」
(5)「【0021】
本発明の緑色感光性樹脂組成物は、その必須成分として(a)色材、(b)透明樹脂、(c)光重合性モノマー、(d)光重合開始剤、(e)熱硬化性モノマー、(f)溶剤を含有するものである。また、分散剤、樹脂型分散剤、色素誘導体、界面活性剤、光増感剤、連鎖移動剤、貯蔵安定剤などの添加剤を含有するものであっても良い。」
(6)「【0030】
本発明の緑色感光性樹脂組成物に含有される顔料の総含有量としては、全固形分中、20部~80部であることが好ましく、25部~50部がより好ましい。顔料の総含有量を上記範囲とすることで、緑色感光性樹脂組成物によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られる。また、膜硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができる。」
(7)「【0056】
具体的な好ましい多官能エポキシ化合物としては、ナガセケムテックス製EX-201、EX-252、EX-313、EX-314、EX-321、EX-411、EX-421、EX-512、EX-521、EX-810、EX-830、EX-611、EX-612、EX-614、EX-622、EX-731、EX-991L(以上ナガセケムテックス製)、セロキサイド2021、2081、エホリードGT-302、GT-403、EHPE-3150(以上ダイセル製)、TEPIC-L、TEPIC-UC、TEPIC-PASB22(以上日産化学製)などが挙げられる。
・・・中略・・・
【0058】
本発明の緑色感光性樹脂組成物の固形分中に占める(e)熱硬化性モノマーとして用いる多官能エポキシ化合物の割合は、3~15%であることが好ましく、より好ましくは、5~10%である。割合が少ないと、着色画素の強度が十分に得られず、多すぎると、現像性や安定性が悪化する。」
(8)「【0061】
(分散剤)
適宜、樹脂型顔料分散剤、色素誘導体、界面活性剤等の分散剤を用いることができる。分散剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散剤を用いて顔料を感光性樹脂組成物中に分散してなる着色組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、着色顔料100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは1~10質量部の量で用いることができる。」
(9)「【0079】
本発明のカラーフィルタは、フォトリソグラフィー法により、透明基板上に各色の着色画素を形成することにより製造することができる。透明基板としては、可視光に対してある程度の透過率を有するものを用いることができる。ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。遮光パターンを用いる場合は、あらかじめ透明基板上にクロム等の金属薄膜や遮光性樹脂によるパターンを公知の方法で付けたものを用いればよい。」
(10)「【0087】
[樹脂型分散剤溶液の調製]
市販の樹脂型分散剤(BASF社製EFKA4300)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて不揮発分40重量%溶液に調製し、樹脂型分散剤溶液として使用した。
【0088】
[顔料分散樹脂溶液の調製]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器に、シクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸(MAA)23部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)17部、n-ブチルメタクリレート(BMA)25部、ベンジルメタクリレート(BzMA)22部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)13部、および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル12.0部の混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル3.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させた溶液を加え、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、顔料分散樹脂を調製した。
【0089】
[透明樹脂溶液の調製]
反応容器にシクロヘキサノン70部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でベンジルメタクリレート12.3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸5.3部、(b)光重合性モノマーとしてパラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2部をシクロヘキサノン10部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、非感光性透明樹脂共重合体溶液を得た。室温まで冷却した後、非感光性透明樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した非感光性透明樹脂溶液に不揮発分が40重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して非感光性樹脂溶液を調製し透明樹脂溶液を得た。得られた透明樹脂の重量平均分子量Mwは20000であった。
【0090】
[顔料分散体の調製]
・赤色顔料分散体PR
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、赤色顔料分散体PRを調製した。
赤色顔料1:C.I.Pigment Red 254 7.5部
(BASF社製「イルガフォーレッド B-CF」)
赤色顔料2:C.I.Pigment Red 177 1.2部
(BASF社製「クロモフタールレッド A2B」)
黄色顔料1:C.I.Pigment Yellow 150 1.0部
(ランクセス社製「E4GN」)
ジケトピロロピロール系顔料誘導体 2.3部
樹脂型分散剤溶液 3.0部
顔料分散樹脂溶液 34.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 51.0部
【0091】
・緑色顔料分散体PG-1
下記組成の混合物を使用し、赤色顔料分散体PRと同様にして、緑色顔料分散体PG-1を調製した。
緑色顔料1:C.I.Pigment Green58 9.0部
(DIC社製「ファストゲングリーン A110」)
黄色顔料1:C.I.Pigment Yellow 150 3.0部
(BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0 961HD」)
樹脂型分散剤溶液 3.0部
顔料分散樹脂溶液 34.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 51.0部
【0092】
・緑色顔料分散体PG-2
下記組成の混合物を使用し、赤色顔料分散体PRと同様にして、緑色顔料分散体PG-2を調製した。
緑色顔料1:C.I.Pigment Green 58 9.0部
(DIC社製「ファストゲングリーン A110」)
黄色顔料2:C.I.Pigment Yellow 138 3.0部
(BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0 961HD」)
樹脂型分散剤溶液 3.0部
顔料分散樹脂溶液 34.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 51.0部
【0093】
・青色顔料分散体PB
下記組成の混合物を使用し、赤色顔料分散体PRと同様にして、青色顔料分散体PBを調製した。
青色顔料1:C.I.Pigment Blue 15:6 9.8部
(BASF製「ヘリオゲンブルーL-6700F」)
紫色染料:キサンテン系染料 2.2部
樹脂型分散剤溶液 2.4部
顔料分散樹脂溶液 25.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 60.0部
【0094】
[赤色感光性樹脂組成物R-1の調製]
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して赤色感光性樹脂組成物を調整した。
・顔料分散体 :赤色顔料分散体PR 45.0部
・透明樹脂 :透明樹脂溶液 10.0部
・光重合性モノマー1 :東亞合成社製「アロニックスM520」4.0部
・光重合開始剤1 :BASF社製「イルガキュアーOXE02
1.2部
・光重合開始剤2 :BASF社製「イルガキュアー379」0.6部
・界面活性剤界面活性剤:ビックケミー社製「BYK330」 1.0部
2%シクロヘキサノン溶液
・有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
38.2部
【0095】
[緑色感光性樹脂組成物の調製]
<緑色感光性樹脂組成物G-1>
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して緑色感光性樹脂組成物G-1を調製した。
・顔料分散体 :緑色顔料分散体PG-1 60.0部
・透明樹脂 :透明樹脂溶液 11.1部
・光重合性モノマー2:東亞合成社製「アロニックスM402」 1.7部
・光重合開始剤1 :BASF社製「イルガキュアーOXE02」 0.7部
・熱硬化性モノマー6:ナガセケムテックス社製「EX-946」1.0部
・界面活性剤1 : ビックケミー社製「BYK330」
2%シクロヘキサノン溶液 1.0部
・有機溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
24.5部
【0096】
<緑色感光性樹脂組成物G-2~10>
表1に示す混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、各感光性樹脂組成物を得た。
【0097】
表1に記した組成物の具体的内容を以下に示す。
・光重合性モノマー2 :東亞合成社製「アロニックスM402」
・光重合開始剤1 :BASF社製「イルガキュアーOXE02」
・熱硬化性モノマー1 :ナガセケムテックス社製「EX-313」
・熱硬化性モノマー2 :ナガセケムテックス社製「EX-201」
・熱硬化性モノマー3 :ナガセケムテックス社製「EX-252」
・熱硬化性モノマー4 :ダイセル社製「EHPE-3150」
・熱硬化性モノマー5 :ナガセケムテックス社製「EX-121」
・熱硬化性モノマー6 :ナガセケムテックス社製「EX-946」
【0098】
【表1】
[図:0001410955000001.jpg]
【0099】
[青色感光性着色組成物B-1の調製]
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して青色感光性樹脂組成物を調整した。
・顔料分散体 :青色顔料分散体PB 30.0部
・透明樹脂 :透明樹脂溶液 15.0部
・光重合性モノマー2:東亞合成社製「アロニックスM402」 4.0部
・光重合開始剤3 :BASF社製「イルガキュアー907」 2.2部
・界面活性剤1 :ビックケミー社製「BYK330」 1.0部
2%シクロヘキサノン溶液
・有機溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
48.8部
【0100】
[カラーフィルタの作製]
<実施例1~6、比較例1~4>
得られた感光性樹脂組成物を用いて着色画素を形成した。各着色画素形成に用いた緑色感光性樹脂組成物(G-1~10)の組み合わせは表2に示した。
【0101】
あらかじめストライプ状の樹脂ブラックマトリクス(膜厚1.2μm)が形成してあるガラス基板に、赤色感光性組成物(R-1)をスピンレスコートにより仕上り膜厚が2.5μmとなるように塗布した。90℃で5分間乾燥の後、赤色画素形成用のストライプ状フォトマスクを介して、高圧水銀灯の光を50mJ/cm2照射し、アルカリ現像液にて60秒間現像して、ストライプ形状の赤色画素を。その後、230℃で20分処理して硬膜した。
【0102】
次に、緑色感光性樹脂組成物(G-1~10)も同様にスピンレスコートにより仕上り膜厚が2.5μmとなるように塗布した。90℃で5分間乾燥した後、前述の赤色画素と隣接した位置にパターンが形成されるようにフォトマスクを通して露光し現像して、ストライプ形状の緑色画素を得た。その後、230℃で20分処理して硬膜した。
【0103】
さらに、赤色、緑色と全く同様にして、青色感光性組成物(B-1)についても同様にスピンレスコートにより仕上り膜厚が2.5μmとなるように塗布した。90℃で5分間乾燥した後、赤色、緑色の画素と隣接した位置にパターンが形成されるようにフォトマスクを通して露光し現像することで、青色画素を得た。これで、透明基板上に赤、緑、青3色のストライプ状の画素を有するカラーフィルタが得られた。
【0104】
なお、アルカリ現像液は以下の組成からなる。
炭酸ナトリウム 1.5重量%
炭酸水素ナトリウム 0.5重量%
陰イオン系界面活性剤(花王・ペリレックスNBL) 8.0重量%
水 90.0重量%」
(11)「【0108】
【表2】
[図:0001410955000002.jpg]
」
2 引用発明
上記1によれば、引用文献1には、以下に示す、実施例3(【0100】~【0104】、【0108】【表2】)に記載された緑色のカラーフィルタの作製に用いられた「緑色感光性樹脂組成物G-3」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「・顔料分散体:緑色顔料分散体PG-1(【0091】) 60.0部
・透明樹脂:不揮発分40重量%の透明樹脂溶液(【0089】)
10.0部
・光重合性モノマー2:東亞合成社製「アロニックスM402」
(【0097】) 2.8部
・光重合開始剤1:BASF社製「イルガキュアーOXE02」
(【0097】) 0.7部
・熱硬化性モノマー1:ナガセケムテックス社製「EX-313」
(【0097】) 0.5部
・熱硬化性モノマー3:ナガセケムテックス社製「EX-252」
(【0097】) 0.5部
・界面活性剤1:ビックケミー社製「BYK330」2%シクロヘキサノン溶液(【0095】) 1.0部
・有機溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(【0095】) 24.5部
の混合物を使用して調製され、カラーフィルタの作製に用いられる緑色感光性樹脂組成物G-3(【0096】~【0098】【表1】)であって、
緑色顔料分散体PG-1(【0091】)は、
・緑色顔料1:C.I.Pigment Green58(DIC社製「ファストゲングリーン A110」)(【0091】) 9.0部
・黄色顔料1:C.I.Pigment Yellow 150(BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0 961HD」)
(【0091】) 3.0部
・市販の樹脂型分散剤(BASF社製EFKA4300)を用いた不揮発分40重量%の樹脂型分散剤溶液(【0087】) 3.0部
・不揮発分20質量%の顔料分散樹脂溶液(【0088】) 34.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(【0091】) 51.0部
の混合物を使用して調製されたものである、緑色感光性樹脂組成物G-3(【0096】~【0098】【表1】)。」
第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 着色組成物
引用発明の「緑色感光性樹脂組成物G-3」(【0096】~【0098】【表1】)は、緑色に着色されているから、本願発明1の「着色組成物」に相当する。
イ 有機顔料(A)
引用発明の「緑色顔料1:C.I.Pigment Green 58(DIC社製「ファストゲングリーンA110」)(以下「緑色顔料1」という。)及び黄色顔料1:C.I.Pigment Yellow 150(BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0 961HD」)(以下「黄色顔料1」という。)」(【0091】)が有機顔料であることは、当業者にとって技術常識であるから、本願発明1の「有機顔料(A)」に相当する。
また、本願発明1では、「有機顔料(A)の含有割合」が特定されているところ、これに対応する引用発明の「緑色顔料1」及び「黄色顔料1」の含有割合は、以下のとおり算出される。
「緑色顔料分散体PG-1」の総量は、9.0+3.0+3.0+34.0+51.0=100部であり、「緑色顔料分散体PG-1」100部中の全固形分は、9.0+3.0+3.0×0.4+34×0.2=20.0部、「緑色顔料分散体PG-1」100部中の全顔料は、9.0+3.0=12.0部である。
そして、「緑色感光性樹脂組成物G-3」の総量は、60.0+10.0+2.8+0.7+0.5+0.5+1.0+24.5=100部であり、「緑色感光性樹脂組成物G-3」100部中の全固形分は、60.0×20/100+10.0×0.4+2.8+0.7+0.5+0.5+1.0×0.02=20.52部、「緑色感光性樹脂組成物G-3」100部中の全顔料は、(9.0+3.0)×60.0/100=7.2部である。
したがって、「緑色感光性樹脂組成物G-3」中の不揮発分(固形分)に対する「緑色顔料1」及び「黄色顔料1」の含有割合は、7.2/20.52×100=35.1質量%である。
ウ 分散剤(B)
引用発明の「市販の樹脂型分散剤(BASF社製EFKA4300)」(【0087】)は、本願発明の「分散剤(B)」に相当する。
また、本願明細書の[0059]には、市販の塩基性官能基を有する分散剤(b2)として、BASF社製の「EFKA-4300」が挙げられているから、引用発明の「市販の樹脂型分散剤(BASF社製EFKA4300)」は、本願発明における「前記分散剤(B)が、酸性官能基を有する分散剤(b1)および/または塩基性官能基を有する分散剤(b2)を含」むという要件を満たす。
エ エポキシ化合物(C)
引用発明の「熱硬化性モノマー1:ナガセケムテックス社製「EX-313」(以下「熱硬化性モノマー1」という。)及び熱硬化性モノマー3:ナガセケムテックス社製「EX-252」(以下「熱硬化性モノマー3」という。)」(【0097】)は、引用文献1の【0056】に「具体的な好ましい多官能エポキシ化合物としては、ナガセケムテックス製」「EX-252、EX-313」「などが挙げられる」ことを考慮すると、本願発明の「エポキシ化合物(C)」に相当するものと認められる。
また、引用発明の「熱硬化性モノマー1及び熱硬化性モノマー3」の含有割合は、引用文献1の【0098】【表1】に記載された「固形分中のエポキシ添加量(%)」によると、「緑色感光性樹脂組成物G-3」中の固形分に対し4.9%である(【0087】~【0089】、【0091】、【0095】~【0098】【表1】)から、本願発明における「前記エポキシ化合物(C)を含む熱硬化性化合物の含有割合が、前記着色組成物中の不揮発分に対し3~20質量%であ」るという要件を満たす。
さらに、本願明細書の[0065]には、「グリセロールのグリシジルエーテル化エポキシ化合物」の「市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX-313」「などが挙げられ」、「水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル」の「市販品としては、例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX-252」「などが挙げられ」ているから、引用発明の「熱硬化性モノマー1及び熱硬化性モノマー3」は、本願発明における「前記エポキシ化合物(C)が、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の化合物である」という要件を満たす。
オ 溶剤(D)
引用発明の「有機溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」(【0095】)は、本願発明の「溶剤(D)」に相当する。
(2)一致点及び相違点
上記1の対比結果によれば、本願発明と引用発明とは、以下のアの点で一致し、以下のイの点で相違する。
ア 一致点
「カラーフィルタの着色パターンの形成に使用する着色組成物であって、
有機顔料(A)、分散剤(B)、エポキシ化合物(C)、溶剤(D)を含有し、
前記エポキシ化合物(C)を含む熱硬化性化合物の含有割合が、前記着色組成物中の不揮発分に対し3~20質量%であり、
前記分散剤(B)が、酸性官能基を有する分散剤(b1)および/または塩基性官能基を有する分散剤(b2)を含み、
前記エポキシ化合物(C)が、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール型ポリグリシジルエーテル、および水素化ビスフェノール型ポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、着色組成物。」
イ 相違点
(相違点1)
着色組成物が、本願発明では、「ドライエッチングによる固体撮像素子用カラーフィルタの着色パターンの形成に使用する」ものであるのに対し、引用発明では、「カラーフィルタの着色パターンの形成に使用する」ものとされているにとどまる点。
(相違点2)
着色組成物が、本願発明では、色素誘導体(E)を含有しているのに対し、引用発明では、これを有していない点。
(相違点3)
有機顔料(A)の含有割合が、本願発明では、「着色組成物中の不揮発分に対し50質量%以上であ」るのに対し、引用発明では、緑色感光性樹脂組成物G-3中の不揮発分に対して35.1質量%であり、本願発明の「50質量%以上であ」りとの要件を満たさない点。(当合議体注:上記「35.1質量%」については、第6 1(1)イを参照。)
(3)判断
技術的関連性に鑑みて、上記相違点1~上記相違点3について、まとめて検討する。
引用文献1には、「本発明の緑色感光性樹脂組成物に含有される顔料の総含有量としては、全固形分中、20部~80部であることが好ましく、25部~50部がより好まし」く、「顔料の総含有量を上記範囲とすることで、緑色感光性樹脂組成物によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られ」、「膜硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができる」(【0030】)及び「本発明の緑色感光性樹脂組成物は、・・・また、分散剤、樹脂型分散剤、色素誘導体、界面活性剤、光増感剤、連鎖移動剤、貯蔵安定剤などの添加剤を含有するものであっても良い。」(【0021】)と記載されており、引用発明において、当業者が相違点2ないし相違点3に係る本願発明の構成を採用する動機付けに一応根拠があるといえる。しかしながら、当合議体は、相違点1~相違点3の技術的関連性及びそれによる有利な効果を参酌すると、以下に示すとおり、上記根拠は本願発明の進歩性を否定するに足りるものではないと判断する。 すなわち、引用発明は、「液晶表示装置やEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等の表示装置に用いられるカラーフィルタに使用され」(【0001】)、「本発明のカラーフィルタは、フォトリソグラフィー法により、透明基板上に各色の着色画素を形成することにより製造する」(【0079】)ものであり、本願発明1のごとく「ドライエッチングによる固体撮像素子用カラーフィルタの着色パターンの形成に使用する」ことは、引用文献1に記載も示唆もされていない。
また、引用文献1には、「本発明の緑色感光性樹脂組成物に含有される顔料の総含有量としては、全固形分中、20部~80部であることが好ましく、25部~50部がより好まし」く、「顔料の総含有量を上記範囲とすることで、緑色感光性樹脂組成物によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られ」、「膜硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができる」(【0030】)ことが記載されているものの、実施例において実際に調製された、引用発明に該当する「緑色感光性樹脂組成物G-1~10」は、有機顔料の含有割合が、緑色感光性樹脂組成物中の不揮発分に対して29.6質量%(G-5)~38.6質量%(G-6)程度にとどまり)、本願発明1の下限値である50質量%を大幅に下回る。
一方、本願発明1の緑色感光性樹脂組成物は、「固体撮像素子用カラーフィルタの更なる高精細化の要求から、例えば1辺が1.0μm以下のパターンの形成能が求められて」おり、「そのため、フォトリソグラフィ法では、着色パターンの薄膜と解像力のトレードオフを回避するのは困難になってきている」([0004])との技術背景のもと、「着色層をドライエッチング法によりパターン化して、画素を形成する」([0005])ために使用されるものである。
上記技術背景に照らせば、「剥離液に対する耐性に優れた着色層を形成可能で、保存安定性が良好な着色組成物、および当該着色組成物を用いた固体撮像素子用着色パターンの製造方法を提供できる」([0018])という本願発明1による有利な効果は、本願明細書の[0021]、[0031]、[0044]、[0061]、[0073]の記載及び実施例・比較例等の記載によれば、本願発明1で特定される「分散剤(B)」、「エポキシ化合物(C)」、「色素誘導体(E)」を組み合わせて用い、有機顔料(A)の含有割合が高い(着色組成物中の不揮発分に対し50質量%以上である)着色組成物をドライエッチングによる固体撮像素子用カラーフィルタの着色パターンの形成に使用するという本願発明1の構成によって初めて奏される効果と認められる。
そうすると、有機顔料の含有割合が本願発明1と比べて低く、フォトグラフィー法によるカラーフィルタの着色パターンの形成に使用されることがもっぱら想定されている引用発明を開示する引用文献1の記載及び本件出願時の技術常識を踏まえても、上記有利な効果は、本願発明1の構成が有する効果として当業者が予測し得ない顕著な効果といえる。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、当審拒絶理由で引用文献2として引用され、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-170325号公報に記載されたカラーフィルタ用着色組成物である「アルカリ現像型青色レジスト材(RB-2)」の発明を「引用発明」とした場合についても同様である。
2 本願発明2~8について
本願発明2~8も、本願発明1の構成を全て具備するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
原査定における引用文献1に記載され、本願発明1~8の「エポキシ化合物(C)」に該当する「デナコールEX-313(商品名;ナガセケムテックス(株)製)(以下「EX-313」という。)」(【0064】)は、エポキシ化合物の市販品として例示された多数のエポキシ化合物のうちの一例にすぎず、これらの多数のエポキシ化合物の中から、実施例等による裏付けがない「EX-313」を含む着色組成物を引用発明として認定することはできない。
したがって、本願発明1~8は、原査定における引用文献1に記載された発明とはいえない。また、多数のエポキシ化合物の中から、特に「EX-313」を選択する動機付けもないので、本願発明1~8は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審における拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-006200