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特許異議申立

2023-700071

組成物及び難燃性樹脂組成物

審判番号
2023-700071
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-541971
登録番号
7109455
請求日
2023年01月24日
審決日
2024年12月26日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ADEKA
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】合同会社 SAS
審判長/審判官
  • 審判長 光本 美奈子
  • 審判官 関根 裕
  • 審判官 門前 浩一
分類
P1651.113-YAA(C09K) / P1651.121-YAA(C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7109455号発明「組成物及び難燃性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7109455号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6、7〕、8、9、10、11、12について訂正することを認める。 特許第7109455号の請求項6~12に係る特許を維持する。 特許第7109455号の請求項1~5に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7109455号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年8月23日(優先権主張 平成29年9月12日(以下「優先日」という。))を国際出願日とするものであって、令和4年7月21日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がなされ、同年同月29日にその特許掲載公報が発行された。その後の手続の経緯は、次のとおりである。 特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年 1月24日 特許異議申立人 合同会社SAS(以下「申 立人」という。)による全請求項に係る特許 に対する特許異議の申立て 同年 8月17日付け 取消理由通知書 同年10月19日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年10月24日付け 訂正請求があった旨の通知 同年11月22日 意見書(申立人) 令和6年 5月15日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 7月 3日 意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年 7月11日 訂正請求書を補正する手続補正書(特許権者) 同年 8月20日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 9月20日 意見書(申立人) なお、令和5年10月19日の訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年7月11日の手続補正書により補正された同年同月3日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~8からなる。下線は、訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6-1 特許請求の範囲の請求項6において、請求項1及び5の記載を引用する請求項6を独立形式に改めるとともに、「(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」との記載及び「前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、」との記載を追加し、以下のとおりに訂正する。 「樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。」 (請求項6の記載を引用する請求項7についても同様に訂正する。) (7)訂正事項6-2 特許請求の範囲の請求項6において、請求項1、2及び5の記載を引用する請求項6を独立形式に改めるとともに、前記「(6)訂正事項6-1」と同様に、「(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」との記載及び「前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、」との記載を追加し、新たな請求項10とする。 (8)訂正事項6-3 特許請求の範囲の請求項6において、請求項1、3及び5の記載を引用する請求項6を独立形式に改めるとともに、前記「(6)訂正事項6-1」と同様に、「(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」との記載及び「前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、」との記載を追加し、新たな請求項11とする。 (9)訂正事項6-4 特許請求の範囲の請求項6において、請求項1、4及び5の記載を引用する請求項6を独立形式に改めるとともに、前記「(6)訂正事項6-1」と同様に、「(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」との記載及び「前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、」との記載を追加し、新たな請求項12とする。 (10)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8において、訂正前に 「下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物を、樹脂と混合する、樹脂の難燃化方法。」と記載されていたものを、 「下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂と混合する、樹脂の難燃化方法。」と訂正する。 (11)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9において、訂正前に 「下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物の難燃剤としての使用。」と記載されていたものを、 「下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)のポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂に対する難燃剤としての使用。」と訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1~5 訂正事項1~5は、それぞれ請求項1~5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項1~5は、請求項を削除することにより特許請求の範囲を減縮するものであって、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「」本件明細書等ともいう。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項6-1 ア 訂正の目的 訂正事項6-1は、訂正前の請求項1及び5の記載を引用する請求項6を独立形式に書き下した記載のものにするとともに、「難燃剤」が「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ものであること、及び「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正かについての判断 前記アのとおり、訂正事項6-1は、訂正前の請求項6の「難燃剤」及び「樹脂」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正かについての判断 訂正事項6-1は、訂正前の請求項6の「難燃剤」について、令和5年8月17日付けの取消理由通知で引用された甲第1号証に記載された発明を除くために、「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ことを特定し、また、本件明細書等の【0061】の「以上の各種の樹脂の中でも、優れた難燃性を付与できる点から、ポリオレフィン系樹脂又はポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。・・・」との記載に基づいて、「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマー」を含有することを特定するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項6-2~訂正事項6-4 ア 訂正の目的 訂正事項6-2~訂正事項6-4は、前記1(7)~(9)に記載したとおり、訂正前の請求項1、2及び5の記載を引用する請求項6、訂正前の請求項1、3及び5の記載を引用する請求項6、並びに訂正前の請求項1、4及び5の記載を引用する請求項6をそれぞれ独立形式に書き下した記載のものにするとともに、「難燃剤」が「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ものであること、及び「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正かについての判断 前記アのとおり、訂正事項6-2~訂正事項6-4は、訂正前の請求項6の「難燃剤」及び「樹脂」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正かについての判断 訂正事項6-2~訂正事項6-4は、訂正前の請求項6の「難燃剤」について、令和5年8月17日付けの取消理由通知で引用された甲第1号証に記載された発明を除くために、「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ことを特定し、また、本件明細書等の【0061】の「以上の各種の樹脂の中でも、優れた難燃性を付与できる点から、ポリオレフィン系樹脂又はポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。・・・」との記載に基づいて、「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマー」を含有することを特定するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項7、8 ア 訂正の目的 訂正事項7、8は、訂正前の請求項8、9について、「組成物」が「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ものであること、及び「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正かについての判断 前記アのとおり、訂正事項7、8は、訂正前の請求項8、9の「組成物」及び「樹脂」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正かについての判断 訂正事項7、8は、訂正前の請求項8、9の「組成物」について、令和5年8月17日付けの取消理由通知で引用された甲第1号証に記載された発明を除くために、「但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く」ことを特定し、また、本件明細書等の【0061】の「以上の各種の樹脂の中でも、優れた難燃性を付与できる点から、ポリオレフィン系樹脂又はポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。・・・」との記載に基づいて、「樹脂」が「ポリウレタン系熱可塑性エラストマー」を含有することを特定するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 3 独立特許要件 本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~9に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。 4 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~9において、請求項2~7は、独立形式で記載された請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、請求項8、9はそれぞれ独立形式で記載されたものであるから、訂正前の請求項1~7は特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。 また、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7及び10~12は、一群の請求項である。 5 別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正後の請求項6及び7、10、11並びに12について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 6 小括 前記2のとおり訂正後の請求項6及び7、10、11並びに12についての訂正は認められるから、訂正後の請求項10、11及び12は、別の訂正単位となる。よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6、7〕、8、9、10、11、12について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は前記第2のとおり認められるので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下、項番順に、請求項6に係る発明を「本件訂正発明6」等ともいう。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】 樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。 【請求項7】 請求項6記載の難燃性樹脂組成物の成形品。 【請求項8】 下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂と混合する、樹脂の難燃化方法。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。 【請求項9】 下記(A-1)及び(A-2)を含有するリン酸アミン塩(A)とメラミンシアヌレート(B)を含有する組成物(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)のポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する樹脂に対する難燃剤としての使用。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。 【請求項10】 樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有し、 前記(A-1)成分と(A-2)成分の合計100質量部に対して、前記(B)成分を0.1~20質量部含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。 【請求項11】 樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有し、 前記難燃剤は、(更に(C)酸化亜鉛を、前記(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。 【請求項12】 樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記樹脂はポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有し、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有し、 前記難燃剤は、更に(D)成分:シリコーンオイル、エポキシ系カップリング剤、ハイドロタルサイト及び滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を、前記(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。」 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由 申立理由:(進歩性)本件発明1~9は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において知られた後記6(1)の甲1に記載された発明、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和5年8月17日付けの取消理由通知書で通知した取消理由 取消理由:(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において知られた甲1に記載された発明又は甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 3 令和6年5月15日付けの取消理由通知書で通知した取消理由(決定の予告) 取消理由1:(新規性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において知られた甲4に記載された発明であるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 取消理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において知られた甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 4 甲号証等 (1)申立人が特許異議の申立てとともに提出した甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」~「甲4」という。)。 甲1:国際公開第2012/161070号 甲2:特開2003-26935号公報 甲3:国際公開第2005/080494号 甲4:特開2008-94922号公報 (2)申立人が令和5年11月22日提出の意見書に添付した参考資料1~4(以下「参1」~「参4」という。)。 参1:戸高宗一郎企画編集、「難燃剤の最適処方と燃焼試験」第1版第1刷、株式会社技術情報協会、2011年9月30日、453~457頁 参2:国際公開第2011/099461号 参3:特開平7-149739号公報 参4:特開2007-262231号公報 (3)申立人が令和6年9月20日提出の意見書に添付した参考資料5~7(以下「参5」~「参7」という。)を提出した。 参5:国際公開第2015/162982号 参6:特開2015-52717号公報 参7:プラスチックデータシート(Elastollan 1185A) (URL:https://www.campusplastics.com/material/pdf/187697/Elastollan1185A?sLg=ja) 5 甲号証等に記載された事項 (1)甲1には、次の記載がある。 「[請求項1](A)100質量部の、ピペラジンと、リン酸、ピロリン酸、及びポリリン酸から選択される1種のリン化合物との反応生成物と、 (B)10~1000質量部の、メラミンと、シアヌール酸、リン酸、ピロリン酸、及びポリリン酸から選択される多価酸との反応生成物と、 (C)0.1~100質量部の、カルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物とを含有する難燃剤。 [請求項2]100質量部の合成樹脂と、 2~250質量部の請求項1記載の難燃剤と を含有する難燃性樹脂組成物。」 「[0006]本発明は有害性が実質的に無いか、充分に低く、適量で優れた難燃性を発揮する難燃剤、および優れた難燃性、物性を備える難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。」 「[0009]上記(A)~(C)の3成分を組み合わせた難燃剤を樹脂に配合することにより、少量でも高い難燃性を付与することができる。その結果、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができる。」 「[0016](B)成分の具体例としては、シアヌール酸メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、及びこれらのメラミン塩を2種以上含む混合物などが挙げられる。」 「[0022]・難燃剤について 本発明の難燃剤は、(A)成分100質量部と、(B)成分10~1000質量部と(C)成分0.1~100質量部とを含む。(B)成分は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは、20~500質量部、さらに好ましくは30~400質量部である。また(C)成分は、(A)成分100質量部に対し、好ましくは、0.5~50質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。」 「[0025]上記合成樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリ-3-メチルペンテン等のα-オレフィン重合体、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、及びこれらを構成する2種以上のモノマーからなる共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン重合体、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα-メチルスチレンと、他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物、並びにフェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でもポリオレフィン系樹脂が特に好ましく、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂がさらに好ましい。」 「[0033]また本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに、必要に応じてp-tert-ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、トリアジン環含有化合物、充填剤、顔料、滑剤、発泡剤等を含んでいてもよい。 [0034]本発明の難燃性樹脂組成物から、通常の射出成形等の成形方法により、成形体を製造することができる。このような成形体も本発明の態様の一つである。本発明の成形体としては、その形状は制限されるものではなく、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、フィルム等を挙げることができる。」 「[0036]以下、実施例により本発明を詳細に示す。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、表1~5に示す配合表は、すべて質量部基準である。 [0037]<UL-94試験> 難燃性試験はUL規格の内、UL-94(垂直燃焼試験法)に基づいて行った。長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後、炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行い、1回目と同様にして着火した火が消えるまでの時間を測定した。また、試験片から落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。 [0038]1回目及び2回目の燃焼時間、綿着火の有無等から、UL-94規格に従って難燃性評価を行った。難燃性評価はV-0が最高であり、以下、V-1、V-2の順に難燃性は低下する。但し、V-0~V-2のランクの何れにも該当しないものは「燃焼」とする。」 「[0041][難燃剤の調整] ピロリン酸ピペラジン(A)成分50質量部とメラミンシアヌレート(堺化学工業株式会社製:MC-5S)(B)成分17質量部と、ケイ酸カルシウム(C)成分1質量部をVブレンダー((株)西村機械製作所製:NV-200)を用いて10分間攪拌し、(A)、(B)、及び(C)の混合難燃剤を得た。 [0042][難燃性樹脂組成物の調製] エチレンエチルアクリレート樹脂(ダウ・ケミカル社製NUC-6510、押出成型用グレード)100質量部と、滑剤としてのステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製SC-P)1質量部に対し、上記で得られた難燃剤68質量部を混合してエチレンエチルアクリレート樹脂組成物を調製した。 [0043][実施例1] 上記で得られたエチレンエチルアクリレート樹脂組成物を、ロール(CONPON社製8インチ電熱ロール)を用いて130~150℃で混練した。得られた混練物を、粉砕機(ダイコー精機株式会社製DAS-14)を用いてペレット化した。該ペレットを使用して190℃で射出成形し、厚さ1.6mm及び3.0mmの試験片を得た。得られた試験片を用い、上記手順に準拠した難燃性試験を行った。その結果を表1に示した。」 「[0047][実施例5] メラミンシアヌレートの代わりに、ポリリン酸メラミン(株式会社三和ケミカル製MPP-A)17質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ1.6mm及び3.0mmの試験片を作成し、上記手順に準拠した難燃性試験を行った。その結果を表1に示した。」 「[0050][実施例8] さらに酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製微細酸化亜鉛)1質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法で厚さ1.6mm及び3.0mmの試験片を作成し、上記手順に準拠した難燃性試験を行った。その結果を表1に示す。」 「[0056][表1] [図:0001422367000001.jpg] 」 「[0058]表1から分かるように、ピロリン酸ピペラジン、メラミンシアヌレート、およびケイ酸カルシウムの3種全てを含有する樹脂組成物(実施例1~9)においては、いずれもUL-94試験における難燃性の評価が最高のV-0ランクであった。一方、表2のように、ピロリン酸ピペラジン、メラミンシアヌレート、およびケイ酸カルシウムのいずれかを欠く場合(比較例1~4)、難燃性はV-1又はV-2ランクにとどまった。また難燃成分としてポリリン酸アンモニウムを用いた場合には、難燃性はV-2ランクにとどまり、またL.O.Iも29.5と低かった。」 「[0081]本願発明の難燃剤組成物を難燃化する合成樹脂に配合するタイミングは特に制限されず、例えば、あらかじめ上記(A)~(C)成分の中から2種以上をワンパックにして合成樹脂に配合する方法、又は各々の成分を合成樹脂に対して配合する方法等が挙げられる。 それぞれの方法での伸びに差は見られなかった。またワンパック化する場合は、難燃剤成分は、粉砕してから混合する方法、又は混合してから粉砕する方法のどちらでも構わないが、最終的に難燃剤組成物として使用する際に平均粒径は50μm以下、さらに好ましくは30μm以下のものが好適であった。 [0082]以上の通り、本願発明の難燃性樹脂組成物から作成された成形体は、高い難燃性と、実用上十分な機械的物性(伸び)を有していることが分かった。このように、本願発明の難燃剤は、(A)~(C)成分の全てを含むことにより、樹脂組成物の物性を損なうことなく、従来品よりも高い難燃性を示すことが明らかとなった。」 (2)甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 (A)合成樹脂に対して、(B)(b1)下記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物、又は(b2)下記一般式(3)と下記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせ、及び(C)ドリップ防止剤を配合してなる難燃性合成樹脂組成物。 【化1】 [図:0001422367000002.jpg] 【化2】 [図:0001422367000003.jpg] 【化3】 [図:0001422367000004.jpg] 【化4】 [図:0001422367000005.jpg] 」 「【0031】本発明の難燃性合成樹脂組成物は、必要に応じてp-第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、ホスフェート系難燃剤、他の無機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、充填剤、顔料、滑剤、発泡剤等を添加してもよい。 【0032】上記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3-ヘキシレンジメランミン等が挙げられる。」 「【0035】〔実施例1-12及び比較例1~3〕ポリプロピレン(三井化学株式会社製、射出成形用グレード)100質量部にステアリン酸カルシウム(滑剤)0.1質量部、テトラキス[3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル]メタン(フェノール系酸化防止剤)0.1質量部、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤)0.1質量部を配合して得られたポリプロピレン樹脂組成物に、表1~3に記載の配合に従って難燃剤を配合して、200~230℃で押し出してペレットを製造し、これを使用して220℃で射出成型し、厚さ1.6mmの試験片を得た。但し、ピロリン酸メラミン塩又はピロリン酸ピペラジンは原料の反応モル比がメラミン/ピロリン酸=2/1、ピペラジン/ピロリン酸=1/1である。また、ピロリン酸メラミンピペラジン塩の原料の反応比率は、メラミン/ピペラジン/ピロリン酸=1/1/1である。」 「【0039】 【表1】 [図:0001422367000006.jpg] 【0040】 【表2】 [図:0001422367000007.jpg] 」 (3)甲3には、次の記載がある。 ア 25頁1~10行 「請求の範囲 1.リン酸ピぺラジン、ピロリン酸ピぺラジン、ボリリン酸ピぺラジンまたはこれらのピペラジン塩の2以上の混合物から選択されるピペラジンと無機リン化合物の塩((A)成分)1~99重量部と、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンまたはこれらのメラミン塩の2以上の混合物から選択されるメラミンと無機リン化合物の塩((B)成分)99~1重量部(ただし(A)成分と(B)成分の合計は100重量部)、および任意の成分((C)成分)0~50重量部からなる難燃剤組成物に、25℃での粘度が5000mm2/s以下であるシリコーンオイル((D)成分)0.01~20重量部を添加処理してなる難燃剤組成物。」(25頁1~10行) イ 7頁3~8行 「本発明の難燃剤組成物には、任意成分である(C)成分として、他の難燃剤、難燃助剤を配合してもよく、さらに、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤;紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物などの耐候性向上剤;造核剤、重金属不活性化剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、充填剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、抗菌剤、防黴剤、防鼠剤などの樹脂配合剤を配合してもよい。」 ウ 7頁15行 「上記難燃助剤には無機系難燃剤と有機系難燃剤とがあり、・・・」 エ 8頁2~9行 「また、有機系難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。 各難燃助剤は単独でも組み合わせて用いてもよい。難燃助剤の添加により難燃剤の配合量を低減できたり、難燃剤単独では得られない難燃性が得られたりするので、難燃剤を配合する樹脂の種類や用途に応じて適宜併用することが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンに代表されるドリップ防止剤は難燃化効果に優れるので好ましい。難燃助剤の粒径、融点、粘度などは難燃化効果や粉体特性で優れたものになるように選択される。」 オ 15頁9~16行 「実施例1(実施例1-1~1-4および比較例1-1~1-3) ピロリン酸ピペラジン(ピペラジンとピロリン酸のモル比 1:1)50重量部とピロリン酸メラミン(メラミンとピロリン酸のモル比 2:1)50重量部をジェットミル((株)セイシン企業製:Co-JETSystemα-mkIII)に入れ、室温でノズル圧力0.8mPa、供給速度500g/時間で粉砕して難燃剤粉末を得た。得られた粉末および表面処理剤(表1参照)1重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製:FM20C/I)を用い120℃で2800rpmで10分間撹拌してシリコーンオイル被覆難燃剤を得た。」 カ 19頁下から8行~20頁6行 「実施例4(実施例4-1~4-2および比較例4-1~4-2) ポリプロピレン(三井化学(株)製:三井ポリプロJ704(メルトフローインデックス=9g/10分、230℃/2.16kgf(21.2N))78.5重量部に、表4記載の難燃剤、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製:ポリフロンFA-500)0.2重量部、テトラキス(3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタン0.1重量部、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部、カルシウムステアレート0.1重量部を加え、220℃でTダイ押出し加工により厚さ0.1mmのフィルムを成形した。 得られたフィルムを20cm×20cmに裁断して試験片とした。得られた試験片を目視によるブツの発生の程度の評価から分散性としてブツの無いものを1、1~20個のものを2、21~30個のものを3、31~50個のものを4、51個以上のものを5とした。また、220℃で押出し成形してペレットとし、さらに220℃で射出成形してUL-94に基づき難燃性を評価した。」 キ 21頁 「 [図:0001422367000008.jpg] 」 (4)甲4には、次の記載がある。 「【請求項1】 エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主体とする熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム100~250質量部含有する樹脂組成物(P)を成形してなる内層の外周に、 熱可塑性樹脂(B)100質量部に対して、リン酸塩化合物(p)として、 (p1)下記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物 【化1】 [図:0001422367000009.jpg] 【化2】 [図:0001422367000010.jpg] 又は、(p2)下記一般式(3)と下記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸 塩化合物の組み合わせからなり、 【化3】 [図:0001422367000011.jpg] 【化4】 [図:0001422367000012.jpg] 総量が20~140質量部のリン酸塩化合物(p)を含有する樹脂組成物(Q)からなる外層を被覆してなる樹脂成形体。」 「【請求項6】 前記樹脂組成物(P)及び/又は(Q)が、前記熱可塑性樹脂(A)及び(B)100質量部に対して、メラミンシアヌレートを5~120質量部含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。」 「【0001】 本発明は、機械特性と柔軟性、耐熱性に優れ、しかも難燃性、耐候性に非常に優れた樹脂成形体と該樹脂成形体を被覆材とする配線材、光ファイバケーブルその他の成形部品に関するものである。 より詳しくは、本発明は、電気・電子機器の内部ないしは外部配線に使用される絶縁電線、電気ケーブル、電気コードや光ファイバ心線、光ファイバコードなどの被覆材として、または電源コード等のモールド材料、チューブ、シートとして好適な樹脂成形体およびそれを用いた配線材その他の成形部品に関するものである。」 「【0024】 前記熱可塑性樹脂(B)は、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、スチレン系エラストマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及び不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有してなり、エチレン・α-オレフィン共重合体及びポリプロピレン樹脂を少なくとも含有してなることが好ましい。 特に、前記熱可塑性樹脂(B)が、密度0.930g/cm3以下のエチレン・α-オレフィン共重合体10~92質量%を含有していることがより好ましく、さらに、ポリプロピレン樹脂及び/又はその変性樹脂8~40質量%を含有していることが特に好ましい。 より詳細には、前記熱可塑性樹脂(B)が、密度0.930g/cm3以下のポリエチレン樹脂10~92質量%、ポリプロピレン樹脂及び/又はその変性樹脂8~40質量%及びスチレン系エラストマー0~60質量%含有してなる樹脂100質量部に対し、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂0~80質量部、及び不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂0~20質量部を含有してなることが最も好ましい。 本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)は、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、又はアクリルゴムを含有することができる。」 「【0032】 リン酸塩化合物(p) 本発明において、前記熱可塑性樹脂組成物(Q)は、前記熱可塑性樹脂(B)100質量部に対して、リン酸塩化合物(p)を20~140質量部含有してなる。 前記リン酸塩化合物(p)は、(p1)前記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物、又は(p2)前記一般式(3)と前記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせからなる。 本発明で用いられる前記一般式(1)で表されるリン酸塩化合物としては、ジアミン化合物と前記一般式(2)で表されるトリアジン化合物又はNH3基(+H3N基)を有する化合物とポリリン酸ないしはピロリン酸とからなるリン酸アミン塩等が挙げられる。 【0033】 前記ポリリン酸としては、前記一般式(1)においてnは3~100の整数である限り特に制限はないが、nが3~50であることが好ましく、nが、3~20であることがより好ましい。 本発明で用いるジアミン化合物としては、一般式[R1R2N(CH2)mR3R4]で表されるポリメチレンジアミンである。このR1、R2、R3、R4はそれぞれ水素もしくは炭素数1~5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R1、R2、R3、R4は同一の基であっても異なっていてもよく、mは1~10の整数である。このアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、第1~第3ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が好ましく、mは、1~8が好ましい。 また、ジアミン化合物として、本発明では下記の一般式(5)で表されるピペラジン環をもつ化合物が用いられる。この一般式(5)のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。 上記ジアミン化合物の具体的な例としては、N,N,N',N'-テトラメチルジアミノメタン、エチレンジジアミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N'-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-ジエチルエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、ピペラジン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。 【0034】 【化5】 [図:0001422367000013.jpg] 【0035】 また、本発明に用いるリン酸塩化合物を構成するのに用いるトリアジン化合物は、前記一般式(2)で表されるものである。 このトリアジン化合物の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。 一般式(1)に含まれる具体的な化合物としては、例えば、ピロリン酸メラミンピペラジン等が挙げられる。 また、上記一般式(3)で表されるリン酸塩化合物は、ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸とジアミン化合物とからなる塩であり、ジアミン化合物としては前記したと同じものを挙げることができ、両者を常法により任意の反応比率で反応させて得ることが出来る。ポリリン酸の好ましい例、nの好ましい範囲、及びジアミン化合物の好ましい例はいずれも一般式(1)の場合と同様である。 また、上記一般式(4)で表されるリン酸塩化合物は、ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸とトリアジン化合物とからなる塩である。 ポリリン酸の好ましい例、nの好ましい範囲、及びトリアジン化合物の好ましい例はいずれも一般式(1)の場合と同様である。 このリン酸塩化合物は、前記一般式(2)で表されるトリアジン化合物またはNH3基を有する化合物と(ポリ又はピロ)リン酸とを常法により任意の反応比率で反応させて得ることができる。 例えば、ピペラジン塩酸塩とピロリン酸ナトリウムを水溶液中で反応させ、難溶性のピロリン酸ピペラジン塩が得られる。オルトリン酸ピペラジン塩、ポリリン酸ピペラジン塩等も同様の方法で得ることができる。 本発明において、前記リン酸塩成分(p)は、特に難燃性の観点から、(p2)前記一般式(3)と前記一般式(4)でそれぞれ表されるリン酸塩化合物の組み合わせからなることが好ましい。前記(p2)の物質としては、例えば、アデカスタブFP2100J、FP2200J(ADECA(株)製)の市販の商品がある。 【0036】 本発明で使用する前記リン酸塩化合物の平均粒径は10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。 ここで、前記平均粒径は、粉体をマイクロトラック粒度分布計により、アルコール下に浮遊させて測定した値である。 本発明において、前記リン酸塩化合物(p)の含有量は熱可塑性樹脂(B)100質量部に対し、30~120質量部であることが好ましく、40~120質量部であることがさらに好ましい。このリン酸塩化合物(p)が少ないと難燃性が著しく低下し、また多すぎると力学的強度が大幅に低下したり、伸びが著しく低下する。」 「【0038】 本発明において、メラミンシアヌレートは樹脂組成物(P)及び/又は(Q)中に含有させることができ、前記熱可塑性樹脂(A)及び(B)100質量部に対し0~120質量部含有させることができ、0~90質量部含有させることが好ましい。 本発明において、前記樹脂組成物(P)又は(Q)には、必要に応じホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛およびヒドロキシスズ酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることができ、これにより、難燃性をさらに向上させることができる。これらの化合物を用いることにより、燃焼時の殻形成の速度が増大し、殻形成がより強固になる。従って、燃焼時に内部よりガスを発生する前記メラミンシアヌレートとともに、難燃性を飛躍的に向上させることができ、高度の難燃性を付与することができるようになる。 【0039】 本発明において、前記樹脂組成物(P)又は(Q)には、必要に応じ難燃性を向上させるため金属酸化物、シリカ、シリコーン化合物を含有させることが出来る。金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ等が挙げられる。シリコ-ン化合物としてはシリコーンゴム、シリコーンガム、シリコーンオイル等があげられる。 これらの物質を含有させることにより、リン酸塩との相互作用により難燃性を向上させることが出来る。本発明においてこれらの含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して2~20質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましい。その量が少なすぎると難燃性向上の効果が発現せず、多すぎると力学的強度や特に伸び、外観などに支障をきたす。 本発明において、前記樹脂組成物(P)又は(Q)には、必要に応じ炭酸カルシウムを含有させることが出来る。炭酸カルシウムを含有させることにより、難燃性維持に大きな効果がある。特に本発明の如く内部絶縁層に水酸化マグネシウムを使用した材料を用いる際には、炭酸カルシウムを用いることにより難燃性が向上する。 本発明に用いる炭酸カルシウムの含有量は熱可塑性樹脂(A)及び(B)100質量部に対し5~70質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。」 「【0040】 本発明において、前記樹脂組成物(P)又は(Q)には、電線、ケーブル、コード、チューブ、電線部品、シート等において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有させることができる。 ・・・ 【0041】 さらに難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどが挙げられる。 特に、シリコーンゴム、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物は、難燃性を付与、向上させるだけでなく、電線・コードにおいては、絶縁体(前記難燃性樹脂組成物を含んでなる被覆層)と導体の密着力の制御をおこなったり、ケーブルにおいては、滑性を付与することで、外傷を低減させる効果がある。このような本発明で用いられるシリコーン化合物の具体例としては、「SFR-100」(商品名、GE社製)、「CF-9150」(商品名、東レ・ダウシリコーン社製)などの市販品が挙げられる。 本発明において、シリコーン化合物を含有させる場合、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.5~5質量部含有させることが好ましい。0.5質量部より少ないと難燃性や滑性に対して実質的に効果がなく、5質量部を越えると電線・コード・ケーブルの外観が低下したり、押出成形速度が低下し量産性が悪くなる場合がある。 前記滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。」 「【0051】 【表1】 [図:0001422367000014.jpg] 【0052】 次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、予め溶融混練した各樹脂組成物を次の各導体上に押出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。 導体(導体径1.14mmφの錫メッキ軟銅撚線,構成:30本/0.18mmφ)上に被覆して、各熱可塑性樹脂組成物(A)を2.34mm、被覆層の肉厚0.6mmとし た。その外側に各熱可塑性樹脂組成物(B)を肉厚0.2mmで被覆し、外径を2.74mmとした。 【0053】 製造した樹脂組成物被覆の絶縁電線に対して、下記の評価を行った。得られた実施例1~7の評価結果を表2に、比較例1~4の評価結果を表3に示す。 ・・・ 【0054】 (4)難燃性(垂直難燃性試験) 各絶縁電線について、UL1581の Vertical Flame Test を行った。サンプルはN=5行い、全数を「合格」、それ以外を「不合格」とした。 (5)加熱変形性 加熱変形性はJIS C 3005に準拠して行った。温度は120℃、荷重5Nで行った。40%以下でなければならない。 【0055】 【表2】 [図:0001422367000015.jpg] 」 (5)参1には、次の記載がある。 「 [図:0001422367000016.jpg] 」(456頁) (6)参2には、次の記載がある。 「[0190] 3.難燃性樹脂組成物の成型品の評価(第1発明) 前記で得られた難燃性合成樹脂組成物を用いて射出成形法により成型品を作製した。射出成形は、日精樹脂工業(株)製射出成形機「FE80S型」(型締圧80トン)を使用した。射出成型して試験片を得た後、その試験片を23℃、50%RHの条件で48時間状態調整処理してから、それぞれ燃焼性評価及びブルーミング評価を行った。その結果を表1~9に示す。なお、これらの評価方法は、具体的には以下の方法によって行った。 (1)燃焼性 燃焼性の評価は、UL94垂直燃焼試験法に準拠して、1.6mm(1/16inch)厚及び0.8mm(1/32inch)厚の試験片を作成し、燃焼試験を行った。UL94垂直燃焼試験の結果は、「V-0」、「V-1」、「V-2」、「Burn」の4段階評価を行った。」 (7)参3には、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、粉末流動性が良く粉立ちのないメラミンシアヌレート顆粒およびその製造方法に関するものである。本発明のメラミンシアヌレート顆粒は、ポリアミド樹脂用の非ハロゲン系難燃剤や潤滑剤などに有利に利用される。」 (8)参4には、次の記載がある。 「【0011】 本発明の軟磁性シートにおいては、添加されたポリエステル樹脂に相溶せずに分散する分散粒子によって、基材に塗布して製造される際に、基材でのはじきを少なくすることができ、表面平滑性を向上させることができる。そして、積層時にシート内に巻き込む空気を少なくすることができる。したがって、比重を大きくするために大きな圧力で圧縮した場合であっても、表面が平滑なシートが積層されており、巻き込む空気の量が少なく、空気が吹き出た跡が残らない良好な外観が得られる。 【0012】 また、本発明は、ポリエステル樹脂としてリン内添ポリエステルを使用することで好適となる。さらに、分散粒子として難燃剤であるメラミンシアヌレートを使用することで好適となる。本発明の軟磁性シートでは、地球環境保護に対する配慮から、難燃剤としてハロゲン系難燃剤を使用していないにもかかわらず、このリン内添ポリエステル樹脂と少量のメラミンシアヌレートを使用することで、例えばUL94のV-0相当の難燃性を有する。」 (9)参5には、次の記載がある。 「[0002] 熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ソフトセグメントと称される動きやすい長鎖部分と、ハードセグメントと称される極めて結晶性の強い部分とからなり、その特徴的な構造に由来した、弾性、伸び、機械的強度、耐磨耗性等の物性に優れ、これら樹脂物性を生かして、ホース、ベルト、電線、ケーブル、パイプ、靴底、自動車内外装材、各種成形品等、従来から種々の分野に用いられている。」 「[0099] <難燃性UL-94V試験方法> 長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。 1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無等からUL-94V規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV-0が最高のものであり、V-1、V-2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V-0~V-2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。」 「[0101] [表1] [図:0001422367000017.jpg] [0102] 表1に示すように、難燃性UL-94V試験結果において、実施例1~5でいずれもV-0判定となった。これに対し、比較例1~5では、ドリッピングにより綿着火し、いずれもV-2判定となった。また、実施例1は、総発熱量及び最高発熱温度の点でも比較例1に比べて優れた難燃性を示した。 また表1及び図1に示すように、実施例1では、充分な表面膨張層が形成され、分解生成物の拡散や伝熱を抑制できることがわかる。これに対し、比較例1では、表1及び図2に示すように、表面膨張層の形成が不充分であり、分解生成物の拡散や伝熱の抑制に劣ることがわかる。」 (10)参6には、次の記載がある。 「【0002】 光ファイバケーブルは側面から大きな負荷・荷重(側圧)がかかると、光ファイバの潰れや光漏れを引き起こし、伝送損失が増加する。近年、光ファイバケーブルの被覆材の脱PVC(塩化ビニル樹脂)化が進む中で、伝送損失による通信障害を予防する観点から、より耐側圧性の高い光ファイバケーブルが求められるようになり、柔軟かつ高い反撥弾性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)材料が被覆材として使用されはじめている。しかし、熱可塑性ポリウレタン樹脂は難燃性に乏しく、燃えやすいという性質を有するうえ、プラスチック製光ファイバケーブルなどの普及や、さらに光ファイバケーブル自体も一般的に何種もの樹脂材料で被覆され、銅を導体にした電線ケーブルとは比較にならないほど非常に燃えやすいという性質を有する。さらにケーブル類は、火災の際にケーブル伝いに延焼を引き起こす懸念があることから、極めて高いレベルの難燃性が求められていた。」 「【0007】 本発明者等は、上記の課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、難燃性ポリウレタンに有機リン酸塩とメラミン誘導体をそれぞれ特定量で配合する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を光ファイバの外側に被覆した光ファイバコードまたは光ファイバケーブルが、燃焼時に溶融滴下(滴り)の無い、極めて優れた難燃性を奏することを見出し、本発明を解決するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は、(a)熱可塑性ポリウレタン、(b)有機リン酸塩および(c)メラミン誘導体を必須成分として含有する非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を光ファイバの外側に被覆したことを特徴とする光ファイバコードまたは光ファイバケーブルに関する。 また、本発明は光ファイバコードまたは光ファイバケーブル用非ハロゲン系難燃性樹脂組成物であって、該非ハロゲン系難燃性樹脂組成物が(a)熱可塑性ポリウレタン、(b)有機リン酸塩および(c)メラミン誘導体を必須成分として含有するものである光ファイバコードまたは光ファイバケーブル用非ハロゲン系難燃性樹脂組成物に関する。」 「【0047】 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例において、特に断りが無い場合は、%表示、部表示は、質量基準である。 【0048】 (製造例1~4、比較製造例1) 非ハロゲン系難燃性樹脂組成物の作製 非ハロゲン系難燃性樹脂組成物は、表1~3に記載した成分および配合割合で混合した後、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度150~200℃)で溶融混練後、ペレット化して製造した。 【0049】 (実施例1~8、比較例1)光ファイバケーブルの作製 外径0.5mmの光ファイバ心線と、この光ファイバ心線の外周にケブラー繊維製テンションメンバと、さらに前記非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を、被覆用樹脂層として厚さ0.3mmとなるように40mm押出し機(L/D=25)を用いて押出成形し、図1に記載の断面図の光ファイバコードを得た。 なお、光ファイバ心線は、外径0.125mmの石英ガラス系光ファイバの外周に、外径0.195mmの紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂層、さらにその外周に外径0.245mmの紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂層が設けられた光ファイバ素線とし、そのさらに外周に外径0.5mmの紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂層が設けられたものを使用した。 【0050】 (試験例) 光ファイバケーブルの難燃性試験 以上のように製造した光ファイバケーブルを用いて、UL規格1581のVW-1フレーム試験に準じて難燃性試験を行った。 5回行った燃焼試験で、自己消火に要した平均時間を測定するとともに、いずれの5回の燃焼後でも60秒以内に消火し、かつ、いずれの5回の燃焼試験でも、上部の旗や下部の綿が燃えなかったものについて、「合格」、それ以外の場合を「不合格」と判定した。」 「【0052】 【表1】 [図:0001422367000018.jpg] 【0053】 【表2】 [図:0001422367000019.jpg] 【0054】 なお、表中、各成分は以下の通りである。 TPU1:エステル系ポリウレタン(カーボネート系)「PANDEX T-9280N」ディーアイシーバイエルポリマー株式会社 TPU2:エーテル系ポリウレタン「PANDEX T-8180N」ディーアイシーバイエルポリマー株式会社 有機リン酸塩:ジエチルリン酸アルミニウム塩「Exolit OP-930」クラリアントジャパン株式会社 リン酸エステル:芳香族縮合リン酸エステル「PX-200」大八化学工業株式会社 メラミン誘導体1:ポリリン酸メラミン「Melapur200」BASFジャパン株式会社 メラミン誘導体2:メラミンシアヌレート「MC-860」日産化学工業株式会社」 (11)参7には、次の記載がある。 「 [図:0001422367000020.jpg] ・・・ [図:0001422367000021.jpg] 」 第5 当審の判断 1 甲1を主たる引用例とした進歩性欠如について (1)甲1に記載された発明 甲1の[0056]の[表1]の実施例1に着目し、同[0037]等の記載を参酌すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「エチレンエチルアクリレート樹脂100質量部と、ピロリン酸ピペラジン50質量部と、メラミンシアヌレート17質量部と、ケイ酸カルシウム1質量部と、ステアリン酸カルシウム1質量部とからなり、UL-94(垂直燃焼試験法)の測定結果がV-0である樹脂組成物。」 (2)本件発明6について ア 対比 本件訂正発明6と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ピロリン酸ピペラジン」、「メラミンシアヌレート」、「ケイ酸カルシウム」及び「ステアリン酸カルシウム」は、いずれも本件訂正発明6の「難燃剤」に相当する。 また、甲1発明の「UL-94(垂直燃焼試験法)の測定結果がV-0である樹脂組成物」は、本件訂正発明6の「難燃性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「樹脂100質量部に対して難燃剤を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩と(B)メラミンシアヌレートを含有し、 前記(A)成分が、下記(A-2)を含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。」 <相違点1-1> 難燃剤が、本件訂正発明6は「難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」であって、「(A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩」を含有するのに対し、甲1発明は、ケイ酸カルシウムを含むものであって、リン酸メラミン塩を含むものではない点。 <相違点1-2> 樹脂が、本件訂正発明6は「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有」するものであるのに対し、甲1発明は、エチレンエチルアクリレート樹脂であって、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含むものではない点。 イ 判断 まず、相違点1-1について検討する。甲1発明は、本件訂正発明6の「カルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物」に該当するケイ酸カルシウムを含むものである。そして、甲1発明を認定した甲1の[請求項1]に「(A)100質量部の、ピペラジンと、リン酸、ピロリン酸、及びポリリン酸から選択される1種のリン化合物との反応生成物と、(B)10~1000質量部の、メラミンと、シアヌール酸、リン酸、ピロリン酸、及びポリリン酸から選択される多価酸との反応生成物と、(C)0.1~100質量部の、カルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物とを含有する難燃剤。」と記載され、同[0009]に「上記(A)~(C)の3成分を組み合わせた難燃剤を樹脂に配合することにより、少量でも高い難燃性を付与することができる。その結果、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができる。」と記載されていること等を考慮すれば、甲1発明において、「(C)」の「カルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物」は必須成分であって、除くことのできないものと考えられる。 そうすると、甲1発明の「難燃剤」を、「難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 次に、相違点1-2について検討する。甲1発明の樹脂について、甲1の[0025]には「上記合成樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン・・・等のα-オレフィン重合体、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体・・・等のポリオレフィン、及びこれらを構成する2種以上のモノマーからなる共重合体;ポリ塩化ビニル・・・等の含ハロゲン重合体、石油樹脂・・・、スチレン及び/又はα-メチルスチレンと、他の単量体(例えば、無水マレイン酸・・・等)との共重合体(例えば、AS樹脂・・・等)、ポリメチルメタクリレート、・・・などのポリビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート・・・等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド・・・等のポリアミド;ポリカーボネート・・・、ポリウレタン・・・等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物、並びにフェノール樹脂・・・等の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でもポリオレフィン系樹脂が特に好ましく、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂がさらに好ましい。」と記載されているものの、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましいとの記載はない。 また、同[0034]には「本発明の難燃性樹脂組成物から、通常の射出成形等の成形方法により、成形体を製造することができる。・・・本発明の成形体としては、その形状は制限されるものではなく、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、フィルム等を挙げることができる。」と記載されているものの、樹脂の種類として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましいことを示唆するものではない。 甲2~甲4、参1~参4にも、難燃性樹脂組成物の樹脂として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましいことを示唆する記載はない。 参5~参7には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーや熱可塑性ポリウレタン樹脂をケーブル被覆に用いられることが記載されており、参5には、難燃剤としてピロリン酸メラミンやピロリン酸ピペラジンを添加した熱可塑性ポリウレタンエラストマーが記載され、参6には、メラミン誘導体として、ポリリン酸メラミンやメラミンシアヌレートを含む熱可塑性ポリウレタン樹脂が記載されている。 しかしながら、甲1発明において、樹脂としてポリウレタン系熱可塑性エラストマーを積極的に採用する動機付けがあるとはいえない。 してみると、本件訂正発明6は、甲1発明並びに甲1~甲4及び参1~参7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明7~12について 本件訂正発明7は、本件訂正発明6の記載を引用する形式で記載されたものであり、また、本件訂正発明8~12は、いずれも、前記(2)の相違点1-2に係る「樹脂がポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する」との特定事項を備えるものである。 そうすると、本件訂正発明7~12は、前記(2)と同じ理由により、甲1発明並びに甲1~甲4及び参1~参7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 甲4を主たる引用例とした新規性欠如及び進歩性欠如について (1)甲4に記載された発明 甲4の【0055】の【表2】の実施例3の「樹脂組成物(Q)」に着目し、【0048】~【0051】の記載を参酌すれば、甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、令和6年 5月15日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、甲4の請求項1を引用する請求項6に係る発明に基づいて、「メラミンシアヌレート」を含有する樹脂成形体に係る発明を認定したが、そのような成形体は具体的な実施例として記載されたものではないため、本決定において、「メラミンシアヌレート」を含有する樹脂成形体に係る発明は認定しない。 <甲4発明> 「KF360(メタロセン触媒ポリエチレン)を65質量部、PB170A(ブロックポリプロピレン)を15質量部、SEPS4077(スチレン・イソプレンエラストマー)を10質量部、ダイアナプロセスPW-90(パラフィンオイル)を5質量部、アドマーXE070(マレイン酸変性ポリエチレン)を5質量部、イルガノックス1010を2質量部、ステアリン酸カルシウムを1質量部、リン酸塩3)を90質量部、酸化チタンを2質量部からなる樹脂組成物(Q)であって、 リン酸塩3)は、ピロリン酸メラミン50%とピロリン酸ピペラジン50%からなるリン酸塩化合物である、樹脂組成物(Q)。」 (2)本件訂正発明6について ア 甲4発明との対比 本件訂正発明6と甲4発明を対比すると、甲4発明の「ピロリン酸メラミン」は、本件訂正発明6の「リン酸アミン塩」及び「(A-1)成分:・・・ピロリン酸メラミン・・・から選択される少なくとも1種のメラミン塩」である「難燃剤」に相当する。 甲4発明の「ピロリン酸ピペラジン」は、本件訂正発明6の「組成物(A-2)成分:・・・ピロリン酸ピペラジン・・・から選択される少なくとも1種のピペラジン塩」に相当する。 してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「樹脂100質量部に対して難燃剤(但しカルシウム又はマグネシウムと、ケイ酸との反応生成物を含有するものを除く)を10~400質量部含有する難燃性樹脂組成物であって、 前記難燃剤は、(A)リン酸アミン塩を含有し、 前記(A)成分が、下記(A-1)及び(A-2)を含有する、難燃性樹脂組成物。 (A-1)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン及びポリリン酸メラミンよりなる群から選択される少なくとも1種のメラミン塩。 (A-2)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン及びポリリン酸ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種のピペラジン塩。」 <相違点4-1> 樹脂が、本件訂正発明6は、「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有」するものであるのに対し、甲4発明は、「KF360(メタロセン触媒ポリエチレン)」、「PB170A(ブロックポリプロピレン)」、「SEPS4077(スチレン・イソプレンエラストマー)」及び「アドマーXE070(マレイン酸変性ポリエチレン)」を含有するものの、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは含有していない点。 <相違点4-2> 本件訂正発明6は、「(B)メラミンシアヌレート」を含有するものであるのに対し、甲4発明は、メラミンシアヌレートを含有していない点。 ウ 判断 まず、相違点4-1について検討する。 甲4の請求項1に「エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を主体とする熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム100~250質量部含有する樹脂組成物(P)を成形してなる内層の外周に、 熱可塑性樹脂(B)100質量部に対して、・・・総量が20~140質量部のリン酸塩化合物(p)を含有する樹脂組成物(Q)からなる外層を被覆してなる樹脂形成体」と記載されるように、甲4発明は、前記組成を有する樹脂組成物(P)を成形してなる内層の外側に被覆される外層の樹脂組成物に係る発明である。 甲4発明を認定した甲4の【0024】には、樹脂組成物(Q)に含まれる熱可塑性樹脂(B)について、「前記熱可塑性樹脂(B)は、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、スチレン系エラストマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及び不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有してなり、エチレン・α-オレフィン共重合体及びポリプロピレン樹脂を少なくとも含有してなることが好ましい。 特に、前記熱可塑性樹脂(B)が、密度0.930g/cm3以下のエチレン・α-オレフィン共重合体10~92質量%を含有していることがより好ましく、さらに、ポリプロピレン樹脂及び/又はその変性樹脂8~40質量%を含有していることが特に好ましい。 より詳細には、前記熱可塑性樹脂(B)が、密度0.930g/cm3以下のポリエチレン樹脂10~92質量%、ポリプロピレン樹脂及び/又はその変性樹脂8~40質量%及びスチレン系エラストマー0~60質量%含有してなる樹脂100質量部に対し、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂0~80質量部、及び不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂0~20質量部を含有してなることが最も好ましい。 本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)は、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、又はアクリルゴムを含有することができる。」と記載され、外層を構成する樹脂の種類として、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン樹脂、スチレン系エラストマー、及び不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂が挙げられ、エチレン・α-オレフィン共重合体及びポリプロピレン樹脂を少なくとも含有してなることが好ましいと記載され、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを添加することについては、記載も示唆もない。また、内層の樹脂の種類との関係で、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを採用することが好ましいという技術常識もない。 甲2~甲4、参1~参4にも、難燃性樹脂組成物の樹脂として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましいことを示唆する記載はない。 参5~参7には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーや熱可塑性ポリウレタン樹脂をケーブル被覆に用いられることが記載されており、特に、参6(前記第4の4(10)参照。)の【0007】及び【0008】には、熱可塑性ポリウレタン、有機リン酸塩及びメラミン誘導体を必須成分として含有する非ハロゲン系難燃性樹脂組成物を光ファイバの外側に被覆することが記載されている。 しかしながら、甲4発明を認定した甲4には、光ファイバの外層として用いる樹脂について、前記したような詳細な検討(【0024】参照。)がなされ、添加することが好ましい樹脂の種類や量まで規定されているところ、そこに記載も示唆もないポリウレタン系熱可塑性エラストマーを、甲4発明に添加することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 また、甲1~甲4、参1~参7のいずれにも表面平滑性に関する記載はないから、これらの証拠に基づいて、甲1発明の奏する「アミンのリン酸塩とメラミンシアヌレートとを組み合わせた組成物を樹脂に混合することにより、優れた表面平滑性及びドリップ防止効果が発現する」との効果を予測することはできない。 してみると、前記相違点4-2について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、甲4発明、並びに甲1~甲4及び参1~参7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明7~12について 本件訂正発明7は、本件訂正発明6の記載を引用する形式で記載されたものであり、また、本件訂正発明8~12は、いずれも、前記(2)の相違点4-1に係る「樹脂がポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する」との特定事項を備えるものである。 そうすると、本件訂正発明7~12は、前記(2)と同じ理由により、甲4発明、並びに甲1~甲4及び参1~参7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立人の主張について (1)令和5年11月22日の意見書について 申立人は、同意見書の7頁4行~15行において、参3(前記第4の4(7)参照。)によれば、メラミンシアヌレートが潤滑剤として用いられることは当業者にとって技術常識であり、メラミンシアヌレートを含む成形品は、潤滑剤を含まないものに対して表面平滑性に優れることは予測可能であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、メラミンシアヌレートの潤滑性とは、メラミンシアヌレート自体の固体潤滑剤としての潤滑性であって、成形品の表面平滑性とは必ずしも同じ概念ではないから、メラミンシアヌレートを添加したからといって、成形品の表面平滑性が高くなるとは限らない。 また、申立人は、同意見書の7頁16行~8頁6行において、参4(前記第4の4(8)参照。)の【0011】に「本発明の軟磁性シートにおいては、添加されたポリエステル樹脂に相溶せずに分散する分散粒子によって、基材に塗布して製造される際に、基材でのはじきを少なくすることができ、表面平滑性を向上させることができる。」と記載され、同【0012】に「分散粒子として難燃剤であるメラミンシアヌレートを使用することで好適となる。」と記載されているから、甲4発明において、メラミンシアヌレートを併用することによって、表面平滑性に優れる成形品が得られることは予測可能であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、参4に記載された表面平滑性とは、軟磁性シートの表面に塗布するポリエステル樹脂について、軟磁性シートのはじきを少なくすることにより生じる表面平滑性、すなわち、塗布ムラを低減したことによる表面平滑性であって、本件訂正発明6等における「アミンのリン酸塩とメラミンシアヌレートとを組み合わせた組成物を樹脂に混合すること」により樹脂表面に生じる「優れた表面平滑性」とは異なるものと考えられる。 そうすると、申立人の主張は採用できない。 (2)令和6年9月20日の意見書について ア 申立人は、令和6年9月20日の意見書において、参5~参7によれば、ケーブルや光ファイバの外層樹脂として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることは周知であるから、甲4発明の光ファイバの外層樹脂として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを採用することは容易であるとの趣旨の主張をしている。 しかしながら、前記3(2)で検討したとおり、甲4発明は、甲4の請求項1に記載されるような光ファイバの外層として用いられる樹脂であり、甲4では詳細な検討がなされ、添加することが好ましい樹脂の種類や量まで規定されているところ、そこに記載も示唆もないポリウレタン系熱可塑性エラストマーを採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 イ 申立人は、本件訂正発明6等が優れた効果を奏するものではないとの判断について、特許権者は意見書において何ら説明しておらず、メラミンシアヌレートによる難燃性の効果は、甲4に基づいて当業者が容易に予測し得たものであるとも主張する。 しかしながら、令和6年7月3日提出の意見書において特許権者が主張するように、甲4にはメラミンイソシアヌレートを添加した実施例等の具体的な記載はなされておらず、一方、本願明細書の実施例では、本件訂正発明6等の(A-1)と(A-2)とメラミンシアヌレートの全てを含む場合に、リン酸アミン酸のみ含まれる場合と比較して難燃性の効果がより高いことが確認されている。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項6~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項1~5は本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700071

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