特許異議申立
2023-700003
樹脂製透明継手
- 審判番号
- 2023-700003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-141666
- 登録番号
- 7096094
- 請求日
- 2023年01月04日
- 審決日
- 2023年09月28日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】川越 雄一郎
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【異議申立人】藤下 万実
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 白土 博之
- 審判官 間中 耕治
- 分類
- P1651.112-Y (F16L) / P1651.113-Y (F16L) / P1651.121-Y (F16L) / P1651.537-Y (F16L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第2号、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7096094号発明「樹脂製透明継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7096094号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7096094号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年7月27日(優先権主張 平成29年7月28日)の出願であって、令和4年6月27日にその特許権の設定登録がされ、同年7月5日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 1月 4日 :特許異議申立人 藤下 万実(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 3月30日付け:取消理由通知書
同年 6月 1日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であり、
下記条件1及び下記条件2を満たす、樹脂製透明継手。
<条件1>
・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
<条件2>
・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
【請求項2】
着色剤を含有し、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記着色剤の含有量が0.005質量部以上0.030質量部以下であり、
前記着色剤の総質量に対して前記着色剤の色素成分の含有量が2質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の樹脂製透明継手。
【請求項3】
さらに無機難燃剤を含有し、前記無機難燃剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の樹脂製透明継手。」
第3 特許異議申立の概要
1 特許異議申立の理由について
申立人は、次の特許異議申立理由1~5を主張している。
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第2号(同法第113条第2号))
ア 申立理由1-1
本件発明1は、本件特許出願の優先日前に、日本国内で公然実施をされた甲第1号証及び甲第2号証で特定される発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
イ 申立理由1-2
本件発明1は、本件特許出願の優先日前に、日本国内で公然実施をされた甲第6号証及び甲第7号証で特定される発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
ア 申立理由2-1
本件発明1は、甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
イ 申立理由2-2
本件発明1は、甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
本件発明1~3は、甲第8号証~甲第10号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))
本件発明1~3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))
本件発明1~3は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法について
申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第10号証(以下「甲1」~「甲10」という。)を提出している。
甲1:「トーエー 継手・塩ビ関連 総合カタログ」、東栄管機株式会社
甲2:「実験成績証明書1」、2022年12月19日、藤下万実
甲3:「東栄管機株式会社特需部移転のご案内[ニュース]」のウェブページ、藤下万実、インターネット<URL: https://www.toeikanki.jp/contents/news/1291.info.html>
甲4:「東栄管機株式会社の会社概要・製品情報」のウェブページ、藤下万実、インターネット<URL: https://metoree.com/companies/7296/>
甲5:「屋外排水設備用硬質塩化ビニル管継手(VU継手)AS38:2010」、2010年8月13日、塩化ビニル管・継手協会
甲6:「透明VU継手」のカタログ、アロン化成株式会社、インターネット<URL: http://web.archive.org/web/20170611015400/http://www.aronkasei.co.jp/kanzai/imgdb/webman_flier/80-1.pdf>
甲7:「実験成績証明書2」、2022年12月26日、藤下万実
甲8:特開平6-241375号公報
甲9:特開平11-101382号公報
甲10:特開2011-226581号公報
第4 取消理由及び特許権者の主張
1 取消理由
当審が令和5年3月30日付けで特許権者に通知した取消理由通知における取消理由は、次のとおりである。
(サポート要件)本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
本件発明の課題は、明細書の段落【0005】を参照すると、「接着剤の塗りムラを抑制できる樹脂製透明継手」を提供することと認められ、特に、明細書の段落【0027】を参照すると、樹脂製透明継手に塩基性の無機難燃剤を添加した際に継手が黄色く変色するヤケについて、「ヤケによる黄色を目立たなくし、色ムラの少ない継手とする」ことを発明の課題としていると認められる。
そして、当該課題を解決するための手段として、明細書の段落【0036】では、「全ての受口部12の全光線透過率が40%以上」とするとともに、「全ての受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下」とすることにより、「管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制」することが記載されている。
また、明細書の段落【0021】、【0037】-【0045】には、樹脂製透明継手に青色着色剤を含有することでヤケによる黄色を隠蔽すること、及び、ヤケと着色剤による色ムラを小さくするために、受口部における波長457nmと680nmの透過率のばらつきを一定以下とすることが記載されている。
また、明細書の段落【0051】-【0062】には、樹脂製透明継手における着色剤の組成等を変更した場合の視認性の評価に関する実験が記載されており、当該実験では、着色剤として、「MPX-101ブルー(大日精化工業株式会社製、商品名)」が用いられており、商品名から当該着色剤の色は青色であるといえる。当該実験においても、着色剤として青色を前提としているとえる。
一方で、請求項1に係る発明は、樹脂製透明継手が青色着色剤を含むことが特定されていないから、樹脂製透明継手が青色着色剤で着色されていないものをも包含する。そして、樹脂製透明継手が青色着色剤で着色されていない場合、「ヤケによる黄色を目立たなくし、色ムラの少ない継手とする」という発明の課題を解決することができないことは、明らかである。
また、請求項1における「・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。」との発明特定事項は、青色着色剤として、特に550~700nmの波長域に吸収極大を有することを前提として、青色着色剤を樹脂製透明継手に含有した場合でも、樹脂製透明継手の色ムラを小さくするための構成であるといえる。
そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載した範囲を超えるものである。
また、同様の点が請求項2-3についても指摘される。
よって、請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 特許権者の主張
取消理由に対し、特許権者は、以下のように主張する。
「(3) 取消理由が解消されたことについて
ア 本件特許発明
(ア)本件特許発明1
本件特許発明1は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりの樹脂製透明継手である。
「【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であり、
下記条件1及び下記条件2を満たす、樹脂製透明継手。
<条件1>
・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
<条件2>
・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。」
本件特許発明の課題は【0005】に記載されている通り、継手を透明にするために色素成分の含有量を減らしても、色ムラにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げることなく、接着剤の塗りムラを抑制することにある。
この課題を解決する手段として、【0036】には、「受口部12の全光線透過率が40%以上」とし、さらに「受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下」することで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できることが記載されている。
また、【0062】には、全光線透過率が40%未満の比較例2は透明度が劣り視認性に劣り、また全光線透過率の差の最大値が11%の比較例1は色むらが大きく視認性に劣ることが記載されている。
なお、【0038】には、<条件1>によりヤケによる色むらが無いことが判断できることが記載されているが、ヤケは【0027】に記載されるように、樹脂製透明継手に塩基性の無機難燃剤が添加されているとき起きやすい現象であり、本件特許発明1は、塩基性の無機難燃剤を発明特定事項としていないから、ヤケが生ずることは必須ではないが、ヤケが生ずる物も含まれるから、本件特許発明1において<条件1>は、ヤケが生ずる場合に特に、接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる条件を特定したものである。
また、【0038】には、<条件2>により所定の着色剤中の色素による色むらが無いことが判断できることが記載されているが、着色剤は【0021】に記載されるように、必須の構成ではなく、本件特許発明1は、着色剤の色素を発明特定事項としていないが、着色剤が含有する物も含まれるから、本件特許発明1において<条件2>は、所定の着色剤中を含有する場合に特に、接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる条件を特定したものである。
イ 理由1について
(ア)本件特許発明1-3のサポート要件について
本件特許発明1-3は、本件特許明細書の段落【0036】に記載されるように、「受口部12の全光線透過率が40%以上」とし、さらに「受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下」することで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる発明である。
すなわち、本件特許発明1-3は、まず、受口部の全光線透過率を所定の数値範囲とすることで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる発明である。本件特許明細書の【0062】にも、全光線透過率が40%未満の比較例2は透明度が劣り視認性に劣り、また全光線透過率の差の最大値が11%の比較例1は色むらが大きく視認性に劣ることが記載されている。
取消理由で、「特に、明細書の段落【0027】を参照すると・・・「ヤケによる黄色を目立たなくし、色むらの少ない継手とする」ことを発明の課題としていると認められる」と説示された発明は、【0027】に記載されるような塩基性の無機水酸化物の無機難燃剤を含む場合であるが、本件特許発明1-3は、そのような場合も含まれるが、必須の構成として特定するものではなく、「ヤケによる黄色を目立たなくし、色むらの少ない継手とする」ことまでは発明の課題とはいえない。
そして、【0028】には、塩基性の無機水酸化物の無機難燃剤を含む場合でも、無機難燃剤の体積平均粒子径、BET比表面積や無機難燃剤の表面処理によりヤケの発生を抑制すると記載があるから、解決手段として青色着色剤を含むことが必須とも言えない。
したがって、本件特許発明1-3は、「ヤケによる黄色を目立たなくし、色むらの少ない継手とする」ことまでを発明の課題とするものではなく、青色着色剤を発明の課題を解決する必須の手段として特定する必要のない発明であり、本件特許発明1-3は、本件特許明細書の段落【0036】に記載された発明であるから、サポート要件に適合しており、取消理由1は解消していると思料する。」
第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)本件発明1~3が解決しようとする課題及びその解決手段について
ア 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の継手は、軽量で、かつ、耐火性能に優れるものの、顔料等の色素成分が多量に入っており、継手に対する管の挿入状態を外部から確認できない。
継手を透明にするために単に色素成分の含有量を減らすと、継手に含まれる色素成分が均一に分散せず、継手に色ムラが生じる。
この色ムラは、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げ、接着剤の塗りムラを生じていた。
そこで、本発明は、接着剤の塗りムラを抑制できる樹脂製透明継手を目的とする。」
「【0021】
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤に含まれる色素成分としては、青色染料や顔料が挙げられる。
青色染料又は顔料としては、樹脂の青色着色剤として知られている無機又は有機の青色染料又は顔料を用いることができる。青色染料又は顔料としては、500~750nmの波長域、特に550~700nmの波長域に吸収極大を有するものが好ましく、例えば、アンスラキノン系、アゾメチン系、フタロシアニン系、インディゴ系等の青色染料や、群青、紺青、コバルトブルー、インダスレンブルー、セルリアンブルー等の顔料が挙げられる。」
「【0028】
無機難燃剤は、通常、粒子状である。無機難燃剤の体積平均粒子径は1nm以上5000nm以下であることが好ましく、1nm以上1000nm以下であることがより好ましく、10nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
なお、樹脂製透明継手1に成形された後に無機難燃剤の粒子径を測定する場合には、透過電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて樹脂製透明継手1の断面を測定し、断面に存在する無機難燃剤の粒子50個について外径の長さの平均値を算出することで、無機難燃剤の体積平均粒子径が求められる。
無機難燃剤のBET比表面積は1m2/g以上40m2/g以下であることが好ましく、1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
無機難燃剤の体積平均粒子径及びBET比表面積が上記数値範囲内であると、難燃剤としての効果を充分に発揮でき、樹脂製透明継手1の耐火性能を向上できる。加えて、ヤケの発生を抑制し、色ムラを抑制できる。」
「【0036】
樹脂製透明継手1は、2以上の受口部12を有し、全ての受口部12の全光線透過率が40%以上である。全ての受口部12の全光線透過率が40%以上であることにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。
全ての受口部12の全光線透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
また、各受口部12A、12B、12Cの全光線透過率のうち最小となる値を最小値、最大となる値を最大値とし、この最大値と最小値との差(全光線透過率の差)を小さくすることで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。全ての受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下であり、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。」
「【0038】
本発明において、波長435nm~480nmの領域における透過率と、波長610nm~750nmの領域における透過率とを、受口部12の色ムラの有無を判断する指標とする。波長435nm~480nmの領域はヤケにより光透過率が低下する領域であり、波長610nm~750nmの領域は着色剤中の色素の光吸収により光透過率が低下する領域であり、これらの領域で透過率にバラツキが無ければ色ムラが無いと判断できるためである。
波長435nm~480nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長457nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長457nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。
【0039】
<条件1>
・波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率を求める。
・全ての受口部12の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差(ばらつき)が、いずれも2.0%以下である。
【0040】
ばらつきが2.0%以下であることにより、波長435nm~480nmの領域における受口部12の色ムラを抑制できる。ばらつきは、1.0%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。ばらつきの下限値は特に限定されず、例えば、0.1%以上が好ましい。
受口部12の波長457nmにおける透過率のばらつきは、次のようにして算出する。
【0041】
まず、受口部12を第1の管軸O1又は第2の管軸O2の方向に任意の長さに切断し、受口部12の円周方向から等間隔に任意の3箇所を採取して試験片を得る。得られた試験片の波長457nmにおける吸収率をJIS K7361-1に準じて測定する。受口部12Aの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Aの透過率とする。同様に、受口部12Bの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Bの透過率とする。同様に、受口部12Cの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Cの透過率とする。各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値とする。全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差を求める。各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求める。上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとする。
【0042】
波長610nm~750nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長680nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長680nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。
【0043】
<条件2>
・波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率を求める。
・全ての受口部12の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差(ばらつき)が、いずれも2.0%以下である。
【0044】
ばらつきが2.0%以下であることにより、波長610nm~750nmの領域における受口部12の色ムラを抑制できる。ばらつきは、1.0%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。ばらつきの下限値は特に限定されず、例えば、0.1%以上が好ましい。
受口部12の波長680nmにおける透過率のばらつきは、波長457nmの透過率のばらつきの場合と同様に算出する。測定に用いる試験片は、波長457nmで透過率を測定したときの試験片と同じである。
【0045】
上記条件1及び上記条件2を満たすことで、樹脂製透明継手1は、肉眼でも色ムラが小さく、視認性に優れる。」
「【0050】
以上、説明してきたように、本発明の樹脂製透明継手は、受口部の全光線透過率が40%以上であるため、透明である。加えて、本発明の樹脂製透明継手は、各受口部の透過率のばらつきが小さいため、色ムラが少ない。そのため、受口部の視認性が高められ、管と継手の接続部分の接着剤の塗りムラを抑制できる。」
「【0053】
<全光線透過率の測定>
得られた継手の色は青色であり、得られた継手の3つの受口部について、それぞれ3個の試験片を作製し、それぞれの試験片について全光線透過率を測定した。3個の試験片の平均値を各受口部の全光線透過率とした。各受口部の全光線透過率のうち最小となる値を最小値、最大となる値を最大値とした。この最大値と最小値との差を、継手の全光線透過率の差とした。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
[図:0001402776000001.jpg]
」
「【0061】
<視認性の評価>
得られた各例の継手に、ポリ塩化ビニル系樹脂製の樹脂管(積水化学工業(株)製、エスロン耐火VPパイプ)を挿入して、継手と樹脂管との接続部分を目視で観察することにより視認性の評価を行った。下記評価基準に従って、視認性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:接続部分が良好に視認できる。
○:やや視認しにくい部分があるが、接続部分が概ね良好に視認できる。
×:視認しにくい部分が目立ち、接続部分が良好に視認できない。
【0062】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~7は、視認性の評価が「◎」~「○」で、視認性に優れることが分かった。
一方、着色剤中の色素成分の含有量が多く、色素成分の分散が不十分だった比較例1は、色ムラが大きく、視認性の評価が「×」だった。全光線透過率が40%未満の比較例2は、透明度が劣り、視認性の評価が「×」だった。」
イ 判断
本件発明1~3が解決しようとする課題は、段落【0005】の記載からみて、継手を透明にするために色素成分の含有量を減らしても、色ムラにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げることなく、接着剤の塗りムラを抑制することであると認められる。
また、段落【0036】には、「受口部12の全光線透過率が40%以上」とし、さらに「受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下」することで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できることが記載されている。また、段落【0054】の表1及び段落【0062】には、全光線透過率が40%未満の比較例2は、透明度が劣り視認性に劣り、また全光線透過率の差の最大値が11%の比較例1は、色むらが大きく視認性に劣ることが記載されている。そうしてみると、上記課題は、「受口部12の全光線透過率が40%以上」とし、さらに「受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下」することで解決できるものと認められる。
そして、本件発明1~3は、「2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であ」ることを特定しているので、上記課題を解決するための手段が反映されていると認められる。
よって、本件特許の請求項1~3の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)特許異議申立書の「3.(4)エ(イ)(i)」(青色着色剤を含有すること)について
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の「3.(4)エ(イ)(i)」において、
「即ち、本件特許発明は、青色着色剤を含有することを前提としている。他の色の着色剤の色ムラを少なくするためには、その色の波長の透過率のばらつきを少なくしなければ、本発明の課題は解決できない。
しかしながら、本件特許発明は任意の色で着色された継手を包含している。本件特許発明は、青色以外の着色剤を含有するときは、本件特許発明の課題を解決できず、サポート要件を満たしていない。」、
などと主張する。
そこで、上記主張について検討する。
上記イに記載したように、上記課題を解決するための手段は、本件特許1~3において特定されていると認められる。そして、青色着色剤に関して、段落【0038】、【0042】、【0044】には、<条件2>により所定の着色剤中の色素による色ムラが無いことが判断できることが記載されている。ここで、段落【0021】に「樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。」と記載されるように、着色剤は、任意に付加される構成であって必須の構成とはいえない。
そして、本件発明1は、着色剤の色素を発明特定事項としていないが、着色剤が含有する物も含まれるから、本件発明1において<条件2>は、所定の着色剤中を含有する場合において、更に、接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる条件を特定したものであると認められる。
そうしてみると、申立人の上記主張は、採用できない。
(イ)申立書の「3.(4)エ(イ)(ii)」(青色着色剤及び青色色素成分の含有量)について
申立人は、申立書の「3.(4)エ(イ)(ii)」において、
「本件特許発明の課題を解決するための手段は、各受口部において色ムラが少ないことであり、そのためには、本件明細書実施例と比較例から、「青色着色剤を含有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、青色着色剤の含有量が0.005質量部以上0.030質量部以下であり、青色着色剤の総質量に対して青色着色剤の青色色素成分の含有量が2質量%以上10質量%以下であること」が必要である。本件特許発明は、この構成要件を具備していないため、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。」、
などと主張する。
そこで、上記主張について検討する。
申立人の上記主張は、上記(ア)の申立人の主張の、本件発明1~3が青色着色剤を含有すべきことを前提としたものであるといえるところ、上記(ア)において記載したように、上記課題解決に当たり青色着色剤は必須の構成とはいえない。
そうすると、「青色着色剤を含有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、青色着色剤の含有量が0.005質量部以上0.030質量部以下であり、青色着色剤の総質量に対して青色着色剤の青色色素成分の含有量が2質量%以上10質量%以下であること」は課題解決における必須の構成ではない。
そうしてみると、申立人の上記主張は、採用できない。
(ウ)申立書の「3.(4)エ(イ)(iii)」(接着剤の塗りムラ)について
申立人は、申立書の「3.(4)エ(イ)(iii)」において、
「継手に管を挿入したときの、挿入状態の視認と、接着剤の塗りムラの視認は異なる。」、「本件明細書の実施例では、継手や管に接着剤を塗布して、接着剤の塗りムラの視認性を評価していない(段落0061)。本件特許発明の実施例では、塗りムラを抑制することを確認してなく、本件特許発明の課題が解決されているとはいえない。即ち、本件特許発明は、サポート要件を満たしていない。」
などと主張する。
そこで、上記主張について検討する。
上記イに記載したように、本件発明1~3が解決しようとする課題は、継手の色ムラにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げることなく、接着剤の塗りムラを抑制することであると認められる。そして、上記イに記載したように、「2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であ」るという発明特定事項を備える本件発明1~3は、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できるものであると認められる。
よって、申立人の上記主張は、採用できない。
2 まとめ
以上検討したとおり、本件発明1~3は、発明の詳細な説明において、発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていると認められるから、本件特許の請求項1~3の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由
1 甲各号証の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(・・・は記載の省略を表す。下線は当審が付与した。以下同様。)。
(ア)「目次 各種塩化ビニル製継手総合カタログ」
(イ)「VU継手-透明」(第17頁上)
(ウ)「接合状態の確認が容易に行えます。
継手が透明なため、接着剤の塗り忘れ、パイプの挿入状態が確認できます。」(第17頁右上)
(エ)「
[図:0001402776000002.jpg]
」(第17頁左下)
(オ)「2016.6.3,000○M(当審注:○Mは、Mの○囲みを示す。)」(最終頁の1頁前の頁右下)
イ アから理解できる事項
(ア)上記ア(エ)より、「90Y VU DT-透明」で示される継手は、3つの受口部を有することが看取できる。
(イ)上記ア(オ)より、甲1は「2016年6月」に作成されたものと認められる。
ウ 甲1記載事項
上記ア、イを総合すると、甲1には、次の事項(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲1記載事項]
「3つの受口部を有する塩化ビニル製透明継手。」
(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
(ア)「東栄管機株式会社製のVU継手-透明「90Y VU DT-透明」(呼び径:100)(写真1)を2つ入手し、サンプル1,2として、3つの受口部(受口部12A,12B,12C)の全光線透過率、及び波長457nmと680nmにおける透過率を測定した。」(第2頁2~4行)
(イ)「3.波長457nmと680nmにおける透過率の測定
得られた試験片の波長457nmにおける透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定した(写真4,5)。受口部12Aの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Aの透過率とした。同様に、受口部12Bの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Bの透過率とした。同様に、受口部12Cの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Cの透過率とした。各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値とした。全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差を求めた。各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求めた。上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとした。結果を表Iに示す。
受口部12A、12B、12Cの波長680nmにおける透過率のばらつきは、波長457nmの透過率のばらつきの場合と同様に算出した。測定に用いた試験片は、波長457nmで透過率を測定したときの試験片と同じである。結果を表Iに示す。」(第3頁下から第13~最終行)
(ウ)「表I
[図:0001402776000003.jpg]
」(第4頁)
(エ)「写真1(赤丸は説明のために付加)
[図:0001402776000004.jpg]
」
(オ)「写真1の製品刻印(赤丸部)拡大
[図:0001402776000005.jpg]
」
イ アから理解できる事項
(ア)上記ア(ウ)(表I)より、サンプル1、2について、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率が76~77%であることが理解できる。
(イ)上記ア(ウ)(表I)より、サンプル1、2について、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率の差の最大値が0~1%であることが理解できる。
(ウ)上記ア(イ)及び(ウ)(表I)より、サンプル1、2について、以下の実験結果を得たことが理解できる。
・波長457nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.34~0.45%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.30~0.34%である。
・波長680nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.11~0.32%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.18~0.28%である。
ウ 甲2記載事項
上記ア、イを総合すると、甲2には、次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2記載事項]
「受口部12A、12B、12Cを有する東栄管機株式会社製のVU継手-透明「90Y VU DT-透明」(呼び径:100)のサンプル1、2について、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率が76~77%で、全光線透過率の差の最大値が0~1%であり、以下の実験結果であったこと。
・波長457nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.34~0.45%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.30~0.34%である。
・波長680nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.11~0.32%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.18~0.28%である。」
(3)甲6
ア 甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
(ア)「
[図:0001402776000006.jpg]
」
(イ)「web.archive.org/web/20170611015400/http://www.aronkasei.co.jp/kanzai/imgdb/webman_flier/80-1.pdf」(ブラウザのアドレスバーに示されたURL)(第1頁上)
(ウ)「11 Jun 2017」(第1頁左上)
(エ)「
[図:0001402776000007.jpg]
」(第2頁)
(オ)「VU管対応 排水用透明継手
-接合部が確認できるので、施工管理が確実にできます。-
◇パイプが奥まで挿入されているか確認できます。
◇接着剤の塗り忘れが防止できます。」(第2頁下)
(カ)「
[図:0001402776000008.jpg]
」(第3頁3段目左)
(キ)「16.8.5Z.SH-1」(第3頁右下)
イ アから理解できる事項
(ア)上記ア(カ)より、「90°Y VU DT(トウメイ)」で示される継手は、3つの受口部を有することが看取できる。
(イ)インターネットアーカイブの仕様に照らして、上記ア(ア)中にブラウザのアドレスバーに表示される上記ア(イ)の「web.archive.org/web/20170611015400/http://www.aronkasei.co.jp/kanzai/imgdb/webman_flier/80-1.pdf」というURLは、2017年6月11日1時54分00秒に収集した「http://www.aronkasei.co.jp/kanzai/imgdb/webman_flier/80-1.pdf」のpdfファイルであることを意味するものであると認められ、また、上記ア(イ)からも、当該カタログのpdfファイルは、2017年6月11日に収集したものであると認められる。そして、上記ア(ア)のブラウザ上に表示されるカタログ1ページ目の画像は、上記ア(エ)に示されるカタログ画像と、外観上同様のものであると認められる。そうすると、甲6に示されるカタログは、本件特許の優先日である2017年7月28日よりも前の2017年6月11日までに作成されたものであると推認することができる。
ウ 甲6記載事項
上記ア、イを総合すると、甲6には、次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲6記載事項]
「3つの受口部を有する透明継手。」
(4)甲7
ア 甲7の記載
甲7には、以下の記載がある。
(ア)「アロン株式会社製の透明VU継手「90°Y VU DT(トウメイ)」(サイズ:100)(写真1)を入手し、サンプルとして、3つの受口部(受口部12A,12B,12C)の全光線透過率、及び波長457nmと680nmにおける透過率を測定した。」(第2頁第2~4行)
(イ)「3.波長457nmと680nmにおける透過率の測定
得られた試験片の波長457nmにおける透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定した(写真4,5)。受口部12Aの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Aの透過率とした。同様に、受口部12Bの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Bの透過率とした。同様に、受口部12Cの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Cの透過率とした。各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値とした。全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差を求めた。各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求めた。上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとした。結果を表Iに示す。
受口部12A、12B、12Cの波長680nmにおける透過率のばらつきは、波長457nmの透過率のばらつきの場合と同様に算出した。測定に用いた試験片は、波長457nmで透過率を測定したときの試験片と同じである。結果を表Iに示す。」(第3頁第11~最終行)
(ウ)「表I
[図:0001402776000009.jpg]
」(第4頁)
(エ)「写真1(赤丸は説明のために付加)
[図:0001402776000010.jpg]
」
(オ)「写真1の製品刻印(赤丸部)拡大
[図:0001402776000011.jpg]
」
イ アから理解できる事項
(ア)上記ア(ウ)(表I)より、サンプルについて、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率が62%であることが理解できる。
イ 上記ア(ウ)(表I)より、サンプルについて、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率の差の最大値が0%であることが理解できる。
ウ 上記ア(イ)及び(ウ)(表I)より、サンプルについて、以下の実験結果を得たことが理解できる。
・波長457nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.06%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.11%である。
・波長680nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.13%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.11%である。
ウ 甲7記載事項
上記ア、イを総合すると、甲7には、次の事項(以下、「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲7記載事項]
「受口部12A、12B、12Cを有するアロン株式会社製の透明VU継手「90°Y VU DT(トウメイ)」(サイズ:100)のサンプルについて、受口部12A、12B、12Cの全光線透過率が62%で、全光線透過率の差の最大値が0%であり、以下の実験結果であったこと。
・波長457nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.06%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.11%である。
・波長680nmにおける受口部12A、12B、12Cの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社V-770)を用いて、JIS K7361-1に準じて測定し、受口部12A、12B、12Cのそれぞれの3個の試験片の透過率のそれぞれの平均値を受口部12A、受口部12B、受口部12Cの透過率とし、各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値として、全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差、及び、各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求め、上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとしたとき、前記最小値と前記全平均値との差が0.13%であり、前記最大値と前記全平均値との差が、0.11%である。」
(5)甲8
ア 甲8の記載
甲8には、以下の記載がある。
(ア)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、そこに開示された接合手段においては、管継手が透明材料であるため不透明な導管を管継手に適格に挿入し、異物等の確認はできるが、接合したときの接着剤の未塗布、塗りムラ、過剰塗布などの施工不良を見つけるには、接合部を観察しただけでは判らず、実際に管内に流体を一定の圧力によって流したり、あるいは封入してみる以外に判断することができないという不利があった。」
(イ)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するもので、不透明な合成樹脂製の導管を透視可能な合成樹脂製の管継手に接合する方法において、前記導管の端部外周面および/または前記管継手の端部内周面に着色接着剤を塗布し、嵌合し、接合させ、該接合部において該着色接着剤の塗布状態を視認可能とする管継手の接合方法を要旨とするものである。」
(ウ)「【0015】また本発明に用いられる透視可能な管継手は、合成樹脂製のものであるが、なかでも塩化ビニル系樹脂を主材としたものが好ましく採用され、これに各種の添加剤が配合される。この添加剤の種類および配合割合を特定することにより、導管との接合において、より好適な管継手を提供できる。このような管継手の材料としては、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、すずメルカプト系安定剤1~4重量部、すずマレート系安定剤0.2~1重量部、α-メチルスチレン10~100重量部の配合割合からなるものが好ましい。
【0016】本発明に用いられる塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニルを主体とする共重合体のいずれでもよく、また重合されるモノマーとしては、ビニルエステル、ビニルエーテル、アクリル酸またはメタアクリル酸及びそのエステル、マレイン酸またはフマル酸、あるいはそれらのエステル、並びに無水マレイン酸、芳香族ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン、アクリルニトリルまたはメタアクリロニトリル、さらにはエチレン、プロピレン等のオレフィンが挙げられ、その中で特に好ましいのは、流動性の優れたエチレン-塩化ビニル共重合体である。」
(エ)「【0018】本発明に使用される管継手は、通常二つの導管を接合するものであるが用途によって、三つ以上の導管を接合することもできる。」
(オ)「【0020】
【実施例】
(実施例1)塩ビ管用低粘土速乾性接着剤(コニシ株式会社製商品名、シンエツボンド-A)に着色剤(オリエント化学工業株式会社製商品名、オイルブル-603)をそれぞれ、0.1重量%、0.01重量%、0.001重量%、0重量%配合したものを硬質塩化ビニル製管継手(信越ポリマー株式会社製商品名、TS-S-50)の端部内周面に、ハケを用いて約0.1mmの厚さに塗布した。次に、同様にして硬質塩化ビニル製導管(信越ポリマー株式会社製商品名、VP-50)の端部外周面にも約0.15mmの厚さに塗布し、管継手内に嵌合させた直後、目視によって接合部の塗布状態を調べ、その評価を表1に示した。なお、管継手の透明度、目視判定は、次のとおりであった。
【0021】(管継手の透明度)
◎・・・・・透明で内部が明確に判定できる。
○・・・・・不透明であるが、内部が透視可能である。
△・・・・・不透明であるが、至近距離で内部がわかる。
×・・・・・内部が透視できない。
(接合状態の目視判定)
◎・・・・・管継手に挿入された導管先端の位置、導管先端の面取り状態、異物、接着剤の塗布状態が判定可能である。
○・・・・・導管先端の位置が判定可能で、接着剤の塗布状態は、至近距離にて判定可能である。
△・・・・・導管の先端位置または接着剤の塗布状態は、注意深くみて判定可能であるが実用的ではない。
×・・・・・導管の先端位置または接着剤の塗布状態は判定不可である。
【0022】
【表1】
[図:0001402776000012.jpg]
表1の結果から明らかなように、管継手の透明度が確保でき、着色剤の色もよくわかることから、塗布状態を容易に判断することができる。」
(カ)「【0024】
【発明の効果】本発明の接合方法によれば、導管と管継手の接合部における接着剤の未塗布、塗りムラ、過剰塗布あるいは接着面への異物混入などの施工不良箇所を目視によって容易に判断することができるので、人為的な施工ミスを容易に見つけ出し、事故を未然に防止することができる。また、作業性においてもその場で接合部の塗布状態の良否を確認できることから、施工技術の向上が図れ、工事管理者や発注者側から見ても接合部の塗布状態の検査が容易にでき、レベルの高い施工技術を提供することができる。」
イ 甲8発明
上記アを総合すると、甲8には、次の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲8発明]
「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する合成樹脂製の透視可能な管継手において、
二つ以上の導管を接合することができる、合成樹脂製の透視可能な管継手。」
(6)甲9
ア 甲9の記載
甲9には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂管の管継手及びその管継手と合成樹脂管の接合構造ならびに前記接合構造からなる消火設備に関する。」
(イ)「【0017】
【作用】請求項1記載の合成樹脂管の管継手では、全体が透明な合成樹脂で形成されているので、全体を一体成形することができる。また、請求項1記載の合成樹脂管の管継手では、管継手の受け口部と合成樹脂管の端部とを接合する際に、有色接着剤を用いて接着接合することにより、合成樹脂管の挿入量と接着剤の塗布状況を外側から把握しながら接着接合することができるので、合成樹脂管の挿入不足や接着剤の塗布不足等による接着不良を防止することができる。」
(ウ)「【0022】
【発明の実施の形態】まず、図1に基づいて、実施の形態について、合成樹脂管として消火設備用合成樹脂管とした場合について詳述する。図1は実施の形態1の管継手と消火設備用合成樹脂管との接合構造を示した断面図で、図中1が管継手、2が消火設備用合成樹脂管である。
【0023】前記管継手1は、配管の直線部で使用されるソケット形のもので、両端部に消火設備用合成樹脂管2を差し込み可能な受け口部11,11が設けられており、長手方向中心部の内周面には突条12が周方向に連続して設けられている。
【0024】また、この管継手1は、全体が透明な合成樹脂で形成されている。なお、この管継手1の色は、透明であれば無色でも有色でもよい。管継手1の成形方法としては、射出成形やブロー成形等の他、合成樹脂管を適宜の長さに切断した後に熱加工する方法等がある。さらに、合成樹脂の種類としては、塩化ビニル樹脂や塩素化塩化ビニル樹脂などを用いることができる。」
(エ)「【0041】上記無機物粉又は金属粉を含有した接着剤を、合成樹脂管と透明管継手の接合に使用されるが、透明管継手は必ずしも無色でなくともよく、淡色で、接合後に接着剤中の無機物粉の存在が光線照射により容易に把握できればよい。 例えば、消火設備用の合成樹脂管の施工において、透明な管継手と上記無機物粉又は金属粉含有接着剤を使用することにより、接合後に接着剤の塗布状況、管の継手への挿入量が光線照射等により外部から容易に把握でき、接着剤の塗り忘れや塗りムラ、管の挿入不足といった施工ミスによる水洩れや管抜けが防止できる。」
(オ)「【0042】次に、実施例1~12ならびに比較例1~16について説明する。
(実施例1~3)表1に記載の色の管継手、消火設備用合成樹脂管が有色接着剤で接着接合されている。その結果について消火設備用合成樹脂管の挿入量と接着剤の塗布状況を外側から把握した。◎:把握が容易、○:把握が可能、×:把握が困難、××:把握不可で判定した。
【0043】(比較例1~3)表1に記載の色の管継手、消火設備用合成樹脂管が接着剤で接着接合されている。その結果について実施例1と同様にして判定した。
【0044】
【表1】
[図:0001402776000013.jpg]
」
(カ)「【0055】なお、上記実施の形態では、配管の直線部に使用されるソケット形の管継手1を示したが、本発明の構成は、図2に示すような配管の曲り部に使用されるL字形の管継手3に適用してもよいし、図3に示すような配管の分岐部に使用されるT字形の管継手4に適用してもよい。」
(キ)「【図1】
[図:0001402776000014.jpg]
」
(ク)「【図2】
[図:0001402776000015.jpg]
」
(ケ)「【図3】
[図:0001402776000016.jpg]
」
イ アから理解できる事項
(ア)段落【0055】の記載事項及び図1~3の図示事項より、受け口部11を2つ又は3つとする態様が理解できる。
(イ)表1の実施例1の管継手は黄色透明であることが理解できる。
(ウ)管や継手の材料となる塩化ビニルがポリマー体であることが技術常識であることに照らすと、甲9に記載の塩化ビニル樹脂はポリ塩化ビニル樹脂であるといえる。
ウ 甲9発明
上記ア、イを総合すると、甲9には、次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲9発明]
「ポリ塩化ビニル樹脂を含有する透明な合成樹脂で形成された管継手1において、
2つ又は3つの受け口部11を有し、黄色透明である、管継手1。」
(7)甲10
ア 甲10の記載
甲10には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、耐火用管継手に関し、特に、建築物内に設置される配管材としての管継手であって耐火性が付与された管継手に関するものである。」
(イ)「【0013】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明の耐火用管継手は、ポリ塩化ビニル系樹脂、および、炭酸カルシウムを含有する難燃性樹脂組成物を用いて形成される。ポリ塩化ビニル系樹脂に対して炭酸カルシウムが配合されると、燃焼時に熱変形抑制効果を発揮することができる。」
(ウ)「【0023】
炭酸カルシウムの配合量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上、10重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上、7重量部以下であることが更に好ましく、1重量部以上、5重量部以下であることが特に好ましい。炭酸カルシウムの配合量が0.5重量部未満では、燃焼時に十分な熱変形抑制効果が発揮できないことがあり、所望の耐火性が得られないことがあるからである。また、炭酸カルシウムの配合量が20重量部以上になると、管継手の性能が著しく損なわれることがあり、成形できないこともある。」
(エ)「【0027】
水酸化マグネシウムの配合量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上、5重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは1重量部以上、3重量部以下である。水酸化マグネシウムの配合量が0.5重量部以上であれば、燃焼時に十分な難燃効果を発揮することができ、所望の耐火性が得られる。また、水酸化マグネシウムの配合量が5重量部以下であれば、管継手の性能が著しく損なわれることはない。」
2 申立理由1~3、5について
(1)申立理由1について
本件発明1は「樹脂製透明継手」という「物」の発明であるところ、本件発明1が、特許法第29条第1項第2号にいう「公然実施された発明」に該当するというためには、(ア)本件発明1の実施品に相当する物が、(イ)守秘義務を有しない者によって、(ウ)本件発明1の内容を理解し得る態様で実施された(すなわち、公然実施された)という、具体的事実が立証されることが必要である。
そこで、以下、申立人が示した証拠から特定されると主張する製品が、上記(ア)~(ウ)について、申立人の提出した証拠により立証されているか否か、という点について検討する。
ア 申立理由1-1について
申立人は、申立書の「3(4)イ(ア)(iii)」において、「甲第1号証は、甲第1号証のカタログに掲載された製品が、広くユーザーに対して譲渡等の申出がされ、実際に譲渡等が行われていたことを示す。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
甲1は、カタログであることから、「譲渡等の申出がされ」たことを推認させるものであるとしても、本件特許の優先日前において、甲1に記載された「VU継手 VU管用排水継手(レギュラーサイズ・大口径)」の「90Y VU DT-透明」が実際に「守秘義務を有しない者」に対して「本件発明1の内容を理解し得る態様で」譲渡されたとの事実を示す領収書や請求書などの証拠は、何ら提出されておらず、甲1に記載された「90Y VU DT-透明」が、甲2~甲10を参酌しても、実際に譲渡されたと解するべき事情は認められないから、甲1が「実際に譲渡等が行われていたことを示す」ものとはいえない。
また、たとえ甲2に記載された「東栄管機株式会社製のVU継手-透明「90Y VU DT-透明」(呼び径:100)」が甲1に記載された継手であるとしても、甲2に記載された継手が本件特許の優先日前に譲渡された等の事実を示す領収書や請求書などの証拠の提出もない。
したがって、甲1記載事項の継手が公然実施されたものであると認めることはできない。
以上のとおりであるから、申立人が示した証拠から特定されると主張する公然実施発明1が、申立人の提出した証拠により立証されているということはできない。
イ 申立理由1-2について
申立人は、申立書の「3(4)イ(イ)(iii)」において、「甲第6号証は、甲第6号証のカタログに掲載された製品が、広くユーザーに対して譲渡等の申出がされ、実際に譲渡等が行われていたことを示す。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
甲6は、カタログであることから、「譲渡等の申出がされ」たことを推認させるものであるとしても、本件特許の優先日前において、甲6に記載された「VU管対応 排水用透明継手」の「90°Y VU DT(トウメイ)」が実際に「守秘義務を有しない者」に対して「本件発明1の内容を理解し得る態様で」譲渡された等の事実を示す領収書や請求書などの証拠は、何ら提出されておらず、甲6に記載された「90°Y VU DT(トウメイ)」が、実際に譲渡されたと解するべき事情は認められないから、甲6が「実際に譲渡等が行われていたことを示す」ものとはいえない。
また、たとえ甲7に記載された「アロン株式会社製の透明VU継手「90°Y VU DT(トウメイ)」(サイズ:100)」が甲6に記載された継手であるとしても、甲7に記載された継手が本件特許の優先日前に譲渡された等の事実を示す領収書や請求書などの証拠の提出もない。
したがって、甲6記載事項の継手が公然実施されたものであると認めることはできない。
以上のとおりであるから、申立人が示した証拠から特定されると主張する公然実施発明2が、申立人の提出した証拠により立証されているということはできない。
ウ 申立理由1についてのまとめ
以上検討したとおり、本件発明1、2は、本件特許出願の優先日前に日本国内で公然実施をされた発明であるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものではない。
(2)申立理由2について
ア 申立理由2-1について
(ア)対比・判断
本件発明1と甲8発明とを対比する。
甲8発明の「合成樹脂製の透視可能な管継手」は、本件発明1の「樹脂製透明継手」に相当する。そして、甲8発明の「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する合成樹脂製の透視可能な管継手」は、本件発明1の「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手」に相当する。
甲8発明において「二つ以上の導管を接合することができる」ことは、本件発明1において「2以上の受口部を有」することに相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点1]
「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
2以上の受口部を有する、樹脂製透明継手。」
[相違点1]
本件発明1は、「全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であ」るのに対し、甲8発明は、そのことが不明である点。
[相違点2]
本件発明1は、「下記条件1及び下記条件2を満たす」
「<条件1>
・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
<条件2>
・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。」
のに対し、甲8発明は、そのことが不明である点。
したがって、本件発明1と甲8発明とは、上記相違点1、2で相違し、本件発明1は、甲8発明であるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、申立書の「3.(4)ウ(ウ)(ウ-1)(ii)」において、「本件特許発明1は、構成要件C~F(当審注:相違点1、2に係る発明特定事項に対応)を具備することにより、接着剤の塗りムラを抑制している(本件明細書段落0036,0038,0042,0050)。甲8発明では、接着剤の塗りムラが判定可能であることから、構成要件C~Fを具備する蓋然性が高い。従って、相違点1,2は実質的な相違点ではない。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
相違点1、2に係る本件発明1の発明特定事項は、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することができ、その結果として、接着剤塗布時の塗りムラ抑制につながるものである(段落【0036】、【0038】、【0042】、【0050】等を参照)。
一方、甲8には、透視可能な管継手に導管を接合する際に、着色接着剤を用いることで、接合部における当該接着剤の塗布状態を視認可能とすることが記載されているに過ぎず(上記「第6 1(5)ア(イ)及び(オ)」を参照)、本件発明1のように、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することについて何ら記載も示唆もない。そうすると、甲8が相違点1、2に係る本件発明1の発明特定事項を具備しているとはいえないから、相違点1、2は実質的な相違点である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 申立理由2-2について
(ア)対比・判断
本件発明1と甲9発明とを対比する。
甲9発明の「透明な合成樹脂で形成された管継手1」は、本件発明1の「樹脂製透明継手」に相当する。そして、甲9発明の「ポリ塩化ビニル樹脂を含有する透明な合成樹脂で形成された管継手1」は、本件発明1の「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手」に相当する。
甲9発明の「受け口部11」は、本件発明1の「受口部」に相当し、甲9発明において「2つ又は3つの受け口部11を有」することは、本件発明1において「2以上の受口部を有」することに相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点2]
「ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
2以上の受口部を有する、樹脂製透明継手。」
[相違点3]
本件発明1は、「全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であ」るのに対し、甲9発明は、そのことが不明である点。
[相違点4]
本件発明1は、「下記条件1及び下記条件2を満たす」
「<条件1>
・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
<条件2>
・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。」
のに対し、甲9発明は、そのことが不明である点。
したがって、本件発明1と甲9発明とは、上記相違点3、4で相違し、本件発明1は、甲9発明であるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、申立書の「3.(4)ウ(エ)(エ-1)(ii)」において、「本件特許発明1は、構成要件C~F(当審注:相違点3、4に係る発明特定事項に対応)を具備することにより、接着剤の塗りムラを抑制している(本件明細書段落0036,0038,0042,0050)。甲9発明では、接着剤の塗りムラが判定可能であることから、構成要件C~Fを具備する蓋然性が高い。従って、相違点1,2は実質的な相違点ではない。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
本件発明1は、相違点3、4に係る発明特定事項を備えることにより、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することができ、その結果として、接着剤塗布時の塗りムラ抑制につながるものである(段落【0036】、【0038】、【0042】、【0050】等を参照)。
一方、甲9には、透明な管継手と合成樹脂管とを有色接着剤で接着することで、接着剤の塗布状況を外側から把握できることが記載されているに過ぎず(上記「第6 1(6)ア(イ)」を参照)、本件特許のように、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することについて何ら記載も示唆もない。そうすると、甲9が相違点3、4に係る本件発明1の発明特定事項を具備しているとはいえないから、相違点3、4は実質的な相違点である。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 申立理由2についてのまとめ
以上検討したとおり、本件発明1は、甲8発明及び甲9発明のいずれであるともいえないから、請求項1に係る特許は、同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
(3)申立理由3について
ア 甲8を主引用とした場合について
(ア)対比・判断
本件発明1と甲8発明との一致点及び相違点については、上記「(2)ア(ア)」を参照。
相違点1、2について、上記「(2)ア(イ)」で記載したように、甲8には、透視可能な管継手に導管を接合する際に、着色接着剤を用いることで、接合部における当該接着剤の塗布状態を視認可能とすることが記載されているに過ぎず(上記「第6 1(5)ア(イ)及び(オ)」を参照)、本件特許のように、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することについて何ら記載も示唆もない。そして、上記相違点1、2に係る構成が技術常識であったといえる証拠もない。
したがって、当業者といえども、甲8発明において、上記相違点1、2に係る構成を想起することが容易であったとはいえない。
よって、本件発明1は、甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、申立書の「3.(4)ウ(ウ)(ウ-1)(ii)」において、「たとえ構成要件C~Fを具備していないとしても、当業者にとって、継手全体の透明性を均一に高くすることと色ムラを少なくすることは当たり前のことであり、構成要件C~Fは単なる好適値であり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
甲8及び他の証拠を参照しても、「当業者にとって、継手全体の透明性を均一に高くすることと色ムラを少なくすることは当たり前」との主張を裏付ける事実は見出せず、また、上述のとおり、上記相違点1、2に係る構成が技術常識であったという証拠もない。そうすると、上記相違点1、2に係る構成は単なる好適値であるとはいえず、当業者の通常の創作能力の発揮によりなし得たものともいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
イ 甲9を主引用とした場合について
(ア)対比・判断
本件発明1と甲9発明との一致点及び相違点については、上記「(2)イ(ア)」を参照。
相違点3、4について、上記「(2)イ(イ)」で記載したように、甲9には、透明な管継手と合成樹脂管とを有色接着剤で接着することで、接着剤の塗布状況を外側から把握できることが記載されているに過ぎず(上記「第5 9(1)イ」を参照)、本件特許のように、受口部の全光線透過率を高め、受口部の全光線透過率のばらつき及び色ムラを抑制することについて何ら記載も示唆もない。そして、上記相違点3、4に係る構成が技術常識であったいう証拠もない。
したがって、当業者といえども、甲9発明において、上記相違点3、4に係る構成を想起することが容易であったとはいえない。
よって、本件発明1は、甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、申立書の「3.(4)ウ(エ)(エ-1)(ii)」において、「たとえ構成要件C~Fを具備していないとしても、当業者にとって、継手全体の透明性を均一に高くすることと色ムラを少なくすることは当たり前のことであり、構成要件C~Fは単なる好適値であり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。」、「尚、甲9発明の継手は黄色透明であるから、青色着色剤を含まない。従って、青色着色剤による青色の色ムラが少ないことを意味する指標である構成要件F(当審注:本件発明1の条件2に関する発明特定事項に対応)は、当然具備する。」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
甲9及び他の証拠を参照しても、「当業者にとって、継手全体の透明性を均一に高くすることと色ムラを少なくすることは当たり前」との主張を裏付ける事実は見出せず、また、上述のとおり、上記相違点3、4に係る構成が技術常識であったという証拠も認められない。そうすると、上記相違点3、4に係る構成は単なる好適値であるとはいえず、当業者の通常の創作能力の発揮によりなし得たものともいえない。そして、たとえ申立人の主張のように、甲9発明が「構成要件F」を備えるものであったとしても、そのことが、「構成要件F」に対応する構成以外の上記相違点3、4に係る構成について、当業者の通常の創作能力の発揮によりなし得たものとはいえないという上記判断を左右するものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 申立理由3についてのまとめ
以上検討したとおり、本件発明1は、甲8発明又は甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1に係る特許及び請求項1を引用する請求項2、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(4)申立理由5について
申立人は、申立書の「3.(4)エ(ア)」において、
「本件特許発明の課題は、色ムラを少なくして、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を高くすることである(本件明細書段落0005)。ここで問題となるのは、管を受ける1つの受口部における色ムラである。しかし、構成要件D,E,Fの差は、全て2以上の受口部間の差である。実施例でも受口部間の差を測定し比較している(本件明細書段落0053~0055)。
たとえ、受口部間の平均透過率に差があっても、各受口部において色ムラがなければ、各受口部において接着剤の塗りムラは視認できるはずである。換言すれば、受口部間の平均透過率に差がなくても、各受口部において色ムラがあれば、各受口部において接着剤の塗りムラは視認できない。
また、構成要件E,Fに関しては、仮に、受口部間の平均透過率の差が問題であったとしても、僅か2.0%を超えるか否かで、塗りムラが視認できるか否かが変わるとは考えにくい。本件明細書実施例と比較例は「差2.0%」の技術的意義を示していない。
従って、本件特許発明の技術的意味が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項(後述する(イ)(ii)))が不足していることが明らかであり、発明が不明確である。」
と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この観点に立って、本願発明が明確であるか否かについて検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の継手は、軽量で、かつ、耐火性能に優れるものの、顔料等の色素成分が多量に入っており、継手に対する管の挿入状態を外部から確認できない。
継手を透明にするために単に色素成分の含有量を減らすと、継手に含まれる色素成分が均一に分散せず、継手に色ムラが生じる。
この色ムラは、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げ、接着剤の塗りムラを生じていた。
そこで、本発明は、接着剤の塗りムラを抑制できる樹脂製透明継手を目的とする。」
「【0036】
樹脂製透明継手1は、2以上の受口部12を有し、全ての受口部12の全光線透過率が40%以上である。全ての受口部12の全光線透過率が40%以上であることにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。
全ての受口部12の全光線透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
また、各受口部12A、12B、12Cの全光線透過率のうち最小となる値を最小値、最大となる値を最大値とし、この最大値と最小値との差(全光線透過率の差)を小さくすることで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。全ての受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下であり、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。」
「【0038】
本発明において、波長435nm~480nmの領域における透過率と、波長610nm~750nmの領域における透過率とを、受口部12の色ムラの有無を判断する指標とする。波長435nm~480nmの領域はヤケにより光透過率が低下する領域であり、波長610nm~750nmの領域は着色剤中の色素の光吸収により光透過率が低下する領域であり、これらの領域で透過率にバラツキが無ければ色ムラが無いと判断できるためである。
波長435nm~480nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長457nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長457nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。」
「【0042】
波長610nm~750nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長680nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長680nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。」
「【0050】
以上、説明してきたように、本発明の樹脂製透明継手は、受口部の全光線透過率が40%以上であるため、透明である。加えて、本発明の樹脂製透明継手は、各受口部の透過率のばらつきが小さいため、色ムラが少ない。そのため、受口部の視認性が高められ、管と継手の接続部分の接着剤の塗りムラを抑制できる。」
段落【0036】、【0038】、【0042】の記載からみて、本件発明1は、全光線透過率並びに波長435nm~480nmの領域における透過率及び波長610nm~750nmの領域における透過率から、各受口部の相互の色ムラを評価し、それぞれ所定の数値範囲を満たすことで、継手全体として、管と継手の接続部分の接着剤の視認性に優れると判断するものと理解できる。すなわち、段落【0005】や【0050】でいう「色ムラ」及び「塗りムラ」は、受口部それぞれ単独での色ムラでなく、各受口部間の平均透過率をみることによる継手全体としての色ムラ及び塗りムラを意味すると解される。
そうすると、本件発明1は、上記のように、各受口部の相互の色ムラをみることによる継手全体としての色ムラを評価するという技術的意味を有すると解されるところ、このように解した場合、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確であるとはいえない。
また、本件発明1は、上記のように、各受口部の相互の色ムラをみることによる継手全体としての色ムラを評価すると解されるものであり、このときに、受口部間の平均透過率の差が大きいほど、継手全体としての色ムラが大きくなることは技術的に明らかであることにかんがみれば、各受口部の相互の色ムラが少ないことを意図する何らかの値を当該差の上限とすることが適当であり、当該差「2.0%」は、本件特許における具体的数値として定められたものであると理解できる。そうすると、本件発明1において、当該差「2.0%」以下とは、上記のように、各受口部の相互の色ムラが少ないという技術的意味を有すると解されるところ、このように解した場合、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確であるとはいえない。
以上検討したとおり、本件発明1は、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確とはいえないから、請求項1に係る特許及び請求項1を引用する請求項2、3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700003