特許拒絶査定不服審判
2023-021703
半導体発光装置
- 審判番号
- 2023-021703
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-027099
- 請求日
- 2023年12月21日
- 審決日
- 2025年04月18日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日機装株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人平田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 西岡 貴央
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 27099「半導体発光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 9日出願公開、特開2021-132138〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特願2020-27099号(以下「本件出願」という。)は、令和2年2月20日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和5年 5月30日付け:拒絶理由通知書
令和5年 8月 3日 :意見書・手続補正書
令和5年 9月28日付け:拒絶査定
令和5年12月21日 :審判請求書・手続補正書
令和6年11月25日付け:拒絶理由通知書(以下、この通知書に係る拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和7年 1月 9日 :意見書・手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)
第2 本願発明の認定
本件出願の請求項1~6に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
波長360nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を収容する窪部を有するパッケージ基板と、
前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間に形成され、前記半導体発光素子と前記窪部を有するパッケージ基板とを電気的に接続する複数のバンプと、
前記窪部に充填され、樹脂により形成された、前記半導体発光素子を封止する封止材と、
を備え、
前記半導体発光素子のダイシェア強度が、0.50kgf以上であり、
前記封止材は、前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間にも充填されており、
前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間の距離は、5μm以上50μm以下であり、
前記封止材は、シリコーン樹脂であり、
前記複数のバンプは、スタッドバンプである、
半導体発光装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明に対応する本件補正前の請求項9が引用する請求項5が引用する請求項1に係る発明に対する当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由1:(進歩性)本件補正前の請求項9が引用する請求項5が引用する請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2013-84981号公報
引用文献2:国際公開第2014/178288号(周知技術を例示する文献)
第4 当合議体の判断
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由において引用された引用文献1には、以下の記載がある(当合議体注:当合議体が引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を追加した)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の導通接続が最適化された発光装置に関するものである。」
イ 「【背景技術】
【0002】
近年、発光素子の光取り出し効率を向上させることを目的として、同一面側に正電極と負電極とを有する発光素子を、配線パターンが形成された支持基板上にフリップチップで接合した構造を有する発光装置が開発されている。
【0003】
例えば、特開2003-304003号公報に記載の発光装置は、絶縁基板上に形成された一対の電極の所定の位置にAu-Sn半田を塗布し、Auバンプ付きLED素子をフリップチップ実装して接合した後、リフローすることにより半田溶融して電気的導通をとっている。また、LED素子を保護する目的として、LED素子およびバンプの周辺を透光性の封止樹脂で封止している。
【0004】
【特許文献1】 特開2003-304003号公報 。
【0005】
上記発光装置は、LED素子と配線パターンとがある程度の高さを有するAuバンプにて接合されていることから、接合強度が強く、優れた信頼性を有している。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Auバンプの高さのため、LED素子と配線パターンとの間に多くの封止樹脂が介在しており、この介在部の樹脂が熱ストレスを受けると、配線パターン側からLED素子側へ応力が発生する。この応力は、前記介在部の樹脂量が多い場合、または、上記発光装置を厳しい温度変化を伴う環境下にて使用する場合、LED素子と封止樹脂との密着性やLED素子と配線パターンとの接合性に悪影響を与えるほど大きくなり、水分の吸収による信頼性の低下やLED素子の接合不良の発生による不灯が生じる場合がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決し、使用環境に左右されない優れた信頼性を有する発光装置を提供することを目的とする。」
エ 「【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子の電極の表面に分配して設けられた導電膜と、配線パターンを有する支持体と、を有し、前記導電膜は、前記配線パターンと接合しており、前記電極と前記導電膜との接合面積は、前記導電膜と前記配線パターンとの接合面積より大きいことを特徴とする。」
オ 「【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置によれば、発光素子の電極と配線パターンとの接合を、複数の支点で膜厚の薄い導電膜にて行い、かつ、その導電膜と各部材との接合面積の割合を特定することにより、信頼性の高い薄型発光装置を実現している。」
カ 「【発明を実施するための最良の形態】
・・・(中略)・・・
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の発光装置100の模式的平面図であり、図2は図1のX-X線における模式的断面図である。本実施の形態1の発光装置100は、同一面側に正電極111aおよび負電極111bを有する発光素子110と、表面に正極の導電配線131aと負極の導電配線131bとからなる配線パターンを有するサブマウント基板130と、を有し、前記発光素子110が前記サブマウント基板130上に導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装され、透光性樹脂140にて封止されている。
(当合議体注:「・・・前記発光素子100が前記サブマウント基板130上に・・・」の「前記発光素子100」は、「前記発光素子110」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正して摘記した。)
【0015】
[発光素子110]
本発明に用いられる発光素子110は、特に限定されないが、ここでは発光ダイオードチップ(以下、LEDチップという)について説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、蛍光物質を使用する場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
・・・(中略)・・・
【0019】
[正電極111a、負電極111b]
本実施の形態に用いられる発光素子110は、同一面側に正電極111aおよび負電極111bを有している。具体的には、エッチング等の方法により、p型半導体層側からn型半導体層の一部を露出した後、p型半導体層上および露出されたn型半導体層上にそれぞれ正電極111aおよび負電極111bを蒸着法やスパッタリング法により形成している。本実施の形態では、n型半導体層を互いに平行なストライプ状となるように露出させて負電極111bを形成し、正電極111aおよび負電極111bとの間を流れる電流が均一になるように構成されている。
【0020】
また、正電極111aの表面積は、負電極111bの表面積より大きく構成されている。具体的には、正電極111aと負電極111bは、ストライプ状に交互に配置されており、正電極111aの幅は負電極111bの幅より広い。このように、発光素子110の発光に寄与しないn型半導体の露出領域を減らし、p型半導体の領域および正電極111aの領域を相対的に増やすことで発光素子110の出力を向上させることができる。
・・・(中略)・・・
【0025】
[配線パターン131a,131b]
支持体130表面には、正極の導電配線131aと負極の導電配線131bとがパターン形成されている。これらの材料は、導電性を有しているものであれば特に限定されず、Auや銀白色の金属、特に、反射率の高いAg、Alなどとされる。反射率の高い銀白色の金属とすることにより、発光素子110からの光が支持基板と反対側の方向に反射され、発光装置の光取り出し効率が向上するため好ましい。ここで、導体配線の材料とする金属は、金属相互間の接着性の良さ、いわゆる濡れ性等を考慮して選択されることが好ましい。導体配線は、支持体表面上に、配線を形成しない領域にホトレジストパターンを形成し、電子ビーム蒸着、あるいはスパッタ、あるいは鍍金などの方法により、例えば厚さ10nmのTi層、厚さ1000nm(1μm)のAu層を堆積する。その後、レジストパターンを除去し、その上に堆積した金属層をリフトオフする。配線層は、Ti/Auの他、Ni/Au,Al/Au等を用いることもできる。
・・・(中略)・・・
【0027】
[導電膜120a,120b]
本発明の発光装置は、発光素子110と支持体130上の配線パターン131a,131bとが、導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装されている。本実施の形態の発光装置は、発光素子110の正電極111aの表面に分配して設けられた導電膜120aを有し、正電極111aと前記導電膜120aとの接合面積は、前記導電膜120aと前記配線パターン131aとの接合面積より大きいことを特徴とする。このように、導電膜120a,120bと各接合部材との接合面積の割合を特定することにより、導電膜120a,120bの膜厚が薄くとも高い接合強度を得ることができる。これにより、リークや電気接合部のオープンが生じない安定した導電性を有する発光装置が得られる。また、本発明の発光装置は、前記発光素子110と前記支持体130との間に、樹脂など熱ストレスにより膨張する部材が介在したとしても、その介在部の厚みは薄いことから、熱ストレスを瞬時に支持体130側へ逃がすことができる。このように本発明の発光装置は、発光装置の一体性を損なうほどの応力が発生することがなく、使用環境に左右されない高い信頼性を有している。
【0028】
本実施の形態の発光素子110は、同一面側に正電極111aと負電極111bを有しており、前記正電極111aの平面積は前記負電極111bの平面積より大きい。このような発光素子110の正電極111aおよび負電極111bの各全面に形成された導電膜と、配線パターンとを、溶融接合すると、平面積の小さい負電極111b側の導電膜と配線パターンとの接合に不良が生じる場合がある。これは、平面積の大きい電極全面に設けられた導電膜が、溶融した際に中央側へ凝集し、平面積の小さい電極全面に設けられた導電膜より最大膜厚が高くなるからだと考えられる。そこで本発明は、平面積の大きい電極側に設ける導電膜を分配することにより、導電膜の凝集による最大膜厚の変化を抑制し、両電極の接合性を高めている。ここで、本明細書において、平面積とは、発光素子を電極形成面側からみた平面積を示す。
【0029】
本発明の導電膜は、導電性を有していれば特に限定されず、導電ペースト、ハンダ材料、焼結性Ag粒子ペースト、異方導電性ペースト、などが挙げられる。特に、発光素子110の各電極および支持体の配線パターンとの濡れ性および密着性を考慮すると、AuSn、AuSi、SnAgBi、SnAgCu、SnAgBiCu、SnCu、SnBi、PbSn、Inからなる群から選択される少なくとも1種を含む共晶材料を用いることが好ましい。また、導電膜120a,120bの膜厚は前記発光素子110の平面積の平方根の0.1%~0.5%とであることが好ましく、これにより、経済的で安定した接合が得られる。この範囲より膜厚が少なすぎると接合不良が発生し、安定した導電性および強度が得られない。この範囲より膜厚が厚い場合は、導電膜120a,120bが隣接する電極に接触する可能性が高まり、リークによる不良原因となる。また、成膜コストが上昇する、リフトオフが困難になる等の理由により経済的でない。また、前記導電膜120a,120bは、内部に空隙を有することが好ましく、これにより導電膜120a,120bに対する熱応力が緩和され、導電膜120a,120b自体へのクラックの発生を抑制し、また発生したクラックの進展を抑制することができる。
・・・(中略)・・・
【0031】
[封止部材140]
本実施の形態の発光装置において、発光素子110は、外部環境からの外力、塵芥や水分などから保護するために封止部材140にて被覆されている。特に、本形態における封止部材140は、発光素子110と支持体130との間にも介在している。その介在部と支持体130との接触面積は、発光素子110との接触面積より大きい。このような構成により、介在部が受けた熱ストレスは、支持体130側へ効率よく逃がすことが可能となることから、厳しい使用環境下においても発光装置の一体性を保持することができる。
【0032】
本実施の形態の封止部材140は、発光素子110の外周から封止部材140の外周の距離をほぼ等しくすることで、発光面を小さくでき、かつ均一な発光が得られる。封止部材の形状はこれに限定されず、目的に合わせて種々の形状とすることができる。即ち、封止部材の形状を凸レンズ形状、凹レンズ形状とすることによってレンズ効果をもたすことができる。そのため、所望に応じて、ドーム型、発光観測面側から見て楕円状、立方体、三角柱など種々の形状を選択することができる。
【0033】
具体的な封止部材140の材料として、耐光性、透光性に優れたエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂などの有機物や硝子など無機物があげられる。また、封止部材140に発光素子110からの光を拡散させる目的で酸化アルミニウム、酸化バリウム、チタン酸バリウム、酸化珪素などを含有させることもできる。同様に外来光や発光素子110からの不要な波長をカットするフィルター効果を持たすために各種着色剤を添加させることもできる。さらに、発光素子110からの発光波長によって励起され蛍光を発する蛍光物質を含有さ、色変換部材とすることもできる。また、封止樹脂の内部応力を緩和させる各種フィラーを含有させることもできる。
・・・(中略)・・・
【実施例1】
【0036】
実施例1として、図1および図2に示す発光装置を製造する。
(第一の工程)
【0037】
以下、本発明に係る一実施例について詳述する。なお、本発明は、以下に示す発光装置の実施例のみに限定されることなく、受光装置など他の半導体装置に適用できることは言うまでもない。
【0038】
図1は、本実施例における発光装置の模式的な平面図を示す。また、図2は、本実施例における発光装置の模式的な断面図を示す。なお、図2は、図1のX-X線における断面図である。本実施例における発光装置は、2つの半導体発光素子110が同一の支持体(本実施例では、「サブマウント」と呼ぶこととする。)にフリップチップ実装され、封止部材にて被覆されてなる。
【0039】
発光素子110として、平面形状が1mm角の略直方体からなり、上面に正および負の電極をそれぞれ2対有する発光ダイオードを用いる。前記発光素子110は、青色系に発光する窒化物系半導体からなり、前記正および負電極の表面高さは、略平行となるように調整されている。
【0040】
発光素子110の電極形成面側に、各正電極表面には平面視が略楕円形状となるよう3つに分離されたAu-Sn膜を、各負電極表面には分離されていない楕円形状のAu-Sn膜を形成することが可能となるように開口パターンを有するマスクを載置し、Au-Sn膜を2μmの厚みでスパッタ形成する。
【0041】
次に、AlNからなる支持基板130上に形成された配線パターン131a,131b上に、フラックスを塗布する。ここで、フラックスの厚みは、前記導電膜120a,120bの厚みより厚く塗布することが好ましい。このようにフラックスが形成された支持基板130上に発光素子110の電極形成面側を対向させ、前記フラックス中に前記Au-Sn膜を埋没させて仮固定する。
【0042】
次に、上記支持基板と、340℃のリフロー炉に通しAu-Sn膜120a,120bの表面を溶融し、それぞれ配線パターン130a,130bの表面に接着融接合させる。
【0043】
その後、グリコールエーテルにてフラックスを洗浄する。
【0044】
次に、発光素子100を封止するようにシリコーン樹脂をスクリーン印刷し、封止部材140を形成する。
【0045】
このようにして得られた発光装置は、熱による各部材間の結合の破壊や変形が生じない、優れた信頼性を有している。」
キ 「
[図:0001424162000001.jpg]
[図:0001424162000002.jpg]
[図:0001424162000003.jpg]
」
(2)引用文献1の記載から当業者が把握できる事項
図2によれば、サブマウント基板130は平板状であることが当業者にとって把握できる。
(3)引用発明の認定
前記(1)及び(2)によれば、引用文献1には、実施の形態1(図1及び2)に係る発光装置100について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「同一面側に正電極111aおよび負電極111bを有する発光素子110と、表面に正極の導電配線131aと負極の導電配線131bとからなる配線パターンを有するサブマウント基板130と、を有し、前記発光素子110が前記サブマウント基板130上に導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装され、透光性樹脂140にて封止されている発光装置100であって、(【0014】)
発光素子110は、発光ダイオードチップ(LEDチップ)であり、(【0015】)
サブマウント基板130表面には、正極の導電配線131aと負極の導電配線131bとがパターン形成されており、(【0025】)
透光性樹脂140は、前記発光素子110と前記サブマウント基板130との間にも介在しており、(【0031】)
透光性樹脂140の材料として、耐光性、透光性に優れたエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂などの有機物があげられ、(【0033】)
導電膜120aは、正電極111aの表面に分配して設けられており、正電極111aと前記導電膜120aとの接合面積は、導電膜120aと配線パターン131aとの接合面積よりも大きく、このように導電膜120a,120bと各接合部材との接合面積の割合を特定することにより、導電膜120a,120bの膜厚が薄くとも高い接合強度を得ることができ、(【0027】)
サブマウント基板130は平板状である、(前記(2))
発光装置100。」
2 対比並びに一致点及び相違点の認定
(1)本願発明と引用発明の対比
ア 本願発明の「半導体発光装置」との特定事項について
引用発明の「発光装置100」は、「発光ダイオードチップ(LEDチップ)」を含むものであるから、本願発明の「半導体発光装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「半導体発光装置」の発明である点で一致する。
イ 本願発明の「波長360nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「発光装置100」は、「発光ダイオードチップ(LEDチップ)であ」る「発光素子110」を備えているところ、当該「発光素子110」は、本願発明の「半導体発光素子」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、所定の波長の光を「発光する半導体発光素子と、」を備える点で共通するが、所定の波長の光が、本願発明は「波長360nm以下の紫外線」であるのに対し、引用発明は特定されていない。
ウ 本願発明の「前記半導体発光素子を収容する窪部を有するパッケージ基板と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「発光装置100」は、「発光ダイオードチップ(LEDチップ)であ」る「発光素子110」が「前記サブマウント基板130上に導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装され、透光性樹脂140にて封止されている」ことから、いわゆるLEDパッケージを構成しているということができ、そのため、当該「サブマウント基板130」は、本願発明の「パッケージ基板」に相当する。
そして、本願発明の「パッケージ基板」と引用発明の「サブマウント基板130」は、「前記半導体発光素子を」配置する部位を有する点で共通する。
そうすると、本願発明と引用発明は、「前記半導体発光素子を」配置する部位を有する「パッケージ基板と、」を備える点で共通するが、前記半導体発光素子を配置する部位が、本願発明は「前記半導体素子を収容する窪部」であるのに対し、引用発明は「平板状」の「サブマウント基板130」上の部位である。
エ 本願発明の「前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間に形成され、前記半導体発光素子と前記窪部を有するパッケージ基板とを電気的に接続する複数のバンプと、」「を備え、」「前記複数のバンプは、スタッドバンプである、」との特定事項について
(ア)引用発明の「発光装置100」は、「前記発光素子110が前記サブマウント基板130上に導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装され」ており、当該「サブマウント基板130」は、「表面に正極の導電配線131aと負極の導電配線131bとからなる配線パターンを有する」ことから、当該「発光素子110」の「サブマウント基板130」に対する実装は、「配線パターン」が有された「サブマウント基板130」上に、「導電膜120a,120b」を介したフリップチップ実装ということになる。そして、当該「導電膜120a」は、「正電極111aの表面に分配して設けられ」ることから、複数存在するといえる。
そうすると、本願発明の「バンプ」と引用発明の当該「導電膜120a,120b」は、電気的接続部材である点で共通し、「複数の」ものである点でも共通する。
(イ)また、引用発明における「発光素子110」の「正極111aおよび負電極111b」を有する「同一面側」の面が、本願発明の「半導体発光素子の下面」に相当する。
そうすると、前記(ア)及び前記イにも照らせば、本願発明と引用発明は、「前記半導体発光素子の下面」とパッケージ基板の半導体発光素子を配置する部位上の「面との間に形成され、前記半導体発光素子」と前記部位を有する「パッケージ基板とを電気的に接続」する「複数の」電気的接続部材とを備える点で共通する。
オ 本願発明の「前記窪部に充填され、樹脂により形成された、前記半導体発光素子を封止する封止材と、」「を備え、」「前記封止材は、前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間にも充填されており、」「前記封止材は、シリコーン樹脂であり、」との特定事項について
引用発明の「透光性樹脂140」は、「発光装置100」を「封止」するものであるから、本願発明の「封止材」に相当し、本願発明でいう「樹脂により形成された、前記半導体発光素子を封止する」ものといえる。
また、当該「透光性樹脂140」は、「前記発光素子110と前記サブマウント基板130との間にも介在して」いるから、前記イ~エにも照らせば、本願発明と引用発明は、「前記封止材は、前記半導体発光素子の下面」とパッケージ基板の半導体発光素子を配置する部位上の面「との間にも充填されて」いる点で共通する。
カ 本願発明の「前記半導体発光素子の下面と前記窪部の底面との間の距離は、5μm以上50μm以下である、」との特定事項について
引用発明は、「透光性樹脂140」が、「前記発光素子110と前記サブマウント基板130との間にも介在」していることから明らかなように、「発光素子110」と「サブマウント基板130」とが所定の距離を有しているといえる。
そうすると、前記イ~エにも照らせば、本願発明と引用発明は、「前記半導体発光素子の下面と」パッケージ基板の半導体発光素子を配置する部位上の面「との間の距離」が、所定の距離である点で共通する。
(2)一致点及び相違点の認定
以上の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、
「 所定の波長の光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を配置する部位を有するパッケージ基板と、
前記半導体発光素子の下面と前記部位上の面との間に形成され、前記半導体発光素子と前記部位を有するパッケージ基板とを電気的に接続する複数の電気的接続部材と、
樹脂により形成された、前記半導体発光素子を封止する封止材と、
を備え、
前記封止材は、前記半導体発光素子の下面と前記部位上の面との間にも充填されており、
前記半導体発光素子の下面と前記部位上の面との間の距離は、所定の距離である、
半導体発光装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「半導体発光素子」が発光する所定の波長の光が、本願発明は、波長360nm以下の紫外線であるのに対し、引用発明は、特定されていない点。
(相違点2)
「前記半導体発光素子」と前記部位を有する「パッケージ基板とを電気的に接続する複数の」電気的接続部材が、本願発明は、「スタッドバンプ」であるのに対して、引用発明は、「導電膜120a,120b」であり、「正電極111aと前記導電膜120aとの接合面積は、導電膜120aと配線パターン131aとの接合面積よりも大き」い点。
(相違点3)
「パッケージ基板」に有される「前記半導体発光素子」を配置する部位が、本願発明は、半導体発光素子を収容する窪部であるのに対し、引用発明は、「平板状」の「サブマウント基板130」上の部位であり、
複数の電気的接続部材が「前記半導体発光素子の下面」との間に形成されることになる「パッケージ基板」に有される前記部位上の面が、本願発明は、「前記窪部の底面」であるのに対し、引用発明は、「サブマウント基板130上」の表面であり、
前記半導体発光素子の下面と前記部位上の面との間にも充填されている「封止材」が、本願発明は、「前記窪部に充填され」るとともに、前記部位上の面が「前記窪部の底面」であるのに対し、引用発明は、「前記発光素子110が前記サブマウント基板130上に導電膜120a,120bを介してフリップチップ実装され、透光性樹脂140にて封止されて」いるとともに、「透光性樹脂140は、前記発光素子110と前記サブマウント基板130との間にも介在して」いるものである点。
(相違点4)
本願発明は、半導体発光素子のダイシェア強度が、0.50kgf以上であるのに対して、引用発明は、発光素子のダイシェア強度が不明である点。
(相違点5)
「半導体発光素子」の下面と、「半導体発光素子」を配置する部位上の面との間の距離について、本願発明は、5μm以上50μm以下であるのに対し、引用発明は、不明である点。
(相違点6)
「封止材」が、本願発明は、「シリコーン樹脂」であるのに対して、引用発明は、「耐光性、透光性に優れたエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂などの有機物」があげられる点。
3 判断
前記相違点について検討する。
(1)相違点1及び6について
引用発明の「発光素子110」は、「発光ダイオードチップ(LEDチップ)」であるところ、LEDチップの発光波長をどのようにするかは当業者が適宜設定すべきものであるし、LEDチップの波長として360nm以下のものも通常に存在する。
そして、引用発明の封止部材140の材料として例示されるシリコーン樹脂は、「耐光性、透光性に優れた」ものであるし、紫外領域の発光波長のLEDチップに対する封止材として例示するまでもなく周知のものである。
そうすると、引用発明の「発光素子110」の発光波長として360nm以下の紫外領域の波長を選択するとともに、「封止材料140」の材料として、シリコーン樹脂を選択することは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、引用発明から出発した当業者は、相違点1及び6に係る本願発明の構成に適宜至るといえる。
(2)相違点2について
ア 相違点2に係る本願発明の構成の解釈
相違点2に係る本願発明の構成は、「前記半導体発光素子」と前記部位を有する「パッケージ基板とを電気的に接続する複数の」電気的接続部材が「スタッドバンプ」であることであるところ、本願発明は「半導体発光装置」に係る発明であるから、「スタッドバンプ」に係る特定は、「半導体発光装置」が完成する前の状態ではなく、「半導体発光装置」が完成した状態を念頭に解釈すべきである。そして、このような本願発明では、以下のとおり、電気的接続部材は、「スタッドバンプ」がもともと有する形状を有さないと解され、具体的には、電気的接続部材の半導体発光素子側の接触面積が、電気的接続部材のパッケージ基板側の接触面積よりも大きい形状となっている場合を含んでいるといえる。
すなわち、本願発明に係る「半導体発光装置」では、「半導体発光素子」が既に「パッケージ基板」に「電気的に接続」されていることになる。そして、このような電気的接続について、本願の明細書及び図面(以下「本願明細書等」という。)には、スタッドバンプがパッケージ基板3の底面3dに形成されること(【0031】)、半導体発光素子2をパッケージ基板3上に載置したのち、1~3kgf程度の荷重を印加しながら、超音波振動を半導体発光素子2に印加することで、パッケージ基板3に半導体発光素子2がバンプを介して電気的に接続されること(【0032】)が記載されている。さらに、本願明細書等には、「スタッドバンプ」について、接着前の状態において、直径80±10μm程度の突起のついた略円盤状の形状を有していること、及び、接着後の状態において、概ね直径100μm程度であることが記載されており(【0018】)、また、半導体発光素子2の下面2aとパッケージ基板3の実装面3dとの間の距離hは、5μm以上50μm以下であることが記載されている(【0017】)。
このように、本願明細書等には、「スタッドバンプ」の接着後の状態(電気的接続後の状態)が接着前の状態(電気的接続前の状態)と比べて、径が大きくなっていることが記載されているといえるから、本願発明では、電気的接続部材は、「スタッドバンプ」がもともと有する形状を有さないと解される。そして、本願明細書等には、電気的接続について、上記のとおり、「パッケージ基板」の底面に形成された「スタッドバンプ」に対して、「半導体発光素子」を「パッケージ基板」上に載置した後に、荷重を印加しながら「半導体発光素子」に超音波振動を印加することが記載されているところ、かかる製造方法によれば、超音波振動の印加側から遠いパッケージ基板側のスタッドバンプの部位よりも、超音波振動の印加側から近い半導体発光素子側のスタッドバンプの部位の方が、超音波振動による摩擦の影響を大きく受け、溶融の度合いも大きくなると解される。そうすると、本願発明では、電気的接続後の「スタッドバンプ」の形状について、溶融の度合いが大きいスタッドバンプの半導体発光素子側の接触面積が、溶融の度合いが小さいスタッドバンプのパッケージ基板側の接触面積よりも大きくなる態様を少なくとも含んでいるといえる。
イ 判断
(ア)これを引用発明についてみると、引用発明の「導電膜120a,120b」は、「正電極111aと前記導電膜120aとの接合面積は、導電膜120aと配線パターン131aとの接合面積よりも大き」いものであるところ、このような形状は、前記アで検討した、本願発明における、完成後の「半導体発光装置」が有し得る「スタッドバンプ」の形状に含まれる。
そうすると、引用発明の「導電膜120a,120b」は、本願発明の「半導体発光装置」が完成した状態における「スタッドバンプ」に相当するといえる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
(イ)仮に、「スタッドバンプ」に通常Auが用いられることを考慮して、本願発明の「スタッドバンプ」という特定により、電気的接続部材の材料(Au)も特定されていると解したとしても、当業者であればそのような構成に容易に至る。
すなわち、引用文献1には、「本発明の導電膜は、導電性を有していれば特に限定されず、導電ペースト、ハンダ材料、焼結性Ag粒子ペースト、異方導電性ペースト、などが挙げられる。」と記載されており(【0029】)、導電性を有する限り、導電膜の材料は特に限定されておらず、導電性を有する各種の材料を用いることができるものと認められる。そうすると、引用発明から出発した当業者が、「導電膜120a、120b」の材料として周知の材料であるAuを用いることは、適宜選択し得たことである。
(ウ)以上によれば、相違点2は実質的な相違点ではないか、仮に実質的な相違点であるとしても、当業者が適宜なし得たことである。
(3)相違点3について
半導体発光素子を、窪部を有するパッケージ基板に収容することは、本願出願前に周知の技術である(例えば、引用文献2の【0024】、【図1】等参照。)ことから、引用発明の「サブマウント基板130」に窪部を設け、その窪部に「発光素子110」を収容させることは、当業者が適宜なし得たことである。その際に、引用発明の「導電膜120a,120b」を窪部に設けることや、「透光性樹脂140」を窪部に充填させるとともに「発光素子110」の下面と窪部の底面との間に形成させるようにすることは、当業者が当然に行う設計変更にすぎないといえる。
したがって、引用発明から出発した当業者は、引用発明及び周知技術に基づいて相違点3に係る本願発明の構成に適宜至るといえる。
(4)相違点5について
ア 引用発明の技術的意義について
検討に先立ち、引用発明の技術的意義を確認すると、引用発明は、従来の発光装置では、LED素子と配線パターンとがある程度の高さを有するAuバンプにて接合されており、接合強度が高く優れた信頼性を有していた(【0005】)が、Auバンプの高さのため、LED素子と配線パターンとの間に多くの封止樹脂が介在し、この介在部に設けられた樹脂が熱ストレスを受けると、配線パターン側からLED素子側へ応力が発生し、この応力が、介在部の樹脂量が多い場合や発光装置を厳しい温度変化を伴う環境下にて使用する場合に、LED素子と封止樹脂との密着性やLED素子と配線パターンとの接合性に悪影響を与えるほど大きくなり、水分の吸収による信頼性の低下やLED素子の接合不良の発生による不灯が生じるという課題(【0006】)があったことから、この課題を解決するために、発光素子の電極の表面に分配して設けられた導電膜と配線パターンを有する支持体とを有し、電極と導電膜との接合面積は、導電膜と配線パターンとの接合面積よりも大きくするという構成を採用したものであって(【0008】)、このように接合面積を特定することにより、導電膜の膜厚が薄くとも高い接合強度を得ることができるようにする(【0027】)とともに、平面積の大きい電極側に設ける導電膜を分配することにより、導電膜の凝集による最大膜厚の変化を抑制し、両電極の接合性を高め(【0028】)、さらに、介在部と支持体との接触面積が発光素子との接触面積よりも大きいことにより、介在部が受けた熱ストレスを支持体側へ効率よく逃がすことが可能になる(【0031】)ということに技術的意義がある発明であると認められる。
イ 検討
前記アで認定した引用発明の技術的意義によれば、引用発明において「導電膜」を用いた技術的意味は、Auバンプを用いた従来例では、その高さのため多くの封止樹脂が介在したことにより生じる課題を解決するということにあると認められるところ、「Auバンプ」の(接着後の)高さは、技術常識に照らして、数十μm程度はあると考えられる(なお、本願明細書等の【0017】に、半導体発光素子2の下面2aとパッケージ基板3の実装面3dとの間の距離hが5μm以上50μm以下であり、好ましくは20μm程度であるということも、それを前提としていると解される。)。
そして、「導電膜」の厚さについて、引用文献1の請求項1には特定が存在しない一方で、当該請求項1に従属する請求項3及びそれに関連する【0029】には、発光素子の平面積の平方根の0.1%~0.5%であることが好ましいと記載されており、この技術的意味は、この範囲より膜厚が少なすぎると接合不良が発生し、この範囲より膜厚が厚い場合は、導電膜が隣接する電極に接触する可能性が高まるとともに成膜コストの高まりによって経済的でなくなることである(【0029】)。加えて、引用文献1には、実施例1において、発光素子として「平面形状が1mm角の直方体」からなり(【0039】)、導電膜であるAu-Sn膜の厚さが「2μm」であることが記載されており、この場合では、発光素子の平面積の平方根の0.1%~0.5%は、1μm~5μmとなる。
このように、引用文献1には、発光素子の平面積が1mm2の場合の導電膜の厚さについて、「2μm」の値が記載されている一方で、接合不良及び経済性の観点から、1μm~5μmであるのが好ましいことも記載されているといえるのであり、しかも、引用発明の技術的意義に照らして、導電膜の厚さは、Auバンプのサイズである数十μm程度よりは小さければよいことから、引用発明の「導電膜」の厚さは、発光素子の平面積が1mm2の場合であっても、5μm以上とすることを排除しないといえる。
そうすると、引用発明から出発した当業者が、相違点5に係る本願発明の構成に至ることは、特に接合不良をさける観点から、適宜なし得たことである。
(5)相違点4について
前記(4)アによれば、引用発明は、発光素子110と配線パターン131aとの間に設けられた透光性樹脂140(封止樹脂)に熱ストレスに起因する応力が生じても、発光素子110と配線パターン131aに接合不良が生じない程度に高い接合強度を有するものといえるから、その結果として、発光素子110のダイシェア強度も十分に大きいはずのものであり、そのため、相違点4は実質的ではない。
仮に相違点4が実質的であったとしても、上記のとおり、引用発明は、発光素子110と配線パターン131aとの間の接合強度を、透光性樹脂140に熱ストレスに起因する応力が生じても、接合不良が生じない程度に高くすることを目指すものといってよいから、上記接合強度を高くすることは当業者が適宜なし得たことであり、その結果として、当業者は相違点4に係る本願発明の構成に至る。
(6)本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願発明の構成として、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が予測し得た範囲を超える顕著なものであるとは認められない。
(7)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、引用発明の「導電膜120a、120b」は、本願発明の「スタッドバンプ」に相当しない旨主張し、その根拠として、引用発明を開示する引用文献1では、「導電膜」と「バンプ」が区別して記載されていることを挙げる。
しかしながら、前記(2)アで検討したとおり、本願発明の「スタッドバンプ」は、「半導体発光装置」が完成した状態を念頭に解釈すべきであり、この解釈を前提に検討すると、請求人が主張する点が、実質的な相違点にならず、また、仮に実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たものであることは、前記(2)イで説示したとおりである。
さらに、審判請求人は、引用発明の「導電膜120a、120b」を本願発明の「スタッドバンプ」に置換することは当業者にとって容易ではない旨主張するが、上記のとおりである。
イ 審判請求人は、引用発明から出発した当業者は、相違点4に係る前記半導体発光素子の下面と前記部位上の面との間の距離が5μm以上50μm以下であるという本願発明の構成に至らない旨主張し、その根拠として、引用発明では、発光素子の電極と配線パターンとの接合を膜厚の薄い導電膜にて行ったこと、換言すると、「通常程度」よりも特別小さくしたことが1つの特徴であり、この距離を広くする変更は、阻害要因があることを挙げるが、前記(4)で説示したとおりである。
ウ 審判請求人は、本願発明は、スタッドバンプが極めて外れやすいという前提に関連する相違点2及び相違点6に係る構成((i)電気的接続部材がスタッドバンプであること、(ii)封止材がシリコーン樹脂であること)を有しており、この前提に係る課題を解決する構成として、相違点3~5に係る構成((iii)半導体発光装置のダイシェア強度が0.50kgf以上であること、(iv)封止材が半導体発光素子の下面と窪部の底面との間にも充填されていること、(v)半導体発光素子の下面と窪部の底面との間の距離が5μm以上50μm以下であること)を備えたものであるのであり、このような構成を兼ね備えることは、当業者が容易に想到し得たものではない旨主張する。
本願明細書等の記載によれば、本願発明の技術的意義は、発光波長が360nmよりも短い紫外光を発するLEDを封止する場合に封止樹脂として用いるシリコーン樹脂(【0020】・【0022】)は、熱膨張係数が比較的大きい等の理由で、半導体発光素子とパッケージ基板との間に封止樹脂が加熱実装工程において膨張し、半導体発光素子が押し上げられ(【0007】・【0008】)、また、スタッドバンプ実装では半導体発光素子のダイシェア強度が低くなりバンプが外れやすい(【0009】)という課題があることから、その課題を解決するために、半導体発光素子のダイシェア強度を0.50kgf以上とした(【0011】)ものであって、そのようにしたことにより、封止材として樹脂を用いる場合であっても、通電不良を抑制して信頼性を高めることが可能な、発光波長が360nm以下の紫外線を発光し、かつ、高出力の半導体発光装置を提供できる(【0012】)ことにあると認められる。そして、半導体発光素子の下面と窪部の底面との間の距離が5μm以上50μm以下であることの技術的意味については、本願明細書等には明記はないものの、前記(4)イで説示したとおり、本願発明が電気的接続部材として「スタッドバンプ」を用いたことによる結果にとどまると解される。
このような技術的意義及び本願明細書等の記載によれば、本願発明は、請求人が主張するような(i)及び(ii)を前提として(iii)~(v)を採用したというものではなく、(i)電気的接続部材がスタッドバンプであること、(ii)封止材がシリコーン樹脂であること、(iv)封止材が半導体発光素子の下面と窪部の底面との間にも充填されていること、(v)半導体発光素子の下面と窪部の底面との間の距離が5μm以上50μm以下であることを前提として、バンプが外れやすいという課題を解決するために、(iii)半導体発光装置のダイシェア強度が0.50kgf以上であるという構成を採用したものと評価されるものである。そして、前記(5)で説示したとおり、引用発明は、発光素子110と配線パターン131aとの間の接合強度を、透光性樹脂140に熱ストレスに起因する応力が生じても、接合不良が生じない程度に高くすることを目指すものであるから、本願発明と課題及び解決手段は共通しているといえるのであり、そうである以上、請求人が主張する相違は、単なる前提の相違にすぎず、これをもって、容易想到性を否定したり、本願発明の顕著な効果を認めたりするのは相当ではない。
4 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-021703