特許拒絶査定不服審判
2024-000678
半導体発光装置
- 審判番号
- 2024-000678
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-047461
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2025年07月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日機装株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人平田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 小澤 尚由
- 分類
- P18 .121-WZ (H10H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 47461「半導体発光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月27日出願公開、特開2021-150428〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月18日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和 5年 5月25日付け:拒絶理由通知書
同年 7月25日 :手続補正書及び意見書の提出
同年10月 5日付け:拒絶査定
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
令和 6年 1月16日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 3月28日付け:前置報告書
令和 7年 3月31日付け:拒絶理由通知書(以下、同書で通知された拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
同年 5月27日 :手続補正書(以下、同書による補正を「本件補正」という。)及び意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。
<本願発明>
「紫外線を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が実装される実装基板と、
前記半導体発光素子を前記実装基板に電気的に接続するバンプ材と、
前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域を封止する第1封止部材と、
前記第1封止部材上に設けられ、前記半導体発光素子を封止する第2封止部材と、
を備え、
前記第1封止部材は、フィラー材が添加された樹脂により形成されており、
前記フィラー材は、前記第1封止部材における、前記半導体発光素子と前記実装基板との間にも配されており、
前記第1封止部材は、母材として、前記紫外線の光透過率が75%以上の樹脂により形成されており、
前記母材は、シリコーン樹脂を主成分とする樹脂であり、
前記第1封止部材の線膨張係数は、1×10-4/K以下である、半導体発光装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明は、本件補正前(令和6年1月16日に提出された手続補正書による補正後)の請求項1に係る発明を補正したものであるところ、本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した当審拒絶理由は、次に概要を示す理由を含むものである。
1.(進歩性)請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2004-172160号公報
2.特開2014-72282号公報
3.特開2009-32828号公報
4.特開2015-12081号公報
第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された引用文献1(特開2004-172160号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、他の引用文献についても同様である。
(ア) 特許請求の範囲
「【請求項1】
LEDチップと、
導電部材とを備え、
前記LEDチップの電極と前記導電部材とはバンプ構造により電気的に接続され、
前記LEDチップと前記導電部材間に前記バンプを覆うように樹脂が充填され、
前記LEDチップおよび前記樹脂が透明樹脂で覆われる発光素子であって、
前記バンプの線膨張係数は前記透明樹脂の線膨張係数より小さく、且つ前記樹脂の線膨張係数は前記透明樹脂の線膨張係数より小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記樹脂の線膨張係数は前記バンプの線膨張係数と同等であること特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記LEDチップの発光面の外周に光反射ケースを配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記樹脂にフィラーを含有させたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記導電部材は金属製リードフレームまたはプリント基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発光素子。」
(イ) 発明が解決しようとする課題(【0003】~【0006】)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の発光素子において、透明樹脂として、一般にはエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の線膨張係数は70PPM/℃~140PPM/℃である。一方、LEDチップとリードフレームとの接続している、たとえばAuバンプの線膨張係数は14PPM/℃である。すなわち、Auバンプの線膨張係数と、それを覆うエポキシ樹脂の線膨張係数との間に大きな差がある。
【0004】
たとえば、発光素子が車両の計器盤の照明用光源として用いられた場合、計器盤の温度は、真夏の炎天下駐車中、あるいは冬季暖房使用中にはかなりの高温になる。一方、冬季夜間駐車中においては0℃以下になることもあり得る。したがって、車両に用いた場合の環境温度差は100℃以上となることもある。
【0005】
このため、発光素子の使用中において環境温度が大きく変化する場合、周囲のエポキシ樹脂の膨張・収縮によってAuバンプに圧縮応力あるいは引っ張り応力が発生し、さらに、この応力が繰返し作用すると、Auバンプが疲労破断する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、使用環境温度差が大きい場合においてバンプの疲労破断を防止できる発光素子を提供することにある。」
(ウ) 課題を解決するための手段(【0007】~【0012】)
「【0008】
本発明の請求項1に記載の発光素子は、LEDチップと、導電部材とを備え、LEDチップの電極と導電部材とはバンプ構造により電気的に接続され、LEDチップと導電部材間にバンプを覆うように樹脂が充填され、LEDチップおよび樹脂が透明樹脂で覆われる発光素子であって、バンプの線膨張係数は透明樹脂の線膨張係数より小さく、且つ樹脂の線膨張係数は透明樹脂の線膨張係数より小さい構成としている。すなわち、従来の発光素子においては、バンプは直接透明樹脂に覆われているが、本発明の請求項1に記載の発光素子では、バンプを樹脂で覆い、さらにその外側を透明樹脂で覆っている。これにより、バンプの線膨張係数とバンプを直接覆う部材の線膨張係数との差を従来の発光素子の場合よりも小さくして、発光素子の周囲温度が変化した場合にバンプに生じる圧縮あるいは引っ張り応力を低減することができる。したがって、使用環境温度差が大きい場合においてもバンプの疲労破断を防止できる発光素子を実現できる。
【0009】
請求項2に記載の発光素子は、樹脂の線膨張係数はバンプの線膨張係数と同等としている。これにより、バンプの線膨張係数とバンプを直接覆う樹脂の線膨張係数との差をほとんどなくして、発光素子の周囲温度が変化した場合にバンプに生じる圧縮あるいは引っ張り応力をほとんど0とすることができる。したがって、使用環境温度差が大きい場合においてもバンプの疲労破断を確実に防止できる発光素子を実現できる。
【0010】
請求項3に記載の発光素子は、LEDチップの発光面の外周に光反射ケースを配置する構成としている。これにより、LEDチップから発射される光を高効率出所定方向に向けて照射することができる。
【0011】
請求項4に記載の発光素子は、樹脂にフィラーを含有させた構成としている。これにより、容易に樹脂の線膨張係数を小さくすることができる。また、フィラーの含有率を変えることにより樹脂の線膨張係数を所望の値に調整することができる。
【0012】
請求項5に記載の発光素子は、導電部材は金属製リードフレームまたはプリント基板である構成としている。これにより、発光素子を容易に外部と電気的に接続することができる。」
(エ) 第1実施形態(【0014】~【0038】、【図1】~【図3】)
「【0014】
(第1実施形態)
…(中略)…
【0018】
LEDチップ2は、半導体からなり、P-N接合部(図示せず)を有している。また、図1、図2に示すように、LEDチップ2のP型領域(図示せず)には電極21が、N型領域(図示せず)には電極22がそれぞれ設けられている。電極21を直流電源の+極に、電極22を-極に接続すると、P型領域とN型領域の接合面が発光して、図1の上方に光が照射される。
【0019】
導電部材であるリードフレーム3、4は、たとえば燐青銅の薄板よりなり、その厚さは、たとえば0.2mm程度である。リードフレーム3、4のLEDチップ側(図1における上側)表面31、41にはAg(銀)メッキが施され、リードフレーム3、4の表面31、41を除く全面にはSn(錫)メッキが施されている。リードフレーム3、4は、図1に示すように、それぞれ表面31、41において、LEDチップ2の電極21、22にAu(金)バンプ6を介して電気的に接続されて、LEDチップ2を外部と接続するための配線の機能を果たしている。また、リードフレーム3、4は、絶縁材料、たとえば樹脂からなるリードフレームホルダ5に保持固定されている。
【0020】
LEDチップ2とリードフレーム3、4との間の空間には、樹脂であるアンダーフィル7がAuバンプ6を覆うように充填されている。アンダーフィル7は、たとえばエポキシ樹脂にフィラーとしてたとえば粉末状のガラス(図示せず)を均一に混入させたものである。
【0021】
光反射ケースである反射筒8は、たとえば樹脂等から両端が開口する略筒状に形成されている。反射筒8は、図1に示すように、その一端側においてリードフレーム3、4の上面にLEDチップ2を取囲むように取り付けられている。反射筒8は、LEDチップ2から放射状に出射される光を図1の上方に向けて反射して、図1の上方向における照度を高める機能を果たしている。
【0022】
反射筒8の内側には、図1に示すように、LEDチップ2およびアンダーフィル7を覆うように透明樹脂9が充填されている。透明樹脂9は、たとえばエポキシ樹脂が用いられ、これによりLEDチップ2を埃や水分等から保護している。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態による発光素子1の特徴である、アンダーフィル7の作用・効果について説明する。
【0024】
従来の発光素子の場合、アンダーフィル7は無く、LEDチップとリードフレームとの間の空間には、LEDチップの発光面側に充填される透明樹脂、たとえばエポキシ樹脂が回り込んで充填されている。したがって、LEDチップの電極とリードフレームとを接続しているAuバンプも透明樹脂により覆われている。
【0025】
ところで、エポキシ樹脂の線膨張係数は70PPM/℃~140PPM/℃であり、Auバンプの線膨張係数は14PPM/℃である。すなわち、Auバンプの線膨張係数と、それを覆うエポキシ樹脂の線膨張係数との間に大きな差がある。
【0026】
このため、発光素子の使用中において環境温度が大きく変化すると、周囲のエポキシ樹脂の膨張・収縮によってAuバンプに圧縮応力あるいは引っ張り応力が発生し、さらに、この応力が繰返し作用するとAuバンプが疲労破断する可能性があるという問題があった。
【0027】
これに対し、本発明の第1実施形態による発光素子1においては、LEDチップ2とリードフレーム3、4との間の空間には、透明樹脂9に替えてアンダーフィル7が充填されている。このアンダーフィル7は、エポキシ樹脂にフィラーとして粉末状のガラス(図示せず)を均一に混入させたものである。ガラスの線膨張係数は略1PPM/℃とエポキシ樹脂に比べて遥かに小さいため、フィラーを添加することによりアンダーフィル7の線膨張係数を小さくすることができる。
【0028】
本発明の第1実施形態による発光素子1の場合、体積で50%のフィラーを添加し、それにより、アンダーフィル7の線膨張係数は約25PPM/℃に低下している。すなわち、Auバンプ6の線膨張係数と、それを覆うアンダーフィル7の線膨張係数との差を、従来の発光素子に比べて小さくしている。したがって、発光素子1の使用中において環境温度が大きく変化しても、Auバンプ6の線膨張係数とアンダーフィル7の線膨張係数との差によりAuバンプ6に生じる圧縮応力あるいは引っ張り応力の大きさを従来の発光素子の場合より小さくできるので、Auバンプ6が疲労破断することを確実に防止することができる。
【0029】
なお、以上説明した、本発明の第1実施形態による発光素子1においては、アンダーフィル7に添加するフィラーとして粉末状のガラスを用いているが、粉末状のガラスに限る必要は無く、線膨張係数が小さく且つ非導電性の材料であれば他の材質であってもよい。たとえば、各種セラミックス等でもよい。さらに、アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよい。
…(後略)」
「【図1】
[図:0001427391000001.jpg]
【図2】
[図:0001427391000002.jpg]
」
(オ) 第2実施形態(【0039】~【0042】、【図4】
「【0039】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態による発光素子1の断面図を示す。
【0040】
本発明の第2実施形態による発光素子1においては、導電部材として、リードフレーム3、4に替えてプリント基板10を用いている。
【0041】
LEDチップ2の電極21、22は、図4に示すように、プリント基板10の導電パタン101、102にAuバンプ6を介してそれぞれ接続されている。そして、LEDチップ2とプリント基板10の間には、第1実施形態の場合と同様に、アンダーフィル7が充填されている。
【0042】
本発明の第2実施形態による発光素子1においても、第1実施形態の場合と同様に、Auバンプ6が疲労破断することを確実に防止することができる。」
「【図4】
[図:0001427391000003.jpg]
」
(カ) その他の記載
「【0045】
また、本発明の第1実施形態および第2実施形態による発光素子1において、透明樹脂9にエポキシ樹脂を用いているが、他の樹脂であってもよい。」
イ 引用文献1の記載事項から当業者が把握できる事項
(ア) 第2実施形態についての記載である【0040】には、「本発明の第2実施形態による発光素子1においては、導電部材として、リードフレーム3、4に替えてプリント基板10を用いている。」と記載されていることから、第2実施形態は、第1実施形態において、導電部材として、リードフレーム3、4に替えてプリント基板10を用いたものであると認められるところ、図4に示された第2実施形態に係る発光素子1に関して、導電部材以外の構成については、第1実施形態に係る発光素子1に関する【0014】~【0038】の記載を参照できることを、当業者は把握できる。
(イ) 前記(ア)を踏まえれば、第2実施形態は、特許請求の範囲の【請求項1】~【請求項4】に対応するとともに、【請求項5】の「前記導電部材は」「プリント基板である」との構成に対応する実施形態であることを、当業者は把握できる。
したがって、当業者は、特許請求の範囲の次の構成は、それぞれ、第2実施形態の次の構成に対応することを把握することができる。
特許請求の範囲 第2実施形態
発光素子 発光素子1
LEDチップ LEDチップ2
導電部材 プリント基板10
電極 電極21、22
バンプ Auバンプ6
樹脂 アンダーフィル7
透明樹脂 透明樹脂9
光反射ケース 反射筒8
フィラー フィラー
(ウ) 前記(ア)を考慮しつつ、【0021】の「光反射ケースである反射筒8は、たとえば樹脂等から両端が開口する略筒状に形成されている。反射筒8は、図1に示すように、その一端側においてリードフレーム3、4の上面にLEDチップ2を取囲むように取り付けられている。反射筒8は、LEDチップ2から放射状に出射される光を図1の上方に向けて反射して、図1の上方向における照度を高める機能を果たしている。」との記載及び【図1】と【図4】の対比から、当業者は、第2実施形態において、反射筒8は、たとえば樹脂等から両端が開口する略筒状に形成されており、反射筒8は、その一端側においてプリント基板10の上面にLEDチップ2を取囲むように取り付けられており、反射筒8は、LEDチップ2から放射状に出射される光を上方に向けて反射して、上方向における照度を高める機能を果たしている」ことを把握することができる。
ウ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項及び前記イの当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献1には、図4に示される第2実施形態に係る発光素子1に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号を参考までに括弧内に付してある。)。
<引用発明>
「使用環境温度差が大きい場合においてバンプの疲労破断を防止できる発光素子であって、(【0006】)
発光素子1は、
LEDチップ2と、
プリント基板10とを備え、
前記LEDチップ2の電極21、22と前記プリント基板10とはAuバンプ6構造により電気的に接続され、
前記LEDチップ2と前記プリント基板10間に前記Auバンプ6を覆うようにアンダーフィル7が充填され、
前記LEDチップ2および前記アンダーフィル7が透明樹脂9で覆われ、
前記Auバンプ6の線膨張係数は前記透明樹脂9の線膨張係数より小さく、且つ前記アンダーフィル7の線膨張係数は前記透明樹脂9の線膨張係数より小さく、(【請求項1】、前記イ(イ))
前記アンダーフィル7の線膨張係数は前記Auバンプ6の線膨張係数と同等であり、(【請求項2】、前記イ(イ))
前記LEDチップ2の発光面の外周に反射筒8を配置し、(【請求項3】、前記イ(イ))
前記アンダーフィル7にフィラーを含有させ、(【請求項4】、前記イ(イ))
LEDチップ2は、半導体からなり、P-N接合部を有しており、LEDチップ2のP型領域には電極21が、N型領域には電極22がそれぞれ設けられており、電極21を直流電源の+極に、電極22を-極に接続すると、P型領域とN型領域の接合面が発光して、上方に光が照射され、(【0018】)
アンダーフィル7は、たとえばエポキシ樹脂にフィラーとしてたとえば粉末状のガラスを均一に混入させたものであり、(【0020】)
反射筒8は、たとえば樹脂等から両端が開口する略筒状に形成されており、反射筒8は、その一端側においてプリント基板10の上面にLEDチップ2を取囲むように取り付けられており、反射筒8は、LEDチップ2から放射状に出射される光を上方に向けて反射して、上方向における照度を高める機能を果たしており、(前記イ(ウ))
透明樹脂9は、たとえばエポキシ樹脂が用いられ、(【0022】)
エポキシ樹脂の線膨張係数は70PPM/℃~140PPM/℃であり、(【0025】)
ガラスの線膨張係数は略1PPM/℃とエポキシ樹脂に比べて遥かに小さいため、フィラーを添加することによりアンダーフィル7の線膨張係数を小さくすることができ、(【0027】)
体積で50%のフィラーを添加し、それにより、アンダーフィル7の線膨張係数は約25PPM/℃に低下しており、すなわち、Auバンプ6の線膨張係数と、それを覆うアンダーフィル7の線膨張係数との差を、小さくしており、したがって、発光素子1の使用中において環境温度が大きく変化しても、Auバンプ6の線膨張係数とアンダーフィル7の線膨張係数との差によりAuバンプ6に生じる圧縮応力あるいは引っ張り応力の大きさを小さくできるので、Auバンプ6が疲労破断することを確実に防止することができ(【0028】)
アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよく、(【0029】)
透明樹脂9にエポキシ樹脂を用いているが、他の樹脂であってもよい、(【0045】)
発光素子1」
(2) 引用文献2~4に記載された事項及び周知技術の認定
ア 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された引用文献2(特開2014-72282号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0071】
発光素子31としては、例えば、その発光により封止層33に含有される蛍光体を励起して発光させ、混合色として白色光を得るものが挙げられる。このようなものとしては、波長が360~480nmの紫外光又は青色光を放出する発光ダイオード素子が挙げられ、具体的にはGaNにInを添加したInGaNを発光層とする量子井戸構造のInGaN系発光ダイオード素子等が例示される。
【0072】
封止層33は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料中に蛍光体が分散含有されている。樹脂材料としては、耐光性、耐熱性に優れることからシリコーン樹脂が好ましい。蛍光体は、例えば発光素子31から放出される紫外光又は青色光により励起されて発光し、混合色として白色光を得るものである。このようなものとしては、例えば発光素子31から放出される青色光により励起されて黄色光を放出し、発光素子31から放出される青色光と合わせて白色光を実現するものが挙げられる。また、例えば発光素子31から放出される紫外光により励起されて赤色光、緑色光、青色光等を放出し、これらの混合色として白色光を実現するものが挙げられる。このような蛍光体としては、例えばYAG蛍光体が挙げられる。」
イ 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された引用文献3(特開2009-32828号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0016】
次に、図7に示すように、LEDチップ固定用基板10のLEDチップ収納用凹部14内にLEDチップ20を固定する(チップ・ボンディング)とともに、ワイヤボンディングを行う。LEDチップ20は、従来公知のものを用いてよく、AlGaAs系半導体を用いた赤色LEDチップ、AlGaInP系半導体を用いた黄色LEDチップ、GaP系半導体を用いた緑色LEDチップ、ZnSe系半導体を用いた緑~青色LEDチップ、AlGaInN系半導体を用いた緑色~紫外LEDチップなどが例示される。LEDチップのサイズに限定はなく、例えば、0.3mm角のものから、1mm角を越えるものまで使用できる。」
「【0018】
最後に、LEDチップ20とボンディングワイヤ30を被覆する保護コーティング40を形成する。保護コーティング40は、従来より知られているLEDチップ被覆用の透明な樹脂またはガラスを用いて形成することができる。保護コーティング40は多層構造としてもよい。例えば、LEDチップ20とボンディングワイヤ30を軟質樹脂で埋め込んだうえで、その上から硬質樹脂を被覆して、保護コーティング40を2層構造とすると、ボンディングワイヤ30の断線を防止することができる。軟質樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリ-4-メチルペンテン、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン、ゴム系ポリマーなどが例示される。硬質樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、環状オレフィン系重合体などが例示される。LEDチップ20の発光波長が青色~紫外の場合には、脂環式エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、環状オレフィン重合体などの、劣化による黄変が生じ難い樹脂、あるいは、ガラス材料を用いて保護コーティング40を形成することが好ましい。保護コーティング40内には、LEDチップ20から放出される光を散乱または乱反射させる粒子状物を分散したり、LEDチップ20から放出される光で励起されて、この光とは異なる波長のルミネッセンス光を放出する波長変換物質を分散することができる。保護コーティング40はレンズ機能を有する形状など、種々の形状に成形することができる。」
ウ 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に発行された引用文献4(特開2015-12081号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0019】
(発光素子)
発光素子1は公知のもの、具体的には半導体発光素子を利用でき、特に発光素子構造にGaN系化合物半導体を用いると、蛍光体を効率良く励起できる短波長の可視光や紫外光が発光可能である。具体的な発光ピーク波長は、約240nm~560nm、好ましくは約380nm~470nmである。なお、この他、ZnSe系、InGaAs系、AlInGaP系の半導体発光素子でもよい。」
「【0025】
透光性部材5は、耐熱性の観点から樹脂等の有機材料よりもガラス等の無機材料が好ましいが、本発明では被覆部材3と透光性部材5を嵌合させる必要があるので、容易に所望の形状を形成できる樹脂等の方が好ましい。例えば、シリコーン樹脂で構成されるシート状の透光性部材5とすれば、半硬化の柔軟な状態(例えば、弾性率約1MPa以下)で凹部又は凸部を有する被覆部材3の上面に配置すると、その凹部又は凸部の形状に沿うように変形するため、容易に透光性部材5と凹部又は凸部を嵌合させることができる。その後、樹脂シートは本硬化を行うため、発光装置の完成後は配置時の柔軟な状態に比べて硬質となり、量産性と信頼性が両立できる。シート状でなくても、可撓性を有するものであれば好適に用いることが可能である。例えば、フィルム状とし、ラミネート加工を行うことで透光性部材5を形成してもよい。」
「【0038】
被覆部材3の材料としては、例えば、透光性の基材に光反射性材料を含有させたものを用いることができる。被覆部材が光反射性部材であると、発光素子1からの出射光を側面から漏らすことなく上方の透光性部材へ反射させることができ好ましい。また、被覆部材は光反射性を有さない透光性の基材のみで構成されていてもよく、前述した蛍光体等の波長変換部材を含有していてもかまわない。形成する工程が別であれば、材料が透光性部材5と一部異なっていても全く同じでもよい。なお、透光性部材と被覆部材のどちらか一方に波長変換部材を含有させ、一方は波長変換部材を含有しない透光性とすることで、波長変換時の光の吸収を低減することができ、光取出し効率の高い発光装置とすることができる。基材に含有させる波長変換部材としては、特に蛍光体が好ましく、透光性部材に含有させる波長変換部材として挙げられた前記の蛍光体が好適に用いられる。
【0039】
基材は、例えば樹脂材料であり、さらに透光性のシリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物等を用いることができる。また、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の透光性を有する絶縁樹脂組成物を用いることもでき、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた封止部材も利用できる。基材が以上のような樹脂であると、被覆部材の上面に容易に凹部又は凸部を形成可能であり、被覆領域(発光素子の側面)の制御性、封止性能、気密性能を高められるので好ましいが、ガラス、シリカゲル等の耐光性に優れた無機物を用いることもできる。さらに、耐熱性の高い基材とすると、発光素子や透光性部材からの熱に対応できる。実施形態1では、被覆部材3を構成する基材となる樹脂にシリコーン樹脂を用いる。シリコーン樹脂は耐熱性、耐光性が高く、好適に用いられる。」
エ 周知技術の認定
(ア) 前記ア~ウに摘記した引用文献2~4の記載事項からみて、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
<周知技術1>
「発光素子として、紫外光が発光可能な半導体発光素子を利用すること(引用文献2の【0071】、引用文献3の【0016】、引用文献4の【0019】)」
(イ) 前記ア~ウに摘記した引用文献2~4の記載事項からみて、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。
<周知技術2>
「発光素子を被覆する被覆部材の樹脂材料として、シリコーン樹脂を用いること(引用文献2の【0072】、引用文献3の【0018】、引用文献4の【0025】、【0039】)」
2 対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願発明が「半導体発光装置」であることについて
引用発明の「LEDチップ2」「を備え[る]」「発光素子1」について、「LEDチップ2は、半導体からな[る]」から、引用発明の「発光素子1」は、本願発明の「半導体発光装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「半導体発光装置」の発明である点で一致する。
イ 本願発明の「紫外線を発光する半導体発光素子と、」「を備え、」との特定事項について
(ア) 引用発明の「LEDチップ2」は、「半導体からな[る]」ものであるから、本願発明の「半導体発光素子」に相当する。また、引用発明の「LEDチップ2」は、「P型領域とN型領域の接合面が発光して、」「光が照射され[る]」ものであるから、光を発光するものである。
したがって、本願発明と引用発明は、「光を発光する半導体発光素子と、」「を備え[る]」点で共通する。
(イ) 一方で、半導体発光素子が発光する光について、本願発明は、「紫外線」であるのに対して、引用発明は、どのような光であるのか不明である点で相違する。
ウ 本願発明の「前記半導体発光素子が実装される実装基板と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「プリント基板10」は、「前記LEDチップ2の電極21、22と前記プリント基板10とはAuバンプ6により電気的に接続され[る]」ものであるから、本願発明の「実装基板」に相当するとともに、前記イ(ア)も踏まえれば、本願発明でいう「前記半導体発光素子が実装される」ものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記半導体発光素子が実装される実装基板と、」「を備え[る]」点で一致する。
エ 本願発明の「前記半導体発光素子を前記実装基板に電気的に接続するバンプ材と、」「を備え、」との特定事項について
引用発明の「Auバンプ6」は、本願発明の「バンプ材」に相当する。そして、引用発明の「Auバンプ6」は、それにより「前記LEDチップ2の電極21、22と前記プリント基板10と」を「電気的に接続」するものであるから、前記イ(ア)及びウも踏まえれば、本願発明でいう「前記半導体発光素子を前記実装基板に電気的に接続する」ものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記半導体発光素子を前記実装基板に電気的に接続するバンプ材と、」「を備え[る]」点で一致する。
オ 本願発明の「前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域を封止する第1封止部材と、」「を備え、」との特定事項について
(ア) 引用発明の「アンダーフィル7」は、「前記LEDチップ2と前記プリント基板10間に」「充填され[る]」ものであるから、本願発明の「第1封止部材」に相当する。
(イ) 引用発明は、「前記LEDチップ2の電極21、22と前記プリント基板10とはAuバンプ6により電気的に接続され[る]」ものであるから、前記イ(ア)、ウ、エを踏まえれば、本願発明でいう「前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域」を備えていることは自明である。
(ウ) そして、引用発明の「アンダーフィル7」は、「前記LEDチップ2と前記プリント基板10間に前記Auバンプ6を覆うように」「充填され[る]」ものであるところ、前記(イ)を踏まえれば、本願発明でいう「前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域を封止する」ものであるといえる。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、「前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域を封止する第1封止部材と、」「を備え[る]」点で一致する。
カ 本願発明の「前記第1封止部材上に設けられ、前記半導体発光素子を封止する第2封止部材と、を備え、」との特定事項について
引用発明の「透明樹脂9」は、「前記LEDチップ2および前記アンダーフィル7」を「覆[う]」ものであるから、本願発明の「第2封止部」に相当するとともに、前記イ(ア)、オ(ア)を踏まえれば、本願発明でいう「前記第1封止部材上に設けられ、前記半導体発光素子を封止する」ものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1封止部材上に設けられ、前記半導体発光素子を封止する第2封止部材と、を備え[る]」点で一致する。
キ 本願発明の「前記第1封止部材は、フィラー材が添加された樹脂により形成されており、」との特定事項について
引用発明は、「アンダーフィル7は、たとえばエポキシ樹脂にフィラーとしてたとえば粉末状のガラスを均一に混入させたものであ[る]」ところ、当該「フィラー」及び「エポキシ樹脂」は、本願発明の「フィラー材」及び「樹脂」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1封止部材は、フィラー材が添加された樹脂により形成されて[いる]」点で一致する。
ク 本願発明の「前記フィラー材は、前記第1封止部材における、前記半導体発光素子と前記実装基板との間にも配されており、」との特定事項について
引用発明は、「フィラーを添加することによりアンダーフィル7の線膨張係数を小さくすることができ[る]」ものであることを踏まえれば、「発光素子1の使用中において環境温度が大きく変化しても、Auバンプ6の線膨張係数とアンダーフィル7の線膨張係数との差によりAuバンプ6に生じる圧縮応力あるいは引っ張り応力の大きさを小さく[する]」ためには、「前記LEDチップ2と前記プリント基板10間」である「Auバンプ6」近傍においても「フィラー」が配置されることが必要であることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記フィラー材は、前記第1封止部材における、前記半導体発光素子と前記実装基板との間にも配されて[いる]」点で一致する。
ケ 本願発明の「前記第1封止部材は、母材として、前記紫外線の光透過率が75%以上の樹脂により形成されており、」との特定事項について
(ア) 引用発明は、「アンダーフィル7は、たとえばエポキシ樹脂にフィラーとしてたとえば粉末状のガラスを均一に混入させたものであ[る]」ところ、当該「エポキシ樹脂」は、本願発明の「母材」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1封止部材は、母材として、」「樹脂により形成されて[いる]」点で共通する。
(イ) 一方で、母材としての樹脂について、本願発明は、「前記紫外線の光透過率が75%以上」であるのに対して、引用発明は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよ[い]」ものであるが、紫外線の光透過率が不明である点で相違する。
コ 本願発明の「前記母材は、シリコーン樹脂を主成分とする樹脂であり、」との特定事項について
(ア) 引用発明は、「アンダーフィル7は、たとえばエポキシ樹脂にフィラーとしてたとえば粉末状のガラスを均一に混入させたものであ[る]」から、前記ケ(ア)を踏まえれば、本願発明と引用発明は、「前記母材は、」「樹脂であ[る]」点で共通する。
(イ) 一方で、前記母材としての樹脂について、本願発明は、「シリコーン樹脂を主成分とする」のに対して、引用発明は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよ[い]」ものであるが、シリコーン樹脂を主成分とするものであるかどうか不明である点で相違する。
サ 本願発明の「前記第1封止部材の線膨張係数は、1×10-4/K以下である」との特定事項について
引用発明は、「体積で50%のフィラーを添加し、それにより、アンダーフィル7の線膨張係数は約25PPM/℃に低下して[いる]」ものであるところ、PPM/℃は、10-6/Kを意味するから、引用発明の「アンダーフィル7の線膨張係数」は、2.5×10-5/Kである。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1封止部材の線膨張係数は、1×10-4/K以下である」点で一致する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
ア 一致点
「光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が実装される実装基板と、
前記半導体発光素子を前記実装基板に電気的に接続するバンプ材と、
前記バンプ材によって前記半導体発光素子と前記実装基板とが接続している接続領域を封止する第1封止部材と、
前記第1封止部材上に設けられ、前記半導体発光素子を封止する第2封止部材と、
を備え、
前記第1封止部材は、フィラー材が添加された樹脂により形成されており、
前記フィラー材は、前記第1封止部材における、前記半導体発光素子と前記実装基板との間にも配されており、
前記第1封止部材は、母材として、樹脂により形成されており、
前記母材は、樹脂であり、
前記第1封止部材の線膨張係数は、1×10-4/K以下である、半導体発光装置」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
半導体発光素子が発光する光について、本願発明は、「紫外線」であるのに対し、引用発明は、どのような光であるのか不明である点。
(イ) 相違点2
母材としての樹脂について、本願発明は、「紫外線の光透過率が75%以上」であるとともに、「シリコーン樹脂を主成分とする」のに対し、引用発明は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよ[い]」ものであるが、紫外線の光透過率が不明であり、シリコーン樹脂を主成分とするものであるかどうか不明である点。
3 判断
(1) 相違点についての検討
相違点1、2について、併せて検討する。
ア 引用発明の「LEDチップ2」が発光する光は、どのような光あるのか不明なものであることから、引用発明から出発した当業者は、「LEDチップ2」が発光する光として、どのような光かを具体的に決定する必要があり、「発光素子として、紫外光が発光可能な半導体発光素子を利用すること」という周知技術1に接することができる。そうすると、引用発明において、LEDチップ2が発光する光を具体的に決定するにあたり、前記周知技術1を採用し、LEDチップ2として、紫外光が発光可能な半導体発光素子を利用することで、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ また、引用発明は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂をエポキシ樹脂としているが、他の材質を用いてもよい」こと、及び、「透明樹脂9にエポキシ樹脂を用いているが、他の樹脂であってもよい」ことから、引用発明から出発した当業者は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」及び「透明樹脂9」をそれぞれエポキシ樹脂から他の樹脂に変更することが可能であることを認識できる。そして、引用発明は、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」及び「透明樹脂9」として、いずれもエポキシ樹脂という同一の樹脂が採用されていることを考慮すれば、引用発明から出発し、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」及び「透明樹脂9」として、それぞれエポキシ樹脂に替わる材質を検討する当業者であれば、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」及び「透明樹脂9」の両者を同一材質の樹脂とすることが自然である。さらに、引用発明から出発した当業者は、発光素子という同一の技術分野に係る技術である、「発光素子を被覆する被覆部材の樹脂材料として、シリコーン樹脂を用いること」という周知技術2に接することができる。そうすると、引用発明から出発した当業者が、アンダーフィル7のベースとなる樹脂及び透明樹脂9としてエポキシ樹脂に替わる材質を検討するにあたり、前記周知技術2を採用し、アンダーフィル7のベースとなる樹脂及び透明樹脂9のいずれについてもシリコーン樹脂を用いることは、容易に想到し得たことである。
ウ さらに、引用発明においては、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」及び「透明樹脂9」のいずれもエポキシ樹脂であること、「透明樹脂9」はその名称のとおり、「透明」なものであることを考慮すれば、引用発明の「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」についても、「透明樹脂9」と同様に透明であると認められる。ここで、引用発明は、「反射筒8は、LEDチップ2から放射状に出射される光を上方に向けて反射して、上方向における照度を高める機能を果たして[いる]」ものであるから、「反射筒8」や「プリント基板10」の上面での反射光も利用するべく、「アンダーフィル7のベースとなる樹脂」を、厚さを調整したり、より透明度の高い樹脂を採用したりすること等によって、「LEDチップ2」が発光する光に対する透過率が高い樹脂により形成することは、当業者が容易に想到し得たことであるし、前記アを勘案すれば、これらを紫外光に対する透過率が高い樹脂により形成することは必然的な設計変更にすぎない。また、相違点2に係る本願発明の「紫外線の光透過率が75%以上」という具体的な値についても、ごく一般的な値にすぎない(必要であれば、特開2010-177329号公報(図15)、特開2005-268405号公報(【0010】)を参照。)。
エ 以上検討のとおり、引用発明に周知技術2を適用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ ここで、前記イのように引用発明において周知技術2を採用して、アンダーフィル7のベースとなる樹脂としてシリコーン樹脂を用いる構成において、線膨張係数に係る一致点(前記2(1)サ参照。)が維持されるかについて検討する。
まず、引用発明は、「使用環境温度差が大きい場合においてバンプの疲労破断を防止できる」という課題を解決するために、「前記アンダーフィル7にフィラーを含有させ」「フィラーを添加することによりアンダーフィル7の線膨張係数を小さくすることができ」「Auバンプ6の線膨張係数と、それを覆うアンダーフィル7の線膨張係数との差を、小さく[する]」ことで、「前記アンダーフィル7の線膨張係数は前記Auバンプ6の線膨張係数と同等であ[る]」ようになすものである。
したがって、アンダーフィルのベースとなる樹脂としてシリコーン樹脂を用いる構成においても、アンダーフィルにフィラーを含有させ、フィラーを添加することによりアンダーフィルの線膨張係数を小さくすることができ、Auバンプの線膨張係数と、それを覆うアンダーフィルの線膨張係数との差を小さくすることで、アンダーフィルの線膨張係数をAuバンプの線膨張係数と同等であるようになすこと、すなわち、アンダーフィルの線膨張係数を、Auバンプの線膨張係数である14PPM/℃と同等となるように調整することは、当業者が容易に想到し得たことであるから、線膨張係数に係る一致点は維持されることとなる。
なお、発光素子の被覆材に用いられるシリコーン樹脂の線膨張係数としては、70PPM/℃(特開2016-92276号公報(【0022】))や、200PPM/℃(特開2014-220422号公報(【0051】)などさまざまな値のものが知られているところ、引用発明は、「エポキシ樹脂の線膨張係数は70PPM/℃~140PPM/℃であ[る]」ことに鑑みれば、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂の線膨張係数に大きな差はないといえることからみて、シリコーン樹脂にフィラーを含有させることで、その線膨張係数を1×10-4/K以下とすることに阻害要因はない。
(2) 総合検討
前記(1)にて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1、2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、引用発明は、「バンプの線膨張係数とバンプを直接覆う部材の線膨張係数との差を従来の発光素子の場合よりも小さくして、発光素子の周囲温度が変化した場合にバンプに生じる圧縮あるいは引っ張り応力を低減することができる」(引用文献1の【0008】)という効果を奏するものであり、また、引用文献3(【0018】)及び引用文献4(【0039】)に開示されるとおり、シリコーン樹脂は紫外光に対して耐光性が高いことはよく知られた事項であることを踏まえれば、本願発明の奏する効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明及び周知技術1、2から当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 請求人の主張について
請求人は、引用発明において、シリコーン樹脂の線膨張係数がエポキシ樹脂より高いことから、アンダーフィルの母材をエポキシ樹脂からシリコーン樹脂に変更した場合、アンダーフィルの線膨張係数が高くなり、「第1封止部材の線膨張係数は、1×10-4/K以下である」ことを満たさなくなる蓋然性が高い旨を主張している。
しかしながら、前記(1)エで説示したとおり、アンダーフィルのベースとなる樹脂としてシリコーン樹脂を用いる構成においても、線膨張係数に係る一致点は維持されることとなる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
4 当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-000678