特許拒絶査定不服審判
2023-018526
電源装置
- 審判番号
- 2023-018526
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-062925
- 請求日
- 2023年11月01日
- 審決日
- 2025年03月18日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】加藤 克己
- 【請求人代理人】植村 貴昭
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 倉橋 紀夫
- 審判官 山本 信平
- 分類
- P18 .536-WZ (F02P) / P18 .537-WZ (F02P) / P18 .121-WZ (F02P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第1条、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-62925「電源装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月24日出願公開、特開2020-204319〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2020-062925号(以下、「本願」という。)は、令和2年3月31日の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 6月22日付け:拒絶理由通知(発送日:同年6月27日)
令和5年 8月23日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 8月30日付け:拒絶査定(発送日:同年9月5日)
令和5年11月 1日 :審判請求書の提出
令和6年10月30日付け:拒絶理由通知(発送日:同年11月5日)
令和6年11月5日に発送された拒絶理由通知に対して初回応対令和6年12月1日の応対記録に添付したとおりの内容の電子メールが令和6年12月1日に請求人から審判第10部門宛てに送付された。
第2 本願発明について
本願の請求項1-4に係る発明は、令和5年8月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
2個以上のコンデンサーを有する配線の一端がバッテリーのプラス端子に接続され、前記配線の他端が前記バッテリーのマイナス端子に接続されている電源装置であって、
当該電源装置において、3個の同一のコンデンサーが並列接続されている第1コンデンサー群と、3個の同一のコンデンサーが直列接続されている第2コンデンサー群とが前記配線に並列接続されていることを特徴とする電源装置。」
第3 当審より通知した拒絶理由
令和6年10月30日付けで当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものを含むものである。
1.(実施可能要件及び委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.実願平3-24089号(実開平4-121117号)のマイクロフィルム
2.特開平5-106539号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008-175197号公報(周知技術を示す文献)
第4 理由1(実施可能要件及び委任省令要件)について 特許制度は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的としている(特許法第1条)。
すなわち、特許制度は、新しい技術を開発し、それを公開した者に対し、一定期間、一定条件下に特許権という独占権を付与することにより発明の保護を図り、他方、第三者に対しては、この公開により発明の技術内容を知らせて、その発明を利用する機会を与えるものである。そして、発明のこのような保護及び利用は、発明の技術的内容を公開するための技術文献及び特許発明の技術的範囲を明示する権利書としての使命を持つ明細書、特許請求の範囲及び図面を介してなされることになる。
特許法第36条第4項は、明細書の発明の詳細な説明の記載要件を規定しており、同項第1号は主に、明細書が技術文献としての役割を果たすために必要な事項を規定したものである。発明の詳細な説明の記載が明確になされていないときは、発明の公開の意義も失われ、ひいては、上記のような特許制度の目的も失われてくることになる。その意味で、本項は極めて重要な規定である。
発明が実施可能といえるためには、当業者が単にその物が作れるだけではなく、当業者がその物を利用できるように発明の詳細な説明に記載されている必要がある。発明を特定する発明特定事項の各々の作用が確認できなければその物を利用する意義が明らかではないことから、その物を利用できるとはいえず、特に、構造からその作用機序が明らかでない発明については、作用を信頼性のある実験データにより明らかにする必要がある。
本願の発明の詳細な説明の段落0013には、発明の効果として、「2個以上のコンデンサーを有する配線の一端がバッテリーのプラス端子に接続され、前記配線の他端が前記バッテリーのマイナス端子に接続されているので、エンジンの点火システムに用いることにより、燃費を向上させることができる。即ち、アクセルが軽く、エンジン回転がスムーズで目標速度の到達時間が短いため、一般走行の場合はアクセルを踏み込まずに済み、加えて、アクセルを戻しても速度が落ちにくく、まるで氷上を滑るような感覚が起こり、これによりアクセルを踏み込まずに済むために、燃費を向上させることができる。ここで上記氷上を滑るよう感覚のことを「スケーティング現象」と呼ぶ。」と記載されている。
まず、構造から「スケーティング現象」という作用が明らかであるか否か検討する。前記詳細な説明の段落0029には、「シャーシダイナモテスト結果については、本発明適用車と非適用車を同じ速度で比較すると、本発明適用車の方がトルクも出力も下回る。換言すると、少ないパワーで同じ速度に到達できるという、優れた効果の現れである。これが「スケーティング現象」であり、燃費向上となる。」と記載されている。
技術常識として、例えば、車両を軽量化することにより、「少ないパワーで同じ速度に到達できる」ことは知られている。しかしながら、請求項1-4に係る発明の電源装置は、車両を軽量化するものではなく、どのような作用機序でこのような効果を奏するのか不明である。
また、前記詳細な説明の段落0033には、「本実施形態の電源装置10による場合に燃費向上が図れる理由は、アクセルが軽く、エンジン回転がスムーズで目標速度の到達時間が短いため、一般走行の場合はアクセルを踏み込まずに済み、加えて、アクセルを戻しても速度が落ちにくく、まるで氷上を滑るような感覚、つまり前述した「スケーティング現象」が起こり、これによりアクセルを踏み込まずに済むためである。」と記載されている。
技術常識として、例えば、吸排気バルブの制御やクラッチの切断等により、エンジンブレーキ力を低減することで、「アクセルを戻しても速度が落ちにくく」なることは知られている。しかしながら、請求項1-4に係る発明の電源装置は、エンジンブレーキ力を低減するものではなく、どのような作用機序でこのような効果を奏するのか不明である。
よって、本願発明が奏する効果である「スケーティング現象」は、技術常識を考慮しても、その作用機序が不明なものである。よって、本願発明は、構造から作用が明らかなものとはいえない。
なお、この点に関し、請求人も審判請求書において「現在の技術常識では信じがたいことですが、この真実は実証実験で証明されることでしょう。」(審判請求書の別添1第6頁)と述べている。
以上のとおり、本願発明は、構造から作用が明らかなものとはいえない上に、技術常識に鑑みれば当業者であれば「スケーティング現象」は生じないと考える構造である。よって、本願発明が「スケーティング現象」が生じる電源装置として利用できることが記載されていると言えるためには信頼性のある実験データにより「スケーティング現象」という作用が明らかにされている必要がある。
本願の発明の詳細な説明の段落0030-0032、段落0043-0044、図4の表1及び図5の表2に、比較実験データが記載されている。ただ、図4の表1に記載された比較実験データについては、段落0029に「図4に示す表1は、第1実施形態の電源装置10を適用したエンジンの点火システム1の場合(本発明適用車)における燃費向上を、非適用車(ノーマル車)と対比して示している。」と記載されており、本願発明には含まれていない第1実施形態の比較実験データに過ぎない。また、図5の表4に記載された比較実験データについては、これら比較実験がどのような走行条件のもとで行われたのか明らかでない。仮にこれがシャーシダイナモテストであったとしても、どのような電源装置を車両のどの部分にどのように適用したのか、28年式ティアナ以外の車両でも同様の結果が出るのか、再現性の確認のために何回の実験が行われたのか等、当業者が本願発明の効果を示す実験を再現できる程度に実験条件が記載されたものではない。さらにいえば、本願発明はコンデンサの静電容量や定格電圧等の電気特性が何ら特定されていないところ、そのような様々なコンデンサにおいて、本願発明の効果を示すものともいえない。以上より、図5の表4に記載された比較実験データは、出願時の技術常識を覆せるほどの精度や再現性がある実験データとはいえない。
よって、本願発明が「スケーティング現象」が生じる電源装置として利用できる程度に信頼性のある実験データにより作用が明らかにされているとはいえない。
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されておらず、また、本願発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
請求人は、令和5年8月23日付意見書において、上記「少ないパワーで同じ速度に到達できる」効果に関連し、添付資料1及び2を根拠とし、「添付資料1は、本発明の装置をつけていないノーマル状態の一定の回転数時の馬力等の測定値です。また、添付資料2は、本発明の装置をつけているA状態の一定の回転数時の馬力等の測定値です。例えば、2400rpm、5000rpmの出力(PS)が、ノーマル状態に比べて、A状態では低い数値になっております。このことは、本発明のようにコンデンサーを接続すると、アクセルの挙動に対してスムーズに加速することを意味します。」と主張する。
しかしながら、添付資料1及び2の比較実験データには、少なくとも表の回転数に達するまでに時間等が記載されておらず、「本発明のようにコンデンサーを接続すると、アクセルの挙動に対してスムーズに加速すること」が示されているデータとはいえない。さらに、添付資料1及び2に記載された比較実験データも、図5の表2の比較実験データと同様、どのような電源装置を車両のどの部分にどのように適用したのか、ローレル以外の車両でも同様の結果が出るのか、再現性の確認のために何回の実験が行われたのか等、当業者が本願発明の効果を示す実験を再現できる程度に実験条件が記載されたものではなく、出願時の技術常識を覆せるほどの精度や再現性がある実験データとはいえない。
そして、請求人は、前記意見書において、「36条4項1号の実施可能要件については、原理がどうであるかではなく、その発明を実施できるか否かになると思料いたします。となりますと、本出願については、図1~図3のような図面だけあれば、本発明の実施は可能であると思料します。」と主張しているが、実施可能要件を満たすためはその物を作れるだけでなく、その物を利用できるように記載されている必要がある。本願発明が「スケーティング現象」が生じる電源装置として利用できるような記載がないことは上述のとおりである。
請求人は、審判請求書に添付した別添1の資料において、「コンデンサー1個でも・・・スケーティング現象は生じません。」、「3個の同一のコンデンサーを並べるだけでは、・・・「スケーティング現象」・・・を出すことは難しい。」、「並列接続の場合は、50Vを3個並列接続すれば良いと思いますが、それだけでは「スケーティング現象」は生じません。出るか出ないかは静電容量次第です。」、「直列接続の場合は、ベスト印加電圧50Vを、使用するコンデンサーのボルト数(電圧)で割ることにより、コンデンサーの使用個数がきまりますが、出るか出ないかは静電容量次第です。」と主張する。
しかしながら、どうして静電容量次第でスケーティング現象が生じたり生じなかったりするのか、その作用機序が不明である。
さらに、「スケーティング現象」が生じるための静電容量の値については発明の詳細な説明にはなんら記載されておらず、「スケーティング現象」が生じるか生じないかが静電容量次第であれば、「スケーティング現象」が生じる電源装置を作るためには、当業者に過度の試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるから、その点からも本願発明は実施可能でない。
よって、依然として本願発明は実施可能でなく、その技術上の意義は、依然として不明である。
第5 理由2(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するものである。
本願の段落0005の「本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より燃費の向上を図ることができる電源装置を提供することを目的とする。」という記載及び段落0013の「2個以上のコンデンサーを有する配線の一端がバッテリーのプラス端子に接続され、前記配線の他端が前記バッテリーのマイナス端子に接続されているので、エンジンの点火システムに用いることにより、燃費を向上させることができる。即ち、アクセルが軽く、エンジン回転がスムーズで目標速度の到達時間が短いため、一般走行の場合はアクセルを踏み込まずに済み、加えて、アクセルを戻しても速度が落ちにくく、まるで氷上を滑るような感覚が起こり、これによりアクセルを踏み込まずに済むために、燃費を向上させることができる。ここで上記氷上を滑るような感覚のことを「スケーティング現象」と呼ぶ。」という記載から、「スケーティング現象」を生じることによって本願発明の課題が解決できると認められる。
しかし、本願発明において、「スケーティング現象」が生じることが信頼性のある実験データにより明らかにされているとはいえない。また、当業者が出願時の技術常識に照らし、本願発明において、「スケーティング現象」が生じることを認識できるともいえない。
以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段である「スケーティング現象」を生じることによって本願発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではないから、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第6 理由3(進歩性)について
1 引用文献1及び引用発明
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様)。
ア 「【0004】
そこで、図2に示すように、負荷1が接続される直流電源線2,3間にセラミックコンデンサをバイパスコンデンサ4として接続し、ノイズ成分をコモンラインにバイパスさせることが多い。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、一般にバイパスコンデンサ4として用いられる汎用の小型セラミックコンデンサの耐圧は50Vである。
従って、電源電圧が50Vを越える駆動回路に直流竃圧を供給する直流電源系統にバイパスコンデンサを接続する場合には、耐圧が50Vよりも高い特別仕様のコンデンサが必要になり、部品コストが高くなってしまう。
【0006】
本考案は、このような問題点に着目したものであり、その目的は、比較的耐圧の低い汎用のコンデンサを高い酎圧が必要な直流電源線間にパイパスコンデンサとして接続できる直流電源用バイパスコンデンサ回路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成する本考案は、
直流電源線間に負荷と並列に接続される複数のコンデンサの直列回路と、
このコンデンサの直列回路と並列に直流電源線間に接続される複数の抵抗の直列回路とで構成され、
直列接続された各コンデンサには直列接続された各抵抗で分圧されたコンデンサの耐圧以下の電圧が印加されることを特徴とする。」
イ 「
[図:0001423032000001.jpg]
」
(2)【図2】からは1個のバイパスコンデンサ4を有する配線の一端が直流電源線2に接続され、前記配線の他端が直流電源線3に接続されている回路が看取できる。
(3)以上を総合すると引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1個のバイパスコンデンサ4を有する配線の一端が直流電源線2に接続され、前記配線の他端が直流電源線3に接続されている回路。」
2 引用文献2
(1)引用文献2には、次の事項が記載されている
ア 「【0010】電気2重層コンデンサの耐電圧は1.5V~3.0Vと低く、この発明に採用する場合、自動車用蓄電池の充電装置では最高電圧が15Vとなるため、6~8セルの電気2重層コンデンサを積層する必要がある。電気2重層コンデンサを始動用に併用した従来のものでは、始動電流に200~300Aも必要であり、この電流を維持するのに数ファラッドの容量を必要としたが、本発明によれば、イグニション負荷2~3Aを維持するのみでよい。コンデンサよりの放電電流は従来のものの約1/100、コンデンサ容積として1/4と、大幅に小型化が可能になる。この容積は始動用蓄電池の1/6に相当する。」
イ 「【図1】
[図:0001423032000002.jpg]
」
3.引用文献3
(1)引用文献3には、次の事項が記載されている
ア 「【0003】
これに対して、図10(a)に示すようなプラズマ式点火装置1xは、第1のバッテリ31xと、イグニッションスイッチ32xと点火コイル33xと電子制御装置(ECU)35xとイグナイタ(トランジスタ)34xと整流素子21xとを含む放電用電源回路3xと、第2のバッテリ41xと、抵抗42xとプラズマ発生用コンデンサ43xと整流素子22xとを含むプラズマ発生用電源回路4xとが接続されたプラズマ式点火プラグ10xとによって構成されている。
図10(b)に示すように、イグニッションスイッチ32xが投入され、ECU35xからの点火信号により、第1のバッテリ31xから低電圧の一次電圧が点火コイル33xの一次コイル331xに印加され、イグナイタ34xのスイッチングによって一次電圧が遮断されると、点火コイル33x内の磁界が変化し、点火コイル33xの二次コイル332xに-10~-30kVの二次電圧が発生する。
更に、中心電極110xと接地電極131xとの間の放電距離201xに比例する放電電圧に達し、放電が開始する瞬間に、第1のバッテリ31xとは別に設けたプラズマ発生用バッテリ41xからプラズマ発生用コンデンサ43xに蓄えられたエネルギーを中心電極110xと接地電極154xとの間に形成された放電空間140x内に一気に放出し、放電空間140x内の気体を高温高圧のプラズマ状態として噴射する。この時、約100mJの高いエネルギーが放出される。
プラズマ式点火装置1xによる点火では、このような極めて高いエネルギーによって、容積的に大きな範囲の高温域が発生する上に、指向性に富んだ火炎核が着火源となって圧縮混合気の着火爆発が励起される。
そこで、プラズマ式点火装置1xは、直噴エンジンの燃焼において希薄な混合気を燃焼させるため、点火プラグの付近に濃い混合気が集まるようにして、燃焼を容易にする成層燃焼への応用が期待されている。
【0004】
しかし、プラズマ式点火装置1xにおいては、プラズマ発生用コンデンサ43x内に蓄えられたエネルギーを瞬時にプラズマ式点火プラグへ供給するので、図10(b)に示すように8μsec程度の放電期間に120A程度の大電流が流れる。これがエンジンの回転に応じて周期的に繰り返されるので、高周波の電磁ノイズが発生する。
この様な電磁ノイズは車両に搭載された電子制御装置の誤動作等を引き起こし、エンジンの失火に至る虞がある。
そこで、かかる電磁ノイズの防止方法として、特許文献1には、プラズマ発生用配線上でプラズマ式点火プラグの可及的近傍にステアリングダイオードを介装し、プラズマ発生用配線をシールド線で構成することにより、放電用電源からの給電電圧の低下を招くことなく、電磁ノイズを遮断する方法が開示されている。」
イ「
[図:0001423032000003.jpg]
」
4.本願発明と引用発明の対比・判断
(1)本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「バイパスコンデンサ4」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「コンデンサー」に相当し、以下同様に、「直流電源線2」及び「直流電源線3」は「バッテリーのプラス端子」及び「バッテリーのマイナス端子」に、「回路」は「電源装置」に、それぞれ相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「コンデンサーを有する配線の一端がバッテリーのプラス端子に接続され、前記配線の他端が前記バッテリーのマイナス端子に接続されている電源装置。」
[相違点]
配線について、本願発明は、2個以上のコンデンサーを有するものであり、かつ、3個の同一のコンデンサーが並列接続されている第1コンデンサー群と、3個の同一のコンデンサーが直列接続されている第2コンデンサー群とが前記配線に並列接続されているのに対し、引用発明はコンデンサーが1個である点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の段落0006~0007並びに引用文献2の段落0010及び図1に記載されているように、耐圧の低いコンデンサーを高い耐圧が必要な直流電源線間に接続できるようにするために、複数のコンデンサーを直列接続して分圧することは周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。そうすると、例えば、引用発明において、引用文献1の段落0005に記載されたような50Vよりも耐圧の低いコンデンサーを用いた場合には、50Vを、使用するコンデンサーの耐圧で割ることにより、コンデンサーの使用個数を適宜決定し、それらを直列接続することは、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、引用文献3の段落0003-0004及び図10に記載されているように、コンデンサーの電気容量を増やすためにコンデンサーを並列に接続することも周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。そうすると、引用発明に並列に3個の同一のコンデンサーが並列接続されている第1コンデンサー群を設けることも当業者が容易に相当し得たことである。
そして、3個の同一のコンデンサーが並列接続されている第1コンデンサー群と、3個の同一のコンデンサーが直列接続されている第2コンデンサー群とが前記配線に並列接続されることにより当業者が予測できない効果が生じるとも認められない。
よって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 令和6年12月1日に請求人から審判第10部門宛てに送付された電子メールについて
請求人は令和6年12月1日に請求人から審判第10部門宛てに送付された電子メールにおいて、「理由はともあれ確認もせず、この発見があり得ないと言い切ることは過ちである。OD現象は存在する。」と述べている。
しかし、発明の詳細な説明に記載された現象に係る発明をもってして特許を受けるためには、発明の詳細な説明のその現象に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載する必要があるところ、本願の発明の詳細な説明はそのように記載されていないことは上記第4で述べたとおりである。
上記電子メールのその他の部分には、拒絶理由がないことを主張している部分はなく、上記電子メールの内容全体を参酌しても、上記第4-第7の当審の判断の内容は変わらない。
第8 むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されておらず、また、本願発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定により、特許を受けることができない。
また、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許を受けることができない。
また、本願発明は、その出願日前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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