審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-015734

RANタンパク質の検出のための免疫アッセイ

審判番号
2023-015734
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-538771外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月19日
審決日
2024年11月25日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01N) / P18 .57 -Z (G01N) / P18 .572-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第159条第1項、特許法第17条第6項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-538771「RANタンパク質の検出のための免疫アッセイ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日国際公開、WO2019/060918、令和 2年12月 3日国内公表、特表2020-535448〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)9月25日)を国際出願日とする出願であって、令和4年8月12日付けで拒絶理由の通知に対し、令和5年3月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 その後、令和6年1月12日付けで前置報告がなされ、同年7月23日及び9月17日に上申書が提出された。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正前の請求項1に係る発明 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、令和5年3月1日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「(i)電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを使用して、対象から得られた第1の血液試料中で、1以上のRANタンパク質を検出すること; (ii)電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを使用して、対象から得られた第2の血液試料中で、1以上のRANタンパク質を検出すること、ここで、第2の血液試料は、対象に治療剤を投与後に、得られる; および (iii)第2の血液試料中で検出されるRANタンパク質の量を、第1の血液試料中で検出されるRANタンパク質の量と比較すること、 ここで、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイは、第1および/または第2の血液試料が対象から得られる2日以内に遂行され、かつ、 ここで、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを遂行する前に、第1および/または第2の血液試料は、23℃未満の温度で保存される、 を備える、治療剤の投与に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法。」 (2)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。なお、下線部は補正箇所を示す。 「(i)電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを使用して、哺乳動物対象から得られた第1の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること、ここで、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイは、ポリ(GP)RANタンパク質に結合する抗RANタンパク質抗体を血液試料に接触するステップを含み、ここで、第1の血液試料は、哺乳動物対象に治療剤を投与前に、得られる; (ii)電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを使用して、哺乳動物対象から得られた第2の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること、ここで、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイは、ポリ(GP)RANタンパク質に結合する抗RANタンパク質抗体を血液試料に接触するステップを含み、ここで、第2の血液試料は、哺乳動物対象に治療剤を投与後に、得られる; および (iii)第2の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量を、第1の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量と比較すること、 ここで、(i)の電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイは、第1の血液試料が哺乳動物対象から得られる24時間以内に遂行され、ここで、(ii)の電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイは、第2の血液試料が哺乳動物対象から得られる24時間以内に遂行され、 ここで、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを遂行する前に、第1および第2の血液試料は、25℃未満の温度で保存され、かつ、 ここで、第1および第2の血液試料は、血液試料の白血球細胞を単離するために処置されてきた、 を備える、治療剤の投与に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法。」 2 補正の適否 本件補正は、血液試料の保存について、本件補正前の「23℃未満の温度で保存」されると記載されていたのを、「25℃未満の温度で保存」されると変更する補正事項を含む。当該補正事項による補正は、血液試料を保存する温度の範囲を、23℃未満から、25℃未満へと拡大するものであるから、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。 したがって、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3 独立特許要件について 本件補正は、前記補正事項に加えて、第1及び第2の血液試料を得る「対象」を「哺乳動物対象」に限定する補正事項、「RANタンパク質」を「ポリ(GP)RANタンパク質」に限定する補正事項、「第1の血液試料中」及び「第2の血液試料中」での「検出」にそれぞれ使用する「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」について「ポリ(GP)RANタンパク質に結合する抗RANタンパク質抗体を血液試料に接触するステップ」を含むものに限定するとともに、遂行される「期限」を「2日以内」から「24時間以内」に限定する補正事項、「第1の血液試料」について「哺乳動物対象に治療剤を投与前に、得られる」ものに限定する補正事項、「第1および第2の血液試料」について、「血液試料の白血球細胞を単離するために処置されてきた」ものに限定する補正事項からなる。 上記2で述べたとおり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるが、仮に、本件補正が、目的外補正には当たらないとすると、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「対象」、「RANタンパク質」、「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」遂行される「期限」「第1の血液試料」及び「第2の血液試料」について、限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するということもできる。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 4 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。 5 引用文献 (1)引用文献1 ア 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で主引用発明が記載された文献として引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2016-515208号公報(平成26年5月26日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 (ア)発明の概要 「【0004】 ヒトC9ORF72遺伝子のイントロン内のGGGGCCヘキサヌクレオチド配列の伸長は、ヒトにおける筋萎縮性側索硬化症および前頭側頭認知症の両方と関連付けられる。本明細書に記載のとおり、C9ORF72遺伝子のイントロン内の伸長GGGGCCヘキサヌクレオチドリピート配列は、センスおよびアンチセンスの両方の方向にヘキサヌクレオチドリピートを含有するRNA転写物がもたらされるように転写されることが見出された。これらのセンスおよびアンチセンス転写物は、翻訳されてジアミノ酸リピート含有タンパク質をもたらすことが見出された。センス転写物(5’-GGGGCC-3’ヘキサヌクレオチドリピートを含有する)は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳を通じて翻訳され、結果としてポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、およびポリ(Gly-Arg)タンパク質がもたらされることが見出された。アンチセンス転写物(5’-GGCCCC-3’ヘキサヌクレオチドリピートを含有する)は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳を通じて翻訳され、結果としてポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、ポリ(Gly-Pro)タンパク質がもたらされることが見出された。加えて、アンチセンス転写物は、ATG開始翻訳を通じて翻訳され、Met...ポリ(Pro-Arg)およびMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質をもたらすことが見出された。 【0005】 これらのジアミノ酸リピート含有タンパク質は、ALS対象血液試料中に存在することが見出された。したがって、本開示の態様は、対象から得られる試料(たとえば血液)中のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルの検出方法に関し、この方法は、対象の試料中のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルを測定することを含む。いくつかの態様において、ジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルの検出は、ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを発症する可能性が高い対象を同定(または診断)するかまたはその同定を補助(または診断を補助)してもよい。代わりにまたは加えて、たとえば対象の血液試料中のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルの検出は、対象をALSまたはFTDの危険因子、たとえば対象のジアミノ酸リピート含有タンパク質または脳脊髄液中のタンパク質レベルの上昇を有するものとして同定(または診断)するかまたはその同定を補助(または診断を補助)してもよい。本開示の態様はまた、対象の血中のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルを減少または安定化させることによる、ALSまたはFTDを有する対象の処置に関する。 【0006】 加えて、アンチセンス転写物(5’-GGCCCC-3’ヘキサヌクレオチドリピートを含有する)の発現は、対照と比較して、伸長GGGGCCヘキサヌクレオチドリピートを有する対象において大きく上昇することが見出された。C9ORF72遺伝子のイントロン内の伸長GGGGCCヘキサヌクレオチドリピート配列を有する患者の脳および血液細胞における蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、センスおよびアンチセンス転写物の凝集もまた検出可能であった。したがって、本開示の他の態様は、ヘキサヌクレオチドリピート含有転写物の検出方法に関し、この方法は、ヘキサヌクレオチドリピート含有転写物レベルを測定することおよび/またはヘキサヌクレオチドリピート含有転写物凝集の存在もしくは非存在を測定することを含む。いくつかの態様において、ヘキサヌクレオチドリピート含有転写物の検出は、対象をALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを発症する可能性が高いものとして同定(または診断)するかまたはその同定を補助(または診断を補助)してもよい。代わりにまたは加えて、たとえば対象の血液試料中のヘキサヌクレオチドリピート含有転写物の検出は、対象をALSまたはFTDの危険因子、たとえば対象のジアミノ酸リピート含有タンパク質または脳脊髄液中のタンパク質レベルの上昇を有するものとして同定(または診断)するかまたはその同定を補助(または診断を補助)してもよい。」 (イ)発明を実施するための形態 「【0018】 よく確立された翻訳開始規則が、遺伝子発現を理解し、疾患を引き起こす突然変異の結果を予測するための、分子生物学における基礎として使用されてきた。一般に、予測されるコーディングおよび非コーディング領域に位置するマイクロサテライト伸長突然変異(たとえば、CAG、CTG)は、タンパク質機能獲得もしくは喪失またはRNA機能獲得機構により疾患を引き起こすものと考えられてきた。翻訳の標準的規則はCTG・CAGリピート伸長に適用されず、CAGおよびCUG伸長転写物が、AUG開始コドンなしに3つすべてのフレーム内でホモポリマー伸長タンパク質を発現させることが以前に報告されてきた・・・。AUG開始コドンから独立したこの翻訳は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳と呼ばれる。RAN翻訳は、ヘアピン依存性であり、フレームシフトまたはRNAエディティングなしに生じる。RAN翻訳は、筋強直性ジストロフィー1型、筋強直性ジストロフィー2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症8型およびハンチントン病と関連付けられるトリヌクレオチド、テトラヌクレオチド、およびペンタヌクレオチドリピートから観察されてきた(PCT公開WO/2010/115033を参照のこと、これは本明細書に参照により組み込まれる)。 ・・・ 【0026】 本開示の他の態様は、ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを発症する可能性が高いものとして同定される対象の処置に関する。本明細書において使用される「処置する」または「処置」は、(a)ALSまたはFTDの発症を予防するかまたは遅延させること、(b)ALSまたはFTDの重症度を減少させること、(c)ALSまたはFTDに特徴的な症状の発症を減少させるかまたは予防すること、(d)ALSまたはFTD症状の悪化を予防すること、および/または(e)以前にALSまたはFTDの症状を示していた対象におけるALSまたはFTD症状の再発を減少させるかまたは予防することを指す。 【0027】 いくつかの実施形態において、処置は、有効量の既知のALS治療薬、たとえばリルゾール(リルテック、Sanofi-Aventis)を、ALSを有するものとして同定される対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、処置は、有効量の既知のFTD治療薬、たとえばトラゾドン(デジレル、オレプトロ)または選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を、FTDを有するものとして同定される対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、処置は、ALSまたはFTDを有するものとして同定される対象における1つまたは複数のALSまたはFTDの症状を減少させる有効量の治療薬、たとえばバクロフェン、ジアゼパム、フェニトイン、トリヘキシフェニジルおよび/またはアミトリプチリンを投与することを含む。・・・ 【0030】 本開示の他の態様は、ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象において処置に対する応答性をモニタリングするための方法に関する。いくつかの実施形態において、この方法は、第1の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第1のレベルを決定すること、ならびに、第2の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第2のレベルを決定することを含み、第1のレベルと比較して上昇したかまたは同じである第2のレベルは、対象が処置に対して無応答性であるかまたは無応答性である可能性が高いことを示し、第1のレベルと比較して減少した第2のレベルは、対象が処置に対して応答性であるかまたは応答性である可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態において、第1の血液試料は対象の処置前に得られ、第2の血液試料は、対象の処置中または処置後に得られる。この方法はまた、ジアミノ酸タンパク質のレベルに加えてまたはその代わりに、ヘキサヌクレオチドリピート含有RNAのレベルまたはヘキサヌクレオチドリピート伸長含有RNAの凝集の存在もしくは非存在を決定することにより実施されてもよい。 ・・・ 【0050】 対象 本開示の態様は、ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを発症する可能性が高い対象、たとえばヒトの同定および処置に関する。いくつかの実施形態において、対象はALSを有していてもよい。・・・ 【0052】 いくつかの実施形態において、対象は、C9ORF72遺伝子(NCBI Entrez Gene ID: 203228)の対立遺伝子の一方または両方内にGGGGCCヘキサヌクレオチドリピートを有していてもよい。いくつかの実施形態において、GGGGCCヘキサヌクレオチドリピートは、C9ORF72遺伝子のプロモーターおよび/またはイントロン内にある。いくつかの実施形態において、GGGGCCヘキサヌクレオチドリピートの数は、25、50、100、150、200、250、300、500、5,000、10,000以上である。・・・ 【0056】 試料 本開示の態様は、対象から得られた血液試料(たとえば、全血、血漿、または血清)中の1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定することに関する。血液試料は、当技術分野において知られている任意の方法により、たとえば、針または指穿刺装置を使用して得られる。血液は、本明細書に記載の方法における使用前に処理されてもよい。かかる処理には、抗凝固剤の添加、血液細胞の除去、および/または血液の冷凍が含まれる。しかしながら、他の試料、たとえば組織試料(たとえば脳組織)または他の流体試料、たとえば唾液もしくは尿を使用できることが認められるべきである。 ・・・ 【0058】 アッセイ 本開示の態様は、1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質および/またはヘキサヌクレオチドリピート含有RNAのレベルまたは存在/非存在を決定するためにアッセイを実施することに関する。タンパク質およびRNAを検出するための当技術分野において知られているアッセイ(たとえば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001, Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York.を参照のこと。マイクロアレイ技術は、Microarray Methods and Protocols, R. Matson, CRC Press, 2009, or Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに記載されている。)を、単独でまたは本明細書に記載のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルを測定するための手法および組成物と組み合わせて使用できる。 【0059】 タンパク質レベルを検出するためのアッセイには、イムノアッセイ[本明細書において免疫ベース(immune-based or immuno-based)アッセイとも呼ばれ、たとえば、ウエスタンブロット、免疫組織化学およびELISAアッセイ]、質量分析、およびマルチプレックスビーズベースアッセイが含まれるが、これに限られるものではない。タンパク質レベル検出のためのかかるアッセイは、当技術分野においてよく知られている。タンパク質検出および定量方法の他の例には、たとえば米国特許第6939720号および第8148171号、および公開米国特許出願第2008/0255766号に記載のマルチプレックスイムノアッセイ、ならびにたとえば公開米国特許出願第2009/0088329号に記載のタンパク質マイクロアレイが含まれ、これら文献のすべての全体が本明細書に参照により組み込まれる。 【0060】 ジアミノ酸リピート含有タンパク質のための任意の好適な結合パートナーが、ジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルの検出のために考慮される。いくつかの実施形態において、結合パートナーは、本明細書に記載のジアミノ酸リピート含有タンパク質と特異的に結合する任意の分子である。・・・ 【0061】 いくつかの実施形態において、結合パートナーは、抗体またはその抗原結合性フラグメント、たとえばFab、F(ab)2、Fv、単鎖抗体、FabおよびsFabフラグメント、F(ab’)2、Fdフラグメント、scFv、またはdAbフラグメントである。・・・結合パートナーは、蛍光、酵素、親和性または同位体標識を含むが、これに限られない標識を含んでいてもよい。 【0062】 いくつかの実施形態において、アッセイは、免疫ベースアッセイを含む。いくつかの実施形態において、免疫ベースアッセイは、1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質に特異的な単離抗体を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質に特異的な単離抗体は、本明細書にさらに詳細に記載されている単離抗体である。・・・ 【0063】 したがって、ジアミノ酸リピート含有結合パートナー(たとえば、ジアミノ酸リピート含有特異抗体)を、検出可能な成分で標識化できる。 ・・・ 【0065】 処置 本明細書に記載のとおり、ジアミノ酸リピート含有タンパク質が、ALSを有する患者からの血液試料中に存在することが見出された。理論または機構に束縛されることを望まないが、ALSを有する対象の血中のジアミノ酸リピート含有タンパク質が時間経過とともに脳実質内に蓄積し、神経炎症性変化、CNS機能障害、および神経細胞死をもたらすと考えられる。したがって、本開示の態様は、対象の血中のジアミノ酸リピート含有タンパク質レベルを減少または安定化させることによる、ALSまたはFTDを有する対象の処置に関する。 ・・・ 【0080】 いくつかの実施形態において、1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを減少させることまたはその増加を防止することは、ヘキサヌクレオチドリピート含有RNAのレベルを減少させることを含む。ヘキサヌクレオチドリピート含有RNAのレベルを減少させることは、ヘキサヌクレオチドリピート含有RNAを標的にする有効量の抑制性核酸分子、たとえばshRNA、siRNA、miRNA、またはアンチセンス核酸分子の投与を含んでいてもよい。」 イ 引用文献1に記載された発明 引用文献1の記載事項(イ)の段落【0030】の記載(合議体が下線を付した部分)に基づけば、引用文献1には、「ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象において処置に対する応答性をモニタリングするための方法」に関する発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象において処置に対する応答性をモニタリングするための方法であって、 第1の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第1のレベルを決定すること、ならびに、 第2の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第2のレベルを決定することを含み、 第1のレベルと比較して上昇したかまたは同じである第2のレベルは、対象が処置に対して無応答性であるかまたは無応答性である可能性が高いことを示し、第1のレベルと比較して減少した第2のレベルは、対象が処置に対して応答性であるかまたは応答性である可能性が高いことを示し、 第1の血液試料は対象の処置前に得られ、第2の血液試料は、対象の処置後に得られる。」 (2)引用文献2 ア 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で副引用文献として引用され、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2016/025692号(2016年(平成28年)2月18日に出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用文献2に記載された技術的事項の認定に用いた箇所に下線を追加するとともに、括弧内に翻訳文を付した。 (ア)要約(2頁9~14行) 「SUMMARY The invention is directed, in various embodiments, to small molecules targeting the RNA expanded repeat sequence r(GGGGCC)exp and to the use of the compounds to significantly decrease RAN translation and foci formation in cultured cells expressing r(GGGGCC)66 and in induced neurons (iNeurons) directly converted from fibroblasts of C90RF72 repeat expansion carriers.」 (要約 本発明は、様々な実施形態において、RNAの拡張された反復配列r(GGGGCC)expを標的とする小分子、およびr(GGGGCC)66を発現する培養細胞およびC90RF72反復拡張キャリアの線維芽細胞から直接変換された誘導ニューロン(iNeurons)におけるRAN翻訳およびフォーカス形成を大幅に減少させるための化合物の使用に関する。) (イ)CSF中でポリ(GP)タンパク質が検出されたこと(10頁31行~11頁5行) 「Poly(GP) proteins are detected in c9ALS CSF Our findings above indicate that r(GGGGCC)exp-targeting small molecules can inhibit foci formation and RAN translation. Consequently, if c9RAN proteins are detected in CSF, they have the potential to serve as a measurable indicator of therapeutic efficacy. To test this notion, we developed an immunoassay that specifically detects poly(GP) proteins (Fig.4A), and validated it as a sensitive means to measure endogenous poly(GP) using soluble fractions of frontal cortex tissues. As expected, poly(GP) was specifically detected in c9FTD/ALS samples using this assay (Fig.4B).」 (CSF中でポリ(GP)タンパク質が検出されたこと 上記我々の発見は、r(GGGGCC)exp-標的小分子が、病巣の形成とRAN翻訳を阻害できることを示す。したがって、c9RANタンパク質がCSF中に検出された場合、それらは治療効果の測定可能な指標として機能する可能性がある。この仮説を検証するために、我々は、ポリ(GP)タンパク質を特異的に検出する免疫測定法を開発し(図4A)、前頭皮質組織の可溶性画分を使用して内因性ポリ(GP)を測定するための感度の高い手段として検証した。予想通り、このアッセイではc9FTD/ALSサンプル中でポリ(GP)が特異的に検出された(図4B)。) 合議体注:図4A及び図4Bは次のものである。 [図:0001421918000001.jpg] (ウ)タンパク質の免疫測定分析(24頁9~25行) 「Immunoassay analysis of c9RAN proteins. As an alternative means to measure poly(GP) proteins, Meso Scale Discovery (MSD) electrochemiluminescence detection technology was utilized to establish sandwich immunoassays using polyclonal anti-GP as capture and detection antibodies. For validation of poly(GP) assay specificity, synthetic peptides (200 ng/ml) representing each possible protein RAN translated from the sense or antisense transcripts of the expanded C90RF72 repeat [(GA)8, (GR)8, (GP)8, (PA)8, (PR)8] were assayed (Fig.4A). Poly(GP) proteins were also measured in lysates from cultured cells (10-35 μg of protein per well) prepare as described above, or from RIPA-soluble homogenates from frozen frontal cortical tissues (35 μg of protein per well). Brain homogenates were prepared as previously described (Almeida et al..2013) In brief, tissue was lysed in cold RIPA buffer and sonicated on ice. Lysates were cleared by centrifugation at 100,000 g for 30 min at 4℃. The supernatant was collected and protein concentration was determined by BCA assay. Poly(GP) protein expression was similarly evaluated in CSF (90 μl per well, in duplicate or triplicate wells) from 5 healthy controls, 25 ALS patients without the C90RF72 repeat expansion, and 14 ALS patients with the expansion (・・・).」 (c9RANタンパク質の免疫測定分析。ポリ(GP)タンパク質を測定する他の手段として、Meso Scale Discovery (MSD)電気化学発光検出技術を利用して、ポリクローナル抗GPを捕捉抗体および検出抗体として使用するサンドイッチ免疫測定法を確立した。ポリ(GP)アッセイの特異性を検証するために、反復が拡張されたC9ORF72のセンスまたはアンチセンス転写産物から翻訳された可能性のある各タンパク質RANを表す合成ペプチド(200ng/ml)[(GA)8、(GR)8、(GP)8、(PA)8、(PR)8]をアッセイした(図4A)。ポリ(GP)タンパク質は、上記のように調製した培養細胞の溶解物(ウェルあたり10~35μgのタンパク質)、または凍結した前頭皮質組織のRIPA可溶性ホモゲネート(ウェルあたり35μgのタンパク質)でも測定を行った。脳ホモゲネートは、前述(Almeida et al..2013)されたとおりに調製した。簡単に説明すると、組織を冷たいRIPAバッファーで溶解し、氷上で超音波処理した。溶解物は4℃、100000gで30分間遠心分離して除去した。上清を収集し、BCAアッセイでタンパク質濃度を測定した。ポリ(GP)タンパク質発現は、同様に、5人の健康な対照群、C9ORF72反復伸長のない25人のALS患者、および伸長のある14人のALS患者のCSF(ウェルあたり90μl、2重または3重ウェル)で評価した(・・・)。) イ 引用文献2に記載された技術的事項 引用文献2の上記記載事項(ウ)の記載(合議体が下線を付した部分)に基づけば、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。 「ポリ(GP)タンパク質を測定する手段として、Meso Scale Discovery (MSD)電気化学発光検出技術を利用して、ポリクローナル抗GPを捕捉抗体および検出抗体として使用するサンドイッチ免疫測定法が確立されていること。」 6 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)第1の血液試料におけるタンパク質の検出 引用発明は、「ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象において処置に対する応答性をモニタリングするための方法」であって、「第1の血液試料は対象の処置前に得られ」るものとされている。引用発明の「対象」は、「ALS」(筋萎縮性側索硬化症)や「FTD」(前頭側頭認知症)を有する可能性があるものであるから、技術的にみて、「哺乳動物」であるといえる。 また、引用文献1の記載事項(ア)には、「C9ORF72遺伝子のイントロン内の伸長GGGGCCヘキサヌクレオチドリピート配列は、センスおよびアンチセンスの両方の方向にヘキサヌクレオチドリピートを含有するRNA転写物がもたらされるように転写されることが見出された。これらのセンスおよびアンチセンス転写物は、翻訳されてジアミノ酸リピート含有タンパク質をもたらすことが見出された。センス転写物(5’-GGGGCC-3’ヘキサヌクレオチドリピートを含有する)は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳を通じて翻訳され、結果として・・・ポリ(Gly-Pro)・・・タンパク質がもたらされることが見出された。」との記載に基づけば、引用発明の「ポリ(Gly-Pro)」タンパク質等は、RANタンパク質である。そして、アミノ酸のグリシンは3文字記号では「Gly」と表され、1文字記号では「G」と表され、アミノ酸のプロリンは3文字記号では「Pro」と表され、1文字記号では「P」と表される。そうすると、引用発明の「第1の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質」のうち、「ポリ(Gly-Pro)」タンパク質は、本願補正発明の「哺乳動物対象から得られた第1の血液試料中」の「ポリ(GP)RANタンパク質」に相当する。 以上より、引用発明の「第1の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第1のレベルを決定すること」は、本件補正発明の「哺乳動物対象から得られた第1の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること」に相当するといえる。 また、本件補正発明の「第1の血液試料は、哺乳動物対象に治療剤を投与前に、得られる」と引用発明の「第1の血液試料は対象の処置前に得られ」るとは、「第1の血液試料は、哺乳動物対象の処置前に、得られる」点で共通する。 (2)第2の血液試料におけるタンパク質の検出 前記(1)に記載したとおり、引用発明の「ポリ(Gly-Pro)」タンパク質は、「ポリ(GP)RANタンパク質」である。そうすると、引用発明の「第2の時点で対象から得られる血液試料中の、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第2のレベルを決定すること」のうち、「ポリ(Gly-Pro)」タンパク質のジアミノ酸リピート含有タンパク質の第2のレベルを決定することは、本件補正発明の「哺乳動物対象から得られた第2の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること」に相当する。 また、本件補正発明の「第2の血液試料は、哺乳動物対象に治療剤を投与後に、得られる」と引用発明の「第2の血液試料は、対象の処置後に得られる」とは、「第2の血液試料は、哺乳動物対象の処置後に、得られる」点で共通する。 (3)検出されるタンパク質の量の比較 引用発明の「処置に対する応答性をモニタリングするための方法」において、「第1のレベルと比較して上昇したかまたは同じである第2のレベルは、対象が処置に対して無応答性であるかまたは無応答性である可能性が高いことを示し、第1のレベルと比較して減少した第2のレベルは、対象が処置に対して応答性であるかまたは応答性である可能性が高いことを示し」ているとすることは、第2の時点で対象から得られる血液試料中の「ジアミノ酸リピート含有タンパク質」の量を、第1の時点で対象から得られる血液試料中の「ジアミノ酸リピート含有タンパク質」の量と比較しているといえる。 したがって、引用発明の「処置に対する応答性をモニタリングするための方法」は、本件補正発明の「(iii)第2の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量を、第1の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量と比較する」工程を有している。 (4)治療剤の投与に際するRANタンパク質発現における変化の測定 本件補正発明の「治療剤の投与に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法」と引用発明の「ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象において処置に対する応答性をモニタリングするための方法」とは、「処置に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法」である点で共通する。 (5)一致点及び相違点 以上より、本件補正発明と引用発明とは、 「(i)哺乳動物対象から得られた第1の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること、ここで、第1の血液試料は、哺乳動物対象の処置前に、得られる; (ii)哺乳動物対象から得られた第2の血液試料中で、ポリ(GP)RANタンパク質を検出すること、ここで、第2の血液試料は、哺乳動物対象の処置後に、得られる; および (iii)第2の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量を、第1の血液試料中で検出されるポリ(GP)RANタンパク質の量と比較すること、 を備える、処置に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件補正発明は「ポリ(GP)RANタンパク質に結合する抗RANタンパク質抗体を血液試料に接触するステップ」を含む「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」を使用するのに対し、引用発明はジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定する方法を特定していない点。 [相違点2]処置について、本件補正発明は、「治療剤を投与」することであるのに対し、引用発明は、処置の内容を特定していない点。 [相違点3]本件補正発明は、哺乳動物対象から得られた第1の血液試料及び第2の血液試料中でのポリ(GP)RANタンパク質の検出を、それぞれ「哺乳対象動物から得られる24時間以内」に遂行するとともに、検出を遂行する前に、各血液試料が「25℃未満の温度で保存」され、かつ、第1および第2の血液試料が、「白血球細胞を単離するために処置」されているのに対し、引用発明は、対象から得られてからレベルを決定するまでの間において、血液試料を特定の時間及び特定の温度範囲で保存することが特定されておらず、白血球細胞を単離するために処置されることも特定していない点。 7 判断 (1)[相違点1]について 引用文献1の段落【0059】には、「タンパク質レベルを検出するためのアッセイには、イムノアッセイ[本明細書において免疫ベース(immune-based or immuno-based)アッセイとも呼ばれ、たとえば、ウエスタンブロット、免疫組織化学およびELISAアッセイ]、質量分析、およびマルチプレックスビーズベースアッセイが含まれるが、これに限られるものではない。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用文献1には、ジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定する方法として、イムノアッセイを用いることが示唆されているといえる。 一方、前記4(2)イに記載したとおり、「ポリ(GP)タンパク質を測定する手段として、Meso Scale Discovery (MSD)電気化学発光検出技術を利用して、ポリクローナル抗GPを捕捉抗体および検出抗体として使用するサンドイッチ免疫測定法が確立されていること。」は、本願の優先権主張の日前において、当該分野において知られていたことである。引用発明と、引用文献2に記載された上記技術的事項とは、いずれも、C9ORF72に由来するポリ(GP)タンパク質に関するものであり、溶液とした生体試料中のポリ(GP)タンパク質を測定するものである点で共通する。 そうすると、引用発明において、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、ポリ(Pro-Arg)、Met...ポリ(Pro-Arg)またはMet...ポリ(Gly-Pro)タンパク質から選択される1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定するに際し、引用文献1におけるイムノアッセイを用いるとの示唆にしたがい、引用文献2に記載された上記技術的事項を採用し、「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」を使用するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、血液試料に「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」を使用したことにより、当業者が予測し得ない効果を奏するともいえない。 審判請求人は、審判請求の理由において、「当業者には引用文献1と引用文献2とを組み合わせる動機付けがない」、「RANタンパク質が、他の診断標的とは異なる構造および発現パターンから構成されていることを考えれば、ある種類の試料において電気化学ルミネセンスに基づくアッセイを用いてあるタンパク質を検出するのに有効なものが、白血球を単離するために処置された血液試料からポリ(GP)RANタンパク質を検出するのに有効であるとは合理的に期待し得ません」、「引用文献1と引用文献2とを組み合わせることは、後知恵である」と主張している。また、令和6年9月17日付けの上申書においても、「本願の出願当時の技術水準、および引用文献にはない本願発明に係る方法の態様に基づけば、25℃未満の温度で24時間以内保存され、白血球を単離するために処置された血液試料中のRANタンパク質を検出するために、電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイを使用することを含む方法は、引用文献の記載から予測し得ないものであります。」と主張している。 しかし、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とは、同じ「ポリ(GP)RANタンパク質」を測定するものである。そして、ポリ(GP)RANタンパク質のレベルを決定する方法として、引用文献1の段落【0059】に記載された「ELISAアッセイ」と上記技術的事項における「電気化学発光検出技術を利用して、ポリクローナル抗GPを捕捉抗体および検出抗体として使用するサンドイッチ免疫測定法」とは、捕捉抗体を使用した試料中のポリ(GP)RANタンパク質の捕捉から検出抗体の結合まで、同じ工程を経るものであり、最後に実行される標識の確認が、酵素活性反応を利用するものと電気化学発光反応を利用するものとで異なるに過ぎない。最後に実行される標識の確認の工程では、検出目的タンパク質であるポリ(GP)RANタンパク質の捕捉と検出抗体の結合は既に終了しており、通常余分な検出抗体とともに試料中の上記結合に関与しない成分は通常除去されるため、標識の確認の工程は試料種類に依存しないと考えられるから、試料が白血球を単離するために処置された血液試料であることの影響を受けるものでないことは、当業者にとって自明である。 そうすると、引用文献1において示唆されたELISA法と、対象が共通し、イムノアッセイである点でも共通する、引用文献2に記載された技術的事項の採用を試みることは、当業者が容易になし得たことであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。 (2)[相違点2]について 引用文献1の段落【0027】には、「いくつかの実施形態において、処置は、有効量の既知のALS治療薬、たとえばリルゾール(リルテック、Sanofi-Aventis)を、ALSを有するものとして同定される対象に投与することを含む。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用文献1には、「処置」として、治療薬の投与を行うことが示唆されているといえる。 したがって、引用発明の処置について、引用文献1の示唆にしたがい、治療薬を投与することとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)[相違点3]について 引用発明は、対象から得られてからレベルを決定するまでの間において、血液試料を特定の時間及び特定の温度範囲で保存することを特定していない。また、引用文献1には、ALSもしくはFTDを有するかまたはALSもしくはFTDを有すると疑われる対象から血液試料を得てから、血液試料中のジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定するまでの間に、血液試料の温度を変更することや、特定の時間保存することについて何ら記載がない。 一般に、対象からの血液試料の採取は室温下で行われる。そして、室温は、一般に25℃未満である。また、このような血液試料を検査するにあたり、25℃以上の温度にして保存することが一般に行われているということもできない。そうすると、ジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルの決定までの間、室温以上の温度に変更して24時間以上保持していると理解することはできない。したがって、上記[相違点3]のうち、哺乳動物対象から得られた第1の血液試料及び第2の血液試料中でのポリ(GP)RANタンパク質の検出を、それぞれ「哺乳対象動物から得られる24時間以内」に遂行するとともに、検出を遂行する前に、各血液試料が「25℃未満の温度で保存」する点は、実質的な相違点とはいえないものである。 また、引用文献1の段落【0056】には、「本開示の態様は、対象から得られた血液試料(たとえば、全血、血漿、または血清)中の1つまたは複数のジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定することに関する。・・・血液は、本明細書に記載の方法における使用前に処理されてもよい。かかる処理には、抗凝固剤の添加、血液細胞の除去、および/または血液の冷凍が含まれる。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用文献1には、血液試料について、白血球細胞を単離して除かれた血漿又は血清を用いることが示唆されているといえる。 さらに、血液試料の検査において、試料の経時変化が検査結果に影響を与えること、経時変化を避けるために、遠心分離により血球の分離を行い、迅速に分析を開始することは技術常識であるといえる。例えば、中山年正ら, 経時的変化-臨床化学検査と試料の保存, 臨床薬理, 2巻, 3号, p.312-318, 1971年7月には、「体液中のナトリウム,カリウム等の電解質,ブドウ糖,尿素窒素,ビリルビン,たん白質や2,3の酵素活性の測定は,特に治療指針の決定に直結しているため,直ちに分析が開始され,30分から60分後にはデータが通報されている.これ以外の日常検査でも,試料提出日に分析が行われていることはすでに常識である.臨床検査の迅速な応答は,極端に不安定な成分を除けば,試料の保存が問題として表面化することを事実上少なくしている.」(第312頁左欄第10~19行、下線は合議体が付した。)、「体液中の細胞は体外にとり出されたのちも代謝変化を営み,環境の変化に従い異常代謝状態を経て,最後には死滅分解する.細胞成分の共存による代謝変化は迅速であり,血液や尿が一般に極めて不安定とされる理由になつている.この有形成分の除去,ないしはその作用を阻止する操作がいわゆる前処理であり,迅速かつ確実におこなわれるよう細心の注意が払われる.」(第313頁右欄第19~26行)、「血球が一つの独立した働きをもつ臓器であることは,よく知られている.一般に体外にとり出された血液は非常に不安定であり,刻々と変化してゆくもので,採血後長時間放置された血液は生体内での状態を推定しえない結果となる.」(第314頁左欄第1~5行)、「臨床化学では全血のまま長時間放置することはまずありえない.血餅に凝集する採血後約30分から1時間後には遠心操作が行われているのが普通である.明らかな保証のない限り,仮に負荷試験や日内変動のような経時的な採血を必要とされる場合であつても,採血と同時につぎつぎと前処理が行われている.」(第315頁左欄第18~24行、下線は合議体が付した。)、「採血された血液は,まずガラス製の遠心用のスピッツグラスに移され,パラフイルムなどで軽く栓をし約30分室温に放置される.」(第315頁左欄第25~27行、下線は合議体が付した。)と記載されている。 そうすると、仮に上記温度範囲及び保存時間の点で実質的に相違するとしても、引用文献1における示唆にしたがい、また、分析における慣用方法を採用し、引用発明の対象から得た試料について、レベルの決定の対象でない白血球細胞を除くとともに迅速にレベルの決定を行うことは当業者が当然考慮することである。そして、対象から血液試料を得る際の温度を25℃未満の室温とし、採血後約30分から1時間後には遠心操作を行って白血球細胞を単離し、保存することなく試料提出日に分析を行うことによって、本件補正発明の上記[相違点3]に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 審判請求人は、審判請求の理由において、引用文献には、「血液試料を処置して白血球を分離すること」及び「試料を25℃未満の温度で24時間以内保存すること」について示唆がなく、当業者が容易になしえたものでないと主張している。しかしながら、上記のとおり、血液試料を全血のまま長時間放置することはまずありえないことであり、採血後約30分から1時間後程度には迅速に遠心操作が行われているのが普通であり、試料提出日に分析が行われていることは常識であるとされている。また、保存するに際しても、多くの場合生化学反応が進行しないように低温で行うのが普通とされている。本件補正発明のポリ(GP)RANタンパク質の検出を「哺乳対象動物から得られる24時間以内」に遂行するとともに、検出を遂行する前に、各血液試料が「25℃未満の温度で保存」し、かつ、「白血球細胞を単離するために処置」することは、室温で採取された血液試料に対し、約30分から1時間後程度に迅速に遠心操作を行い、その日のうちに分析を行うという、通常行われる手順を特定しているに過ぎない。したがって、当業者に過度の実験を科するものとはいえるものでないから、審判請求人の当該主張は採用できない。 また、審判請求人は、審判請求の理由において、「ラヌム博士は、血液試料を室温または4℃のいずれかにて24時間を超えて保存すると、ポリ(GP)RANタンパク質の検出が阻害されたという知見に基づき、本願発明に係る方法を開発したと述べています(宣誓書の段落16~18)。・・・このように、本願発明が予期せぬ技術的効果を発揮することを示すところ、補正後の本願請求項1に係る発明は引用文献に対して進歩性を有するものと思料します。」と主張している。しかしながら、上記のとおり、試料の経時変化が検査結果に影響を与えることは古くから認識されていたことである。保存時間が短いと経時変化が検査結果に与える影響が少ないことは、当業者にとって自明であり、予期せぬ効果であるということはできない。したがって、審判請求人の当該主張も採用できない。 8 小括 以上のとおり、[相違点1]~[相違点3]は、いずれも当業者が容易になし得るものであるから、本件補正発明は、引用発明と、引用文献1、引用文献2の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 したがって、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。 9 むすび 本件補正は、上記2に記載したとおり、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。また、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正発明は、上記8に記載したとおり、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。 したがって、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件発明 1 本件発明 本件補正は、前記第2にとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、令和5年3月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1~15に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 なお、引用文献1を主引用発明が記載された文献として引用し、引用文献2を副引用文献として引用している。また、引用文献3~6は、「血液試料を電気化学ルミネセンスに基づくイムノアッセイで、血液試料中の目的の成分を測定すること」が周知技術であることを示す文献として引用されている。 引用文献1:特表2016-515208号公報 引用文献2:国際公開第2016/025692号 引用文献3:国際公開第2017/055612号 引用文献4:特開2017-19773号公報 引用文献5:特開2016-180665号公報 引用文献6:研究課題名 Elecsys Cortisol試薬を用いた血中コルチ ゾール定量の臨床性能に関する既存法との互換性評価試 験,ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社,2015年, https://www.sbs-smc.or.jp/research/007/a007.pdf 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2及びその記載事項は、前記第2の5に記載したとおりである。 4 対比 本件発明と引用発明とを対比すると、概略、前記第2の6(1)~(4)と同じことがいえる。 そうすると、両者は 「(i)対象から得られた第1の血液試料中で、1以上のRANタンパク質を検出すること; (ii)対象から得られた第2の血液試料中で、1以上のRANタンパク質を検出すること、ここで、第2の血液試料は、対象の処置後に、得られる; および (iii)第2の血液試料中で検出されるRANタンパク質の量を、第1の血液試料中で検出されるRANタンパク質の量と比較すること、 を備える、処置に際してRANタンパク質発現における変化を測定するための方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1’]本件発明は「電気化学ルミネセンスに基づく免疫アッセイ」を使用するのに対し、引用発明はジアミノ酸リピート含有タンパク質のレベルを決定する方法を特定していない点。 [相違点2’]処置について、本件発明は、「治療剤を投与」することであるのに対し、引用発明は、処置の内容を特定していない点。 [相違点3’]本件発明は、対象から得られた第1の血液試料および/または第2の血液試料中でのRANタンパク質の検出を、「対象から得られる2日以内」に遂行するとともに、検出を遂行する前に、各血液試料が「23℃未満の温度で保存」されるのに対し、引用発明は、対象から得られてからレベルを決定するまでの時間及び温度を特定していない点。 5 判断 (1)[相違点1’]について 前記第2の7(1)と同様のことがいえる。そして、引用発明において、引用文献2に記載された上記技術的事項を採用すると、本件発明の[相違点1’]に係る要件を満たすことになる。 (2)[相違点2’]について [相違点2’]は、前記[相違点2]と実質的に同じ相違点であり、前記第2の7(2)と同じことがいえる。 (3)[相違点3’]について 前記第2の7(3)と同様のことがいえる。そして、対象から血液試料を得てからRANタンパク質の検出を行うまでの室温として、23℃未満の温度を選択することは、当業者が適宜選択し得ることである。 6 むすび 以上のとおり、上記[相違点1’]~[相違点3’]は、いずれも当業者が容易になし得るものであるから、本件発明は、引用発明と、引用文献1、引用文献2の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 上申書において提示された補正案について 審判請求人は、令和6年9月17日付けの上申書において、請求項1の「25℃未満の温度」を、「20℃~25℃未満の温度」に限定するという補正案を提示しているので、当該補正案により補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正案発明」という。)が、拒絶の理由を解消するものであるかについて、以下に検討する。 1 対比 本件補正案発明と引用発明とを対比すると、前記第2の6(5)に記載した一致点で一致し、前記[相違点1]及び前記[相違点2]で相違するとともに、前記[相違点3]の代わりに以下の点で相違することになる。 [相違点3”]本件補正案発明は、哺乳動物対象から得られた第1の血液試料及び第2の血液試料中でのポリ(GP)RANタンパク質の検出を、それぞれ「哺乳対象動物から得られる24時間以内」に遂行するとともに、検出を遂行する前に、各血液試料が「20℃~25℃未満の温度で保存」され、かつ、第1および第2の血液試料が、「白血球細胞を単離するために処置」されているのに対し、引用発明は、対象から得られてからレベルを決定するまでの時間及び温度を特定しておらず、白血球細胞を単離するために処置されることも特定していない点。(下線は[相違点3]と比較して、新たに相違することになった箇所を示す。) 2 判断 上記[相違点3”]について検討すると、前記第2の7(3)と同様のことがいえる。加えて、中山年正ら, 経時的変化-臨床化学検査と試料の保存, 臨床薬理, 2巻, 3号, p.312-318, 1971年7月には、「また蛇足ながらつけ加えれば,多くの生化学反応は0℃ではほとんど進行しないことを利用し,保存は低温あるいは凍結保存を行うのが普通であるが,膜内外で顕著に含有量の異なるものでは温度を下げると拡散し濃度が変化するから行なつてはならない.」(第315頁右欄第30~35行、下線は合議体が付した。)、「血清LDHの失活様式も興味ある事実である.一般に低温ほど安定とされる化学成分のうちでこれは全く逆の関係があるように見える・・・.LDHは心筋に存在するLDH1から骨格筋の主要なアイソエンザイムLDH5まで5種類のアイソエンザイムがあるが,それらはいずれも室温でかなり安定であるのに対し,冷蔵庫(4℃)では不安定であり.凍結すれば失活する.」(第318頁左欄第19~26行、下線は合議体が付した。)と記載されている。当該記載に基づけば、血液試料を保存するに際して、多くの場合生化学反応が進行しないように低温で行うのが普通であるが、血液試料中には低温で不安定となる成分が存在することも知られている。そうすると、採血により得られた血液試料を検査するにあたり、高温及び低温のいずれにもならないように保ち、迅速に検査に供するようにすることは、当業者が考慮することであり、20℃以上25℃未満の温度範囲とすることは、当業者が測定対象に応じて適宜設定し得ることである。 3 審判請求人の主張 審判請求人は、令和6年9月17日付けの上申書において、段落【0075】及び図6を引用して、「この結果は、RTで保存した方が、4℃で保存するよりバックグラウンドが顕著に低いこと、ひいては4℃で保存するより鋭敏に検出することができることを示しています。」とし、「保存温度に係るこのような効果は引用文献には記載も示唆もされていないところ、本願発明が、引用文献1~7の記載に基づき当業者が容易に発明できたものでもないことは既に明らかというべきであります。」と主張している。 しかし、本願の段落【0075】の記載に基づけば、図6A-6Cは、種々の処理時間および温度での対象から得た血液試料に遂行したメソスケール検出(MSD)アッセイに関する代表的なデータであって、「白血球細胞を単離するために処置」された「血液試料」のデータではない。また、RT(室温)が何℃で実施されたものであるかも明らかにされていない。室温は概ね20℃前後程度であることが多いとしても、実施季節や実施環境に応じて「室温」の温度が20℃~25℃でないことは十分に生じうることから、当データが「20℃~25℃未満」のものであるかは明らかとはいえない。したがって、本願の図6A-6Cに示される結果が、本件補正案発明の保存温度「20℃~25℃未満」に係る効果を示すものと理解することができない。そうすると、本件補正発明の保存温度にかかる効果が、当業者が予測し得ない格別なものであると理解することもできない。 したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、令和6年9月17日付けの上申書における補正案によっても、拒絶の理由を解消することができない。 第5 むすび 前記第3の6に記載したとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-015734

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決3件(ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.)
  • 2024-010384拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)がんに対する免疫チェックポイント阻害剤との併用療法における造血幹細胞
    同じ当事者: ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
  • 2017-012519拒絶査定不服審判 / 2019-04-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)4’-デスフェリチオシン類似体の使用
    同じ当事者: ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
  • 2023-700984異議申立 / 2024-03-27 / 維持オトフェルリンを発現させるための組成物および方法
    同じ当事者: ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-013307拒絶査定不服審判 / 2025-10-21 / 請求不成立不妊治療成功の予測のための子宮内膜液
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-016157拒絶査定不服審判 / 2025-10-20 / 請求不成立スライド上にプリントされたバイオマーカーおよびロマノフスキー型染色サンプルを調製…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-014568拒絶査定不服審判 / 2025-10-15 / 請求不成立キャピラリ電気泳動のためのレーザ照明技法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-007929拒絶査定不服審判 / 2025-07-23 / 請求不成立疑似インビボ条件での治療用タンパク質の選択
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-009885拒絶査定不服審判 / 2025-06-10 / 請求不成立例えば汚染マスクで使用するための粒子感知システム
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)934件(121・G01N、572・G01N、575・G01N ほか)
  • 2025-003854拒絶査定不服審判 / 2026-02-03 / 請求不成立生体組織成分の検出方法、装置及びウェアラブル機器
    共通の審決分類: 121・G01N、572・G01N、575・G01N
  • 2024-014730拒絶査定不服審判 / 2025-11-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)情報処理システム及びその制御方法並びにプログラム
    共通の審決分類: 121・G01N、575・G01N、57・G01N
  • 2024-013307拒絶査定不服審判 / 2025-10-21 / 請求不成立不妊治療成功の予測のための子宮内膜液
    共通の審決分類: 121・G01N、572・G01N、575・G01N
  • 2024-016157拒絶査定不服審判 / 2025-10-20 / 請求不成立スライド上にプリントされたバイオマーカーおよびロマノフスキー型染色サンプルを調製…
    共通の審決分類: 121・G01N、572・G01N、575・G01N
  • 2024-014568拒絶査定不服審判 / 2025-10-15 / 請求不成立キャピラリ電気泳動のためのレーザ照明技法
    共通の審決分類: 121・G01N、572・G01N、575・G01N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存