特許拒絶査定不服審判
2023-014922
保香性包装袋用積層体及び包装袋
- 審判番号
- 2023-014922
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-115870外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月05日
- 審決日
- 2025年07月01日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-115870号「保香性包装袋用積層体及び包装袋」拒絶査定不服審判事件〔令和3年1月7日出願公開、特開2021-770号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年6月21日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和5年 2月27日付け:拒絶理由通知書
令和5年 5月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 6月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 6月20日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 9月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年9月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年9月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「少なくとも基材と接着剤層と蒸着層とシーラント層とをこの順に備えた、保香性包装袋用積層体であって、
前記接着剤層が、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール及びイソシアヌル環を有するポリエステルポリオールからなる群より選択されるポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物とを含む2液硬化型接着剤の硬化物からなり、
前記接着剤層は、1μm以上4.5μm以下の厚さを有し、
蒸着層は、5nm以上60nm以下の厚さを有し、
前記基材は、ポリプロピレンを含み、
前記シーラント層は、ポリプロピレンを含み、
積層体を構成する樹脂の90質量%以上がポリプロピレンからなる
ことを特徴とする、保香性包装袋用積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年5月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「少なくとも基材と接着剤層と蒸着層とを備えた、保香性包装袋用積層体であって、
前記接着剤層が、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール及びイソシアヌル環を有するポリエステルポリオールからなる群より選択されるポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物とを含む2液硬化型接着剤の硬化物からなり、
前記接着剤層は、1μm以上4.5μm以下の厚さを有し、
蒸着層は、5nm以上60nm以下の厚さを有することを特徴とする、保香性包装袋用積層体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「保香性包装袋用積層体」について、「シーラント層」を加えた上で各層の積層順積を特定し、「基材」の材料、「積層体を構成する樹脂」における「ポリプロピレン」の質量%について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)補正発明
補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶理由で引用された本願の出願前に公開された引用文献である特開2013-147014号公報(平成25年8月1日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。「・・・」は記載の省略を示す。
「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、食品を中心とした包装材等に使用でき、ガスバリア性に優れる特定の接着剤層、及びアルミ蒸着層若しくはアルミ箔を含む層を有するガスバリア性多層フィルムを提供することにあり、更には該ガスバリア性多層フィルムを使用した各種バリア用多層フィルムを提供することにある。さらに、本発明は工業用や電子材料用のガスバリア包装材料や、太陽電池のバックシート用シート等の電子材料用のフィルムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(A)と2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなるガスバリア性接着剤層、及びアルミ蒸着層若しくはアルミ箔を含む層を有するガスバリア性多層フィルムにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ガスバリア性に優れた多層フィルを提供することができ、更には当該多層フィルを用いた酸素ガスバリア用多層フィルム、水蒸気バリア用多層フィルム、不活性ガスバリア用多層フィルム、アルコールバリア用多層フィルム、保香用多層フィルムの提供が可能となる。」
「【0018】
本発明の2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(A)として、より具体的には、
・3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)、
・重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)、
・グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)、
・オルト配向多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)、
・イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)、
等を挙げることができる。
以下、各ポリエステルポリオールについて説明する。」
「【0135】
更に、本発明の多層フィルムは、香り成分の保香用バリア性多層フィルムとして用いることが可能である。本発明で対象とする香り成分は、食品やお茶等の嗜好品に含まれる香り、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤、石鹸等の香り成分を含むサニタリー分野の製品中に含まれる香り、ペットフード、防虫剤、芳香剤、毛染め類、香水、農薬類、各種有機溶剤類等の香りや低分子成分の放出を妨げたい分野の軟包装材料に好適に用いることができる。また、活性炭、ゼオライト等の吸着剤、消臭剤、浄水器カートリッジ、米穀類、インスタントラーメン、ミネラルウオーター、そうめん、綿類等の、外部からの香りの進入を防ぎたい用途にも好適に用いることができる。」
「【0141】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、・・・は、バリア用フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。・・・」
「【実施例】
【0150】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0151】
(製造例1)ポリエステルポリオール(A):Gly(OPAEG)2MAの製造例
本ポリエステルは、ポリエステル(A1)、(A2)、(A3)、(A4)の構造を併せ持つ接着剤の主剤である。・・・
【0153】
(溶剤型接着剤用主剤A)
製造例1で得たポリエステルポリオール(A)、酢酸エチル、バリサーフHX(IMERYS社製、カオリン/非膨潤性、層間非イオン性、板状、平均粒径/1.5μm、アスペクト比/約100)とを56/30/14の比率で混合し、分散撹拌機で分散を行って溶剤型接着剤用主剤Aを得た。
【0156】
(溶剤型接着剤用硬化剤a)
三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分)を85/15(質量比)の割合で混合し硬化剤aとした。硬化剤aの不揮発分は78.7%、NCO%16.4%である。
【0157】
(バリア接着剤A)
溶剤型接着剤用主剤A、溶剤型接着剤用硬化剤aおよび酢酸エチルとを100/109/80の比率で混合し、バリア接着剤Aを得た。
・・・
【0159】
(塗工、エージング方法1)
前記バリア接着剤Aを、バーコーターを用いて、塗布量5.0g/m2(固形分)となるように表1の左側のフィルムのコロナ処理面に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥した。次に接着剤が塗布されたフィルムの接着剤面と、表1の接着剤を介した次のフィルムとラミネートし、複合フィルムを作製した。3層構成以上の構成の場合は先に得られた複合フィルムの裏面に前記溶剤型接着剤を同条件で塗布、乾燥し、表1記載の次のフィルムとラミネートをして複合フィルムを作成した。次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って、本発明のバリア用積層フィルムを得た。
・・・
【0162】
【表1】
[図:0001426276000001.jpg]
【0163】
表中の酸素透過率の単位はcc/m2・day・atmである。また、表中の水蒸気透過率の単位はg/m2・dayである。
【0164】
表中記載の略称は、それぞれ以下を表す。
・・・
・OPP:フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm
・VM-CPP:東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm
・・・
【0165】
上記の結果、ガスバリア性接着剤を用いた場合には、何れの実施例において比較例に比べて、ゲルボフレックス処理前において良好な酸素及び、水蒸気バリア性能を発現した。
【0166】
また、実施例においては、比較例とゲルボフレックス処理前の酸素及び、水蒸気透過率が同等であっても(例えば、実施例6~8と比較例6~8の対比)、ゲルボフレックス処理前と処理後の酸素、及び水蒸気透過率の低下が小さい特徴を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の多層フィルムは、優れたガスバリア性を有し、且つ耐屈曲性に優れる特性を有するので、ガスバリア性を必要とする各種食品用包装材としての利用が可能である。包装対象については特に限定はないが、各種食品、飲料、医療品、薬品類の包装材料の他、各種の香り成分を持つ食品やお茶類等の嗜好品、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤、石鹸等の香り成分を含むサニタリー分野、ペットフード、防虫剤、芳香剤、毛染め類、香水、農薬類、各種有機溶剤類等の香りや低分子成分の放出を妨げたい分野の軟包装材料に好適に用いることができる。また、包装形態としては特に限定はないが、ピロー包装、スタンディングパウチ包装の他、チューブ類の従来の透明蒸着フィルムが加工に伴うバリア低下機能のため使用しにくかった分野に特に利用可能性がある。」
(イ)引用文献1に記載された事項
引用文献1に記載された実施例2(【0151】、【0153】、【0156】、【0157】、【0159】、【0161】、【0164】)のバリア用積層フィルムは、OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)と、VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)とをバリア接着剤Aによりラミネートしたものであり、バリア接着剤Aは硬化することにより接着剤層を形成することは明らかである。
また、VM-CPPは、CPPの一方の面にVM(蒸着層)を設けたものである。
ここで、引用文献1の【0141】の「最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム」の記載を参照すると、実施例2のバリア用積層フィルムは、OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)と、バリア接着剤Aによる接着剤層と、VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)の蒸着層とCPPとをこの順に備えたものであることが理解できる。
(ウ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、特に実施例2のバリア用積層フィルムに着目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)、オルト配向多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)の構造を併せ持つ接着剤の主剤であるポリエステルポリオール(A):Gly(OPAEG)2MAを含む溶剤型接着剤用主剤A(【0018】、【0151】)、三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分)を85/15(質量比)の割合で混合した硬化剤a(【0156】)および酢酸エチルとを100/109/80の比率で混合し、バリア接着剤Aを得て(【0157】)、
バリア接着剤Aを塗布量5.0g/m2(固形分)となるように、OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)のコロナ処理面に塗布し、希釈溶剤を揮発させ乾燥し、次に接着剤が塗布されたフィルムの接着剤面と、VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)とラミネートをして複合フィルムを作成し、次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って得た(【0159】、【0162】、【0164】)、
OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)と、バリア接着剤Aによる接着剤層と、VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)の蒸着層とCPPとをこの順に備えた(上記イ)、ガスバリア用積層フィルム。」
イ 引用文献8
新たに引用する本願の出願前に公開された引用文献である特開2006-111284号公報(平成18年4月27日出願公開。以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、常温揮散性ピレスロイド系殺虫剤を含有する防虫剤を含浸させた防虫剤シートを包装した場合でも、包材に有効成分が吸着され難く、防虫効果の低下を招かない防虫剤用低吸着包材を提供することを目的とする。」
「【0046】
該蒸着層(3)の厚みは、蒸着フィルムの最終用途によって、適宜選択されるが、5~400nmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
該蒸着層(3)の膜厚が5nm未満では均一な膜が設けられないので、十分な酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性、保香性などが得られず、膜厚が400nmを越えると、柔軟性がなくなり、折り曲げ、引張りなどの外的要因により、蒸着膜に亀裂や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。」
「【0067】
<実施例1>
本発明の防虫剤用低吸着包材(A)に使用する積層体は、図1に示すように、最外層の基材フィルム層(2)には、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を使用し、該基材フィルム層(2)上に酸化珪素を真空蒸着法により、膜厚20nmの蒸着層(3)を設けてなるバリアフィルム層(1)を得た。」
ウ 引用文献9
新たに引用する本願の出願前に公開された引用文献である特開2005-104140号公報(平成17年4月21日出願公開。以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐屈曲性と加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに、二軸配向ポリアミドフィルムとシーラントフィルムとを積層させ、耐屈曲性と加工性の両方に優れた包装用フィルムを提供することを目的とするものである。」
「【0045】
本発明の包装用フィルムを構成する二軸配向ポリエステルフィルムは、包装される内容物の酸化や吸湿を避ける目的で高度なガスバリア性を有することが好ましく、そのために二軸配向ポリエステルフィルムの片面にアルミニウムまたは酸化アルミニウム、酸化珪素から選ばれる蒸着層を設けるか、アルミニウム箔を積層することが好ましい。アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化珪素から選ばれた金属もしくは金属酸化物からなる蒸着層を設ける場合、これらの金属または金属酸化物を単独で用いても良いし、混合もしくは積層して用いても良い。また、蒸着簿膜の作製方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などを用いることができるが、生産性やコストの点から、真空蒸着法が最も好ましい。蒸着層の厚さは10~500nmであることが好ましく、より好ましくは20~400nm、特に好ましくは30~300nmである。」
「【0080】
(実施例6)
実施例1で作製した二軸配向ポリエステルフィルムの両面にコロナ放電処理を施した後、片面に真空蒸着法により厚み50nmのアルミニウム蒸着層を設けた。アルミニウム蒸着二軸配向ポリエステルフィルムを中間層とし、上記ラミネート方法により、二軸配向ポリアミドフィルム(外層)、アルミニウム蒸着層、二軸配向ポリエステルフィルム、シーラントフィルムの順になるように積層して、三層積層フィルムを得た。得られた三層積層フィルムは、表1に示すとおり優れた特性を示した。
【0081】
(実施例7)
実施例1で作製した二軸配向ポリエステルフィルムの両面にコロナ放電処理を施した後、片面に真空蒸着法により厚み50nmの酸化アルミニウム蒸着層を設けた。酸化アルミニウム蒸着二軸配向ポリエステルフィルムを中間層とし、上記ラミネート方法により、二軸配向ポリアミドフィルム(外層)、酸化アルミニウム蒸着層、二軸配向ポリエステルフィルム、シーラントフィルムの順になるように積層して、三層積層フィルムを得た。得られた三層積層フィルムは、表2に示すとおり優れた特性を示した。
【0082】
(実施例8)
実施例1で作製した二軸配向ポリエステルフィルムの両面にコロナ放電処理を施した後、片面に真空蒸着法により厚み50nmの酸化珪素蒸着層を設けた。酸化珪素蒸着二軸配向ポリエステルフィルムを中間層とし、上記ラミネート方法により、二軸配向ポリアミドフィルム(外層)、酸化珪素蒸着層、二軸配向ポリエステルフィルム、シーラントフィルムの順になるように積層して、三層積層フィルムを得た。得られた三層積層フィルムは、表2に示すとおり優れた特性を示した。」
エ 引用文献12
新たに引用する本願の出願前に公開された引用文献である特開平6-122180号公報(平成6年5月6日出願公開。以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。
「【0013】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0014】ポリプロピレン若しくはその共重合体又は光分解促進剤を添加したポリプロピレン若しくはその共重合体からなる二軸若しくは一軸延伸フィルムを使用し、電子線若しくは紫外線を照射して開封性を付与したことにより、プレススルーパック用蓋材としての機能を果たすとともに、ピンホール発生率がアルミ箔に比べて格段に低いため、防湿の信頼性を高めることができ、内容物の保護を十分に行うことができる。
・・・
【0016】底材にポリプロピレンシートを使用した場合には単一素材となるので、リサイクル性に優れ、その他の材質においても全てがプラスチック材となるため、廃棄処理、焼却の面からも好ましい。」
オ 引用文献13
新たに引用する本願の出願前に公開された引用文献である特開2011-189540号公報(平成23年9月29日出願公開。以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。
「【0033】
本実施形態では、樹脂シート2は、3層の積層構造を有しており、原料樹脂として、2種類のポリプロピレン系樹脂を用いている。このため、得られる樹脂シート2は、モノマテリアルとなるので、リサイクルを容易に行うことができる。」
カ 周知技術
引用文献12、13に示されるように、「積層体の層を構成する素材をモノマテリアル化し、リサイクル性を向上すること」(以下「周知技術1」という。)は周知技術である。
(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)、オルト配向多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)の構造を併せ持つ接着剤の主剤であるポリエステルポリオール(A):Gly(OPAEG)2MA」は補正発明の「グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール及びイソシアヌル 環を有するポリエステルポリオールからなる群より選択されるポリエステルポリオール」に相当し、同様に、「三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分)を85/15(質量比)の割合で混合した硬化剤a」は「イソシアネート化合物」に相当する。
引用発明の「バリア接着剤A」は、主剤と硬化剤とからなるから、補正発明の「2液硬化型接着剤」に相当し、引用発明の「バリア接着剤A」を「希釈溶剤を揮発させ乾燥」させることで硬化させた「接着剤層」は、補正発明の「硬化物からな」る「接着剤層」に相当する。
引用発明の「CPP」と補正発明の「ポリプロピレンを含」む「シーラント層」とは、ポリプロピレンを含む樹脂層の限りで一致し、引用発明において「OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)と、バリア接着剤Aによる接着剤層と、VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)の蒸着層とCPPとをこの順に備えた」ことと、補正発明において「少なくとも基材と接着剤層と蒸着層とシーラント層とをこの順に備えた」こととは、少なくとも基材と接着剤層と蒸着層と樹脂層とをこの順に備えた限りで一致する。
引用発明の「ガスバリア用積層フィルム」と補正発明の「保香性包装袋用積層体」とは、積層体の限りで一致する。
以上のことから、補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「少なくとも基材と接着剤層と蒸着層と樹脂層とをこの順に備えた、積層体であって、
前記接着剤層が、グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール及びイソシアヌル環を有するポリエステルポリオールからなる群より選択されるポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物とを含む2液硬化型接着剤の硬化物からなり、
前記基材は、ポリプロピレンを含み、
前記シーラント層は、ポリプロピレンを含む、積層体。」
[相違点1]
ポリプロピレンを含む樹脂層に関して、補正発明は「ポリプロピレンを含」む「シーラント層」であるのに対して、引用発明は「CPP」である点。
[相違点2]
積層体に関して、補正発明は「保香性包装袋用積層体」であるのに対して、引用発明は「ガスバリア用積層フィルム」である点。
[相違点3]
補正発明は「前記接着剤層は、1μm以上4.5μm以下の厚さを有」するのに対して、引用発明は「接着剤層」が「塗布量5.0g/m2(固形分)」である点。
[相違点4]
補正発明は「蒸着層は、5nm以上60nm以下の厚さを有」するのに対して、引用発明は「VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)の蒸着層」の厚さが不明である点。
[相違点5]
補正発明は「積層体を構成する樹脂の90質量%以上がポリプロピレンからなる」のに対して、引用発明は積層体を構成する樹脂におけるポリプロピレンの質量%が不明である点。
(4)判断
ア 相違点1、相違点2について
引用文献1の【0135】には、「本発明の多層フィルムは、香り成分の保香用バリア性多層フィルムとして用いることが可能である。」と記載されており、同じく【0167】には、包装対象として、「各種の香り成分を持つ食品やお茶類等の嗜好品」が挙げられており、包装形態として、「ピロー包装、スタンディングパウチ包装の他、チューブ類の従来の透明蒸着フィルムが加工に伴うバリア低下機能のため使用しにくかった分野」が挙げられている。引用発明において、これらの記載を参考にして、保香性包装袋用のものとして用いることに格別の困難性はない。
また、CPPはヒートシール性を有するから、引用発明を保香性包装袋用のものとして用いる際に、最内層となる「CPP」をヒートシール層とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
イ 相違点3、相違点5について
周知技術1として示したとおり、「積層体の層を構成する素材をモノマテリアル化し、リサイクル性を向上すること」は周知技術である。
そうすると、引用発明において、接着剤層の厚さをどの程度とするか、また、積層体を構成する樹脂におけるポリプロピレンの質量%をどの程度とするかは、ガスバリア性、接着性、コスト、リサイクル性等を勘案して当業者が適宜決め得ることであり、引用発明において、相違点3、相違点5に係る補正発明の構成とすることに格別の困難性はない。
なお、ポリプロピレンの密度は一般に、0.90~0.91g/cm3程度であるから、引用発明における「OPP(フタムラ化学(株) 太閤FOR 30μm)」と「VM-CPP(東レフィルム加工(株) VM-CPP2203 25μm)」は、それぞれ27~27.3g/m2、22.5~22.75g/m2程度と計算できる。そうすると、引用発明における積層体を構成する樹脂におけるポリプロピレンの質量%は、バリア接着剤Aの塗布量が5.0g/m2(固形分)であるから、90.8~90.9質量%(=(27+22.5)/(27+22.5+5.0)~(27.3+22.75)/(27.3+22.75+5.0))と計算でき、相違点5に係る補正発明の数値範囲に含まれており、補正発明のポリプロピレンの比率の数値範囲が特別なものとは認められない。
ウ 相違点4について
引用発明における蒸着層の厚さをどの程度とするかは、ガスバリア性、コスト等を勘案して当業者が適宜決め得ることであり、引用発明において相違点4に係る補正発明の構成とすることに格別の困難性はない。
なお、蒸着層の厚さとして、5nm以上60nm以下の範囲のものは、例えば、引用文献8(【0046】、【0047】、【0067】)、引用文献9(【0045】、【0080】~【0082】)に示されるように特別なものでもない。
エ 作用効果について
補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、仮にリサイクル性を向上させるために、引用文献1に記載された発明において、積層フィルムを構成する樹脂の90質量%以上がポリプロピレンであるようにモノマテリアル化することまで到底考えつかない旨主張する。
しかしながら、引用発明として認定した実施例2は、いずれもポリプロピレンであるOPPとVM-CPPをラミネートしたものであり、引用文献1の記載からモノマテリアル化することまで考えつかないとする審判請求人の上記主張は採用できない。
(6)補正発明についてのまとめ
したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年9月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年5月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に公開された引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1 特開2013-147014号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した補正発明から、「シーラント層」を加えた上での各層の積層順、「基材」の材料、「積層体を構成する樹脂」における「ポリプロピレン」の質量%に関する限定事項を削除したものであり、当該削除される限定事項には、相違点5に係るモノマテリアル化に関するものも含まれる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2[理由]2(3)~(6)で説示したとおり、引用発明及びモノマテリアル化に関する周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014922